(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】他物固定具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
E04D13/00 K
(21)【出願番号】P 2021075373
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(73)【特許権者】
【識別番号】510153113
【氏名又は名称】株式会社ベルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高野 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】澤西 良三
(72)【発明者】
【氏名】崔 凱
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136932(JP,A)
【文献】特開2014-152531(JP,A)
【文献】特開2017-014892(JP,A)
【文献】特開2020-176698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付下地への第1固定部を備えた設置用支持部に、
上側の固定対象である他物を上下変位自在に固定するための第2固定部を備えた他物用固定部を一体に設け、
前記設置用支持部には前記第1固定部を下端部に設けた縦筒状の本体部を設けると共に、その本体部の上端部を閉じる屋根部を設け、
前記他物用固定部には前記本体部の周側面よりも外側に延設した庇部を設けると共に、
前記庇部の延設端の位置に前記第2固定部を配設してある他物固定具であって、
前記庇部とは別の補助庇部を、前記第2固定部よりも下方で前記本体部に付設してある他物固定具。
【請求項2】
前記第2固定部は、前記庇部の延設端から下方に垂下した縦壁部に設けてある請求項1に記載の他物固定具。
【請求項3】
前記補助庇部の外周縁は、外側ほど低くなる傾斜面に形成してある請求項1または2に記載の他物固定具。
【請求項4】
前記補助庇部の外周縁よりも前記縦壁部の下端を低く形成してある請求項2に記載の他物固定具。
【請求項5】
前記本体部の周側壁で前記補助庇部から下に、防水層を付設可能にしてある請求項1~4のいずれか1項に記載の他物固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付下地への第1固定部を備えた設置用支持部に、上側の固定対象である他物を上下変位自在に固定するための第2固定部を備えた他物用固定部を一体に設け、前記設置用支持部には前記第1固定部を下端部に設けた縦筒状の本体部を設けると共に、その本体部の上端部を閉じる屋根部を設け、前記他物用固定部には前記本体部の周側面よりも外側に延設した庇部を設ける共に、前記庇部の延設端の位置に前記第2固定部を配設してある他物固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記他物固定具において、本体部にはその上端部を閉じる屋根部により、下地への取付時に急な雨が降ってきても下地に対する防水性を良好に維持しやすくできながら、屋根部の高さ位置にかかわらず他物の上下固定位置を自在に設定できるように、先に本出願人は、前記庇部の延設端の位置に前記第2固定部を配設してある構造を提案していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、他物固定具を小型化する場合に前記庇部も小さくなり、そのために、庇部の延設端に配設した第2固定部のボルト挿通孔などから侵入する雨水等が、前記本体部の周壁部に形成する防水層の上端部に達し、下地の防水性を損ねる虞があるという問題が発生する。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、例え他物固定具を小型化して前記本体部の周壁部に防水層を形成しても、その上端部に雨水がかからないようにできる他物固定具を形成するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、取付下地への第1固定部を備えた設置用支持部に、上側の固定対象である他物を上下変位自在に固定するための第2固定部を備えた他物用固定部を一体に設け、前記設置用支持部には前記第1固定部を下端部に設けた縦筒状の本体部を設けると共に、その本体部の上端部を閉じる屋根部を設け、前記他物用固定部には前記本体部の周側面よりも外側に延設した庇部を設けると共に、前記庇部の延設端の位置に前記第2固定部を配設してある他物固定具であって、前記庇部とは別の補助庇部を、前記第2固定部よりも下方で前記本体部に付設するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、全体の小型化のために庇部が小さくなっても、前記庇部とは別の補助庇部を、前記第2固定部よりも下方で前記本体部に付設してあるために、庇部の延設端に配設した第2固定部のボルト挿通孔などから雨水が浸入して庇部の下方に滴下しても、補助庇部により遮られて本体部の周部において補助庇部よりも下方部分が濡れるのを防止できる。
従って、第1固定部から本体部の周部にかけて防水層を形成する下地部分の防水施工を行っても、防水層の上端部を補助庇部の下側に形成することで、防水層の上端部から下地に雨水などが浸入するのを防止でき、そのために、下地の防水性を高く維持できる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記第2固定部は、前記庇部の延設端から下方に垂下した縦壁部に設けるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、第2固定部による他物の上下固定高さを、庇部の延設端から下方に垂下した縦壁部に沿ってより一層自在に設定できる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記補助庇部の外周縁は、外側ほど低くなる傾斜面に形成してある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、補助庇部の外周縁の傾斜面により、補助庇部に降りかかる雨水があっても、その雨水は、本体部からより遠ざかる方向に流されて、本体部が濡れにくくなる。
また、例えば補助庇部の下側で本体部の周部に防水層を形成する場合、補助庇部の下方から防水層の上端部にかけて液状シール材を充填するのに、補助庇部の外周縁に形成される前記傾斜面により、液状シール材を充填するカートリッジの先端ノズルが本体部の周面に誘導されて施工の確実性が向上し、防水層の上端部と本体部との界面に対する防水性をより一層確保しやすくできる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記補助庇部の外周縁よりも前記縦壁部の下端を低く形成してある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、外方から補助庇部が見えるのを防止でき、他物固定具の外観が向上する。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記本体部の周側壁で前記補助庇部から下に、防水層を付設可能にしてある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、補助庇部の下側に防水層を付設することにより、防水層の上端部が補助庇部によって保護された状態になり、取付下地に対する防水性を向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の他物固定具の設置状態を示す全体斜視図である。
【
図2】本発明の他物固定具の設置状態の側面図である。
【
図3】本発明の他物固定具の設置状態の縦断正面図である。
【
図6】本発明の他物固定具の別実施形態の縦断面図である。
【
図7】他物固定具の別実施形態の設置状況を示し、(a)は全体の分解斜視図、(b)は連結ボルトによる連結時の要部の一部縦断斜視図、(c)は連結ボルトによる連結状態の要部縦断面図である。
【
図8】別実施形態の他物固定具で、(a)は分解斜視図、(b)は設置した別実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図5に示すように、本発明の他物固定具1は、建物のベランダや屋上などに、固定対象部材として設備機器や配線、配管等の他物30を固定するために、屋上のコンクリート床やベランダ等の建築物(取付下地2の一例)への第1固定部3を備えた設置用支持部4に、上側の固定対象である他物30を上下変位自在に固定するための第2固定部5を備えた他物用固定部6を一体に設け、設置用支持部4には第1固定部3を下端部に設けた縦筒状の本体部7を設けると共に、その本体部7の上端部を閉じる屋根部8を設け、他物用固定部6には本体部7の周側面よりも外側に延設した庇部9を設けると共に、庇部9の延設端の位置に第2固定部5を配設してある。
【0018】
庇部9は、屋根部8から一体に横方向に延設して形成してあり、第2固定部5を構成するに、庇部9の延設端から下方に垂下した縦壁部10に設け、その縦壁部10に第1ボルト挿通部11を設けてある。
そして、その第1ボルト挿通部11と共に連結ボルト12を挿通させて、連結ボルト12とナット13とによって連結する第2ボルト挿通部14を備えた中間支持部材15を設けてある。
尚、第2ボルト挿通部14を上下に沿った長孔に形成し、中間支持部材15の上端部に他物30を取り付ける第3固定部16を設け、前記他物固定具1に対して上下変位自在に他物30を固定支持できるように構成してある。
また、前記第1ボルト挿通部11を、角孔に形成して、前記連結ボルト12を、前記角孔に回り止め可能に内嵌する角根ボルトから構成してある。
【0019】
中間支持部材15は、
図1~
図3に示すように、周部4面に夫々縦壁部17を形成した略箱型形状に形成してあり、その縦壁部17夫々に第2ボルト挿通部14を形成してある。
【0020】
図3、
図5に示すように、前記庇部9とは別の補助庇部20を、前記第2固定部5よりも下方で前記本体部7に付設してあり、本体部7の周側壁で補助庇部20から下に、防水層21(
図5)を付設可能にしてある。
尚、上記防水層21は、防水性塗膜を形成する塗膜防水の場合もあり、塗膜防水以外に防水シートを本体部の周面に付設するシート防水もあり、シート防水の場合には、図示しないが一般的に、その付設するシートの上部にステンレスバンドを巻いて防水シートがずり落ちないようにすると共に、その防水シートの上部と補助庇部20の下面とに亘って液状のシール材を充填する。
【0021】
補助庇部20の外周縁は、外側ほど低くなる傾斜面に形成して、その傾斜面により、補助庇部20に降りかかる雨水があっても、その雨水は、本体部7からより遠ざかる方向に流されて、本体部7が濡れにくくなるばかりか、例えば補助庇部20の下側で本体部7の周部に防水層を形成する場合、補助庇部20の下方から防水層の上端部にかけて液状シール材を充填するのに、補助庇部20の外周縁に形成される前記傾斜面により、液状シール材を充填するカートリッジの先端ノズルが本体部7の周面に誘導されて施工の確実性が向上し、防水層の上端部と本体部7との界面に対する防水性は、より一層確保しやすくなる。
【0022】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
なお、以下の他の実施形態において、上記実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
〈1〉 前記庇部9は、屋根部8から一体に横方向に延設する以外に、屋根部8の高さとは異なった位置で本体部7の周側壁から横方向に延設してあってもよい。
〈2〉 第2固定部5は、庇部9の延設端から下方に垂下した縦壁部10に設ける以外に、庇部9の延設端部に設けてあってもよい。つまり、縦壁部10を設けても良いが、縦壁部10を設けない構造であってもよい。
〈3〉 第2ボルト挿通部14を上下に沿った長孔に形成する以外に、第2固定部5に設けた第1ボルト挿通部11と、中間支持部材15に設けた第2ボルト挿通部14の少なくともいずれか一方を、上下に沿った長孔を形成してあれば、他物30の固定高さを上下変位自在にできる。
〈4〉 前記中間支持部材15の形状は、前述したように略箱型形状以外に、金属製で上下に沿った縦壁部のある複数本の支柱形状や、アングル材又はチャンネル材形状のような上下に長い物であってもよい。
〈5〉 補助庇部20の外周縁は、外側ほど低くなる傾斜面に形成するのに、部分円錐形の傾斜面や、縦断面が曲線上のアーチ形であってもよい。
〈6〉 また、補助庇部20の外周縁は、外側ほど低くなる傾斜面に形成する以外に、水平面であってもよく、また、前記庇部と同様に、水平面に続く外縁部に、垂下する縦壁部を設けた形状であってもよい。
〈7〉
図6に示すように、前記補助庇部20の外周縁は、縦壁部10の下端より低い位置であっても、又は、高い位置であってもよいが、
図5のように、補助庇部20の外周縁よりも縦壁部10の下端を低く形成してあれば、外方から補助庇部20が見えるのを防止でき、他物固定具1の外観が向上する。
〈8〉
図7(a)、(b)、(c)に示すように、第1ボルト挿通部11は、庇部9の端部において、上方に切り欠きを入れて、中間支持部材の第2ボルト挿通部14に挿通させる連結ボルト12を、第2ボルト挿通部14に挿通させたまま、上から係入させることができる(
図7(b)→(c))形状であってもよい。
〈9〉 屋根部8に連設する庇部9には、下方に補助庇部20を設けてあるために、
図8(a)、(b)に示すように、上下に貫通する角孔の第1ボルト挿通部11を設けて、屋根部8上に乗せた他物30を固定することもできる。
【0023】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
2 取付下地
3 第1固定部
4 設置用支持部
5 第2固定部
6 他物用固定部
7 本体部
8 屋根部
9 庇部
10 縦壁部
20 補助庇部