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  • 特許-ファン装置取付具、及び空調衣服 図1
  • 特許-ファン装置取付具、及び空調衣服 図2
  • 特許-ファン装置取付具、及び空調衣服 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】ファン装置取付具、及び空調衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
A41D13/002 105
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023165917
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2024-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511274592
【氏名又は名称】豊鷹株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】古河 豊光
(72)【発明者】
【氏名】古河 隆治
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101563(JP,A)
【文献】実開平06-069201(JP,U)
【文献】登録実用新案第3226981(JP,U)
【文献】登録実用新案第3234752(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A41D27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン装置を衣服生地に取り付けるためのファン装置取付具であって、
前記ファン装置を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記衣服生地に固定されており、
前記支持部材は、前記衣服生地を挟んだ状態で互いに対向するように配される第一支持部片及び第二支持部片を含み、
前記第一支持部片は、前記衣服生地に当接される第一環状凸部を有し、
前記第二支持部片は、前記衣服生地を挟んだ状態で前記第一環状凸部が嵌合される環状凹部と、当該環状凹部と表裏一体をなすように形成される第二環状凸部とを有し、
前記第一環状凸部の内周側が通気可能に開口され、
前記第二環状凸部の内周側が通気可能に開口されているファン装置取付具。
【請求項2】
前記第一支持部片は、前記第一環状凸部の周囲に張り出すように形成される、厚みが相対的に小さい薄肉環状板部をさらに有し、
前記第二支持部片は、前記環状凹部の周囲に張り出すように形成される、前記薄肉環状板部よりも大きい厚みの厚肉環状板部をさらに有し、
前記厚肉環状板部には、外部に向けて開放される、厚みが部分的に低減された縫合案内溝が形成されており、
前記縫合案内溝が形成された箇所において前記薄肉環状板部及び前記厚肉環状板部を前記衣服生地に縫合することにより、前記第一支持部片及び前記第二支持部片が前記衣服生地に固定される請求項1に記載のファン装置取付具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のファン装置取付具と、
前記ファン装置取付具によって衣服生地に取り付けられるファン装置と、
を備える空調衣服。
【請求項4】
前記ファン装置は、
前記衣服生地の一方面側において前記支持部材に支持されるファンユニットと、
前記衣服生地の他方面側において前記支持部材に支持されるスペーサと、
を備え、
前記スペーサは、前記衣服生地の面に対し垂直方向に通気可能な主通気口と、前記衣服生地の面に沿う方向に通気可能な副通気口とを有する請求項3に記載の空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン装置を衣服生地に取り付けるためのファン装置取付具、及び空調衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高温下での作業等によって引き起こされる熱中症が問題視されており、高温下での作業環境を改善するため、空調衣服が普及してきている。
【0003】
特許文献1には、衣服生地に開口部(ファン取付口)を設け、そのファン取付口にファン装置を取り付けることにより、衣服の外部から内部に空気を導入するようにした構造の空調衣服が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ユーザの身体と衣服生地との間の空間に外部からの空気を強制的に送風するためのファンユニットと、吸熱面及び放熱面を表裏一体に有するペルチェユニットとを備えたファン装置を用いて、衣服生地とユーザの身体との間の空間に外部の空気を冷却(又は加熱)しつつ強制的に送り込むようにした構造の空調衣服が開示されている。
【0005】
特許文献3には、空調衣服におけるファン取付口が形成される箇所において、衣服生地及び裏地のそれぞれに放射状の切り込みを設け、これによって放射状に形成される折返し片を折り返すことにより、ファン取付口の周辺を厚く補強した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-111892号公報
【文献】特開2023-106237号公報
【文献】特開2015-65998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2において、ファン装置は、対向する二つの部品でファン取付口の周縁部の衣服生地を挟み込む方式によって取り付けられている。ファン装置は、所定の重量を有することから、ファン取付口の周縁部の衣服生地が、通常の衣服生地と同様の柔らかい素材であると、十分な支持が行えない。このため、ファン取付口の周縁部に負荷が作用するに伴い、その部分の衣服生地に撓み等の変形が生じ、ファン取付口の周縁部を挟み込む2つの部品の隙間から衣服生地が抜け出てしまい、ファン装置がファン取付口から脱落してしまう虞がある。
【0008】
特許文献3においても、特許文献1及び2と同様の方式でファン装置が取り付けられている。特許文献3では、ファン取付口の周辺が厚く補強された構造であることから、ファン取付口の周縁部に負荷が作用しても、その部分の衣服生地の変形を抑えることができ、ファン取付口の周縁部を挟み込む2つの部品の間から衣服生地が抜け出てしまうことを防ぐことができると考えられる。しかしながら、ファン取付口の周縁部において、衣服生地と裏地とが二層構造になった端部が、ファン装置の着脱を繰り返すうちに摩耗し、特に、各折り返し片の端部がほつれてしまうという脆弱性があり、耐久性について問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ファン装置の取付状態を安定的に保つことができるファン装置取付具、及び空調衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るファン装置取付具の特徴構成は、
ファン装置を衣服生地に取り付けるためのファン装置取付具であって、
前記ファン装置を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記衣服生地に固定されることにある。
【0011】
本構成のファン装置取付具によれば、ファン装置は、直接的に衣服生地に取り付けられるのではなく、当該ファン装置を支持する支持部材を介して衣服生地に取り付けられる。これにより、ファン装置の着脱を繰り返しても、衣服生地が摩耗したり、ほつれたりすることがなく、耐久性を確保することができる。従って、ファン装置の取付状態を安定的に保つことができる。なお、本構成のファン装置取付具では、衣服生地に固定された支持部材にファン装置を支持させる構成であることから、対向する二つの部品でファン取付口の周縁の衣服生地を挟み込むことでファン装置を取り付ける従来方式では必要とされていたファン装置取付用の開口部(ファン取付口)を設けることなく、ファン装置を衣服生地に取り付けることができるので、取付工数を削減できるという利点がある。
【0012】
本発明に係るファン装置取付具において、
前記支持部材は、前記衣服生地を挟んだ状態で互いに対向するように配される第一支持部片及び第二支持部片を含むことが好ましい。
【0013】
本構成のファン装置取付具によれば、衣服生地を挟んだ状態で互いに対向するように配される第一支持部片及び第二支持部片によって、衣服生地におけるファン装置の取付箇所の強度を十分に確保することができる。
【0014】
本発明に係るファン装置取付具において、
前記第一支持部片は、前記衣服生地に当接される環状凸部を有し、
前記第二支持部片は、前記衣服生地を挟んだ状態で前記環状凸部が嵌合される環状凹部を有することが好ましい。
【0015】
本構成のファン装置取付具によれば、第一支持部片における環状凸部と、第二支持部片における環状凹部とを衣服生地を挟んだ状態で嵌合させるといった簡易な操作によって、衣服生地に対する第一支持部片及び第二支持部片の位置決めを容易に行うことができる。
【0016】
本発明に係るファン装置取付具において、
前記第一支持部片は、前記環状凸部の周囲に張り出すように形成される、厚みが相対的に小さい薄肉環状板部をさらに有し、
前記第二支持部片は、前記環状凹部の周囲に張り出すように形成される、前記薄肉環状板部よりも大きい厚みの厚肉環状板部をさらに有し、
前記厚肉環状板部には、外部に向けて開放される、厚みが部分的に低減された縫合案内溝が形成されており、
前記縫合案内溝が形成された箇所において前記薄肉環状板部及び前記厚肉環状板部を前記衣服生地に縫合することにより、前記第一支持部片及び前記第二支持部片が前記衣服生地に固定されることが好ましい。
【0017】
本構成のファン装置取付具によれば、支持部材を構成する第一支持部片及び第二支持部片において、第一支持部片における薄肉環状板部は、厚みが相対的に小さいものの、第二支持部片における厚肉環状板部は、薄肉環状板部よりも大きい厚みであるため、支持部材の強度を十分に確保することができる。また、第二支持部片における厚肉環状板部には、外部に向けて開放される、厚みが部分的に低減された縫合案内溝が形成される。こうして、第二支持部片における厚肉環状板部の縫合案内溝が形成される部分の厚みと、第一支持部片における厚肉環状板部と対向する薄肉環状板部の厚みとの合計を小さく抑えることができる。このため、支持部材において、縫合案内溝が形成される箇所では、例えば、工業用ミシンのミシン針を容易に貫通させることができる。従って、縫合案内溝が形成された箇所において第一支持部片及び第二支持部片を衣服生地に容易に縫合することができ、縫合によって第一支持部片及び第二支持部片を衣服生地に確実に固定することができる。
【0018】
次に、上記課題を解決するための本発明に係る空調衣服の特徴構成は、
上記に記載のファン装置取付具と、
前記ファン装置取付具によって衣服生地に取り付けられるファン装置と、
を備えることにある。
【0019】
本構成の空調衣服によれば、ファン装置取付具によってファン装置の取付状態が安定的に保たれた空調衣服を提供することができる。
【0020】
本発明に係る空調衣服において、
前記ファン装置は、
前記衣服生地の一方面側において前記支持部材に支持されるファンユニットと、
前記衣服生地の他方面側において前記支持部材に支持されるスペーサと、
を備え、
前記スペーサは、前記衣服生地の面に対し垂直方向に通気可能な主通気口と、前記衣服生地の面に沿う方向に通気可能な副通気口とを有することが好ましい。
【0021】
本構成の空調衣服によれば、衣服生地の一方面側において支持部材に支持されるファンユニットの作動により、衣服生地の他方面側において支持部材に支持されるスペーサに形成された主通気口及び副通気口を通して空気の流れを生じさせることができる。しかも、衣服生地の面に対し垂直方向に通気可能な主通気口が布等で塞がれたとしても、スペーサによって当該布等と衣服生地との間に空間を確保することができるので、衣服生地の面に沿う方向に通気可能な副通気口を通して空気の流れを生じさせることができ、スペーサによって確保された空間内に空気の流れを確実に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本実施形態の空調衣服の要部を示す説明図である。
図2図2は、第一支持部片の説明図である。
図3図3は、第二支持部片の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。なお、図1(b)において、支持部材10を構成する第一支持部片11及び第二支持部片12に対する衣服生地2の厚み関係は理解容易化のため誇張しており、実際の衣服生地2の厚みの大小関係(縮尺)を厳密に反映したものではない。
【0024】
本明細書において、「ファン装置」は、少なくともファンが内蔵されたファンユニットを備える「冷却装置」や、「空気調和装置」を総称するものである。ここで、「冷却装置」としては、送風用ファンが内蔵されたファンユニットを備え、ファンユニットの作動により、衣服生地の外部から内部に空気(外気)を導入し、汗の気化熱で身体を冷却するように構成されるものが挙げられる。また、「空気調和装置」としては、ペルチェ素子、熱交換プレート、ヒートシンク、ファン等が内蔵されるファンユニットを備え、ファンでヒートシンクの熱を放出させるとともに、ペルチェ素子の熱を熱交換プレートに伝導させることにより、身体を冷やしたり、温めたりするように構成されるものが挙げられる。なお、以下の実施形態では、本発明の「ファン装置」として、「空気調和装置」が適用された例を挙げて説明するが、「冷却装置」も適用可能であることは言うまでもない。
【0025】
<空調服の全体構成>
図1は、本実施形態の空調衣服1の要部を示す説明図である。図1(a)は、正面図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A矢視要部断面図である。図1(a)及び(b)に示す空調衣服1は、衣服本体(図示省略)の所要部分を構成する衣服生地2に、ファン装置取付具3を介してファン装置4が取り付けられて構成されている。
【0026】
ここで、図示されない衣服本体に用いる生地は、通常、織物又は編物として構成されるが、織組織又は編組織を有さないフィルムであってもよい。生地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維等を用いることができる。
【0027】
ファン装置取付具3が固定される衣服生地2としては、通気性を有する生地を用いることが好ましい。通気性を有する生地としては、例えば合成繊維からなるメッシュ生地を用いることができる。メッシュ生地を形成する合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維等を挙げることができる。
【0028】
<ファン装置取付具>
図1(b)に示すファン装置取付具3は、ファン装置4を衣服生地2に取り付けるためのものであり、ファン装置4を支持する支持部材10を備えている。支持部材10は、衣服生地2に縫合糸40によって固定されている。
【0029】
<支持部材>
支持部材10は、衣服生地2を挟んだ状態で互いに対向するように配される合成樹脂製の第一支持部片11及び第二支持部片12を含む。ここで、支持部片11,12を構成する合成樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
図1(b)に示すように、支持部材10は、衣服生地2を挟むようにして第一支持部片11及び第二支持部片12が衣服生地2に固定されることによって構成される。従って、衣服生地2におけるファン装置4の取付箇所の強度を第一支持部片11及び第二支持部片12によって十分に確保することができる。また、衣服生地2に固定された支持部材10にファン装置4が支持される。このため、本発明では、対向する二つの部品でファン取付口の周縁部の衣服生地を挟み込むことでファン装置を取り付ける従来方式では必要とされていたファン装置取付用の開口部(ファン取付口)を設けることなく、ファン装置4を衣服生地2に取り付けることができるので、取付工数を削減できるという利点がある。
【0031】
<第一支持部片>
図2は、第一支持部片11の説明図である。図2(a)は、第一支持部片11の正面図であり、図2(b)は、図2(a)のB-B矢視断面図である。図2(a)及び(b)に示すように、第一支持部片11は、衣服生地2に当接するように突設される環状凸部(第一環状凸部)21と、環状凸部21の基部の周囲に張り出すように形成される、厚みが相対的に小さい薄肉環状板部22とを有している。環状凸部21は、図2(a)に示すように、正面視で円環状に形成されており、薄肉環状板部22に対し図2(b)において上方に突出形成されている。図2(a)及び(b)に示すように、環状凸部21の基部における内周縁には、周方向に等角度ピッチ(本例では120°ピッチ)で複数(本例では3つ)の内向き突起23が内方に向けて突設されている。薄肉環状板部22は、図2(a)に示すように、円環状に形成されており、図2(b)において記号T1にて示す厚みは、0.5mm程度に設定されている。
【0032】
<第二支持部片>
図3は、第二支持部片12の説明図である。図3(a)は、第二支持部片12の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のC-C矢視断面図である。図3(a)及び(b)に示すように、第二支持部片12は、図3(b)において上方に突出形成される環状凸部(第二環状凸部)31と、当該環状凸部31と表裏一体をなすように形成される図3(b)において下方に開放された環状凹部32と、環状凹部32の基部の周囲に張り出すように形成される厚肉環状板部33とを有している。
【0033】
第二支持部片12において、環状凸部31は、図3(a)に示すように、正面視で円環状に形成されている。図3(a)及び(b)に示すように、環状凸部31における内周縁には、周方向に等角度ピッチ(本例では120°ピッチ)で複数(本例では3つ)の内向き突起34が内方に向けて突設されるとともに、図3(a)に示すように、後述するスペーサ60に設けられた外向き突起63が通過可能な切欠き部35が周方向に隣り合う内向き突起34の間に形成されている。
【0034】
第二支持部片12において、環状凹部32は、第一支持部片11における環状凸部21との間に衣服生地2を挟んだ状態で当該環状凸部21と嵌合可能とされている。こうして、第一支持部片11における環状凸部21(図2(b)参照)と、第二支持部片12における環状凹部32(図3(b)参照)とを衣服生地2を挟んだ状態で嵌合させるといった簡易な操作によって、衣服生地2に対する第一支持部片11及び第二支持部片12の位置決めを容易に行うことができる。
【0035】
図3(a)に示すように、第二支持部片12において、厚肉環状板部33は、円環状に形成されており、第一支持部片11における薄肉環状板部22よりも大きい厚みで、図3(b)において記号T2にて示す厚みは、2mm程度に設定されている。厚肉環状板部33における衣服生地2と接触されずに外部に露出される非接触板面(図3(b)において上側板面)には、外部に向けて開放された円環状の二条の縫合案内溝36が形成されている。二条の縫合案内溝36は、厚肉環状板部33の周方向の全域に亘って延在し、且つ厚肉環状板部33の径方向に並ぶように配設されている。厚肉環状板部33において、各縫合案内溝36が形成される部分の厚み、すなわち図3(b)において記号T3にて示す厚みは、0.5mm程度に設定されている。
【0036】
上述したように、第一支持部片11における薄肉環状板部22の厚みT1(図2(b)参照)は、0.5mm程度に設定される。一方、第二支持部片12における厚肉環状板部33の縫合案内溝36が形成される部分の厚みT3(図3(b)参照)は、0.5mm程度に設定されている。こうして、支持部材10においては、縫合案内溝36が形成される部分における第一支持部片11と第二支持部片12との合計厚み(T1+T3)が、一般的な工業用ミシンで縫製可能な厚みである1mm程度に設定され(衣服生地2の厚みは除く)、支持部材10の全体において、厚みが最も小さくされている。従って、支持部材10における縫合案内溝36が形成された箇所においては、第一支持部片11及び第二支持部片12を衣服生地2に縫合糸40で容易に縫合することができ、縫合糸40によって第一支持部片11及び第二支持部片12を衣服生地2に確実に固定することができる。なお、第一支持部片11及び第二支持部片12を衣服生地2に固定する手段として、縫合糸40を用いた縫合によるものに限定されず、雄係合片と雌係合片とからなる面ファスナや、雄型ホックと雌型ホックとからなるアメリカンホックと称されるもの等を利用することも可能である。
【0037】
<ファン装置>
図1(b)に示すように、ファン装置4は、衣服生地2の一方面側(図において下面側)において支持部材10の第一支持部片11に支持されるファンユニット50と、衣服生地2の他方面側(図において上面側)において支持部材10の第二支持部片12に支持されるスペーサ60とを備えている。
【0038】
<ファンユニット>
ファンユニット50は、ファンケーシング51の内部に、何れも図示省略されるペルチェ素子、熱交換プレート、ヒートシンク、ファン等が配設されて構成されている。ファンケーシング51には、第一支持部片11に設けられた複数の内向き突起23と係合可能な複数(本例では3つ)の外向き突起52が周方向に所定角度ピッチ(本例では120°ピッチ)で形成されるとともに、第一支持部片11に設けられた内向き突起23が通過可能な切欠き部53が周方向に隣り合う外向き突起52の間に形成されている。
【0039】
<スペーサ>
スペーサ60は、衣服生地2の面に対し垂直方向に通気可能な主通気口61と、衣服生地2の面に沿う方向に通気可能な複数の副通気口62とを有している。スペーサ60には、第二支持部片12に設けられた複数の内向き突起34と係合可能な複数(本例では3つ)の外向き突起63が周方向に所定角度ピッチ(本例では120°ピッチ)で形成されている。
【0040】
以上に述べたように構成される空調衣服1において、支持部材10にファン装置4を装着する動作は、以下に述べるファンユニット装着工程とスペーサ装着工程とを順に行うことによってなされる。なお、ここでは、ファンユニット装着工程を行った後に、スペーサ装着工程を行う例を説明するが、この例の逆の手順で行ってもよく、ファンユニット装着工程及びスペーサ装着工程を行う順序は特に限定されるものでない。
【0041】
<ファンユニット装着工程>
第一支持部片11に設けられた複数の内向き突起23(図2(a)参照)と、ファンケーシング51に設けられた複数の切欠き部53(図1(b)参照)との相対位置を合わせるように、第一支持部片11に向けてファンユニット50を近づけていき、複数の切欠き部53に複数の内向き突起23を通過させるようにして、第一支持部片11における環状凸部21の内周部に、ファンケーシング51に設けられた複数の外向き突起52を位置させる。次いで、第一支持部片11に対しファンユニット50を、第一支持部片11の周方向に相対回転させて、第一支持部片11に設けられた複数の内向き突起23と、ファンケーシング51に設けられた複数の外向き突起52とを係合させる。これにより、第一支持部片11に対しファンユニット50が係止され、支持部材10にファンユニット50が装着された状態が保持される。
【0042】
<スペーサ装着工程>
第二支持部片12における環状凸部31に設けられた複数の切欠き部35(図3(a)参照)と、スペーサ60に設けられた複数の外向き突起63(図1(b)参照)との相対位置を合わせるように、第二支持部片12に向けてスペーサ60を近づけていき、複数の切欠き部35に複数の外向き突起63を通過させるようにして、第二支持部片12における環状凸部31の内周部に、複数の外向き突起63を位置させる。次いで、第二支持部片12に対しスペーサ60を、第二支持部片12の周方向に相対回転させて、第二支持部片12に設けられた複数の内向き突起34(図3(a)参照)と、スペーサ60に設けられた複数の外向き突起63とを係合させる。これにより、第二支持部片12に対しスペーサ60が係止され、支持部材10にスペーサ60が装着された状態が保持される。
【0043】
図1(b)に示すように、ファン装置4は、直接的に衣服生地2に取り付けられるのではなく、支持部材10を介して衣服生地2に取り付けられる。これにより、ファン装置4の着脱を繰り返しても、衣服生地2が摩耗したり、ほつれたりすることがなく、耐久性を確保することができる。従って、ファン装置取付具3によってファン装置4の取付状態が安定的に保たれた空調衣服1を提供することができる。
【0044】
そして、空調衣服1においては、ファンユニット50の作動により、スペーサ60に形成された主通気口61及び副通気口62を通して空気の流れを生じさせることができる。しかも、衣服生地2の面に対し垂直方向に通気可能な主通気口が布等で塞がれたとしても、スペーサ60によって当該布等と衣服生地2との間に空間を確保することができるので、衣服生地2の面に沿う方向に通気可能な副通気口62を通して空気の流れを生じさせることができ、スペーサ60によって確保された空間内に空気の流れを確実に発生させることができる。
【0045】
以上、本発明のファン装置取付具、及び空調衣服について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のファン装置取付具は、冷却装置や空気調和装置のような少なくともファンユニットを備えたファン装置を、空調衣服の衣服生地に取り付ける用途に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 空調衣服
2 衣服生地
3 ファン装置取付具
4 ファン装置
10 支持部材
11 第一支持部片
12 第二支持部片
21 環状凸部
22 薄肉環状板部
32 環状凹部
33 厚肉環状板部
36 縫合案内溝
40 縫合糸
50 ファンユニット
60 スペーサ
61 主通気口
62 副通気口
【要約】
【課題】ファン装置の取付状態を安定的に保つことができるファン装置取付具を提供する。
【解決手段】ファン装置4を衣服生地2に取り付けるためのファン装置取付具3であって、ファン装置4を支持する支持部材10を備え、支持部材10は、衣服生地2に縫合糸40によって固定される。支持部材10は、衣服生地2を挟んだ状態で互いに対向するように配される第一支持部片11及び第二支持部片12を含み、第一支持部片11は、衣服生地2に当接される環状凸部21を有し、第二支持部片12は、衣服生地2を挟んだ状態で環状凸部21が嵌合される環状凹部32を有するものとする。
【選択図】図1
図1
図2
図3