(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】油分及び汚泥分回収タンク
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20230101AFI20250210BHJP
【FI】
C02F1/40 B
C02F1/40 A
(21)【出願番号】P 2024552365
(86)(22)【出願日】2024-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2024031462
【審査請求日】2024-09-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599135695
【氏名又は名称】株式会社ティービーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】佐原 邦宏
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特許第7255941(JP,B1)
【文献】実開平02-129201(JP,U)
【文献】実開昭51-136560(JP,U)
【文献】国際公開第2024/038484(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
B01D 17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含油廃水から、再利用可能な油分及び汚泥分を回収する油分及び汚泥分回収タンクであって、
当該油分及び汚泥分回収タンクの側面の底面側に設けられた油分取出弁と、
当該油分及び汚泥分回収タンクの底面より立設された廃固形分除去体と、
前記側面と前記廃固形分除去体とで囲まれた空間であって、前記油分及び汚泥分回収タンク内に貯留している油分を、前記油分取出弁を介して吸引するための吸引スペースと、を備え、
前記廃固形分除去体は、油分を選択的に通す油分選択機能を有する、ことを特徴とする油分及び汚泥分回収タンク。
【請求項2】
前記廃固形分除去体は、上面視でコの字形状を有し、前記油分及び汚泥分回収タンクの底面より立設された3つの四角柱形状の廃固形分除去板から成る、ことを特徴とする請求項1記載の油分及び汚泥分回収タンク。
【請求項3】
前記油分選択機能として、前記廃固形分除去体の表面には複数のパンチング孔が形成され、前記廃固形分除去体の内部空間にはグラスウールが充填されており、
前記廃固形分除去体の底側には、水の圧入防止壁となる薄板が配置される、ことを特徴とする請求項2記載の油分及び汚泥分回収タンク。
【請求項4】
さらに、前記吸引スペース及び前記廃固形分除去体を外側から覆うためのカバー具を備える、ことを特徴とする請求項1又は2記載の油分及び汚泥分回収タンク。
【請求項5】
前記カバー具は、三側面及び上面が板状の侵入防止壁で形成され、一側面及び底面が開放された形状を有し、
前記カバー具の上面には垂直方向に延びるスライドバーが接続される、ことを特徴とする請求項4記載の油分及び汚泥分回収タンク。
【請求項6】
前記油分及び汚泥分回収タンクは、さらに、
着脱可能に設けられ、閉状態において当該油分及び汚泥分回収タンクとの密閉状態を保つ蓋板を備え、
前記カバー具の前記スライドバーは、前記蓋板に形成された貫通孔に貫通し、上下方向に沿ってスライド移動可能である、ことを特徴とする請求項5記載の油分及び汚泥分回収タンク。
【請求項7】
前記カバー具の上面には、フロート板が一体に設けられる、ことを特徴とする請求項4記載の油分及び汚泥分回収タンク。
【請求項8】
前記油分及び汚泥分回収タンクは略直方体形状を有し、
その底面には水を排出するための水排出弁及び汚泥を取り出すための汚泥排出弁を備え、
その側面及び底面の少なくとも一方には、面状に設けられたタンク加温部を備える、ことを特徴とする請求項1記載の油分及び汚泥分回収タンク。
【請求項9】
油水分離槽から上層分を送る給油配管から前記請求項1記載の油分及び汚泥分回収タンクを介して前記油
水分離槽へ戻る循環配管を有し、前記油水分離槽から当該油分及び汚泥分回収タンクを用いて油分及び汚泥分の回収運転を行う、ことを特徴とする油分回収システム。
【請求項10】
前記請求項1記載の油分及び汚泥分回収タンクを備える油分回収システムであって、
前記油分及び汚泥分回収タンクは、さらに、
その底側に分離された残渣及び水分を回収するため、前記油分及び汚泥分回収タンクの底面に設けられた水・残渣回収弁を備え、
前記油分回収システムは、当該水・残渣回収弁に接続され、当該水・残渣回収弁から取り出された水及び残渣を貯留するための水・残渣タンクを有する、ことを特徴とする油分回収システム。
【請求項11】
前記水・残渣タンクは、さらに、
着脱可能に設けられ、閉状態において当該水・残渣タンクとの密閉状態を保つ蓋板を備えることを特徴とする請求項10記載の油分回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場や商業施設から排出されるバイオマス資源である含油廃水から、エネルギー源として再利用可能な油分及び汚泥分を回収するための油分及び汚泥分回収タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場などの製造廃水には、様々の水質汚濁物質(油分)が含まれている。このような廃水を何ら処理することなく排水すると、廃水中の油分などが排水管に付着して固まり、詰まらせたりする。その結果、合併処理槽や下水処理場での水の浄化処理を困難にし、また、環境に悪影響を及ぼし、法的規制を受けて、営業を続けることができなくなる事態ともなり得る。 そこで、油分や沈殿物、浮遊物などの固形分を含む廃水を排出事業所単位で処理する方法、装置が種々提案されている。
【0003】
その方法の一つとして、例えば含油廃水を油水分離槽や原水槽などの大型タンクにプールし、多量に浮いている上層の浮上油脂を定期的に汲み出し、吸着剤で吸着してろ過する等により、廃水中の油分などを物理的に除去する方法、装置である。
【0004】
一方、飲食店、ファーストフード店、レストラン、ホテルなどの商業施設からの廃水にも様々の水質汚濁物質が含まれている。このような廃水を何ら処理することなく排水すると、廃水中の油分などが排水管に付着して固まり、詰まらせるだけでなく、合併処理槽や下水処理場での水の浄化処理を困難にし、また、環境に悪影響を及ぼす。そこで、油分や沈殿物、浮遊物などの固形分を含む廃水を排出する事業所では事業所単位で処理装置(グリストラップや油水分離槽、原水槽)を備えて、廃水を一時的にプールし、固形分を沈降させたり、油分を浮上分離させたりし、定期的にこれらを引き抜き処理する等により物理的に除去することをしている。
【0005】
ところで、例えば、廃油及び廃固形分含有廃水を排出する零細、小規模事業所などで一度回収された廃油からその中に含まれている廃固形分などをさらに選択的に分離、除去して、廃油のみを別の輸送、保管用容器に移送する簡易な装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、含油廃水をプールする油水分離槽の上層分から油分及び汚泥分を、より効率的に回収するための油分及び汚泥分回収タンクも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5452814号公報
【文献】特許第7255941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような含油廃水を油水分離槽などの大型タンクに一時的にプールして定期的にポンプで汲み出し処理する方法・装置、及びグリストラップなどから引き抜き処理を行う方法・装置では、装置の蓋を開けたままの作業が必要となる。この結果、作業中に廃水から悪臭が発生し、これら問題となっている。
【0008】
また、上記従来の方法では、未だに油水分離槽などの大型タンクやグリストラップ内に停留する汚泥分を手作業で回収する作業負担が定期的に生じている。このため、蓋を開けての手作業を要することなく、含油廃水からエネルギー源として再利用可能な油分及び汚泥分を自動的に回収する装置やタンクが未だに実現できていない。
【0009】
さらに、油水分離槽やグリストラップから回収された油分は、余計なゴミなどが精製移送装置において取り除かれてから精製油タンクなどに収容される。しかしながら、油分及び汚泥分を回収する現場において、精製移送装置のセッティング及び片付けが必要で、作業負担が生じるという問題がある。
【0010】
またさらに、近年、地球温暖化の問題が深刻化しており、廃棄物を再利用した再生可能エネルギーが注目されている。食品工場等から排出されるバイオマス資源である廃水油脂は、日本全国で年間30万トン以上もの量になり、全世界を勘案するとさらに膨大な量となる。このため、食品工場等から排出される廃水油脂から、再生利用可能な油分を効率よく、自動的に回収する装置・技術の確立は急務となっている。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、含油廃水を排出する食品工場や商業施設などにオンサイトで設置可能であって、悪臭が発生する原因となる蓋を開けての作業をできるだけ低減しながら、含油廃水から油分及び汚泥分を回収できる油分及び汚泥分回収タンクを提供することを目的とする。また、この油分及び汚泥分回収タンクを利用した油分回収システムを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、含油廃水から、再利用可能な油分及び汚泥分を回収する油分及び汚泥分回収タンクであって、当該油分及び汚泥分回収タンクの側面の底面側に設けられた油分取出弁と、当該油分及び汚泥分回収タンクの底面より立設された廃固形分除去体と、前記側面と前記廃固形分除去体とで囲まれた空間であって、前記油分及び汚泥分回収タンク内に貯留している油分を、前記油分取出弁を介して吸引するための吸引スペースと、を備え、前記廃固形分除去体は、油分を選択的に通す油分選択機能を有することを特徴とする。
【0013】
この油分及び汚泥分回収タンクにおいて、前記廃固形分除去体は、上面視でコの字形状を有し、前記油分及び汚泥分回収タンクの底面より立設された3つの四角柱形状の廃固形分除去板から成ることが好ましい。
【0014】
この油分及び汚泥分回収タンクにおいて、前記油分選択機能として、前記廃固形分除去体の表面には複数のパンチング孔が形成され、前記廃固形分除去体の内部空間にはグラスウールが充填されており、前記廃固形分除去体の底側には、水の圧入防止壁となる薄板が配置されることが好ましい。
【0015】
この油分及び汚泥分回収タンクにおいて、前記吸引スペース及び前記廃固形分除去体を外側から覆うためのカバー具を備えることが好ましい。
【0016】
この油分及び汚泥分回収タンクにおいて、前記カバー具は、三側面及び上面が板状の侵入防止壁で形成され、一側面及び底面が開放された形状を有し、前記カバー具の上面には垂直方向に延びるスライドバーが接続されることが好ましい。
【0017】
この油分及び汚泥分回収タンクにおいて、前記油分及び汚泥分回収タンクは、さらに、着脱可能に設けられ、閉状態において当該油分及び汚泥分回収タンクとの密閉状態を保つ蓋板を備え、前記カバー具の前記スライドバーは、前記蓋板に形成された貫通孔に貫通し、上下方向に沿ってスライド移動可能であることが好ましい。
【0018】
この油分及び汚泥分回収タンクにおいて、前記カバー具の上面には、フロート板が一体に設けられることが好ましい。
【0019】
この油分及び汚泥分回収タンクにおいて、前記油分及び汚泥分回収タンクは略直方体形状を有し、その底面には水を排出するための水排出弁及び汚泥を取り出すための汚泥排出弁を備え、その側面及び底面の少なくとも一方には、面状に設けられた前記油分及び汚泥分回収タンクを加温するタンク加温部を備えることが好ましい。
【0020】
上記目的を達成するために本発明は油分回収システムであって、油水分離槽から上層分を送る給油配管から前記油分及び汚泥分回収タンクを介して前記油水分離槽へ戻る循環配管を有し、前記油水分離槽から当該油分及び汚泥分回収タンクを用いて油分及び汚泥分の回収運転を行うことを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために本発明は油分回収システムであって、前記油分及び汚泥分回収タンクを備える油分回収システムであって、記油分及び汚泥分回収タンクは、さらに、その底側に分離された残渣及び水分を回収するため、前記油分及び汚泥分回収タンクの底面に設けられた水・残渣回収弁を備え、前記油分回収システムは、当該水・残渣回収弁に接続され、当該水・残渣回収弁から取り出された水及び残渣を貯留するための水・残渣タンクを有することを特徴とする。
【0022】
この油分回収システムにおいて、前記水・残渣タンクは、さらに、着脱可能に設けられ、閉状態において当該水・残渣タンクとの密閉状態を保つ蓋板を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、含油廃水から、再利用可能な油分及び汚泥分を回収する油分及び汚泥分回収タンクであって、当該油分及び汚泥分回収タンクの側面の底面側に設けられた油分取出弁と、当該油分及び汚泥分回収タンクの底面より立設された廃固形分除去体と、前記側面と前記廃固形分除去体とで囲まれた空間であって、前記油分及び汚泥分回収タンク内に貯留している油分を、前記油分取出弁を介して吸引するための吸引スペースと、を備え、廃固形分除去体は、油分を選択的に通す油分選択機能を有する。この構成により、本発明では、含油廃水を排出する食品工場や商業施設などにオンサイトで設置可能であって、悪臭が発生する原因となる蓋を開けながらの作業をできるだけ低減しながら、含油廃水から油分及び汚泥分を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る油分及び汚泥分回収タンクを備える油分回収システムの概要を説明する図である。
【
図2】(a)同上油分及び汚泥分回収タンクの底面図、(b)同上油分及び汚泥分回収タンクの側面図、(c)同上油分及び汚泥分回収タンクに備わる油分選択分離機構の拡大平面図、(d)同上油分及び汚泥分回収タンクの側面図である。
【
図3】(a)乃至(d)同上油分及び汚泥分回収タンクに備わる蓋板の説明図である。
【
図4】(a)同上油分及び汚泥分回収タンクに備わる廃固形分除去板の平面図、(b)同上廃固形分除去板及び吸引スペースの説明図である。
【
図5】(a)及び(b)同上油分及び汚泥分回収タンクに備わるカバー具の説明図である。
【
図6】(a)及び(b)同上カバー具の使用方法を説明する図である。
【
図7】同上油分及び汚泥分回収タンクの機能ブロック図を示す。
【
図8】(a)及び(b)同上油分及び汚泥分回収タンクの貯留分の遷移状態を示す図である。
【
図9】(c)及び(d)同上油分及び汚泥分回収タンクの貯留分の遷移状態を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態2に係る油分及び汚泥分回収タンク及び水・残渣回収タンクを備える油分回収システムの概要を説明する図である。
【
図11】(a)同上水・残渣回収タンクの底面図、(b)同上水・残渣回収タンクの側面図、(c)同上水・残渣回収タンクの側面図である。
【
図12】(a)乃至(d)同上油分及び汚泥分回収タンクに備わる蓋板の説明図である。
【
図13】(a)及び(b)同上油分及び汚泥分回収タンクの貯留分の遷移状態を示す図である。
【
図14】(c)及び(d)同上油分及び汚泥分回収タンクの貯留分の遷移状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る油分及び汚泥分回収タンクを備える油分回収システムについて
図1乃至
図9を参照して説明する。この油分及び汚泥分回収タンクは、食品工場などから排出される製造廃水をプールする油水分離槽(原水槽)などに多量に浮いている上層分(浮上油脂)を汲み出して一時的に貯留するタンクである。なお、油水分離槽の上層分には、比重が重い順に水、汚泥分、油分が含まれている。この油分回収システムでは、油水分離槽から汲み出された浮上油脂から効率的に油分及び汚泥分の回収をして、エネルギーの再利用(資源化)を図るものであり、製造廃水を排出する食品工場などにオンサイトで設置される食品工場オンサイト資源化タイプである。
【0026】
最初に、本実施の形態1に係る油分及び汚泥分回収タンク(以下、回収タンクと称する)を備える油分回収システムSに関して
図1を参照しながら説明する。油分回収システムSは、油水分離槽OSと、回収タンクTとを備える。なお、油水分離槽OSは、グリストラップ、オイルトラップ、グリース阻集器などと呼ばれることもあり、基本構造は水と油の比重の違いを利用した自然分離浮上方式が一般的である。
【0027】
油分回収システムSの配管は、油水分離槽OS内の浮上油脂(上層分)を回収タンクTに送油するための流入配管P1(給油経路(矢印Aに対応))、回収タンクT内に貯留する流入水を油水分離槽OSに戻す循環配管P2(戻し経路(矢印Bに対応))を有する。本図に示す循環運転を行う機能により、回収タンクT内における油分、汚泥分を効率的に回収できると共に、流入水を油水分離槽OSに循環させて返水できる。なお、流入配管P1及び循環配管P2には、ポンプが設けられている。
【0028】
回収タンクTは、含油廃水を一時的に貯留する油水分離槽OSの浮上油脂(上層分)が、流入配管P1を介して流入する。また、油水分離槽ОSから流入配管P1を介してポンプ搬送される浮上油脂の流入量を制御する流入弁11を有する。なお、油水分離槽OSからは油水、汚泥分、水が回収タンクT内に流入する。
【0029】
回収タンクTの側面(
図1においては右側面下部)には、油分を専用回収するための例えば25A HTボールバルブなどの油分取出弁OVが設けられる。油分取出弁OVは、例えば円筒形状の下端が回収タンクTの底面から3cmの高さに位置するように、水平状態で固定されている。そして、電磁ポンプなどのポンプを介して、油分取出弁OVを介して回収された油分は、油分に含有された余分な固形物を分離するための精製移送装置12に流入する。
【0030】
回収タンクTは、例えば、横幅1500mm×奥行1100mm×高さ570~650mm(支柱2を含んだ場合の高さは1200mm)であって(おおよそ容量1000L)、底面には、内部に余分なゴミなどが貯留することが無いよう、一方に向かって下がる緩い傾斜面を設けた略直方体形状を有する。なお、回収タンクTの形状は本図の形状に限定されるものではなく、同一機能を有する限り円筒形状などその他の形状でも良い。
【0031】
精製移送装置12は、フィルスター(登録商標)などの遠心分離機能を有し、油分以外の余分な固形物などがトレインカップ内に回収された後、余分な固形物が除かれた綺麗な精製油が、最終的に精製油タンク(例えばIBCコンテナ1000L)13に回収される。
【0032】
回収タンクTの底面には、水分を回収するための例えば40A 電動ボールバルブなどの水排出弁WVが設けられ、排出された水分は排水として、循環配管P2を介して油水分離槽OSに返水される。この際、水の排出量を制御する排出弁14を有しても良い。流入弁11及び排出弁14は例えば電動バルブであって、後述する制御部からの指令信号を受けて弁の開閉状態を制御する。なお、油分取出弁OV及び水排出弁WVは、電動バルブでも、信号指令を受けずに人手で開閉される手動ボールバルブでもどちらでも良い。
【0033】
また、回収タンクTの底側面に、汚泥分を専用的に取り出す汚泥排出弁DVを設けて、回収タンクT内に貯留した汚泥を取り出す。取り出された汚泥は、汚泥除去装置15を介して分離され、この分離した汚泥分を汚泥タンク16に回収する。
【0034】
なお、回収タンクTは、それを中空状態で支えるため、底面側の四隅において鉛直方向に伸長した支柱2を備える。この支柱2によって回収タンクTの上面高さを例えば1200mmにして、作業員による油分及び汚泥分の回収作業を容易化する。
【0035】
回収タンクTの上面には、
図3に示すように、3枚の板状の蓋板3が着脱可能に設けられている。蓋板3は、
図3に示すように、夫々の四隅がパッキン32を介してノブボルト33を用いて開閉可能に固定されている。蓋板3は、通常は回収タンクTの密閉状態を保ち、匂いなどが外部に放出されない状態が保たれている。一方、必要に応じてノブボルト33を外すことで蓋板3を取り外して、回収タンクT内部の清掃作業や回収タンクT内部を目視して確認できる。なお。蓋板3の形状は本図では矩形状であるが正方形や円形などその他の形状でも良い。
【0036】
回収タンクTには、その底面及び前後左右の側面を加温するニッケル合金をシリコンラバーシートで挟み込んだ面形状のシリコンラバーヒータ(三相200V)などのタンク加温部Hと、回収タンクT内の温度を検知する温度センサTSと、回収タンクTの底面において油分を検知する油検知センサОDSと、を備える。
【0037】
タンク加温部Hは、例えば回収タンクTの側面及び底面の5面に沿って面状に設けられ、加温部のオン/オフに関しては側面・底面で選択可能にする。温度センサTSは、例えば半導体などの電気抵抗が温度で変化することを利用して回収タンクT内の貯留分の温度を測る温度センサである。油検知センサОDSは、回収タンクTの所定位置(例えば底部側)における油分の存在を検知するセンサであり、例えば、光ファイバを用い、油が付着する伝搬光が外部に散乱もしくは油に吸収され伝搬光が減衰することによる出力変化を検知する。
【0038】
なお、タンク加温部Hの表層側には、パッキンやネジを用いてSUS(ステンレス鋼)防水カバーが設けされ、その内部に断熱材を封入する構造を有している。このように、断熱材を封入することによって、回収タンクTの内部の温度を65~70度程度の範囲に長時間維持することができ、その結果、回収タンクT内の油分、汚泥分、水分の効率的な分離を促進できる。
【0039】
回収タンクTは、その内部の水層と油泥層(油分や汚泥の混合物)との境界面を検知可能なレベル計であるフロートセンサFSを備える。このフロートセンサFSは、フロート(浮き)が油泥の重みで上下することを利用し、回収タンクTの中に貯蔵されている水層と油泥層との境界面を測る計測器であり、回収タンクT中にある水層と油泥層との境界面を正確に測る働きをしている。このフロートセンサFSによって、回収タンクT内のおおよその油分及び汚泥の分量を検知できる。
【0040】
次に、本実施の形態1に係る回収タンクTの内部に備わる油分選択分離機構S1に関して
図4乃至
図6を参照しながら説明する。回収タンクTには、
図4で示すように、3つの四角柱形状の廃固形分除去板4a~4cが連設されて上面視でコの字形状を有する廃固形分除去体4がその底面より立設されている。そして、この廃固形分除去体4と油分取出弁OVが形成された側面とで油分の吸引スペースASが形成される。なお、廃固形分除去体4は上面視でコの字形状に限定されるものではなく、上面視で半円形状などその機能を備えていれば他の形状でもよい。
【0041】
この廃固形分除去体4は、回収タンクTの底面から所定高さ(例えば高さ250mm)で立設され、例えば上面視における長辺500mm×短辺350mm程度の大きさである。吸引スペースASは、長辺300mm×短辺250mm×高さ250mm程度(例えば容量は18.75L)の大きさを有する。
【0042】
この廃固形分除去体4(3つの廃固形分除去板4a~4cも同様)は、油分選択機能を備えている。ゴミや浮遊物などの廃固形分を濾過して除去できる金属製や合成樹脂製の網目構造(例えば、グラスウールやステンレスのパンチング)を有する。具体的には、油分選択機能として、廃固形分除去体4の表面には複数のパンチング孔42が形成され、内部空間には充填材となるグラスウール43が充填されている。なお、この形状は、油分を選択的に吸引できる限り、その他の構造や形状であっても良い。
【0043】
また、廃固形分除去体4の下側から50mm程度には、
図4(b)に示すように、水の圧入防止壁となるSUS(ステンレス鋼)製の薄板41を溶接しても良い。この薄板41によって、たとえ回収タンクTの底部に水分が残った状態で廃固形分除去体4が外側から水圧を受けたとしても、吸引スペースAS側に水分が流入することが無く、ひいては、吸引スペースASに水か流入することを防止できる。なお、吸引スペースAS側に水が流入することを想定し、水排出弁WV及び油検知センサを吸引スペースAS内の底面側に設けて、吸引スペースASへの流入水を排出することも考え得る。
【0044】
回収タンクTは、さらに、
図5に示すように、廃固形分除去体4により形成された吸引スペースAS及び廃固形分除去体4を外側から覆うためのカバー具5も備える。このカバー具5は、三側面及び上面が板状の侵入防止壁51で形成され、一側面及び底面が開放された直方体形状を有し、カバー具5の上面には垂直方向に伸延したスライドバー52が接続される。そして、回収タンクTの蓋板3に形成された貫通孔32に、このスライドバー52が貫通することで、カバー具5が上下方向に沿ってスライド移動可能となる。カバー具5は、最下方に位置した際に、廃固形分除去体4(すなわち吸引スペースAS)を外側から覆う形状を有する。
【0045】
なお、カバー具5の上面には、
図5(b)に示すように、フロート板53を一体に設けても良い。このフロート板53の構成により、カバー具5は、フロート板53から離脱することなく上下動でき、回収タンクT内部に流入した油分などの重みでカバー具5が沈み込むことを防止できる。フロート板53は、具体的には本実施の形態1では発泡スチロール板である。
【0046】
次に、カバー具5の使用方法に関して
図6を参照しながら説明する。最初に、油水分離槽OSから浮上油脂の流入時~回収タンクTのタンク加温部Hを用いた加温時には、
図6(a)に示すように、廃固形分除去体4を外周から覆うようにカバー具5を最下端にスライド移動させる。このことで、廃固形分除去体4への汚泥付着を防止して、廃固形分除去体4が汚れて、油分の回収効率が低下することを適切に防止できる。
【0047】
一方、
図6(b)に示すように、油分取出弁OVからの油分の回収時には、スライドバー52を用いて、油分と廃固形分除去体4とが接するように(すなわち油分が吸引スペースASに侵入可能となるように)カバー具5を上方にスライド移動させる。このことによって、廃固形分除去体4と回収タンクT内に貯留している油分とが接する、若しくは、吸引スペースASの上面側から油分が流入可能となる。
【0048】
次に、
図7を参照して回収タンクTに備わる制御盤に備わるECU(Electronic Control Unit)31の機能に関して説明する。なお、本実施の形態1に係る回収タンクTにおいて制御盤は必須の構成ではない。また、制御盤は、回収タンクTに一体的に備え付けても構わないし、回収タンクTとは別体としても構わない。
【0049】
ECU31は、流入弁11を開状態にすることで油水分離槽OSからの含油廃水を、回収タンクTに流入させる。また、流入弁11が閉じられたらタンク加温部Hの加熱動作を開始するように制御する。また、温度センサTSの検知温度が所定温度(65-70度)に達したらタンク加温部Hの加熱動作を停止するように制御する。このことで、タンク加温部Hがオン/オフ運転を繰り返すように制御する。
【0050】
その後、ECU31は、水排出弁WVの弁開度を開くように制御する。このことで、回収タンクTから水分のみを効率的に油水分離槽OSに返送できる。
【0051】
また、その後、ECU31は、回収タンクTの底面に設けられた油検知センサОDSで油分が検知された場合に、カバー具5を上方に人力/電動でスライド移動させて、その後、油分取出弁ОVを開く。このことで、回収タンクTから油分のみを効率的に精製移送装置12に送ることができる。
【0052】
具体的には、ECU31は、
図7に示すように、制御部31a、所定量演算部31b、信号送信部31c及び入力部31dを備える。制御部31aは、回収タンクT内に充填された浮上油脂を加温して油分、汚泥分及び水分に効率的に分離するため、油検知センサОSの油検知信号の受信の要否を判定し、油検知信号を受信した場合には信号送信部31cを介してタンク加温部Hに運転開始の制御信号を送信する。
【0053】
所定量演算部31bは、各種パラメータ情報(回収タンクTの容量、流入弁11からの流入量、排出弁14からの排出量、TSの温度、及び油検知)に基づいて所定値の演算処理を行う。信号送信部31cは、タンク加温部Hに対して加熱動作のオン/オフ制御信号を送信する。また、流入弁11及び排出弁14に対して弁開度の調整信号を送信する。制御盤に備わる入力部31dは、操作設定器やリモコンなどであり、所定量演算部31bでの所定量の演算に必要な各種パラメータ情報の入力や、所定量の入力設定も可能とする。
【0054】
次に、本実施の形態1に係る回収タンクT内の貯留分の遷移状態に関して
図8及び
図9を参照しながら説明する。最初に、油水分離槽ОSからの回収タンクTへの浮上油脂の流入を行い、フロートセンサFSなどで検知される液面レベルが所定位置に達すると、流入弁11を閉じる。なお、この流路の切り替えは手動で行ってもよい。また、この際、カバー具5は最下方で位置が固定されている。
【0055】
次に、タンク加温部Hの始動を開始して、流入分を70度程度になるまで加温する。70度程度にまでなると比重が重い順番に分離されて、流入した浮上油脂は、
図8(a)に示すように、下層から水、含油浮遊汚泥(いわゆるブラックオイル)、及び油分の層に分離される。
【0056】
そして、タンク本体に備えらえた温度センサTSが例えば70度に到り、廃水への加温が完了(即ち各層への分離状態が完了)すると、回収タンクTの底面に形成された水排出弁WVを開き、回収タンクT内の底面側にある水が、油水分離槽OSに排出弁14を介して返送される。そして、流入水の取り出しを完了すると、
図8(b)に示すように、回収タンクT内には下層から、汚泥(含油浮遊汚泥)、及び油分が貯留されている。この汚泥分は
図8(b)に示すような回収タンクTの底面側に形成された汚泥排出弁(手動バルブ)DVを介して手動で回収してもよい。
【0057】
なお、取り出された含油浮遊汚泥は、産業廃棄物に該当するため、汚泥産廃タンクに収容して産廃汚泥として処理できる。この汚泥分は、例えばバイオガス化(メタン発電、クリーン水素)に用いることが可能であり、この未活用となっている汚泥分の資源化の第一歩は、メタン発酵を行うバイオガスプラントにおけるバイオガス化(メタン発電、グリーン水素)などが想定される。
【0058】
そして、この汚泥層の排出によって油分が落下貯留するが、回収タンクTの底面側まで油分が落下すると、回収タンクTは
図9(c)に示す状態となり、油分センサОSにおいて油分が検知される。すると、油分の精製・移送ランプが点灯などして、作業員は汚泥排出弁(手動バルブ)DVを閉じる。なお、汚泥排出弁(手動バルブ)DVを自動的に閉じる制御を行っても良い。
【0059】
そして、
図9(c)に示すように回収タンクT内に油分が貯留されている状態になると、作業員は、カバー具5の固定を外すとフロート板53の作用のよってカバー具5の上面が油分上まで自動で浮上する。または、作業員が例えば、廃固形分除去体4の高さ350mm程度、若しくはこれ以上であって吸引スペースASの上面とカバー具5の底面との間に隙間ができる程度上方にスライド移動させても良い。その後、油分取出弁OVを開放し、且つ電動ポンプをオン状態にする。
【0060】
すると、回収タンクT内の油分が自動的に回収されて、回収タンクT内部は
図9(d)に示す状態に遷移する。なお、回収された油分は、精製移送装置12を用いて細かなゴミが除去されたきれいな精製油状態となり精製油タンク13に回収される。
【0061】
なお、従来は、例えば特許第5452814号に示される廃固形分、廃油夾雑物、廃水層分離器である精製移送器であって、これをタンク内に上部から都度蓋部を開けて投入することで、廃油の中に含まれている廃固形分、廃油夾雑物、廃水分などをさらに選択的に分離、除去して、石油代替燃料として利用可能な廃油のみを別の輸送、保管用容器に移していた。一方、本発明では、都度、回収タンクTの蓋板3を開けて、回収タンクT内の油分層のみを効率的に回収する精製移送器を投入する必要性が無くなり、作業効率を改良できると共に、蓋部を開ける頻度が非常に減るため、匂いが発生しにくくなる。
【0062】
このような手順で、回収タンクT内の油分、汚泥分及び水分が分離され、一連の回収作業が完了する。この後は、同一施設内に設けられた油水分離槽OSの容量が一杯になると、
図8(a)乃至(d)の繰り返しとなり、回収タンクTへの移動を行い、効率的に油分、汚泥分の分離・回収が自動的に繰り返される。
【0063】
以上の説明のように、本発明は、含油廃水から、再利用可能な油分及び汚泥分を回収する油分及び汚泥分回収タンクTであって、油分及び汚泥分回収タンクTの側面の底面側に設けられた油分取出弁OVと、上面視でコの字形状を有して油分及び汚泥分回収タンクTの底面より立設された3つの四角柱形状の廃固形分除去板4a~4cから成る廃固形分除去体4と、前記側面と廃固形分除去体4とで囲まれた空間であって油分及び汚泥分回収タンクT内に貯留している油分を油分取出弁OVを介して吸引するための吸引スペースASと、を備え、廃固形分除去体4は、油分を選択的に通す油分選択機能を有する。
【0064】
この構成により、本実施の形態に係る回収タンクTでは、(1)蓋板3をほとんど開けずに廃水油脂から油分の回収(資源化)作業ができ、匂いが発生しにくい。(2)施設内にオンサイトで回収タンクTを導入するだけで、油分精製移送も、汚泥分除去も、自動化に近くでき、都度作業員が手作業をする作業負担が無くなり、廃水油脂からの再資源化を完結できる。
【0065】
言い換えると、回収タンクTは、含油廃水を排出する食品工場などに省エネ及び省スペース且つオンサイトで設置され、含油廃水をプールする油水分離槽OSから油分及び汚泥分を、匂いの発生を防ぎながら、ほぼ自動的に抽出・回収・資源化できる。また、食品工場は、毎日数トンの浮上油脂が発生している事業所もあり、本発明のような回収タンクTを工場敷地内にオンサイト型の設備を設置することで、オンサイトで資源化するサービスを提供できる。
【0066】
さらに、回収タンクTに設けられた汚泥排出弁(手動バルブ)DVを介して汚泥分を抽出し、効率よく回収できる。またさらに、回収タンクTに流入した流入水分はそのまま循環配管P2を介して油水分離槽OSへ戻すことができる。
【0067】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る油分回収システムについて
図10乃至
図14を参照して説明する。この油分回収システムS2では、油分や沈殿物、浮遊物などの固形分を含む廃水を排出する商業施設、ファーストフードチェーンなどの飲食店や燃料製造工場において用いられる。本実施の形態2に係る油分及び汚泥分回収タンクTは、従来、事業所単位で備えらえた処理装置(例えばグリストラップ(Grease trap:グリース阻集器))にプールされた浮上油脂や汚泥を一時的に貯留するタンクの役目も有する。
【0068】
また、この油分回収システムS2は、プールされた廃水から水分やゴミが除去されて、効率的に油分及び汚泥分、その他の回収をして、エネルギーの再利用(資源化)を図るものである。この油分回収システムS2は、燃料製造工場及び商業施設内(例えば、ファーストフードチェーン店)など施設内オンサイトとして設置できる。なお、例えばフィールド代理店(出願人が独自のノウハウを提供し、指導・育成、認定した専門業者)が、飲食店のグリストラップ清掃管理を行い、且つこの油分回収システムS2を管理するサービスを提供しても良い。
【0069】
次に、本実施の形態2に係る油分回収システムS2に関して
図10を参照しながら説明する。本油分回収システムS2では、上述した実施の形態1における回収タンクT以外に、水・残渣タンクWRTが併設されている。なお、本実施の形態2に係る回収タンクTにおいてはフロートセンサは必須ではないが、その他の構成は上述した実施の形態1とほぼ同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0070】
この水・残渣タンクWRTは、回収タンクTを加温した際に、底側に分離された残渣及び水分を、回収タンクTの底面に設けられた水・残渣回収弁(例えば、40A電動ホールバブル水抜)WIから取り出し、貯留するためのタンクである。水・残渣タンクWRTは、例えば、横幅1500mm×高さ570~650mm×奥行1100mm(容量は約300L)であって、直方体形状を有する。なお、水・残渣タンクWRTの形状は本図の形状に限定されるものではなく、同一機能を有する限り円筒形状などその他の形状でも良い。
【0071】
図12に示すように、水・残渣タンクWRTは、その上面に着脱可能な複数の蓋板6を備える。この蓋板6は、パッキン61を介してノブボルト62を用いて、水・残渣タンクWRTの上面に固定される。また、側面には40Aソケットなどの水・残渣取出弁W2が設けられる。
【0072】
なお、実施の形態2の回収タンクTには、グリストラップなどから廃水が直接入されるため、その上層に、浮上ゴミが残ることも想定される。その際、回収タンクTの側面に専用に設けられた比較的に径の大きな浮上ゴミ回収用弁(手動弁)を設けて、当該弁から吸引ポンプを用いて、効率的に浮上ゴミを取り出しても良い。又は、浮上ゴミは回収タンクTの蓋板6を定期的に開けて手作業により回収しても構わない。
【0073】
次に、本実施の形態2に係る回収タンクT内の貯留分の遷移状態に関して
図13及び
図14を参照しながら説明する。最初に、グリストラップなどからの廃水が、回収タンクT内に移される。この移送は同一施設内で行われるものであり、作業員が専用具を用いて手作業で行っても良いし、電動ポンプのスイッチをオンすることで流入配管を介して自動的に行われても良い。
【0074】
次に、廃水が回収タンクT内部の所定量まで到ると、タンク加温部Hの始動を開始して、流入分を70度程度になるまで加温する。70度程度にまでなると、廃水は、
図13(a)に示すように、下層から残渣、水、含油浮遊汚泥(いわゆるブラックオイル)、油分、及び浮上ゴミの層に分離される。
【0075】
そして、廃水への加温が完了(即ち各層への分離状態が完了)すると、回収タンクTの底面に形成された水・残渣取出弁W1を開き、回収タンクT内の底面側にある残渣及び水が、水・残渣タンクWRTに移送される。回収タンクT内の残渣及び流入水が取り出されると、
図13(b)に示すように、回収タンクT内には下層から、汚泥、油分及び浮上ゴミが貯留されている。
【0076】
なお、排出された残渣及び水は、水・残渣タンクWRTに一時的に貯留される。残渣は水・残渣タンクWRTの側面底部に形成された40A HTホールバルブなどを介して、水・残渣タンクWRT外に排出されて専用タンクに回収されて、産廃処分可能となる。一方、水分は例えば、精製移送装置12などを用いて不純ゴミなどが取り除かれた状態で排水処理リアクタ17に排水される。
【0077】
次に、汚泥層が含まれている場合には、
図13(b)に示すような汚泥分が回収タンクTの底面側に貯留した状態となり、この汚泥分は手動バルブ18を用いて手動で回収してもよい。なお、回収された汚泥分は、汚泥除去装置15を介して、汚泥産廃タンク(例えば、ローリータンク16(W800mm×L630mm×H630mm、容量200L))に収容されて、産廃処理が可能となる。
【0078】
そして、この汚泥層の排出によって油分が落下貯留するが、回収タンクTの底面側まで油分が落下すると、回収タンクTは
図14(c)に示す状態となり、油分センサOSにおいて油分が検知される。すると、油分の精製・移送ランプが点灯するため、作業員は、スライドバー52を用いてカバー具5の固定を解放する。すると、フロート板53の作用のよってカバー具5の上面が油分上まで自動で浮上し、その後、油分取出弁ОVを開放し、且つ電動ポンプをオン状態にする。
【0079】
すると、回収タンクT内の油分のみが回収されて、回収タンクT内部は
図14(d)に示す状態に遷移する。なお、回収された油分は、精製移送装置12を用いて余分なゴミが除去されたきれいな精製油となり、精製油タンク(IBCコンテナ)13に回収される。
【0080】
なお、
図14(d)に示す状態に溜まる浮上ゴミは廃固形分除去体4及びカバー具5があるために油分の吸引スペースAS側に侵入することはない。例えば、浮上ごみが混同している場合、フロートセンサFSで検知した液面レベルに合わせて、カバー具5を上下動させることで、浮上ごみが吸引スペースASに侵入することを適切に防止できる。この浮上ゴミは、定期的又は所定量に到ると、例えば回収タンクTの底面側に設けられた専用の取出口から取り出したり、又は作業員が回収タンクTの蓋板3を開けて手作業での回収を行う。
【0081】
このように、本実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、都度、回収タンクTの蓋板3を開けて精製移送器を投入する必要性が無くなり、作業効率を改良できる。また、回収タンクTの蓋板3や、水・残渣タンクWRTの蓋板6を開けずに油分の回収(資源化)作業ができるため、匂いが発生しにくくなる。
【0082】
このような手順で、回収タンクT内の水分、汚泥分及び油分が分離され、一連の回収作業が完了する。この後は、グリストラップなどの容量が一杯になると、廃水が回収タンクTへ輸送されて、
図13(a)に示す状態から繰り返される。
【0083】
以上の説明のように、本実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、(1)回収タンクTの蓋板3や水・残渣タンクWRTの蓋板6を開けずに資源化作業ができるため、匂いが発生しにくくなる。(2)油分精製移送も、汚泥分除去も、自動化に近く、作業負担が無くなる。(3)回収タンクTは、水・残渣タンクWRTを備えるため、たとえ回収タンクT内に残渣が流れ込んだとしても、水・残渣は水・残渣タンクWRTに容易に移送・管理することが可能となる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、油分の回収スピードを速めるため、油分及び汚泥分回収タンクTに複数の油分選択分離機構S1を設けることもできる。
【符号の説明】
【0085】
S,S2 油分回収システム
S1 油分選択分離機構
T 油分及び汚泥分回収タンク(回収タンク)
ОV 油分取出弁
OS 油水分離槽
AS 吸引スペース
H タンク加温部
WRV 水・残渣回収タンク
W1 水・残渣回収弁
WV 水排出弁
DV 汚泥排出弁
P1 給油配管
P2 循環配管
3,6 蓋板
4 廃固形分除去体
4a~4c 廃固形分除去板
5 カバー具
11 流入弁
14 排出弁
32 貫通孔
41 薄板
42 パンチング孔
43 グラスウール
51 侵入防止壁
52 スライドバー
53 フロート板
【要約】
【課題】含油廃水を排出する食品工場などにオンサイトで設置可能であって、悪臭が発生する原因となる蓋を開けての作業をできるだけ低減しながら、含油廃水から油分及び汚泥分を回収できる油分及び汚泥分回収タンクを提供する。
【解決手段】油分及び汚泥分回収タンクは、その側面の底面側に設けられた油分取出弁ОVと、上面視でコの字形状を有して油分及び汚泥分回収タンクの底面より立設された3つの四角柱形状の廃固形分除去板4a~4cから成る廃固形分除去体4と、側面と廃固形分除去体4とで囲まれた空間であって油分及び汚泥分回収タンク内に貯留している油分を油分取出弁OVを介して吸引するための吸引スペースASと、を備える。
【選択図】
図4