(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22F 1/08 20060101AFI20250210BHJP
C22C 9/02 20060101ALI20250210BHJP
C22C 1/02 20060101ALI20250210BHJP
C22C 9/06 20060101ALI20250210BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20250210BHJP
【FI】
C22F1/08 G
C22C9/02
C22C1/02 503B
C22C9/06
C22F1/00 602
C22F1/00 612
C22F1/00 625
C22F1/00 630A
C22F1/00 630D
C22F1/00 630K
C22F1/00 631B
C22F1/00 641B
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
(21)【出願番号】P 2023579625
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2022135122
(87)【国際公開番号】W WO2023165187
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】202211474392.6
(32)【優先日】2022-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521174129
【氏名又は名称】河南科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】周延軍
(72)【発明者】
【氏名】宋克興
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼少丹
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲ラン▼
(72)【発明者】
【氏名】周菲
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼学賓
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼彦敏
(72)【発明者】
【氏名】郁炎
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲紀▼▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼江
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼朝民
(72)【発明者】
【氏名】李韶林
(72)【発明者】
【氏名】肖柱
(72)【発明者】
【氏名】郭慧穏
(72)【発明者】
【氏名】朱▲倩▼▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】岳▲鵬▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼国▲賞▼
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114134364(CN,A)
【文献】特開2016-204708(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106834795(CN,A)
【文献】特開2019-065362(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107779660(CN,A)
【文献】特表2019-524985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 9/06
C22C 9/02
C22C 1/02
C22F 1/00
C22F 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Ni:7~20%、Sn:4~12%、Si:0.3~1.2%、Al:0.2~3.0%、Nb:0.02~0.5%、Mn:0.2~2.0%及びFe:0.2~2.0%を含有し、残部がCuである石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金
の製造方法であって、
前記石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、引張強さが1000MPa以上であり、伸び率が3%以上であり、磨耗率が0.1mg/m以下であり
、
まず、電解銅を溶融炉に添加させ、電解銅を完全に溶融させた後、Ni源を添加させ、更にNb源、Mn源、Fe源及びSi源を添加させ、最後にAl源及びSn源を添加させ、1150~1250℃で30~50min溶解させ
る、溶解であるステップ1と、
前記ステップ1で処理した溶湯を鏡面状にした後、1~3min静置し、静置終了後、溶湯を金属鋳型に注湯させ、溶湯を凝固させ、インゴットを得
る、注湯であるステップ2と、
前記インゴットに対して、均一なアニール、熱間押出変形、溶体化熱処理、冷間伸線変形及び時効熱処理を行
う、ステップ3と、
を含み、
前記ステップ2において、前記注湯の温度が1200~1300℃であり、注湯終了後、金属鋳型の外に電磁界を印加するステップも含
まれ、前記電磁界の電流印加範囲が20~100Aであり、
前記均一なアニールの温度が900~950℃であり、熱間押出変形の温度が850~950℃であり、溶体化熱処理の温度が750~900℃であり、冷間伸線変形量が50%~90%であり、時効熱処理の温度が300~500℃である、
ことを特徴とする石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金
の製造方法。
【請求項2】
前記石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金において、微量元素であるO、S及びPの含有量として、それぞれ、Oが5ppm以下であり、Sが3ppm以下であり、Pが3ppm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金
の製造方法。
【請求項3】
重量%で、Ni:15%、Sn:8%、Si:0.8%、Al:1.2%、Nb:0.3%、Mn:0.5%及びFe:0.5%を含有し、残部がCuである、ことを特徴とする請求項2に記載の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金
の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ1において、前記電解銅におけるCuが99.95wt%以上であり、
前記Ni源が電解ニッケルであり、前記電解ニッケルにおけるNiが99.96wt%以上であり、
前記Nb源がCu-Nb中間合金であり、
前記Mn源がCu-Mn中間合金であり、
前記Fe源がCu-Fe中間合金であり、
前記Si源が純シリコンであり、Siが99.99wt%以上であり、
前記Al源が純アルミニウムであり、Alが99.7wt%以上であり、
前記Sn源は純錫であり、Snが99.99wt%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金
の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ1において、溶融炉において、融液面が木炭で完全に覆われ、且つ純リン脱酸素剤を用いて脱酸素し、
前記純リン脱酸素剤において、リンの含有量が99.85%~99.95%であり、
前記純リン脱酸素剤の使用量が溶湯総重量の0.1%~0.5%であり、
溶解プロセスにおいて、石墨撹拌棒を用いて攪拌し、スラグ掻き取り棒を用いてスラグを掻き取るステップも含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属材料技術分野に属し、具体的には石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅合金は、良好な伝導性能、力学性能、冷/熱加工性能、耐摩耗性能及び耐腐食性能を持つため、しばしば、機能構造一体化材料として、電子情報、軌道交通、海洋工事、石油およびガス採取などの分野に広く応用されている。ただし、石油石化産業は、国民経済発展の重要な支えとして、石油掘削用MWD、LWD掘削工具、及び石油掘削ガイドロッド、電気ポンプアセンブリ、探査プローブ、深海防爆、分離可能な接続弁などの各種類の石油掘削器具及び設備部材が、主に銅合金材料を使用しており、それは、高温、高圧、高負荷、高安定などの過酷な作業状況の下で、銅合金材料に高い強度、高い耐摩耗性、および耐高温、無磁性防爆などの特性が求められる。長い間にわたって、上記の分野で使用されてきた銅合金材料の高強度耐摩耗耐久性の向上は、業界の発展を悩ませる鍵となる問題である。
【0003】
よく用いられる耐摩耗銅合金には、主に、黄銅、錫青銅、アルミニウム青銅、ベリリウム青銅などを有している。ただし、Cu-Ni-Sn基合金は、優れた力学性能、耐摩耗性能及び耐腐食性能を有するため、石油天然ガス、海洋工学、電子電器、機械製造などの分野に広く応用されている。しかし、この合金系におけるSn含有量が高く、融点が低く、合金結晶温度範囲が広いため、通常の溶融鋳造条件下でマクロ成分偏析及びミクロデンドライト偏析が発生しやすく、後続の加工変形に不利であり、同時に、材料の総合性能の向上が困難である。従って、如何に合金化設計によって、溶融鋳造プロセスの改善を結合して、Cu-Ni-Sn合金を基に成分及びミクロ組織偏析を抑制して、強度及び耐摩耗性能を高めることは、石油およびガス採取用高性能銅合金材料の開発に対して重要な意義がある。
【0004】
したがって、上記従来技術の不足に対して改善した技術案を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術におけるCu-Ni-Sn合金のマクロ成分偏析またはミクロデンドライト偏析を発生しやすいことと、後続の加工変形に不利であることと、強度、耐摩耗性を向上させる必要があることとの少なくとも1つの問題を解決または改善するための石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を提供する。重量%で、Ni:7~20%、Sn:4~12%、Si:0.3~1.2%、Al:0.2~3.0%、Nb:0.02~0.5%、Mn:0.2~2.0%及びFe:0.2~2.0%を含有し、残部がCuである、石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金。
【0007】
本発明は、上記した石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法をさらに提供し、それは、以下の技術案を採用する。上記のような石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法は、まず、電解銅を溶融炉に添加させ、電解銅を完全に溶融させた後、Ni源を添加させ、更にNb源、Mn源、Fe源及びSi源を添加させ、最後にAl源及びSn源を添加させ、1150~1250℃で30~50min溶解させる、溶解であるステップ(1)と、ステップ(1)で処理した溶湯を鏡面状にした後、1~3min静置し、静置終了後、溶湯を金属鋳型に注湯させ、溶湯を凝固させ、インゴットを得る、注湯であるステップ(2)と、前記インゴットに対して、均一なアニール、熱間押出変形、溶体化熱処理、冷間伸線変形及び時効熱処理を行う、ステップ(3)と、を含む。
【有益な効果】
【0008】
本発明は、マイクロ合金化手段によって、Cu-Ni-Sn合金基体にシリコン(Si)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)などの多種類の合金元素を添加させ、多種類の元素の協同作用下で、合金凝固組織におけるミクロ偏析を改善し、合金の強度及び耐摩耗性能を協力して向上させる。ただし、Si元素の添加は、合金凝固時の逆偏析の形成を抑制し、微小結晶粒を得て、合金の熱/冷加工性能を高めることができ、且つ、Si及びNiによりシリーズのNiSi強化相を形成して合金強度を高める。Al元素及びNi元素は、シリーズのNiAl強化相を形成し、合金の力学性能を著しく向上させることができる。Nb元素は、合金の振幅変調分解プロセスを促進させ、合金の抵抗回復及び再結晶軟化能力を高め、且つ、結晶内及び結晶界にはNbリッチのγ相が形成され、時効プロセスにおいて結晶粒の成長及び不連続沈殿の形成を顕著に抑制し、合金強度及び耐摩耗性能を高めることができる。Mn元素は、鋳造状態の結晶粒組織を細分化し、合金時効硬化ピーク強度を高め、且つ粒界反応及び結晶粒粗化を抑制し、合金強度及び耐摩耗性能を著しく高めることができる。微量Feの添加は、合金の変形熱処理プロセスを加速させ、強化効果及び耐摩耗性能を高めることができる。
【0009】
本発明の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金に対しては、以下の有益な効果を有する。(1)合金成分が均一であり、鋳造状態ミクロ組織のデンドライト間隔が小さくなり、分布がより均一であり、且つ配置方向がより一致する。(2)優れた力学性能:強度が1000MPa以上であり、伸び率が3%以上である。(3)優れた耐摩耗性能:磨耗率が0.1mg/m以下である。本発明の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、特に石油およびガス採取の鍵となる部材への応用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】製造される通常のCu-15Ni-8Sn合金ミクロ組織図である。
【
図2】本発明の実施例1により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金のミクロ組織図である。
【
図3】本発明の実施例2により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金のミクロ組織図である。
【
図4】本発明の実施例3により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金のミクロ組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例を組み合わせて本発明を詳細に説明する。なお、衝突しない場合、本発明における実施例及び実施例における特徴を互いに組み合わせてもよい。
【0012】
本発明は、従来技術におけるCu-Ni-Sn合金のマクロ成分偏析またはミクロデンドライト偏析を発生しやすいことと、後続の加工変形に不利であることと、強度及び耐摩耗性を向上させる必要があることとの少なくとも1つの問題に対して、重量%で、Ni:7~20%、Sn:4~12%、Si:0.3~1.2%、Al:0.2~3.0%、Nb:0.02~0.5%、Mn:0.2~2.0%及びFe:0.2~2.0%を含有し、残部がCuである、石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金を提供する。
【0013】
本発明の好ましい実施例では、石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金において、微量元素であるO、S及びPの含有量として、それぞれ、Oが5ppm以下であり、Sが3ppm以下であり、Pが3ppm以下である。
【0014】
本発明の好ましい実施例では、石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、重量%で、Ni:15%、Sn:8%、Si:0.8%、Al:1.2%、Nb:0.3%、Mn:0.5%及びFe:0.5%を含有し、残部がCuである。
【0015】
本発明の好ましい実施例では、石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、引張強さが1000MPa以上であり、伸び率が3%以上であり、磨耗率が0.1mg/m以下である。
【0016】
本発明は、石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法をさらに提供し、本発明の実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法は、まず、電解銅を溶融炉に添加させ、電解銅を完全に溶融させた後、Ni源を添加させ、更にNb源、Mn源、Fe源及びSi源を添加させ、最後にAl源及びSn源を添加させ、1150~1250℃で30~50min溶解させる、溶解であるステップ(1)と、ステップ(1)で処理した溶湯を鏡面状にした後、1~3min静置し、静置終了後、溶湯を金属鋳型に注湯させ、溶湯を凝固させ、インゴットを得る、注湯であるステップ(2)と、前記インゴットに対して、均一なアニール、熱間押出変形、溶体化熱処理、冷間伸線変形及び時効熱処理を行う、ステップ(3)と、を含む。
【0017】
本発明の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法の好ましい実施例では、ステップ(1)において、電解銅におけるCuが99.95wt%以上であり、Ni源が電解ニッケルであり、電解ニッケルにおけるNiが99.96wt%以上であり、Nb源がCu-Nb中間合金であり、Mn源がCu-Mn中間合金であり、Fe源がCu-Fe中間合金であり、Si源が純シリコンであり、Siが99.99wt%以上であり、Al源が純アルミニウムであり、Alが99.7wt%以上であり、Sn源は純錫であり、Snが99.99wt%以上である。
【0018】
本発明の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法の好ましい実施例では、ステップ(1)において、溶融炉において、融液面が木炭で完全に覆われ、(溶解プロセス中)純リン脱酸素剤を用いて脱酸素し、純リン脱酸素剤において、リンの含有量が99.85%~99.95%であり、純リン脱酸素剤の使用量が溶湯総重量の0.1%~0.5%であり、溶解プロセスにおいて、石墨撹拌棒を用いて攪拌し、スラグ掻き取り棒を用いてスラグを掻き取るステップも含む。ただし、リン元素は溶融体における酸素と優先的に反応するため、純リン脱酸素剤を適量添加することは、溶融体の浄化の役割を果たすことができるが、添加量が高すぎると(溶融体の総重量の0.5%を超える)、多すぎるリンは合金に残留して材料の脆性が増大し、後続の塑性変形に不利である。
【0019】
本発明の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法の好ましい実施例では、ステップ(2)において、注湯の温度が1200~1300℃であり、注湯終了後、金属鋳型の外に電磁界を印加するステップも含み、電磁界の電流印加範囲が20~100Aである。ただし、注湯温度は材料の溶融鋳造段階での重要なパラメータであり、注湯温度が低すぎると、溶融体の流動性が悪く、注湯不満や縮孔、孔、冷間隔壁などの鋳造欠陥が発生しやすい。注湯温度が高すぎると、元素の焼損を引き起こす一方で、凝固組織の結晶粒が粗大になり、性能が低下する。電磁界の強弱は、主に電流の大きさを調整することによって制御され、主に電磁界が溶融体に与える攪拌力の大きさに影響し、攪拌力の大きさは、さらに、凝固プロセスにおけるデンドライト組織の形成の破壊の程度に直接関係がある。従って、電磁界強度は異なる電流の大きさによって制御され、さらにSnリッチのγ相の形成及び分布に影響させ、デンドライト偏析の効果を抑制させ、合金の後続の総合性能を向上させる。
【0020】
本発明は、マイクロ合金元素を選択し、且つ電磁攪拌を組み合わせて鋳造状態凝固組織の偏析を改善することによって、鋳造状態組織の良否は直接に後続の加工段階の難易度に影響し、且つ最終材料の総合性能に影響する。
【0021】
本発明の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法の好ましい実施例では、均一なアニールの温度が900~950℃であり、熱間押出変形の温度が850~950℃であり、溶体化熱処理の温度が750~900℃であり、冷間伸線変形量が50~90%であり、時効熱処理の温度が300~500℃である。
【0022】
以下、本発明の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金及び製造方法について、具体的な実施例により詳細に説明する。
【0023】
実施例1
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、重量%で、Ni:9%、Sn:6%、Si:1.2%、Al:3%、Nb:0.5%、Mn:2.0%及びFe:2.0%からなり、他の微量元素であるO、S及びPは、それぞれ、Oが5ppm以下であり、Sが3ppm以下であり、Pが3ppm以下であり、残部がCuである。
【0024】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0025】
原材料の準備であるステップ(1)において、河南億しん非鉄金属材料有限公司で生産した1#電解銅(Cu≧99.95%)、1#電解ニッケル(Ni≧99.96%)、純錫(Sn≧99.99%)、純シリコン(Si≧99.99%)、純アルミニウム(Al≧99.7%)、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金及びCu-Fe中間合金を選択して用いて、その後、裁断、乾燥、表面油除去処理を経て、使用を待つ。
【0026】
原料の調製であるステップ(2)において、本実施例の多元Cu-Ni-Sn基合金の組成で、ステップ(1)で処理した原材料を秤量する。
【0027】
鋳造であるステップ(3)において、まず、電解銅を溶融炉に添加させ、加熱して電解銅を溶融させた後、純ニッケルを添加させ、その後、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金、Cu-Fe中間合金及び純シリコンを添加させ、最後に純アルミニウム及び純錫を添加させる。溶解温度が1150℃であり、持続時間が50分である。
【0028】
加熱溶融プロセスにおいて、溶融液面が木炭で完全に覆われることを保証し、木炭カバー層によって大部分の空気を遮断して溶融プロセスを微酸化雰囲気下で行うことを実現し、溶解プロセスにおいて、純リン脱酸素剤を用いて脱酸素し、リンの含有量が99.85%~99.95%であり、純リン脱酸素剤の使用量が溶湯総重量の0.1%である。溶解プロセスにおいて、石墨撹拌棒を用いて攪拌し、スラグ掻き取り棒を用いてスラグを掻き取る。
【0029】
注湯であるステップ(4)において、溶湯表面にスカムが出現しなかった後、溶湯表面が溶湯をかき分けて鏡面状になった後、1分間静置し、溶湯を直接的に金属鋳型に注湯させ、注湯温度が1200℃である。同時に、凝固組織偏析をさらに改善するために、金属鋳型の外に電磁界を印加し、溶湯が金属鋳型の内に注湯された後、電磁界の電流を調整することによって作用力の大きさを変更し、且つ溶融体凝固プロセスに外力の影響を与え、電流印加範囲が20Aである。電磁界及び冷却装置の共同作用の下で、溶湯が凝固し、インゴットを得る。
【0030】
ステップ(5)において、溶融鋳造によって製造された組織が均一なインゴットに基づいて、後続の均一なアニール→熱間押出変形→溶体化熱処理→冷間伸線変形→時効熱処理を行う。ただし、均一なアニールの温度が900℃であり、熱間押出変形の温度が850℃であり、溶体化熱処理の温度が750℃であり、冷間伸線変形量が50%であり、時効熱処理の温度が300℃である。
【0031】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金のミクロ組織図を
図2に示す。
【0032】
本実施例により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、成分が均一であり、鋳造状態のミクロ組織は、従来のCu-15Ni-8Sn合金より、デンドライト間隔が小さくなり、引張強さが1035MPaであり、伸び率が6.9%であり、磨耗率が0.09mg/mである。
【0033】
ただし、ミクロ組織の観察は、材料科学と工学分野でよく用いられる通常の試験手段を採用し、まず製造される試料を切断してサンプリングし、研磨腐食し、Zeiss Axio Vert A1型光学顕微鏡を用いてミクロ組織形態観察を行う。
【0034】
実施例2
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、重量%で、Ni:15%、Sn:8%、Si:0.8%、Al:1.2%、Nb:0.3%、Mn:0.5%及びFe:0.5%からなり、他の微量元素であるO、S及びPは、それぞれ、Oが5ppm以下であり、Sが3ppm以下であり、Pが3ppm以下であり、残部がCuである。
【0035】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0036】
原材料の準備であるステップ(1)において、河南億しん非鉄金属材料有限公司で生産した1#電解銅(Cu≧99.95%)、1#電解ニッケル(Ni≧99.96%)、純錫(Sn≧99.99%)、純シリコン(Si≧99.99%)、純アルミニウム(Al≧99.7%)、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金及びCu-Fe中間合金を選択して用いて、その後、裁断、乾燥、表面油除去処理を経て、使用を待つ。
【0037】
原料の調製であるステップ(2)において、本実施例の多元Cu-Ni-Sn基合金の組成で、ステップ(1)で処理した原材料を秤量する。
【0038】
鋳造であるステップ(3)において、まず、電解銅を溶融炉に添加させ、加熱して電解銅を溶融させた後、純ニッケルを添加させ、その後、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金、Cu-Fe中間合金及び純シリコンを添加させ、最後に純アルミニウム及び純錫を添加させる。溶解温度が1200℃であり、持続時間が40分である。
【0039】
加熱溶融プロセスにおいて、溶融液面が木炭で完全に覆われることを保証し、木炭カバー層によって大部分の空気を遮断して溶融プロセスを微酸化雰囲気下で行うことを実現し、溶解プロセスにおいて、純リン脱酸素剤を用いて脱酸素し、リンの含有量が99.85%~99.95%であり、純リン脱酸素剤の使用量が溶湯総重量の0.3%である。溶解プロセスにおいて、石墨撹拌棒を用いて攪拌し、スラグ掻き取り棒を用いてスラグを掻き取る。
【0040】
注湯であるステップ(4)において、溶湯表面にスカムが出現しなかった後、溶湯表面が溶湯をかき分けて鏡面状になった後、3分間静置し、溶湯を直接的に金属鋳型に注湯させ、注湯温度が1250℃である。同時に、凝固組織偏析をさらに改善するために、金属鋳型の外に電磁界を印加し、溶湯が金属鋳型の内に注湯された後、電磁界の電流を調整することによって作用力の大きさを変更し、且つ溶融体凝固プロセスに外力の影響を与え、電流印加範囲が50Aである。電磁界及び冷却装置の共同作用の下で、溶湯が凝固し、インゴットを得る。
【0041】
ただし、溶湯を鋳型に注湯する前に、金属鋳型を予熱し、予熱温度は300℃である。
【0042】
ステップ(5)において、溶融鋳造によって製造された組織が均一なインゴットに基づいて、後続の均一なアニール→熱間押出変形→溶体化熱処理→冷間伸線変形→時効熱処理を行う。ただし、均一なアニールの温度が920℃であり、熱間押出変形の温度が900℃であり、溶体化熱処理の温度が840℃であり、冷間伸線変形量が70%であり、時効熱処理の温度が420℃である。
【0043】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金のミクロ組織図を
図3に示す。
【0044】
本実施例により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、成分が均一であり、鋳造状態のミクロ組織は、従来のCu-15Ni-8Sn合金より、デンドライト間隔が小さくなり、分布がより均一であり、且つ配置方向がより一致する。力学及び耐摩耗性能の試験により、引張強さが1150MPaであり、伸び率が4.1%であり、磨耗率が0.02mg/mである。
【0045】
実施例3
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、重量%で、Ni:20%、Sn:12%、Si:0.3%、Al:0.2%、Nb:0.02%、Mn:0.2%及びFe:0.2%からなり、他の微量元素であるO、S及びPは、それぞれ、Oが5ppm以下であり、Sが3ppm以下であり、Pが3ppm以下であり、残部がCuである。
【0046】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0047】
原材料の準備であるステップ(1)において、河南億しん非鉄金属材料有限公司で生産した1#電解銅(Cu≧99.95%)、1#電解ニッケル(Ni≧99.96%)、純錫(Sn≧99.99%)、純シリコン(Si≧99.99%)、純アルミニウム(Al≧99.7%)、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金及びCu-Fe中間合金を選択して用いて、その後、裁断、乾燥、表面油除去処理を経て、使用を待つ。
【0048】
原料の調製であるステップ(2)において、本実施例の多元Cu-Ni-Sn基合金の組成で、ステップ(1)で処理した原材料を秤量する。
【0049】
鋳造であるステップ(3)において、まず、電解銅を溶融炉に添加させ、加熱して電解銅を溶融させた後、純ニッケルを添加させ、その後、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金、Cu-Fe中間合金及び純シリコンを添加させ、最後に純アルミニウム及び純錫を添加させる。溶解温度が1250℃であり、持続時間が30分である。
【0050】
加熱溶融プロセスにおいて、溶融液面が木炭で完全に覆われることを保証し、木炭カバー層によって大部分の空気を遮断して溶融プロセスを微酸化雰囲気下で行うことを実現し、溶解プロセスにおいて、純リン脱酸素剤を用いて脱酸素し、リンの含有量が99.85%~99.95%であり、純リン脱酸素剤の使用量が溶湯総重量の0.5%である。溶解プロセスにおいて、石墨撹拌棒を用いて攪拌し、スラグ掻き取り棒を用いてスラグを掻き取る。
【0051】
注湯であるステップ(4)において、溶湯表面にスカムが出現しなかった後、溶湯表面が溶湯をかき分けて鏡面状になった後、1分間静置し、溶湯を直接的に金属鋳型に注湯させ、注湯温度が1300℃である。同時に、凝固組織偏析をさらに改善するために、金属鋳型の外に電磁界を印加し、溶湯が金属鋳型の内に注湯された後、電磁界の電流を調整することによって作用力の大きさを変更し、且つ溶融体凝固プロセスに外力の影響を与え、電流印加範囲が100Aである。電磁界及び冷却装置の共同作用の下で、溶湯が凝固し、インゴットを得る。
【0052】
ステップ(5)において、溶融鋳造によって製造された組織が均一なインゴットに基づいて、後続の均一なアニール→熱間押出変形→溶体化熱処理→冷間伸線変形→時効熱処理を行う。ただし、均一なアニールの温度が950℃であり、熱間押出変形の温度が950℃であり、溶体化熱処理の温度が900℃であり、冷間伸線変形量が90%であり、時効熱処理の温度が500℃である。
【0053】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金のミクロ組織図を
図4に示す。
【0054】
本実施例により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、成分が均一であり、鋳造状態のミクロ組織は、従来のCu-15Ni-8Sn合金より、デンドライト間隔が小さくなる。力学及び耐摩耗性能の試験により、引張強さが1092MPaであり、伸び率が5.3%であり、磨耗率が0.06mg/mである。
【0055】
実施例4
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、重量%で、Ni:7%、Sn:4%、Si:1.2%、Al:3.0%、Nb:0.5%、Mn:2.0%及びFe:0.8%からなり、他の微量元素であるO、S及びPは、それぞれ、Oが4ppm以下であり、Sが3ppm以下であり、Pが3ppm以下であり、残部がCuである。
【0056】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0057】
原材料の準備であるステップ(1)において、河南億しん非鉄金属材料有限公司で生産した1#電解銅(Cu≧99.95%)、1#電解ニッケル(Ni≧99.96%)、純錫(Sn≧99.99%)、純シリコン(Si≧99.99%)、純アルミニウム(Al≧99.7%)、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金及びCu-Fe中間合金を選択して用いて、その後、裁断、乾燥、表面油除去処理を経て、使用を待つ。
【0058】
原料の調製であるステップ(2)において、本実施例の多元Cu-Ni-Sn基合金の組成で、ステップ(1)で処理した原材料を秤量する。
【0059】
鋳造であるステップ(3)において、まず、電解銅を溶融炉に添加させ、加熱して電解銅を溶融させた後、純ニッケルを添加させ、その後、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金、Cu-Fe中間合金及び純シリコンを添加させ、最後に純アルミニウム及び純錫を添加させる。溶解温度が1200℃であり、持続時間が40分である。
【0060】
加熱溶融プロセスにおいて、溶融液面が木炭で完全に覆われることを保証し、木炭カバー層によって大部分の空気を遮断して溶融プロセスを微酸化雰囲気下で行うことを実現し、溶解プロセスにおいて、純リン脱酸素剤を用いて脱酸素し、リンの含有量が99.85%~99.95%であり、純リン脱酸素剤の使用量が溶湯総重量の0.5%である。溶解プロセスにおいて、石墨撹拌棒を用いて攪拌し、スラグ掻き取り棒を用いてスラグを掻き取る。
【0061】
注湯であるステップ(4)において、溶湯表面にスカムが出現しなかった後、溶湯表面が溶湯をかき分けて鏡面状になった後、1分間静置し、溶湯を直接的に金属鋳型に注湯させ、注湯温度が1250℃である。同時に、凝固組織偏析をさらに改善するために、金属鋳型の外に電磁界を印加し、溶湯が金属鋳型の内に注湯された後、電磁界の電流を調整することによって作用力の大きさを変更し、且つ溶融体凝固プロセスに外力の影響を与え、電流印加範囲が90Aである。電磁界及び冷却装置の共同作用の下で、溶湯が凝固し、インゴットを得る。
【0062】
ステップ(5)において、溶融鋳造によって製造された組織が均一なインゴットに基づいて、後続の均一なアニール→熱間押出変形→溶体化熱処理→冷間伸線変形→時効熱処理を行う。ただし、均一なアニールの温度が920℃であり、熱間押出変形の温度が930℃であり、溶体化熱処理の温度が870℃であり、冷間伸線変形量が85%であり、時効熱処理の温度が400℃である。
【0063】
本実施例により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、成分が均一であり、鋳造状態のミクロ組織は、従来のCu-15Ni-8Sn合金より、デンドライト間隔が小さくなる。引張強さが1033MPaであり、伸び率が7.1%であり、磨耗率が0.09mg/mである。
【0064】
実施例5
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、重量%で、Ni:12%、Sn:10%、Si:0.5%、Al:2.4%、Nb:0.08%、Mn:0.8%及びFe:2.0%からなり、他の微量元素であるO、S及びPは、それぞれ、Oが5ppm以下であり、Sが3ppm以下であり、Pが3ppm以下であり、残部がCuである。
【0065】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0066】
原材料の準備であるステップ(1)において、河南億しん非鉄金属材料有限公司で生産した1#電解銅(Cu≧99.95%)、1#電解ニッケル(Ni≧99.96%)、純錫(Sn≧99.99%)、純シリコン(Si≧99.99%)、純アルミニウム(Al≧99.7%)、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金及びCu-Fe中間合金を選択して用いて、その後、裁断、乾燥、表面油除去処理を経て、使用を待つ。
【0067】
原料の調製であるステップ(2)において、本実施例の多元Cu-Ni-Sn基合金の組成で、ステップ(1)で処理した原材料を秤量する。
【0068】
鋳造であるステップ(3)において、まず、電解銅を溶融炉に添加させ、加熱して電解銅を溶融させた後、純ニッケルを添加させ、その後、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金、Cu-Fe中間合金及び純シリコンを添加させ、最後に純アルミニウム及び純錫を添加させる。溶解温度が1250℃であり、持続時間が30分である。
【0069】
加熱溶融プロセスにおいて、溶融液面が木炭で完全に覆われることを保証し、木炭カバー層によって大部分の空気を遮断して溶融プロセスを微酸化雰囲気下で行うことを実現し、溶解プロセスにおいて、純リン脱酸素剤を用いて脱酸素し、リンの含有量が99.85%~99.95%であり、純リン脱酸素剤の使用量が溶湯総重量の0.4%である。溶解プロセスにおいて、石墨撹拌棒を用いて攪拌し、スラグ掻き取り棒を用いてスラグを掻き取る。
【0070】
注湯であるステップ(4)において、溶湯表面にスカムが出現しなかった後、溶湯表面が溶湯をかき分けて鏡面状になった後、1分間静置し、溶湯を直接的に金属鋳型に注湯させ、注湯温度が1300℃である。同時に、凝固組織偏析をさらに改善するために、金属鋳型の外に電磁界を印加し、溶湯が金属鋳型の内に注湯された後、電磁界の電流を調整することによって作用力の大きさを変更し、且つ溶融体凝固プロセスに外力の影響を与え、電流印加範囲が85Aである。電磁界及び冷却装置の共同作用の下で、溶湯が凝固し、インゴットを得る。
【0071】
ステップ(5)において、溶融鋳造によって製造された組織が均一なインゴットに基づいて、後続の均一なアニール→熱間押出変形→溶体化熱処理→冷間伸線変形→時効熱処理を行う。ただし、均一なアニールの温度が900℃であり、熱間押出変形の温度が920℃であり、溶体化熱処理の温度が840℃であり、冷間伸線変形量が80%であり、時効熱処理の温度が420℃である。
【0072】
本実施例により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、成分が均一であり、鋳造状態のミクロ組織は、従来のCu-15Ni-8Sn合金より、デンドライト間隔が小さくなる。引張強さが1148MPaであり、伸び率が4.5%であり、磨耗率が0.03mg/mである。
【0073】
実施例6
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、重量%で、Ni:20%、Sn:4%、Si:0.3%、Al:0.2%、Nb:0.02%、Mn:0.2%及びFe:0.2%からなり、他の微量元素であるO、S及びPは、それぞれ、Oが4ppm以下であり、Sが3ppm以下であり、Pが3ppm以下であり、残部がCuである。
【0074】
本実施例の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0075】
原材料の準備であるステップ(1)において、河南億しん非鉄金属材料有限公司で生産した1#電解銅(Cu≧99.95%)、1#電解ニッケル(Ni≧99.96%)、純錫(Sn≧99.99%)、純シリコン(Si≧99.99%)、純アルミニウム(Al≧99.7%)、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金及びCu-Fe中間合金を選択して用いて、その後、裁断、乾燥、表面油除去処理を経て、使用を待つ。
【0076】
原料の調製であるステップ(2)において、本実施例の多元Cu-Ni-Sn基合金の組成で、ステップ(1)で処理した原材料を秤量する。
【0077】
鋳造であるステップ(3)において、まず、電解銅を溶融炉に添加させ、加熱して電解銅を溶融させた後、純ニッケルを添加させ、その後、Cu-Nb中間合金、Cu-Mn中間合金、Cu-Fe中間合金及び純シリコンを添加させ、最後に純アルミニウム及び純錫を添加させる。溶解温度が1180℃であり、持続時間が35分である。
【0078】
加熱溶融プロセスにおいて、溶融液面が木炭で完全に覆われることを保証し、木炭カバー層によって大部分の空気を遮断して溶融プロセスを微酸化雰囲気下で行うことを実現し、溶解プロセスにおいて、純リン脱酸素剤を用いて脱酸素し、リンの含有量が99.85%~99.95%であり、純リン脱酸素剤の使用量が溶湯総重量の0.5%である。溶解プロセスにおいて、石墨撹拌棒を用いて攪拌し、スラグ掻き取り棒を用いてスラグを掻き取る。
【0079】
注湯であるステップ(4)において、溶湯表面にスカムが出現しなかった後、溶湯表面が溶湯をかき分けて鏡面状になった後、1分間静置し、溶湯を直接的に金属鋳型に注湯させ、注湯温度が1210℃である。同時に、凝固組織偏析をさらに改善するために、金属鋳型の外に電磁界を印加し、溶湯が金属鋳型の内に注湯された後、電磁界の電流を調整することによって作用力の大きさを変更し、且つ溶融体凝固プロセスに外力の影響を与え、電流印加範囲が75Aである。電磁界及び冷却装置の共同作用の下で、溶湯が凝固し、インゴットを得る。
【0080】
ステップ(5)において、溶融鋳造によって製造された組織が均一なインゴットに基づいて、後続の均一なアニール→熱間押出変形→溶体化熱処理→冷間伸線変形→時効熱処理を行う。ただし、均一なアニールの温度が910℃であり、熱間押出変形の温度が900℃であり、溶体化熱処理の温度が830℃であり、冷間伸線変形量が75%であり、時効熱処理の温度が370℃である。
【0081】
本実施例により製造される石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金は、成分が均一であり、鋳造状態のミクロ組織は、従来のCu-15Ni-8Sn合金より、デンドライト間隔が小さくなる。引張強さが1076MPaであり、伸び率が4.9%であり、磨耗率が0.05mg/mである。
【0082】
比較例1
本比較例の通常のCu-15Ni-8Sn合金は、重量%で、Ni:15%及びSn:8%からなり、残部がCuである。
【0083】
本比較例の通常のCu-15Ni-8Sn合金は、以下のステップを含む方法で製造される。
【0084】
非真空溶解炉を用いて、電解銅(Cu≧99.95%)、電解ニッケル(Ni≧99.96%)、純錫(Sn≧99.99%)を溶融させ、溶融プロセスにおいてAl、Nb、Mn、Feなどの凝固組織の偏析と性能の改善に有利な合金化元素を添加しない。同時に、他の微量元素であるO、S、Pに対する制御範囲は比較的広く、一般的に、Oの含有量が10ppmより大きく、Sの含有量が8ppmより大きく、Pの含有量が8ppmより大きい。溶融体が完全に溶融した後、直接的に金属鋳型に注湯し、電磁界攪拌を与えず、冷却により凝固し、インゴットを得る。その後、後続の、均一なアニール→熱間押出変形→溶体化熱処理→冷間伸線変形→時効熱処理を行う。通常のプロセスは溶融鋳造段階の凝固組織に深刻な偏析問題があるため、後続の変形がさらに困難になり、材料の歩留まりが低下する。ただし、均一なアニール温度が950℃であり、熱間押出変形温度が950℃であり、溶体化熱処理温度が900℃であり、冷間伸線変形量が90%であり、時効熱処理温度が500℃である。
【0085】
比較例2
本比較例と実施例1との違いは、Si元素の添加量が0.28%(0.3%未満)のみであり、その他のすべては実施例1と一致する。
【0086】
比較例3
本比較例と実施例2の違いは、Al元素の添加量が0.19%(0.2%未満)のみであり、その他のすべては実施例2と一致する。
【0087】
比較例4
本比較例と実施例3の違いは、Nb元素の添加量が0.017%(0.02%未満)のみであり、その他のすべては実施例3と一致する。
【0088】
比較例5
本比較例と実施例4の違いは、Mn元素の添加量が0.18%(0.2%未満)のみであり、その他のすべては実施例4と一致する。
【0089】
比較例6
本比較例と実施例5の違いは、Fe元素の添加量が0.19%(0.2%未満)のみであり、その他のすべては実施例5と一致する。
【0090】
比較例7
本比較例と実施例6との違いは、重量%で、Ni:20%、Sn:4%、Si:1.3%、Al:3.2%、Nb:0.6%、Mn:2.1%及びFe:2.2%からなり、残部がCuであることのみである。その他のすべては実施例6と一致する。
【0091】
実験例
実施例1~6の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金及び比較例1の従来のCu-15Ni-8Sn合金及び比較例2~7のCu-Ni-Sn基合金の力学性能及び耐摩耗性能をそれぞれ試験した。
【0092】
引張強さの試験方法は、SHIMADZU(島津)AG-I250KN型精密万能試験機を用いて引張実験を行い、引張速度が1mm/minであり、合金応力-歪み曲線及び引張強さ数値を得た。
【0093】
伸び率の試験方法は、SHIMADZU(島津)AG-I250KN型精密万能試験機を用いて引張実験を行い、引張速度が1mm/minであり、合金応力-歪み曲線を得り、伸び計によって引張前後の合金スケール変化情況を測定し、伸び率数値を得た。
【0094】
磨耗率の試験方法は、ピン-ディスク型摩擦摩耗試験機を用いて、異なる荷重と速度を与えることによって、製造した合金をピン試料として、子皿と乾摩擦摩耗実験を行い、摩擦摩耗実験が一定時間または一定距離で行われた後、摩擦摩耗前後の合金ピン試料の質量損傷量を測定し、さらに磨耗率を算出した。
【0095】
実施例1~6の石油およびガス採取用多元Cu-Ni-Sn基合金及び比較例1の通常のCu-15Ni-8Sn合金及び比較例2~7のCu-Ni-Sn基合金の力学性能及び耐摩耗性能を比較し、具体的には以下の表1に示す。
【0096】
【0097】
比較例1及び実施例1~6を組み合わせて、本発明の石油およびガス採取用多元Cu
Ni-Sn基合金は、通常のCu-15Ni-8Snに対して、より良い引張強さを有し、かつ磨耗率が著しく低下し、石油およびガス採取の鍵となる部材への応用に適している。
【0098】
比較例2と実施例1を組み合わせて、Si元素の含有量が低すぎる(0.3%未満)ため、合金凝固時の逆偏析形成を抑制する効果が弱まり、結晶粒の微細さが顕著でなく、合金の熱/冷加工性能の向上に不利であり、同時に、SiとNiでのシリーズのNiSi強化相の形成が減少したため、合金強度が低下した。
【0099】
比較例3と実施例2を組み合わせて、Al元素の含有量が低すぎる(0.2%未満)ため、Al元素とNi元素でのシリーズのNiAl強化相の形成が困難であり、合金強度が大幅に低下した。
【0100】
比較例4と実施例3を組み合わせて、Nb元素は合金の振幅変調分解プロセスを促進させ、合金の抵抗回復及び再結晶軟化能力を高め、且つ、結晶内及び結晶界にはNbリッチのγ相が形成され、時効プロセスにおいて結晶粒の成長及び不連続沈殿の形成を顕著に抑制し、合金強度及び耐摩耗性能を高めることができ、Nb元素含有量が低すぎる(0.02%未満)と、合金の強度と耐摩耗性を弱める。
【0101】
比較例5と実施例4を組み合わせて、Mn元素は鋳造状態の結晶粒組織を細分化し、合金時効硬化ピーク強度を高め、且つ粒界反応及び結晶粒粗化を抑制し、合金強度及び耐摩耗性能を著しく高めることができ、Mn元素含有量が低すぎる(0.2%未満)と、鋳造状態の組織の結晶粒の粗大化にして、合金の強度と耐摩耗性能を弱める。
【0102】
比較例6と実施例5を組み合わせて、微量Feの添加は、合金の変形熱処理プロセスを加速させ、強化効果及び耐摩耗性能を高めることができる。Fe元素含有量が低すぎる(0.2%未満)と、合金の熱処理強化効果に影響し、合金の強度と耐摩耗性能が低下する。
【0103】
比較例7と実施例6を組み合わせて、過剰の合金元素の添加は、一方で、溶融鋳造プロセスにおいて余分な元素が溶解できず、粗大な第二相を形成して鋳造状態組織に残留し、結晶粒サイズが粗大になり、後続の塑性変形に不利である。同時に、熱処理プロセスにおいて金属間化合物が多く形成され、合金の脆性が増大し、伸び率が大幅に低下した。
【0104】
要するに、実施例と比較例の引張強さ、伸び率、磨耗率データ分析により、本発明は多元マイクロ合金化手段により、Cu-Ni-Sn合金基体にシリコン(Si)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)などの多種類の合金元素を添加させ、多種類の元素の協同使用の下で、比較的に良い伸び率を維持すると同時に(伸び率が3%以上である)、合金の強度と耐摩耗性能を協力して向上させた。引張強さが1000MPa以上であり、磨耗率が0.1mg/m以下であり、合金の総合性能に対する石油およびガス採取分野の要求を満たすことができる。同時に、上記合金元素の添加は、凝固組織の偏析を効果的に抑制し、鋳造状態組織結晶粒を細分化し、後続の熱間押出変形と熱処理強化効果の発揮に有利である。