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  • 特許-バックドア開口の補強構造 図1
  • 特許-バックドア開口の補強構造 図2
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  • 特許-バックドア開口の補強構造 図4
  • 特許-バックドア開口の補強構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】バックドア開口の補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
B62D25/08 K
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021021583
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124050
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】御厨 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】平野 正人
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-162137(JP,A)
【文献】特開2012-224109(JP,A)
【文献】特開2012-218691(JP,A)
【文献】特開2003-341556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルと、当該ルーフパネルの下方において閉断面状に組み合わされたアウタリインフォースおよびインナパネルと、を含むとともに、バックドア開口の上方に位置するリヤヘッダにおいて、
上記アウタリインフォースは、棚部と、当該棚部の前端につながる断面ハット部と、を含み、
上記棚部と重ね合わせ接合された上記ルーフパネルの部位には、バックドアヒンジが設けられているとともに、上記バックドアヒンジは当該バックドアヒンジの車幅方向位置と対応して上記棚部の下面に接合された第1の補強部材により補強されており、
上記第1の補強部材とは別に、上記棚部の下面における、上記バックドアヒンジの近傍であって上記バックドアヒンジよりも前方に位置する部位と、上記棚部よりも前方に位置する上記アウタリインフォースおよび上記インナパネルの接合部と、の間を掛け渡すとともに、上記断面ハット部の下部開口を閉じる部分を少なくとも有し、上記バックドアヒンジよりも車幅方向外方にずれて位置する第2の補強部材を設けたことを特徴とする、バックドア開口の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるバックドア開口の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ワゴンタイプの車両のバックドア開口は、上下寸法が大きく、その上部はルーフ近傍に及んでいる。そのため、重量増加を招くことなく変形に対する剛性を確保することが困難である。
【0003】
例えば特許文献1には、ルーフサイドとリヤピラーとリヤヘッダに亘って延出部を有する補強部材を設けたバックドア開口の補強構造が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたような補強部材を設けるだけでは、車両の後方視においてバックドア開口をより大きくしたい場合等において、バックドア開口下部に対してリヤヘッダが車幅方向に揺れるといった、走行時に生じる共振に起因した変形に対して十分に対処することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-147491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、重量増加をそれほど招くことなく、共振によるバックドア開口の変形を防止または軽減できる補強構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明によって提供されるバックドア開口の補強構造は、ルーフパネルと、当該ルーフパネルの下方において閉断面状に組み合わされたアウタリインフォースおよびインナパネルと、を含むとともに、バックドア開口の上方に位置するリヤヘッダにおいて、上記アウタリインフォースは、棚部と、当該棚部の前端につながる断面ハット部と、を含み、上記棚部と重ね合わせ接合された上記ルーフパネルの部位には、バックドアヒンジが設けられており、上記バックドアヒンジの近傍に位置する上記棚部の下面と、当該下面よりも前方に位置する上記アウタリインフォースおよび上記インナパネルの接合部と、の間を掛け渡すとともに、上記断面ハット部の下部開口を閉じる部分を少なくとも有する補強部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
共振によりバックドア開口の上部のリヤヘッダが車幅方向に揺れ動くような変形をするとき、アウタリインフォースの断面ハット部はその下部開口が拡縮するような挙動をする。上記構成のバックドア開口の補強構造においては、上記断面ハット部の開口を閉じる部分を有する補強部材を設けているので、上記断面ハット部の下部開口が拡縮する挙動を防止することができ、このことがバックドア開口の変形の防止または軽減に寄与する。
【0010】
それだけでなく、上記補強部材はバックドアヒンジの近傍の上記棚部の下面に接続されている。バックドアヒンジが設けられる部位は、ルーフパネルとアウタリインフォースとが重ねられ、また、アウタリインフォースが断面ハット部にかけて立ち上がる部位であり、極めて剛な部位であることから、上記補強部材が上記断面ハット部の下部開口が拡縮する挙動を防止する効果をより高めることができる。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用された車両の車体後部を右斜め後方から視た斜視図であって、バックドアの図示を省略した図である。
図2】ルーフパネルの図示を省略した状態での図1に対応する図である。
図3図2からさらにアウタリインフォースの図示を省略した図である。
図4図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図1のV-V線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。これらの図において、前方をfr、後方をrr、車幅方向左方をlh、車幅方向右方をrhで示す。
【0014】
図1は、本発明にかかるバックドア開口の補強構造A1が適用された車両の車体後部を右斜め後方から視た斜視図であって、バックドアの図示を省略した図である。図2は、ルーフパネル20の図示を省略した状態での図1に対応する図である。図3は、図2からさらにアウタリインフォース31の図示を省略した図である。図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図1のV-V線に沿う断面図である。
【0015】
図1図3に示すように、バックドア開口1の上部コーナ部は、リヤヘッダ110と呼ばれる車幅方向に延びる部分と、リヤヘッダ110の端部から下方に延びるリヤピラー120と呼ばれる部分とに囲まれている。さらにリヤヘッダ110の端部は、前方に延びるルーフサイド130と呼ばれる部分につながっている。したがって、リヤヘッダ110とリヤピラー120とルーフサイド130とは、バックドア開口1の上部コーナ付近において三又状につながっている。
【0016】
ルーフパネル20は、車両の外観意匠を構成する。ルーフパネル20は、その内側に位置する構造部材3により支持されている。構造部材3は、一般的にはパネルを閉断面に組み合わせて構成される。
【0017】
リヤヘッダ110についていえば、構造部材3は、図4および図5に示すように、アウタリインフォース31とインナパネル34とを閉断面状に組み合わせて構成されている。より詳しくは、アウタリインフォース31は、後部縦壁部311と、当該後部縦壁部311の上端から略水平に延びる棚部312と、当該棚部312の前端につながる断面ハット部32とを有している。後部縦壁部311の下端にはフランジ部313が形成されており、断面ハット部32の前端321はフランジ状となっている。インナパネル34は、断面において上に凹に湾曲しており、その前端および後端には、それぞれフランジ部341,342が形成されている。アウタリインフォース31とインナパネル34は、それらの後端においてフランジ部313、342どうしが例えばスポット溶接により重ね合わせ接合され、それらの前端において断面ハット部32の前端321とインナパネル34のフランジ部341とが例えばスポット溶接により重ね合わせ接合されている。
【0018】
ルーフパネル20は、図4および図5に示すように、断面においてアウタリインフォース31に沿った形態を有している。より詳しくは、ルーフパネル20は、アウタリインフォース31の後端とインナパネル34の後端との接合部36に重ねて接合されるフランジ部201と、アウタリインフォース31の後部縦壁部311に沿う縦壁部202と、当該縦壁部202の上端から略水平に延びてアウタリインフォース31の棚部312に重ね合わせ接合される棚部203(図5参照)と、当該棚部203の前端から上方に延びる起立壁部204と、当該起立壁部204の上端から前方に延びるルーフ外観意匠部205と、を有する。
【0019】
ルーフパネル20の棚部203とアウタリインフォース31の棚部312との重ね合わせ接合部には、バックドアヒンジ210が溶接や図示しない締結手段により固定されている(図4参照)。図に示す実施形態では、前後方向に帯板状に延びる補強部材220が、バックドアヒンジ210の車幅方向位置と対応させて、その後端をアウタリインフォース31の棚部312の下面にスポット溶接等により接合するとともに、前端をアウタリインフォース31の前端321とインナパネル34のフランジ部341との間に挟み込んで接合することにより設けられている。
【0020】
リヤヘッダ110における上記構成の構造部材3においては、アウタリインフォース31に断面ハット部32を設けていることにより、上下方向の荷重に対する剛性がより高まり、バックドア(図示略)の重量やその開閉時に作用する荷重に耐えうる強度を保持することができる。
【0021】
図2に示すように、バックドア開口1の上部コーナ部における構造部材3を構成するアウタリインフォース31は、リヤヘッダ110から枝分かれしてリヤピラー120とルーフサイド130に沿って一体に延びる三又状に形成されており、本実施形態では、インナパネル34についても、図3に示すように、アウタリインフォース31に対応させて三又状に形成されている。三又状のアウタリインフォース31の3つの端部は、適宜、リヤヘッダ110に沿うアウタパネル111と、リヤピラー120に沿うアウタパネル121と、ルーフサイド130に沿うアウタパネル131とに連結されている。さらに三又状のインナパネル34の3つの端部もまた、適宜、リヤヘッダ110に沿うインナパネル112と、リヤピラー120に沿うインナパネル122と、ルーフサイド130に沿うインナパネル132とに連結されている。
【0022】
さて、本発明では、図5に示すように、バックドアヒンジ210の近傍におけるアウタリインフォース31の上記棚部312の下面と、当該下面よりも前方に位置するアウタリインフォース31およびインナパネル34の接合部35と、の間を掛け渡す部分51を少なくとも有する補強部材50を追加している。補強部材50の当該部分51は、アウタリインフォース31の断面ハット32部の下部開口322を閉じることになり、板金部材により形成される。補強部材50の後端は、アウタリインフォース31の棚部312の下面にスポット溶接等により接合されている。補強部材50の前端は、アウタリインフォース31の前端321とインナパネル34のフランジ部341との間に挟み込んで接合されている。本実施形態では、図4および図5に示すように、アウタリインフォース31の断面ハット部32の下部開口322の前後方向幅が車幅方向外方に向かうほど拡がっている。これに対応して、補強部材50は、図2に示すように、車幅方向外方に向かうほど前後方向幅が拡がる略扇形形状をしている。なお、補強部材50は、上記部分51を有する構成であればよく、さらにリヤピラー120に沿って延びる部分(図示略)やルーフサイド130に沿って延びる部分(図示略)を有する構成でもよい。
【0023】
次に、上記構成のバックドア開口の補強構造A1の作用について説明する。
【0024】
走行時の共振によりバックドア開口1の上部のリヤヘッダ110が車幅方向に揺れ動くような変形をしようとするとき、アウタリインフォース31の断面ハット部32はその下部開口322の前後方向幅が拡縮するような挙動をする。上記構成のバックドア開口の補強構造A1においては、アウタリインフォース31の断面ハット部32の下部開口322を閉じる部分51を有する補強部材50を設けているので、上記断面ハット部32の下部開口322が拡縮する挙動を防止することができ、このことがバックドア開口1の上部のリヤヘッダ110が車幅方向に揺れ動くような変形を防止または軽減することができる。
【0025】
それだけでなく、補強部材50はバックドアヒンジ210の近傍におけるアウタリインフォース31の上記棚部312の下面に接続されている。バックドアヒンジ210が設けられる部位は、ルーフパネル20とアウタリインフォース31とが重ねられ、また、アウタリインフォース31が断面ハット部32にかけて立ち上がる部位であり、極めて剛な部位であることから、補強部材50が上記断面ハット部32の下部開口322が拡縮する挙動を防止する効果をより高めることができる。
【0026】
もちろん、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのあらゆる設計変更はすべて本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
A1 バックドア開口の補強構造
1 バックドア開口
110 リヤヘッダ
111 アウタパネル(リヤヘッダの)
112 インナパネル(リヤヘッダの)
120 リヤピラー
121 アウタパネル(リヤピラーの)
122 インナパネル(リヤピラーの)
130 ルーフサイド
131 アウタパネル(ルーフサイドの)
132 インナパネル(ルーフサイドの)
20 ルーフパネル
201 フランジ部(ルーフパネル後端)
202 縦壁部
203 棚部
204 起立壁部
205 ルーフ外観意匠部
210 バックドアヒンジ
220 補強部材(バックドアヒンジ用)
3 構造部材
31 アウタリインフォース
311 後部縦壁部
312 棚部
313 フランジ部(アウタリインフォース後端の)
32 断面ハット部
321 前端(断面ハット部の)
322 下部開口(断面ハット部の)
34 インナパネル
341 フランジ部(インナパネル前端)
342 フランジ部(インナパネル後端)
35 接合部(アウタリインフォース前端とインナパネル前端の)
36 接合部(アウタリインフォース後端とインナパネル後端の)
50 補強部材
51 部分
図1
図2
図3
図4
図5