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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20250210BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
F16H57/04 J
H02K7/116
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022555317
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021032965
(87)【国際公開番号】W WO2022074995
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2020169856
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】藤川 真澄
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/050182(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0320849(US,A1)
【文献】特開2009-121549(JP,A)
【文献】特開2020-85026(JP,A)
【文献】実開昭54-163419(JP,U)
【文献】特開平6-323404(JP,A)
【文献】特開平9-72405(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/073821(JP,A1)
【文献】特開2016-19436(JP,A)
【文献】特開2012-82930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの下流に接続された歯車機構と、
本体部と、前記本体部と接続されるポンプ入口と、を有するストレーナと、
前記ポンプ入口を介してオイルが吸引されるポンプと、
前記歯車機構を収容し且つオイル貯留部を有する第1室と、前記ポンプ入口及び前記本体部が配置される第2室と、を有するボックスと、を有し、
径方向から見て前記第2室は前記モータとオフセットしており、
径方向から見て前記本体部は、前記歯車機構の外周を囲う支持壁部を挟んで、前記第1室とオーバーラップし、
前記支持壁部には、前記第1室と前記第2室とを連通し、前記オイル貯留部に面する開口部が設けられ
前記支持壁部は、前記モータから離れるにしたがって外径が小さくなる部分を有し、前記本体部は、前記径方向から見て、前記支持壁部の前記外径が小さくなる部分にオーバーラップする部分を有する、動力伝達装置。
【請求項2】
モータと、
前記モータの下流に接続された歯車機構と、
本体部と、前記本体部と接続されるポンプ入口と、を有するストレーナと、
前記ポンプ入口を介してオイルが吸引されるポンプと、
前記歯車機構を収容する第1室と、前記ポンプ入口及び前記本体部が配置される第2室と、前記モータを収容する第3室と、を有するボックスと、を有し、
径方向から見て前記第2室は前記第3室とオフセットしており、
軸方向において、前記第2室と、前記第1室及び前記第3室の一方と、の間に前記第1室及び前記第3室の他方が配置されており、
径方向から見て、前記第2室は、前記歯車機構の下流に接続された駆動軸における前記ボックスの外部に位置する部分にオーバーラップし、
軸方向から見て、前記本体部は前記第1室とオーバーラップする部分を有する、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記歯車機構の下流に接続され前記モータの内周を貫通して配置される駆動軸を有する、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記ボックスは、前記第1室と前記第2室とを連通する開口部を有する、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記ポンプ入口は、ストレーナの吸引口として構成されており、
前記ストレーナの本体部の少なくとも一部は、前記第2室に配置されている、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記ポンプ入口は、前記第2室の内壁に設けられている、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第2室は前記第1室の下方に位置する、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記歯車機構は、遊星減速ギアを含む、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には電気自動車用の動力伝達装置が開示されている。動力伝達装置は歯車機構(遊星減速ギアと差動機構)を有する。
歯車機構の外周側(径方向外側)には、歯車機構に供給されるオイルを濾過し、オイルポンプに供給するストレーナが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-152320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯車機構が回転すると、歯車機構の外周側の油が掻き上げられ、ストレーナの吸入口近辺のオイルの量が減少することがある。吸入口近辺のオイルの量が減少した状態でオイルポンプがオイルを吸引すると、エアを吸い込む可能性がある。
【0005】
動力伝達装置において、オイルポンプのエア吸いを低減することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様における動力伝達装置は、
モータと、
前記モータの下流に接続された歯車機構と、
本体部と、前記本体部と接続されるポンプ入口と、を有するストレーナと、
前記ポンプ入口を介してオイルが吸引されるポンプと、
前記歯車機構を収容し且つオイル貯留部を有する第1室と、前記ポンプ入口及び前記本体部が配置される第2室と、を有するボックスと、を有し、
径方向から見て前記第2室は前記モータとオフセットしており、
径方向から見て前記本体部は、前記歯車機構の外周を囲う支持壁部を挟んで、前記第1室とオーバーラップし、
前記支持壁部には、前記第1室と前記第2室とを連通し、前記オイル貯留部に面する開口部が設けられ
前記支持壁部は、前記モータから離れるにしたがって外径が小さくなる部分を有し、前記本体部は、前記径方向から見て、前記支持壁部の前記外径が小さくなる部分にオーバーラップする部分を有する
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、オイルポンプのエア吸いを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る動力伝達装置のスケルトン図である。
図2図2は、動力伝達装置の断面の模式図である。
図3図3は、動力伝達装置の遊星減速ギア周りの拡大図である。
図4図4は、動力伝達装置の差動機構周りの拡大図である。
図5図5は、動力伝達装置の差動機構の分解斜視図である。
図6図6は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図7図7は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図8図8は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図9図9は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図10図10は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図11図11は、オイルキャッチ部を説明する図である。
図12図12は、プレート部材を説明する図である。
図13図13は、プレート部材を説明する図である。
図14図14は、第4ボックスをモータ側から見た図である。
図15図15は、第4ボックスをモータ側から見た図である。
図16図16は、パークロック機構を説明する図である。
図17図17は、パークロック機構を説明する図である。
図18図18は、パークロック機構を説明する図である。
図19図19は、ストレーナ室周りの拡大図である。
図20図20は、変形例1に係るオイルポンプの構成例を示す図である。
図21図21は、変形例1に係るオイルポンプの構成例を示す図である。
図22図22は、変形例1に係るオイルポンプの構成例を示す図である。
図23図23は、変形例2に係るストレーナ室の構成を示す図である。
図24図24は、変形例3に係るストレーナ室のレイアウトを示す模式図である。
図25図25は、変形例3に係るストレーナ室のレイアウトを示す模式図である。
図26図26は、変形例3に係るストレーナ室のレイアウトを示す模式図である。
図27図27は、変形例3に係るストレーナ室のレイアウトを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る動力伝達装置を説明する。
以下の説明において、第1要素(部品、部分等)に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の下流に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の上流に接続された第2要素(部品、部分等)と述べた場合、第1要素と第2要素とが動力伝達可能に接続されていることを意味する。動力の入力側が上流となり、動力の出力側が下流となる。また、第1要素と第2要素は、他の要素(クラッチ、他の歯車機構等)を介して接続されていても良い。
【0010】
「所定方向から見てオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向から見てオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0011】
「所定方向から見てオーバーラップしていない」、「所定方向から見てオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向から見てオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
「所定方向から見て、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向から見て、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向から見て第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向から見て第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0013】
軸方向から見て、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0014】
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明するスケルトン図である。
図2は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する断面の模式図である。
図3は、動力伝達装置1の遊星減速ギア4周りの拡大図である。
図4は、動力伝達装置1の差動機構5周りの拡大図である。
【0016】
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転を減速して差動機構5(デファレンシャルギア)に入力する遊星減速ギア4(減速機構)と、ドライブシャフトDA、DBと、パークロック機構3と、を有する。
動力伝達装置1では、モータ2の回転軸X回りの出力回転の伝達経路に沿って、パークロック機構3と、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフトDA、DB(駆動軸)と、が設けられている。遊星減速ギア4と差動機構5は歯車機構である。
【0017】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、遊星減速ギア4で減速されて差動機構5に入力された後、ドライブシャフトDA、DBを介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、Wに伝達される。
ここで、遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されており、差動機構5は、遊星減速ギア4の下流に接続されており、ドライブシャフトDA、DBは、差動機構5の下流に接続されている。
【0018】
図2に示すように、動力伝達装置1の本体ボックス10(ボックス)は、モータ2を収容する第1ボックス11と、第1ボックス11に外挿される第2ボックス12と、を有する。本体ボックス10は、第1ボックス11に組み付けられる第3ボックス13と、第2ボックス12に組み付けられる第4ボックス14と、を有する。
【0019】
第1ボックス11は、円筒状の支持壁部111と、支持壁部111の一端111aに設けられたフランジ状の接合部112と、を有している。
第1ボックス11は、支持壁部111をモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで設けられており、支持壁部111の内側にモータ2が収容される。
【0020】
接合部112は、回転軸Xに直交する向きで設けられていると共に、支持壁部111よりも大きい外径で形成されている。
【0021】
第2ボックス12は、円筒状の周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
周壁部121は、第1ボックス11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
第1ボックス11と第2ボックス12は、第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。
【0022】
周壁部121の一端121a側の接合部122は、回転軸X方向から、第1ボックス11の接合部112に当接している。これら接合部122、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
第1ボックス11では、支持壁部111の外周に複数の凹溝111bが設けられている。複数の凹溝111bは、回転軸X方向に間隔をあけて設けられている。凹溝111bの各々は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121が外挿される。凹溝111bの開口が周壁部121で閉じられる。支持壁部111と周壁部121との間に、冷却液CLが通流する複数の冷却路CPが形成される。
【0023】
周壁部121の、接合部122側には冷却液CLの導入口124aが設けられ、接合部123側には冷却液CLの排出口124bが設けられている。導入口124aおよび排出口124bは、周壁部121を回転軸Xの径方向に貫通する孔であり、それぞれに冷却液CLが通流する配管(不図示)が接続している。冷却液CLは、ウォーターポンプ(不図示)によって車両内部に配設された配管(不図示)を循環している。冷却液CLは、導入口124aから冷却路CPに導入され、後記するモータ室Sa内のオイルOLを冷却する。
【0024】
第1ボックス11の支持壁部111の外周では、凹溝111bが設けられた領域の両側に、リング溝111c、111cが形成されている。リング溝111c、111cには、シールリング113、113が外嵌して取り付けられている。
これらシールリング113は、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0025】
第2ボックス12の他端121bには、接合部123から内径側に延びる梁部120が設けられている。梁部120は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。梁部120の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフトDAが挿通する開口120aが設けられている。
梁部120の、モータ2側(図中、右側)の面に、開口120aを囲む筒状のモータ支持部125が設けられている。
【0026】
モータ支持部125は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部125は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
モータ支持部125の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部125で支持されている。
【0027】
モータ支持部125と接合部123の間に、回転軸Xの径方向に延びる複数の開口120bが形成されている。複数の開口120bは、回転軸Xの周方向に間隔を空けて設けられている。開口120bを介して、第2ボックス12と第4ボックス14の内部は連通している。
【0028】
図2は、動力伝達装置1の車両への搭載状態を基準とした鉛直方向が、図の上下方向に沿うように図示している。第2ボックス12の周壁部121は、鉛直方向の下側の領域の径方向の厚みが、上側の領域よりも厚くなっている。
この径方向の厚みが厚い領域には、回転軸X方向に貫通してオイル溜り部128が設けられている。
オイル溜り部128は、第1ボックス11の接合部112に設けた連通孔112aを介して、第3ボックス13の接合部132に設けた軸方向油路138に連絡している。
【0029】
第3ボックス13は、回転軸Xに直交する壁部130を有している。壁部130の外周部には、回転軸X方向から見てリング状を成す接合部132が設けられている。
第1ボックス11から見て第3ボックス13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。第3ボックス13の接合部132は、第1ボックス11の接合部112に回転軸X方向から接合されている。第3ボックス13と第1ボックス11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ボックス11は、支持壁部111の接合部122側(図中、右側)の開口が、第3ボックス13で塞がれている。
【0030】
第3ボックス13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフトDAの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフトDAの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフトDAの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第1ボックス11側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフトDAがベアリングB4を介して支持されている。
【0031】
周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)には、モータ支持部135が設けられている。モータ支持部135は、回転軸Xを間隔を空けて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、モータ2から離れる方向に延びている。接続壁136は、モータ支持部135と第3ボックス13の壁部130とを接続している。
【0032】
モータ支持部135は、接続壁136を介して第3ボックス13で支持されている。モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
【0033】
接続壁136には開口136aが設けられている。接続壁136で囲まれた空間(内部空間Sc)は、この開口136aを介して後記するモータ室Saと連通している。
【0034】
第4ボックス14は、遊星減速ギア4と差動機構5の外周を囲む周壁部141と、周壁部141における第2ボックス12側の端部に設けられたフランジ状の接合部142と、を有している。
第4ボックス14は、第2ボックス12から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。第4ボックス14の接合部142は、第2ボックス12の接合部123に回転軸X方向から接合されている。第4ボックス14と第2ボックス12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0035】
動力伝達装置1の本体ボックス10の内部には、モータ2を収容するモータ室Saと、遊星減速ギア4と差動機構5を収容するギア室Sb(第1室)とが形成されている。
モータ室Saは、第1ボックス11内の、第2ボックス12の梁部120と、第3ボックス13の壁部130との間に形成されている。
【0036】
ギア室Sbは、第4ボックス14内の第2ボックス12の梁部120と、第4ボックス14の周壁部141との間に形成されている。モータ室Saとギア室Sbとは、梁部120の開口120bを介して連通している。本体ボックス10の内部には、モータ2、遊星減速ギア4および差動機構5等を潤滑するためのオイルOLが封入されている。図2では太線で示しているが、モータ室Saおよびギア室Sbには、オイルOLを貯留するオイル貯留部OPが形成されている。オイル貯留部OPのオイルOLは、前記した内部空間Scにも、開口136aを介して流入可能になっている。
【0037】
ギア室Sbの内部には、プレート部材8(プレート)が設けられている。
プレート部材8は、第4ボックス14にボルトBで固定されている。
プレート部材8は、ギア室Sbを、遊星減速ギア4と差動機構5を収容する第1ギア室Sb1と、パークロック機構3を収容する第2ギア室Sb2とに区画している。
回転軸X方向において第2ギア室Sb2は、第1ギア室Sb1と、モータ室Saとの間に位置している。第2ギア室Sb2がモータ室Saと梁部120の開口120bを介して連通している。
【0038】
モータ2は、モータシャフト20と、ロータコア21(ロータ)と、ステータコア25(ステータ)と、を有する。モータシャフト20は円筒状である。ドライブシャフトDAは、モータシャフト20の内周を貫通して配置される。ロータコア21は円筒状であり、モータシャフト20に外挿される。ステータコア25は、ロータコア21の外周を間隔を空けて囲む。
【0039】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、第3ボックス13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側に位置するベアリングB1は、第2ボックス12の円筒状のモータ支持部125の内周に支持されている。
【0040】
モータ支持部135、125は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側で、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0041】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0042】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ボックス11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
電磁鋼板の各々は、ヨーク部251と、ティース部252と、コイル253と、を有する。ヨーク部251はリング状であり、支持壁部111の内周に固定される。ティース部252は、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出する。
【0043】
本実施形態では、コイル253は、複数のティース部252に跨がって巻線(図示せず)を巻き付けることで形成されている。コイル253を形成する巻線には、公知の銅線等を用いることができる。なお、コイル253は、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を分布巻きした構成としても良く、集中巻きした構成としても良い。
【0044】
ステータコア25では、回転軸X方向のコイル253の長さが、ロータコア21よりも長くなるように設定されている。ステータコア25は、回転軸X方向におけるコイル253の両端部に位置するコイルエンド253a、253bが、ロータコア21よりも回転軸X方向にそれぞれ張り出している。コイルエンド253a、253bは、ティース部252を挟んで対称な形状を成している。
【0045】
モータシャフト20の他端20b側は、第2ボックス12の梁部120(モータ支持部125)に設けた開口120aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、第4ボックス14内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、第4ボックス14の内側で、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0046】
図3に示すように、モータシャフト20では、第4ボックス14内に位置する領域に、段部201が設けられている。モータシャフト20では、段部201から他端20bの近傍までの領域が、外周にスプラインが設けられた嵌合部202となっている。
嵌合部202の外周には、パークロック機構3のパークギア30と、サンギア41がスプライン嵌合している。
【0047】
パークギア30の回転軸X方向における一方の側面は、段部201に当接している。パークギア30の回転軸X方向における他方の側面には、サンギア41の円筒状の基部410の一端410aが当接している。
基部410の他端410bには、モータシャフト20の他端20bに螺合したナットNが、回転軸X方向から圧接している。
サンギア41とパークギア30は、ナットNと段部201との間に挟み込まれた状態で、モータシャフト20に対して相対回転不能に設けられている。
【0048】
サンギア41は、モータシャフト20の他端20b側の外周に、歯部411を有している。歯部411の外周には、段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0049】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432とを有している。
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432が、回転軸Xに平行な軸線X1方向で並んで、一体に設けられたギア部品である。
大径歯車部431は、小径歯車部432の外径R2よりも大きい外径R1で形成されている。
段付きピニオンギア43は、軸線X1に沿う向きで設けられている。段付きピニオンギア43の大径歯車部431がモータ2側(図中、右側)に位置している。
【0050】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔を空けて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、径方向外側に突出する複数の係合歯421が設けられている。複数の係合歯421は、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて設けられている。
リングギア42の外周に設けた係合歯421が、第4ボックス14の支持壁部146に設けた歯部146aにスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。
【0051】
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432の内径側を軸線X1方向に貫通した貫通孔430を有している。
段付きピニオンギア43は、貫通孔430を貫通したピニオン軸44の外周で、ニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0052】
図4に示すように、ピニオン軸44の内部には、軸内油路440が設けられている。軸内油路440は、軸線X1に沿ってピニオン軸44の一端44aから、他端44bまで貫通している。
ピニオン軸44には、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させる油孔442、443が設けられている。
【0053】
さらに、ピニオン軸44には、オイルOLを軸内油路440に導入するための導入路441が設けられている。
導入路441は、後記する第2ケース部7の基部71に形成されたケース内油路781に連通している。
【0054】
ケース内油路781には、後記するデフケース50が掻き上げたオイルOLが流入する。ケース内油路781には、デフケース50の回転による遠心力で外径側に移動するオイルOLが流入する。
ケース内油路781から導入路441に流入したオイルOLは、ピニオン軸44の軸内油路440に流入する。軸内油路440に流入したオイルOLは、油孔442、443から径方向外側に排出される。油孔442、443から排出されたオイルOLは、ピニオン軸44に外挿されたニードルベアリングNBを潤滑する。
【0055】
ピニオン軸44では、導入路441が設けられた領域よりも他端44b側に、貫通孔444が設けられている。貫通孔444は、ピニオン軸44を直径線方向に貫通している。
ピニオン軸44は、貫通孔444と、後記する第2ケース部7側の挿入穴782との軸線X1回りの位相を合わせて設けられている。挿入穴782に挿入された位置決めピンPが、ピニオン軸44の貫通孔444を貫通する。これによって、ピニオン軸44は、軸線X1回りの回転が規制された状態で、第2ケース部7側で支持される。
【0056】
図4に示すように、ピニオン軸44の長手方向の一端44a側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第1軸部445となっている。第1軸部445は、デフケース50の第1ケース部6に設けた支持孔61aで支持されている。
ピニオン軸44の長手方向の他端44b側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第2軸部446となっている。第2軸部446は、デフケース50の第2ケース部7に設けた支持孔71aで支持されている。
【0057】
ここで、第1軸部445は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない一端44a側の領域を意味する。第2軸部446は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない他端44b側の領域を意味する。
ピニオン軸44の第2軸部446の軸線X1方向の長さは、第1軸部445の軸線X1方向の長さよりも長い。
【0058】
以下、差動機構5の主要構成を説明する。
図5は、差動機構5の分解斜視図である。
図4および図5に示すように、差動機構5のデフケース50は、第1ケース部6と第2ケース部7を回転軸X方向で組み付けて形成される。本実施形態では、デフケース50の第1ケース部6と第2ケース部7が、遊星減速ギア4のピニオン軸44を支持するキャリアとしての機能を有している。
【0059】
デフケース50の第1ケース部6と第2ケース部7との間には、3つのピニオンメートギア52と、3つのピニオンメートシャフト51と、が設けられている。ピニオンメートシャフト51は、ピニオンメートギア52を支持する支持軸として機能する。
ピニオンメートシャフト51は、回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている。ピニオンメートシャフト51各々の内径側の端部は、共通の連結部510で互いに連結されている。
【0060】
ピニオンメートギア52は、ピニオンメートシャフト51の各々に外挿されている。ピニオンメートギア52の各々は、回転軸Xの径方向外側から、連結部510に接触している。
この状態においてピニオンメートギア52の各々は、ピニオンメートシャフト51で回転可能に支持されている。
【0061】
図4に示すように、デフケース50では、回転軸X方向における連結部510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。サイドギア54Aは、第1ケース部6で回転可能に支持される。サイドギア54Bは、第2ケース部7で回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、ピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、ピニオンメートギア52に噛合している。
【0062】
第1ケース部6は、リング状の基部61を有している。基部61の中央部には、開口60が設けられている。基部61における第2ケース部7とは反対側(図中、右側)の面には、開口60を囲む筒壁部611が設けられている。筒壁部611の外周は、ベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている。
【0063】
図5に示すように、基部61における第2ケース部7側の面には、第2ケース部7側に延びる3つの連結梁62が設けられている。
連結梁62は、回転軸X周りの周方向に、等間隔で設けられている。連結梁62は、基部61に対して直交する基部63と、基部63よりも幅広の連結部64と、を有している。
【0064】
図4に示すように、連結部64の先端面には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝65が設けられている。
連結部64の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う形状で円弧部641が形成されている。
円弧部641では、ピニオンメートギア52の外周が支持される。
【0065】
連結梁62では、基部63と連結部64との境界部にギア支持部66が接続されている。ギア支持部66は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。ギア支持部66は、中央部に貫通孔660を有している。この貫通孔660はサイドギア54Aの筒状壁541に外挿される。
【0066】
基部61には支持孔61aが設けられている。支持孔61aはピニオン軸44の一端44aに外挿されている。
【0067】
第2ケース部7は、リング状の基部71を有している。
基部71の中央部には、基部71を厚み方向に貫通する貫通孔70が設けられている。
基部71における第1ケース部6とは反対側(図中、左側)の面には、貫通孔70を囲む筒壁部72と、筒壁部72を間隔を空けて囲む周壁部73が設けられている。
【0068】
周壁部73の内径側には、基部71を厚み方向に貫通するスリット710が設けられている。回転軸周りの周方向で隣り合うスリット710、710の間には突出壁711が設けられている。突出壁711は、回転軸Xの径方向に直線状に延びている。突出壁711は、外径側の周壁部73と内径側の筒壁部72とに跨がって設けられている。
【0069】
周壁部73の外径側では、回転軸X周りの周方向で隣り合う支持孔71a、71aの間に、紙面奥側に窪んだボルト収容部76、76が設けられている。
ボルト収容部76の内側には、ボルトの挿通孔77が開口している。挿通孔77は、基部71を厚み方向(回転軸X方向)に貫通している。
【0070】
基部71における第1ケース部6側(図中、右側)の面には、第1ケース部6側に突出する連結部74が設けられている。
図4に示すように、連結部74の先端面には、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝75が設けられている。連結部74の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う円弧部741が設けられている。円弧部741では、ピニオンメートギア52の外周が支持される。
【0071】
図5に示すように、サイドギア54Bの裏面には、円筒状の筒壁部540が設けられている。ワッシャ55が筒壁部540に外挿されている。第2ケース部7の基部71には、第1ケース部6側(図中右側)に突出するガイド部78が設けられている。
【0072】
図4に示すように、軸線X1に沿う断面視において、ガイド部78の支持孔71aには、第1ケース部6側からピニオン軸44が挿入される。
【0073】
デフケース50では、第2ケース部7の筒壁部72に、ベアリングB2が外挿されている。筒壁部72に外挿されたベアリングB2は、第4ボックス14の支持部145で保持されており、デフケース50の筒壁部72は、ベアリングB2を介して、第4ボックス14で回転可能に支持されている。
【0074】
支持部145には、第4ボックス14の開口部145aを貫通したドライブシャフトDBが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフトDBは、支持部145で回転可能に支持されている。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフトDBに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0075】
デフケース50の第1ケース部6は、筒壁部611に外挿されたベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている。
図2に示すように、第1ケース部6の内部には、第3ボックス13の挿通孔130aを貫通したドライブシャフトDAが、回転軸方向から挿入されている。
ドライブシャフトDAは、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0076】
図4に示すように、デフケース50の内部では、ドライブシャフトDA、DBの先端部の外周に、サイドギア54A、54Bがスプライン嵌合している。サイドギア54A、54BとドライブシャフトDA、DBとが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0077】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されている。サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の連結部510が位置している。
図5に示すように、ピニオンメートギア52はピニオンメートシャフト51の各々に支持される。ピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0078】
図2に示すように、動力伝達装置1を車両へ搭載した状態で、デフケース50の下部側は、オイル貯留部OP内に位置している。
【0079】
本実施形態では、連結梁62が最も下部側に位置した際に、連結梁62がオイル貯留部OP内に位置する高さまで、オイルOLが貯留されている。
オイル貯留部OPのオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
【0080】
図6から図11は、オイルキャッチ部15を説明する図である。
図6は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。
図7は、図6に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図8は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。図8は、デフケース50を配置した状態を示している。図9は、図8に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図10は、図8におけるA-A断面の模式図である。
図11は、動力伝達装置1を上方から見た場合におけるオイルキャッチ部15と、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)との位置関係を説明する模式図である。
なお、図6および図8では、第4ボックス14の接合部142と、支持壁部146の位置を明確にするために、ハッチングを付して示している。また、図6および図8はプレート部材8の図示は省略している。
【0081】
図6に示すように、回転軸X方向から見て第4ボックス14には、中央の開口部145aを間隔を空けて囲む支持壁部146が設けられている。支持壁部146の内側(回転軸X)が、デフケース50の収容部140となっている。
第4ボックス14内の上部には、オイルキャッチ部15の空間と、ブリーザ室16の空間が形成されている。
【0082】
第4ボックス14の支持壁部146では、鉛直線VLと交差する領域に連通口147が設けられている。連通口147は、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる。
【0083】
オイルキャッチ部15とブリーザ室16は、回転軸Xと直交する鉛直線VLを挟んだ一方側(図中、左側)と他方側(図中、右側)に、それぞれ位置している。
オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転中心(回転軸X)を通る鉛直線VLからオフセットした位置に配置されている。上方からオイルキャッチ部15を見ると、オイルキャッチ部15は、デフケース50の真上からオフセットした位置に配置されている。
ここで、鉛直線VLは、動力伝達装置1の車両での設置状態を基準とした鉛直線VLである。回転軸X方向から見て鉛直線VLは、回転軸Xと直交している。
なお、以下の説明において水平線HLは、動力伝達装置1の車両での設置状態を基準とした水平線HLである。回転軸X方向から見て水平線HLは、回転軸Xと直交している。
【0084】
図6においてオイルキャッチ部15は、支持壁部146よりも紙面奥側まで及んで形成されている。
オイルキャッチ部15の下縁には、紙面手前側に突出して支持台部151(棚部)が設けられている。支持台部151は、支持壁部146よりも紙面手前側であって、第4ボックス14の接合部142よりも紙面奥側までの範囲に設けられている。
【0085】
回転軸X方向から見て、オイルキャッチ部15の鉛直線VL側(図中、右側)に連通口147が設けられている。連通口147は、支持壁部146の一部を切り欠いて形成されている。
回転軸X方向から見て連通口147は、鉛直線VLをブリーザ室16側(図中、右側)から、オイルキャッチ部15側(図中、左側)に横切る範囲に設けられている。
【0086】
図8に示すように、本実施形態では、動力伝達装置1を搭載した車両の前進走行時に、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
そのため、オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。そして、連通口147の周方向の幅は、鉛直線VLを挟んだ左側が、右側よりも広くなっている。ここで、連通口147の鉛直線VLを挟んだ左側は、デフケース50の回転方向における下流側であり、右側は上流である。これにより、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入できるようになっている。
【0087】
さらに、図11に示すように、前記したピニオン軸44の第2軸部446の回転軌道の外周位置と、大径歯車部431の回転軌道の外周位置は、回転軸Xの径方向でオフセットしている。第2軸部446の回転軌道の外周位置は、大径歯車部431の回転軌道の外周位置よりも内径側に位置している。
そのため、第2軸部446は外径側に空間的な余裕がある。オイルキャッチ部15は、この空間を利用して設けられており、本体ボックス10内の空間の有効利用が可能となっている。
【0088】
図11に示すように、第2軸部446は、モータ2から見て小径歯車部432の奥側に突出している。第2軸部446の周辺部材(例えば、第2軸部446を支持するデフケース50のガイド部78)が、オイルキャッチ部15に近接して位置する。
これによって、当該周辺部材からオイルキャッチ部15へのオイルOL(潤滑油)の供給をスムーズに行うことができる。
【0089】
図7に示すように、支持台部151の奥側には、油孔151aの外径側の端部が開口している。油孔151aは、第4ボックス14内を内径側に延びている。油孔151aの内径側の端部は、支持部145の内周に開口している。
図4に示すように、支持部145において油孔151aの内径側の端部は、リップシールRSとベアリングB2との間に開口している。
【0090】
図8および図11に示すように、支持台部151には、オイルガイド152が載置されている。
オイルガイド152は、キャッチ部153と、キャッチ部153から第1ボックス11側(図8における紙面手前側)に延びるガイド部154とを有している。
【0091】
図11に示すように、上方から見て支持台部151は、回転軸Xの径方向外側で、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)の一部に重なる位置に、段付きピニオンギア43(大径歯車部431)との干渉を避けて設けられている。
回転軸Xの径方向から見て、キャッチ部153は、ピニオン軸44の第2軸部446と重なる位置に設けられている。さらにガイド部154は、ピニオン軸44の第1軸部445と大径歯車部431と重なる位置に設けられている。
【0092】
そのため、デフケース50が回転軸X回りに回転する際に、デフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部が、キャッチ部153とガイド部154側に向けて移動する。
【0093】
キャッチ部153の外周縁には、支持台部151から離れる方向(上方向)に延びる壁部153aが設けられている。回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部は、オイルガイド152に貯留される。
【0094】
キャッチ部153の奥側(図9における紙面奥側)では、壁部153aに切欠部155が設けられている。
切欠部155は、油孔151aに対向する領域に設けられている。キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部が、切欠部155の部分から油孔151aに向けて排出される。
【0095】
ガイド部154は、キャッチ部153から離れるにつれて下方に位置する向きで傾斜している。ガイド部154の幅方向の両側には、壁部154a、154aが設けられている。壁部154a、154aは、ガイド部154の長手方向の全長に亘って設けられている。壁部154a、154aは、キャッチ部153の外周を囲む壁部153aに接続されている。
キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部が、ガイド部154側にも排出される。
【0096】
図10に示すように、ガイド部154は、デフケース50(図2参照)との干渉を避けた位置を、第2ボックス12側に延びる。ガイド部154の先端154bは、パークロック機構3(図2参照)の上方に位置する。図10の矢印で示すように、ガイド部154の先端154bに到達したオイルOLは下方に落下し、パークロック機構3(図2参照)に供給されるようになっている。
【0097】
図2に示すように、第3ボックス13の壁部130の接合部132の間に、径方向油路137が設けられている。径方向油路137は、接合部132内に設けた軸方向油路138に連通している。
【0098】
軸方向油路138は、第1ボックス11の接合部112に設けた連通孔112aを介して、第2ボックス12の下部に設けたオイル溜り部128に連絡している。
オイル溜り部128は、周壁部121内を回転軸X方向に貫通し、モータ室Saおよびギア室Sbのオイル貯留部OPに連絡している。
【0099】
ギア室Sbでは、円板状のプレート部材8が、回転軸Xに直交する向きで設けられている。前記したようにプレート部材8は、第4ボックス14内のギア室Sbを、デフケース50側の第1ギア室Sb1と、モータ2側の第2ギア室Sb2に区画している。
【0100】
図12および図13は、プレート部材8を説明する図である。
図12は、プレート部材8をモータ2側から見た平面図である。
図13は、図12におけるA-A断面図である。
図13に示すように、プレート部材8は面80aと面80bを有する。面80b(対向面)は、歯車機構である遊星減速ギア4およびデフケース50(図2参照)に対向する。反対側の面80a(裏面)は、モータ2(図2参照)に対向する。
図12に示すように、モータ2側から見てプレート部材8は、リング状の基部80を有している。基部80の中央部には、貫通孔800を囲むリング状の支持部801が設けられている。
【0101】
図12に示すように、基部80の外周縁80cには、接続片81、82、83、84が設けられている。
接続片81、82、83、84の各々は、基部80の外周縁80cから径方向外側に延出している。接続片81、82、83、84には、それぞれボルト孔81a、82a、83a、84aが設けられている。
【0102】
接続片81は、プレート部材8の上部において鉛直線VLと交差する位置に設けられている。接続片81は、鉛直線VLに沿って基部80から離れる方向に延びている。
鉛直線VLの一方側(図12における左側)では、水平線HLを挟んだ上側と、下側に、それぞれ1つずつ接続片82、83が設けられている。これら接続片82、83もまた、基部80から離れる方向に延びている。
【0103】
鉛直線VLの他方側(図12における右側)では、水平線HLよりも下側に接続片84が設けられている。この接続片84は、水平線HLの下側で、前記した接続片83の下縁を通ると共に水平線HLに対して平行な直線HLaと交差する位置から下方に突出している。
【0104】
鉛直線VLの他方側(図12における右側)では、水平線HLよりも上側に接続片85が設けられている。接続片85は、回転軸X回りの周方向に幅を有する円弧状に設けられている。接続片85における鉛直線VL寄りの位置には、ボルト孔85aが設けられている。水平線HL寄りの位置には、支持ピン85bが設けられている。支持ピン85bは、紙面手前側に突出している。
【0105】
プレート部材8におけるモータ2側の面80a(図13参照)には、ストッパピン861(図17参照)の支持ボス86が設けられている。支持ボス86には、ストッパピン861が挿通する孔86a(図12参照)が設けられている。支持ボス86は、鉛直線VL上に位置する接続片81の下側で、接続片81に隣接して設けられている。
【0106】
図12に示すように、支持ボス86の下側には、取付ボス87が設けられている。取付ボス87は、支持ピン85bを通り、前記した水平線HLに平行な直線HLbと交差する位置に設けられている。取付ボス87は、支持ボス86よりも紙面手前側まで突出している。
さらに、鉛直線VL方向における支持ピン85bの下側には、取付ボス87と対になる取付ボス88が設けられている。
【0107】
取付ボス87から見て、支持ピン85bとは反対側(図中、左側)には、後記するサポート33の取付部89が設けられている。
取付部89では、水平線方向で隣接して2つのボルト孔89a、89aが設けられている。
【0108】
図14は、第4ボックス14をモータ2側から見た図であって、プレート部材8の外周縁を支持する段部148d、149d、17dの配置を説明する図である。
なお、図14では、周壁部148、149、弧状壁部17の位置と、段部148d、149d、17dの位置を明確にするために、これらにハッチングを付して示している。
図15は、第4ボックス14をモータ2側から見た図であって、プレート部材8が取り付けられた状態を説明する図である。
【0109】
図14に示すように、回転軸X方向から見て第4ボックス14には周壁部148、149が設けられている。周壁部148、149は、支持壁部146における歯部146aが設けられた領域の外径側に設けられている。
周壁部148、149は、回転軸Xを中心とした円弧状に形成されている。
【0110】
周壁部148は、鉛直線VL方向において、前記したオイルキャッチ部15の下側に位置している。
回転軸X方向から見て周壁部148は、回転軸Xを通る水平線HLを、上側から下側に横切る範囲に設けられている。
周壁部148の上側の端部148aは、支持台部151の近傍に位置している。周壁部148の下側の端部148bは、直線HLaの近傍に位置している。
【0111】
回転軸X方向から見て周壁部148の内周148cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。周壁部148の内周148cの内径は、プレート部材8の外径よりもわずかに大きくなっている。ここで、内周148cの内径とプレート部材8の外径は、回転軸Xを基準とするものである。
周壁部148の内側には、紙面奥側に窪んだ段部148dが設けられている。
段部148dには、プレート部材8を第4ボックス14に取り付けた際に、プレート部材8(基部80)の外周縁が、回転軸X方向から当接する。
【0112】
周壁部148の外側には、ボルト孔18aを有するボス部18が、周壁部148と一体に形成されている。ボス部18は、周壁部148の上側の端部148a側と、下側の端部148bの近傍に設けられている。ボス部18、18は、周壁部148よりも紙面手前側まで突出している。
【0113】
周壁部149は、前記したブリーザ室16の下側に位置している。周壁部149は、ブリーザ室16を区画する壁部160よりも紙面奥側に位置している。
回転軸X方向から見て周壁部149の上側の端部149aは、鉛直線VL上で、ボス部18に接続している。ボス部18には、オイルキャッチ部15側に延びる側壁部159がさらに接続されている。周壁部149の下側の端部149bは、ブリーザ室16の下側で第4ボックス14の周壁部141に接続されている。
【0114】
回転軸X方向から見て周壁部149の内周149cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。周壁部149の内周149cの内径は、プレート部材8の外径よりもわずかに大きくなっている。ここで、内周149cの内径とプレート部材8の外径は、回転軸Xを基準とするものである。
周壁部149の内側には、紙面奥側に窪んだ段部149dが設けられている。段部149dには、プレート部材8を第4ボックス14に取り付けた際に、プレート部材8(基部80)の外周縁が、回転軸X方向から当接する。
【0115】
周壁部149の外側には、ボルト孔18aを有するボス部18、18が、周壁部149と一体に形成されている。
ボス部18、18は、回転軸X回りの周方向に間隔をあけて設けられている。ボス部18は、周壁部149の上側の端部148aの外周と、ブリーザ室16の下側に位置する領域の外周に設けられている。
ボス部18、18は、周壁部149よりも紙面手前側まで突出している。
【0116】
第4ボックス14では、ブリーザ室16の下側であって水平線HLよりも下側の領域に、弧状壁部17が設けられている。弧状壁部17は、回転軸X周りの周方向において、周壁部148に対して大凡180°位相をずらした位置に設けられている。
回転軸X方向から見て弧状壁部17の内周17cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。弧状壁部17の内周17cの内径は、プレート部材8の外径よりもわずかに大きくなっている。ここで、内周17cの内径とプレート部材8の外径は、回転軸Xを基準とするものである。
弧状壁部17では、前記した直線HLaと交差する位置に、ボルト孔18aを有するボス部18が形成されている。ボス部18は、弧状壁部17よりも紙面手前側に突出している。
【0117】
ボス部18の内周には、回転軸X方向に突出して段部17dが設けられている。
段部17dには、プレート部材8を第4ボックス14に取り付けた際に、プレート部材8(基部80)の外周縁が、回転軸X方向から当接する。
【0118】
ここで、プレート部材8の第4ボックス14への取り付けは、はじめに、プレート部材8(基部80)の外周縁を、周壁部148、149の段部148d、149dと、弧状壁部17の段部17dに、回転軸X方向から当接させる。続いて、接続片81~85のボルト孔81a~85aを貫通したボルトBを、対応するボス部18のボルト孔18aに螺入することで、プレート部材8が第4ボックス14に固定される(図16参照)。
【0119】
図16図17および図18は、パークロック機構3を説明する図である。図16は、パークロック機構3が設けられた第4ボックス14を斜め上方から見た斜視図である。図17は、パークロック機構3が設けられた第4ボックス14をモータ2側から見た平面図である。図18は、パークロック機構3を上方から見た図である。
【0120】
図16に示すように、パークロック機構3は、パークギア30と、パークポール31と、パークロッド32と、サポート33と、ホルダ34と、マニュアルプレート35と、ディテントスプリング36と、マニュアルシャフト37と、を有している。
パークロック機構3はパークバイワイヤ式のパークロック機構である。パークロック機構3は、動力伝達装置1を搭載した車両の走行モード/駐車モードの切り替えがセンサにより検出されると、アクチュエータACTにより、マニュアルシャフト37を回転軸Y(図18参照)回りに回動させる。
【0121】
本実施形態では、プレート部材8のモータ2側(図18における下側)に、パークギア30と、パークポール31と、パークロッド32と、サポート33と、ホルダ34が位置している。反対側に、マニュアルプレート35と、ディテントスプリング36と、マニュアルシャフト37が位置している。
【0122】
ホルダ34は、板状部材である。ホルダ34は、パークポール31を支持するための突起部341を備えている。図16および図17に示すように、パークポール31は、ホルダ34を介してプレート部材8で支持されている。
パークポール31は、挿通孔310dを有する第1板状部310と、爪部311cを有する第2板状部311と、を有する一体部品である。
【0123】
パークポール31の挿通孔310dには、ホルダ34側の突起部341が挿入されている。パークポール31は、突起部341で回動可能に支持されている。パークポール31は、回転310では、屈曲部310eよりも先の領域が、直線Lx2に沿って延びている。この領域の先端側が、パークロッド32のカム320により操作される被操作部310cとなっている。
被操作部310cは、サポート33で支持されたカム320に載置されている。
【0124】
回転軸X方向から見て第2板状部311の下部には、爪部311cが設けられている。爪部311cはパークギア30との係合部である。爪部311cは、第2板状部311の下部から回転軸X側に膨出して形成されている。
【0125】
パークポール31の第1板状部310では、挿通孔310dの側方に係止孔310fが設けられている。係止孔310fには、プレート部材8の支持ピン85bに外挿されたスプリングSpの一端が係合している。パークポール31は、スプリングSpから作用する付勢力で、爪部311cを、パークギア30から離間させる方向(図17では反時計回り方向:矢印参照)に常時付勢されている。
【0126】
図3に示すようにパークポール31の第1板状部310は、回転軸X方向において、ホルダ34とプレート部材8との間に配置されている。第2板状部311は、第1板状部310よりもモータ2側(図中、右側)に位置している。第2板状部311は、ホルダ34の内径側を下方に向けて延びている。
【0127】
図17に示すように、回転軸X方向から見てパークロッド32は、回転軸Xに直交すると共に、水平線HLよりも上側を通る直線Lx3に沿う向きで設けられている。
パークロッド32は、カム320が外挿された先端側を、パークポール31側(ブリーザ室16側)に向けて設けられている。カム320は、サポート33と、パークポール31の被操作部310cとの間に挿入されている。
【0128】
パークロッド32が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間にカム320を押し込む方向(図18における右方向)に変位すると、カム320が、被操作部310cを押し上げる。
これにより、パークポール31は、図17における時計回り方向に回動して、係合位置に配置される。係合位置は、爪部311cをパークギア30の外周に係合させる位置である。
【0129】
パークロッド32が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間から、カム320を引き抜く方向(図18における左方向)に変位すると、パークポール31は、スプリングSpの付勢力により、図17における反時計回り方向に回動する。反時計回り方向に回動したパークポール31は、離脱位置に配置される。離脱位置は、爪部311cをパークギア30の外周から離脱させた位置である。
【0130】
図18に示すように、パークロッド32の他端32bは、マニュアルプレート35の連結部355で支持されている。この状態においてパークロッド32は、連結部355からの脱落が阻止された状態で、軸方向に変位可能に設けられている。
【0131】
マニュアルプレート35は、基部351、腕部353および係合部352を有している。基部351は、マニュアルシャフト37に外挿される。腕部353および係合部352は、基部351の外周から、マニュアルシャフト37の回転軸Yの径方向に延びる。
【0132】
基部351は、マニュアルシャフト37との相対回転が規制された状態で、マニュアルシャフト37に固定されている。
腕部353は、基部351の外周からモータ2に近づく方向に延びている。回転軸Xの径方向から見て、腕部353は、プレート部材8の外径側をモータ2側に横切っている。
【0133】
図16に示すように、腕部の353の先端側は、下側(回転軸)側に折り曲げられたのち、連結部355が上面に固定された支持部354に接続している。
【0134】
図18に示すように、ディテントスプリング36の長手方向の基端部361が、ボルトBで、第4ボックス14に固定されている。ディテントスプリング36のローラ365が設けられた先端側は、マニュアルプレート35の基部351の径方向に弾性変位可能である。ディテントスプリング36の先端側は、マニュアルプレート35の基部351の外周(凹部)に圧接している。
【0135】
実施形態では、動力伝達装置1を搭載した車両の走行モード/駐車モードの切り替えに連動して、マニュアルシャフト37が回転軸Y回りに回動する。
マニュアルシャフト37が回動すると、マニュアルシャフト37に固定されたマニュアルプレート35もまた回転軸Y回りに回動する。そうすると、マニュアルプレート35の基部351から延びる腕部353と、腕部353の先端の支持部354に固定された連結部355が、回転軸Y回りの周方向に変位する。連結部355に連結されたパークロッド32もまた、パークロッド32の長手方向に変位する。
【0136】
図2に示すように、第4ボックス14のギア室Sbの下方に、ギア室Sbに隣接してストレーナ室SR(第2室)が設けられている。ストレーナ室SRの内部には、ストレーナ90が配置されている。図2では模式的に図示しているため省略するが、ストレーナ90は不図示の固定具により、ストレーナ室SR内に固定されている。
図19は、ストレーナ室SR周りの拡大図である。
図19に示すように、ストレーナ室SRは、支持壁部146と、ジャケット部143と、蓋部144に囲まれた空間であり、ギア室Sbと離間して設けられている。言い換えると、ストレーナ室SRは、第4ボックス14の内壁である支持壁部146によって、ギア室Sbと隔てられている。
【0137】
支持壁部146の下部には、複数の段差から形成される段差部146cが設けられている。段差部146cは、蓋部144との接合部146bから、第2ボックス12との接合部142に向かって段階的に拡径している。
ジャケット部143は、段差部146cの外周(径方向外方)を覆う壁部である。ジャケット部143は、回転軸X方向に沿って延びる。段差部146cの回転軸X方向の一端側に設けられた基端部143aが、第4ボックス14の下部において接合部142に接続している。段差部146cの回転軸X方向の他端側に設けられた接合部143bには、蓋部144が接合する。
【0138】
ジャケット部143の内壁面143cは、段差部146cに対して隙間を介して対向しているが、隙間は接合部143bから基端部143aに向かって徐々に狭くなっている。ジャケット部143の接合部143bと支持壁部146の接合部146bとが、ストレーナ室SRの開口部SRoを形成する。蓋部144は、ストレーナ室SRの開口部SRoを閉止する。
【0139】
このように、支持壁部146の段差部146cを利用して設けられたストレーナ室SRは、ギア室Sbに対して、回転軸X方向および回転軸Xの径方向においてオーバーラップしている。第4ボックス14では、支持壁部146の段差部146cの外径が、第2ボックス12から離れるにつれて小さくなっている。そのため、段差部146cの外径側に空間的な余裕がある。この空間は、図19における左側に向かうにつれて径方向の大きさが大きくなる。本実施形態では、この空間を利用してストレーナ室SRを設けている。
段差部146cは、第2ボックス12の周壁部121に対して縮径している。図2に示すように、ストレーナ室SRのジャケット部143の一部は、モータ室Saを構成する第2ボックス12の周壁部121と回転軸X方向にオーバーラップしている。
【0140】
段差部146cには、ギア室Sbとストレーナ室SRを連通する開口部146dが形成されている。開口部146dは、回転軸X方向におけるプレート部材8の面80b側に位置する。開口部146dは、支持壁部146を回転軸Xの径方向に貫通して、鉛直方向上方に開口している。この開口部146dを介して、ギア室Sbのオイル貯留部OPのオイルOLの一部が、ストレーナ室SRの内部にも流入し、ストレーナ室SR内部でオイル溜りを形成している。
【0141】
ストレーナ室SRの内部に配置されたストレーナ90は、本体部91と吸引口92(ポンプ入口)とを備える。本体部91は、例えば中空の容器である。本体部91は、内部にはオイルOLを濾過するフィルタFが配置されている。吸引口92は、例えば、本体部91の下面から下方に突出する筒状の部材とすることができる。ストレーナ90のうち、少なくとも吸引口92は、ストレーナ室SR内のオイル溜りに浸かっており、すなわち油没している。オイルOLは、吸引口92を介して、本体部91の内部に導入される。
【0142】
ストレーナ90は、配管PIを介して、ストレーナ室SRの外部に設けられたオイルポンプ95(ポンプ)の吸引口95aに接続している。オイルポンプ95は、例えば、不図示のモータにより駆動される電動オイルポンプを用いることができる。オイルポンプ95は、不図示の制御装置により駆動を制御されている。
【0143】
オイルポンプ95の吐出口95bは、車両の内部に配置された不図示の配管を介して、本体ボックス10の上部に形成された油孔Ha、Hb、Hc(図2参照)に接続している。油孔Haは、第4ボックス14の上部であって、デフケース50の外径側に形成されている。油孔Hbは、第2ボックス12の上部であって、モータ2のコイルエンド251bの外径側に形成されている。油孔Hcは、第3ボックス13の上部であって、モータ2のコイルエンド253aの近傍に形成されている。
【0144】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
図1に示すように、動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。
【0145】
モータ2が駆動されて、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0146】
図3に示すように、遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっている。段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0147】
サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、第4ボックス14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。
【0148】
ここで、段付きピニオンギア43では、小径歯車部432の外径R2が大径歯車部431の外径R1よりも小さくなっている(図3参照)。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速される。減速された回転は、デフケース50(差動機構5)に出力される。
【0149】
そして、デフケース50が入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフトDA、DBが回転軸X回りに回転する。これにより動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪(図示せず)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0150】
図2に示すように、モータ室Saおよびギア室Sbの内部には、潤滑用のオイルOLが貯留するオイル貯留部OPが形成されている。オイル貯留部OPに貯留されたオイルOLは、モータ2の回転によって掻き上げられ、モータ2を冷却する。また、掻き上げられたオイルOLの一部は、接続壁136の開口136aを介して、内部空間Scにも流入し、ベアリングB1、B4を潤滑する。
【0151】
ギア室Sbにおいては、モータ2の出力回転の伝達時に、オイル貯留部OPに貯留されたオイルOLが、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
掻き上げられたオイルOLにより、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。
【0152】
図8に示すように、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
第4ボックス14の上部には、オイルキャッチ部15が設けられている。オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置しており、デフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入し、オイルキャッチ部15内で支持台部151に載置されたオイルガイド152に供給される。オイルガイド152に供給されたオイルOLの一部は、図10に示すように、先端154bから落下して、下方に位置するパークロック機構3のパークギア30等(図3参照)を潤滑する。
【0153】
このように、デフケース50によって掻き上げられたオイルOLの多くはオイルキャッチ部15に流入するが、重力に従って落下したオイルOLは、オイル貯留部OPに戻って貯留される。オイル貯留部OPに貯留されたオイルOLの一部は、重力に従って、オイル溜り部128に流入する。モータ2やデフケース50の掻き上げによってオイルOLの温度は上昇するが、オイル溜り部128に流入することによって、冷却路CPを流通する冷却液CLによって冷却される。
【0154】
図19に示すように、オイル貯留部OPに貯留されたオイルOLの一部は、重力およびデフケース50の掻き上げによって発生する遠心力によって、開口部146dを介してストレーナ室SRに流入する。また、オイルOLの一部は、オイルポンプ95の吸引によって発生する負圧によっても、ストレーナ室SRに流入する。
【0155】
オイルポンプ95を駆動させると、ストレーナ室SR内のオイルOLは、ストレーナ90の吸引口92を介して吸引される。ストレーナ90の本体部91に導入されたオイルOLは、フィルタFを通過することで、夾雑物が濾過される。濾過されたオイルOLは、配管PIを介してオイルポンプ95の吸引口95aに吸引される。
【0156】
オイルポンプ95に吸引されたオイルOLは、吐出口95bから吐出される。吐出口95bから吐出されたオイルOLは、本体ボックス10内部の油孔Ha、Hb、Hc(図2参照)にそれぞれ供給される。油孔Haに供給されたオイルOLは、第4ボックス14内の遊星減速ギア4とデフケース50等に供給される。油孔Hbに供給されたオイルOLは、モータ2のコイルエンド253b側と、パークロック機構3に供給される。油孔Hcに供給されたオイルOLは、モータ2のコイルエンド253a側に供給される。このように、動力伝達装置1は、各部品の潤滑および冷却に用いられるオイルOLを濾過して循環させる機構を備えている。
【0157】
実施形態において、ストレーナ90をストレーナ室SRに配置している。ストレーナ室SRは、歯車機構である遊星減速ギア4およびデフケース50を収容したギア室Sbとは、離間して設けられている。具体的には、ストレーナ室SRは支持壁部146によってギア室Sbと隔てられている。ここで、ストレーナ90を、ギア室Sbのオイル貯留部OPに油没するように配置することも考えられる。この場合、デフケース50がオイル貯留部OPのオイルOLを掻き上げることによって、ストレーナ90の吸引口92付近のオイルOLの量が減少することがある。この状態でオイルポンプ95を動作させると、オイルポンプ95のエア吸いが発生し、オイルポンプ95の吸引性能に影響を与える可能性がある。
【0158】
一方、実施形態は、ストレーナ90をギア室Sbと離間したストレーナ室SRに配置している。これによって、デフケース50のオイルOLの掻き上げによって、ストレーナ90の吸引口92付近のオイルOLの量が減少することが低減される。そのため、オイルポンプ95のエア吸いが低減される。
【0159】
また、ストレーナ90の本体部91をギア室Sb内に配置する場合は、ストレーナ90がスペースを要するため、他の部品のレイアウトが制約を受けやすい。ストレーナ90をストレーナ室SRに配置することによって、本体部91の容積を確保しつつ、ギア室Sb内の部品のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0160】
実施形態は、第4ボックス14の支持壁部146の段差部146cを利用して、ストレーナ室SRを設けている。ストレーナ室SRは、ギア室Sbと回転軸X方向および回転軸Xの径方向にオーバーラップしている。これによって、ストレーナ室SRが、ギア室Sbに対して回転軸X方向および径方向にはみだすのを低減することができ、動力伝達装置1のレイアウト性が向上する。また、ストレーナ室SRはギア室Sbの下方に位置するため、重力によって、オイル貯留部OPからストレーナ室SRにオイルOLが流入しやすい。また、ストレーナ室SRのジャケット部143の一部は、モータ室Saを構成する第2ボックス12の周壁部121と回転軸X方向にオーバーラップしている。これによって、ストレーナ室SRがモータ室Saに対して回転軸Xの径方向におけるはみ出しが低減されている。
【0161】
以上の通り、実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有する。
(1)動力伝達装置1は、
モータ2と、
モータ2の下流に接続された遊星減速ギア4および差動機構5(歯車機構)と、
ストレーナ90の吸引口92(ポンプ入口)を介してオイルOLが吸引されるオイルポンプ95(ポンプ)と、
遊星減速ギア4および差動機構5(歯車機構)を収容するギア室Sb(第1室)と、ストレーナ90の吸引口92(ポンプ入口)が配置されるストレーナ室SR(第2室)と、を有する本体ボックス10(ボックス)と、を有する。
【0162】
ストレーナ90の吸引口92(ポンプ入口)をギア室Sb内に配置した場合、差動機構5(デファレンシャルギア)を構成するデフケース50の回転に伴って、デフケース50の外周側のオイルOLが掻き上げられる。この掻き上げによって、ストレーナ90の吸引口92近辺のオイル量が減少し、オイルポンプ95のエア吸いが生じる場合がある。
ギア室Sb(第1室)と離間(隔離)して設けられたストレーナ室SR(第2室)は、デフケース50の回転によるオイル量の減少の影響を受けにくい。よって、ストレーナ室SRにポンプ入口であるストレーナ90の吸引口92を配置することにより、オイルポンプ95のエア吸いを低減することができる。
【0163】
なお、第1室とは、「第1壁により囲まれた空間」であり、第2室は、「第2壁により囲まれた空間」である。ただし、第1壁と第2壁は、その一部を共用していても良い。実施形態では、ギア室Sb(第1室)は第4ボックス14の支持壁部146に囲まれた空間であり、ストレーナ室SR(第2室)は、支持壁部146とジャケット部143に囲まれた空間である。ギア室Sbとストレーナ室SRは、支持壁部146を共用している。
なお、このような構造は、言い換えると、ストレーナ90の吸引口92(ポンプ入口)と、遊星減速ギア4および差動機構5(歯車機構)との間に、仕切り壁部が設けられている構造ということが言える。
【0164】
「ポンプ入口」は、オイル溜りに接触している、すなわちオイル溜りに浸かっているものであり、かつオイルポンプ95の吸引口95aと接続されているものである。実施形態のように、オイルポンプ95の吸引口95aにストレーナ90が接続されている場合は、ストレーナ90の吸引口92が、「ポンプ入口」に対応する。また、例えば、オイルポンプ95の吸引口95aが直接オイル溜まりに接触している(浸かっている)場合は、オイルポンプ95の吸引口95aが「ポンプ入口」に対応する。このケースは後記する変形例1において説明する。
【0165】
「歯車機構」は、歯車を含む機構全体である。例えば、実施形態の場合は、歯車機構は、遊星減速ギア4と差動機構5(デファレンシャルギア)とから構成される。
【0166】
「下流に接続」とは、上流に配置された部品から下流に配置された部品へと動力が伝達される接続関係を意味する。例えば、「モータ2の下流に接続された遊星減速ギア4」という場合は、モータ2から遊星減速ギア4へと動力が伝達されることを意味する。
【0167】
なお、例えば、モータ2の下流に、変速機構、クラッチなどを介して、歯車機構が接続されていても良い。この場合は、モータ2の動力が変速機構、クラッチなどを介して歯車機構に動力伝達される接続関係となる。変速機構は、変速機能を有する機構であり、例えば有段変速機構、無段変速機構を含む。
【0168】
「動力伝達装置」とは、回転電機を搭載したパワートレイン装置(変速機、減速機等)である。
【0169】
(2)動力伝達装置1は、遊星減速ギア4と差動機構5(歯車機構)の下流に接続されモータ2の内周を貫通して配置されるドライブシャフトDA(駆動軸)を有する。
【0170】
このような構成を有する動力伝達装置1において、ストレーナ90の吸引口92(ポンプ入口)をストレーナ室SR(第2室)に配置することで、遊星減速ギア4および差動機構5(歯車機構)が収容されるギア室Sb(第1室)に吸引口92を配置するためのレイアウトを考慮しなくても良くなり、ギア室Sbのレイアウト設計の自由度を向上させることができる。
【0171】
(3)本体ボックス10(ボックス)は、ギア室Sb(第1室)とストレーナ室SR(第2室)とを連通する開口部146dを有する。
開口部146dを設けることにより、重力またはデフケース50の掻き上げによる遠心力を利用して、ギア室Sbからストレーナ室SRにオイルOLを導入することができる。これによって、ストレーナ室SRのオイル量の増加を促し、オイルポンプ95のエア吸いをさらに低減することができる。
【0172】
(4)ポンプ入口は、ストレーナ90の吸引口92として構成されている。ストレーナ90の本体部91の少なくとも一部は、ストレーナ室SR(第2室)に配置されている。
【0173】
ストレーナ90の本体部91は、配置にスペースを要する。ギア室Sbと隔離したストレーナ室SRに本体部91を配置することによって、ギア室Sbのレイアウトの自由度を向上することができる。なお、実施形態では、本体部91の全部をストレーナ室SRに配置しているが、本体部91の一部をストレーナ室SRに配置し、残りをストレーナ室SRの外部に配置するようにしても良い。これによって、本体部91の容積を拡大することができる。この場合は、ストレーナ室SRの内部と外部に配置した本体部91同士を配管等で接続しても良い。
【0174】
(5)ストレーナ室SR(第2室)は、ギア室Sb(第1室)と回転軸X方向(軸方向)においてオーバーラップする。
【0175】
実施形態では、ストレーナ室SRは第4ボックス14の段差部146cを利用して設けられており、ギア室Sbと回転軸X方向でオーバーラップしている。これによって、ストレーナ室SRがギア室Sbの径方向外側へはみ出すことを低減し、動力伝達装置1のレイアウト性を向上させることができる。
【0176】
(6)ストレーナ室SR(第2室)は、ギア室Sb(第1室)と回転軸Xの径方向(径方向)においてオーバーラップする。
【0177】
これによって、ストレーナ室SRが、ギア室Sbに対して回転軸X方向にはみ出すのを低減することができ、レイアウト性が向上する。
なお、実施形態は、ストレーナ室SRをギア室Sbと回転軸X方向および回転軸Xの径方向の両方においてオーバーラップさせている。この場合は、ストレーナ室SRの回転軸Xの径方向及び回転軸X方向の双方のはみ出しを低減でき、バランスの良いレイアウトが実現可能である。
【0178】
(7)ストレーナ室SR(第2室)は、ギア室Sb(第1室)の下方に位置する。
重力によってオイルOLが溜まりやすい位置にギア室Sbを配置することで、ストレーナ室SR内のオイル量の増加を促すことができる。なお、「ギア室Sbの下方」とは、動力伝達装置1の車両への搭載状態における鉛直方向の下側を意味する。
【0179】
(8)歯車機構は、遊星減速ギア4を含む。
前記したように、歯車機構は歯車を含む機構全体を意味するが、実施形態では、歯車機構として遊星減速ギア4を含む。
【0180】
(変形例1)
図20図22は、変形例1に係るオイルポンプ95の構成例を示す図である。
実施形態では、動力伝達装置1において、オイルOLを濾過して循環させる機構が、オイルポンプ95とストレーナ90とから構成される例を説明した(図2参照)。ただし、オイルOLの循環機構は、実施形態の例に限定されるものではなく、例えば、ストレーナ90を省略して構成しても良い。
【0181】
図20に示すように、ストレーナを省略した場合は、オイルポンプ95の吸引口95aに接続する配管PIの内部に、夾雑物を濾過するフィルタFを配置しても良い。
図20の場合は、オイルポンプ95を駆動させると、配管PIの端部PEからオイルOLが吸引され、フィルタFを通過してオイルポンプ95の吸引口95aに吸引される。すなわち、配管PIの端部PEが、「ポンプ入口」に対応する。
【0182】
図21も、図20と同様に、配管PIの端部PEが「ポンプ入口」に対応する例であるが、図21では、配管PIの端部PEを拡径させ、端部PEにフィルタFを配置している。図21のように構成することで、フィルタFのサイズを大きくすることができる。
図20および図21の構成の場合、オイルポンプ95と配管PIの両方をストレーナ室SR(図2参照)に配置しても良い。あるいは、オイルポンプ95はストレーナ室SRの外部に配置し、配管PIの一部をストレーナ室SRに配置しても良い。この場合は、少なくとも配管PIの端部PEをストレーナ室SR内に配置して、オイルOLに浸かるように配置すると良い。
【0183】
図22は配管も省略した例であり、フィルタFを、オイルポンプ95の吸引口95aに直接配置している。この場合、吸引口95aが「ポンプ入口」に対応する。図22の構成の場合、オイルポンプ95をストレーナ室SR内に配置し、吸引口95aがストレーナ室SR内に貯留されたオイルOLに浸かるように配置すると良い。
【0184】
(変形例2)
図23は、変形例2に係るストレーナ室SRの構成を示す図である。
変形例2では、ストレーナ90を省略し、ストレーナ室SR自体をストレーナとして構成する例を説明する。
図23に示すように、変形例2でも、第4ボックス14の段差部146cを利用してストレーナ室SRを設けているが、蓋部144は、実施形態よりも接合部142側に取り付けている。これによって、ストレーナ室SRは実施形態よりも小型化している。また、実施形態では、ギア室Sbとストレーナ室SRとを連通する開口部146dを、プレート部材8の面80b側に設けていたが(図19参照)、変形例2では、開口部146dをプレート部材8の面80a側に設けている。
【0185】
ストレーナ室SRの内部には、オイルOLを濾過するフィルタFが配置されている。ストレーナ室SRとオイルポンプ95の吸引口95aとは、配管PIを介して接続されている。
変形例2では、支持壁部146に設けられた開口部146dが、ストレーナの吸引口であり、「ポンプ入口」として機能する。そして、フィルタFが配置されたストレーナ室SRの内部は、オイルOLを濾過するストレーナの本体部として機能する。
【0186】
実施形態と同様に、重力およびデフケース50の掻き上げによる遠心力によって、ギア室Sbのオイル貯留部OPから、開口部146dを介してストレーナ室SR内にオイルOLが流入する。
さらに、オイルポンプ95を駆動させると、ギア室SbのオイルOLは、吸引口である開口部146dを介してストレーナ室SR内に吸引される。オイルOLは、ストレーナ室SR内に配置されたフィルタFを通過することで濾過される。濾過されたオイルOLは、配管PIを通って、オイルポンプ95に吸引される。
【0187】
変形例2では、「ポンプ入口」に対応する開口部146dは、鉛直方向上方に開口していることから、重力によってオイルOLを吸入しやすい。また、開口部146dを、プレート部材8の歯車機構(遊星減速ギア4、デフケース50)に対向する面80b側から、モータ2に対向する面80a側に移動させた。
【0188】
前記したように、デフケース50のオイルOLの掻き上げによって、デフケース50の近傍でオイル量が減少することがある。変形例2では、「ポンプ入口」に対応する開口部146dを、デフケース50から遠ざける位置に配置することで、オイルポンプ95のエア吸いを低減することができる。
【0189】
また、開口部146dが開口する第2ギア室Sb2とモータ室Saとは、梁部120の開口120bを介して連通している。熱源であるモータ2のステータコア25によって温められたオイルOLが、開口120b(排出口)から排出されて、第2ギア室Sb2のオイル貯留部OPに貯留される。そのため、第2ギア室Sb2の、ステータコア25に近い位置に設けられた開口部146dは、ステータコア25によって温められたオイルOLを吸引しやすい。低温時には、オイルOLの粘度が高くなりやすいが、開口部146dをモータ2の近くに配置することで、オイルOLの粘度が高くなりやすい低温時でも、オイルポンプ95の吸引性能を向上することができる。
【0190】
さらに、変形例2では、ストレーナをストレーナ室SRに一体化させることで、ストレーナ室SRを小型化することができ、動力伝達装置1のレイアウト性を向上させることができる。なお、ストレーナ室SRは実施形態と同じ容積としても良く、これによって、ストレーナの容積を拡大することができる。
【0191】
以上の通り変形例2に係る動力伝達装置1は、以下の構成を備える。
(9)ポンプ入口は、ストレーナ室SR(第2室)の内壁である支持壁部146に、開口部146dとして設けられている。
オイルOLを吸引するためのポンプ入口自体は、占有面積が小さいものであるため、ストレーナ室SRの内壁である支持壁部146に設けることによって、ポンプ入口のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0192】
また、ポンプ入口をストレーナ室SRの内壁に配置することで、下記のように、レイアウトの選択肢が増えるので、レイアウトの自由度を向上することができる。
(A)ポンプ入口の下流に接続される部品(オイルポンプ及び/又はストレーナ)を、ストレーナ室SRの外に配置することができる。
例えば、変形例2のように、オイルポンプ95をストレーナ室SRの外に配置することができる。
また、例えば、ストレーナ室SRの内部にフィルタFは配置せず、ストレーナ室SR全体を、ストレーナの吸引口として機能させるようにしても良い。この場合は、ストレーナ室SRの外部に、フィルタFを配置したストレーナの本体部を別に設けても良い。
(B)ポンプ入口の下流に接続される部品(ポンプ及び/又はストレーナ)を、ストレーナ室SR内の、ポンプ入口とは離れた箇所に配置することができる。
例えば、図20および図21の構成を適用して、ストレーナ室SR内にオイルポンプ95を配置し、オイルポンプ95の吸引口95aと開口部146dとを配管PIで直接接続するようにしても良い。
【0193】
(変形例3)
実施形態では、ストレーナ室SRをギア室Sbの下方に設ける例を説明したが、これに限定されず、ストレーナ室SRの位置は適宜変更可能である。
図24図27は、変形例3に係るストレーナ室SRのレイアウトを示す模式図である。
図24図27では、本体ボックス10およびストレーナ室SRの配置関係を模式的に示しており、詳細な内部構成は省略しているが、前記の実施形態および変形例の構成を適用することができる。
【0194】
図24に示すように、ストレーナ室SRは、モータ室Saの下方に配置することができる。
図25に示すように、ストレーナ室SRは、モータ室Saの側方に配置することができる。
図24および図25の構成では、ストレーナ室SR(第2室)は、モータ2と径方向においてオーバーラップする位置に配置される。図示は省略するが、ストレーナ室SRとモータ室Saは油路で接続されている。図中矢印で示すように、モータ室Sa内のオイルOLが、ストレーナ室SRに流入するようになっている。油路は、例えば、実施形態と同様に、本体ボックス10の内壁に設けられ、ストレーナ室SRとモータ室Saを連通する開口部としても良い。また、図26の例のように、油路をモータ室Saの上部および下部の両方に設けて、オイルOLが流入しやすいようにしても良い。
【0195】
モータ室Sa内のオイルOLは、熱源となるモータ2のステータコア25によって温められる。ストレーナ室SRには、モータ室Saで温められたオイルOLが流入する。これによって、オイルOLの粘度が高くなる低温時においても、ストレーナの吸引口(ポンプ入口)のオイル吸入性能を向上させることができる。
【0196】
図26に示すように、ストレーナ室SRを、本体ボックス10の上方に設けることができる。
ストレーナ室SRを設ける範囲は限定されないが、例えばモータ室Saおよびギア室Sbに渡って回転軸X方向に延びるように設けても良い。あるいは、モータ室Saまたはギア室Sbのいずれか一方の上方に設けても良い。
【0197】
この場合、ストレーナ室SRには、デフケース50やモータ2の回転によって掻き上げられたオイルOLが導入されるようにしても良い。例えば、デフケース50の掻き上げによってオイルキャッチ部15(図9参照)に流入したオイルOLが、ストレーナ室SRに導入されるように、油路等を設けても良い。
【0198】
図25および図26では、ストレーナ室SRを、モータ室Saの側方や上方に配置することで、ストレーナ室SR(第2室)がモータ室Saと回転軸Xの径方向においてオーバーラップする。これによって、ストレーナ室SRがモータ室Saに対して回転軸X方向にはみ出すことを低減でき、レイアウト性が向上する。
【0199】
なお、ストレーナ室SRを、ギア室Sbの側方や上方に配置しても良い。この場合は、実施形態と同様に、ストレーナ室SR(第2室)がギア室Sb(第1室)と回転軸Xの径方向においてオーバーラップする。これによって、ストレーナ室SRがギア室Sbに対して回転軸X方向にはみ出すことを低減でき、レイアウト性が向上する。
【0200】
図27に示すように、ストレーナ室SRを、ドライブシャフトDA、DBのそれぞれの外周(回転軸Xの径方向外方)に設けることができる。図27は、ドライブシャフトDA、DBの両方の外周にストレーナ室SRを設ける例を示している。図示は省略するが、ドライブシャフトDA側のストレーナ室SRはモータ室Saと油路によって接続され、モータ室Sa内のオイルOLが流入する。ドライブシャフトDB側のストレーナ室SRはギア室Sbと油路によって接続されており、ギア室Sb内のオイルOLが流入する。
【0201】
ストレーナ室SRを2箇所に設けることで、ストレーナの容積を大きくすることができるが、どちらか一方にのみ設けても良い。また、ストレーナ室SRをドライブシャフトDA、DB周りに設けることで、ストレーナ室SR(第2室)が、ギア室Sb(第1室)と回転軸X方向(軸方向)においてオーバーラップする。これによって、ストレーナ室SRが、ギア室Sbの径方向外方にはみ出すことを低減することができ、レイアウト性が向上する。
【0202】
以上、変形例3の動力伝達装置1の一例は、以下の構成を備える。
(10)ストレーナ室SR(第2室)はモータ2と径方向においてオーバーラップする。
図27に示すように、熱源となるモータ2に近い位置にストレーナ室SR(第2室)を配置することで、オイルOLの粘度が高くなる低温時でも、ストレーナ室SR内のオイルOLを、モータ2の熱により温めることができる。これによって、ストレーナ室SRに配置されているポンプ入口(例えばストレーナの吸引口)のオイル吸入性能を、低温時でも向上させることができる。
【0203】
(その他の変形例)
実施形態では、オイルポンプ95として電動オイルポンプを用いる例を説明したが、機械式オイルポンプを用いても良い。機械式オイルポンプは、例えば、本体ボックス10のモータ室Sa内に配置し、モータ2の回転を利用して駆動するようにしても良い。
【0204】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0205】
1 :動力伝達装置
10 :本体ボックス
2 :モータ
4 :遊星減速ギア(歯車機構)
5 :差動機構(歯車機構)
90 :ストレーナ
91 :本体部
92 :吸引口(ポンプ入口)
95 :オイルポンプ(ポンプ)
DA :ドライブシャフト(駆動軸)
SR :ストレーナ室(第2室)
Sb :ギア室(第1室)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27