(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】核酸導入キャリア、核酸導入キャリアセット、核酸導入組成物及び核酸導入方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/88 20060101AFI20250210BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
C12N15/88 Z ZNA
C12N15/09 100
C12N15/09 110
(21)【出願番号】P 2019135474
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2021-09-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤星 英一
(72)【発明者】
【氏名】石原 美津子
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】柴原 直司
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-507579(JP,A)
【文献】国際公開第2018/064371(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/107026(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/112282(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/124765(WO,A1)
【文献】特表2008-545375(JP,A)
【文献】特表2010-505877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12Q1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配列を含むドナーDNAと、
ゲノムへの前記第1の配列の導入に関与するタンパク質をコードするRNA
配列を少なくとも含む
RNAと、
前記ドナーDNA及び
前記RNAを内包
する脂質粒子と
を備え、
前記脂質粒子に内包される前記ドナーDNA及び前記RNAは、前記ドナーDNAを備えるドナーDNAコア層、及び、前記ドナーDNAコア層をコーティングし、前記ドナーDNAコア層の前記ドナーDNAに接する前記RNAを備えるRNAシェル層で構成される2層のコアシェル構造を形成している、
前記第1の配列を細胞のゲノムに導入するために用いられる核酸導入キャリア。
【請求項2】
第1の配列を含むドナーDNAと、
ゲノムへの前記第1の配列の導入に関与するタンパク質をコードするRNA
配列を少なくとも含む
RNAと、
前記ドナーDNA及び前記
RNAを内包
する脂質粒子と
を備え、
前記脂質粒子に内包される前記ドナーDNA及び前記RNAは、前記RNAを備えるRNAコア層、及び、前記RNAコア層をコーティングし、前記RNAコア層の前記RNAに接する前記ドナーDNAを備えるドナーDNAシェル層で構成される2層のコアシェル構造を形成している、
前記第1の配列を細胞のゲノムに導入するために用いられる核酸導入キャリア。
【請求項3】
前記タンパク質は、エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素である請求項1又は2に記載の核酸導入キャリア。
【請求項4】
前記タンパク質は、CRISPR-関連タンパク質9(Cas9)である、請求項3に記載の核酸導入キャリア。
【請求項5】
前記
RNAは、前記第1の配列を導入するための前記ゲノム上の配列に対応する配列を含むガイドRNAを含む、請求項4に記載の核酸導入キャリア。
【請求項6】
前記タンパク質は、トランスポゼースである請求項1又は2に記載の核酸導入キャリア。
【請求項7】
前記タンパク質は、PiggyBac、SleepingBeauty、Frog Prince、Hsma、Minos、Tol1、Tol2、Passport、hAT、Ac/Ds、PIF、Harbinger、Harbinger3-DR、Himar1、Hermes、Tc3又はMos1である請求項6に記載の核酸導入キャリア。
【請求項8】
前記
RNAは、DNAをメチル化するタンパク質をコードするRNA
配列、DNAを脱メチル化するタンパク質をコードするRNA
配列、DNAを修復するタンパク質をコードするRNA
配列及び/又はDNAを結合するタンパク質をコードするRNA
配列を含む、請求項1~7の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項9】
前記
RNAは、分解に耐性を有するように修飾されている請求項1~8の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項10】
前記ドナーDNA及び/又は前記
RNAは、核酸凝縮ペプチドで凝縮されている請求項1~9の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項11】
前記脂質粒子は、式Q-CHR
2
(式中、
Qは、3級窒素を2つ以上含み、酸素を含まない含窒素脂肪族基であり、
Rは、それぞれ独立に、C
12~C
24の脂肪族基であり、
少なくとも一つのRは、その主鎖中または側鎖中に、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-、-C(=O)-S-、-C(=O)-NH-、および-NHC(=O)-からなる群から選択される連結基LRを含む)で表される第1の生分解性脂質を更に含む請求項
1~10の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項12】
前記脂質粒子は、式P-[X-W-Y-W’-Z]
2
(式中、
Pは、1つ以上のエーテル結合を主鎖に含むアルキレンオキシであり、
Xは、それぞれ独立に、三級アミン構造を含む2価連結基であり、
Wは、それぞれ独立に、C
1~C
6アルキレンであり、
Yは、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、カルボン酸エステル結合、チオカルボン酸エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、カルバメート結合及び尿素結合からなる群から選ばれる2価連結基であり、
W’は、それぞれ独立に、単結合またはC
1~C
6アルキレンであり、
Zは、それぞれ独立に、脂溶性ビタミン残基、ステロール残基、またはC
12~C
22脂肪族炭化水素基である)
で表される第2の生分解性脂質を更に含む請求項
1~10の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項13】
請求項
1~12の何れか1項に記載の核酸導入キャリアと、
担体と
を含む核酸導入組成物。
【請求項14】
請求項1~
13の何れか1項に記載の核酸導入キャリアを用いて、前記第1の配列を
生体外に存在する細胞のゲノムに導入する方法であって、前記核酸導入キャリアを前記細胞に接触させることを含む核酸導入方法。
【請求項15】
前記核酸導入キャリアの前記細胞への接触によって、前記細胞内で前記RNAから前記タンパク質を発現させること、及び
前記タンパク質の活性により前記第1の配列を前記細胞の前記ゲノムに導入することを更に含む請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、核酸導入キャリア、核酸導入キャリアセット、核酸導入組成物及び核酸導入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DNAを部位特異的に切断するCRISPR-関連タンパク質9(Cas9)や、目的DNAを切り出し、細胞のゲノムに挿入するトランスポゼースなど、遺伝子工学において有用な機能性タンパク質が多数発見されている。このような機能性タンパク質を遺伝子工学に利用するために、機能性タンパク質を細胞内により効率よく導入し、発現させる技術の開発が望まれている。
【0003】
例えば、機能性タンパク質をコードするDNA(ベクター等)を細胞に導入することで、機能性タンパク質を細胞内で発現させる方法が用いられている。しかしながら、DNA単独では細胞膜を通過して細胞に進入することが難しい。DNAを細胞に導入する方法として、リポフェクタミンを用いた方法がある。リポフェクタミンは、核酸と結合して複合体を形成し、核酸を細胞に導入しやすくする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Lingmin et al. NPG Asia Materials (2017) 9, e441
【文献】Zeming Chen et al. Adv. Funct. Mater. 2017, 27, 1703036
【文献】Shai Zhen et al. Oncotarget, 2017, Vol. 8, (No. 6), pp: 9375-9387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、目的のDNA配列をより効率的且つ安全に細胞のゲノムに導入することができる核酸導入キャリア、核酸導入キャリアセット、核酸導入組成物及び核酸導入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に従う核酸導入キャリアは、第1の配列を細胞のゲノムに導入するために用いられる。核酸導入キャリアは、第1の配列を含むドナーDNAと、ゲノムへの第1の配列の導入に関与するタンパク質をコードするRNAを少なくとも含むRNA剤と、ドナーDNA及びRNA剤を内包する脂質粒子とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の核酸導入キャリアの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の核酸導入方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態の核酸導入キャリアの一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の核酸導入キャリアセットの一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、例1の実験結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、例1の実験結果を示す顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、例2の実験結果を示すヒストグラムである。
【
図8】
図8は、例3の実験結果を示すヒストグラムである。
【
図9】
図9は、例4の実験結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、例4の実験結果を示すヒストグラムである。
【
図12】
図12は、例6の実験結果を示す電気泳動写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら種々の実施形態について説明する。各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際と異なる箇所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0009】
実施形態に従う核酸導入キャリアは、第1の配列を含むドナーDNAと、ゲノムへの第1の配列の導入に関与するタンパク質をコードするRNAを少なくとも含むRNA剤と、ドナーDNA及びRNA剤を内包する脂質粒子とを備える。核酸導入キャリアは、第1の配列を細胞のゲノムに導入するために用いられる。また、実施形態によれば、ドナーDNAとRNA剤とが別々の脂質粒子に内包された核酸導入キャリアセット、核酸導入キャリア又は核酸導入キャリアセットを含む核酸導入組成物、核酸導入キャリア又は核酸導入キャリアセットを用いる核酸導入方法も提供される。以下、核酸導入キャリア、核酸導入キャリアセット、核酸導入組成物及び核酸導入方法について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
・核酸導入キャリア
図1は、第1の実施形態の核酸導入キャリアの一例を示す断面図である。核酸導入キャリア1は、ドナーDNA2と、RNA剤3と、ドナーDNA2及びRNA剤3を内包する脂質粒子4を備える。ドナーDNA2は、細胞のゲノムに導入される第1の配列5を含む。RNA剤3は、RNA3aとガイドRNA3bとを含む。RNA3aは、ゲノムへの第1の配列5の導入に関与するタンパク質をコードするRNAである。ガイドRNA3bは、第1の配列5が導入されるゲノム上の配列(以下、「第2の配列」と称する)に対応する配列を含むRNAである。ドナーDNA2とRNA剤3とは、例えば、核酸凝縮ペプチド6で凝縮された状態で内包されている。脂質粒子4は複数の脂質分子4aが非共有結合で隙間なく配列してできた脂質膜からなり、略球状の中空体であり、その中心の内腔4bにドナーDNA2とRNA剤3とが内包されている。
【0011】
以下、各構成について詳細に説明する。
【0012】
ドナーDNA2は、例えば、二本鎖の直鎖状DNAである。ドナーDNA2は、一本鎖DNAであってもよいし、環状DNAであってもよい。ドナーDNA2の長さは、例えば、3~約20000塩基である。
【0013】
ドナーDNA2に含まれる第1の配列5は、細胞のゲノムに導入されるための配列であり、例えば、プロモーター配列と特定の遺伝子と転写終結配列とを含む遺伝子発現カセット、特定の遺伝子又は遺伝子の一部をコードする塩基配列、又は遺伝子ではない天然の塩基配列又は非天然の塩基配列等である。或いは1個~数個のアミノ酸をコードする塩基配列又は3個~数十個のヌクレオチドからなる配列等であってもよい。第1の配列の長さは、例えば、3~約20000塩基である。
【0014】
ドナーDNA2は、例えば、第1の配列5以外に他の配列を含んでいてもよい。そのような配列は、RNA3aにコードされるタンパク質の認識配列、或いは、ガイドRNA3bの認識配列などである。
【0015】
ドナーDNA2の構成、即ち、第1の配列5の種類、他の配列の種類及び塩基長等は、詳しくは後述するが、核酸導入キャリア1の用途によって選択される。ドナーDNA2は、核酸導入キャリア1内に1~100分子含まれることが好ましい。
【0016】
RNA3aは、ゲノムへの第1の配列5の導入に関与するタンパク質をコードするRNAである。当該タンパク質は、例えば、DNAの切断、結合、挿入及び/又は修復などを行う活性を有し、その活性によりゲノム上へのDNA配列の導入に関与する酵素である。以下、このようなタンパク質を単に「酵素」とも称する。酵素は、例えば、エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素、トランスポゼース、逆転写酵素及びインテクラーゼ(レトロウイルス型レトロトランスポゾン用酵素)、逆転写酵素及びエンドヌクレアーゼ(非レトロウイルス型レトロトランスポゾン用酵素)等であることが好ましい。
【0017】
エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素の例は、CRISPR-関連タンパク質9(CRISPR-Assosiated Protein 9:Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化用エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又はメガヌクレアーゼなどを含む。エンドヌクレアーゼは、詳しくは後述するがゲノム上の第1の配列5が導入される位置のホスホジエステル結合を切断することにより、第1の配列5のゲノムへの導入に関与する。
【0018】
トランスポゼースは、例えば、PiggyBac、SleepingBeauty、Frog Prince、Hsma、Minos、Tol1、Tol2、Passport、hAT、Ac/Ds、PIF、Harbinger、Harbinger3-DR、Himar1、Hermes、Tc3又はMos1等を含む。トランスポゼースは、ドナーDNA2から第1の配列5を含む配列を切り出し、ゲノム上に導入する活性を有し、それにより第1の配列5のゲノムへの導入に関与する。
【0019】
RNA3aは、例えば、上記酵素の遺伝子のmRNAであってもよい。RNA3aは、酵素の遺伝子をコードする配列の他に更なる配列を有してもよい。更なる配列は、例えば、5’末端リーダー配列、IRES(InternalRibosomeEntrySite)、転写終結配列、又はPoly(A)配列などである。RNA3aは、CAP構造を有してもよい。
【0020】
RNA3aの長さは、例えば、約20~約5000塩基である。RNA3aは、核酸導入キャリア1内に1~約1000分子含まれることが好ましい。RNA3aは、複数種類の酵素をそれぞれコードする複数のRNAを含んでもよい。
【0021】
ガイドRNA3bは、第2の配列又はその相補配列に対応する塩基配列を有するRNAである。第2の配列は、細胞のゲノム上の第1の配列5が導入される位置周辺の、例えば、15~25塩基の配列である。第2の配列はDNAであり、ガイドRNA3bはRNAであるので、「対応する塩基配列」とは、第2の配列のT(チミン)がガイドRNA3bではU(ウリジン)であることを除き、相同な塩基配列又はその相補配列をいう。
【0022】
ガイドRNA3bは、RNA3aがCas9をコードするRNAである場合に用いることが好ましい。その場合、ガイドRNA3bは、当業者が通常の知識に従って第2の配列を基に設計することができる、CRISPR-Cas9システムにおけるガイドRNAであればよい。この場合、ガイドRNA3bは、第2の配列の3’末端に、PAM配列を含む3’末端側crRNAを連結したRNAであってもよいし、第2の配列の3’末端に、PAM配列を含む3’末端側crRNAとtracrRNAの一部からなる配列とを連結したRNA(sgRNA)であってもよい。このようなガイドRNA3bの長さは、例えば、約40~約150塩基である。
【0023】
ガイドRNA3bは、RNA3aから発現したエンドヌクレアーゼと複合体を形成し、エンドヌクレアーゼを第2の配列まで導く役割を有する。したがって、ガイドRNA3bを用いることによって部位特異的に第1の配列5を導入することが可能である。第1の配列5を部位特異的に導入する必要がない場合、或いは酵素としてCas9を用いない場合、ガイドRNA3bを用いなくともよい。
【0024】
ガイドRNA3bは、核酸導入キャリア1内に1~約1000分子含まれることが好ましい。
【0025】
RNA剤3は、更なるRNAを含んでいてもよい。更なるRNAは、例えば、DNAのメチル化、脱メチル化、修復及び/又は結合など、DNAを修飾する機能を有するRNAである。例えば、これらのRNAは、上記修飾の活性を有するタンパク質をコードするRNAであってもよい。これらのRNAを含むことによって、ゲノムに導入された第1の配列5やその周辺の配列に上記修飾を加えることが可能である。それにより、例えば、細胞に更なる機能改変を加えることができる。
【0026】
RNA剤3に含まれるRNAは、分解に耐性を有するように修飾されていることが好ましい。例えば、当該修飾は、細胞内外に存在するRNaseによりRNAが分解されないようにする公知の修飾であればよい。そのような修飾は、例えば、RNAへの天然修飾ヌクレオチド又は非天然ヌクレオチドの使用/導入、非天然配列の使用/付加、又は天然/非天然CAP構造の付加等である。
【0027】
天然修飾ヌクレオチドは、例えば、シュードウリジン、5-メチルシチジン、1-メチルアデノシン等である。非天然ヌクレオチドは、例えば、BNA(Bridgednucleicacid)、LNA(Lockednucleicacid)、又はPNA(Peptidenucleicacid)等である。
【0028】
非天然配列は、例えば、人工的に作成された天然には存在しない塩基配列であり、例えば、ランダムな塩基配列、又は天然/非天然アミノ酸と核酸のハイブリッド配列などである。非天然配列は、例えばRNAの末端に付加することが好ましい。
【0029】
天然CAP構造は、例えば、CAP0(m7GpppN)、CAP1(m7GpppNm)等である。非天然CAP構造は、例えば、ARCA(Anti-ReverseCapAnalog)又はLNA-グアノシン等である。非天然CAP構造は、例えばRNAの5’末端に付加することが好ましい。
【0030】
上記のように修飾されたRNAを用いれば、細胞内外に存在するRNaseによるRNAの分解が防止される。その結果、第1の配列5の導入効率をより高めることが可能である。
【0031】
核酸凝縮ペプチド6は、より多くの核酸をより小さく凝縮し、脂質粒子4内に多くの核酸を効率よく内包するためのペプチドである。このようなペプチドとして、例えば、カチオン性を有するペプチドを用いることが好ましい。カチオン性のペプチドは、例えば、アニオン性の核酸の螺旋形状の隙間に入り込んで隙間を縮めることにより核酸を凝縮することができる。
【0032】
好ましい核酸凝縮ペプチド6は、例えば、カチオン性のアミノ酸を全体の45%以上含むペプチドである。より好ましい核酸凝縮ペプチド6は、一方の端にRRRRRR(第1のアミノ酸配列)を有し、他方の端が配列RQRQR(第2のアミノ酸配列)を有する。そして、両アミノ酸配列の間に、RRRRRR又はRQRQRからなる中間配列を0個又は1個以上含む。また、第1のアミノ酸配列、第2のアミノ酸配列及び中間配列のうち、隣り合う2つの配列の間に2つ以上の中性アミノ酸を含む。中性アミノ酸は、例えば、G又はYである。
【0033】
上記核酸凝縮ペプチド6は、好ましくは、以下のアミノ酸配列を有する。
RQRQRYYRQRQRGGRRRRRR (配列番号1)
RQRQRGGRRRRRR (配列番号2)。
【0034】
このような核酸凝縮ペプチドによれば、Rによるカチオン性により核酸を効率よく凝縮し、且つ核酸の有するアニオン性を弱めることが可能であるため、効率よく核酸を脂質粒子4内に封入することが可能である。更に、当該核酸凝縮ペプチドは細胞中で核酸を効率よく解離するため、細胞内に導入された核酸を細胞内で効率よく発現させることが可能である。
【0035】
或いは、核酸凝縮ペプチド6は、一方の端にRRRRRR(第3のアミノ酸配列)を有し、他方の端にRRRRRR(第4のアミノ酸配列)を有する。そして、両アミノ酸配列の間に、RRRRRR又はRQRQRからなる中間配列を0個又は1個以上含む。また、第3のアミノ酸配列、第4のアミノ酸配列及び中間配列のうち、隣り合う2つの配列の間に2つ以上の中性アミノ酸を含む。中性アミノ酸は、例えば、G又はYである。
【0036】
このような核酸凝縮ペプチド6は、好ましくは、以下のアミノ酸配列を有する。
RRRRRRYYRQRQRGGRRRRRR (配列番号3)。
【0037】
このような核酸凝縮ペプチド6は、両端のカチオン性が強く、核酸との結合性が高い。したがって、更に効率よく核酸を凝縮し、より多くの核酸を脂質粒子4内に内包することができる。その結果、脂質粒子4外に残存する核酸の量が低減され、それによって核酸導入キャリア同士の凝集が防止されるため、核酸導入キャリアが細胞内に取り込まれやすくなる。
【0038】
更に、次のようなアミノ酸配列を有する核酸凝縮ペプチド6を上記の何れかの核酸凝縮ペプチドと組み合わせて用いることもできる。
GNQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY
(M9)(配列番号4)。
【0039】
このペプチドは、上記核酸凝縮ペプチド6で凝縮した核酸凝集体を更に凝縮することができる。したがって、更に粒径の小さい核酸導入キャリアを得ることが可能である。そのような核酸導入キャリアは細胞内に取り込まれやすいため、より効率よく核酸を細胞のゲノムに導入することが可能である。
【0040】
例えば、脂質粒子4に内包する前に、ドナーDNA2とRNA剤3とを核酸凝縮ペプチド6と撹拌混合することによってドナーDNA2とRNA剤3とを凝縮することができる。ドナーDNA2とRNA剤3とを一緒に凝縮してもよいし、別々に凝縮してもよい。
【0041】
以上に説明した効果を奏することから核酸凝縮ペプチド6を用いることが好ましいが、用いるドナーDNA2及びRNA剤3の種類、又は導入する細胞の種類によっては核酸凝縮ペプチド6を用いなくともよい。
【0042】
脂質粒子4は、脂質単分子膜であってもよいし、脂質二重膜であってもよい。また、脂質粒子4は、一層の膜からなっていてもよいし、多重層の膜からなっていてもよい。
【0043】
脂質粒子4の材料として、例えば、生体膜の主成分である脂質を用いることができる。そのような脂質の例は、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ケファリン、およびセレブロシドなどである。これらのうち、ジアシルホスファチジルコリン、およびジアシルホスファチジルエタノールアミンを用いる場合、脂質粒子4の構造と粒子径の制御が容易であるため、また、膜融合能を付与することができるため好ましい。脂質に含まれるアシル基の炭化水素鎖の長さはC10~C20であることが好ましい。この炭化水素鎖は飽和炭化水素基であっても、不飽和炭化水素基であってもよい。
【0044】
例えば、脂質として、
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、
1,2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)、
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DPPC)、
1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(POPC)、
1,2-ジ-O-オクタデシル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、
1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、
1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(14:0 DAP)、
1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(16:0 DAP)、
1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(18:0 DAP)、
N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイロキシ)プロパン(DOBAQ)、
1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホクロリン(DOPC)、
1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホクロリン(DLPC)、
1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS)、又は
コレステロール
などを用いることが好ましい。これらは、脂質粒子4を形成する機能を有することに加え、核酸導入キャリアを細胞に導入する際、細胞膜と融合する効果が高い。
【0045】
脂質粒子4は、単一の脂質で構成されてもよいが、複数種類の脂質から構成される脂質混合物であることが好ましい。脂質粒子4に用いる脂質の種類は、目的とする脂質粒子4のサイズ、内包物の種類、導入する細胞中での安定性などを考慮して適切に選択される。
【0046】
脂質粒子4は上記脂質の他に、第1の生分解性脂質化合物を更に含むことが好ましい。第1の生分解性脂質化合物は、Q-CHR2の式で表すことができる。
(式中、
Qは、3級窒素を2つ以上含み、酸素を含まない含窒素脂肪族基であり、
Rは、それぞれ独立に、C12~C24の脂肪族基であり、
少なくとも一つのRは、その主鎖中または側鎖中に、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-、-C(=O)-S-、-C(=O)-NH-、および-NHC(=O)-からなる群から選択される連結基LRを含む)。
【0047】
脂質粒子4が第1の生分解性脂質化合物を含む場合、脂質粒子4の表面が非カチオン性となるため、細胞導入における障害が低減され、核酸の導入率が高まる。その結果、第1の配列5をより効率よく細胞のゲノムに導入することができる。
【0048】
第1の生分解性脂質化合物として、例えば、下記式で表される構造を有する脂質を用いれば、核酸内包量及び核酸導入効率がより優れているため好ましい。
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【0049】
また例えば、脂質粒子4は、第2の生分解性脂質化合物を更に含むことが好ましい。第2の生分解性脂質化合物は、P-[X-W-Y-W’-Z]2の式で表すことができる。
(式中、
Pは、1つ以上のエーテル結合を主鎖に含むアルキレンオキシであり、
Xは、それぞれ独立に、三級アミン構造を含む2価連結基であり、
Wは、それぞれ独立に、C1~C6アルキレンであり、
Yは、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、カルボン酸エステル結合、チオカルボン酸エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、カルバメート結合及び尿素結合からなる群から選ばれる2価連結基であり、
W’は、それぞれ独立に、単結合またはC1~C6アルキレンであり、
Zは、それぞれ独立に、脂溶性ビタミン残基、ステロール残基、またはC12~C22脂肪族炭化水素基である)。
【0050】
第2の生分解性脂質化合物を含む場合、Pに含まれるエーテル結合を構成する酸素が、内包される核酸と水素結合を形成するため、核酸等の内包量が多くなる。
【0051】
例えば、以下の構造を有する第2の生分解性脂質化合物を用いれば、核酸内包量及び核酸導入効率がより優れているため好ましい。
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【0052】
以上に説明した第1及び第2の生分解性脂質化合物を含む脂質粒子4を用いた場合、核酸の導入率が高く、かつ導入した細胞の細胞死も低減することができる。第1の生分解性脂質化合物と第2の生分解性脂質化合物との両方を含む場合、遺伝子治療や核酸医療、ゲノム診断などへの応用しやすくなる。特に、式(1-01)又は式(1-02)の化合物と、式(2-01)の化合物とを用いれば核酸内包量及び核酸導入効率が特に優れているため好ましい。
【0053】
脂質粒子4は、さらにその他の脂質を含むこともできる。このようなその他の脂質は、脂質粒子4において一般的に用いられている物から任意に選択して用いることができる。その他の物質は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質、特にポリエチレングリコール(PEG)ジミリストイルグリセロール(DMG-PEG)、オメガ-アミノ(オリゴエチレングリコール)アルカン酸モノマーから誘導されるポリアミドオリゴマー(米国特許第6,320,017号)、モノシアロガングリオシドなどの脂質粒子4同士の凝集を低減する脂質;毒性を調整するための相対的に毒性の低い脂質;脂質粒子4に配位子を結合させる官能基を有する脂質;ステロール、例えばコレステロールなどの内包物の漏出を抑制するための脂質などである。
【0054】
例えば、脂質粒子4は、式(1-01)又は式(1-02)の化合物と、式(2-01)の化合物と、DOPE及び/又はDOTAPと、コレステロールと、DMG-PEGとを含む場合、核酸内包量及び核酸導入効率が特に優れているため好ましい。例えば、これらの成分を以下の表1に示す1~6の何れかの組成で含むことが好ましい。
【表1】
【0055】
脂質粒子4は、ドナーDNA2及びRNA剤3の他に、更なる化合物を内包していてもよい。そのような化合物は、例えば、レチノイン酸、環状アデノシン一リン酸(cAMP)又はアスコルビン酸などの細胞内での核酸の発現を調節する化合物;ペプチド、ポリペプチド、サイトカイン、増殖因子、アポトーシス因子、分化誘発因子、細胞表面受容体およびそのリガンド、抗炎症化合物、抗うつ薬、興奮薬、鎮痛薬、抗生物質、避妊薬、解熱剤、血管拡張薬、血管新生阻害剤、細胞血管作動薬、シグナル伝達阻害剤、心臓血管薬、腫瘍薬、ホルモン及びステロイドなどの治療剤などである。
【0056】
核酸導入キャリア1は、例えば、小分子を脂質粒子等に封入する際に用いられる公知の方法、例えば、バンガム法、有機溶媒抽出法、界面活性剤除去法、凍結融解法などを用いて作製することができる。例えば、脂質粒子4の材料をアルコールなどの有機溶媒に含ませて得られた混合物に、ドナーDNA2及びRNA剤3を含む水性緩衝液を添加し、撹拌して懸濁することにより核酸導入キャリア1を作製することができる。脂質粒子4に内包するドナーDNA2及びRNA剤3の量比は、水性緩衝液中の両者の量比を変えることにより容易に調節することができる。
【0057】
DNA及びRNAの内包量の確認は、例えば、市販のDNA及びRNA定量キット等を用いて行うことができる。
【0058】
核酸導入キャリア1の平均粒子径は、約50nm~約300nmであり、好ましくは約50nm~約200nmである。核酸導入キャリア1を医薬用途に用いようとする場合には、核酸導入キャリア1はナノオーダーサイズの粒子とされるのが好ましい。例えば、超音波処理によって粒子径を小さくすることができる。また、ポリカーボネート膜やセラミック膜を透過させて、核酸導入キャリア1のサイズを調整することも可能である。なお、核酸導入キャリア1の平均粒子径は、例えば動的光散乱法を用いたゼータサイザーによって測定することができる。
【0059】
・核酸導入方法
以下に上記核酸導入キャリアを用いた核酸導入方法について説明する。核酸導入方法は、第1の配列を細胞のゲノムに導入する方法であって、核酸導入キャリアを細胞に接触させることを含む。
【0060】
図2は、核酸導入方法の一例を示す概略フローチャートである。核酸導入方法は、例えば、以下の工程を含む。
(S1)核酸導入キャリアを細胞に接触させること、
(S2)前記接触によって、細胞内で、RNA剤に含まれるRNAからタンパク質を発現させること、及び
(S3)タンパク質の活性により第1の配列を細胞のゲノムに導入すること。
【0061】
核酸導入方法においては、当該方法の実施者が工程(S1)を行うことによって、核酸導入キャリアに含まれる分子の活性及び細胞内にもともと存在する機構により工程(S2)及び工程(S3)が自ずと起こり得る。
【0062】
細胞は、例えば、ヒト、動物又は植物由来のもの、或いは細菌若又は菌類等の微生物由来のもの等であり得る。細胞は、好ましくは動物細胞であり、より好ましくは哺乳類細胞であり、最も好ましくはヒト細胞である。細胞は、例えば、血液及び免疫系細胞、間葉系細胞、上皮系細胞、内皮系細胞、或いは組織幹細胞又は多能性幹細胞であることが好ましい。
【0063】
細胞は、生体外に取り出された細胞であってもよく、例えば、血液などの体液、組織又はバイオプシーなどから分離された細胞であってもよい。細胞は、例えば、単離されたものであってもよいし、株化されたものであってもよい。或いは、細胞は、生体内の細胞であってもよい。
【0064】
細胞が生体外に取り出された細胞又は微生物である場合、核酸導入キャリア1の細胞7への接触は、例えば、培養されている細胞又は微生物上に上記の核酸導入キャリア1を含む組成物を添加すること等により行うことができる。例えば、添加した後、細胞を30~48時間、細胞の生存に適した条件で培養することが好ましい。
【0065】
細胞が動物の生体内の細胞である場合、接触は、例えば、生体に核酸導入キャリア1を含む組成物を投与することによって行われる。投与は、例えば、非経口経路、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、眼内、肝内、病変内及び頭蓋内への注射又は点滴などによって行うことができる。
【0066】
細胞が植物の細胞である場合、接触は、核酸導入キャリア1を含む組成物に植物を浸すこと、又はシリンジなどにより植物に組成物を注入することなどにより行うことができる。
【0067】
実施形態の核酸導入方法に用いられる酵素は、Cas9及びトランスポゼースに限られるものではなく、他の核酸導入に関与する酵素を用いても同様に第1の配列5を導入することが可能である。
【0068】
実施形態の核酸導入方法によれば、酵素がRNAの形態で導入されることにより、DNAの形態で導入される場合と比較して転写工程を省略することができるので、より迅速かつ高効率で酵素が発現される。したがって、より効率よく第1の配列5を導入することができる。
【0069】
また、酵素をタンパク質の形態で導入する場合は、内包するタンパク質のサイズや性質に従って脂質粒子4のサイズや組成を調節する必要がある。一方、実施形態の核酸導入方法のようにRNAの形態であれば脂質粒子4の組成に比較的制限がないため、タンパク質の形態で導入する場合と比較して核酸導入キャリアを製造する際の手間やコストを低減することが可能である。
【0070】
また、酵素をDNAの形態で導入する場合は、酵素の遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれ、細胞又はその細胞を含む生体内で悪影響を及ぼす可能性がある。対して、実施形態の核酸導入方法によれば、当該酵素はRNAの形態で導入されるため、細胞のゲノム上に組み込まれることはなく、それによる悪影響を防止することができる。
【0071】
加えて、核酸をリポフェクトアミンなどの脂質と結合させて細胞に導入しようとする場合、核酸が分解されたり、不要な分子と凝集したりする可能性がある。また、導入する核酸の存在比を調節しづらい。対して、実施形態の方法によれば、ドナーDNA2及びRNA剤3を脂質粒子4の内腔4bに内包するため、ドナーDNA2及びRNA剤3を分解や凝集から保護することが可能である。また、導入するドナーDNA2及びRNA剤3の量比を容易に調節することが可能である。したがって、ドナーDNA2及びRNA剤3を効率よく細胞内に導入し、RNAを発現させ、第1の配列5を導入することができる。
【0072】
また、上記のように核酸凝縮ペプチド6を用いること、RNAに耐分解性を付与すること、また脂質粒子4に生分解性脂質化合物を含めることにより、より導入効率を高めることが可能である。
【0073】
核酸導入方法は、例えば、ゲノム編集又は遺伝子組換えなどにおけるDNAの導入に利用可能である。例えば、第1の配列5が遺伝子発現カセット、遺伝子又は遺伝子の一部を含む場合、上記核酸導入方法により細胞のゲノムに該遺伝子が導入され、細胞は該遺伝子による新たな機能を得ることができる。例えば、該遺伝子が欠失している細胞、少ない細胞、該遺伝子に異常を有する細胞、部分的に異常を有する細胞に、該遺伝子の正常な機能を付与することが可能である。
【0074】
或いは、第1の配列5の導入により、細胞のゲノムにおける遺伝子をノックアウトすることができる。例えば、細胞に悪影響をもたらす産物を発現する遺伝子、過剰発現する遺伝子をノックアウトすることにより、細胞に正常な機能を与えることが可能である。また、遺伝子ノックアウトモデル生物を作製することが可能である。
【0075】
限定されるものではないが、核酸導入方法は、遺伝子治療、モデル動物の産生、遺伝子機能解析、創薬、遺伝子ドライブ又は遺伝子組換作物の産生などの種々の分野において利用可能である。実施形態の方法によれば、より効率よく当該遺伝子を導入することができるため、遺伝子治療効果、モデル動物の産生効率、遺伝子機能解析効果、創薬効率、遺伝子ドライブ効果若しくは効率、又は遺伝子組変生物産生効果若しくは効率などがより高まり得る。
【0076】
・組成物
実施形態によれば、核酸導入キャリア1と、担体とを含む組成物も提供される。
【0077】
担体は、例えば、水、生理食塩水のような食塩水、グリシン水溶液又は緩衝液などである。
【0078】
実施形態の組成物は、核酸導入キャリア及び担体の他に、更なる成分を含んでもよい。更なる成分は、限定されるものではないが、例えば、アルブミン、リポタンパク、アポリポタンパク、グロブリンなどの糖タンパクなどの安定性を改善する薬剤;医薬用途の場合、例えばpH調整剤、緩衝化剤、張度調整剤など、例えば、ナトリウムアセテート、ナトリウムラクテート、ナトリウムクロリド、カリウムクロリド、カルシウムクロリドなどの製薬学的に許容可能であり、医薬組成物を生理的状態に近づける関与剤;フリーラジカルによるダメージを抑制する、α-トコフェロールのような脂肪親和性フリーラジカルクエンチャーや、脂質の過酸化損傷を抑制するフェリオキサミンのような水溶性キレーターなどの貯蔵安定性を改良するための脂質保護剤等の化合物等である。担体及び他の成分は好ましくは、核酸導入キャリアの形成の後に加える。
【0079】
組成物は、例えば、薬学的に投与可能な組成からなる医薬組成物であってもよい。また、実施形態の組成物は、従来の周知の方法によって滅菌することができる。
【0080】
組成物は、液体として提供されてもよいし、乾燥した粉末として提供されてもよい。粉末の組成物は、例えば、適切な液体に溶解することにより使用可能となる。
【0081】
実施形態の組成物中に含まれる核酸導入キャリアの濃度は、限定されるものではないが、0.01~30質量%、好ましくは0.05~10質量%であることが好ましい。濃度は、目的に応じて適切に選択される。
【0082】
・キット
実施形態によれば、核酸導入キャリアを含むキットが提供される。キットは、例えば、核酸導入キャリアを含む上記組成物と、細胞に核酸導入キャリアを導入するための試薬を含む。或いは、脂質粒子4の材料を担体に分散させた分散物とドナーDNA2及びRNA剤3とを個別容器に収容したキットや、乾燥させた脂質粒子4と、ドナーDNA2及びRNA剤3と、担体とを個別容器に収容したキットなどが提供される。さらに、乾燥させた脂質粒子4又は脂質粒子4の材料の分散物と、ドナーDNA2及びRNA剤3とを個別の製品とし、利用者が各製品を目的に応じて選択できるようにすることもできる。
【0083】
キットは、上記組成物に含ませることが可能な更なる薬剤を別の容器に収容して含んでもよい。
【0084】
(第2の実施形態)
第2の実施形態において、ドナーDNA2及びRNA剤3がコアシェル構造を有する核酸導入キャリアが提供される。第2の実施形態の核酸導入キャリアの断面図を
図3に示す。
【0085】
図3の(a)に示される核酸導入キャリア100は、ドナーDNA2を含むドナーDNAコア15、及びドナーDNAコア15をコーティングするRNA剤3を含むRNA剤シェル16を含むコアシェル構造を備える。コアシェル構造は、脂質粒子4に内包されている。
【0086】
核酸導入キャリア100は、例えば、次のように製造することができる。まず、ドナーDNA2を核酸凝縮ペプチドで凝縮し、ドナーDNAコア15を作製する。次にRNA剤3をドナーDNAコア15に接触させることによって、RNA剤3に含まれるRNAが静電気的にドナーDNAコア15の周囲に張り付き、RNA剤シェル16が形成される。RNA剤3は、核酸凝縮ペプチドで凝縮されたものであってもよい。その結果、コアシェル構造が形成される。次いで、脂質粒子4の材料を含む溶媒にコアシェル構造を添加し、撹拌することによってコアシェル構造が脂質粒子4に内包され、核酸導入キャリア100が製造される。
【0087】
このような構造を有することによって、ドナーDNA2とRNA剤3との時間差導入が可能である。例えば、核酸導入キャリア100が細胞に導入されると、シェルであるRNA剤3がコアであるドナーDNA2よりも先に放出され、RNA剤3に含まれるRNAから生成した酵素は、ドナーDNA2よりも先に核内に到達する。そのため、ドナーDNA2が核内に到達してすぐ第1の配列5の導入が開始され、導入効率が高まり得る。
【0088】
図3の(b)に示される核酸導入キャリア101は、RNA剤3を含むRNA剤コア17、及びRNA剤コア17をコーティングするドナーDNA2を含むドナーDNAシェル18を含むコアシェル構造を備える。コアシェル構造は、脂質粒子4に内包されている。
【0089】
核酸導入キャリア101は、例えば、RNA剤3を核酸凝縮ペプチドで凝縮してRNA剤コア17を作製し、そこにドナーDNA2を接触させることによってドナーDNAシェル18が形成される。ドナーDNA2は、核酸凝縮ペプチドで凝縮されたものであってもよい。次いで、得られたコアシェル構造を脂質粒子4の材料を含む溶媒に添加し、撹拌することによって核酸導入キャリア101を製造することができる。
【0090】
このような構成を有することによって、例えば、核酸導入キャリア101が細胞に導入されると、シェルであるドナーDNA2がコアであるRNA剤3よりも先に放出され、RNA剤3は徐放される。そのため、RNA剤から生成した酵素が細胞内で分解されても、再びRNA剤コア17からRNAが放出されて酵素が供給されるため、第1の配列5の導入効果を長い間持続させることが可能である。
【0091】
用いる細胞の種類によって、核酸導入キャリアの構成が選択される。例えば、タンパク質分解が遅い細胞など、RNA剤から生成した酵素が先に核内に移行しても問題がない細胞では、
図3の(a)に示す核酸導入キャリア100を用いれば導入効率を高めることが可能である。或いは、例えば、分裂周期が速い細胞又はタンパク質分解が速い細胞など、酵素が分解又は消費されやすい細胞では、
図3の(b)に示す核酸導入キャリア101を用いれば導入効率を高めることが可能である。
【0092】
コアに含まれる核酸の放出速度及び放出持続時間は、核酸凝縮ペプチドの組成又は量、或いは核酸の量などによって調節可能である。
【0093】
核酸導入キャリア100及び101は、第1の実施形態の核酸導入キャリアと同様の方法で核酸導入方法に用いることができる。また、第1の実施形態と同様の組成物、キットとして提供されてもよい。
【0094】
(第3の実施形態)
第3の実施形態によれば、ドナーDNA2とRNA剤3とが別々に脂質粒子4内に内包された核酸導入キャリアセットが提供される。核酸導入キャリアセットの一例を
図4に示す。核酸導入キャリアセット200は、第1のキャリア201と第2のキャリア202を備える。第1のキャリア201は、ドナーDNA2と、ドナーDNA2を内包する第1の脂質粒子41とを備える。第2のキャリア202は、RNA剤3と、RNA剤3を内包する第2の脂質粒子42とを備える。ドナーDNA2とRNA剤3とはそれぞれ、核酸凝縮ペプチドで凝縮された状態で内包されていてもよい。
【0095】
第1のキャリア201と第2のキャリア202とは、別々に製造され得る。例えば、第1のキャリア201と第2のキャリア202とはそれぞれ、ドナーDNA2とRNA剤3とをそれぞれ核酸凝縮ペプチドで凝縮し、脂質粒子の材料を含む別々の溶液に混合し、撹拌することによって得られる。
【0096】
核酸導入キャリアセット200、第1の実施形態と同様の組成物、キットとして提供されてもよい。例えば、第1のキャリア201と第2のキャリア202とは、例えば、別々の容器に収容された組成物又は同じ1つの容器に収容された組成物として提供される。
【0097】
核酸導入キャリアセット200は、第1の実施形態の核酸導入キャリアと同様の方法で核酸導入方法に用いることができる。このような核酸導入キャリアセット200によれば、核酸導入方法において第1のキャリア201と第2のキャリア202とのどちらかを先に細胞に接触させることができる。
【0098】
例えば、上記のようなRNA剤3を先に核内に移行させることが好ましい細胞を用いる場合、第2のキャリア202を第1のキャリア201よりも先に細胞に接触させることが好ましい。例えば、第2のキャリア202を接触した後、30分~48時間後に第1のキャリア201を接触させることが好ましい。
【0099】
或いは、上記のようにドナーDNA2を先に核内に移行させ、RNA剤3を徐放することが好ましい細胞を用いる場合、第1のキャリア201を第2のキャリア202よりも先に細胞に接触させることが好ましい。例えば、第1のキャリア201を接触した後、30分~48時間後に第2のキャリア202を接触させることが好ましい。
【0100】
或いは、両者を同時に細胞に接触させてもよい。
【0101】
核酸導入キャリアセット300を用いることにより、ドナーDNA2とRNA剤3とを時間差導入する場合、導入時間の差を調節しやすい。
【0102】
[例]
以下に実施形態の核酸導入キャリアを製造及び使用した例について記載する。
【0103】
例1.DNAを内包するキャリアによるNanoLuc遺伝子の導入効率及び発現効率の評価
・DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターの下流にNanoLuc遺伝子を連結したプラスミドDNAを使用した。このDNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加え、DNA‐ペプチド凝縮体を形成した。次いで、それをエタノール溶解脂溶液(FFT10(前記式(1-01)の生分解性脂質化合物)/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=73/44/59/4mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、DNA内包キャリアを得た。キャリアのDNA内包量は、Quant-iT(登録商標)PicoGreendsDNAAssayKit(サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)で測定し、DNAが十分な量で内包れていることを確認した。
【0104】
・Jurkatの調製及びDNA内包キャリアによる核酸の導入
ヒトT細胞性白血病細胞(Jurkat、ATCC製)をTexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養し、遠心で細胞を回収した後、0.65×107細胞となるように新鮮なTexMACSに細胞を縣濁した。48ウェル培養プレートに、1.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞縣濁液とTexMACSとを各150μL加えた。
【0105】
その後、DNA内包キャリアをDNAが0.5μg/ウェルとなるように上記ウェルに添加して、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0106】
・リポフェクタミン3000によるDNAの細胞への導入
比較対象として、リポフェクタミン3000試薬(インビトロジェン製)を用いて、上記プラスミドDNAをJurkatに導入した。導入は、当該試薬に添付されたマニュアルに従って行った。プラスミドDNAは、0.5μg/ウェルとなるようにJurkatに添加され、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0107】
・NanoLuc発現量の測定(NanoLuc発光アッセイ)
DNA内包キャリア又はリポフェクタミン3000と混合したプラスミドDNAの添加の48時間後、培養プレートをインキュベータから取り出し、Nano-Glo Luciferase Assay System(プロメガ製)で、NanoLucの発光強度をルミノメーター(Infinite(登録商標)F200 PRO、テカン製)で測定した。測定は、キット及び装置に添付のマニュアルに従って行った。
【0108】
・NanoLuc発光アッセイの結果
図5にNanoLuc発光強度の測定結果を示す。DNA内包キャリアによる導入では、リポフェクタミン3000によって導入した場合よりも発光強度が高かった。この結果から、DNA内包キャリアでDNAを導入した細胞では、DNAがよく導入され、且つNanoLuc遺伝子がよく発現していることが明らかである。このことは、DNAをキャリアに内包して導入する方法は、リポフェクタミンとDNAとの複合体を用いる方法よりもDNA導入効率及び遺伝子発現効率が高いことを示している。
【0109】
・顕微鏡による発光細胞の検出
次に、キャリア又はリポフェクタミン3000でDNAを添加した上記細胞を用いて、発光顕微鏡システム(LV200、オリンパス製)で発光細胞の検出を行った。添加から24時間後に、細胞培養液100μLを4ウェル培養ディッシュに移し、NanoLuc基質(LiveCellLuciferaseAssayKit、プロメガ製)を添加した。発光顕微鏡システム(LV200、オリンパス製)の所定の位置に培養ディッシュをセットした後、細胞の明視野像と発光像を撮影した。
【0110】
・顕微鏡観察の結果
図6に、発光細胞の撮影画像(Matamorphソフトウェアによる明視野像と発光像の重ね合わせ画像)を示す。図中矢印で示す白色の点は、発光細胞である。
図6の(a)は、DNA内包キャリアを用いた細胞の顕微鏡画像を示し、
図6の(b)は、リポフェクタミン3000を用いた細胞の顕微鏡画像を示す。両者を比較すると、DNA内包キャリアを用いた場合では、リポフェクタミン3000を用いた場合よりも発光した細胞の数がはるかに多いことが明らかである。この結果は、NanoLuc発光アッセイと同様に、DNA内包キャリアを用いた場合、リポフェクタミンとDNAとの複合体を用いるよりもDNA導入効率及び遺伝子発現効率が高いことを示している。
【0111】
例2.mRNAを内包するキャリアによる緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子の導入効率及び発現効率の評価
・RNA内包キャリアの調製
メッセンジャーRNA(mRNA)として、レポーター遺伝子である緑色蛍光蛋白質(GFP)のmRNA(オズバイオサイエンス製)を使用した。このmRNAを含むRNA溶液を、エタノール溶解脂質液(FFT10/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=73/44/59/4mol)に加え、ピペッティングで縣濁した後、10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加し、この溶液を遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してRNA内包キャリアを得た。キャリアのRNA内包量は、QuantiFluor(登録商標)RNASystem(プロメガ製)で測定し、mRNAが十分な量で内包れていることを確認した。
【0112】
・Jurkatの調製及びRNA内包キャリアによる核酸の導入
JurkatをTexMACS培地で培養し、遠心で細胞を回収した後、0.65×107細胞となるように新鮮なTexMACSに細胞を縣濁した。48ウェル培養プレートに、1.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞縣濁液とTexMACSとを各150μL加えた。
【0113】
その後、RNA内包キャリアをmRNAが0.5μg/ウェルとなるように上記ウェルに添加して、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0114】
・リポフェクタミン3000によるmRNAの細胞への導入
比較対象として、リポフェクタミン3000試薬を用いて上記mRNAをJurkatに導入した。導入は、当該試薬に添付されたマニュアルに従って行った。mRNAは、0.5μg/ウェルとなるようにJurkatに添加され、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0115】
・GFPの発現検出
RNA内包キャリア又はリポフェクタミン3000と混合したmRNAの添加の24時間後、培養プレートをインキュベータから取り出し、遠心で細胞を回収した後、1%BSA(Gibco、サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)を含むリン酸緩衝液PBSに懸濁し、蛍光活性化セルソーター(FACS;FACSVerse(登録商標)、BDバイオサイエンス製)により、GFPの緑色蛍光を検出した。
【0116】
・結果
図7に、検出結果を示す。
図7の(a)はRNA内包キャリアにおける結果を示し、
図7の(b)は、リポフェクタミン3000における結果を示す。グラフは、縦軸を細胞数(%)とし、横軸をGFP発現強度としたヒストグラムを示す。実線のヒストグラムはRNAを導入した細胞における分布、破線のヒストグラムはRNAを導入していない細胞(コントロール)の分布を示す。
【0117】
図7の(a)に示すように、RNA内包キャリアで導入した場合、細胞の蛍光強度の分布はコントロールと比較して右側に大きくシフトしており、細胞でGFPがよく発現していることを示している。このことから、GFPのmRNAが良く導入され、かつGFPがよく発現していることが明らかである。
【0118】
対して
図7の(b)に示すように、リポフェクタミン試薬を用いてRNAを導入した場合は、蛍光強度の分布はコントロールとほとんど同じものであり、GFPのmRNAの導入又は発現が弱いことを示唆している。
【0119】
従って、mRNAをキャリアに内包して導入する方法は、リポフェクタミンとmRNAとの複合体を用いる方法よりもmRNA導入効率及び遺伝子発現効率が高いことを示している。
【0120】
例3.mRNA形態での導入(RNA内包キャリア)及びDNA形態での導入(DNA内包キャリア)におけるGFP遺伝子の導入効率及び発現効率の評価
・RNA内包キャリアの調製
mRNAとして、例2に記載のGFPのmRNAを使用した。GFPのmRNAを含むRNA溶液を、エタノール溶解脂質液(FFT10/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=73/44/59/4mol)に加え、ピペッティングで縣濁した後、10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加し、この溶液を遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してRNA内包キャリアを得た。キャリアのRNA内包量は、QuantiFluor(登録商標)RNASystemで測定し、mRNAが十分な量で内包れていることを確認した。
【0121】
・DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターの下流にGFP遺伝子を連結したプラスミドDNAを使用した。このDNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加えてDNAを凝縮させた後、それをエタノール溶解脂溶液(FFT10/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=73/44/59/4mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、DNA内包キャリアを得た。キャリアのDNA内包量は、Quant-iT(登録商標)PicoGreendsDNAAssayKitで測定し、DNAが十分な量で内包れていることを確認した。
【0122】
・Jurkatの調製及びキャリアによる核酸の導入
JurkatをTexMACS培地で培養し、遠心で細胞を回収した後、0.65×107細胞となるように新鮮なTexMACSに細胞を縣濁した。48ウェル培養プレートに、1.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞縣濁液とTexMACSとを各150μL加えた。
【0123】
RNA内包キャリア及びDNA内包キャリアを1.0μg/ウェルとなるようにそれぞれ別のウェル培養プレートの各ウェルに添加し、それぞれ37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0124】
・GFPの発現検出
キャリアを添加してから24時間後、培養プレートをインキュベータから取り出し、遠心で細胞を回収した後、1%BSA(Gibco、サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)を含むリン酸緩衝液(PBS)に懸濁し、FACSにより細胞の緑色蛍光(GFP)を検出した。
【0125】
・結果
図8に、検出結果を示す。
図8の(a)はRNA内包キャリアにおける結果を示し、
図8の(b)は、DNA内包キャリアにおける結果を示す。グラフは、縦軸を細胞数(%)とし、横軸をGFP発現強度としたヒストグラムを示す。実線のヒストグラムはそれぞれキャリアでRNA又はDNAを導入した細胞における分布を示し、破線のヒストグラムはRNA又はDNAを導入していない細胞(コントロール)の分布を示す。
【0126】
図8の(a)に示す通り、mRNAの形態でGFP遺伝子を導入した場合、蛍光強度の分布は、コントロールと比較して右側に大きくシフトしており、細胞でGFPがよく発現していることを示している。このことから、GFPのmRNAが良く導入され、かつGFPがよく発現していることが明らかである。
【0127】
対して
図8の(b)に示すように、DNAの形態でGFP遺伝子を導入した場合は、蛍光強度の分布はコントロールとほとんど同じものであり、DNAの導入又はGFPの発現が弱いことを示唆している。
【0128】
従って、mRNAの形態でのGFPの導入は、DNA形態での導入する場合よりも核酸導入効率及び遺伝子発現効率が高いことを示している。
【0129】
例4 DNA/RNA共内包キャリアによるGFP遺伝子の導入効率及び発現効率の評価
・RNA/DNA共内包キャリアの調製及びJurkatへの導入
例1に記載のNanoLuc遺伝子を含むプラスミドDNAと、例2に記載のGFP遺伝子のmRNAを含む混合溶液を、エタノール溶解脂溶液(FFT10/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=73/44/59/4mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、RNA/DNA内包キャリアを得た。キャリアのRNA内包量は、QuantiFluor(登録商標)RNASystemで、DNA内包量は、Quant-iT(登録商標)PicoGreendsDNAAssayKitで測定し、mRNA及びDNAが十分な量で含まれることを確認した。
【0130】
JurkatをTexMACS培地で培養し、遠心で細胞を回収した後、0.65×107細胞となるように新鮮なTexMACSに細胞を縣濁した。48ウェル培養プレートに、1.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞縣濁液とTexMACSとを各150μL加えた。その後、DNA/RNA内包キャリアをmRNAとDNAとがそれぞれ0.5μg/ウェルとなるようにウェルに添加して、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0131】
・リポフェクタミン3000によるmRNA及びDNAの細胞への導入
比較対象として、リポフェクタミン3000試薬を用いて、mRNA及びプラスミドDNAをJurkatに導入した。導入は、当該試薬に添付されたマニュアルに従って行った。mRNA及びプラスミドDNAは、0.5μg/ウェルとなるようにJurkatに添加され、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0132】
・NanoLuc及びGFPの発現検出
NanoLucDNAからのNanoLucの発現は、Nano-Glo Luciferase Assay Systemで、GFPmRNAからのGFPの発現は、FACSで検出した。検出は、それぞれ例1及び例2に記載の方法で行った。
【0133】
・結果
図9にNanoLucの発現を検出した結果を示す。
図9に示すグラフから、キャリアでDNA及びRNAを導入した方が、リポフェクタミン3000を用いるよりも相対発光強度がはるかに高いことが明らかとなった。この結果は、キャリアを用いた方が、DNAの導入効率がよく、DNAからの遺伝子の発現効率がよいことを示している。
【0134】
図10にGFPの発現を検出した結果を示す。
図10の(a)はキャリアにおける結果を示し、
図10の(b)は、リポフェクタミン3000における結果を示す。これらのヒストグラムから、キャリアを用いた方が、リポフェクタミン3000を用いるよりもGFP蛍光強度が高いことが明らかとなった。この結果は、キャリアを用いた方が、mRNAの導入効率がよく、mRNAからの遺伝子の発現効率がよいことを示している。
【0135】
以上の結果から、DNA/RNA共内包キャリアによれば、DNA及びRNAの両方における導入効率及び発現効率の高い同時導入が可能であることが明らかとなった。
【0136】
例5.DNA内包キャリア及びRNA内包キャリアによるDNA及びRNAの時間差導入の評価
・DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターとNanoLuc遺伝子とを連結したNanoLuc遺伝子発現カセットを組込んだプラスミドDNAを使用した。DNA内包キャリアは、例1に記載の方法で調整した。
【0137】
・RNA内包キャリアの調製
RNAとして、トランスポゼースRNAを使用した。RNA内包キャリアは、例2に記載の方法で調整した。
【0138】
・細胞の調製及びキャリアによる核酸の導入
凍結した市販のヒト末梢血単核球細胞(PBMC、Lonza)を37℃の恒温槽で融解した後、遠心で細胞を回収した。細胞を2種類のサイトカイン(10ng/mLのIL-7、5ng/mLのIL-15(ミルテニー))を含むTexMACSに縣濁した後、6cm培養ディッシュに播種して、37℃、5%CO2雰囲気のインキュベータ内で培養した。1晩培養した後、インキュベータから培養ディッシュを取り出して、遠心で細胞を回収し、TexMACS(10ng/mLのIL-7、5ng/mLのIL-15を含む)に懸濁した後、CD3抗体(ミルテニー)及びCD28抗体(ミルテニー)でコーティングした48ウェル培養プレートで、37℃、5%CO2雰囲気で一晩培養した。
【0139】
細胞培養液にトランスポゼースRNA内包キャリア(4μg)を添加して5%CO2雰囲気で培養した。2時間後に更にNanoLucDNA内包キャリア(4μg)を添加し、培養を継続した。
【0140】
比較対象として、同様の細胞培養液にトランスポゼースRNA内包キャリア(4μg)及びNanoLucDNA内包キャリア(4μg)を同時に添加し、5%CO2雰囲気で培養した。
【0141】
・NanoLucの発光検出
最初のキャリア添加から48時間後、培養プレートをそれぞれインキュベータから取り出して、Nano-Glo Luciferase Assay System(プロメガ製)で、NanoLucの発光強度をルミノメーター(Infinite(登録商標)F200 PRO、テカン製)でそれぞれ測定した。発光測定は、キットと装置に添付のマニュアルに従った。
【0142】
・結果
図11に、NanoLuc発光強度の測定結果を示す。DNA内包キャリアとRNA内包キャリアとを同時に添加した場合よりも、RNA内包キャリアの添加の2時間後にDNA内包キャリアを添加した場合の方が、高いNanoLucの発光強度が測定された。この結果から、DNAの導入を補助するトランスポゼースのmRNAと導入される配列を含むDNAとの時間差導入が、DNAからのタンパク質発現量を増加させるのに有効であることが明らかになった。また、実施形態の方法によれば、一般的に核酸導入効率が低いとされているPBMCにおいてもDNAを効率よく導入及び発現させることが可能であることが明らかとなった。
【0143】
例6.DNA/RNAコアシェル構造を有するキャリアによる核酸の導入効率の評価
・DNA/RNAコアシェル内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターとCAR遺伝子とを連結したCAR遺伝子発現カセットを組込んだプラスミドDNAを使用し、RNAとして、例2に記載のGFP mRNAを使用した。当該DNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加えてDNAコアを形成した後、当該RNAを添加してDNAコアにRNAをシェルとして外套させたDNA/RNAコアシェルを含む溶液を調整した。これをエタノール溶解脂溶液(FFT10/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=73/44/59/4mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してDNA/RNAコアシェル構造を有するキャリアを得た。
【0144】
・DNA/RNA混合内包キャリアの調製
比較対象として、上記DNA及びRNAを含む混合溶液にカチオン性ペプチドを加えてDNA/RNA混合コアを含む溶液を調整し、これにエタノール溶解脂溶液(FFT10/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=73/44/59/4mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮することによりDNA/RNA混合内包キャリアを得た。
【0145】
・キャリア内へのDNA/RNAの内包の確認
次に、得られた両キャリアにDNA及びRNAが内包されたか否かを確認するために、キャリア開裂(界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウムの添加)及びコア構造破壊(ポリグルタミン酸の添加)を行い、放出されたDNA/RNAをアガロース電気泳動で検出した。
【0146】
図12にその結果を示す。DNA/RNAコアシェル内包キャリア及びDNA/RNA混合コア内包キャリアの両方において、キャリア開裂とコア構造破壊との両方一度におこなった条件でのみDNAとRNAとのシグナル(図中矢印)が検出された。この結果から、DNA/RNAコアシェル内包キャリア及びDNA/RNA混合コア内包キャリアの両方に、DNA及びRNAの凝集物が含まれることが確認された。
【0147】
・細胞の蛍光顕微鏡観察
DNA/RNAコアシェル内包キャリア及びDNA/RNA混合コア内包キャリアを、Jurkatに導入して20時間後、緑色蛍光を有する細胞(GFP発現細胞)を蛍光顕微鏡で検出した。
図13にその結果を示す顕微鏡写真を示す。DNA/RNA混合コア内包キャリアでは、キャリア導入の20時間後の時点ではGFP発現細胞は検出されなかったが(
図13の(b))、4日後にGFP発現細胞が検出された(
図13の(d)の矢印)。対して、DNA/RNAコアシェル内包キャリアでは、キャリア添加から20時間後にGFP発現細胞が検出された(
図13の(a)の矢印)。この結果は、DNA/RNAコアシェルにおけるRNAの発現が、DNA/RNA混合コアに比べて早いことを示唆している。したがって、DNA/RNAコアシェル内包キャリアでは、細胞内でDNA/RNAコアが時間差分解され、RNAシェルからコアDNAの順にタンパク質を発現させることが可能であることが明らかとなった。
以下、本出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
第1の配列を含むドナーDNAと、
ゲノムへの前記第1の配列の導入に関与するタンパク質をコードするRNAを少なくとも含むRNA剤と、
前記ドナーDNA及び前記RNA剤を内包する脂質粒子と
を備える、
前記第1の配列を細胞のゲノムに導入するために用いられる核酸導入キャリア。
[2]
前記ドナーDNA及び前記RNA剤は、前記ドナーDNAがコアであり、前記RNA剤がシェルであるコアシェル構造を有する[1]に記載の核酸導入キャリア。
[3]
前記ドナーDNA及び前記RNA剤は、前記RNA剤がコアであり、前記ドナーDNAがシェルであるコアシェル構造を有する[1]に記載の核酸導入キャリア。
[4]
前記タンパク質は、エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素である[1]~[3]の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
[5]
前記タンパク質は、CRISPR-関連タンパク質9(Cas9)である、[4]に記載の核酸導入キャリア。
[6]
前記RNA剤は、前記第1の配列を導入するための前記ゲノム上の配列に対応する配列を含むガイドRNAを更に含む[5]に記載の核酸導入キャリア。
[7]
前記タンパク質は、トランスポゼースである[1]~[3]の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
[8]
前記タンパク質は、PiggyBac、SleepingBeauty、Frog Prince、Hsma、Minos、Tol1、Tol2、Passport、hAT、Ac/Ds、PIF、Harbinger、Harbinger3-DR、Himar1、Hermes、Tc3又はMos1である[7]に記載の核酸導入キャリア。
[9]
前記RNA剤は、DNAをメチル化するタンパク質をコードするRNA、DNAを脱メチル化するタンパク質をコードするRNA、DNAを修復するタンパク質をコードするRNA及び/又はDNAを結合するタンパク質をコードするRNAを更に含む[1]~[8]の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
[10]
前記RNA剤に含まれるRNAは、分解に耐性を有するように修飾されている[1]~[9]の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
[11]
前記ドナーDNA及び/又は前記RNA剤は、核酸凝縮ペプチドで凝縮されている[1]~[10]の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
[12]
前記脂質粒子は、式Q-CHR
2
(式中、
Qは、3級窒素を2つ以上含み、酸素を含まない含窒素脂肪族基であり、
Rは、それぞれ独立に、C
12
~C
24
の脂肪族基であり、
少なくとも一つのRは、その主鎖中または側鎖中に、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-、-C(=O)-S-、-C(=O)-NH-、および-NHC(=O)-からなる群から選択される連結基LRを含む)で表される第1の生分解性脂質を更に含む[1]~[11]の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
[13]
前記脂質粒子は、式P-[X-W-Y-W’-Z]
2
(式中、
Pは、1つ以上のエーテル結合を主鎖に含むアルキレンオキシであり、
Xは、それぞれ独立に、三級アミン構造を含む2価連結基であり、
Wは、それぞれ独立に、C
1
~C
6
アルキレンであり、
Yは、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、カルボン酸エステル結合、チオカルボン酸エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、カルバメート結合及び尿素結合からなる群から選ばれる2価連結基であり、
W’は、それぞれ独立に、単結合またはC
1
~C
6
アルキレンであり、
Zは、それぞれ独立に、脂溶性ビタミン残基、ステロール残基、またはC
12
~C
22
脂肪族炭化水素基である)
で表される第2の生分解性脂質を更に含む[1]~[12]の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
[14]
第1の配列を含むドナーDNAと、前記ドナーDNAを内包する第1の脂質粒子とを備える第1のキャリア、及び
ゲノムへの前記第1の配列の導入に関与するタンパク質をコードするRNAを少なくとも含むRNA剤と、前記RNA剤を内包する第2の脂質粒子とを備える第2のキャリア
を含む、
前記第1の配列を細胞のゲノムに導入するために用いられる核酸導入キャリアセット。
[15]
[1]~[13]の何れか1項に記載の核酸導入キャリア又は[14]に記載の核酸導入キャリアセットと、
担体と
を含む核酸導入組成物。
[16]
第1の配列を含むドナーDNAと、ゲノムへの前記第1の配列の導入に関与するタンパク質をコードするRNAを少なくとも含むRNA剤と、前記ドナーDNA及び前記RNAを内包する脂質粒子とを備える核酸導入キャリアを用いて、前記第1の配列を細胞のゲノムに導入する方法であって、前記核酸導入キャリアを前記細胞に接触させることを含む核酸導入方法。
[17]
前記核酸導入キャリアの前記細胞への接触によって、前記細胞内で前記RNAから前記タンパク質を発現させること、及び
前記タンパク質の活性により前記第1の配列を前記細胞の前記ゲノムに導入すること
を更に含む[16]に記載の方法。
[18]
前記核酸導入キャリアの前記ドナーDNA及び前記RNA剤は、前記ドナーDNAがコアであり、前記RNA剤がシェルであるコアシェル構造を有する[16]又は[17]に記載の方法。
[19]
前記RNAから発現された前記タンパク質が、前記ドナーDNAよりも早く前記細胞の核内に到達する[18]に記載の方法。
[20]
前記核酸導入キャリアの前記ドナーDNA及び前記RNA剤は、前記RNA剤がコアであり、前記ドナーDNAがシェルであるコアシェル構造を有する[16]又は[17]に記載の方法。
[21]
前記RNAが前記細胞内で徐放される[20]に記載の方法。
[22]
第1の配列を含むドナーDNAと、前記ドナーDNAを内包する脂質粒子とを備える第1のキャリア、及び
ゲノムへの前記第1の配列の導入に関与するタンパク質をコードするRNAを少なくとも含むRNA剤と、前記RNA剤を内包する脂質粒子とを備える第2のキャリア
を用いて、前記第1の配列を細胞のゲノムに導入する方法であって、
前記第1のキャリアと第2のキャリアとを前記細胞に接触させることを含む核酸導入方法。
[23]
前記第1のキャリアを前記細胞に接触させた後、前記第2のキャリアを前記細胞に接触させる、[22]に記載の方法。
[24]
前記第2のキャリアを前記細胞に接触させた後、前記第2のキャリアを前記細胞に接触させる、[22]に記載の方法。
[25]
前記第1のキャリアと前記第2のキャリアとを同時に前記細胞に接触させる、[23]に記載の方法。
[26]
前記タンパク質は、エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素である[16]~[25]の何れか1項に記載の方法。
[27]
前記タンパク質は、CRISPR-関連タンパク質9(Cas9)である、[26]に記載の方法。
[28]
前記RNA剤は、前記第1の配列を導入するための前記ゲノム上の配列に対応する配列を含むガイドRNAを更に含む[27]に記載の方法。
[29]
前記タンパク質は、トランスポゼースである[16]~[25]の何れか1項に記載の方法。
[30]
前記タンパク質は、PiggyBac、SleepingBeauty、Frog Prince、Hsma、Minos、Tol1、Tol2、Passport、hAT、Ac/Ds、PIF、Harbinger、Harbinger3-DR、Himar1、Hermes、Tc3又はMos1である[29]に記載の方法。
【符号の説明】
【0148】
1、100、101…核酸導入キャリア
2…ドナーDNA
3…RNA剤
3a…RNA
3b…ガイドRNA
4…脂質粒子
5…第1の配列
6…核酸凝縮ペプチド
200…核酸導入キャリアセット
201…第1のキャリア
202…第2のキャリア
【配列表】