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  • 特許-被膜形成用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】被膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20250210BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20250210BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250210BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250210BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20250210BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20250210BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20250210BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20250210BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250210BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
A61K8/02
A45D34/04 550
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/89
A61Q19/00
B05B5/025 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020133920
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2021024862
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2019145786
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅見 信之
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108991(JP,A)
【文献】特開2018-177796(JP,A)
【文献】特開2018-177797(JP,A)
【文献】特開2018-177724(JP,A)
【文献】特開2018-177801(JP,A)
【文献】国際公開第2019/156146(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A45D 34/04
A61K 9/00 - 9/72
A61K 47/00 -47/69
A61Q 1/00 -90/00
B05B 5/025
B05D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)、(b)及び(c)を含有し、成分(c)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(c))が1.5以上8以下であり、被膜形成用組成物で形成された被膜の弾性率が1×10 4 N/m 2 以上7×10 6 N/m 2 以下である、静電スプレーにより直接皮膚上に繊維で形成された被膜を形成するための被膜形成用組成物。
(a)ポリビニルブチラール樹脂
(b)エタノールを含む揮発性物質
(c)ポリC3-C4アルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エステル油(紫外線吸収剤を除く)、シリコーン油及びノニオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の不揮発性油であって、logSが-4以上0未満である不揮発性油 2質量%以上30質量%以下
【請求項2】
成分(c)に対する成分(b)の含有質量比((b)/(c))が、以上22以下である請求項記載の被膜形成用組成物。
【請求項3】
成分(b)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(b))が、0.12以上0.25以下である請求項1又は2記載の被膜形成用組成物。
【請求項4】
成分(a)の含有量が4質量%以上35質量%以下、成分(b)の含有量が45質量%以上95質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の被膜形成用組成物。
【請求項5】
成分(a)の含有量が4質量%以上30質量%以下、成分(b)の含有量が50質量%以上93質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の被膜形成用組成物。
【請求項6】
成分(c)の含有量が2質量%以上25質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の被膜形成用組成物。
【請求項7】
静電スプレー以外の手段で皮膚に適用する化粧料と組み合わせて使用するものである請求項1~のいずれか1項に記載の被膜形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電スプレーにより直接皮膚上に被膜を形成するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
静電スプレーによって被膜を形成する方法が種々知られている。例えば特許文献1には、皮膚に組成物を静電スプレーすることを含む皮膚を処理する方法が記載されている。この方法で用いられる組成物は、液体絶縁性物質と、導電性物質と、粒子状粉末物質と、増粘剤とを含んでいる。この組成物としては、典型的には顔料を含む化粧品やスキンケア組成物が用いられている。具体的には、組成物として化粧用ファンデーションが用いられている。すなわち、特許文献1に記載の発明は、美容の目的で化粧用ファンデーションを静電スプレーして、皮膚を化粧することを主として想定している。
【0003】
特許文献2には、化粧品の静電スプレー装置に使用するための使い捨てカートリッジが記載されている。この静電スプレー装置は、手持ち式の自蔵型のものである。この静電スプレー装置は、前記の特許文献1と同様に化粧用ファンデーションを噴霧するために用いられる。
また、特許文献3には、静電スプレー法により皮膚の表面に被膜を形成する前又は後に液剤を皮膚に施すことにより被膜の密着性を向上させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-104211号公報
【文献】特表2003-507165号公報
【文献】特開2017-78062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法に従い静電スプレーを行い皮膚に被膜を形成した場合、皮膚と静電スプレーによって形成された被膜との密着性が十分でなく、皮膚の動きや水分に起因して被膜が損傷したり剥離したりすることがある。また、特許文献3に記載の方法により皮膚に被膜を形成した場合、被膜の密着性はある程度向上するが、さらなる皮膚の動きに対する追従性や水分に対する耐久性が求められており、また予め化粧料を塗布した皮膚に静電スプレーした場合の被膜の肌なじみ、良好な感触も求められていた。
従って、本発明の課題は、静電スプレーにより直接皮膚上に被膜を形成するための組成物であって、形成された被膜の肌なじみ、密着性、皮膚の動きへの追従性、水分に対する耐久性に優れる組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、静電スプレー法による皮膚上での被膜形成の前や後に塗布する組成物ではなく、皮膚上での被膜形成に用いる静電スプレー用組成物の組成について種々検討した結果、被膜形成能を有するポリマー及び揮発性物質に加えて、特定のlogS値を有する不揮発性油を併用することにより、静電スプレーにより直接皮膚上に形成された被膜が、良好な弾性率を有し、肌なじみ、密着性、皮膚の動きへの追従性及び水分に対する耐久性に優れたものになることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(a)、(b)及び(c)を含有し、被膜形成用組成物で形成された被膜の弾性率が1×10N/m以上9×10N/m以下である、静電スプレーにより直接皮膚上に繊維で形成された被膜を形成するための被膜形成用組成物に関する。
(a)被膜形成能を有するポリマー、
(b)アルコール及びケトンから選ばれる1種以上の揮発性物質、
(c)logSが-7以上0未満の不揮発性油 2質量%以上30質量%以下
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物を用いて、静電スプレーにより直接皮膚上に繊維で形成された被膜を形成すれば、得られた被膜は、良好な弾性率を有し、肌なじみ、密着性皮膚の動きへの追従性及び水分に対する耐久性に優れたものになる。また、予め化粧料を塗布した皮膚に静電スプレーした場合や皮膚上に静電スプレーにより被膜を形成した後に化粧料を塗布した場合には、被膜と肌とのなじみが極めて良好になる。また、本発明の組成物を用いて得られる被膜の弾性率は、1×10N/m以下、特に1×10N/m以上9×10N/m以下であるのが、被膜の密着性、皮膚の動きへの追従性の点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を示す概略図である。
図2】静電スプレー装置を用いて静電スプレー法を行う様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の被膜形成用組成物は、静電スプレーにより直接皮膚上に繊維で形成された被膜を形成するための組成物であって、前記の成分(a)、(b)及び(c)を含有する。なお、本発明において繊維で形成された被膜とは、成分(a)による繊維を含む被膜を意味し、繊維以外の例えば繊維周囲に液状物が存在するものであってもよい。また、静電スプレーは、好ましくはエレクトロスピニングであることが好ましい。
【0011】
成分(a)である被膜形成能を有するポリマーは、一般に、成分(b)の揮発性物質に溶解することが可能な物質である。ここで、溶解するとは成分(a)と成分(b)を混合した際に、成分(b)中に成分(a)が20℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることをいう。本発明における被膜形成能は、好ましくは繊維形成能である。
【0012】
被膜形成能を有するポリマーとしては、成分(b)の揮発性物質の性質に応じて適切なものが用いられる。具体的には、被膜形成能を有するポリマーは水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとに大別される。本明細書において「水溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1gを秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g以上が水に溶解する性質を有するものをいう。一方、本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、1気圧・23℃の環境下において、ポリマー1gを秤量したのちに、10gのイオン交換水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g未満しか水に溶解しない性質を有するものをいう。
【0013】
水溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ-γ-グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子など
が挙げられる。これらの水溶性ポリマーは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性ポリマーのうち、被膜の製造が容易である観点から、プルラン、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。水溶性ポリマーとしてポリエチレンオキサイドを用いる場合、その数平均分子量は、5万以上300万以下であることが好ましく、10万以上250万以下であることがより好ましい。
【0014】
一方、水不溶性である被膜形成能を有するポリマーとしては、例えば被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの水不溶性ポリマーのうち、被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン等を用いることが好ましい。
【0015】
成分(a)としては、水不溶性の被膜形成能を有するポリマーが好ましく、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、オキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、及びポリ乳酸から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0016】
本発明の被膜形成用組成物における成分(a)の含有量は、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることがよりさらに好ましい。また35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることがよりさらに好ましい。被膜形成用組成物における成分(a)の含有量は、4質量%以上35質量%以下であることが好ましく、4質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、6質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以上20質量%以下であることがよりさらに好ましい。この割合で被膜形成用組成物中に成分(a)を含有させることで、目的とする被膜を効率的に形成することができ、かつ繊維で形成された被膜を安定して形成させることができる。
【0017】
成分(b)の揮発性物質は、液体の状態において揮発性を有する物質である。被膜形成用組成物において成分(b)は、電界内に置かれた該被膜形成用組成物を十分に帯電させた後、ノズル先端から皮膚に向かって吐出され、成分(b)が蒸発していくと、被膜形成用組成物の電荷密度が過剰となり、クーロン反発によって微細化しながら成分(b)がさらに蒸発していき、最終的に乾いた被膜を形成させる目的で配合される。この目的のために、揮発性物質はその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上、106.66kPa以下であることが好ましく、0.13kPa以上、66.66kPa以下であることがより好ましく、0.67kPa以上、40.00kPa以下であることがさらに好ましく、1.33kPa以上、40.00kPa以下であることがよりさらに好ましく、2.40kPa以上、40.00kPa以下であることが一層好ましい。
【0018】
成分(b)の揮発性物質のうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしては炭素数が1~6の直鎖または分岐鎖のアルコール、一価の環式脂肪族アルコールとしては炭素数が4~6の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-メチル-2-プロピルアルコール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブチルアルコール、2-メチル-2-ブチルアルコール、3-メチル-1-ブチルアルコール、3-メチル-2-ブチルアルコール、ネオペンチルアルコール、n-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
成分(b)の揮発性物質のうち、ケトンとしては炭素数が1~4のアルキル基を2つ有するケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
成分(b)の揮発性物質は、前記アルコールと前記ケトンから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、さらに水を含むものであっても良い。
成分(b)の揮発性物質は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール及びn-ブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくはエタノール及びイソプロピルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、よりさらに好ましくはエタノールである。また、さらに水を成分(b)中に0.4質量%以上10%質量%以下含むものであっても良い。
【0021】
被膜形成用組成物における成分(b)の含有量は、繊維形成性の観点から、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることがよりさらに好ましい。また95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましく、88質量%以下であることがよりさらに好ましい。同様の観点から、被膜形成用組成物における成分(b)の含有量は、45質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上93質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以上88質量%以下であることがよりさらに好ましい。この割合で被膜形成用組成物中に成分(b)を含有させることで、目的とする被膜を効率的に形成することができ、かつ繊維で形成された被膜を安定して形成させることができる。また、この割合で被膜形成用組成物中に成分(b)を含有させることで、静電スプレー法を行うときに被膜形成用組成物中から成分(b)を効率的に、かつ十分に揮発させることができる。
【0022】
成分(c)であるlogSが-7以上0未満の不揮発性油は、静電スプレーにより皮膚上に繊維で形成された被膜に柔軟性と弾性を付与することにより、被膜の皮膚への密着性を向上させ、被膜の皮膚の動きへの追従性を向上させるとともに、被膜の水分に対する耐久性を向上させる成分である。本発明で用いられる成分(c)は、不揮発性油であって、かつlogSが-7以上0未満の成分である。
【0023】
不揮発性とは、油剤1gを直径48mmのガラスシャーレに広げ、25℃、常圧で24時間放置後の質量減少率が1%以下のものをいう。
【0024】
logSは、化学物質の水に対する溶解度を示す指標であり、「S」は飽和溶液の濃度(mol/L)である。本発明におけるlogS値はChemDrawProfessional 17.1を用いて計算したものであり、計算方法にはMolecular NetworksのケモインフォマティクスプラットフォームMOSESに基づく計算モジュールが用いられている。MOSESは、Molecular Networks GmbH(ドイツ、エルランゲン)が開発、保守、所有している。
成分(c)のlogSは-6以上が好ましく、-4以上がより好ましい。また、logSは0未満が好ましい。
【0025】
成分(c)としては、一般に化粧品の分野において用いられ得るものであれば特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エステル油、シリコーン油、高級アルコール、高級脂肪酸、ノニオン界面活性剤等から選ばれるlogSが-7以上0未満の不揮発性油の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分(c)としては、分岐構造や不飽和構造を有する不揮発性油が好ましい。
【0026】
ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル(オキシアルキレンの構成単位としてプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1種以上含むもの)及びこれらの混合物等が挙げられる。ここで、ポリオキシアルキレングリコールとしては、静電スプレーにより皮膚上に繊維で形成された被膜に柔軟性と弾性を付与することにより、被膜の皮膚への密着性を向上させ、被膜の皮膚の動きへの追従性を向上させるとともに、被膜の水分に対する耐久性を向上させる点から、ポリC3-C4アルキレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコールがより好ましく、平均分子量3000以下のものが好ましく、平均分子量1000以下のものがより好ましく、なかでも、PPG-7(logS-0.9407)、PPG-9(logS-1.472)、PPG-17(logS-3.596)が好ましい。
【0027】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンラウリルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(オキシアルキレンの構成単位としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1種以上含むもの、かつ炭素数が1~20程度の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基を有するアルキルエーテル)、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシアルキレンメチルグルコシドオキシアルキレンの構成単位としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1種以上含むもの)及びこれらの混合物等が挙げられ、静電スプレーにより皮膚上に繊維で形成された被膜に柔軟性と弾性を付与することにより、被膜の皮膚への密着性を向上させ、被膜の皮膚の動きへの追従性を向上させるとともに、被膜の水分に対する耐久性を向上させる点から、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましく、ラウレス-3(logS-3.377)、ラウレス-30(logS-0.7034)が挙げられ、ラウレス-3(logS-3.377)が好ましい。
【0028】
エステル油としては、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、イソノナン酸イソノニル(logS-4.995)、イソノナン酸イソトリデシル(logS-6.349)等のイソノナン酸エステル、エチルヘキサン酸セチル(logS-6.869)等のエチルヘキサン酸エステル、ステアリン酸グリコール(logS-4.8)、ジラウリン酸グルコール(logS-7.0)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(logS-6.511)、クエン酸トリエチル(logS-0.5133)、アセチルクエン酸トリエチル(logS-1.402)、アセチルクエン酸トリブチル(logS-3.432)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(logS-4.894)等の紫外線吸収剤、安息香酸アルキル等が挙げられる。なかでも、静電スプレーにより皮膚上に繊維で形成された被膜に柔軟性と弾性を付与することにより、被膜の皮膚への密着性を向上させ、被膜の皮膚の動きへの追従性を向上させるとともに、被膜の水分に対する耐久性を向上させる点から、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(logS-6.511)、クエン酸トリエチル(logS-0.5133)、アセチルクエン酸トリエチル(logS-1.402)、アセチルクエン酸トリブチル(logS-3.432)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(logS-4.894)が好ましい。
【0029】
シリコーン油としては、オキサゾリン変性シリコーン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン、ポリグリセリル-3ジシロキサンエチルジメチコン、ラウリルポリグリセリル-3ジシロキサンエチルジメチコン等の鎖状シリコーン等が挙げられる。
【0030】
高級アルコールとしては、飽和直鎖一価アルコール、不飽和一価アルコールなどが挙げられる。飽和直鎖一価アルコールとしては、ドデカノール(ラウリルアルコール)、トリドデカノール、テトラドデカノール(ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(セリルアルコール)等が挙げられる。不飽和一価アルコールとしては、オレイルアルコール、エライジルアルコール等が挙げられる。
【0031】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸(logS-4.754)、パルミトレイン酸(logS-4.076)、シス-6-ヘキサデセン酸(logS-4.076)、リノール酸(logS-4.627)、リノレン酸(logS-4.492)、リシノール酸(logS-3.883)などが挙げられ、なかでも静電スプレーにより皮膚上に繊維で形成された被膜に柔軟性と弾性を付与することにより、被膜の皮膚への密着性を向上させ、被膜の皮膚の動きへの追従性を向上させるとともに、被膜の水分に対する耐久性を向上させる点から、炭素数16から24の不飽和脂肪酸が好ましく、オレイン酸(logS-4.754)、パルミトレイン酸(logS-4.076)、シス-6-ヘキサデセン酸(logS-4.076)、リノール酸(logS-4.627)、リノレン酸(logS-4.492)、リシノール酸(logS-3.883)がより好ましく、オレイン酸(logS-4.754)がさらに好ましい。
【0032】
ノニオン界面活性剤としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコールなどのポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシプロピレングリコールなどのポリプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシブチレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシブチレングリコールなどのポリブチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコールモノ脂肪酸エステル(オキシアルキレンの構成単位としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1種以上含むもの)及びこれらの混合物、ポリオキシアルキレングリコールジ脂肪酸エステル(オキシアルキレンの構成単位としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを1種以上含むもの、かつ2つの脂肪酸は同種、異種の脂肪酸でも良い)及びこれらの混合物、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、マルチトールヒドロキシ脂肪族アルキルエーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油グリセリル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、テトラポリオキシエチレン・テトラポリオキシプロピレン-エチレンジアミン縮合物、ポリオキシエチレン-ミツロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド、ポリオキシエチレン-プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-アルキルアミン、ポリオキシエチレン-脂肪酸アミド、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル等、イソステアリルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル、2-エチルへキシルグリセリルエーテル等のアルキルグリセリルエーテル等が挙げられ、なかでも、静電スプレーにより皮膚上に繊維で形成された被膜に柔軟性と弾性を付与することにより、被膜の皮膚への密着性を向上させ、被膜の皮膚の動きへの追従性を向上させるとともに、被膜の水分に対する耐久性を向上させる点から、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましく、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(logS-2.883)が好ましい。
【0033】
これらの成分(c)のうち、被膜の皮膚への密着性、被膜の皮膚の動きへの追従性、及び被膜の水分に対する耐久性の点から、ポリC3-C4アルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エステル油、高級脂肪酸、ノニオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、高級脂肪酸、ノニオン界面活性剤がより好ましい。
【0034】
成分(a)の被膜形成能を有するポリマーがポリビニルブチラール樹脂等の場合には、好ましい成分(c)は次のとおりである。
成分(c)の不揮発性油としては、ポリビニルブチラール樹脂の構造中の水酸基、エステル、アセタール部分と相互作用しやすい化合物が好ましく、具体的には、ポリC3-C4アルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エステル油、シリコーン油、ノニオン(非イオン)界面活性剤、高級脂肪酸等が挙げられるが、良好な弾性率、密着性、皮膚の動きへの追従性、水分に対する耐久性及び被膜の感触を向上させる観点からポリプロピレングリコール、エステル油、ノニオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、高級脂肪酸を含むことが好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、高級脂肪酸、ノニオン界面活性剤がより好ましい。これらから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
被膜形成用組成物における成分(c)の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が好ましく、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、3.5質量%であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましい。また30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下がよりさらに好ましく、10質量%以下であることがよりさらに好ましく、8質量%以下であることがよりさらに好ましい。被膜形成用組成物における成分(c)の含有量は、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下がより好ましく、3質量%以上20質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上18質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、3.5質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、4質量%以上8質量%以下がさらに好ましい。成分(c)の含有量がこの範囲にあると、静電スプレーにより皮膚上に繊維で形成された被膜に柔軟性及び良好な弾性が付与され、被膜の皮膚への密着性及び水分耐久性が向上し、被膜の皮膚の動きへの追従性が向上し、かつ被膜の肌なじみが向上する。
【0036】
被膜形成用組成物における成分(c)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(c))は、静電スプレーにより繊維で形成された被膜の柔軟性、良好な弾性率、肌なじみ、密着性及び水分に対する耐久性の観点から、0.15以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、1以上であることがよりさらに好ましく、1.5以上であることがさらに一層好ましい。また300以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましく、13以下であることがよりさらに好ましく、10以下であることが一層好ましく、8以下であることがさらに一層好ましく、6以下であることがよりさらに一層好ましい。当該(a)/(c)は、0.15以上300以下であることが好ましく、0.25以上50以下であることがより好ましく、0.5以上50以下であることがさらに好ましく、0.5以上15以下であることがよりさらに好ましく、1以上15以下であることが一層好ましい。また、1以上13以下であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましく、1.5以上8以下であることがさらに好ましい。
【0037】
被膜形成用組成物における成分(c)に対する成分(b)の含有質量比((b)/(c))は、静電スプレーにより繊維で形成された被膜の柔軟性、良好な弾性率、肌なじみ、密着性及び水分に対する耐久性の観点から、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、9以上であることがよりさらに好ましい。また200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましく、30以下であることがさらに好ましく、22以下であることがよりさらに好ましい。当該(b)/(c)は、3以上200以下であることが好ましく、5以上100以下であることがより好ましく、7以上50以下であることがさらに好ましく、7以上30以下であることがさらに好ましく、9以上22以下であることがよりさらに好ましい。
【0038】
被膜形成用組成物における成分(b)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(b))は、目的とする被膜を効率的に形成する観点、繊維で形成された被膜を安定的に形成させる観点、静電スプレー法を行うときに被膜形成用組成物中から成分(b)を効率的に、かつ十分に揮発させる観点から、0.03以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましく、0.12以上であることがよりさらに好ましい。また、同様の観点から0.6以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましく、0.3以下であることがよりさらに好ましく、0.25以下であることが一層好ましく、0.2以下であることがさらに一層好ましく、0.18以下であることがよりさらに一層好ましい。当該(a)/(b)は、0.03以上0.6以下であることが好ましく、0.05以上0.45以下であることがより好ましく、0.1以上0.35以下であることがさらに好ましく、0.1以上0.3以下であることがよりさらに好ましく、0.12以上0.25以下であることが一層好ましい。
【0039】
被膜形成用組成物には、前記成分以外に、導電率制御剤、成分(c)以外の油剤、着色顔料、体質顔料、染料、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン、水等を含んでいてもよい。導電率制御剤としては、導電率向上性の観点から、好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩であり、より好ましくはイオン性界面活性剤であり、さらに好ましくはカチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上である。
【0040】
被膜形成用組成物における導電率制御剤の含有量は、組成物の導電率を前記の範囲にする量であれば限定されないが、被膜を安定して形成させる観点及び過度に導電率が上がることを防止する観点から、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以下がよりさらに好ましく、2質量%以下がよりさらに好ましい。
【0041】
被膜形成用組成物の粘度は、皮膚上に繊維で形成された被膜を安定して形成する観点、静電スプレー時の紡糸性、繊維の乾燥、繊維の細径化等の観点から、25℃で2mPa・s以上であることが好ましく、5mPa・s以上であることがより好ましく、10mPa・s以上であることがさらに好ましく、30mPa・s以上であることがよりさらに好ましく、50mPa・s以上であることが一層好ましく、80mPa・s以上であることがより一層好ましい。また3000mPa・s以下であることが好ましく、2000mPa・s以下であることがより好ましく、1500mPa・s以下であることがさらに好ましく、1000mPa・s以下であることがよりさらに好ましく、800mPa・s以下であることが一層好ましく、500mPa・s以下であることがより一層好ましい。被膜形成用組成物の粘度の範囲は2mPa・s以上3000mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上2000mPa・s以下であることがより好ましく、10mPa・s以上1500mPa・s以下であることがさらに好ましく、30mPa・s以上1000mPa・s以下であることがよりさらに好ましく、50mPa・s以上800mPa・s以下であることが一層好ましく、80mPa・s以上500mPa・s以下であることがより一層好ましい。被膜形成用組成物の粘度は、B型粘度計を用いて25℃で測定される。B型粘度計としては例えば東機産業株式会社製のB型粘度計(TVB-10M)を用いることができる。その場合の測定条件は、測定温度を25℃とする。このとき測定温度とは、被膜形成用組成物の温度である。ロータの種類とロータの回転数は被膜形成用組成物の粘度に応じて、使用する測定機器の仕様に従って選択する。例えば、前記東機産業株式会社製のB型粘度計(TVB-10M)を使用する場合、被膜形成用組成物の粘度が2500mPa・s以上はM2ロータを用いて6rpmで、1000mPa・s以上2500mPa・s未満はM2ロータを用いて12rpmで、500mPa・s以上1000mPa・s未満はM2ロータを用いて30rpmで、100mPa・s以上500mPa・s未満はM2ロータを用いて60rpmで、100mPa・s未満はM1ロータを用いて60rpmで測定することができる。また、前記東機産業株式会社製のB型粘度計(TVB-10M)の仕様説明書には上記測定条件以外の測定条件も記載されており、被膜形成用組成物の粘度に応じて他の測定条件で粘度を測定することもできる。
【0042】
次に、本発明の被膜形成用組成物を用いて静電スプレーにより直接皮膚上に繊維で形成された被膜を形成する方法について説明する。
【0043】
被膜形成用組成物は静電スプレー法によって、ヒトの皮膚の被膜を形成しようとする部位に直接噴霧される。静電スプレー法は、静電スプレー装置を用い、皮膚に被膜形成用組成物を静電スプレーする工程を含む。静電スプレー装置は、基本的に、前記組成物を収容する容器と、前記組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する。
【0044】
図1には、本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を表す概略図が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、低電圧電源11を備えている。低電圧電源11は、数Vから十数Vの電圧を発生させ得るものである。静電スプレー装置10の可搬性を高める目的で、低電圧電源11は1個又は2個以上の電池からなることが好ましい。また、低電圧電源11として電池を用いることで、必要に応じ取り替えを容易に行えるという利点もある。電池に代えて、ACアダプタ等を低電圧電源11として用いることもできる。
【0045】
静電スプレー装置10は、高電圧電源12も備えている。高電圧電源12は、低電圧電源11と接続されており、低電圧電源11で発生した電圧を高電圧に昇圧する電気回路(図示せず)を備えている。昇圧電気回路は一般にトランス、キャパシタ及び半導体素子等から構成されている。
【0046】
静電スプレー装置10は、補助的電気回路13をさらに備えている。補助的電気回路13は、上述した低電圧電源11と高電圧電源12との間に介在し、低電圧電源11の電圧を調整して高電圧電源12を安定的に動作させる機能を有する。さらに補助的電気回路13は、後述するマイクロギヤポンプ14に備えられているモータの回転数を制御する機能を有する。モータの回転数を制御することで、被膜形成用組成物の容器15からマイクロギヤポンプ14への被膜形成用組成物の供給量が制御される。補助的電気回路13と低電圧電源11との間にはスイッチSWが取り付けられており、スイッチSWの入り切りによって、静電スプレー装置10を運転/停止できるようになっている。
【0047】
静電スプレー装置10は、ノズル16をさらに備えている。ノズル16は、金属を初めとする各種の導電体や、プラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から被膜形成用組成物の吐出が可能な形状をしている。ノズル16内には被膜形成用組成物が流通する微小空間が、該ノズル16の長手方向に沿って形成されている。この微小空間の横断面の大きさは、直径で表して100μm以上1000μm以下であることが好ましい。
ノズル16は、管路17を介してマイクロギヤポンプ14と連通している。管路17は導電体でもよく、あるいは非導電体でもよい。また、ノズル16は、高電圧電源12と電気的に接続されている。これによって、ノズル16に高電圧を印加することが可能になっている。この場合、ノズル16に人体が直接触れた場合に過大な電流が流れることを防止するために、ノズル16と高電圧電源12とは、電流制限抵抗19を介して電気的に接続されている。
【0048】
管路17を介してノズル16と連通しているマイクロギヤポンプ14は、容器15中に収容されている被膜形成用組成物をノズル16に供給する供給装置として機能する。マイクロギヤポンプ14は、低電圧電源11から電源の供給を受けて動作する。また、マイクロギヤポンプ14は、補助的電気回路13による制御を受けて所定量の被膜形成用組成物をノズル16に供給するように構成されている。
【0049】
マイクロギヤポンプ14には、フレキシブル管路18を介して容器15が接続されている。容器15中には被膜形成用組成物が収容されている。容器15は、カートリッジ式の交換可能な形態をしていることが好ましい。なお、マイクロギヤポンプ14にかえて、ピストンポンプを用い、補助的電気回路13による制御を受けて所定量の被膜形成用組成物をノズル16に供給するように構成するものであってもよい。
【0050】
以上の構成を有する静電スプレー装置10は、例えば図2に示すように使用することができる。図2には、片手で把持できる寸法を有するハンディタイプの静電スプレー装置10が示されている。同図に示す静電スプレー装置10は、図1に示す構成図の部材のすべてが円筒形の筐体20内に収容されている。筐体20の長手方向の一端10aには、ノズル(図示せず)が配置されている。ノズルは、その組成物の吹き出し方向を、筐体20の縦方向と一致させて、肌側に向かい凸状になるように該筐体20に配置されている。ノズル先端が筐体20の縦方向においてに肌に向かい凸状になるように配置されていることによって、筐体に被膜形成用組成物が付着しにくくなり、安定的に被膜を形成することができる。
【0051】
静電スプレー装置10を動作させるときには、使用者、すなわち静電スプレーによって皮膚上の被膜を形成しようとする部位上に被膜を形成する者が該装置10を手で把持し、ノズル(図示せず)が配置されている該装置10の一端10aを、静電スプレーを行う適用部位に向ける。図2では、使用者の前腕部内側に静電スプレー装置10の一端10aを向けている状態が示されている。この状態下に、装置10のスイッチをオンにして静電スプレー法を行う。装置10に電源が入ることで、ノズルと皮膚との間には電界が生じる。
図2に示す実施形態では、ノズルに正の高電圧が印加され、皮膚が負極となる。ノズルと皮膚との間に電界が生じると、ノズル先端部の被膜形成用組成物は、静電誘導によって分極して先端部分がコーン状になり、コーン先端から帯電した被膜形成用組成物の液滴が電界に沿って、皮膚に向かって空中に吐出される。空間に吐出され且つ帯電した被膜形成用組成物から溶媒である成分(b)が蒸発していくと、被膜形成用組成物表面の電荷密度が過剰となり、クーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間をすすみ、皮膚に到達する。この場合、被膜形成用組成物の粘度を適切に調整することで、空間に吐出されている間に、溶媒である揮発性物質を液滴から揮発させ、溶質である被膜形成能を有する成分
(a)のポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成し、その繊維を適用部位に堆積させることもできる。例えば、被膜形成用組成物の粘度を高めると、該組成物を繊維の形態で適用部位に堆積させやすい。これによって、繊維の堆積物からなる多孔性被膜が適用部位の表面に形成される。このような繊維の堆積物からなる多孔性被膜は、ノズルと皮膚との間の距離や、ノズルに印加する電圧を調整することでも形成することが可能である。
【0052】
静電スプレー法を行っている間は、ノズルと皮膚との間に高い電位差が生じている。しかし、インピーダンスが非常に大きいので、人体を流れる電流は極めて微小である。例えば通常の生活下において生じる静電気によって人体に流れる電流よりも、静電スプレー法を行っている間に人体に流れる電流の方が数桁小さいことを、本発明者らは確認している。
【0053】
静電スプレー法によって繊維の堆積物を形成する場合、該繊維の太さは、円相当直径で表した場合、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることがさらに好ましい。また3000nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることがより好ましく、1000nm以下であることがさらに好ましい。
繊維の太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(繊維の塊、繊維の交差部分、液滴)を除き、繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き、繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
本発明の繊維は、連続繊維であることが好ましく、少なくとも繊維の太さの100倍以上の長さを有することが好ましい。例えば、形成された被膜は、成分(a)を含む、好ましくは10μm以上の長さ、より好ましくは50μm以上の長さ、さらに好ましくは100μm以上の長さの繊維を含有することが好ましい。本明細書においては、繊維の太さの100倍以上の長さを有する繊維のことを「連続繊維」と定義する。繊維の断面形状は好ましくは円形、又は楕円形であり、繊維の太さは円形の場合は直径、楕円形の場合は長径の長さである。そして、静電スプレー法によって製造される被膜は、1本又は2本以上の連続繊維の堆積物からなる多孔性の不連続被膜であることが好ましい。
【0054】
静電スプレー法によれば、被膜形成用組成物は荷電して噴霧され、湿度が高い場合は大気中の水分により影響を受けてしまうが、導電率制御剤を含むことによりこの影響を受けにくくすることができる。
【0055】
被膜形成用組成物の製造方法は、全ての成分を含有する混合液を撹拌してもよいが、成分(a)以外の成分を含む混合液1を撹拌する工程1の後に、成分(a)を添加して撹拌混合する工程2を備えることが好ましい。これらの工程1、工程2は10℃~30℃の常温で行うことが好ましい。
【0056】
ノズルと皮膚との間の距離は、ノズルに印加する電圧にも依存するが、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることがさらに好ましい。また160mm以下であることが好ましく、140mm以下であることがより好ましく、120mm以下であることがさらに好ましい。ノズルと皮膚との距離がこの範囲にあることで被膜の形成性を向上させることができる。ノズルと皮膚との間の距離は、一般的に用いられる非接触式センサ等で測定することができる。
【0057】
静電スプレー法によって形成された被膜が多孔性のものであるか否かを問わず、被膜の坪量は、0.10g/m2以上であることが好ましく、1.0g/m2以上であることがより好ましい。また50g/m2以下であることが好ましく、40g/m2以下であることがより好ましい。形成された被膜の坪量は、0.10g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、1.0g/m2以上40g/m2以下であることがより好ましい。被膜の坪量をこのように設定することで、被膜の肌なじみ、密着性、被膜の皮膚への追従性及び水分耐久性を向上させることができる。
【0058】
本発明の被膜形成用組成物を用いて皮膚上に形成される被膜の弾性率は、1×10N/m2以下であるのが、被膜の密着性、皮膚の動きへの追従性の点で好ましく、1×10N/m以上9×10N/m以下であるのがより好ましく、1×10N/m以下8×106N/m2以下であるのがより好ましく、1×10N/m以上7×10N/m以下であるのがさらに好ましい。この弾性率は、成分(c)の種類及びその含有量によって主に調整することができる。ここで、弾性率は、引張試験機によって25℃で測定された数値である。引張試験機としては、Orientec社製テンシロンUTC-100Wを用いることができる。10cm×10cmのアルミホイル(アズワン社製)の中心部に7.5cm×2.5cmの穴をあけ、穴を完全に含む10cm×5cmの範囲に、1分間、静電スプレーすることにより被膜を形成する。穴の短辺(2.5cm)に対して垂直方向に、アルミホイルに切れ込みを入れたのち、引張速度500mm/minで穴の短辺と並行の方向に引っ張ることで、応力-ひずみ曲線を測定する。応力-ひずみ曲線の初期の傾きを算出し、厚みを20μmと一定値とし、幅7.5cm、長さ2.5cmの弾性率を算出した。
【0059】
本発明においては、上述した本発明の被膜形成用組成物を用いて、静電スプレーによって皮膚上に被膜を形成する静電スプレー工程の前又は後に、皮膚にスキンケア化粧料やメイクアップ化粧料を適用してもよい。このように化粧料塗布前、又は後に静電スプレーすることにより、皮膚上に存在する化粧料を被膜で被覆でき、化粧料の皮膚へのなじみを顕著に向上させ、水分に対する耐久性を向上させ、皮膚上に長時間安定的に化粧料を保持することができる。
【0060】
ここで用いられるスキンケア化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、美容液(美白、抗シワ等)、オールインワン化粧料、UVケア化粧料、BBクリーム、オイル、オイルゲル、ローション等が挙げられ、メイクアップ化粧料としては、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等が挙げられる。
【0061】
また、静電スプレー以外の手段による前記スキンケア化粧料又は前記メイクアップ化粧料の皮膚への適用手段としては、手指による塗布、コットン等の不織布を使用した塗布、スポンジ使用による塗布、通常のスプレーによる噴霧、ミストによる吹き付け、スチーム、滴下、振りかけ等が挙げられる。
【0062】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物及び方法を開示する。
【0063】
<1>次の成分(a)、(b)及び(c)を含有し、皮膜形成用組成物で形成される被膜の弾性率が1×10N/m以上9×10N/m以下である、静電スプレーにより直接皮膚上に繊維で形成された被膜を形成するための被膜形成用組成物。
(a)被膜形成能を有するポリマー、
(b)アルコール及びケトンから選ばれる1種以上の揮発性物質、
(c)logSが-7以上0未満の不揮発性油 2質量%以上30質量%以下
【0064】
<2>成分(a)が、好ましくは水不溶性である被膜形成能を有するポリマーから選ばれる1種又は2種以上である<1>記載の皮膜形成用組成物。
<3>成分(a)が、水不溶性である被膜形成能を有するポリマーであり、好ましくは被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくは被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、オキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート及びツエインから選ばれる1種又は2種以上である<1>又は<2>に記載の被膜形成用組成物。
<4>成分(a)の含有量が、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることがよりさらに好ましく、また35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることがよりさらに好ましく、4質量%以上30質量%以下であることが好ましく、4質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、6質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以上20質量%以下であることがよりさらに好ましい<1>~<3>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<5>成分(a)の含有量が、4質量%以上30質量%以下である<1>~<4>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<6>成分(a)の含有量が、4質量%以上25質量%以下である<1>~<4>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<7>成分(b)のアルコールは、一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール及び一価の芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、炭素数が1~6の鎖状で直鎖または分岐鎖を有する一価の鎖式脂肪族アルコール、炭素数が4~6の一価の環式脂肪族アルコール、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、さらにエタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n-プロパノール及びn-ペンタノールから選ばれる1種又は2種以上が好ましい<1>~<6>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<8>成分(b)のケトンが、炭素数が1~4のアルキル基を2つ有するケトンが好ましく、さらにアセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい<1>~<7>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<9>成分(b)が、好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール及びn-ブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノール及びイソプロピルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくはエタノールである、さらに水を含むものであってもよい<1>~<8>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<10>成分(b)の含有量が、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることがよりさらに好ましく、また95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましく、88質量%以下であることがよりさらに好ましく、また、45質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上93質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以上88質量%以下であることがよりさらに好ましい<1>~<9>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<11>成分(b)の含有量が、50質量%以上95質量%以下である<1>~<10>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<12>成分(b)の含有量が、50質量%以上93質量%以下である<1>~<10>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<13>成分(c)は、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エステル油、シリコーン油、高級アルコール、高級脂肪酸及びノニオン界面活性剤から選ばれるlogSが-7以上0未満の不揮発性油の1種又は2種以上が好ましく、ポリC3-C4アルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エステル油、高級脂肪酸及びノニオン界面活性剤から選ばれるlogSが-7以上0未満の不揮発性油の1種又は2種以上がより好ましい<1>~<12>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<14>成分(c)が、ポリブチラール樹脂の構造中の水酸基、エステル、アセタール部分と相互作用しやすい化合物が好ましく、ポリC3-C4アルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エステル油、シリコーン油、ノニオン(非イオン)界面活性剤、高級脂肪酸及び紫外線吸収剤から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、さらにポリプロピレングリコール、エステル油、ノニオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及び高級脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましい<1>~<13>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<15>成分(c)の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、3.5質量%であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましい。また30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、18質量%以下であることが更に好ましく、15質量%以下がよりさらに好ましく、10質量%以下であることがよりさらに好ましく、8質量%以下であることがよりさらに好ましく、また、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下がより好ましく、3質量%以上20質量%以下が更に好ましく、3質量%以上20質量%以下が更に好ましく、3質量%以上18質量%以下が更に好ましく、3質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、3.5質量%以上10質量%以下が更に好ましく、4質量%以上8質量%以下が更に好ましい<1>~<14>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<16>成分(c)の含有量が、2質量%以上25質量%以下である<1>~<15>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<17>成分(c)の含有量が、3質量%以上20質量%以下である<1>~<15>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<18>成分(c)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(c))が、0.15以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、1以上であることがよりさらに好ましく、1.5以上であることがさらに一層好ましく、また300以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましく、13以下であることがよりさらに好ましく、10以下であることが一層好ましく、8以下であることがさらに一層好ましく、6以下であることがさらに一層好ましく、0.15以上300以下であることが好ましく、0.25以上50以下であることがより好ましく、0.5以上50以下であることがさらに好ましく、0.5以上15以下であることがよりさらに好ましく、1以上15以下であることが一層好ましく、1以上13以下であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましく、1.5以上8以下であることがさらに好ましい<1>~<17>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<19>成分(c)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(c))が、0.15以上300以下である<1>~<18>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<20>成分(c)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(c))が、0.25以上50以下である<1>~<19>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<21>成分(c)に対する成分(b)の含有質量比((b)/(c))が、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、9以上であることがよりさらに好ましい。また200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましく、30以下であることがさらに好ましく、22以下であることがよりさらに好ましく、3以上200以下であることが好ましく、5以上100以下であることがより好ましく、7以上50以下であることがさらに好ましく、7以上30以下であることがさらに好ましく、9以上22以下であることがよりさらに好ましい<1>~<20>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<22>成分(c)に対する成分(b)の含有質量比((b)/(c))が、3以上200以下が好ましい<1>~<21>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<23>成分(b)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(b))が、0.03以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましく、0.12以上であることがよりさらに好ましく、また、0.6以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましく、0.3以下であることがよりさらに好ましく、0.25以下であることが一層好ましく、0.2以下であることがさらに一層好ましく、0.18以下であることがよりさらに一層好ましく、0.03以上0.6以下であることが好ましく、0.05以上0.45以下であることがより好ましく、0.1以上0.35以下であることがさらに好ましく、0.1以上0.3以下であることがよりさらに好ましく、0.12以上0.25以下であることが一層好ましい<1>~<22>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<24>成分(b)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(b))が、0.03以上0.6以下である<1>~<23>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<25>成分(b)に対する成分(a)の含有質量比((a)/(b))が、0.05以上0.45以下である<1>~<24>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<26>導電率制御剤、成分(c)以外の油剤、着色顔料、体質顔料、染料、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン及び、水から選ばれる成分を含有する<1>~<25>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<27>導電率制御剤が、25℃において被膜形成用組成物の導電率を10μS/cm以上300μS/cm以下とする成分が好ましい<26>に記載の被膜形成用組成物。
<28>導電率制御剤は、好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩であり、より好ましくはイオン性界面活性剤であり、さらに好ましくはカチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上である<26>又は<27>に記載の被膜形成用組成物。
<29>導電率制御剤が、第4級アンモニウム塩及びアシルアミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上である<26>~<28>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<30>導電率制御剤の含有量が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、また10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましく、2.5質量%以下であることがよりさらに好ましく、2質量%以下であることが一層好ましく、また0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上6質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上2.5質量%以下であることがよりさらに好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることが一層好ましい<26>~<29>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<31>被膜形成用組成物の粘度が、25℃で2mPa・s以上であることが好ましく、5mPa・s以上であることがより好ましく、10mPa・s以上であることがさらに好ましく、30mPa・s以上であることがよりさらに好ましく、50mPa・s以上が一層好ましく、80mPa・s以上がより一層好ましく、また3000mPa・s以下であることが好ましく、2000mPa・s以下であることがより好ましく、1500mPa・s以下であることがさらに好ましく、1000mPa・s以下であることがよりさらに好ましく、800mPa・s以下であることが一層好ましく、500mPa・s以下であることがより一層好ましく、また2mPa・s以上3000mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上2000mPa・s以下であることがより好ましく、10mPa・s以上1500mPa・s以下であることがさらに好ましく、30mPa・s以上1000mPa・s以下であることがよりさらに好ましく、50mPa・s以上800mPa・s以下であることが一層好ましく、80mPa・s以上500mPa・s以下がより一層好ましい<1>~<30>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<32>得られる被膜の弾性率は1×10N/m以上8×10N/m以下であるのが好ましく、1×10N/m以下7×106N/m2以下であるのがより好ましい<1>~<31>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<33>静電スプレー以外の手段で皮膚に適用する化粧料と組み合わせて使用するものである<1>~<32>のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
<34>化粧料が、スキンケア化粧料又はメイクアップ化粧料が好ましい<33>記載の被膜形成用組成物。
<35>次の成分(a)、(b)及び(c)を含有し、皮膜形成用組成物で形成される被膜の弾性率が1×10N/m以上9×10N/m以下である、静電スプレーにより直接皮膚上に繊維で形成された被膜を形成するための被膜形成用組成物。
(a)被膜形成能を有するポリマー 4質量%以上35質量%以下、
(b)アルコール及びケトンから選ばれる1種以上の揮発性物質 45質量%以上95質量%以下、
(c)logSが-7以上0未満の不揮発性油 2質量%以上30質量%以下
<36>皮膜形成対象物の表面に被膜を形成する被膜の製造方法であって、前記皮膜形成対象物に組成物を直接に静電スプレーして繊維を含む堆積物からなる被膜を形成する静電スプレー工程を具備し、前記組成物が次の成分(a)、(b)及び(c)を含有し、組成物で形成される被膜の弾性率が1×10N/m以上9×10N/m以以下である、被膜の製造方法。
(a)被膜形成能を有するポリマー 4質量%以上35質量%以下、
(b)アルコール及びケトンから選ばれる1種以上の揮発性物質 45質量%以上95質量%以下、
(c)logSが-7以上0未満の不揮発性油 2質量%以上30質量%以下
<37>次の成分(a)、(b)及び(c)を含有し、皮膜形成用組成物で形成される被膜の弾性率が1×10N/m以上9×10N/m以下である、静電スプレーにより直接皮膚上に繊維で形成された被膜を形成するための被膜形成用組成物で形成された化粧料。
(a)被膜形成能を有するポリマー 4質量%以上35質量%以下、
(b)アルコール及びケトンから選ばれる1種以上の揮発性物質 45質量%以上95質量%以下、
(c)logSが-7以上0未満の不揮発性油 2質量%以上30質量%以下
【実施例
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0066】
[試験例1]
〔実施例1~19、比較例1~3〕
(1)被膜形成用組成物の調製
被膜形成用組成物の成分(a)としてポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製:商品名;エスレックB BM-1)を用い、成分(b)として99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製)を用いた。また、成分(c)として、表1~3に示す成分を用いた。なお、表1~3に示す各成分の含有量は、有効量であり、単位は質量%である。
【0067】
(2)化粧料適用工程
静電スプレー工程の事前に表4に示す化粧料を人下肢外側部(5×5cm)に200mg、スポンジにより塗布した。およそ50mgの化粧料が肌上に塗布された。
【0068】
(3)静電スプレー工程
図1に示す構成を有し、図2に示す外観を有する静電スプレー装置10を用い、前記化粧料を適用した部位に前記被膜形成用組成物を静電スプレーにて適用した。すなわち、前記化粧料を適用した皮膚上に前記被膜形成用組成物を静電スプレーにより適用し、繊維で形成された被膜を形成させた。化粧料と被膜をなじませるように、ハンドプレスを行った。
被膜形成用組成物を静電スプレーにて適用した条件は以下に示す通りとした。
・適用部位:人下肢外側部(5×5cm)、
(前記スキンケア化粧料を適用した部位)
・静電スプレー適用時間:30秒間
・被膜形成用組成物の吐出速度:0.1g/min
・被膜形成用組成物を吐出するノズル先端と皮膚との距離:80mm
・適用環境:20℃、40%RH
・印加電圧:10kV
【0069】
(4)ファンデーション塗布工程
前記化粧料及び静電スプレーを適応した部位にファンデーションを適用した。ロレアル社製Dermablend Leg & Body Makeup (色番Deep Golden)をスポンジにより塗布した。およそ20mgの化粧料が肌上に塗布された。
【0070】
(5)静電スプレー工程
図1に示す構成を有し、図2に示す外観を有する静電スプレー装置10を用い、前記化粧料を適用した部位に前記被膜形成用組成物を静電スプレーにて適用した。すなわち、前記化粧料を適用した皮膚上に前記被膜形成用組成物を静電スプレーにより適用し、繊維で形成された被膜を形成させた。被膜形成用組成物を静電スプレーにて適用した条件は以下に示す通りとした。
・適用部位:人下肢外側部(5×5cm)、
(前記スキンケア化粧料を適用した部位)
・静電スプレー適用時間:30秒間
・被膜形成用組成物の吐出速度:0.1g/min
・被膜形成用組成物を吐出するノズル先端と皮膚との距離:80mm
・適用環境:20℃、40%RH
・印加電圧:10kV
【0071】
(6)化粧料塗布工程
前記化粧料、静電スプレー、ファンデーションを適応した部位に乳液を適用した。表5に示す乳液をスポンジにより塗布した。およそ60mgの化粧量が肌上に塗布された。
【0072】
(水分に対する耐久性の評価)
実施例1~19及び比較例1~3でスキンケア化粧料塗布後の皮膚上に静電スプレーにより繊維で形成された被膜について、被膜の水分に対する耐久性を評価した。
評価は、化粧料及び皮膚に静電スプレーにより被膜形成用組成物を適用し、繊維で形成された被膜を形成した後、シャワーの温水を2分以上かけ、濡れた水をタオルドライした後、表5の化粧料を塗布し、翌日まで連用し、評価した。
評価結果を表1~3に示す。また、評価基準は以下に示す通りとした。
A:化粧膜に割れや破れが全く生じない
B:化粧膜に5mm未満の小さな割れや破れが生じる
C:化粧膜に5mm以上2cm未満の割れや破れが生じる
D:化粧膜に2cm以上の割れや破れが生じる
【0073】
[試験例2]
〔実施例1~19、比較例1~3〕
(1)化粧料適用工程
静電スプレー工程の事前に表4に示す化粧料を人前腕内側部(5×5cm)に200mg、スポンジにより塗布した。およそ50mgの化粧料が肌上に塗布された。
・適用部位:人前腕内側部(5×5cm)
【0074】
(2)静電スプレー適用工程
図1に示す構成を有し、図2に示す外観を有する静電スプレー装置10を用い、前記化粧料を適用した部位に前記被膜形成用組成物を静電スプレーにて適用した。すなわち、前記化粧料を適用した皮膚上に前記被膜形成用組成物を静電スプレーにより適用し、繊維で形成された被膜を形成させた。
・適用部位:人前腕内側部(5×5cm)、
(前記化粧料を適用した部位)
・静電スプレー適用時間:30秒間
・被膜形成用組成物の吐出速度:0.1g/min
・被膜形成用組成物を吐出するノズル先端と皮膚との距離:80mm
・適用環境:30℃、60%RH
・印加電圧:10kV
【0075】
(3)化粧料とのなじみやすさの評価
(化粧料と静電スプレーにより繊維で形成された被膜とのなじみやすさ)
実施例1~19及び比較例1~3で化粧料塗布後の皮膚上に静電スプレーにより繊維で形成された被膜について、表4記載の化粧料と前記被膜のなじみやすさを評価した。
評価は、化粧料塗布直後の皮膚に静電スプレーにより被膜形成用組成物を適用し、繊維で形成された被膜を形成し、前記被膜を形成し終わった時点から化粧料と前記被膜が完全になじむまでの状態を目視観察することで行った。評価部位は人前腕内側とした。ここで、化粧料と前記被膜が完全になじむとは、目視により前記被膜が無色・透明な状態となることである。なお、本評価では、特にことわりが無い限り、前記被膜を手指で触れることは無かった。評価結果を表1~3に示す。また、評価基準は以下に示す通りとした。
A:化粧料と静電スプレーにより形成した被膜が完全になじむまでの時間が、被膜が形成し終わってから1分30秒以内
B:化粧料と前記被膜が1分30秒以内に完全になじまず、前記被膜を手で上から軽くハンドプレスすることで完全になじませることができる
C:スキンケア化粧料と前記被膜が1分30秒以内に完全になじまず、前記被膜を手で上から軽くハンドプレスしても完全になじませることができない
【0076】
(4)水濡れ、乾燥後の柔らかさの評価
実施例1~13及び比較例1~3でスキンケア化粧料塗布後の皮膚上に静電スプレーにより繊維で形成された被膜について、被膜が水分から受ける影響を柔らかさで評価した。
評価は、表4記載のスキンケア化粧料塗布直後の皮膚に静電スプレーにより被膜形成用組成物を適用し、繊維で形成された被膜を形成した後、室温のシャワーの水を10秒かけ、濡れた水をタオルドライした後、被膜が乾燥するまで待ち、柔らかさの官能評価を行った。肌についた状態での感触を評価したのち、さらに、膜を剥がして引っ張り、評価した。評価基準は以下に示す通りとした。
A:肌についた状態で膜の引張感を感じず、膜を剥がして引っ張った時に、伸びて割れにくい
B:肌についた状態で膜のかすかに引張感を感じ、膜を剥がして引っ張った時に、伸びて割れにくい
C:肌についた状態で膜の引張感を感じ、膜を剥がして引っ張った時に、伸びずに割れる
D:肌についた状態で膜の強い引張感を感じ、膜を剥がして引っ張った時に、伸びずに割れる
【0077】
(5)皮膚の動きへの追従性の評価
実施例1~19及び比較例1~3で皮膚上に静電スプレーにより繊維で形成された被膜について、皮膚の動きへの追従性を評価した。
評価部位は、ヒト前腕内側の5cm×5cmの範囲とした。静電スプレーを30秒間吹き付け、30秒放置したのち、掌を内側にひねって戻す動作を5回繰り返した。
評価結果を表1~3に示す。また、評価基準は以下に示す通りとした。
A:被膜が皮膚に追随し、シワなどを全く生じない
B:被膜が皮膚に追随しきれず、手のひらをひねった状態で小さなシワを生じる
C:被膜が皮膚に追随しきれず、手のひらをひねった状態で浮きが生じてシワになる
D:被膜が皮膚に追随しきれず、手のひらを戻しても、浮いたままで、シワを生じる
【0078】
(弾性率)
実施例1~19及び比較例1~3で皮膚上に静電スプレーにより繊維で形成された被膜について、弾性率を評価した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
*1)エスレックB BM-1(積水化学工業株式会社製)
*2)99.5%エタノール(和光純薬工業株式会社製)
*3)カーポールDL―30(株式会社ADEKA製)
*4)ポリグリコールP-425(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー株式会社製)
*5)カーポールDL-80(株式会社ADEKA製)
*6)Citroflex-2(森村商事株式会社製)
*7)Citroflex-A2(森村商事株式会社製)
*8)Citroflex-A4(森村商事株式会社製)
*9)Rheodol TW-S120V(花王株式会社製)
*10)GENAPOL LA 030(Clariant Corporation製)
*11)FineNeo-EHS(日本精化株式会社製)
*12)PEG-400(三洋化成株式会社製)
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
*13)Amphomer 28-4910(アクゾノーベル社製)
*14)Pemulen TR-1(Lubrizol社製)
*15)Eumulgin B2(BASF社製)
*16)GENAPOL LA 030(Clariant Corporation製)
【0086】
表1~3より、(a)被膜形成能を有するポリマー、(b)アルコール及びケトンから選ばれる1種又は2種以上の揮発性物質に加えて、(c)logSが-7以上0未満の不揮発性油を含有する組成物を、直接皮膚上に静電スプレーすることにより、皮膚上に繊維で形成された被膜が形成され、当該被膜は、良好な弾性率を有し、肌なじみ、密着性、皮膚の動きへの追従性及び水分に対する耐久性に優れたものになることがわかる。
【符号の説明】
【0087】
10 静電スプレー装置
11 低電圧電源
12 高電圧電源
13 補助的電気回路
14 マイクロギヤポンプ
15 容器
16 ノズル
17 管路
18 フレキシブル管路
19 電流制限抵抗
20 筐体
図1
図2