(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 12/00 20250101AFI20250210BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250210BHJP
H10D 30/60 20250101ALI20250210BHJP
H10D 84/83 20250101ALI20250210BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250210BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250210BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L27/06 102A
H01L29/78 301V
H01L29/78 301X
H01L27/088 C
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657G
H01L29/78 653A
H01L29/78 658F
H01L29/78 655C
H01L29/78 652T
(21)【出願番号】P 2020193696
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 仁
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-003728(JP,A)
【文献】特開2017-143136(JP,A)
【文献】特開2015-095578(JP,A)
【文献】特開2019-062031(JP,A)
【文献】特開2020-077756(JP,A)
【文献】特開2019-161181(JP,A)
【文献】特開2016-058466(JP,A)
【文献】特開2018-170425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0290367(US,A1)
【文献】国際公開第2020/080476(WO,A1)
【文献】特開2018-041789(JP,A)
【文献】特開2019-033151(JP,A)
【文献】特開2017-135245(JP,A)
【文献】特開2003-197914(JP,A)
【文献】特開2017-041547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 21/8234
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と、平面視において前記第1領域に囲まれる第2領域および第3領域とを有する半導体基板と、
前記第1領域の前記半導体基板上に形成され、平面視において前記第2領域および前記第3領域を囲む環状の第1絶縁膜と、
前記第3領域の前記半導体基板の上面に形成されたトレンチと、
前記トレンチ内に第2絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第2領域の前記半導体基板内に形成されたP型半導体領域と、
前記P型半導体領域の直上であって前記半導体基板上に第3絶縁膜を介して形成され、前記ゲート電極に電気的に接続された抵抗素子と、
前記第2領域の前記抵抗素子上、および前記第3領域の前記半導体基板上に位置する層間絶縁膜と、
前記抵抗素子上に形成された第1プラグおよび配線であって、前記第1プラグは前記抵抗素子の上面に接続されている、前記第1プラグおよび前記配線と、
前記ゲート電極の上面に接続された第2プラグと、
前記半導体基板の下面に形成されたP型半導体層と、
を有し、
前記ゲート電極と前記抵抗素子とは、互いに分離しており、
前記ゲート電極および前記P型半導体層は、IGBTを構成し、
前記ゲート電極と前記抵抗素子とは、前記第1プラグ、前記第2プラグ、および前記配線を介して電気的に接続されており、
前記トレンチの上端である前記半導体基板の角部の直上には前記層間絶縁膜が位置し、
前記第3絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚より小さく、前記第2絶縁膜の膜厚より大きく、
前記第2絶縁膜は、前記半導体基板および前記ゲート電極のそれぞれに接しており、
前記トレンチの表面と前記ゲート電極との間の最短距離は、70nm以上である、半導体装置。
【請求項2】
第1領域と、平面視において前記第1領域に囲まれる第2領域および第3領域とを有する半導体基板と、
前記第1領域の前記半導体基板上に形成され、平面視において前記第2領域および前記第3領域を囲む環状の第1絶縁膜と、
前記第3領域の前記半導体基板の上面に形成されたトレンチと、
前記トレンチ内に第2絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第2領域の前記半導体基板内に形成されたP型半導体領域と、
前記P型半導体領域の直上であって前記半導体基板上に第3絶縁膜を介して形成され、前記ゲート電極に電気的に接続された抵抗素子と、
前記第2領域の前記抵抗素子上、および前記第3領域の前記半導体基板上に位置する層間絶縁膜と、
前記抵抗素子上に形成された第1プラグおよび配線であって、前記第1プラグは前記抵抗素子の上面に接続されている、前記第1プラグおよび前記配線と、
前記ゲート電極の上面に接続された第2プラグと、
前記半導体基板の下面に形成されたP型半導体層と、
を有し、
前記ゲート電極と前記抵抗素子とは、互いに分離しており、
前記ゲート電極および前記P型半導体層は、IGBTを構成し、
前記ゲート電極と前記抵抗素子とは、前記第1プラグ、前記第2プラグ、および前記配線を介して電気的に接続されており、
前記トレンチの上端である前記半導体基板の角部の直上には前記層間絶縁膜が位置し、
前記第3絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚より小さく、前記第2絶縁膜の膜厚より大きく、
前記第3絶縁膜の厚さは、前記第2絶縁膜の厚さの2~7倍である、半導体装置。
【請求項3】
第1領域と、平面視において前記第1領域に囲まれる第2領域および第3領域とを有する半導体基板と、
前記第1領域の前記半導体基板上に形成され、平面視において前記第2領域および前記第3領域を囲む環状の第1絶縁膜と、
前記第3領域の前記半導体基板の上面に形成されたトレンチと、
前記トレンチ内に第2絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第2領域の前記半導体基板内に形成されたP型半導体領域と、
前記P型半導体領域の直上であって前記半導体基板上に第3絶縁膜を介して形成され、前記ゲート電極に電気的に接続された抵抗素子と、
前記半導体基板の下面に形成されたP型半導体層と、
を有し、
前記ゲート電極および前記P型半導体層は、IGBTを構成し、
前記第3絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚より小さく、前記第2絶縁膜の膜厚より大きく、
前記第2絶縁膜は、前記半導体基板および前記ゲート電極のそれぞれに接しており、
前記トレンチの表面と前記ゲート電極との間の最短距離は、70nm以上である、半導体装置。
【請求項4】
第1領域と、平面視において前記第1領域に囲まれる第2領域および第3領域とを有する半導体基板と、
前記第1領域の前記半導体基板上に形成され、平面視において前記第2領域および前記第3領域を囲む環状の第1絶縁膜と、
前記第3領域の前記半導体基板の上面に形成されたトレンチと、
前記トレンチ内に第2絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記第2領域の前記半導体基板内に形成されたP型半導体領域と、
前記P型半導体領域の直上であって前記半導体基板上に第3絶縁膜を介して形成され、前記ゲート電極に電気的に接続された抵抗素子と、
前記半導体基板の下面に形成されたP型半導体層と、
を有し、
前記ゲート電極および前記P型半導体層は、IGBTを構成し、
前記第3絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚より小さく、前記第2絶縁膜の膜厚より大きく、
前記第3絶縁膜の厚さは、前記第2絶縁膜の厚さの2~7倍である、半導体装置。
【請求項5】
(a)第1領域と、平面視において前記第1領域に囲まれる第2領域および第3領域とを有する半導体基板を用意する工程、
(b)前記第1領域の前記半導体基板上に、平面視において前記第2領域および前記第3領域を囲む環状の第1絶縁膜を形成する工程、
(c)前記半導体基板の上面に、P型半導体領域を形成する工程、
(d)前記半導体基板の前記上面にトレンチを形成する工程、
(e)前記トレンチ内を含む前記半導体基板上に、第2絶縁膜を介して導電膜を形成した後、前記トレンチの外の前記導電膜を除去することで、前記トレンチ内の前記導電膜から成るゲート電極を形成する工程、
(f)前記(
e)工程の後、前記第2領域の前記第2絶縁膜上に、第3絶縁膜を介して抵抗素子を形成する工程、
(g)前記半導体基板の下面に、P型半導体層を形成する工程、
を有し、
前記ゲート電極および前記P型半導体層は、IGBTを構成し、
前記抵抗素子と、前記ゲート電極とは、電気的に接続され、
前記第3絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚より小さく、前記第2絶縁膜の膜厚より大きく、
前記第2絶縁膜は、前記半導体基板および前記ゲート電極のそれぞれに接しており、
前記トレンチの表面と前記ゲート電極との間の最短距離は、70nm以上である、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
(a)第1領域と、平面視において前記第1領域に囲まれる第2領域および第3領域とを有する半導体基板を用意する工程、
(b)前記第1領域の前記半導体基板上に、平面視において前記第2領域および前記第3領域を囲む環状の第1絶縁膜を形成する工程、
(c)前記半導体基板の上面に、P型半導体領域を形成する工程、
(d)前記半導体基板の前記上面にトレンチを形成する工程、
(e)前記トレンチ内を含む前記半導体基板上に、第2絶縁膜を介して導電膜を形成した後、前記トレンチの外の前記導電膜を除去することで、前記トレンチ内の前記導電膜から成るゲート電極を形成する工程、
(f)前記(
e)工程の後、前記第2領域の前記第2絶縁膜上に、第3絶縁膜を介して抵抗素子を形成する工程、
(g)前記半導体基板の下面に、P型半導体層を形成する工程、
を有し、
前記ゲート電極および前記P型半導体層は、IGBTを構成し、
前記抵抗素子と、前記ゲート電極とは、電気的に接続され、
前記第3絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚より小さく、前記第2絶縁膜の膜厚より大きく、
前記第3絶縁膜の厚さは、前記第2絶縁膜の厚さの2~7倍である、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、IGBTに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体の一種であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)では、ゲートパッドとゲート電極との間の内蔵素子として、例えばポリシリコン膜から成る内蔵抵抗が知られている。
【0003】
特許文献1(特開2017-41547号公報)には、IGBTのトレンチゲート電極と一体化しているポリシリコン膜を、半導体基板の上面上に形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内蔵抵抗はトレンチゲート電極を構成するポリシリコン膜と一体となって形成されることが考えられる。この場合、内蔵抵抗の下の絶縁膜はトレンチゲート絶縁膜と同じ酸化膜(つまり、ゲート酸化膜と同一行程で形成された酸化膜)で構成され、比較的薄い酸化膜構造となる。このため、内蔵抵抗と半導体基板との間で絶縁破壊が生じる恐れがある。一方、この酸化膜を厚膜化すると、トレンチゲート絶縁膜も厚膜化するため、トレンチゲート電極近傍のP型チャネル領域に電界が印加できず、IGBTとしての動作に問題が生じる。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
一実施の形態である半導体装置は、トレンチゲート電極とゲートパッドとを電気的に接続する内蔵抵抗を、半導体基板上に絶縁膜を介して形成された導電膜により形成するものである。ここで、当該絶縁膜の膜厚は、トレンチゲート絶縁膜よりも厚く、フィールド酸化膜よりも薄い。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態である半導体装置が搭載された半導体チップのレイアウト構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態である半導体装置を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態である半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図4】
図3に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図5】
図4に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図6】
図5に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図7】
図6に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図8】
図7に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図9】
図8に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図10】
図9に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図11】
図10に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図12】
図11に続く半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態の変形例である半導体装置を示す断面図である。
【
図14】比較例である半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その言及した数に限定されるものではなく、言及した数以上でも以下でもよい。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
<改善の余地>
以下に、
図14を用いて、比較例の半導体装置が有する改善の余地について説明する。
図14は、比較例の半導体装置を示す断面図である。
【0015】
比較例の半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を備えている。
図14に示すように、比較例の半導体装置を構成する半導体チップは、第1領域1A、第2領域1Bおよび第3領域1Cを有しており、
図14では、左から順に第1領域1A、第2領域1Bおよび第3領域1Cを示している。第1領域1Aは、平面視で第2領域1Bおよび第3領域1Cを囲む、周辺領域を含む領域である。
図14では、IGBTとして機能する素子領域は示していない。
【0016】
比較例の半導体装置は、N型の半導体基板SBと、半導体基板SBの上面に形成されたP型ウェルPWと、半導体基板SB内において半導体基板SBの下面近傍に形成されたN型半導体層NLと、N型半導体層NLの下面から半導体基板SBの下面に亘って形成されたP型半導体層PLとを備えている。第3領域1Cにおいて、半導体基板SBの上面にはトレンチ(溝)TRが形成され、トレンチTR内には、絶縁膜IF5を介してトレンチゲート電極TGが埋め込まれている。トレンチゲート電極TGは、半導体基板SB上に形成された半導体層SLにより構成されている。第2領域1Bでは、トレンチTRの外の半導体基板SBの上面上に、絶縁膜IF5を介して半導体層SLが形成されており、第2領域1Bの半導体層SLは内蔵抵抗GR1を構成している。つまり、内蔵抵抗GR1およびトレンチゲート電極TGのそれぞれは、1つの半導体層SLの一部であり、内蔵抵抗GR1およびトレンチゲート電極TGのそれぞれの下の絶縁膜IF5の膜厚はほぼ一様である。
【0017】
第1領域1Aの半導体基板SB上には、IGBTのエミッタ領域にエミッタ電位を供給するエミッタパッドEPが形成されている。また、第2領域1Bの内蔵抵抗GR1の上面には、内蔵抵抗GR1を介してトレンチゲート電極TGにゲート電位を供給するゲートパッドGPが接続されている。ここで、半導体基板SBの裏面は一様にP型半導体層PLが形成されているのではなく、一部に欠陥としてN型半導体層BNLが形成されている。
【0018】
絶縁膜IF5は、例えば主にTEOS(Tetraethyl orthosilicate)膜から成り、その膜厚は例えば110nm程度である。具体的には、膜厚が例えば10nmの熱酸化膜の上に、TEOS膜が110nm成膜され、計110nmの厚さの絶縁膜IF5が構成されている。
【0019】
比較例の構造では、IGBTがオフ状態からオン状態になるときに、比較的高速で高いコレクタ電圧が印加される場合(例えば、dV/dt>10kV/μs)がある。このとき、エミッタ電位に接続されたP型ウェルPWと内蔵抵抗GR1との間にある絶縁膜IF5に高電界が掛かり、絶縁膜IF5が破壊されることがある。特に、IGBTの形成工程のうち、裏面側の構造の形成工程で欠陥が導入されて、当該裏面のP型半導体層PLの一部に欠陥であるN型半導体層BNLが形成されていると、より顕著に絶縁膜IF5の絶縁破壊が生じる。
【0020】
IGBTがオフ状態の時には、IGBTに並列に接続された還流ダイオードのバイアス電圧がIGBTのコレクタ電圧に掛かっている。この電圧が印加されていると、IGBT内部での寄生ボディダイオードが動作し、半導体基板SB上のエミッタ電極から正孔が、半導体基板SBの裏面のコレクタ電極から電子が供給されて、IGBT内部にキャリアが存在する状況になる(
図14参照)。寄生ボディダイオードとは、例えば
図14の第2領域1Bに示すN型の半導体基板SBおよびN型半導体層NLから成るN型層と、P型ウェルとのPN接合により構成されるダイオードである。
【0021】
上記のように半導体基板SB内にキャリアが存在する状況でIGBTがオン状態に遷移するとき、コレクタ電圧が高dV/dtで印加されると、残存キャリアが排出される。具体的には、P型ウェルPW内の正孔はエミッタパッド(エミッタ電極)EPを介して排出され、半導体基板SB内の電子はN型半導体層NLを介して排出される。残存キャリアの排出により、内蔵抵抗GR1の下の半導体基板SB内でインパクトイオン化が起き、これにより発生したキャリアの掃き出しで電圧降下が発生する。その結果、半導体基板SB内に高電界が発生する。このとき、比較例のように内蔵抵抗GR1の下の絶縁膜IF5がトレンチゲート絶縁膜と同様に薄いと、第2領域1Bの絶縁膜IF5の電界が破壊電界に達し、内蔵抵抗GR1の下の絶縁膜IF5の破壊に至る。
【0022】
内蔵抵抗GR1とエミッタ電位に接続されたP型ウェルPWとの間の絶縁膜IF5は、通常、つまりコレクタ電圧などが遷移するとき以外の静的特性では、電位差が生じない部分である。そのため、このような破壊の発生は想定されていなかった。このように、本発明者らは、静的特性では電位差が生じない場所であっても、過渡的な動作の状況下では電位差が生じ、高電界により絶縁破壊が起きるという第1の改善の余地を見出した。
【0023】
また、ゲートトレンチ絶縁膜を構成する熱酸化膜は、TEOS膜に比べて構造が緻密で信頼性があるため、より厚く形成されていた方が好ましい。また、熱酸化膜はより厚く形成されていた方が、成膜ばらつきも少ないため好ましい。しかし、熱酸化膜が厚いと、トレンチTRの横の半導体基板SB上面を覆う熱酸化膜も厚くなる。このようにして、トレンチTRの上端である半導体基板SBの角部を連続的に覆う熱酸化膜を厚く形成すると、当該角部が尖り易くなる問題が生じる。よって、熱酸化膜を厚くした場合、当該角部の電界集中により、当該角部を覆う導電層SLとの間で絶縁破壊が生じ易くなるという第2の改善の余地が存在する。
【0024】
<半導体チップのレイアウト構成例>
本実施の形態におけるIGBTを備えた半導体装置について
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置が搭載された半導体チップのレイアウト構成例を示す概略図である。
図2は、本実施の形態の半導体装置を示す断面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態の半導体チップCHPは、矩形の平面形状を有している。半導体チップCHPは、平面視において、ゲートパッドGP、ゲート配線W1、エミッタパッドEPを有している。また、半導体チップCHPの上面とは反対の下面(裏面)には、半導体基板の下面を覆うコレクタ電極(
図1および
図2では図示しない)が形成されている。半導体チップCHPの上面側には、平面視においてゲートパッドGP、ゲート配線W1およびエミッタパッドEPを囲み半導体チップCHPの輪郭に沿って形成された環状の周辺領域が存在する。周辺領域の半導体基板の上面、例えば終端構造であるFLR(Field Limiting Ring)が形成されている。また、周辺領域の半導体基板上には、環状の配線WRが形成されている。
【0026】
図2には、左から順に第1領域1A、第2領域1Bおよび第3領域1Cを示している。
図2に示す第1領域1Aの断面は、
図1のA-A線における断面であり、第2領域1Bの断面は、
図1のB-B線における断面であり、第3領域1Cの断面は、
図1のC-C線における断面である。第1領域1Aは、平面視で第2領域1Bおよび第3領域1Cを囲む周辺領域を含む領域である。
図2では、IGBTとして機能する素子領域(セル領域)は示していない。
【0027】
半導体装置は、N-型の半導体基板SBと、半導体基板SBの上面から半導体基板SBの所定の深さに亘って形成されたP型ウェルPWを備えている。P型ウェルPWは、第1領域1A、第2領域1Bおよび第3領域1Cに亘って形成された半導体領域である。また、半導体基板SB内は、P型ウェルPWの下端から離間して半導体基板SBの下面近傍に形成され、半導体基板SBより高い不純物濃度を有するN型半導体層NLと、N型半導体層NLの下面から半導体基板SBの下面に亘って形成されたP型半導体層PLとを備えている。つまり半導体基板SBは、下面側から順に形成されたP型半導体層PL、N型半導体層NL、半導体基板SBおよびP型ウェルPWを有している。第1領域1Aにおいて、半導体基板SB上には環状のフィールド酸化膜である絶縁膜IF1が形成されており、絶縁膜IF1の直下には、P型ウェルPWが形成されていない。
【0028】
半導体基板SBは、例えばP(リン)等のN型不純物が導入された単結晶Si(シリコン)から成る。N型半導体層NLは、半導体基板SBにN型不純物(例えばP(リン))を導入して形成された半導体領域である。N型半導体層NLは、IGBTのバッファ層として機能する。P型半導体層PLおよびP型ウェルPWは、半導体基板SBにP型不純物(例えばB(ホウ素))を導入して形成された半導体領域である。P型半導体層PLは、半導体基板SB内に正孔を注入する層である。
【0029】
第3領域1Cにおいて、半導体基板SBの上面にはトレンチ(溝)TRが形成され、トレンチTR内には、絶縁膜IF2を介してトレンチゲート電極TGが埋め込まれている。トレンチTRの深さは、ここではP型ウェルPWよりも浅く、トレンチTRの下端はP型ウェルPWの下端に達していない。トレンチゲート電極TGは、トレンチTR内に、トレンチゲート絶縁膜である絶縁膜IF2を介して埋め込まれたポリシリコン膜により構成されている。トレンチゲート電極TGを構成するポリシリコン膜には、例えばP(リン)が導入されている。ここで、トレンチゲート電極TGを構成するポリシリコン膜および絶縁膜IF2は、トレンチTRの外の領域、つまり、トレンチTRと平面視で重ならない領域において、半導体基板SB上には形成されていない。
【0030】
第2領域1Bでは、半導体基板SBの上面上に、絶縁膜IF4を介して内蔵抵抗GRが形成されている。内蔵抵抗GRは、P型ウェルPWの直上に形成されている。言い換えれば、内蔵抵抗GRは、平面視でP型ウェルPWと重なっている。絶縁膜IF4は、半導体基板SB上に順に積層された絶縁膜IF2および絶縁膜IF3により構成されている。この絶縁膜IF2は、第3領域1CのトレンチTR内に形成された絶縁膜IF2と同じ工程で形成された熱酸化膜から成る。また、絶縁膜IF3は、例えばTEOS膜である。このため、絶縁膜IF4の膜厚は、トレンチTR内の絶縁膜IF2の膜厚よりも大きい。言い換えれば、内蔵抵抗GRと半導体基板SBの上面との間の絶縁膜の厚さは、トレンチTRの表面とトレンチゲート電極TGとの間の絶縁膜の厚さよりも大きい。絶縁膜IF4の膜厚は、比較例の絶縁膜IF5の膜厚の約2~7倍であり、具体的には例えば5倍程度である。
【0031】
トレンチゲート絶縁膜は絶縁膜IF2のみで形成されているため、絶縁膜IF2は、半導体基板SBの表面(トレンチTRの表面)およびトレンチゲート電極TGの表面のそれぞれに接している。ここでは、トレンチゲート絶縁膜である絶縁膜IF2を熱酸化膜単層で構成しているため、トレンチゲート絶縁膜を熱酸化膜およびTEOS膜との積層構造とする場合に比べて、トレンチゲート絶縁膜の膜厚のばらつき発生を防げる。これにより、IGBTのしきい値電圧Vthのばらつきを低減できる。
【0032】
また、絶縁膜IF4の膜厚は、フィールド酸化膜(フィールド絶縁膜)である絶縁膜IF1の膜厚よりも小さい。これは、フィールド酸化膜よりも厚い絶縁膜IF4を形成すると、その膜厚が大きすぎるため、フォトリソグラフィ工程で正確な露光を行えず、パターニングが正常に行えない虞があるためである。絶縁膜IF2は、絶縁膜IF3よりも比誘電率が高く、構造が緻密な膜である。
【0033】
絶縁膜IF3の膜厚は、絶縁膜IF4の膜厚よりも大きい。絶縁膜IF4の膜厚は、例えば100~700nmであり、当該膜厚は、例えば200~400nmがより好ましい。絶縁膜IF2の膜厚は、例えば70nm以上であり、具体的には、例えば100nmである。つまり、トレンチTRの表面とトレンチゲート電極TGとの間の最短距離は、70nm以上である。また、絶縁膜IF3の膜厚は、例えば450nm程度である。絶縁膜IF1の膜厚は、例えば700nm程度である。絶縁膜IF3は、酸化シリコン膜に限らず、例えば窒化シリコン膜により構成されていてもよい。絶縁膜IF1は、例えば酸化シリコン膜から成る環状パターンであり、平面視において、素子領域、第2領域1B、第3領域1C、後述のエミッタパッドEP、ゲートパッドGPおよびゲート配線W1を囲んでいる。
【0034】
内蔵抵抗GRは、例えばポリシリコン膜から成り、例えばAs(ヒ素)の導入によって導電性を持たせた抵抗体である。ここで、内蔵抵抗GRおよびトレンチゲート電極TGは、互いに離間している。内蔵抵抗GRは、ゲートパッドGPと、トレンチゲート電極TGとの間に直列に接続された抵抗体から成る抵抗素子である。
【0035】
半導体基板SB上には、トレンチゲート電極TG、絶縁膜IF1~IF4および内蔵抵抗GRを覆うように、例えば酸化シリコン膜から成る層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILには、複数の箇所で層間絶縁膜ILの上面から下面に向かって貫通する接続孔が開孔されており、接続孔内にはプラグPGが埋め込まれている。プラグPGは、例えば接続孔の底面および側面を連続的に覆うバリアメタル膜であるTiN(窒化チタン)/Ti(チタン)膜と、接続孔内にバリアメタル膜を介して埋め込まれたW(タングステン)膜とにより構成されている。プラグPGは、第1領域1AのP型ウェルPWの上面と、第2領域1Bの内蔵抵抗GRの上面の両端のそれぞれと、トレンチゲート電極TGの上面とに接続されている。ここで、半導体基板SBの上面に沿う方向において、プラグPGの幅は、トレンチゲート電極TGの幅よりも小さい。このため、トレンチゲート電極TGに接続されたプラグPGの底面は、半導体基板SBの上面と離間している。
【0036】
層間絶縁膜IL上およびプラグPG上には、金属膜BMおよび金属膜BM上に形成された金属膜M1から成る積層金属膜が形成されている。バリアメタル膜である金属膜BMは、例えばTiW(チタンタングステン)膜から成り、主導体膜である金属膜M1は、例えばAlCu(アルミニウム銅)膜から成る。また、金属膜M1は、Al膜にSiが添加されたAlSi膜でもよい。複数の積層金属膜のうち、第1領域1AでプラグPGを介してP型ウェルPWに電気的に接続されたものは、エミッタパッド(エミッタ電極)EPを構成している。また、複数の積層金属膜のうち、第2領域1BでプラグPGを介して内蔵抵抗GRの一方の端部の上面に接続されたものは、ゲートパッドGPを構成している。また、複数の積層金属膜のうち、第2領域1BでプラグPGを介して内蔵抵抗GRの他方の端部の上面に接続されたものは、ゲート配線W1を構成している。ゲート配線W1は、第2領域1Bから第3領域1Cに亘って形成されている。第3領域1Cのゲート配線W1は、プラグPGを介してトレンチゲート電極TGに電気的に接続されている。ゲートパッドGPとゲート配線W1とは、互いに離間している。
【0037】
このように、ゲートパッドGPとトレンチゲート電極TGとは、それらの間に直列に接続された複数のプラグPGと、内蔵抵抗GRと、ゲート配線W1とにより電気的に接続されている。具体的には、ゲートパッドGPと内蔵抵抗GRとはプラグPGを介して電気的に接続され、内蔵抵抗GRとゲート配線W1とはプラグPGを介して電気的に接続され、ゲート配線W1とトレンチゲート電極TGとは、プラグPGを介して電気的に接続されている。
【0038】
第1領域1AのエミッタパッドEPは、IGBTのエミッタ領域にエミッタ電位を供給するものである。第2領域1BのゲートパッドGPは、内蔵抵抗GRを介してトレンチゲート電極TGにゲート電位を供給するものである。このようにして第3領域1Cのトレンチゲート電極TGに供給されたゲート電位は、素子領域(図示しない)に形成されたIGBTのトレンチゲート電極に供給され、これによりIGBTの動作を制御する。トレンチゲート電極TGおよびP型半導体層(コレクタ領域)PLは、IGBTを構成している。
【0039】
平面視でゲートパッドGP、ゲート配線W1およびエミッタパッドEPを囲む周辺領域には、エミッタパッドEPと離間する上記積層金属膜から成る配線WRが形成されている。
【0040】
<半導体装置の効果>
本実施の形態では、内蔵抵抗GRの直下の絶縁膜IF4を、トレンチゲート絶縁膜に比べて厚くすることによって、IGBTのスイッチング動作においてオフ状態からオン状態に変わるときにコレクタ電圧が高dV/dtで印加されても、絶縁膜IF4に掛かる過渡的な電界を緩和できる。
【0041】
すなわち、電界は、電界が掛かる絶縁膜を厚くすることにより緩和できる。ここでは絶縁膜IF4を比較例の絶縁膜IF5に比べて厚く形成することで、電界を緩和できる。これにより、絶縁膜IF4の破壊を防げる。具体的には、絶縁膜IF4の膜厚は、比較例の絶縁膜IF5の膜厚の約5倍であるため、電界を1/5に緩和できる。ここでは、トレンチゲート絶縁膜である絶縁膜IF2と、内蔵抵抗GRの下の絶縁膜IF4とを異なる構成としているため、絶縁膜IF4を厚くしてもトレンチゲート絶縁膜は厚くならない。したがって、上記のように内蔵抵抗GRの直下の絶縁膜IF4のみを厚く形成できる。これにより、第1の改善の余地を解消できる。
【0042】
また、熱酸化膜である絶縁膜IF2を例えば100nm程度で比較的厚く形成した場合、トレンチTRの上端である半導体基板SBの角部にコンベックスコーナー(尖った角)が形成されることが考えらえる。比較例でこのような角部が形成された場合、第2の改善の余地として説明したように、当該角部で絶縁破壊が起き易くなる。これに対し、本実施の形態では、当該角部の直上には層間絶縁膜ILが形成されているのであって、角部の直上に絶縁膜IF2は形成されていない。また、角部の直上にはトレンチゲート電極TGまたは内蔵抵抗GRなどのポリシリコン膜は形成されていない。つまり、トレンチゲート電極TGと、その上面に接続されたプラグPGとのそれぞれは、半導体基板SBの上面に沿う方向においてトレンチTRと隣接する半導体基板SBの上面を露出している。したがって、ゲート電極の信頼性を確保できる。つまり、第2の改善の余地を解消できる。
【0043】
<半導体装置の製造工程>
以下に、
図3~
図12を用いて、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
図3~
図12は、本実施の形態の半導体装置の形成工程中の断面図である。
図3~
図12は、
図2と同じ箇所を示す断面図である。
【0044】
ここではまず、
図3に示すように、円板状の半導体ウェハである半導体基板SBを用意する。半導体基板SBは、例えばP(リン)等のN型不純物が導入された単結晶Si(シリコン)から成る。半導体基板SBには、後の工程で切り分けられてそれぞれ半導体チップとなるチップ領域が平面視において行列状に並んでいる。半導体基板SBの各チップ領域は、IGBTが形成される素子領域、ゲートパッドおよび内蔵抵抗が形成される第2領域1B、および、トレンチゲート絶縁膜の給電経路を含む第3領域1Cを有している。また、半導体基板SBの各チップ領域は、素子領域、第2領域1Bおよび第3領域1Cを平面視においてまとめて囲む環状の周辺領域を有している。第1領域1Aは、エミッタパッドが形成される領域と、環状の周辺領域の内側の端部とを含む領域である。
【0045】
続いて、半導体基板SB上にフィールド酸化膜である絶縁膜IF1を形成する。絶縁膜IF1は、例えば酸化シリコン膜から成り、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより形成できる。ここでは、絶縁膜1は初めに950nmの厚さで成膜するが、その後の途中工程の洗浄などで、最終的には700nm程の厚さになる。
【0046】
次に、
図4に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて絶縁膜IF1の一部を除去し、これにより第1領域1Aの一部の半導体基板SBの上面と、第2領域1Bおよび第3領域1Cのそれぞれの半導体基板SBの上面を露出させる。
【0047】
続いて、絶縁膜IF1をマスク(イオン注入阻止マスク)として用いて、P型不純物(例えばB(ホウ素))を半導体基板SBの上面の上面にイオン注入法などにより打ち込む。これにより、半導体基板SBの上面から所定の深さに亘って、P型半導体領域PW1を形成する。
【0048】
次に、
図5に示すように、半導体基板SB上に、例えばCVD法により、例えばTEOS膜(図示しない)を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて当該TEOS膜を加工し、これにより第3領域1Cの一部の半導体基板SBの上面を露出させる。続いて、エッチング法により半導体基板SBの上面に所定の深さを有するトレンチTRを複数形成した後、当該TEOS膜を除去する。
【0049】
次に、
図6に示すように、半導体基板SBに対し熱処理を行うことで、P型半導体領域PW1に導入された不純物を拡散させる。これにより、半導体基板SB内に、P型半導体領域PW1より深い深さを有するP型ウェルPWを形成する。続いて、半導体基板SBに対し熱処理を行うことで、トレンチTRの表面を含む半導体基板SBの表面を覆う熱酸化膜である絶縁膜IF2を形成する。この絶縁膜IF2は、例えば、以下のように形成してもよい。まず、半導体基板SBに対し例えば1200℃で30分ほどの熱処理で、犠牲酸化膜(図示しない)を形成した後、この犠牲酸化膜を例えばウエットエッチング処理により、除去する。その後、再度950℃で40分ほどの熱処理を半導体基板SBに施すことにより、熱酸化膜からなる絶縁膜IF2を形成する。
【0050】
次に、
図7に示すように、トレンチTR内に、絶縁膜IF2を介して埋め込まれたトレンチゲート電極TGを形成する。すなわち、トレンチTR内を含む半導体基板SB上に、CVD法などによりポリシリコン膜(導電膜)を成膜する。このポリシリコン膜には、成膜される際にP(リン)が導入される。続いて、エッチバックを行うことで、トレンチTRの外の当該ポリシリコン膜を除去する。これにより、トレンチTR内にのみ残ったポリシリコン膜から成るトレンチゲート電極TGを形成する。
【0051】
次に、
図8に示すように、トレンチゲート電極TG上を含む半導体基板SB上に、CVD法などにより、絶縁膜IF3およびポリシリコン膜SFを順に成膜する。絶縁膜IF3は、例えばTEOS膜から成る。
【0052】
次に、
図9に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、ポリシリコン膜SF、絶縁膜IF3およびIF2から成る積層膜の一部を除去する。これにより、第1領域1A、第2領域1Bおよび第3領域1Cのそれぞれの一部の半導体基板SBの上面を露出させる。これにより、第2領域1Bに、ポリシリコン膜SFから成る内蔵抵抗GRを形成する。このように、内蔵抵抗GRとトレンチゲート電極TGとは、互いに異なる工程で形成する。
【0053】
次に、
図10に示すように、図示はしないが、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、素子領域の半導体基板SBの上面に、チャネル領域およびエミッタ領域を形成する。
【0054】
続いて、トレンチゲート電極TG上、内蔵抵抗GR上および絶縁膜IF1上を含む半導体基板SB上に、CVD法などにより、層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えばPSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、つまり酸化シリコン膜から成る。
【0055】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、層間絶縁膜ILの一部を除去する。これにより、第1領域1AのP型ウェルPWの上面、第2領域1Bの内蔵抵抗GRの両端のそれぞれの上面、および、第3領領域1Cのトレンチゲート電極TGの上面のそれぞれを露出させる接続孔(開口部)を複数形成する。その後、図示はしないが、素子領域の接続孔の底部の半導体基板SBの上面に、イオン注入法によりP型半導体領域であるボディコンタクト領域を形成する。
【0056】
次に、
図11に示すように、複数の接続孔のそれぞれの内側を埋め込むプラグPGを形成する。ここでは、接続孔内を含む半導体基板SB上(層間絶縁膜IL上)に、バリアメタル膜であるTiN(窒化チタン)/Ti(チタン)膜と、主導体膜であるW(タングステン)膜とを順にスパッタリング法などにより形成することで、接続孔内を完全に埋め込む。その後、例えばエッチバックを行うことで、各接続孔の外に形成されたそれらの金属膜を除去することで、プラグPGを形成する。
【0057】
次に、
図12に示すように、複数のプラグPG上を含む半導体基板SB上(層間絶縁膜IL上)に、バリアメタル膜である金属膜BMと、主導体膜である金属膜M1とを順に例えばスパッタリング法などにより形成する。これにより、金属膜BM、M1から成る積層膜である積層金属膜を形成する。金属膜BMは、例えばTiW(チタンタングステン)膜から成り、金属膜M1は例えばAlCu(アルミニウム銅)膜から成る。続いて、当該フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、積層金属膜を加工し、これにより、一部の層間絶縁膜ILの上面を露出させる。
【0058】
これにより互いに分離された複数の積層金属膜のうち、第1領域1AでプラグPGを介してP型ウェルPWに電気的に接続されたものは、エミッタパッド(エミッタ電極)EPを構成している。また、複数の積層金属膜のうち、第2領域1BでプラグPGを介して内蔵抵抗GRの一方の端部の上面に接続されたものは、ゲートパッドGPを構成している。また、複数の積層金属膜のうち、第2領域1BでプラグPGを介して内蔵抵抗GRの他方の端部の上面に接続されたものは、ゲート配線W1を構成している。ゲート配線W1は、第2領域1Bから第3領域1Cに亘って形成されている。第3領域1Cのゲート配線W1は、プラグPGを介してトレンチゲート電極TGに電気的に接続されている。ゲートパッドGPとゲート配線W1とは、互いに離間している。
【0059】
このように、ゲートパッドGPとトレンチゲート電極TGとは、それらの間に直列に接続された複数のプラグPGと、内蔵抵抗GRと、ゲート配線W1とにより電気的に接続されている。具体的には、ゲートパッドGPと内蔵抵抗GRとはプラグPGを介して電気的に接続され、内蔵抵抗GRとゲート配線W1とはプラグPGを介して電気的に接続され、ゲート配線W1とトレンチゲート電極TGとは、プラグPGを介して電気的に接続されている。
【0060】
次に、
図12に示すように、半導体基板SBの下面に、イオン注入法によりN型不純物(例えばP(リン))を導入することで、N型半導体層NLを形成する。N型半導体層NLは、P型ウェルPWおよびトレンチTRに対して離間している。続いて、半導体基板SBの下面に、イオン注入法によりP型不純物(例えばB(ホウ素))を導入することで、P型半導体層PLを形成する。P型半導体層PLの半導体基板SBの下面からの深さは、N型半導体層NLの半導体基板SBの下面からの深よりも浅い。P型半導体層PLは、IGBTのコレクタ領域を構成するものである。このようにして、トレンチゲート電極TG、エミッタ領域(図示しない)およびコレクタ領域(P型半導体層PL)を少なくとも含むIGBTが形成される。続いて、図示はしないが、半導体基板SBの下面を覆うコレクタ電極を形成する。
【0061】
以上により、本実施の形態の半導体装置が略完成する。
【0062】
<半導体装置の製造方法の効果>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法の効果について説明する。
【0063】
図14に示す比較例の半導体装置は、内蔵抵抗GRをトレンチゲート電極TGと同時に形成するものである。このため、内蔵抵抗GRの下の絶縁膜はトレンチゲート絶縁膜と同じ厚さになる。トレンチゲート絶縁膜の膜厚は、IGBTを正常に動作させるために、大きさに限界がある。よって、比較例では、内蔵抵抗GRの下の絶縁膜を一定以上厚くすることができず、半導体基板SBと内蔵抵抗GRとの間で絶縁破壊が起き易くなっている。
【0064】
これに対し、本実施の形態では、
図7~
図9を用いて説明したように、内蔵抵抗GRとトレンチゲート電極TGとを、互いに異なる工程で形成している。よって、内蔵抵抗GRの直下の絶縁膜IF4を、トレンチゲート絶縁膜に比べて厚く形成できる。このため、IGBTのスイッチング動作においてオフ状態からオン状態に変わるときにコレクタ電圧が高dV/dtで印加されても、絶縁膜IF4に掛かる過渡的な電界を緩和できる。
【0065】
これにより、
図1および
図2を用いて説明した半導体装置と同様の効果を得ることができる。
【0066】
<変形例>
本実施の形態は、半導体基板の裏面にN型半導体層を有する半導体装置にも適用可能である。
図13は、本変形例の半導体装置を示す断面図である。
図13に示す箇所は、
図2に示す箇所に対応している。
【0067】
図13に示すように、本変形例の半導体装置の構造は、半導体基板SBの裏面に一様にP型半導体層PLが形成されているのではなく、局所的にN型半導体層BNLが形成されている点で、
図2を用いて説明した構造と異なる。つまり、半導体基板SBの下面には、P型半導体層PLと隣り合って、N型半導体層BNLが形成されている。N型半導体層BNLは、逆導通IGBT(RC-IGBT(Reverse-Conducting IGBT))などにおいて意図的に形成されたものでもよく、欠陥として形成されたものであってもよい。
【0068】
逆導通IGBTにおいては、N型半導体層BNLは、P型半導体層PLを形成した後に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて半導体基板SBの下面にN型不純物(例えばP(リン))を導入することで形成できる。
【0069】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0070】
例えば、半導体基板の材料は、Siに限らず、SIC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)またはGa2O3(酸化ガリウム)などであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
GP ゲートパッド
GR 内蔵抵抗
IF1~IF4 絶縁膜IF4
SB 半導体基板
TG トレンチゲート電極
TR トレンチ