(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】接着層付き機能性層、積層体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20250210BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20250210BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250210BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250210BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20250210BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
C09J7/30
B32B7/023
B32B27/00 M
C09J201/00
G02B5/22
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020549377
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037934
(87)【国際公開番号】W WO2020067328
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2018180714
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394019543
【氏名又は名称】株式会社ホプニック研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】神尾 浩行
(72)【発明者】
【氏名】相磯 良充
(72)【発明者】
【氏名】今村 成希
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-145513(JP,A)
【文献】特開2014-92580(JP,A)
【文献】特開2014-202904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
G02C 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性層と;
前記機能性層の表面の少なくとも一部に配置された硬化性接着層AD2と;
を備え、
硬化性接着層AD2は以下の(1)
、(2)
および(4)の要件をすべて満た
し、
前記硬化性接着層AD2がポリエステル系熱硬化型シート状接着剤またはウレタン系熱硬化型シート状接着剤である接着層付き機能性層。
(1)25℃にて、
ガラス板上の硬化性接着層AD2の接着面上に、32gの鋼球をのせ、10秒間保持した後、ガラス板を徐々に傾けて、鋼球の転がり始める角度が5度以下
(2)90℃で2時間硬化させた後、25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が
1.5以上50以下
(4)90℃で2時間硬化させた後の25℃における貯蔵弾性率が10MPa以上1000MPa以下
【請求項2】
硬化性接着層AD2は以下の(3)の要件を満たす、請求項1に記載の接着層付き機能性層。
(3)90℃で2時間硬化させた後、25℃において0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)が0.01~5000
【請求項3】
塑性変形量bが0を超え1以下である、請求項1
または2に記載の接着層付き機能性層。
【請求項4】
前記機能性層は、ガラス転移温度および軟化点温度が0℃以上、かつ厚さが1μm~1mmの範囲内である高分子層を含んでなる、請求項1ないし
3のいずれかに記載の接着層付き機能性層。
【請求項5】
前記高分子層が、偏光性、特定波長吸収性、調光性、および調色性から選ばれる少なくとも1つの性質を有する、請求項
4に記載の接着層付き機能性層。
【請求項6】
硬化性接着層AD2の厚さが100μm未満である、請求項1ないし
5のいずれか1項に記載の接着層付き機能性層。
【請求項7】
硬化性接着層AD2がさらに下記要件を満たす、請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の接着層付き機能性層。
(5)硬化させた後の屈折率(JIS K7142)が、1.45以上
【請求項8】
前記高分子層は、実質的に一軸方向への延伸フィルムである、請求項
4または
5に記載の接着層付き機能性層。
【請求項9】
前記高分子層は、ポリエチレンテレフタラートを含む偏光性フィルムである、請求項
8に記載の接着層付き機能性層。
【請求項10】
機能性層と;
接着層AD2-1と;
基材と;
をこの順で備え、
接着層AD2-1は前記機能性層と前記基材とが対向する面間の少なくとも一部に配置されており、かつ前記接着層は以下の(i)
および(iii)の要件を
すべて満た
し、
前記接着層AD2-1がポリエステル系熱硬化型シート状接着剤またはウレタン系熱硬化型シート状接着剤である機能性層付き基材。
(i)25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が
1.5以上50以下
(iii)25℃における貯蔵弾性率が10MPa以上1000MPa以下
【請求項11】
接着層AD2-1は以下の(ii)の要件を満たす、請求項
10に記載の機能性層付き基材。
(ii)25℃において0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)が0.01~5000
【請求項12】
保護層と;
機能性層と;
接着層AD2-1と;
基材と;
をこの順で備え、
接着層AD2-1は前記機能性層と前記基材とが対向する面間の少なくとも一部に配置されており、かつ前記保護層が以下の(a)、(b)および(c)の要件をすべて満たし、前記接着層AD2-1は以下の(i)
および(iii)の要件を
すべて満た
し、
前記接着層AD2-1がポリエステル系熱硬化型シート状接着剤またはウレタン系熱硬化型シート状接着剤であり、
前記保護層がエポキシ系硬化性樹脂、ウレタンアクリレート系硬化性樹脂、エポキシアクリレート系硬化性樹脂、ウレタン系硬化性樹脂、アクリル系硬化性樹脂、およびチオウレタン系硬化性樹脂から選択される少なくとも1種の硬化性樹脂を含む積層体。
(a)厚さが10μm~1mm
(b)25℃において、0.1mN荷重に対する弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が0.1~10
(c)25℃において、0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)が400~3000
(i)25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が1.5以上50以下
(
iii)25℃における貯蔵弾性率が
10MPa以上1000MPa以下
【請求項13】
前記保護層は以下の(d)の要件を満たす、請求項
12に記載の積層体。
(d)鉛筆硬度がHB~9H
【請求項14】
さらに前記保護層と前記機能性層との間に接着層AD1-1を備え、
接着層AD1-1が以下の(i)の要件を満たす、請求項
12または
13に記載の積層体。
(i)25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が0.01~100
【請求項15】
接着層AD1-1は以下の(ii)の要件を満たす、請求項
14に記載の積層体。
(ii)25℃において0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)が0.01~5000
【請求項16】
接着層AD1-1は以下の(iii)の要件を満たす、請求項
14または
15に記載の積層体。
(iii)25℃における貯蔵弾性率が0.5MPa以上1000MPa以下
【請求項17】
前記基材が屈折率1.49以上のレンズである、請求項
10または11に記載の機能性層付き基材または請求項
12ないし
16のいずれかに記載の積層体からなる光学部品。
【請求項18】
前記接着層AD2-1が、前記レンズの表面の少なくとも一部と接する、請求項
17に記載の光学部品。
【請求項19】
前記レンズが、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレアウレタン樹脂、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリ(メタ)(チオ)アクリレート樹脂、アリルジグリシジルカーボネート樹脂、および無機ガラスからなる群から選ばれる1種以上の材料を含む、請求項
17または
18に記載の光学部品。
【請求項20】
前記機能性層が偏光性を備える偏光レンズである、請求項
19に記載の光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層付き機能性層、積層体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光レンズは、反射光の透過を防ぐことができる。そのため、スキー場やフィッシングなど戸外における強い反射光を遮断することによる眼の保護等や、自動車運転時における対向車からの反射光を遮断することによる安全性の確保などに使用されている。
【0003】
特許文献1には、プラスチック偏光レンズとして、プラスチックレンズ基材とポリビニルアルコール系偏光フィルムとからなる偏光レンズが開示されている。当該文献には、レンズ基材と偏光フィルムとをエポキシ系樹脂等で接着することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、予備加熱された平面形状の偏光膜を、パッドで押圧しながらレンズ基材の凸面に押し付け、感圧接着剤を介してレンズ基材の凸面上に前記フィルムを接着する方法および当該方法で得られた偏光レンズが開示されている。当該文献には、感圧接着剤は、ポリアクリラートをベースとする化合物およびスチレンをベースとするブロックコポリマーから選択されることが記載されている。
特許文献3には、第1層と第2層が所定の方法で測定された接着力で貼り合わされたレンズが開示されている。
【0005】
特許文献4には、ポリエチレンテレフタレートからなる偏光フィルムをプラスチック材料表面に備えるプラスチック偏光レンズが開示されている。当該文献は、射出成形により偏光レンズを製造しており、偏光フィルムをプラスチック材料に接着する技術については開示されていない。
【0006】
特許文献5には、所定の温度条件で附形された熱可塑性ポリエステルからなる偏光フィルムの少なくとも一方の面にチオウレタン系樹脂層を備えるプラスチック偏光レンズが開示されている。
特許文献6には、成形装置に非接触の状態で附形された熱可塑性樹脂フィルムの一方の面にレンズ基材を備える、偏光レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-258009号公報
【文献】特表2009-527783号公報
【文献】米国2017/0139230号公報
【文献】特表2003-533719号公報
【文献】国際公開第2009/098886号
【文献】国際公開第2017/146201号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~6に記載の従来の技術においては、偏光層等の機能性層と基材との密着性に改善の余地があり、特に曲率半径が小さい箇所において改善の余地があった。さらにアニール時の外周端部における密着性に改善の余地があった。また本発明者が検討したところ、レンズの製造工程における玉型加工(外周加工)の際に、レンズの外周端部に加工残りが発生するという新しい課題を見出した。なお、この課題は基材がレンズである場合に限られず、偏光層等の機能性層と基材を貼り合わせ、その外周端部を加工する場合、特に基材に曲率半径が小さい部位がある場合に生ずる課題と考えられる。
なお、加工残りとは、レンズの外周加工の研削・研磨(削り)工程後において、外周端部に、偏光フィルム等の機能性樹脂フィルムが削られずに残った状態を意味する。この加工残りは、研削・研磨(削り)工程において、機能性樹脂フィルムがレンズ基材等と比較して切れ難くまた削り難いために生じると考えられる。
【0009】
すなわち、本発明の第1の課題は、機能性層と基材との密着性、さらにアニール時の外周端部における密着性に優れた接着層付き機能性層を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の第2の課題は、機能性層と基材との密着性、さらにアニール時の外周端部における密着性に優れるとともに、レンズの製造工程における外周加工の際に、レンズの外周端部に加工残りが抑制される積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の性能を備える硬化性接着層を用いることにより以上の少なくともいずれかの課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
[1] 機能性層と;
前記機能性層の表面の少なくとも一部に配置された硬化性接着層AD2と;
を備え、
硬化性接着層AD2は以下の(1)および(2)の要件をすべて満たす接着層付き機能性層。
(1)25℃にて、硬化性接着層AD2の接着面上に、32gの鋼球をのせ、10秒間保持した後、ガラス板を徐々に傾けて、鋼球の転がり始める角度が5度以下
(2)90℃で2時間硬化させた後、25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が0.01~100
[2] 硬化性接着層AD2は以下の(3)の要件を満たす、[1]に記載の接着層付き機能性層。
(3)90℃で2時間硬化させた後、25℃において0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)が0.01~5000
[3] 硬化性接着層AD2は以下の(4)の要件を満たす、[1]または[2]に記載の接着層付き機能性層。
(4)90℃で2時間硬化させた後の25℃における貯蔵弾性率が0.5MPa以上1000MPa以下
[4] 塑性変形量bが0を超え1以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の接着層付き機能性層。
[5] 前記機能性層は、ガラス転移温度および軟化点温度が0℃以上、かつ厚さが1μm~1mmの範囲内である高分子層を含んでなる、[1]ないし[4]のいずれかに記載の接着層付き機能性層。
[6] 前記高分子層が、偏光性、特定波長吸収性、調光性、および調色性から選ばれる少なくとも1つの性質を有する、[5]に記載の接着層付き機能性層。
[7] 硬化性接着層AD2の厚さが100μm未満である、[1]ないし[6]のいずれか1項に記載の接着層付き機能性層。
[8] 硬化性接着層AD2が、エステル系、エポキシ系、ウレタン系、および(メタ)アクリル系からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化性高分子と、硬化促進剤と、を含む[1]ないし[7]のいずれか1項に記載の接着層付き機能性層。
[9] 硬化性接着層AD2がさらに下記要件を満たす、[1]ないし[8]のいずれか1項に記載の接着層付き機能性層。
(5)硬化させた後の屈折率(JIS K7142)が、1.45以上
[10] 前記高分子層は、実質的に一軸方向への延伸フィルムである、[5]または[6]に記載の接着層付き機能性層。
[11] 前記高分子層は、ポリエチレンテレフタラートを含む偏光性フィルムである、[10]に記載の接着層付き機能性層。
[12] 機能性層と;
接着層AD2-1と;
基材と;
をこの順で備え、
接着層AD2-1は前記機能性層と前記基材とが対向する面間の少なくとも一部に配置されており、かつ前記接着層は以下の(i)の要件を満たす、機能性層付き基材。
(i)25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が0.01~100
[13] 接着層AD2-1は以下の(ii)の要件を満たす、[12]に記載の機能性層付き基材。
(ii)25℃において0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)が0.01~5000
[14] 接着層AD2-1は以下の(iii)の要件を満たす、[12]または[13]に記載の機能性層付き基材。
(iii)25℃における貯蔵弾性率が0.5MPa以上1000MPa以下
[15] 保護層と;
機能性層と;
接着層AD2-1と;
基材と;
をこの順で備え、
接着層AD2-1は前記機能性層と前記基材とが対向する面間の少なくとも一部に配置されており、かつ前記保護層が以下の(a)、(b)および(c)の要件をすべて満たし、前記接着層AD2-1は以下の(i)の要件を満たす、積層体。
(a)厚さが10μm~1mm
(b)25℃において、0.1mN荷重に対する弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が0.1~10
(c)25℃において、0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)が400~3000
(i)25℃における貯蔵弾性率が0.5MPa以上1000MPa以下
[16] 前記保護層は以下の(d)の要件を満たす、[15]に記載の積層体。
(d)鉛筆硬度がHB~9H
[17] さらに前記保護層と前記機能性層との間に接着層AD1-1を備え、
接着層AD1-1が以下の(i)の要件を満たす、[15]または[16]に記載の積層体。
(i)25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)が0.01~100
[18] 接着層AD1-1は以下の(ii)の要件を満たす、[17]に記載の積層体。
(ii)25℃において0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)が0.01~5000
[19] 接着層AD1-1は以下の(iii)の要件を満たす、[17]または[18]に記載の積層体。
(iii)25℃における貯蔵弾性率が0.5MPa以上1000MPa以下
[20] 前記基材が屈折率1.49以上のレンズである、[12]ないし[14]のいずれかに記載の機能性層付き基材または[15]ないし[19]のいずれかに記載の積層体からなる光学部品。
[21] 前記接着層AD2-1が、前記レンズの表面の少なくとも一部と接する、[20]に記載の光学部品。
[22] 前記レンズが、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレアウレタン樹脂、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリ(メタ)(チオ)アクリレート樹脂、アリルジグリシジルカーボネート樹脂、および無機ガラスからなる群から選ばれる1種以上の材料を含む、[20]または[21]に記載の光学部品。
[23] 前記機能性層が偏光性を備える偏光レンズである、[22]に記載の光学部品。
なお、本明細書において、例えば1~10は、1以上10以下を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機能性層と基材との密着性、さらにアニール時の外周端部における密着性に優れる接着層付き機能性層を提供することができる。
さらに、本発明によれば、機能性層と基材との密着性、さらにアニール時の外周端部における密着性に優れるとともに、レンズの外周加工時における外周端部の加工残りの発生が抑制される積層体も提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の接着層付き機能性層、機能性層付き基材、および積層体を、実施の形態に基づいて説明する。
<接着層付き機能性層>
本実施形態の接着層付き機能性層(接着層付き機能性フィルム)は、機能性層と、前記機能性層の表面の少なくとも一部に配置された硬化性接着層AD2と、を備える。
【0015】
[機能性層]
機能性層は、後述する基材に貼り合わせることができれば特に限定されず様々な樹脂からなる層を用いることができるが、好ましくはガラス転移温度および軟化点が0℃以上、さらに好ましくは0℃以上200℃以下、特に好ましくは0℃以上180℃以下であり、かつ厚さが1μm~1mm、好ましくは10μm~300μm、さらに好ましくは20μm~200μmの範囲の高分子層を含んでなる。
ガラス転移温度及び軟化点を何れも有する場合は、いずれも前記の温度範囲であり、ガラス転移温度または軟化点の何れかを有する場合は、有する温度が前記の温度範囲である。なお、本実施形態においては、複数のガラス転移温度が存在する場合、最も低い温度をガラス転移温度とする。
このような高分子層を含んでなる機能性層であれば、硬化性接着層AD2を用いることにより、基材との密着性が改善される。
【0016】
機能性層は、高分子層のみから構成されていてもよく、高分子層に他の層が少なくとも1層積層された積層構造であってもよい。高分子層は異なる層が積層されていてもよい。
機能性層は、一般的には、偏光性、特定波長吸収性、調光性、および調色性から選ばれる少なくとも1つの性質を有する高分子層を含んでなるが、これらの機能に必ずしも限定されない。
偏光性を付与するために、機能性層を構成する高分子層を偏光フィルムから形成することができる。偏光フィルムとしては、実質的に一軸方向への延伸フィルムを用いることができる。本実施形態においては、特に残留応力のある延伸フィルムを機能性層に用いた場合において生じる密着性の課題を解決することができる。
【0017】
偏光フィルムは、熱可塑性樹脂から構成することができる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリカーボネート、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、トリアセチルセルロース(TAC)等の単一層、あるいは複数層を積層したものを挙げることができる。耐水性、耐熱性および成形加工性の観点から、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリカーボネートが好ましく、耐水性、耐候性の観点からは熱可塑性ポリエステルがより好ましい。
【0018】
熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等を挙げることができ、耐水性、耐熱性および成形加工性の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0019】
偏光性を付与する目的で、前記熱可塑性樹脂からなる機能性層に二色性染料等を添加することができる。二色性染料としては、公知の染料が使用される。例えば、特開昭61-087757号公報、特開昭61-285259号公報、特開昭62-270664号公報、特開昭62-275163号公報、特開平1-103667号公報等に開示されている。具体的には、アントラキノン系、キノフタロン系、アゾ系等の色素が挙げられる。
【0020】
特定波長吸収性を付与する目的で、前記熱可塑性樹脂からなる機能性層に特定の染料や紫外線吸収剤を添加することができる。代表的な染料としては、例えば、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、モノアゾ系染料、ジアゾ系染料、フタロシアニン系染料、ポルフィリン系染料、テトラアザポルフィリン金属錯体、フタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、ポルフィリン金属錯体、ナフタロシアニン系色素、メロシアニン系色素、メチン系色素等を挙げることができる。また代表的な紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、インドール系化合物等を挙げることができ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
調光性を付与する目的で、前記熱可塑性樹脂からなる機能性層に調光染料または調光色素を添加することができる。代表的な調光染料または調光色素としては、例えば、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、フルギド系化合物、ナフトピラン系化合物、ビスイミダゾール化合物から所望の着色に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
調色性を付与する目的で、前記熱可塑性樹脂からなる機能性層に公知の色素等を添加することができる。
【0023】
機能性層が高分子層に他の層が少なくとも1層積層された積層構造である場合、他の層として、本発明の効果を損なわない範囲で多様な樹脂層を用いることができる。他の層を構成する樹脂としては高分子層とは異なる樹脂が用いられ、例えば、熱可塑性ポリカーボネート層、熱可塑性ポリイミド層、熱可塑性ポリアミド層、トリアセチルセルロース(TAC)層等を挙げることができる。機能性層を積層構造とすることにより、強度が向上し、附形性や作業性を改善することができる。
積層構造である機能性層全体の厚さは20μm~3mm程度である。
【0024】
[硬化性接着層AD2]
硬化性接着層AD2は、以下の(1)の要件を満たす。
(1)25℃にて、水平に調整したガラス板(定盤)に接着層AD2をずれないように設置し、その上に32gの鋼球を置き、10秒保持した後、徐々にガラス板を傾け、鋼球の転がり始める角度の上限値は5度以下、好ましくは3度以下、さらに好ましくは2度以下であり、下限値は0.01度以上が好ましい。
【0025】
前記要件(1)を満たすことにより、接着層付き機能性層の接着層にゴミなどが付着しにくく、また基材に均一に貼り付けやすくなる等により、機能性層と基材との密着性、特に曲率半径が小さい箇所における密着性に優れ、さらにアニール時の外周端部における機能性層と基材との密着性に優れる接着層付き機能性層を提供することができる。
【0026】
本発明の効果の観点から、さらに以下の要件(2)を満たすことが好ましい。
(2)90℃で2時間硬化させた後、25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)は、下限値が0.01以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは1以上、最も好ましくは1.5以上であり、上限値が100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
弾性変形量aに対する塑性変形量bの比が前記範囲内にあることで、接着層付き機能性層の外周端部を加工する際にその弾性により機能性層に加わる力を伝えつつ、適切な程度の塑性変形することで接着層が切り離しやすくなる(加工残りが少ない)、及び/又は機能性層と接着層の密着性が維持できると推測される。
【0027】
なお、塑性変形量bの下限値は0を超え、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.05超、特に好ましくは0.1以上であり、上限値は1以下、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
塑性変形量bが前記範囲内にあることで、特に運搬や加工時に硬化性接着層にかかる力による変形、例えばチャックを使って搬送した場合のチャック跡などが軽減される傾向がある。
【0028】
弾性変形量および塑性変形量は、以下の条件で測定することができる。
測定機:ダイナミック超微小硬度計DUH-W201S(島津製作所社製)
圧子:ダイヤモンド製三角錐圧子(稜間角115°)
温度:25℃
湿度:50%
最大荷重:0.1mN
深さ1:設定荷重(0.1mN)まで負荷を与えたときの最大押し込み深さ(μm)
深さ2:除荷した後の押し込み深さ(μm)・・・(塑性変形量)
深さ1-深さ2(μm) ・・・(弾性変形量)
【0029】
これらの要件(1)および(2)をいずれも満たすことにより、機能性層と基材との密着性、特に曲率半径が小さい箇所における密着性にさらに優れ、さらにアニール時の外周端部における機能性層と基材との密着性にさらに優れる接着層付き機能性層を提供することができる。
【0030】
本発明の効果の観点から、さらに以下の要件(3)を満たすことが好ましい。
(3)90℃で2時間硬化させた後、25℃における0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)は、下限値が0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは1以上であり、上限値が5000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、特に好ましくは250以下である。
また、90℃で2時間硬化させた後、25℃における0.1mN荷重の負荷を与えたときのダイナミック硬さ(DHT115-1)が0.1~100であることも好ましく、0.5~50がさらに好ましい。
【0031】
ダイナミック硬さは、以下の条件で測定することができる。
測定機:ダイナミック超微小硬度計DUH-W201S(島津製作所社製)
圧子:ダイヤモンド製三角錐圧子(稜間角115°)
最大荷重:0.1mN
深さ1:設定荷重(0.1mN)まで負荷を与えたときの最大押し込み量
深さ2:除荷した後の押し込み深さ・・・(塑性変形量)
深さ1-深さ2 ・・・(弾性変形量)
ダイナミック硬さ(DHT115-2):深さ2と最大荷重(0.1mN)により求められる。
また、ダイナミック硬さ(DHT115-1):深さ1と最大荷重(0.1mN)により求められる。
【0032】
ダイナミック硬さの測定原理は以下のとおりである。
ダイナミック硬さ(ダイナミック超微小硬さ)DHT115-1は、試験荷重を負荷したときの押込み深さより求められる硬さであり、以下の式で算出される。また、ダイナミック硬さDHT115-2は除荷後の圧痕深さから同様な計算方法で算出された硬さになる。尚、計算結果には、圧子の理想形状からのずれが誤差として含まれる。式:DHT115=3.8584・P/D2
DHT115:稜間角115°の三角錐圧子によるダイナミック硬さ
P:試験荷重(mN)
D:押し込み深さ(μm)
【0033】
また、90℃で2時間硬化させた後、25℃において上記の超微小硬度計で測定される0.1mN荷重の除荷過程における押し込み弾性率が108~1010Paであることも好ましい。
押し込み弾性率(弾性率Y)は、除荷過程における初期の弾性回復の度合いから評価される値であり、以下に列挙する式を用いて算出される。尚、計算結果には、圧子の理想形状からのずれが誤差として含まれる。
【0034】
【0035】
式中の記号は以下のとおりである。
Y:ポアゾン比を含んだ試料の弾性率(Pa)
E:試料の弾性率(Pa)
Ei:ダイヤモンド製圧子の弾性率(1.14×1012Pa)
Er:試料と圧子の複合弾性率(Pa)
v:試料のポアソン比
vi:ダイヤモンド製圧子のポアソン比(0.07)
A:圧痕投影面積(m2)
dP/dh:荷重-押し込み深さ線図における除荷開始時の勾配(N/m)
hc:有効接触深さ(m)
hmax:最大押し込み深さ(m) ・・・(深さ1)
hr:除荷開始時の接線と深さ軸との交点(m) ・・・(深さ3)
hmax-hr:(深さ1)-(深さ3) ・・・(深さ4)
【0036】
本発明の効果の観点から、さらに以下の要件(4)を満たすことが好ましい。
(4)90℃で2時間硬化させた後の25℃における貯蔵弾性率は、下限値が0.5MPa以上、好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上であり、上限値が1000MPa以下、好ましくは800MPa以下、さらに好ましくは600MPa以下である。
【0037】
これらの要件(3)および/または(4)を満たすことにより、機能性層と基材との密着性、特に曲率半径が小さい箇所における密着性に特に優れ、さらにアニール時の外周端部における機能性層と基材との密着性に特に優れる接着層付き機能性層を提供することができる。
【0038】
硬化性接着層AD2は、90℃で2時間硬化後の接着力(JIS Z1528;対ガラス)が5N/25mm以上、好ましくは10N/25mm以上、さらに好ましくは15N/25mm以上とすることができる。
硬化性接着層AD2が上記の接着力を有していれば、基材等に貼り付ける場合においても、十分な接着力を確保することができる。
【0039】
硬化性接着層AD2は、さらに下記要件(5)を満たすことが好ましい。または基材の屈折率との差が0.1以下、好ましくは0.05以下であることが好ましい。これにより、接着層付き機能性層を光学用途に用いる場合でも光学特性に優れる。特に基材と積層した場合の複屈折を抑制することができる。
(5)90℃で2時間硬化させた後の屈折率(JIS K7142)が、1.45以上、好ましくは1.50以上、さらに好ましくは1.60以上
【0040】
硬化性接着層AD2の厚さが100μm未満、好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下とすることができる。本実施形態において、硬化性接着層AD2が設けられていればよく、その厚さの下限値は特に限定されないが、5μm以上であり、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。硬化性接着層AD2の厚さが当該範囲であると、機能性層または基材に対する接着性に優れ、ひいては機能性層と基材との密着性をより改善することができる。
【0041】
硬化性接着層AD2は、エステル系、エポキシ系、ウレタン系、およびアクリル系からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化性高分子と、硬化促進剤と、を含む。
【0042】
エステル系樹脂としては、エステル系、ポリエステル系、ポリエステル-ウレタン系、(メタ)アクリル-ポリエステル系等を挙げることができる。
エポキシ系樹脂としては、エポキシ系、(メタ)アクリル-エポキシ系、エポキシ-ウレタン系、エポキシ-ポリエステル系等を挙げることができる。
ウレタン系樹脂としては、ウレタン系、ウレタン-(メタ)アクリル系、ウレタン-エステル系等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系、(メタ)アクリルーウレタン系、アクリル-エポキシ系、アクリル-ポリエステル系等を挙げることができる。なお(メタ)アクリルとは、メタクリレートとアクリレートの両方を含む。
硬化促進剤としては、アミン系、金属錯体系等を挙げることができる。
硬化性接着層AD2は、上記の樹脂以外に酸化防止剤、光安定剤、劣化防止剤、UV吸収剤等の他の成分を含むことができる。
【0043】
なお、硬化性接着層AD2は沸点が100℃以下の成分を含まないことが好ましい。レンズに貼り付ける工程(熱圧着)においてレンズの汚染を抑制することができる。
【0044】
本実施形態の接着層付き機能性層は、機能性フィルムの表面の少なくとも一部に硬化性接着剤を塗布することにより得ることができる。塗布方法としては、スピンコート、ディップコート、ダイコート、グラビアコート、スプレーコート、カーテン(フロー)コートなど公知の方法を挙げることができる。または、機能性フィルムの表面の少なくとも一部にシート状の硬化性接着層を押圧する方法や加熱ラミネートする方法等で得ることもできる。
硬化性接着層AD2は、機能性層の表面の少なくとも一部、好ましくは機能性層の一方の表面の少なくとも一部に配置される。
【0045】
<機能性層付き基材>
本実施形態の機能性層付き基材は、機能性層と、接着層AD2-1と、基材と、をこの順で備える。
本実施形態の機能性層付き基材は、上述の接着層付き機能性層を用いているので、機能性層と基材との密着性、特に曲率半径が小さい箇所における密着性に優れ、さらにアニール時の外周端部における密着性に優れる。
【0046】
[機能性層]
本実施形態における機能性層は、接着層付き機能性層において上述したものと同様のものを用いることができる。
【0047】
[接着層AD2-1]
接着層AD2-1は前記機能性層と前記基材とが対向する2つの面の間の少なくとも一部に配置されており、かつ接着層AD2-1は、本発明の効果の観点から以下の(i)の要件を満たすことが好ましい。
(i)25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)は、下限値が0.01以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは1以上、最も好ましくは1.5以上であり、上限値が100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
弾性変形量aに対する塑性変形量bの比が前記範囲内にあることで、接着層付き機能性層の外周端部を加工する際に弾性により機能性層に加わる力を伝えつつ、適切な程度の塑性変形することで接着層が切り離しやすくなる(加工残りが少ない)、及び/又は機能性層と接着層の密着性が維持できると推測される。
【0048】
なお、塑性変形量bの下限値は0を超え、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.05超、特に好ましくは0.1以上であり、上限値は1以下、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
塑性変形量bが前記範囲内にあることで、特に運搬や加工時に硬化性接着層にかかる力による変形、例えばチャックを使って搬送した場合のチャック跡などが軽減される傾向がある。
【0049】
接着層AD2-1は、さらに以下の(ii)の要件を満たすことが好ましい。
(ii)25℃において0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)は、下限値が0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは1以上であり、上限値は5000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、特に好ましくは250以下である。
【0050】
また、25℃における0.1mN荷重の負荷を与えたときのダイナミック硬さ(DHT115-1)が1~100であることも好ましい。
また、25℃において上記の超微小硬度計で測定される0.1mN荷重の除荷過程における押し込み弾性率が108~1010Paであることも好ましい。
【0051】
接着層AD2-1は、さらに以下の(iii)の要件を満たすことも好ましい。
(iii)25℃における貯蔵弾性率は、下限値が0.5MPa以上、好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上であり、上限値が1000MPa以下、好ましくは800MPa以下、さらに好ましくは600MPa以下である。
【0052】
接着層AD2-1の厚さは硬化性接着層AD2の厚さと実質的に同一であり、100μm未満、好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下とすることができる。本実施形態において、接着層AD2-1が設けられていればよく、その厚さの下限値は特に限定されないが、5μm以上であり、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
【0053】
接着層AD2-1は硬化性接着層AD2を硬化して得ることができる。硬化方法としては熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。例えば、後述するように硬化性接着層AD2を基材表面に当接させた後、硬化させることで接着層AD2-1を形成し、接着層AD2-1を介して基材と機能性層を貼り合わせることができる。
【0054】
[基材]
基材は熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、形状もレンズ形状等に限定されない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル共重合体、ポリアミド(ナイロン)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド(ナイロン)樹脂等が好ましい。
熱硬化型樹脂としては、ポリウレアウレタン樹脂、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリ(メタ)(チオ)アクリレート樹脂、アリルジグリシジルカーボネート(ADC)樹脂等が挙げられる。熱硬化型樹脂は、重合反応性化合物を含む重合性組成物を所定の方法で硬化成形することにより得ることができる。重合性組成物に含まれる重合反応性化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリ(チ)オール化合物とを含む。また、基材は無機(光学)ガラスであってもよい。これらの材料は透明性が高い材料であり、光学材料の樹脂基材に好適に用いることができる。なお、これらの材料は単独であっても、これらの複合材料であっても良い。
【0055】
ポリイソシアネート化合物としては、本発明の効果を得ることができれば従来公知の化合物から選択して用いることができ、例えば、WO2011/055540号に例示された化合物を挙げることができる。
【0056】
ポリイソシアネート化合物として、具体的には、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、およびイソホロンイソシアネート等が挙げられ、これらから選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0057】
ポリ(チ)オール化合物のうち、ポリオール化合物としては、本発明の効果を得ることができれば従来公知の化合物から選択して用いることができ、例えば、WO2017/47725号に開示される化合物を用いることができる。
【0058】
ポリチオール化合物としては、本発明の効果を得ることができれば従来公知の化合物から選択して用いることができ、例えば、WO2008/105138号に開示される化合物を用いることができる。
ポリチオール化合物として、具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられ、これらから選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0059】
本実施形態の機能性層付き基材は、接着層付き機能性層を用いており、曲率半径が小さい基材表面においても機能性層と基材との密着性に優れ、またレンズフロントカーブ6C以上の基材表面においても機能性層と基材との密着性に優れる。なお曲率半径が小さい基材表面は例示であり、凹凸がある基材表面への密着性にも優れる。
基材の厚みは、1~20mm程度である。
【0060】
[機能性層付き基材の製造方法]
本実施形態の機能性層付き基材は、特に限定されないが、基材の一方の面に接着層付き機能性層の硬化性接着層AD2を積層し、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射によって硬化性接着層AD2を硬化し接着層AD2-1を形成することにより調製することができる。
【0061】
その後、機能性層付き基材に対しアニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50~150℃の間で行われるが、90~140℃で行うことが好ましく、90~130℃で行うことがより好ましい。
本実施形態の機能性層付き基材は、接着層付き機能性層を用いており、アニール時においても機能性層と基材との密着性に優れる。また機能性層付き基材の上に、必要に応じて、ハードコート層、反射防止層、防曇層、防汚染層、撥水層、調光層を形成することもできる。
【0062】
<積層体>
本実施形態の積層体は、保護層と、機能性層と、接着層AD2-1と、基材とをこの順で備え、前記接着層AD2-1は前記機能性層と前記基材とが対向する2つの面の間の少なくとも一部に配置されている。
【0063】
本実施形態の積層体によれば、機能性層と基材との密着性、特に曲率半径が小さい箇所における密着性に優れ、さらにアニール時の外周端部における密着性に優れる。レンズなどの基材の外周加工時における外周端部の加工残りの発生が抑制され、削りカスの量が低減される。
なお、機能性層、接着層AD2-1、および基材は前記の実施形態と同一であるので説明を省略する。
【0064】
[保護層]
保護層は、以下の(a)、(b)および(c)の要件を満たすことが好ましい。
(a)厚さの下限値が10μm以上、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、上限値が1mm以下、好ましくは0.8mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
(b)25℃において、0.1mN荷重に対する弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)は、下限値が0.1以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上、最も好ましくは1.5以上であり、上限値が10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは2以下である。
(c)25℃において、0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)は、下限値が400以上、好ましくは500以上、さらに好ましくは550以上であり、上限値が3000以下、好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下である。
保護層が(a)、(b)および(c)の要件を全て満たすことにより、レンズの外周加工時における外周端部の加工残り及び/又はチッピングの発生が抑制される。
【0065】
また、25℃における0.1mN荷重の負荷を与えたときのダイナミック硬さ(DHT115-1)が70~150であることも好ましい。
また、25℃において上記の超微小硬度計で測定される0.1mN荷重の除荷過程における押し込み弾性率が5×109~2×1010Paであることも好ましい。
【0066】
保護層は、本発明の効果の観点から、さらに以下の(d)の要件を満たすことが好ましい。
(d)鉛筆硬度は、下限値がHB以上、好ましくはH以上、さらに好ましくは2Hであり、上限値が9H以下、好ましくは6H以下である。
【0067】
保護層はヤング率が、下限値は好ましくは0.3GPa以上、さらに好ましくは0.5GPa以上、さらに好ましくは1GPa以上、上限値は10GPa以下が好ましく、さらに好ましくは8GPa以下、さらに好ましくは5GPa以下である。
ヤング率がこの範囲であると、保護層の柔軟性および靱性に優れるため、レンズの外周加工時における外周端部の加工残りの発生がさらに抑制される。
【0068】
保護層は、樹脂組成物をスピンコート、ディップコート、キャストなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。塗布方法は、保護層の膜厚や表面形状により適宜選択され、例えば、形成される保護層の厚さが300μm程度の場合、スピンコートやディップコート等が好ましく、それ以上の厚さの場合は、表面形状の観点からキャスト法が好ましい。
【0069】
なお、保護層は、樹脂シートまたはフィルムを積層させて調製することもできる。
保護層が、樹脂シートまたはフィルムを積層する場合は、この樹脂シートまたはフィルムは、以下の(e)の要件を満たすことが好ましい。
(e)屈曲性は下限値が0mm以上、好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上であり、上限値は100mm以下、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは40mm以下である。
なお、屈曲性とは、ある直径の円柱に樹脂シートまたはフィルムを巻き付けたときに、樹脂シートまたはフィルムに破断・割れを生じることなく巻ける円柱の最小径を意味する。
保護層を構成する樹脂シートまたはフィルムが(e)の要件を満たすことにより、レンズの外周加工時における外周端部の加工残りの発生がより抑制される。
【0070】
保護層に含まれる硬化性樹脂としては、エポキシ系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタン系、アクリル系、チオウレタン系に代表される光学材料等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0071】
保護層は、通常、樹脂組成物をスピンコート、ディップコート、スプレーコート、カーテンコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成することができる。またキャスト法で形成することもでき、キャスト法で形成する場合は、保護層は、(チオ)ウレタン、ウレタンウレア、(メタ)アクリル、エポキシ、ウレタン(メタ)アクリレート、エピスルフィド、アリルジグリシジルカーボネートを含むのが好ましい。機能性層付き基材の機能層上に保護層を形成することにより、本実施形態の積層体を得ることができる。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、保護層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0072】
本実施形態においては、保護層と機能性層との間に、接着層AD1-1を備えることが好ましい。前記接着層AD1-1は以下の(i)の要件を満たすことが好ましい。
(i)25℃、0.1mN荷重における弾性変形量aに対する塑性変形量bの比(b/a)は、下限値が0.01以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは1以上、最も好ましくは1.5以上であり、上限値が100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
弾性変形量aに対する塑性変形量bの比が前記範囲内にあることで、接着層付き機能性層の外周端部を加工する際に弾性により機能性層に加わる力を伝えつつ、適切な程度の塑性変形することで接着層が切り離しやすくなる(加工残りが少ない)、及び/又は機能性層と接着層の密着性が維持できると推測される。
【0073】
なお、塑性変形量bは、下限値が0を超え、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.05超、特に好ましくは0.1以上であり、上限値は1以下、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。
塑性変形量bが前記範囲内にあることで、特に運搬や加工時に硬化性接着層にかかる力による変形、例えばチャックを使って搬送した場合のチャック跡などが軽減される傾向がある。
【0074】
接着層AD1-1は、さらに以下の(ii)の要件を満たすことが好ましい。
(ii)25℃において0.1mN荷重を除荷した後のダイナミック硬さ(DHT115-2)は、下限値が0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは1以上であり、上限値は5000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは500以下、特に好ましくは250以下である。
【0075】
また、90℃で2時間硬化させた後、25℃における0.1mN荷重の負荷を与えたときのダイナミック硬さ(DHT115-1)が1~100であることも好ましい。
また、25℃において上記の超微小硬度計で測定される0.1mN荷重の除荷過程における押し込み弾性率が108~1010Paであることも好ましい。
【0076】
接着層AD1-1は、さらに以下の(iii)の要件を満たすことも好ましい。
(iii)25℃における貯蔵弾性率は、下限値が0.5MPa以上、好ましくは1MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上であり、上限値を1000MPa以下、好ましくは800MPa以下、さらに好ましくは500MPa以下である。
接着層AD1-1は、硬化性接着層AD1を硬化して得ることができ、硬化性接着層AD1としては硬化性接着層AD2を用いることができる。硬化性接着層AD2は、硬化性接着層AD1と同一でも異なっていてもよい。
【0077】
本実施形態においては、接着層付き機能性層(硬化性接着層AD2/機能性層)の機能性層上に硬化性接着層AD1を設け、基材上に硬化性接着層AD2を貼り合わせた後に硬化して、接着層AD2-1とともに接着層AD1-1を形成することができる(機能性層付き基材)。あるいは、接着層付き機能性層(硬化性接着層AD2/機能性層)の硬化性接着層AD2を基材上に貼り合わせ、さらに機能性層上に硬化性接着層AD1を設けた後に硬化して、接着層AD2-1とともに接着層AD1-1を形成することもできる(機能性層付き基材)。
【0078】
そして、機能性層付き基材の接着層AD1-1上に前記樹脂組成物を塗布し硬化する方法、キャスト法で接着層AD1-1上に前記樹脂組成物を積層し硬化させる方法、あるいは接着層AD1-1上に前記樹脂シート等を貼り合わせる方法等により保護層を形成することができる(積層体)。
【0079】
これにより、保護層と機能性層との密着性が改善され、レンズの外周加工時における外周端部の加工残りの発生がより抑制され、削りカスの量がより低減される。
保護層の上には、必要に応じてハードコート層、反射防止層、防曇層、防汚染層、撥水層、調光層を形成することもできる。
【0080】
<光学部品>
本実施形態の光学部品は、上述の機能性層付き基材または積層体から構成することができ、接着層AD2-1が、前記レンズの表面の少なくとも一部と接することができる。基材の屈折率が1.49以上のレンズであることが好ましい。
【0081】
光学部品としては、機能性層が偏光性を備える偏光レンズ、機能性層が特定波長吸収性を備えるブルーライトカットレンズ、特定波長カットレンズ(ネオコントラスト(R)(585nmカット))、機能性層が調光性を備えるフォトクロミックレンズ、等を挙げることができる。なお、一般的には、機能性層が積層されたレンズ(基材)面が対物面であり、その裏面が対眼面となる
【0082】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
本実施例においては、以下の方法により物性を測定した。
<タック性>
25℃にて、580mm角、厚さ10mmの平らなガラス板を2枚使い、1枚を基底板とし、その上にもう1枚を載せ、その上に5cm角の硬化性接着層AD2を設置した。硬化性接着層AD2の上に32gの鋼球を載せ、10秒間保持した後、上のガラス板の片側端面を徐々に上げて行き、硬化性接着層AD2から鋼球が転がり落ちる角度DEG(片側を上げたその上昇長さ(高さ)とガラス板長(斜辺)とし逆三角関数ARC SIN(高さ/斜辺)により角度を求めた)を計測し、タック性として評価した。なお、32g鋼球をガラス板に載せた時の転がる角度は0.49度であった。
【0085】
<貯蔵弾性率>
貯蔵弾性率測定装置(DVA(アイティー計測社製)、RSA-3(TI インスツルメンツ社製)、DMA-6100(セイコーインスツルメント社製)Anton Paar社製の測定装置(Physica MCR301)により、周波数1Hz、25℃で硬化後の接着層の貯蔵弾性率を測定した。
【0086】
<平行光線透過率(単位:%)>
Haze Meter(日本電色工業社製、モデル:NDH 2000)を用いて、2mm厚の接着層の全光線透過率を測定した。なお接着層にMD方向やTD方向といった異方性がある場合は、TD方向とMD方向とでそれぞれ全光線透過率を測定し、その平均値を接着層の全光線透過率とした。
<鉛筆硬度試験>
ISO15 184で規定されるPencil Test(鉛筆硬度試験)を実施し、保護層の鉛筆硬度を確認した。
【0087】
<屈曲性>
1mm~100mm直径の円柱を1mm間隔で準備しておき、円柱に膜・フィルムを押し当て巻き付けたときに、膜・フィルムに破断・割れを生じることなく巻ける円柱の最小径を屈曲性とした。屈曲性0mmとは折り曲げた時に割れないことを意味する。
<ヤング率>
ヤング率(曲げ弾性率)は、JIS A5905に記載された曲げ強さ試験を参考にして、23℃、50%RHの環境下で、試験片厚み:3mm、試験片幅:50mm、試験片長さ:150mm、スパン間距離:100mm、曲げ速度:50mm/分の条件でMD方向とTD方向に対しそれぞれ1点ずつ測定し、それらの平均値を採用した。
【0088】
<微小硬度計試験>
測定機:ダイナミック超微小硬度計DUH-W201S(島津製作所社製)
圧子:ダイヤモンド製三角錐圧子(稜間角115°)
温度:25℃
湿度:50%
最大荷重:0.1mN
深さ1:設定荷重(0.1mN)まで負荷を与えたときの最大押し込み量(μm)
(最大押し込み量は基材層等の下層の影響のないところで測定した。)
深さ2:除荷した後の押し込み深さ(μm)・・・(塑性変形量)
深さ1-深さ2(μm) ・・・(弾性変形量)
ダイナミック硬さ(DHT115-1):深さ1と最大荷重(0.1mN)により以下の式から求める。
ダイナミック硬さ(DHT115-2):深さ2と最大荷重(0.1mN)により求める。
式:DHT115=3.8584・P/D2
DHT115:稜間角115°の三角錐圧子によるダイナミック硬さ
P:試験荷重(mN)
D:押し込み深さ(μm)
押し込み弾性率(Pa):除荷過程における初期の弾性回復の度合いから評価される値であり、上述の式を用いて算出される。
【0089】
<外周端部の密着性(貼り付け後、硬化前):表中のハイカーブレンズ外周端部の密着(6C以上 貼着時)に対応>
実施例に記載の条件で、硬化性接着層AD2-1付き機能性層を、接着層が6Cのレンズの凸面に接するようにして貼り付けた後に、10分経過後にレンズの端部外周部において基材から機能性層が剥がれているかどうかを以下の基準で評価した。
〇:レンズ全周端部において基材からの剥がれが目視でほとんど認められない、または、レンズ全周の1/4以下の領域に、わずかに剥がれが目視でわずかに認められるが気にならない程度(外周端部から中心方向への剥がれ0~0.3mm)
△:レンズ外周の少なくとも一部の端部において、基材からの剥がれが目視で認められる(外周端部から中心方向への剥がれ2~3mm未満)
×:レンズ外周の少なくとも一部の端部において、基材からの剥がれが目視で顕著に認められる(外周端部から中心方向への剥がれ3mm以上)
【0090】
<外周端部の密着性(硬化後、玉型加工前):表中のレンズ外周部の密着(アニール時)に対応>
前記外周端部の密着性(貼り付け後、硬化前)で貼り合わせ、硬化して得られたレンズを120℃2時間アニール処理した後、基材に対する機能性層の密着性を評価した。評価基準は、外周端部の密着性(貼り付け後、硬化前)と同じである。
【0091】
<外周端部の密着性(玉型加工時):表2の加工残りに対応>
保護層を備えないレンズを玉型加工した時の基材に対する機能性層の密着性を評価した。評価基準は、外周端部の密着性と同じである。
保護層を備えるレンズを玉型加工し、レンズの端部外周部における保護層および機能性層の密着性を以下の基準で評価した。
〇:削り残り(バリ、カス付着)、および外観不良(剥がれ、割れ)が認められない。
△:削り残りは認められないが、外観不良は外周端部から中心方向に向かって0.3mm以下の範囲で認められた。
×:削り残りが認められ、さらに外観不良は外周端部から中心方向に向かって0.3mmを超えて認められた。
【0092】
<加工時チャック跡>
実施例に記載の条件で、接着層付き機能性層を貼り付けたレンズを玉型加工した後に、加工時に前記レンズを固定するチャックの跡が接着層に歪となって、目視で機能性層に残っているかどうかで評価した。
【0093】
<加工残りの評価>
カーブジェネレータ(サティスロー社製)で、度付け裏面研削する前に外周端部を整える(研削する)際に、機能性層の外周に加工残りが生じ毛羽立つ(ささくれ状、これをフラなどともいう。)か否かで評価した。
×:加工時に機能性層が変形・レンズからはがれる、または加工残りの最大の長さが1mmを超える
△:加工残りの最大の長さが0.5mmを超え1mm以下
〇:加工残りの最大の長さが0.5mm以下
◎:加工残りが目視で確認できず、研削面が滑らか
エッジャー(玉型加工機: NIDEK社LEX1000)での平擦り加工で外観不良(剥がれ、割れ)、削り残り(バリ、カス付着)、異常停止(バリ、カス付着による探針への引っ掛かり)がない。カス付着に関しては手で容易にとれるものは〇とした。
【0094】
[実施例1]
公知の技術である押出フィルム成形法にて、乾燥したペレット状のポリエチレンテレフタレートに二色性色素、その他、色調整用の色素、機能性材料、その他添加剤などを練り込みながらTダイより押出し、フィルムを成形、一軸延伸して、ポリエチレンテレフタレート製偏光フィルム[ガラス転移温度70.7℃](厚み100~140ミクロン)を得た。その表面に、ポリエステル系熱硬化性シート用接着剤(ニッカン工業社製ニカフレックス(R)SAFS、タック性0.9度、硬化後の貯蔵弾性率400MPa)を100℃でラミネート、または直接塗布乾燥し、硬化性接着層AD2付き機能性層を得た。
次に、m-キシリレンジイソシアネート50.6重量部、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3、6、9-トリチアウンデカンと4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3、6、9-トリチアウンデカンと5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3、6、9-トリチアウンデカンとの混合物49.4重量部、硬化促進剤としてジブチル錫ジクロライド0.01重量部、離型剤としてZelec UN(登録商標、Stepan社製)0.1重量部、および紫外線吸収剤としてSeesorb 709(シプロ化成社製)0.05重量部を攪拌して溶解させた後、減圧下で脱泡処理して、調製直後に注入用モノマー混合物として供した。攪拌溶解1時間後の20℃における粘度は30mPa・sであった。この注入用モノマー混合物(レンズ材料1)をレンズ成形用の鋳型に注入し、オーブン中16時間かけて25℃から100℃まで昇温し、その後100℃で10時間維持し、徐冷の後、オーブンからレンズ注型用鋳型を取り出した。レンズ注型用鋳型からレンズを離型し、115℃で2時間アニールして外径75φ曲率半径88mm、レンズ中心の厚さ15mmのセミフィニッシュレンズ形状のレンズを得た。
前記の曲率半径88mmのレンズの凸面に、前記硬化性接着層AD2付き機能性層の接着層AD2をレンズの凸面に当接させ、160℃で加熱、凸面に沿うように伸ばしながら貼着して積層し、90℃2時間硬化して機能性層、接着層AD2-1、レンズ(基材)をこの順で備える機能性層付き基材(以下、基材にレンズを用いた場合は「機能性層付きレンズ」ともいう。)を作製した。接着層AD2-1の屈折率(JIS K7142)は1.67であった。
90℃2時間の硬化後も外周の剥がれや接着ズレは生じなかった。
更に、硬化後のこの機能性層付きレンズを120℃2時間オーブンに投入しアニールを行ったところ、外周の剥がれや接着ズレは生じなかった。
続いて、カーブジェネレーター(サティスロー社製)にて、裏面を研削する前に外周を研削して整え、外径70φ、レンズ中心の厚さが2mmレンズを得た。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて乾式モード幅49mm、高さ28mmの玉型加工を行い、機能性層とレンズ(基材)の密着性等について評価した。
評価結果を表1に示す。
【0095】
[実施例2]
実施例1の手順で材料を市販のレンズ用材料RAV 7AT(ジアリル2,2‘-オキシジエチルジカーボネート、ACOMON社製)に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmのRAV 7AT基材(レンズ)を作製した。
実施例1と同様に90℃2時間、接着層を硬化したが、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて乾式モードにて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行い、機能性層とレンズ(基材)の密着性等について評価した。
機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
評価結果を表1に示す。
【0096】
[実施例3]
ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド 31.8質量部に、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン0.007質量部、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン0.032質量部を溶解させさらに、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、および5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分とする混合物3.2質量部を加えて20℃で30分間攪拌して調合液を調製した。この調合液を600Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、中心厚2mm、直径80mmのプラノー用ガラスモールドに注入した。このガラスモールドを30℃から19時間かけて少しずつ昇温し80℃まで上昇させ、80℃で2時間保温した。室温まで冷却させて、ガラスモールドから外し、レンズを得た。得られたレンズを更に120℃で3時間アニールして、外径75φ、曲率半径88mm、レンズ中心の厚さ2mmのセミフィニッシュレンズ形状のレンズ(屈折率1.74)を得た。
実施例1と同様に接着層付機能性層を基材に延ばしながら貼り合せ、90℃2時間硬化して、屈折率1.74の機能性層、接着層AD2-1、レンズ(基材)をこの順で備える機能性層付きレンズを得た。
90℃2時間、硬化性接着層AD2を硬化したが、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて乾式モードにて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層及び機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
評価結果を表1に示す。
【0097】
[実施例4]
実施例1の手順で材料をレンズ材料2(2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート))に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmの基材(レンズ)を作製した。
機能性層にはユーピレックス(ポリイミドフィルム、宇部興産社製、膜厚50ミクロン)を用い、実施例1と同様の手法にて、接着層付き機能性層を得たのち、レンズ材料2の基材に延ばしながら貼りつけ、90℃2時間硬化して、機能性層付レンズを得た。
実施例1と同様に90℃2時間、硬化性接着層AD2を硬化したが、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて乾式モードにて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層及び機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
評価結果を表1に示す。
【0098】
[実施例5]
実施例1の手順で材料をレンズ材料2に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmの基材(レンズ)を作製した。
機能性層には市販のTAC/PVA/TAC(住友ベークライト社製、総厚200ミクロン(PVA層:100μm、両サイドのTAC層:50μm))を用い、実施例1と同様の手法にて、接着層付機能性層を得たのち、レンズ材料2の基材に延ばしながら貼りつけ、90℃2時間硬化して、機能性層付レンズを得た。
実施例1と同様に90℃2時間、硬化性接着層AD2を硬化したが、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)を用いて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層及び機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
評価結果を表1に示す。
【0099】
[実施例6]
実施例1の手順で材料をレンズ材料2に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmの基材(レンズ)を作製した。
機能性層には市販のPC/PVA/PC(住友ベークライト社製、総厚700ミクロン(PVA層:60μm、両サイドのPC層:320μm))を用い、実施例1と同様の手法にて、接着層付き機能性層を得たのち、レンズ材料2の基材に延ばしながら貼りつけ、90℃2時間硬化して、機能性層付レンズを得た。
実施例1と同様に90℃2時間、硬化性接着層AD2を硬化したが、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて乾式モードにて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層及び機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
評価結果を表1に示す。
【0100】
[実施例7]
実施例1の手順でポリエチレンテレフタレート製偏光フィルム[ガラス転移温度70.7℃](厚み100~140ミクロン)の表面に、ニッカン工業社製SAFN(硬化後の貯蔵弾性率:400MPa)を100℃でラミネート、または直接塗布乾燥し、硬化性接着層AD2付き機能性層を得た。さらに、材料をレンズ材料2に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmの基材(レンズ)を作製した。
実施例1と同様に90℃2時間、接着層を硬化したが、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)を用いて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行い、機能性層とレンズ(基材)の密着性等について評価した。
機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
評価結果を表1に示す。
【0101】
[比較例1]
実施例1の手順で材料をレンズ材料2に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmの基材(レンズ)を作製した。
接着層AD2-1として市販の粘着層厚100ミクロンのアクリル系粘着剤(藤森工業社製)(タック性 11.7 度、貯蔵弾性率0.03MPa)を用い、室温でラミネートすること以外は、実施例1と同様の手法にて、接着層付き機能性層を得たのち、レンズ材料2の基材に延ばしながら貼りつけ、機能性層付きレンズを得た。
粘着層には熱硬化は必要ないので、120℃2時間アニールを行ったところ、中央部直径5cm程度残るのみで周辺部はほとんど剥がれていた。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて乾式モードにて、幅40mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、削るために装置にマウントするチャック痕が付いていた。
評価結果を表1に示す。
【0102】
[比較例2]
実施例1の手順で材料をレンズ材料2に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmの基材(レンズ)を作製した。
接着層AD2-1として市販の粘着層厚25ミクロンのアクリル系粘着剤(日東電工社製)(タック性 28.9 度、貯蔵弾性率0.03MPa)を用い、室温でラミネートすること以外は、実施例1と同様の手法にて、接着層付き機能性層を得たのち、レンズ材料2の基材に延ばしながら貼りつけ、機能性層付レンズを得た。
粘着層には熱硬化は必要ないので、120℃2時間アニールを行ったところ、中央部直径3cm程度残るのみで周辺部はほとんど剥がれていた。
評価結果を表1に示す。
【0103】
[比較例3]
実施例1の手順で材料をレンズ材料2に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmの基材(レンズ)を作製した。
硬化性接着層AD2として光学部品用エポキシ系液体接着剤GA-R-1/GA-H-1(キャノン社製)(硬化後の貯蔵弾性率5GPa、硬化していない状態では32gの鋼球が液体接着剤に沈降してしまうため前記方法でのタック性は評価できない。また前記液体接着剤を配置した機能性層を25℃において鉛直方向に対して平行にすると液体接着剤が流動して機能性層から少なくとも一部が脱離する)を用い、実施例1で使用した機能性層を曲げ加工のみ行い、基材に載せるように貼り合せ、80℃3時間硬化させ、機能性層付レンズを得た。
機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)を用いて、幅40mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、
機能性層と基材の間で剥離があり、加工残りが見受けられた。
評価結果を表1に示す。なお表1、及び後述する表2においてシート状接着剤と記載があるものは機能性層又は基材に配置された硬化前の状態で、25℃において鉛直方向と平行にして20分ほど維持しても前記シート状接着剤が大きく流動して機能性層又は基材からシート状接着剤の成分が液状になって脱離することがないものをいう。
【0104】
【0105】
[実施例8]
実施例1と同様の方法で硬化性接着層AD2付き機能性層を作製し、さらに機能性層のAD2が配置されている面の裏面に、熱硬化性シート用接着剤(ニッカン工業社製ニカフレックス(R)SAFS)を貼合または塗布し、硬化性接着層AD1、機能性層、接着層AD2をこの順で備える接着層付き機能性層を作製した。
前記機能性層を、実施例1と同様の方法で基材(レンズ)と貼り合わせ、90℃2時間硬化させて、機能性層付きレンズを作製し、硬化生成した接着層AD1-1の表面に以下の方法で保護層を作成した。エポキシアクリル系ハードコート剤(ダイセル社製、163)を、機能性層付きレンズの凸面のカーブに見合った凹面を有するガラス製のモールドの凹面に2g入れ、その上から前記機能性層付きレンズを載せ押し付けて反転し、1000mJ/cm2の照射強度でUVを照射して硬化し、ガラス製モールドを離形して、接着層AD1-1上に0.3mm厚の保護層が形成された機能性層付きレンズを作製した。
このようにして、保護層、接着層AD1-1、機能性層、接着層AD2-1、基材をこの順で備える保護層付機能層付レンズ(積層体)を得た。
実施例1と同様の方法で、この積層体に対して120℃2時間アニールを行った。外周の剥離などは認められなかった。
実施例1と同様の方法でカーブジェネレーターによる外周加工も加工残りがほとんどなく良好であった。
実施例1と同様の方法で乾式モードにて玉型加工を行ったところ、保護層および機能性層の剥がれもなくまた機能性層の加工残りもなく良好であった。
【0106】
[実施例9]
実施例7と同様の方法で、硬化性接着層AD1、機能性層、硬化性接着層AD2をこの順で備える接着層付き機能性層を作製した。基材(レンズ)は、既に公知の方法にて、ペレット状のポリカーボネートを乾燥したのち射出成型にて、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmのポリカーボネート基材(レンズ)を作製した。
前記機能性層を、実施例1と同様の方法でポリカーボネート基材(レンズ)に延ばしながら貼り合わせ、90℃2時間硬化して、機能性層付きレンズを作成し、硬化生成した接着層AD1-1の表面に、エポキシアクリル系ハードコート剤(ダイセル社製、163)を回転数800rpmでスピンコート法にて塗布し、1000mJ/cm2の照射強度でUVを照射して硬化させ、0.1mmの保護層を作製し、保護層、接着層AD1-1、機能性層、接着層AD2-1、基材(レンズ)をこの順で備える保護層付機能層付レンズ(積層体)を得た。
続いて、積層体をニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)を用いて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行い、機能性層とレンズ(基材)の密着性等について評価した。
保護層と機能性層及び機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
【0107】
[実施例10]
実施例1と同様の方法で基材を、実施例7と同様の方法で、硬化性接着層AD1、機能性層、硬化性接着層AD2をこの順で備える接着層付き機能性層を作製し、基材と延ばしながら貼り合せ、90℃2時間硬化して、接着層AD1-1付機能性層付基材(レンズ)を作製した
硬化生成した接着層AD1-1の表面に以下の方法で保護層を形成した。ウレタンアクリレート(DIC社製、V-4001EA)を、機能性層付きレンズ凸面のカーブに見合った凹面を有するガラス製のモールド凹面に2g入れ、その上から前記機能性層付きレンズを載せ押し付けて反転した後、1000mJ/cm2の照射強度でUVを照射して硬化し、ガラス製モールドを離形して、接着層AD1-1上に0.5mm厚の保護層が形成された保護層付機能層付レンズ(積層体)を作製した。
実施例1と同様の方法で、この積層体を120℃2時間アニールした。外周の剥離などは認められなかった。
実施例1と同様の方法でカーブジェネレーターによる外周加工も加工残りがほとんどなく良好であった。
実施例1と同様の方法で乾式モード玉型加工を行ったところ、保護層および機能性層の剥がれもなくまた機能性層の加工残りもなく良好であった。
【0108】
[実施例11]
実施例1の手順で材料をレンズ材料2に変更し、公知の作製法に従い、75φ、レンズ中心の厚さ2mm、曲率半径88mmの基材(レンズ)を作製した。
また、実施例7と同様の方法で、硬化性接着層AD1、機能性層、硬化性接着層AD2をこの順で備える接着層付き機能性層を作製し、基材に延ばしながら貼り合せ、90℃2時間硬化して、接着層AD1-1付機能性層付レンズを作製した。
接着層AD1-1付機能性層付レンズの接着層AD1-1の表面に以下の方法で保護層を作成した。レンズ材料2を、機能性層付きレンズの凸面のカーブに見合った凹面を有するガラス製のモールドの凹面の外周部に0.5mmのスペーサーを載せ、このガラスモールドの凹面に4g入れ、その上から機能性層付きレンズを載せ、実施例1と同様に30℃から115℃まで12時間かけて徐々に昇温し硬化させ、ガラス製モールドを離形して、接着層AD1-1上に0.3mm厚の保護層が形成された保護層付機能層付レンズ(積層体)を作製した。
硬化後、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、積層体をニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層及び機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
【0109】
[実施例12]
実施例11の硬化性接着層AD1をニッカン社SAFSの代わりに、ソテック社アシスト7M(ウレタンエラストマー系熱硬化樹脂)、硬化性接着層AD2をニッカン社SAFN(ウレタン系)に変更して以下のように保護層付きレンズを作製した。
硬化性接着層AD2付き機能性層(片面にニッカン社SAFNを8μm積層した機能性層)を、AD2側がレンズ基材の凸面側になる様に、他の実施例同様に加熱し曲げながら貼り付け、AD2層を他の実施例と同様に加熱硬化した。次いで、アシスト7Mをトルエンにて6wt%に希釈し、機能性層の表面にスピンコート法にて10μm塗工乾燥して90℃120分硬化させて、接着層AD1-1、機能性層、接着層AD2-1、およびレンズ基材がこの順で積層された接着層AD1-1付き機能層付きレンズを作製した。
接着層AD1-1付き機能層付きレンズの接着層AD1-1の表面に、実施例11と同様にレンズ材料2の保護層を以下の方法で作成した。レンズ材料2を、機能性層付きレンズの凸面のカーブに見合った凹面を有するガラス製のモールドの凹面の外周部に0.5mmのスペーサーを載せ、このガラスモールドの凹面にレンズ材料2を4g入れ、その上から機能性層付きレンズを載せ、実施例1と同様に30℃から115℃まで12時間かけて徐々に昇温し硬化させ、ガラス製モールドを離形して、接着層AD1-1上に0.3mm厚の保護層が形成された機能層付レンズ(積層体)を作製した。
硬化後、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、機能性層付きレンズをニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層及び機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
【0110】
[実施例13]
実施例11の接着層AD1をニッカン社SAFSの代わりにソテック社アシスト7M(ウレタンエラストマー系熱硬化樹脂)に変更して、以下のように保護層付きレンズ基材を作製した。
硬化性接着層AD2付き機能性層(片面にニッカン社ニッカフレックスSAFSを25μm積層した機能性層)を、AD2側をレンズ基材の凸面側になる様に、他の実施例同様加熱し曲げながら貼り付け、AD2層を他の実施例と同様に加熱硬化し、アシスト7Mをトルエンにて6wt%に希釈しスピンコート法にて10μm塗工乾燥して90℃120分硬化させて、接着層AD1-1(接着層AD1を硬化した層)、機能性層、接着層AD2-1、およびレンズ基材がこの順で積層された接着層AD1-1付き機能層付きレンズを作製した。
この接着層AD1-1付機能性層付レンズの接着層AD1-1の表面に実施例11と同様にレンズ材料2の保護層を以下の方法で作成した。レンズ材料2を、機能性層付きレンズの凸面のカーブに見合った凹面を有するガラス製のモールドの凹面の外周部に0.5mmのスペーサーを載せ、このガラスモールドの凹面にレンズ材料2を4g入れ、その上から機能性層付きレンズを載せ、実施例1と同様に30℃から115℃まで12時間かけて徐々に昇温し硬化させ、ガラス製モールドを離形して、接着層AD1-1上に0.3mm厚の保護層が形成された機能層付レンズ(積層体)を作製した。
硬化後、特に剥がれや機能層のズレは認められなかった。また、120℃2時間アニールでも剥がれやズレは認められなかった。
続いて、積層体をニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層及び機能性層と基材との剥がれもなく、機能性層の加工残りもなく良好であった。
【0111】
[比較例4]
実施例11のレンズ材料2を荒川化学社製ビームセット575Bに変更し、スピンコート法にて塗布し、1000mJ/cm2の積算量でUVを照射し硬化し、0.3mmの保護層を形成した以外は、実施例11と同様に保護層が形成された機能層付レンズ(積層体)を作製した。
硬化した保護層にはクラックが数本入っていた。
積層体をニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層の外周部にチッピングが発生し、剥がれおよび機能性層の削り残りがあった。
【0112】
[比較例5]
実施例12のレンズ材料2をスリーボンド社3121Dに変更し、スピンコート法にて塗布し、3000mJ/cm2の積算量でUVを照射し硬化し、0.3mmの保護層を形成した以外は、実施例12と同様に保護層が形成された機能層付レンズ(積層体)を作製した。
硬化した保護層にはクラックが数本入っていた。
積層体をニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層の削り残りが外周部のレンズ凸側に逃げ、剥がれがあった。
【0113】
[比較例6]
実施例12のレンズ材料2をスリーボンド社3043Bに変更し、スピンコート法にて塗布し、3000mJ/cm2の積算量でUVを照射し硬化し、0.3mmの保護層を形成した以外は、実施例12と同様に保護層が形成された機能層付レンズ(積層体)を作製した。
硬化した保護層にはクラックが数本入っていた。
積層体をニデック社製のエッジャー(玉型加工機)(LEX-1000)にて、幅49mm、高さ28mmの乾式モードにて玉型加工を行った結果、保護層と機能性層の削り残りが外周部のレンズ凸側に逃げ、剥がれがあった
【0114】
【0115】
この出願は、2018年9月26日に出願された日本出願特願2018-180714号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。