(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 1/32 20060101AFI20250210BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20250210BHJP
E06B 9/52 20060101ALN20250210BHJP
【FI】
E06B1/32
E06B5/00 B
E06B9/52 B
(21)【出願番号】P 2021013052
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 大輝
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196794(JP,A)
【文献】特開2015-007343(JP,A)
【文献】特開2017-193848(JP,A)
【文献】特開2007-146442(JP,A)
【文献】特開2018-044351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B1/00-1/70
5/00
9/52-9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体及び前記枠体内に配置される障子を有する建具において、
前記枠体は、金属及び樹脂により構成される複合サッシであり、
前記枠体の少なくとも一辺を構成する枠部は、
断面視略L字状の樹脂枠部と、前記樹脂枠部よりも外周側に配置される金属製の金属枠部と、を有し、
前記樹脂枠部は、前記枠体の外周側から内周側に向かって起立する起立部と、前記起立部の内周側の端部から前記障子の外縁よりも内周側かつ室内側で前記障子側に向かって突出する樹脂製の室内側突出部
と、を有し、
前記金属枠部は、前記起立部に沿って延び、前記起立部が係合する係合片を有し、
前記室内側突出
部は、
前記係合片に係合し前記障子側の先端まで延びる下面と、前記下面から上方に離れた位置で見込方向に延びる上面との間に形成される内部が中空のホロー構造部を有する、建具。
【請求項2】
前記室内側突出部は、前記障子のガラスの室内側の面に対向して配置される、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記室内側突出部は、前記樹脂枠部の見込方向に延び、前記金属枠部の見込面から前記枠体の内周方向に間を空けて、前記金属枠部の見込面と対向するように延びる、請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
前記室内側突出部は、前記枠体の四周に設けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開き窓等の建具では、枠体の内周側に障子が配置される。開き窓として、障子が枠体の見込方向の室外側に配置され、障子の室内側から見込方向の室内側に向かって室内側の枠部が延びるように形成されたものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外気温が低い場合、障子と枠体が接する障子の外周側から冷気が伝わって、枠部の室内側へ入り込むことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、枠体及び前記枠体内に配置される障子を有する建具において、前記枠体は、金属及び樹脂により構成される複合サッシであり、前記枠体の少なくとも一辺を構成する枠部は、前記障子の外縁よりも内周側かつ室内側で前記障子側に向かって突出する樹脂製の室内側突出部を有し、前記室内側突出部の室外側の端部は、内部が中空のホロー構造部を有する、建具に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の建具は、建物100の開口部101に配置される縦すべり窓1である。縦すべり窓1は、枠体2と、障子3と、開閉機構4と、リンク部5と、を有する。縦すべり窓1は、複合サッシであり、枠体2及び障子3のそれぞれが金属のアルミニウム及び樹脂で構成され、アルミニウムの部分と樹脂の部分は互いに嵌合等によって接合されている。
【0008】
本明細書において、見付方向とは、縦すべり窓1の正面に向き合って見た場合の左右方向を言い、見込方向とは、縦すべり窓1の室内外方向、すなわち奥行方向を言う。上下方向とは、天地方向を言う。枠体2及び障子3の外周側とは、枠体2及び障子3の外縁側を意味し、内周側とは、枠体2及び障子3の中心側を言う。
【0009】
枠体2は、縦すべり窓1が配置される略矩形状の開口部101の周囲に矩形状に組まれる枠である。枠体2は、枠部としての長尺状の上枠部21と、下枠部22部と、一対の縦枠部23(
図2参照)とを有する。
【0010】
上枠部21は、開口部101の上縁に沿って見付方向に略水平に延びるように配置される型材である。上枠部21は、アルミ上枠部21aと、樹脂上枠部21bと、を有する。アルミ上枠部21aは、下方に向かって突出する係合片211を有する。樹脂上枠部21bは、アルミ上枠部21aの係合片211に係合し、アルミ上枠部21aの室内側の下方を覆う。
【0011】
下枠部22は、開口部101の下縁に沿って見付方向に略水平に延びるように配置される型材である。下枠部22は、金属製の金属枠部としてのアルミ下枠部22aと、樹脂製の樹脂枠部としての樹脂下枠部22bと、を有する。
【0012】
アルミ下枠部22aは、見付方向に沿って延びるアルミニウム製の型材であり、下枠部22の下方、すなわち枠体2の外周側に配置される。アルミ下枠部22aは、室内側と室外側で段差を有して形成され、室外側下段部221と、室内側上段部222と、を有する。室外側下段部221は、下枠部22の室外側かつ枠体2の外周側に配置される。室外側下段部221は、断面視でホロー構造部を有して形成され、開口部101から室外側に突出して配置されている。室外側下段部221は平坦な上面221aを有する。室内側上段部222は、室外側下段部221よりも室内側に配置され、建物100の躯体に固定される。室内側上段部222は、見込面としての上面222aと、樹脂下枠部係合片222fと、を有する。室内側上段部222の上面222aは、室外側下段部221の上面221aよりも上方に位置する。樹脂下枠部係合片222fは、上面222aから上方に突出する。
【0013】
樹脂下枠部22bは、アルミ下枠部22aの上方、すなわちアルミ下枠部22aよりも内周側に配置される。樹脂下枠部22bは、断面視で略L字状に形成され、起立部223と、室内側突出部224と、を有する。
【0014】
起立部223は、アルミ下枠部22aの室内側上段部222の上面222aから上方に起立する板状の部分である。起立部223は、樹脂下枠部係合片222fに係合する。起立部223には、後述する開閉機構4が固定される。
【0015】
室内側突出部224は、下枠部22の室内側で後述する障子3側に向かって突出する。室内側突出部224は、アルミ下枠部22aにおける室内側上段部222の上面222aから枠体2の内周方向、すなわち上方に間を空けて配置され、上面222aと対向するように延びる。室内側突出部224は、起立部223の上端から室外側へ延びる。
【0016】
室内側突出部224は、見付方向が下枠部22の見付方向と略同じ長さ寸法を有し、見込方向が下枠部22の見込方向の略半分前後の長さ寸法を有し、厚さ方向が見込方向の長さ寸法よりも短い薄い略直方体形状を有して形成される。室内側突出部224は、上面部224aと、下面部224bと、室外側端面224cと、起立部接続部224dと、ホロー構造部225と、網戸固定部226と、を有する。
【0017】
上面部224a及び下面部224bは、室内側突出部224における上下に間を空けて略平行に配置される平板状の部分である。室外側端面224cは、上面部224a及び下面部224bの室外側の端部を上下方向に接続する面である。起立部接続部224dは、室外側端面224cに対向する側に位置し、上面部224a及び下面部224bを接続するとともに起立部223に連続する。
【0018】
ホロー構造部225は、室内側突出部224の内部が中空に形成された部分である。ホロー構造部225は、室内側突出部224の上面部224a、下面部224b、室外側端面224c、起立部接続部224dに囲まれて形成される。ホロー構造部225は、室内側突出部224の室外側の端部側と、後述する網戸固定部226を挟んで室内側に形成される。
【0019】
網戸固定部226は、室内側突出部224の上面部224aに形成される凹部である。網戸固定部226は、室外側端面224cよりも室内側に形成され、見付方向に延びる溝である。網戸固定部226には、網戸6の外周を保持する保持部61が挿入される。網戸固定部226は、室内側突出部224の室外側端面224cから少し室内側へ離れた位置で、上面部224aと下面部224bとの間に配置されている。室内側突出部224に対向する樹脂上枠部21bの室外側に、網戸6の上端側を保持する保持部61が配置されている。
【0020】
縦枠部23は、
図2に示すように、開口部101の上下方向に延び、上枠部21及び下枠部22の両端で、上枠部21及び下枠部22を接続するように配置される。縦枠部23は、アルミ縦枠部23aと、樹脂縦枠部23bとを有する。アルミ縦枠部23aは、見込部231と、係合部232と、を有する。見込部231は、開口部101の上下方向に延びる縁に沿うとともに開口部101の上下方向の縁を見込方向に覆う。係合部232は、見込部231における見込方向の略中央部から、及び室内側端部から、それぞれ枠体2の内周側に向かって見付方向に突出する係合片232a、232bを有する。樹脂縦枠部23bは、枠体2の室内側で、アルミ縦枠部23aの見付方向内側に配置される。樹脂縦枠部23bは、アルミ縦枠部23aの係合片232a、232bの見付方向の端部に係合して接続され、見込方向に延びる。
【0021】
障子3は、後述するガラス部34の四周を囲み、枠体2の内周側に開閉可能に配置される。障子3は、框30と、ガラス部34と、を有する。框30は、それぞれが長尺状の上框31、下框32及び一対の縦框33を有する。框30は、内周側に向かって開口した断面視略コの字状に形成される。
【0022】
上框31は、上枠部21の下方に配置される。上框31はアルミ上框部31aと、樹脂上框部31bと、ガラス保持部31cと、を有する。アルミ上框部31aは、断面視略T字状に形成される。アルミ上框部31aは、室外側面311と、上框見込部312と、を有する。室外側面311は、アルミ上枠部21aの室外側の端部の近傍から下方に延びる。上框見込部312は、室外側面311に対して直交する方向に突出し、アルミ上枠部21aの内周側で見込方向に延びる。樹脂上框部31bは、上框見込部312の室内側の端部に係合し、室外側面311に対向して上下方向に延びる。室外側面311と、上框見込部312と、樹脂上框部31bによって、下方に向かって開口する断面視略コの字状の上框31の断面が形成される。この断面視略コの字状の内側に形成される凹部がガラス保持部31cとなる。
【0023】
下框32は、下枠部22の上方に配置される。下框32はアルミ下框部32aと、樹脂下框部32bと、ガラス保持部32cと、を有する。アルミ下框部32aは、断面視略T字状に形成される。アルミ下框部32aは、室外側面321と、下框見込部322と、ホロー構造部324と、を有する。室外側面321は、下枠部22の室外側の端部近傍から上方に延びる平坦な面を有する。下框見込部322は、室外側面321に対して直交する方向に突出し、下框32の内周側で見込方向に延びる。ホロー構造部324は、下框見込部322の下方に配置され、下框見込部322に沿って形成される中空部である。ホロー構造部324は、室外側面321の一部と、下框見込部322と、下框見込部322に対向するホロー見込片3241と、室外側面321に対向するホロー室内側面3242により構成される。
【0024】
樹脂下框部32bは、ホロー室内側面3242に係合し、上下方向に延びる。樹脂下框部32bは、樹脂下枠部係合片222fに対向して配置されている。アルミ下枠部22aの樹脂下框部32bと、アルミ下枠部22aの室内側上段部222における室外側の面とは、気密材91を介して当接している。下框32の室外側面321と、下框見込部322と、樹脂下框部32bによって、上方に向かって開口する断面視略コの字状の下框32の断面が形成される。この断面視略コの字状の内側に形成される凹部がガラス保持部32cとなる。
【0025】
縦框33は、縦枠部23の内周側に配置される。縦框33はアルミ縦框部33aと、樹脂縦框部33bと、ガラス保持部33cと、を有する。アルミ縦框部33aは、室外側面331と、縦框見込部332と、を有する。室外側面331は、アルミ縦枠部23aの室外側の端部の内周側から見付方向に延びる。縦框見込部332は、室外側面331から見込方向に延びる。樹脂縦框部33bは、縦框見込部332の室内側の端部に係合し、室外側面331に対向して見付方向に延びる。室外側面331と、縦框見込部332と、樹脂縦框部33bによって、框30の内周側に向かって開口する断面視略コの字状の縦框33の断面が形成される。この断面視略コの字状の内側に形成される凹部が、ガラス保持部33cとなる。
【0026】
ガラス部34は、ガラス341と、グレーチングチャネル342と、セッティングブロック343と、を有する。ガラス341は、開口部101を塞ぐ面材である。ガラス部34は複層ガラスを有し、室外側と室内側でスペーサー344を挟んで2枚配置されている。グレーチングチャネル342は、2枚のガラスを保持する断面視略コの字状のゴム製のパッキンである。グレーチングチャネル342は、框30のガラス保持部31c、32c、33cに挿入され、ガラス341の端面を保持する。セッティングブロック343は、グレーチングチャネル342と、縦框見込部332との間に配置される軟質樹脂である。
【0027】
図1に示すように、障子3と下枠部22の室内側突出部224との位置関係を見ると、ガラス341の室内側の面に対向して、室内側突出部224が配置されている。室内側突出部224の室外側の端部と、ガラス341の面との距離は、10mm以下である。室内側突出部224と、ガラス341との間は、半密閉空間となっている。室内側突出部224は、障子3の外縁よりも内周側に配置されている。より詳細には、室内側突出部224は、ガラス341の外縁側の端部よりも内周側に配置されている。樹脂下框部32bと、アルミ下枠部22aにおける室内側上段部222の上面222aと、樹脂下框部32bの起立部223とにより、上部に開口した断面視略コの字型の空間が形成されており、金属製のアルミ下枠部22aやアルミ下框部32aから伝わった冷気が溜まりやすい。しかし、室内側上段部222の上面222aの上方に室内側突出部224が配置され、ガラス341と半密閉の位置関係となっていることで、溜まった冷気が移動しにくくなっている。
【0028】
開閉機構4は、オペレーター41と、接続部(図示省略)を有する。オペレーター41は、不図示のハンドルに接続され、ハンドルを回転することで障子3を開閉する。接続部は、オペレーター41と障子3とを接続する機構である。接続部は、オペレーター41を回動させる動きを、障子3と枠体2をと接続するリンク部5に伝えて障子3を開閉する。
【0029】
リンク部5は、枠体2と障子3とを連結する部材であり、アームにより構成される。リンク部5は、
図1に示すように、上枠部21と上框31との間、下枠部22と下框32の間、及び縦枠部23と縦框33との間に配置される。リンク部5は、開閉機構4の操作により、障子3を枠体2の見込方向に移動させる。
【0030】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。枠体2及び枠体2内に配置される障子3を有する縦すべり窓1において、枠体2を、金属及び樹脂により構成される複合サッシにより構成した。枠体2の少なくとも一辺を構成する下枠部22を、障子3の外縁よりも内周側かつ室内側で障子3側に向かって突出する樹脂製の室内側突出部224を含んで構成した。室内側突出部224の室外側の端部を、内部が中空のホロー構造部225を含んで構成した。樹脂よりも金属の方が、熱伝導率が高いため、外気温が低いときは、金属を通して冷気が伝わりやすい。しかし、樹脂製の室内側突出部224が障子3の外縁よりも内周側かつ室内側で見込方向に延びていることで、室内側突出部224が蓋のような役割を果たす。これにより、冷気が室内に入り込むことを遮断しやすくなる。特に、室内側突出部224の室外側の端部にホロー構造部225を設けることにより、冷気が室内側突出部224を通過しにくく、一層冷気が伝わりにくくなる。よって、縦すべり窓1の断熱性が向上する。
【0031】
本実施形態によれば、室内側突出部224を、障子3のガラス341の室内側の面に対向して配置させた。室内側突出部224の室外側の端部にはホロー構造部325が形成されており、内部が中空に形成された樹脂材は、熱を伝えにくい。室内側突出部224をガラス341の室内側の面と対向させることで、ガラス341と室内側突出部224との間に半密閉空間が形成される。これにより、ガラス341の外側から伝わる冷気を遮断しやすくなる。よって、断熱性能が向上する。
【0032】
本実施形態によれば、下枠部22を、枠体2の外周側に配置される金属製のアルミ下枠部22aと、アルミ下枠部22aよりも内周側に配置される樹脂製の樹脂下枠部22bと、を含んで構成した。室内側突出部224を、樹脂下枠部22bの見込方向に延びるように配置し、アルミ下枠部22aの室外側下段部221における上面221aから下枠部22の内周方向に間を空けて、アルミ下枠部22aの室外側下段部221の上面221aと対向して延びるように配置させた。これにより、アルミ下枠部22aの室外側下段部221の上面222aと、樹脂下枠部22bの見込方向に延びる室内側突出部224との間に溜まる冷気に対して、室内側突出部224が蓋をするように配置される。よって、断熱性能が向上する。
【0033】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。室内側突出部224が、下枠部22に形成された例を説明した。室内側突出部は、上枠部21及び縦枠部23に設けられていてもよい。室内側突出部は、枠体2の少なくとも一辺に形成されていればよく、二辺であっても三辺であっても、四周のすべての辺に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 建具、 2 枠体、 3 障子、 22 下枠部(枠部)、 22a アルミ下枠部(金属枠部)、 22b 樹脂下枠部(樹脂枠部)、 224 室内側突出部、 225 ホロー構造部、 341 ガラス