(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】電動アシスト車椅子、駆動ユニット、制御方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61G 5/02 20060101AFI20250210BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20250210BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20250210BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250210BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250210BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20250210BHJP
【FI】
A61G5/02 707
A61G5/04 710
A61G5/04 707
B60L15/00 Z
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2021038120
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】水野 正光
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-002371(JP,A)
【文献】特開2002-078752(JP,A)
【文献】特開2020-006038(JP,A)
【文献】特表2020-509476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00-14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動アシスト車椅子に用いられる駆動ユニットであって、
前記電動アシスト車椅子を走行させる駆動力を発生させる電動モータと、
ハンドリムから車輪に伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサと、
前記電動アシスト車椅子の走行速度に関する信号を出力する速度センサと、
前記電動モータの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記トルクセンサの出力信号および前記速度センサの出力信号を取得し、
前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定し、
測定した前記時間が第1時間以上になった場合、前記電動アシスト車椅子の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始する、駆動ユニット。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記電動アシスト車椅子の走行速度が第1速度未満である場合、前記クルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始せず、
前記走行速度が前記第1速度以上であり、且つ測定した前記時間が前記第1時間以上になった場合、前記クルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始する、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記制御装置は、測定した前記時間が前記第1時間になってから第2時間経過した時の前記電動アシスト車椅子の走行速度を、前記目標速度に設定する、請求項1または2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2時間が経過した後に前記走行速度の上昇が継続した場合、前記走行速度が低下して前記目標速度になったタイミングで、前記走行速度を前記目標速度に維持する制御を開始する、請求項3に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記目標速度は予め設定されている、請求項1または2に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1時間が経過した後に前記走行速度の上昇が継続して前記目標速度よりも高くなった場合、前記走行速度が低下して前記目標速度になったタイミングで、前記走行速度を前記目標速度に維持する制御を開始する、請求項5に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1時間が経過した時の前記走行速度が前記目標速度未満である場合、前記走行速度が前記目標速度になるように前記電動モータを制御した後、前記走行速度を前記目標速度に維持する制御を行う、請求項5に記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記走行速度を前記目標速度に維持する制御中に、前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが前記第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示した場合、
前記走行速度を前記目標速度に維持するためのトルクに前記出力信号の大きさに応じたトルクを加算した大きさのトルクを発生するように前記電動モータを制御する、請求項1から7のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記走行速度を前記目標速度に維持する制御中に、前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが前記第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す前記第1状態が第3時間以上継続した場合、
前記第1状態が前記第3時間継続してから第4時間経過した時の前記走行速度に、前記目標速度を変更する、請求項1
または2に記載の駆動ユニット。
【請求項10】
前記制御装置は、前記ハンドリムに加わる後進側へのトルクが第2所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す第2状態が第5時間継続した場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を終了する、請求項1から9のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項11】
前記制御装置は、前記電動アシスト車椅子の走行速度を前記目標速度に維持する制御中に、前記走行速度が前記目標速度よりも低い第2速度以下に低下した場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を終了する、請求項1から10のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項12】
前記制御装置は、前記電動モータを駆動させるための指令値が閾値以上となる状態が第6時間継続した場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を終了する、請求項1から11のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項13】
前記制御装置は、前記電動モータを駆動させる電力を供給するバッテリの残容量が閾値未満の場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を終了する、請求項1から12のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記クルーズコントロールモードの実行の可否に関する設定情報を外部装置から取得し、
前記設定情報が前記クルーズコントロールモードの実行許可を示しており、且つ、前記第1状態が継続する時間が前記第1時間以上になった場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を開始し、
前記設定情報が前記クルーズコントロールモードの実行禁止を示している場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を行わない、請求項1から13のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項15】
前記制御装置は、
前記目標速度を示す目標速度情報を外部装置から取得し、
前記目標速度情報が示す値に前記目標速度を設定する、請求項1から14のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項16】
前記クルーズコントロールモードでの制御の開始および終了をユーザに報知する報知装置をさらに備えた、請求項1から15のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項17】
前記目標速度は変更可能であり、
前記目標速度が変更された場合、前記目標速度が変更されたことを示す情報をユーザに報知する報知装置をさらに備えた、請求項1から16のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項18】
前記制御装置は、前記第1状態が継続する前記時間を測定したが、測定した前記時間が前記第1時間以上になる前に前記第1状態が継続しなくなった場合は、前記クルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始しない、請求項1から17のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項19】
請求項1から
18のいずれかに記載の駆動ユニットと、
前記電動モータが発生させた前記駆動力が伝達される車輪と、
前記車輪に設けられたハンドリムと、
を備えた、電動アシスト車椅子。
【請求項20】
電動アシスト車椅子の制御を行う方法であって、
前記電動アシスト車椅子は、
前記電動アシスト車椅子を走行させる駆動力を発生させる電動モータと、
前記電動モータが発生させた前記駆動力が伝達される車輪と、
前記車輪に設けられたハンドリムと、
前記ハンドリムから前記車輪に伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサと、
前記電動アシスト車椅子の走行速度に関する信号を出力する速度センサと、
を備え、
前記方法は、
前記トルクセンサの出力信号および前記速度センサの出力信号を取得すること、
前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定すること、
測定した前記時間が第1時間以上になった場合、前記電動アシスト車椅子の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始すること、
を実行する、方法。
【請求項21】
前記方法は、
前記第1状態が継続する前記時間を測定したが、測定した前記時間が前記第1時間以上になる前に前記第1状態が継続しなくなった場合は、前記クルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始しないこと、
を実行する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
電動アシスト車椅子の制御をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記電動アシスト車椅子は、
前記電動アシスト車椅子を走行させる駆動力を発生させる電動モータと、
前記電動モータが発生させた前記駆動力が伝達される車輪と、
前記車輪に設けられたハンドリムと、
前記ハンドリムから前記車輪に伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサと、
前記電動アシスト車椅子の走行速度に関する信号を出力する速度センサと、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
前記トルクセンサの出力信号および前記速度センサの出力信号を取得すること、
前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定すること、
測定した前記時間が第1時間以上になった場合、前記電動アシスト車椅子の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始すること、
を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項23】
前記コンピュータプログラムは、
前記第1状態が継続する前記時間を測定したが、測定した前記時間が前記第1時間以上になる前に前記第1状態が継続しなくなった場合は、前記クルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始しないこと、
を前記コンピュータに実行させる、請求項22に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト車椅子、駆動ユニット、制御方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが手でハンドリムを漕ぐ力を電動モータにより補助する電動アシスト車椅子がある。電動アシスト車椅子では、乗員がハンドリムに加えた人力に応じた駆動力を電動モータに発生させ、ユーザがハンドリムを漕ぐ負担を軽減させることができる。
【0003】
特許文献1は、クルーズコントロール機能を有する電動アシスト車椅子を開示している。クルーズコントロールがオンのときは、ユーザがハンドリムを漕がなくても、電動アシスト車椅子の走行速度は概ね一定に維持される。路面の勾配や段差等の路面状態に関係無く走行速度が概ね一定に維持されることで、ユーザの負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する電動アシスト車椅子に設けられた操作盤は、主電源スイッチと、走行指令を行うための走行スイッチと、走行速度を設定するための速度設定ボリュームスイッチとを備えている。クルーズコントロールをオンにする場合、ユーザはハンドリムから手を放し、その放した手で主電源スイッチをオンにする操作、走行スイッチをオンにする操作、および速度設定ボリュームスイッチを回転させて走行速度を設定する操作を行う必要がある。また、走行速度を一定に維持する制御は、走行スイッチがオン状態である限り継続される。クルーズコントロールをオフにする場合、ユーザはハンドリムから手を放し、その放した手で操作盤の走行スイッチをオフにする必要がある。このように、クルーズコントロールをオン/オフするためには、ユーザは、ハンドリムの操作ではない特別な操作を行う必要があり、ユーザの負担が大きくなるという課題がある。
【0006】
電動アシスト車椅子のクルーズコントロールに関する操作を簡単にすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある実施形態に係る駆動ユニットは、電動アシスト車椅子に用いられる駆動ユニットであって、前記電動アシスト車椅子を走行させる駆動力を発生させる電動モータと、ハンドリムから車輪に伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサと、前記電動アシスト車椅子の走行速度に関する信号を出力する速度センサと、前記電動モータの動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記トルクセンサの出力信号および前記速度センサの出力信号を取得し、前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定し、測定した前記時間が第1時間以上になった場合、前記電動アシスト車椅子の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始する。
【0008】
ユーザがハンドリムに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0009】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記電動アシスト車椅子の走行速度が第1速度未満である場合、前記クルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始せず、前記走行速度が前記第1速度以上であり、且つ測定した前記時間が前記第1時間以上になった場合、前記クルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始してもよい。
【0010】
屋内での走行など、狭いエリアを低速で走行する場合にクルーズコントロールモードがオンになると、ユーザは違和感を覚える場合がある。走行速度が第1速度未満である場合はクルーズコントロールモードをオンにしないことにより、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0011】
ある実施形態において、前記制御装置は、測定した前記時間が前記第1時間になってから第2時間経過した時の前記電動アシスト車椅子の走行速度を、前記目標速度に設定してもよい。
【0012】
第2時間経過した時の走行速度を目標速度に設定することで、第2時間の間加速された走行速度を目標速度に設定することができる。ハンドリムを漕いで走行速度を上昇させたいというユーザの意思を反映させた目標速度に設定することができる。
【0013】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記第2時間が経過した後に前記走行速度の上昇が継続した場合、前記走行速度が低下して前記目標速度になったタイミングで、前記走行速度を前記目標速度に維持する制御を開始してもよい。
【0014】
第2時間が経過した後に更に加速した後、穏やかに減速しているタイミングで目標速度に維持する制御を開始することで、ユーザの車椅子の操作感覚とのズレを小さくすることができる。
【0015】
ある実施形態において、前記目標速度は予め設定されていてもよい。
【0016】
目標速度が予め設定されていることで、毎回同じ速度で走行することができる。登坂時など、ユーザがハンドリムを漕ぐ動作に応じて走行速度を上昇させることが難しい場合でも、クルーズコントロールにより予め設定した目標速度まで走行速度が上昇することにより、ユーザの意図に沿った速度で走行することができる。
【0017】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記第1時間が経過した後に前記走行速度の上昇が継続して前記目標速度よりも高くなった場合、前記走行速度が低下して前記目標速度になったタイミングで、前記走行速度を前記目標速度に維持する制御を開始してもよい。
【0018】
第1時間が経過した後に更に加速した後、穏やかに減速しているタイミングで目標速度に維持する制御を開始することで、ユーザの車椅子の操作感覚とのズレを小さくすることができる。
【0019】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記第1時間が経過した時の前記走行速度が前記目標速度未満である場合、前記走行速度が前記目標速度になるように前記電動モータを制御した後、前記走行速度を前記目標速度に維持する制御を行ってもよい。
【0020】
目標速度に向かって走行速度を上昇させるためのユーザによる追加の動作が不要となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0021】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記走行速度を前記目標速度に維持する制御中に、前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが前記第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示した場合、前記走行速度を前記目標速度に維持するためのトルクに前記出力信号の大きさに応じたトルクを加算した大きさのトルクを発生するように前記電動モータを制御してもよい。
【0022】
クルーズコントロール中であっても、ユーザによるハンドリムのプッシュ操作に応じて走行速度を変更することで、ユーザの意図に沿った走行を行うことができる。
【0023】
左右一対のハンドリムの一方に対するユーザのプッシュ操作に応じて、その一方の側の車輪の回転速度を変更することで、クルーズコントロール中に進行方向を変更することができる。
【0024】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記走行速度を前記目標速度に維持する制御中に、前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが前記第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す前記第1状態が第3時間以上継続した場合、前記第1状態が前記第3時間継続してから第4時間経過した時の前記走行速度に、前記目標速度を変更してもよい。
【0025】
クルーズコントロールモードにおいて維持する走行速度を上昇させたいというユーザの意図に沿った走行を行うことができる。
【0026】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記ハンドリムに加わる後進側へのトルクが第2所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す第2状態が第5時間継続した場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。
【0027】
ユーザは、ハンドリムに後進側への力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードを終了させることができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0028】
一般に、ユーザは、進行方向を大きく変更する場合および停止する場合には、ハンドリムに後進側への力を加える操作を行い得る。そのような操作と同じ操作でクルーズコントロールモードを終了できることで、ユーザは従来からある車椅子と同様の操作感覚で電動アシスト車椅子を操作することができる。
【0029】
左右一対のハンドリムの一方に対するユーザの後進側への操作に応じて、その一方の側のクルーズコントロールモードを終了する形態では、容易に進行方向を変更することができる。
【0030】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記電動アシスト車椅子の走行速度を前記目標速度に維持する制御中に、前記走行速度が前記目標速度よりも低い第2速度以下に低下した場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。
【0031】
傾斜角が大きい上り坂の走行などで、電動モータが発生する駆動力のみでは目標速度の維持が困難になった場合は、クルーズコントロールモードを終了し、人力と電動モータの駆動力とを合成した力で走行するようにすることで、走行を継続することができる。
【0032】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記電動モータを駆動させるための指令値が閾値以上となる状態が第6時間継続した場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。
【0033】
電動モータに大きな駆動力を発生させる状態が一定時間継続した場合は、クルーズコントロールモードを終了し、人力と電動モータの駆動力とを合成した力で走行するようにすることで、走行速度の低下を抑えながら走行を継続することができる。
【0034】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記電動モータを駆動させる電力を供給するバッテリの残容量が閾値未満の場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。
【0035】
バッテリの残容量が少ない場合はクルーズコントロールモードでの制御を行わないことで、電力消費を抑制することができる。
【0036】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記クルーズコントロールモードの実行の可否に関する設定情報を外部装置から取得し、前記設定情報が前記クルーズコントロールモードの実行許可を示しており、且つ、前記第1状態が継続する時間が前記第1時間以上になった場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を開始し、前記設定情報が前記クルーズコントロールモードの実行禁止を示している場合、前記クルーズコントロールモードでの制御を行わなくてもよい。
【0037】
外部装置からクルーズコントロールモードの実行の可否を設定することができる。例えば、クルーズコントロールモードでの走行に適さないエリアでは、クルーズコントロールモードの実行を禁止する設定情報を外部装置から駆動ユニットに送信することで、そのエリアで適切に電動アシスト車椅子を走行させることができる。
【0038】
ある実施形態において、前記制御装置は、前記目標速度を示す目標速度情報を外部装置から取得し、前記目標速度情報が示す値に前記目標速度を設定してもよい。
【0039】
外部装置から目標速度を設定することで、電動アシスト車椅子に着座したユーザが目標速度を設定する必要が無く、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0040】
また、電動アシスト車椅子が走行するエリアに応じて異なる目標速度を示す目標速度情報を外部装置から駆動ユニットに送信することで、エリアそれぞれに適した走行速度で電動アシスト車椅子を走行させることができる。
【0041】
ある実施形態において、前記駆動ユニットは、前記クルーズコントロールモードでの制御の開始および終了をユーザに報知する報知装置をさらに備えてもよい。
【0042】
ユーザは、クルーズコントロールモードでの制御の開始および終了を認識することができる。
【0043】
ある実施形態において、前記目標速度は変更可能であり、前記駆動ユニットは、前記目標速度が変更された場合、前記目標速度が変更されたことを示す情報をユーザに報知する報知装置をさらに備えてもよい。
【0044】
ユーザは、目標速度が変更されたことを認識することができる。
【0045】
本発明のある実施形態に係る電動アシスト車椅子は、前記駆動ユニットと、前記電動モータが発生させた前記駆動力が伝達される車輪と、前記車輪に設けられたハンドリムと、を備える。
【0046】
ユーザがハンドリムに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始できる電動アシスト車椅子を実現することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0047】
本発明のある実施形態に係る方法は、電動アシスト車椅子の制御を行う方法であって、前記電動アシスト車椅子は、前記電動アシスト車椅子を走行させる駆動力を発生させる電動モータと、前記電動モータが発生させた前記駆動力が伝達される車輪と、前記車輪に設けられたハンドリムと、前記ハンドリムから前記車輪に伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサと、前記電動アシスト車椅子の走行速度に関する信号を出力する速度センサとを備え、前記方法は、前記トルクセンサの出力信号および前記速度センサの出力信号を取得すること、前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定すること、測定した前記時間が第1時間以上になった場合、前記電動アシスト車椅子の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始することを実行する。
【0048】
ユーザがハンドリムに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0049】
本発明のある実施形態に係るコンピュータプログラムは、電動アシスト車椅子の制御をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記電動アシスト車椅子は、前記電動アシスト車椅子を走行させる駆動力を発生させる電動モータと、前記電動モータが発生させた前記駆動力が伝達される車輪と、前記車輪に設けられたハンドリムと、前記ハンドリムから前記車輪に伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサと、前記電動アシスト車椅子の走行速度に関する信号を出力する速度センサとを備え、前記コンピュータプログラムは、前記トルクセンサの出力信号および前記速度センサの出力信号を取得すること、前記ハンドリムに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることを前記トルクセンサの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定すること、測定した前記時間が第1時間以上になった場合、前記電動アシスト車椅子の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの前記電動モータの制御を開始することを前記コンピュータに実行させる。
【0050】
ユーザがハンドリムに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明のある実施形態において、ユーザがハンドリムに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】実施形態に係る電動アシスト車椅子1を示す左側面図である。
【
図2】実施形態に係る電動アシスト車椅子1を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る駆動ユニット10を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る第1コントローラ110、第2コントローラ120および第3コントローラ130のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係るリムベース31に加わるトルクと、ホイールハブ21に対するリムベース31の変位量との関係の例を示す図である。
【
図6】実施形態に係るユーザがハンドリム3Lおよび3Rに加えるトルクの波形、および電動モータ25Lおよび25Rが発生させるトルクの波形の例を示す図である。
【
図7】実施形態に係るクルーズコントロールを開始する処理を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る目標速度を設定する処理を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係るクルーズコントロール中のユーザの操作に応じて目標速度を変更する処理を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態に係るクルーズコントロールモードを終了する処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態に係る電動アシスト車椅子1および外部装置200を示す図である。
【
図12】実施形態に係る報知装置8の例を示す図である。
【
図13】実施形態に係る報知装置8の表示情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る電動アシスト車椅子、駆動ユニット、制御方法およびコンピュータプログラムを説明する。実施形態の説明においては、同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。実施形態における前後、左右、上下とは、電動アシスト車椅子のシートにユーザが着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0054】
(電動アシスト車椅子)
図1は、実施形態に係る電動アシスト車椅子1を示す左側面図である。
図2は、電動アシスト車椅子1を示す平面図である。
【0055】
電動アシスト車椅子1は、金属パイプ等で形成された車体フレーム4を備える。車体フレーム4には、左右一対の車輪2Lおよび2Rと、左右一対のキャスタ5Lおよび5Rとが回転可能に支持されている。車体フレーム4は、左右一対のシートフレーム41、左右一対のアームレスト42、左右一対のバックフレーム43、左右一対のアンダーフレーム44を備える。
【0056】
シートフレーム41は、車輪2Lおよび2Rの車軸近傍から前方向に延びている。左右一対のシートフレーム41の間にはユーザが着座するためのシート6が設けられている。シートフレーム41の前部は下方向に折れ曲がっており、シートフレーム41の前部の下端にはフットレスト47が設けられている。シートフレーム41の後端はバックフレーム43に接続されている。バックフレーム43は上下方向に延びている。バックフレーム43の上部は後方向に折れ曲がっており、介助者用のハンドグリップ46が設けられている。左右一対のバックフレーム43の間にはバックサポート45が設けられている。
【0057】
アンダーフレーム44は、シートフレーム41の下方において前後方向に延びている。アンダーフレーム44の前端は、シートフレーム41の前部に接続されている。アンダーフレーム44の後部は、バックフレーム43の下端に接続されている。シートフレーム41の上方にはアームレスト42が配置されている。アームレスト42の後端はバックフレーム43に接続されている。アームレスト42の前部は下方向に折れ曲がっており、シートフレーム41およびアンダーフレーム44に接続されている。アームレスト42には、電動アシスト車椅子1の状態をユーザに報知する報知装置8が設けられている。
【0058】
車輪2Lには、車輪2Lを人力で駆動するためのハンドリム3Lが設けられている。車輪2Rには、車輪2Rを人力で駆動するためのハンドリム3Rが設けられている。車輪2Lおよび2Rのそれぞれは、ホイールハブ21と、ホイールハブ21を囲む外周部23と、複数のスポーク22を備える。複数のスポーク22は、ホイールハブ21と外周部23とを接続する。外周部23は、スポーク22が接続されたリムと、リムに取り付けられたタイヤとを含む。
【0059】
電動アシスト車椅子1の左右方向におけるホイールハブ21の外側には、リムベース31が設けられている。ハンドリム3Lは、車輪2Lのリムベース31から放射状に延びる複数の接続パイプ32に接続されている。同様に、ハンドリム3Rは、車輪2Rのリムベース31から放射状に延びる複数の接続パイプ32に接続されている。
【0060】
ホイールハブ21には、電動モータ25が設けられている。電動モータ25は例えばハブモータである。ホイールハブ21は、車軸と、電動アシスト車椅子1の左右方向における内側に位置する第1筐体と、外側に位置する第2筐体とを備える。内側の第1筐体は車軸に固定されており、外側の第2筐体は車軸に対して回転可能である。電動モータ25のステータは第1筐体および車軸に固定されており、電動モータ25のロータは第2筐体に固定されている。複数のスポーク22は、第2筐体に接続されている。
【0061】
ホイールハブ21の車軸は、車体フレーム4に固定される。ホイールハブ21の車軸は、例えばバックフレーム43に固定される。ホイールハブ21の車軸は、シートフレーム41とアンダーフレーム44との間に設けられたブラケットを介して車体フレーム4に固定されてもよい。車体フレーム4に固定された車軸および第1筐体に対して第2筐体が回転することで、車輪2Lおよび2Rは回転する。
【0062】
電動アシスト車椅子1には、電動モータ25に電力を供給するためのバッテリ7が搭載されている。電動モータ25に電力が供給されると、第1筐体に固定されたステータに対して第2筐体に固定されたロータが回転し、車輪2Lおよび2Rは回転する。
【0063】
電動モータ25は、ハブモータに限定されず、ホイールハブ21の外部に設けられてもよい。この場合、電動モータ25が発生させた回転は減速機を介してホイールハブ21に伝達され得る。
【0064】
(駆動ユニット)
次に、電動アシスト車椅子1が備える駆動ユニットを説明する。
【0065】
図3は、電動アシスト車椅子1が備える駆動ユニット10を示すブロック図である。駆動ユニット10は、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに加えた人力に応じた駆動力を電動モータ25に発生させる。また、駆動ユニット10は、電動アシスト車椅子1の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールを実行するための駆動力を電動モータ25に発生させる。
【0066】
駆動ユニット10は、制御装置100、電動モータ25Lおよび25R、速度センサ26Lおよび26R、トルクセンサ50Lおよび50R、車輪2Lおよび2R、ハンドリム3Lおよび3Rを備える。制御装置100は、第1コントローラ110、第2コントローラ120、第3コントローラ130、加算回路140Lおよび140R、駆動回路150Lおよび150Rを備える。電動モータ25Lは、車輪2Lに設けられた電動モータ25である。電動モータ25Rは、車輪2Rに設けられた電動モータ25である。
【0067】
第2コントローラ120、加算回路140L、駆動回路150L、電動モータ25L、速度センサ26Lおよびトルクセンサ50Lは、車輪2Lのホイールハブ21に設けられ得る。第3コントローラ130、加算回路140R、駆動回路150R、電動モータ25R、速度センサ26Rおよびトルクセンサ50Rは、車輪2Rのホイールハブ21に設けられ得る。第1コントローラ110は、車輪2Lまたは車輪2Rのホイールハブ21に設けられ得る。
【0068】
バッテリ7(
図2)は、駆動ユニット10に電力を供給する。電動アシスト車椅子1には、バックサポート45の後方において左右方向に延びるケーブル48(
図2)が設けられている。ケーブル48は、給電線および通信線を含む。
図2に示す例では、バッテリ7は車体フレーム4の右後部に着脱可能に配置されている。車輪2L側に設けられた駆動ユニット10の構成要素には、ケーブル48を介してバッテリ7から電力が供給される。第1コントローラ110、第2コントローラ120および第3コントローラ130は、ケーブル48を介して互いに通信可能である。
【0069】
図4は、第1コントローラ110、第2コントローラ120および第3コントローラ130のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0070】
第1コントローラ110、第2コントローラ120および第3コントローラ130のそれぞれは、プロセッサ111と、ROM(Read Only Memory)112およびRAM(Random Access Memory)113などの記録媒体とを備える。ROM112には、プロセッサ111に処理を実行させるためのコンピュータプログラム(またはファームウェア)が格納されている。コンピュータプログラムは、記憶媒体(例えば半導体メモリ)または電気通信回線(例えばインターネット)を介して駆動ユニット10に提供され得る。そのようなコンピュータプログラムが、商用ソフトウェアとして販売されてもよい。
【0071】
プロセッサ111は、半導体集積回路であり、例えば中央演算処理装置(CPU)を含む。プロセッサ111は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラによって実現され得る。プロセッサ111は、各種処理を実行するための命令群を記述したコンピュータプログラム(ROM112に格納されるコンピュータプログラム)を逐次実行し、所望の処理を実現する。
【0072】
プロセッサ111は、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ASSP(Application Specific Standard Product)、または、これら回路の中から選択される二つ以上の回路の組み合わせであってもよい。
【0073】
ROM112は、例えば、書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)、または読み出し専用のメモリである。ROM112は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合体であってもよい。RAM113は、ROM112に格納されたコンピュータプログラムをブート時に一旦展開するための作業領域を提供する。RAM113は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合体であってもよい。通信IF114は、外部デバイスと通信するための通信モジュールである。通信IF114は、有線通信および/または無線通信を行うことができる。
【0074】
トルクセンサ50L(
図3)は、ユーザがハンドリム3Lに加えたトルクを検出する。トルクセンサ50Rは、ユーザがハンドリム3Rに加えたトルクを検出する。
【0075】
リムベース31(
図1)は、ホイールハブ21に対して回転方向に沿って相対的に変位可能である。ホイールハブ21とリムベース31との間には弾性部材が設けられている。弾性部材は、ホイールハブ21とリムベース31との位置関係における中立位置にリムベース31が維持されるようにリムベース31に与圧を加える。ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに加えたトルクは、複数の接続パイプ32を介してリムベース31に伝達される。リムベース31に加わるトルクが与圧を超えると、弾性部材の弾性力に抗してリムベース31はホイールハブ21に対して変位する。
【0076】
図5は、リムベース31に加わるトルクと、ホイールハブ21に対するリムベース31の変位量との関係の例を示す図である。縦軸は、ホイールハブ21に対するリムベース31の変位量を示している。横軸は、リムベース31に加わるトルクを示している。
【0077】
リムベース31にトルクが加わっていない状態では、リムベース31は中立位置に位置し、変位量はゼロである。車両を前進させる方向へのトルクがリムベース31に加わり、そのトルクが与圧を超えると、弾性部材の弾性力に抗してリムベース31はホイールハブ21に対して変位する。この変位を
図5では正の方向の変位として示している。トルクが大きくなるほど変位量は正の方向に大きくなる。ホイールハブ21とリムベース31との間には、変位範囲を制限するストッパーが設けられている。変位量が所定量になると、ストッパーによりホイールハブ21に対するリムベース31の変位は止められる。
【0078】
車両を後進させる方向へのトルクがリムベース31に加わり、そのトルクが与圧を超えると、弾性部材の弾性力に抗してリムベース31はホイールハブ21に対して変位する。この変位を
図5では負の方向の変位として示している。トルクが大きくなるほど変位量は負の方向に大きくなる。変位量が所定量になると、ストッパーによりホイールハブ21に対するリムベース31の変位は止められる。
【0079】
トルクセンサ50Lおよび50R(
図3)は、このようなリムベース31とホイールハブ21との間の相対的な変位量を検出する変位センサであり得る。トルクと変位量との関係は予め分かっており、変位量を検出することにより、トルクを検出することができる。
【0080】
トルクセンサ50Lおよび50Rは、例えば、ポテンショメータまたは磁気センサである。磁気センサを用いる場合、リムベース31とホイールハブ21との間の相対的な変位に応じて、磁気センサとマグネットとの位置関係が変化することにより、変位量を検出することができる。また、磁気センサとマグネットとの間に強磁性体を配置し、磁気センサと強磁性体との位置関係が変化することにより、変位量を検出してもよい。なお、トルクセンサ50Lおよび50Rとして、磁歪式のトルクセンサが用いられもよい。トルクセンサ50Lおよび50Rは、検出したトルク(検出した変位量)に応じた信号を第1コントローラ110、第2コントローラ120および第3コントローラ130に出力する。
【0081】
図3を参照して、電動モータ25Lには、速度センサ26Lが設けられている。電動モータ25Rには、速度センサ26Rが設けられている。速度センサ26Lおよび25Rは、例えばエンコーダである。
【0082】
速度センサ26Lは、電動モータ25Lのロータの回転角を検出し、回転角に応じた信号を第1コントローラ110および第2コントローラ120へ出力する。第1コントローラ110および第2コントローラ120は、速度センサ26Lの出力信号から電動モータ25Lの回転速度を演算する。
【0083】
速度センサ26Rは、電動モータ25Rのロータの回転角を検出し、回転角に応じた信号を第1コントローラ110および第3コントローラ130へ出力する。第1コントローラ110および第3コントローラ130は、速度センサ26Rの出力信号から電動モータ25Rの回転速度を演算する。
【0084】
車輪2Lおよび2Rのタイヤサイズは予め分かっており、第1コントローラ110、第2コントローラ120、第3コントローラ130は、電動モータ25Lおよび25Rの回転速度から、電動アシスト車椅子1の走行速度を演算することができる。電動モータ25Lおよび25Rの回転が減速機を介して車輪2Lおよび2Rに伝達される場合は、減速機の減速比の情報をさらに用いて、電動アシスト車椅子1の走行速度を演算する。
【0085】
速度センサ26Lおよび26Rは、車輪2Lおよび2Rのホイールハブ21(
図1)、外周部23、またはスポーク22に設けられていてもよい。速度センサ26Lおよび26Rは、それらが設けられた部材の回転に応じた信号を出力してもよい。
【0086】
駆動ユニット10は、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに加えた人力に応じた駆動力を電動モータ25Lおよび25Rに発生させる。
【0087】
第2コントローラ120は、トルクセンサ50Lの出力信号を用いて、ハンドリム3Lから車輪2Lに伝達されるトルクを演算する。第2コントローラ120は、演算したトルクおよび電動アシスト車椅子1の走行速度などから、適切なトルクを発生させるための指令値を演算する。第2コントローラ120は、例えば、ハンドリム3Lから車輪2Lに伝達されるトルクと、電動モータ25Lが発生するトルクの関係等に基づいて作成されたマップを参照することにより指令値を演算する。ROM112(
図4)には複数種類のマップが格納されている。第2コントローラ120は、ROM112から条件に合ったマップを読み出し、読み出したマップを参照することにより指令値を演算する。
【0088】
第2コントローラ120は、演算した指令値を加算回路140Lに出力する。加算回路140Lは、第2コントローラ120から出力された指令値と第1コントローラ110から出力された指令値とを足し合わせた指令値を駆動回路150Lへ出力する。第1コントローラ110から指令値が出力されていない場合は、第2コントローラ120から出力された指令値が駆動回路150Lに入力される。
【0089】
第3コントローラ130は、トルクセンサ50Rの出力信号を用いて、ハンドリム3Rから車輪2Rに伝達されるトルクを演算する。第3コントローラ130は、演算したトルクおよび電動アシスト車椅子1の走行速度などから、適切なトルクを発生させるための指令値を演算する。第3コントローラ130は、例えば、第2コントローラ120と同様にマップを参照して指令値を演算する。
【0090】
第3コントローラ130は、演算した指令値を加算回路140Rに出力する。加算回路140Rは、第3コントローラ130から出力された指令値と第1コントローラ110から出力された指令値とを足し合わせた指令値を駆動回路150Rへ出力する。第1コントローラ110から指令値が出力されていない場合は、第3コントローラ130から出力された指令値が駆動回路150Rに入力される。 駆動回路150Lおよび150Rは、例えばインバータである。駆動回路150Lは、指令値に応じた駆動電流を生成し、電動モータ25Lに供給する。駆動回路150Rは、指令値に応じた駆動電流を生成し、電動モータ25Rに供給する。駆動電流が供給された電動モータ25Lおよび25Rは回転し、所定のトルクを発生させる。
【0091】
このように、第2コントローラ120および第3コントローラ130は、ユーザのハンドリム3Lおよび3Rを漕ぐ動作をアシストするように、電動モータ25Lおよび25Rにトルクを発生させる。ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに加えたトルクと、電動モータ25Lおよび25Rが発生させたトルクとが車輪2Lおよび2Rに伝達され、電動アシスト車椅子1は走行する。電動モータ25Lおよび25Rがトルクを発生させることにより、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rを漕ぐ負担を軽減させることができる。
【0092】
図6は、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに加えるトルクの波形、および電動モータ25Lおよび25Rが発生させるトルクの波形の例を示す図である。縦軸はトルクを示し、横軸は時間を示している。
図6中の実線はユーザがハンドリム3Lおよび3Rに加えるトルクを示し、点線は電動モータ25Lおよび25Rが発生させるトルクを示している。
【0093】
ユーザが加えるトルクがゼロになっても、電動モータ25Lおよび25Rに発生させるトルクをすぐにはゼロにはせずに、徐々に減らしていくように電動モータ25Lおよび25Rを制御する。
【0094】
ユーザがハンドリム3Lおよび3Rを手で漕ぐ操作は間欠的となる。手を持ちかえる間は慣性により走行するが、登り坂等ではハンドリム3Lおよび3Rに人力が加わっていない間に車椅子は大きく減速する場合がある。電動モータ25Lおよび25Rに発生させるトルクを徐々に減らしていくことで、ハンドリム3Lおよび3Rに人力が加わっていない間も車椅子の減速を抑制することができる。また、平坦路を走行するときには、よりスムーズに車椅子を走行させることができる。
【0095】
駆動ユニット10は、電動アシスト車椅子1の車体フレーム4に対して着脱可能であり得る。また、駆動ユニット10は、車体フレーム4とは別の車体フレームに対しても着脱可能であってもよい。例えば、一般的な車椅子の車体フレームから車輪を取り外し、その車体フレームに駆動ユニット10を取り付けることで、一般的な車椅子を電動アシスト車椅子1として利用することができる。
【0096】
駆動ユニット10は、電動モータ25Lおよび25Rを制御する2つのコントローラ120および130を備えているが、これに限定されず、電動モータ25Lおよび25Rの両方を制御する1つのコントローラを備えていてもよい。また、コントローラ110、120および130が実行する処理が1つのコントローラにより実現されてもよい。
【0097】
駆動ユニット10は、車輪2Lおよび2R、およびハンドリム3Lおよび3Rを備えていなくてもよい。この場合、駆動ユニット10は車輪およびハンドリムを備える車椅子に取り付けられる。
【0098】
(クルーズコントロール)
次に、電動アシスト車椅子1のクルーズコントロールモードでの制御を説明する。
【0099】
駆動ユニット10は、電動アシスト車椅子1の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールを実行するためのトルクを電動モータ25Lおよび25Rに発生させることが可能である。本実施形態では、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに所定時間以上連続して力を加えた場合に、クルーズコントロールを開始する。
【0100】
図7は、クルーズコントロールを開始する処理を示すフローチャートである。
【0101】
第1コントローラ110(
図3)には、トルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号、および速度センサ26Lおよび26Rの出力信号が入力される。第1コントローラ110は、速度センサ26Lおよび26Rの出力信号から電動アシスト車椅子1の走行速度を演算する。
【0102】
第1コントローラ110は、トルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号を用いて、ハンドリム3Lおよび3Rのそれぞれに加わる前進側へのトルクを検出すると、それらのトルクが第1所定値Tr1以上であるか判定する(ステップS110)。ここで、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる前進側へのトルクは、車両を前進させる方向へのトルクである。第1所定値Tr1の大きさは任意であり、例えば、トルクセンサ50Lおよび50Rが
図5に示すような変位を検出し始める大きさであってもよいし、それよりも大きくてもよい。
【0103】
トルクは第1所定値Tr1以上であると判定した場合、第1コントローラ110は、トルクが第1所定値Tr1以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定する。第1コントローラ110は、その第1状態が継続する時間が第1時間t1以上になったか判定する(ステップS111)。第1時間t1は例えば0.1-0.2秒であるが、それに限定されない。
【0104】
第1時間t1が経過する前に、ハンドリム3Lおよび3Rに加わるトルクの少なくとも一方が第1所定値Tr1未満となった場合、時間の計測を終了し、ステップS110の処理を繰り返す。
【0105】
第1状態が継続する時間が第1時間t1以上になったと判定した場合、第1コントローラ110は、電動アシスト車椅子1の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの電動モータ25Lおよび25Rの制御を開始する(ステップS112)。
【0106】
目標速度は例えば予め設定されており、ROM112(
図4)に記憶されている。
【0107】
クルーズコントロールモードにおいて、第1コントローラ110は、電動モータ25Lおよび25Rに適切なトルクを発生させるための指令値を演算する。第1コントローラ110は、例えばPID制御(Proportional-Integral-Derivative Controller)を実行する。電動アシスト車椅子1の走行速度が目標速度よりも低い場合は、走行速度を増加させるための指令値を演算する。走行速度が目標速度よりも高い場合は、走行速度を減少させるための指令値を演算する。走行速度が目標速度と一致する場合は、その走行速度を維持させるための指令値を演算する。
【0108】
第1コントローラ110は、演算した指令値を加算回路140Lおよび140Rに出力する。加算回路140Lは、第1コントローラ110から出力された指令値と第2コントローラ120から出力された指令値とを足し合わせた指令値を駆動回路150Lへ出力する。第2コントローラ120から指令値が出力されていない場合は、第1コントローラ110から出力された指令値が駆動回路150Lに入力される。
【0109】
加算回路140Rは、第1コントローラ110から出力された指令値と第3コントローラ130から出力された指令値とを足し合わせた指令値を駆動回路150Rへ出力する。第3コントローラ130から指令値が出力されていない場合は、第1コントローラ110から出力された指令値が駆動回路150Rに入力される。
【0110】
駆動回路150Lは、指令値に応じた駆動電流を生成し、電動モータ25Lに供給する。駆動回路150Rは、指令値に応じた駆動電流を生成し、電動モータ25Rに供給する。駆動電流が供給された電動モータ25Lおよび25Rは回転し、目標速度に維持されるように電動アシスト車椅子1は走行する。
【0111】
本実施形態では、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0112】
また、目標速度が予め設定されていることで、クルーズコントロールモードの実行時は毎回同じ速度で走行することができる。登坂時など、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rを漕ぐ動作に応じて走行速度を上昇させることが難しい場合でも、クルーズコントロールにより予め設定した目標速度まで走行速度が上昇することにより、ユーザの意図に沿った速度で走行することができる。
【0113】
第1コントローラ110は、クルーズコントロールモードを終了させる条件が満たされた場合、クルーズコントロールモードを終了させる(ステップS113)。例えば、後述するように、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに後進側への力を一定時間加える操作が行われた場合、クルーズコントロールモードを終了させる。
【0114】
なお、ハンドリム3Lに加わる前進側へのトルクおよびハンドリム3Rに加わる前進側へのトルクの一方が第1所定値Tr1以上となる時間が第1時間t1継続した場合に、クルーズコントロールモードでの制御を開始してもよい。ユーザの片手での操作によってもクルーズコントロールを開始できることで、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0115】
また、電動アシスト車椅子1の走行速度が低速である場合は、クルーズコントロールモードでの電動モータ25Lおよび25Rの制御を開始しないようにしてもよい。屋内での走行など、狭いエリアを低速で走行する場合にクルーズコントロールモードがオンになると、ユーザは違和感を覚える場合がある。走行速度が低速である場合はクルーズコントロールモードをオンにしないことにより、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0116】
この場合、第1コントローラ110は、走行速度が例えば第1速度未満である場合、クルーズコントロールモードでの制御を開始しない。第1速度は例えば1.0km/hであるが、それに限定されない。第1コントローラ110は、走行速度が第1速度以上であり、且つ測定した時間が第1時間t1以上になった場合、クルーズコントロールモードでの制御を開始する。
【0117】
次に、目標速度が予め設定されていない形態における処理を説明する。
【0118】
図8は、目標速度が予め設定されていない形態において、目標速度を設定する処理を示すフローチャートである。
【0119】
第1コントローラ110は、トルクが第1所定値Tr1以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第1状態が継続する時間が第1時間t1になった場合、そのまま時間の測定を続ける(ステップS121)。
【0120】
第1コントローラ110は、測定した時間が第1時間t1になってから第2時間t2経過したか判定する(ステップS122)。第2時間t2は例えば0.2-0.5秒であるが、それに限定されない。
【0121】
第2時間t2経過したと判定した場合、第1コントローラ110は、その第2時間t2経過した時点の電動アシスト車椅子1の走行速度を、目標速度に設定する(ステップS123)。
【0122】
第1コントローラ110は、目標速度を設定した後の走行速度が目標速度よりも大きいか判定する(ステップS124)。例えば、第2時間t2が経過した後に走行速度の上昇が継続した場合、走行速度は目標速度よりも大きくなる。この場合は、走行速度が低下して目標速度になったタイミングで、走行速度を目標速度に維持する制御を開始する。第1コントローラ110は、走行速度が目標速度以下であると判定した場合、
図7のステップS112の処理に進み、走行速度を目標速度に維持する制御(クルーズコントロールモードでの制御)を開始する。
【0123】
第2時間t2経過した時の走行速度を目標速度に設定することで、第2時間t2の間加速された走行速度を目標速度に設定することができる。ハンドリム3Lおよび3Rを漕いで走行速度を上昇させたいというユーザの意思を反映させた目標速度に設定することができる。
【0124】
ユーザは、ハンドリム3Lおよび3Rに力を第1時間t1加えた後、第2時間t2が経過する前にハンドリム3Lおよび3Rに力を加え続ける動作を終了してもよい。また、ユーザは、ハンドリム3Lおよび3Rに力を第1時間t1加えて、そのまま力を第2時間t2経過するまで加え続けてもよい。いずれの場合でも、第2時間t2経過した時点の走行速度を目標速度に設定することで、ユーザの意思を反映させた目標速度を設定することができる。
【0125】
また、第2時間t2が経過した後に更に加速した後、穏やかに減速しているタイミングで走行速度を目標速度に維持する制御を開始することで、ユーザの車椅子の操作感覚とのズレを小さくすることができる。
【0126】
なお、目標速度が予め設定されている形態においても、第1時間t1が経過した後に走行速度の上昇が継続して目標速度よりも高くなった場合、走行速度が低下して目標速度になったタイミングで、走行速度を目標速度に維持する制御を開始してもよい。第1時間t1が経過した後に更に加速した後、穏やかに減速しているタイミングで目標速度に維持する制御を開始することで、ユーザの車椅子の操作感覚とのズレを小さくすることができる。
【0127】
第1時間t1が経過したときの走行速度が、予め設定された目標速度未満である場合、第1コントローラ110は、走行速度が目標速度になるように電動モータ25Lおよび25Rを制御した後、走行速度を目標速度に維持する制御を行う。これにより、目標速度に向かって走行速度を上昇させるためのユーザによる追加の動作が不要となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0128】
次に、クルーズコントロール中のユーザの操作に応じて走行速度を変更する制御を説明する。
【0129】
上述したように、第2コントローラ120および第3コントローラ130は、ユーザのハンドリム3Lおよび3Rを漕ぐ動作をアシストするように、電動モータ25Lおよび25Rにトルクを発生させるアシスト制御を行う。このアシスト制御を、走行速度を目標速度に維持する制御中に実行してもよい。
【0130】
例えば、走行速度を目標速度に維持する制御中に、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる前進側へのトルクが第1所定値Tr1以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示した場合、第2コントローラ120および第3コントローラ130は、トルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号の大きさに応じた指令値を演算する。第2コントローラ120および第3コントローラ130は、演算した指令値を加算回路140Lおよび140Rに出力する。
【0131】
加算回路140Lは、第1コントローラ110から出力された指令値と第2コントローラ120から出力された指令値とを足し合わせた指令値を駆動回路150Lへ出力する。加算回路140Rは、第1コントローラ110から出力された指令値と第3コントローラ130から出力された指令値とを足し合わせた指令値を駆動回路150Rへ出力する。
【0132】
駆動回路150Lは、指令値に応じた駆動電流を生成し、電動モータ25Lに供給する。駆動回路150Rは、指令値に応じた駆動電流を生成し、電動モータ25Rに供給する。駆動電流が供給された電動モータ25Lおよび25Rは、走行速度を目標速度に維持するためのトルクに、トルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号の大きさに応じたトルクを加算した大きさのトルクを発生させる。
【0133】
クルーズコントロール中であっても、ユーザによるハンドリム3Lおよび3Rを漕ぐ操作に応じて走行速度を変更することで、ユーザの意図に沿った走行を行うことができる。また、ハンドリム3Lおよび3Rの一方に対するユーザの操作に応じて、その一方の側の車輪の回転速度を変更することで、クルーズコントロール中に進行方向を変更することができる。
【0134】
次に、クルーズコントロール中のユーザの操作に応じて目標速度を変更する処理を説明する。
【0135】
図9は、クルーズコントロール中のユーザの操作に応じて目標速度を変更する処理を示すフローチャートである。
【0136】
第1コントローラ110は、クルーズコントロールを実行しているときに、ハンドリム3Lおよび3Rのそれぞれに加わる前進側へのトルクを検出すると、それらのトルクが第1所定値Tr1以上であるか判定する(ステップS130)。
【0137】
トルクは第1所定値Tr1以上であると判定した場合、第1コントローラ110は、トルクが第1所定値Tr1以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定する。第1コントローラ110は、その第1状態が継続する時間が第3時間t3以上になったか判定する(ステップS131)。第3時間t3は例えば0.1-0.2秒であるが、それに限定されない。
【0138】
第3時間t3が経過する前に、ハンドリム3Lおよび3Rに加わるトルクの少なくとも一方が第1所定値Tr1未満となった場合、時間の計測を終了し、ステップS130の処理を繰り返す。
【0139】
第1状態が継続する時間が第3時間t3以上になったと判定した場合、第1コントローラ110は、そのまま時間の測定を続ける。第1コントローラ110は、測定した時間が第3時間t3になってから第4時間t4経過したか判定する(ステップS132)。第4時間t4は例えば0.2-0.5秒であるが、それに限定されない。
【0140】
第4時間t4経過したと判定した場合、第1コントローラ110は、その第4時間t4経過した時点の電動アシスト車椅子1の走行速度に、目標速度を変更する(ステップS133)。第1コントローラ110は、変更した目標速度に走行速度を維持する制御を行う。
【0141】
ユーザの操作に応じて目標速度を変更することで、クルーズコントロールにおいて維持する走行速度を上昇させたいというユーザの意図に沿った走行を行うことができる。
【0142】
次に、クルーズコントロールモードでの制御を終了する処理を説明する。本実施形態では、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに後進側への力を一定時間加える操作が行われた場合、クルーズコントロールモードを終了させる。
【0143】
図10は、クルーズコントロールモードを終了する処理を示すフローチャートである。
【0144】
第1コントローラ110は、トルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号を用いて、ハンドリム3Lおよび3Rのそれぞれに加わる後進側へのトルクを検出すると、それらのトルクが第2所定値Tr2以上であるか判定する(ステップS140)。ここで、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる後進側へのトルクは、車両を後進させる方向へのトルクである。前転する車輪2Lおよび2Rに対して制動をかけるようにユーザがハンドリム3Lおよび3Rを握った場合に発生するトルクも、後進側へのトルクに含まれる。第2所定値Tr2の大きさは任意であり、例えば、トルクセンサ50Lおよび50Rが
図5に示すような変位を検出し始める大きさであってもよいし、それよりも大きくてもよい。
【0145】
トルクは第2所定値Tr2以上であると判定した場合、第1コントローラ110は、トルクが第2所定値Tr2以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第2状態が継続する時間を測定する。第1コントローラ110は、その第2状態が継続する時間が第5時間t5以上になったか判定する(ステップS141)。第5時間t5は例えば0.1-0.2秒であるが、それに限定されない。
【0146】
第5時間t5が経過する前に、ハンドリム3Lおよび3Rに加わるトルクの少なくとも一方が第2所定値Tr2未満となった場合、時間の計測を終了し、ステップS140の処理を繰り返す。
【0147】
第2状態が継続する時間が第5時間t5以上になったと判定した場合、第1コントローラ110は、クルーズコントロールモードでの電動モータ25Lおよび25Rの制御を終了する(ステップS142)。
【0148】
ユーザは、ハンドリム3Lおよび3Rに後進側への力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードを終了させることができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0149】
一般に、ユーザは、進行方向を大きく変更する場合および停止する場合には、ハンドリム3Lおよび3Rに後進側への力を加える操作を行い得る。そのような操作と同じ操作でクルーズコントロールモードを終了できることで、ユーザは従来からある車椅子と同様の操作感覚で電動アシスト車椅子1を操作することができる。
【0150】
なお、ハンドリム3Lに加わる後進側へのトルクおよびハンドリム3Rに加わる後進側へのトルクの一方が第2所定値Tr2以上となる時間が第5時間t5継続した場合に、クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。ユーザの片手での操作によってもクルーズコントロールを終了できることで、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0151】
また、ハンドリム3Lおよび3Rの一方に対するユーザの後進側への操作に応じて、その一方の側のクルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。この場合は、電動アシスト車椅子1の進行方向を容易に変更することができる。
【0152】
また、電動アシスト車椅子1の走行速度が低下した場合、クルーズコントロールモードを終了してもよい。例えば、第1コントローラ110は、走行速度を目標速度に維持する制御中に、走行速度が目標速度よりも低い第2速度以下に低下した場合、クルーズコントロールモードでの制御を終了する。第2速度は例えば目標速度の50-60パーセントの速度であるが、それに限定されない。
【0153】
傾斜角が大きい上り坂の走行などで、電動モータ25Lおよび25Rが発生する駆動力のみでは目標速度の維持が困難になった場合は、クルーズコントロールモードを終了し、人力と電動モータ25Lおよび25Rの駆動力とを合成した力で走行するようにすることで、走行を継続することができる。
【0154】
また、電動モータ25Lおよび25Rに大きな駆動力を発生させる状態が一定時間継続した場合は、クルーズコントロールモードを終了してもよい。例えば、第1コントローラ110は、電動モータ25Lおよび25Rを駆動させるための指令値が閾値以上となる状態が第6時間t6継続した場合、クルーズコントロールモードでの制御を終了する。第6時間t6は例えば2.0-3.0秒であるが、それに限定されない。
【0155】
電動モータ25Lおよび25Rに大きな駆動力を発生させる状態が一定時間継続した場合は、クルーズコントロールモードを終了し、人力と電動モータ25Lおよび25Rの駆動力とを合成した力で走行するようにすることで、走行速度の低下を抑えながら走行を継続することができる。
【0156】
また、バッテリ7の残容量が閾値未満の場合は、クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。バッテリ7の残容量が少ない場合はクルーズコントロールモードでの制御を行わないことで、電力消費を抑制することができる。
【0157】
次に、外部装置による駆動ユニット10の動作の設定を説明する。
【0158】
図11は、電動アシスト車椅子1および外部装置200を示す図である。外部装置200は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、スマートフォン、またはPDA(Personal digital assistant)である。
図11では、外部装置200の例として、ラップトップPCおよびタブレットコンピュータが示されている。
【0159】
電動アシスト車椅子1の制御装置100(
図3)は、外部装置200と有線通信および/または無線通信を行うことができる。制御装置100は、例えば通信IF114(
図4)を用いて外部装置200と通信を行う。制御装置100は、通信IF114とは別の通信IFを備え、その通信IFを用いて外部装置200と通信を行ってもよい。
【0160】
外部装置200は、例えば、クルーズコントロールモードの実行の可否に関する設定情報を制御装置100に送信する。制御装置100の第1コントローラ110は、その設定情報がクルーズコントロールモードの実行許可を示している場合に、クルーズコントロールモードを実行する。この場合、第1コントローラ110は、
図7を参照しながら説明した第1状態が継続する時間が第1時間t1以上になった場合、クルーズコントロールモードでの制御を開始する。第1コントローラ110は、設定情報がクルーズコントロールモードの実行禁止を示している場合、クルーズコントロールモードでの制御を行わない。
【0161】
このように、外部装置200からクルーズコントロールモードの実行の可否を設定することができる。例えば、クルーズコントロールモードでの走行に適さないエリアでは、クルーズコントロールモードの実行を禁止する設定情報を外部装置200から制御装置100に送信することで、そのエリアで適切に電動アシスト車椅子1を走行させることができる。
【0162】
また、外部装置200は、目標速度を示す目標速度情報を制御装置100に送信してもよい。この場合、第1コントローラ110は、目標速度情報が示す値に目標速度を設定する。
【0163】
外部装置200から目標速度を設定することで、電動アシスト車椅子1に着座したユーザが目標速度を設定する必要が無く、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0164】
また、電動アシスト車椅子1が走行するエリアに応じて異なる目標速度を示す目標速度情報を外部装置200から駆動ユニット10に送信することで、エリアそれぞれに適した走行速度で電動アシスト車椅子1を走行させることができる。
【0165】
次に、電動アシスト車椅子1の状態をユーザに報知する報知装置8を説明する。
【0166】
図12は、報知装置8の例を示す図である。報知装置8は、例えばアームレスト42(
図1)に設けられる。報知装置8は、表示装置81、電源スイッチ82、選択スイッチ83、ランプ84、スピーカ85を備える。
【0167】
表示装置81は例えば液晶パネルまたは有機ELパネルである。表示装置81の表示方式は、セグメント方式であってもよいし、ドットマトリックス方式であってもよい。表示装置81は、速度表示エリア81a、バッテリ残容量表示エリア81b、報知エリア81c、アシストモード表示エリア81dを有する。
【0168】
速度表示エリア81aには、電動アシスト車椅子1の走行速度が数字で表示される。バッテリ残容量表示エリア81bには、バッテリ7の残容量がセグメントによって表示される。これにより、ユーザはバッテリ7の残容量を直感的に把握することができる。アシストモード表示エリア81dには、ユーザが選択スイッチ83を操作して選択したアシストモードが表示される。アシストモードは、例えば“強モード”、“標準モード”である。
【0169】
報知エリア81cは、ユーザに報知すべき各種情報を表示する。例えば、クルーズコントロールモードでの制御を開始したときは、クルーズコントロールを開始したことを表示する。クルーズコントロールモードでの制御を終了したときは、クルーズコントロールを終了したことを表示する。クルーズコントロールモードでの制御を実行しているときは、クルーズコントロール中であることを表示する。これにより、ユーザは、クルーズコントロールの開始、クルーズコントロール中、およびクルーズコントロールの終了を認識することができる。
【0170】
また、ランプ84が発光することにより、クルーズコントロールの開始、クルーズコントロール中、およびクルーズコントロールの終了をユーザに報知してもよい。例えば、ランプ84が発光する色を変化させることで、それらの情報をユーザに報知してもよい。また、スピーカ85が音声を出力することで、それらの情報をユーザに報知してもよい。
【0171】
また、目標速度が変更された場合、報知エリア81cは、目標速度が変更されたことを示す情報を表示してもよい。
図13は、目標速度が変更されたことを示す情報を表示する報知エリア81cの例を示す図である。これにより、ユーザは、目標速度が変更されたことを認識することができる。ランプ84の発光および/またはスピーカ85の音声出力により、目標速度が変更されたことをユーザに報知してもよい。
【0172】
報知装置8は、ランプ84およびスピーカ85のみを備えていてもよいし、ランプ84およびスピーカ85の一方のみを備えていてもよい。報知装置8がランプ84のみを備える場合でも、ランプ84が発光する色を変更したり、発光方法(点灯、点滅、消灯等)を変更したりすることで、様々な情報をユーザに提示することができる。
【0173】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。
【0174】
本発明のある実施形態に係る駆動ユニット10は、電動アシスト車椅子1に用いられる駆動ユニット10であって、電動アシスト車椅子1を走行させる駆動力を発生させる電動モータ25Lおよび25Rと、ハンドリム3Lおよび3Rから車輪2Lおよび2Rに伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサ50Lおよび50Rと、電動アシスト車椅子1の走行速度に関する信号を出力する速度センサ26Lおよび26Rと、電動モータ25Lおよび25Rの動作を制御する制御装置100とを備える。制御装置100は、トルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号および速度センサ26Lおよび26Rの出力信号を取得し、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定し、測定した時間が第1時間t1以上になった場合、電動アシスト車椅子1の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの電動モータ25Lおよび25Rの制御を開始する。
【0175】
ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0176】
ある実施形態において、制御装置100は、電動アシスト車椅子1の走行速度が第1速度未満である場合、クルーズコントロールモードでの電動モータ25Lおよび25Rの制御を開始せず、走行速度が第1速度以上であり、且つ測定した時間が第1時間t1以上になった場合、クルーズコントロールモードでの電動モータ25Lおよび25Rの制御を開始してもよい。
【0177】
屋内での走行など、狭いエリアを低速で走行する場合にクルーズコントロールモードがオンになると、ユーザは違和感を覚える場合がある。走行速度が第1速度未満である場合はクルーズコントロールモードをオンにしないことにより、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0178】
ある実施形態において、制御装置100は、測定した時間が第1時間t1になってから第2時間t2経過した時の電動アシスト車椅子1の走行速度を、目標速度に設定してもよい。
【0179】
第2時間t2経過した時の走行速度を目標速度に設定することで、第2時間t2の間加速された走行速度を目標速度に設定することができる。ハンドリム3Lおよび3Rを漕いで走行速度を上昇させたいというユーザの意思を反映させた目標速度に設定することができる。
【0180】
ある実施形態において、制御装置100は、第2時間t2が経過した後に走行速度の上昇が継続した場合、走行速度が低下して目標速度になったタイミングで、走行速度を目標速度に維持する制御を開始してもよい。
【0181】
第2時間t2が経過した後に更に加速した後、穏やかに減速しているタイミングで目標速度に維持する制御を開始することで、ユーザの車椅子の操作感覚とのズレを小さくすることができる。
【0182】
ある実施形態において、目標速度は予め設定されていてもよい。
【0183】
目標速度が予め設定されていることで、毎回同じ速度で走行することができる。登坂時など、ユーザがハンドリム3Lおよび3Rを漕ぐ動作に応じて走行速度を上昇させることが難しい場合でも、クルーズコントロールにより予め設定した目標速度まで走行速度が上昇することにより、ユーザの意図に沿った速度で走行することができる。
【0184】
ある実施形態において、制御装置100は、第1時間t1が経過した後に走行速度の上昇が継続して目標速度よりも高くなった場合、走行速度が低下して目標速度になったタイミングで、走行速度を目標速度に維持する制御を開始してもよい。
【0185】
第1時間t1が経過した後に更に加速した後、穏やかに減速しているタイミングで目標速度に維持する制御を開始することで、ユーザの車椅子の操作感覚とのズレを小さくすることができる。
【0186】
ある実施形態において、制御装置100は、第1時間t1が経過した時の走行速度が目標速度未満である場合、走行速度が目標速度になるように電動モータ25Lおよび25Rを制御した後、走行速度を目標速度に維持する制御を行ってもよい。
【0187】
目標速度に向かって走行速度を上昇させるためのユーザによる追加の動作が不要となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0188】
ある実施形態において、制御装置100は、走行速度を目標速度に維持する制御中に、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示した場合、走行速度を目標速度に維持するためのトルクに出力信号の大きさに応じたトルクを加算した大きさのトルクを発生するように電動モータ25Lおよび25Rを制御してもよい。
【0189】
クルーズコントロール中であっても、ユーザによるハンドリム3Lおよび3Rのプッシュ操作に応じて走行速度を変更することで、ユーザの意図に沿った走行を行うことができる。
【0190】
左右一対のハンドリム3Lおよび3Rの一方に対するユーザのプッシュ操作に応じて、その一方の側の車輪2Lおよび2Rの回転速度を変更することで、クルーズコントロール中に進行方向を変更することができる。
【0191】
ある実施形態において、制御装置100は、走行速度を目標速度に維持する制御中に、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第1状態が第3時間t3以上継続した場合、第1状態が第3時間t3継続してから第4時間t4経過した時の走行速度に、目標速度を変更してもよい。
【0192】
クルーズコントロールモードにおいて維持する走行速度を上昇させたいというユーザの意図に沿った走行を行うことができる。
【0193】
ある実施形態において、制御装置100は、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる後進側へのトルクが第2所定値以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第2状態が第5時間t5継続した場合、クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。
【0194】
ユーザは、ハンドリム3Lおよび3Rに後進側への力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードを終了させることができ、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0195】
一般に、ユーザは、進行方向を大きく変更する場合および停止する場合には、ハンドリム3Lおよび3Rに後進側への力を加える操作を行い得る。そのような操作と同じ操作でクルーズコントロールモードを終了できることで、ユーザは従来からある車椅子と同様の操作感覚で電動アシスト車椅子1を操作することができる。
【0196】
左右一対のハンドリム3Lおよび3Rの一方に対するユーザの後進側への操作に応じて、その一方の側のクルーズコントロールモードを終了する形態では、容易に進行方向を変更することができる。
【0197】
ある実施形態において、制御装置100は、電動アシスト車椅子1の走行速度を目標速度に維持する制御中に、走行速度が目標速度よりも低い第2速度以下に低下した場合、クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。
【0198】
傾斜角が大きい上り坂の走行などで、電動モータ25Lおよび25Rが発生する駆動力のみでは目標速度の維持が困難になった場合は、クルーズコントロールモードを終了し、人力と電動モータ25Lおよび25Rの駆動力とを合成した力で走行するようにすることで、走行を継続することができる。
【0199】
ある実施形態において、制御装置100は、電動モータ25Lおよび25Rを駆動させるための指令値が閾値以上となる状態が第6時間t6継続した場合、クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。
【0200】
電動モータ25Lおよび25Rに大きな駆動力を発生させる状態が一定時間継続した場合は、クルーズコントロールモードを終了し、人力と電動モータ25Lおよび25Rの駆動力とを合成した力で走行するようにすることで、走行速度の低下を抑えながら走行を継続することができる。
【0201】
ある実施形態において、制御装置100は、電動モータ25Lおよび25Rを駆動させる電力を供給するバッテリ7の残容量が閾値未満の場合、クルーズコントロールモードでの制御を終了してもよい。
【0202】
バッテリ7の残容量が少ない場合はクルーズコントロールモードでの制御を行わないことで、電力消費を抑制することができる。
【0203】
ある実施形態において、制御装置100は、クルーズコントロールモードの実行の可否に関する設定情報を外部装置から取得し、設定情報がクルーズコントロールモードの実行許可を示しており、且つ、第1状態が継続する時間が第1時間t1以上になった場合、クルーズコントロールモードでの制御を開始し、設定情報がクルーズコントロールモードの実行禁止を示している場合、クルーズコントロールモードでの制御を行わなくてもよい。
【0204】
外部装置からクルーズコントロールモードの実行の可否を設定することができる。例えば、クルーズコントロールモードでの走行に適さないエリアでは、クルーズコントロールモードの実行を禁止する設定情報を外部装置から駆動ユニット10に送信することで、そのエリアで適切に電動アシスト車椅子1を走行させることができる。
【0205】
ある実施形態において、制御装置100は、目標速度を示す目標速度情報を外部装置から取得し、目標速度情報が示す値に目標速度を設定してもよい。
【0206】
外部装置から目標速度を設定することで、電動アシスト車椅子1に着座したユーザが目標速度を設定する必要が無く、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0207】
また、電動アシスト車椅子1が走行するエリアに応じて異なる目標速度を示す目標速度情報を外部装置から駆動ユニット10に送信することで、エリアそれぞれに適した走行速度で電動アシスト車椅子1を走行させることができる。
【0208】
ある実施形態において、駆動ユニット10は、クルーズコントロールモードでの制御の開始および終了をユーザに報知する報知装置8をさらに備えてもよい。
【0209】
ユーザは、クルーズコントロールモードでの制御の開始および終了を認識することができる。
【0210】
ある実施形態において、目標速度は変更可能であり、駆動ユニット10は、目標速度が変更された場合、目標速度が変更されたことを示す情報をユーザに報知する報知装置8をさらに備えてもよい。
【0211】
ユーザは、目標速度が変更されたことを認識することができる。
【0212】
本発明のある実施形態に係る電動アシスト車椅子1は、前記駆動ユニット10と、電動モータ25Lおよび25Rが発生させた駆動力が伝達される車輪2Lおよび2Rと、車輪2Lおよび2Rに設けられたハンドリム3Lおよび3Rとを備える。
【0213】
ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始できる電動アシスト車椅子1を実現することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0214】
本発明のある実施形態に係る方法は、電動アシスト車椅子1の制御を行う方法である。電動アシスト車椅子1は、電動アシスト車椅子1を走行させる駆動力を発生させる電動モータ25Lおよび25Rと、電動モータ25Lおよび25Rが発生させた駆動力が伝達される車輪2Lおよび2Rと、車輪2Lおよび2Rに設けられたハンドリム3Lおよび3Rと、ハンドリム3Lおよび3Rから車輪2Lおよび2Rに伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサ50Lおよび50Rと、電動アシスト車椅子1の走行速度に関する信号を出力する速度センサ26Lおよび26Rとを備える。上記方法は、トルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号および速度センサ26Lおよび26Rの出力信号を取得すること、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定すること、測定した時間が第1時間t1以上になった場合、電動アシスト車椅子1の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの電動モータ25Lおよび25Rの制御を開始することを実行する。
【0215】
ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0216】
本発明のある実施形態に係るコンピュータプログラムは、電動アシスト車椅子1の制御をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムである。電動アシスト車椅子1は、電動アシスト車椅子1を走行させる駆動力を発生させる電動モータ25Lおよび25Rと、電動モータ25Lおよび25Rが発生させた駆動力が伝達される車輪2Lおよび2Rと、車輪2Lおよび2Rに設けられたハンドリム3Lおよび3Rと、ハンドリム3Lおよび3Rから車輪2Lおよび2Rに伝達されるトルクに応じた信号を出力するトルクセンサ50Lおよび50Rと、電動アシスト車椅子1の走行速度に関する信号を出力する速度センサ26Lおよび26Rとを備える。上記コンピュータプログラムは、トルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号および速度センサ26Lおよび26Rの出力信号を取得すること、ハンドリム3Lおよび3Rに加わる前進側へのトルクが第1所定値以上であることをトルクセンサ50Lおよび50Rの出力信号が示す第1状態が継続する時間を測定すること、測定した時間が第1時間t1以上になった場合、電動アシスト車椅子1の走行速度を目標速度に維持して走行させるクルーズコントロールモードでの電動モータ25Lおよび25Rの制御を開始することをコンピュータに実行させる。
【0217】
ユーザがハンドリム3Lおよび3Rに力を一定時間加えるという簡単な操作で、クルーズコントロールモードでの走行を開始することができる。クルーズコントロールモードでの走行を開始させるための特別な操作をユーザが行う必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明は、車椅子の分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0219】
1:電動アシスト車椅子、 2L、2R:車輪、 3L、3R:ハンドリム、 4:車体フレーム、 5:キャスタ、 6:シート、 7:バッテリ、 8:報知装置、 10:駆動ユニット、 21:ホイールハブ、 22:スポーク、 23:外周部、 25L、25R:電動モータ、 26L、26R:速度センサ、 31:リムベース、 32:接続パイプ、 41:シートフレーム、 42:アームレスト、 43:バックフレーム、 44:アンダーフレーム、 45:バックサポート、 46:ハンドグリップ、 47:フットレスト、 48:ケーブル、 50L、50R:トルクセンサ、 81:表示装置、 81a:速度表示エリア、 81b:バッテリ残容量表示エリア、 81c:報知エリア、 81d:アシストモード表示エリア 82:電源スイッチ、 83:選択スイッチ 84:ランプ、 85:スピーカ、 100:制御装置、 110:第1コントローラ、 111:プロセッサ、 112:ROM、 113:RAM、 114:通信IF、 120:第2コントローラ、 130:第3コントローラ、 140L、140R:加算回路、 150L、150R、:駆動回路、 200:外部装置