(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】包装容器に用いられるグラビア印刷用塗工紙
(51)【国際特許分類】
D21H 19/40 20060101AFI20250210BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
D21H19/40
D21H27/00 Z
(21)【出願番号】P 2021049400
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020059337
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 克也
(72)【発明者】
【氏名】外岡 遼
(72)【発明者】
【氏名】松永 夏奈
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-149881(JP,A)
【文献】特開2002-363885(JP,A)
【文献】特開平04-153397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/00
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器に用いるためのグラビア印刷用塗工紙であって、
このグラビア印刷用塗工紙は、原紙の少なくとも片面に、顔料及び接着剤を含有する顔料塗工層を有しており、前記原紙が原料パルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を全原料パルプ中の30重量%以上含有し、前記顔料塗工層が顔料としてアスペクト比が10未満、平均粒子径(D50)が1.0μm未満のクレーを全顔料中の60重量%以上含有し、前記顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で11g/m
2以上であ
り、JIS P 8151:2004に基づいて測定した顔料塗工層表面の平滑度(ハードバッキング使用、クランプ圧2000kPa)が1.1μm以下である、上記グラビア印刷用塗工紙。
【請求項2】
前記原紙が原料パルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を全原料パルプ中の70重量%以下含有する、請求項1に記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項3】
前記顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で15g/m
2以下である、請求項1または2に記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項4】
前記顔料塗工層が、顔料として軽質炭酸カルシウムを含有する、請求項1~3のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項5】
前記接着剤が、共重合体ラテックスを含む、請求項1~4のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項6】
前記接着剤が、スチレン・ブタジエン系共重合ラテックスを含む、請求項1~5のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項7】
前記顔料塗工層が、顔料100重量部に対して固形分で1~20重量部の接着剤を含む、請求項1~6のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項8】
前記原紙が、原紙中に固形分で1~40重量%の填料を含む、請求項1~7のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項9】
坪量が45~75g/m
2である、請求項1~8のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【請求項10】
JIS P 8142:2005に基づいて測定した顔料塗工層表面の75度鏡面光沢度が70%以上である、請求項1~9のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた破裂強度と印刷適性を兼ね備えたグラビア印刷塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷は、版の凹部分のインキを加圧下で転移するという凹版印刷方式であり、階調再現性に優れているため、写真などの図版がある雑誌、カタログ、パンフレットなどの商業印刷分野などで広く用いられている。特に商業印刷分野で使用されるグラビア印刷用紙は、用紙自体にかける費用を削減するため、低価格で印刷適性に優れた用紙が求められている。
【0003】
グラビア印刷は凹版印刷であるため、オフセット印刷と比較して硬質の版を使用する。そのため、グラビア印刷時に版面が用紙に完全に密着しにくく、網点が正常に転移しないスペックルが発生する場合がある。このスペックルが多い場合は印刷品質の低下となる。スペックルの発生を抑制するには、グラビア印刷の版面と用紙との密着性を高めることが重要である。
【0004】
グラビア印刷の版面と用紙との密着性を高めるには、用紙の面からは、平滑性と弾力性を高めることが効果的であり、原紙のパルプ配合において広葉樹クラフトパルプ(LKP)の配合量を増やして平滑性を高める手法や、機械パルプ(MP)を配合して弾力性を高める手法が提案されている。
一方、印刷塗工紙を包装用紙等の用途に使用する場合は破裂強度を高めることが効果的であり、原紙のパルプ配合において針葉樹クラフトパルプ(NKP)の配合量を増やす手法が提案されている。特に印刷塗工紙をタバコやチョコレートなどの包装容器に用いる場合は、容器の寸法が小さい事に加えて容器の美麗性を高めるため折り部を鋭利にする必要があり、折り部からの容器破損を抑制するため、破裂強度を高める事が要求されている。
【0005】
そして、塗料配合の観点から塗工紙表面の平滑性を向上させる方法として、塗工層形成物中にアスペクト比の高い層状ケイ酸塩鉱物顔料(デラミネーデットクレー、タルク等)を配合することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、塗工層組成物中にアスペクト比の高い顔料を多く配合すると塗工液の粘度が上昇するため、調液時のハンドリングが難しく、ストリーク、スクラッチ等の塗工不良の原因になりやすい。このため、塗工層を設けるための塗料の固形分濃度をあまり高くできないのが現状であり、水分の高い塗料を塗工する結果、用紙の乾燥時間を長く確保する必要があり、高速での操業に適さない。また、アスペクト比の高いデラミネーデットクレーやタルクといった顔料は、艶消し塗被紙のような白紙光沢度の低い用途に適したものであり(特許文献2)、配合量を多くした場合に光沢発現性が悪化するため、白紙光沢度が必要なグロス調塗工紙への使用は困難であった。
【0006】
また、スペックルの発生防止、不透明度の向上を目的として、焼成クレーを他の顔料と併用する方法も知られている。しかし、焼成クレーは流動性に劣るため、塗工液の粘度が上昇し、ストリーク、スクラッチ等の塗工不良の原因になりやすく、塗工工程での作業性が悪化する。このため、焼成クレーを使用した場合も、塗料の固形分粘度をあまり高くすることができず、その結果、塗工後の乾燥時間を長く保つ必要があり、高速での操業には限界がある。
【0007】
さらに、プラスチックピグメントなどの有機顔料を使用し、高白紙光沢度、スペックルの防止効果、不透明性などを付与する方法が知られている(特許文献3)。しかし、有機顔料は、無機顔料と比較して高価であるためにコスト高となり、また、有機顔料を添加した塗工液は、高せん断力下における粘度が上昇しやすく、ストリーク、スクラッチ等の塗工不良の原因になりやすい。このため、塗料の固形分濃度をあまり高くできないことが現状であり、その結果、塗工後の乾燥時間を長く保つ必要があり、高速での操業に適さないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-088679号公報
【文献】特開2000-199198号公報
【文献】特開平1-20396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような背景から、包装容器などに用いるのに十分なほどに破裂強度が高く、グラビア印刷適性に優れたグラビア印刷用塗工紙の開発が望まれていた。
【0010】
このような状況に鑑みて、本発明の課題は、破裂強度が高く、グラビア印刷適性に優れた、包装容器に用いられるグラビア印刷塗工用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題について鋭意研究した結果、原紙の少なくとも片面に顔料及び接着剤を含有する顔料塗工層を有するグラビア印刷用塗工紙であって、前記原紙が原料パルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を全原料パルプ中の30重量%以上含有し、前記顔料塗工層が顔料としてアスペクト比が10未満、平均粒子径(D50)が1.0μm未満のクレーを全顔料中の60重量%以上含有し、前記顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で11g/m2以上であることを特徴とするグラビア印刷用塗工紙を見出した。
【0012】
以下に限定されるわけではないが、本発明は以下の発明を包含する。
【0013】
(1) 包装容器に用いるためのグラビア印刷用塗工紙であって、このグラビア印刷用塗工紙は、原紙の少なくとも片面に顔料及び接着剤を含有する顔料塗工層を有しており、前記原紙が原料パルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を全原料パルプ中の30重量%以上含有し、前記顔料塗工層が顔料としてアスペクト比が10未満、平均粒子径(D50)が1.0μm未満のクレーを全顔料中の60重量%以上含有し、前記顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で11g/m2以上である、上記グラビア印刷用塗工紙。
【0014】
(2) 前記原紙が原料パルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を全原料パルプ中の70重量%以下含有する、(1)に記載のグラビア印刷用塗工紙。
【0015】
(3) 前記顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で 15g/m2以下である、(1)または(2)に記載のグラビア印刷用塗工紙。
(4) 前記顔料塗工層が、顔料として軽質炭酸カルシウムを含有する、(1)~(3)のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
(5) 前記接着剤が、共重合体ラテックスを含む、(1)~(4)のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
(6) 前記接着剤が、スチレン・ブタジエン系共重合ラテックスを含む、(1)~(5)のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
(7) 前記顔料塗工層が、顔料100重量部に対して固形分で1~20重量部の接着剤を含む、(1)~(6)のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
(8) 前記原紙が、原紙中に固形分で1~40重量%の填料を含む、(1)~(7)のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
(9) 坪量が45~75g/m2である、(1)~(8)のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
(10) JIS P 8142:2005に基づいて測定した顔料塗工層表面の75度鏡面光沢度が70%以上である、(1)~(9)のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
(11) JIS P 8151:2004に基づいて、ハードバッキング使用、クランプ圧2000kPaにて測定した顔料塗工層表面の平滑度が1.1μm以下である、(1)~(10)のいずれかに記載のグラビア印刷用塗工紙。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、破裂強度が高く、グラビア印刷適性に優れたグラビア印刷用塗工紙を
得ることができる。特に本発明に係る塗工紙は、包装容器などに用いるのに十分な破裂強度を有し、グラビア印刷適性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、包装容器に用いるためのグラビア印刷用塗工紙に関する。本発明に係るグラビア印刷用塗工紙は、包装容器に用いるのに十分な破裂強度を有しており、好ましい態様において135kPa以上の破裂強度を有する。
<抄紙>
本発明に用いる原紙としては、化学パルプ、機械パルプ、脱墨パルプなどパルプ原料を叩解したパルプスラリーに、必要に応じ通常抄紙工程で使用される填料、例えばタルク、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタンなどを添加し、さらに助剤類、例えば紙力増強剤、サイズ剤、消泡剤、着色剤などを添加(内添)し、抄紙する。
【0018】
本発明の原紙のパルプ原料としては、針葉樹クラフトパルプ(NKP)を全原料パルプ中の30重量%以上含有する。繊維が長く太いNKPを全原料パルプ中の30重量%以上含有することにより、高い破裂強度を達成できる。一方、NKPの含有量が多いと原紙の平滑性が低下し、グラビア印刷適性が低下する傾向が見られることから、NKPを全原料パルプ中の70重量%以下含有することが好ましい。
【0019】
本発明において、NKP以外のパルプ原料の種類に制限はなく、用途に応じて各種パルプを使用することができる。例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)などの化学パルプ、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などの機械パルプ、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱墨パルプ(DIP)など、印刷用紙のパルプ原料として一般的に使用されているパルプを単独または組み合わせて適宜使用することができる。
【0020】
本発明の原紙の填料としては、必要に応じて公知のものを任意に使用でき、例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム・シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、タルク等を単用又は併用できる。紙中填料率は1~40固形分重量%が好ましく、10~35固形分重量%がより好ましい。
【0021】
本発明の原紙の抄紙に用いる助剤類としては、必要に応じて公知のものを任意に使用でき、例えば、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤などの紙力増強剤、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などのサイズ剤、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、染料、pH制御剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、紫外線防止剤、退色防止剤、スライムコントロール剤等を単用又は併用できる。
【0022】
本発明の原紙の抄紙に用いる抄紙機は特に制限はないが、オントップフォーマー、ギャップフォーマー等を含む長網マシン、丸網マシン、両者を併用した板紙マシン、ヤンキードライヤーマシン等の通常の抄紙機が用いられる。また、抄紙条件も特に制限はなく、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙のいずれであってよい。
【0023】
本発明の原紙は、ゲートロールコーター、サイズプレス、プレメタリングサイズプレス等を使用して、澱粉、ポリビニルアルコール等の接着剤及び必要に応じて表面サイズ剤、保水剤、増粘剤、滑剤等をクリア塗工してもよい。
【0024】
本発明において、原紙を乾燥させる際には、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の装置が使用可能である。また、乾燥条件も特に限定はなく、通常の操業範囲で適宜設定できる。
【0025】
本発明においては、オンラインソフトカレンダー、オンラインチルドカレンダーなどにより、顔料塗工層を塗工する前の原紙にプレカレンダー処理を行い、原紙を予め平滑化しておくと、顔料塗工層が均一となり、グラビア印刷適性に優れたグラビア印刷塗工用紙を得ることが容易となるため好ましい。
原紙にプレカレンダー処理を行う場合、カレンダー線圧は10~100kN/mとすることが好ましい。また、プレカレンダー処理を行う際の原紙の水分率を3.0~5.0%とすることが好ましい。原紙の水分率が3.0%未満であると、プレカレンダー処理の効果が十分に得られないことがある。また、原紙の水分率が5.0%を超えると、原紙がつぶれやすくなり、不透明度や剛度が低下する可能性がある。
【0026】
本発明において、原紙の坪量は特に制限はないが、通常は30~400g/m2程度であり、好ましくは40~250g/m2程度であり、より好ましくは40~60g/m2である。
【0027】
<塗工>
本発明においては、顔料塗工層を構成する顔料100重量部中、アスペクト比が10未満、平均粒径(D50)が1.0μm以下であるクレーを60重量%以上含有する。このような顔料を使用することによって、高い操業性を維持しつつ、優れたグラビア印刷特性を得ることができる。
ここで、本発明におけるアスペクト比とは、粒子の直径/厚さで表される粒子の形状を示すものであり、電子顕微鏡で顔料の粒子サンプルを拡大観察し、無作為に選びだした10~20個の粒子サンプルについて、直径と厚さを測定し、この比の平均値を採用した。また、平均粒径(D50)とは、体積50%平均粒子径であり、レーザー回折法によって測定され、Malvern社製、マスターサイザー3000等により測定できる。
【0028】
本発明において、顔料塗工層を構成するその他の顔料の種類に制限はなく、塗工紙用に従来から用いられているカオリン、クレー、デラミネーデットクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料を1種類以上混合して使用することができる。
【0029】
本発明において顔料塗工層に用いる接着剤としては、共重合体ラテックスを使用することが好ましい。共重合体ラテックスとしては、天然樹脂ラテックス、合成樹脂ラテックスのいずれも使用することができる。
合成樹脂ラテックスとしては、ビニル系重合体ラテックス、スチレン・ブタジエン系共重合ラテックス、スチレン・アクリル系共重合ラテックス、エチレン・酢酸ビニル系共重合ラテックス、ブタジエン・メチルメタクリレート系共重合ラテックス、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系共重合ラテックス、無水マレイン酸共重合ラテックス、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合ラテックスなどの各種重合体、共重合体のラテックスを例示することが可能であり、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明では、顔料塗工層を構成する顔料100重量部に対して共重合体ラテックスを固形分で1~20重量部使用することが好ましく、3~15重量部使用することがより好ましい。
【0030】
本発明において、顔料塗工層に用いるその他の接着剤としては、例えば、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、ポリビニルアルコール類、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等、塗工紙用に従来から用いられている接着剤を1種類以上混合して使用することができる。
【0031】
本発明の顔料塗工層に必要に応じて配合する添加剤としては、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、塗工紙用に従来から用いられている各種助剤を適宜使用できる。
【0032】
本発明において、顔料塗工層用塗工液の調製方法は特に限定されないが、塗工適性の観点から、顔料塗工層用塗工液の固形分濃度は50~68重量%程度が好ましい。
【0033】
本発明において、顔料塗工層を設ける際には、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等各種の塗工装置が使用可能であり、原紙の片面あるいは両面に塗工することができる。
これらの塗工装置の中でも、本発明ではレベリング塗工方式であるブレードコーターを使用することが好ましい。特に、ショートドウェルタイムアプリケート式ブレードコーターを使用すると、顔料塗工層の平滑性が高くなり、グラビア印刷適性に優れたグラビア印刷塗工用紙を得ることが容易となるため好ましい。
【0034】
本発明のグラビア印刷用塗工紙は、顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で11g/m2以上である。顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で11g/m2未満であると、顔料塗工層による原紙の被覆が不十分となり、グラビア印刷適性が劣る。
また、顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で15g/m2以下であると、グラビア印刷適性と操業性のバランスが良好であるため好ましい。なお、顔料塗工層は原紙の片面に1層設けてもよく、2層以上設けてもよい。顔料塗工層を原紙の片面に2層以上設けた場合は、2層以上の顔料塗工層の合計で、塗工量が片面あたり固形分で11g/m2以上である。
【0035】
本発明において、顔料塗工層を乾燥させる際には、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の装置が使用可能である。また、乾燥条件も特に限定はなく、通常の操業範囲で適宜設定できる。
【0036】
本発明のグラビア印刷用塗工紙は、各種公知公用の仕上げ装置、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー、マットカレンダー等を使用して平滑化処理を行うと、顔料塗工層の平滑性が高くなり、グラビア印刷適性に優れたグラビア印刷塗工用紙を得ることが容易となるため好ましい。平滑化処理の条件は通常の操業範囲で適宜設定可能であるが、カレンダー線圧は50~400kN/mとすることが好ましい。
【0037】
本発明のグラビア印刷用塗工紙の坪量は、通常は40~400g/m2程度であり、好ましくは45~250g/m2である。特にグラビア印刷用塗工紙の坪量が45~75g/m2であると、タバコやチョコレートなどの包装容器に用いる場合に、容器の美麗性を高めるため折り部を鋭利にしても折り部からの容器破損を抑制することができるため好ましい。
【0038】
本発明のグラビア印刷用塗工紙は、JIS P 8142:2005に基づいて測定した顔料塗工層表面の75度鏡面光沢度が70%以上であることが好ましい。
また、グラビア印刷適性の観点から、ハードバッキング使用、クランプ圧2000kPaにて、JIS P 8151:2004に基づいて測定した顔料塗工層表面の平滑度が1.1μm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。なお、特に断らない限り、本明細書において、部および%はそれぞれ重量部および重量%を示し、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0040】
[実施例1]
針葉樹クラフトパルプ(NKP)を34部、広葉樹クラフトパルプ(LKP)を55部、砕木パルプ(GP)を11部含有するパルプスラリーを調製し、填料として軽質炭酸カルシウム10部を添加し、内添紙力剤0.5部、中性ロジンサイズ剤0.2部を添加して紙料を調製した。
【0041】
次いで、この紙料を用いて、長網抄紙機で抄紙して、坪量50g/m2の原紙を得た。
【0042】
次に、クレー1(KaMin社製、商品名:ハイドララックス、アスペクト比:4.4、平均粒子径(D50):0.66μm)73部、苛性化軽質炭酸カルシウム27部を含有する顔料100部に対して、接着剤としてスチレン・ブタジエン共重合ラテックス10部、蛍光染料0.5部を配合して、固形分濃度65%の顔料塗工層用塗工液1を調製した。
【0043】
次いで、前記原紙の片面に、顔料塗工層用塗工液1を片面あたり固形分で12g/m2となるようにショートデュエルタイムアプリケーション方式のブレードコーターで塗工し、定法によって乾燥した。
【0044】
次いで、2段・2スタック式のソフトカレンダーを用いて平滑化処理を行い、グラビア印刷用塗工紙を得た。
【0045】
[実施例2]
針葉樹クラフトパルプ(NKP)を39部、広葉樹クラフトパルプ(LKP)を50部、砕木パルプ(GP)を11部含有するパルプスラリーを調製し、填料として軽質炭酸カルシウム10部を添加し、内添紙力剤0.5部、中性ロジンサイズ剤0.2部を添加して紙料を調製した。次いで、この紙料を用いて、抄紙機で抄紙して、坪量50g/m2の原紙を得た。
【0046】
次に、クレー2(KaMin社製、商品名:ハイドラグロス、アスペクト比:4.3、平均粒子径(D50):0.85μm)100部を含有する顔料100部に対して、接着剤としてスチレン・ブタジエン共重合ラテックス7部、蛍光染料0.5部を配合して、固形分濃度65%の顔料塗工層用塗工液2を調製した。
【0047】
次いで、前記原紙の片面に、顔料塗工層用塗工液2を片面あたり固形分で12g/m2となるようにショートデュエルタイムアプリケーション方式のブレードコーターで塗工し、定法によって乾燥した。
【0048】
次いで、2段・2スタック式のソフトカレンダーを用いて平滑化処理を行い、グラビア印刷用塗工紙を得た。
【0049】
[比較例1]
実施例1の原紙について、針葉樹クラフトパルプ(NKP)を25部、広葉樹クラフトパルプ(LKP)を44部、砕木パルプ(GP)を11部含有するパルプスラリーを調製して使用した以外は、実施例1と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
【0050】
[比較例2]
実施例1の顔料塗工層用塗工液1について、クレー1(KaMin社製、商品名:ハイドララックス、アスペクト比:4.4、平均粒子径(D50):0.66μm)50部、苛性化軽質炭酸カルシウム50部を含有する顔料100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
【0051】
[比較例3]
実施例2の顔料塗工層用塗工液2を片面あたり固形分で10g/m2となるように塗工した以外は、実施例2と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
【0052】
[比較例4]
実施例2の顔料塗工層用塗工液2について、クレー3(イメリス社製、商品名:コンツァーエクストリーム、アスペクト比:33.0、平均粒子径(D50):1.96μm)100部を含有する顔料100部を使用し、片面あたり固形分で10g/m2となるように塗工した以外は、実施例2と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
【0053】
[参考例1]
実施例2の顔料塗工層用塗工液2について、クレー3(イメリス社製、商品名:コンツァーエクストリーム、アスペクト比:33.0、平均粒子径(D50):1.96μm)100部を含有する顔料100部を使用し、固形分濃度67%の顔料塗工層用塗工液3を調製して、片面あたり固形分で12g/m2となるように塗工を試みたが、塗工不能となりグラビア印刷用塗工紙が得られなかった。
【0054】
<評価方法>
以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
【0055】
(1)坪量
JIS P 8124:2011に基づいて測定した。
【0056】
(2)紙厚および密度
JIS P 8118:2014に基づいて測定した。
【0057】
(3)白紙光沢度
JIS P 8142:2005に基づいて、顔料塗工層表面の75度鏡面光沢度を測定した。
【0058】
(4)白色度
JIS P 8148:2001に基づいて、村上色彩(株)製色差計CMS-35SPXにて、紫外光を含む条件にて測定した。
【0059】
(5)破裂強度
JIS P8112:2008に基づいて測定した。評価基準は以下の通りとした。
○:破裂強度が135kPa以上
×:破裂強度が135kPa未満
【0060】
(6)PPS粗さ
ハードバッキング使用、クランプ圧2000kPaにて、JIS P 8151:2004に基づいて顔料塗工層表面の平滑度を測定した。
【0061】
(7)グラビア印刷適性
ヘリオテスト付属装置を取り付けた印刷試験機(IGT社製、商品名:IGT AIC2-5 印刷試験機)を使用して、印刷速度1.0m/秒、印圧50kgf/cmで印刷し、可変ハーフトーンスクリーン・エリアにおける印刷開始から20番目の網点抜けまでの距離を測定した。20番目の網点抜けまでの距離が長い程、グラビア印刷適性が良好であると言える。評価基準は以下の通りとした。
○:印刷開始から20番目の網点抜けまでの距離が40mm以上
×:印刷開始から20番目の網点抜けまでの距離が40mm未満
【0062】
【0063】
表1に評価結果を示す。表1から明らかなように、原紙が原料パルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を全原料パルプ中の30重量%以上含有し、顔料としてアスペクト比が10未満、平均粒子径(D50)が1.0μm未満のクレーを全顔料中の60重量%以上含有し、塗工量が片面あたり固形分で11g/m2以上である顔料塗工層を有する本発明のグラビア印刷用塗工紙は、破裂強度が高く、グラビア印刷適性に優れることが確認できた。
一方、原紙が原料パルプとして針葉樹クラフトパルプ(NKP)を全原料パルプ中の30重量%未満含有する比較例1のグラビア印刷用塗工紙は、破裂強度が劣った。また、顔料塗工層が顔料としてアスペクト比が10未満、平均粒子径(D50)が1.0μm未満のクレーを全顔料中の60重量%未満含有する比較例2のグラビア印刷用塗工紙、顔料塗工層の塗工量が片面あたり固形分で11g/m2未満である比較例3、4のグラビア印刷用塗工紙はグラビア印刷適性が劣った。