(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】縮合環化合物、組成物、有機電界発光素子用材料、電子素子および有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20250210BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20250210BHJP
H10H 20/822 20250101ALI20250210BHJP
C07F 5/02 20060101ALN20250210BHJP
【FI】
C09K11/06 660
H05B33/14 B
H10H20/822
C07F5/02 A
(21)【出願番号】P 2021055622
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020136804
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】外山 弥
(72)【発明者】
【氏名】柴田 勝則
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 理恵
(72)【発明者】
【氏名】宮碕 栄吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光則
(72)【発明者】
【氏名】今村 敦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,スン オク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン ヒョク
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/102118(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110790782(CN,A)
【文献】特表2023-518551(JP,A)
【文献】特表2023-509494(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0000322(KR,A)
【文献】国際公開第2019/111971(WO,A1)
【文献】ケミカルタイムス,2006年,(199),p.13-17
【文献】Journal of Vacuum Society of Japan,2015年,58(3),p.73-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/06
H10K 50/10
H10H 20/822
C07F 5/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化合物97、100~102および201~203からなる群より選択される少なくとも1種の縮合環化合物
と、燐光性化合物とを含み、前記燐光性化合物は、白金錯体を含む、組成物。
【化1-1】
【化1-2】
【請求項2】
前記縮合環化合物は、前記化合物100および前記化合物202からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記白金錯体は、下記の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【化2-4】
【請求項4】
前記白金錯体は、下記の化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載の組成物。
【化3-1】
【化3-2】
【請求項5】
前記白金錯体は、下記の化合物を含む、請求項4に記載の組成物。
【化4】
【請求項6】
請求項
1~
5のいずれか1項に記載の組成物を含む、有機電界発光素子用材料。
【請求項7】
請求項
1~
5のいずれか1項に記載の組成物、または請求項
6に記載の有機電界発光素子用材料を含む、電子素子。
【請求項8】
第1電極、第2電極、ならびに前記第1電極および前記第2電極の間に配置された単一または複数の有機層を備えており、前記有機層のうちの少なくとも1つは
、請求項
1~
5のいずれか1項に記載の組成物、または請求項
6に記載の有機電界発光素子用材料を含む、有機電界発光素子。
【請求項9】
前記組成物、または前記有機電界発光素子用材料を含む前記有機層は、発光層を含む、請求項
8に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合環化合物、組成物、有機電界発光素子用材料、電子素子および有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置として、有機電界発光素子の開発が活発に行われている。有機電界発光素子は、第1電極および第2電極から注入された正孔および電子を発光層で再結合させることで、発光層に含まれる有機化合物である発光材料を発光させて表示を実現する、いわゆる自発光型表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子としては、例えば、第1電極、第1電極の上に配置された発光層、および発光層の上に配置された第2電極を含む構成の素子が知られている。この素子では、第1電極からは正孔が注入され、正孔は発光層に注入される。一方、第2電極からは電子が注入され、電子は発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子が再結合されることで、発光層内で励起子が生成される。そして、この素子は、励起子が基底状態に落ちる際に発生する光を利用して発光する。
【0004】
有機電界発光素子に用いられる発光材料としては、種々の化合物が検討されている。特に、青色発光材料としては、ヘテロ原子を含む縮合環化合物が検討されている(特許文献1~4、ならびに非特許文献1および2)。
【0005】
また、有機電界発光素子では、広い色域を網羅するために、赤、緑および青(R,G、B)のそれぞれについて、高色純度の発光材料が要求されている。色純度は、発光スペクトル幅に関係しており、発光スペクトル幅が狭いほど高色純度となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第110790782号明細書
【文献】国際公開第2018/186404号
【文献】中国特許出願公開第107501311号明細書
【文献】国際公開第2015/102118号
【非特許文献】
【0007】
【文献】“Ultrapure Blue Thermally Activated Delayed Fluorescence Molecules: Effcient HOMO-LUMO Separation by the Multiple Resonance Effect” Takuji Hatakeyama, Kazushi Shiren, Kiichi Nakajima, Shintaro Nomura, Soichiro Nakatsuka, Keisuke Kinoshita, Jingping Ni, Yohei Ono, and Toshiaki Ikuta, Advanced Materials 2016, 28, 2777-2781
【文献】“Improving Processability and Efficiency of Resonant TADF Emitters: A Design Strategy” David Hall, Subeesh Madayanad Suresh, Paloma L. dos Santos, Eimantas Duda, Sergey Bagnich, Anton Pershin, Pachaiyappan Rajamalli, David B. Cordes, Alexandra M. Z. Slawin, David Beljonne, Anna K▲oe(ウムラウト記号付きの小文字のo)▼hler, Ifor D. W. Samuel, Yoann Olivier, and Eli Zysman-Colman, Advanced Optical Materials 2019,1901627
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特に青色発光材料において、高色純度の発光の実現は難しいことが知られている。特許文献1~4、ならびに非特許文献1および2のヘテロ原子を含む縮合環化合物についても、発光スペクトル幅が広く、色純度が十分ではないという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、高色純度を実現しうる新規な発光材料、特に高色純度を実現しうる新規な青色発光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決されうる。
【0011】
下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される縮合環化合物:
【0012】
【0013】
上記一般式(1)および上記一般式(2)において、
X1、X2およびYは、それぞれ独立して、O、S、Se、Te、NR、またはCR’R”であり、
R、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換されたもしくは非置換のアルキル基、置換されたもしくは非置換のアリール基、置換されたもしくは非置換のヘテロアリール基、置換されたもしくは非置換のアルコキシ基、置換されたもしくは非置換のアリールオキシ基、置換されたもしくは非置換のヘテロアリールオキシ基、置換されたもしくは非置換のジアリールアミノ基、置換されたもしくは非置換のジヘテロアリールアミノ基、または置換されたもしくは非置換のアリールヘテロアリールアミノ基であり、
Cy1、Cy2およびCy3は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換の芳香族性環状基であり、
Cy1およびCy2の少なくとも一方は、下記化学式(3)で表される構造、または下記化学式(3)で表される構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であり、
【0014】
【0015】
ここで、Cy1またはCy2が上記化学式(3)で表される構造、または上記化学式(3)で表される構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であるとき、上記化学式(3)で表される構造、または上記化学式(3)で表される構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造中の1つのベンゼン環を構成する、1つの非置換の結合は、上記一般式(1)および上記一般式(2)における、Cy1またはCy2の実線で示される結合を構成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高色純度を実現しうる新規な発光材料、特に高色純度を実現しうる新規な青色発光材料の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面模式図である。
【
図3】本発明のその他の一実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面模式図である。
【
図4】各エネルギーの関係を定性的に説明する説明図である。
【
図5】公知の縮合環化合物R1~R3における、実測したPLにおける発光のFWHM-密度汎関数法による計算された再配置エネルギー(eV)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0019】
本願明細書において、「XおよびYは、それぞれ独立して」とは、XおよびYが同一であってもよいし、異なっていてもよいことを意味する。
【0020】
また、本明細書において、「環から誘導された基」とは、環構造から、環構成元素に直接結合する水素原子を価数の分だけ外し、遊離原子価とした基を表す。
【0021】
<縮合環化合物>
本発明の一形態は、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される縮合環化合物(以下、単に「縮合環化合物」とも称する)に関する:
【0022】
【0023】
上記一般式(1)および上記一般式(2)において、
X1、X2およびYは、それぞれ独立して、O、S、Se、Te、NR、またはCR’R”であり、
R、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換されたもしくは非置換のアルキル基、置換されたもしくは非置換のアリール基、置換されたもしくは非置換のヘテロアリール基、置換されたもしくは非置換のアルコキシ基、置換されたもしくは非置換のアリールオキシ基、置換されたもしくは非置換のヘテロアリールオキシ基、置換されたもしくは非置換のジアリールアミノ基、置換されたもしくは非置換(無置換)のジヘテロアリールアミノ基、または置換されたもしくは非置換(無置換)のアリールヘテロアリールアミノ基であり、
Cy1、Cy2およびCy3は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換の芳香族性環状基であり、
Cy1およびCy2の少なくとも一方は、下記化学式(3)で表される構造、または当該構造(下記化学式(3)で表される構造)の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であり、
【0024】
【0025】
ここで、Cy1またはCy2が上記化学式(3)で表される構造、または当該構造(下記化学式(3)で表される構造)の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であるとき、該構造(上記化学式(3)で表される構造、または上記化学式(3)で表される構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造)中の1つのベンゼン環を構成する、1つの非置換の結合は、上記一般式(1)および上記一般式(2)における、Cy1またはCy2の実線で示される結合を構成する。
【0026】
このように、本発明の一形態は、上記一般式(1)または上記一般式(2)で表される縮合環化合物に関する。
【0027】
本発明者らは、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
【0028】
“High-Performance Dibenzoheteraborin-Based Thermally Activated Delayed Fluorescence Emitters: Molecular Architectonics for Concurrently Achieving Narrowband Emission and Efficient Triplet-Singlet Spin Conversion” In Seob Park, Kyohei Matsuo, Naoya Aizawa, and Takuma Yasuda, Advanced Functional Materials 2018, 28, 1802031には、蛍光発光のスペクトル幅(蛍光発光スペクトルのピークの半値幅、Full Width at Half Maximum,FWHM)は、第一励起一重項状態(S1)の安定構造における基底状態(S0)のエネルギー [E(S0@S1)]と、基底状態(S0)の安定構造における基底状態(S0)のエネルギー [E(S0@S0)]との差で表される、再配置エネルギー(Reorganization energy) [E(S0@S1)-E(S0@S0)]と密接に関係することが示されている。
【0029】
本発明の一形態に係る縮合環化合物は、電子供与性を有する窒素原子(N)と、電子受容性を有するホウ素原子(B)とを有し、これらと特定構造の共役系とが適切な配置となるよう結合した構造を有する。そして、当該化合物では、この配置による電子的効果、およびこの配置が堅牢な縮合環構造を構成することによる構造的効果により、発光スペクトル幅が広がる原因となる、基底状態(S0)および第一励起状態(S1)間の分子構造変化が抑制される。そして、その結果、スペクトル幅の狭い高色純度の発光、特にスペクトル幅の狭い高純度の青色発光が実現される。
【0030】
なお、上記配置による電子的効果は、蛍光発光強度の指標となる、第一励起一重項状態(S1)の安定構造における振動子強度f(以下、単に「振動子強度f」とも称する)をより高くすることにも寄与することから、高色純度と共に、十分な発光効率および十分な素子寿命も実現されうる。
【0031】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。また、本明細書における他の推測事項についても同様に、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0032】
本明細書において、「芳香族性環状基」とは、一部または全体として芳香族性を有する環状構造を表す。すなわち、「芳香族性環状基」とは、芳香族炭化水素環または芳香族複素環から選択される、1以上の芳香環を含む環状構造を表す。芳香族性環状基は、単独の芳香環から構成される環状構造であってもよい。また、芳香族性環状基は、芳香環同士の縮合環から構成される環状構造であってもよく、芳香環と、非芳香環との縮合環から構成される環状構造であってもよい。
【0033】
芳香族性環状基を構成する炭化水素環としては、1以上の芳香環構造を含む炭化水素環が挙げられる。芳香族性環状基を構成する炭化水素環の環形成炭素数は、特に制限されないが、6以上30以下であることが好ましい。また、芳香族性環状基を構成する炭化水素環の環形成炭素数は、6以上20以下であることがより好ましく、6以上15以下であることがさらに好ましい。そして、芳香族性環状基を構成する炭化水素環の環形成炭素数は、6以上12以下であることがよりさらに好ましく、6であることが特に好ましい。芳香族性環状基を構成する炭化水素環としては、特に制限されないが、例えば、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環等が挙げられる。
【0034】
芳香族性環状基を構成する複素環としては、環形成原子として1以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si))を有し、残りの環形成原子が炭素原子(C)である環であって、1以上の芳香環構造を含む環が挙げられる。芳香族性環状基を構成する複素環の環形成炭素数は、特に制限されないが、2以上30以下であることが好ましい。また、芳香族性環状基を構成する複素環の環形成炭素数は、2以上20以下であることがより好ましく、2以上18以下であることがさらに好ましい。そして、芳香族性環状基を構成する複素環の環形成炭素数は、18であることが特に好ましい。
【0035】
芳香族性環状基を構成する複素環としては、特に制限されないが、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、アクリジン環、フェナジン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環、フェナンスリジン環、フェナントロリン環、ベンゾキノン環、クマリン環、アントラキノン環、フルオレノン環、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、インドロカルバゾール環、上記化学式(3)で表される環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、イミダゾリノン環、ベンズイミダゾリノン環、イミダゾピリジン環、イミダゾピリミジン環、イミダゾフェナンスリジン環、ベンズイミダゾフェナンスリジン環、アザジベンゾフラン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾチオフェン環、ジアザジベンゾフラン環、ジアザカルバゾール環、ジアザジベンゾチオフェン環、キサントン環、チオキサントン環等が挙げられる。
【0036】
芳香族性環状基は、ベンゼン環を含むことが好ましい。ここで、芳香族性環状基において、ベンゼン環を構成する、1つの非置換の結合は、前記一般式(1)中または前記一般式(2)における、Cy1およびCy2の実線で示される結合を構成することが好ましい。また、ベンゼン環を構成する、2つの非置換の結合は、前記一般式(1)中または前記一般式(2)における、Cy3の実線で示される結合を構成することが好ましい。
【0037】
これらのことから、Cy1、Cy2およびCy3の芳香族性環状基は、全て、ベンゼン環を含むことが好ましい。この際、ベンゼン環を構成する、1つの非置換の結合は、前記一般式(1)および前記一般式(2)における、Cy1およびCy2の実線で示される結合を構成し、ベンゼン環を構成する、2つの非置換の結合は、前記一般式(1)および前記一般式(2)における、Cy3で示す環状部分の実線で示される結合を構成することが特に好ましい。そして、色純度、発光効率(特に、蛍光発光効率)および素子寿命の観点から、芳香族性環状基は、ベンゼン環または前記化学式(3)で表される環であることが特に好ましい。
【0038】
縮合環化合物としては、例えば、前記一般式(1)で表される縮合官化合物、前記一般式(2)で表される縮合官化合物、または前記一般式(1)もしくは前記一般式(2)で表される構造を複数有する、縮合環化合物が挙げられる。
【0039】
縮合環化合物が前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を複数有する縮合環化合物である場合、その構造は、一つの化合物の中に前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を複数有する構造であれば特に制限されない。例えば、複数の前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造が、単結合、炭素数1~3のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基などの連結基で結合した構造であってもよい。また、例えば、前記一般式(1)または前記一般式(2)に含まれる任意の環(Cy1、Cy2またはCy3)を共有するようにして、複数の前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造が結合した構造であってもよい。そして、例えば、前記一般式(1)または前記一般式(2)に含まれる任意の環(Cy1、Cy2またはCy3)同士が縮合するようにして、複数の前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造が結合した構造であってもよい。
【0040】
これらの中でも、前記一般式(1)または前記一般式(2)に含まれる任意の環(Cy1、Cy2またはCy3)を共有するようにして、複数の前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造が結合した構造であることが好ましい。また、前記一般式(1)または前記一般式(2)に含まれるCy1またはCy2を共有するようにして、複数の前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造が結合した構造であることがより好ましい。そして、前記一般式(1)または前記一般式(2)に含まれるCy1およびCy2の少なくとも一方は、前記化学式(3)で表される構造、または前記化学式(3)で表される構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であって、これらの構造を共有するようにして、複数の前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造が結合した構造であることがさらに好ましい。
【0041】
縮合環化合物が前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を複数有する縮合環化合物である場合、一つの化合物中における、前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造の数は、特に制限されない。しかしながら、前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造の数は、例えば、2以上6以下であることがこの好ましく、2以上3以下であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
【0042】
縮合環化合物が前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を複数有する縮合環化合物である場合、縮合環化合物としては、前記一般式(1)で表される構造を複数有する縮合環化合物、または前記一般式(2)で表される構造を複数有する縮合環化合物が好ましい。また、前記一般式(1)で表される構造を複数有する縮合環化合物がより好ましい。
【0043】
これらのことから、縮合環化合物が前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を複数有する縮合環化合物である場合、縮合環化合物としては、前記一般式(1)または前記一般式(2)に含まれるCy1およびCy2の少なくとも一方は、前記化学式(3)で表される構造、または前記化学式(3)で表される構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であって、これらの構造を共有するようにして、2つの前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造が結合した構造であることが特に好ましい。
【0044】
なお、前記一般式(1)で表される縮合環化合物、前記一般式(2)で表される縮合環化合物、および前記一般式(1)もしくは前記一般式(2)で表される構造を複数有する、縮合環化合物のうち、前記一般式(1)で表される化合物が特に好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物は、下記一般式(1-1)~(1-15)および下記一般式(2-1)~(2-10)のいずれかで表される構造、またはこれらの構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であることが好ましい。また、下記一般式(1-1)~(1-11)のいずれかで表される構造、またはこれらの構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であることがより好ましい。さらに、下記一般式(1-1)の構造、下記一般式(1-2)の構造、下記一般式(1-3)の構造、下記一般式(1-8)の構造、またはこれらの構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であることがさらに好ましい。そして、下記一般式(1-1)の構造、下記一般式(1-2)の構造、下記一般式(1-3)の構造、下記式(1-8)の構造、下記一般式(1-2)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造、下記一般式(1-3)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造、または下記一般式(1-8)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であることがよりさらに好ましい。さらにまた、下記一般式(1-2)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造、下記一般式(1-3)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造、または下記一般式(1-8)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であることが特に好ましい。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
上記一般式(1-1)~(1-15)および上記一般式(2-1)~(2-10)において、X1、X2、およびY(すなわち、X1、X2、Y、R、R’およびR”)は、それぞれ独立して、前記一般式(1)および前記一般式(2)で述べたものと同様である。
【0050】
前記一般式(1)、前記一般式(2)、前記一般式(1-1)~(1-15)および前記一般式(2-1)~(2-10)において、X1、X2は、それぞれ独立して、O、S、Se、NR、またはCR’R”であることが好ましい。また、X1、X2は、それぞれ独立して、O、S、またはNRであることがより好ましく、O、またはNRであることがさらに好ましい。これらの場合、Rは、置換されたもしくは非置換のアリール基、または置換されたもしくは非置換のヘテロアリール基であることが好ましい。また、Rは、アルキル基(非置換のアルキル基)で置換されたアリール基、ヘテロアリール基(非置換のヘテロアリール基)で置換されたアリール基、ジアリールアミノ基(非置換のジアリールアミノ基)で置換されたアリール基、非置換のアリール基、アルキル基(非置換のアルキル基)で置換されたヘテロアリール基、または非置換のヘテロアリール基であることがより好ましい。さらに、Rは、アルキル基で置換されたフェニル基、ヘテロアリール基で置換されたフェニル基、ジアリールアミノ基で置換されたフェニル基、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基(好ましくは、m-テルフェニル基)、アルキル基で置換された上記一般式(3)で表される環から誘導される基、非置換の上記一般式(3)で表される環から誘導される基、またはジベンゾフラニル基であることがさらに好ましい。そして、Rは、tert-ブチル基(t-ブチル基)で置換されたフェニル基、カルバゾリル基で置換されたフェニル基、ジフェニルアミノ基で置換されたフェニル基、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基(好ましくは、m-テルフェニル基)、tert-ブチル基で置換された上記一般式(3)で表される環から誘導される基、非置換の上記一般式(3)で表される環から誘導される基、またはジベンゾフラニル基であることがよりさらに好ましい。さらに、Rは、tert-ブチル基で置換されたフェニル基、フェニル基、tert-ブチル基で置換された上記一般式(3)で表される環から誘導される基、または非置換の上記一般式(3)で表される環から誘導される基であることが特に好ましい。さらにまた、Rは、フェニル基、またはtert-ブチル基で置換された上記一般式(3)で表される環から誘導される基が極めて好ましい。また、これらの場合、R’およびR”は、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換のアルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であることが好ましい。また、R’およびR”は、それぞれ独立して、非置換のアルキル基、または置換されたもしくは非置換のアリール基であることがより好ましい。そして、R’およびR”は、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、または置換されたもしくは非置換のフェニル基で置換されたフェニル基であることがさらに好ましい。ここで、置換されたもしくは非置換のフェニル基で置換されたフェニル基としては、例えば、置換されたもしくは非置換のビフェニル基、および置換されたもしくは非置換のm-テルフェニル基等が挙げられる。
【0051】
前記一般式(1)、前記一般式(2)、前記一般式(1-1)~(1-15)および前記一般式(2-1)~(2-10)において、Yは、O、S、Se、NR、またはCR’R”であることが好ましい。この際、Rの好ましい態様は、上記のX1およびX2のNRにおけるRの好ましい態様と同様である。また、この際、R’およびR”は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換のアルキル基であることが好ましい。また、R’およびR”は、それぞれ独立して、非置換のアルキル基であることがより好ましい。そして、R’およびR”は、それぞれ独立して、メチル基であることがさらに好ましい。
【0052】
前記一般式(1)、前記一般式(2)、前記一般式(1-1)~(1-15)および前記一般式(2-1)~(2-10)において、X1、X2およびYは、それぞれ独立して、O、S、またはNRであることが特に好ましい。また、X1、X2およびYは、それぞれ独立して、O、またはNRであることが極めて好ましい。これらの場合、Rの好ましい態様は、上記のX1およびX2のNRにおけるRの好ましい態様と同様である。
【0053】
前記一般式(1)、前記一般式(2)、前記一般式(1-1)~(1-15)および前記一般式(2-1)~(2-10)において、X1、X2およびYは、それぞれ独立して、X1、X2およびY中の部分構造が縮合または結合することで、環構造を形成していてもよい。これらの中でも、X1、X2およびY中の部分構造が結合することで、環構造を形成することが好ましい。結合の態様は、単結合を介した結合や、または2価の連結基を介した結合であってもよいが、単結合を介した結合であることが好ましい。
【0054】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、ハロゲン原子としては、特に制限されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0055】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、アルキル基は、直鎖、分枝鎖、または環状であってもよい。アルキル基の炭素数は、特に制限されないが、例えば、1以上50以下であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数は、1以上30以下であることがより好ましく、1以上20以下であることがさらに好ましい。さらに、アルキル基の炭素数は、1以上10以下であることがよりさらに好ましく、1以上6以下であることが特に好ましい。アルキル基の具体例としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基(t-ブチル基。本明細書において、tert-をt-とも称する。)、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基(t-ペンチル基)、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基(4-t-ブチルシクロヘキシル基)、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基(t-オクチル基)、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、n-トリアコンチル基等が挙げられる
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、アリール基は、特に制限されないが、例えば、1以上の芳香環を含む炭化水素環から誘導された1価の基であることが好ましい。また、アリール基を構成する炭化水素環は、縮合環であってもよい。そして、アリール基が2以上の芳香環を含む場合、2以上の芳香環は互いに単結合を介して結合していてもよい。
【0056】
このように、アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。アリール基の環形成炭素数は、特に制限されないが、6以上30以下であることが好ましい。また、アリール基の環形成炭素数は、6以上20以下であることがより好ましく、6以上18以下であることがさらに好ましい。そして、アリール基の環形成炭素数は、6以上15以下であることがよりさらに好ましい。さらに、アリール基の環形成炭素数は、6以上12以下であることが特に好ましく、6であることが極めて好ましい。アリール基の具体例としては、特に制限されないが、例えば、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基(好ましくは、m-テルフェニル基)、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、クォーターフェニリル基、クインクフェニリル基、セクシフェニリル基、トリフェニルエニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基、およびこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0057】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、ヘテロアリール基は、特に制限されないが、例えば、環形成原子として1以上のヘテロ原子(例えば、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si))を有し、残りの環形成原子が炭素原子(C)である、1以上の芳香族複素環を含む環から誘導された1価であることが好ましい。ヘテロ原子を2以上含む場合、ヘテロ原子は互いに同じであってもよく、異なってもよい。また、ヘテロアリール基を構成する環は、縮合環であってもよい。そして、ヘテロアリール基が2以上の芳香族複素環を含む場合、2以上の芳香族複素環は互いに単結合を介して結合していてもよい。
【0058】
このように、ヘテロアリール基は、単環式ヘテロアリール基または多環式ヘテロアリール基であってもよい。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、特に制限されないが、2以上30以下であることが好ましい。また、ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上20以下であることがより好ましく、2以上10以下であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基の具体例としては、特に制限されないが、チオフェニル基、フラニル基、ピロニル基、イミダゾニル基、チアゾニル基、オキサゾニル基、オキサジアゾニル基、トリアゾニル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピリジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリールカルバゾリル基、N-ヘテロアリールカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロリル基、ジベンゾフラニル基、上記一般式(3)で表される環から誘導される基、およびこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0059】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、アルコキシ基は直鎖、分枝鎖、または環状であってもよい。アルコキシ基を構成するアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、上記のアルキル基の説明で述べたもの等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は、特に制限されないが、例えば、1以上20以下であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましい。アルコキシ基の具体例としては、特に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
【0060】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、アリールオキシ基を構成するアリール基は、特に制限されない。例えば、上記のアリール基の説明で述べたもの等が挙げられる。アリールオキシ基の具体例としては、特に制限されないが、ベンジルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、2-アズレニルオキシ基等が挙げられる。
【0061】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、ヘテロアリールオキシ基を構成するヘテロアリール基は、特に制限されない。例えば、上記のヘテロアリール基の説明で述べたもの等が挙げられる。ヘテロアリールオキシ基の具体例としては、特に制限されないが、2-フラニルオキシ基、2-チエニルオキシ基、2-インドリルオキシ基、3-インドリルオキシ基、2-ベンゾフリルオキシ基、2-ベンゾチエニルオキシ基等が挙げられる。
【0062】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、およびアリールヘテロアリールアミノ基は、それぞれ、特に制限されない。ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、およびアリールヘテロアリールアミノ基を構成するアリール基およびヘテロアリール基としては、例えば、上記のアリール基および上記のヘテロアリール基の説明でそれぞれ述べたもの等が挙げられる。ジアリールアミノ基の具体例としては、特に制限されないが、ジフェニルアミノ基、フェニル(ナフチル)アミノ基、ジ(ビフェニル)アミノ基、ジ(p-ターフェニル)アミノ基等が挙げられる。アリールヘテロアリールアミノ基の具体例としては、特に制限されないが、フェニル(2-ピリジル)アミノ基等が挙げられる。ジヘテロアリールアミノ基の具体例としては、特に制限されないが、ジ(2-ピリジル)アミノ基等が挙げられる。
【0063】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物において、いずれかの部位が置換されている場合、置換基の種類は、特に制限されない。置換基の種類は、重水素原子、ハロゲン原子、置換されたもしくは非置換のアルキル基、置換されたもしくは非置換のアリール基、置換されたもしくは非置換のヘテロアリール基、置換されたもしくは非置換のアルコキシ基、置換されたもしくは非置換のアリールオキシ基、置換されたもしくは非置換のヘテロアリールオキシ基、置換されたもしくは非置換のジアリールアミノ基、置換されたもしくは非置換(無置換)のジヘテロアリールアミノ基、または置換されたもしくは非置換(無置換)のアリールヘテロアリールアミノ基であることが好ましい。前記一般式(1)、前記一般式(2)、前記一般式(1-1)~(1-15)、前記一般式(2-1)~(2-10)、ならびに前記一般式(1-1)~(1-15)および前記一般式(2-1)~(2-10)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造において、置換された部位が2以上存在する場合、置換基の種類は互いに同じであってもよく、異なってもよい。
【0064】
上記の置換基がさらに置換されている場合、その置換基の種類は、特に制限されない。上記の置換基がさらに置換されている場合の、その置換基は、重水素原子、ハロゲン原子、非置換のアルキル基、非置換のアリール基、非置換のヘテロアリール基、非置換のアルコキシ基、非置換のアリールオキシ基、非置換のヘテロアリールオキシ基、非置換のジアリールアミノ基、非置換のジヘテロアリールアミノ基、または非置換のアリールヘテロアリールアミノ基であることが好ましい。上記の置換基がさらに置換されている場合において、その置換基が2以上存在するとき、置換基の種類は互いに同じであってもよく、異なってもよい。
【0065】
置換基は、単一の置換基中、または2以上の置換基中の部分構造が縮合または結合することで、環構造を形成していてもよい。
【0066】
なお、上記の置換基や、上記の置換基がさらに置換されている場合のその置換基における、各置換基の説明は、それぞれ、上記で説明したものと同様である。
【0067】
これらの中でも、置換基としては、置換されたもしくは非置換のアルキル基、置換されたもしくは非置換のアリール基、置換されたもしくは非置換のヘテロアリール基、または置換されたもしくは非置換のジアリールアミノ基であることが好ましい。また、置換されたもしくは非置換のアルキル基、置換されたもしくは非置換のフェニル基、置換されたもしくは非置換のカルバゾリル基、または置換されたもしくは非置換のジフェニルアミノ基であることがより好ましい。そして、置換基としては、非置換のアルキル基、アルキル基(非置換のアルキル基)で置換されたフェニル基、フェニル基、カルバゾリル基、またはジフェニルアミノ基であることがさらに好ましい。さらに、置換基としては、非置換の分岐状のアルキル基、フェニル基、直鎖状のアルキル基(非置換の直鎖状のアルキル基)で置換されたフェニル基、分岐状のアルキル基(非置換の分岐状のアルキル基)で置換されたフェニル基、カルバゾリル基、またはジフェニルアミノ基であることがよりさらに好ましい。さらにまた、置換基としては、tert-ブチル基、フェニル基、メチル基で置換されたフェニル基、tert-ブチル基で置換されたフェニル基、カルバゾリル基、またはジフェニルアミノ基であることがさらに特に好ましい。これらの中でも、置換基としては、tert-ブチル基が極めて好ましい。
【0068】
本発明の一実施形態において、Cy1、Cy2およびCy3の少なくとも1つが置換された芳香族性環状基であることが好ましい。この際、芳香族性環状基を置換する置換基は、非置換のアルキル基、アルキル基(非置換のアルキル基)で置換されたフェニル基、フェニル基、カルバゾリル基、またはジフェニルアミノ基であることが好ましい。また、芳香族性環状基を置換する置換基は、非置換のアルキル基、またはアルキル基で置換されたフェニル基、またはフェニル基であることがより好ましい。ここで、アルキル基で置換されたフェニル基としては、特に制限されないが、好ましい例として、メチル基で置換されたフェニル基、tert-ブチル基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アルキル基で置換されたフェニル基としては、特に制限されないが、好ましい具体例としては、ジメチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジ-tert-ブチル-フェニル基等が挙げられる。これらの中でも、芳香族性環状基を置換する置換基は、非置換のアルキル基であることがさらに好ましく、非置換の分岐状のアルキル基であることがよりさらに好ましく、tert-ブチル基であることが特に好ましい。
【0069】
本発明の一実施形態において、Cy1およびCy2の少なくとも一方は、上記化学式(3)で表される構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造であることが好ましい。この際、上記化学式(3)で表される構造を置換する置換基が、非置換のアルキル基、アルキル基(非置換のアルキル基)で置換されたフェニル基、またはフェニル基であることが好ましい。ここで、アルキル基で置換されたフェニル基としては、特に制限されないが、好ましい例として、tert-ブチル基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アルキル基で置換されたフェニル基としては、特に制限されないが、好ましい具体例としては、tert-ブチルフェニル基等が挙げられる。これらの中でも、上記化学式(3)で表される構造を置換する置換基は、非置換のアルキル基であることがより好ましく、非置換の分岐状のアルキル基であることがさらに好ましく、tert-ブチル基であることが特に好ましい。
【0070】
以下、本発明の一実施形態に係る縮合環化合物である化合物1~102、201~203、301~369、401~413、および501~532を具体的に例示する。ただし、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
ここで、上記化合物中、Phはフェニル基(非置換のフェニル基)を表す。
【0098】
これらの中でも、化合物2、化合物14、化合物97、化合物100、化合物101、化合物201~203または化合物301が特に好ましい。また、化合物100、化合物202または化合物301がさらに特に好ましい。そして、化合物100または化合物202が極めて好ましい。
【0099】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物では、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道)エネルギーは、特に制限されないが、-5.8eV以上であることが好ましい。また、HOMOエネルギーは、-5.6eV以上であることがより好ましく、-5.4eV以上であることがさらに好ましい。一方、HOMOエネルギーは、-4.6eV以下であることが好ましい。また、HOMOエネルギーは、-4.8eV以下であることがより好ましく、-5.0eV以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、有機電界発光素子で使用される一般的なホスト材料とのHOMOエネルギーとの差が小さくなる。これにより、正孔トラップ形成による駆動電圧の上昇等の好ましくない作用の発生がより抑制される。
【0100】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物では、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、最低空軌道)エネルギーは、特に制限されないが、-2.4eV以上であることが好ましい。また、LUMOエネルギーは、-2.2eV以上であることがより好ましく、-2.1eV以上であることがさらに好ましい。そして、LUMOエネルギーは、-2.0eV以上であることが特に好ましい。一方、LUMOエネルギーは、-0.8eV以下であることが好ましい。また、LUMOエネルギーは、-1.0eV以下であることがより好ましく、-1.1eV以下であることがさらに好ましい。そして、LUMOエネルギーは、-1.2eV以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、有機電界発光素子で使用される一般的なホスト材料のLUMOエネルギーとの差が小さくなる。これにより、電子トラップ形成による駆動電圧の上昇等の好ましくない作用の発生がより抑制される。
【0101】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物では、断熱第一励起一重項状態(S1)エネルギー(以下、「断熱S1励起エネルギー」とも称する)(eV)を光波長(nm)に換算して得られる蛍光波長のピークは、特に制限されない。ここで、当該蛍光波長のピークは、360nm以上515nm以下であることが好ましい。また、当該蛍光波長のピークは、380nm以上505nm以下であることがより好ましく、400nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。さらに、当該蛍光波長のピークは、420nm以上490nm以下であることがよりさらに好ましい。そして、当該蛍光波長のピークは、440nm以上480nm以下であることが特に好ましく、440nm以上465nm以下であることがさらに特に好ましい。またさらに、当該蛍光波長のピークは、455nm以上465nm以下であることが極めて好ましい。上記範囲であると、良好な発光、特に良好な青色発光を得ることができる。
【0102】
また、フォトルミネッセンス(Photoluminescence,PL)における蛍光発光のピーク波長の好ましい範囲についても、上記の断熱S1励起エネルギーを光波長に換算して得られる蛍光波長のピークの好ましい範囲と同様である。
【0103】
そして、フォトルミネッセンス(Photoluminescence,PL)における蛍光発光のスペクトル幅(蛍光発光スペクトルのピークの半値幅、FWHM)は、特に制限されないが、狭いほど好ましい。ここで、PLにおける蛍光発光のスペクトル幅は、具体的には、30nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい(下限値0nm超)。上記範囲であると、より高色純度の発光が得られる。
【0104】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物では、第一励起一重項状態(S1)の安定構造における振動子強度fは、特に制限されないが、0.1以上であることが好ましい。また、振動子強度fは、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。そして、振動子強度fは、0.4以上であることが特に好ましい。上記範囲であると、より高い蛍光発光強度が得られると考えられる。なお、振動子強度fの理論的な上限値は、分子に含まれる電子数となる。振動子強度fの上限値は、例えば、2や3であってもよいが、振動子強度fの上限値は、特にこれらに限定されるものではない。
【0105】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物では、再配置エネルギーは、0.1eV以下であることが好ましい。また、再配置エネルギーは、0.08eV以下であることがより好ましく、0.07eV以下であることがさらに好ましい。そして、再配置エネルギーは、0.065eV未満であることが特に好ましく、0.06eV以下であることが極めて好ましい(下限0eV)。上記範囲であると、より発光のスペクトル幅が狭い、高色純度の発光が得られると考えられる。
【0106】
上記のHOMO、LUMO、断熱S1励起エネルギーを光波長に換算して得られる蛍光波長のピーク、振動子強度fおよび再配置エネルギーは、密度汎関数法(Density Functional Theory,DFT)により、計算ソフトウェアとしてGaussian 16(Gaussian Inc.)を用いて算出することができる。なお、各計算方法の詳細は実施例に記載する。
【0107】
また、PLにおける蛍光発光のピーク波長および蛍光発光のスペクトル幅は、日立ハイテクサイエンス社(旧日立ハイテクノロジーズ社)製の分光蛍光光度計F7000を用いて測定することができる。なお、測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0108】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物の合成方法については、特に制限されず、公知の合成方法の知見に基づき合成することができる。
【0109】
例えば、上記の化合物2、上記の化合物301は、例えば、それぞれ、実施例に記載の方法によって合成することができる。他の前記一般式(1-2)で表される縮合環化合物や、前記一般式(1-2)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造で表される縮合環化合物についても、この方法に準じて合成することができる。例えば、この方法において、原料や反応条件等を変更することや、一部の手順を追加または除外すること、または上記の合成方法と、公知の合成方法とを適宜組み合わせること等によって合成することができる。
【0110】
また、例えば、上記の化合物14は、例えば、実施例に記載の方法によって合成することができる。他の前記一般式(1-1)で表される縮合環化合物や、前記一般式(1-1)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造で表される縮合環化合物についても、この方法に準じて合成することができる。例えば、この方法において、原料や反応条件等を変更することや、一部の手順を追加または除外すること、または上記の合成方法と、公知の合成方法とを適宜組み合わせること等によって合成することができる。
【0111】
そして、例えば、上記の化合物97、化合物100および化合物101は、例えば、それぞれ、実施例に記載の方法によって合成することができる。他の前記一般式(1-3)で表される縮合環化合物や、前記一般式(1-3)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造で表される縮合環化合物についても、これらの方法に準じて合成することができる。例えば、これらの方法において、原料や反応条件等を変更することや、一部の手順を追加または除外すること、または上記の合成方法と、公知の合成方法を組み合わせる等によって合成することができる。
【0112】
さらに、例えば、上記の化合物201~203は、例えば、それぞれ、実施例に記載の方法によって合成することができる。他の前記一般式(1-8)で表される縮合環化合物や、前記一般式(1-8)の構造の少なくとも一つの水素原子が置換された構造で表される縮合環化合物についても、これらの方法に準じて合成することができる。例えば、これらの方法において、原料や反応条件等を変更することや、一部の手順を追加または除外すること、または上記の合成方法と、公知の合成方法を組み合わせる等によって合成することができる。
【0113】
さらにまた、その他の前記一般式(1)で表される縮合環化合物、前記一般式(2)で表される縮合環化合物、および前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を複数有する縮合環化合物についても、これらの化合物と共通する骨格構造、または類似する骨格構造を有する。このことから、その他の前記一般式(1)で表される縮合環化合物、前記一般式(2)で表される縮合環化合物、および前記一般式(1)または前記一般式(2)で表される構造を複数有する縮合環化合物もまた、これらの方法に準じて合成することができる。例えば、これらの方法において、原料や反応条件等を適宜変更することや、一部の手順を追加または除外すること、または上記の合成方法と、公知の合成方法とを適宜組み合わせること等によって合成することができる。
【0114】
本発明の一実施形態に係る縮合環化合物の構造の確認方法は、特に制限されない。本発明の一実施形態に係る縮合環化合物の構造は、例えば、公知の方法(例えば、NMR、LC-MS等)により確認することができる。
【0115】
<組成物>
本発明の他の一形態は、上記の縮合環化合物を含む、組成物に関する。本発明の一実施形態に係る組成物は、上記の縮合環化合物と、電界発光素子に使用される他の材料とを含むことが好ましい。また、本発明の一実施形態に係る組成物は、上記の縮合環化合物と、有機電界発光素子に使用される他の材料とを含むことがより好ましい。
【0116】
電界発光素子および有機電界発光素子に使用される他の材料としては、特に制限されず、それぞれ公知の材料が挙げられる。例えば、有機電界発光素子に使用される他の材料としては、後述する有機電界発光素子の説明において、各層を構成する材料として挙げるものを使用することができる。これらの中でも、後述する有機電界発光素子の発光層の説明において挙げる、ドーパント材料またはホスト材料であることが好ましい。また、後述する有機電界発光素子の発光層の説明において挙げる、燐光材料(燐光性化合物)、熱活性化遅延蛍光材料(TADF材料、TADF性化合物)、またはホスト材料であることがより好ましい。さらに、ホスト材料であるか、または燐光性化合物もしくはTADF性化合物、およびホスト材料であることがさらに好ましい。そして、燐光性化合物またはTADF性を有する化合物、およびホスト材料であることが特に好ましい。また、さらに、燐光性化合物およびホスト材料であることが極めて好ましい。ここで、燐光性化合物としては、後述する有機電界発光素子の発光層の説明において挙げる、燐光錯体が好ましい。また、燐光性化合物としては、後述する有機電界発光素子の発光層の説明において挙げる、白金錯体がより好ましい。
【0117】
これより、本発明の好ましい一実施形態としては、上記の縮合環化合物に加えて、後述するTADF性化合物または燐光性化合物をさらに含む、組成物が挙げられる。また、この際、燐光性化合物は、燐光錯体であることが好ましく、後述する白金錯体であることがより好ましい。有機電界発光素子用材料、特に発光層材料が、上記の縮合環化合物に加えて、TADF性化合物または燐光性化合物を含むことにより、有機電界発光素子の発光効率および素子寿命が顕著に向上させることができる。この理由は、後述する有機電界発光素子の発光層の説明に記載する通りである。
【0118】
本発明の一実施形態において、組成物は、溶剤をさらに含む、液状組成物であってもよい。溶剤としては、特に限定されないが、大気圧(101.3kPa、1atm)における沸点が100℃以上350℃以下である溶剤であることが好ましい。溶剤の大気圧における沸点は、150℃以上320℃以下であることがより好ましく、180℃以上300℃以下であることがさらに好ましい。溶剤の大気圧における沸点が上記範囲であると、湿式成膜法、特にインクジェット法における成膜性や工程性が向上する。
【0119】
大気圧における沸点が100℃以上350℃以下である溶剤は、特に制限されず、公知の溶剤を適宜採用することができる。以下に、大気圧における沸点が100℃以上350℃以下である溶剤を具体的に例示するが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【0120】
炭化水素系溶剤としては、オクタン(octane)、ノナン(nonane)、デカン(decane)、ウンデカン(undecane)、ドデカン(dodecane)等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、エチルベンゼン(ethylbenzene)、n-プロピルベンゼン(n-propylbenzene)、iso-プロピルベンゼン(iso-プロピルベンゼン(n-propylbenzene)、メシチレン(mesitylene)、n-ブチルベンゼン(n-butylbenzene)、sec-ブチルベンゼン(sec-butylbenzene)、1-フェニルペンタン(1-phenylpentane)、2-フェニルペンタン(2-phenylpentane)、3-フェニルペンタン(3-phenylpentane)、フェニルシクロペンタン(phenylcyclopentane)、フェニルシクロヘキサン(phenylcyclohexane)、2-エチルビフェニル(2-ethylbiphenyl)、3-エチルビフェニル(3-ethylbiphenyl)等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、1,2-ジエトキシエタン(1,2-diethoxyethane)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diethyleneglycoldimethylether)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(diethyleneglycoldiethylether)、アニソール(anisole)、エトキシベンゼン(ethoxybenzene)、3-メチルアニソール(3-Methylanisole)、m-ジメトキシベンゼン(m-dimethoxybenzene)等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、2-ヘキサノン(2-hexanone)、3-ヘキサノン(3-hexanone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、2-ヘプタノン(2-heptanone)、3-ヘプタノン(3-heptanone)、4-ヘプタノン(4-heptanone)、シクロヘプタノン(cycloheptanone)等が挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸ブチル(butylacetate)、プロピオン酸ブチル(butylpropionate)、酪酸ブチル(heptylbutyrate)、プロピレンカーボネート(propylenecarbonate)、メチルベンゾエート(安息香酸メチル)(methylbenzoate)、エチルベンゾエート(ethylbenzoate)、1-プロピルベンゾエート(1-propylbenzoate)、1-ブチルベンゾエート(1-butylbenzoate)等が挙げられる。ニトリル系溶剤としては、ベンゾニトリル(benzonitrile)、3-メチルベンゾニトリル(3-methylbenzonitrile)等が挙げられる。アミド系溶剤としては、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)、N-メチルピロリドン(methylpyrrolidone)等が挙げられる。これらの溶剤は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
本発明の一形態に係る組成物は、有機電界発光素子用材料として用いられることが好ましい。すなわち、本発明の他の一形態は、上記の組成物を含む、有機電界発光素子用材料に関する。また、有機電界発光素子用材料は、発光層用材料であることが好ましい。
【0122】
本発明の好ましい一実施形態に係る有機電界発光素子用材料としては、例えば、液状組成物ではない(溶剤を実質的に含有しない)上記の組成物が挙げられる。また、有機電界発光素子用材料が液状組成物ではない場合についても、有機電界発光素子用材料は、発光層用材料であることが好ましい。
【0123】
ここで、溶剤を実質的に含有しないとは、組成物中の溶剤の含有量が、組成物の総質量に対して、1質量%未満であることを表す。有機電界発光素子用材料が液状組成物ではない場合、溶剤を実質的に含有しないことが好ましく、全く含まない(組成物の総質量に対して、0質量%である)ことが好ましい。
【0124】
有機電界発光素子用材料(特に、発光層用材料)の総質量(液状組成物の場合は溶剤を除く総質量)に対する上記の縮合環化合物の好ましい含有量は、後述する有機電界発光素子の発光層における、発光層の総質量に対する上記の縮合環化合物の好ましい含有量と同様である。
【0125】
また、有機電界発光素子用材料(特に、発光層用材料)の総質量(液状組成物の場合は溶剤を除く総質量)に対する燐光性化合物またはTADF性化合物(好ましくは、燐光性化合物)の好ましい含有量は、後述する有機電界発光素子の発光層における、発光層の総質量に対する燐光性化合物またはTADF性化合物(好ましくは、燐光性化合物)の好ましい含有量と同様である。
【0126】
なお、有機電界発光素子用材料(特に、発光層用材料)中の、上記の縮合環化合物100質量部に対する燐光性化合物またはTADF性化合物(好ましくは、燐光性化合物)の好ましい含有量(質量部)もまた、後述する有機電界発光素子の発光層における、上記の縮合環化合物100質量部に対する燐光性化合物またはTADF性化合物(好ましくは、燐光性化合物)の好ましい含有量(質量部)と同様である。
【0127】
そして、有機電界発光素子用材料(特に、発光層用材料)の総質量(液状組成物の場合は溶剤を除く総質量)に対するホスト材料の好ましい含有量は、後述する有機電界発光素子の発光層における、発光層の総質量に対するホスト材料の好ましい含有量と同様である。
【0128】
なお、有機電界発光素子用材料(特に、発光層用材料)中の、上記の縮合環化合物100質量部に対するホスト材料の好ましい含有量(質量部)もまた、後述する有機電界発光素子の発光層における、上記の縮合環化合物100質量部に対するホスト材料の好ましい含有量(質量部)と同様である。
【0129】
有機電界発光素子用材料(特に、発光層用材料)中の上記の縮合環化合物、燐光性化合物またはTADF性化合物、およびホスト材料の添加量が、それぞれ上記のような範囲であると、発光の色純度により優れ、より高い発光効率およびより長寿命の有機電界発光素子が得られる。
【0130】
<電子素子>
本発明の他の一形態は、上記の縮合環化合物、上記の組成物、または上記の有機電界発光素子用材料を含む、電子素子に関する。
【0131】
本発明の好ましい一実施形態に係る電子素子としては、例えば、上記の縮合環化合物、または上記の組成物を含み、ここで、当該組成物は、液状組成物ではない(溶剤を実質的に含有しない)ものが挙げられる。
【0132】
本発明の一実施形態による電子素子は、特に制限されないが、例えば、第1電極、第2電極、および単一または複数の層(例えば、有機層等)を含む。第2電極は第1電極の上に配置される。
【0133】
本明細書において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」または「上部に」あるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」または「下部に」にあるとする場合、これは他の部分の「直下」にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。また、本出願において、「上に」配置されるとは、上部だけでなく下部または下側の面に配置される場合も含む。
【0134】
本発明の一実施形態において、電子素子は、有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、有機EL素子)であることが好ましい。すなわち、本発明の他の一形態は、第1電極、第2電極、ならびに第1電極および第2電極の間に配置された単一または複数の有機層を備えており、有機層のうちの少なくとも1つは、上記の縮合環化合物、上記の組成物、または上記の有機電界発光素子用材料を含む、有機電界発光素子に関する。上記の縮合環化合物、上記の組成物または上記の有機電界発光素子用材料を含む有機層は、発光層を含むことが好ましい。これらの有機電界発光素子によれば、高色純度の発光、特に高色純度の青色発光を実現することができる。
【0135】
このように、発光層は、少なくとも1つの上記の縮合環化合物を含むことが好ましい。
【0136】
発光層の総質量に対する上記の縮合環化合物の含有量は、特に制限されないが、0.05質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることがさらに好ましい。また、発光層の総質量に対する上記の縮合環化合物の含有量は、50質量%以下であることが好ましい。また、当該含有量は、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、発光の色純度により優れ、より高い発光効率およびより長寿命の有機電界発光素子が得られる。
【0137】
発光層は、特に制限されないが、例えば、ホスト材料およびドーパント材料を含んでいてもよい。上記の縮合環化合物は、ホスト材料として用いても、ドーパント材料として用いてもよいが、ドーパント材料として用いることが好ましい。
【0138】
発光層は、特に制限されないが、例えば、公知の発光層用材料を含んでいてもよい。これより、発光層が上記の縮合環化合物を含む場合においても、発光層は、さらに他の化合物を含んでいてもよい。例えば、発光層は、上記の縮合環化合物に加えて、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオランテン誘導体、クリセン誘導体、ジヒドロベンゾアントラセン誘導体、またはトリフェニレン誘導体等を含むものであってもよい。
【0139】
また、発光層は、上記の縮合環化合物に加えて、公知の熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)材料(TADF性化合物)を含むことが好ましい。TADFは、一重項準位と三重項準位とのエネルギー差(ΔEST)の小さな化合物上で、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が生じる現象とされている。TADF性化合物とは、かような現象が生じる化合物を表す。
【0140】
熱活性化遅延蛍光材料(TADF材料、TADF性化合物)としては、例えば、以下のような化合物等が挙げられる。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
また、発光層は、上記の縮合環化合物に加えて、燐光材料(燐光性化合物)を含むことが好ましい。燐光性化合物としては、特に制限されず公知の燐光材料を使用することができる。これらの中でも、燐光錯体が好ましく、白金錯体がより好ましい。
【0145】
燐光材料(燐光性化合物)としては、例えば、以下のような化合物等が挙げられる。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
発光層が、上記の縮合環化合物に加えて、TADF材料(TADF性化合物)または燐光材料(燐光性化合物)を含むことにより、有機電界発光素子の発光効率および素子寿命を顕著に向上させることができる。この理由は、以下のように推測される。
【0152】
公知のように、有機電界発光素子の発光層中では、正孔と電子の再結合により発生する一重項励起子と三重項励起子が1:3の割合で発生するとされている。そして、蛍光材料のみを発光材料として含む素子では、一重項励起子のみが発光に関与するのに対し、発光材料としてTADF性化合物または燐光性化合物を含む素子では、一重項励起子と三重項励起子の両方を発光に用いることが可能となる。このため、これらを含む素子では、発光効率が顕著に向上する。一方、TADF性化合物または燐光性化合物上に生じた励起子は、一般的に1μs以上の長い寿命を有する。励起子は、高いエネルギーを有する不安定な状態である。このため、励起子は、存在している間に、素子寿命の低下につながる材料劣化を引き起こす可能性がある。発光層中に、上記の縮合環化合物に加えて、TADF性化合物または燐光性化合物が存在する場合、TADF性化合物または燐光性化合物上で励起子が高効率に発生する。さらに、その励起子からFRET(F▲oe(ウムラウト記号付きの小文字のo)▼rster Resonance Energy Transfer)機構で上記の縮合環化合物へと、エネルギーが受け渡される。その結果、上記の縮合環化合物からの高効率な蛍光発光が得られるとともに、TADF性化合物または燐光性化合物上に励起子が存在する時間が短くなる。これより、材料劣化の可能性が顕著に小さくなり、素子寿命が顕著に向上する。
【0153】
発光層の総質量に対するTADF性化合物または燐光性化合物(好ましくは、燐光性化合物)の含有量は、特に制限されないが、0.1質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。そして、当該含有量は、3質量%以上であることがよりさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。また、発光層の総質量に対するTADF性化合物または燐光性化合物(好ましくは、燐光性化合物)の含有量は、50質量%以下であることが好ましい。また、当該含有量は、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。なお、発光層がTADF性化合物および燐光性化合物を共に含む場合、これらの合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。これらの範囲であると、発光の色純度により優れ、より高い発光効率およびより長寿命の有機電界発光素子が得られる。
【0154】
発光層がTADF性化合物または燐光性化合物(好ましくは、燐光性化合物)を含む場合、その含有量は、特に制限されないが、上記の縮合環化合物100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、上記の縮合環化合物100質量部に対して、150質量部以上であることがより好ましく、200質量部以上であることがさらに好ましい。また、TADF性化合物または燐光性化合物(好ましくは、燐光性化合物)の含有量は、上記の縮合環化合物100質量部に対して、10000質量部以下であることが好ましい。また、当該含有量は、上記の縮合環化合物100質量部に対して、7500質量部以下であることがより好ましく、5000質量部以下であることがさらに好ましい。なお、発光層がTADF性化合物および燐光性化合物を共に含む場合、これらの合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。これらの範囲であると、発光の色純度により優れ、より高い発光効率およびより長寿命の有機電界発光素子が得られる。
【0155】
発光層は、特に制限されないが、例えば、公知のホスト材料を含んでいてもよい。例えば、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、mCBP(3,3’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、mCP(1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、PPF(2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]フラン)、TcTa(4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン)、およびTPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン)のうち少なくとも一つを含んでもよい。ただし、これに限らず、発光層は、例えば、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、CBP(4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、PVK(ポリ(n-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリレン)、CDBP(4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO3(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO4(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)、またはPPF(2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾフラン)等を含んでいてもよい。
【0156】
また、発光層は、ホスト材料として、-5.2eV以下のHOMOを有する材料を含むことが好ましい。また、発光層は、ホスト材料として、-1.4eV以下のLUMOを有する材料を含むことが好ましい。HOMOおよびLUMOが低く、電子輸送性が高いホスト材料を用いることで、有機電界発光素子、特に青色の有機電界発光素子では駆動耐久性が向上する等の利点があるからである。かような材料としては、特に制限されないが、好ましい例としては、“An Alternative Host Material for Long-Lifespan Blue Organic Light-Emitting Diodes Using Thermally Activated Delayed Fluorescence” Soo-Ghang Ihn, Namheon Lee, Soon Ok Jeon, Myungsun Sim, Hosuk Kang, Yongsik Jung, Dal Ho Huh, Young Mok Son, Sae Youn Lee, Masaki Numata, Hiroshi Miyazaki, Rafael G▲o´(アキュート・アクセント付きの小文字のo)▼mez-Bombarelli, Jorge Aguilera-Iparraguirre, Timothy Hirzel, Al▲a´(アキュート・アクセント付きの小文字のa)▼n Aspuru-Guzik, Sunghan Kim, and Sangyoon Lee, Advanced Science News 2017, 4, 1600502に開示されている下記化合物等が挙げられる。かようなホスト材料との組み合わせで発光層を形成する場合、従来の青色発光材料は、深い正孔トラップとなり駆動電圧の上昇等、好ましくない作用を生じさせる場合がある。一方、上記の縮合環化合物は、正孔トラップ性が弱く、駆動電圧の上昇等の発生を抑制するよう作用することが期待される。
【0157】
【0158】
また、発光層は、ホスト材料として、下記の化合物H-H1や、下記の化合物H-E1を含んでいてもよい。
【0159】
【0160】
これらの中でも、発光層は、ホスト材料として、上記の化合物H-H1または上記の化合物H-E1を含むことが好ましく、上記の化合物H-H1および上記の化合物H-E1を含むことがより好ましい。
【0161】
発光層の総質量に対するホスト材料の含有量は、特に制限されないが、5質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、発光層の総質量に対するホスト材料の含有量は、99質量%以下であることが好ましい。また、当該含有量は、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、発光の色純度により優れ、より高い発光効率およびより長寿命の有機電界発光素子が得られる。
【0162】
発光層がホスト材料を含む場合、その含有量は、特に制限されないが、上記の縮合環化合物100質量部に対して、1000質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、上記の縮合環化合物100質量部に対して、2000質量部以上であることがより好ましく、3000質量部以上であることがさらに好ましい。また、ホスト材料の含有量は、上記の縮合環化合物100質量部に対して、200000質量部以下であることが好ましい。また、当該含有量は、上記の縮合環化合物100質量部に対して、150000質量部以下であることがより好ましく、100000質量部以下であることがさらに好ましい。これらの範囲であると、発光の色純度により優れ、より高い発光効率およびより長寿命の有機電界発光素子が得られる。
【0163】
発光層は、特に制限されないが、例えば、公知のドーパント材料を含んでいてもよい。例えば、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi))、ペリレンもしくはその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBP))、またはピレンもしくはその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N,N-ジフェニルアミノ)ピレン)等を含んでいてもよい。
【0164】
発光層は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、発光層は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0165】
発光層の厚さは、特に制限されないが、1nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上30nm以下であることが好ましい。
【0166】
発光層の発光波長(すなわち、発光層を有する有機電界発光素子の発光波長)は、特に制限されない。しかしながら、発光層は、360nm以上515nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することが好ましい。また、発光層は、380nm以上505nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することがより好ましい。さらに、発光層は、400nm以上500nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することがさらに好ましい。そして、発光層は、420nm以上490nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することがよりさらに好ましい。そしてまた、発光層は、440nm以上480nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することが特に好ましく、455nm以上470nm以下の波長領域にピークを有する光を発光することさらに特に好ましい。さらにまた、発光層は、455nm以上465nm以下の波長領域にピークを有する光を発光すること極めて好ましい。上記範囲であると、良好な発光、特に良好な青色発光を得ることができる。
【0167】
発光層の発光のスペクトル幅(発光スペクトルのピークの半値幅、FWHM)(すなわち、発光層を有する有機電界発光素子の発光のスペクトル幅)は、特に制限されないが、狭いほど好ましい。ここで、発光のスペクトル幅は、具体的には、30nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい(下限値0nm超)。上記範囲であると、より高色純度の発光が得られる。
【0168】
発光層の成膜方法は、特に制限されないが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0169】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子が発光層以外の層(例えば、有機層等)をさらに有する場合について、詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0170】
図1~
図3は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を示す断面模式図である。しかしながら、本発明に係る有機電界発光素子の構造は、
図1~
図3に示す形態に限定されるものではない。
【0171】
図1は、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面模式図である。本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10は、順番に積層された基板1、第1電極2、正孔輸送領域3、発光層4、電子輸送領域5、および第2電極6を含む。
【0172】
図2は、本発明の他の一実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面模式図である。本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10は、順番に積層された基板1、第1電極2、正孔輸送領域3、発光層4、電子輸送領域5、および第2電極6を含む。
図2では、正孔輸送領域3は、順番に積層された正孔注入層31および正孔輸送層32を含む。また、
図2では、電子輸送領域5は、順番に積層された電子輸送層52および電子注入層51を含む。
【0173】
図3は、本発明のその他の一実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面模式図である。本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子10は、順番に積層された基板1、第1電極2、正孔輸送領域3、発光層4、電子輸送領域5、および第2電極6を含む。
図3では、正孔輸送領域3は、順番に積層された正孔注入層31、正孔輸送層32、および電子阻止層33を含む。また、
図3では、電子輸送領域5は、順番に積層された正孔阻止層53、電子輸送層52、および電子注入層51を含む。
【0174】
以下、基板、ならびに各領域および各層について詳細に説明する。
【0175】
(基板1)
有機電界発光素子10は、基板1を有していてもよい。基板1は、一般的な有機電界発光素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板1は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板などの半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0176】
(第1電極2)
第1電極2は、導電性を有する。本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子において、第1電極2は正極であることが好ましい。また、第1電極2は画素電極であることが好ましい。そして、第1電極2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極であることが好ましい。
【0177】
第1電極2を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、金属、金属合金または導電性化合物等が挙げられる。第1電極2が透過型電極であれば、第1電極2は透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、またはITZO(indium tin zinc oxide)等を含むことが好ましい。また、第1電極2が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)等を含むことが好ましい。
【0178】
第1電極2は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、第1電極2は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0179】
第1電極2の厚さは、特に制限されないが、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがより好ましい。
【0180】
(正孔輸送領域3)
正孔輸送領域3は第1電極2の上に提供される。正孔輸送領域3は、正孔注入層31、正孔輸送層32、正孔バッファ層(図示せず)、および電子阻止層33のうち少なくとも一つを含む。
【0181】
正孔輸送領域3は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、正孔輸送領域3は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0182】
例えば、正孔輸送領域3は、正孔注入層31または正孔輸送層32の単一の層の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、正孔注入材料および正孔輸送材料で形成された単一の層の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、第1電極2から順番に積層された、正孔注入層31/正孔輸送層32の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、正孔注入層31/正孔輸送層32/正孔バッファ層(図示せず)の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、第1電極2から順番に積層された、正孔注入層31/正孔バッファ層(図示せず)の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、第1電極2から順番に積層された、正孔輸送層32/正孔バッファ層(図示せず)の構造を有していてもよい。また、例えば、正孔輸送領域3は、第1電極2から順番に積層された、正孔注入層31/正孔輸送層32/電子阻止層33の構造を有していてもよい。ただし、正孔輸送領域3の構造はこれらに限定されるものではない。
【0183】
正孔注入層31や、その他の正孔輸送領域3を構成する各層は、特に制限されないが、例えば、公知の正孔注入材料を含んでいてもよい。正孔注入材料として、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、DNTPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン)、m-MTDATA(4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、TDATA(4,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2-TNATA(4,4’,4”-トリス{N,-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ}-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート))、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS(ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、トリフェニルアミンを含むポリエテールケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、HAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)、F6-TCNNQ(1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-2,6-ナフトキノジメタン)等が挙げられる。
【0184】
また、正孔輸送層32や、その他の正孔輸送領域3を構成する各層は、特に制限されないが、例えば、公知の正孔輸送材料を含んでいてもよい。正孔輸送材料としては、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)等のトリフェニルアミン系誘導体、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4,4’-シクロへキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4,4’-ビス[N,N’-(3-トリル)アミノ]-3,3’-ジメチルビフェニル)、mCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)、下記の化合物H1、下記の化合物H2、下記の化合物HT1等が挙げられる。
【0185】
【0186】
【0187】
正孔輸送領域3は、上述した正孔注入材料や正孔輸送材料以外にも、導電性を向上するために電荷生成物質をさらに含んでいてもよい。電荷発生物質は、正孔輸送領域3内、またはこれを構成する各層内に、均一にまたは不均一に分散される。電荷発生物質としては、特に制限されないが、例えば、公知の電荷発生物質が挙げられる。電荷発生物質としては、例えば、p-ドーパント(dopant)等が挙げられる。p-ドーパントとしては、例えば、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)、F4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノキノジメタン)等のキノン誘導体、タングステン酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物、シアノ基含有化合物等が挙げられる。
【0188】
正孔バッファ層(図示せず)は、発光層4から放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層(図示せず)に含まれる材料としては、特に制限されず、例えば、公知の正孔バッファ層(図示せず)に使用される材料を使用することができる。また、例えば、上述したような正孔輸送領域3に含まれうる化合物を使用することができる。
【0189】
電子阻止層33は、電子輸送領域5から正孔輸送領域3への電子の注入を防止する役割をする層である。電子阻止層33に含まれる材料としては、特に制限されず、公知の電子阻止層33に使用される材料を使用することができる。例えば、上記の発光層に含まれるホスト材料等が挙げられ、ホスト材料である上記の化合物H-H1等が好ましい一例として挙げられる。
【0190】
正孔輸送領域3の厚さは、特に制限されないが、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、10nm以上500nm以下であることがより好ましい。また、正孔輸送領域3を構成する各層については、正孔注入層31の厚さは、特に制限されないが、3nm以上100nm以下であることが好ましい。正孔輸送層32の厚さは、特に制限されないが、3nm以上200nm以下であることが好ましく、3nm以上100nm以下であることがより好ましい。電子阻止層33の厚さは、特に制限されないが、1nm以上100nm以下であることが好ましい。なお、正孔バッファ層(図示せず)の厚さは、正孔バッファ層の機能を発揮しつつ、有機電界発光素子としての機能を妨げない範囲であれば、特に制限されない。正孔輸送領域3、正孔注入層31、正孔輸送層32、または電子阻止層33の厚さが上記範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇を抑制しつつ、より良好な正孔輸送特性が得られる。
【0191】
正孔輸送領域3や、これを構成する各層の成膜方法は、特に制限されないが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0192】
(発光層4)
発光層4は正孔輸送領域3の上に配置される。発光層4の詳細は、上記説明した通りである。
【0193】
(電子輸送領域5)
電子輸送領域5は発光層4の上に配置される。電子輸送領域5は、電子注入層51、電子輸送層52および正孔阻止層53のうち少なくとも一つを含むが、実施形態はこれに限定されない。
【0194】
電子輸送領域5は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、電子輸送領域5は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。例えば、電子輸送領域5は、電子注入層51または電子輸送層52の単一の層の構造を有していてもよい。また、例えば、電子輸送領域5は、電子注入材料および電子輸送材料からなる単一の層の構造を有していてもよい。また、例えば、電子輸送領域5は、発光層4から順番に積層された、電子輸送層52/電子注入層51の構造を有していてもよい。また、例えば、電子輸送領域5は、発光層4から順番に積層された、正孔阻止層53/電子輸送層52/電子注入層51の構造を有していてもよい。ただし、電子輸送領域5の構造はこれらに限定されるものではない。
【0195】
電子注入層51や、その他の電子輸送領域5を構成する各層は、特に制限されないが、例えば、公知の電子注入材料を含んでいてもよい。電子注入材料としては、例えば、LiQ(Lithum quinolate)、Li2O、BaO、Ybのようなランタン族金属、およびLiF、NaCl、CsF、RbClのようなハロゲン化金属等が挙げられる。電子注入層51は、特に制限されないが、例えば、後述する電子輸送物質と、絶縁性の有機金属塩とを含んでいてもよい。有機金属塩としては、特に制限されないが、例えば、エネルギーバンドギャップが4eV以上の物質であってもよい。有機金属塩としては、例えば、酢酸金属塩、安息香酸塩金属塩、アセト酢酸金属塩、アセチルアセトナート金属塩、およびステアリン酸金属塩等が挙げられる。
【0196】
電子輸送層52や、その他の電子輸送領域5を構成する各層は、特に制限されないが、例えば、公知の電子輸送材料を含んでいてもよい。電子輸送材料としては、例えば、アントラセン系化合物、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,4,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニル)-4-フェニル-5-tert-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq2(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、LiQ(Lithum quinolate)、下記の化合物ET1等が挙げられる。
【0197】
【0198】
正孔阻止層53は、正孔輸送領域3から電子輸送領域5への正孔の注入を防止する役割をする層である。正孔阻止層53に含まれる材料としては、特に制限されず、公知の正孔阻止層53に使用される材料を使用することができる。正孔阻止層53は、例えば、公知の正孔阻止材料を含んでいてもよい。正孔阻止材料としては、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BpHen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)等が挙げられる。また、例えば、上記の発光層に含まれるホスト材料等が挙げられ、ホスト材料である上記の化合物H-E1等が好ましい一例として挙げられる。
【0199】
電子輸送領域5の厚さは、特に制限されないが、0.1nm以上210nm以下であることが好ましい。また電子輸送領域5の厚さは、30nm以上150nm以下であることがより好ましく、100nm以上150nm以下であることがさらに好ましい。また、電子輸送領域5を構成する各層については、電子輸送層52の厚さは、特に制限されないが、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上50nm以下であることが好ましい。正孔阻止層53の厚さは、特に制限されないが、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上50nm以下であることがより好ましい。電子注入層51の厚さは、特に制限されないが、例えば、0.1nm以上10nm以下であることが好ましく、0.3nm以上9nm以下であることがより好ましい。電子注入層51の厚さが上記範囲である場合、実質的な駆動電圧の上昇を抑制しつつ、より良好な電子注入特性が得られる。また、電子輸送領域5、電子注入層51、電子輸送層52または正孔阻止層53の厚さが上記範囲である場合、実質的な駆動電圧の上昇を抑制しつつ、より良好な電子輸送特性が得られる。
【0200】
電子輸送領域5や、これを構成する各層の成膜方法は、特に制限されないが、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0201】
第2電極6は、電子輸送領域5の上に配置される。第2電極6は、導電性を有する。本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子において、第2電極6は、共通電極または負極であることが好ましい。そして、第2電極6は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極であることが好ましい。
【0202】
第2電極6を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、金属、金属合金、および導電性化合物等が挙げられる。第2電極6が透過型電極であれば、第2電極6は、透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、またはITZO等を含むことが好ましい。第2電極6が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極6は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)等を含むことが好ましい。
【0203】
第2電極6は、単一の物質からなる単一の層であってもよく、複数の互いに異なる物質からなる単一の層であってもよい。また、第2電極6は、複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造であってもよい。
【0204】
第2電極6の厚さは、特に制限されないが、10nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0205】
第2電極6は、補助電極(図示せず)と連結されていてもよい。第2電極6が補助電極と連結されることで、第2電極6の抵抗をより減少させることができる。
【0206】
また、第2電極6の上には、キャッピング層(図示せず)がさらに配置されていてもよい。キャッピング層(図示せず)は、特に制限されないが、例えば、α-NPD、NPB、TPD、m-MTDATA、Alq3、CuPc、TPD15(N4,N4,N4’,N4’-テトラ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリ-9-カルバゾリルトリフェニルアミン)、またはN,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)等を含む層であってもよい。
【0207】
なお、上記の各層および各電極を構成する材料は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0208】
図1~3の有機電界発光素子10において、上記の縮合環化合物、上記の組成物、または上記の有機電界発光素子用材料は、発光層4に含まれることが好ましいが、発光層4以外の有機層に含まれていてもよい。また、上記の縮合環化合物、上記の組成物、または上記の有機電界発光素子用材料は、発光層4と、発光層4以外の有機層とに含まれていてもよい。
【0209】
図1~3の有機電界発光素子10において、第1電極2と第2電極6にそれぞれ電圧が印加されることで、第1電極2から注入された正孔(hole)は正孔輸送領域3を介して発光層4に移動し、第2電極6から注入された電子は電子輸送領域5を経て発光層4に移動する。電子と正孔は発光層4で再結合して励起子(exciton)を生成し、励起子が励起状態から基底状態に落ちながら発光する。
【実施例】
【0210】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0211】
以下、化合物1~102、201~203、301~369、401~413、および501~532とは、それぞれ、上記の縮合環化合物の説明において、具体例として挙げた化合物1~102、201~203、301~369、401~413、および501~532と同様のものを表す。
【0212】
<縮合環化合物の合成>
[化合物2、14、97、100、101、201~203、301の合成]
[化合物2の合成]
【0213】
【0214】
(中間体1の合成)
国際公開第2017/142310号の段落[96]~[105]に記載の合成法に従い、中間体1を合成した。
【0215】
(中間体2の合成)
三口フラスコ中で、中間体1(1.0当量)、レゾルシノール(0.5当量)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)3、0.02当量)、(2-ビフェニル)ジ-tert-ブチルホスフィン(JohnPhos、0.04当量)、およびtert-ブトキシナトリウム(tBuONa、2.0当量)を、トルエン溶媒中、不活性雰囲気下100℃で攪拌して反応させた。反応後、得られた溶液を室温に冷却し、セライト濾過して得られたろ液を濃縮した。その後、シリカゲルカラムで精製することにより、中間体2を得た。
【0216】
(化合物2の合成)
三口フラスコ中、中間体2(1.0当量)をo-ジクロロベンゼンを溶媒として、不活性雰囲気下で攪拌した。次いで、得られた溶液に三ヨウ化ホウ素(BI3、4.0当量)を加えて、不活性雰囲気下、180℃で攪拌して反応させた。反応終了後、ジクロロメタンおよび水を用いて抽出し、有機層の溶媒を留去した。得られた生成物をカラムクロマトグラムにて精製することにより化合物2を得た。
【0217】
[化合物14の合成]
【0218】
【0219】
(中間体3の合成)
国際公開第2017/142310号の段落[96]~[105]に記載の合成法に従い、中間体3を合成した。
【0220】
(中間体4の合成)
中間体1を中間体3に変更し、レゾルシノールを1,3-ベンゼンジチオールに変更した以外は、中間体2の合成と同様の方法で合成を行い、中間体4を得た。
【0221】
(化合物14の合成)
中間体2を中間体4に変更した以外は化合物2の合成と同様の方法で合成を行い、化合物14を得た。
【0222】
[化合物97の合成]
【0223】
【0224】
(A-1の合成)
反応容器にカルバゾール(1.0当量)、4-ブロモ-2-フルオロニトロベンゼン(1.0当量)、および溶媒としてジメチルスルホキシドを加えた。その後、得られた混合液に炭酸セシウム(1.2当量)を加えて窒素雰囲気下で、室温で攪拌して反応させた。反応終了後、得られた溶液に水を加え、次いでクロロホルムで抽出後、有機層を水で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機層を濃縮し、クロロホルム/ヘキサンで再結晶してA-1を得た。
【0225】
(A-2の合成)
反応容器にA-1(1.0当量)と溶媒としてエタノールを加え、塩酸を加えて酸性とした。その後、得られた混合液に塩化スズ(II)(3.0当量)を少しずつ加え、窒素雰囲気下において70度で攪拌して反応させた。反応終了後、得られた溶液を常温に戻し、減圧濃縮して、残渣を得た。この残渣に1規定の水酸化ナトリウム水溶液を加えて懸濁液を調整し、室温で攪拌し、固体を生成した。続いて、生成した固体をろ取し、トルエンに溶解して1規定の水酸化ナトリウム水溶液を加え、分液操作および硫酸マグネシウムによる乾燥を行い、有機層を得た。その後、得られた有機層を濃縮し、次いでトルエン/ヘキサンで再結晶してA-2を得た。
【0226】
(中間体5の合成)
反応容器にA-2(1.0当量)、酢酸、および濃硫酸(容量比10:1、硫酸として4.5当量)を加えた。次いで、窒素雰囲気下で反応容器を氷水浴に浸して、反応溶液を10度に冷却した。続いて、この反応溶液に水に溶かした亜硝酸ナトリウム(1.02当量)を15分かけて滴下した。その後、反応溶液を130度で攪拌して反応を進行させた。そして、反応終了後、得られた溶液を放冷し、水を加えて固体を析出させた。析出した固体をろ取し、メタノールで懸濁洗浄した。その後、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフにて精製し、クロロホルム/エタノールで再結晶して目的物(中間体5)を得た。
【0227】
【0228】
(中間体6の合成)
反応容器に1,3-ジブロモ-2-クロロベンゼン(1.0当量)、アニリン(2.0当量)、ナトリウム-tert-ブトキシド(2.5当量)をキシレン溶媒中で攪拌した。次いで、得られた混合液にブチルジクロロビス[ジ-tert-ブチル(p-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)(0.01当量)を加え、窒素雰囲気下140度で攪拌して反応させた。反応終了後、得られた溶液を放冷した後に、トルエンで希釈してセライト濾過し、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮後、カラムクロマトグラムにて精製して中間体6を得た。
【0229】
【0230】
(中間体7の合成)
反応容器に中間体6(1.0当量)、中間体5(2.0当量)、ナトリウム-tert-ブトキシド(2.5当量)をキシレン溶媒中で攪拌した。次いで、得られた混合液にブチルジクロロビス[ジ-tert-ブチル(p-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)(0.01当量)を加え、窒素雰囲気下で140度攪拌して反応させた。反応終了後、得られた溶液を放冷した後に、トルエンで希釈してセライト濾過し、ろ液を得た。ろ液を濃縮後、カラムクロマトグラムにて精製して中間体7を得た。
【0231】
(化合物97の合成)
反応容器に中間体7(1.0当量)をtert-ブチルベンゼン溶媒中攪拌した。窒素雰囲気下において反応溶液を-30度にして1.6M tert-ブチルリチウムペンタン溶液(1.2当量)を滴下した。次いで、反応溶液を60度で2時間攪拌した後、-30度に冷却し、三臭化ホウ素(1.2当量)を加え、30分室温で攪拌した。その後、反応溶液を0度に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.0当量)を加えた。その後、120度で攪拌して反応させ、室温まで放冷した。続いて、反応溶液に酢酸ナトリウム水溶液と酢酸エチルを加え、分液操作により有機層を分離した。そして、得られた有機層を濃縮後、カラムクロマトグラムにて精製し、化合物97を得た。
【0232】
[化合物100の合成]
【0233】
【0234】
(B-1の合成)
出発原料のカルバゾールを3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾールに変更した以外はA-1と同様の方法でB-1を得た。
【0235】
(B-2の合成)
出発原料のA-1をB-1に変更した以外はA-2と同様の方法でB-2を得た。
【0236】
(中間体8の合成)
出発原料のA-2をB-2に変更した以外は中間体5と同様の方法で中間体8を得た。
【0237】
【0238】
(中間体9の合成)
出発原料の中間体5を中間体8に変更した以外は中間体7と同様の方法で中間体9を得た。
【0239】
(化合物100の合成)
出発原料の中間体7を中間体9に変更した以外は化合物97と同様の方法で化合物100を得た。
【0240】
[化合物101の合成]
【0241】
【0242】
(中間体10の合成)
出発原料のアニリンを4-tert-ブチルアニリンに変更した以外は中間体6と同様の方法で中間体10を得た。
【0243】
【0244】
(中間体11の合成)
出発原料の中間体6を中間体10に変更した以外は中間体7と同様の方法で中間体11を得た。
【0245】
(化合物101の合成)
出発原料の中間体7を中間体11に変更した以外は化合物97と同様の方法で化合物101を得た。
【0246】
[化合物201の合成]
【0247】
【0248】
(化合物201の合成)
中間体7から、化合物97と同様の方法で合成し、再結晶およびカラムクロマトグラム後、再結晶にて化合物97と分離、精製して化合物201を得た。
【0249】
[化合物202の合成]
【0250】
【0251】
(化合物202の合成)
中間体9から、化合物100と同様の方法で合成し、再結晶およびカラムクロマトグラム後、再結晶にて化合物100と分離、精製して化合物202を得た。
【0252】
[化合物203の合成]
【0253】
【0254】
(化合物203の合成)
中間体11から、化合物101と同様の方法で合成し、再結晶およびカラムクロマトグラム後、再結晶にて化合物101と分離、精製して化合物203を得た。
【0255】
[化合物301の合成]
【0256】
【0257】
(D-1の合成)
反応容器に1,3-ジクロロ-2-ヨードベンゼン(1.0等量)、o-アニシジン(0.95等量)、ナトリウム tert-ブトキシド(1.5等量)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.05等量)、酢酸パラジウム(0.05等量)を加えて、トルエンに溶解させた。窒素雰囲気下、100℃で12時間攪拌した後、セライト濾過した。得られた溶液に水を加え、分液操作を行い、有機層を濃縮した。その後、シリカゲルカラムで精製することによりD-1を得た(収率40%)。
【0258】
(D-2の合成)
反応容器にD-1(1.0等量)、酢酸パラジウム(0.05等量)トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(0.1等量)、および炭酸カリウム(2.0等量)を加え、N,N-ジメチルアセトアミドに溶解させた。窒素雰囲気下で6時間還流攪拌した後、セライト濾過した。その後、得られた溶液に水と酢酸エチルを加え、分液操作を行い、有機層を濃縮した。その後、シリカゲルカラムで精製することによりD-2を得た(収率85%)。
【0259】
(D-3の合成)
反応容器にD-2(1.0等量)、1-tert-ブチル-4-ヨードベンゼン(2.0等量)、よう化銅(0.1等量)、trans-1,2-シクロヘキサンジアミン(0.2等量)、およびリン酸三カリウム(2.0等量)を加え、1,4-ジオキサンに溶解させた。得られた溶液に水を加え、分液操作を行い、有機層を濃縮した。その後、シリカゲルカラムで精製することによりD-3を得た(収率80%)。
【0260】
(D-4の合成)
反応容器にD-3(1.0等量)、酢酸パラジウム(0.05等量)トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(0.1等量)、および炭酸カリウム(2.0等量)を加え、N,N-ジメチルアセトアミドに溶解させた。窒素雰囲気下で6時間還流攪拌した後、セライト濾過した。その後、得られた溶液に水と酢酸エチルを加え、分液操作を行い、有機層を濃縮した。その後、シリカゲルカラムで精製することによりD-4を得た(収率85%)。
【0261】
(D-5の合成)
反応容器にD-4(1.0等量)を加え、ジクロロメタンに溶解させた。反応容器を氷浴に浸し、ジクロロメタンで希釈した三臭化ホウ素(2.0等量)を滴下した。反応液を室温に戻した後、2時間攪拌した。反応溶液に2N塩酸を加え、30分攪拌した。その後分液操作を行い、有機層を濃縮して、D-5を得た(収率85%)。
【0262】
(D-6の合成)
反応容器にD-5(1.0等量)、1-ブロモ-2,6-ジフルオロベンゼン(0.45等量)、および炭酸カリウム(2.0等量)を加え、N-メチルピロリドンに溶解させた。窒素雰囲気下、140℃で12時間攪拌した後、160℃に昇温してさらに12時間攪拌した。反応終了後、反応液に水を加え、析出した固体を濾別した。その後、シリカゲルカラムで精製することによりD-6を得た(収率85%)。
【0263】
(化合物301の合成)
反応容器にD-6(1.0等量)と、tert-ブチルベンゼンとを加えて攪拌した。窒素雰囲気下において、反応溶液を0度にして1.6M tert-ブチルリチウムペンタン溶液(2.0等量)を滴下した。60℃で2時間攪拌した後、低沸点成分を減圧留去した。-30℃に冷却し、三臭化ホウ素(2.0等量)を加え、30分室温で攪拌した。その後、0℃に冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.0等量)を加えた。その後、120℃で3時間、加熱攪拌した。反応溶液に水とメタノールを加え、析出した固体を濾別した。その後、テトラヒドロフランで分散洗浄した後、化合物301を得た。(収率30%)。
【0264】
上記で得られた縮合環化合物の構造は、例えば、公知の方法(例えば、NMR、LC-MS等)により確認することができる。
【0265】
具体例として、上記で得られた化合物100の構造を、核磁気共鳴装置(1H-NMR)によって同定した結果を以下に示す:
1H-NMR (500MHz, CD2Cl2)
δ = 9.87 (s, 2H), 8.40 (s, 2H), 8.20 (s, 2H), 8.16 (s, 2H), 7.88 (t, 4H), 7.79 (t, 2H), 7.59 (d, 4H), 7.53 (d, 2H), 7.33 (m, 3H), 7.16 (s, 2H), 6.29 (d, 2H), 1.65 (s, 18H), 1.47 (s, 18H)。
【0266】
また、他の具体例として、上記で得られた化合物202の構造を、核磁気共鳴装置(1H-NMR)によって同定した結果を以下に示す:
1H-NMR (500MHz, CD2Cl2)
δ = 9.70 (s, 1H), 9.20 (d, 1H), 8.49 (d, 1H), 8.31 (d, 2H), 8.28 (s, 1H), 8.24 (s, 1H), 8.19 (s, 1H), 8.14 (s, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.85 (t, 2H), 7.78 (t, 1H), 7.71 (d, 1H), 7.54 (m, 5H), 7.41 (m, 2H), 7.30 (m, 2H), 7.14 (s, 1H), 7.00 (d, 1H), 6.35 (d, 1H), 6.26 (d, 1H), 1.67 (s, 18H), 1.47 (s, 9H), 1.45 (s, 9H)。
【0267】
そして、その他の具体例として、上記で得られた化合物301の構造を、MALDI-TOF-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)によって同定した結果を以下に示す:
分子量測定値(化合物301):708.75、理論値(C50H37BN2O2):708.29。
【0268】
[その他の本発明に係る縮合環化合物]
なお、化合物2、14、97、100、101、201~203、301以外の上記一般式(1)もしくは上記一般式(2)で表される、または上記一般式(1)もしくは上記一般式(2)で表される構造を複数有する縮合環化合物についても、上記で示した各化合物と共通する骨格構造、または類似する骨格構造を有していることから、上記で示した各合成方法において、使用する原料や反応条件等を適宜変更することや、上記の合成方法と、公知の合成方法とを適宜組み合わせること等によって合成することができる。
【0269】
<縮合環化合物のシミュレーション評価>
“High-Performance Dibenzoheteraborin-Based Thermally Activated Delayed Fluorescence Emitters: Molecular Architectonics for Concurrently Achieving Narrowband Emission and Efficient Triplet-Singlet Spin Conversion” In Seob Park, Kyohei Matsuo, Naoya Aizawa, and Takuma Yasuda, Advanced Functional Materials 2018, 28, 1802031には、蛍光発光のスペクトル幅(蛍光発光スペクトルのピークの半値幅、Full Width at Half Maximum,FWHM)は、第一励起一重項状態(S1)の安定構造における基底状態(S0)のエネルギー [E(S0@S1)]と、基底状態(S0)の安定構造における基底状態(S0)のエネルギー [E(S0@S0)]との差で表される、再配置エネルギー(Reorganization energy) [E(S0@S1)-E(S0@S0)]と密接に関係することが示されている。
【0270】
[再配置エネルギーと、蛍光発光のスペクトル幅との関係の確認]
まず、以下のようにして、再配置エネルギー [E(S0@S1)-E(S0@S0)]と、蛍光発光のスペクトル幅(FWHM)との関係を明らかにした。
【0271】
(密度汎関数法(Density Functional Theory、DFT)による計算)
下記の公知の縮合環化合物R1~R3について、密度汎関数法(Density Functional Theory、DFT)により、以下の計算を行った。
【0272】
【0273】
第一励起一重項状態(S1)の安定構造における基底状態(S0)エネルギー [E(S0@S1)]、および基底状態(S0)の安定構造における基底状態(S0)のエネルギー [E(S0@S0)]を算出し、これらの差から、再配置エネルギー [E(S0@S1)]-[E(S0@S0)](eV)を算出した。
【0274】
また、第一励起一重項状態(S1)の安定構造における第一励起一重項状態(S1)のエネルギー [E(S1@S1)]を算出し、この値と、基底状態(S0)の安定構造における基底状態(S0)のエネルギー [E(S0@S0)]との差から、断熱第一励起一重項状態(S1)エネルギー [E(S1@S1)]-[E(S0@S0)](eV)を算出した。
【0275】
そして、断熱第一励起一重項状態(S1)エネルギー(eV)を光波長(nm)に換算した、蛍光波長(nm)を算出した。
【0276】
さらに、第一励起一重項状態(S1)の安定構造における振動子強度fを算出した。
【0277】
これらの加えて、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道)エネルギーとLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、最低空軌道)エネルギーを算出した。
【0278】
ここで、密度汎関数法(Density Functional Theory,DFT)による計算は、計算ソフトウェアとしてGaussian 16(Gaussian Inc.)を使用し、下記(I)、下記(II)、および下記(III)の計算手法にて行った:
(I) S0計算手法:汎関数B3LYP、基底関数6-31G(d,p),トルエン溶媒効果(PCM)を含めたDFTによる構造最適化計算;
(II) S1計算手法:汎関数B3LYP、基底関数6-31G(d,p),トルエン溶媒効果(PCM)を含めた時間依存(Time-dependent)DFT(TDDFT)による構造最適化計算;
(III) S0計算手法:汎関数B3LYP、基底関数6-31G(d,p),トルエン溶媒効果(PCM)を含めたDFTによる入力構造における計算。
【0279】
より詳細には、各項目の計算は、以下の計算手法を用いて行った:
・基底状態(S0)の安定構造における基底状態(S0)のエネルギー [E(S0@S0)]:上記(I)の計算手法;
・第一励起一重項状態(S1)の安定構造における第一励起一重項状態(S1))のエネルギー [E(S1@S1)]:上記(II)の計算手法;
・第一励起一重項状態(S1)の安定構造における基底状態(S0)エネルギー [E(S0@S1)]:上記(II)および上記(III)の計算手法;
・再配置エネルギー [E(S0@S1)]-[E(S0@S0)]:上記(I)、上記(II)および上記(III)の計算手法;
・断熱第一励起一重項状態(S1)エネルギー [E(S1@S1)]-[E(S0@S0)]:上記(I)および上記(II)の計算手法;
・蛍光波長(nm):上記(I)および上記(II)の計算手法;
・第一励起一重項状態(S1)の安定構造における振動子強度f:上記(II)の計算手法;
・HOMOおよびLUMO:上記(I)の計算手法。
【0280】
なお、
図4は、各エネルギーの関係を定性的に説明する説明図である。
【0281】
これらの結果を下記表1に示す。
【0282】
(蛍光発光のスペクトル幅(FWHM)の測定)
縮合環化合物R1~R3の1×10-5M(=mol/dm3、mol/L)のトルエン溶液それぞれについて、日立ハイテクサイエンス社(旧日立ハイテクノロジーズ社)製の分光蛍光光度計F7000により、励起波長320nmとして、室温にて測定を行うことで、フォトルミネッセンス(Photoluminescence,PL)における蛍光発光のピーク波長(nm)および蛍光発光のスペクトル幅(蛍光発光スペクトルのピークの半値幅、FWHM)を評価した。
【0283】
これらの結果を下記表1に示す。
【0284】
【0285】
上記表1の結果より、密度汎関数法による計算により算出される蛍光波長(nm)の色彩と、実測のピーク波長とは、ある程度近い値を示すことが確認された。このことから、密度汎関数法による計算により推測される色味と、実測の色味とは同系色であることが確認された。
【0286】
ここで、縮合環化合物R1~R3における、実測したPLにおける蛍光発光のFWHM-密度汎関数法による計算された再配置エネルギー(eV)グラフを
図5に示す。
図5の結果から、密度汎関数法による計算により算出された再配置エネルギー(eV)と、蛍光発光のFWHMには相関があり、再配置エネルギー(eV)が小さくなるほど、蛍光発光のFWHMが小さくなる、すなわち、蛍光発光のスペクトル幅が狭くなることが確認された。
【0287】
[本発明の化合物および比較例化合物の再配置エネルギーの算出]
本発明の縮合環化合物である、上記の化合物1~102、201~203、301~369、401~413、および501~532について、上記と同様にして、密度汎関数法による計算を行った。また、本発明の範囲外である、前記化学式(3)で表される芳香族性環状基を有さない、以下の比較用化合物C1~C3についても、上記と同様にして、密度汎関数法による計算を行った。
【0288】
【0289】
これらの化合物について、算出されたHOMO(eV)、LUMO(eV)、断熱第一励起一重項状態(S1)エネルギー(eV)、蛍光波長(nm)、振動子強度f、および再配置エネルギー(eV)の結果を下記表2~下記表8に示す。
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
ここで、上記表1~上記表8の結果に示されるように、本発明の縮合環化合物である化合物1~102、201~203、301~369、401~413、および501~532は、再配置エネルギーが0.100eV以下であり、公知の縮合環化合物R1~R3よりもその値は小さい。このことから、
図5を参照すると、本発明の縮合環化合物のFWHMは、公知の縮合環化合物R1~R3よりも小さくなると推測される。そして、本発明の縮合環化合物の色純度もまた、公知の縮合環化合物R1~R3よりも高くなり、本発明の縮合環化合物は、極めて高い色純度を示すと推測される。
【0298】
一方、比較用化合物C1~C3は、再配置エネルギーが0.114eV以上であり、その値は、公知の縮合環化合物R1~R3と同等またはそれ以上となる。このことから、
図5を参照すると、比較用化合物C1~C3のFWHMは、公知の縮合環化合物R1~R3と同等であるか、またはより大きくなると推測される。そして、比較用化合物C1~C3の色純度もまた、公知の縮合環化合物R1~R3と同等であるか、またはより低くとなる推測される。
【0299】
そして、上記表2~上記表8に示されるように、本発明の縮合環化合物である化合物1~102、201~203、301~369、401~413、および501~532は、比較用化合物C1~C3と比較して、再配置エネルギー(eV)の値が顕著に小さい。このことから、本発明の縮合環化合物のFWHMは、比較用化合物C1~C3よりも顕著に小さくなると推測される。そして、本発明に係る縮合環化合物の色純度もまた、比較用化合物C1~C3よりも顕著に高くなると推測される。
【0300】
これらのことから、本発明の縮合環化合物は、スペクトル幅が非常に狭く、色純度の高い蛍光発光、特に色純度の高い青色蛍光発光が期待されることが確認された。
【0301】
また、本発明の縮合環化合物は、十分な大きさの振動子強度fを有しており、蛍光発光効率に優れることが確認された。
【0302】
<縮合環化合物の実験による評価>
本発明の縮合環化合物の特性を実験にて確認した。以下の実験では、本発明の縮合環化合物を代表して化合物100、化合物202および化合物301を使用した。
【0303】
(蛍光発光のスペクトル幅(FWHM)の測定)
本発明に係る化合物100、化合物202および化合物301の1×10-5M(=mol/dm3、mol/L)のトルエン溶液それぞれについて、日立ハイテクサイエンス社製の分光蛍光光度計F7000により、励起波長320nmとして、室温にて測定を行うことで、フォトルミネッセンス(Photoluminescence,PL)における蛍光発光のピーク波長(nm)および蛍光発光のスペクトル幅(蛍光発光スペクトルのピークの半値幅、FWHM)を評価した。
【0304】
なお、本評価において、蛍光発光のピーク波長は、特に制限されないが、青色発光領域内にあることが好ましく、440nm以上465nm以下であることが特に好ましい。
【0305】
本評価において、蛍光発光のスペクトル幅FWHMは、小さいほど好ましく、高色純度に優れると判断する。
【0306】
これらの結果を下記表9に示す。なお、下記表9には、上記のように同様の方法で測定した、縮合環化合物R1~R3の結果も併せて示す。
【0307】
【0308】
<有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、有機EL素子)の作製>
[有機EL素子の作製]
(素子実施例1)
ITOガラス基板を、50mm×50mm×0.5mmサイズに切り、アセトン、イソプロピルアルコール、純水の順に各15分間、超音波洗浄をした後、30分間、UVオゾン洗浄をした。このガラス基板上のITO電極(陽極)上に、真空蒸着装置にて以下の層を蒸着した。
【0309】
まず、前記ITO電極上にF6-TCNNQを蒸着して、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。次いで、前記正孔注入層上に化合物HT1を蒸着して、膜厚126nmの正孔輸送層を製膜した。続いて、前記正孔輸送層上に化合物H-H1を蒸着して、膜厚10nmの厚さの電子阻止層を製膜した。このようにして、正孔輸送領域を形成した。
【0310】
前記正孔輸送領域上に化合物H-H1、化合物H-E1、および上記得られた化合物100を共蒸着して、膜厚40nmの発光層を製膜した。ここで、発光層の製膜は、発光層における化合物H-H1、および化合物H-E1の質量比が、化合物H-H1:化合物H-E1=60:40となるように行った。また、発光層の製膜は、発光層における化合物100の濃度が、化合物H-H1、化合物H-E1、および化合物100の総質量(すなわち、発光層の総質量)に対して、1.5質量%となるように行った。なお、化合物H-H1および化合物H-E1は、ホスト材料である。
【0311】
前記発光層上に化合物H-E1を真空蒸着して、膜厚10nmの正孔阻止層を製膜した。次いで、前記正孔阻止層上に、化合物ET1およびLiQを、化合物ET1:LiQ=5:5(単位:質量部)の質量比で共蒸着して、膜厚36nmの電子輸送層を形成した。続いて、前記電子輸送層上にLiQを蒸着して、膜厚0.5nmの電子注入層を形成した。このようにして、電子輸送領域を形成した。
【0312】
前記電子注入層上に膜厚80nmのAl(陰極)を蒸着することにより、有機EL素子を作製した。
【0313】
その後、水分濃度1ppm以下、酸素濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス中で、乾燥剤付きのガラス製の封止管と、紫外線硬化型樹脂(MORESCO製、製品名WB90US)とを用いて、上記工程で作製した有機EL素子を封止した。このようにして、有機EL素子を完成させた。
【0314】
【0315】
(素子実施例2)
発光層の製膜において、発光層における化合物100を、化合物202に変更した以外は素子実施例1と同様にして、有機EL素子を作製し、封止を行い、有機EL素子を完成させた。
【0316】
(素子実施例3)
発光層の製膜を以下のように変更した以外は、素子実施例1と同様にして、有機EL素子を作製し、封止を行い、有機EL素子を完成させた。
【0317】
≪素子実施例3の発光層の製膜≫
前記正孔輸送領域上に化合物H-H1、化合物H-E1、燐光錯体Pt1、および上記得られた化合物100を共蒸着して、膜厚40nmの発光層を製膜した。ここで、発光層の製膜は、発光層における化合物H-H1、化合物H-E1、および燐光錯体Pt1の質量比を、化合物H-H1:化合物H-E1:燐光錯体Pt1=60:40:10となるように行った。また、発光層の製膜は、発光層における化合物100の濃度が、化合物H-H1、化合物H-E1、燐光錯体Pt1、および化合物100の総質量(すなわち、発光層の総質量)に対して、1.5質量%となるように行った。なお、化合物H-H1および化合物H-E1は、ホスト材料である。
【0318】
【0319】
(素子実施例4)
発光層の製膜において、発光層における化合物100を、化合物202に変更した以外は素子実施例3と同様にして、有機EL素子を作製し、封止を行い、有機EL素子を完成させた。
【0320】
(素子比較例1)
発光層の製膜において、発光層における化合物100を、化合物R1に変更した以外は素子実施例1と同様にして、有機EL素子を作製し、封止を行い、有機EL素子を完成させた。
【0321】
<有機EL素子の評価>
[輝度、外部量子効率および素子寿命]
下記方法にしたがって、輝度1,000cd/m2における発光ピーク波長、発光のスペクトル幅(発光スペクトルのピークの半値幅、FWHM)、外部量子効率および素子寿命を評価した結果を下記表10に示す。下記表10中のLT95は、素子寿命の評価結果を表す。ここで、下記表10中のLT95は、素子比較例1のLT95[hr]を1とした相対値として示す。なお、LT95の詳細は下記で説明する。
【0322】
直流定電圧電源(KEITHLEY製、ソースメータ(source meter)2400型)を用いて、有機EL素子に対して印加電圧を変化させながら発光させ、このときの輝度、発光スペクトル、および発光量を輝度測定装置(Topcon製、SR-3)にて測定した。
【0323】
ここで、外部量子効率は、発光スペクトル、発光量、および測定時の電流値から算出した。
【0324】
また、素子寿命(耐久性)は、初期輝度が1,000cd/m2となる電流値において連続駆動し、時間経過とともに減衰する発光輝度が初期輝度の95%になるまでの時間を「LT95」として測定した。
【0325】
[発光のピーク波長および発光のスペクトル幅(FWHM)]
発光のピーク波長および発光のスペクトル幅(発光スペクトルのピークの半値幅、FWHM)は、発光スペクトルの測定結果から読み取った。
【0326】
なお、本評価において、発光のピーク波長は、特に制限されないが、青色発光領域内にあることが好ましく、455nm以上470nm以下であることが特に好ましい。
【0327】
本評価において、発光のスペクトル幅FWHMは、小さいほど好ましく、高色純度に優れると判断する。
【0328】
【0329】
上記表9の結果から、本発明の縮合環化合物である化合物100、化合物202および化合物301は、PLにおける蛍光発光において、スペクトル幅が非常に狭く、色純度の高い青色蛍光発光を示すことが確認された。
【0330】
また、上記表10の結果から、本発明の縮合環化合物である化合物100および化合物202は、有機EL素子における発光において、スペクトル幅が非常に狭く、色純度の高い青色蛍光発光を示すことが確認された。また、本発明の縮合環化合物である化合物100および化合物202は、外部量子効率の優れることから、発光効率に優れ、素子寿命にも優れることが確認された。
【0331】
さらに、本発明の縮合環化合物である化合物100および化合物202と、燐光錯体Pt1とを組み合わせた素子実施例3、4は、それぞれ同じ本発明の縮合環化合物を単独で使用した素子実施例1、2と比較して、発光のピーク波長および発光のスペクトル幅(FWHM)が同等であり、外部量子効率およびLT95が顕著に増大することが確認された。これより、本発明に係る縮合環化合物と、燐光性化合物とを組み合わせることによって、発光効率および素子寿命が顕著に向上することが示された。すなわち、これらの組み合わせを採用した場合における、本発明の顕著な有効性が示された。
【0332】
なお、これらの結果は、上記のシミュレーション評価における、本発明の縮合環化合物の再配置エネルギーは公知の縮合環化合物R1~R3よりも小さく、
図5を参照すると、本発明の縮合環化合物のFWHMは、公知の縮合環化合物R1~R3よりも小さくなるとの結果と一致する傾向を示した。これより、本発明の縮合環化合物を使用する有機電界発光素子は、本発明の範囲外である、前記化学式(3)で表される芳香族性環状基を有さない、比較用化合物C1~C3を使用する有機電界発光素子と比較して、スペクトル幅が狭く、色純度の高い蛍光発光、特に色純度の高い青色蛍光発光を示すと推測される。
【0333】
以上の実験では、本発明の縮合環化合物を代表して化合物100、化合物202および化合物301を使用した。ただし、上記のシミュレーション評価に代表されるように、その他の本発明の縮合環化合物もこれらに類する特性を有すると推定される。このことから、その他の本発明の縮合環化合物およびこれを使用する有機EL素子も、これらに類する色純度の高い蛍光発光、特に色純度の高い青色蛍光発光を示すと考えられる。また、その他の本発明の縮合環化合物を使用する有機EL素子も、優れた発光効率および優れた素子寿命を示すと考えられる。
【符号の説明】
【0334】
1 基板
2 第1電極
3 正孔輸送領域
31 正孔注入層
32 正孔輸送層
33 電子阻止層
4 発光層
5 電子輸送領域
51 電子注入層
52 電子輸送層
53 正孔阻止層
6 第2電極
10 有機電界発光素子。