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7631109直流事故検出装置、直流事故検出装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】直流事故検出装置、直流事故検出装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20250210BHJP
   H02J 3/36 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
H02J1/00 301D
H02J3/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021095295
(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公開番号】P2022187319
(43)【公開日】2022-12-19
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 圭
(72)【発明者】
【氏名】直井 伸也
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】中山 慶一
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046642(JP,A)
【文献】特開2021-045005(JP,A)
【文献】特開2016-226174(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013053(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0120367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、各々の前記電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置であって、
対応する前記電力変換器である第1の電力変換器に接続された前記直流送電線である第1の直流送電線の電力変化を示す第1指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第1閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知する事故発生検知部と、
前記事故発生検知部により前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、それぞれの前記第1の直流送電線の電力変化を示す第2指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第2閾値とを比較し、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定する第1の事故区間判定部と、
前記事故発生検知部により前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後のそれぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定する第2の事故区間判定部と、
前記第1の事故区間判定部による第1の判定結果と、前記第2の事故区間判定部による第2の判定結果との論理積により、いずれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるかを判定する第3の事故区間判定部と、
を備える直流事故検出装置。
【請求項2】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、各々の前記電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置であって、
対応する前記電力変換器である第1の電力変換器に接続された前記直流送電線である第1の直流送電線の電力変化を示す第1指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第1閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知する第1の事故発生検知部と、
前記第1の事故発生検知部により前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、それぞれの前記第1の直流送電線の電力変化を示す第2指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第2閾値とを比較し、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定する第1の事故区間判定部と、
前記第1の直流送電線の電流変化と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電流変化を示す第3閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知する第2の事故発生検知部と、
前記第1の事故発生検知部により前記直流事故の発生が検知されたタイミング、あるいは前記第2の事故発生検知部により前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後のそれぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定する第2の事故区間判定部と、
前記第1の事故区間判定部による第1の判定結果と、前記第2の事故区間判定部による第2の判定結果との論理積により、いずれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるかを判定する第3の事故区間判定部と、
を備える直流事故検出装置。
【請求項3】
前記電流変化は、電流値の変化量の絶対値であり、
前記第2の事故区間判定部は、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のそれぞれに着目して、着目する前記第1の直流送電線の電流値の変化量の絶対値と、他の前記第1の直流送電線の電流値の変化量の絶対値とを比較し、前記第2の所定の時間の経過後における前記電流値の変化量の絶対値が最大の前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定する、
請求項1または請求項2に記載の直流事故検出装置。
【請求項4】
前記第1指標値および前記第2指標値は、前記第1の電力変換器の近傍において計測された、それぞれの前記第1の直流送電線の電圧値の変化量である、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の直流事故検出装置。
【請求項5】
前記第1指標値および前記第2指標値は、前記第1の電力変換器の近傍において計測された、それぞれの前記第1の直流送電線の電流値の変化量の絶対値である、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の直流事故検出装置。
【請求項6】
前記第1指標値は、前記第1の電力変換器の近傍において計測された、それぞれの前記第1の直流送電線の電圧値の変化量であり、
前記第2指標値は、前記第1の電力変換器の近傍において計測された、それぞれの前記第1の直流送電線の電流値の変化量の絶対値である、
請求項2または請求項3に記載の直流事故検出装置。
【請求項7】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、各々の前記電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置の制御方法であって、
コンピュータが、
対応する前記電力変換器である第1の電力変換器に接続された前記直流送電線である第1の直流送電線の電力変化を示す第1指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第1閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知し、
前記直流事故の発生を検知したタイミングから第1の所定の時間の経過後に、それぞれの前記第1の直流送電線の電力変化を示す第2指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第2閾値とを比較し、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定し、
前記直流事故の発生を検知したタイミングから第2の所定の時間の経過後のそれぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定し、
前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定した第1の判定結果と、それぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定した第2の判定結果との論理積により、いずれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるかを判定する、
直流事故検出装置の制御方法。
【請求項8】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、各々の前記電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置の制御方法であって、
コンピュータが、
対応する前記電力変換器である第1の電力変換器に接続された前記直流送電線である第1の直流送電線の電力変化を示す第1指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第1閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知し、
前記第1指標値と前記第1閾値との比較に基づいて前記直流事故の発生を検知したタイミングから第1の所定の時間の経過後に、それぞれの前記第1の直流送電線の電力変化を示す第2指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第2閾値とを比較し、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定し、
前記第1の直流送電線の電流変化と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電流変化を示す第3閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知し、
前記第2指標値と前記第2閾値との比較に基づいて前記直流事故の発生を検知したタイミング、あるいは前記第1の直流送電線の電流変化と前記第3閾値との比較に基づいて前記直流事故の発生を検知したタイミングから第2の所定の時間の経過後のそれぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定し、
前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定した第1の判定結果と、それぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定した第2の判定結果との論理積により、いずれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるかを判定する、
直流事故検出装置の制御方法。
【請求項9】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、各々の前記電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置を制御させるプログラムであって、
コンピュータに、
対応する前記電力変換器である第1の電力変換器に接続された前記直流送電線である第1の直流送電線の電力変化を示す第1指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第1閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知させ、
前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、それぞれの前記第1の直流送電線の電力変化を示す第2指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第2閾値とを比較させ、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定させ、
前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後のそれぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定させ、
前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定させた第1の判定結果と、それぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定させた第2の判定結果との論理積により、いずれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるかを判定させる、
プログラム。
【請求項10】
交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、各々の前記電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置を制御させるプログラムであって、
コンピュータに、
対応する前記電力変換器である第1の電力変換器に接続された前記直流送電線である第1の直流送電線の電力変化を示す第1指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第1閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知させ、
前記第1指標値と前記第1閾値との比較に基づいて前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、それぞれの前記第1の直流送電線の電力変化を示す第2指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第2閾値とを比較させ、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定させ、
前記第1の直流送電線の電流変化と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電流変化を示す第3閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知させ、
前記第2指標値と前記第2閾値との比較に基づいて前記直流事故の発生を検知したタイミング、あるいは前記第1の直流送電線の電流変化と前記第3閾値との比較に基づいて前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後のそれぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定させ、
前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定させた第1の判定結果と、それぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定させた第2の判定結果との論理積により、いずれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるかを判定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流事故検出装置、直流事故検出装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多端子の直流高圧送電(High-Voltage Direct Current:HVDC)システムにおいて、直流系統に事故(直流系統事故)が発生した場合に、直流系統事故によるHVDCシステムの停止範囲を最小限に留めるため、直流系統事故が発生した区間(事故区間)を選択的に切り離す保護システムが求められている。保護システムは、直流系統事故が発生した直流送電線のみを直流遮断器により切り離すことによって、残りの健全な直流系統での送電を維持するものである。この保護システムの動作によって、HVDCシステムでは、接続先である交流系統における直流系統事故の影響を軽減させることができる。
【0003】
HVDCシステムにおいては、電力変換器に用いられている半導体素子の過電流保護の観点から、交流系統よりも短い時間で事故区間を検出(特定)して、直流系統事故が発生している直流送電線を切り離す(事故区間を除去する)必要がある。一般的に、HVDCシステムにおいては、直流系統事故の発生から5[ms]程度の時間で事故区間の検出と除去とを完了させることが望ましいとされている。
【0004】
交流系統においては、通常、送電線路の両端の差動電流を用いた手法によって事故区間を検出する。この手法では、送電線路の端子間で行う通信に時間を要するため、HVDCシステムにおける事故区間の検出手法としては不向きである。このため、HVDCシステムにおいては、交流系統よりも高速に、事故区間を検出する手法が求められている。
【0005】
HVDCシステムにおいて事故区間を検出するための技術として、例えば、直流送電線の両端に直流送電線と直列になるように挿入されたリアクトル(直列リアクトル)による直流電圧の変化率の差を利用する手法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この手法では、直列リアクトルの線路側における直流電圧の変化率を計測することによって事故区間を検出する。送電線路内で直流系統事故が発生した場合(つまり、区間内事故が発生した場合)、直流系統事故により発生したサージ電圧によって直流電圧が急峻に変化する(直流電圧の変化率が高い)。一方、他の直流送電線の線路内で直流系統事故が発生した場合(つまり、区間外事故が発生した場合)には、他の直流送電線に接続された直列リアクトルを通過した後のサージ電圧(直列リアクトルにより平準化されたサージ電圧)が計測されることになるため、直流電圧は比較的緩やかに変化する(直流電圧の変化率が低い)。従来の直流電圧の変化率の差を利用する手法では、このような直流電圧の変化率の違いから直流事故が発生した直流送電線を判定することにより、事故区間を検出する。
【0006】
しかしながら、従来の直流電圧の変化率の差を利用する手法のように、直流電圧の変化率の計測結果のみで事故区間を検出する技術では、計測した直流電圧にノイズが重畳してしまった場合などに、例えば、実際には直流事故が発生していないにもかかわらず直流事故を検出してしまうなど、誤動作をしてしまうことも考えられる。この場合、直流事故の検出や事故区間の検出の信頼性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】J.Sneath,A.D.Rajapakse,“Fault Detection and Interruption in an Earthed HVDC Grid Using ROCOV and Hybrid DC Brakers”,IEEE TRANSACTIONS ON POWER DELIVERY,Vol.31,No.3,June 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、電力送電システムにおいて、高い信頼性で、直流事故や事故区間を検出することができる直流事故検出装置、直流事故検出装置の制御方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の直流事故検出装置は、事故発生検知部と、第1の事故区間判定部と、第2の事故区間判定部と、第3の事故区間判定部とを持つ。直流事故検出装置は、交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器と、各々の前記電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線とを含む直流送電システムにおける直流事故の事故区間を検出する。事故発生検知部は、対応する前記電力変換器である第1の電力変換器に接続された前記直流送電線である第1の直流送電線の電力変化を示す第1指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第1閾値との比較に基づいて、前記第1の電力変換器に接続された複数の前記第1の直流送電線のいずれかで発生した前記直流事故を検知する。第1の事故区間判定部は、前記事故発生検知部により前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間の経過後に、それぞれの前記第1の直流送電線の電力変化を示す第2指標値と、前記直流事故によって起こる前記直流送電線の電力変化を示す第2閾値とを比較し、前記第2指標値が前記第2閾値を超えた前記第1の直流送電線の線路を前記事故区間であると判定する。第2の事故区間判定部は、前記事故発生検知部により前記直流事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間の経過後のそれぞれの前記第1の直流送電線の電流変化に基づいて、それぞれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるか否かを判定する。第3の事故区間判定部は、前記第1の事故区間判定部による第1の判定結果と、前記第2の事故区間判定部による第2の判定結果との論理積により、いずれの前記第1の直流送電線の線路が前記事故区間であるかを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る直流事故検出装置が適用される多端子の電力送電システムの構成の一例を示す図。
図2】第1の実施形態に係る直流事故検出装置の構成の一例を示す図。
図3】直流電圧の変化量に基づいて直流事故の発生を検知する一例を説明する図。
図4】直流電流の変化量の絶対値に基づいて直流事故が発生している直流送電線を判定する一例を説明する図。
図5】直流事故検出装置における処理の一例を示すフローチャート。
図6】第2の実施形態に係る直流事故検出装置の構成の一例を示す図。
図7】直流電流の変化量の絶対値に基づいて直流事故の発生を検知する一例を説明する図。
図8】直流事故検出装置における処理の一例を示すフローチャート。
図9】第3の実施形態に係る直流事故検出装置の構成の一例を示す図。
図10】直流事故検出装置における処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の直流事故検出装置、直流事故検出装置の制御方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0012】
[電力送電システムの構成]
図1は、実施形態に係る直流事故検出装置が適用される多端子の電力送電システムの構成の一例を示す図である。図1には、三端子の直流高圧送電(High-Voltage Direct Current:HVDC)システムの一例を示している。図1に示した電力送電システム1は、実施形態の直流事故検出装置が適用される対象の電力送電システムの一例を示したものであり、実施形態の直流事故検出装置が適用された状態を示したものではない。電力送電システム1に実施形態の直流事故検出装置が適用された構成については、後述する。
【0013】
電力送電システム1は、送電側の交流系統から受電側の交流系統に電力を送電するシステムである。電力送電システム1は、送電側の交流系統の交流電力を一旦直流電力に変換してから送電し、受電側で再び交流電力に変換して受電側の交流系統に送電する。交流電力を直流電力に変換して送電する方法は、交流電力をそのまま送電する方法に比較して電力の損失を抑制できるため、特に大容量、かつ長距離の送電に適用される方法である。電力送電システム1は、例えば、三つの交流系統2(交流系統2-1~2-3)と、三つの電力変換器3(電力変換器3-1~3-3)と、直流系統4と、を備える。電力送電システム1では、交流系統2と直流系統4とが、電力変換器3を介して接続される。電力送電システム1は、特許請求の範囲における「直流送電システム」の一例である。
【0014】
交流系統2のそれぞれは、例えば、交流電源や、交流送電線などによって構成される交流の電力系統である。交流系統2のそれぞれは、接続されている電力変換器3に交流電力を供給する、あるいは、電力変換器3から交流電力の供給を受ける。交流系統2のそれぞれは、例えば、交流電力を発電する発電設備であってもよいし、他の送電側の交流系統から送電されてきた交流電力を、さらに受電側の他の交流系統に送電する設備や、接続された先に存在するそれぞれの需要家に供給する設備であってもよい。
【0015】
電力変換器3のそれぞれは、交流電力と直流電力とを相互に変換する変換器である。電力変換器3のそれぞれは、交流側端子に入力された交流電力を直流電力に変換して直流側端子に出力する、あるいは、直流側端子に入力された直流電力を交流電力に変換して交流側端子に出力する、交直変換器の一種である。電力変換器3のそれぞれは、例えば、自励式電力変換器である。電力変換器3のそれぞれは、交流系統2から交流側端子に供給(入力)された交流電力を直流電力に変換して直流側端子から直流系統4に供給(出力)する、あるいは、直流系統4から直流側端子に供給(入力)された直流電力を交流電力に変換して交流側端子から交流系統2に供給(出力)する。
【0016】
直流系統4は、電力変換器3により供給された直流電力を他の電力変換器3に送電する直流の電力系統である。直流系統4は、例えば、六つの直流母線20(直流母線20-1~20-6)と、十二のリアクトル30(リアクトル30-1~30-12)と、十二の直流遮断器40(直流遮断器40-1~40-12)と、六つの直流送電線50(直流送電線50-1~50-6)と、を備える。図1では、直流母線20に近い方にリアクトル30が接続され、その先に直流遮断器40が接続されている直流系統4の構成を示しているが、直流系統4においてリアクトル30と直流遮断器40とを接続する順番は、逆であってもよい。
【0017】
直流母線20のそれぞれは、対応する電力変換器3の直流側端子に接続されている。直流母線20-1は、電力変換器3-1の一方の直流側端子に接続され、正極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-2は、電力変換器3-1の他方の直流側端子に接続され、負極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-3は、電力変換器3-2の一方の直流側端子に接続され、正極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-4は、電力変換器3-2の他方の直流側端子に接続され、負極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-5は、電力変換器3-3の一方の直流側端子に接続され、正極性の直流電圧が印加されている。直流母線20-6は、電力変換器3-3の他方の直流側端子に接続され、負極性の直流電圧が印加されている。
【0018】
直流母線20のそれぞれは、対応するリアクトル30および直流遮断器40を介して、複数の直流送電線50が接続されている。例えば、直流母線20-1は、リアクトル30-1および直流遮断器40-1を介して、直流送電線50-1に接続されている。
【0019】
リアクトル30のそれぞれは、対応する直流母線20と直流送電線50との間に接続されている。リアクトル30のそれぞれは、例えば、直列リアクトルや、ブロッキングコイルなどである。リアクトル30は、直列リアクトルやブロッキングコイルに限定されず、いかなる種類のリアクトルであってもよい。
【0020】
直流遮断器40のそれぞれは、直流電力の遮断器である。直流遮断器40のそれぞれは、対応する直流母線20と直流送電線50との間に接続されている。直流遮断器40のそれぞれは、例えば、後述する実施形態の直流事故検出装置(不図示)による制御に応じて、対応する直流母線20と直流送電線50との間を電気的に接続または遮断する。直流遮断器40のそれぞれは、電力送電システム1における定常運転(定常送電)時には、接続されている直流送電線50を介して、直流電力を送電する。直流遮断器40のそれぞれは、接続されている直流送電線50に直流系統事故(以下、単に「直流事故」という)が発生したときには、直流事故が発生した直流送電線50に流れる直流事故電流(以下、単に「事故電流」という)を遮断する。
【0021】
直流送電線50は、直流電力を送電する送電線である。直流送電線50は、例えば、ケーブルや、架空送電線などである。直流送電線50は、ケーブルや架空送電線に限定されず、いかなる種類のものであってもよい。
【0022】
(第1の実施形態)
[直流事故検出装置の構成]
図2は、第1の実施形態に係る直流事故検出装置の構成の一例を示す図である。図2には、図1に示した電力送電システム1が備える三つの電力変換器3のうち、電力変換器3-1に適用する直流事故検出装置100の一例を示している。直流事故検出装置100は、電力変換器3-1に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)に発生した直流事故による電力送電システム1への影響を軽減させる保護装置として、電力変換器3-1の近傍に設置(接続)される。電力変換器3-1は、特許請求の範囲における「第1の電力変換器」の一例である。電力変換器3-1に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)は、特許請求の範囲における「第1の直流送電線」の一例である。
【0023】
直流事故検出装置100は、電力変換器3-2および電力変換器3-3のそれぞれに適用されてもよい。電力変換器3-2および電力変換器3-3のそれぞれに適用される直流事故検出装置100も、図2に示した電力変換器3-1に適用される直流事故検出装置100と同様の構成である。つまり、電力変換器3-2に適用される直流事故検出装置100は、電力変換器3-2に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-5、および直流送電線50-6)に発生した直流事故による電力送電システム1への影響を軽減させる保護装置として、電力変換器3-2の近傍に設置(接続)される。電力変換器3-3に適用される直流事故検出装置100は、電力変換器3-3に属する直流送電線50(直流送電線50-3、直流送電線50-4、直流送電線50-5、および直流送電線50-6)に発生した直流事故による電力送電システム1への影響を軽減させる保護装置として、電力変換器3-3の近傍に設置(接続)される。以下の説明においては、電力変換器3-1に適用される直流事故検出装置100を「直流事故検出装置100-1」ともいい、電力変換器3-2に適用される不図示の直流事故検出装置100を「直流事故検出装置100-2」ともいい、電力変換器3-3に適用される不図示の直流事故検出装置100を「直流事故検出装置100-3」ともいう。
【0024】
図2には、直流事故検出装置100に関連する電力送電システム1の構成(交流系統2-1、電力変換器3-1、および直流系統4の一部の構成)も併せて示している。電力送電システム1では、直流事故検出装置100の適用に際して、直流電圧検出器および直流電流検出器が設けられる。図2に示した直流系統4の一部の構成では、二つの直流電圧検出器60(直流電圧検出器60-1および60-2)と、四つの直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)とが設けられている。電力変換器3-2および電力変換器3-3のそれぞれに直流事故検出装置100が適用される場合も同様である。以下の説明においては、図2に示した直流電圧検出器60および直流電流検出器70が設けられた構成の直流系統4の一部の構成を、「直流系統4-1」ともいう。
【0025】
直流電圧検出器60のそれぞれは、電力変換器3-1の近傍で、対応する直流母線20の直流電圧を計測する。直流電圧検出器60のそれぞれは、例えば、変圧器(Voltage Transformer:VT)などで構成される。直流電圧検出器60のそれぞれは、計測した直流母線20の直流電圧の電圧値を表す情報(以下、「直流電圧値」という)を、直流事故検出装置100に出力する。直流電圧検出器60-1は、直流母線20-1の直流電圧を計測し、計測した直流電圧値を直流事故検出装置100に出力する。直流電圧検出器60-2は、直流母線20-2の直流電圧を計測し、計測した直流電圧値を直流事故検出装置100に出力する。直流電圧検出器60-1は、直流母線20-1に接続された直流送電線50-1と直流送電線50-3とのそれぞれの直流電圧を直流母線20-1の直流電圧として計測し、計測したそれぞれの直流送電線50の直流電圧値を直流事故検出装置100に出力してもよい。直流電圧検出器60-2は、直流母線20-2に接続された直流送電線50-2と直流送電線50-4とのそれぞれの直流電圧を直流母線20-2の直流電圧として計測し、計測したそれぞれの直流送電線50の直流電圧値を直流事故検出装置100に出力してもよい。
【0026】
直流電流検出器70のそれぞれは、電力変換器3-1の近傍で、対応する直流送電線50に流れる直流電流を計測する。直流電流検出器70のそれぞれは、例えば、変流器(Current Transformer:CT)などで構成される。直流電流検出器70のそれぞれは、計測した対応する直流送電線50に流れる直流電流の電流値を表す情報(以下、「直流電流値」という)を、直流事故検出装置100に出力する。直流電流検出器70-1は、直流母線20-1に接続された直流送電線50-1に流れる直流電流を計測し、計測した直流電流値を直流事故検出装置100に出力する。直流電流検出器70-2は、直流母線20-2に接続された直流送電線50-2に流れる直流電流を計測し、計測した直流電流値を直流事故検出装置100に出力する。直流電流検出器70-3は、直流母線20-1に接続された直流送電線50-3に流れる直流電流を計測し、計測した直流電流値を直流事故検出装置100に出力する。直流電流検出器70-4は、直流母線20-2に接続された直流送電線50-4に流れる直流電流を計測し、計測した直流電流値を直流事故検出装置100に出力する。
【0027】
直流事故検出装置100は、直流電圧検出器60により出力された直流電圧値、および直流電流検出器70により出力された直流電流値に基づいて、直流系統4-1が備えるいずれかの直流送電線50において発生した直流事故を検出(検知)し、直流事故が発生している直流送電線50の線路を事故区間として検出(特定)する。直流事故検出装置100は、特定した事故区間に属する直流遮断器40、つまり、直流事故が発生している直流送電線50が接続されている直流遮断器40を制御して、直流母線20と直流送電線50との間を電気的に遮断させる。直流事故検出装置100は、例えば、直流電圧計測部101と、直流電流計測部102と、事故発生検知部103と、第1の事故区間判定部104と、第2の事故区間判定部105と、第3の事故区間判定部106と、遮断指令出力部107と、を備える。
【0028】
直流事故検出装置100や、直流事故検出装置100が備える構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより以下の機能を実現するものである。直流事故検出装置100や、直流事故検出装置100が備える構成要素の機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。直流事故検出装置100や、直流事故検出装置100が備える構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め直流事故検出装置100あるいは電力送電システム1が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が直流事故検出装置100あるいは電力送電システム1が備えるドライブ装置に装着されることで直流事故検出装置100が備える記憶装置にインストールされてもよい。
【0029】
直流電圧計測部101は、直流電圧検出器60-1と直流電圧検出器60-2とのそれぞれにより出力された直流電圧値を取得し、取得した直流電圧値に基づいて直流母線20の直流電圧の電圧値の変化量(以下、「直流電圧変化量」という)を計測する。より具体的には、直流電圧計測部101は、電力送電システム1における定常運転時の直流電圧値と、今回取得した直流電圧値との差分を取ることにより、定常送電の状態と現在の送電状態とにおける直流電圧変化量を演算する。つまり、直流電圧計測部101は、正極側の直流電圧検出器60-1から取得した現在の直流電圧値と、正極側の定常運転時の直流電圧値との差分を、正極側の直流母線20-1に接続された直流送電線50の直流電圧変化量として演算する。さらに、直流電圧計測部101は、負極側の直流電圧検出器60-2から取得した現在の直流電圧値と、負極側の定常運転時の直流電圧値との差分を、負極側の直流母線20-2に接続された直流送電線50の直流電圧変化量として演算する。
【0030】
ところで、電力送電システム1における送電では、正極側の送電と負極側の送電とが組になっている。しかし、電力送電システム1では、正極側と負極側とで極性が異なるが、送電する直流電圧の電圧値、つまり、絶対値は同じである。このため、直流電圧計測部101は、定常運転時の直流電圧値の絶対値と、直流電圧検出器60-1および直流電圧検出器60-2のそれぞれから取得した直流電圧値の絶対値との差分を取ることによって演算した直流電圧変化量の絶対値を、電力変換器3-1、あるいは電力変換器3-1に属する直流送電線50の直流電圧変化量としてもよい。このとき、直流電圧計測部101は、直流電圧検出器60-1と直流電圧検出器60-2とのそれぞれから取得した現在の直流電圧値のうち、絶対値が大きい方の一方の直流電圧値のみから、直流電圧変化量を演算してもよい。定常運転時における正極側および負極側の直流電圧値、あるいは定常運転時の直流電圧値の絶対値は、例えば、電力送電システム1が定常運転をしているときに取得した直流電圧値を所定期間計測して得たものであってもよいし、電力送電システム1の制御装置(不図示)などによって事前に設定されたものであってもよい。以下の説明においては、電力送電システム1における送電の極性を区別せずに、つまり、直流電圧の電圧値は絶対値であるものとする。
【0031】
直流電圧計測部101は、演算した直流電圧変化量を、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104のそれぞれに出力する。直流電圧変化量は、特許請求の範囲における「第1指標値」および「第2指標値」の一例である。
【0032】
事故発生検知部103は、直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量に基づいて、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50(直流送電線50-1~50-6)に発生した直流事故を検知する。このとき、事故発生検知部103は、直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と予め定めた第1閾値vth1とを比較し、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えていない場合には、いずれの直流送電線50にも直流事故が発生していないことを検知する。一方、事故発生検知部103は、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えている場合には、いずれかの直流送電線50に直流事故が発生したことを検知する。事故発生検知部103は、直流事故を検知した情報、つまり、いずれかの直流送電線50に直流事故が発生しているか否かを表す情報を、第1の事故区間判定部104および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。
【0033】
第1の事故区間判定部104は、事故発生検知部103がいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを検知した場合、直流事故の発生を検知したときから第1の所定の時間が経過した後に直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量に基づいて、電力変換器3-1に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)のいずれかの線路が、直流事故が発生した事故区間であるか否かを検出する。つまり、第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれかが、直流事故が発生した事故区間に含まれるか否かを判定する。このとき、第1の事故区間判定部104は、第1の所定の時間が経過した後に直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と予め定めた第2閾値vth2とを比較し、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えているか否かによって、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。第2閾値vth2は、第1閾値vth1よりも大きい直流電圧変化量を検知するための値(第1閾値vth1<第2閾値vth2)である。第2閾値vth2は、例えば、直流事故が発生した地点(事故点)の位置や、直流系統4-1の定格電圧、リアクトル30のインダクタンス値、直流送電線50の種類、直流送電線50の長さといったパラメータによって決定する。第2閾値vth2は、上記パラメータによる直流電圧変化量への影響を考慮して、直流送電線50が事故区間に含まれない(事故区間外である)場合の直流電圧変化量の最大値<第2閾値vth2<直流送電線50が事故区間に含まれる(事故区間内である)場合の直流電圧変化量の最小値とする。第1の事故区間判定部104が電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する、直流事故の発生を検知したときからの第1の所定の時間は、直流電圧計測部101における直流電圧のサンプリング時間や、第1の事故区間判定部104の判定に要する演算時間に依存するが、可能な限り短い時間であることが望ましい。これは、第1の事故区間判定部104における第1の所定の時間は、発生した直流事故の影響から電力送電システム1を保護する時間(直流事故の検出と直流送電線50の遮断(切り離し)との時間)に影響するためである。
【0034】
第1の事故区間判定部104は、判定結果を表す事故区間内外フラグを設定する。事故区間内外フラグは、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50の線路が事故区間に含まれるか否かを表すものである。第1の事故区間判定部104は、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えている場合に、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれると判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれることを表す値(例えば、「1」)にする。一方、第1の事故区間判定部104は、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えていない場合には、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50も事故区間に含まれないと判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれないことを表す値(例えば、「0」)にする。第1の事故区間判定部104は、事故区間内外フラグを第3の事故区間判定部106に出力する。事故区間内外フラグは、特許請求の範囲における「第1の判定結果」の一例である。
【0035】
ここで、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104が、電力送電システム1において直流事故が発生したことを検知(検出)する一例について説明する。以下の説明においては、直流送電線50-1に発生する直流事故が、例えば、落雷により発生することが想定される地絡事故であるものとする。より具体的には、図2に示したように、直流送電線50-1の端部で直流事故Xが発生した、つまり、電力送電システム1において、電力変換器3-1に近い位置で、直流送電線50-1に直流事故Xが発生したものとする。地絡事故は、直流送電線50-1に流れる直流電流(事故電流)が急激に変化する事故である。
【0036】
図3は、直流電圧の変化量(直流電圧変化量)に基づいて直流事故Xの発生を検知する一例を説明する図である。図3の(a)には、横軸を時間[ms]とし、縦軸を直流電圧[pu]として、時刻T0(実際には、時刻T0よりも僅かな時間だけ前)において直流事故Xが発生した場合における事故発生時の0.2[ms]前~事故発生後の2[ms]後までの直流電圧の時間的な変化の一例を示している。図3の(a)には、比較のため、電力送電システム1が備える電力変換器3-2および電力変換器3-3における直流電圧の時間的な変化の一例も併せて示している。図3の(a)に示した実線aは、電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置100-1が備える直流電圧計測部101が取得する直流電圧値(ここでは、直流送電線50-1の直流電圧)の変化の一例である。図3の(a)に示した短破線bは、電力変換器3-2に適用された不図示の直流事故検出装置100-2が備える直流電圧計測部101が取得するいずれかの直流送電線50(ここでは、直流送電線50-1)の直流電圧の変化の一例である。図3の(a)に示した長破線cは、電力変換器3-3に適用された不図示の直流事故検出装置100-3が備える直流電圧計測部101が取得するいずれかの直流送電線50(ここでは、例えば、直流送電線50-3)の直流電圧の変化の一例である。図3の(b)には、横軸を時間[ms]とし、縦軸を事故区間内外フラグの値として、時刻T0(実際には、時刻T0よりも僅かな時間だけ前)において直流事故Xが発生した場合における事故発生時の0.2[ms]前~事故発生後の2[ms]後までの事故区間内外フラグの時間的な変化の一例を示している。図3の(b)には、比較のため、電力送電システム1が備える電力変換器3-2および電力変換器3-3における事故区間内外フラグの時間的な変化の一例も併せて示している。図3の(b)に示した実線aは、直流事故検出装置100-1が備える第1の事故区間判定部104が、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50の線路が事故区間に含まれるか否かを判定した判定結果を表す事故区間内外フラグの変化の一例である。図3の(a)に示した短破線bは、不図示の直流事故検出装置100-2が備える第1の事故区間判定部104の判定結果を表す事故区間内外フラグの変化の一例であり、長破線cは、不図示の直流事故検出装置100-3が備える第1の事故区間判定部104の判定結果を表す事故区間内外フラグの変化の一例である。
【0037】
電力送電システム1における定常運転時(時刻T0よりも前の時間)では、図3の(a)に示したように、それぞれの直流送電線50の直流電圧は、ほぼ定格値(=1[pu])で変化しない。このため、事故発生検知部103は、直流事故を検知することはない。従って、第1の事故区間判定部104は、電力送電システム1における定常運転時(時刻T0よりも前の時間)には、いずれの直流送電線50も事故区間に含まれないと判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれない(事故区間外である)ことを表す値(例えば、「0」)にしている。
【0038】
一方、電力送電システム1において直流事故Xが発生した場合、この直流事故Xにおける地絡点(ここでは、直流送電線50-1の電力変換器3-1側の端部)の直流電圧が低下し、電力変換器3-1および電力変換器3-2から地絡点に向かって短絡電流(事故電流)が流れる。このため、電力変換器3-1の直流電圧は、図3の(a)に示した実線aのように変化する。そして、直流電圧計測部101は、電力変換器3-1の直流電圧に基づいて演算した直流電圧変化量(ここでは、直流送電線50-1の直流電圧変化量)を、事故発生検知部103、および第1の事故区間判定部104のそれぞれに出力する。これにより、事故発生検知部103は、直流電圧計測部101により出力された電力変換器3-1の直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えた時刻T0のときに、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50に発生した直流事故Xを検知し、直流事故Xが発生していることを表す情報を、第1の事故区間判定部104および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。第1の事故区間判定部104は、図3の(a)に示したように、事故発生検知部103が直流事故Xを検知した時刻T0から所定の時間t2が経過した時刻T1のときに、直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量dv2aと第2閾値vth2とを比較して、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。時間t2は、特許請求の範囲における「第1の所定の時間」の一例である。図3の(a)では、時刻T1において直流電圧変化量dv2aが第2閾値vth2を超えているため、第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれていると判定する。そして、第1の事故区間判定部104は、図3の(b)に示した実線aのように、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれる(事故区間内である)ことを表す値(例えば、「1」)にする。
【0039】
さらに直流事故Xが発生してから時間が経過すると、電力変換器3-2の直流電圧は、図3の(a)に示した短破線bのように変化する。電力変換器3-2の直流電圧が変化する時刻が電力変換器3-1の直流電圧が変化する時刻よりも遅れるのは、直流事故Xと電力変換器3-2との間の距離が、直流事故Xと電力変換器3-1との間の距離よりも遠いためである。このように、電力送電システム1において電力変換器3-1に近い側の直流送電線50-1の端部で直流事故Xが発生した場合、直流電圧の変化は、直流事故Xの位置からの距離に応じた遅延時間だけずれて現れる。この場合も、直流事故検出装置100-2が備える直流電圧計測部101は、電力変換器3-2の直流電圧に基づいて演算した直流電圧変化量(ここでは、直流送電線50-1の直流電圧変化量)を、対応する事故発生検知部103、および第1の事故区間判定部104のそれぞれに出力する。これにより、直流事故検出装置100-2が備える事故発生検知部103は、対応する直流電圧計測部101により出力された電力変換器3-2の直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えた時刻T2のときに、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50に発生した直流事故Xを検知する。そして、直流事故検出装置100-2が備える事故発生検知部103も、直流事故Xが発生していることを表す情報を、対応する第1の事故区間判定部104および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。直流事故検出装置100-2が備える第1の事故区間判定部104は、対応する事故発生検知部103が直流事故Xを検知した時刻T2から所定の時間t2が経過した時刻T3のときに、対応する直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と第2閾値vth2とを比較して、電力変換器3-2に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。図3の(a)では、時刻T3において直流電圧変化量dv2bが第2閾値vth2を超えているため、直流事故検出装置100-2が備える第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-2に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれていると判定する。そして、直流事故検出装置100-2が備える第1の事故区間判定部104は、図3の(b)に示した短破線bのように、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれる(事故区間内である)ことを表す値(例えば、「1」)にする。
【0040】
さらに直流事故Xが発生してからの時間が経過すると、電力変換器3-3の直流電圧(例えば、直流送電線50-3の直流電圧)は、図3の(a)に示した長破線cのように変化する。ただし、図3の(a)に示した長破線cのように、電力変換器3-3の直流電圧の変化量は、電力変換器3-1や電力変換器3-2の直流電圧の変化量よりも少ない。これは、直流送電線50-1において発生した直流事故Xの地点(地絡点)に向かって短絡電流(事故電流)が流れる際に、短絡電流が直流送電線50-3を通る経路により多くのリアクトル30が存在するためである。つまり、事故区間に含まれる直流送電線50-1の線路において直流事故Xの地点と直流電圧検出器60との間に存在するリアクトル30の数に比べて、事故区間に含まれない直流送電線50-1の線路において直流事故Xの地点と直流電圧検出器60との間に存在するリアクトル30の数の方が多いため、リアクトル30による事故電流の変化の抑制効果をより多く得ることができるからである。この場合も、直流事故検出装置100-3が備える直流電圧計測部101は、電力変換器3-3の直流電圧に基づいて演算した直流電圧変化量(ここでは、例えば、直流送電線50-3の直流電圧変化量)を、対応する事故発生検知部103、および第1の事故区間判定部104のそれぞれに出力する。これにより、直流事故検出装置100-3が備える事故発生検知部103は、対応する直流電圧計測部101により出力された電力変換器3-3の直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えた時刻T4のときに、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50に発生した直流事故Xを検知する。そして、直流事故検出装置100-3が備える事故発生検知部103も、直流事故Xが発生していることを表す情報を、対応する第1の事故区間判定部104および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。直流事故検出装置100-3が備える第1の事故区間判定部104は、対応する事故発生検知部103が直流事故Xを検知した時刻T4から所定の時間t2が経過した時刻T5のときに、対応する直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と第2閾値vth2とを比較して、電力変換器3-3に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。図3の(a)では、時刻T5において直流電圧変化量dv2cが第2閾値vth2を超えていない。これは、例えば、直流送電線50-3は、直流送電線50-1において発生した直流事故Xの影響は受けるものの、直流送電線50-3自体には直流事故Xが発生していないため、直流電圧の低下量が少ないからである。このため、直流事故検出装置100-3が備える第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-3に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれていないと判定し、図3の(b)に示した長破線cのように、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれない(事故区間外である)ことを表す値(例えば、「0」)を維持する。
【0041】
このように、電力変換器3のそれぞれに適用された直流事故検出装置100が備える事故発生検知部103は、対応する直流電圧計測部101により出力された電力変換器3の直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えた時点で、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50(直流送電線50-1~50-6)に発生した直流事故Xを検知する。そして、電力変換器3のそれぞれに適用された直流事故検出装置100が備える第1の事故区間判定部104は、対応する事故発生検知部103が直流事故Xを検知した時点から所定の時間t2が経過した時点で、対応する電力変換器3に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。電力変換器3のそれぞれに適用された直流事故検出装置100が備える第1の事故区間判定部104は、判定結果を表す事故区間内外フラグを第3の事故区間判定部106に出力する。
【0042】
直流電圧変化量は、直流電圧計測部101が演算して事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104のそれぞれに出力する構成を説明したが、直流電圧変化量は、直流電圧計測部101に代えて、事故発生検知部103や第1の事故区間判定部104がそれぞれ演算してもよい。この場合、直流電圧計測部101は、直流電圧検出器60-1と直流電圧検出器60-2とのそれぞれから取得した直流電圧値をそのまま事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104に出力する。事故発生検知部103は、上述した直流電圧計測部101と同様にして直流電圧変化量を演算し、演算した直流電圧変化量と予め定めた第1閾値vth1とを比較して、直流送電線50に直流事故が発生したことを検知する。第1の事故区間判定部104は、上述した直流電圧計測部101と同様にして直流電圧変化量を演算し、演算した直流電圧変化量と予め定めた第2閾値vth2とを比較して、対応する電力変換器3に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。
【0043】
図2に戻り、直流電流計測部102は、直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)のそれぞれにより出力された直流電流値を取得し、取得した直流電流値に基づいてそれぞれの直流送電線50を流れる直流電流の電流値の変化量の絶対値(以下、「直流電流変化量絶対値」という)を計測する。より具体的には、直流電流計測部102は、電力送電システム1における定常運転時の直流電流値の絶対値と、今回取得した直流電流値の絶対値との差分を取ることにより、定常送電の状態と現在の送電状態とにおける直流電流変化量絶対値を演算する。つまり、直流電流計測部102は、直流電流検出器70-1から取得した現在の直流電流値の絶対値と、正極側の定常運転時の直流電流値の絶対値との差分を、直流送電線50-1の直流電流変化量絶対値として演算する。さらに、直流電流計測部102は、直流電流検出器70-2から取得した現在の直流電流値の絶対値と、負極側の定常運転時の直流電流値の絶対値との差分を、直流送電線50-2の直流電流変化量絶対値として演算する。さらに、直流電流計測部102は、直流電流検出器70-3から取得した現在の直流電流値の絶対値と、正極側の定常運転時の直流電流値の絶対値との差分を、直流送電線50-3の直流電流変化量絶対値として演算する。さらに、直流電流計測部102は、直流電流検出器70-4から取得した現在の直流電流値の絶対値と、負極側の定常運転時の直流電流値の絶対値との差分を、直流送電線50-4の直流電流変化量絶対値として演算する。
【0044】
直流電流計測部102は、演算したそれぞれの直流電流変化量絶対値を、第2の事故区間判定部105に出力する。直流電流変化量絶対値は、特許請求の範囲における「電流変化」の一例である。
【0045】
第2の事故区間判定部105は、事故発生検知部103がいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを検知した場合、直流事故の発生を検知したときから第2の所定の時間が経過した後に直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値に基づいて、電力変換器3-1に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)のいずれの線路が、直流事故が発生した事故区間であるか否かを検出する。つまり、第2の事故区間判定部105は、電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれの直流送電線50に直流事故が発生しているのかを判定する。このとき、第2の事故区間判定部105は、第2の所定の時間が経過した後に直流電流計測部102により出力されたそれぞれの直流電流変化量絶対値を比較し、直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50の線路を、直流事故が発生した事故区間であると判定する。より具体的には、第2の事故区間判定部105は、それぞれの直流送電線50に着目して、着目した直流送電線50の直流電流変化量絶対値と、他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値とを順次比較することにより、第2の所定の時間が経過した後の直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50の線路を、直流事故が発生した事故区間の直流送電線50として判定(選択)する。第2の事故区間判定部105が電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50が事故区間に含まれている直流送電線50であるかを判定する、直流事故の発生を検知したときからの第2の所定の時間は、直流電流計測部102における直流電流のサンプリング時間や、第2の事故区間判定部105の判定に要する演算時間に依存するが、可能な限り短い時間であることが望ましい。これは、第2の事故区間判定部105における第2の所定の時間も、第1の事故区間判定部104における第1の所定の時間(時間t2)と同様に、発生した直流事故の影響から電力送電システム1を保護する時間(直流事故の検出と直流送電線50の遮断(切り離し)との時間)に影響するためである。
【0046】
第2の事故区間判定部105は、判定結果を表す情報を第3の事故区間判定部106に出力する。第2の事故区間判定部105が第3の事故区間判定部106に出力する判定結果を表す情報は、例えば、第1の事故区間判定部104が第2の事故区間判定部105に出力する事故区間内外フラグと同様に、それぞれの直流送電線50の線路が事故区間に含まれるか否かを表すフラグ情報であってもよい。第2の事故区間判定部105が第3の事故区間判定部106に出力する判定結果の情報は、特許請求の範囲における「第2の判定結果」の一例である。
【0047】
ここで、第2の事故区間判定部105が、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50で直流事故が発生したかを検出(判定)する一例について説明する。以下の説明においては、図2に示したように、直流送電線50-1の端部で直流事故Xが発生したものとする。
【0048】
図4は、直流電流の変化量の絶対値に基づいて直流事故Xが発生している直流送電線50を判定する一例を説明する図である。図4には、横軸を時間[ms]とし、縦軸を直流電流変化量絶対値として、時刻T0(実際には、時刻T0よりも僅かな時間だけ前)において直流事故Xが発生した場合における事故発生時の0.2[ms]前~事故発生後の2[ms]後までの直流電流変化量絶対値の時間的な変化の一例を示している。図4に示した実線dは、直流電流計測部102が取得した直流電流値に基づいて演算した直流送電線50-1の直流電流変化量絶対値の変化の一例であり、短破線eは、直流送電線50-2の直流電流変化量絶対値の変化の一例であり、長破線fは、直流送電線50-3の直流電流変化量絶対値の変化の一例であり、一点鎖線gは、直流送電線50-4の直流電流変化量絶対値の変化の一例である。
【0049】
電力送電システム1における定常運転時(時刻T0よりも前の時間)では、それぞれの直流送電線50を流れる直流電流は一定であるため、図4に示したように、それぞれの直流送電線50の直流電流変化量絶対値は、「0」で変化しない。このため、第2の事故区間判定部105は、いずれの直流送電線50も事故区間の直流送電線50として判定(選択)することはない。
【0050】
一方、直流送電線50-1において直流事故Xが発生した場合、この直流事故Xにおける地絡点に向かって電力変換器3-1および電力変換器3-2から短絡電流(事故電流)が流れる。このため、事故発生検知部103が直流事故Xを検知した時刻T6から第2の所定の時間t3が経過した時刻T7のときのそれぞれの直流送電線50の直流電流変化量絶対値は、図4に示したように上昇する。このとき、それぞれの直流送電線50における直流電流変化量絶対値は、図4において実線aで示した、事故区間内である直流送電線50-1の直流電流変化量絶対値が最も大きく上昇し、事故区間外である直流送電線50-3の直流電流変化量絶対値(図4に示した長破線f)、および直流送電線50-4の直流電流変化量絶対値(図4に示した一点鎖線g)の上昇は小さい。これは、図3において説明したように、事故区間内である直流送電線50-1の線路に比べて、事故区間外である直流送電線50-3および直流送電線50-4の線路には、多くのリアクトル30が存在するため、リアクトル30による事故電流の変化の抑制効果がより多く得られる(直流電流の変化が遅くなる)からである。一方、図4において短破線eで示したように、直流事故Xが発生した直流送電線50-1と組になっている直流送電線50-2の直流電流変化量絶対値も大きく上昇している。これは、直流送電線50-1において発生した直流事故Xの影響を受けたことによるものであるが、直流送電線50-2には実際に直流事故Xが発生していないため、直流送電線50-2の直流電流変化量絶対値は、直流送電線50-1の直流電流変化量絶対値よりも大きく上昇することはない。仮に、電力変換器3-2に属するいずれかの直流送電線50に直流事故が発生した場合や、電力変換器3-3に属するいずれかの直流送電線50に直流事故が発生した場合においても、図4に示した直流電流変化量絶対値の関係は同様である。このことから、第2の事故区間判定部105は、直流電流変化量絶対値が最大となる直流送電線50-1を、事故区間の直流送電線50の線路を、直流事故Xが発生した事故区間の直流送電線50として判定(選択)する。時間t3は、特許請求の範囲における「第2の所定の時間」の一例である。
【0051】
このように、電力変換器3のそれぞれに適用された直流事故検出装置100が備える第2の事故区間判定部105は、対応する事故発生検知部103が直流事故Xを検知した時点(時刻T6)から所定の時間t3が経過した時点で、対応する直流電流計測部102により出力されたそれぞれの直流電流変化量絶対値のうち、直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50を、直流事故が発生した事故区間の直流送電線50として判定する。電力変換器3のそれぞれに適用された直流事故検出装置100が備える第2の事故区間判定部105は、判定結果を表す情報(例えばフラグ情報)を第3の事故区間判定部106に出力する。
【0052】
直流電流変化量絶対値は、直流電流計測部102が演算して第2の事故区間判定部105に出力する構成を説明したが、直流電流変化量絶対値は、直流電流計測部102に代えて、第2の事故区間判定部105が演算してもよい。この場合、直流電流計測部102は、それぞれの直流電流検出器70から取得した直流電流値をそのまま第2の事故区間判定部105に出力する。第2の事故区間判定部105は、上述した直流電流計測部102と同様にして直流電流変化量絶対値を演算し、演算したそれぞれの直流送電線50の直流電流変化量絶対値のうち、直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50を、直流事故が発生した事故区間の直流送電線50として判定する。
【0053】
図2に戻り、第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部104による判定結果と、第2の事故区間判定部105による判定結果とに基づいて、電力変換器3-1に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)のいずれかの直流送電線50の線路を、事故区間であると判定する。つまり、第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部104により出力された事故区間内外フラグと、第2の事故区間判定部105により出力された判定結果を表す情報とに基づいて、直流事故検出装置100としての最終的な事故区間を判定(特定)する。より具体的には、第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部104により出力された事故区間内外フラグと、第2の事故区間判定部105により出力された直流事故が発生したと判定された直流送電線50との論理積をとり、電力変換器3-1に属する直流送電線50において直流事故が発生したか否かを特定する。第3の事故区間判定部106は、特定した直流送電線50を表す情報を、判定結果の情報として遮断指令出力部107に出力する。第3の事故区間判定部106が遮断指令出力部107に出力する判定結果の情報は、例えば、直流事故が発生したと判定した直流送電線50が接続されている直流遮断器40を遮断させる(直流送電線50を切り離す)ことを表す指示情報であってもよい。
【0054】
遮断指令出力部107は、第3の事故区間判定部106により出力された判定結果の情報に基づいて、直流事故が発生した電力変換器3-1に属する直流送電線50の遮断(切り離し)を制御するための遮断指令値を生成し、生成した遮断指令値を対応する直流遮断器40に出力する。これにより、遮断指令値が入力された直流遮断器40は、入力された遮断指令値に応じて、接続されている直流母線20と直流送電線50との間を電気的に遮断し、直流事故が発生した直流送電線50を直流系統4-1から除去する。
【0055】
[直流事故検出装置の処理]
図5は、直流事故検出装置100における処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、電力送電システム1が稼働している間、繰り返し実行される。
【0056】
電力送電システム1が稼働して直流事故検出装置100が動作すると、直流電圧計測部101は、それぞれの直流電圧検出器60が計測して出力した直流電圧値を取得し、取得した直流電圧値に基づいて直流電圧変化量を演算する。そして、直流電圧計測部101は、演算した直流電圧変化量を、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104のそれぞれに出力する。電力送電システム1が稼働して直流事故検出装置100が動作すると、直流電流計測部102は、それぞれの直流電流検出器70が計測して出力した直流電流値を取得し、取得した直流電流値に基づいて直流電流変化量絶対値を演算する。そして、直流電流計測部102は、演算した直流電流変化量絶対値を、第2の事故区間判定部105に出力する。
【0057】
事故発生検知部103は、直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と第1閾値vth1とを比較し、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えているか否かを判定する(ステップS100)。すなわち、事故発生検知部103は、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50において直流事故が発生したか否かを検知する。ステップS100において、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えていないと判定した場合、事故発生検知部103は、いずれの直流送電線50にも直流事故が発生していないことを表す情報を第1の事故区間判定部104と第2の事故区間判定部105とのそれぞれに出力して、今回の処理を終了する。
【0058】
一方、ステップS100において、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えていると判定した場合、事故発生検知部103は、いずれかの直流送電線50において直流事故が発生したとことを検知し、いずれかの直流送電線50に直流事故が発生していることを表す情報を第1の事故区間判定部104と第2の事故区間判定部105とのそれぞれに出力する。
【0059】
第1の事故区間判定部104は、事故発生検知部103からいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを表す情報が入力されると、第1の所定の時間(例えば、図3の(a)に示した時間t2)が経過した後に、直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と第2閾値vth2とを比較し、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えているか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。
【0060】
ステップS110において、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えていないと判定した場合、第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50も事故区間に含まれない、つまり、直流事故は、直流事故検出装置100が検出する直流送電線50の線路の区間(検出区間)外で発生したと判定する(ステップS150)。そして、第1の事故区間判定部104は、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれない(事故区間外である)ことを表す値(例えば、「0」)に維持して、今回の処理を終了する。
【0061】
一方、ステップS110において、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えていると判定した場合、第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれている、つまり、直流事故が検出区間内で発生したと判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれる(事故区間内である)ことを表す値(例えば、「1」)に変更して、第3の事故区間判定部106に出力する。
【0062】
第2の事故区間判定部105は、事故発生検知部103からいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを表す情報が入力されると、第2の所定の時間(例えば、図4に示した時間t3)が経過した後に、着目した直流送電線50の直流電流変化量絶対値が他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きいか否かを判定する(ステップS120)。第2の事故区間判定部105におけるステップS120の処理は、電力変換器3-1に属する全ての直流送電線50に対して行う。これにより、第2の事故区間判定部105は、直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50の線路を、直流事故が発生した事故区間の直流送電線50として判定(選択)する。
【0063】
ステップS120において、着目したいずれの直流送電線50の直流電流変化量絶対値も他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きくないと判定した場合、第2の事故区間判定部105は、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50も事故区間に含まれない、つまり、直流事故は検出区間外で発生したと判定する(ステップS150)。そして、第2の事故区間判定部105は、今回の処理を終了する。
【0064】
一方、ステップS120において、着目した直流送電線50の直流電流変化量絶対値が他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きいと判定した場合、第2の事故区間判定部105は、直流事故が検出区間内で発生したと判定し、電力変換器3-1に属する直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50を選択して、判定結果を表す情報として第3の事故区間判定部106に出力する。
【0065】
第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部104により出力された判定結果(事故区間内外フラグ)と、第2の事故区間判定部105により出力された判定結果(直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50)との論理積により、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50の線路を、事故区間であると判定(特定)する(ステップS130)。つまり、第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部104により直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えていると判定されて事故区間内外フラグが変更された場合、第2の事故区間判定部105により直流電流変化量絶対値が最大であると判定された直流送電線50を、事故区間の直流送電線50であると最終的に特定する。第3の事故区間判定部106は、最終的に特定した直流送電線50を表す情報を遮断指令出力部107に出力する。
【0066】
遮断指令出力部107は、第3の事故区間判定部106により特定された事故区間の直流送電線50の遮断を制御する遮断指令値を生成し、生成した遮断指令値を対応する直流遮断器40に出力する(ステップS140)。そして、遮断指令出力部107は、今回の処理を終了する。
【0067】
このような構成および処理によって、直流事故検出装置100は、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104による直流電圧変化量に基づく判定と、第2の事故区間判定部105による直流電流変化量絶対値に基づく判定とに基づいて、適用された電力変換器3に属する直流送電線50のうち、事故区間に含まれる直流送電線50を最終的に特定する。図5に示したフローチャートでは、第1の事故区間判定部104における判定(ステップS110)の後に、第2の事故区間判定部105における判定する(ステップS120)を行う場合を示しているが、ステップS110の処理と、ステップS120の処理とは、並列、つまり、同時期に行われてもよい。
【0068】
上記説明したように、第1の実施形態の直流事故検出装置100は、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104による直流電圧変化量に基づく判定結果と、第2の事故区間判定部105による直流電流変化量絶対値に基づく判定結果とに基づいて、適用された電力変換器3に属する直流送電線50のうち、事故区間に含まれる直流送電線50を最終的に特定する。言い換えれば、多端子(ここでは、三端子)の電力送電システム1において、第1の実施形態の直流事故検出装置100が単体で、適用された一つの端子(ここでは、電力変換器3-1の直流側端子)に属する直流送電線50(ここでは、直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)のいずれかに発生した直流事故の検知および判定と、事故区間に含まれる直流送電線50の最終的な特定とをすることができる。このため、第1の実施形態の直流事故検出装置100では、従来の交流系統に適用された保護システムにおいて必要としていた、送電線路の端子間での情報通信に係る時間が削減され、直流事故が発生した直流送電線50を短い時間で事故区間に含まれる直流送電線50であると検出することができる。しかも、第1の実施形態の直流事故検出装置100では、直流電圧値(直流電圧変化量)に基づく判定と、直流電流値(直流電流変化量絶対値)に基づく判定との二つの判定結果(判定方法)の論理積によって、事故区間に含まれる直流送電線50を最終的に特定する。このため、第1の実施形態の直流事故検出装置100では、従来の交流系統に適用された保護システムのように、送電線路の両端の差動電流を用いた一つの判定方法によって事故区間に含まれる直流送電線50を特定する場合に比べて、誤動作の確率を低減させ、高い信頼性で、直流事故や事故区間を検出することができる。
【0069】
上述した第1の実施形態の直流事故検出装置100では、遮断指令出力部107を備え、最終的に事故区間に含まれると特定された直流送電線50が接続されている直流遮断器40を制御して、直流事故が発生した直流送電線50を直流系統4-1から切り離す(除去する)構成について説明した。しかし、直流事故が発生した直流送電線50の切り離し(除去)の制御は、例えば、第1の実施形態の直流事故検出装置100とは別(別体)の制御装置が、第1の実施形態の直流事故検出装置100によって最終的に事故区間に含まれると特定された直流送電線50の情報に基づいて行う構成であってもよい。つまり、第1の実施形態の直流事故検出装置100に代わる別の制御装置が、遮断指令出力部107を備えてもよい。この場合、第1の実施形態の直流事故検出装置100が備える第3の事故区間判定部106は、直流事故が発生したと判定した直流送電線50を表す判定結果の情報(例えば、直流事故が発生したと判定した直流送電線50が接続されている直流遮断器40を遮断させることを表す指示情報であってもよい)を、別の制御装置が備える遮断指令出力部107に出力する。
【0070】
上述した第1の実施形態の直流事故検出装置100では、直流事故検出装置100における演算を、直流電圧検出器60から取得した直流電圧値、あるいは直流電流検出器70から取得した直流電流値に基づいて行うものとして説明した。つまり、直流電圧計測部101における直流電圧変化量の演算や、直流電流計測部102による直流電流変化量絶対値の演算は、取得した値そのものを用いて行うものとして説明した。しかし、直流電圧検出器60により出力された直流電圧値や、直流電流検出器70により出力された直流電流値には、ノイズ成分を含んでいることも考えられる。このため、第1の実施形態の直流事故検出装置100(より具体的には、直流電圧計測部101や直流電流計測部102)は、演算の処理を行う前後に、例えば、移動平均やフィルタ適応などのノイズ除去を目的とした処理を行う構成にしてもよい。
【0071】
(第2の実施形態)
[直流事故検出装置の構成]
以下、第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態に係る直流事故検出装置の構成の一例を示す図である。図6には、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様に、図1に示した電力送電システム1が備える三つの電力変換器3のうち、電力変換器3-1に適用する直流事故検出装置200の一例を示している。図6においては、直流事故検出装置100と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。直流事故検出装置200も、直流事故検出装置100と同様に、電力変換器3-1に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)に発生した直流事故による電力送電システム1への影響を軽減させる保護装置として、電力変換器3-1の近傍に設置(接続)される。
【0072】
直流事故検出装置200も、直流事故検出装置100と同様に、電力変換器3-2および電力変換器3-3のそれぞれに適用されてもよい。電力変換器3-2および電力変換器3-3のそれぞれに適用される直流事故検出装置200も、図6に示した電力変換器3-1に適用される直流事故検出装置200と同様の構成である。つまり、電力変換器3-2に適用される直流事故検出装置200も、電力変換器3-2に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-5、および直流送電線50-6)に発生した直流事故による電力送電システム1への影響を軽減させる保護装置として、電力変換器3-2の近傍に設置(接続)される。電力変換器3-3に適用される直流事故検出装置200も、電力変換器3-3に属する直流送電線50(直流送電線50-3、直流送電線50-4、直流送電線50-5、および直流送電線50-6)に発生した直流事故による電力送電システム1への影響を軽減させる保護装置として、電力変換器3-3の近傍に設置(接続)される。以下の説明においては、電力変換器3-1に適用される直流事故検出装置200を「直流事故検出装置200-1」ともいい、電力変換器3-2に適用される不図示の直流事故検出装置200を「直流事故検出装置200-2」ともいい、電力変換器3-3に適用される不図示の直流事故検出装置200を「直流事故検出装置200-3」ともいう。
【0073】
直流事故検出装置200は、直流電流変化量絶対値に基づいて、電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれかに発生した直流事故の検知および判定と、事故区間に含まれる直流送電線50の最終的な特定とをする構成である。図6には、直流事故検出装置200に関連する電力送電システム1の構成(交流系統2-1、電力変換器3-1、および直流系統4の一部の構成)も併せて示している。電力送電システム1では、直流事故検出装置200の適用に際して、直流電流検出器が設けられる。図6に示した直流系統4の一部の構成では、四つの直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)が設けられている。言い換えれば、直流事故検出装置200が適用される電力送電システム1では、直流事故検出装置100の適用に際して直流系統4-1に設けられた二つの直流電圧検出器60(直流電圧検出器60-1および60-2)が省略されている。電力変換器3-2および電力変換器3-3のそれぞれに直流事故検出装置200が適用される場合も同様である。以下の説明においては、図6に示した直流電流検出器70が設けられた構成の直流系統4の一部の構成を、「直流系統4-2」ともいう。
【0074】
直流事故検出装置200は、直流電流検出器70により出力された直流電流値に基づいて、直流系統4-2が備えるいずれかの直流送電線50において発生した直流事故を検出(検知)し、直流事故が発生している直流送電線50の線路を事故区間として検出(特定)する。直流事故検出装置200は、特定した事故区間に属する直流遮断器40、つまり、直流事故が発生している直流送電線50が接続されている直流遮断器40を制御して、直流母線20と直流送電線50との間を電気的に遮断させる。直流事故検出装置200は、例えば、直流電流計測部102と、事故発生検知部203と、第1の事故区間判定部204と、第2の事故区間判定部105と、第3の事故区間判定部106と、遮断指令出力部107と、を備える。
【0075】
直流事故検出装置200や、直流事故検出装置200が備える構成要素は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより以下の機能を実現するものである。直流事故検出装置200や、直流事故検出装置200が備える構成要素の機能のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。直流事故検出装置200や、直流事故検出装置200が備える構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め直流事故検出装置200あるいは電力送電システム1が備えるHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が直流事故検出装置200あるいは電力送電システム1が備えるドライブ装置に装着されることで直流事故検出装置200が備える記憶装置にインストールされてもよい。
【0076】
直流電流計測部102は、直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)のそれぞれにより出力された直流電流値に基づいて演算したそれぞれの直流電流変化量絶対値を、事故発生検知部203、第1の事故区間判定部204、および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。直流電流変化量絶対値は、特許請求の範囲における「第1指標値」、「第2指標値」、および「電流変化」の別の一例である。
【0077】
事故発生検知部203は、直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値に基づいて、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50(直流送電線50-1~50-6)に発生した直流事故を検知する。このとき、事故発生検知部203は、直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値と予め定めた第1閾値ith1とを比較し、直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えていない場合には、いずれの直流送電線50にも直流事故が発生していないことを検知する。一方、事故発生検知部203は、直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えている場合には、いずれかの直流送電線50に直流事故が発生したことを検知する。事故発生検知部203は、直流事故を検知した情報、つまり、いずれかの直流送電線50に直流事故が発生しているか否かを表す情報を、第1の事故区間判定部204および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。事故発生検知部203は、特許請求の範囲における「事故発生検知部」の別の一例である。第1閾値ith1は、特許請求の範囲における「第1閾値」の別の一例である。
【0078】
第1の事故区間判定部204は、事故発生検知部203がいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを検知した場合、直流事故の発生を検知したときから第1の所定の時間が経過した後に直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値に基づいて、電力変換器3-1に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)のいずれかの線路が、直流事故が発生した事故区間であるか否かを検出する。つまり、第1の事故区間判定部204は、電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれかが、直流事故が発生した事故区間に含まれるか否かを判定する。このとき、第1の事故区間判定部204は、第1の所定の時間が経過した後に直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値と予め定めた第2閾値ith2とを比較し、直流電流変化量絶対値が第2閾値ith2を超えているか否かによって、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。第2閾値ith2は、第1閾値ith1よりも大きい直流電流変化量絶対値を検知するための値(第1閾値ith1<第2閾値ith2)である。第2閾値ith2は、例えば、直流事故が発生した地点(事故点)の位置や、直流系統4-2の定格電圧、リアクトル30のインダクタンス値、直流送電線50の種類、直流送電線50の長さといったパラメータによって決定する。第2閾値ith2は、上記パラメータによる直流電流変化量絶対値への影響を考慮して、直流送電線50が事故区間に含まれない(事故区間外である)場合の直流電流変化量絶対値の最大値<第2閾値ith2<直流送電線50が事故区間に含まれる(事故区間内である)場合の直流電流変化量絶対値の最小値とする。第1の事故区間判定部204が電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する、直流事故の発生を検知したときからの第1の所定の時間は、直流電流計測部102における直流電流のサンプリング時間や、第1の事故区間判定部204の判定に要する演算時間に依存するが、可能な限り短い時間であることが望ましい。これは、第1の事故区間判定部204における第1の所定の時間は、発生した直流事故の影響から電力送電システム1を保護する時間(直流事故の検出と直流送電線50の遮断(切り離し)との時間)に影響するためである。
【0079】
第1の事故区間判定部204は、判定結果を表す事故区間内外フラグを設定する。事故区間内外フラグは、直流事故検出装置100が備える第1の事故区間判定部104が設定する事故区間内外フラグと同様に、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50の線路が事故区間に含まれるか否かを表すものである。第1の事故区間判定部204は、直流電流変化量絶対値が第2閾値ith2を超えている場合に、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれると判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれることを表す値(例えば、「1」)にする。一方、第1の事故区間判定部204は、直流電流変化量絶対値が第2閾値ith2を超えていない場合には、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50も事故区間に含まれないと判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれないことを表す値(例えば、「0」)にする。第1の事故区間判定部204は、事故区間内外フラグを第3の事故区間判定部106に出力する。
【0080】
第1の事故区間判定部204は、特許請求の範囲における「第1の事故区間判定部」の別の一例である。第2閾値ith2は、特許請求の範囲における「第2閾値」の別の一例である。第1の事故区間判定部204が第3の事故区間判定部106に出力する事故区間内外フラグは、特許請求の範囲における「第1の判定結果」の別の一例である。
【0081】
ここで、事故発生検知部203および第1の事故区間判定部204が、電力送電システム1において直流事故が発生したことを検知(検出)する一例について説明する。以下の説明においては、直流送電線50-1に発生する直流事故が地絡事故であるものとする。より具体的には、図2に示したように、直流送電線50-1の端部で直流事故Xが発生した、つまり、電力送電システム1において、電力変換器3-1に近い位置で、直流送電線50-1に直流事故Xが発生したものとする。
【0082】
図7は、直流電流の変化量の絶対値(直流電流変化量絶対値)に基づいて直流事故Xの発生を検知する一例を説明する図である。図7の(a)には、横軸を時間[ms]とし、縦軸を直流電流変化量絶対値として、時刻T10(実際には、時刻T10よりも僅かな時間だけ前)において直流事故Xが発生した場合における事故発生時の0.2[ms]前~事故発生後の2[ms]後までの直流電流変化量絶対値の時間的な変化の一例を示している。図7の(a)には、比較のため、電力送電システム1が備える電力変換器3-2および電力変換器3-3における直流電流変化量絶対値の時間的な変化の一例も併せて示している。図7の(a)において示したそれぞれの直流電流変化量絶対値は、直流電流計測部102が取得した直流電流値のうち、変化量が最も大きい直流送電線50の直流電流変化量絶対値である。図7の(a)に示した実線jは、電力変換器3-1に適用された直流事故検出装置200-1が備える直流電流計測部102が演算して出力する、変化量が最も大きい直流送電線50(ここでは、直流送電線50-1)の直流電流変化量絶対値の変化の一例である。図7の(a)に示した短破線kは、電力変換器3-2に適用された不図示の直流事故検出装置200-2が備える直流電流計測部102が演算して出力する、変化量が最も大きい直流送電線50(ここでは、直流送電線50-1)の直流電流変化量絶対値の変化の一例である。図7の(a)に示した長破線lは、電力変換器3-3に適用された不図示の直流事故検出装置200-3が備える直流電流計測部102が演算して出力する、変化量が最も大きい直流送電線50(ここでは、例えば、直流送電線50-3)の直流電流変化量絶対値の変化の一例である。図7の(b)には、横軸を時間[ms]とし、縦軸を事故区間内外フラグの値として、時刻T10(実際には、時刻T10よりも僅かな時間だけ前)において直流事故Xが発生した場合における事故発生時の0.2[ms]前~事故発生後の2[ms]後までの事故区間内外フラグの時間的な変化の一例を示している。図7の(b)には、比較のため、電力送電システム1が備える電力変換器3-2および電力変換器3-3における事故区間内外フラグの時間的な変化の一例も併せて示している。図7の(b)に示した実線jは、直流事故検出装置200-1が備える第1の事故区間判定部204が、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50の線路が事故区間に含まれるか否かを判定した判定結果を表す事故区間内外フラグの変化の一例である。図7の(a)に示した短破線kは、不図示の直流事故検出装置200-2が備える第1の事故区間判定部204の判定結果を表す事故区間内外フラグの変化の一例であり、長破線lは、不図示の直流事故検出装置200-3が備える第1の事故区間判定部204の判定結果を表す事故区間内外フラグの変化の一例である。
【0083】
電力送電システム1における定常運転時(時刻T10よりも前の時間)では、それぞれの直流送電線50の直流電流は安定しているため、図7の(a)に示したように、それぞれの直流送電線50の直流電流変化量絶対値は、「0」で変化しない。このため、事故発生検知部203は、直流事故を検知することはない。従って、第1の事故区間判定部204は、電力送電システム1における定常運転時(時刻T10よりも前の時間)には、いずれの直流送電線50も事故区間に含まれないと判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれない(事故区間外である)ことを表す値(例えば、「0」)にしている。
【0084】
一方、電力送電システム1において直流事故Xが発生した場合、この直流事故Xにおける地絡点(ここでは、直流送電線50-1の電力変換器3-1側の端部)の直流電圧が低下し、電力変換器3-1および電力変換器3-2から地絡点に向かって短絡電流(事故電流)が流れる。このため、直流電流計測部102は、取得した直流電流値に基づいて演算した、図7の(a)に示した実線jのように変化する電力変換器3-1の直流電流変化量絶対値(ここでは、直流送電線50-1の直流電流変化量絶対値)を、事故発生検知部203、第1の事故区間判定部204、および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。これにより、事故発生検知部203は、直流電流計測部102により出力された電力変換器3-1の直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えた時刻T10のときに、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50に発生した直流事故Xを検知し、直流事故Xが発生していることを表す情報を、第1の事故区間判定部204および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。第1の事故区間判定部204は、図7の(a)に示したように、事故発生検知部203が直流事故Xを検知した時刻T10から所定の時間t2aが経過した時刻T11のときに、直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値が表す直流電流変化量di2aと第2閾値ith2とを比較して、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。時間t2aは、特許請求の範囲における「第1の所定の時間」の別の一例である。図7の(a)では、時刻T11において直流電流変化量di2aが第2閾値ith2を超えているため、第1の事故区間判定部204は、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれていると判定する。そして、第1の事故区間判定部204は、図7の(b)に示した実線jのように、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれる(事故区間内である)ことを表す値(例えば、「1」)にする。
【0085】
さらに直流事故Xが発生してから時間が経過すると、直流事故検出装置200-2が備える直流電流計測部102は、取得した直流電流値に基づいて演算した、図7の(a)に示した短破線kのように変化する電力変換器3-2の直流電流変化量絶対値(ここでは、直流送電線50-1の直流電流変化量絶対値)を、対応する事故発生検知部203、第1の事故区間判定部204、および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。直流電流計測部102が電力変換器3-2の直流電流変化量絶対値を出力する時刻が電力変換器3-1の直流電流変化量絶対値を出力する時刻よりも遅れるのは、直流電流の変化も、直流電圧と同様に、直流事故Xの位置からの距離に応じた遅延時間だけずれて現れるからである。これにより、直流事故検出装置200-2が備える事故発生検知部203は、対応する直流電流計測部102により出力された電力変換器3-2の直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えた時刻T12のときに、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50に発生した直流事故Xを検知し、直流事故Xが発生していることを表す情報を、対応する第1の事故区間判定部204および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。直流事故検出装置200-2が備える第1の事故区間判定部204は、対応する事故発生検知部203が直流事故Xを検知した時刻T12から所定の時間t2aが経過した時刻T13のときに、対応する直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値が表す直流電流変化量di2bと第2閾値ith2とを比較して、電力変換器3-2に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。図7の(a)では、時刻T13において直流電流変化量di2bが第2閾値ith2を超えているため、直流事故検出装置200-2が備える第1の事故区間判定部204は、電力変換器3-2に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれていると判定する。そして、直流事故検出装置200-2が備える第1の事故区間判定部204は、図7の(b)に示した短破線kのように、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれる(事故区間内である)ことを表す値(例えば、「1」)にする。
【0086】
さらに直流事故Xが発生してからの時間が経過すると、直流事故検出装置200-3が備える直流電流計測部102は、取得した直流電流値に基づいて演算した、図7の(a)に示した長破線lのように変化する電力変換器3-3の直流電流変化量絶対値(ここでは、例えば、直流送電線50-3の直流電流変化量絶対値)を、対応する事故発生検知部203、第1の事故区間判定部204、および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。直流事故検出装置200-3が備える直流電流計測部102が出力する直流電流変化量絶対値の変化量は、図7の(a)に示した長破線lのように電力変換器3-1や電力変換器3-2が備える直流電流計測部102が出力する直流電流変化量絶対値の変化量よりも少ない。これは、直流送電線50-1において発生した直流事故Xの地点(地絡点)に向かって短絡電流(事故電流)が流れる際の直流送電線50-3を通る経路に、より多くのリアクトル30が存在するため、リアクトル30による事故電流の変化の抑制効果をより多く得ることができるからである。これにより、直流事故検出装置200-3が備える事故発生検知部203は、対応する直流電流計測部102により出力された電力変換器3-3の直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えた時刻T14のときに、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50に発生した直流事故Xを検知し、直流事故Xが発生していることを表す情報を、対応する第1の事故区間判定部204および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。直流事故検出装置200-3が備える第1の事故区間判定部204は、対応する事故発生検知部203が直流事故Xを検知した時刻T14から所定の時間t2aが経過した時刻T15のときに、対応する直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値が表す直流電流変化量di2cと第2閾値ith2とを比較して、電力変換器3-3に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。図7の(a)では、時刻T15において直流電流変化量di2cが第2閾値ith2を超えていない。これは、例えば、直流送電線50-3の直流電流の変化も、直流電圧と同様に、直流送電線50-1において発生した直流事故Xの影響は受けるものの、直流送電線50-3自体には直流事故Xが発生していないため、直流電流の変化量が少ないからである。このため、直流事故検出装置200-3が備える第1の事故区間判定部204は、電力変換器3-3に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれていないと判定し、図7の(b)に示した長破線lのように、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれない(事故区間外である)ことを表す値(例えば、「0」)を維持する。
【0087】
このように、電力変換器3のそれぞれに適用された直流事故検出装置200が備える事故発生検知部203は、対応する直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えた時点で、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50(直流送電線50-1~50-6)に発生した直流事故Xを検知する。そして、電力変換器3のそれぞれに適用された直流事故検出装置200が備える第1の事故区間判定部204は、対応する事故発生検知部203が直流事故Xを検知した時点から所定の時間t2aが経過した時点で、対応する電力変換器3に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。電力変換器3のそれぞれに適用された直流事故検出装置200が備える第1の事故区間判定部204は、判定結果を表す事故区間内外フラグを第3の事故区間判定部106に出力する。
【0088】
直流電流変化量絶対値は、直流電流計測部102が演算して事故発生検知部203、第1の事故区間判定部204、および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する構成を説明したが、直流電流変化量絶対値は、直流電流計測部102に代えて、事故発生検知部203や、第1の事故区間判定部204、第2の事故区間判定部105がそれぞれ演算してもよい。この場合、直流電流計測部102は、直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)のそれぞれから取得した直流電流値をそのまま事故発生検知部203、第1の事故区間判定部204、および第2の事故区間判定部105に出力する。事故発生検知部203は、上述した直流電流計測部102と同様にして直流電流変化量絶対値を演算し、演算した直流電流変化量絶対値と予め定めた第1閾値ith1とを比較して、直流送電線50に直流事故が発生したことを検知する。第1の事故区間判定部204は、上述した直流電流計測部102と同様にして直流電流変化量絶対値を演算し、演算した直流電流変化量絶対値と予め定めた第2閾値ith2とを比較して、対応する電力変換器3に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。
【0089】
図6に戻り、第2の事故区間判定部105は、事故発生検知部203がいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを検知した場合、直流事故の発生を検知したときから第2の所定の時間が経過した後に直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値に基づいて、電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれの線路が、直流事故が発生した事故区間であるか否かを検出する。つまり、直流事故検出装置200では、第2の事故区間判定部105が電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれの直流送電線50に直流事故が発生しているのかを判定するきっかけが、直流事故検出装置100では事故発生検知部103がいずれかの直流送電線50に発生した直流事故を検知したときであったのに代わって、事故発生検知部203がいずれかの直流送電線50に発生した直流事故の検知したときとなっている。第2の事故区間判定部105は、判定結果を表す情報を第3の事故区間判定部106に出力する。
【0090】
第2の事故区間判定部105が電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50で直流事故が発生したかを検出(判定)する動作は、直流事故検出装置100が備える第2の事故区間判定部105と同様である(図4参照)。従って、直流事故検出装置200が備える第3の事故区間判定部106および遮断指令出力部107の動作も、直流事故検出装置100が備える第3の事故区間判定部106および遮断指令出力部107と同様である。
【0091】
[直流事故検出装置の処理]
図8は、直流事故検出装置200における処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理も、電力送電システム1が稼働している間、繰り返し実行される。図8に示したフローチャートでは、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様の処理に同一のステップ番号を付して、詳細な説明は省略する。
【0092】
電力送電システム1が稼働して直流事故検出装置200が動作すると、直流電流計測部102は、それぞれの直流電流検出器70が計測して出力した直流電流値を取得し、取得した直流電流値に基づいて直流電流変化量絶対値を演算する。そして、直流電流計測部102は、演算した直流電流変化量絶対値を、事故発生検知部203、第1の事故区間判定部204、および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。
【0093】
事故発生検知部203は、直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値と第1閾値ith1とを比較し、直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えているか否かを判定する(ステップS200)。すなわち、事故発生検知部203は、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50において直流事故が発生したか否かを検知する。ステップS200において、直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えていないと判定した場合、事故発生検知部203は、いずれの直流送電線50にも直流事故が発生していないことを表す情報を第1の事故区間判定部204と第2の事故区間判定部105とのそれぞれに出力して、今回の処理を終了する。
【0094】
一方、ステップS200において、直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えていると判定した場合、事故発生検知部203は、いずれかの直流送電線50において直流事故が発生したとことを検知し、いずれかの直流送電線50に直流事故が発生していることを表す情報を第1の事故区間判定部204と第2の事故区間判定部105とのそれぞれに出力する。
【0095】
第1の事故区間判定部204は、事故発生検知部203からいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを表す情報が入力されると、第1の所定の時間(例えば、図7の(a)に示した時間t2a)が経過した後に、直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値と第2閾値ith2とを比較し、直流電流変化量絶対値が第2閾値ith2を超えているか否かを判定する(ステップS210)。すなわち、第1の事故区間判定部204は、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。
【0096】
ステップS210において、直流電流変化量絶対値が第2閾値ith2を超えていないと判定した場合、第1の事故区間判定部204は、直流事故検出装置100が備える第1の事故区間判定部104と同様に、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50も事故区間に含まれない、つまり、直流事故は、直流事故検出装置200が検出する直流送電線50の線路の区間(検出区間)外で発生したと判定する(ステップS150)。そして、第1の事故区間判定部204は、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれない(事故区間外である)ことを表す値(例えば、「0」)に維持して、今回の処理を終了する。
【0097】
一方、ステップS210において、直流電流変化量絶対値が第2閾値ith2を超えていると判定した場合、第1の事故区間判定部204は、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれている、つまり、直流事故が検出区間内で発生したと判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれる(事故区間内である)ことを表す値(例えば、「1」)に変更して、第3の事故区間判定部106に出力する。
【0098】
第2の事故区間判定部105は、事故発生検知部203からいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを表す情報が入力されると、直流事故検出装置100と同様に、第2の所定の時間(例えば、図4に示した時間t3)が経過した後に、着目した直流送電線50の直流電流変化量絶対値が他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きいか否かを判定する(ステップS120)。
【0099】
ステップS120において、着目したいずれの直流送電線50の直流電流変化量絶対値も他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きくないと判定した場合、第2の事故区間判定部105は、直流事故検出装置100と同様に、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50も事故区間に含まれない、つまり、直流事故は検出区間外で発生したと判定し(ステップS150)、今回の処理を終了する。
【0100】
一方、ステップS120において、着目した直流送電線50の直流電流変化量絶対値が他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きいと判定した場合、第2の事故区間判定部105は、直流事故検出装置100と同様に、直流事故が検出区間内で発生したと判定し、電力変換器3-1に属する直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50を選択して、判定結果を表す情報として第3の事故区間判定部106に出力する。
【0101】
第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部204により出力された判定結果(事故区間内外フラグ)と、第2の事故区間判定部105により出力された判定結果(直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50)との論理積により、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50の線路を、事故区間であると判定(特定)する(ステップS130)。つまり、第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部204により直流電流変化量絶対値が第2閾値ith2を超えていると判定されて事故区間内外フラグが変更された場合、直流事故検出装置100と同様に、第2の事故区間判定部105により直流電流変化量絶対値が最大であると判定された直流送電線50を、事故区間の直流送電線50であると最終的に特定する。第3の事故区間判定部106は、最終的に特定した直流送電線50を表す情報を遮断指令出力部107に出力する。
【0102】
遮断指令出力部107は、直流事故検出装置100と同様に、第3の事故区間判定部106により特定された事故区間の直流送電線50の遮断を制御する遮断指令値を生成し、生成した遮断指令値を対応する直流遮断器40に出力する(ステップS140)。そして、遮断指令出力部107は、今回の処理を終了する。
【0103】
このような構成および処理によって、直流事故検出装置200は、事故発生検知部203および第1の事故区間判定部204による直流電流変化量絶対値に基づく判定と、第2の事故区間判定部105による直流電流変化量絶対値に基づく判定とに基づいて、適用された電力変換器3に属する直流送電線50のうち、事故区間に含まれる直流送電線50を最終的に特定する。図8に示したフローチャートでは、第1の事故区間判定部204における判定(ステップS210)の後に、第2の事故区間判定部105における判定する(ステップS120)を行う場合を示しているが、ステップS210の処理と、ステップS120の処理とは、並列、つまり、同時期に行われてもよい。
【0104】
上記説明したように、第2の実施形態の直流事故検出装置200は、事故発生検知部203および第1の事故区間判定部204による直流電流変化量絶対値に基づく判定結果と、第2の事故区間判定部105による直流電流変化量絶対値に基づく判定結果とに基づいて、適用された電力変換器3に属する直流送電線50のうち、事故区間に含まれる直流送電線50を最終的に特定する。つまり、第2の実施形態の直流事故検出装置200でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様に、多端子の電力送電システム1において、第2の実施形態の直流事故検出装置200が単体で、適用された一つの端子に属する直流送電線50のいずれかに発生した直流事故の検知および判定と、事故区間に含まれる直流送電線50の最終的な特定とをすることができる。このため、第2の実施形態の直流事故検出装置200でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様に、従来の交流系統に適用された保護システムにおいて必要としていた情報通信に係る時間が削減され、直流事故が発生した直流送電線50を短い時間で事故区間に含まれる直流送電線50であると検出することができる。しかも、第2の実施形態の直流事故検出装置200では、第1の実施形態の直流事故検出装置100がいずれかの直流送電線50に発生した直流事故の検知および判定に用いていた直流送電線50の直流電圧値(直流電圧変化量)を用いることなく、直流送電線50のいずれかに発生した直流事故の検知および判定を行うことができる。このため、第2の実施形態の直流事故検出装置200が適用された電力送電システム1では、第1の実施形態の直流事故検出装置100が適用された電力送電システム1のように、直流系統4に直流電圧検出器60を設けなくてもよくなる。そして、第2の実施形態の直流事故検出装置200でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様の効果を得ることができる。
【0105】
上述した第2の実施形態の直流事故検出装置200も、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様に、直流事故が発生した直流送電線50の切り離し(除去)の制御を第2の実施形態の直流事故検出装置200とは別(別体)の制御装置が行う構成にしてもよい。
【0106】
上述した第2の実施形態の直流事故検出装置200でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様に、直流事故検出装置200における演算、つまり、直流電流計測部102による直流電流変化量絶対値の演算を、直流電流検出器70から取得した直流電流値そのものを用いて行うのではなく、演算の処理を行う前後に、例えば、移動平均やフィルタ適応などのノイズ除去を目的とした処理を行う構成にしてもよい。
【0107】
(第3の実施形態)
[直流事故検出装置の構成]
以下、第3の実施形態について説明する。図9は、第3の実施形態に係る直流事故検出装置の構成の一例を示す図である。図9には、第1の実施形態の直流事故検出装置100および第2の実施形態の直流事故検出装置200と同様に、図1に示した電力送電システム1が備える三つの電力変換器3のうち、電力変換器3-1に適用する直流事故検出装置300の一例を示している。図9においては、直流事故検出装置100および直流事故検出装置200と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。直流事故検出装置300も、直流事故検出装置100や直流事故検出装置200と同様に、電力変換器3-1に属する直流送電線50(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)に発生した直流事故による電力送電システム1への影響を軽減させる保護装置として、電力変換器3-1の近傍に設置(接続)される。
【0108】
直流事故検出装置300も、直流事故検出装置100や直流事故検出装置200と同様に、電力変換器3-2および電力変換器3-3のそれぞれに適用されてもよい。電力変換器3-2および電力変換器3-3のそれぞれに適用される直流事故検出装置300も、図9に示した電力変換器3-1に適用される直流事故検出装置300と同様の構成である。
【0109】
直流事故検出装置300は、直流事故検出装置100と同様に、直流電圧変化量および直流電流変化量絶対値に基づいて、電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれかに発生した直流事故の検知および判定と、事故区間に含まれる直流送電線50の最終的な特定とをする構成である。図9には、直流事故検出装置300に関連する電力送電システム1の構成(交流系統2-1、電力変換器3-1、および直流系統4の一部の構成)も併せて示している。電力送電システム1では、直流事故検出装置300の適用に際して、直流電圧検出器および直流電流検出器が設けられる。直流電圧検出器および直流電流検出器が設けられた直流系統4の構成は、直流事故検出装置100が適用された直流系統4の構成と同様である。このため、図9においては、直流事故検出装置300が適用された直流系統4の一部の構成として、直流事故検出装置100が適用された直流系統4の一部の構成(図2参照)と同じ直流系統4-1を示し、詳細な説明は省略する。
【0110】
直流事故検出装置300は、直流電圧検出器60により出力された直流電圧値、および直流電流検出器70により出力された直流電流値に基づいて、直流系統4-1が備えるいずれかの直流送電線50において発生した直流事故を検出(検知)し、直流事故が発生している直流送電線50の線路を事故区間として検出(特定)する。直流事故検出装置300は、特定した事故区間に属する直流遮断器40、つまり、直流事故が発生している直流送電線50が接続されている直流遮断器40を制御して、直流母線20と直流送電線50との間を電気的に遮断させる。直流事故検出装置300は、例えば、直流電圧計測部101と、直流電流計測部102と、事故発生検知部103と、事故発生検知部203と、第1の事故区間判定部104と、第2の事故区間判定部105と、第3の事故区間判定部106と、遮断指令出力部107と、を備える。直流事故検出装置300は、第1の実施形態の直流事故検出装置100に、第2の実施形態の直流事故検出装置200が備える事故発生検知部203が追加された構成である。
【0111】
直流事故検出装置300や、直流事故検出装置300が備える構成要素は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより以下の機能を実現するものである。直流事故検出装置300や、直流事故検出装置300が備える構成要素の機能のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。直流事故検出装置300や、直流事故検出装置300が備える構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め直流事故検出装置300あるいは電力送電システム1が備えるHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が直流事故検出装置300あるいは電力送電システム1が備えるドライブ装置に装着されることで直流事故検出装置300が備える記憶装置にインストールされてもよい。
【0112】
直流電圧計測部101は、直流電圧検出器60-1と直流電圧検出器60-2とのそれぞれにより出力された直流電圧値に基づいて演算したそれぞれの直流電圧変化量を、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104のそれぞれに出力する。
【0113】
事故発生検知部103は、直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と予め定めた第1閾値vth1とを比較して、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50(直流送電線50-1~50-6)に発生した直流事故を検知した情報(いずれかの直流送電線50に直流事故が発生しているか否かを表す情報)を、第1の事故区間判定部104および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。事故発生検知部103は、特許請求の範囲における「第1の事故発生検知部」の一例である。
【0114】
第1の事故区間判定部104は、事故発生検知部103がいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを検知した場合、直流事故の発生を検知したときから第1の所定の時間が経過した後に直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と予め定めた第2閾値vth2とを比較して、電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれかが、直流事故が発生した事故区間に含まれるか否かを判定する。第1の事故区間判定部104は、判定結果を表す事故区間内外フラグを第3の事故区間判定部106に出力する。
【0115】
事故発生検知部103が電力送電システム1において直流事故が発生したことを検知(検出)する動作と、第1の事故区間判定部104が電力変換器3-1に属する直流送電線50が直流事故が発生した事故区間に含まれるか否かを検出(判定)する動作とは、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様である(図3参照)。
【0116】
直流電流計測部102は、直流電流検出器70(直流電流検出器70-1~70-4)のそれぞれにより出力された直流電流値に基づいて演算したそれぞれの直流電流変化量絶対値を、事故発生検知部203および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。
【0117】
事故発生検知部203は、直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値と予め定めた第1閾値ith1とを比較して、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50(直流送電線50-1~50-6)に発生した直流事故を検知(いずれかの直流送電線50に直流事故が発生しているか否かを表す情報)を、第2の事故区間判定部105に出力する。事故発生検知部203は、特許請求の範囲における「第2の事故発生検知部」の一例である。第1閾値ith1は、特許請求の範囲における「第3閾値」の一例である。
【0118】
第2の事故区間判定部105は、事故発生検知部103がいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを検知した場合、あるいは事故発生検知部203がいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを検知した場合、直流事故の発生を検知したときから第2の所定の時間が経過した後に直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値に基づいて、電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれの直流送電線50に直流事故が発生しているのかを判定する。つまり、直流事故検出装置300では、第2の事故区間判定部105が電力変換器3-1に属する直流送電線50のいずれの直流送電線50に直流事故が発生しているのかを判定するきっかけが、事故発生検知部103がいずれかの直流送電線50に発生した直流事故を検知したとき、あるいは、事故発生検知部203がいずれかの直流送電線50に発生した直流事故の検知したときとなっている。第2の事故区間判定部105は、判定結果を表す情報を第3の事故区間判定部106に出力する。
【0119】
第2の事故区間判定部105が電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50で直流事故が発生したかを検出(判定)する動作は、直流事故検出装置100および直流事故検出装置200が備える第2の事故区間判定部105と同様である(図4参照)。従って、直流事故検出装置300が備える第3の事故区間判定部106および遮断指令出力部107の動作も、直流事故検出装置100および直流事故検出装置200が備える第3の事故区間判定部106および遮断指令出力部107と同様である。
【0120】
[直流事故検出装置の処理]
図10は、直流事故検出装置300における処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理も、電力送電システム1が稼働している間、繰り返し実行される。図10に示したフローチャートでは、第1の実施形態の直流事故検出装置100あるいは第2の実施形態の直流事故検出装置200と同様の処理に同一のステップ番号を付して、詳細な説明は省略する。
【0121】
電力送電システム1が稼働して直流事故検出装置300が動作すると、直流電圧計測部101は、それぞれの直流電圧検出器60が計測して出力した直流電圧値を取得し、取得した直流電圧値に基づいて直流電圧変化量を演算する。そして、直流電圧計測部101は、演算した直流電圧変化量を、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104のそれぞれに出力する。電力送電システム1が稼働して直流事故検出装置300が動作すると、直流電流計測部102は、それぞれの直流電流検出器70が計測して出力した直流電流値を取得し、取得した直流電流値に基づいて直流電流変化量絶対値を演算する。そして、直流電流計測部102は、演算した直流電流変化量絶対値を、事故発生検知部203および第2の事故区間判定部105のそれぞれに出力する。
【0122】
事故発生検知部103は、直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と第1閾値vth1とを比較し、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えているか否かを判定する(ステップS100)。すなわち、事故発生検知部103は、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50において直流事故が発生したか否かを検知する。ステップS100において、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えていないと判定した場合、事故発生検知部103は、いずれの直流送電線50にも直流事故が発生していないことを表す情報を第1の事故区間判定部104と第2の事故区間判定部105とのそれぞれに出力して、処理をステップS200に進める。
【0123】
一方、ステップS100において、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えていると判定した場合、事故発生検知部103は、いずれかの直流送電線50において直流事故が発生したとことを検知し、いずれかの直流送電線50に直流事故が発生していることを表す情報を第1の事故区間判定部104と第2の事故区間判定部105とのそれぞれに出力する。
【0124】
第1の事故区間判定部104は、事故発生検知部103からいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを表す情報が入力されると、第1の所定の時間(例えば、図3の(a)に示した時間t2)が経過した後に、直流電圧計測部101により出力された直流電圧変化量と第2閾値vth2とを比較し、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えているか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれているか否かを判定する。
【0125】
ステップS110において、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えていないと判定した場合、第1の事故区間判定部104は、直流事故検出装置100と同様に、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50も事故区間に含まれない、つまり、直流事故は、直流事故検出装置300が検出する直流送電線50の線路の区間(検出区間)外で発生したと判定する(ステップS150)。そして、第1の事故区間判定部104は、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれない(事故区間外である)ことを表す値(例えば、「0」)に維持して、今回の処理を終了する。
【0126】
一方、ステップS110において、直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えていると判定した場合、第1の事故区間判定部104は、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50が事故区間に含まれている、つまり、直流事故が検出区間内で発生したと判定し、事故区間内外フラグを、事故区間に含まれる(事故区間内である)ことを表す値(例えば、「1」)に変更して、第3の事故区間判定部106に出力する。
【0127】
ステップS100において、直流電圧変化量が第1閾値vth1を超えていないと判定した場合、事故発生検知部203は、直流電流計測部102により出力された直流電流変化量絶対値と第1閾値ith1とを比較し、直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えているか否かを判定する(ステップS200)。すなわち、事故発生検知部203は、電力送電システム1のいずれかの直流送電線50において直流事故が発生したか否かを検知する。ステップS200において、直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えていないと判定した場合、事故発生検知部203は、いずれの直流送電線50にも直流事故が発生していないことを表す情報を第2の事故区間判定部105に出力して、今回の処理を終了する。
【0128】
一方、ステップS200において、直流電流変化量絶対値が第1閾値ith1を超えていると判定した場合、事故発生検知部203は、いずれかの直流送電線50において直流事故が発生したとことを検知し、いずれかの直流送電線50に直流事故が発生していることを表す情報を第2の事故区間判定部105に出力する。
【0129】
第2の事故区間判定部105は、事故発生検知部103からいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを表す情報が入力される、あるいは事故発生検知部203からいずれかの直流送電線50において直流事故が発生していることを表す情報が入力されると、第2の所定の時間(例えば、図4に示した時間t3)が経過した後に、着目した直流送電線50の直流電流変化量絶対値が他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きいか否かを判定する(ステップS120)。第2の事故区間判定部105におけるステップS120の処理は、直流事故検出装置100あるいは直流事故検出装置200と同様である。
【0130】
ステップS120において、着目したいずれの直流送電線50の直流電流変化量絶対値も他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きくないと判定した場合、第2の事故区間判定部105は、直流事故検出装置100や直流事故検出装置200と同様に、電力変換器3-1に属するいずれの直流送電線50も事故区間に含まれない、つまり、直流事故は検出区間外で発生したと判定し(ステップS150)、今回の処理を終了する。
【0131】
一方、ステップS120において、着目した直流送電線50の直流電流変化量絶対値が他の直流送電線50の直流電流変化量絶対値よりも大きいと判定した場合、第2の事故区間判定部105は、直流事故検出装置100や直流事故検出装置200と同様に、直流事故が検出区間内で発生したと判定し、電力変換器3-1に属する直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50を選択して、判定結果を表す情報として第3の事故区間判定部106に出力する。
【0132】
第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部104により出力された判定結果(事故区間内外フラグ)と、第2の事故区間判定部105により出力された判定結果(直流電流変化量絶対値が最大の直流送電線50)との論理積により、電力変換器3-1に属するいずれかの直流送電線50の線路を、事故区間であると判定(特定)する(ステップS130)。つまり、第3の事故区間判定部106は、第1の事故区間判定部104により直流電圧変化量が第2閾値vth2を超えていると判定されて事故区間内外フラグが変更された場合、直流事故検出装置100や直流事故検出装置200と同様に、第2の事故区間判定部105により直流電流変化量絶対値が最大であると判定された直流送電線50を、事故区間の直流送電線50であると最終的に特定する。第3の事故区間判定部106は、最終的に特定した直流送電線50を表す情報を遮断指令出力部107に出力する。
【0133】
遮断指令出力部107は、直流事故検出装置100や直流事故検出装置200と同様に、第3の事故区間判定部106により特定された事故区間の直流送電線50の遮断を制御する遮断指令値を生成し、生成した遮断指令値を対応する直流遮断器40に出力する(ステップS140)。そして、遮断指令出力部107は、今回の処理を終了する。
【0134】
このような構成および処理によって、直流事故検出装置300は、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104による直流電圧変化量に基づく判定と、事故発生検知部203および第2の事故区間判定部105による直流電流変化量絶対値に基づく判定とに基づいて、適用された電力変換器3に属する直流送電線50のうち、事故区間に含まれる直流送電線50を最終的に特定する。図10に示したフローチャートでは、事故発生検知部103における判定(ステップS100)の後に、事故発生検知部203における判定(ステップS200)を行う場合を示しているが、ステップS100の処理と、ステップS200の処理とは、並列、つまり、同時期に行われてもよい。
【0135】
上記説明したように、第3の実施形態の直流事故検出装置300は、事故発生検知部103および第1の事故区間判定部104による直流電圧変化量に基づく判定結果と、事故発生検知部203および第2の事故区間判定部105による直流電流変化量絶対値に基づく判定結果とに基づいて、適用された電力変換器3に属する直流送電線50のうち、事故区間に含まれる直流送電線50を最終的に特定する。つまり、第3の実施形態の直流事故検出装置300でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100や第2の実施形態の直流事故検出装置200と同様に、多端子の電力送電システム1において、第3の実施形態の直流事故検出装置300が単体で、適用された一つの端子に属する直流送電線50のいずれかに発生した直流事故の検知および判定と、事故区間に含まれる直流送電線50の最終的な特定とをすることができる。このため、第3の実施形態の直流事故検出装置300でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100や第2の実施形態の直流事故検出装置200と同様に、従来の交流系統に適用された保護システムにおいて必要としていた情報通信に係る時間が削減され、直流事故が発生した直流送電線50を短い時間で事故区間に含まれる直流送電線50であると検出することができる。しかも、第3の実施形態の直流事故検出装置300でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100と同様に、直流電圧値(直流電圧変化量)に基づく判定と、直流電流値(直流電流変化量絶対値)に基づく判定との二つの判定結果(判定方法)の論理積によって、直流送電線50のいずれかに発生した直流事故の検知および判定を行うことができる。このため、第3の実施形態の直流事故検出装置300が適用された電力送電システム1でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100が適用された電力送電システム1と同様の効果を得ることができる。
【0136】
上述した第3の実施形態の直流事故検出装置300も、第1の実施形態の直流事故検出装置100や第2の実施形態の直流事故検出装置200と同様に、直流事故が発生した直流送電線50の切り離し(除去)の制御を第3の実施形態の直流事故検出装置300とは別(別体)の制御装置が行う構成にしてもよい。
【0137】
上述した第3の実施形態の直流事故検出装置300でも、第1の実施形態の直流事故検出装置100や第2の実施形態の直流事故検出装置200と同様に、直流事故検出装置300における演算を、直流電圧検出器60から取得した直流電圧値や、直流電流検出器70から取得した直流電流値そのものを用いて行うのではなく、演算の処理を行う前後に、例えば、移動平均やフィルタ適応などのノイズ除去を目的とした処理を行う構成にしてもよい。
【0138】
上述した第3の実施形態の直流事故検出装置300では、第1の実施形態の直流事故検出装置100に、第2の実施形態の直流事故検出装置200が備える事故発生検知部203を追加した構成について説明した。しかし、第3の実施形態の直流事故検出装置300は、第2の実施形態の直流事故検出装置200に、第1の実施形態の直流事故検出装置100が備える直流電圧計測部101および事故発生検知部103を追加した構成にしてもよい。言い換えれば、第3の実施形態の直流事故検出装置300が備える第1の事故区間判定部104に代えて、または加えて、第1の事故区間判定部204を備える構成にしてもよい。この場合におけるそれぞれの構成要素の動作や処理は、上述した第1の実施形態の直流事故検出装置100や第2の実施形態の直流事故検出装置200が備えるそれぞれの構成要素の動作や処理と等価なものになるようにすればよい。例えば、第3の実施形態の直流事故検出装置300が備える第1の事故区間判定部104に代えて第1の事故区間判定部204を備える場合、図10に示したフローチャートにおけるステップS110の処理に代えて、図8に示した第2の実施形態の直流事故検出装置200のフローチャートにおけるステップS210の処理を行うようにすることができる。この場合、直流電圧変化量は、特許請求の範囲における「第1指標値」の一例であり、直流電流変化量絶対値は、特許請求の範囲における「第2指標値」の一例である。例えば、第3の実施形態の直流事故検出装置300が備える第1の事故区間判定部104に加えて第1の事故区間判定部204を備える場合、図10に示したフローチャートにおけるステップS200の処理の後に図8に示した第2の実施形態の直流事故検出装置200のフローチャートにおけるステップS210の処理を行ってからステップS120の処理に進むようにすることができる。この場合、図10に示したフローチャートにおけるステップS110の処理を省略してもよい。
【0139】
上記に述べたとおり、各実施形態の直流事故検出装置では、多端子の電力送電システムが備えるそれぞれの端子に適用された直流事故検出装置が単体で、適用された一つの端子に属する直流送電線のいずれかに発生した直流事故の検知および判定と、事故区間に含まれる直流送電線の最終的な特定とをすることができる。そして、各実施形態の直流事故検出装置では、直流事故や、直流事故が発生した直流送電線が事故区間に含まれるか否かを、短い時間および高い信頼性で検出することができる。
【0140】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、交流と直流とを互いに変換する三以上の電力変換器(3)と、各々の電力変換器の直流側端子の間を接続する複数の直流送電線(50)とを含む直流送電システム(1)における直流事故の事故区間を検出する直流事故検出装置(100)であって、対応する電力変換器である第1の電力変換器(3-1)に接続された直流送電線である第1の直流送電線(直流送電線50-1、直流送電線50-2、直流送電線50-3、および直流送電線50-4)の電力変化を示す第1指標値(直流電圧変化量)と、直流事故によって起こる直流送電線の電力変化を示す第1閾値(vth1)との比較に基づいて、第1の電力変換器に接続された複数の第1の直流送電線のいずれかで発生した直流事故を検知する事故発生検知部(103)と、事故発生検知部により直流事故の発生が検知されたタイミングから第1の所定の時間(時間t2)の経過後に、それぞれの第1の直流送電線の電力変化を示す第2指標値(直流電圧変化量)と、直流事故によって起こる直流送電線の電力変化を示す第2閾値(vth2)とを比較し、第2指標値が第2閾値を超えた第1の直流送電線の線路を事故区間であると判定する第1の事故区間判定部(104)と、事故発生検知部により直流事故の発生が検知されたタイミングから第2の所定の時間(時間t3)の経過後のそれぞれの第1の直流送電線の電流変化(直流電流変化量絶対値)に基づいて、それぞれの第1の直流送電線の線路が事故区間であるか否かを判定する第2の事故区間判定部(105)と、第1の事故区間判定部による第1の判定結果(事故区間内外フラグ)と、第2の事故区間判定部による第2の判定結果との論理積により、いずれの第1の直流送電線の線路が事故区間であるかを判定する第3の事故区間判定部(106)と、を備えることにより、電力送電システムにおいて、高い信頼性で、直流事故や事故区間を検出することができる。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0142】
1・・・電力送電システム、2,2-1,2-2,2-3・・・交流系統、3,3-1,3-2,3-3・・・電力変換器、4,4-1,4-2・・・直流系統、20,20-1,20-2,20-3,20-4,20-5,20-6・・・直流母線、30,30-1,30-2,30-3,30-4,30-5,30-6,30-7,30-8,30-9,30-10,30-11,30-12・・・リアクトル、40,40-1,40-2,40-3,40-4,40-5,40-6,40-7,40-8,40-9,40-10,40-11,40-12・・・直流遮断器、50,50-1,50-2,50-3,50-4,50-5,50-6・・・直流送電線、60,60-1,60-2・・・直流電圧検出器、70,70-1,70-2,70-3,70-4・・・直流電流検出器、100,100-1,100-2,100-3,200,200-1,200-2,200-3,300・・・直流事故検出装置、101・・・直流電圧計測部、102・・・直流電流計測部、103・・・事故発生検知部、104・・・第1の事故区間判定部、105・・・第2の事故区間判定部、106・・・第3の事故区間判定部、107・・・遮断指令出力部、203・・・事故発生検知部、204・・・第1の事故区間判定部
図1
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図10