(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】インクジェット用インクセット、及びラミネートフィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 11/40 20140101AFI20250210BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20250210BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250210BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20250210BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
C09D11/40
C09D11/322
B32B27/00 E
B32B27/20 A
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2021107882
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 寛仁
(72)【発明者】
【氏名】森安 員揮
(72)【発明者】
【氏名】植田 恵理
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝明
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/039832(WO,A1)
【文献】特開2013-001755(JP,A)
【文献】特開2020-075979(JP,A)
【文献】特許第6031903(JP,B2)
【文献】特開2017-177353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/40
C09D 11/322
B32B 27/00
B32B 27/20
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性イエローインク組成物と、水性マゼンタインク組成物と、水性シアンインク組成物と、水性ブラックインク組成物とで構成される4色の水性インクジェット用インク組成物を有し、又は
前記水性イエローインク組成物と、前記水性マゼンタインク組成物と、前記水性シアンインク組成物と、前記水性ブラックインク組成物と、水性バイオレットインク組成物とで構成される5色の水性インクジェット用インク組成物を有するインクジェット用インクセットであって、
前記水性イエローインク組成物は、PY17、PY83、PY128、PY155及びPY180からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記水性マゼンタインク組成物は、PR146、PR150、PR176、PR185、及びPR254からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記水性シアンインク組成物は、PB15:3を含有し、
前記水性ブラックインク組成物は、PBk7を含有し、
前記水性バイオレットインク組成物は、PV23を含有し、
前記4色の水性インクジェット用インク組成物、及び5色の水性インクジェット用インク組成物における各水性インクジェット用インク組成物は、バインダー樹脂としてアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂、及び水性媒体を含有することを特徴とするインクジェット用インクセット。
【請求項2】
前記アルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネート、高分子ジオール化合物、及び酸基含有ジオール化合物の反応物であること特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項3】
前記アルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂であること特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項4】
前記高分子ジオール化合物が、ポリプロピレングリコール及び/又はポリエステルジオール化合物である
請求項2に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項5】
前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂の割合は、前記各水性インクジェット用インク組成物中、0.3~4.0質量%であることを特徴とする
請求項3に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項6】
前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、酸価が15~35mgKOH/gであることを特徴とする
請求項3又は5に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項7】
前記各水性インクジェット用インク組成物は、ラミネート用であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のインクジェット用インクセット。
【請求項8】
ベースフィルムに、請求項1~7のいずれかに記載のインクジェット用インクセットにおける前記各水性インクジェット用インク組成物から形成される印刷層、及びシーラントフィルムが設けられていることを特徴とするラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクセット、及びラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、レトルトパウチ食品では、ラミネート加工された複合フィルム(ラミネートフィルム)の食品包装容器が利用されており、この印刷インキ層(印刷図柄)を形成するための水性インクジェット用インク組成物が知られている(例えば、特許文献1-3)。しかし、これらの水性インクジェット用インク組成物は、プラスチックのベースフィルムに対する接着性(ラミネート強度)が乏しいという問題があった。また、この問題を解決する水性インクジェット用インク組成物として、特定のアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂を有するラミネート用水性インクジェットインク組成物も知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-250416号公報
【文献】特開2013-001755号公報
【文献】特開2013-001775号公報
【文献】特開2020-029484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、レトルトパウチ食品は、上記の包装容器の中に食品を詰め、詰め口をヒートシールして密封した後、加圧下で100℃を超える高温熱水や高温蒸気等で加熱殺菌(レトルト処理)する必要がある。しかしながら、特許文献4で具体的に開示されている水性インクジェット用インク組成物は、レトルト処理時にベースフィルム等に移染を起こすのものがあり、耐熱性に対し充分ではないことが判明した。
【0005】
そこで、本発明は、ラミネート強度及び耐熱性に優れる水性インクジェット用インク組成物を有するインクジェット用インクセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水性イエローインク組成物と、水性マゼンタインク組成物と、水性シアンインク組成物と、水性ブラックインク組成物とで構成される4色の水性インクジェット用インク組成物を有し、又は前記水性イエローインク組成物と、前記水性マゼンタインク組成物と、前記水性シアンインク組成物と、前記水性ブラックインク組成物と、水性バイオレットインク組成物とで構成される5色の水性インクジェット用インク組成物を有するインクジェット用インクセットであって、前記水性イエローインク組成物は、PY17、PY83、PY128、PY155及びPY180からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、前記水性マゼンタインク組成物は、PR146、PR150、PR176、PR185、及びPR254からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、前記水性シアンインク組成物は、PB15:3を含有し、前記水性ブラックインク組成物は、PBk7を含有し、前記水性バイオレットインク組成物は、PV23を含有し、前記4色の水性インクジェット用インク組成物、及び5色の水性インクジェット用インク組成物における各水性インクジェット用インク組成物は、バインダー樹脂としてアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂、及び水性媒体を含有するインクジェット用インクセットに関する。
【0007】
また、本発明は、ベースフィルムに、前記インクジェット用インクセットにおける前記各水性インクジェット用インク組成物から形成される印刷層、及びシーラントフィルムが設けられているラミネートフィルムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインクジェット用インクセットは、特定の顔料を含有する水性インクジェット用インク組成物の組み合わせ、及び各インク組成物のバインダー樹脂としてアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂を使用することにより、優れたラミネート強度及び耐熱性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のインクジェット用インクセットは、水性イエローインク組成物と、水性マゼンタインク組成物と、水性シアンインク組成物と、水性ブラックインク組成物とで構成される4色の水性インクジェット用インク組成物を有し、又は前記水性イエローインク組成物と、前記水性マゼンタインク組成物と、前記水性シアンインク組成物と、前記水性ブラックインク組成物と、水性バイオレットインク組成物とで構成される5色の水性インクジェット用インク組成物を有する。また、前記4色の水性インクジェット用インク組成物、及び5色の水性インクジェット用インク組成物における各水性インクジェット用インク組成物は、バインダー樹脂としてアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂、及び水性媒体を含有する。
【0010】
<顔料>
前記水性イエローインク組成物は、イエロー顔料として、PY17、PY128、PY83、PY155及びPY180からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。ここで、「PY」とは、「C.I.Pigment Yellow」を意味する。
【0011】
前記水性マゼンタインク組成物は、マゼンタ顔料として、PR146、PR150、PR176、PR185、及びPR254からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。ここで、「PR」とは、「C.I.Pigment Red」を意味する。
【0012】
前記水性シアンインク組成物は、シアン顔料として、PB15:3を含有する。ここで、「PB」とは、「C.I.Pigment Blue」を意味する。
【0013】
前記水性ブラックインク組成物は、ブラック顔料として、PBk7を含有する。ここで、「PBk」とは、「C.I.Pigment Black」を意味する。
【0014】
前記水性バイオレットインク組成物は、バイオレッド顔料として、PV23を含有する。ここで、「PV」とは、「C.I.Pigment Violet」を意味する。
【0015】
上記の各顔料の割合は、前記各水性インクジェット用インク組成物中、印刷物の印画濃度を向上させる観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
前記顔料は、水性媒体に分散させる観点から、顔料分散剤を用いてもよく、顔料分散剤としては、例えば、WO2020/039832号等に記載の低分子量または高分子量の顔料分散剤等が挙げられる。
【0017】
<バインダー樹脂>
前記バインダー樹脂は、アルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂であり、カルボキシル基、スルホン酸基等のアニオン性基の1種又は2種以上を有する。前記アルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、例えば、ジイソシアネート化合物、高分子ジオール化合物、酸基含有ジオール化合物の反応物や、前記ジイソシアネート化合物、及び酸基含有高分子ジオール化合物の反応物等が挙げられる。前記アルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。前記アルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、上記のようなフィルムとの接着性を向上させつるため顔料分散剤と併用して使用してもよく、あるいは顔料分散させるため(フィルムとの接着性を向上させる機能も有する)に使用してもよい。前記アルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、顔料を水性媒体に分散させるために顔料分散剤として使用する場合は、分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0018】
前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、酸価が15~50mgKOH/gであることが好ましく、15~35mgKOH/gであることより好ましい。前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂の酸価が15mgKOH/gより小さいと、製造することが困難になり、50mgKOH/gより大きいと、印刷物の耐水性等が低下し、ラミネート強度が低下する傾向がある。なお、前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂では、酸価が低くなると、アルカリ可溶型ポリウレタン樹脂から自己乳化型ポリウレタン樹脂に変化する。本発明のインクジェット用インクセットの各インク組成物の粘度を低く維持できる観点からは、自己乳化型ポリウレタン樹脂が好ましい。ここで、自己乳化型ポリウレタン樹脂とは、分子内にイオン性基を有し、水性媒体中でイオン性基がイオン化することにより、安定的に分散し得る性状を有するポリウレタン樹脂をいう。前記酸価は、理論酸価であり、ポリウレタン樹脂の合成成分として用いられるカルボキシル基等のアニオン性基含有化合物の分子量、配合比率、当該化合物の分子内に含まれるカルボキシル基等のアニオン性基の数等に基づいて算術的に求めた、ポリウレタン樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数をいう。
【0019】
前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4-シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0020】
前記高分子ジオール化合物としては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状グリコール類、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール等の分岐グリコール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエーテル系ジオール類等の低分子量ジオール成分と、アジピン酸、フタル酸等の二塩基酸成分との重縮合、あるいは、ラクトン類等の環状エステル化合物の開環反応によって得られるポリエステルジオール化合物、また、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等を単独重合もしくは共重合して得られるポリエーテルジオール化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、更には、アルキレンカーボネート、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート等のカーボネート成分あるいはホスゲンと、前記低分子量ジオール成分とを反応させて得られるポリカーボネートジオール化合物、ポリブタジエングリコール類等が挙げられる。これらの中でも、前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂としては、ボイル・レトルト適性の面からは、ポリプロピレングリコール、ポリエステルジオール化合物が好適である。
【0021】
前記酸基含有ジオール化合物としては、例えば、一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、水素原子、あるいは1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状を有するアルキル基を表す。)で表される化合物、コハク酸、アジピン酸等と低級ポリオールとを反応させて得られる脂肪族カルボン酸含有ポリオール類、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸又はその無水物と低級ポリオールとを反応させて得られる芳香族カルボン酸含有ポリオール類等が挙げられる。
【0022】
前記酸基含有高分子ジオール化合物としては、例えば、前記高分子ジオール化合物と無水ピロメリット酸等の四塩基酸無水物を反応させるか、あるいは、ジメチロールプロピオン酸等を開始剤として、ラクトン類を開環重合して得られる高分子ジオール化合物等が挙げられる。
【0023】
前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂にヒドラジン残基を導入する方法としては、鎖伸長剤や反応停止剤により導入することができる。例えば、ポリウレタン分子内にヒドラジン残基を導入するために使用される反応停止剤としては、イソシアネート基と反応するための官能基とヒドラジン残基を有する化合物であり、ポリアミノヒドラジド、ヒドラジン(水加ヒドラジン)、次の一般式(2):H2N-NH-X-NH-NH2 (2)(式中、Xは1~8個の炭素原子を有するアルキレン基、あるいは1~10個の炭素原子を有する飽和または不飽和二塩基酸の残基を表す)で示される、アルキレンジヒドラジンまたは飽和脂肪族二塩基酸、不飽和二塩基酸のジヒドラジド化合物等も使用できる。ここでアルキレンジヒドラジンとして、具体的にはメチレンジヒドラジン、エチレンジヒドラジン、ブチレンジヒドラジン等を挙げる事ができる。また、飽和脂肪族二塩基酸のジヒドラジド化合物として、具体的にはシュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等を挙げる事ができ、更に不飽和二塩基酸のジヒドラジド化合物として、具体的にはフタル酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等を挙げる事ができる。
【0024】
また、必要に応じ、反応停止剤として、例えば、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のN,N-ジ-n-ブチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等も使用できる。
【0025】
前記アルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂(分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂)を合成する方法としては、公知のポリウレタン樹脂の合成方法を利用すればよく、上記の各成分を一括して反応させる方法であっても、分割して反応させる方法であってもよい。
【0026】
前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、2,000~100,000であることが好ましく、3,000~50,000であることがより好ましく、5,000~30,000であることがさらに好ましい。前記重量平均分子量が2,000未満であると、インク皮膜が脆弱になる可能性があり、一方、重量平均分子量が100,000を超えると、少ない含有量でも水性インクジェット用インク組成物の粘度が高くなる傾向があり、インク皮膜の形成に支障をきたす可能性がある。なお、本発明の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μm、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0027】
前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂は、塩基性化合物の存在下で水中に溶解又は乳化させて、水性樹脂ワニスとして使用することが好ましい。
【0028】
前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂を後述する水性媒体中に溶解又は乳化する方法としては、前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂に対してほぼ中和量となる塩基性化合物を後述する水性媒体中に溶解させた後、分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂を添加し、高速撹拌装置で撹拌する方法等が挙げられる。
【0029】
前記塩基性化合物としては、特に限定されず、一般に使用されている塩基性化合物を使用でき、例えば、ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、アンモニア水、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。塩基性化合物の配合量は、使用する分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂の物性や使用量等に応じて適宜設定され、単独又は2種以上を混合して用いても良い。
【0030】
前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂の含有量は、使用する後述する水性媒体中での粘度挙動、併用する成分、所望のインク物性等に応じて適宜調整されるが、前記各水性インクジェット用インク組成物中、保存安定性と吐出安定性、ラミネート強度(ベースフィルムとシーラントフィルムとの間の剥離強度)を付与する観点から、固形分で0.3~4.0質量%であることが好ましく、0.7~3.5質量%であることがより好ましい。配合量が、0.3質量%より少ないと、保存安定性ラミネート強度が低下する傾向にあり、4.0質量%より多いとブロッキング性が低下する傾向となる。
【0031】
<水性媒体>
前記水性媒体は、水を含有し、必要に応じて水混和性有機溶剤等を含む水性媒体を利用することが好ましい。
【0032】
前記水混和性有機溶剤は、前記分子内にヒドラジン残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂の溶解性の他に、乾燥性や保湿性、印刷時のレベリング性といった所望の性能に応じて配合する。前記水混和性有機溶剤としては、本発明の作用効果を阻害せず、またインクジェットプリンターに損傷を与えないものであれば、特に限定されず、モノアルコール類、モノ及びポリアルキレングリコール類とそのアルキルエーテル化合物、モノ及びポリグリセリンとそのエチレンオキサイド付加物が好適である。
【0033】
前記モノアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-デカノール、又はこれらの異性体、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、好ましくはアルキル基の炭素数が1~6のアルコールである。
【0034】
前記モノ及びポリアルキレングリコール類の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等が挙げられる。
【0035】
前記モノ及びポリアルキレングリコール類のアルキルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0036】
前記水性媒体では、水と水混和性有機溶剤の混合割合も、目的とするインクジェット用インクセットのインク組成物の特性に応じて設定すれば良いが、通常、これら水混和性有機溶剤は、水性媒体中に2~30重量%含有するのが好ましい。
【0037】
さらに、前記各水性インクジェット用インク組成物には、目的に応じて任意の成分を含有しても良く、例えば、公知の樹脂、樹脂エマルジョン、ワックスエマルション、顔料分散剤、界面活性剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤も添加することもできる。
【0038】
<水性インクジェット用インク組成物の調製方法>
前記各水性インクジェット用インク組成物の調製は、従前の調製方法を利用すればよく、上記の成分を順番に、あるいは同時に添加して、混合すればよく、例えば、(1)前記水性樹脂ワニス、顔料、必要に応じて顔料分散剤等を混合した後、各種分散機、例えばボールミル、アトライター、ロールミル、サンドミル、アジテーターミル等を利用して顔料分散液(インクベース)を調製し、さらに残りの材料を添加して、水性インクジェット用インク組成物を調製する方法や、(2)上記の方法で顔料を分散した後、酸析法や再公表特許WO2005/116147号公報に記載のイオン交換手段等により、顔料表面にアルカリ可溶性樹脂を析出させた樹脂被覆顔料を得、次いで得られた樹脂被覆顔料を塩基性化合物で中和し、各種分散機(高速攪拌装置等)を用いて水に再分散し、さらに残りの材料を添加して、水性インクジェット用インク組成物を調製する方法等が挙げられる。
【0039】
前記各水性インクジェット用インク組成物は、初期粘度としては、2.0~20.0mPa・sが好適であり、3.0~10.0mPa・sがより好適である。
【0040】
<ラミネートフィルム>
本発明のラミネートフィルムは、ベースフィルムに、前記各水性インクジェット用インク組成物から形成される印刷層、及びシーラントフィルムが設けられている。前記印刷層と前記シーラントフィルムは、通常、ラミネート用接着剤を介して積層されている。また、前記印刷層には、従来のホワイトインク組成物による印刷層が設けられていてもよい。ホワイトインク組成物は、耐熱性の観点から、ホワイト顔料として、PW6を含有することが好ましく、水性インクジェット用インク組成物がインクジェット用インク組成物である場合、ラミネート強度の観点から、上記の水性インクジェット用インク組成物における各成分を含有することが好ましい。なお、前記ホワイト顔料の割合は、ホワイトインク組成物中、4質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、そして、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。ただし、ホワイトインク組成物による印刷については、インクジェット印刷に限定されず、フレキソ印刷、グラビア印刷等の他の印刷方法を適用できる。
【0041】
前記ベースフィルムとしては、透明なフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂等により形成されてなるもので、例えば、食品用包装容器の分野で利用される主要な材質には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0042】
前記ベースフィルムは、一軸又は二軸延伸処理されていることが好ましく、プラズマ処理やコロナ放電処理等が施されていてもよい。
【0043】
前記ラミネート用接着剤としては、従来からラミネート加工で用いられているものが適宜選択でき、例えば、ウレタン樹脂系、イミノ基含有樹脂系、ブタジエン樹脂系等の接着剤を挙げることができる。その中でもウレタン樹脂系接着剤が好適であり、ポリオール成分と過剰の脂肪族系ポリイソシアネート成分とからなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと、ポリオール成分との組み合わせからなる二液系の接着剤、又は、過剰のポリオール成分と脂肪族系ポリイソシアネート成分とからなる水酸基末端ウレタンプレポリマーと、ポリイソシアネート成分との組み合わせからなる二液系の接着剤が利用でき、必要に応じて、エポキシ化合物やシランカップリング剤を含有することもできる。
【0044】
前記ラミネート用接着剤の塗工及びシーラントフィルムの積層は、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター等の各種塗工装置を備えた、既知のドライラミネート加工装置を利用して行うことができる。
【0045】
前記シーラントフィルムの材質としては、無延伸ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0046】
さらに、ガスバリア性の向上や強度補強等を目的として、前記印刷層と前記シーラントフィルムとの間に、各種機能性層が1層以上設けられていてもよい。この様な機能性層として、例えば、ガスバリア性の向上を目的としたシリカ蒸着フィルム層やアルミナ蒸着フィルム層、強度補強の向上を目的とした延伸ナイロンフィルム層等が挙げられる。また、前記ベースフィルムと前記印刷層との間には、印刷適性及び接着性の向上の観点から、プライマー層を設けてもよい。
【0047】
前記ラミネートフィルムは、ラミネート強度(ベースフィルムとシーラントフィルムとの間の剥離強度)が、50g/15mm以上であることが好ましく、100g/15mm以上であることがより好ましい。
【0048】
前記ラミネート強度は、前記ラミネートフィルムを40℃で3日経時後、15mm幅に裁断して試料片を作成し、剥離試験機((株)安田精機製作所製)でT型剥離したときの剥離強度(ドライラミネート強度)を測定した値である。
【0049】
前記ラミネートフィルムを製袋するには、シーラントフィルム側が容器の内側に向くように中折りするか、あるいは複合フィルムを重ね合わせ、ヒートシーラー等を利用して、端部を熱溶融させて圧着する方法が利用でき、三方シール、四方シール、封筒貼り、合掌貼り、ガセット貼り等の各種ヒートシールの形態の包装容器に適用可能である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0051】
<水性樹脂ワニス1の製造>
温度計、撹拌機、冷却管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール200部、およびイソホロンジイソシアネート57.4部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、撹拌下100~105℃で4時間反応させ、次いで、ジメチロールプロピオン酸13.4部を仕込み、100~110℃で2時間反応させた。ジメチロールプロピオン酸が完全に反応した事を確認後、100℃まで冷却し、水492.4部および固形分25%の水酸化ナトリウム8.3部、アンモニア25%水溶液3.4部を仕込んで水性化し、更に、アミノエタノールアミン3.2部、水加ヒドラジン2.5部で反応停止させ、固形分30%、重量平均分子量20,000、分子内にヒドラジン残基を有する樹脂酸価24のアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂溶液1を得た。
【0052】
<水性樹脂ワニス2の製造>
温度計、撹拌機、冷却管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000のポリネオペンチルアジペートジオール300部、およびイソホロンジイソシアネート133.2部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、撹拌下100~105℃で4時間反応させ、次いで、ジメチロールプロピオン酸24.1部を仕込み、100~110℃で2時間反応させた。ジメチロールプロピオン酸が完全に反応した事を確認後、100℃まで冷却し、水1128部およびトリエチルアミン20.2部を仕込んで水性化し、更に、アジピン酸ジヒドラジン34.8部で反応停止させ、固形分30%、重量平均分子量22,000、樹脂酸価24の分子内にヒドラジド残基を有するアルカリ可溶型又は自己乳化型ポリウレタン樹脂溶液2を得た。
【0053】
<水性アクリル樹脂ワニス>
水性アクリル樹脂ワニスとして、ビニブラン2687(日信化学工業(株)製、アクリル樹脂エマルジョン、固形分30質量%)を用いた。
【0054】
<カラーインクベースの調製>
上記の水性樹脂ワニスの23.7質量部に水64.3質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更に以下の各種顔料12質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、各種カラーインクベースを調製した。
<顔料>
[実施例の顔料]
PY17(Graphtol Yellow GG、クラリアント社製)
PY83(LIONOL YELLOW TT-1842、トーヨーカラー社製)
PY128(Cromophtal Yellow L 0990、BASF社製)
PY155(Cromophtal Yellow 2GF、BASF社製)
PY180(Cromophtal Yellow K 1410、BASF社製)
PR146(SYMULER Fast Red 4580、DIC社製)
PR150(Carmine MC-707、有本化学工業社製)
PR176(SUNBRITE RED 176、DIC社製)
PR185(SYMULAR Fast Red 4594、DIC社製)
PR254(Irgazin Red L 3670 HD、BASF社製)
PB15:3(HELIOGEN BLUE D 7088、BASF社製)
PV23(Cromophtal Violet D 5800、BASF社製)
PBk7(PRINTEX90、デグサ社製)
[比較例の顔料]
PY74(セイカファーストイエロー2054K、大日精化社製)
PR170(セイカファーストレッド3820、大日精化社製)
PV19(Cromophtal Violet D 5800、BASF社製)
【0055】
<ホワイトインクベースの調製>
上記の水性樹脂ワニスの40.0質量部に水20.0質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。このワニスに、更にPW6(商品名 R-960、デュポン社製)の40質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、ホワイトインクベースを調製した。
【0056】
<実施例1>
<水性インクジェット用インク組成物の製造>
表1の質量割合になるように、上記のカラーインクベース、プロピレングリコール、界面活性剤として、オルフィンE1004(有効成分100%、日信化学工業社製)及びオルフィンE1010(有効成分100%、日信化学工業社製)、ワックスエマルジョンとして、AQUACER515(有効成分35%、BYK社製)及び水を攪拌混合し、実施例1の水性インクジェット用インク組成物を製造した。
【0057】
<実施例2~19、比較例1~4>
<水性インクジェット用インク組成物の製造>
各実施例及び各比較例において、使用する原料及びその量を、表1及び2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、各実施例及び各比較例の水性インクジェット用インク組成物を製造した。
【0058】
<水性インクジェット用インク組成物の評価>
以下の方法により評価し、それらの結果を表1及び2に示す。
【0059】
<保存安定性の評価>
上記で得られた各水性インクジェット用インク組成物について、それぞれガラス瓶にとり、25℃の粘度を粘度計(東機産業社製 RE100L型)を用い測定した。その後、密栓し60℃、1ヵ月保存し、保存後の粘度(25℃)を粘度計により測定した。経時安定性は、粘度変化率(60℃、1ヵ月後の粘度-保存前の粘度/保存前の粘度)で評価した。
[評価基準]
○:粘度変化率が5%未満のもの
△:粘度変化率が5%以上、10%未満のもの
×:粘度変化率が10%以上、30%未満のもの
【0060】
<吐出安定性の評価>
上記で得られた各水性インクジェット用インク組成物を、インクジェットプリンターPX105(エプソン社製)のカートリッジに詰めて、写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)に印字を行い、吐出安定性を評価した。
[評価基準]
○:印字の乱れがなく、安定して吐出できるもの
△:多少印字の乱れがあるものの、吐出できるもの
×:印字の乱れがあり、安定して吐出できないもの
【0061】
<耐熱性の評価>
上記で得られた各水性インクジェット用インク組成物を0.15mmバーコーターを用いてONYフィルム(N1102、東洋紡社製)上に印刷して印刷層を形成し、印刷物を作製した。この印刷層に、固形分で2.0g/m2となる量のウレタン系接着剤(タケラックA-616/タケネートA-65、三井化学ポリウレタン社製)を塗布し、ドライラミネート機で無延伸ポリプロピレンフィルム(RXC-22、厚さ60μm、三井化学東セロ社製)を積層したのち40℃で3日保管し、ラミネートフィルム(1)を得た。また、印刷層を形成しないこと以外は、上記の同様の方法にて、印刷層を施していなラミネートフィルム(2)を得た。ラミネートフィルム(1)とラミネートフィルム(2)をONYフィルム面が合わさるように重ね合わせたのち金属板で挟んで固定し、120℃の加圧熱水中に30分間浸漬したのちラミネートフィルム(2)への移染を目視で評価した。
[評価基準]
○:移染が見られないもの
×:はっきりと移染が見られるもの
【0062】
<ラミネート強度の評価>
片面にコロナ放電処理した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡(株)製、E-5102、厚さ12μm)及び片面にコロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡(株)製、パイレンP-2161、厚さ25μm)のそれぞれの処理面に0.15mmバーコーターを用いて、上記で得られた各水性インクジェット用インク組成物を印刷後、イソシアネート系接着剤(武田薬品工業(株)製、タケネートA-358/タケラックA-50酢酸エチル溶液)を塗布し、ドライラミネート機で無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、ラミネートフィルムを得た。これらのラミネートフィルムを40℃で3日経時後、15mm幅に裁断して試料片を作成し、剥離試験機((株)安田精機製作所製)でT型剥離したときの剥離強度(ラミネート強度)を測定した。
[評価基準]
〇:剥離強度が100g/15mm以上であるもの
△:剥離強度が50g/15mm以上、100g/15mm未満であるもの
×:剥離強度が50g/15mm未満であるもの
【0063】
<水性ホワイトインクジェット用インク組成物との重ね刷りラミネート強度の評価>
片面にコロナ放電処理した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡(株)製、E-5102、厚さ12μm)及び片面にコロナ放電処理した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡(株)製、パイレンP-2161、厚さ25μm)のそれぞれの処理面に0.15mmバーコーターを用いて、上記で得られた白色以外の各水性インクジェット用インク組成物を印刷後、0.15mmバーコーターを用いて、水性ホワイトインクジェット用インク組成物を印刷後、イソシアネート系接着剤(武田薬品工業(株)製、タケネートA-358/タケラックA-50酢酸エチル溶液)を塗布し、ドライラミネート機で無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、ラミネートフィルムを得た。これらのラミネートフィルムを40℃で3日経時後、15mm幅に裁断して試料片を作成し、剥離試験機((株)安田精機製作所製)でT型剥離したときの剥離強度(ラミネート強度)を測定した。
[評価基準]
〇:剥離強度が100g/15mm以上であるもの
△:剥離強度が50g/15mm以上、100g/15mm未満であるもの
×:剥離強度が50g/15mm未満であるもの
【0064】
<水性ホワイトフレキソ用インク組成物との重ね刷りラミネート強度の評価>
水性ホワイトインクジェット用インク組成物の代わりにラミネート用水性ホワイトフレキソ用インク組成物を使用する場合について説明する。
【0065】
<水性ウレタン樹脂エマルジョンの製造>
温度計、撹拌機、冷却管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量1,000のポリネオペンチルアジペートジオール300部、およびイソホロンジイソシアネート133.2部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、撹拌下100~105℃で4時間反応させ、次いで、ジメチロールプロピオン酸24.1部を仕込み、100~110℃で2時間反応させた。ジメチロールプロピオン酸が完全に反応した事を確認後、100℃まで冷却し、水1128部およびトリエチルアミン20.2部を仕込んで水性化し、更に、アジピン酸ジヒドラジン34.8部で反応停止させ、固形分30%、樹脂酸価24の水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0066】
<ラミネート用水性ホワイトフレキソ用インク組成物の製造>
PW6(商品名 R-960、デュポン社製)を40部、水溶性アクリル樹脂(スチレン・ラウリルメタクリレート・アクリル酸共重合体(酸価100mgKOH/g、重量平均分子量11000、アンモニア中和、固形分28質量%))を2部(固形分)、水性ポリウレタン樹脂溶液を10部(固形分)、レッドデビル社製のペイントコンディショナーを用いて混練し、更に、アセチレン系界面活性剤(アセチレン系界面活性剤:2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、HLB値4)を0.5部、水溶性有機溶剤としてプロピレングリコールを5.0部、硬化剤(SU-125F(アジリジン系硬化剤、固形分25%、明成化学工業社製))を2部、水を42.5部加えて攪拌し、ラミネート用水性ホワイトフレキソ用インク組成物を得た。
【0067】
<印刷物の作製>
フィルムの処理面に、上記で得られた白色以外の各水性インクジェット用インク組成物を0.15mmバーコーターを用いてONYフィルム(N1102、東洋紡社製)上に印刷して印刷層を形成し、印刷物を作製した。次いで、フレキソ印刷機を使用しラミネート用水性フレキソ印刷白色インキ組成物を下記条件で重ね刷り印刷し、乾燥させて、印刷物を得た後、イソシアネート系接着剤(武田薬品工業(株)製、タケネートA-358/タケラックA-50酢酸エチル溶液)を塗布し、ドライラミネート機で無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、ラミネートフィルムを得た。これらのラミネートフィルムを40℃で3日経時後、15mm幅に裁断して試料片を作成し、剥離試験機((株)安田精機製作所製)でT型剥離したときの剥離強度(ラミネート強度)を測定した。
(印刷方法・印刷条件)
印刷時部屋内の環境:温度25℃、湿度50%
塗工機:フレキソ印刷機
塗工速度:150m/min
刷版:白色を印刷する印刷版:ベタ版
乾燥温度:55℃
[評価基準]
〇:剥離強度が100g/15mm以上であるもの
△:剥離強度が50g/15mm以上、100g/15mm未満であるもの
×:剥離強度が50g/15mm未満であるもの
【0068】
【0069】