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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】トナー用結着樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20250210BHJP
   C08G 63/12 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
G03G9/087 331
C08G63/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021117186
(22)【出願日】2021-07-15
(65)【公開番号】P2023013191
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2024-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】相馬 央登
(72)【発明者】
【氏名】岡内 伸曉
(72)【発明者】
【氏名】神吉 伸通
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-43397(JP,A)
【文献】特開2021-76800(JP,A)
【文献】特開2019-95475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
C08G 63/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂とを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記結晶性ポリエステル樹脂が、エチレングリコール、炭素数12以上16以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物、及び炭素数16以上24以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物を含む原料モノマーの重縮合物であり、該脂肪族モノカルボン酸系化合物の含有量が、原料モノマー中、7モル%以上20モル%以下である、トナー用結着樹脂組成物。
【請求項2】
炭素数12以上16以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物が、ドデカン二酸及び/又はテトラデカン二酸である、請求項1記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項3】
炭素数16以上24以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物が、ステアリン酸及び/又はベヘン酸である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項4】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価と水酸基価の合計が、15mgKOH/g以下である、請求項1~3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項5】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、5,000以上12,000以下である、請求項1~4いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項6】
非晶質ポリエステル樹脂が、重量平均分子量が4,000以上10,000以下の非晶質ポリエステル樹脂ALを含有し、結着樹脂組成物中、該非晶質ポリエステル樹脂ALを40質量%以上含有する、請求項1~5いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物及び着色剤を含有する、静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂組成物及び該結着樹脂組成物を含有した静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非晶質ポリエステルAと結晶性ポリエステルCを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶質ポリエステルAが、芳香族ジオール及び炭素数3以上6以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる非晶質ポリエステルであり、前記結晶性ポリエステルCが、炭素数2以上9以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる結晶性ポリエステルである、トナー用結着樹脂組成物が開示されている。
【0003】
特許文献2には、非晶質ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、前記非晶質ポリエステル樹脂が、アルコール成分(A-al)と、炭素数16以上18以下の直鎖脂肪族炭化水素基が置換したコハク酸又はその無水物を含むカルボン酸成分(A-ac)との重縮合物であり、前記結晶性ポリエステル樹脂が、アルコール成分(C-al)とカルボン酸成分(C-ac)との重縮合物であり、前記アルコール成分(C-al)として炭素数6以上24以下のモノアルコール、及び前記カルボン酸成分(C-ac)として炭素数6以上24以下のモノカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、静電荷像現像用トナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-90628号公報
【文献】特開2020-60687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結晶性ポリエステル樹脂は結晶構造を有するため滑り性が高く耐擦過性の向上が期待できるが、トナーの結着樹脂として非晶質ポリエステル樹脂と混合して使用する際に、互いの相溶性が高すぎると、印字物の中の結晶性ポリエステル樹脂が非晶化してしまい、期待される滑り性を発現することができなくなる。また、非晶化した結晶性部位は軟らかく柔軟な構造となってしまうため、トナーの粉砕性が低下してしまう。一方、相溶性が低い場合、結晶性ポリエステル樹脂は非晶質ポリエステル樹脂中でも結晶性が維持されるため、耐擦過性や粉砕性は良好となるが、結晶構造部位は非晶性部位との屈折率差が大きいため、得られる印字物の光沢が低下してしまう。
【0006】
本発明は、画像の耐擦過性と光沢性に優れ、また、良好な粉砕性を有するトナー用結着樹脂組成物及び該結着樹脂組成物を含有した静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕 結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂とを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記結晶性ポリエステル樹脂が、エチレングリコール、炭素数12以上16以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物、及び炭素数16以上24以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物を含む原料モノマーの重縮合物であり、該脂肪族モノカルボン酸系化合物の含有量が、原料モノマー中、7モル%以上20モル%以下である、トナー用結着樹脂組成物、及び
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物及び着色剤を含有する、静電荷像現像用トナー
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は画像の耐擦過性と光沢性に優れ、また、良好な粉砕性を有するという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、エチレングリコール、長鎖脂肪族ジカルボン酸系化合物、及び長鎖脂肪族モノカルボン酸系化合物を含む原料モノマーの重縮合物であり、詳細は不明なるも、これらの原料モノマーの相互作用により本発明の効果が奏されるものと推察される。
原料モノマーとしてエチレングリコールを用いることで、結晶性ポリエステル樹脂において、2つの近接したエステル基を配置でき、これにより凝集力が高く結晶成長しやすいことに加え、極性の低い長鎖脂肪族ジカルボン酸由来部位と末端に配置される長鎖脂肪族モノカルボン酸によっても結晶核の生成を促進させることができる。そのため、定着後に結晶性ポリエステル樹脂をすばやく再結晶化させることが可能となるため、印字物中の結晶由来の滑り性が発現し、耐擦過性が良好となる。
また、速やかに結晶核を生成することで結晶サイズが肥大化せず結晶ドメインが微分散した状態となることから、結晶性ポリエステル樹脂の部位と非晶性ポリエステル樹脂の部位の異種界面が多くなり、この異種界面を起点に樹脂が割れるため粉砕性が向上するとともに、結晶性ポリエステル樹脂は微分散していることで、非晶性部位の屈折率に対する影響が抑制されるため、得られる画像の光沢性が阻害されない。
【0010】
結晶性ポリエステル樹脂は、前記のように、エチレングリコール、長鎖脂肪族ジカルボン酸系化合物、及び長鎖脂肪族モノカルボン酸系化合物を含む原料モノマーの重縮合物である。
【0011】
エチレングリコールの含有量は、ジオール中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0012】
他のジオールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等のエチレングリコール以外の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール等が挙げられる。
【0013】
ジオールの含有量は、原料モノマー中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは35モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは55モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下である。
【0014】
長鎖脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、耐擦過性、粉砕性及び光沢性の観点から、12以上であり、好ましくは14以上であり、そして、耐擦過性、光沢性及び低温定着性の観点から、16以下である。ここで、脂肪族モノカルボン酸系化合物がアルキルエステルである場合のアルキル基の炭素数は、上記炭素数には含めない。
【0015】
長鎖脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、ドデカン二酸(炭素数:12)、テトラデカン二酸(炭素数:14)、ヘキサデカン二酸(炭素数:16)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物及びアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等が挙げられ、これらの中では、ドデカン二酸及び/又はテトラデカン二酸が好ましい。
【0016】
長鎖脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、ジカルボン酸系化合物中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0017】
他のジカルボン酸系化合物としては、コハク酸(炭素数:4)、フマル酸(炭素数:4)、アジピン酸(炭素数:6)、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)等の前記長鎖脂肪族ジカルボン酸系化合物以外の脂肪族ジカルボン酸系化合物、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸系化合物、これらの酸の無水物及びアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等が挙げられる。
【0018】
ジカルボン酸系化合物の含有量は、原料モノマー中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下である。
【0019】
長鎖脂肪族モノカルボン酸系化合物の炭素数は、耐擦過性、粉砕性及び光沢性の観点から、16以上であり、好ましくは18以上、より好ましくは20以上であり、そして、耐擦過性、光沢性及び低温定着性の観点から、24以下であり、好ましくは22以下である。ここで、長鎖脂肪族モノカルボン酸系化合物がアルキルエステルである場合のアルキル基の炭素数は、上記炭素数には含めない。
【0020】
長鎖脂肪族モノカルボン酸系化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等が挙げられ、これらの中では、ステアリン酸及び/又はベヘン酸が好ましい。
【0021】
長鎖脂肪族モノカルボン酸系化合物の含有量は、原料モノマー中、耐擦過性、粉砕性及び光沢性の観点から、7モル%以上であり、好ましくは9モル%以上、より好ましくは11モル%以上であり、そして、耐擦過性、光沢性及び低温定着性の観点から、好ましくは20モル%以下であり、好ましくは17モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
【0022】
原料モノマーには、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の長鎖脂肪族モノカルボン酸系化合物以外の前記脂肪族モノカルボン酸系化合物、脂肪族モノアルコール、3価以上のモノマー(3価以上のアルコール及び/又は3価以上のカルボン酸系化合物)等が含まれていてもよい。
【0023】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコールとカルボン酸系化合物を含む原料モノマーを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0024】
エステル化触媒としては、錫化合物、チタン化合物が挙げられ、本発明においては、画像耐熱性及び帯電安定性の観点から、錫化合物が好ましい。
【0025】
錫化合物としては、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。
【0026】
Sn-C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn-C結合を有しておらず、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
【0027】
Sn-O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2~28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2以上28以下のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、触媒能の点から、(R1COO)2Sn(ここでR1は炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R2O)2Sn(ここでR2は炭素数6~20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)又はSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R1COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)又は酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)又は酸化錫(II)がさらに好ましい。
【0028】
エステル化触媒、好ましくは錫化合物の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0029】
エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0030】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0031】
結晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上、さらに好ましくは75℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
【0032】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である。
一方、非晶質樹脂は、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0033】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上、さらに好ましくは75℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
【0034】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、結晶化を制御する観点から、低く制御しておくことが好ましく、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは8mgKOH/g以下、さらに好ましくは6mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは1mgKOH/g以上である。
【0035】
結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、結晶化を制御する観点から、低く制御しておくことが好ましく、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは8mgKOH/g以下、さらに好ましくは6mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは1mgKOH/g以上である。
【0036】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価と水酸基価の合計は、結晶化を制御する観点から、低く制御しておくことが好ましく、好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは12mgKOH/g以下、さらに好ましくは9mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは2mgKOH/g以上である。
【0037】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、保存安定性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは6,000以上、さらに好ましくは7,000以上であり、そして、結晶化を制御する観点から、好ましくは12,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは9,000以下である。
【0038】
ポリエステル樹脂の分子量は、1価の長鎖脂肪族モノマーの使用量や、3価以上の原料モノマー(3価以上のカルボン酸系化合物及び3価以上のアルコール)の使用量によって調整することができる。
【0039】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0040】
非晶質ポリエステル樹脂としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分と芳香族ジカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
【0041】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、式(I):
【0042】
【化1】
【0043】
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表される化合物が好ましく、粉砕性の観点から、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0044】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは98モル%以下、より好ましくは97モル%以下である。
【0045】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、低温定着性の観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0046】
他のアルコール成分としては、脂肪族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0047】
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0048】
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、帯電安定性の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは25モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であり、カルボン酸成分が他のカルボン系化合物を含む場合、好ましくは100モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
【0049】
他のカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸系化合物、3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられ、軟化点を高くする観点からは、3価以上のカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。
【0050】
3価以上のカルボン酸系化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0051】
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、軟化点を高くする観点から、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは35モル%以下、より好ましくは25モル%以下である。
【0052】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0053】
カルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下である。
【0054】
非晶質ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0055】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、錫化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0056】
非晶質ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が4,000以上10,000以下の非晶質ポリエステル樹脂ALを含有していることが好ましい。
【0057】
非晶質ポリエステル樹脂ALの重量平均分子量は、耐擦過性及び帯電安定性の観点から、4,000以上であり、好ましくは4,500以上、より好ましくは5,000以上であり、そして、耐擦過性、粉砕性及び光沢性の観点から、10,000以下であり、好ましくは8,000以下、より好ましくは7,000以下である。
【0058】
非晶質ポリエステル樹脂ALの軟化点は、保存性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは95℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0059】
非晶質ポリエステル樹脂ALのガラス転移温度は、帯電安定性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、結晶化を制御する観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0060】
非晶質ポリエステル樹脂ALの酸価は、結晶化を制御する観点から、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは8mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは1mgKOH/g以上である。
【0061】
非晶質ポリエステル樹脂ALの水酸基価は、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性を制御する観点から、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは45mgKOH/g以下である。
【0062】
非晶質ポリエステル樹脂ALの含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0063】
非晶質ポリエステル樹脂は、さらに、非晶質ポリエステル樹脂ALよりも重量平均分子量が高い非晶質ポリエステル樹脂AHを含有していてもよい。
【0064】
非晶質ポリエステル樹脂AHの重量平均分子量は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは150,000以下、より好ましくは120,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。
【0065】
非晶質ポリエステル樹脂AHの軟化点は、定着幅の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0066】
非晶質ポリエステル樹脂AHのガラス転移温度は、帯電安定性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、結晶化を制御する観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0067】
非晶質ポリエステル樹脂AHの酸価は、結晶化を制御する観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは10mgKOH/g以上である。
【0068】
非晶質ポリエステル樹脂AHの水酸基価は、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性を制御する観点から、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは15mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上である。
【0069】
非晶質ポリエステル樹脂AHの含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0070】
非晶質ポリエステル樹脂の総含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下である。
【0071】
結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂の質量比(結晶性ポリエステル樹脂/非晶質ポリエステル樹脂)は、耐擦過性及び画像濃度の観点から、好ましくは2/98以上、より好ましくは5/95以上、さらに好ましくは8/92以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは20/80以下、より好ましくは15/85以下である。
【0072】
結着樹脂組成物には、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂以外の樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で含有されていてもよく、他の樹脂としては、前記結晶性ポリエステル樹脂及び前記非晶質ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられる。
【0073】
結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂の合計含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0074】
さらに、本発明においては、結着樹脂として本発明のトナー用結着樹脂組成物を含むトナー、具体的には、本発明のトナー用結着樹脂組成物及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーを提供する。
【0075】
結着樹脂組成物の含有量は、トナー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0076】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。本発明において、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0077】
本発明において、着色剤は、着色剤の分散性向上による画像濃度向上の効果がより顕著であることから、疎水性の顔料が好ましい。疎水性の顔料としては、フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ナフトール系顔料、レーキ顔料等が挙げられ、これらの中では、フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料又はナフトール系顔料が好ましく、フタロシアニン顔料がより好ましく、C.I.ピグメントブルー15:3等の銅フタロシアニン顔料がさらに好ましい。
【0078】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0079】
本発明の静電荷像現像用トナーには、結着樹脂組成物及び着色剤以外に、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよく、離型剤及び荷電制御剤が含有されることが好ましい。
【0080】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
【0081】
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0082】
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂組成物中への分散性の観点から、結着樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0083】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0084】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
【0085】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
【0086】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0087】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂(結着樹脂組成物)及び着色剤、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0088】
なお、トナーの製造においては、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂とを予め混合した結着樹脂組成物を用いてもよいが、トナーを製造する際に、それらの樹脂を直接原料の混合に供してもよい。
【0089】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0090】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0091】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0092】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0093】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0094】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例
【0095】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定することができる。
【0096】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0097】
〔樹脂の吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温しながら吸熱ピークを測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。
【0098】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(20℃)から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に、試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0099】
〔結晶性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価〕
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、テトラヒドロフランに変更する。
【0100】
〔非晶質ポリエステル樹脂の酸価〕
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0101】
〔非晶質ポリエステル樹脂の水酸基価〕
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、テトラヒドロフランに変更する。
【0102】
〔樹脂の重量平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフラン(非晶質樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)に、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(非晶質樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー(株)製)
【0103】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最大ピーク温度をワックスの融点とする。
【0104】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
【0105】
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0106】
樹脂製造例1
表1に示す原料モノマーを温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、200℃まで8時間かけて昇温を行った。その後、エステル化触媒及びエステル化助触媒を添加し、210℃まで1時間かけて昇温後8.0kPaにて表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C1~C8)を得た。
【0107】
【表1】
【0108】
樹脂製造例2
表2に示す、アジピン酸以外の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温し、235℃で6時間重縮合させた。その後、210℃まで降温してアジピン酸を添加し、210℃で2時間反応させた後、210℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点まで反応を行って、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AL1、AL2)を得た。
【0109】
樹脂製造例3
表2に示す、アジピン酸及び無水トリメリット酸以外の原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温し、235℃で6時間重縮合させた。その後、210℃まで降温してアジピン酸及び無水トリメリット酸を添加し、210℃で2時間反応させた後、210℃で10kPaの減圧下にて表2に記載の軟化点まで反応を行って、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂AH1)を得た。
【0110】
【表2】
【0111】
実施例1~6及び比較例1~3
結着樹脂として、表3に示す樹脂C 15質量部、樹脂AL 55質量部、及び樹脂AH 30質量部と、着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、銅フタロシアニン顔料)5質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット(株)製)1質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋(株)製、パラフィンワックス、融点:75℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーでよく撹拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。スクリューの回転速度は200r/min、スクリュー内の加熱設定温度は90℃であり、混練物の温度は140℃、混練物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を140℃から50℃まで1.5時間で冷却し、50℃で、冷却ローラーで圧延冷却した後、ジェットミルで粉砕、分級し、体積中位粒径(D50)5.5μmのトナー粒子を得た。
【0112】
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤として、「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1.5質量部及び「RY-50」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて3600r/minで5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナーを得た。
【0113】
試験例1〔耐擦過性〕
コート紙「OKトップコート+」(王子製紙(株)製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」((株)沖データ製)を用いて、600dpiの解像度において、2ドット分の印字部(点)と、同じく2ドット分の非印字部(空白)を並べたハーフトーン画像(2dots 2spacesのハーフトーン画像)を印字した。得られた印字物をセルロース製不織布「ベンコットM3-II」(旭化成(株)製)に2kg荷重(接触面積900mm)をかけて100往復の擦過性試験を行った。擦過前後の印字物の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定した。それぞれ画像上の任意の3点を測定した値の平均値を画像濃度とし、擦過前後の画像濃度の変化量〔(擦過前の画像濃度-擦過後の画像濃度)〕を算出した。結果を表3に示す。擦過前後の画像濃度の変化量が小さいほど擦過性に優れる。
【0114】
試験例2〔粉砕性〕
トナーの製造過程において、溶融混練物(約3cm四方板片)1kgを採取し、ロートプレックス(ホソカワミクロン(株)製、型式R20/10)に目開き3mmのスクリーンをつけたものに投入し、粉砕を行った。粉砕した溶融混練物をJIS Z 8801-1:2000に規定の目開き1000μmと710μmの金網篩い((株)飯田製作所製)を使用し、粒径が710μm以上1000μm以下の粒子に分級した。分級した粒子20gをコーヒーミル(PHILIPS社製、HR-2170タイプ)で10秒間粉砕した後、150μmの篩いにかけ、通過したトナー重量A(g)を精秤した。秤量した重量から次式により粉砕性を算出し、この操作を3回行って平均値を求めた。結果を表3に示す。値が大きいほど粉砕性に優れる。
粉砕性(%)=(A〔g〕/20.0〔g〕)×100
【0115】
試験例3〔光沢度〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、未定着の状態で印刷物を得た(印刷面積:2cm×12cm、付着量:0.3mg/cm2)。その後、総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度300mm/sec)を用い、定着ロールの温度を最低定着温度+20℃に設定し未定着状態の印刷物の定着を行った。なお、印刷に用いた紙はコート紙「OKトップコート+」(王子製紙(株)製)を使用した。得られた印字物を45℃の温度下に1日放置後、光沢度計「IG-330」((株)堀場製作所製)を用いて、該画像の下に厚紙を敷き、光射条件を60°として光沢度を測定した。結果を表3に示す。得られた値が高い程、光沢性が高いことを示す。
【0116】
【表3】
【0117】
以上の結果より、脂肪族モノカルボン酸系化合物として、炭素鎖の短いモノカルボン酸を用いた結晶性ポリエステル樹脂を含む比較例1、3、及び脂肪族モノカルボン酸系化合物の使用量が少なすぎる結晶性ポリエステル樹脂を含む比較例2と対比して、実施例1~6のトナーは、製造過程での粉砕性が良好であり、耐擦過性及び光沢性にも優れることが分かる。
なかでも、実施例1と実施例6の対比から、非晶質ポリエステル樹脂のアルコール成分におけるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の含有量が多い場合に、粉砕性の向上が顕著であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のトナー用結着樹脂組成物を含有した静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。