(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】建築物の浮き床構造及びその施工方法、並びに浮き床構造の中間部材
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20250210BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20250210BHJP
E04B 1/98 20060101ALI20250210BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20250210BHJP
E04F 15/18 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
E04B5/43 H
E04B1/64 B
E04B1/98 E
E04B1/82 N
E04B1/82 R
E04F15/18 601J
E04F15/18 602K
(21)【出願番号】P 2021140724
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2024-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390029023
【氏名又は名称】日本音響エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 心耳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】大山 宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 晃一
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-124415(JP,U)
【文献】特開2020-117926(JP,A)
【文献】特開2003-328538(JP,A)
【文献】特開2017-082581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0160385(US,A1)
【文献】特開平08-319711(JP,A)
【文献】特開2003-035002(JP,A)
【文献】特開2018-123536(JP,A)
【文献】特開2007-303206(JP,A)
【文献】特開2002-356948(JP,A)
【文献】特開2009-068318(JP,A)
【文献】特開2000-045443(JP,A)
【文献】特開平10-252202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/43
E04B 1/64
E04B 1/98
E04B 1/82
E04F 15/18
E04G 9/00
E04G 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の躯体の底面上にて水平方向に互いに間隔を空けて配置される複数の弾性体と、
前記複数の弾性体を上方から覆うように広がる中間部材と、
コンクリート部を有する床スラブと
を備え、
前記コンクリート部が、前記中間部材に対して上方の位置で打設されたコンクリートから成る1つのコンクリート層を有する、浮き床構造であって、
前記中間部材が、前記複数の弾性体によってそれぞれ支持される複数の支持部と、前記複数の弾性体間の空間に配置されるバッグ部とを有し、
前記バッグ部が、ガス入れによって前記躯体の底面に当接するように膨張した膨張状態と、ガス抜きによって前記躯体の底面から離れるように収縮した収縮状態とに変化可能に構成されており、
前記中間部材が、前記バッグ部を前記収縮状態とするように設置されている、浮き床構造。
【請求項2】
前記1つのコンクリート層が、前記コンクリート部の下端に位置し、
前記コンクリート部が、前記1つのコンクリート層の上方に重なる1つの追加コンクリート層をさらに有し、
前記1つの追加コンクリート層が、前記1つのコンクリート層のコンクリートとは別に打設されたコンクリートから成る、請求項1に記載の浮き床構造。
【請求項3】
建築物の躯体の底面上に水平方向に互いに間隔を空けて複数の弾性体を配置する弾性体設置工程と、
前記複数の弾性体を上方から覆うように広がる中間部材を配置する中間部材設置工程であって、中間部材の複数の支持部をそれぞれ前記複数の弾性体により支持されるように配置し、かつ中間部材のバッグ部を前記複数の弾性体間の空間に配置する中間部材設置工程と、
ガス入れによって前記バッグ部を前記躯体の底面に当接させるように膨張させる中間部材膨張工程と、
床スラブにおけるコンクリート部の1つのコンクリート層を形成するために、前記中間部材に対して上方の位置でコンクリートを打設するコンクリート部形成工程と、
ガス抜きによって前記バッグ部を前記躯体の底面から離すように収縮させる中間部材収縮工程と
を含む浮き床構造の施工方法。
【請求項4】
前記コンクリート部形成工程の後かつ前記中間部材収縮工程の前、又は前記中間部材収縮工程の後に、前記コンクリート部の1つの追加コンクリート層を形成するために、前記コンクリート部形成工程にて打設されたコンクリートの上方から追加のコンクリートを打設する追加コンクリート部形成工程をさらに含む請求項3に記載の浮き床構造の施工方法。
【請求項5】
建築物の躯体の底面上にて水平方向に互いに間隔を空けて配置される複数の弾性体を上方から覆うように広がる浮き床構造の中間部材であって、中間部材に対して上方の位置で打設されたコンクリートを支持することができるように構成される浮き床構造の中間部材において、
前記複数の弾性体によってそれぞれ支持されるように配置可能である複数の支持部と、
水平方向にて前記複数の支持部間に配置可能であるバッグ部と
を備え、
前記バッグ部が、ガス入れによって前記躯体の底面に当接できるように膨張した膨張状態と、ガス抜きによって前記躯体の底面から離れることができるように収縮した収縮状態とに変化可能に構成されている、浮き床構造の中間部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の躯体の底面上に配置される複数の弾性体と、これら複数の弾性体を上方から覆う中間部材と、この中間部材に対して上方に位置する床スラブとを有する浮き床構造に関する。本発明はまた、このような浮き床構造の施工方法に関する。さらに、本発明は、上記浮き床構造の中間部材に関する。
【背景技術】
【0002】
都心の高層マンション等では、その住戸数に応じた数の駐車場を確保することが求められる。その一方で、都心の地価は極めて高いので、このような駐車場を設置するための敷地を確保することが難しくなっている。そのため、都心の高層マンションにおいては十分な駐車場を確保するための対策の1つとして、高層マンションの地下階に機械式立体駐車場を設置することが行われている。
【0003】
しかしながら、機械式立体駐車場が動作するときには、大きな振動が発生する。さらに、この大きな振動によって大きな騒音もまた発生する。特に、機械式立体駐車場が高層マンションの地下階に設置される場合、このような大きな振動及び騒音はマンションの住民にとって極めて不快なものとなる。そのため、振動及び騒音を防ぐために、いわゆる浮き床構造が採用されることがある。
【0004】
この典型例としては、建築物の躯体の底面上にて水平方向に互いに間隔を空けて配置される複数の防振ゴム(弾性体)と、これら複数の防振ゴムを上方から覆うように配置される型枠支持金物(中間部材)と、この型枠支持金物の上方に配置される打設コンクリート(コンクリート部)を有する床スラブとを含む浮き床(浮き床構造)であって、型枠支持金物が、鉄骨、鋼板製のデッキプレート等の資材から構成されるか、又は型枠支持金物が、鉄板製の取り付け部、合板製の型枠等の資材から構成される、浮き床が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【0005】
典型例においては、浮き床構造の最低共振周波数が約7Hz~約10Hzとなるので、十分な防振効果が得られる。しかしながら、型枠の重量は大きく、かつ型枠を構築するために多くの資材を設置する必要がある。このような型枠の構築作業は複雑であり、かつ大きな労力を要する。ひいては、コストが増加するおそれがある。そのため、複雑な型枠の構築作業を回避し、これによって、浮き床構造の施工を効率化することが望まれている。
【0006】
そこで、施工を効率化可能とする様々な浮き床構造が提案されている。この第1例としては、建築物の躯体の底面上に配置される床用板状防振発泡体と、躯体の底面上にて水平方向に互いに間隔を空けるように床用板状防振発泡体に装填される複数の防振弾性体(弾性体)と、床用板状防振発泡体及び防振弾性体上に打設されるコンクリート(床スラブのコンクリート部)とを有する防振床(浮き床構造)が挙げられる。(例えば、特許文献2を参照。)
【0007】
第2例としては、床基盤(躯体)と、この床基盤の上方に位置する床スラブと、床基盤及び床スラブの間に介在し、かつ発泡材から成る板状の第1防振部材と、この第1防振部材を貫通するように配置されるゴム製の第2防振部材とを有する防振床構造(浮き床構造)であって、第1防振部材が、床基盤側に向かって高さ方向に突出する複数の凸部を有し、隣り合う凸部の間に流水路が形成される、防振床構造が挙げられる。(例えば、特許文献3を参照。)
【0008】
第3例としては、床基盤(躯体)上にシートを敷く工程と、このシート上に複数の防振材(弾性体)を互いに間隔を空けて配置する工程であって、各防振材が、ゴム状弾性体と、このゴム状弾性体の上部に配置される支持部材と、この支持部材を上下動させるレベリングボルトとを有する、工程と、各防振材の支持部材の上方にレベリングボルトの外周を包囲すう筒状部材を設ける工程と、複数の防振材の周囲に補強心材を配置した状態でコンクリートを打設する工程と、このコンクリートを養生固化させ、これによって、床スラブを形成する工程と、筒状部材内のレベリングボルトを回転させ、これによって、床スラブを床基盤から浮上させる工程とを含む方法によって施工される浮き床(浮き床構造)が挙げられる。(例えば、特許文献4を参照。)
【0009】
第4例としては、床(躯体)と、この床の上方に位置するコンクリート製の浮き床(床スラブのコンクリート部)と、床及び浮き床の間に介在する発泡体及び複数の防振材(弾性体)とを有するコンクリート構造物の防振構造(浮き床構造)であって、発泡体が、アルカリ成分の存在下で減容又は分解するようになっており、発泡体及び複数の防振材の厚さが同じである、コンクリート構造物の防振構造が挙げられる。この防振構造においては、アルカリ水溶液等により発泡体を減容又は溶解させることによって、床及び浮き床の間に隙間が形成される、コンクリート構造物の防振構造が挙げられる。(例えば、特許文献5を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平8-319711号
【文献】特開2003-35002号
【文献】特開2018-123536号
【文献】特開2003-328538号
【文献】特開2007-303206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、浮き床構造において躯体の底面上には、雨水、湧き水等の水が入り込むことがある。また、床スラブの頂面上には車が駐車し、さらに、この頂面上には機械式立体駐車場の駆動装置等も設置される。その一方で、上記第1例のような浮き床構造においては、躯体の底面と床スラブとの間に十分な隙間が形成されない。そのため、水が、躯体の底面及び床スラブの間で流れることができずに、床スラブの頂面に溢れるおそれがある。この場合、車、機械式立体駐車場の駆動装置等が浸水するおそれがある。
【0012】
また、第1及び第2例のような浮き床構造においては、躯体及び床スラブ間に発泡体が介在するので、最低共振周波数が約17Hz~約20Hzとなる。そのため、浮き床構造の典型例と比べて十分な防振効果を得ることができない。その一方で、第3例及び第4例のような浮き床構造においては、躯体及び床スラブ間に発泡体の代わりに空気層が介在するので、最低共振周波数が約7Hz~約10Hzとなる。そのため、浮き床構造の典型例と同様に十分な防振効果が得られる。
【0013】
しかしながら、第3例のような浮き床構造では、レベリングボルトによって床スラブを損傷させずに浮上させる作業は、難しくかつ大掛かりとなる。また、床スラブが浮上するときに損傷しないためには、床スラブを強固にする必要がある。この場合、第3例においては、強度向上のために、浮き床のコンクリート部内に高さ方向に間隔を空けた2つの水平面に沿って鉄筋が並べられる。その一方で、浮き床構造の典型例においては、通常、浮き床のコンクリート部内にて1つの水平面に沿って鉄筋が並べられる。そのため、浮き床構造の典型例と比較して鉄筋を設置する作業が増加するので、施工作業が大掛かりになる。ひいては、浮き床構造の施工コストが増加するおそれもある。
【0014】
第4例のような浮き床構造においては、発泡体を減容又は溶解させるために、大量のアルカリ水溶液等を躯体の底面及び床スラブの間に流す作業が必要となる。このように大量のアルカリ水溶液等を流す作業は大掛かりになる。さらには、大量のアルカリ水溶液及びこの作業に掛かるコストによって浮き床構造の施工コストが増加するおそれもある。
【0015】
これらの実情を鑑みると、建築物の浮き床構造及びその施工方法、並びに浮き床構造の中間部材においては、浮き床構造に十分な防振効果をもたらすこと、浮き床構造の躯体及び床スラブ間に水の流通空間を確保するための施工作業を効率化することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、一態様に係る浮き床構造は、建築物の躯体の底面上にて水平方向に互いに間隔を空けて配置される複数の弾性体と、前記複数の弾性体を上方から覆うように広がる中間部材と、コンクリート部を有する床スラブとを備え、前記コンクリート部が、前記中間部材に対して上方の位置で打設されたコンクリートから成る1つのコンクリート層を有する、浮き床構造であって、前記中間部材が、前記複数の弾性体によってそれぞれ支持される複数の支持部と、前記複数の弾性体間の空間に配置されるバッグ部とを有し、前記バッグ部が、ガス入れによって前記躯体の底面に当接するように膨張した膨張状態と、ガス抜きによって前記躯体の底面から離れるように収縮した収縮状態とに変化可能に構成されており、前記中間部材が、前記バッグ部を前記収縮状態とするように設置されている。
【0017】
一態様に係る浮き床構造の施工方法は、建築物の躯体の底面上に水平方向に互いに間隔を空けて複数の弾性体を配置する弾性体設置工程と、前記複数の弾性体を上方から覆うように広がる中間部材を配置する中間部材設置工程であって、中間部材の複数の支持部をそれぞれ前記複数の弾性体により支持されるように配置し、かつ中間部材のバッグ部を前記複数の弾性体間の空間に配置する中間部材設置工程と、ガス入れによって前記バッグ部を前記躯体の底面に当接させるように膨張させる中間部材膨張工程と、床スラブにおけるコンクリート部の1つのコンクリート層を形成するために、前記中間部材に対して上方の位置でコンクリートを打設するコンクリート部形成工程と、ガス抜きによって前記バッグ部を前記躯体の底面から離すように収縮させる中間部材収縮工程とを含む。
【0018】
一態様に係る浮き床構造の中間部材は、建築物の躯体の底面上にて水平方向に互いに間隔を空けて配置される複数の弾性体を上方から覆うように広がる浮き床構造の中間部材であって、中間部材に対して上方の位置で打設されたコンクリートを支持することができるように構成される浮き床構造の中間部材において、前記複数の弾性体によってそれぞれ支持されるに配置可能である複数の支持部と、水平方向にて前記複数の支持部間に配置可能であるバッグ部とを備え、前記バッグ部が、ガス入れによって前記躯体の底面に当接できるように膨張した膨張状態と、ガス抜きによって前記躯体の底面から離れることができるように収縮した収縮状態とに変化可能に構成されている。
【発明の効果】
【0019】
一態様に係る建築物の浮き床構造及びその施工方法、並びに浮き床構造の中間部材においては、浮き床構造に十分な防振効果をもたらすことができ、浮き床構造の躯体及び床スラブ間に水の流通空間を確保するための施工作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る浮き床構造をその中間部材のバッグ部を収縮させた状態で模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る浮き床構造をその中間部材のバッグ部を膨張させた状態で模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る浮き床構造の施工方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る浮き床構造をその中間部材のバッグ部を収縮させた状態で模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る浮き床構造の施工方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1及び第2実施形態のそれぞれに係る建築物の浮き床構造及びその施工方法について説明する。各実施形態に係る浮き床構造は中間部材を含む。各実施形態においては、浮き床構造が、機械式立体駐車場を設置した建築物の地下階に適用されている。しかしながら、浮き床構造は、建築物の地上階に適用することもできる。また、浮き床構造を適用したフロアには、機械式立体駐車場以外の装置を設置することもできる。浮き床構造を適用したフロアには、このような装置を設置しないこともできる。
【0022】
「第1実施形態」
第1実施形態に係る浮き床構造及びその施工方法について以下に説明する。
【0023】
「浮き床構造の概略」
図1~
図4を参照すると、本実施形態に係る浮き床構造は概略的には次のように構成される。浮き床構造は、建築物の躯体1の底面1aに適用される。浮き床構造上には、機械式立体駐車場(図示せず)が設置される。浮き床構造上では自動車等の車両(図示せず)が走行できるようになっており、このような車両が、浮き床構造上の機械式立体駐車場に駐車される。
【0024】
浮き床構造は複数の弾性体10を有する。複数の弾性体10は、躯体1の底面1a上にて水平方向に間隔を空けるように配置される。浮き床構造は中間部材20を有する。中間部材20は、複数の弾性体10を上方から覆うよう配置される。中間部材20はまた、その上方から打設されたコンクリートを受けることができるように構成される。
【0025】
浮き床構造は床スラブ30を有する。床スラブ30はコンクリート部31を有する。コンクリート部31は、中間部材20に対して上方の位置にて打設されたコンクリートから成る1つのコンクリート層32を有する。以下においては、必要に応じて、この1つのコンクリート層32を第1コンクリート層32という。
【0026】
中間部材20は複数の支持部21を有する。複数の支持部21は、複数の弾性体10によってそれぞれ支持されるように配置可能である。中間部材20はまた、複数の弾性体10間の空間Pに配置可能である1つ又は複数のバッグ部22を有する。特に、中間部材20は複数のバッグ22を有すると好ましい。
【0027】
バッグ部22は、
図3及び
図4に示すように、ガス入れによって躯体1の底面1aに当接するように膨張した状態(以下、必要に応じて「膨張状態」という)と、
図1及び
図2に示すように、ガス抜きによって躯体1の底面1aから離れるように収縮した状態(以下、必要に応じて「収縮状態」という)とに変化可能に構成されている。
【0028】
図1及び
図2に示すように、中間部材20は、最終的にはバッグ部22を収縮状態とするように設置されている。すなわち、浮き床構造が完成状態又は竣工状態となったときに、中間部材20においては、複数の支持部21がそれぞれ複数の弾性体10によって支持され、バッグ部22が複数の弾性体10間の空間Pに配置され、かつバッグ部22は収縮状態となる。
【0029】
「浮き床構造の詳細」
図1、
図3及び
図4を参照すると、本実施形態に係る浮き床構造は詳細には次のように構成することができる。浮き床構造において、コンクリート部31は、第1コンクリート層32のみを有する。
図1及び
図3に示すように、浮き床構造はまた複数のベース台2を有する。複数のベース台2は、それぞれ複数の弾性体10を下方から支持するように躯体1の底面1a上に配置される。ベース台2は束となっている。
【0030】
しかしながら、複数のベース台のうち少なくとも1つが、束に加えて、飼いモルタル、レベルモルタル等を有することもできる。複数のベース台のうち少なくとも1つを、束の代わりに、飼いモルタル、レベルモルタル等とすることもできる。さらに、浮き床構造は、複数のベース台のうち少なくとも1つを有さないように構成することもできる。この場合、ベース台が設けられていない箇所では、弾性体を躯体の底面上に直接当接させることができる。
【0031】
図1、
図3及び
図4に示すように、浮き床構造は、中間部材20及び床スラブ30間に位置する1つのシート部材40を有する。このシート部材40上にコンクリートが打設される。しかしながら、浮き床構造は、互いに重なる2つ以上のシート部材を有することもできる。浮き床構造はまた、シート部材を有さないように構成することもできる。
【0032】
さらに、シート部材40は、打設されるコンクリートを通さないように構成されている。シート部材40は、プラスチック製のシートとすることができる。しかしながら、シート部材は、ビニールシート、織布、不織布等とすることもできる。
【0033】
浮き床構造は、中間部材20の各支持部21をそれに対応する弾性体10に取り付けるように構成される取付部材50を有する。中間部材20の各支持部21は、この支持部21に対応する弾性体10及び取付部材50の間にて挟まれた状態で固定される。シート部材40は、中間部材20及び複数の取付部材50を上方から覆う。
【0034】
「弾性体の詳細」
図1~
図3を参照すると、弾性体10は詳細には次のように構成することができる。浮き床構造において、複数の弾性体10のそれぞれは防振ゴムとなっている。しかしながら、複数の弾性体のうち少なくとも1つを防振ゴム以外とすることもできる。
【0035】
複数の弾性体10間の間隔は、これらの間に配置される複数のバッグ部22が膨張状態で床スラブ30を支えるための剛性及び支持力、浮き床構造の防振性能等を考慮して設定される。
図2は、一例として、平面視で行列状に配置された複数の弾性体10を示している。しかしながら、複数の弾性体10の配置は、これに限定されない。
【0036】
「中間部材の詳細」
図1~
図4を参照すると、中間部材20は詳細には次のように構成することができる。
図1、
図3及び
図4に示すように、中間部材20において、各支持部21の上面区域21a及び下面区域21bは略平坦に形成される。
【0037】
各バッグ部22の上面区域22aは、収縮状態おいて、略平坦に維持されるか、又はこのバッグ部22の上面区域22a対向するバッグ部22の上面区域22aに接近するように下方に収縮する。各バッグ部22の上面区域22aはまた、膨張状態では、略平坦に維持されるか、又はこのバッグ部22の上面区域22aと対向する下面区域22bから離れるように上方に膨張する。
【0038】
各バッグ部22の上面区域22aは、膨張状態で、各弾性体10の上端と上下方向にて略一致するように設定されるか、又は各弾性体10の上端よりも下方に位置するように設定されると好ましい。このようなバッグ部22の上面区域22aは、上方への膨張を抑制するように剛性を高くすることができる。代替的には、バッグ部22の上面区域22aは、上方への膨張を抑制するように剛体部材によって押さえつけることもできる。
【0039】
図3及び
図4に示すように、各バッグ部22の下面区域22bは、膨張状態で、それと対向するバッグ部22の上面区域22aから離れるように下方に膨張する。
図1に示すように、各バッグ部22の下面区域22bは、収縮状態で、それと対向するバッグ部22の上面区域22aに接近するように上方に収縮する。
【0040】
各バッグ部22を膨張させるために用いられるガスは空気であると好ましい。しかしながら、バッグ部を膨張させるために用いられるガスは空気以外とすることもできる。例えば、ガスは、ヘリウムガス等とすることができる。
【0041】
図1~
図3に示すように、中間部材20の支持部21は、複数のバッグ部22のうち、水平方向内の第1方向で隣り合うもの(以下、必要に応じて「第1方向で隣り合うバッグ部22」という)を連結する。各バッグ部22は、第1方向に略直交する水平方向内の第2方向に沿って延びる。中間部材20は、第1方向に互いに間隔を空けて並ぶ複数のバッグ部22を有することとなる。各バッグ部22は、複数の支持部21のうち、第2方向にて1列に並ぶものに跨って延びる。
【0042】
図2に示すように、中間部材20は、複数の支持部21のうち、第2方向にて隣り合うもの(以下、必要に応じて「隣り合う支持部21」という)を連結する橋架部23を有する。橋架部23はまた、第1方向で隣り合うバッグ部22を連結する。橋架部23の上面区域23a及び下面区域23bは略平坦に形成される。橋架部23は、中間部材20の外周縁にも位置することができる。
【0043】
しかしながら、複数のバッグ部は、橋架部によって連結される代わりに、互いに空気を流通可能とするように第1方向にて互いに一体に連結されることができる。各バッグ部は、第2方向にて1つの支持部のみに跨って延びることもできる。この場合、複数の支持部のうち、第2方向にて隣り合うものが設けられ、これらは橋架部によって連結される。
【0044】
図2及び
図4に示すように、中間部材20は複数のバルブ24を有する。各バルブ24は、中間部材20の外部及び内部間でガスを流通させるように構成される。各バルブ24は、ガスが中間部材20の外部からこのバルブ24を通って中間部材20の内部に流入可能となるように構成される。各バルブ24はまた、ガスが中間部材20の内部からこのバルブ24を通って中間部材20の外部に流出可能となるように構成される。しかしながら、中間部材は1つのバルブを有することもできる。
【0045】
中間部材20はまた複数の連通路25を有する。各連通路25は、第1方向にて隣り合うバッグ部22の間にてガスを連通させるように構成される。複数の連通路25は、中間部材20の橋架部23の下面区域23bに配置される。
【0046】
しかしながら、中間部材は、連通路を有さないように構成することもできる。この場合、複数のバルブは複数のバッグ部にそれぞれ設けられるとよい。複数の連通路のうち少なくとも1つを、中間部材の上面に配置することもできる。さらに、第2方向にて隣り合うバッグ部が設けられる場合には、連通路はこれらの間にてガスを連通させるように構成することもできる。
【0047】
各バッグ部22は、少なくとも1つのバルブ24を有する。各バルブ24は、それを設けたバッグ部22の下側区域22bに配置される。この場合、各バルブ24を、床スラブ30のために打設されるコンクリートを避けるように配置できる。さらに、比較的広い中間部材20の上方空間に各バルブ24から延長チューブ(図示せず)を引き回せば、中間部材20の上方空間に設置されたポンプ(図示せず)によって延長チューブからガスを注入することができる。
【0048】
しかしながら、複数のバッグ部の一部分がバルブを有さないように構成することもできる。複数のバルブのうち少なくとも1つを、バッグ部の下側区域の代わりに、バッグ部の上側区域に設けることもできる。複数のバルブのうち少なくとも1つを、バッグ部の代わりに、連通路に設けることもできる。
【0049】
図1、
図3及び
図4に示すように、中間部材20は上層材26及び下層材27を有する。上層材26は下層材27の上方に位置する。下層材27は中間部材20の下端に位置する。
【0050】
上層材26は、複数の支持部21の上面区域21aにそれぞれ対応する複数の上層支持区域26aを有する。下層材27は、複数の支持部21の下面区域21bにそれぞれ対応する複数の下層支持区域27aを有する。上層及び下層支持区域26a,27aは重なっており、かつ接合されている。
【0051】
上層材26は、複数のバッグ部22の上面区域22aにそれぞれ対応する複数の上層バッグ区域26bを有する。下層材27は、複数のバッグ部22の下面区域22bにそれぞれ対応する複数の下層バッグ区域27bを有する。上層及び下層バッグ区域26b,27bの間には、ガスが溜まるバッグ部22の内部空間22cが形成されている。
【0052】
上層材26は、複数の橋架部23の上面区域23aにそれぞれ対応する複数の上層橋架区域26cを有する。下層材27は、複数の橋架部23の下面区域23bにそれぞれ対応する複数の下層橋架区域27cを有する。これらの上層及び下層橋架区域26c,27c間に形成される空間を連通路25とすることができる。
【0053】
下層材27は、中間部材20のガス入れにより膨張可能となり、かつ中間部材20のガス抜きにより収縮可能となるような柔軟性を有する。上層材26は、平坦に維持する観点においては、中間部材20のガス入れ及びガス抜きのいずれによっても形状を維持するような剛性を有することができる。この場合、上層材26の剛性を下層材27の剛性よりも高くすることができる。また、上層材26は、下層材27と同様に膨張及び収縮可能とする観点においては、下層材27と同様に柔軟性を有することができる。
【0054】
例えば、上層材26及び下層材27のそれぞれは織布から構成することができる。このような上層材26及び下層材27が柔軟性を有する場合、上層材26及び下層材27のそれぞれに用いられる繊維を、精製繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等とすることができる。その一方で、上層材26の剛性が下層材27の剛性よりも高い場合、上層材26に用いられる繊維を金属繊維、炭素繊維等のような無機繊維とすることができる。下層材27に用いられる繊維を精製繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等とすることができる。
【0055】
しかしながら、上層材及び下層材の少なくとも一方に用いられる繊維を上記以外とすることもできる。上層材及び下層材の少なくとも一方を織布以外から構成することもできる。例えば、上層材及び下層材の少なくとも一方を不織布、ゴム、プラスチックを用いて構成することもできる。
【0056】
特に図示はしないが、中間部材20は、それを複数のバッグ部22にそれぞれ対応して分割するように構成された複数のモジュールを有することができる。この場合、各モジュールが1つのバッグ部22を有する。しかしながら、各モジュールが、2つ以上のバッグ部を有することもできる。
【0057】
各モジュールはまた支持部21を有する。各モジュールは、支持部21に固定された弾性体10を有することもできる。隣接するモジュール同士の支持部21は互いに上下方向に重ねることができる。この場合、互いに重なった支持部21のうち下側のものに弾性体10を固定することができる。このような複数のモジュールによって、中間部材20を効率的に設置することができる。
【0058】
「床スラブの詳細」
図1、
図3及び
図4を参照すると、床スラブ30は詳細には次のように構成することができる。コンクリート部31の頂面31aが、床スラブ30の頂面30a、すなわち、地下階の床面を形成している。この頂面31a上に機械式駐車場(図示せず)が設置される。また、頂面31a上にて車両(図示せず)が走行かつ停止する。
【0059】
床スラブ30は、コンクリート部31内、具体的には、第1コンクリート層32内に埋設される複数の鉄筋60aから成る1つの鉄筋群60を有する。1つの鉄筋群60において、複数の鉄筋60aは、コンクリート部31内で水平方向に沿った1つの平面に沿って配置される。1つの鉄筋群60は、第1コンクリート層32内に埋設される。床スラブ30のコンクリート部31内には、このような1つの鉄筋群60のみが埋設されると好ましい。しかしながら、床スラブのコンクリート部内には、上下方向に間隔を空けて複数の鉄筋群を埋設することもできる。
【0060】
「浮き床構造の施工方法」
図1~
図5を参照すると、本実施形態に係る浮き床構造の施工方法は、次のようになっている。最初に、浮き床構造の施工方法においては、建築物の躯体1の底面1a上に水平方向に互いに間隔を空けて複数の弾性体10を配置する(弾性体設置工程S1)。
【0061】
複数の弾性体10を上方から覆うように広がる中間部材20を配置する(中間部材設置工程S2)。このとき、中間部材20の複数の支持部21をそれぞれ複数の弾性体10により支持されるように配置する。さらに、中間部材20のバッグ部22を複数の弾性体10間の空間Pに配置する。
【0062】
次に、ガス入れによってバッグ部22を躯体1の底面1aに当接させるように膨張させる(中間部材膨張工程S3)。床スラブ30におけるコンクリート部31の1つのコンクリート層32を形成するために、中間部材20の上方からコンクリートを打設する(コンクリート部形成工程S4)。ガス抜きによってバッグ部22を躯体1の底面1aから離すように収縮させる(中間部材収縮工程S5)。
【0063】
すなわち、本実施形態に係る施工方法は、弾性体設置工程S1、中間部材設置工程S2、中間部材膨張工程S3、コンクリート部形成工程S4、及び中間部材収縮工程S5を含む。本実施形態に係る浮き床構造は、これらの工程S1~S5を用いて得ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る浮き床構造の施工方法は、次のようにすることができる。浮き床構造の施工方法のコンクリート部形成工程S4において、中間部材20上にコンクリートを打設し、これによって、コンクリート部31の下端に位置する第1コンクリート層32を形成することができる(コンクリート打設工程S4a)。さらに、第1コンクリート層32を固めるために乾燥させることができる(コンクリート乾燥工程S4b)。
【0065】
以上、本実施形態に係る浮き床構造は、建築物の躯体1の底面1a上にて水平方向に互いに間隔を空けて配置される複数の弾性体10と、前記複数の弾性体10を上方から覆うように広がる中間部材20と、コンクリート部31を有する床スラブ30とを備え、前記コンクリート部31が、前記中間部材20に対して上方の位置で打設されたコンクリートから成る1つのコンクリート層32を有する、浮き床構造であって、前記中間部材20が、前記複数の弾性体10によってそれぞれ支持される複数の支持部21と、前記複数の弾性体10間の空間Pに配置されるバッグ部22とを有し、前記バッグ部22が、ガス入れによって前記躯体1の底面1aに当接するように膨張した膨張状態と、ガス抜きによって前記躯体1の底面1aから離れるように収縮した収縮状態とに変化可能に構成されており、前記中間部材20が、前記バッグ部22を前記収縮状態とするように設置されている。
【0066】
本実施形態に係る浮き床構造の施工方法は、建築物の躯体1の底面1a上に水平方向に互いに間隔を空けて複数の弾性体10を配置する弾性体設置工程S1と、前記複数の弾性体10を上方から覆うように広がる中間部材20を配置する中間部材設置工程S2であって、中間部材20の複数の支持部21をそれぞれ前記複数の弾性体10により支持されるように配置し、かつ中間部材20のバッグ部22を前記複数の弾性体10間の空間Pに配置する中間部材設置工程S2と、ガス入れによって前記バッグ部22を前記躯体1の底面1aに当接させるように膨張させる中間部材膨張工程S3と、床スラブ30におけるコンクリート部31の1つのコンクリート層32を形成するために、前記中間部材20に対して上方の位置でコンクリートを打設するコンクリート部形成工程S4と、ガス抜きによって前記バッグ部22を前記躯体1の底面1aから離すように収縮させる中間部材収縮工程S5とを含む。
【0067】
本実施形態に係る浮き床構造の中間部材20は、建築物の躯体1の底面1a上にて水平方向に互いに間隔を空けて配置される複数の弾性体10を上方から覆うように広がる浮き床構造の中間部材20であって、中間部材20に対して上方の位置で打設されたコンクリートを支持することができるように構成される浮き床構造の中間部材20において、前記複数の弾性体10によってそれぞれ支持されるに配置可能である複数の支持部21と、水平方向にて前記複数の支持部21間に配置可能であるバッグ部22とを備え、前記バッグ部22が、ガス入れによって前記躯体1の底面1aに当接できるように膨張した膨張状態と、ガス抜きによって前記躯体1の底面1aから離れることができるように収縮した収縮状態とに変化可能に構成されている。
【0068】
このような浮き床構造及びその施工方法、並びに浮き床構造の中間部材20によれば、躯体1及び床スラブ30間に水の流通空間Pを容易に形成することができる。そのため、躯体1及び床スラブ30間に水の流通空間Pを確保するための施工作業を効率化できる。さらに、水の流通空間Pは、躯体1及び床スラブ30間の空気層としての機能を有する。そのため、最低共振周波数を約7Hz~約10Hzに設定することができ、その結果、十分な防振効果を得ることができる。
【0069】
「第2実施形態」
第2実施形態に係る浮き床構造及びその施工方法について以下に説明する。本実施形態に係る浮き床構造は、床スラブのコンクリート部が1つのコンクリート層(第1コンクリート層)に加えて追加コンクリート層(第2コンクリート層)を有する点を除いて、第1実施形態に係る浮き床構造と同様である。そのため、本実施形態に係る浮き床構造及びその構成要素は、第1実施形態に係る浮き床構造及びその構成要素と同様の名称及び符号を用いる。
【0070】
「浮き床構造の概略」
図6を参照すると、本実施形態に係る浮き床構造は概略的には次のように構成される。本実施形態に係る浮き床構造において、床スラブ30のコンクリート部31は、1つのコンクリート層(第1コンクリート層)32に加えて、1つの追加コンクリート層33を有する。
【0071】
すなわち、コンクリート部31は、2つのコンクリート層32,33を有する。以下においては、必要に応じて、追加コンクリート層33を第2コンクリート層33という。しかしながら、コンクリート部は、3つ以上のコンクリート層を有することもできる。すなわち、コンクリート部は、複数のコンクリート層を有することができる。
【0072】
このようなコンクリート部31において、第1コンクリート層32はコンクリート部31の下端に位置する。第2コンクリート層33は、第1コンクリート層32の上方に重なる。第2コンクリート層33は、第1コンクリート層32のコンクリートとは別に打設されたコンクリートから成る。
【0073】
「床スラブの詳細」
図6を参照すると、床スラブ30は詳細には次のように構成することができる。コンクリート部31の頂面31aはその第2コンクリート層33の頂面33aに相当する。言い換えれば、コンクリート部31の頂面31aは、その最上コンクリート層33の頂面33aに相当する。
【0074】
第2コンクリート層33の頂面33aは、第1コンクリート層32の頂面32aよりも平坦になっている。言い換えれば、最上コンクリート層33の頂面33aは、それ以外のコンクリート層32の頂面32aよりも平坦になっている。コンクリート部31の底面31bは、その第1コンクリート層32の底面32bに相当する。第1コンクリート層32の厚さは、第2コンクリート層33の厚さよりも小さくなっている。
【0075】
しかしながら、コンクリート部の全てのコンクリート層を実質的に同じように平坦にすることもできる。第1コンクリート層の厚さを第2コンクリート層の厚さと実質的に等しくすることもできる。第1コンクリート層の厚さを第2コンクリート層の厚さよりも大きくすることもできる。
【0076】
「浮き床構造の施工方法」
図6及び
図7を参照すると、本実施形態に係る浮き床構造の施工方法は、概略的には次のようになっている。本実施形態に係る施工方法は、第1実施形態に係る施工方法と同様の弾性体設置工程S1、中間部材設置工程S2、中間部材膨張工程S3、コンクリート部形成工程S4、及び中間部材収縮工程S5を含む。
【0077】
本実施形態に係る浮き床構造の施工方法は、次のような追加コンクリート部形成工程S40をさらに含む。すなわち、追加コンクリート部形成工程S40において、コンクリート部形成工程S4の後かつ中間部材収縮工程S5の前に、コンクリート部31の1つのコンクリート層33を追加で形成するために、コンクリート部形成工程S4にて打設されたコンクリートの上方から追加のコンクリートを打設する。しかしながら、追加コンクリート部形成工程は、中間部材収縮工程の後に実施することもできる。
【0078】
このような追加コンクリート部形成工程S40においては、第1コンクリート層32上にコンクリートを打設し、これによって、コンクリート部31内で第1コンクリート層32の上方に重なる第2コンクリート層33を形成する(追加コンクリート打設工程S40a)。さらに、第2コンクリート層33を固めるために乾燥させる(追加コンクリート乾燥工程S40b)。
【0079】
以上、本実施形態に係る浮き床構造及びその施工方法、並びに浮き床構造の中間部材20は、第1実施形態に係る浮き床構造及びその中間部材20と同様の効果を得ることができる。これに加えて、本実施形態に係る浮き床構造によれば、次のような効果を得ることができる。
【0080】
本実施形態に係る浮き床構造においては、前記1つのコンクリート層32が、前記コンクリート部の下端に位置し、前記コンクリート部31が、前記1つのコンクリート層32の上方に重なる1つの追加コンクリート層33をさらに有し、前記1つの追加コンクリート層33が、前記1つのコンクリート層32のコンクリートとは別に打設されたコンクリートから成る。
【0081】
本実施形態に係る浮き床構造の施工方法は、前記コンクリート部形成工程S4の後かつ前記中間部材収縮工程S5の前、又は前記中間部材収縮工程S5の後に、前記コンクリート部31の1つの追加コンクリート層33を形成するために、前記コンクリート部形成工程S4にて打設されたコンクリートの上方から追加のコンクリートを打設する追加コンクリート部形成工程S40をさらに含む。
【0082】
このような浮き床構造の施工方法においては、例えば、固まった第1コンクリート層32上に第2コンクリート層33を形成する作業は容易であり、かつこの作業において第2コンクリート層33の頂面33aもまた平坦化し易い。特に、第2コンクリート層33の頂面33aを床スラブ30の頂面30aとする場合に、車両(図示せず)を安定して駐車可能とし、かつ機械式立体駐車場(図示せず)を安定して設置可能とするために通常必要とされる平坦度等の性能を確保することができる。よって、浮き床構造の通常必要とされる性能を確保しつつ、躯体1及び床スラブ30間に水の流通空間Pを確保するための施工作業を効率化することができる。
【0083】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…躯体、1a…底面
10…弾性体、20…中間部材、21…支持部、22…バッグ部、30…床スラブ、31…コンクリート部、32…コンクリート層、第1コンクリート層、33…追加コンクリート層、第2コンクリート層
P…空間、流通空間
S1…弾性体設置工程、S2…中間部材設置工程、S3…中間部材膨張工程、S4…コンクリート部形成工程、S5…中間部材収縮工程、S40…追加コンクリート部形成工程