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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】軸流タービン
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/18 20060101AFI20250210BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
F02C7/18 E
F01D25/12 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021145271
(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公開番号】P2023038505
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀和
(72)【発明者】
【氏名】野村 大輔
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-142343(JP,A)
【文献】特開2002-070506(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068616(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0104564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/18
F01D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体によって冷却されるタービン部品を備える軸流タービンであって、
第1の冷却媒体と前記第1の冷却媒体よりも温度が高い第2の冷却媒体とを混合することによって、前記タービン部品の高温部と低温部との温度差が熱応力許容温度を満たすように調整された第3の冷却媒体を前記タービン部品の冷却媒体として前記軸流タービンに導入する冷却媒体導入機構を備え、
前記熱応力許容温度は、前記軸流タービンに導入される前記第3の冷却媒体の想定圧力(Pt1)と前記タービン部品を冷却するために前記第3の冷却媒体が導入される空間の想定圧力(Pt2)との差圧(Pt1-Pt2)を所定の圧力範囲で区分した各区分範囲に応じて設定され、
前記軸流タービンに導入される前記第3の冷却媒体の検知圧力(Pm1)と前記タービン部品を冷却するために前記第3の冷却媒体が導入される空間の検知圧力(Pm2)との差圧(Pm1-Pm2)に基づいて前記熱応力許容温度が選択されることを特徴とする軸流タービン。
【請求項2】
前記冷却媒体導入機構は、前記温度差が前記熱応力許容温度を満たすように前記第3の冷却媒体の温度を調整する冷却媒体温度調整機構を備え、
前記冷却媒体温度調整機構は、
前記第1の冷却媒体を導入する低温側配管と、
前記第2の冷却媒体を導入する高温側配管と、
前記低温側配管と前記高温側配管とに接続され、前記第1の冷却媒体と前記第2の冷却媒体とが混合した前記第3の冷却媒体を前記タービン部品の冷却媒体として導入する調整配管と
を具備することを特徴とする請求項1記載の軸流タービン。
【請求項3】
前記低温側配管に設けられ、前記調整配管に導入する前記第1の冷却媒体の流量を調整する低温側流量調整弁と、
前記高温側配管に設けられ、前記調整配管に導入する前記第2の冷却媒体の流量を調整する高温側流量調整弁と、
前記温度差が前記熱応力許容温度を満たすように、前記低温側流量調整弁および前記高温側流量調整弁を制御して前記第3の冷却媒体の温度を調整する制御装置と
を具備することを特徴とする請求項2記載の軸流タービン。
【請求項4】
前記タービン部品における、前記第3の冷却媒体によって冷却される低温部に係る温度を検知する第1の温度検知部と、
前記タービン部品の高温部に係る温度を検知する第2の温度検知部と
を備え、
前記制御装置は、
前記第2の温度検知部によって検知された温度と前記第1の温度検知部によって検知された温度と差である前記温度差と、前記熱応力許容温度とを比較して、前記低温側流量調整弁および前記高温側流量調整弁を制御することを特徴とする請求項3記載の軸流タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、軸流タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
高温の作動流体により軸流タービンを回転させて発電するシステムは、ガスタービン発電設備、超臨界COガスタービン発電設備、蒸気タービン発電設備などに備えられている。
【0003】
このような発電設備において、熱効率を向上させるために、タービン入口温度の高温化が図られている。これによって、作動流体の温度は、軸流タービンを構成するタービン部材の耐熱温度以上となることがある。
【0004】
そのため、このような軸流タービンは、タービン部品を冷却媒体によって冷却する冷却システムを備えている。例えば、冷却システムにおける冷却構造の一例として、冷却媒体を静翼の内部に導入する構造などが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6505860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の冷却システムを備える軸流タービンの静翼において、高温の作動流体に曝される外部表面と冷却媒体に曝される内部表面とが存在する。そして、外部表面と内部表面における温度差によって熱応力が生じる。この熱応力は、外部表面と内部表面との温度差が大きいほど大きくなる。
【0007】
このような熱応力は、静翼に限らず、上記した温度差が生じるタービン部品に生じる。この熱応力は、タービン部品の強度に影響するため、小さいほど好ましい。
【0008】
しかしながら、従来の冷却システムを備える軸流タービンでは、タービン部品の高温部の温度、およびこのタービン部品における、冷却媒体によって冷却される低温部の温度 に基づいて熱応力を十分に考慮することなく、タービン部品を冷却媒体によって冷却している。そのため、タービン部品が熱応力によって損傷することがある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、熱応力を考慮して、タービン部品を冷却する冷却媒体の温度を調整することができる軸流タービンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の軸流タービンは、冷却媒体によって冷却されるタービン部品を備える。この軸流タービンは、第1の冷却媒体と前記第1の冷却媒体よりも温度が高い第2の冷却媒体とを混合することによって、前記タービン部品の高温部と低温部との温度差が熱応力許容温度を満たすように調整された第3の冷却媒体を前記タービン部品の冷却媒体として前記軸流タービンに導入する冷却媒体導入機構を備える。そして、前記熱応力許容温度は、前記軸流タービンに導入される前記第3の冷却媒体の想定圧力(Pt1)と前記タービン部品を冷却するために前記第3の冷却媒体が導入される空間の想定圧力(Pt2)との差圧(Pt1-Pt2)を所定の圧力範囲で区分した各区分範囲に応じて設定され、前記軸流タービンに導入される前記第3の冷却媒体の検知圧力(Pm1)と前記タービン部品を冷却するために前記第3の冷却媒体が導入される空間の検知圧力(Pm2)との差圧(Pm1-Pm2)に基づいて前記熱応力許容温度が選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の軸流タービンを備えるガスタービン設備の系統図である。
図2】実施の形態の軸流タービンの子午断面を示した図である。
図3図2の破線で囲まれた断面部分の構成を拡大した図である。
図4】実施の形態の軸流タービンにおける冷却媒体温度調整機構の制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】実施の形態の軸流タービンにおける冷却媒体温度調整機構の作用を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、実施の形態の軸流タービン1を備えるガスタービン設備300の系統図である。ここでは、ガスタービン設備300として、軸流タービン1から排出された作動流体の一部を超臨界圧で燃焼器310に循環する構成を備える超臨界COタービン設備を例示して説明する。
【0014】
まず、ガスタービン設備300の構成の概要を説明する。
【0015】
図1に示すように、ガスタービン設備300は、燃焼器310と、軸流タービン1と、発電機320と、再生熱交換器330と、冷却器340と、圧縮機350とを備える。また、ガスタービン設備300は、軸流タービン1から排出された燃焼ガスの一部を系統に循環させるための循環配管360を備える。
【0016】
燃焼器310は、燃料と酸化剤を燃焼させる。この燃焼器310は、燃料を供給する燃料配管311と、酸化剤を供給する酸化剤配管313とを備える。燃料配管311は、燃料の流量を調整する流量調整弁312を備えている。酸化剤配管313は、酸化剤の流量を調整する流量調整弁314を備えている。
【0017】
ここで、燃料として、例えば、メタン、天然ガスなどの炭化水素が使用される。また、燃料として、例えば、一酸化炭素および水素などを含む石炭ガス化ガス燃料を使用することもできる。酸化剤として、酸素や、酸素に循環するCO(二酸化炭素)を混合した混合ガスなどが使用される。
【0018】
燃焼器310で生成した燃焼ガスおよび循環配管360によって燃焼器310に循環されたCOガスは、トランジションピース315を通り、作動流体として軸流タービン1に導入される。
【0019】
軸流タービン1は、作動流体によって回動される。この軸流タービン1には、発電機320が連結されている。軸流タービン1は、タービン部品を冷却するための冷却媒体を導入するための冷却媒体導入機構100を備える。冷却媒体導入機構100は、第1の冷却媒体導入機構100Aおよび第2の冷却媒体導入機構100Bを備える。第2の冷却媒体導入機構100Bは、冷却媒体温度調整機構200を備える。なお、冷却媒体導入機構100については後述する。
【0020】
再生熱交換器330は、軸流タービン1から排出された作動流体と、冷却器340で冷却され圧縮機350で加圧された循環するCOガスとの間の熱交換を行う。
【0021】
冷却器340は、再生熱交換器330での熱交換により温度が低下した作動流体を冷却する。作動流体中の水蒸気は、冷却器340を通過することで凝縮して水となる。この水は、例えば、排水管361を通り外部に排出される。
【0022】
ここで、燃焼器310に供給される燃料および酸化剤の流量は、例えば、量論混合比(当量比1)になるように調整されている。この場合、水蒸気が除去された作動流体の成分は、ほぼCOである。
【0023】
圧縮機350は、COガスを加圧して圧送する。COガスは、圧縮機350によって、臨界圧力以上の圧力に昇圧され、超臨界流体となる。
【0024】
圧縮機350と再生熱交換器330との間の循環配管360には、排出管362が接続されている。昇圧されたCOガスの一部は、排出管362から外部に排出される。なお、排出管362には、排出流量を調整する流量調整弁363が備えられている。
【0025】
昇圧された残りのCOガスは、再生熱交換器330に流入し、加熱される。そして、加熱されたCOガスは、燃焼器310に循環される。
【0026】
(軸流タービン1)
次に、軸流タービン1の構成について説明する。
【0027】
図2は、実施の形態の軸流タービン1の子午断面を示した図である。図3は、図2の破線で囲まれた断面部分Aの構成を拡大した図である。
【0028】
図2に示すように、軸流タービン1は、外部ケーシング10と、外部ケーシング10の内部に設けられた内部ケーシング11とを備える。内部ケーシング11は、例えば、高圧側の内部ケーシング11aと低圧側の内部ケーシング11bとで構成される
【0029】
また、低圧側の内部ケーシング11bは、最終段のタービン段落よりも下流側で、タービンロータ20に対向する内周側に配置されたパッキンヘッド12を含んでいる。
【0030】
ここでは、内部ケーシング11が、高圧側の内部ケーシング11aと低圧側の内部ケーシング11bとで構成される一例を示しているが、この構成に限られない。内部ケーシング11は、タービンロータ軸方向に亘って一つのケーシングで構成されてもよい。なお、以下において、タービンロータ軸方向を単に軸方向と称する。
【0031】
また、ここでは、ケーシングとして、外部ケーシング10と内部ケーシング11とを備える二重ケーシングを例示しているが、これに限られない。ケーシングは、一重であってもよい。
【0032】
タービンロータ20は、内部ケーシング11および外部ケーシング10を貫通して設けられている。なお、タービンロータ20の両端は、図示しない軸受によって回転可能に支持されている。
【0033】
図2および図3に示すように、内部ケーシング11の内周には、外側シュラウド30が周方向に亘って設けられている。この外側シュラウド30の内側(半径方向内側)には、内側シュラウド40が周方向に亘って設けられている。そして、外側シュラウド30と内側シュラウド40との間には、周方向に複数の静翼50が支持され、静翼翼列を構成している。この静翼翼列は、軸方向に複数段設けられている。
【0034】
ここで、半径方向内側とは、半径方向におけるタービンロータ20の中心軸Oに近づく側(中心軸O側)である。なお、半径方向は、中心軸Oを基点とする、中心軸Oに垂直な方向である。
【0035】
内側シュラウド40の内側には、内側シュラウド40に対向して周方向に亘って遮熱ピース45が設けられている。図3に示すように、遮熱ピース45は、遮熱板46と、支持部47とを備える。遮熱板46は、内側シュラウド40に対向して配置される板状部材で構成されている。遮熱板46とタービンロータ20との間には、空間49が形成される。
【0036】
また、遮熱板46には、内側シュラウド40側の空間と、空間49とを連通させる少なくとも一つの貫通孔48が形成されている。支持部47は、遮熱板46を支持している。支持部47の一端は、遮熱板46に接続され、他端は、タービンロータ20に植設されている。
【0037】
内側シュラウド40の内周面には、シールフィン42が備えられている。そして、内側シュラウド40と遮熱ピース45との間にシール部を構成している。内側シュラウド40には、このシール部に連通する貫通孔41が形成されている。この貫通孔41は、後述する静翼50内の冷却通路51にも連通している。
【0038】
ロータホイール21は、タービンロータ20の外周面から周方向に亘って半径方向外側に突出している。この環状の突出体で構成されるロータホイール21は、軸方向に複数段設けられている。ここで、半径方向外側とは、半径方向における中心軸Oから遠ざかる側である。
【0039】
各ロータホイール21の先端部には、周方向に複数の動翼60が植設され、動翼翼列を構成している。図3に示すように、例えば、下流側のタービン段落において、動翼60の植込部62とロータホイール21との間には、下流段のタービン段落に連通する連通孔22が形成される。
【0040】
動翼60の外周は、例えば、シュラウドセグメント61で包囲されている。シュラウドセグメント61は、外側シュラウド30や内部ケーシング11によって支持されている。
【0041】
なお、静翼翼列と動翼翼列は、軸方向に交互に設けられている。そして、静翼翼列と、この静翼翼列の直下流の動翼翼列とでタービン段落を構成している。複数のタービン段落によって作動流体が流れる作動流体流路65が形成される。
【0042】
図2に示すように、高圧側(図2の軸方向左側)において、タービンロータ20と外部ケーシング10との間にはグランドシール部25が備えられ、タービンロータ20と内部ケーシング11との間にはグランドシール部26が備えられている。低圧側(図2の軸方向右側)において、タービンロータ20とパッキンヘッド12との間にはグランドシール部27が備えられ、タービンロータ20とパッキンヘッド13との間にはグランドシール部28が備えられている。これらのグランドシール部25、26、27、28は、作動流体や冷却媒体の外部への漏洩を抑制する。
【0043】
最終段のタービン段落の下流には、作動流体を排出する排気室70が形成されている。排気室70の一部は、内部ケーシング11bとパッキンヘッド12によって形成されている。また、排気室70には、循環配管360が連結されている。
【0044】
パッキンヘッド12は、図3に示すように、上流側端面12aから軸方向の上流側に突出するシールフィン15を備える。
【0045】
最終段の動翼60は、植込部62の下流側端面62aから軸方向の下流側に突出するシールフィン63を備える。
【0046】
シールフィン63の先端部は、シールフィン15の先端部に接触しない程度に半径方向にずらして配置されている。換言すると、シールフィン63の先端部は、シールフィン15の先端部と接触しない程度の半径方向の隙間を有して重なり合うように配置されている。なお、ここでは、シールフィン63の先端部がシールフィン15の先端部の半径方向内側に位置する一例を示している。
【0047】
そして、シールフィン63の先端部とシールフィン15の先端部によってシール部29が構成される。このように、シール部29は、最終段の動翼60の植込部62とパッキンヘッド12との間に設けられる。
【0048】
ここで、シール部29、最終段の動翼60の植込部62、最終段のロータホイール21、グランドシール部27、パッキンヘッド12およびタービンロータ20で囲まれる環状空間は、ホイールスペース80として機能する。そして、シール部29は、最終段のタービン段落から排出された作動流体がホイールスペース80に流入することを抑制する。
【0049】
ここで、図2に示すように、軸流タービン1には、外部ケーシング10および内部ケーシング11を貫通してトランジションピース315が備えられている。トランジションピース315の下流端は、初段の静翼50を支持する内側シュラウド40および外側シュラウド30の上流端に当接している。そして、トランジションピース315は、燃焼器310から排出された作動流体を初段の静翼50に導く。
【0050】
トランジションピース315が外部ケーシング10および内部ケーシング11を貫通する貫通領域において、トランジションピース315の外周は、冷却媒体を導入する冷却媒体導入管110で覆われている。すなわち、貫通領域において、トランジションピース315と、その外周側に設けられた冷却媒体導入管110とからなる二重管構造を備える。冷却媒体導入管110の下流端は、トランジションピース315が貫通する内部ケーシング11の貫通口の内部まで延設されている。なお、冷却媒体導入管110の配管系統については、後述する。
【0051】
上記した軸流タービン1において、トランジションピース315から初段の静翼50に導かれた作動流体は、作動流体流路65を膨張仕事をしながら流動し、タービンロータ20を回動させる。このタービンロータ20の回動によって発電機320を駆動して発電ささせる。最終段のタービン段落を通過した作動流体は、排気室70から循環配管360に流入する。
【0052】
(冷却媒体導入機構100)
次に、冷却媒体導入機構100について説明する。
【0053】
冷却媒体導入機構100は、軸流タービン1を構成するタービン部品を冷却する冷却媒体を軸流タービン1に導入する。冷却媒体導入機構100は、第1の冷却媒体導入機構100Aおよび第2の冷却媒体導入機構100Bを備える。
【0054】
(第1の冷却媒体導入機構100A)
まず、第1の冷却媒体導入機構100Aについて説明する。
【0055】
第1の冷却媒体導入機構100Aは、図1に示すように、冷却媒体導入管110と、流量調整弁111とを備える。
【0056】
冷却媒体導入管110の一端は、例えば、再生熱交換器330と燃焼器310との間の循環配管360に接続されている。冷却媒体導入管110の他端は、軸流タービン1に接続されている。具体的には、図2を参照して前述したように、冷却媒体導入管110の他端は、トランジションピース315の外周を囲むように、外部ケーシング10および内部ケーシング11を貫通している。
【0057】
そして、図1に示すように、この貫通部において、冷却媒体導入管110とトランジションピース315との間に環状通路112が形成される。
【0058】
再生熱交換器330で加熱されたCOガスの一部は、冷却媒体導入管110を通り、トランジションピース315の周囲の環状通路112から内部ケーシング11a内の空間14に冷却媒体として導入される。なお、空間14に導入される冷却媒体の温度は、初段の静翼50に導入される作動流体の温度に比べて十分に低い。また、空間14に導入される冷却媒体の圧力は、初段の静翼50に導入される作動流体の圧力よりも高い。
【0059】
ここで、空間14に導入された冷却媒体は、トランジションピース315の冷却以外に、例えば、タービンロータ20やタービン段落を構成するタービン部品の冷却に使用される。
【0060】
(第2の冷却媒体導入機構100B)
次に、第2の冷却媒体導入機構100Bについて説明する。
【0061】
第2の冷却媒体導入機構100Bは、熱応力の監視対象のタービン部品の高温部と低温部との温度差が熱応力許容温度Tpを満たすように冷却媒体の温度を調整して、その冷却媒体を軸流タービン1に導入する。具体的には、第2の冷却媒体導入機構100Bは、温度が調整された冷却媒体をタービン部品に導くための冷却媒体導入流路150の入口に導入する。なお、以下において、熱応力の監視対象のタービン部品を単にタービン部品という。
【0062】
ここで、熱応力許容温度Tpとは、タービン部品に生じる熱応力において許容できる熱応力が生じるときのタービン部品の高温部と低温部との温度差を意味する。この熱応力許容温度Tpは、下限熱応力許容温度Tpl以上、上限熱応力許容温度Tpu以下の温度範囲を有する。
【0063】
下限熱応力許容温度Tplは、冷却効果が得られる温度を考慮して設定される。上限熱応力許容温度Tpuは、許容できる最大の熱応力を考慮して設定される。
【0064】
なお、ここでは、第2の冷却媒体導入機構100Bによって、低圧側の内部ケーシング11b内のタービン部品に冷却媒体を導入する構成を例示して説明するが、これに限られない。第2の冷却媒体導入機構100Bによって、高圧側の内部ケーシング11a内のタービン部品に冷却媒体を導入する構成であってもよい。
【0065】
ここで、第2の冷却媒体導入機構100Bから導入された冷却媒体によって冷却されるタービン部品として、例えば、静翼50、外側シュラウド30などが挙げられる。
【0066】
まず、軸流タービン1に形成される冷却媒体導入流路150について説明する。
【0067】
ここで、冷却媒体導入流路150として、静翼50を冷却する流路を例示する。図3に示すように、静翼50を冷却するための冷却媒体導入流路150は、内部ケーシング11bに形成された軸方向通路151および半径方向通路152と、外側シュラウド30の空間31と、静翼50内の冷却通路51とを備える。
【0068】
軸方向通路151は、軸方向に沿った孔で構成される。半径方向通路152は、軸方向通路151から半径方向内側に向かって形成された孔で構成される。半径方向通路152は、外側シュラウド30の空間31に連通している。
【0069】
この場合、冷却媒体導入流路150に導入された冷却媒体は、軸方向通路151、半径方向通路152、外側シュラウド30の空間31を通り、静翼50内の冷却通路51に流れる。なお、冷却媒体は、例えば、内側シュラウド40の貫通孔41を通り静翼50内から排出される。静翼50は、冷却通路51を流れる冷却媒体によって冷却される。
【0070】
また、外側シュラウド30を冷却するための冷却媒体導入流路150は、上記した静翼50を冷却するための冷却媒体導入流路150の一部で構成される。具体的には、外側シュラウド30を冷却するための冷却媒体導入流路150は、軸方向通路151と、半径方向通路152と、外側シュラウド30の空間31とを備える。なお、冷却媒体導入流路150に導入された冷却媒体の作用は、上記したとおりである。外側シュラウド30は、空間31に導入される冷却媒体によって冷却される。
【0071】
なお、静翼50内を通過した冷却媒体は、内側シュラウド40の貫通孔41、遮熱板46の貫通孔48を通り、空間49に導入される。空間49に導かれた冷却媒体は、連通孔22を通り、ホイールスペース80に流れる。
【0072】
次に、第2の冷却媒体導入機構100Bの構成について説明する。
【0073】
第2の冷却媒体導入機構100Bは、冷却媒体温度調整機構200を備える。
【0074】
図1に示すように、冷却媒体温度調整機構200は、低温側配管210と、低温側流量調整弁211と、高温側配管220と、高温側流量調節弁221と、調整配管230と、低温部温度検知部240と、高温部温度検知部250と、冷却媒体圧力検知部241と、タービン内部圧力検知部251と、制御装置260とを備える。
【0075】
低温側配管210は、高温側配管220が循環配管360に接続される位置よりも上流側(圧縮機350側)で循環配管360に接続される。さらに、低温側配管210に導入されるCOガスの温度は、高温側配管220に導入されるCOガスの温度よりも低い。ここで、低温側配管210に導入されるCOガスは、第1の冷却媒体として機能し、高温側配管220に導入されるCOガスは、第2の冷却媒体として機能する。
【0076】
具体的には、図1に示すように、低温側配管210の一端は、例えば、圧縮機350と再生熱交換器330との間の循環配管360に接続されている。高温側配管220の一端は、例えば、再生熱交換器330と燃焼器310との間の循環配管360に接続されている。この場合、高温側配管220の一端は、再生熱交換器330内で循環配管360に接続されてもよい。
【0077】
また、例えば、低温側配管210の一端が再生熱交換器330内で循環配管360に接続されている場合には、高温側配管220の一端は、低温側配管210の一端が循環配管360に接続される位置よりも下流側(燃焼器310側)で循環配管360に接続される。
【0078】
すなわち、高温側配管220は、低温側配管210に導入されるCOガスの温度よりも高い温度のCOガスを導入できるように循環配管360に接続されていればよい。
【0079】
低温側配管210および高温側配管220の他端は、連結部230aにおいて調整配管230の一端に接続されている。すなわち、連結部230aよりも軸流タービン1側では、COガスが流れる流路が調整配管230に一本化されている。
【0080】
調整配管230の他端は、軸流タービン1に接続されている。具体的には、図2および図3に示すように、調整配管230の他端は、冷却媒体導入流路150の入口(軸方向通路151の入口)に連結されている。
【0081】
COガスの流量を調整するため、低温側配管210には低温側流量調整弁211が備えられ、高温側配管220には高温側流量調節弁221が備えられている。
【0082】
ここで、調整配管230から軸流タービン1に導入されるCOガスは、静翼50、外側シュラウド30などのタービン部品を冷却するための冷却媒体として機能する。以下において、調整配管230から軸流タービン1に導入されるCOガスを冷却媒体と称する。この冷却媒体は、第3の冷却媒体として機能する。
【0083】
なお、調整配管230から軸流タービン1に導入される冷却媒体の温度は、冷却媒体が導入されるタービン段落を流れる作動流体の温度よりも低い。さらに、この冷却媒体の圧力は、冷却媒体が導入されるタービン段落を流れる作動流体の圧力よりも高い。
【0084】
低温部温度検知部240は、タービン部品における、冷却媒体によって冷却される低温部に係る温度を検知する。低温部温度検知部240は、例えば、図2および図3に示すように、調整配管230に備えられる。具体的には、図3に示すように、低温部温度検知部240は、調整配管230における冷却媒体導入流路150側の端部に備えられる。この場合、低温部温度検知部240は、調整配管230から軸流タービン1(冷却媒体導入流路150)に導入される冷却媒体の温度を検知する。
【0085】
ここで、タービン部品が静翼50の場合、低温部温度検知部240は静翼50と近い位置に備えられるため、低温部温度検知部240によって検知された冷却媒体導入流路150に導入される冷却媒体の温度は、冷却媒体が導入される静翼50の冷却通路51における内部表面の温度とほぼ等しいと想定することができる。なお、低温部温度検知部240は、冷却通路51の内部表面に備えられてもよい。
【0086】
また、タービン部品が外側シュラウド30の場合、低温部温度検知部240は外側シュラウド30と近い位置に備えられるため、低温部温度検知部240によって検知された冷却媒体導入流路150に導入される冷却媒体の温度は、冷却媒体が導入される外側シュラウド30の空間31における内部表面の温度とほぼ等しいと想定することができる。なお、低温部温度検知部240は、空間31の内部表面に備えられてもよい。
【0087】
ここで、低温部温度検知部240によって検知された温度は、熱応力を考慮する際に、静翼50や外側シュラウド30における低温部の温度として使用される。なお、熱応力は、高温部と低温部の温度差に基づいて考慮される。また、低温部温度検知部240は、第1の温度検知部として機能する。
【0088】
冷却媒体圧力検知部241は、調整配管230から軸流タービン1(冷却媒体導入流路150)に導入されるCOガスの圧力を検知する。冷却媒体圧力検知部241は、例えば、調整配管230に備えられる。具体的に、図3に示すように、例えば、冷却媒体圧力検知部241は、調整配管230における冷却媒体導入流路150側の端部に備えられる。
【0089】
なお、冷却媒体圧力検知部241の配置位置はこれに限られない。冷却媒体圧力検知部241は、冷却媒体として冷却媒体導入流路150に導入される冷却媒体の圧力を検知できる箇所に配置されればよい。
【0090】
高温部温度検知部250は、冷却媒体によって冷却されるタービン部品において、タービン部品の高温部に係る温度を検知する。
【0091】
タービン部品が静翼50の場合、図2および図3に示すように、高温部温度検知部250は、例えば、静翼50の半径方向外側の端部における後縁部の外部表面に設置される。なお、高温部温度検知部250は、静翼50の半径方向外側の端部における前縁部の外部表面に設置されてもよい。また、高温部温度検知部250は、上記した後縁部の外部表面または前縁部の外部表面の近傍に設置されてもよい。この場合、外部表面の温度は、外部表面の近傍を流れる作動流体の温度とほぼ等しいと想定できる。
【0092】
また、図示していないが、タービン部品が外側シュラウド30の場合、高温部温度検知部250は、例えば、外側シュラウド30の外部表面に設置される。なお、高温部温度検知部250は、外側シュラウド30の外部表面の近傍に設置されてもよい。この場合、外部表面の温度は、外部表面の近傍を流れる作動流体の温度とほぼ等しいと想定できる。
【0093】
ここで、高温部温度検知部250によって検知された温度は、熱応力を考慮する際に、静翼50や外側シュラウド30における高温部の温度として使用される。なお、高温部温度検知部250は、第2の温度検知部として機能する。
【0094】
タービン内部圧力検知部251は、タービン部品を冷却するために冷却媒体が導入される所定箇所の空間の圧力を検知する。
【0095】
タービン部品が静翼50の場合、タービン内部圧力検知部251は、静翼50内の冷却通路51に配置される。また、熱応力の監視対象のタービン部品が外側シュラウド30の場合、タービン内部圧力検知部251は、外側シュラウド30内の空間31に配置される。
【0096】
なお、上記したように、高温部温度検知部250およびタービン内部圧力検知部251は、それぞれ対応する位置に一対で設置される。
【0097】
一対の高温部温度検知部250およびタービン内部圧力検知部251は、上記したタービン部品に係る設置個所のいずれか1箇所に設置される。すなわち、第2の冷却媒体導入機構100B(冷却媒体温度調整機構200)では、静翼50や外側シュラウド30などのタービン部品のうちのいずれか一つのタービン部品における熱応力を考慮して、冷却媒体の温度を調整する。
【0098】
制御装置260は、タービン部品における高温部と低温部との温度差が熱応力許容温度Tpを満たすように、低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221を制御して軸流タービン1に導入される冷却媒体の温度を調整する。具体的には、制御装置260は、低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221を制御して冷却媒体の温度を調整することでタービン部品における低温部の温度を調整して、上記した温度差を熱応力許容温度Tpとする。
【0099】
図4は、実施の形態の軸流タービン1における冷却媒体温度調整機構200の制御装置260の構成を示すブロック図である。
【0100】
図4に示すように、制御装置260は、入力部261、記憶部262、演算部263、出力部264を備える。
【0101】
入力部261は、各種検知部から検知信号やその他の入力信号を入力する。具体的には、入力部261は、低温部温度検知部240、冷却媒体圧力検知部241、高温部温度検知部250、タービン内部圧力検知部251などからの検知信号を入力する。
【0102】
また、その他の入力信号として、例えば、熱応力の監視対象のタービン部品に係る入力信号、作用終了に係る入力信号などが挙げられる。なお、その他の入力信号は、これらに限られず、冷却媒体温度調整機構200を作用させるために必要なすべての信号を含む。
【0103】
記憶部262は、読み出し専用メモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などの記憶媒体で構成される。記憶部262は、熱応力許容温度記憶部262aと、弁開度記憶部262bとを備える。
【0104】
熱応力許容温度記憶部262aは、タービン部品に応じた熱応力許容温度テーブルを備える。熱応力許容温度記憶部262aは、例えば、静翼50、外側シュラウド30のそれぞれに応じた熱応力許容温度テーブルを備える。熱応力許容温度テーブルには、例えば、下限熱応力許容温度Tpl、上限熱応力許容温度Tpuなどが記憶されている。
【0105】
熱応力許容温度テーブルは、タービン部品が曝される温度条件において、タービン部品の高温部の温度Ta2と、そのタービン部品の低温部の温度Ta1との差(Ta2-Ta1)の許容範囲を記憶する。すなわち、この温度差の許容範囲は、熱応力許容温度Tpである。そして、温度差の許容範囲において、下限値が下限熱応力許容温度Tplであり、上限値が上限熱応力許容温度Tpuである。
【0106】
例えば、高温部は、作動流体に曝されるタービン部品の外部表面に位置し、低温部は、タービン部品の肉厚を介してその高温部に対向する位置の冷却媒体に曝される内部表面に位置する。
【0107】
この温度差の許容範囲は、例えば、熱応力解析結果に基づいて、熱応力が抑制され強度を維持できる範囲に設定される。熱応力解析において、タービン部品の構成材料、厚さなどが考慮される。なお、温度Ta1、Ta2は、実測値ではなく、熱応力解析上の温度を意味する。
【0108】
また、軸流タービン1の運転条件によって、タービン部品を冷却する冷却媒体の流量は変化する。この冷却媒体の流量は、調整配管230から軸流タービン1に導入される冷却媒体の圧力Pt1と、タービン部品を冷却するために冷却媒体が導入される所定箇所の空間の圧力Pt2との差(Pt1-Pt2)に基づいて概算できる。
【0109】
例えば、静翼50の場合、圧力Pt2は、冷却通路51内の想定圧力である。外側シュラウド30の場合、圧力Pt2は、空間31内の想定圧力である。なお、圧力Pt1、Pt2は、実測値ではなく、流体解析上の圧力を意味する。
【0110】
また、軸流タービン1の運転条件によって変化する圧力差(Pt1-Pt2)の範囲は、所定の圧力範囲で区分することができる。そのため、熱応力許容温度記憶部262aには、その区分された各圧力範囲に応じて熱応力許容温度Tpが設定された熱応力許容温度テーブルが備えられている。これによって、軸流タービン1の運転条件によって冷却媒体の流量が変化した場合でも、高温部と低温部の温度差を冷却媒体の流量に応じた最適な熱応力許容温度Tpに調整することができる。
【0111】
なお、冷却媒体温度調整機構200において、冷却媒体の流量は、次に流量が変化するまでは一定であるとして冷却媒体の温度制御を実行している。
【0112】
弁開度記憶部262bは、高温部温度検知部250で検知された温度Tm2と低温部温度検知部240で検知された温度Tm1との差(Tm2-Tm1)を熱応力許容温度Tp内に調整するための弁開度調整テーブルを備える。具体的には、弁開度記憶部262bは、温度差(Tm2-Tm1)が熱応力許容温度Tpとなるように温度Tm1を調整するための低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221の弁開度調整テーブルを備える。
【0113】
演算部263は、例えば、記憶部262に格納されたプログラムやデータ(テーブル)などを用いて各種の演算処理を実行する。演算部263は、差圧算出部263aと、温度判定部263bと、弁開度設定部263cとを備える。
【0114】
差圧算出部263aは、冷却媒体圧力検知部241、タービン内部圧力検知部251からの検知信号に基づいて、冷却媒体圧力検知部241で検知された圧力Pm1とタービン内部圧力検知部251で検知された圧力Pm2との差(Pm1-Pm2)を算出する。
【0115】
温度判定部263bは、低温部温度検知部240、高温部温度検知部250からの検知信号、差圧算出部263aで算出された差圧および熱応力許容温度記憶部262aのデータに基づいて、高温部温度検知部250で検知された温度Tm2と低温部温度検知部240で検知された温度Tm1との差(Tm2-Tm1)が上限熱応力許容温度Tpuを超えているか、または下限熱応力許容温度Tplを下回っているかを判定する。
【0116】
ここで、温度判定部263bは、差圧算出部263aで算出された差圧に基づいて、圧力差の大きさごとに区分された熱応力許容温度テーブルを選択して上記判定を実行する。
【0117】
なお、温度判定部263bは、熱応力許容温度テーブルを選択する際、例えば、熱応力の監視対象のタービン部品に係る入力信号などに基づいて、そのタービン部品に係る熱応力許容温度テーブルを選択する。
【0118】
弁開度設定部263cは、温度判定部263bの判定および弁開度記憶部262bのデータに基づいて、低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221の弁開度を制御するための制御信号を出力部264に出力する。具体的には、弁開度設定部263cは、温度Tm2と温度Tm1との温度差(Tm2-Tm1)が熱応力許容温度Tpとなるように温度Tm1を調整するための弁開度制御信号を出力部264に出力する。
【0119】
出力部264は、弁開度設定部263cから出力された制御信号を低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221に出力する。
【0120】
ここで、上記した制御装置260が実行する処理は、例えば、コンピュータ装置などで実現される。
【0121】
次に、第2の冷却媒体導入機構100Bによって導入される冷却媒体の作用について説明する。
【0122】
図1に示すように、圧縮機350で昇圧されたCOガスは、第1の冷却媒体(低温冷却媒体)として循環配管360から低温側配管210に導入される。また、圧縮機350で昇圧された後に再生熱交換器330で加熱されたCOガスは、第1の冷却媒体よりも温度が高い第2の冷却媒体(高温冷却媒体)として循環配管360から高温側配管220に導入される。
【0123】
調整配管230に流れ込んだ低温冷却媒体および高温冷却媒体は、混合してタービン部品を冷却する冷却媒体(第3の冷却媒体)となる。そして、混合後の冷却用の冷却媒体は、調整配管230から冷却媒体導入流路150に導入される。なお、冷却媒体導入流路150に導入された冷却媒体の作用は、前述したとおりである。
【0124】
次に、冷却媒体温度調整機構200の作用につて説明する。
【0125】
図5は、実施の形態の軸流タービン1における冷却媒体温度調整機構200の作用を説明するフローチャートである。
【0126】
ここでは、熱応力の監視対象のタービン部品に係る入力信号として、静翼50、外側シュラウド30のいずれかに係る入力信号が入力部261に入力されたものとする。また、冷却媒体温度調整機構200は、入力されたタービン部品に対応する高温部温度検知部250およびタービン内部圧力検知部251からの入力信号に基づいて作用する。
【0127】
ここで、冷却媒体温度調整機構200が作用している際には、入力部261には、常時、低温部温度検知部240、冷却媒体圧力検知部241、高温部温度検知部250、タービン内部圧力検知部251から検知信号が入力される。
【0128】
図5に示すように、差圧算出部263aは、冷却媒体圧力検知部241、タービン内部圧力検知部251からの検知信号に基づいて、冷却媒体圧力検知部241で検知された圧力Pm1とタービン内部圧力検知部251で検知された圧力Pm2との圧力差(Pm1-Pm2)を算出する(ステップS10)。
【0129】
そして、差圧算出部263aは、算出した差圧に係る情報を温度判定部263bに出力する。
【0130】
温度判定部263bは、差圧算出部263aで算出された差圧および熱応力許容温度記憶部262aのデータに基づいて、参照すべき熱応力許容温度テーブルを選択する。さらに、温度判定部263bは、低温部温度検知部240、高温部温度検知部250からの検知信号および選択した熱応力許容温度テーブルに基づいて、高温部温度検知部250で検知された温度Tm2と低温部温度検知部240で検知された温度Tm1との温度差(Tm2-Tm1)が上限熱応力許容温度Tpuを超えているか否かを判定する(ステップS11)。
【0131】
ステップS11の判定において温度差が上限熱応力許容温度Tpuを超えていると判定した場合(ステップS11のYes)、温度判定部263bは、弁開度設定部263cに判定結果に係る情報を出力する。
【0132】
弁開度設定部263cは、温度判定部263bの判定結果および弁開度記憶部262bの弁開度調整テーブルに基づいて、低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221のそれぞれを調整するための制御信号を出力部264に出力する(ステップS12)。そして、出力部264は、弁開度設定部263cからの制御信号を低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221に出力して弁開度を調整する(ステップS12)。
【0133】
なお、ステップS12において、弁開度設定部263cは、温度差(Tm2-Tm1)が熱応力許容温度Tpとなるように、低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221を制御して温度Tm1を上げるための制御信号を出力部264に出力する。
【0134】
ここで、ステップS10の処理を再度実行するまでは、冷却媒体の流量を一定として、ステップS11において選択された熱応力許容温度テーブルに基づいて判定が実行される。そのため、具体的には、ステップS12では、冷却媒体の流量を一定に維持しつつ、冷却媒体の温度を上げるための制御を実行する。すなわち、ステップS12では、低温側流量調整弁211の開度を小さくし、高温側流量調節弁221の開度を大きくする。
【0135】
ステップS12で弁開度の調整後、温度判定部263bは、低温部温度検知部240、高温部温度検知部250からの検知信号および選択した熱応力許容温度テーブルに基づいて、温度差(Tm2-Tm1)が上限熱応力許容温度Tpuを超えているか否かを判定する(ステップS13)。
【0136】
ステップS13の判定において温度差が上限熱応力許容温度Tpuを超えていると判定した場合(ステップS13のYes)、温度判定部263bは、弁開度設定部263cに判定結果に係る情報を出力して、ステップS12の処理を繰り返す。
【0137】
ステップS13の判定において温度差が上限熱応力許容温度Tpuを超えていないと判定した場合(ステップS13のNo)、ステップS14の処理を実行する。
【0138】
ステップS11またはステップS13の判定において温度差が上限熱応力許容温度Tpuを超えていないと判定した場合(ステップS11のNoまたはステップS13のNo)、温度判定部263bは、温度差が下限熱応力許容温度Tplを下回っているか否かを判定する(ステップS14)。
【0139】
ステップS14の判定において温度差が下限熱応力許容温度Tplを下回っていないと判定した場合(ステップS14のNo)、例えば、温度判定部263bは、入力部261から作用の終了に係る情報が入力されたか否かを判定する(ステップS15)。
【0140】
ステップS15の判定において終了に係る情報が入力されていないと判定した場合(ステップS15のNo)、ステップS10の処理を実行する。
【0141】
ステップS15の判定において終了に係る情報が入力されたと判定した場合(ステップS15のYes)、温度判定部263bは、冷却媒体温度調整機構200の作用を終了する。
【0142】
ステップS14の判定において温度差が下限熱応力許容温度Tplを下回っていると判定した場合(ステップS14のYes)、温度判定部263bは、弁開度設定部263cに判定結果に係る情報を出力する。
【0143】
弁開度設定部263cは、温度判定部263bの判定結果および弁開度記憶部262bの弁開度調整テーブルに基づいて、低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221のそれぞれを調整するための制御信号を出力部264に出力する(ステップS16)。そして、出力部264は、弁開度設定部263cからの制御信号を低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221に出力して弁開度を調整する(ステップS16)。
【0144】
なお、ステップS16において、弁開度設定部263cは、温度差(Tm2-Tm1)が熱応力許容温度Tpとなるように、低温側流量調整弁211および高温側流量調節弁221を制御して温度Tm1を下げるための制御信号を出力部264に出力する。
【0145】
具体的には、ステップS16では、冷却媒体の流量を一定に維持しつつ、冷却媒体の温度を下げるための制御を実行する。すなわち、ステップS16では、低温側流量調整弁211の開度を大きくし、高温側流量調節弁221の開度を小さくする。
【0146】
ステップS16で弁開度の調整後、温度判定部263bは、低温部温度検知部240、高温部温度検知部250からの検知信号および選択した熱応力許容温度テーブルに基づいて、温度差(Tm2-Tm1)が下限熱応力許容温度Tplを下回っているか否かを判定する(ステップS17)。
【0147】
ステップS17の判定において温度差が下限熱応力許容温度Tplを下回っていると判定した場合(ステップS17のYes)、温度判定部263bは、弁開度設定部263cに判定結果に係る情報を出力して、ステップS16の処理を繰り返す。
【0148】
ステップS17の判定において温度差が下限熱応力許容温度Tplを下回っていないと判定した場合(ステップS17のNo)、温度判定部263bは、温度差が上限熱応力許容温度Tpuを超えているか否かを判定する(ステップS18)。
【0149】
ステップS18の判定において温度差が上限熱応力許容温度Tpuを超えていないと判定した場合(ステップS18のNo)、例えば、温度判定部263bは、ステップS15の処理を実行する。
【0150】
ステップS18の判定において温度差が上限熱応力許容温度Tpuを超えていると判定した場合(ステップS18のYes)、ステップS12の処理を実行する。
【0151】
なお、上記した冷却媒体温度調整機構200の作用において、ステップS15の判定に関わらず、入力部261に停止に係る信号が入力された場合には、例えば、温度判定部263bは、冷却媒体温度調整機構200の作用を終了する。
【0152】
ここで、上記した冷却媒体温度調整機構200の作用によって、例えば、タービン部品における高温部と低温部の温度差(Tm2-Tm1)が熱応力許容温度Tpとなる。これによって、このタービン部品に発生する熱応力は、許容熱応力の範囲となる。そのため、タービン部品の損傷は、防止される。
【0153】
上記したように、実施の形態の軸流タービン1によれば、第2の冷却媒体導入機構100B(冷却媒体温度調整機構200)を備えることで、タービン部品を冷却する冷却媒体の温度を調整することができる。
【0154】
これによって、タービン部品における低温部の温度が調整され、高温部と低温部の温度差(Tm2-Tm1)を熱応力許容温度Tpとすることができる。そのため、タービン部品に生じる熱応力は、許容熱応力の範囲内に抑制される。
【0155】
すなわち、実施の形態の軸流タービン1によれば、冷却媒体温度調整機構200を備えることで、タービン部品の熱応力を考慮して冷却媒体の温度を調整することで、タービン部品における低温部の温度を調整することができる。これによって、温度差(Tm2-Tm1)を熱応力許容温度Tpとすることができ、タービン部品が熱応力によって損傷することを防止できる。
【0156】
上記した実施の形態では、ガスタービン設備300として、超臨界COタービン設備を例示して説明したが、これに限られない。本実施の形態における第2の冷却媒体導入機構100B(冷却媒体温度調整機構200)の構成は、例えば、ガスタービン発電設備、蒸気タービン発電設備などに適用することができる。
【0157】
ここで、ガスタービン発電設備や蒸気タービン発電設備において、超臨界COタービン設備における循環配管360に相当する配管を備えない場合においても、次の構成を採用することができる。
【0158】
低温側配管210に導入される第1の冷却媒体(低温冷却媒体)、高温側配管220に導入される第2の冷却媒体(高温冷却媒体)として、例えば、タービンからの作動流体の抽気や配管系統からの抽気を利用することができる。この場合においても、高温側配管220に導入される第2の冷却媒体の温度は、低温側配管210に導入される第1の冷却媒体の温度よりも高い。
【0159】
以上説明した実施形態によれば、熱応力を考慮して、タービン部品を冷却する冷却媒体の温度を調整することが可能となる。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
1…軸流タービン、10…外部ケーシング、11、11a、11b…内部ケーシング、12…パッキンヘッド、12a…上流側端面、13…パッキンヘッド、14、31、49…空間、15、42、63…シールフィン、20…タービンロータ、21…ロータホイール、22…連通孔、25、26、27、28…グランドシール部、29…シール部、30…外側シュラウド、40…内側シュラウド、41、48…貫通孔、45…遮熱ピース、46…遮熱板、47…支持部、50…静翼、51…冷却通路、60…動翼、61…シュラウドセグメント、62…植込部、62a…下流側端面、65…作動流体流路、70…排気室、71…排気管、80…ホイールスペース、100…冷却媒体導入機構、100A…第1の冷却媒体導入機構、100B…第2の冷却媒体導入機構、110…冷却媒体導入管、111、314、363…流量調整弁、150…冷却媒体導入流路、151…軸方向通路、152…半径方向通路、200…冷却媒体温度調整機構、210…低温側配管、211…低温側流量調整弁、220…高温側配管、221…高温側流量調節弁、230…調整配管、230a…連結部、240…低温部温度検知部、241…冷却媒体圧力検知部、250…高温部温度検知部、251…タービン内部圧力検知部、260…制御装置、261…入力部、262…記憶部、262a…熱応力許容温度記憶部、262b…弁開度記憶部、263…演算部、263a…差圧算出部、263b…温度判定部、263c…弁開度設定部、264…出力部、300…ガスタービン設備、310…燃焼器、311…燃料配管、312…流量調整弁、313…酸化剤配管、315…トランジションピース、320…発電機、330…再生熱交換器、340…冷却器、350…圧縮機、360…循環配管、361…排水管、362…排出管。
図1
図2
図3
図4
図5