(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】電池ユニット
(51)【国際特許分類】
G01K 7/24 20060101AFI20250210BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20250210BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20250210BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
G01K7/24 Z
G01K1/14 L
H02J7/04 L
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2021171370
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2024-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小塚 悠介
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-224071(JP,A)
【文献】特開2018-085235(JP,A)
【文献】国際公開第2021/098586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14,7/22-7/25
H01M 10/42-10/48
H02J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に複数の電池セルが積層される電池スタックと、
前記電池スタックの積層方向の両端部に設けられるエンドプレートと、
前記電池スタック中において前記エンドプレート側に位置する第1の電池セルに接するように設けられ、温度の上昇とともに抵抗値が上昇する正の抵抗特性を有する正温度特性サーミスタと、
前記電池スタック中において前記第1の電池セルより中央側に配される第2の電池セルに接するように設けられ、温度の上昇とともに抵抗値が低下する負の抵抗特性を有する負温度特性サーミスタと、
を有する電池ユニット。
【請求項2】
前記負温度特性サーミスタは、一端が接地配線に接続され、他端に第1の抵抗を介して電源電圧が与えられ、前記負温度特性サーミスタと前記第1の抵抗との接続点から第1の検出電圧を出力し、
前記正温度特性サーミスタは、一端が前記接地配線に接続され、他端に第2の抵抗を介して前記電源電圧が与えられ、前記正温度特性サーミスタと前記第
2の抵抗との接続点から第2の検出電圧を出力し、
前記第1の検出電圧及び前記第2の検出電圧に基づき前記負温度特性サーミスタが設置される前記電池セルの温度と、前記正温度特性サーミスタが設置される前記電池セルの温度と、を算出する温度検出回路をさらに有する請求項1に記載の電池ユニット。
【請求項3】
前記正温度特性サーミスタは、前記電池スタックの両端側に離れる2点に配置され、前記負温度特性サーミスタは、前記電池スタックに対して1つ配置される請求項1又は2に記載の電池ユニット。
【請求項4】
前記電池スタックは、異なる前記エンドプレートの対に挟まれ、それぞれが前記積層方向に複数の前記電池セルが積層される複数の電池ブロックを含み、
前記電池ブロック毎に2つの前記正温度特性サーミスタと1つの前記負温度特性サーミスタとを有する請求項1又は2に記載の電池ユニット。
【請求項5】
前記電池スタックは、前記積層方向と直交する方向に複数の前記電池セルが並べられる電池モジュールが前記積層方向に並べられる構成を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の電池セルが積層方向に積層されるように構成される電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを組み合わせて1つの電池として利用する組電池では、一方向(例えば、積層方向)に並べた複数の電池セルに積層方向の両端から圧力を加えて拘束して電池スタックを構成する。このような電池スタックでは、電池の性能を一定の範囲に保つために電池セルの温度を計測する必要がある。そこで、組電池の電池温度計測技術の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電池制御装置は、複数の電池モジュールを直列接続して構成される組電池の温度を検出する複数の温度センサと、一端側が温度センサに接続され温度センサにドライブ電圧を印加するドライブ回路部と、ドライブ回路部の他端側に接続されノイズを除去するフィルタ回路部と、ドライブ回路部及びフィルタ回路部を介して温度センサに接続され温度センサから入力された温度信号に基づき組電池を制御するマイクロコンピュータと、を備えた電池制御装置において、さらに、入力側が複数の温度センサ側に切替可能に接続され出力側がドライブ回路部及びフィルタ回路部のうち少なくとも何れか一方を介してマイクロコンピュータに接続されたマルチプレクサを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池セルの温度計測では、計測結果に含まれるノイズが問題となり、特許文献1では、フィルタ回路部を備えることで当該ノイズに対応している。しかしながら、フィルタ回路部のような部品の追加は、部品点数の増加や、装置体積の増加が問題となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、回路規模を抑制しながら温度計測結果に含まれるノイズを低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる電池ユニットの一態様は、積層方向に複数の電池セルが積層される電池スタックと、前記電池スタックの積層方向の両端部に設けられるエンドプレートと、前記電池スタック中において前記エンドプレート側に位置する第1の電池セルに接するように設けられ、温度の上昇とともに抵抗値が上昇する正の抵抗特性を有する正温度特性サーミスタと、前記電池スタック中において前記第1の電池セルより中央側に配される第2の電池セルに接するように設けられ、温度の上昇とともに抵抗値が低下する負の抵抗特性を有する負温度特性サーミスタと、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電池ユニットによれば、回路規模を抑制しながら温度計測結果に含まれるノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる電池ユニットの概略図である。
【
図2】実施の形態1にかかる電池ユニットの温度分布を説明するグラフである。
【
図3】実施の形態1にかかる電池ユニットの低温域温度センサに対応する温度検出回路のブロック図である。
【
図4】実施の形態1にかかる電池ユニットの高温域温度センサに対応する温度検出回路のブロック図である。
【
図5】実施の形態2にかかる電池ユニットの概略図である。
【
図6】実施の形態3にかかる電池ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
実施の形態1
図1に実施の形態1にかかる電池ユニット1の概略図を示す。
図1に示すように、実施の形態1にかかる電池ユニット1は、複数の電池セルが一方向(例えば、積層方向)に積層される電池スタックを有する。また、電池ユニット1では、電池スタックの積層方向の両端にエンドプレートを設け、このエンドプレートを介して積層された電池セルに積層方向の圧縮力をかけた状態で複数の電池セルを拘束する。
【0012】
また、
図1に示す電池ユニット1では、積層方向と直交する方向に複数の電池セルが並べられる電池モジュールを構成し、積層方向にこの電池モジュールを複数個積層して電池スタックを構成する。
図1では1つの電池モジュールに6個の電池セルが含まれる。以下の説明では、各電池モジュールに含まれる電池セルのうち積層方向に向かう方向に同一の位置に配置される電池セルの列を第1セル列から第6セル列と称す。
【0013】
ここで、
図1に示した電池ユニット1の温度分布について説明する。そこで、
図2に実施の形態1にかかる電池ユニットの温度分布を説明するグラフを示す。
図2に示すように、電池ユニット1では、エンドプレートに近いほど電池温度が
低く、電池スタックの積層方向の中央部で電池温度が高くなっていることがわかる。これはいずれのセル列においても同じ傾向である。複数の電池セルが積層された構造を有する場合、積層方向の中央部付近の電池セルほど、隣接する電池セル或いは隣接する領域からの放熱が少なくなるため、熱のこもりが発生して高温になる傾向がある。
【0014】
そこで、
図1に示すように、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、低温域の測定精度を優先した低温域温度センサ設置セルを電池の発熱量が少ない第1のセルに設置し、高温域の測定精度を優先した高温域温度センサ設置セルを電池の発熱量が少ない第2のセルに設置する。
【0015】
第1の電池セルは、電池スタック中においてエンドプレート側に位置する電池セルである。第2の電池セルは、電池スタック中において第1の電池セルより中央側に配される電池セルである。
図1に示す例では、エンドプレートに接する電池セルを低温域温度センサ設置セルとなる第1のセルに設定し、積層方向の中央付近の電池セルを高温域温度センサ設置セルとなる第2のセルに設定した。なお、第1の
セルは、必ずしもエンドプレートに接している必要は無く、第2のセルよりエンドプレート側に配置されたものであればよい。また、第2の電池セルは、第1の電池セルよりエンドプレートから離れた位置であって、第1の電池セルより中央側に配置されていれば良い。
【0016】
そして、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、低温域温度センサとして、温度の上昇とともに抵抗値が上昇する正の抵抗特性を有する正温度特性サーミスタ(以下、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタと称す)を用いる。また、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、高温域温度センサとして、温度の上昇とともに抵抗値が低下する負の抵抗特性を有する負温度特性サーミスタ(以下、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタと称す)を用いる。また、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、PTCサーミスタに対応した温度検出回路とNTCサーミスタに対応した温度検出回路とを有する。
【0017】
そこで、
図3に実施の形態1にかかる電池ユニット1の低温域温度センサに対応する温度検出回路10のブロック図を示す。
図3に示すように、低温域温度センサに対応する温度検出回路10は、温度により抵抗値が変化するPTCサーミスタRtpを有する。PTCサーミスタRtpは、温度の上昇とともに抵抗値が大きくなる正の温度特性を有する。つまり、PTCサーミスタRtpは低温側では抵抗値が低くなる。
【0018】
PTCサーミスタRtpは、一端が接地配線に接続され、他端に第1の抵抗R11を介して電源電圧が与えられる。そして、温度検出回路10では、PTCサーミスタRtpと第1の抵抗R11との接続点から出力される第1の検出電圧VLを電圧検出回路11によりデジタル値に変換する。また、温度検出回路10では、電圧検出回路11が出力したデジタル値の第1の検出電圧VLの大きさに対応する温度を電圧温度変換回路12により算出する。電圧温度変換回路12により算出された温度情報は上位システムに伝達され、組電池の制御に利用される。
【0019】
続いて、
図4に実施の形態1にかかる電池ユニット1の高温域温度センサに対応する温度検出回路20のブロック図を示す。
図4に示すように、低温域温度センサに対応する温度検出回路20は、温度により抵抗値が変化するNTCサーミスタRtnを有する。NTCサーミスタRtnは、温度の上昇とともに抵抗値が小さくなる負の温度特性を有する。つまり、NTCサーミスタRtnは高温側では抵抗値が低くなる。
【0020】
NTCサーミスタRtnは、一端が接地配線に接続され、他端に第2の抵抗R21を介して電源電圧が与えられる。そして、温度検出回路20では、NTCサーミスタRtnと第2の抵抗R21との接続点から出力される第2の検出電圧VHを電圧検出回路21によりデジタル値に変換する。また、温度検出回路20では、電圧検出回路21が出力したデジタル値の第2の検出電圧VHの大きさに対応する温度を電圧温度変換回路22により算出する。電圧温度変換回路22により算出された温度情報は上位システムに伝達され、組電池の制御に利用される。なお、電圧検出回路21及び電圧温度変換回路22は、電圧検出回路11及び電圧温度変換回路12と1つの半導体装置に内蔵される回路を用いることも出来る。
【0021】
上記説明より、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、相対的に温度が低くなる電池スタックのエンドプレート側の電池セルの温度をPTCサーミスタを利用して検出し、相対的に温度が高くなる電池スタック中央部分に配置される電池セルの温度をNTCサーミスタを利用して検出する。
【0022】
つまり、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、特に低温側の温度検出精度が必要な温度検出回路10において、検出対象の低温域での低い抵抗値となるPTCサーミスタRtpを用いる。これにより、温度検出回路10では、温度検出精度が必要な温度域において第1の検出電圧VLを得るための第1の抵抗R11の抵抗値を下げることができる。一方、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、特に高温側の温度検出精度が必要な温度検出回路20において、検出対象の高温域での低い抵抗値となるNTCサーミスタRtnを用いる。これにより、温度検出回路20では、温度検出精度が必要な温度域において第2の検出電圧VHを得るための第2の抵抗R21の抵抗値を下げることができる。そして、このように第1の抵抗R11及び第2の抵抗R21の抵抗値をいずれも低くすることで、電池ユニット1では、サーミスタと抵抗の直列回路からなる検出部のインピーダンスを低く抑えることができるため、検出結果に重畳されるノイズを抑制することができる。つまり、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、追加の回路や処理を伴うことなく低ノイズな測定結果を得ることができる。
【0023】
ここで、第1の抵抗R11及び第2の抵抗R21についてさらに詳細に説明する。例えば、温度検出に用いるサーミスタとしてPTCサーミスタのみを利用した場合、高温側の検出電圧の線形性を確保するために温度検出回路20の第2の抵抗R21の抵抗値を大きくする必要がある。一方、温度検出に用いるサーミスタとしてNTCサーミスタのみを利用した場合、低温側の検出電圧の線形性を確保するために温度検出回路10の第1の抵抗R11の抵抗値を大きくする必要がある。このように、温度検出に用いるサーミスタとして1種類の温度特性のサーミスタのみを用いた場合、高温側の検出精度が要求される温度検出回路20と、低温側の検出精度が要求される温度検出回路10と、のいずれか一方のプルアップ抵抗(例えば、第1の抵抗R11又は第2の抵抗R21)の抵抗値を大きくしなければならならず、サーミスタを含む検出部のインピーダンスが大きくなり測定結果に重畳するノイズが大きくなる問題が発生する。しかしながら、実施の形態1にかかる電池ユニット1では、検出する温度域に応じてPTCサーミスタとNTCサーミスタを組み合わせる事でこのようなノイズを抑制することができる。
【0024】
なお、上記実施の形態では、PTCサーミスタを電池スタックの両端側に離れる2点に配置し、NTCサーミスタを電池スタックに対して1つ配置する例について説明したが、PTCサーミスタは、電池スタックの2つの端部のうちの一方のみに配置する構成とすることもできる。
【0025】
実施の形態2
実施の形態2では、電池ユニットに含まれる電池スタックの別の形態について説明する。そこで、
図5に実施の形態2にかかる電池ユニット2の概略図を示す。
【0026】
図5に示すように、実施の形態2にかかる電池ユニット2は、電池セルを複数組み合わせるモジュールは構成せず、1列の電池セルを複数個積層して電池スタックを構成する。この電池ユニット2においても電池スタックの両端にエンドプレートを設ける。そして、実施の形態2においても、電池スタック中においてエンドプレート側に位置する第1の電池セルに接するようにPTCサーミスタを設け、電池スタック中において第1の電池セルより中央側に配される第2の電池セルに接するようNTCサーミスタを設ける。また、
図5に示す例においても、
図1と同様にPTCサーミスタを電池スタックの両端側に離れる2点に配置し、NTCサーミスタを電池スタックの中央付近に対して1つ配置する。
【0027】
このように、電池スタックの形態が変わっても、電池スタックの積層方向の両端に配置される低温傾向の電池セルにPTCサーミスタを設け、電池スタックの中央付近に配置される高温傾向の電池セルにNTCサーミスタを設けることとで、実施の形態2にかかる電池ユニット2においても実施の形態1にかかる電池ユニット1と同様に測定結果に重畳するノイズの低減効果を回路や部品を追加することなく得ることができる。
【0028】
実施の形態3
実施の形態3では、電池ユニットに含まれる電池スタックの別の形態について説明する。そこで、
図6に実施の形態3にかかる電池ユニット3の概略図を示す。
【0029】
図6に示すように、実施の形態3にかかる電池ユニット3では、電池スタックが異なるエンドプレートの対に挟まれ、それぞれが積層方向に複数の電池セルが積層される複数の電池ブロック(
図6の電池ブロックB1、B2)を有する電池スタックにより構成される。そして、電池ブロックB1、B2のそれぞれにおいて、PTCサーミスタをスタック端部(エンドプレートに隣接した領域)の電池セルに配置し、スタックの中央付近の電池セルNTCサーミスタを配置する。
【0030】
このように、電池スタックが分割されていても、分割された各電池スタックの積層方向の両端に配置される低温傾向の電池セルにPTCサーミスタを設け、電池スタックの中央付近に配置される高温傾向の電池セルにNTCサーミスタを設けることとで、実施の形態3にかかる電池ユニット3においても実施の形態1にかかる電池ユニット1と同様に測定結果に重畳するノイズの低減効果を回路や部品を追加することなく得ることができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1~3 電池ユニット
10、20 温度検出回路
11、21 電圧検出回路
12、22 電圧温度変換回路
Rtp PTCサーミスタ
Rtn NTCサーミスタ
R11 第1の抵抗
R21 第2の抵抗