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特許7631234CD33陽性悪性腫瘍治療用CD33標的化キメラ抗原受容体修飾T細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】CD33陽性悪性腫瘍治療用CD33標的化キメラ抗原受容体修飾T細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20250210BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250210BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250210BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20250210BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250210BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250210BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021570724
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 US2020035579
(87)【国際公開番号】W WO2020243713
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】62/855,906
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598004424
【氏名又は名称】シティ・オブ・ホープ
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,トンユアン
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,デヴィッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ブッデ,リファ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】フォーマン,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】デル リアル,マリッサ エム.
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105384823(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
A61K 35/17
A61P 35/00
A61P 35/02
C12N 5/0783
C12N 5/10
C12N 15/63
C12N 15/86
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸分子であって、前記CARは、配列番号30又は配列番号31で表されるアミノ酸配列を含む、核酸分子。
【請求項2】
前記CARは、配列番号30で表されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記CARは、配列番号31で表されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
請求項1に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項5】
請求項1に記載の核酸分子を含む、ウイルスベクター。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸分子を含むベクターによって形質導入された、ヒトT細胞の集団。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、ヒトT細胞の集団。
【請求項8】
セントラルメモリーT細胞、ナイーブメモリーT細胞、panT細胞、NK細胞、又はCD25+細胞及びCD14+細胞が除かれている末梢血単核細胞(PBMC)を含む、請求項6又は7に記載の集団。
【請求項9】
CARをコードする核酸分子を含むヒトT細胞集団であって、前記CARは、配列号30又は31を含むアミノ酸配列を含む、ヒトT細胞の集団。
【請求項10】
患者の白血病又はがんを治療するための方法において用いるための、請求項1に記載の核酸分子を含むヒトT細胞の集団。
【請求項11】
自己又は同種異系である、請求項10に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項12】
局所又は全身に投与される、請求項10に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項13】
白血病はCD33を発現する細胞を含む、請求項10に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項14】
CD33を発現する細胞は、がん性T細胞又はT調節性細胞である、請求項13に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項15】
キメラ抗原受容体は、単回投与されるか又は反復投与される、請求項10に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項16】
患者は、自己又は同種異系のヒトT細胞の集団の投与前、又はそれと同時に、メチル化阻害剤が投与される、請求項10に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項17】
メチル化阻害剤は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項16に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項18】
メチル化阻害剤は、5-アザシチジン及びデシタビンから選択される、請求項16に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項19】
がんは、急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群;骨髄増殖性新生物;慢性骨髄性白血病(CML);及び芽球性形質細胞様樹状細胞新生物から選択される血液がんである、請求項10に記載のヒトT細胞の集団。
【請求項20】
がんに罹患した患者における骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を減少させるための方法において用いるための、請求項1に記載の核酸分子を含む免疫細胞の集団。
【請求項21】
がんは固形腫瘍である、請求項20に記載の集団。
【請求項22】
CD33 CAR T細胞を調製するインビトロ方法であって、以下の:
自己又は同種異系のヒトT細胞の集団を提供する工程;かつ
インビトロにてT細胞を請求項1に記載の核酸分子を含むベクターにより形質導入する工程;
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、白血病関連CD33特異的キメラ抗原受容体(CAR)組換えT細胞、その処方方法、及びCD33陽性細胞に対して選択的な抗がん剤としての使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急性骨髄性白血病(AML)は成人の最も一般的な急性白血病であり、死亡率が最も高い(非特許文献1~3)。CD33はAML症例のうち87~98%で骨髄芽球上に発現している(非特許文献4及び5)。CD33はまた、骨髄破壊抑制細胞(MDSC)、白血病幹細胞(LSC)、及び造血幹細胞(HSC)上で発現される(非特許文献6及び7)。原発性AMLの現在の治癒率は35%であり、年齢とともに低下するため、AML患者、特に再発性又は難治性(R/R)AML患者に対する新たな治療法が喫緊の課題である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Budde et al. (2017) Blood 130: 811
【文献】Doehner et al. (2015) N Engl J Med 373:1136-52
【文献】Schuster et al. (2017) N Engl J Med 377:2545-54
【文献】Ehninger et al. (2014) Blood Cancer 4:e218
【文献】Andrews RG et al. (1989) J Exp Med 169:1721-31
【文献】Elliot LA et al. (2017) Front Immunol 8:86
【文献】Walter RB et al. (2012) Blood 119:6198-208
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、CD33標的CAR T細胞(本明細書ではCD33 CAR T細胞ともいう)を用いて、様々ながん、例えば急性骨髄性白血病(AML)を治療する方法が記載される。
【0005】
本明細書では、キメラ抗原受容体(CAR)を含むポリペプチドをコードする核酸分子であって、前記CARは、配列番号30で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%が同一であるか、又は配列番号31で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%が同一である、アミノ酸配列を含む、核酸分子が記載される。また、キメラ抗原受容体(CAR)を含むポリペプチドをコードする核酸分子であって、前記CARは、単一のアミノ酸の5個(例えば、1、2、3、4又は5個)以下が修飾された、配列番号30又は配列番号31のアミノ酸配列を含む、核酸分子が記載される。ある実施形態では、アミノ酸の修飾は、以下の配列:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYNMHWVRQAPGQGLEWIGYIYPYNGGTGYNQKFKSKATITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGRPAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPDDFATYYCQQSKEVPWTFGQGTKVEIK(配列番号1)
又は以下の配列:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYNMHWVRQAPGQGLEWIGYIYPYNGGTGYNQKFKSKATITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGRPAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号32)
又は以下の配列:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATMSCKSSQSILYSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCHQYLSSYTFGQGTKLEIK(配列番号33)
内に完全に存在する。
【0006】
本明細書では、また、核酸分子を含む発現ベクター(例えば、ウイルスベクター又はレンチウイルスベクター)が記載される。前記ベクターにより形質導入された、又は上記核酸分子を含むヒトT細胞又はNK細胞の集団もまた記載される。様々な実施形態では、細胞は、セントラルメモリーT細胞、ナイーブメモリーT細胞、panT細胞、NK細胞、又はCD25+細胞及びCD14+細胞が実質的に除かれている末梢血単核細胞(PBMC)を含むか、又はこれらからなるか、又はこれらから本質的になる。
【0007】
本明細書ではまた、前記核酸分子を含むベクターにより形質導入された自己若しくは同種異系のヒトT細胞又はNK細胞の集団、又は本明細書に記載の核酸分子を含むT細胞若しくはNK細胞の投与を含む、患者の白血病を治療する方法であって、前記白血病はCD33を発現する細胞を含む、方法が記載される。様々な実施形態では、キメラ抗原受容体は、局所又は全身に投与され;CD33を発現する細胞は、がん性T細胞又はT調節性細胞であり;キメラ抗原受容体は、単回投与されるか又は反復投与され;患者は、自己又は同種異系のヒトT細胞の集団の投与前、又はそれと同時に、メチル化阻害剤が投与され;メチル化阻害剤は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤であり;メチル化阻害剤は、5-アザシチジン及びデシタビンから選択され;急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群;骨髄増殖性新生物;慢性骨髄性白血病(CML);及び芽球性形質細胞様樹状細胞新生物から選択される血液がんである。
【0008】
本明細書ではまた、本明細書に記載の核酸分子を含む免疫細胞を患者に投与することを含む、がんに罹患した患者における骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を減少させる方法が記載される。ある場合では、MDSCは系統陰性(LIN-)、HLA-DR陰性、及びCD33陽性である。ある場合では、本明細書に記載されるCD33 CAR発現細胞は、MDS芽球及びMDSCを標的とする。実施形態では、本明細書に記載されるCD33 CAR発現細胞は、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、又は卵巣がん、結腸がん、又は乳がん等の固形悪性腫瘍の治療に用いられる。
【0009】
本明細書ではまた、CD33 CAR T細胞を調製する方法であって、以下の:自己又は同種異系のヒトT細胞の集団を提供する工程;かつT細胞を請求項1に記載の核酸分子を含むベクターにより形質導入する工程;を含む、方法が記載される。
【0010】
本明細書では、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、キメラ抗原受容体が、CD33を 標的とするscFv、スペーサー、膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含む、核酸分子が記載される。
【0011】
様々な実施形態では、膜貫通ドメインは、1~5個のアミノ酸が修飾されたCD4膜貫通ドメイン又はその変異体、1~5個のアミノ酸が修飾されたCD8膜貫通ドメイン又はその変異体、1~5個のアミノ酸が修飾されたCD28膜貫通ドメイン又はその変異体から選択され;前記スペーサーは20~150個のアミノ酸を含み、かつ、scFvと膜貫通ドメインとの間に位置し;膜貫通ドメインは、1~5個のアミノ酸が修飾されたCD4膜貫通ドメイン又はその変異体;前記膜貫通ドメインは、CD4膜貫通ドメインであり;前記キメラ抗原受容体は、CD4膜貫通ドメイン又は1~2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、CD8膜貫通ドメイン又は1~2個のアミノ酸が修飾された変異体、CD28膜貫通ドメイン又は1~2個のアミノ酸が修飾されたその変異体、から選択される膜貫通ドメインを含み;前記スペーサー領域は、配列番号2~12からなる群から選択されるアミノ酸配列又は1~5個のアミノ酸が修飾されたその変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;前記スペーサーは、IgGヒンジ領域を含み;前記スペーサーは、10~50個のアミノ酸を含み;前記4-1BB共刺激ドメインは、配列番号24又は1~5個のアミノ酸が修飾されたその変異体のアミノ酸配列を含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含み;3~15個のアミノ酸のリンカーが4-1BB共刺激ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメイン又はその変異体の間に位置し;前記CARは、配列番号30又は31のアミノ酸配列、又は1~5個のアミノ酸が修飾された、例えば1~5個の単一アミノ酸が置換された、その変異体を含み;前記scFvは、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の核酸分子に関する。
【0012】
本明細書ではまた、本明細書に記載される核酸分子を含むウイルスベクター;本明細書に記載される核酸分子を含むベクターによって形質導入されたヒトT細胞の集団(例えば、セントラルメモリーT細胞を含む集団)が記載される。
【0013】
本明細書ではまた、本明細書に記載されている核酸分子を含むベクターによって形質導入された自己又は同種異系のヒトT細胞の集団の投与を含む、患者のCD33陽性がん(例えば、AML、R/R AML、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄腫、骨髄増殖性新生物、他のCD33+血液悪性腫瘍などを含む)の治療方法が記載され、がん(又は疾患又は症状)は、CD33を発現する細胞を含む。様々な実施形態では、キメラ抗原受容体は局所又は全身に投与され;CD33を発現する細胞はがん性T細胞であり;キメラ抗原受容体は、単回投与されるか又は反復投与される。
【0014】
様々な実施形態では、キメラ抗原受容体は、以下のアミノ酸配列:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYNMHWVRQAPGQGLEWIGYIYPYNGGTGYNQKFKSKATITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGRPAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPDDFATYYCQQSKEVPWTFGQGTKVEIK(配列番号1)
で表されるアミノ酸配列を含む、CD33 scFvを含むが、ここで、配列番号1のうち単一のアミノ酸が10個まで置換される。
【0015】
本明細書ではまた、CD33 CARを発現するベクターを含むT細胞が記載される。様々な実施形態では、形質導入されたヒトT細胞の少なくとも20%、30%、又は40%は、セントラルメモリーT細胞であり;形質導入されたヒトT細胞の少なくとも30%は、CD4+及びCD62L+又はCD8+及びCD62L+である。様々な実施形態では、ヒトT細胞の集団は、配列番号30若しくは31から選択されるアミノ酸配列を含むキメラ抗原受容体を発現するベクター、又は1~5個のアミノ酸が修飾された(例えば、1若しくは2個)その変異体(例えば、置換)を含むベクターを含み;ヒトT細胞の集団はセントラルメモリーT細胞(TCM細胞)を含むが、例えば、当該細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%はTCM細胞であり;又は、T細胞の集団は、セントラルメモリーT細胞、ナイーブT細胞及び幹記憶細胞の組み合わせ(TCM/SCM/N細胞)を含むが、例えば、当該細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%はTCM/SCM/N細胞である。ある実施形態では、T細胞の集団は、CD4+細胞及びCD8+細胞をともに含む(例えば、CD3+ T細胞の少なくとも20%がCD4+であり、CD3+ T細胞の少なくとも3%がCD8+であり、少なくとも70、80、又は90%がCD4+又はCD8+のいずれかである;細胞の少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%がCD4+であり、CD3+細胞の少なくとも4%、5%、8%、10%、20%がCD8+細胞である)。ある実施形態では、ヒトT細胞の集団は、患者に対して自己である。ある実施形態では、ヒトT細胞の集団は、患者に対して同種異系である。
【0016】
CD33標的化CAR
本明細書に記載されるCD33標的化CARは、CD33を標的化するscFvを含む。ある実施形態では、以下のアミノ酸配列:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYNMHWVRQAPGQGLEWIGYIYPYNGGTGYNQKFKSKATITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGRPAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGKAPKLLIYAASNQGSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPDDFATYYCQQSKEVPWTFGQGTKVEIK(配列番号1)を含む、又は以下のアミノ酸配列:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTDYNMHWVRQAPGQGLEWIGYIYPYNGGTGYNQKFKSKATITADESTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGRPAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号32)
及び可撓性リンカーによって結合された、以下のアミノ酸配列:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATMSCKSSQSILYSSNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCHQYLSSYTFGQGTKLEIK(配列番号33)
を、含むscFvである。
【0017】
有用なCD33 CARは、配列番号30又は31(シグナル配列欠損成熟CAR)のアミノ酸配列からなるか若しくはそれを含むことができるか、又は、当該CD33 CARは、GMCSFRaシグナル配列(配列番号34)(GMCSFRシグナル配列含有未成熟CAR;(MLLVTSLLCHHPAFLLIP;配列番号34))に先行する配列番号30又は配列番号31のアミノ酸配列からなるか又はそれを含むことができる。つまり、CARは、発現をモニターするのに有用なさらなる配列、例えば、T2Aスキップ配列及び切断型EGFRtで発現させることができる。CARは、発現をモニターするのに有用なさらなる配列、例えば、T2Aスキップ配列及び切断型CD19tを用いて発現させることができる。したがって、CARは、配列番号30又は31のアミノ酸配列を含むことができるか、又はそれからなることができ、又は配列番号30又は31で表されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%が同一であるアミノ酸配列を含むことができるか、又はそれからなることができる。CARは、1、2、3、4又は5個までのアミノ酸が修飾(好ましくは保存的アミノの修飾)された配列番号30又は31のいずれかのアミノ酸配列を含むことができるか、又はそのアミノ酸配列からなることができる。CARは、CD33を標的とするscFv、例えば、1、2、3、4又は5個までのアミノ酸が修飾(好ましくは保存的アミノの修飾)された配列番号32を含むscFv、及び1、2、3、4又は5個までのアミノ酸が修飾(好ましくは保存的アミノの修飾)された可撓性リンカーによって連結された配列番号33を含むscFvを含むことができる。
【0018】
ある実施形態では、配列番号1~34のアミノ酸配列をコードする核酸は、コドンが最適化されている。ある実施形態では、配列番号1~34のアミノ酸配列をコードする核酸は、コドンが最適化されていない。
【0019】
スペーサー領域
本明細書に記載されるCARは、CD33標的化ドメイン(すなわち、CD33標的化ScFv又はその変異体)と膜貫通ドメインとの間に位置するスペーサーを含むことができる。様々な異なるスペーサーを用いることができる。それらのいくつかは、ヒトFc領域の少なくとも部分、例えば、ヒトFc領域のヒンジ部分、又はCH3ドメイン若しくはその変異体を含む。以下の表1は、本明細書に記載されるCARにおいて用いることができる様々なスペーサーを提供する。
表1:スペーサーの例
【0020】
【表1】
いくつかのスペーサー領域は、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)ヒンジ領域、すなわち、免疫グロブリンのCH1及びCH2ドメインの間にある配列、例えば、IgG4 Fcヒンジ又はCD8ヒンジの全部又は部分を含む。いくつかのスペーサー領域は、免疫グロブリンCH3ドメインを含むか又はCH3ドメイン及びCH2ドメインをともに含む。当該免疫グロブリン由来の配列は、1個又はそれ以上のアミノ酸修飾、例えば、1、2、3、4又は5個の置換、例えば、オフターゲット結合を減少させる置換を含むことができる。
【0021】
ヒンジ/リンカー領域はまた、配列がESKYGPPCPSCP(配列番号4)又はESKYGPPCPPCP(配列番号3)であるIgG4ヒンジ領域を含むことができる。当該ヒンジ/リンガー領域はまた、配列ESKYGPPCPPCP(配列番号3)、続いてリンカー配列GGGSSGGGSG(配列番号2)、続いてIgG4 CH3配列GQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号12)を含むことができる。従って、当該リンカー/スペーサー領域全体は、ESKYGPPCPPCPGGGSSGGGSGGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号11)という配列を含むことができる。
ある場合では、当該スペーサーには、配列番号11と比較して、1、2、3、4又は5個の単一のアミノ酸が変化(例えば、保存的変化)している。ある場合では、IgG4 Fcヒンジ/リンカー領域は、Fc受容体(FcR)による結合が低下するように、2つの位置(L235E;N297Q)で変異する。
【0022】
膜貫通ドメイン
様々な膜貫通ドメインを用いることができる。表2には、適当な膜貫通ドメインが例示されている。スペーサー領域が存在する場合、膜貫通ドメイン(TM)は、スペーサー領域のカルボキシ末端に位置する。
表2:膜貫通ドメインの例示
【0023】
【表2】
共刺激ドメイン
共刺激ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインと共に用いるのに適したいかなるドメインでありうる。ある場合、共シグナル伝達ドメインは、KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号24)と、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又はと同一である配列があげられる4-1BB共シグナル伝達ドメインである。ある場合、当該4-1BB共シグナル伝達ドメインは、配列番号24と比較して、1、2、3、4又は5個のアミノ酸が変化(好ましくは、保存的に)している。
共刺激ドメインは、膜貫通ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインの間に位置する。表3は、CD3ζシグナル伝達ドメインの配列と適当な共刺激ドメインを例示する。
表3: CD3ζドメインと共刺激ドメインの例
【0024】
【表3】
様々な実施形態では、共刺激ドメインは、表3に示される共刺激ドメイン又は1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸が修飾されたその変異体、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸が修飾されたCD28共刺激ドメイン又はその変異体、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸が修飾された4-1BB共刺激ドメイン又はその変異体、及び1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸が修飾されたOX40共刺激ドメイン又はその変異体からなる群から選択される。特定の実施形態では、4-1BB共刺激ドメイン又はその変異体は、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸が修飾されている。ある実施形態では、2つの共刺激ドメイン、例えば、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されているCD28共刺激ドメイン又はその変異体、及び1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸が修飾(例えば、置換)されている4-1BB共刺激ドメイン又はその変異体がある。様々な実施形態では、1~5個(例えば、1又は2個)のアミノ酸の修飾は置換である。共刺激ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインのアミノ末端であり、2~10個からなる短いリンカー、例えば、3つのアミノ酸(例えば、GGG)が、共刺激ドメインとCD3ζシグナル伝達ドメインの間に位置してよい。
【0025】
CD3ζシグナル伝達ドメイン
CD3ζシグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインと共に用いるのに適したいかなるドメインであってよい。ある場合では、CD3ζシグナル伝達ドメインは、以下の配列:
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号21)
と少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%同一又は同一である配列を含む。
ある場合、CD3ζシグナル伝達は、配列番号21と比較して、1、2、3、4又は5個のアミノ酸が変化(好ましくは、保存的な)している。
【0026】
切断型EGFR及び切断型CD19
CD3ζシグナル伝達ドメインの後方には、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号27)及び、以下の配列:
LVTSLLLCELPHPAFLLIPRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIATGMVGALLLLLVVALGIGLFM(配列番号28)
と同一又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%が同一である配列である、切断型EGFRが位置してよい。ある場合、当該切断型EGFRは、配列番号28と比較して、1、2、3、4又は5個のアミノ酸が変化(好ましくは、保存的な)している。
【0027】
あるいは、CD3ζシグナル伝達ドメインの後方には、リボソームスキップ配列(例えば、LEGGGEGRGSLLTCGDVEENPGPR;配列番号27)及び、以下の配列:
MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCVPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKR(配列番号26)
と同一又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%が同一である配列である、切断型CD19R(CD19tという)が位置してよい。
【0028】
「アミノ酸修飾」とは、タンパク質又はペプチド配列におけるアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を意味する。
「アミノ酸置換」又は「置換」とは、親ペプチド又はタンパク質配列中の特定の位置のアミノ酸を他のアミノ酸で置換することをいう。当該置換は、非保存的様式(すなわち、コドンを、ある特定の大きさ又は特性があるアミノ酸群に属するアミノ酸から他の群に属するアミノ酸に変化させる)又は保存的様式(すなわち、コドンを、ある特定の大きさ又は特性があるアミノ酸の群に属するアミノ酸から同じ群に属するアミノ酸に変化させる)で、得られたタンパク質中のアミノ酸を変化させることができる。当該保存的変化では、一般に、結果として生じるタンパク質の構造及び機能の変化がより少なくなる。以下に、アミノ酸の様々な群分けを例示する:
1)非極性R基を有するアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン;
2)非荷電極性R基を有するアミノ酸:グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン;
3)荷電極性R基を有するアミノ酸(pH6.0で負に荷電):アスパラギン酸、グルタミン酸;
4)塩基性アミノ酸(pH6.0で正に荷電):リジン、アルギニン、ヒスチジン(pH 6.0で正に荷電)。
他の群はフェニル基をもつアミノ酸:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンである。
【0029】
ある場合、CD33 CARは、CARオープンリーディングフレームの後にT2Aリボソームスキップ配列と、細胞質シグナル伝達尾部が欠失した切断型EGFR(EGFRt)が続くベクターを用いて産生されうる。この配列では、EGFRtの共発現により、遺伝子修飾細胞が正確に測定されえ、遺伝子修飾細胞の正の選択、並びに養子移入後の治療用T細胞の生体内で効率的に細胞追跡しうる不活性な非免疫原性表面マーカーが提供される。サイトカインストーム及び標的外毒性を回避するための増殖の効率的な制御は、T細胞免疫療法の成功にとって重要なハードルである。CD33 CARレンチウイルスベクターに組み込まれたEGFRtは、自殺遺伝子として作用し、治療関連毒性の場合にCAR+ T細胞を除去しうる。
【0030】
本明細書中に記載されるCARは、好ましくは組換えDNA技術を用いて製造されるが、当技術分野で公知のいかなる手段により製造されうる。キメラ受容体のいくつかの領域をコードする核酸は、当技術分野で公知の分子クローニングの標準的な技術(ゲノムライブラリースクリーニング、オーバーラップPCR、プライマー支援ライゲーション、部位特異的突然変異誘発等)により、簡便に調製し、完全なコード配列を構築することができる。得られたコード領域は、好ましくは発現ベクターに挿入され、好適な発現宿主細胞系、好ましくはTリンパ球、最も好ましくは自己Tリンパ球の形質転換に用いられる。
【0031】
患者から単離された様々なT細胞サブセットを、CAR発現用ベクターで形質導入しうる。セントラルメモリーT細胞は、有用なT細胞サブセットの1つである。セントラルメモリーT細胞は、例えば、CliniMACS(登録商標)装置を用いて、CD45RO+/CD62L+細胞を選択することにより、末梢血単核細胞(PBMC)から単離して、所望の受容体を発現する細胞を免疫磁気的に選択することができる。セントラルメモリーT細胞用に濃縮された細胞は、抗CD3/CD28で活性化することができ、例えば、CD33 CARの発現を指向するレンチウイルスベクター、並びに生体内検出、アブレーション、及び潜在的ex vivo選択用の非免疫原性表面マーカーで形質導入することができる。活性化された/遺伝子修飾されたCD33セントラルメモリーT細胞は、IL-2/IL-15を用いてインビトロで増殖させ、その後凍結保存することができる。CAR T細胞を調製するさらなる方法は、PCT/US2016/043392に記載されている。
【0032】
他の実施形態では、CD33 CAR発現細胞は、外因性RNA分子、例えば、本明細書に記載のCAR分子をコードする核酸を含む生体外転写RNA又は合成RNAがある免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞又はNK細胞である。
特段の限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同義である。
本発明で用いる方法及び材料は本明細書に記載されるが、当該技術分野で公知の他の適当な方法及び材料も用いてよい。
材料、方法、及び実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図しない。
本明細書に記載されている全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベース表示、及び他の参考文献は、全ての目的のため、その全体が参照され援用される。
矛盾がある場合、定義がある場合は本明細書の記載が優先される。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の記載及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】代表的なCD33 CAR構築物を示す概略図である。
図2】EGFRtをトラッキングマーカーとして用いた、13日間の培養期間中発現が安定であったCD33(CD8)CAR T細胞を用いた実験の結果を示すグラフである。Mock (非形質導入:2A)及びCD33 CAR T細胞(2B)をEGFR発現についてフローサイトメトリーにより評価し、CARの発現を検出した。Mock CAR T細胞及びCD33 CAR T細胞はいずれも、ex vivo培養中で安定して増殖した(2C)。
図3】ヒトAML細胞株におけるCD33の発現を示す。ヒトバーキットリンパ腫細胞株RAJIを陰性対照として用いた実験の結果を示すグラフである。
図4A】CD33を発現するAML細胞株に対するCD33(CD8) CAR T細胞のエフェクター機能及び殺傷活性を示すグラフである。AML細胞に対するMock又はCD33のCAR T細胞のE:T比が2:1である脱顆粒アッセイの結果を示す。
図4B】CD33を発現するAML細胞株に対するCD33(CD8) CAR T細胞のエフェクター機能及び殺傷活性を示すグラフである。AML細胞に対するMock又はCD33のCAR T細胞のE:T比が1:1である細胞内IFN-γ染色アッセイの結果を示す。
図4C】CD33を発現するAML細胞株に対するCD33(CD8) CAR T細胞のエフェクター機能及び殺傷活性を示すグラフである。AML細胞に対するMock又はCD33のCAR T細胞のE:T比が1:5、1:10、及び1:20である再投与アッセイの結果を示す。RAJI細胞株を陰性対照として用いた。
図5】CD33発現レベルが高いAML細胞株であるMOLM-14-ffluc細胞株を用いた、NOD-SCID-IL2Rgnull (NSG)異種移植モデルを用いた代表的な生体内試験を示す図である。
図6図6A~6Bは、CD33(CD8) CAR T細胞の生体内でCD33発現腫瘍株の殺傷能を示す。図6Aは、3×10個のMockT細胞又は未処理群と比較して、3×10個のCD33 CAR T細胞により、生体内の白血病負荷が有意に減少したことを示す写真である。図6Bは、3×10個のMockT細胞又は未処理群と比較して、3×10個のCD33 CAR T細胞により、生体内の全生存が有意に延びたことを示すグラフである。
図7】100nMのデシタビン又はDMSOの存在下で、連続した2日間のAML細胞株におけるCD33の発現を示す。RAJI細胞株を陰性対照として用いた。
図8】、生体外でのCD33(CD8) CAR T細胞と併用したデシタビンの殺傷活性を示す概略図である。AML細胞株を10nM デシタビン又はDMSOで2日間連続処理した後、CD33 CAR又はMockT細胞をE:T比1:50で処理した。さらに48時間後、各群の殺傷活性をフローサイトメトリーにより測定した。RAJI細胞株を陰性対照として用いた。
図9図9A~9Bは、プログラムされた細胞死-リガンド1(PD-L1)及びc型レクチン様分子-1(CLL-1)の、デシタビン又はDMSOとCD33(CD8) CAR又はMockT細胞との併用後の、残留しているAML細胞上の平均蛍光強度(MFI)を示す。RAJI細胞株を陰性対照として用いた。
図10】CD33 CAR T細胞治療と併用してデシタビンを投与されたMOLM-14-fflucを備えるNSG異種移植モデルを用いた代表的な生体内試験を示す。
図11図11A~11Bは、デシタビン及びCD33(CD8) CAR T細胞の生体内での併用効能の結果を示す。Aは、0.5mg/kg/日×5日間のデシタビン投与後、1×10個のCD33 CAR T細胞の投与により、生体内での白血病負荷が有意に減少したことを示すグラフである。Bは、0.5mg/kg/d×5日間のデシタビン及び1×10個のCD33 CAR T細胞の併用療法により、生体内での全生存を有意に延びたことを示すグラフである。
図12】10nM デシタビン及びCD33(CD8) CAR T細胞を1:50 E:T比で処理すると、生存した残存AML細胞により、PD-L1発現レベルが有意に増加したことを示すグラフである。
図13】抗PD-1抗体(10μg/mL)により、E:T比1:75での、CD33(CD8) CAR T細胞の抗AML効果が有意に高まったことを示すグラフである。
図14】CD33 CD8 CAR (A;配列番号30)及びCD33 EQ CAR (B;配列番号31)の注釈付きアミノ酸配列を示す。下線は、様々な構成要素を示す。
図15】(A)GMCSRシグナル配列が先行し、T2Aスキップ配列およびEGFRt(配列番号35(核酸)及び配列番号36(アミノ酸))が後続する、CD33 CD8 CAR;かつ、(B)GMCSRシグナル配列が先行し、T2Aスキップ配列およびEGFRt(配列番号35(核酸)及び配列番号36(アミノ酸))が後続する、CD33 EQ CAR;の注釈付き核酸及び対応するアミノ酸配列を示す。各核酸配列のコドンが最適化された部分は太字で示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示では、ヒト化抗ヒトCD33 scFv抗原結合ドメイン、及びある実施形態では、4-1BB細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含有するCARの生成及び抗腫瘍効果が記載される。CD33 CAR T細胞は、CD33発現ヒトがん株に対して強力な抗原依存性細胞毒性を呈示した。ヒト白血病/リンパ腫マウス腫瘍モデルにおけるCD33 CAR T細胞の腹腔内又は静脈内生体内投与により、抗原陽性疾患が除去され、かつ、全生存期間が延びた。
【実施例
【0035】
本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに説明される。例
〔実施例1〕 異なるリンカーを含むCD33 CAR T細胞の構築
以下に記載する試験は、CD33 CARが初代T細胞上で安定に発現できることを示す。
複数のCD33-標的CAR構築物を設計した。すべての構築物は、同一のコドンを最適化したヒト化CD33単鎖可変断片を発現した。ある実施形態では、CAR構築物はまた、CD4膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB共刺激ドメイン、CD3ゼータドメインを含んでいた。ある実施形態では、CAR構築物はまた、CD8膜貫通ドメイン(TM)、4-1BB共刺激ドメイン、CD3ゼータドメインを含んでいた。CD33 CARの代表的な模式図を図1に示す。CARは、CAR構築物と共に細胞の形質導入の成功についてのマーカーとして機能する切断型EGFRと、共発現された。ある実施形態では、CD33 CAR構築物は、それらのリンカードメイン及び膜貫通ドメインが異なる。理論に拘束されることなく、構築物の細胞外部分の長さが異なることで、抗原結合後に抗原に結合し、活性化シグナルを伝達するCARの機能が相違する可能性がある。これらの相違によりまた、CD33発現腫瘍細胞の殺傷は異なるかもしれない。
【0036】
図14Aは、CD33標的化scFv、CD8ヒンジ(スペーサー)、CD8膜貫通ドメイン、GGGリンカーによってCD3ゼータ刺激ドメイン(配列番号30)に連結された4-1BB共刺激ドメインを含むCD33 CARのアミノ酸配列を示す。図14Bは、CD33標的化scFv、IgG4スペーサー(IgG4(S228P、L235E、N297Q))、CD4膜貫通ドメイン、GGGリンカーによってCD3ゼータ刺激ドメイン(配列番号31)に連結された4-1BB共刺激ドメインを含むCD33 CARのアミノ酸配列を示す。
【0037】
既報(Priceman SJ,Gerdts EA,Tilakawardane D,Kennewick KT,Murad JP,Park AK,Jeang B,Yamaguchi Y,Yang X,Urak R,Weng L,Chang WC,Wright S,Pal S,Reiter RE,Wu AM,Brown CE,Forman SJ.Co-stimulatory signaling determines tumor antigen sensitivity and persistence of CAR T cells targeting PSCA+metastatic prostate cancer.Oncoimmunology.2018;7(2):e1380764)のように、CD33 CARレンチウイルスを用いて、CD14+及びCD25+細胞(dPBMC)を枯渇させたヒト健康ドナー由来の末梢血単核細胞、T(n/mem)細胞、Pan T細胞及び濃縮T細胞等の他の細胞種を形質導入した(EasySep Human T cell isolation Kit. StemCell Technologies)。
トラッキングマーカーとしてEGFRtを用いて、フローサイトメトリーにより、上記のようにCAR発現を示した。代表的なCD33 CAR構築物は、T細胞中で安定的に発現した(図2A~2C)。細胞を形質導入してから7日後、CD33 CAR構築物の取り込みの成功を標示するように細胞を抗EGFRで染色した。CD33(CD8) CARは、形質導入後15日で安定に発現された(図2C)。
【0038】
〔実施例2〕 AML細胞株におけるCD33の発現
以下に記載する試験では、様々なAML細胞株におけるCD33の発現を検討した。
図3に示すように、CD33の発現は、MOLM-14及びTHP-1細胞株において最も高かった。
CD33発現は、KG-1A細胞株で中程度であった。
CD33の発現は、Raji細胞株で最も低かった。
【0039】
〔実施例3〕 CD33 CAR T細胞は生体外で強力かつ特異的な細胞殺傷機能とエフェクター機能を呈示する
CD33 CAR T細胞がCD33陽性がん細胞に対して選択的エフェクター機能及び殺傷活性を示すかどうかを判定するために、CD33 CAR T細胞をCD33陽性がん細胞又はCD33陰性がん細胞のいずれかの存在下で増殖させた。その後、CD107a脱顆粒レベル、細胞内IFN-γ染色、及び死滅したがん細胞の比率を定量した。用いたアッセイの概略図を図4に示す。
CD107a脱顆粒アッセイ用に、Mock又はCD33 CAR T細胞を、ゴルジストップ及びCD107a抗体が補足された完全X-VIVO培地中で6時間、E:T比2:1で標的細胞と共培養した後、フローサイトメトリーを行った。CD33陽性AML細胞株は、MOLM-14、THP-1及びKG-1Aであった。用いたCD33-陰性細胞系はRAJIであった(図4A)。細胞内IFN-γ染色アッセイ用に、Mock又はCD33 CAR T細胞を、完全X-VIVO培地中、1:1のE:T比で4~6時間、標的細胞と共培養した。その後、ゴルジプラグを添加して、培養物を一晩インキュベーションした。次に、細胞を固定し、透過化し、IFN-γ抗体で染色し、フローサイトメトリーにかけた(図4B)。再投与アッセイ用に、Mock CAR T細胞又はCD33 CAR T細胞を、E:T比1:5、1:10、及び1:20で、標的細胞と共培養した。48時間後、追加の腫瘍細胞を、1:5、1:10、又は1:20のE:Tに共培養ウェルに加え、48時間のインキュベーションを繰り返し、追加の腫瘍細胞を、1:5、1:10、又は1:20のE:Tに共培養ウェルに加えた。さらに48時間後、フローサイトメトリーを用いて、腫瘍細胞の%特異的溶解を測定した(図4C)。
CD33(CD8) CAR T細胞は、CD33-陰性RAJI細胞株と比較して、強力かつ特異的な、CD107a脱顆粒レベル、細胞内IFN-γ染色、及びCD33-陽性AML細胞株に対する殺傷活性を提示した(図4A-4C)。
【0040】
〔実施例5〕 マウスモデルの生体内で送達されたCD33 CAR T細胞が強力な抗腫瘍活性を示し、マウスに延命効果をもたらすことの検証
MOLM-14モデルにおいて、CD33陽性細胞を選択的に標的とするCD33 CAR T細胞の生体内での効能を評価するため、CD33 CAR T細胞を送達し、腫瘍の大きさ及び生存を経時的に評価した。
MOLM-14細胞をレンチウイルスで形質導入してホタルルシフェラーゼ(ffluc)を発現させることで、非侵襲的光学イメージングによる腫瘍増殖を追跡した。腫瘍静脈内注射の6日後に、マウスを、全身静脈内(i.v.)送達により、Mock又はCD33のCAR T細胞(3×10)で処理した(図5)。CD33(CD8) CAR T細胞で静脈内送達により処理したマウスでは、迅速な抗腫瘍効果が観察され、処理後1~2週間で抗腫瘍反応が最高となった(図6A)。マウスの抗腫瘍反応は3~4週間持続した。CD33(CD8) CAR T細胞の送達は、マウスの生存を有意に延長した(図6B)。
【0041】
〔実施例6〕 デシタビンは生体外でCD33 CAR T細胞媒介性AML殺傷を増強する
デシタビンは、AML治療で用いられることが多いメチル化阻害剤(HMA)である。まず、AML細胞株を100nMのデシタビン又はDMSOで2日間連続処理した。RAJI細胞株を陰性対照として用いた。デシタビン処理により、AML細胞上のCD33発現を上方制御することが観察された(図7)。
発明者らは、デシタビンがCD33 CAR T細胞媒介性AML殺傷を増強する可能性があると仮定した。生体外併用試験では、AML細胞株を10nM デシタビン又はDMSOで2日間連続処理した後、CD33(CD8) CAR又はMockT細胞をE:T比1:50で処理した。さらに48時間後、各群の殺傷比率(%)を、フローサイトメトリーを用いて定量した。AML細胞を標的として用いた生体外実験では、デシタビン、その後CD33 CAR T細胞で処理した群で強力な殺傷が見られた(図8)。
さらに、CD33 CAR T細胞と併用したデシタビンによる治療後に生存した残存AML細胞において、PD-L1及びCLL-1のMFI発現を検出した。PD-L1(図9A)及びCLL-1(図9B)の発現レベルは、生体外併用治療により、有意に高まった。
【0042】
〔実施例7〕 デシタビンは生体内でCD33 CAR T細胞の抗白血病効果を改善する
NSGマウスに1×10個のMOLM-14-ffluc細胞を0日目に静脈内投与した。1日目~5日目まで、デシタビン0.5mg/kg/日又はPBSを腹腔内(i.p.)注射により連続5日間投与した。6日目に、マウスに、1×10個のCD33(CD8) CAR(配列番号30)又はMockT細胞を静注により投与した(図10)。
生体外で得られた知見と一致して、デシタビンと、CD33 CAR T細胞との併用により、生体内で白血病負荷(図11A)が有意に低下し、全生存期間が延びた(図11B)。
【0043】
〔実施例8〕 PD-1/PD-L1遮断によりCD33 CAR T細胞の効能が高まる
プログラムされた細胞死-1(PD-1)/PD-L1を標的とするチェックポイント遮断は、免疫系治療に対する耐性機序に関与している。10nMデシタビン及びCD33(CD8) CAR(配列番号30)T細胞の1:50 E:T比での処理において生存した残留AML細胞では、PD-L1発現が優位に高まった(図12)。抗PD-1抗体(10μg/mL)は、E:T比1:75でCD33(CD8) CAR(配列番号30)T細胞の抗AMLの効能を有意に増強することが見出された(図13)。
【0044】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と組み合わせて記載してきたが、上記の説明は例示を意図し、付随する特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるであろう。他の態様、利点、及び変更は特許請求の範囲内に内在する。
全ての参考文献は、全ての目的のためにその全体が本明細書に援用される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14B-1】
図14B-2】
図15A
図15A-1】
図15A-2】
図15B
【配列表】
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