(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】安定化キメラ合成タンパク質及びその治療的使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250210BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20250210BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20250210BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20250210BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20250210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250210BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250210BHJP
C07K 14/475 20060101ALN20250210BHJP
C07K 14/28 20060101ALN20250210BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A61K39/00 G
A61K39/39
A61K47/64
A61K47/66
A61P35/00
A61P37/04
C07K14/475
C07K14/28
(21)【出願番号】P 2021576862
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 IB2020000538
(87)【国際公開番号】W WO2020260947
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-23
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514129453
【氏名又は名称】イン3バイオ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IN3BIO LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ドント, エリック
(72)【発明者】
【氏名】チャールトン, キース, アラン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/016597(WO,A2)
【文献】特表2016-517402(JP,A)
【文献】特表2018-507181(JP,A)
【文献】TOIVANEN Pyry I. et al.,Novel Vascular Endothelial Growth Factor D Variants with Increased Biological Activity,J Biol Chem,2009年,vol. 284, no.23,pp. 16037-16048
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラポリペプチド配列であって、前記キメラポリペプチド配列が、血管内皮増殖因子(VEGF)
のVEGF-A
およびVEGF-
Dの配列を含む、キメラポリペプチド配列と、
少なくとも1つのリンカーと、
免疫原性ポリペプチド配列またはコレラ毒素B(CT-B)タンパク質を含むポリペプチド配列と、
を含むキメラ合成タンパク質。
【請求項2】
前記少なくとも1つのリンカーが、前記キメラポリペプチド配列を前記ポリペプチド配列から分離する第1のリンカーを含む、請求項1に記載のキメラ合成タンパク質。
【請求項3】
前記第1のリンカーが、SSG、GSSG、SSGGG、SGG、GGSGG、GGGGS、SSGGGSGG、SSGGGGSGGG、TSGGGSG、TSGGGGSGG、SSGGSGGGSG、SSGGGSGGSSG、GGSGGTSGGGSG、SGGTSGGGGSGG、GGSGGTSGGGGSGG、SSGGGGSGGGSSG、SSGGGSGGSSGGG、及びSSGGGGSGGGSSGGGからなる群から選択される、または前記第1のリンカーが、SSGGSGGGSGである、請求項2に記載のキメラ合成タンパク質。
【請求項4】
前記キメラポリペプチド配列が、第1のVEGFドメイン及び第2のVEGFドメインを含む、請求項1に記載のキメラ合成タンパク質。
【請求項5】
前記第1のVEGFドメインが、VEGF-
Dを含み、前記第2のVEGFドメインが、VEGF-
Aを含む、または前記第1のVEGFドメインが、TFYDIETLKVIDEEWQRTQであり、前記第2のVEGFドメインが、CHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGである、請求項4に記載のキメラ合成タンパク質。
【請求項6】
前記キメラポリペプチド配列が、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、及びそれらの組合せからなる群から選択される血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)に結合する、または前記キメラポリペプチド配列が、VEGFR-1、VEGFR-2及びVEGFR-3に結合する、請求項4に記載のキメラ合成タンパク質。
【請求項7】
前記キメラ合成タンパク質が
、MTPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSSGGSGGGSGTFYDIETLKVIDEEWQRTQCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のキメラ合成タンパク質。
【請求項8】
前
記キメラ合成タンパク質が、TPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSSGGSGGGSGTFYDIETLKVIDEEWQRTQCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGのアミノ酸配列を有するようにプロセシングされる、請求項7に記載のキメラ合成タンパク質。
【請求項9】
キメラポリペプチド配列であって、前記キメラポリペプチド配列が、血管内皮増殖因子(VEGF)
のVEGF-A
およびVEGF-
Dの配列を含む、キメラポリペプチド配列と、
少なくとも1つのリンカーと、
免疫原性ポリペプチド配列またはコレラ毒素B(CT-B)タンパク質を含むポリペプチド配列と、
を含む免疫原性組成物。
【請求項10】
前記少なくとも一つのリンカーが、前記キメラポリペプチド配列を前記ポリペプチド配列から分離する第1のリンカーを含む、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記第1のリンカーが、SSG、GSSG、SSGGG、SGG、GGSGG、GGGGS、SSGGGSGG、SSGGGGSGGG、TSGGGSG、TSGGGGSGG、SSGGSGGGSG、SSGGGSGGSSG、GGSGGTSGGGSG、SGGTSGGGGSGG、GGSGGTSGGGGSGG、SSGGGGSGGGSSG、SSGGGSGGSSGGG、及びSSGGGGSGGGSSGGGからなる群から選択される、または前記第1のリンカーがSSGGSGGGSGである、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記キメラポリペプチド配列が、第1のVEGFドメイン及び第2のVEGFドメインを含む、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記第1のVEGFドメインが、VEGF-
Dを含み、前記第2のVEGFドメインが、VEGF-
Aを含む、または前記第1のVEGFドメインが、TFYDIETLKVIDEEWQRTQであり、前記第2のVEGFドメインが、CHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGである、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記キメラポリペプチド配列が、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、及びそれらの組合せからなる群から選択される血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)に結合する、または前記キメラポリペプチド配列が、VEGFR-1、VEGFR-2、及びVEGFR-3に結合する、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前
記キメラ
ポリペプチド配列が
、MTPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSSGGSGGGSGTFYDIETLKVIDEEWQRTQCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGのアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前
記キメラ
ポリペプチド配列が、TPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSSGGSGGGSGTFYDIETLKVIDEEWQRTQCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGのアミノ酸配列を有するようにプロセシングされる、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記キメラポリペプチド配列が、N末端ドメインがVEGF-DのN末端と置き換えられたVEGF-A配列を含む、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
同日又はワクチン接種期間内の別の日若しくは別の時間に、患者に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項9に記載の免疫原性組成物を含むがんの治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、疾患を治療するための組成物及び方法に関する。より詳細には、本開示は、安定化キメラ合成タンパク質及びがんを治療するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関によれば、新生物(例えば、がん)は、世界中で主要な死因の1つであり、2015年には880万人の死亡の原因であった。世界のヒト集団におけるがんの頻度は顕著であり、死亡者6人のうちのほぼ1人を占める。2015年における最も一般的ながん死は、以下の種類のがん、すなわち、肺がん(約170万人が死亡)、肝臓がん(約800,000人が死亡)、結腸直腸がん(約800,000人が死亡)、胃がん(約800,000人が死亡)、及び乳がん(約600,000人が死亡)に起因していた。
【0003】
がんは、典型的には、例えば、手術、化学療法、放射線療法、がん免疫療法などの様々な方法のいずれかによって治療される。残念なことに、これらの方法の多くは、毒性/望ましくない副作用を有する。例えば、標準的ながん化学療法は、急速に分裂する細胞を死滅させる能力に基づいて開発され、多くは、例えば、免疫抑制、悪心、脱毛などの望ましくない副作用を引き起こす毒性特性を有する。過去20年間にわたるがん研究の中心的な目標は、より高い有効性及びより少ない副作用を有する新しい治療法を見出すことであった。
【0004】
そのような治療の1つは、免疫系と腫瘍又は悪性腫瘍などのがん細胞との間の相互作用の研究であるがん免疫学に包含される。ヒト腫瘍によって発現され、正常組織では発現されないがん特異的抗原の認識などの免疫応答の開始は特に関心を集めている。一般に、悪性細胞の分裂及び増殖を制御する方法は、これらの抗原を単離し、それらが免疫系によって非自己抗原として認識されて特異的免疫応答を誘導するようにそれらを提示することに焦点を当ててきた(例えば、がんワクチン)。そのようながんワクチンは、典型的には、化学的コンジュゲート又は組換えタンパク質のいずれかとして作製し得る。不利なことに、そのようながんワクチンは、主に製造方法並びにタンパク質産物の均一性、活性及び相同性の潜在的欠如から生じるいくつかの重大な限界を示す。例えば、化学的コンジュゲーション(例えば、グルタルアルデヒドによる)によって生成されるがんワクチンは、一般に、組換え担体タンパク質とヒト起源のポリペプチドとの混合物を含む。残念なことに、架橋試薬としてグルタルアルデヒドを使用すると、様々な化学基相互間に共有結合性の橋結合を形成する望ましくない傾向があり、一般に非常に不均一な生成物をもたらす。したがって、得られたワクチンは、様々な数(例えば、0、1、2、3など)の標的ヒトポリペプチドが結合した担体タンパク質分子を含む場合があるだけでなく、ヒトポリペプチドはそれぞれ異なる原子を介して担体に結合する場合があり、ひいては異なる位置及び異なる配向で存在する場合がある。さらに、標的ポリペプチドと担体タンパク質分子はいずれもそれら自体にコンジュゲートされ、臨床的有効性を持たず、抗がん患者の免疫応答に寄与しない可能性がある様々なホモ多量体をもたらす場合がある。さらに、組換えタンパク質技術によって生成されたがんワクチンは、組換えタンパク質内に含まれる標的ヒトポリペプチドを適切に折り畳むことができず、それによって有用な免疫応答を妨げる可能性があるという欠点を有する。したがって、がん免疫療法の分野におけるこれらの重大な既存の限界を克服する新しいがんワクチンが喫緊に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、キメラ合成タンパク質/分子及びそれらのそれぞれの製造方法に関し、キメラ合成タンパク質/分子のキャラクタリゼーション、並びにキメラ合成タンパク質/分子を使用して、例えば、肺、乳房、膀胱、前立腺、卵巣、外陰、結腸、結腸直腸、腸、肺、脳、食道、他のがん、及び他の疾患などの慢性疾患を治療する治療方法に関する。
【0006】
本開示は、例えば、がんなどの疾患を治療するための治療法として使用され得るキメラ合成タンパク質を提供する。例示的な実施形態では、本開示は、合成増殖因子(例えば、VEGF)由来の1つ以上のタンパク質ドメイン、1つ以上のリンカー領域、及び1つ以上の免疫原性ドメインを含むキメラ合成タンパク質/分子を提供する。一態様において、本開示は、キメラポリペプチド配列、少なくとも1つのリンカー、及びポリペプチド配列を含むキメラ合成タンパク質を提供する。有利には、本明細書に記載されるキメラ合成タンパク質/分子は、タンパク質/分子に組み込まれるヒトタンパク質(例えば、増殖因子、例えば、VEGF、EGF、TGFなど)が発現されたときに天然の配置をとりやすくする(例えば、適切に折り畳む)安定化足場として機能する能力を有する。さらに、本明細書に記載されるキメラ合成タンパク質/分子は、長い貯蔵寿命を有する安定化されたキメラ合成タンパク質/分子を生成する能力を有する。
【0007】
特定の実施形態では、ポリペプチド配列は、免疫原性ポリペプチド配列を含む。
【0008】
特定の実施形態では、ポリペプチド配列は、コレラ毒素B(CT-B)タンパク質を含む。
【0009】
特定の実施形態では、少なくとも1つのリンカーは、キメラポリペプチド配列をポリペプチド配列から分離する第1のリンカーを含む。
【0010】
特定の実施形態では、第1のリンカーは、SSG、GSSG、SSGGG、SGG、GGSGG、GGGGS、SSGGGSGG、SSGGGGSGGG、TSGGGSG、TSGGGGSGG、SSGGSGGGSG、SSGGGSGGSSG、GGSGGTSGGGSG、SGGTSGGGGSGG、GGSGGTSGGGGSGG、SSGGGGSGGGSSG、SSGGGSGGSSGGG、及びSSGGGGSGGGSSGGGからなる群から選択される。
【0011】
特定の実施形態では、第1のリンカーは、SSGGSGGGSGである。
【0012】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、血管内皮増殖因子(VEGF)配列を含む。
【0013】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D及びそれらの組合せからなる群より選択されるVEGF配列を含む。
【0014】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、第1のVEGFドメイン及び第2のVEGFドメインを含む。
【0015】
特定の実施形態では、第1のVEGFドメインは、VEGF-D又はその一部分を含み、第2のVEGFドメインは、VEGF-A又はその一部分を含む。
【0016】
特定の実施形態では、第1のVEGFドメインは、TFYDIETLKVIDEEWQRTQであり、第2のVEGFドメインは、CHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGである。
【0017】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3及びそれらの組合せからなる群より選択される血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)に結合する。
【0018】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、VEGFR-1、VEGFR-2及びVEGFR-3に結合する。
【0019】
特定の実施形態では、キメラ合成タンパク質は、最初に、MTPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSSGGSGGGSGTFYDIETLKVIDEEWQRTQCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGのアミノ酸配列を有する。
【0020】
特定の実施形態では、初期キメラ合成タンパク質は、TPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSSGGSGGGSGTFYDIETLKVIDEEWQRTQCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGのアミノ酸配列を有するようにプロセシングされる。
【0021】
別の態様では、本開示は、キメラポリペプチド配列、少なくとも1つのリンカー、及びポリペプチド配列を含む免疫原性組成物を提供する。
【0022】
特定の実施形態では、ポリペプチド配列は、免疫原性ポリペプチド配列を含む。
【0023】
特定の実施形態では、ポリペプチド配列は、コレラ毒素B(CT-B)タンパク質を含む。
【0024】
特定の実施形態では、少なくとも1つのリンカーは、キメラポリペプチド配列をポリペプチド配列から分離する第1のリンカーを含む。
【0025】
特定の実施形態では、第1のリンカーは、SSG、GSSG、SSGGG、SGG、GGSGG、GGGGS、SSGGGSGG、SSGGGGSGGG、TSGGGSG、TSGGGGSGG、SSGGSGGGSG、SSGGGSGGSSG、GGSGGTSGGGSG、SGGTSGGGGSGG、GGSGGTSGGGGSGG、SSGGGGSGGGSSG、SSGGGSGGSSGGG、及びSSGGGGSGGGSSGGGからなる群から選択される。
【0026】
特定の実施形態では、第1のリンカーは、SSGGSGGGSGである。
【0027】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、血管内皮増殖因子(VEGF)配列を含む。
【0028】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D及びそれらの組合せからなる群より選択されるVEGF配列を含む。
【0029】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、第1のVEGFドメイン及び第2のVEGFドメインを含む。
【0030】
特定の実施形態では、第1のVEGFドメインは、VEGF-D又はその一部分を含み、第2のVEGFドメインは、VEGF-A又はその一部分を含む。
【0031】
特定の実施形態では、第1のVEGFドメインは、TFYDIETLKVIDEEWQRTQであり、第2のVEGFドメインは、CHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGである。
【0032】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3及びそれらの組合せからなる群より選択される血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)に結合する。
【0033】
特定の実施形態では、キメラポリペプチド配列は、VEGFR-1、VEGFR-2及びVEGFR-3に結合する。
【0034】
特定の実施形態では、合成タンパク質キメラ合成タンパク質は、最初に、MTPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSSGGSGGGSGTFYDIETLKVIDEEWQRTQCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGのアミノ酸配列を有する。
【0035】
特定の実施形態では、初期キメラ合成タンパク質は、TPQNITDLCAEYHNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMANSSGGSGGGSGTFYDIETLKVIDEEWQRTQCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGのアミノ酸配列を有するようにプロセシングされる。
【0036】
特定の実施形態では、免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0037】
別の態様では、本開示は、それを必要とする患者を治療する方法であって、上記の免疫原性組成物を、同日又はワクチン接種期間内の別の日若しくは別の時間に、患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0038】
特定の実施形態では、患者はがんを有する。
【0039】
定義
「上皮増殖因子受容体(EGFR)核酸分子」とは、EGFRポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なEGFR核酸分子は、NCBIアクセッション番号NM_005228.4で提供され、以下に再現される(配列番号3)。
【0040】
「上皮増殖因子受容体(EGFR)ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_005219.2に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、上皮増殖因子(EGF)結合活性を有するポリペプチド又はその断片を意味し、以下に再現される(配列番号4)。
【0041】
「上皮増殖因子(EGF)核酸分子」とは、EGFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なEGF核酸分子は、NCBIアクセッション番号NM_001963.5で提供され、以下に再現される(配列番号5)。
【0042】
「上皮増殖因子(EGF)ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_001954.2に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、53アミノ酸のEGF分子(太字で示される)を産生するようにプロセシングされるEGFのプレ-プロタンパク質形態に相当し、EGFR結合活性を有するポリペプチド又はその断片を意味し、以下に再現される(配列番号6)。
【0043】
「ニューレグリン1(NRG1)核酸分子」とは、NRG1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なNRG1核酸分子は、NCBIアクセッション番号BC150609.1で提供され、以下に再現される(配列番号7)。
【0044】
「ニューレグリン1(NRG1)ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号AAI50610.1に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、ニューレグリン1(NRG1)結合活性を有するポリペプチド又はその断片を意味し、以下に再現される(配列番号8)。
【0045】
「ニューレグリン1β(NRG1β)核酸分子」とは、NRG1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なNRG1β核酸分子は、NCBIアクセッション番号NM_001322205.1で提供され、以下に再現される(配列番号9):
【0046】
「ニューレグリン1β(NRG1β)ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_001309134.1に対して少なくとも約85%のアミノ酸同一性を有し、ニューレグリン1(NRG1)結合活性を有するポリペプチド又はその断片を意味し、以下に再現される(配列番号10)。
【0047】
「NRG-BVNハイブリッドポリペプチド」とは、以下のアミノ酸配列(配列番号11)に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。
>NRG-BVN-ハイブリッド
【0048】
「TGFαハイブリッドポリペプチド」とは、以下のアミノ酸配列(配列番号12)に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。
>TGF-BVNハイブリッド
【0049】
「初期IN-02ポリペプチド」とは、以下のアミノ酸配列(配列番号13)に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するその断片を意味する。
>初期_IN-02_ポリペプチド
【0050】
「プロセシングされた又は最終的なIN-02ポリペプチド」とは、以下のアミノ酸配列(配列番号14)に対して少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するその断片を意味する。
>最終_IN-02_ポリペプチド
【0051】
「血管内皮増殖因子A(VEGF-A)核酸分子」とは、VEGF-Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なVEGF-A核酸分子は、NCBIアクセッション番号NM_001025366.3で提供され、以下に再現される(配列番号15)。
【0052】
「VEGF-Aポリペプチド」とは、VEGF-A核酸分子によってコードされるポリペプチドを意味する。例示的なVEGF-A核酸分子は、NCBIアクセッション番号NP_001020537.2で提供され、以下に再現される(配列番号16)。
【0053】
「血管内皮増殖因子A(VEGF-D)核酸分子」とは、VEGF-Dポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なVEGF-D核酸分子は、NCBIアクセッション番号NM_004469で提供され、以下に再現される(配列番号17)。
【0054】
「VEGF-Dポリペプチド」とは、VEGF-D核酸分子によってコードされるポリペプチドを意味する。例示的なVEGF-D核酸分子は、NCBIアクセッション番号NP_004460.1で提供され、以下に再現される(配列番号18)。
【0055】
範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解される。各範囲の終点は、他方の終点に関しても、他方の終点とは独立しても有意であることがさらに理解される。また、本明細書に開示されているいくつかの値があり、そのような各値はまた、その値自体に加えて「約」その特定の値として本明細書に開示されていることも理解される。また、本出願を通して、データはいくつかの異なるフォーマットで提供され、このデータはデータ点の任意の組合せの終点及び始点並びに範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点「15」が開示されている場合、10及び15より大きい、それ以上、それ未満、それ以下、及びそれに等しいこと、並びに10から15の間が開示されていると見なされることが理解される。また、2つの特定の単数間の各単数も開示されていることが理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13、及び14も開示されている。
【0056】
本明細書で提供される範囲は、その範囲内のすべての値の省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなる群からの任意の数、数の組合せ、又は部分範囲、並びに、前述の整数間に介在する、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9などのすべての小数値を含むと理解される。部分範囲に関して、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子状の部分範囲」が特に企図される。例えば、1から50の例示的な範囲の入れ子状の部分範囲は、一方向に1から10、1から20、1から30、及び1から40、又は他の方向に50から40、50から30、50から20、及び50から10を含み得る。
【0057】
適用可能であるか、又は具体的に排除されない場合、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つは、その実施形態が本開示の異なる態様の下で説明されている場合であっても、任意の他の1つ以上の実施形態と組み合わせることができるものと考えられる。
【0058】
これら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明によって開示及び/又は包含される。
【0059】
例として与えられるが、説明される特定の実施形態のみに本開示を限定することを意図するものではない以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1A~
図1Dは、2つのタンパク質の概略図、組換えタンパク質配列、及び棒グラフをそれぞれ示す。
図1Aは、VEGF-Dに由来するN末端領域及びVEGF-Aに由来する「相同ドメイン」(VEGFR-1、VEGFR-2及びVEGFR-3結合領域が示されている)を含む本開示の例示的な実施形態によるキメラVEGF分子(VEGF-DA)を示すリボンダイアグラムタンパク質概略図である。
図1Bは、本開示の例示的な実施形態による、キメラVEGF-DAタンパク質ドメインが10アミノ酸リンカーを介してCTBのC末端に融合されているIN-02の構造及び構成を示すタンパク質概略図である。
図1Cは、IN-02のタンパク質配列を、
図1A~
図1Bと一致するようにカラーコーディネートして示す。開始メチオニン残基はメチオニンアミノペプチダーゼによって除去されるので、成熟タンパク質には存在しない。
図1Dは、ヒト内皮細胞(HUVEC)による管の発達に対するVEGF-A、VEGF-D並びにIN-02の単独及び中和抗体(NAb)との組合せの効果を示す棒グラフである。
【
図2】
図2は、プレート上に固定化されたVEGF受容体へのVEGF-A、IN-02(例えば、VEGF-DA)及びVEGF-Dタンパク質の結合を示すELISAを示す棒グラフである。
【
図3】
図3は、固定化免疫原に結合する、IN-02タンパク質で免疫を付与した3匹のウサギからの免疫付与前及び免疫付与後(BL3)の血清を示すELISAを示すグラフである。
【
図4】
図4は、固定化rCTBに結合するIN-02タンパク質で免疫を付与した3匹のウサギからの免疫付与前及び免疫付与後(BL3)の血清(カプリル酸精製)を示すELISAを示すグラフである。
【
図5】
図5は、固定化VEGF-Aに結合するIN-02タンパク質で免疫を付与した3匹のウサギからの免疫付与前及び免疫付与後(BL3)の血清を示すELISAを示すグラフである。
【
図6】
図6は、固定化VEGF-Dに結合するIN-02タンパク質で免疫を付与した3匹のウサギからの免疫付与前及び免疫付与後(BL3)の血清を示すELISAを示すグラフである。
【
図7】
図7は、IN-02タンパク質で免疫を付与したウサギからのカプリル酸精製血清を用いて行った管形成アッセイの結果を示す棒グラフである。
【
図8】
図8は、4℃で1ヶ月間保存したIN-02タンパク質に対して行ったHUVEC管形成アッセイの結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本開示は、少なくとも部分的には、増殖因子由来の1つ以上のタンパク質ドメイン(例えば、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-Dなど)、1つ以上のリンカー領域、及び1つ以上の免疫原性ドメインを含むキメラ合成タンパク質/分子を、様々な疾患、例えばがんを治療するための治療用分子として使用することができるという発見に基づく。キメラ合成分子は、従来技術を超えるいくつかの予想外の利点を提供する。例えば、最大12個の異なる分子種を含む不均一混合物中に存在する先行技術のヒト上皮増殖因子(hEGF)分子(例えば、Davilaらの米国特許第5,984,018号明細書)とは異なり、本明細書に記載の合成タンパク質/分子は、単一分子(例えば、均一な分子集団)として生成され得る。さらに、本明細書に記載される合成タンパク質/合成分子は、分子あたり10個の活性成分(ただし、活性成分は、例えば五量体の一部として、5の倍数で増加又は減少してもよい)を含むのに対して、先行技術のhEGF分子(例えば、Davilaらの米国特許第5,984,018号明細書)は、分子あたりに存在する活性成分の数が非常に変わりやすい(例えば、Davilaの分子あたりの活性成分の平均数は1.5である)。さらに、本明細書に記載のキメラ合成タンパク質/分子は、製造がはるかに簡単である。例えば、先行技術のhEGF分子(例えば、米国特許第5,984,018号明細書)は、rP64kと組換えヒトEGF(rhEGF)とを化学的にコンジュゲートして、互いに化学的にコンジュゲートされた2つの分子からなる最終分子を生成することによって作製される。これは、単一の合成分子である本明細書に記載の合成タンパク質/分子とは対照的である。加えて、本明細書に記載されるキメラ合成タンパク質/分子は、タンパク質/分子に組み込まれるヒトタンパク質(例えば、増殖因子)が発現されたときに天然の配置をとりやすくする(例えば、適切に折り畳む)安定化足場として機能する能力を有する。さらに、本明細書に記載されるキメラ合成タンパク質/分子は、長い貯蔵寿命を有する安定化されたキメラ合成タンパク質/分子を生成する能力を有する。有利には、本明細書の技術は、例えばがんなどの疾患を従来技術の方法(例えば、米国特許第5,984,018号明細書)よりも高い免疫原性活性レベルで治療するために治療的に使用され得る新規のキメラ合成タンパク質(例えば、がんワクチン)を提供する。
【0062】
概要
がん免疫学は、免疫系とがん細胞、例えば腫瘍又は悪性腫瘍との間の相互作用の研究である。ヒト腫瘍によって発現され、正常組織では発現されないがん特異的抗原の認識などの免疫応答の開始は特に関心を集めている。一般に、悪性細胞の分裂及び増殖を制御する方法は、これらの抗原を単離し、それらが免疫系によって非自己抗原として認識されて特異的免疫応答を誘導するようにそれらを提示することに焦点を当ててきた。
【0063】
現在同定されているかなりの数の増殖因子があり、すべてではないにしてもそのほとんどが、他の疾患状態に関与することに加えて、様々ながんにおける細胞増殖の重要なメディエーターであることが明らかになっている。一般に、増殖因子は、細胞表面に位置する一群の増殖因子受容体を認識して結合する可溶性血清タンパク質である。特定の増殖因子は、単一の受容体に特異的であり得るか、又は様々な親和性で2つ以上の密接に関連する受容体に結合し得る。同様に、いくつかの受容体は、単一の増殖因子リガンドにのみ結合するが、他の受容体は、同様に通常は異なる親和性で、複数の関連する増殖因子に結合することができる。その天然の受容体に結合すると、受容体の細胞質ドメインがリン酸化され、これが細胞内シグナル伝達カスケードを開始させ、1つ以上の遺伝子の転写の調節をもたらし、最終的には細胞周期及び細胞増殖を経て増悪をもたらす。
【0064】
増殖因子及びそれらの受容体は、増殖、発達及び修復の正常な過程の必須成分であり、それらの組織分布プロファイル及び発現レベルは細胞増殖を厳密に調節する。多数の研究が、増殖因子がインビトロ及びインビボの両方で様々な細胞型の増殖を刺激し得ることを示している(Cohen S.,Carpenter G.,PNAS USA 72,1317,1975,Witsch Eら:Physiology:25(2):85-101,(2010))。さらに、特定の増殖因子は、いくつかのがん細胞株において増殖を刺激することが明らかになっている。例えば、上皮増殖因子(EGF)は、いくつかの非小細胞肺がん細胞を刺激することができる(Osborne C.K.ら、Can Res.40,2.361(1980))。血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、及び血小板由来増殖因子(PDGF)などの他の増殖因子は、非小細胞肺がん(NSCLC)(Ballas MS,Chachoua A.,Onco Targetsand Therapy:4,43-58(201 1))、前立腺がん(CoxMEら;Prostate 69(l):33-40(2009))、及び乳がん(Law Jら、Cancer Res;68,24:10238-10346(2008))などのいくつかの腫瘍学的疾患において重要である。
【0065】
高レベルの様々な増殖因子受容体が悪性組織において報告されている。例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)は、肺がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、外陰がん、結腸がん、肺がん、脳がん及び食道がんなどの上皮起源の悪性腫瘍において異常に高いレベルで検出されている。腫瘍成長を調節する際に増殖因子及びそれらの受容体が果たす役割は不明であるが、腫瘍細胞における増殖因子受容体発現が、制御されない増殖をもたらす自己分泌増殖刺激のための機構を提供するという示唆がある(Schlessinger J.,Schreiber A.B.,LeviA.,Liberman T.,Yarden Y.Crit.Rev.Biochem.1983,14(2)93-1 11)。さらに、Liao Yら;Hum Pathol 36(1 1):1186-1 196(2005)及びCox MEら;Prostate:69(1)33-40(2009)は、転移性前立腺がんに対する増加したインスリン受容体及び増殖因子の役割を説明している。
【0066】
がん治療における増殖因子シグナル伝達を標的とする1つの治療戦略は、関与する特定の受容体/受容体群に対する受動免疫療法(例えば、モノクローナル抗体)を使用することであった。そのような研究は、リガンドの結合を阻害することができる受容体の抗体による特異的認識が、悪性細胞の分裂刺激に対して阻害効果を有し得ることを実証している(SATO J.D.ら、Methods in Enzymology,vol.146 pp63-81,1987)。しかしながら、マウス起源の抗体は、通常、ヒト抗マウス抗体応答(HAMA)を生じ、そのため、それらは単回投与に限定される。
【0067】
他の治療戦略は、目的の増殖因子を含有するワクチンを用いた能動免疫療法を使用して、分子に対する免疫応答を誘導し、腫瘍に対する増殖因子の増殖効果を阻害することであった。「Vaccine Composition Comprising Autologous Epidermal Growth Factor or a Fragment or a Derivative Thereof having Anti-tumor Activity and use Thereof in the Therapy of Malignant Diseases」と題するDavilaらによる米国特許第5,984,018号明細書は、例えば、増殖因子と、グルタルアルデヒドを用いて化学的にコンジュゲートされた免疫原性(すなわち、非ヒト)担体タンパク質との混合物を含有するワクチンの使用を開示している。しかしながら、いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、化学的コンジュゲーションはワクチンに対する免疫応答を妨げると考えられる。
【0068】
これは、宿主が「自己抗原」に対する免疫応答を生成し、脊椎動物の免疫系がそのような応答の発生を防ぐように進化していることを必要とするので、技術的に困難なアプローチである。自己抗原、例えばTヘルパー細胞活性化を含む自己抗原に対して強い免疫応答が生じる場合、通常、自己免疫疾患状態が生じる。長年にわたり、いくつかの自己免疫障害、例えば、狼瘡、多発性硬化症(MS)、糖尿病などは、宿主自己エピトープを厳密に模倣する免疫原性エピトープ(T細胞エピトープ)を含む環境因子への早期曝露によって引き起こされ得ると仮定されてきた。これは、宿主エピトープと交差反応性であるTヘルパー細胞の刺激をもたらし得る。その後の環境因子への曝露は、抗自己免疫応答(Albert,L.J.及びInman,R.D New England Journal of Medicine,Dec.30th pp2068-2074,1999)をもたらし得る。その後、ウイルス抗原が実際に神経細胞タンパク質に対する抗自己免疫応答を生じ得ることが実証されている(Levin,M.C.ら,Nature Medicine vol 8(5)pp509-513,2002)。
【0069】
「Method for Treatment of Malignant and Infectious Chronic Diseases」と題するCasimiroらによる米国特許出願公開第2006/0251654号(’654刊行物)は、悪性又は感染性慢性疾患を有する対象を治療する方法であって、担体タンパク質にカップリングされた悪性又は感染性慢性疾患に関連する自己抗原を含有するワクチンで対象に免疫を付与する工程と、対象を免疫調節剤で治療する工程と、工程1のワクチン、並びに水酸化アルミニウム及びMontanide ISA 51(フランス、パリ、Seppic)から選択される適切なアジュバントで対象に再度免疫を付与する工程からなる方法を含む、方法を開示している。残念ながら、化学的コンジュゲーションによるワクチンの調製は、免疫応答を妨げると考えられている。
【0070】
上記のワクチンの大部分は、主に製造方法並びにタンパク質産物の均一性及び相同性の潜在的欠如から生じるいくつかの限界を示す。上記のワクチンは、一般に、グルタルアルデヒドを使用して化学的にコンジュゲートされた組換え担体タンパク質とヒト起源のポリペプチドとの混合物を含む。残念なことに、この反応性試薬は、望ましくないことに、様々な化学基相互間で共有結合性の架橋結合を形成する可能性があり、一般に非常に不均一な生成物をもたらす。したがって、得られたワクチンは、様々な数(例えば、0、1、2、3など)の標的ヒトポリペプチドが結合した担体タンパク質分子を含み得るだけでなく、ヒトポリペプチドはそれぞれ、異なる原子を介して、それゆえに異なる位置及び異なる向きで担体に結合し得る。さらに、標的ポリペプチドと担体タンパク質分子はいずれもそれら自体にコンジュゲートされ、臨床的有効性を持たず、抗がん患者の免疫応答に寄与しない可能性がある様々なホモ多量体をもたらす場合がある。
【0071】
合成タンパク質/分子
本開示は、免疫原性合成タンパク質/分子の要素として、増殖因子エピトープ、腫瘍抗原エピトープ、及び/又は受容体結合部位の提示の最大数を増大させるための均質な合成タンパク質/分子を提供する。例示的な一実施形態では、免疫原性担体ドメイン(例えば、コレラ毒素B(CT-B))の全部又は一部、並びに合成上皮増殖因子(sEGF)、腫瘍抗原、及び/又は受容体を発現する合成タンパク質/分子を説明する。代替の例示的な実施形態では、タンパク質は、既知の免疫原性タンパク質に基づいてモデル化された他の免疫原性合成又は組換えタンパク質/分子を発現し得る。そのような合成タンパク質/分子は、ヒト免疫系に対して高度に免疫原性であるポリペプチドを発現し得ることが本開示の範囲内で企図される。好ましくは、合成タンパク質/分子は、例えば、高い発現収率及び製造の容易さ、経口安定性及び腸から血流への交差能、並びに/又はヒトにおける以前の安全な使用などの追加の特性をキメラタンパク質に付与する。
【0072】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される合成タンパク質/分子は、総分子量の関数として、標的自己抗原に由来するタンパク質配列を高い割合で含むか又は発現し得る。これは、例えば、複数の増殖因子エピトープを含む大きなタンパク質モデルを使用することによって達成され得る。これらの増殖因子エピトープは、単一の増殖因子の全体若しくは一部の複数のコピー、又は2つ以上の異なる増殖因子の全体若しくは一部のコピーであり得る。これらの増殖因子エピトープは、天然に存在するものであってもよく、又は合成であってもよい(例えば、人工)。例えば、本明細書に記載の例示的な合成タンパク質であるBVN22E(IN01とも呼ばれる)は、約120kDの分子量を有し得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載の増殖因子エピトープは、増殖因子内の1つ以上のドメイン(例えば、EGF標的化シグナル伝達経路(TSP)ドメイン)に対応し得る。例示的な実施形態では、EGFドメインは、βループを提示又は拘束する領域、例えば、合成タンパク質配列の約システイン6から約システイン42によって定義される領域、約システイン6から約システイン31によって定義される領域、又は約システイン22から約システイン33によって定義される領域、又は約システイン22から約システイン31によって定義される領域、又は約システイン62から約システイン14によって定義される領域を含み得る(例えば、
図1A)。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、システイン6とシステイン42との間の異なる領域又はサブ領域は、本開示の合成タンパク質/分子に組み込まれると有益な効果を有し得ることが本開示の範囲内で企図される。例えば、以下の領域、すなわち、システイン6とシステイン14との間の領域、システイン6とシステイン20との間の領域、システイン6とシステイン31との間の領域、システイン6とシステイン33との間の領域、及びシステイン6とシステイン42との間の領域は有益な効果を有し得る。逆プログレッシブ配列もまた有益であり得ることも、本開示の範囲内で企図される。例えば、以下の領域、すなわち、システイン42とシステイン33との間の領域、システイン42とシステイン31との間の領域、システイン42とシステイン20との間の領域、システイン42とシステイン14との間の領域、及びシステイン42とシステイン6との間の領域は有益な効果を有し得る。システイン6とシステイン42との間の領域内の特定の区間が、本開示の合成タンパク質/分子(例えば、システイン6とシステイン14との間の領域、システイン14とシステイン20との間の領域、システイン20とシステイン31との間の領域、及びシステイン33とシステイン42との間の領域)に組み込まれた場合に有益な効果を提供し得ることが、本発明の範囲内でさらに企図される。
【0073】
本開示によれば、増殖因子エピトープの発現は、それらの天然の立体配座が、実質的に保持され、当該エピトープに対する堅牢な宿主免疫応答を誘発するように宿主免疫系の成分に提示されることができるように折り畳まれる必要がある。合成タンパク質/分子のエピトープ支持ドメインをモデル化するための適切な天然タンパク質モデルの例としては、コレラ毒素Bサブユニット、大腸菌熱不安定性LT及びLT-IIエンテロトキシンBサブユニット、ベラトキシン、百日咳毒素、C.ジェジュニ・エンテロトキシン、志賀毒素、リステリア毒素、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、N.meningitidisl外膜タンパク質、バクテリオファージコートタンパク質、アデノウイルス、及び他のウイルスコートタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、タンパク質の非自己成分は小さくてもよい。少なくとも、非自己配列は、約9、10、11又はそれを超えるアミノ酸長を有し、完全に又は部分的に少なくとも1つのヒトT細胞エピトープを含む必要がある。本明細書に記載されるように、全タンパク質に免疫原性を付与し、増殖因子、受容体、腫瘍抗原又はそのエピトープの宿主免疫系への適切な提示を可能にする要件を満たす非天然合成ポリペプチド(例えば、BVN22E、IN01)を使用することができる。
【0074】
本開示によれば、本明細書で提供される合成タンパク質/分子は、増殖因子又はその一部、細胞受容体又はその一部、又は腫瘍抗原又はその一部にかかわらず、当該合成タンパク質内の腫瘍抗原として使用するための慢性疾患、増殖因子ベース又は受容体ベースのがん、及び/又は固形腫瘍に関与する広範囲の細胞経路に関連する。タンパク質は、合成タンパク質/分子の形態であり、慢性疾患、例えば、乳がん、肺がん、膀胱がん、卵巣がん、外陰がん、結腸がん、肺がん、脳がん、結腸直腸がん、腸がん、頭頸部がん及び食道がんの治療に有用であり得る。異なる腫瘍抗原が発現され得、複数の細胞受容体及び増殖因子が上記疾患において過剰発現され得るので、本明細書で以下に記載されるタンパク質は、疾患に関連する1つ又は複数の細胞経路の1つ以上の異なる腫瘍抗原、1つ以上の異なる受容体又は増殖因子を含有し得る。これらのタンパク質は多価と呼ばれる。
【0075】
例示的な実施形態では、1つ以上の上皮増殖因子(EGF)中和ドメイン(例えば、TSPドメイン)を発現する均質な合成タンパク質/分子から構成されるタンパク質が開示される。タンパク質は、合成タンパク質/分子の形態であり得、慢性疾患、例えば、乳がん、肺がん、膀胱がん、卵巣がん、外陰がん、結腸がん、肺がん、脳がん、結腸直腸がん、頭頸部がん及び食道がんの治療に有用であり得る。例示的な実施形態では、タンパク質は、
図1Aに示すように、合成EGF配列及びCT-B配列を発現するか又は含む合成タンパク質/分子である。例示的な実施形態では、合成タンパク質配列の増殖因子成分は、EGFに対して80%未満の同一性を有する配列を含み得る。例えば、増殖因子成分は、合成タンパク質配列の増殖因子部分の免疫原性を増加させ得る11個のアミノ酸置換を有するEGF配列を含み得る。理論に束縛されるものではないが、βループを「提示する」又は拘束するEGFの領域(例えば、Cys6からCys31によって定義される領域)は、合成タンパク質に含めることが重要であり得、アミノ酸修飾の標的に適し得ると考えられる。例示的な実施形態では、Cys6からCys31の外側の領域も修飾の標的とすることができる(例えば、E11及びA12)。
【0076】
例示的な実施形態では、hEGFのTSP1ドメイン及びTSP2ドメインは、
図1Bに示されるように修飾されて、本明細書の合成タンパク質/分子に含まれる合成EGF(sEGF)領域を作製し得る。
【0077】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される合成タンパク質/分子は、増殖因子、例えば、ニューレグリン1β(NRG1β)、形質転換増殖因子α(TGFα)、血管内皮増殖因子(VEGF)などを含むがこれらに限定されない増殖因子の全部又は一部を含み得る。
【0078】
他の例示的な実施形態では、本明細書に記載の合成タンパク質/分子は、1つ以上のリンカー又はスペーサーを含み得る。上記の実施形態の1つ以上は、合成分子のsEGF部分がGGSGGTSGGGGGSGリンカーによってCT-B部分から分離されるように、CT-Bに融合したsEGFを含む。これらの得られた組換えタンパク質又はキメラタンパク質は、CT-Bに直接融合したsEGFを本質的に含んでいた。他の例示的な実施形態において、キメラタンパク質のEGF成分及びCT-B成分は、3個から14個のアミノ酸によって効果的に分離され、これらのアミノ酸は、2つのドメインの間に柔軟なスペーサー又はリンカーを形成する。このリンカーは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14アミノ酸長であり得ることが本開示の範囲内で企図される。増殖因子がより大きなサイズを有する場合(例えば、ヒト増殖因子)、より長いリンカー配列を使用することが有用であり得る。以下の例示的なリンカーを使用することができ、例示的なリンカーとして、限定するものではないが、以下の、SSG、SSGGG、SGG、GSSG、GGSGG、GGGGS、SSGGGSGG、SSGGGGSGGG、TSGGGSG、TSGGGGSGG、SSGGGSGGSSG、GGSGGTSGGGSG、SGGTSGGGGSGG、GGSGGTSGGGGSGG、SSGGGGSGGGSSG、SSGGGSGGSSGGG、及びSSGGGGSGGGSSGGGを挙げることができる。当業者は、同じく有用なリンカー配列として機能する、主に「G」及び「S」の多くの他の配列/組合せがあることを理解するであろう。
【0079】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本明細書に開示される合成タンパク質/分子は、顕著な臨床的利益を提供すると考えられる。例えば、本明細書に開示される合成タンパク質/分子は、正確に折り畳まれ、機能的である安定なポリペプチドを生成しながら、商業的な規模及び純度で細菌系において発現され得る。さらに、本明細書に開示される合成タンパク質/分子は、五量体を形成することができる。さらに、本明細書に開示される合成タンパク質/分子は、必要な担体の量が従来技術の方法(例えば、Davilaらの米国特許第5,984,018号明細書)よりも著しく少ないため、ワクチン接種のためにはるかに低いレベルのタンパク質しか必要としないという有利な特性を有する。これに関して、本明細書に開示される合成タンパク質/分子は、はるかに少ない量のワクチンでより多くの増殖因子を患者に送達することができる。
【0080】
アジュバント
本明細書で提供される特定の例示的な実施形態は、ワクチン組成物及び免疫アジュバント組成物内に本開示による合成タンパク質/分子を含み、合成タンパク質/分子に加えて、アジュバント活性を有するそのような組成物の成分を指す少なくとも1つのアジュバントを含有する医薬組成物を含む。そのようなアジュバント活性を有するアジュバントには、ヒト(例えば、ヒト患者)、非ヒト霊長類、哺乳動物又は広く認められた免疫系を有する別の高等真核生物などの対象に投与した場合に、免疫応答の効力及び/又は寿命を変化させる(すなわち、統計的に有意な態様で増加又は減少させ、特定の好ましい実施形態では、増強又は増加させる)ことができる組成物が含まれる。本明細書に開示される特定の例示的な実施形態では、所望の抗原及び/又は抗原群は、タンパク質担体内に含有され、任意選択で、1つ以上のアジュバントは、所望の抗原及び/又は抗原に対する免疫応答をそのように変化させる(例えば、誘発又は増強する)ことができ、その投与においては、同時に投与することも、又は時間的及び/若しくは空間的に分離すること(例えば、異なる解剖学的部位で)もできるが、特定の例示的な実施形態は、そのように限定されることを意図するものではなく、ひいては、特定の抗原を含まないが、1つ以上のコアジュバントであるイミダゾキノリン免疫応答調節剤(これに限定されない)をも含み得る組成物の形で合成タンパク質/分子を投与することをも企図する。
【0081】
したがって、上記のように、アジュバントには、アジュバント効果を有する組成物、例えば、サポニン及びサポニン模倣物が含まれ、QS21及びQS21模倣物(例えば、米国特許第5,057,540号明細書、欧州特許第0 362 279号明細書、国際公開第95/17210号を参照されたい)、ミョウバン、トマチンなどの植物アルカロイド、(限定するものではないが)サポニン、ポリソルベート80、Span 85及びステアリルチロシンなどの清浄剤、1つ以上のサイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-12、TNF-アルファ、IFN-ガンマ)、イミダゾキノリン免疫応答調節剤、並びに、二重幹ループ免疫調節剤(dSLIM、例えば、Weeratnaら、2005 Vaccine 23:5263)が含まれる。
【0082】
サポニンを含む清浄剤は、例えば、米国特許第6,544,518号明細書、Lacaille-Dubois,M及びWagner H.(1996 Phytomedicine 2:363-386)、米国特許第5,057,540号明細書、Kensil、Crit.Rev Ther Drug Carrier Syst,1996,12(1-2):1-55、及び欧州特許第0 362 279号明細書に教示されている。Quil A(サポニン)の画分を含む、免疫刺激複合体(ISCOMS)と呼ばれる粒子構造体は溶血性であり、ワクチンの製造に使用されている(Morein,B.、欧州特許第0 109 942号明細書)。これらの構造体は、アジュバント活性を有することが報告されている(欧州特許第0 109 942号明細書;国際公開第96/1 1711号)。溶血性サポニンQS21及びQS17(Quil AのHPLC精製画分)は強力な全身アジュバントとして記載されており、それらの製造方法は米国特許第5,057,540号明細書及び欧州特許第0 362 279号明細書に開示されている。これらの参考文献には、全身ワクチンの強力なアジュバントとして作用するQS7(Quil-Aの非溶血画分)の使用も記載されている。QS21の使用は、さらにKensilら(1991.J.Immunology 146:431-437)に記載されている。QS21とポリソルベート又はシクロデキストリンとの組合せも公知である(国際公開第99/10008号)。QS21及びQS7などのQuilAの画分を含む粒状アジュバント系は、国際公開第96/33739号及び国際公開第96/1 1711号に記載されている。全身ワクチン接種研究で使用されている他のサポニンには、Gypsophila及びSaponaria(Bomfordら、Vaccine,10(9):572-577,1992)などの他の植物種に由来するサポニンが含まれる。[0203]エスチンは、本明細書に開示される実施形態のアジュバント組成物に使用するためのサポニンに関連する別の清浄剤である。エスチンは、メルクインデックス(12.第3737版)に、マロニエ(セイヨウトチノキ:Aesculus hippocastanum)の種子に生じるサポニンの混合物として記載されている。その単離は、クロマトグラフィー及び精製(Fiedler,Arzneimittel-Forsch.4,213(1953))によって、並びにイオン交換樹脂(Erbringら、米国特許第3,238,190号)によって記載されている。エスチン(エシンとしても知られる)の画分は精製されており、生物学的に活性であることが明らかになっている(Yoshikawa Mら(Chem Pharm Bull(東京)1996 August;44(8):1454-1464))。ジギトニンは別の清浄剤であり、サポニンとしてメルクインデックス(第12版エントリ3204)にも記載されており、ジキタリス(Digitalis purpurea)の種子に由来し、J.Am.Pharm.Assoc.,1934,23,664、及びRubenstroth-Bauer,Physiol.Chem.,1955,301,621に記載されている手順により精製される。
【0083】
本明細書に開示される特定の実施形態による使用のための他のアジュバント又はコアジュバントには、ブロックコポリマー又は生分解性ポリマーが含まれ、これは、関連技術の者が精通しているポリマー化合物のクラスを指す。ワクチン組成物又は免疫アジュバントに含まれ得るブロックコポリマー又は生分解性ポリマーの例としては、Pluronic.RTM.L121(BASF Corp.,Mount Olive,N.J.;例えば、Yehら、1996 Pharm.Res.13:1693を参照のこと)が挙げられる。
【0084】
特定のさらなる例示的な実施形態は、それだけに限らないが、いくつかのそのような実施形態ではコアジュバント活性に寄与し得、他のそのような実施形態では追加的又は代替的に薬学的に許容される担体又は賦形剤を提供し得る油を含む免疫学的アジュバントを企図する。いくつもの適切な油が公知であり、本開示に基づくワクチン組成物及び免疫アジュバント組成物に含めるために選択され得る。そのような油の例としては、例示として、スクアレン、スクアラン、鉱油、オリーブ油、コレステロール、及びモノオレイン酸マンニドを挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
イミダゾキノリン免疫応答調節剤などの免疫応答調節剤も当技術分野で公知であり、特定の現在開示されている実施形態においてアジュバント又はコアジュバントとして含まれてもよい。
【0086】
また上記のように、本明細書に記載の本開示によるワクチン組成物に使用するためのアジュバント又はコアジュバントの1つのタイプは、一般に「ミョウバン」と呼ばれるアルミニウムコアジュバントであり得る。ミョウバンコアジュバントは、オキシ水酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム、又は様々な専売塩に基づく。ミョウバンコアジュバントは、良好な安全性記録を有し、抗体応答を増強し、抗原を安定化し、大規模生産することが比較的難しくないため、有利である(Edelman 2002 Mol.Biotechnol.21:129-148;Edelman,R.1980 Rev.Infect.Dis.2:370-383)。
【0087】
医薬組成物
特定の例示的な実施形態では、医薬組成物は、本開示による合成タンパク質/分子の両方を含むワクチン組成物であり、TLRアゴニスト、コアジュバント(例えば、サイトカイン、イミダゾキノリン免疫応答調節剤及び/又はdSLIMなど)など、及び/又は組換え発現構築物から選択される本明細書で提供される1つ以上の成分を、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わせて、さらに含み得る。
【0088】
例示的な担体は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。合成タンパク質/分子を含むワクチンの場合、約0.01μg/kg体重から約100mg/kg体重が、典型的には皮内、皮下、筋肉内又は静脈内経路を介して、又は他の経路を介して投与される。
【0089】
投与の回数及び頻度が宿主の応答に依存することは、当業者には明らかであろう。治療的に使用するための「薬学的に許容される担体」は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。例えば、生理的pHの滅菌生理食塩水及びリン酸緩衝生理食塩水を使用することができる。保存剤、安定剤、染料、さらには香味剤を医薬組成物中に加えてもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルを防腐剤として添加してもよい。さらに、酸化防止剤及び懸濁化剤を使用してもよい。
【0090】
医薬組成物は、その組成物を患者に投与することを可能にする任意の形態であり得る。例えば、その組成物は、固体、液体又は気体(エアロゾル)の形態であってもよい。典型的な投与経路としては、経口、局所、非経口(例えば、舌下又は口腔)、舌下、直腸、膣及び鼻腔内(例えば、スプレーとして)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される非経口という用語は、イオン導入、超音波導入、受動経皮、マイクロニードル投与、並びにまた、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内、空洞内、髄腔内、髄腔内、尿道内注射又は注入技術を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物(ワクチン及び医薬組成物を含む)は、イオン導入、マイクロキャビテーション、超音波導入又はマイクロニードルから選択される技術によって皮内投与される。
【0091】
医薬組成物は、その組成物を患者に投与したときに、その中に含まれる活性成分が生物学的に利用可能になるように製剤化される。患者に投与される組成物は、1つ以上の投与単位の形態をとり、例えば、錠剤は、単一の投与単位であってもよく、エアロゾル形態の本発明の1つ以上の化合物の容器は、複数の投与単位を保持してもよい。
【0092】
経口投与の場合、賦形剤及び/又は結合剤が存在してもよい。具体例は、スクロース、カオリン、グリセリン、デンプンデキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びエチルセルロースである。着色剤及び/又は香味剤が存在してもよい。コーティングシェルを使用することができる。
【0093】
本組成物は、液体、例えばエリキシル、シロップ、溶液、エマルジョン又は懸濁液の形態であり得る。液体は、2つの例として、経口投与用又は注射による送達用であり得る。経口投与を意図する場合、好ましい組成物は、甘味剤、保存剤、色素/着色剤及び風味増強剤のうちの1つ以上を含有する。注射によって投与されることが意図される組成物には、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤及び等張剤のうちの1つ以上が含まれ得る。
【0094】
本明細書で使用される液体医薬組成物は、溶液、懸濁液又は他の同様の形態であるかどうかにかかわらず、以下の担体又は賦形剤、すなわち、注射用水、生理食塩水、好ましくは生理食塩水(physiological saline)、リンゲル液、等張性塩化ナトリウムなどの滅菌希釈剤、スクアレン、スクアラン、鉱油、モノオレイン酸マンニド、コレステロールなどの固定油、及び/又は、溶媒若しくは懸濁媒体として機能し得る合成モノ若しくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒、ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤、並びに、塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張性を調整するための薬剤のうちの1つ以上を含み得る。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は複数回投与バイアルに封入することができる。注射可能な医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0095】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物又はワクチン組成物は、0.2um未満の安定な水性懸濁液を含み、リン脂質、脂肪酸、界面活性剤、清浄剤、サポニン、及びフッ素化脂質などからなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む。
【0096】
限定するものではないが、アルミニウム塩、油中水型エマルジョン、生分解性オイルビヒクル、水中油型エマルジョン、生分解性マイクロカプセル及びリポソームを含む送達ビヒクルなどの他の成分をワクチン又は医薬組成物に含めることが望ましい場合もある。そのようなビヒクルにおいて使用するためのさらなる免疫刺激物質(コアジュバント)の例は、先にも記載されており、N-アセチルムラミル-L-アラニン-D-イソグルタミン(MDP)、グルカン、IL-12、GM-CSF、ガンマインターフェロン及びIL-12を含み得る。
【0097】
当業者に公知の任意の適切な担体を本発明の医薬組成物に使用することができるが、担体の種類は、投与様式及び持続放出が望まれるかどうかに応じて異なる。皮下注射などの非経口投与の場合、担体は、好ましくは水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックス又は緩衝液を含む。経口投与のために、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース及び炭酸マグネシウムなどの上記担体又は固体担体のいずれかを使用することができる。生分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)もまた、本発明の医薬組成物のための担体として使用することができる。
【0098】
医薬組成物はまた、緩衝液などの希釈剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロース又はデキストリンを含む炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン並びに他の安定剤及び賦形剤を含有し得る。非特異的血清アルブミンと混合された中性緩衝生理食塩水又は生理食塩水は、典型的で適切な希釈剤である。好ましくは、生成物は、希釈剤として適切な賦形剤溶液(例えば、スクロース)を使用して凍結乾燥物として製剤化され得る。
【0099】
例示的な実施形態では、合成タンパク質/分子のエピトープ又は受容体支持ドメインは、天然又は合成ポリペプチド配列に由来するかどうかにかかわらず、適切な化学的/環境的条件下でオリゴマー多量体に自己集合する能力、又は代替的条件下でモノマーに還元される能力を備えている必要がある。理想的には、多量体化ドメインは、均質なサイズの生成物が生成されるように、離散的な数のサブユニットを有する安定した多量体、例えば二量体、三量体、四量体、五量体などに集合する。天然ポリペプチドの例としては、ロイシンジッパー、lacリプレッサータンパク質、ストレプトアビジン/アビジン、コレラ毒素Bサブユニット、シュードモナス三量体化ドメイン、及びウイルスカプシドタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
例示的な実施形態では、多価分子を調製する方法が開示される。この例示的な実施形態では、本方法は、単量体サブユニットから多量体を組み立てて、1つ以上の腫瘍抗原、受容体、及び/又は増殖因子若しくはその一部を含む合成タンパク質を形成することを含む。
【0101】
別の例示的な実施形態では、ワクチン製剤を調製する方法が開示される。この例示的な実施形態では、本方法は、1つ以上の単一の一価多量体を一緒に混合して、1つ以上の腫瘍抗原、受容体、及び/又は増殖因子若しくはその一部を含む合成タンパク質/分子を含む多価ワクチンを調製することを含む。
【0102】
さらに別の例示的な実施形態では、患者を治療するための方法が開示される。この例示的な実施形態では、本方法は、1つ以上の一価の1つの腫瘍抗原、受容体、及び/又は増殖因子、組換えタンパク質を、同日又はワクチン接種期間内の別の日若しくは別の時間に、患者に別々に投与することを含む。
【0103】
合成タンパク質/分子は、腫瘍抗原、増殖因子、及び/又は受容体、並びにCT-B配列の少なくとも1つの配列の全部又は一部のうちの1つ以上を含むか又は発現するものとして記載されているが、合成タンパク質/分子は、天然CT-B配列若しくは天然CT-B配列と実質的に類似の配列、及び/又は合成配列を含み得る。合成タンパク質/分子は、CT-B配列を含むか又は発現するものとして記載されているが、合成タンパク質/分子は、CT-B配列又はCT-B配列と実質的に同様の配列の派生物を含むか又は発現し得る。
【0104】
1つ以上の腫瘍抗原、合成増殖因子、及び/又は受容体を発現するか又は組み込む均質な合成タンパク質/分子が、特定の実施形態に関連して記載及び例示されているが、多くの変形及び改変が当業者には明らかであり、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得る。したがって、本開示は、そのような変形及び修正が本開示の範囲内に含まれることが意図されているので、上記の方法又は構成の詳細そのものに限定されるべきではない。
【実施例】
【0105】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは限定として解釈されるべきではない。すべての参考文献、GenBankアクセッション番号及び遺伝子番号、並びに本出願を通して引用された公開特許及び特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、本開示が、開示された構造、材料、組成物及び方法に対する変形を伴って実施され得、そのような変形が本開示の範囲内にあると見なされることを理解するであろう。
【0106】
実施例1:二重特異性キメラ抗原
ヒトタンパク質(例えば、増殖因子)又はその一部を免疫原性担体分子、例えばコレラ毒素Bサブユニット(CTB)と組み合わせて組換えタンパク質を作製する場合に生じる問題は、ヒトタンパク質(例えば、ヒト増殖因子)が必ずしも正しい天然の立体配置に折り畳まれないことである。組換えタンパク質内のヒトタンパク質が正しく折り畳まれる能力は、密接に関連する分子間であっても、タンパク質ごとに大きく異なり得る。例えば、上皮増殖因子(EGF)は、不溶性封入体から容易に正確に折り畳むことができ、その後非常に安定であるが、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGFα)及びニューレグリンのEGF様ドメインはいずれも、適切に折り畳まれた形態を作り出すことがより困難であり、また著しく安定性が低い。
【0107】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、3つの受容体、VEGFR-1、VEGFR-2及びVEGFR-3を介したシグナル伝達を媒介する4つの構造的に関連するタンパク質、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C及びVEGF-Dを含む。VEGF-A及びVEGF-Dは、VEGFR-1を介してシグナルを伝達し、一方で、VEGF-A、VEGF-B及びVEGF-Cは、VEGFR-2に結合することができる。VEGF-C及びVEGF-Dは、VEGFR-3に結合し、その結果、それらの受容体結合特性において類似性及び差異の両方を示す。すべてのVEGF増殖因子は、構造的に共通の「相同ドメイン」を共有し、VEGFR-1及びVEGFR-2(VEGF-A、VEGF-B及びVEGF-C)の認識及び結合に関連し、第1のシステイン残基の下流の配列を含む。第1のシステイン残基の上流のVEGF-A及びVEGF-BのN末端は、受容体結合に直接関与しない。対照的に、VEGF-C及びVEGF-DのN末端は、VEGFR-3への結合に関与する。
【0108】
VEGF-Aは、不溶性封入体として大腸菌で発現され、続いて変性され、可溶化され、完全機能性タンパク質にリフォールディングされ得る。VEGF-Dは、封入体からのリフォールディングに対して同様に受容性であるが、はるかに安定性が低く、4℃でわずか1週間が経過した後に目に見える分解の徴候を示し、それにより、VEGF-Dは、その天然形態での治療適用における使用に不向きとなる。VEGF-Cは、封入体から、又は細菌中の可溶性タンパク質として発現された場合に、正確に折り畳むことが非常に困難である。
【0109】
VEGF-C及びVEGF-DのN末端領域(第1のシステイン残基の上流の配列)は、天然タンパク質中に、VEGFR-3と相互作用するアルファヘリックスを形成する。この構造はまた、この構成を採用し維持するためにVEGF分子の他の部分との相互作用を必要とする。単独で、又は「無関係な」キャリアとの遺伝子融合として発現される場合、得られたタンパク質は、VEGFR-3に対する結合を何ら示さない。しかしながら、
図1Aに示されるように、VEGF-AのN末端ドメインがVEGF-DのN末端で置き換えられると、得られたタンパク質は3つのVEGF受容体すべてに結合し、3つの別個のシグナル伝達経路を調節することができる。したがって、VEGF-Aドメインは安定化足場として働き、VEGF-DのN末端ドメインがその天然構造をとり、維持することを可能にする。VEGF-D及びVEGF-Aの両方に由来する配列を含む安定化二重特異性キメラVEGFを、10アミノ酸グリシン/セリンリッチの柔軟性リンカーによって分離されたCTBのC末端にさらに融合した。この分子をIN-02と命名し、
図1Bに概略的に示す。IN-02のタンパク質配列を
図1Cに示す。
【0110】
VEGFに基づく分子の機能的特徴を分析するために、2つのアッセイ、すなわち、管形成アッセイ(TFA)及びELISAを使用した。TFAは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養すること、及び、毛細血管の形成を表す「管」の発達を経時的に観察することを含んだ。次いで、刺激性(増殖因子)及び阻害性(中和抗体)モジュレーターと共に培養した細胞による管の形成を、処理していないものと比較した。ELISAのために、組換えVEGFR(ヒトIgG Fc領域に融合したVEGF受容体の細胞外ドメイン)をELISAプレート上にコーティングした。プレートをVEGFタンパク質とインキュベートし、結合したVEGFをタンパク質特異的抗体で検出した。
【0111】
図1Dは、ヒト内皮細胞(HUVEC)による管の発達(血管化)に対する増殖因子及び中和抗体(Nab)の効果を示す。VEGF-A及びVEGF-Dはいずれも独立して管形成を刺激することができ(
図1D、白色及び灰色のバー)、この刺激は、各増殖因子への中和抗体の添加によって阻止された。キメラVEGF-DAタンパク質もまた、管形成を刺激することができる(第1の斜線バー)。この刺激は、VEGF-A及びVEGF-Dに対する抗体を別々に中和することによって部分的に阻害することができ、両方の抗体を添加するとより完全に阻害することができる。
【0112】
図2は、プレート上に固定化されたVEGF受容体へのVEGFタンパク質の結合を示すELISAデータを示す。組換えヒトVEGF-Aは、受容体-1及び受容体2に結合した(左のバー)。VEGF-Dは受容体3及び受容体2に結合した(右のバー)。キメラIN-02タンパク質は、受容体1、2及び3に結合した。受容体-2及び抗VEGF-D抗体の両方がキメラタンパク質の同じ領域に結合したため、受容体2へのIN-02の結合は、抗VEGF-A抗体(灰色のバー)を使用してのみ検出することができた。3匹のウサギに、100μgのIN-02(サブカット)を用いて、0日目、14日目、28日目及び56日目に免疫を付与した。0日目(免疫付与前)、2日目、3日目及び56日目に採血した。明確にするために、免疫付与前及び採血3データのみを示す。
【0113】
図3は、固定化免疫原に結合したIN-02タンパク質で免疫を付与した3匹のウサギからの免疫付与前及び免疫付与後(BL3)の血清を示すELISAデータを示し、3匹すべてのウサギが免疫原に対する免疫応答を開始したこと、及び免疫付与前反応性がなかったことを明確に示した。
【0114】
図4は、固定化rCTBに結合したIN-02タンパク質で免疫を付与した3匹のウサギからの免疫付与前及び免疫付与後(BL3)の血清(カプリル酸精製)を示すELISAデータを示す。3匹すべてのウサギは、免疫原のCTBドメインに対する免疫応答を開始し、rCTBと反応した。免疫付与前反応性はなかった。
【0115】
図5は、固定化VEGF-Aに結合したIN-02タンパク質で免疫を付与した3匹のウサギからの免疫付与前及び免疫付与後(BL3)血清を示すELISAデータを示す。3匹すべてのウサギは、免疫原のVEGF-Aドメインに対する免疫応答を開始し、これもまたrhVEGF-Aと反応した。免疫付与前反応性はなかった。
【0116】
図6は、固定化VEGF-Dに結合したIN-02タンパク質で免疫を付与した3匹のウサギからの免疫付与前及び免疫付与後(BL3)の血清を示すELISAを示す。3匹すべてのウサギは、免疫原のVEGF-Dドメインに対する免疫応答を開始し、これもまたrhVEGF-Dと反応した。免疫付与前反応性はなかった。ウサギにIN-02タンパク質で免疫を付与した後、すべての個体は、免疫化抗原に対する免疫応答を生じ、その応答は、免疫原性CTB「キャリア」ドメインに加えて、完全長天然rhVEGF-A及びrhVEGF-Dを認識することができるものであった。
【0117】
VEGF-A及びVEGF-Dによって誘導される中和シグナル伝達における免疫応答の有効性を判定するために、HUVEC管形成アッセイを前述のように行った。
図7は、IN-02タンパク質で免疫を付与したウサギからのカプリル酸精製血清を用いて行った管形成アッセイの結果を示す。3つすべての血清は、VEGF-A及びVEGF-Dの両方で同時に共刺激することによって誘導された管形成を有意に阻害した(黒色バー)。
【0118】
図8は、4℃で1ヶ月間貯蔵したIN-02タンパク質に対して行ったHUVEC管形成アッセイの結果を示す。貯蔵していたにもかかわらず、IN-02タンパク質は依然としてVEGF-A又はVEGF-Dと同程度に管形成を刺激し、その刺激は、VEGF-A及びVEGF-Dを中和することができる抗体と同時にインキュベートすることによって効果的に阻害することができた。
【0119】
参照による組み込み
本明細書で引用又は参照されるすべての文書、及び本明細書で引用される文書で引用又は参照されるすべての文書は、本明細書で言及される任意の製品のための、又は参照により本明細書に組み込まれる任意の文書における任意の製造者の指示、説明、製品仕様、及び製品シートと共に、参照により本明細書に組み込まれ、本開示の実施に使用され得る。
【0120】
均等物
本明細書に記載された詳細な実施例及び実施形態は、例示のみを目的として例として与えられており、決して本開示を限定するものとは見なされないことが理解される。その観点から様々な修正又は変更が、当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。本開示のシステム、方法、及びプロセスに関連する追加の有利な特徴及び機能は、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。さらに、当業者は、本明細書に記載の開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を理解し、又は日常的な実験のみを使用してそれを確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【配列表】