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特許7631247水素機器コンテナの換気性能判定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】水素機器コンテナの換気性能判定システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20250210BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20250210BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20250210BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20250210BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20250210BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20250210BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
F24F7/007 B
H01M8/2475
H01M8/0432
H01M8/04303
H01M8/04228
H01M8/04313
F24F7/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022019944
(22)【出願日】2022-02-10
(65)【公開番号】P2023117307
(43)【公開日】2023-08-23
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆利
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航大
(72)【発明者】
【氏名】庄司 直樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 翔
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272310(JP,A)
【文献】特表2021-507451(JP,A)
【文献】特開平05-032291(JP,A)
【文献】特開平08-128685(JP,A)
【文献】特開2016-017679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
H01M 8/2475
H01M 8/0432
H01M 8/04303
H01M 8/04228
H01M 8/04313
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱反応を生じさせる水素機器がコンテナの内部空間に収容され、フィルタが設けられた前記コンテナの吸入口から前記内部空間に吸入された空気を、前記コンテナの排出口に設けられたファンによって外部に排出するように構成された水素機器コンテナの換気性能を判定する水素機器コンテナの換気性能判定システムであって、
前記内部空間の内部温度を測定する内部温度測定器と、
前記コンテナの外部温度を測定する外部温度測定器と、
前記コンテナに照射される日射量を測定する日射量測定器と、
前記水素機器の運転を行っている間、前記内部空間の換気性能を判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記内部温度測定器により測定された前記内部温度と、前記外部温度測定器により測定された前記外部温度と、前記日射量測定器により測定された前記日射量とに基づいて、前記内部空間の換気性能を判定する、水素機器コンテナの換気性能判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記水素機器の運転停止時における前記内部温度と前記外部温度との停止時温度差を前記日射量と関連づけて記憶しており、判定時に測定された前記内部温度と前記外部温度との判定時温度差と、判定時に測定された前記日射量に対応する前記停止時温度差とを比較することにより、前記換気性能を判定する、請求項1に記載の水素機器コンテナの換気性能判定システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記停止時温度差を運転停止時における前記内部温度-前記外部温度で表し、前記判定時温度差を判定時における前記内部温度-前記外部温度で表したときに、前記判定時温度差から前記停止時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、前記換気性能が低下していると判定する、請求項2に記載の水素機器コンテナの換気性能判定システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記判定時温度差から前記停止時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも複数回大きくなった場合に、前記換気性能が低下していると判定する、請求項3に記載の水素機器コンテナの換気性能判定システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記換気性能が正常である正常運転時における前記内部温度と前記外部温度との正常時温度差を前記日射量と関連づけて記憶しており、判定時に測定された前記内部温度と前記外部温度との判定時温度差と、判定時に測定された前記日射量に対応する前記正常時温度差とを比較することにより、前記換気性能を判定する、請求項1に記載の水素機器コンテナの換気性能判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、水素機器コンテナの換気性能判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素を用いたエネルギ貯蔵システムが知られている。例えば、エネルギ貯蔵システムは、水素製造装置と、水素貯蔵装置と、燃料電池装置と、を備えている。このうち、水素製造装置は、外部電力を用いて水素を製造する。製造された水素は、水素貯蔵装置に貯蔵される。燃料電池装置は、必要に応じて、貯蔵された水素を用いて発電を行い、発電電力がシステムから出力される。
【0003】
このような構成を有するエネルギ貯蔵システムは、コンテナに収容される場合がある。コンテナには、内部空間を換気するためのファンが設けられている。コンテナには、外部の空気を吸入するための吸入口が設けられており、吸入口には、空気を濾過するフィルタが設けられている。運転時にはファンが駆動され、水素製造装置および燃料電池装置で発生した熱は、コンテナ外部に排出されている。
【0004】
ファンは経年劣化し、換気性能が低下し得る。フィルタは、空気中の塵などを捕捉するため、運転を継続することにより目詰まりを起こし得る。フィルタが目詰まりすると、換気性能が低下し得る。
【0005】
ファンの劣化およびフィルタの目詰まりは、コンテナの周囲環境に依存する。このため、換気性能が低下しているか否かを見極めるためには、メンテナンス要員によりファンおよびフィルタの目視確認を行うことが効果的である。しかしながら、メンテナンス要員がコンテナに出向いて、ファンおよびフィルタを目視確認することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6114777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施の形態は、このような点を考慮してなされたものであり、換気性能が低下しているか否かを容易に判定することができる水素機器コンテナの換気性能判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムは、発熱反応を生じさせる水素機器がコンテナの内部空間に収容され、フィルタが設けられたコンテナの吸入口から内部空間に吸入された空気を、コンテナの排出口に設けられたファンによって外部に排出するように構成された水素機器コンテナの換気性能を判定するシステムである。水素機器コンテナの換気性能判定システムは、内部空間の内部温度を測定する内部温度測定器と、コンテナの外部温度を測定する外部温度測定器と、コンテナに照射される日射量を測定する日射量測定器と、判定部と、を備えている。判定部は、内部温度測定器により測定された内部温度と、外部温度測定器により測定された外部温度と、日射量測定器により測定された日射量とに基づいて、内部空間の換気性能を判定する。
【0009】
実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムは、発熱反応を生じさせる水素機器がコンテナの内部空間に収容され、フィルタが設けられたコンテナの吸入口から内部空間に吸入された空気を、コンテナの排出口に設けられたファンによって外部に排出するように構成された水素機器コンテナの換気性能を判定するシステムである。水素機器コンテナの換気性能判定システムは、水素機器の上方の位置における内部空間の第1内部温度を測定する第1内部温度測定器と、第1内部温度測定器よりも排出口に近い位置における内部空間の第2内部温度を測定する第2内部温度測定器と、判定部と、を備えている。判定部は、第1内部温度測定器により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器により測定された第2内部温度と、に基づいて、内部空間の換気性能を判定する。
【0010】
実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムは、発熱反応を生じさせる水素機器がコンテナの内部空間に収容され、フィルタが設けられたコンテナの吸入口から内部空間に吸入された空気を、コンテナの排出口に設けられたファンによって外部に排出するように構成された水素機器コンテナの換気性能を判定するシステムである。水素機器コンテナの換気性能判定システムは、水素機器と排出口との間の位置における内部空間の第1内部温度を測定する第1内部温度測定器と、第1内部温度測定器の上方位置における内部空間の第2内部温度を測定する第2内部温度測定器と、判定部と、を備えている。判定部は、第1内部温度測定器により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器により測定された第2内部温度と、に基づいて、換気性能を判定する。
【0011】
実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムは、発熱反応を生じさせる水素機器がコンテナの内部空間に収容され、フィルタが設けられたコンテナの吸入口から内部空間に吸入された空気を、コンテナの排出口に設けられたファンによって外部に排出するように構成された水素機器コンテナの換気性能を判定するシステムである。水素機器コンテナの換気性能判定システムは、水素機器と排出口との間の位置であって、内部空間の下部における第1内部温度を測定する第1内部温度測定器と、水素機器と排出口との間の位置であって、内部空間の上部における第2内部温度を測定する第2内部温度測定器と、水素機器と排出口との間の位置における空気の流れを撮像する画像撮像器と、判定部と、を備えている。判定部は、第1内部温度測定器により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器により測定された第2内部温度と、画像撮像器により撮像された空気の流れと、に基づいて、換気性能を判定する。
【発明の効果】
【0012】
実施の形態によれば、換気性能が低下しているか否かを容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムを示す概略構成図である。
図2図2は、図1の水素機器コンテナの内部温度と外部温度の推移を示すグラフである。
図3図3は、本発明の第2の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムを示す概略構成図である。
図4図4は、図3の水素機器コンテナの内部温度の分布を模式的に示すグラフである。
図5図5は、本発明の第3の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムを示す概略構成図である。
図6図6は、図5の水素機器コンテナの内部温度の分布を模式的に示すグラフである。
図7図7は、本発明の第4の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムを示す概略構成図である。
図8図8は、図7の水素機器コンテナの内部温度の分布を模式的に示すグラフである。
図9図9は、本発明の第5の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムについて説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1および図2を用いて、本実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムについて説明する。本実施の形態による水素機器コンテナの換気性能システムは、水素機器コンテナに適用される。ここではまず、この水素機器コンテナについて説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態による水素機器コンテナ1には、エネルギ貯蔵システムを構成する機器が収容されている。このエネルギ貯蔵システムは、外部電力を用いて水素を製造して貯蔵し、必要に応じて、貯蔵した水素を用いて燃料電池装置で発電するように構成されている。
【0017】
より具体的には、水素機器コンテナ1は、コンテナ2と、水素機器3と、吸入口4と、フィルタ5と、排出口6と、ファン7と、制御機器8と、を備えている。
【0018】
コンテナ2は、内部空間2aを有する直方体状の筐体である。コンテナ2は、例えば、運搬用として規格化されたコンテナ2の大きさで形成されており、内部に機器を収容した状態で運搬可能に構成されている。例えば、コンテナ2は、規格化された20フィートコンテナまたは12フィートコンテナの大きさで形成されていてもよい。20フィートコンテナは、ISO規格で規定されており、長さが6096mm、幅が2438mm、高さが2591mmである。12フィートコンテナも同様にISO規格で規定されており、長さが3600mm、幅が2438mm、高さが2591mmである。
【0019】
水素機器3は、内部空間2aに収容されて、発熱反応を生じさせる機器である。水素機器3は、水素製造装置と、水素貯蔵装置と、燃料電池装置と、を含んでいる。水素製造装置は、外部電源から供給される電力エネルギを用いて水素を製造する。水素は、水を電気分解することにより製造される。この電気分解時に発熱が生じる。水素貯蔵装置は、水 素製造装置により製造された水素を貯蔵する。燃料電池装置は、貯蔵された水素を酸素と化学反応させることにより、発電を行うとともに水を生成する。この発電時に発熱が生じる。
【0020】
吸入口4は、コンテナ2の外部の空気を内部空間2aに吸入する。吸入口4は、コンテナ2の一の側壁に形成された開口によって構成されていてもよい。
【0021】
フィルタ5は、吸入口4に取り付けられていてもよい。フィルタ5は、吸入口4から内部空間2aに吸入される空気から、塵埃を捕捉して空気を濾過するように構成されている。
【0022】
排出口6は、内部空間2a内の空気をコンテナ2の外部に排出する。排出口6は、コンテナ2の一の側壁に形成された開口によって構成されていてもよい。排出口6は、吸入口4が形成された側壁と対向する側壁に形成されていてもよい。
【0023】
ファン7は、排出口6に取り付けられていてもよい。ファン7は、内部空間2aを換気するように構成されている。ファン7が駆動されることにより、内部空間2aの空気が、排出口6を通ってコンテナ2の外部に排出される。
【0024】
制御機器8は、上述した水素機器コンテナ1を制御するように構成されている。より具体的には、制御機器8は、上述した水素製造装置、水素貯蔵装置および燃料電池装置で構成される水素機器3を制御する。制御機器8は、上述したファン7を制御してもよい。
【0025】
このようにして、水素機器コンテナ1は、発熱反応を生じさせる水素機器3がコンテナ2の内部空間2aに収容されように構成されている。また、水素機器コンテナ1は、フィルタ5が設けられたコンテナ2の吸入口4から内部空間2aに吸入された空気を、コンテナ2の排出口6に設けられたファン7によって外部に排出するように構成されている
【0026】
本実施の形態による水素機器コンテナ1は、水素機器コンテナの換気性能判定システム(以下、単に、換気性能判定システム10と記す)を更に備えている。換気性能判定システム10は、上述した水素機器コンテナ1の換気性能を判定するシステムである。換気性能は、フィルタ5の目詰まりおよびファン7の劣化のうちの少なくとも一方により低下し得る。
【0027】
内部温度測定器11は、内部空間2aの内部温度を測定する。図1に示す例においては、内部温度測定器11は、水素機器3の上方に位置しており、内部空間2aの上部に位置している。
【0028】
外部温度測定器12は、コンテナ2の外部温度を測定する。図1に示す例においては、外部温度測定器12は、コンテナ2の上面に取り付けられており、コンテナ2の外部の空気の温度を測定する。外部温度測定器12は、コンテナ2の上面のうち、排出口6に近い位置に位置しているが、これに限られることはない。
【0029】
日射量測定器13は、コンテナ2に照射される日射量を測定する。図1に示す例においては、日射量測定器13は、コンテナ2の上面に取り付けられており、コンテナ2の上面に照射される日射量を測定する。日射量は、単位時間に太陽から受け取る単位面積当たりの放射エネルギの量である。日射量測定器13は、コンテナ2の上面のうち、吸入口4に近い位置に位置しているが、これに限られることはない。
【0030】
判定部14は、上述した制御機器8に内蔵されていてもよい。
【0031】
本実施の形態による判定部14は、内部温度測定器11により測定された内部温度と、外部温度測定器12により測定された外部温度と、日射量測定器13により測定された日射量とに基づいて、換気性能が低下しているか否かを判定する。判定部14に、内部温度測定器11、外部温度測定器12および日射量測定器13が接続されており、測定された内部温度、外部温度および日射量が、判定部14に送信される。
【0032】
判定部14は、水素機器3の運転停止時における内部温度と外部温度との停止時温度差を日射量と関連づけて記憶していてもよい。言い換えると、運転停止時に内部温度と外部温度と日射量とが測定され、内部温度と外部温度から停止時温度差が求められ、日射量と関連づけられて判定部14に記憶されている。種々の日射量と関連づけられて、停止時温度差が記憶されていることが好ましい。停止時温度差は、内部温度-外部温度で表されてもよい。運転停止時には、水素機器3は運転を停止しているが、ファン7は運転し、内部空間2aの換気が行われている。
【0033】
判定部14は、判定時に測定された内部温度と外部温度との判定時温度差と、判定時に測定された日射量に対応する停止時温度差とを比較することにより、換気性能を判定する。言い換えると、判定時に内部温度と外部温度と日射量とが測定され、内部温度と外部温度から判定時温度差が求められる。判定時温度差から停止時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定される。このときの停止時温度差は、判定時の日射量と同一又は最も近い運転停止時の日射量と関連づけられた停止時温度差が用いられる。判定時温度差は、内部温度-外部温度で表されてもよい。閾値は、各測定器の測定誤差などを加味して、任意に設定されてもよい。
【0034】
次に、本実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システム10における換気性能の判定方法について説明する。
【0035】
水素機器3の運転停止時に、内部温度測定器11により内部温度が測定され、外部温度測定器12により外部温度が測定される。測定された内部温度と外部温度から、判定部14により停止時温度差が求められる。求められた停止温度差は、このときに日射量測定器13により測定された日射量と関連づけられて、判定部14に記憶される。種々の日射量について同様にして停止時温度差が求められて、日射量と関連づけて停止時温度差が記憶される。このことにより、停止時温度差のデータベースが構築される。
【0036】
水素機器3の運転を行っている間、判定部14により、内部空間2aの換気性能の判定が行われる。判定時には、内部温度測定器11により内部温度が測定され、外部温度測定器12により外部温度が測定される。測定された内部温度と外部温度から、判定部14により判定時温度差が求められる。このときに日射量測定器13により測定された日射量と同一又は最も近い日射量と関連づけられた停止時温度差が、判定部14に記憶された複数の停止時温度差のデータベースから選定される。求められた判定時温度差から、選定された停止時温度差を差し引き、この差が所定の閾値よりも大きい場合に、判定部14は、換気性能が低下していると判定する。
【0037】
水素機器3の運転中、水素機器3としての水素製造装置または燃料電池装置が発熱反応を生じる。発生した熱は、内部空間2a内の空気を暖め、暖められた空気が上昇する。換気性能が正常である場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが形成されている。この場合、暖められた空気は、排出口6に向かう空気の流れに乗り、排出口6からコンテナ2の外部に排出される。このことにより、内部温度の上昇が抑制される。このため、換気性能が正常である場合、内部温度と外部温度との温度差は比較的小さい。
【0038】
一方、換気性能が低下している場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが弱まり、場合によっては、そのような空気の流れが形成されない。この場合、水素機器3の発熱によって暖められた空気は、内部空間2aの上部に留まる。このことにより、内部温度が上昇し得る。このため、内部温度と外部温度との温度差は比較的大きくなる。この温度差が、停止時の温度差よりもある程度大きい場合に、換気性能が低下していると言える。
【0039】
例えば、判定部14は、判定時温度差と運転停止時温度差との差が、所定の閾値よりも大きくなることが、複数回現れた場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。
【0040】
図2は、図1の水素機器3の運転と停止を繰り返した場合における水素機器コンテナ1の内部温度と外部温度の推移を模式的に示したグラフである。図2は、第1運転時には、換気性能が正常であり、第2運転時および第3運転時に換気性能が低下した場合の温度推移を示している。図2に示すように、第1運転時には、換気性能が正常であるため、内部温度と外部温度との差は小さい。第2運転時には、換気性能が低下しているため、内部温度が外部温度よりも大きく上昇し得る。水素機器3の運転を停止すると内部温度が下降し、やがて内部温度は外部温度とほぼ等しくなる。その後、第3運転として水素機器3の運転を再開すると、第2運転時と同様にして内部温度が外部温度よりも大きく上昇し得る。
【0041】
判定部14は、水素機器3の運転時の温度上昇によって、判定時温度差から停止時温度差を差し引いた値が所定の閾値よりも初めて大きくなった場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。例えば、図2に示す例では、第2運転時に、内部温度が温度閾値を超えているため、換気性能が低下していると判定してもよい。内部温度が温度閾値を初めて超えたときに、換気性能が低下していると判定してもよい。温度閾値は、上述した閾値を温度に換算した値である。
【0042】
あるいは、判定部14は、判定時温度差から停止時温度差を差し引いた値が所定の閾値よりも複数回大きくなった場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。例えば、図2に示す例では、第2運転時に換気性能が低下していると判定せず、第3運転時に換気性能が低下していると判定してもよい。この場合、判定時温度差と停止時温度差との差が閾値を2回超えた場合に、換気性能が低下していると判定する。吸入口4に、葉やゴミなどの障害物が付着した場合には換気性能が低下し得るが、このような障害物は、風が吹いたり、時間が経過したりすることにより自然に取り除かれる場合が考えられる。このため、判定時温度差と運転時温度差との差が、所定の閾値よりも複数回大きくなった場合に換気性能が低下していると判定することにより、判定精度を向上させることができる。判定時温度差と運転時温度差との差が、閾値よりも低い状態から高い状態に推移した場合に、閾値を超えたという回数がカウントされる。このカウントは、メンテナンス要員による点検時などに、リセットされてもよい。判定時温度差から停止時温度差を差し引いた値が所定の閾値を超える回数は、2回に限られることはなく、3回以上であってもよい。
【0043】
換気性能が低下していると判定された場合、判定部14は、任意の手段により警報を発してもよい。例えば、判定部14は、換気性能が低下している旨を報知してもよい。この報知を認識したメンテナンス要員は、ファン7およびフィルタ5を点検し、必要に応じて清掃、修理または交換を行う。このことにより、内部空間2aの換気性能を正常に戻すことができる。あるいは、判定部14は、換気性能が低下している旨を報知する指示を、図示しない報知手段に送信して、この報知手段が報知するようにしてもよい。
【0044】
このように本実施の形態によれば、内部温度測定器11により測定された内部温度と、外部温度測定器12により測定された外部温度と、日射量測定器13により測定された日射量とに基づいて、内部空間2aの換気性能が判定される。このことにより、メンテナンス要員がコンテナ2に出向かなくても、換気性能の判定を行うことができる。このため、換気性能が低下しているか否かを容易に判定することができる。また、本実施の形態によれば、屋外に設置された水素機器コンテナ1の内部温度に影響を与える日射量を加味して、換気性能を判定することができる。このため、換気性能の判定精度を向上させることができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、水素機器3の運転停止時における内部温度と外部温度との停止時温度差が日射量と関連づけて記憶され、判定時に測定された内部温度と外部温度との判定時温度差と、判定時に測定された日射量に対応する停止時温度差とを比較することにより、換気性能が判定される。このことにより、換気性能の判定に、水素機器コンテナ1の内部温度に影響を与える日射量の影響が含まれることを防止することができる。このため、換気性能の判定精度をより一層向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、判定時における内部温度-外部温度で表される判定時温度差から、運転停止時における内部温度-外部温度で表される停止時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定される。このことにより、閾値を適切に設定することにより、換気性能の判定に、各測定器の測定誤差の影響が含まれることを防止することができる。このため、換気性能の判定精度をより一層向上させることができる。
【0047】
なお、上述した本実施の形態においては、判定時温度差と停止時温度差とは、日射量で対応している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、判定時温度差と停止時温度差とは、日射量とコンテナ2の上面面積とを積算して得られる熱量で対応させてもよい。より具体的には、運転停止時に、測定された日射量にコンテナ2の上面面積を積算して熱量を求め、この熱量に関連づけられて停止時温度差が記憶される。判定時には、測定された日射量にコンテナ2の上面面積を積算して熱量を求める。求められた熱量と同一又は最も近い熱量と関連づけられた停止時温度差が選定される。求められた判定時温度差から、選定された停止時温度差を差し引き、この差が所定の閾値よりも大きい場合に、判定部14は、換気性能が低下していると判定する。
【0048】
また、上述した本実施の形態においては、判定部14が、水素機器3の運転停止時における内部温度と外部温度との停止時温度差を日射量と関連づけて記憶しておき、判定時に測定された内部温度と外部温度との判定時温度差と、判定時に測定された日射量に対応する停止時温度差とを比較することにより、換気性能を判定する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。
【0049】
例えば、判定部14は、換気性能が正常である正常運転時における内部温度と外部温度との正常時温度差を日射量と関連づけて記憶しておき、判定時に測定された内部温度と外部温度との判定時温度差と、判定時に測定された日射量に対応する停止時温度差とを比較することにより、換気性能を判定してもよい。言い換えると、判定時に内部温度と外部温度と日射量とが測定され、内部温度と外部温度から判定時温度差が求められる。判定時温度差から正常時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定される。このときの正常時温度差は、判定時の日射量と同一又は最も近い正常運転時の日射量と関連づけられた正常時温度差が用いられる。正常時温度差は、内部温度-外部温度で表されてもよい。この場合、換気性能の判定に、水素機器コンテナ1の内部温度に影響を与える日射量の影響が含まれることを防止することができる、換気性能の判定精度をより一層向上させることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、図3および図4を用いて、本発明の第2の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムについて説明する。
【0051】
図3および図4に示す第2の実施の形態においては、水素機器の上方の位置における内部空間の第1内部温度と、排出口に近い位置における内部空間の第2内部温度と、に基づいて、内部空間の換気性能を判定する点が主に異なり、他の構成は、図1および図2に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図3および図4において、図1および図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図3に示すように、本実施の形態による換気性能判定システム10は、図1に示す内部温度測定器11の代わりに、第1内部温度測定器21と、第2内部温度測定器22と、を備えている。図3に示す換気性能判定システム10は、外部温度測定器12および日射量測定器13を備えていなくてもよい。
【0053】
第1内部温度測定器21は、内部空間2aの第1内部温度を測定する。図3に示す例では、第1内部温度測定器21は、水素機器3の上方に位置しており、内部空間2aの上部に位置している。
【0054】
第2内部温度測定器22は、内部空間2aの第2内部温度を測定する。図3に示す例では、第2内部温度測定器22は、第1内部温度測定器21よりも排出口6に近い位置に位置しており、内部空間2aの上部に位置している。
【0055】
本実施の形態による換気性能判定システム10は、第3内部温度測定器23を更に備えていてもよい。第3内部温度測定器23は、内部空間2aの内部温度を測定する。図3に示す例では、第3内部温度測定器23は、第1内部温度測定器21よりも吸入口4に近い位置に位置しており、内部空間2aの上部に位置している。
【0056】
本実施の形態による判定部14は、第1内部温度測定器21により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器22により測定された第2内部温度と、に基づいて、内部空間2aの換気性能を判定する。判定部14に、第1内部温度測定器21および第2内部温度測定器22が接続されており、測定された第1内部温度および第2内部温度が、判定部14に送信される。
【0057】
判定部14は、換気性能が正常である正常運転時における第1内部温度と第2内部温度との正常時温度差を記憶していてもよい。言い換えると、正常運転時に第1内部温度と第2内部温度とが測定され、第1内部温度と第2内部温度から正常時温度差が求められて、判定部14に記憶される。正常時温度差は、第2内部温度-第1内部温度で表されてもよい。
【0058】
判定部14は、正常時温度差と、判定時に測定された第1内部温度と第2内部温度との判定時温度差とを比較することにより、換気性能を判定する。言い換えると、判定時に第1内部温度と第2内部温度とが測定され、第1内部温度と第2内部温度から判定時温度差が求められる。本実施の形態による判定部14は、正常時温度差から判定時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定する。判定時温度差は、第2内部温度-第1内部温度で表されてもよい。閾値は、各測定器の測定誤差等を加味して、任意に設定されてもよい。判定部14は、正常時温度差から判定時温度差を差し引いた値が所定の閾値よりも初めて大きくなった場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。あるいは、閾値は、正常時温度差から判定時温度差を差し引いた値が所定の閾値よりも複数回大きくなった場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。
【0059】
水素機器3の運転中、判定部14により、内部空間2aの換気性能の判定が行われる。判定時には、第1内部温度測定器21により第1内部温度が測定され、第2内部温度測定器22により第2内部温度が測定される。測定された第1内部温度と第2内部温度から、判定部14により判定時温度差が求められる。上述した正常時温度差から、判定時温度差を差し引き、この差が所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定する。
【0060】
水素機器3の運転中、水素機器3としての水素製造装置または燃料電池装置が発熱反応を生じる。発生した熱は、内部空間2a内の空気を暖め、暖められた空気が上昇する。換気性能が正常である場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが形成されている。この場合、暖められた空気は、排出口6に向かう空気の流れに乗り、排出口6からコンテナ2の外部に排出される。このことにより、図3の実線矢印で示すように、水素機器3の近傍で暖められた空気は、排出口6に向かい、第1内部温度の上昇が抑制される。このため、第2内部温度が第1内部温度よりも高くなりやすい。
【0061】
一方、換気性能が低下している場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが弱まり、場合によっては、そのような空気の流れが形成されない。この場合、図3の破線矢印で示すように、水素機器3の近傍で暖められた空気は上昇し、内部空間2aの上部に留まる。このことにより、第1内部温度が正常運転時における第1内部温度よりも上昇し得るとともに、第2内部温度が正常運転時における第2内部温度よりも下降し得る。第2内部温度-第1内部温度で表される判定時温度差が、正常時温度差よりも小さくなる。
【0062】
図4は、正常運転時における第1内部温度および第2内部温度の一例を、実線で示すとともに、換気性能低下時における第1内部温度および第2内部温度の一例を、破線で示している。図4に示す例では、正常運転時では、第2内部温度が第1内部温度よりも高くなり得て、第2内部温度-第1内部温度で表される判定時温度差が、正の値を取り得る。換気性能低下時には、第1内部温度が第2内部温度よりも高くなり得て、判定時温度差が、負の値を取り得る。このことにより、判定時温度差は、正常時温度差よりも小さくなる。このため、正常時温度差から判定時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定することができる。
【0063】
このように本実施の形態によれば、第1内部温度測定器21が、水素機器3の上方の位置における内部空間2aの第1内部温度を測定し、第2内部温度測定器22が、第1内部温度測定器よりも排出口6に近い位置における内部空間2aの第2内部温度を測定する。第1内部温度測定器21により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器22により測定された第2内部温度測定器22とに基づいて、内部空間2aの換気性能が判定される。このことにより、メンテナンス要員がコンテナ2に出向かなくても、換気性能の判定を行うことができる。このため、換気性能が低下しているか否かを容易に判定することができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、換気性能が正常である正常運転時における第1内部温度と第2内部温度との正常時温度差が記憶され、判定時に測定された第1内部温度と第2内部温度との判定時温度差とを比較することにより、換気性能が判定される。このことにより、換気性能が低下しているか否かを有意に判定することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、正常運転時における第2内部温度-第1内部温度で表される正常時温度差から、判定時における第2内部温度-第1内部温度で表される判定時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定される。このことにより、閾値を適切に設定することにより、換気性能の判定に、各測定器の測定誤差の影響が含まれることを防止することができる。このため、換気性能の判定精度をより一層向上させることができる。
【0066】
(第3の実施の形態)
次に、図5および図6を用いて、本発明の第3の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムについて説明する。
【0067】
図5および図6に示す第3の実施の形態においては、水素機器と排出口との間の位置における内部空間の第1内部温度と、第1内部温度の測定位置の上方位置における内部空間の第2内部温度と、に基づいて、内部空間の換気性能を判定する点が主に異なり、他の構成は、図3および図4に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、図5および図6において、図3および図4に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
図5に示すように、本実施の形態においては、第1内部温度測定器21は、上方から見たときに水素機器3と排出口6との間に位置している。より具体的には、第1内部温度測定器21は、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れ方向において、水素機器3の下流側であって、排出口6の上流側に位置している。また、第1内部温度測定器21は、高さ方向において、水素機器3と排出口6との間の高さ位置に位置している。
【0069】
第2内部温度測定器22は、上方から見たときに水素機器3と排出口6との間に位置している。より具体的には、第2内部温度測定器22は、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れ方向において、水素機器3の下流側であって、排出口6の上流側に位置している。また、第2内部温度測定器22は、高さ方向において、第1内部温度測定器の上方に位置しており、内部空間2aの上部に位置している。
【0070】
第3内部温度測定器23は、上方から見たときに水素機器3と排出口6との間に位置している。より具体的には、第3内部温度測定器23は、第1内部温度測定器21の下方に位置しており、内部空間2aの下部に位置している。
【0071】
本実施の形態による判定部14は、第1内部温度測定器21により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器22により測定された第2内部温度と、に基づいて、内部空間2aの換気性能を判定する。判定部14に、第1内部温度測定器21および第2内部温度測定器22が接続されており、測定された第1内部温度および第2内部温度が、判定部14に送信される。
【0072】
判定部14は、換気性能が正常である正常運転時における第1内部温度と第2内部温度との正常時温度差を記憶していてもよい。言い換えると、正常運転時に第1内部温度と第2内部温度とが測定され、第1内部温度と第2内部温度から正常時温度差が求められて、判定部14に記憶される。正常時温度差は、第2内部温度-第1内部温度で表されてもよい。
【0073】
判定部14は、正常時温度差と、判定時に測定された第1内部温度と第2内部温度との判定時温度差とを比較することにより、換気性能を判定する。言い換えると、判定時に第1内部温度と第2内部温度とが測定され、第1内部温度と第2内部温度から判定時温度差が求められる。本実施の形態による判定部14は、判定時温度差から正常時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定する。判定時温度差は、第2内部温度-第1内部温度で表されてもよい。閾値は、各測定器の測定誤差等を加味して、任意に設定されてもよい。判定部14は、判定時温度差から正常時温度差を差し引いた値が所定の閾値よりも初めて大きくなった場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。あるいは、判定部14は、判定時温度差から正常時温度差を差し引いた値が所定の閾値よりも複数回大きくなった場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。
【0074】
水素機器3の運転中、水素機器3としての水素製造装置または燃料電池装置が発熱反応を生じる。発生した熱は、内部空間2a内の空気を暖め、暖められた空気が上昇する。換気性能が正常である場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが形成されている。この場合、暖められた空気は、排出口6に向かう空気の流れに乗り、排出口6からコンテナ2の外部に排出される。このことにより、図5の実線矢印で示すように、水素機器3の近傍で暖められた空気は、排出口6に向かい、第1内部温度が上昇し得る。このため、第1内部温度が第2内部温度よりも高くなりやすい。
【0075】
一方、換気性能が低下している場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが弱まり、場合によっては、そのような空気の流れが形成されない。この場合、図5の破線矢印で示すように、水素機器3の近傍で暖められた空気は上昇し、内部空間2aの上部に留まる。このことにより、第1内部温度が正常運転時における第1内部温度よりも下降し得るとともに、第2内部温度が正常運転時における第2内部温度よりも上昇し得る。第2内部温度-第1内部温度で表される判定時温度差が、正常時温度差よりも小さくなる。
【0076】
図6は、正常運転時における第1内部温度および第2内部温度の一例を、実線で示すとともに、換気性能低下時における第1内部温度および第2内部温度の一例を、破線で示している。図6に示す例では、正常運転時では、第1内部温度が第2内部温度よりも高くなり得て、第2内部温度-第1内部温度で表される正常時温度差が、負の値を取り得る。換気性能低下時には、第2内部温度が第1内部温度よりも高くなり得て、判定時温度差が、正の値を取り得る。このことにより、判定時温度差は、正常時温度差よりも大きくなる。このため、判定時温度差から正常時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定することができる。
【0077】
このように本実施の形態によれば、第1内部温度測定器21は、上方から見たときに水素機器3と排出口6との間の位置における内部空間2aの第1内部温度を測定し、第2内部温度測定器22は、第1内部温度測定器21の上方位置における内部空間2aの第2内部温度を測定する。第1内部温度測定器21により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器22により測定された第2内部温度とに基づいて、内部空間2aの換気性能が判定される。このことにより、メンテナンス要員がコンテナ2に出向かなくても、換気性能の判定を行うことができる。このため、換気性能が低下しているか否かを容易に判定することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、第1内部温度測定器21は、水素機器3と排出口6との間の高さ位置に位置している。このことにより、換気性能が正常である場合には、水素機器3によって暖められた空気を、第1内部温度測定器21の近傍を通って排出口6に向けて流すことができる。このため、正常運転時に、温度が上昇する位置で第1内部温度を測定することができる。この結果、換気性能の判定精度を向上させることができる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、換気性能が正常である正常運転時における第1内部温度と第2内部温度との正常時温度差が記憶され、正常時温度差と、判定時に測定された第1内部温度と第2内部温度との判定時温度差とを比較することにより、換気性能が判定される。このことにより、換気性能が低下しているか否かを有意に判定することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、判定時における第2内部温度-第1内部温度で表される判定時温度差から、正常運転時における第2内部温度-第1内部温度で表される正常時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも大きい場合に、換気性能が低下していると判定される。このことにより、閾値を適切に設定することにより、換気性能の判定に、各測定器の測定誤差の影響が含まれることを防止することができる。このため、換気性能の判定をより一層向上させることができる。
【0081】
(第4の実施の形態)
次に、図7および図8を用いて、本発明の第4の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムについて説明する。
【0082】
図7および図8に示す第4の実施の形態においては、第1内部温度測定器が、自然対流によりコンテナの天井面に形成される温度境界層内に位置している点が主に異なり、他の構成は、図5および図6に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図7および図8において、図5および図6に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0083】
本実施の形態においては、図7に示すように、第1内部温度測定器21は、自然対流によりコンテナ2の天井面2bに形成される温度境界層内に位置している。換気性能が低下した場合に、内部空間2aの流れは、水素機器3の発熱によって形成される自然対流に支配され、その際に、コンテナ2の天井面2bに温度境界層が形成される。本実施の形態による第1内部温度測定器21は、換気性能が低下した場合に形成される温度境界層内に位置している。温度境界層は、数値解析などにより予め求めておき、その結果得られた温度境界層内に、第1内部温度測定器21を配置してもよい。第2内部温度測定器22は、この温度境界層内において、第1内部温度測定器21の上方に配置される。
【0084】
本実施の形態による判定部14は、第1内部温度測定器21により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器22により測定された第2内部温度と、に基づいて、内部空間2aの換気性能を判定する。判定部14に、第1内部温度測定器21および第2内部温度測定器22が接続されており、測定された第1内部温度および第2内部温度が、判定部14に送信される。
【0085】
判定部14は、換気性能が正常である正常運転時における第1内部温度と第2内部温度との正常時温度差を記憶していてもよい。言い換えると、正常運転時に第1内部温度と第2内部温度とが測定され、第1内部温度と第2内部温度から正常時温度差が求められて、判定部14に記憶される。正常時温度差は、第2内部温度-第1内部温度で表されてもよい。
【0086】
判定部14は、正常時温度差と、判定時に測定された第1内部温度と第2内部温度との判定時温度差とを比較することにより、換気性能を判定する。言い換えると、判定時に第1内部温度と第2内部温度とが測定され、第1内部温度と第2内部温度から判定時温度差が求められる。本実施の形態による判定部14は、正常時温度差から判定時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも小さい場合に、換気性能が低下していると判定する。判定時温度差は、第2内部温度-第1内部温度で表されてもよい。閾値は、各測定器の測定誤差等を加味して、任意に設定されてもよい。判定部14は、正常時温度差から判定時温度差を差し引いた値が所定の閾値よりも初めて小さくなった場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。あるいは、判定部14は、正常時温度差から判定時温度差を差し引いた値が所定の閾値よりも複数回小さくなった場合に、換気性能が低下していると判定してもよい。
【0087】
水素機器3の運転中、換気性能が正常である場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが形成されている。この場合、コンテナ2の天井面2bから温度境界層は無くなり、天井面2b近傍であっても、換気による強制対流が形成される。第1内部温度測定器21と第2内部温度測定器22は、天井面2bに近接して配置されているため、第1内部温度と第2内部温度との差は低減され得る。
【0088】
一方、換気性能が低下している場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが弱まり、場合によっては、そのような空気の流れが形成されない。この場合、水素機器3の発熱によって暖められた空気により、内部空間2aに自然対流が形成される。このことにより、コンテナ2の天井面2bに温度境界層が形成される、第1内部温度が第2内部温度よりも大きくなる。
【0089】
図8は、正常運転時における第1内部温度および第2内部温度の一例を、実線で示すとともに、換気性能低下時における第1内部温度および第2内部温度の一例を、破線で示している。図8に示す例では、正常運転時では、第1内部温度と第2内部温度とが等しくなり得て、第2内部温度-第1内部温度で表される判定時温度差が、ゼロとなり得る。換気性能低下時には、第1内部温度が第2内部温度よりも高くなり得て、判定時温度差が、負の値を取り得る。このことにより、判定時温度差は、正常時温度差よりも小さくなる。このため、正常時温度差から判定時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも小さい場合に、換気性能が低下していると判定することができる。
【0090】
このように本実施の形態によれば、第1内部温度測定器21は、自然対流によりコンテナ2の天井面2bに形成される温度境界層内に位置している。このことにより、換気性能が正常である場合には、第1内部温度測定器21により測定された第1内部温度は、第2内部温度測定器22により測定された第2内部温度と等しくすることができる。換気性能が低下している場合には、第1内部温度を、第2内部温度よりも高くすることができる。このため、換気性能低下時に温度が上昇する位置で第1内部温度を測定することができる。この結果、換気性能の判定精度を向上させることができる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、換気性能が正常である正常運転時における第1内部温度と第2内部温度との正常時温度差が記憶され、正常時温度差と、判定時に測定された第1内部温度と第2内部温度との判定時温度差とを比較することにより、換気性能が判定される。このことにより、換気性能が低下しているか否かを有意に判定することができる。
【0092】
また、本実施の形態によれば、正常運転時における第2内部温度-第1内部温度で表される正常時温度差から、判定時における第2内部温度-第1内部温度で表される判定時温度差を差し引いた値が、所定の閾値よりも小さい場合に、換気性能が低下していると判定される。このことにより、閾値を適切に設定することにより、換気性能の判定に、各測定器の測定誤差の影響が含まれることを防止することができる。このため、換気性能の判定をより一層向上させることができる。
【0093】
(第5の実施の形態)
次に、図9を用いて、本発明の第5の実施の形態による水素機器コンテナの換気性能判定システムについて説明する。
【0094】
図9に示す第5の実施の形態においては、水素機器と排出口との間の位置における内部空間の下部における第1内部温度と、第1内部温度の測定位置の上方位置における内部空間の第2内部温度と、空気の流れとに基づいて、内部空間の換気性能を判定する点が主に異なり、他の構成は、図5および図6に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図7および図8において、図5および図6に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0095】
図9に示すように、本実施の形態による第1内部温度測定器21は、内部空間2aの下部に位置しており、内部空間2aの下部における第1内部温度を測定する。本実施の形態による第2内部温度測定器22は、内部空間2aの上部に位置しており、内部空間2aの上部における第2内部温度を測定する。
【0096】
本実施の形態による換気性能判定システム10は、画像撮像器24を更に備えている。画像撮像器24は、水素機器3と排出口6との間の位置における空気の流れを撮像して、流れ画像を作成する。画像撮像器24は、内部空間2a内の空気に含まれる塵または粉じんなどの微粒子の動きを撮像することにより、空気の流れ画像を作成してもよい。
【0097】
本実施の形態による判定部14は、第1内部温度測定器21により測定された第1内部温度と、第2内部温度測定器22により測定された第2内部温度と、画像撮像器24により撮像された空気の流れと、に基づいて、内部空間2aの換気性能を判定する。判定部14に、第1内部温度測定器21および第2内部温度測定器22が接続されており、測定された第1内部温度および第2内部温度が、判定部14に送信される。また、判定部14に、画像撮像器24が接続されており、作成された流れ画像が、判定部14に送信される。
【0098】
判定部14は、換気性能が正常である正常運転時における空気の流れを示す正常時流れ画像を第1内部温度および第2内部温度と関連づけて記憶していてもよい。言い換えると、正常運転時に第1内部温度と第2内部温度とが測定されるとともに、正常時流れ画像が作成され、正常時流れ画像が、第1内部温度および第2内部温度と関連づけられて判定部14に記憶されている。種々の第1内部温度および第2内部温度と関連づけられて、正常時流れ画像が記憶されていることが好ましい。
【0099】
判定部14は、判定時における空気の流れを示す判定時流れ画像と、判定時に測定された第1内部温度および第2内部温度に対応する正常時流れ画像とを比較することにより、換気性能を判定する。言い換えると、判定時に、第1内部温度および第2内部温度が測定されるとともに判定時流れ画像が作成される。この判定時流れ画像と、記憶されていた正常時流れ画像とが比較される。このときの正常時流れ画像は、判定時の第1内部温度および第2内部温度の組み合わせと同一又は最も近い第1内部温度および第2内部温度の組み合わせと関連づけられた正常時流れ画像が用いられる。
【0100】
水素機器3の運転中、水素機器3としての水素製造装置または燃料電池装置が発熱反応を生じる。発生した熱は、内部空間2a内の空気を暖め、暖められた空気が上昇する。換気性能が正常である場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが形成されている。この場合、暖められた空気は、排出口6に向かう空気の流れに乗り、排出口6からコンテナ2の外部に排出される。このことにより、図9の実線矢印で示すように、水素機器3の近傍で暖められた空気が排出口6に向かう空気の流れが形成される。
【0101】
一方、換気性能が低下している場合には、吸入口4から排出口6に向かう空気の流れが弱まり、場合によっては、そのような空気の流れが形成されない。この場合、図9の破線矢印で示すように、水素機器3の近傍で暖められた空気が上昇する流れが形成される。このことにより、換気性能低下時に判定時流れ画像に示されている空気の流れが、正常時流れ画像に示されている空気の流れと異なる。このような流れが異なる様子が、判定部14の画像解析により解析される。画像解析の結果、両者で流れが異なっている場合に、判定部14は、換気性能が低下していると判定する。
【0102】
このように本実施の形態によれば、第1内部温度測定器21は、水素機器3と排出口6との間の位置における内部空間2aの第1内部温度を測定し、第2内部温度測定器22は、第1内部温度測定器21の上方位置における内部空間2aの第2内部温度を測定する。画像撮像器24は、水素機器3と排出口6との間の位置における空気の流れを撮像する。第1内部温度と、第2内部温度と、空気の流れとに基づいて、内部空間2aの換気性能が判定される。このことにより、メンテナンス要員がコンテナ2に出向かなくても、換気性能の判定を行うことができる。このため、換気性能が低下しているか否かを容易に判定することができる。
【0103】
また、本実施の形態によれば、換気性能が正常である正常運転時における空気の流れを示す正常時流れ画像を第1内部温度および第2内部温度と関連づけて記憶され、判定時における空気の流れを示す判定時流れ画像と、判定時に測定された第1内部温度および第2内部温度に対応する正常時流れ画像とを比較することにより、換気性能が判定される。このことにより、内部空間2aの空気の流れに基づいて、換気性能が低下しているか否かを判定することができる。このため、換気性能の判定精度を向上させることができる。
【0104】
以上述べた実施の形態によれば、換気性能が低下しているか否かを容易に判定することができる。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0106】
1:水素機器コンテナ、2:コンテナ、2a:内部空間、2b:天井面、3:水素機器、4:吸入口、5:フィルタ、6:排出口、7:ファン、8:制御機器、10:換気性能判定システム、11:内部温度測定器、12:外部温度測定器、13:日射量測定器、14:判定部、21:第1内部温度測定器、22:第2内部温度測定器、23:第3内部温度測定器、24:画像撮像器
図1
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図9