(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックデバイス及びエレクトロクロミックデバイスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/15 20190101AFI20250210BHJP
G02F 1/155 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
G02F1/15 505
G02F1/155
(21)【出願番号】P 2022196827
(22)【出願日】2022-12-09
(62)【分割の表示】P 2021204992の分割
【原出願日】2015-10-07
【審査請求日】2023-01-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521058715
【氏名又は名称】ヴィトロ フラット グラス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ワシリーエフ、エフゲニー、ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ボリソフ、セルゲイ、オレゴヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ザイキン、パーヴェル、アナトーリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クルグリコフ、ニキータ、ヴァレリエヴィチ
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-043863(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0050873(KR,A)
【文献】特表2006-500635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)互いに対向し、その間に密閉された空間を画定する一対の可撓性電極であって、各可撓性電極が独立して、
(i)基板、及び
(ii)基板の表面上の導電性層であって、各導電性層が独立して、各々が
正方形形状を有する複数の導電性相互絶縁部分を含む、導電性層、
を含み、
前記一対の可撓性電極の導電性層が互いに対向し、及び前記一対の可撓性電極のうちの少なくとも1つは光透過性である、可撓性電極と、
(b)前記密閉された空間内であって、前記一対の導電性層の各々の間に配置される、エレクトロクロミック層と、
を含む、エレクトロクロミックデバイスであって、前記エレクトロクロミックデバイスがフラットエレクトロクロミックパネルである、エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
前記一対の可撓性電極の各基板が、独立してポリマー基板である、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
前記エレクトロクロミックデバイスが、複数の導電性バスを含み、各導電性層の、各導電性相互絶縁部分は、独立して、前記複数の導電性バスのうちの1つに電気的に接続されている、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
周辺部と、前記エレクトロクロミックデバイスの前記周辺部に沿って位置する複数の導電性周辺バスと、を含み、前記複数の導電性相互絶縁部分が、
(i)複数の導電性相互絶縁周辺部分、及び
(ii)複数の導電性相互絶縁内部部分であって、各々が前記複数の導電性相互絶縁周辺部分に対して内部に位置する、導電性相互絶縁内部部分、
を含み、
前記複数の導電性相互絶縁周辺部分の各々が独立して、1つの導電性周辺バスに直接的に電気的に接続され、前記複数の導電性相互絶縁内部部分の各々が独立して、各場合において、1つの導電性周辺バスに、導電性接触線によって電気的に接続され、各導電性接触線は、他の導電性接触線の各々から電気的に絶縁される、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
前記複数の導電性相互絶縁周辺部分の各々が、独立して、1つの導電性周辺バスに、導電性化合物によって直接的に電気的に接続される、請求項4に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項6】
各導電性層の各導電性相互絶縁部分が、隣接する各導電性相互絶縁部分から、間隙によって電気的に絶縁される、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項7】
各間隙が、絶縁化合物により充填される、請求項6に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項8】
各導電性層が独立して、ドープされた酸化インジウム、ドープされた酸化スズ、及びメタルメッシュのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項9】
前記エレクトロクロミック層が、固体であり、一様であり、及び均一である、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項10】
前記エレクトロクロミック層が、固体かつ非均一であり、前記導電性層の任意形状を有する各導電性相互絶縁部分が、前記エレクトロクロミック層の対応する位置の部分と位置的に関連し、前記エレクトロクロミック層の各対応する位置の部分が、独立して、前記エレクトロクロミック層の少なくとも1つの他の対応する位置の部分とは異なるエレクトロクロミック組成物を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項11】
前記エレクトロクロミック層がアノード成分、カソード成分、及び微細分割ポリマーを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項12】
前記エレクトロクロミック層において、
前記アノード成分が、ビオロゲン誘導体を含み、
前記カソード成分が、フェロセン誘導体を含み、及び
前記微細分割ポリマーが、メチルメタクリレート及びメタクリル酸のコポリマーを含む、請求項
11に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項13】
各々が任意形状を有する複数の導電性相互絶縁部分の各々に対して、電圧及び電流を独立して制御可能に供給する、パワーサプライ及び制御ユニットをさらに含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流の影響下で色が変化するデバイスの分野に関し、特に、エレクトロクロミックデバイス及びその製造方法に関する。可変光学密度フィルタ、光変調器、情報ボード、及び画像表示パネルなどの、電気的に調節可能な光吸収特性を有するデバイスを製造する様々な方法が当技術分野において知られている。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミズムは、制御電圧と呼ばれる電圧の印加に伴って色又は光透過率などの所定の光学的特性が可逆的に変化するという、特定の組成物において見出された物理現象である。エレクトロクロミズムは、当業者に周知のスマートガラスなどの様々なエレクトロクロミックデバイスの動作のための基礎を提供する。様々なタイプの光学材料及び光学構造が、エレクトロクロミック特性を有する前述の化合物を構築するために使用可能であり、特定の構造は前記エレクトロクロミックデバイスの特定の目的に依存する。
【0003】
エレクトロクロミックデバイスを製造するための一方法が当技術分野において知られており(参照によって本明細書中に援用される1990年2月20日に発行された米国特許第4,902,108号明細書)、ここで、2つの光透過性電極のうちの1つの導電性コーティングは、低沸点溶媒内のポリメチルメタクリレートの増粘された溶液を用いてコーティングされ、前記溶媒は次に蒸発されて、ポリメチルメタクリレートの層が得られる。この工程に続いて、両方の光透過性電極は周囲において互いに接合され、同時に前記電極は所定の距離だけ互いに間隔をあけられ、このようにして形成された空間は、カソード成分及びアノード成分を含むエレクトロクロミック溶液を用いて、接着剤内の開口部(1又は複数)を通して充填され、充填された空間は次にシールされる。ポリメチルメタクリレートの前記層は溶解され、結果として前記エレクトロクロミック溶液は増粘され、これにより、電気的に着色された状態における前記組成物の重力「デラミネーション」というマイナス効果が大幅に減少する。したがってこのエレクトロクロミック組成物は、前述のエレクトロクロミックデバイスの組み立てが完了した後にのみ実際に調製される。加えて、前記エレクトロクロミック組成物は、ポリマー増粘剤の量によって規定される粘度を有する液相であり、カソード成分及びアノード成分がイオン状態に溶解可能でない場合、前記エレクトロクロミック溶液内に導入される中立電解質溶液(indifferent electrolyte solution)が前記エレクトロクロミック溶液の導電性を提供する。中立電解質はビピリジンの四級塩に基づいて組成物内に導入される。
【0004】
エレクトロクロミックデバイスを製造するための一方法が当技術分野においてさらに知られており(参照によって本明細書中に援用される1995年11月28日に発行された米国特許第5,471,337号明細書)、ここで、電極間の空間は以下を含むエレクトロクロミック分散系を用いて充填される。ポリメチルメタクリレートを好ましくは用いて増粘された又はポリマー溶媒を用いて可塑化された、溶媒の形態の分散媒、カソード成分としての、ポリオキソメタレートの形態の分散相、及びアノード成分。
【0005】
様々なタイプの開始剤を使用した、重合のみによって及び/又はモノマー鎖の架橋を伴う重合によって、エレクトロクロミック組成物の固体様フィルムをデバイス自体の中に直接得ることによりエレクトロクロミックデバイスを作製する方法が加えて知られている(参照によって本明細書中に援用される1994年8月31日の欧州特許出願公開第0612826A1号明細書、1997年9月18日の国際公開第97/34186号パンフレット、及び1998年10月1日の国際公開第98/42796号パンフレット)。しかしそのような重合反応には、前記エレクトロクロミックデバイスの品質に悪影響を及ぼす体積収縮が伴う。このマイナス効果は、(0.5m2を超える)大きな加工表面を有するエレクトロクロミックデバイスにおいて通常設けられる大きな電極間空間(1mm~2mm)を有するエレクトロクロミックデバイスにおいて特に明らかになり得る。
【0006】
参照によって本明細書中に援用される2008年10月2日に発行された米国特許第7,826,124 B2号明細書において開示された、可撓性のエレクトロクロミックパネルを製造するための一方法が当技術分野においてさらに知られており、ここで、有機材料の不溶性ポリマー鎖が電気化学重合によって前記電極のうちの1つに塗布され、第1の電極の前記ポリマー鎖と相互作用するイオン貯蔵フィルムが対向電極上に塗布される。この技術の重大な欠点は、可撓性電極上に堆積された2つの層の間の効果的な相互作用のために液体電解質が必要とされるということである。他方、液体電解質の存在により、前記エレクトロクロミックパネルを一定の厚さに維持するための追加の労力及び/又は構造が必要となり、この結果として、前記構造とデバイス製造の方法との両方が大幅に複雑になる。
【0007】
その上、参照によって本明細書中に援用される2006年7月10日に発行された米国特許第7,256,925 B2号明細書において開示された、可撓性のエレクトロクロミックパネルを製造するための一方法が当技術分野においてさらに知られており、当該特許は、前記電極のうちの1つの上に半導体層を局所的に塗布することであって、前記半導体層は次にエレクトロクロミック組成物を用いてコーティングされる、ことを含む。しかしこの設計でも、エレクトロクロミック層と対向電極との間に液体電解質を使用する必要があり、それにより前述の方法と同じ問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、従来技術の上記の欠陥を有さない、エレクトロクロミックデバイスの製造のための新たな改良された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は、エレクトロクロミックデバイスを製造する従来の方法に関連する上記の及びその他の問題のうちの1又は複数を実質的に取り除く方法及びシステムに関する。
【0010】
本明細書中に記載される実施形態の一態様によれば、少なくとも2つの可撓性電極と、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の密封して閉じられた空間とを含むエレクトロクロミックデバイスを製造する方法が提供され、前記少なくとも2つの可撓性電極のうちの少なくとも1つは光透過性であり、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の前記密封して閉じられた空間はエレクトロクロミック組成物を用いて充填され、前記方法は、(1)サスペンション及びコロイドのうちの少なくとも1つを含むエレクトロクロミック分散系の形態の初期の脱気されたエレクトロクロミック組成物を調製することであって、前記エレクトロクロミック分散系の分散媒は液体溶媒(高温溶媒及び低温溶媒)とカソード成分とアノード成分とを含むエレクトロクロミック溶液を含み、分散相は高分散性ポリマーからなる、ことと、(2)少なくとも1つの可撓性電極を、任意形状の相互に絶縁された導電性層の形態で導電性コーティングがポリマー基板上に塗布され得るように作製することと、(3)前記可撓性電極のうちの2つ又は少なくとも1つを初期エレクトロクロミック組成物を用いてコーティングすることと、(4)前記低温溶媒を除去して固体の一様に均一なエレクトロクロミック層を形成するために、前記可撓性電極(1又は複数)上に塗布された前記初期エレクトロクロミック組成物を乾燥させることと、(5)1つの可撓性電極を第2の可撓性電極とステッチする(ラミネートする)ことであって、前記エレクトロクロミック層は内側に面している、ことと、(6)前記可撓性電極を通電電気バス(接点)に接続することと、(7)パネルを周囲にわたってシールすることと、を含む。前記エレクトロクロミック組成物に対する大気酸素の有害作用を減らすために、エレクトロクロミックパネルの製造及び組み立てに関する全ての手順は、アルゴン、窒素、二酸化炭素などの不活性ガスの雰囲気中で実施することが好ましい。
【0011】
様々な実施形態において、エレクトロクロミックパネルは、透明導電性コーティングを用いて一方の側がコーティングされたポリマー(特にポリエチレンテレフタレート)基板又はガラス基板を含む、可撓性の光透過性電極を使用して製造される。ポリマー基板のコーティングは、例えば、ドープされた酸化インジウム(In2O3)若しくはドープされた酸化スズ(SnO2)若しくはメタルメッシュを、又はそれらの両方を同時に塗布することによって生成されてもよい。導電性コーティングは前記ポリマー基板に、任意形状の相互に絶縁された層の形態で塗布される。透明導電性コーティングの塗布は、テンプレートを通した金属、金属酸化物、金属窒化物のフィルムの真空蒸着によって、又は導電性インクを使用したプリンティングによって行われてもよい。
【0012】
様々な実施形態において、前記エレクトロクロミックパネルの最終構成は、前記ポリマー基板上に配置される、互いに電気的に絶縁された且つ任意形状であってもよい導電性コーティングの層の構成によって決定される。例えば、正方形形状の前述の導電性層を使用することにより、マトリックスの形状を有する前記エレクトロクロミックパネルを製造することが可能になる。
【0013】
本発明に関連する追加の態様は、部分的には以下の説明において述べられ、部分的には本説明から明らかとなり、又は本発明の実施によって知ることができる。本発明の態様は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び様々な要素の組み合わせ及び態様を用いて実現し達成することが可能である。
【0014】
前述の説明及び以下の説明の両方は例示的且つ説明的なものにすぎず、いかなる形においても、請求項に係る発明又はその応用を限定することを意図するものではないということを理解されたい。
【0015】
本明細書中に援用されその一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、本説明と共に、本発明の技術の原理を説明し例示する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】25個の相互に絶縁された導電性正方形形状部分の形態の、2つの光透過性電極を有する、エレクトロクロミックパネルの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明では添付の図面(1又は複数)を参照する。前記添付の図面において、同一の機能要素は同様の番号を用いて示されている。前述の添付の図面は、本発明の原理と一致する特定の実施形態及び実装を、限定としてではなく例として示すものである。これらの実装は当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分なだけ詳細に説明されているのであり、本発明の範囲及び精神を逸脱することなくその他の実装が利用されてもよいということ、並びに構造の変更及び/又は様々な要素の置換が行われてもよいということを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味において解釈されるべきではない。
【0018】
本明細書中に記載される実施形態の一態様によれば、固体ポリマー層の形態のエレクトロクロミック組成物を有するエレクトロクロミックデバイスが提供され、前記固体ポリマー層は、増加した退色速度を広い温度範囲内で有するものであり、且つ、長期間の着色状態を維持する且つ低電圧制御と電極極性の変化とを可能にする条件下で動作しているエレクトロクロミックデバイスに安定性を付与するものであり、これにより、着色及び退色の長期間の均一性が、特に、大きな加工表面積を有するエレクトロクロミックデバイスにもたらされる。記載されるエレクトロクロミックデバイスに関連して使用できる例示的なエレクトロクロミック組成物は、参照によって本明細書中に援用される同時係属中の「エレクトロクロミック組成物及びこれを使用したエレクトクロミックデバイス(ELECTROCHROMIC COMPOSITION AND ELECTROCHROMIC DEVICE USING SAME)」と題された国際出願PCT/US15/54335号明細書で開示されている。
【0019】
本明細書中に記載される実施形態の別の態様によれば、上述のように、少なくとも2つの電極を含むエレクトロクロミックデバイスが提供され、前記電極は可撓性且つ光透過性であり、電極間の空間はシールされ、調製されたエレクトロクロミック組成物を用いて充填される。記載されるデバイスは、着色状態の長期間の安定性を達成し、低電圧制御と電極極性の逆転とを可能にする条件下で動作可能であり、着色及び退色の均一性をもたらす。加えて、記載されるエレクトロクロミックデバイスは、大きな表面積を有するように製造可能である。
【0020】
本発明の1又は複数の態様によれば、可撓性且つ光透過性である少なくとも2つの電極を、エレクトロクロミック組成物を用いて充填された前記電極間の密封して閉じられた空間と共に含むエレクトロクロミックデバイスを製造することによって、エレクトロクロミックパネルが得られる。1又は複数の態様によれば、本発明の方法は以下の工程を含む。
【0021】
(1)サスペンション及び/又はコロイドを含むエレクトロクロミック分散系の形態の初期エレクトロクロミック組成物を調製する工程。ここで、分散媒は高温液体溶媒と低温液体溶媒とカソード成分とアノード成分とを含む。分散相は微細分割ポリマーを含む。前記初期エレクトロクロミック組成物は、比較的低い粘度を有し、重力拡散、基板浸漬コーティング(substrate immersion coating)、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、フローコーティングなどの当技術分野で周知の様々な方法による塗布に適している。
【0022】
(2)可撓性電極のうちの少なくとも1つを、任意形状の相互に絶縁された導電性層の形態で導電性コーティングがポリマー基板上に塗布され得るように製造する工程。第2の可撓性電極は所望により同様に製造されるか又は固体に作製される(being made solid)。(3)前記可撓性電極のうちの少なくとも1つを初期エレクトロクロミック組成物を用いてコーティングする工程。(4)前記低温溶媒を除去して固体の一様に均一なエレクトロクロミック層を形成するために、前記可撓性電極(1又は複数)上に塗布された前記初期エレクトロクロミック組成物を乾燥させる工程。(5)1つの可撓性電極を第2の可撓性電極とステッチする(ラミネートする)工程。前記第2の可撓性電極は所望により固体の均一なエレクトロクロミック層と共に作製される。(6)前記可撓性電極を導電バスに接続する工程。及び(7)前記エレクトロクロミックパネルを周囲にわたってシールする工程。
【0023】
1又は複数の実施形態では、前述のエレクトロクロミック溶液は、中立電解質を加えて含んでもよい。前記分散媒内に加えて導入される中立電解質の提供により、電気的に活性化されたエレクトロクロミックデバイスの退色が加速され、DC電圧の印加による長期間の分極の条件下でエレクトロクロミックデバイスを動作させた後の、及び/又は高電圧(過剰電圧、ブレークダウン電圧)を印加した後の、着色及び退色における均一性の侵害が防止される。
【0024】
1又は複数の実施形態では、曲げられた場合の脆性の欠如によって特徴付けられ、可撓性を提供可能であり、且つ広い温度範囲にわたってその完全性を保つ、エレクトロクロミック組成物の固体のしかし可撓性の層を形成するのに十分な量及び割合において、微細分割ポリマーと高温溶媒とを使用することが望ましい。
【0025】
前記方法の1又は複数の実施形態では、前記低温溶媒は、重力拡散、基板浸漬コーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、フローコーティングなどの既知の工業的方法による様々な基板上へのエレクトロクロミック層の形成を可能にするための低粘度を、前記初期エレクトロクロミック組成物に付与するために使用される。
【0026】
1又は複数の実施形態では、前記低温溶媒が(例えば、加熱蒸発などで蒸発させることによって)除去された後、固体のしかし可撓性のエレクトロクロミック層が前記基板上に形成される。
【0027】
1又は複数の実施形態では、前述の低温溶媒及び高温溶媒のうちの一方又は両方は、個別の化学化合物を、又は化学化合物の混合物を含んでもよい。
【0028】
1又は複数の実施形態では、前記カソード成分は、ポーラログラムにおいて少なくとも1つの可逆的還元波を有する個別の有機エレクトロクロミック化合物、又はそのような有機エレクトロクロミック化合物の混合物である。前記アノード成分は、ポーラログラムにおいて少なくとも1つの可逆的酸化波を有する個別の有機エレクトロクロミック化合物、又は有機エレクトロクロミック化合物の混合物である。
【0029】
1又は複数の実施形態では、前記化合物は、前記エレクトロクロミック化合物をUV照射から保護するUV安定剤をさらに含んでもよい。前記化合物はまた、前記エレクトロクロミック化合物をその酸素への暴露に起因する有害作用から保護する酸化防止剤を加えて含んでもよい。
【0030】
1又は複数の実施形態では、前記エレクトロクロミックデバイスの製造及び組み立てに関する全ての手順は、アルゴン、窒素、二酸化炭素などの不活性ガスの雰囲気中で実施される。これにより、前記エレクトロクロミック組成物に対する大気酸素の有害作用が減少する。
【0031】
1又は複数の実施形態では、前述のエレクトロクロミックデバイスは、ドープされた酸化インジウム(In2O3)又はドープされた酸化スズ(SnO2)又はメタルメッシュなどの透明導電性層を用いて一方の側がコーティングされたポリマー(例えばポリエチレンテレフタレート)基板又はガラス基板からなる、可撓性の光透過性電極を使用することによって製造される。そのようなコーティングは個別に又は組み合わせて使用されてもよい。前記電極の間の接触を防止するために、前記電極は、前記電極の間に形成される且つ前記エレクトロクロミック層を用いて充填される閉じられた空間の内側に前記導電性コーティングが現れるようにシールされる。前記電極の間の距離は、エレクトロクロミック液体組成物が乾燥された後で得られる固体のエレクトロクロミック層の厚さによって決定される。
【0032】
前記製造の1又は複数の実施形態では、前記エレクトロクロミックデバイスは、前記電極の外周にわたって又は前記電極の長辺に沿って配置された導電バスを備える。これらの導電バスは、外部に位置する出力ワイヤ又はその他のタイプの電気接点若しくはコネクタを伴って、前記デバイスのすぐ外側に又はすぐ内側に位置してもよい。
【0033】
図1は、25個の導電性の相互に絶縁された正方形形状部分の形態の、2つの光透過性電極を有するエレクトロクロミックパネルの一実施形態を示す。前記エレクトロクロミックパネルの断面図も示されている。図示されているエレクトロクロミックパネルは、一対の基板3に各基板につき25個の量において塗布された、可撓性の光透過性正方形形状電極2を含む。基板3はポリマーフィルムであり、その表面積は前記エレクトロクロミックパネルの特定の用途に依存する。正方形形状の光透過性電極2が表面上に塗布された基板3の間の空間は、エレクトロクロミック層1を用いて充填される。
【0034】
1又は複数の実施形態では、導電バス7が、前記エレクトロクロミックパネルの周囲にわたって又はいくつかの辺に沿って配線される。これらの導電バス7の寸法は、任意形状を有してもよい導電性層の量に依存する。あるいは、ダブル導電バス7を、上側及び下側の透明導電性電極のそれぞれのために使用することも可能である。バス7を形成するバス導電体8の断面直径は、任意形状導電性層2によって占められる面積とエレクトロクロミック層1の特性とに基づいて決定される。
【0035】
前記エレクトロクロミックパネルの周辺部に沿って配置された導電性任意形状層2は、8つの導電バス7の対応する導電体に直接電気的に接続される。前記デバイスは、前記エレクトロクロミックパネルの前記周辺部に位置しない内部導電性任意形状層2の、それぞれのバス(線)への接続を目的とする導電性接触線9も備える。各導電性接触線9は1つの導電性任意形状層に導かれ、他の線からは絶縁される。前記各導電性接触線の他方の端は、導電バス7の所定の導電体8に接続される。
【0036】
1又は複数の実施形態では、エレクトロクロミック層1は前記透明導電性電極の間に位置する。前記エレクトロクロミック層は、任意形状導電性層2の境界における切れ目を有さずに連続的であってもよい。前記エレクトロクロミック層の厚さは、前記エレクトロクロミック組成物の特性と前記エレクトロクロミックパネルについての要件とに基づいて決定される。前記エレクトロクロミック層は、異なる任意形状導電性層に対応する異なる部分において、組成及び特性が異なっていてもよい。したがって前記エレクトロクロミック層は、異なる任意形状導電性層に対応する異なる部分において、異なる色に着色されてもよい。前記エレクトロクロミック層は、特定の導電性任意形状層に対応する導電性層の部分の区域内で、組成及び特性が異なっていてもよい。したがって前記エレクトロクロミック層は、所定の導電性任意形状層に対応する1つの部分の区域内で、異なる色に着色されてもよい。
【0037】
1又は複数の実施形態では、前記エレクトロクロミックパネルの周囲にわたって配置された前記導電性任意形状層は、導電性化合物(conductive compound)11を用いて接続されてもよい。(パネル周辺部に位置しない)前記内部導電性任意形状層との、導電性接触線9の接続も、導電性化合物11を用いて行われてもよい。
【0038】
1又は複数の実施形態では、前記エレクトロクロミックパネルの前記エレクトロクロミック層をシールすることは、前記パネルの周囲の周りにループを接着することによって、又は前記エレクトロクロミック層内への大気酸素の侵入を防止するシーラントを使用することによって行われる。
【0039】
1又は複数の実施形態では、前記エレクトロクロミックパネルの、ガラスへの接着を確実にする接着剤層5が、前記エレクトロクロミックパネルのパネルフェーシング側上に塗布されてもよい。前記エレクトロクロミックパネルの、前記ガラスへの接着を確実にする接着剤層5は、剥離可能な保護フィルム6を用いてコーティングされてもよい。前記エレクトロクロミックパネルを前記ガラスに取り付ける前に、保護フィルム6は除去される。その他の任意の粘着テープが接着剤層5の代わりに使用されてもよい。
【0040】
1又は複数の実施形態では、外側に面する前記エレクトロクロミックパネルの前記透明導電性電極も、保護層4を用いてコーティングされてもよい。保護層4は、前記エレクトロクロミックパネルを機械的影響から、並びにUV及びIR照射から保護する層を含んでもよい。これらの全ての保護特性を組み合わせた単一の層の使用も一選択肢である。
【0041】
図1は、正方形構成を有する導電性層を前記エレクトロクロミックパネルが有する設計の例示的実施形態を示す。そのような設計では、前記エレクトロクロミックパネルは、2つの可撓性透明導電性電極の間に配置された共通のエレクトロクロミック層1を有する。各透明導電性電極は、正方形部分に分割された導電性メタルメッシュ2を用いてコーティングされたポリマー基板3を含む。合計で25個の正方形導電性部分が使用される。
【0042】
導電バス7が前記エレクトロクロミックパネルの周辺部(周囲)にわたって配置される。各そのようなバス7は、6本又は7本の導電ワイヤ8を含む。
【0043】
前記パネルの周辺部(周囲)にわたって配置された正方形導電性部分2は、化合物11を用いて導電バス7に接続され、前記エレクトロクロミックパネルの内側に位置する正方形導電性部分は、導電性接触線9によって前記エレクトロクロミックパネルの周囲に接続される。エレクトロクロミックパネルの周囲に沿って、導電性接触線9は、導電性化合物11を用いてバスワイヤ8に接続される。
【0044】
正方形導電性部分2の間の間隙は、絶縁化合物(insulating compound)10を用いて充填される。
【0045】
前記エレクトロクロミックパネルの前記可撓性透明導電性電極のうちの1つは接着剤層5を用いてコーティングされ、接着剤層5は次に保護フィルム6を用いてコーティングされる。前記エレクトロクロミックパネルのもう1つの可撓性透明導電性電極は保護層4を用いてコーティングされる。
【0046】
前記エレクトロクロミックパネルの周辺部(周囲)にわたって配置された導電バス7は、必要な電圧及び電流を各正方形導電体部分2に供給する制御ユニット/パワーサプライ(図示せず)に接続される。
【0047】
実施例1
第1の実施例では、エレクトロクロミックデバイスが2つの可撓性の光透過性電極を有して作製された。各可撓性電極は、175ミクロンの厚さを有するポリエチレンテレフタレート基板であって、30オーム/cm2の表面電気抵抗を有するインジウムドープされたSnO2の単一の層を用いてコーティングされた、ポリエチレンテレフタレート基板を含んでいた。各電極のサイズは5×6cm2であった。一方の電極は、以下の成分を含むエレクトロクロミック組成物を用いて均一にコーティングされた。溶媒中のすなわち炭酸プロピレン及び/又はアセトン中のビオロゲン誘導体(1.5質量%)及びフェロセン誘導体(0.75質量%)、並びに、ポリメチルメタクリレートとメタクリル酸とメタクリル酸のカルシウム塩とのコポリマーの分散相(35質量%)。前記エレクトロクロミック組成物は20時間にわたって乾燥され、100ミクロンの厚さを有する前記可撓性電極上の固体エレクトロクロミック層が形成された。次に、第2の可撓性電極が、乾燥されたエレクトロクロミック層上に、100℃の温度において、第1の層に対して5mmのオフセットを有してラミネートされた。制御/パワーユニットのリード線に接続可能な銅テープが、次に、導電性コーティングに面した前記可撓性電極のコーティングされていない領域に、導電性接着剤組成物を用いて貼り付けられた。
【0048】
この実施形態では、前記エレクトロクロミックデバイスは、スペクトルの可視範囲における75%に等しい光透過率を有していた。2V DCの電流を前記デバイスに供給すると、その色は濃い青色に変化した。透明から濃青色まで完全に色が変化する時間は7秒であった。過渡期間の完了後に、電圧の印加は停止され、前記電極は短絡された。前記エレクトロクロミックデバイスは約10秒以内にその元の(透明な)状態に戻った。
【0049】
実施例2
第2の実施例では、前記エレクトロクロミックデバイスは、各可撓性電極が、300ミクロンのセルサイズを有し且つ2オーム/cm2に等しい表面電気抵抗を有するメタリック銅メッシュを用いてコーティングされた、100ミクロンの厚さを有するポリエチレンテレフタレート基板を含んでいたこと以外は、実施例1に記載したのと同じ方法で製造された。
【0050】
前記エレクトロクロミックデバイスのこの実施形態では、スペクトルの可視範囲における光透過率は80%であった。DC 2Vの電流を前記デバイスに供給すると、そのエレクトロクロミック層の色は濃い青色に変化した。透明から濃青色まで完全に色が変化する時間は4秒であった。過渡期間の完了後に、電圧の印加は停止され、前記電極は短絡された。前記エレクトロクロミックデバイスは約6秒以内にその元の(透明な)状態に戻った。
【0051】
実施例3
第3の実施例では、前記エレクトロクロミックデバイスは、前記エレクトロクロミック組成物が半分の量において各電極に均一に塗布されたこと以外は、実施例2に記載したのと同じ方法で製造された。前記エレクトロクロミック層の乾燥の後、前記可撓性電極は、塗布された層が互いに向き合った状態でラミネートされた。そのような処理により、前記可撓性電極に前記エレクトロクロミック層が均一に接着されたエレクトロクロミックデバイスを得ることが可能になった。
【0052】
この実施形態では、エレクトロクロミックデバイスは、スペクトルの可視範囲における80%に等しい光透過率を有していた。DC 2Vの電流を前記デバイスに供給すると、そのエレクトロクロミック層の色は濃い青色に変化した。透明から濃青色まで完全に色が変化する時間は4秒であった。過渡期間の完了後に、電圧の印加は停止され、前記電極は短絡された。前記エレクトロクロミックデバイスは約6秒以内にその元の(透明な)状態に戻った。この場合、前記エレクトロクロミック層は、実施例2に記載した前記デバイスの場合よりも均一な色を示した。
【0053】
実施例4
第4の実施例では、前記エレクトロクロミックデバイスは、前記可撓性電極のうちの1つが、4つのバンドであってそれらのそれぞれが3×10cm2の寸法を有する4つのバンドに分割されたメタリック銅メッシュを用いてコーティングされた、12×10cm2の寸法と100ミクロンの厚さとを有するポリエチレンテレフタレート基板を含んでいたこと以外は、実施例3に記載したのと同じ方法で製造された。第2の可撓性電極は、連続的メタリック銅メッシュを用いてコーティングされた、12×10cm2の寸法を有するポリエチレンテレフタレート基板を含んでいた。完成した状態において、連続的銅メッシュを有する前記可撓性電極は、前記バスのうちの1本のワイヤに接続され、前記第2の可撓性電極の各可撓性銅バンドは、前記バスのうちの別個のワイヤに接続された。
【0054】
前記エレクトロクロミックデバイスのこの実施形態では、連続的銅メッシュを有する前記可撓性電極は0電位を得たのに対して、前記第2の可撓性電極の各銅バンドは-2V、0、又は+2Vを個別に供給されることが可能であった。前記バンドのうちの任意のものが-2V又は+2Vを受け取った場合、このバンドの前記エレクトロクロミック層は、5秒以内にその色が濃い青色に変化した。反対側の電圧への電圧変化により、2秒以内にそれぞれのバンドの、初期濃色化(initial darkening)の50%までの退色がもたらされ、次に、約2秒の時間にわたって濃い青色の回復がもたらされた。
【0055】
実施例5
第5の実施例では、前記エレクトロクロミックデバイスは、前記可撓性電極のうちの1つが、この可撓性電極上に塗布されたメタリック銅メッシュであって2.6c2.6cm2の寸法をそれぞれが有する9つの正方形に分割されたメタリック銅メッシュを有する、10×10cm2のサイズと100ミクロンの厚さとを有するポリエチレンテレフタレート基板を含んでいたこと以外は、実施例4に記載したのと同じ方法で製造された。中間に位置する前記正方形は、他の正方形の間の間隙内に配置された接触線であって前記可撓性電極のエッジ上に位置する接触パッドに導かれる接触線を有していた。第2の可撓性電極は、連続的メタリック銅メッシュを用いてコーティングされた、10×10cm2の寸法を有するポリエチレンテレフタレート基板を含んでいた。完成した状態において、連続的銅メッシュを有する前記可撓性電極は、前記バスのうちの1本のワイヤに接続され、前記第2の可撓性電極の各可撓性銅バンドは、前記バスのうちの別個のワイヤに接続された。
【0056】
前記エレクトロクロミックデバイスのこの実施形態では、固体銅メッシュを有する前記可撓性電極はゼロ電位に設定されたのに対して、前記第2の可撓性電極の各正方形銅電極は-2V、0、又は+2Vの電位を個別に受け取ることが可能であった。前記正方形のうちの任意のものが-2又は+2の電位を受け取った場合、それぞれのバンドの前記エレクトロクロミック層の色は4秒以内に濃い青色に変化した。前記エレクトロクロミックデバイスの任意の正方形部分の退色を加速するために、最初に、反対電位が印加されて50%の退色が提供され、次にこの正方形部分は前記第2の可撓性電極と短絡された。この場合、それぞれの正方形部分の退色は4秒以内に行われた。
【0057】
最後に、本明細書中に記載されたプロセス及び技術はいかなる特定の機器にも本質的に関連するものではなく、構成要素の任意の好適な組み合わせによって実装されてもよいということを理解されたい。さらに、様々なタイプの汎用装置が、本明細書中に記載された教示に従って使用されてもよい。本明細書中に記載された方法の工程を実行するために専用機器を構築することが有利であることが判明する場合もある。本発明について特定の実施例と関連して説明したが、前記実施例はあらゆる点で限定的なものではなく例示的なものであることが意図されている。
【0058】
その上、本明細書を検討すること及び本明細書中で開示された本発明を実施することにより、本発明のその他の実装が当業者にとって明らかとなるであろう。記載された実施形態の様々な態様及び/又は構成要素は、電気的に制御された光の吸収を伴う装置において使用するためのエレクトロクロミック組成物を製造する方法において、単独に又は任意の組み合わせで使用されてもよい。本明細書及び実施例は例示的なものとしてのみ考慮され、本発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕少なくとも2つの可撓性電極と、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の密封して閉じられた空間とを含むエレクトロクロミックデバイスであって、前記少なくとも2つの可撓性電極のうちの少なくとも1つは光透過性であり、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の前記密封して閉じられた空間はエレクトロクロミック組成物を用いて充填され、前記エレクトロクロミックデバイスは、
(1)サスペンション及びコロイドのうちの少なくとも1つを含むエレクトロクロミック分散系の形態の初期エレクトロクロミック組成物を調製することであって、前記エレクトロクロミック分散系の分散媒は、高温溶媒及び低温溶媒を含む液体溶媒、カソード成分、並びにアノード成分を含むエレクトロクロミック溶液を含み、前記エレクトロクロミック分散系の分散相は微細分割ポリマーを含む、ことと、
(2)前記2つの可撓性電極のうちの少なくとも1つを、任意形状の相互に絶縁された導電性の層又は部分の形態で導電性コーティングがポリマー基板上に塗布されるように作製することと、
(3)前記可撓性電極のうちの少なくとも1つを、初期エレクトロクロミック組成物を用いてコーティングすることと、
(4)前記低温溶媒を除去して固体の一様に均一なエレクトロクロミック層を形成するために、前記可撓性電極(1又は複数)上に塗布された前記初期エレクトロクロミック組成物を乾燥させることと、
(5)前記乾燥されたエレクトロクロミック組成物を有する一方の可撓性電極を、他方の可撓性電極とラミネートすることと、
(6)前記可撓性電極の全ての前記層又は部分を導電性バスに接続することと、
(7)2つの可撓性電極の間の密封して閉じられた空間をシールすることと、
を含む方法によって製造される、エレクトロクロミックデバイス。
〔2〕前記エレクトロクロミック溶液は中立電解質をさらに含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイス。
〔3〕前記微細分割ポリマーは、前記初期エレクトロクロミック組成物の固体の層を形成するのに十分な量において提供される、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイス。
〔4〕前記高温溶媒及び/又は前記低温溶媒は、化学化合物又は化学化合物の混合物を、個別に又は組み合わせて含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【0059】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕少なくとも2つの可撓性電極と、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の密封して閉じられた空間とを含むエレクトロクロミックデバイスを製造する方法であって、前記少なくとも2つの可撓性電極のうちの少なくとも1つは光透過性であり、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の前記密封して閉じられた空間はエレクトロクロミック組成物を用いて充填され、前記方法は、(1)サスペンション及びコロイドのうちの少なくとも1つを含むエレクトロクロミック分散系の形態の初期エレクトロクロミック組成物を調製することであって、前記エレクトロクロミック分散系の分散媒は高温溶媒と低温溶媒とカソード成分とアノード成分とを含むエレクトロクロミック溶液を含み、前記エレクトロクロミック分散系の分散相は高分散性ポリマーを含む、ことと、(2)前記少なくとも2つの可撓性電極の間の前記密封して閉じられた空間を、乾燥されたエレクトロクロミック組成物を用いて充填することと、(3)前記少なくとも2つの可撓性電極の間の前記密封して閉じられた空間をシールすることと、を含むエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔2〕前記エレクトロクロミック溶液は中立電解質をさらに含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔3〕前記高分散性ポリマーは、前記エレクトロクロミック組成物の固体の層を形成するのに十分な量において提供される、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔4〕前記高温溶媒及び/又は前記低温溶媒は、化学化合物又は化学化合物の混合物を、個別に又は組み合わせて含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔5〕前記カソード成分は、ポーラログラムにおいて少なくとも1つの可逆的還元波を有する個別の有機エレクトロクロミック化合物である、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔6〕前記アノード成分は、ポーラログラムにおいて少なくとも1つの可逆的酸化波を有する個別の有機エレクトロクロミック化合物である、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔7〕2つの可撓性電極のうちの少なくとも1つの上に前記初期エレクトロクロミック組成物を塗布し、塗布された初期エレクトロクロミック組成物を乾燥させて前記低温溶媒の除去を完了する工程をさらに含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔8〕半分の量の前記初期エレクトロクロミック組成物を前記2つの可撓性電極のそれぞれの上に塗布する工程と、塗布された初期エレクトロクロミック組成物を乾燥させる工程と、前記2つの可撓性電極のうちの第1のものを前記2つの可撓性電極のうちの第2のものとラミネートする工程とをさらに含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔9〕前記初期エレクトロクロミック組成物は、紫外線(UV)遮断添加剤をさらに含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔10〕前記初期エレクトロクロミック組成物は、酸化防止剤をさらに含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔11〕赤外線(IR)照射から保護するための保護層を前記エレクトロクロミックデバイス上に塗布することをさらに含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔12〕前記少なくとも2つの可撓性電極は、ドープされた酸化インジウム(In2O3)又はドープされた酸化スズ(SnO2)の透明導電性層を用いて一方の側がコーティングされたポリマー基板を含む、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔13〕前記ポリマー基板はポリエチレンテレフタレート基板である、前記〔12〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔14〕前記透明導電性層が、前記少なくとも2つの可撓性電極の間に画定される閉じられた空間内に位置するように、前記少なくとも2つの可撓性電極は周囲の周りで密封して接合される、前記〔12〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔15〕前記少なくとも2つの可撓性電極の間の接合は、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の所定の距離を提供するためのスペーサーを含む、前記〔14〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔16〕前記少なくとも2つの可撓性電極の最も長い辺に沿って導電性トレースのバスが提供される、前記〔1〕に記載のエレクトロクロミックデバイスを製造する方法。
〔17〕少なくとも2つの可撓性電極と、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の密封して閉じられた空間とを含むエレクトロクロミックデバイスであって、前記少なくとも2つの可撓性電極のうちの少なくとも1つは光透過性であり、前記少なくとも2つの可撓性電極の間の前記密封して閉じられた空間はエレクトロクロミック組成物を用いて充填され、前記エレクトロクロミックデバイスは、(1)サスペンション及びコロイドのうちの少なくとも1つを含むエレクトロクロミック分散系の形態の初期エレクトロクロミック組成物を調製することであって、前記エレクトロクロミック分散系の分散媒は高温溶媒と低温溶媒とカソード成分とアノード成分とを含むエレクトロクロミック溶液を含み、前記エレクトロクロミック分散系の分散相は高分散性ポリマーを含む、ことと、(2)前記少なくとも2つの可撓性電極の間の前記密封して閉じられた空間を、乾燥されたエレクトロクロミック組成物を用いて充填することと、(3)前記少なくとも2つの可撓性電極の間の前記密封して閉じられた空間をシールすることと、を含む方法によって製造される、エレクトロクロミックデバイス。
〔18〕前記エレクトロクロミック溶液は中立電解質をさらに含む、前記〔17〕に記載のエレクトロクロミックデバイス。
〔19〕前記高分散性ポリマーは、前記初期エレクトロクロミック組成物の固体の層を形成するのに十分な量において提供される、前記〔17〕に記載のエレクトロクロミックデバイス。
〔20〕前記高温溶媒及び/又は前記低温溶媒は、化学化合物又は化学化合物の混合物を、個別に又は組み合わせて含む、前記〔17〕に記載のエレクトロクロミックデバイス。