(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】観察システム、シート配置調整機構、シート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジ及び観察方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
G01N1/28 U
(21)【出願番号】P 2022505149
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006954
(87)【国際公開番号】W WO2021177120
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020035916
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-029322(JP,A)
【文献】特開2001-249124(JP,A)
【文献】国際公開第2011/149009(WO,A1)
【文献】特開2019-105549(JP,A)
【文献】特開2008-003506(JP,A)
【文献】特開2008-197157(JP,A)
【文献】特開2006-267039(JP,A)
【文献】特開2006-220559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシートと、
前記第1のシート上に観察対象物を配置する配置手段と、
前記第1のシート上に前記観察対象物が配置された後、前記第1のシートと重ね合わせられる第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシート間に固定された状態の前記観察対象物を観察する観察手段と、
前記配置手段に係る動作の調整を行う制御手段と、を備え
ることを特徴とする、観察システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1のシート上に配置される観察対象物の配置量、配置速度、配置間隔のうち少なくとも1つ以上の制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の観察システム。
【請求項3】
前記観察手段の後段に、前記観察対象物を回収する回収手段を設けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の観察システム。
【請求項4】
前記回収手段は、前記第1のシートと前記第2のシートを剥離し、前記観察対象物を取り出す手段を設けることを特徴とする、請求項3に記載の観察システム。
【請求項5】
前記回収手段は、前記第1のシート及び前記第2のシートの間に前記観察対象物が固定された状態で、シートを切り取る手段を備えることを特徴とする、請求項3に記載の観察システム。
【請求項6】
前記第1のシート及び前記第2のシートを移動させるシート移動機構を備え、前記シート移動機構は、速度調整機能を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の観察システム。
【請求項7】
前記観察手段は、前記第1のシート及び前記第2のシートの配置調整を行うシート配置調整機構を備え、
前記シート配置調整機構は、
前記第1のシート及び前記第2のシートを取り付ける固定治具と、
前記第1のシート及び前記第2のシートの平滑面を維持する支持部と、を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の観察システム。
【請求項8】
前記観察手段は、顕微鏡とカメラからなることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の観察システム。
【請求項9】
前記制御手段は、
観察手段の操作に係る動作又は、観察データの取得及び保存に係る動作の調整を併せて行うことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の観察システム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記回収手段に係る回収動作の調整を併せて行うことを特徴とする、請求項
3~
5のいずれか一項に記載の観察システム。
【請求項11】
前記制御手段は、前記シート移動機構に係るシート動作の調整を併せて行うことを特徴とする、請求項
6のいずれか一項に記載の観察システム。
【請求項12】
前記第1のシート及び前記第2のシートは、シートの一方もしくは一部において、水に対する表面特性が異なるものであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の観察システム。
【請求項13】
観察対象物の観察に用いるシートの配置調整を行うシート配置調整機構であって、
観察対象物を配置するシートを取り付ける固定治具と、
前記シートの平滑面を維持する支持部と、を備え、
前記固定治具は、前記シートの短手方向への、前記シートの移動を制限することを特徴とする、シート配置調整機構。
【請求項14】
第1のシートと、第2のシートとを備え、
前記第1のシート上に観察対象物を配置する配置工程と、
前記第1のシート上に前記観察対象物が配置された後、前記第1のシートと第2のシートとを重ね合わせる工程と、
前記第1のシートと前記第2のシート間に固定された状態の前記観察対象物を観察する観察工程と、
前記配置工程に係る動作の調整を行う制御工程と、を備えることを特徴とする、観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察システム、シート配置調整機構、シート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジ及び観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理技術及び観察技術の向上により、大量のデータを取得、解析することが可能となっている。これに伴い、様々な観察対象物について観察データの取得、解析によるデータベース化を行い、データを有効活用することの重要性が高まっている。
【0003】
特に、顕微鏡観察による観察データの取得においては、観察対象物の形状に係る画像データの取得に加え、各種光学分析手段との組み合わせによる測定データ等を取得することも可能となっており、観察データとして活用可能な情報量は格段に増加している。
【0004】
各種観察データの取得及び解析に係る技術は向上している一方で、観察対象物を観察に適した状態とする試料(サンプル)調製については、手作業によるところが大きく、観察対象物の量が増加するとともに、観察対象物の試料化に係る人件費や時間の消費が多大となっている。観察データのデータベース化やデータの有効活用には、大量の観察対象物の観察に係る作業を迅速に行う必要があるため、観察対象物の試料調製に係る効率化が検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、観察対象物(生物学的標本)を自動処理する装置として、観察対象物が配置されたスライドを保持するスライドトレイ、スライドトレイの運搬装置、試薬供給する流体モジュール、自動カバーガラス装着処理装置を備えたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるように、複数の観察対象物を迅速に観察するために、カバーガラス及びスライドガラスを用い、いわゆるプレパラートの作製を自動化することは知られている。
しかし、一般的にプレパラートの作製は、スライドガラスへの観察対象物の配置に始まり、試薬供給、カバーガラスの配置、顕微鏡ステージへの運搬など、試料調製の操作として煩雑な工程を必要とするものである。このため、特許文献1に記載されたプレパラート作製の自動化では、人件費の大幅な削減は可能となるが、大量の試料調製や試料観察の効率化については課題が残るものとなる。
【0008】
また、近年の医療・生物学分野の技術の進展に伴い、観察対象物として細胞や微生物などを扱うことが増加している。このとき、死細胞や死滅した微生物ではなく、生細胞や生きた状態の微生物のような生体(以下、単に「生体」とも呼ぶ)を観察し、その観察データの取得が求められる傾向にある。
従来のプレパラートのような試料形態では、プレパラートを作製し、顕微鏡ステージに搬送するまでの過程で、観察対象物の状態や位置が変わってしまうおそれがあることから、観察データを取得するまでの操作が更に煩雑になる上、正確な観察データの取得が困難であるという問題がある。また、生体を観察対象物とする場合においては、複数のウェル(穴)を有するマルチウェルプレートを用いた試料調製も知られているが、この場合、生体を固定することが難しく、観察が困難であるという課題がある。このため、従来の試料調製で用いられているプレパラートやマルチウェルプレートによらない、新たな観察技術が求められている。
【0009】
本発明の課題は、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とすることで、観察に係る作業効率を向上させることができる観察システム、シート配置調整機構、シート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジ及び観察方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、2枚のシート間に観察対象物を配置・固定し、観察を行うこと、及び、観察時におけるシートの配置調整や供給・回収に係る機構を設けることにより、観察対象物の試料調製に係る作業を迅速かつ容易とすることが可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の観察システム、シート配置調整機構、シート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジ及び観察方法である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の観察システムは、第1のシートと、第1のシート上に観察対象物を配置する配置手段と、第1のシート上に観察対象物が配置された後、第1のシートと重ね合わせられる第2のシートと、第1のシートと第2のシート間に固定された状態の観察対象物を観察する観察手段とを備えるという特徴を有する。
【0012】
本発明の観察システムは、2枚のシート間に観察対象物を配置・固定した状態とし、その状態で観察を行うことで、カバーガラスとスライドガラスを用いたプレパラート作製によらない試料調製及び試料観察が可能となる。これにより、試料調製に係る工程を大幅に簡略化し、観察作業を迅速に行うことが可能となる。また、2枚のシート間に観察対象物を固定するため、観察対象物に対し、必要以上に強い外力をかけることがない。このため、観察対象物として、生細胞や生きた状態の微生物などの生体を扱うことが容易となる。したがって、本発明の観察システムにより、大量の観察対象物の観察に係る作業効率を高めることができ、特に生体に関する観察データのデータベース化やデータの有効活用においても作業の効率化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、観察手段の後段に、観察対象物を回収する回収手段を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、観察後の観察対象物を回収することで、観察データと併せて、観察対象物を標本として保存することが可能となる。特に、生体などのように観察対象物そのものの希少性が高い、あるいは標本としての価値が高いものについて回収することが可能となる。さらに、回収した観察対象物は、観察データによるデータベースを補完する試料とすることや、観察対象物自体を再利用すること等に活用できる。
【0014】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、回収手段は、第1のシートと第2のシートを剥離し、観察対象物を取り出す手段を備えるという特徴を有する。
従来のプレパラートによる観察では、スライドガラスからカバーガラスを剥がすことは難しく、観察後の観察対象物を回収することは困難であった。一方、この特徴によれば、重ね合わせた2枚のシートは容易に剥離することができるため、第1のシート及び第2のシート間にある観察対象物を、観察した後に2枚のシート間から取り出すことで、容易に回収することが可能となる。特に、観察対象物として生体を用いた場合、特定の生体の分離、回収技術としても活用することができる。
【0015】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、回収手段は、第1のシート及び第2のシートの間に観察対象物が固定された状態で、シートを切り取る手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、観察後の観察対象物をシートごと回収することが可能となる。これにより、観察対象物を直接回収するだけでなく、シートに固定した状態のまま、観察対象物を回収・保存することも可能となる。特に、観察対象物として生体を用いた場合、特定の生体の分離、回収技術としても活用することができる。
【0016】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、第1のシート及び第2のシートを移動させるシート移動機構を備え、シート移動機構は、速度調整機能を有するという特徴を有する。
この特徴によれば、試料調製及び試料観察を連続的に実施することが容易となる。これにより、大量の観察対象物の観察に係る作業効率をより一層高めることができる。また、シートの移動速度を調整することで、シート上に配置する観察対象物の量を調整することが容易となる。これにより、観察対象物の試料調製に係る作業をより一層迅速かつ容易に行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、観察手段は、第1のシート及び第2のシートの配置調整を行うシート配置調整機構を備え、シート配置調整機構は、第1のシート及び第2のシートを取り付ける固定治具と、第1のシート及び第2のシートの平滑面を維持する支持部と、を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、第1のシートと第2のシート間の距離及び位置合わせの調整を容易とし、観察対象物の観察に際してシートの歪みや撓みが生じることを抑制し、観察対象物の確実な固定を行うとともに、観察精度を高めることが可能となる。これにより、観察対象物に対し、試料調整に係る作業や観察に係る作業について、より一層の効率化を図ることが可能となる。
【0018】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、観察手段は、顕微鏡とカメラからなるという特徴を有する。
この特徴によれば、顕微鏡とカメラを組み合わせて観察を行うことで、観察対象物自体の情報(観察データ)を得るとともに、観察作業に必要な情報も同時に得ることが可能となる。これにより、大量の観察対象物の観察に係る作業効率をより一層高めることができる。
【0019】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、配置手段及び/又は観察手段に係る動作の調整を行う制御手段を備え、動作は、観察対象物のシートへの配置動作、観察手段の操作に係る動作、観察データの取得及び保存に係る動作のうち、少なくとも一つを含むという特徴を有する。
この特徴によれば、観察手段により取得する観察データの精度向上や、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0020】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、制御手段は、回収手段に係る回収動作の調整を併せて行うという特徴を有する。
この特徴によれば、観察に係る作業効率をより一層向上させることが可能となる。
【0021】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、制御手段は、シート移動機構に係るシート動作の調整を併せて行うという特徴を有する。
この特徴によれば、観察に係る作業効率をより一層向上させることが可能となる。
【0022】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、第1のシート及び第2のシートは、シートの一方もしくは一部において、水に対する表面特性が異なるものであるという特徴を有する。
この特徴によれば、第1のシート及び第2のシートのいずれか一方もしくは一部のシートにおいて、水に対する表面特性を異なるものとすることで、観察対象物を含む水溶液を第1のシート上に配置した後、第2のシートを重ね合わせた際、水溶液がシート間において適度に広がり、シート間の間隔を一定に保つことが容易となる。このため、観察対象物を安定して固定することが可能となるとともに、観察に係る作業効率をより一層高めることが可能となる。
【0023】
また、上記課題を解決するための本発明のシート配置調整機構としては、観察対象物の観察に用いるシートの配置調整を行うシート配置調整機構であって、観察対象物を配置するシートを取り付ける固定治具と、シートの平滑面を維持する支持部と、を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、第1のシートと第2のシート間の距離及び位置合わせの調整を容易とし、観察対象物の観察に際してシートの歪みや撓みが生じることを抑制し、観察対象物の確実な固定を行うとともに、観察精度を高めることが可能となる。また、このシート配置調整機構は、既設の観察手段(例えば、顕微鏡等)に適用することにより、大掛かりな装置更新を伴うことなく、観察対象物に対し、試料調整に係る作業や観察に係る作業について、より一層の効率化を図ることが可能となる観察システム及び観察手段を提供することが可能となる。
【0024】
また、上記課題を解決するための本発明のシート供給用カートリッジとしては、観察対象物の観察に用いるシートを供給するシート供給用カートリッジであって、観察対象物を配置するためのシートと、シートを繰り出し可能に収容する収容部と、を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、観察対象物を配置するシートの供給を容易とし、シート交換や保管に係る作業を簡便に行うことが可能となる。これにより、観察対象物に対し、試料調整に係る作業や観察に係る作業について、より一層の効率化を図ることが可能となる。
【0025】
また、上記課題を解決するための本発明のシート回収用カートリッジとしては、観察対象物の観察に用いるシートを回収するシート回収用カートリッジであって、観察対象物を配置するためのシートを回収して収容する回収部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、観察対象物が配置され、観察が完了した後のシートの回収を容易とし、シート交換や保管に係る作業を簡便に行うことが可能となる。また、観察対象物が生体である場合、シートの後処理も容易となる。これにより、観察対象物に対し、試料調整に係る作業や観察に係る作業について、より一層の効率化を図ることが可能となる。
【0026】
また、上記課題を解決するための本発明の観察方法としては、第1のシートと、第2のシートとを備え、第1のシート上に観察対象物を配置する配置工程と、第1のシート上に観察対象物が配置された後、第1のシートと第2のシートとを重ね合わせる工程と、第1のシートと第2のシート間に固定された状態の観察対象物を観察する観察工程とを備えるという特徴を有する。
本発明の観察方法は、2枚のシート間に観察対象物を配置・固定した状態とし、その状態で観察を行うことで、カバーガラスとスライドガラスを用いたプレパラート作製によらない試料調製及び試料観察が可能となる。これにより、試料調製に係る工程を大幅に簡略化し、観察作業を迅速に行うことが可能となる。また、2枚のシート間に観察対象物を固定するため、観察対象物に対し、必要以上に強い外力をかけることがない。このため、観察対象物として、生細胞や生きた状態の微生物などの生体を扱うことが容易となる。したがって、本発明の観察方法により、大量の観察対象物の観察に係る作業効率を高めることができ、特に生体に関する観察データのデータベース化やデータの有効活用においても作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とすることで、観察に係る作業効率を向上させることができる観察システム、シート配置調整機構、シート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジ及び観察方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施態様における観察システムの概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様の観察システムにおけるシートの移動速度に伴い、シート上に配置される観察対象物の液量の変化についての模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様における観察システムの別態様を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様における観察システムに係るシート配置調整機構の構造を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施態様におけるシート配置調整機構の別態様を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施態様におけるシート配置調整機構の別態様を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施態様におけるシート配置調整機構の別態様を示す概略説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施態様におけるシート配置調整機構の別態様を示す概略説明図である。
【
図9】本発明の第1の実施態様における観察システムに係るシート供給用カートリッジの構造を示す概略説明図である。
【
図10】本発明の第1の実施態様における観察システムに係るシート回収用カートリッジの構造を示す概略説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施態様における観察システムの概略説明図である。
【
図12】本発明の第2の実施態様における観察システムの別態様を示す概略説明図である。
【
図13】本発明の第3の実施態様における観察システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る観察システム、シート配置調整機構、シート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジ及び観察方法の実施態様を詳細に説明する。本発明における観察方法は、本発明における観察システムの作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する観察システム、シート配置調整機構、シート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジ及び観察方法については、本発明に係る観察システム、シート配置調整機構、シート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジ及び観察方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明の観察システムにおいて、観察対象である観察対象物は特に限定されず、様々な分野で観察による観察データの蓄積、解析が必要とされているものを観察対象物とすることができる。また、観察対象物の形態は、シート上に配置できるものであればよく、液体あるいは固体、または観察対象物を含む溶液の形態であってもよい。
近年の医療・生物学の進展により、細胞や微生物などに係る観察データの蓄積、解析の重要性が増してきている。したがって、本発明の観察対象物としては、細胞や微生物など、医療・生物学的に観察データの収集が重要視されているものが挙げられる。特に、生細胞や生きた状態の微生物などの生体のように、従来のプレパラートによる試料調製では観察が困難であったものを観察対象物とすることが好ましい。また、本発明の観察対象物の他の例としては、金属や岩石等の粉体や固体薄片のほか、有機物・無機物の微粒子などが挙げられる。
なお、以下の実施態様においては、観察対象物として、生体を含む水溶液を用いるものについて主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0031】
〔第1の実施態様〕
(観察システム)
図1は、本発明の第1の実施態様における観察システムの構造を示す概略説明図である。
本実施態様における観察システム1Aは、
図1に示すように、第1のシート2aと、第2のシート2bと、観察対象物Sを配置する配置手段3と、観察手段4とを備えるものである。また、第1のシート2a及び第2のシート2bには、シート移動機構5が設けられている。なお、
図1中、一点鎖線の矢印は、データの入出力及び制御が可能となるように接続されていることを示すものである。
【0032】
本実施態様における観察システム1Aは、配置手段3により、第1のシート2a上に観察対象物Sを配置した後、その上部から第2のシート2bを重ね合わせることで、第1のシート2aと第2のシート2bの間に観察対象物Sを固定し、この状態で観察手段4による観察を行うものである。すなわち、従来のカバーガラスとスライドガラスからなるプレパラートに代えて、本実施態様における第1のシート2a及び第2のシート2bを重ね合わせたものを試料とし、観察を行うものである。また、第1のシート2a及び第2のシート2bにシート移動機構5を設けることで、試料調製から試料観察までを一連の動作として行うことが可能となる。これにより、プレパラートを用いた従来の観察における試料の搬送という作業が簡略化され、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0033】
以下、観察システム1Aの各構成について、詳細に説明する。
【0034】
第1のシート2aは、観察対象物Sが配置され、観察対象物Sを支持するためのものである。また、第2のシート2bは、観察対象物Sが配置された第1のシート2aと重ね合わせられるものであり、これにより、観察対象物Sを固定するものである。
【0035】
第1のシート2a及び第2のシート2bとしては、観察対象物Sを配置することができ、かつ観察手段4による観察が可能なものであればよく、材質や形状については特に限定されない。
第1のシート2a及び第2のシート2bの形状としては、後述する観察手段4による観察視野が十分確保できる幅を有するものであればよい。また、第1のシート2a及び第2のシート2bの形状としては、例えば、ロール状のフィルムとすることが挙げられる。これにより、後述するシート移動機構5によるシートの移動を容易とすることができる。また、第1のシート2a及び第2のシート2bは、カートリッジ式で交換可能な構造とすることが好ましい。これにより、シートの交換が容易となるため、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0036】
本実施態様における第1のシート2a及び第2のシート2bの材質の例としては、光透過性を有し、水に対して不溶かつ水を透過しない材質であるものが挙げられる。また、有機溶媒に対する耐性があることがより好ましい。このような材質としては、樹脂フィルムやガラス製のフィルムなどが挙げられる。例えば、樹脂フィルムとして、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど、市場における供給量が多く、安価な樹脂フィルムを用いることで、観察に係るランニングコストを低減することができる。なお、ポリエチレンフィルムは、テラヘルツ波の透過性が高いことが知られており、観察手段4として電子線観察を用いる際に、特に好適に用いることができる。
また、第1のシート2a及び第2のシート2bとしては、光透過性に加え、自家蛍光や吸光が少ない材質であることがより好ましい。これにより、観察手段4における観察に対する影響を抑制することができる。このような材質としては、例えば、シクロオレフィンフィルムなど、光の吸収が少ない樹脂フィルムや、ガラス製のフィルムを用いることが挙げられる。特に、ガラス製のフィルムは、光学観察に係るプレパラートの代替として好適に用いられる。なお、第1のシート2a及び第2のシート2bにおける自家蛍光や吸光については、観察手段4における観察時にバックグラウンドとして補正することで対応するものとしてもよい。
さらに、第1のシート2a及び第2のシート2bとしては、各種滅菌処理(電子線滅菌、紫外線滅菌、加熱滅菌等)に対して耐性があるものが好ましい。これにより、観察対象物Sとして生体を用いる際、観察対象以外の菌や微生物の混入を抑制することが可能となる。また、観察対象物Sとして生体を用いる場合、第1のシート2a及び第2のシート2bとしては酸素の透過/非透過性を選択あるいは付与するものとしてもよい。例えば、生体が嫌気性である場合、第1のシート2a及び第2のシート2bとしては酸素の非透過性を有する材質を選択することが好ましい。一方、生体が好気性である場合、第1のシート2a及び第2のシート2bとしては、酸素の透過性を有する材質を選択することが好ましい。これにより、観察作業時において、生体に対する酸素の影響を制御することが可能となる。
【0037】
第1のシート2a及び第2のシート2bは、それぞれ同じ材質を用いるものとしてもよく、異なる材質を用いるものとしてもよい。また、第1のシート2a及び第2のシート2bは、それぞれのシートの厚みを同一としてもよく、異なるものとしてもよい。例えば、後述する回収手段9により、第1のシート2a及び第2のシート2bの接着や切断を行う際、シートの熱接着に適した薄いシート面と、シートの切断や保存に適した厚いシート面とを組み合わせるものとすることなどが挙げられる。
【0038】
また、第1のシート2a及び第2のシート2bは、表面処理を行うものとしてもよい。表面処理の種類としては特に限定されない。
例えば、表面処理の一例としては、親水処理や撥水処理など、水に対する表面特性に係る処理を行うことが挙げられる。なお、水に対する表面特性とは、親水性/疎水性に係るもののほか、ぬれ特性、水の接触角に関するものを含んでいる。
このとき、親水処理や撥水処理をシート全体に行うものとしてもよいが、親水処理や撥水処理を行う箇所について一定のパターンを持たせるものが挙げられる。例えば、正方形、長方形、円形あるいは楕円状のパターンが一定間隔で並ぶように親水処理を行い、後述する配置手段3により、親水処理を行った箇所に対して水溶液からなる観察対象物Sを配置する。これにより、表面処理を行った箇所に観察対象物Sを安定して配置することが可能となる。
特に、第1のシート2a及び第2のシート2bのいずれか一方もしくは一部のシートについて、水に対する表面特性が異なるものとすることが好ましい。これにより、観察対象物Sを含む水溶液を第1のシート2a上に配置した後、第2のシート2bを重ね合わせた際、水溶液がシート間において適度に広がり、シート間の間隔を一定に保つことが容易となる。このため、観察対象物を安定して固定することが可能となるとともに、観察手段4による観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0039】
また、表面処理の別の例としては、観察対象物Sを固定化するための物質を塗布することが挙げられる。例えば、観察対象物Sが生体である場合、第1のシート2a及び第2のシート2bに塗布する物質としては、生体に対する抗体や、生体と結合するタンパク質、ペプチド、酵素、核酸、塩基、糖鎖、リン脂質、糖脂質などが挙げられる。これにより、表面処理を行った箇所に観察対象物Sを安定して配置することが可能となる。
さらに、表面処理の別の例としては、観察対象物Sを観察するための試薬を塗布することが挙げられる。このような試薬としては、例えば、染色試薬、蛍光試薬、各種プローブなどが挙げられる。これにより、表面処理を行った箇所における観察対象物Sについて、観察手段4による観察が容易となり、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0040】
また、第1のシート2a及び第2のシート2bには、観察時における識別を容易にするための各種識別用情報を組み込むものとしてもよい。このような識別用情報としては、グリッドやスケールバー等、サイズに係る識別用情報や、所定間隔ごとに設けたマーカー、コード(ナンバリング、文字コード、バーコード等)などのガイド等、位置情報に係る識別用情報などが挙げられる。また、識別用情報を組み込む手段としては、第1のシート2aあるいは第2のシート2bに識別用情報をあらかじめ印刷することや、手動により書き入れることなどが挙げられる。
【0041】
配置手段3は、第1のシート2a上に観察対象物Sを配置する配置工程を行うためのものである。
本実施態様の配置手段3は、観察対象物Sを配置することができるものであればよく、特に限定されない。なお、配置手段3は、観察対象物Sの形態(液体あるいは固体)に合わせたものを選択することが好ましい。
【0042】
配置手段3の具体的な例としては、
図1に示すように、分注部30と、分注部30に観察対象物Sを供給する供給部31と、分注部30の角度や位置を制御する制御機構32とを備えるものが挙げられる。
【0043】
分注部30は、観察対象物Sが液体である場合に用いるものであり、観察対象物Sを第1のシート2a上に滴下、排出するものである。
分注部30としては、液体の滴下、排出に適した構造を有するものであればよく、チップやシリンジなどが挙げられる。また、分注部30の材質は特に限定されず、観察対象物Sの性質等に応じて選択することができる。分注部30の材質としては、例えば、プラスチック、金属、ガラスなどが挙げられる。
【0044】
分注部30は、交換可能な構造であることが好ましい。これにより、観察対象物Sの種類や、観察に係る条件変更等に応じて分注部30を交換することができ、観察における他の観察対象物Sの混入などのコンタミネーションを抑制することが可能となる。また、コンタミネーションの抑制という観点からは、分注部30を洗浄可能とし、観察対象物Sの種類が変わるごとに洗浄することが挙げられる。
ここで、観察の作業効率を向上させるという観点からは、分注部30を交換可能とすることが好ましく、この際、分注部30として安価なプラスチック製のチップを用い、使い捨ての形で交換することが挙げられる。これにより、チップの交換のみという短時間の作業で次の観察対象物Sの配置を行うことが可能となるため、略連続した状態で観察を行うことが可能となる。一方、分注部30として金属やガラス製のチップあるいはシリンジを用いる場合、分注部30を洗浄する手段を設けることが好ましい。これにより、分注部30を繰り返し使用可能とすることができ、分注部30の交換にかかるコストを削減することができる。
【0045】
供給部31は、分注部30に観察対象物Sを供給するものである。
供給部31としては、分注部30に対して観察対象物Sを供給することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。
本実施態様における供給部31としては、例えば、
図1に示すように、観察対象物Sを貯留する貯留部31aと、分注部30に観察対象物Sを供給するための供給ライン31b及びポンプ31cを備えるものが挙げられる。
【0046】
供給部31における貯留部31aは、観察対象物S(液体)を貯留することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、水槽、フラスコ、ビーカー、チューブなどが挙げられる。なお、観察対象物Sを含む溶液を貯留する場合、貯留部31aに撹拌機構を設けるものとしてもよい。これにより、溶液中における観察対象物Sの分散性を高め、観察対象物Sを含まない溶液のみが分注部30に供給されることを抑制することができる。
【0047】
供給ライン31b及びポンプ31cは、観察対象物S(液体)を移送することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、供給ライン31bとしては、樹脂や金属からなるチューブを用いることが挙げられる。また、ポンプ31cとしては、各種定量ポンプや、流量調節弁を設けたポンプなど、所定の容量を正確に供給することができるポンプを用いることが挙げられる。これにより、観察対象物Sの配置における条件設定が容易となるため、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0048】
制御機構32は、分注部30の角度や位置を制御するためのものである。
制御機構32としては、分注部30に接続させた支持体と、支持体をXYZ軸及び回転軸に沿って駆動する駆動機構を備えるものが挙げられる。なお、駆動機構は手動で操作するものとしてもよく、数値入力による制御やプログラム等による自動制御を行う制御部を設けるものとしてもよい。これにより、第1のシート2aに対する分注部30の角度や位置を調整し、第1のシート2a上の任意の位置に観察対象物Sを配置することが可能となる。また、制御機構32により、分注部30の角度や位置を調整し、第2のシート2b上に観察対象物Sを配置するものとしてもよい。これにより、後述するように、第1のシート2a上と第2のシート2b上にそれぞれ異なるものを配置することも可能となる。
【0049】
制御機構32による分注部30の位置制御に係る一例としては、分注部30の洗浄中及び洗浄直後、観察対象物Sの種類変更直後など、観察作業を一旦停止して再開する際において、分注部30を第1のシート2aから外れた位置に移動させ、分注部30内の液体を廃液として一定量を排出した後、分注部30を第1のシート2a上に移動させ、観察対象物Sの配置を行うこと等が挙げられる。これにより、観察に適さない廃液が第1のシート2a上に配置されることを防ぎ、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0050】
配置手段3は、
図1に示した構成に限定されるものではない。例えば、配置手段3を複数設けるものとしてもよい。配置手段3を複数設けた場合、配置手段3により第1のシート2a上に配置されるものは観察対象物Sだけではなく、観察対象物Sの観察に必要な試薬を配置するものとしてもよい。
特に、観察対象物Sが生体を含む溶液である場合、生体の観察に広く用いられている染色試薬を配置手段3により配置することが好ましい。このとき、第1のシート2a上に配置された観察対象物Sに対し、直接染色試薬を供給するのではなく、第1のシート2aと第2のシート2bが重なることで、観察対象物Sと染色試薬が混合されるようにすることが好ましい。これにより、分注部30におけるコンタミネーションを抑制することが可能となる。例えば、第1のシート2a上に観察対象物Sと染色試薬を互いが接触しない程度に隣接して配置することや、観察対象物Sを配置する分注部30の角度と、染色試薬を配置する分注部30の角度を異なるものとし、第1のシート2a上と第2のシート2b上にそれぞれ観察対象物Sと染色試薬を配置することなどが挙げられる。
【0051】
また、配置手段3により観察対象物S以外に配置するものとしては、観察対象物Sの観察に必要な試薬(染色試薬)に限定されるものではなく、観察対象物Sに対する環境変化の影響を観察するための化学物質(試薬)などが挙げられる。例えば、観察対象物Sが生体を含む溶液である場合、塩濃度やpHの高い溶液を配置手段3により配置し、観察対象物Sと混合させることで、生体に対する塩濃度やpHの影響についての観察を行うものとすることができる。これにより、観察対象物Sに対する環境変化に伴う観察データについて、迅速かつ容易に取得することが可能となる。
【0052】
配置手段3の他の例としては、分注部30及び供給部31として、ピペットなどの分注器具を用い、手動により観察対象物Sの配置を行うものとしてもよい。特に、第1のシート2a及び第2のシート2bの材質や表面処理条件の選択等、観察条件の設定を検討する場合のように、観察対象物Sの配置数が少ないときには有用な手段となる。また、配置手段3として、観察対象物Sの吸い上げから排出までの工程が自動化されたピペットもしくはシリンジポンプを用いるものとしてもよい。これにより、配置工程の自動化が容易となるため、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。また、制御機構32による位置制御を行うことで、観察対象物Sとして吸い上げる対象を切り替え、複数の観察対象物Sを自動かつ連続的に切り替えることが可能となる。
【0053】
また、配置手段3の他の例としては、分注部30の代わりに、ピンセットなどのピックアップ装置を備える分配部を設けることが挙げられる。これにより、観察対象物Sとして固体薄片を第1のシート2a上に配置することが可能となる。なお、分配部におけるピックアップ装置としては、観察対象物Sである固体薄片を掴んで持ち運ぶことができる構造であればよく、一般的なピンセットのように、固体薄片を挟み込む構造を有するものや、吸着ピンセットのように吸引構造を有するもの等が挙げられる。
【0054】
配置手段3により、第1のシート2a上に観察対象物Sを配置した後、その上部から第2のシート2bを重ね合わせることで、第1のシート2aと第2のシート2bの間に観察対象物Sを固定することができる。なお、第1のシート2a及び第2のシート2bを重ね合わせる手段については特に限定されない。例えば、後述するシート移動機構5を用い、第1のシート2a及び第2のシート2bを重ね合わせること等が挙げられる。これにより、試料調製に係る作業を自動化することが容易となる。
【0055】
観察手段4は、第1のシート2a及び第2のシート2bの間に固定された観察対象物Sを観察する観察工程を行うためのものである。
観察手段4としては、観察対象物Sの観察データを取得することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、観察対象物Sの形状に係る情報を得るための画像取得手段や、観察対象物Sに対する各種分析に基づく情報を得るための光学分析手段、放射線分析手段、磁場分析手段、電子線回折手段などが挙げられる。
本実施態様における観察手段4としては、顕微鏡の構成を利用することが挙げられる。特に光学顕微鏡の構成を利用することが好ましい。これにより、観察対象物Sを拡大した画像を取得して詳細な観察が可能となるとともに、各種分析手段とも組み合わせることが容易となる。
【0056】
観察手段4としては、光学顕微鏡による観察において一般的に用いられる対物レンズ40、接眼レンズ、反射鏡(光源)を備えるものが挙げられる。また、接眼レンズの代わりに、画像取得のための画像取得手段(CCDカメラ等)を設け、画像データの自動収集を可能とすることが好ましい。これにより、観察データの取得、解析に係る作業効率を向上させることが可能となる。なお、
図1には、観察手段4として対物レンズ40のみを図示しており、他の構成については省略している。
本実施態様における観察システム1Aにおいては、
図1に示すように、対物レンズ40の下方に、シート移動機構5により保持された2枚のシート(第1のシート2a及び第2のシート2b)を設置し、2枚のシート間に固定された観察対象物Sの観察を行うため、一般的な光学顕微鏡におけるステージを設けることは必須ではない。
なお、
図1においては、対物レンズ40が観察対象物Sの上方にある正立顕微鏡の構造を示しているが、これに限定されるものではなく、対物レンズ40が観察対象物Sの下方にある倒立顕微鏡の構造を利用するものとしてもよい。また、対物レンズ40を複数設け、複数方向から観察対象物Sの観察を行うものとしてもよい。
【0057】
観察手段4により得られた観察データは、必要に応じ整理、解析を行うことが好ましい。例えば、データの蓄積や解析を行うデータ記憶部やデータ解析部を設け、観察データを入力することで必要な演算処理を行うことが挙げられる。これにより、観察対象物Sに関する観察データのデータベース化やデータの有効活用が可能となる。
【0058】
シート移動機構5は、第1のシート2a及び第2のシート2bを支持して移動させるためのものである。
シート移動機構5としては、第1のシート2a及び第2のシート2bを巻き出して供給する巻出部50として巻出ロール50a、50bと、第1のシート2a及び第2のシート2bを巻き取って回収する巻取部51として巻取ロール51a、51bを備えており、巻取部51(巻取ロール51a、51b)を回転駆動させるための駆動部が設けられている(不図示)。なお、
図1には、巻取部51として巻取ロール51a、51bを設けるものが記載されているが、これに限定されない。例えば、巻出部50(巻出ロール50a、50b)から巻き出された第1のシート2a及び第2のシート2bを、一つの巻取ロールで巻き取って回収するものとしてもよい。これにより、装置の構造を簡略化することが可能となる。
【0059】
シート移動機構5は、シートの移動速度を調整する速度調整機能53を有することが好ましい。速度調整機能53としては、例えば、巻取部51の回転駆動に係る駆動部に対し、回転数の記録もしくは巻径の計測が可能であり、かつ回転数の制御が可能な回転駆動制御部53aを設けることが挙げられる。これにより、シートの巻き取り(回収)速度の調整が可能となり、シートの移動速度を調整することが可能となる。
【0060】
シート移動機構5として、速度調整機能53を備えることで、配置手段3から滴下され、第1のシート2a上に配置される観察対象物Sの量を制御することが可能となる。
図2は、シートの移動速度に伴い、第1のシート2a上に配置される観察対象物Sの液量の変化についての模式図である。なお、
図2は、第1のシート2aを上部から見たときの平面図である。
配置手段3の分注部30及び供給部31により、一定量の観察対象物Sを第1のシート2a上に滴下した場合、
図2Aに示すように、シートの移動速度が適正であれば、配置手段3により滴下された一定量の観察対象物Sは一つの液滴として第1のシート2a上に配置される。一方、
図2Bに示すように、シートの移動速度が遅くなると、観察対象物Sはシートの移動方向に沿って伸びた形状となり、観察時における観察視野を必要以上に広げてしまう。また、
図2Cに示すように、シートの移動速度が速くなると、配置手段3により滴下された一定量の観察対象物Sは複数の液滴に分配されてしまう。したがって、速度調整機能53として、シートの移動速度が適正となるように回転駆動制御部53aを制御することで、第1のシート2a上に配置される観察対象物Sの液量及び液滴形状を、観察手段4による観察に適した状態とすることが可能となる。
ここで、
図2においては、配置手段3により滴下される一定量の観察対象物Sが一つの液滴として配置される場合のシートの移動速度を適正速度として表現しているが、シートの移動速度が適正か否かについては、第1のシート2a上に配置される観察対象物Sの液量(分配量)として所望する量を満たすか否かに応じて設定するものとしてもよい。例えば、配置手段3により一定量の観察対象物Sを滴下し、
図2Cのように、第1のシート2a上で複数箇所に分配されるように配置されるシートの移動速度を適正速度として設定すること等が挙げられる。
【0061】
本実施態様におけるシート移動機構5は、シートの移動速度を調整する速度調整機能53と併せ、シートの移動と停止を制御する機能を有するものとしてもよい。例えば、巻取部51の回転駆動に係る駆動部に対し、第1のシート2a及び第2のシート2bを一定距離あるいは一定時間移動させた後、一定時間停止させる制御を行うことが挙げられる。ここで、この制御は、回転駆動制御部53aによって行うものとしてもよく、別途制御部を設けるものとしてもよい。これにより、観察手段4によって観察対象物Sの観察を行う際、観察対象物Sを断続的に移動させ、かつ観察対象物Sが静止状態にある中での観察を行うことができ、観察の精度を高めることが可能となる。
また、シート移動機構5におけるシート移動に係る制御の他の例としては、例えば、観察対象物Sの観察用の動作モードとしてシートの移動と停止を繰り返す動作や、観察対象物Sの配置用の動作モードとして一定速度でシートを移動する動作等のように、異なる動作モードを切り替えるようにすること等が挙げられる。これにより、観察手段4における観察条件より自由に設定できるとともに、観察対象物Sの配置をより正確に行うことができるようになる。
【0062】
本実施態様におけるシート移動機構5は、第1のシート2a及び第2のシート2bの張力制御のための張力制御手段を設けるものとしてもよい。例えば、巻出部50と巻取部51の中間に張力検知部を設けるものとしてもよい。これにより、第1のシート2a及び第2のシート2bの張力制御をより精密に行うことができ、第1のシート2a及び第2のシート2bの歪みや、第1のシート2a及び第2のシート2bの移動速度のずれを低減することが可能となり、観察の精度を高めることが可能となる。また、張力制御手段の他の例としては、巻出部50にも回転駆動に係る駆動部と回転駆動制御部を設けることや、巻出部50と分注部30の間にシート送り部として回転駆動部を設置することなどが挙げられる。これにより、より高精密に張力制御を行うことができる。
【0063】
本実施態様におけるシート移動機構5は、第1のシート2aを支持して移動させる巻出ロール50aと巻取ロール51a、あるいは第2のシート2bを支持して移動させる巻出ロール50bと巻取ロール51bのいずれか一方あるいは両方が、上下移動可能とすることが好ましい。これにより、第1のシート2aと第2のシート2b間の距離を調整することが可能となる。
【0064】
また、
図1に示すように、第1のシート2a及び第2のシート2bに適度な張力をかけるとともに、第1のシート2aと第2のシート2bを重ね合わせるための支持機構52として、上下移動が可能な複数の支持ローラ52aを設けることが好ましい。これにより、第1のシート2a及び第2のシート2bの移動を安定して行うことができる。また、支持機構52を設けることで、第1のシート2aと第2のシート2bの重ね合わせに係る位置調整の精度を高め、2枚のシート間距離の調整を容易に行うことが可能となる。なお、
図1においては、支持機構52を第2のシート2b側に設けるものを示しているが、これに限定されるものではなく、第1のシート2a側に設けるものとしてもよく、第1のシート2a側及び第2のシート2b側の両方に設けるものとしてもよい。また、支持機構52を設ける箇所や個数についても特に限定されない。例えば、
図1に示すように、観察手段4における対物レンズ40に対し、シートの移動方向における上流側と下流側の両側、かつシート上方側(第2のシート2bの上方側)に支持機構52を設けるものとし、シートの安定した支持を可能とするものが挙げられる。他の例としては、支持機構52を、シート下方側(第1のシート2aの下方側)や、各シートにおいて観察対象物Sを配置する側に設けること等が挙げられる。また、支持機構52を設ける数を減らし、構造を簡略化するものとしてもよい。
【0065】
また、支持機構52に、シートの移動速度を調整する速度調整機能53を備えるものとしてもよい。例えば、支持ローラ52aの回転数あるいは回転速度を計測する計測部及び支持ローラ52aの回転駆動が制御可能な回転駆動制御部を設けることが挙げられる。各シート(第1のシート2a及び第2のシート2b)は支持ローラ52aの回転駆動に伴って移動する。このため、支持ローラ52aの回転駆動を制御することで、シートの移動速度を調整することが可能となる。
【0066】
さらに、支持機構52の他に、第1のシート2aと第2のシート2b間の距離を調整するための調整機構54を別途設けるものとしてもよい。
図3は、本発明の第1の実施態様における観察システム1Aの別態様を示す概略説明図である。なお、
図3においては、分注部30以外の配置手段3については図示を省略している。また、
図1に示した構成と同じものについては、説明を省略する。
調整機構54としては、例えば、観察手段4の対物レンズ40近傍のシート(第1のシート2a又は第2のシート2b)を下方あるいは上方から押す押圧部材を設けることが挙げられる。なお、
図3には、調整機構54として、第1のシート2aを下方から押し上げる押圧部材54aを設けたものを示している。また、押圧部材54aには、上下移動が可能な機構(不図示)を備えるものとする。
押圧部材54aとしては、観察手段4による観察視野を確保するための空間を有する構造であることが好ましい。押圧部材54aの具体例としては、空洞を有する円筒状部材を用いることが挙げられる。これにより、観察手段4による観察視野を確保するとともに、第1のシート2aを均等に押し上げることが可能となる。
【0067】
(シート配置調整機構)
上述したように、第1のシート2aと第2のシート2b間の距離や位置合わせについては、観察対象物Sを安定して固定することや観察精度を高めること等に影響する。このため、本実施態様の観察システム1Aにおける観察手段4には、第1のシート2aと第2のシート2b間の距離及び位置合わせの調整手段、並びに観察精度を高めるための機能を備えたシート配置調整機構6を設けることが好ましい。
【0068】
図4は、本実施態様の観察システム1Aにおけるシート配置調整機構の構造を示す概略説明図である。なお、
図4は、観察システム1Aにおける観察手段4とシート配置調整機構6に係る箇所を拡大した概略説明図であり、配置手段3やシート移動機構5については一部図示を省略している。また、
図1に示した構成と同じものについては、説明を省略する。
本実施態様のシート配置調整機構6としては、第1のシート2a及び第2のシート2bを取り付ける固定治具61と、第1のシート2a及び前記第2のシート2bの平滑面を維持する支持部62を備えるものが挙げられる。
【0069】
固定治具61は、第1のシート2a及び第2のシート2bが取り付けられ、特に観察手段4に対して第1のシート2a及び第2のシート2bの距離及び位置合わせに係る調整を行うための手段である。固定治具61としては、観察手段4の観察視野に対して、第1のシート2a及び第2のシート2bの距離及び位置合わせを行うことができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。なお、固定治具61の構造の一例については後述する。
また、固定治具61の材質は特に限定されない。金属、樹脂、ガラス、セラミック、ゴム、木材などの単一あるいは複数の材質からなるものが挙げられる。なお、固定治具61に取り付けられた第1のシート2a及び第2のシート2bは、それぞれ移動時に固定治具61と接触することになるため、固定治具61としては、第1のシート2a及び第2のシート2bとの摩擦力(摩擦係数)を鑑み、塗装や表面加工を行うことが挙げられる。また、固定治具61には、除電機構を備えるものとしてもよい。これにより、固定治具61を介した第1のシート2a及び第2のシート2bの移動において、円滑な移動を行うことが可能となる。
なお、固定治具61には、第1のシート2a及び第2のシート2bの取り付けに係ること以外の機能を付与するものとしてもよく、例えば、部材610の表面に、抗菌、殺菌、撥水、疎水などの機能を付与することなどが挙げられる。さらに、固定治具61に温度調整機能を付与し、インキュベーターやヒートパネルの機能を兼用させるものとしてもよい。これにより、特に観察対象物Sが生体である場合の観察に適した条件(観察対象物S個体数の増加(培養)や観察対象物Sの活性状態)を調整することも可能となる。
【0070】
また、支持部62は、第1のシート2a及び第2のシート2bの平滑面を維持するための手段である。支持部62としては、移動する第1のシート2a及び第2のシート2bに歪みや撓みが生じ、観察対象物Sの保持や観察精度に影響を及ぼすことがないように、第1のシート2a及び第2のシート2bの平滑面を維持することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。なお、支持部62の構造の一例については後述する。
また、支持部62の材質は特に限定されない。金属、樹脂、ガラス、セラミック、ゴム、木材などの単一あるいは複数の材質からなるものが挙げられる。なお、第1のシート2a及び第2のシート2bは、それぞれ移動時に支持部62と接触することになるため、支持部62としては、第1のシート2a及び第2のシート2bとの摩擦力(摩擦係数)を鑑み、塗装や表面加工を行うことが挙げられる。また、支持部62には、除電機構を備えるものとしてもよい。これにより、支持部62を介した第1のシート2a及び第2のシート2bの移動において、円滑な移動を行うことが可能となる。
なお、支持部62には、その他の機能を付与するものとしてもよく、例えば、抗菌、殺菌、撥水、疎水などの機能を付与することなどが挙げられる。
【0071】
固定治具61の構造の一例としては、
図4に示すように、第1のシート2a及び第2のシート2bを取り付ける空間(スリット、隙間等)を有する直方体状の部材610からなるものが挙げられる。また、
図4に示すように、固定治具61には、第1のシート2a及び第2のシート2bが露出する範囲611(観察手段4の観察視野に相当する範囲)を設けるための孔611aを有するものとする。なお、範囲611(孔611a)の大きさについては、観察手段4による観察対象物Sの観察が可能となる大きさであればよく、特に限定されない。例えば、観察手段4が顕微鏡からなるものである場合、範囲611(孔611a)の大きさとしては、対物レンズ40のレンズ径に相当する大きさとすることが挙げられる。
【0072】
図4に示すように、第1のシート2a及び第2のシート2bが、部材610の空間を通ることで、部材610の内壁面によるシートの移動制限を受けることになる。このとき、固定治具61の範囲611(孔611a)が観察手段4の観察視野内に入るように配置することで、第1のシート2a及び第2のシート2bの位置合わせを確実に行うことができる。つまり、観察手段4の観察視野内に観察対象物Sが確実に入るようにすることが容易となる。また、部材610の空間高さ(
図4におけるZ方向の長さ)が、第1のシート2a及び第2のシート2b間の距離を規定することになる。したがって、固定治具61を設けることにより、第1のシート2a及び第2のシート2bの距離及び位置合わせを容易に行うことが可能となる。
【0073】
観察手段4が顕微鏡からなるものである場合、部材610は、顕微鏡のステージ上に配置かつ固定可能となる構造を有することが好ましい。例えば、部材610を顕微鏡のステージに対して係止する係止手段(ねじ、クリップ等)や、部材610と顕微鏡のステージを接着する接着手段(接着剤、接着用テープ等)を設けることのほか、顕微鏡のステージに嵌合するような構造を部材610に備えることなどが挙げられる。また、顕微鏡のステージに設けられているスライドガラスの固定用部材を活用することができる構造を部材610が備えるものとしてもよい。これにより、観察手段4に対する第1のシート2a及び第2のシート2bの位置合わせに係る作業を簡便に行うことが可能となる。
ここで、固定治具61の部材610を固定する対象は、顕微鏡のステージに限定されるものではなく、その他、部材610の固定対象としては、顕微鏡本体や顕微鏡が設置される台(除振台等)などが挙げられる。
また、部材610を顕微鏡のステージに対して配置かつ固定する際、顕微鏡のステージ上に直接配置かつ固定されるものに限定されない。例えば、顕微鏡のステージと部材610を接続する補助部材を設け、補助部材を介して部材610を顕微鏡のステージに固定することなどが挙げられる。
【0074】
また、固定治具61における部材610や範囲611に係る構成は、
図4に示すものに限定されない。本実施態様における固定治具61の他の例について、
図5及び
図6に基づき説明する。
【0075】
図5は、本実施態様のシート配置調整機構における固定治具に係る別態様を示す概略説明図である。なお、
図5は、
図4におけるYZ平面図であり、孔611aについては図示を省略している。
固定治具61の部材610は、
図4に示した直方体状のものに限定されない。例えば、
図5Aに示すように、部材610としては、直方体において側面の一部あるいは両側面が開放された形状としてもよい。これにより、第1のシート2a及び第2のシート2bの取り付けを容易に行うことが可能となる。
また、部材610による第1のシート2a及び第2のシート2bの位置合わせに係る精度を高めるために、部材610において、シートの移動規制をより確実に行うための構造物612を設けるものとしてもよい。例えば、
図5Bに示すように、部材610に突起物612aを設けることや、ガイド用部材612bを設けることなどが挙げられる。これにより、第1のシート2a及び第2のシート2bの距離や位置合わせに係る調整をより確実に行うことが可能となる。
【0076】
さらに、
図5Cに示すように、固定治具61の部材610を一部分割可能な構造とし、部材610a、部材610bのように複数の構造物からなるものとしてもよい。これにより、観察に係る工程を行う前に、シート配置調整機構6に対して第1のシート2a及び第2のシート2bの取り付けを容易に行うことが可能となる。
このとき、分割可能とした構造(部材610a、610b)について、部材610における空間高さ(
図5のZ方向)や横幅(
図5のY方向)が調節可能となるような調節機構を設けるものとしてもよい。例えば、部材610a及び部材610bとを組み合わせた際に固定する箇所を多段階で変更することができるような嵌合構造を設けることや、部材610a及び部材610bを任意の位置で係止することができる係止用部材(クリップ、ねじ、輪ゴム等)を用いることなどが挙げられる。これにより、第1のシート2a及び第2のシート2b間の距離及び位置合わせにおいて調整可能な範囲を拡大することができ、本実施態様の観察システム1Aによる観察に係る要件(観察対象物Sの種類、第1のシート2a及び第2のシート2bのサイズなど)の適用範囲を広げることが可能となる。
【0077】
また、
図6も、本実施態様のシート配置調整機構における固定治具に係る別態様を示す概略説明図である。なお、
図6は、
図4における観察手段4側から見た平面図(
図4におけるXY平面図)と、I-I断面図(
図4におけるYZ平面図)を示している。
図6に示すように、固定治具61の範囲611を形成するために、シート配置調整機構6として、部材610の形状を、第1のシート2a及び第2のシート2bの幅方向両端部に掛かる断面コの字型とすること(
図6A)や、範囲611外に部材610を設けること(
図6B)等が挙げられる。これにより、孔611aを設けることによらず、範囲611を形成することが可能となる。
【0078】
支持部62の構造の一例としては、
図4に示すように、第1のシート2a及び/又は第2のシート2bに適度な張力をかけた状態で、固定治具61に向かって第1のシート2a及び第2のシート2bを供給する支持用部材620からなるものが挙げられる。
支持用部材620は、シート移動機構5の巻出部50から供給される第1のシート2a及び/又は第2のシート2bに接触する接触部620aを有し、この接触部620aを介してシートが移動することで、第1のシート2a及び/又は第2のシート2bに適度な張力がかかり、シートの歪みや撓みの発生を抑制することが可能となる。
なお、
図4においては、支持部62を第1のシート2a側に設けるものを示しているが、これに限定されるものではなく、第2のシート2b側に設けるものとしてもよく、第1のシート2a側及び第2のシート2b側の両方に設けるものとしてもよい。
また、支持部62を設ける箇所や個数についても特に限定されない。例えば、
図4に示すように、観察手段4における対物レンズ40に対し、シートの移動方向における上流側に設けるものとしてもよく、下流側に設けるものや、上流側と下流側の両側に設けるものとしてもよい。このとき、上流側及び/又は下流側に連続して複数個の支持部62を設けるものとしてもよい。
さらに、支持部62と上述した支持機構52とを兼用するものとし、観察システム1Aにおける部材数を減らすものとしてもよい。
【0079】
支持用部材620や接触部620aの形状については特に限定されない。例えば、
図4に示すように、支持用部材620の形状を直方体とし、接触部620aが長方形の平面形状からなるものが挙げられる。また、その他の例としては、支持用部材620の形状を断面(
図4におけるXZ面)が多角形あるいは円形からなる柱状体とし、このときの接触部620aが、多角形の頂点とシートの接触により形成される線形状、多角形の面とシートの接触により形成される平面形状、円形の面とシートの接触により形成される円弧形状等からなるものなどが挙げられる。
また、支持用部材620は、
図4に示すように、直方体(柱状体)を固定して設けるものであってもよく、ローラのように円柱の回転駆動を伴うものであってもよい。
なお、支持用部材620を第1のシート2a側及び第2のシート2b側に設ける場合、それぞれの支持用部材620の形状は同一としてもよく、異なるものとしてもよい。また、支持用部材620をシートの移動方向における上流側及び下流側に設ける場合、それぞれの支持用部材620の形状は同一としてもよく、異なるものとしてもよい。
【0080】
本実施態様におけるシート配置調整機構6は、固定治具61と支持部62を一体化するものとしてもよい。
図7は、本実施態様のシート配置調整機構に係る別態様を示す概略説明図である。
図7に示すように、固定治具61における部材610の長さ方向(
図4におけるX方向)端部において、第1のシート2a及び/又は第2のシート2bの供給方向を斜めとすることで、それぞれのシートに張力がかかった状態で部材610内に供給させる。これにより、部材610の長さ方向端部が、支持部62の接触部620aとして機能することになる。また、部材610に対し、上述した支持用部材620の構造を組み合わせ、一体化するものとしてもよい。これにより、シート配置調整機構6としての部材数を低減させることが可能となる。
【0081】
本実施態様におけるシート配置調整機構6は、第1のシート2a及び第2のシート2bの距離及び位置合わせの調整手段、並びに観察精度を高めるための機能として、シートの移動時だけではなく、観察時において有用な機能を備えるものとしてもよい。
図8は、本実施態様のシート配置調整機構に係る別態様を示す概略説明図である。
図8に示すように、本実施態様におけるシート配置調整機構6としては、支持部62として固定治具61に第1のシート2a及び第2のシート2bを固定するシート固定部621を備えるものとすることが挙げられる。これにより、観察時に第1のシート2a及び第2のシート2bの移動を停止した際と併せ、観察手段4の観察視野に対しシートの位置合わせを行うために固定治具61を動かす際においても、シートの平滑面を維持し、シートの歪みや撓みが発生するのを抑制することが可能となる。
シート固定部621は、固定治具61の部材610に対し、第1のシート2a及び/又は第2のシート2bを固定することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、
図8Aに示すように、シート固定部621として、固定治具61の部材610内で上下移動可能な構造体を設け、シート固定部621を介して第1のシート2a及び第2のシート2bを部材610に対して押し付けることが挙げられる。また、別の例としては、
図8Bに示すように、シート固定部621として、固定治具61の部材610側面(開放面)に対し横移動可能な構造体を設け、シート固定部621を介して第1のシート2a及び第2のシート2bを部材610に対して押し付けることで固定することなどが挙げられる。
また、シート固定部621によるシートの固定手段としては、上下移動あるいは横移動可能な構造体を押し付けることに限定されない。例えば、シート固定部621として、ゴムなど摩擦力(摩擦係数)の大きい材質を用い、摩擦によりシートを固定することなどが挙げられる。このとき、シート固定部621として摩擦力の大きい材質からなるローラを用いることで、摩擦によるシートの移動制限が可能となる。これにより、シートの歪みや撓みが発生するのを抑制しつつ、第1のシート2a及び第2のシート2bを移動させるとともに、観察手段4の観察視野に対しシートの位置合わせを行うために固定治具61を動かすことが可能となる。
【0082】
本実施態様の観察システム1Aにおいて、シート配置調整機構を設けることにより、第1のシート2aと第2のシート2b間の距離及び位置合わせの調整を容易とし、観察対象物の観察に際してシートの歪みや撓みが生じることを抑制し、観察対象物の確実な固定を行うとともに、観察精度を高めることが可能となる。これにより、観察対象物に対し、試料調整に係る作業や観察に係る作業について、より一層の効率化を図ることが可能となる。
また、シート配置調整機構に係る構成は、本発明に係るシート配置調整機構として独立したものとすることができる。このシート配置調整機構は、既設の観察手段4(例えば、顕微鏡等)に適用することにより、大掛かりな装置更新を伴うことなく、本発明の観察システム及び観察手段を提供することができる。
【0083】
(シート供給・回収用カートリッジ)
本実施態様の観察システム1Aにおけるシートの供給・回収について、
図1に示すように、第1のシート2a及び第2のシート2bを巻き出して供給する巻出部50としての巻出ロール50a、50bと、第1のシート2a及び第2のシート2bを巻き取って回収する巻取部51としての巻取ロール51a、51bを備えること以外のシートの供給・回収機構を設けるものとしてもよい。
【0084】
このようなシートの供給・回収機構の例としては、シートの供給や回収に係る機能をケーシングに収容したカートリッジ式とすることが挙げられる。シートの供給・回収に係る機構をカートリッジ式とすることで、シートの交換や保管が容易となる。また、シートがケーシング内にあることにより、観察時やシートの移動時において、供給前あるいは回収後のシートに対する異物混入・付着を抑制することが容易となる。
【0085】
まず、シート供給用カートリッジの一例について説明する。
図9は、本実施態様の観察システム1Aにおけるシート供給用カートリッジの概略説明図である。
図9に示すように、本実施態様のシート供給用カートリッジ7は、観察対象物Sを配置するシート(
図9Aでは第1のシート2a)を繰り出し可能に収容する収容部70を備えるものである。
【0086】
本実施態様のシート供給用カートリッジ7における収容部70は、シート(第1のシート2a又は第2のシート2b)を収容し、かつ収容したシートがシート移動機構5を介して観察手段4あるいはシート配置調整機構6に向かって繰り出されるものであればよく、例えば、
図9に示すように、ケーシング71と、軸72と、動力伝達部73とを備えるものが挙げられる。
ケーシング71は、シートが巻き付けられた軸72と、軸72と接続され、かつ軸72に対して回転駆動に係る動力を伝える動力伝達部73とを内部に収容し、シートをケーシング71外に繰り出すシート供給口71aを備えている。このとき、シート移動機構5としては、動力伝達部73と嵌合接続し、回転駆動する回転駆動部を用いることが好ましい。これにより、本実施態様のシート供給用カートリッジ7は、動力伝達部73とシート移動機構5(回転駆動部)とを嵌合させるという簡便な操作により、シートの供給に係る操作や、シート交換に係る操作を完了させることができる。特に、シート移動機構5と動力伝達部73の嵌合位置が常に一定となるように接続させることで、シートの供給における位置合わせに係る操作が簡略化され、観察に係る作業について一層の効率化が可能となる。
【0087】
ケーシング71は分割可能な構造を有することが好ましい。これにより、軸72に巻き付けられたシートがなくなった場合、ケーシング71内から軸72を取り外し、シートが巻き付けられた新しい軸72と交換することが容易となる。これにより、ケーシング71を繰り返し使用することが可能となる。
【0088】
ケーシング71のシート供給口71aは、使用前にケーシング71内へ異物が混入することを防止するために、粘着剤がついた薄膜フィルム(シール)等で封止されていることが好ましい。なお、このとき封止に用いた薄膜フィルムは、シート交換の際にシート同士を接続するために用いるものとしてもよい。これにより、シート交換に係る作業が容易となる。
また、シート供給口71aには、シートがケーシング71内に引き込まれることを防ぐために、シートを係止するシート係止構造を備えるものとしてもよい。このようなシート係止構造としては、シート供給口71aに摩擦力(摩擦係数)の高い材質からなる構造物を設けることや、逆止弁のような構造を設けることなどが挙げられる。なお、上述した封止用の薄膜フィルム(シール)を利用して、シートを係止するものとしてもよい。
さらに、シート供給口71aには、シートを切断する機構を設けるものとしてもよい。これにより、観察終了後、シートを切り離すことが容易となり、観察のために供給したシートの回収と供給前のシートの保管が容易となる。このとき、シート端部の切り口が斜めとなるように切断する構造を備えることが好ましい。これにより、再度シートを供給する際、シート配置調整機構6への導入に係る操作が容易となる。
【0089】
本実施態様のシート供給用カートリッジ7について、使用される個数については特に限定されない。
例えば、
図9Aに示すように、シートごと(第1のシート2a及び第2のシート2b)に独立した収容部70を設け、シートの供給に際し、複数のカートリッジを用いるものとしてもよい。なお、シート供給用カートリッジ7を複数用いる場合、
図9Aに示すように、それぞれのケーシング71の軸72に対し、動力伝達部73を個々に設けるものとしてもよく、複数の軸72に対し、1つの動力伝達部73を接続し、回転駆動に係る動力を伝える構造とするものとしてもよい。
また、
図9Bに示すように、収容部70のケーシング71内に第1のシート2a及び第2のシート2bを収容し、シートの供給に際し、1つのカートリッジを用いるものとしてもよい。このとき、1つの動力伝達部73により、2つの軸72に対して回転駆動に係る動力を伝える構造とすることが好ましい。これにより、ケーシング71の小型化が可能になるとともに、シート移動機構5における構成も簡略化することが可能となる。
【0090】
なお、本実施態様の収容部70に係る構造は、
図9に示すものに限定されない。
例えば、軸72は、
図9に示すように、直接シートが巻き付けられる構造に限定されるものではなく、シートが巻き付けられる構造体を別途設け、この構造体と軸72が嵌合接続する構造とするものであってもよい。シートが巻き付けられる構造体を別途設ける場合、シートの巻き付けによる軸72への影響を抑制することが可能となる。
また、動力伝達部73は、
図9に示すように、軸72と別体として設けられる構造に限定されるものではなく、軸72と動力伝達部73が一体化しているものであってもよい。軸72と動力伝達部73が一体化している場合、ケーシング71を小型化することが可能となる。
【0091】
また、観察対象物Sが生体である場合、観察対象物Sを配置する前に、シートの滅菌処理を行うことが好ましい。したがって、収容部70は、オートクレーブや電磁波(電子線、紫外線等)による滅菌処理が可能な材質であることが好ましい。このような材質としては、ガラス、樹脂などが挙げられる。
【0092】
次に、シート回収用カートリッジの一例について説明する。
図10は、本実施態様の観察システム1Aにおけるシート回収用カートリッジの概略説明図である。
図10に示すように、本実施態様のシート回収用カートリッジ8は、観察対象物Sを配置するシート(
図10Aでは第1のシート2a)を回収して収容する回収部80を備えるものである。
【0093】
本実施態様のシート回収用カートリッジ8における回収部80は、シート移動機構5を介して観察手段4あるいはシート配置調整機構6から送られるシート(第1のシート2a又は第2のシート2b)を回収、かつ収容するものであればよく、例えば、
図10に示すように、ケーシング81と、軸82と、動力伝達部83とを備えるものが挙げられる。
ケーシング81は、シートが巻き付けられる軸82と、軸82と接続され、かつ軸82に対して回転駆動に係る動力を伝える動力伝達部83とを内部に収容し、ケーシング81外からシートを送り込むシート回収口81aを備えている。このとき、シート移動機構5としては、動力伝達部83と嵌合接続し、回転駆動する回転駆動部を用いることが好ましい。これにより、本実施態様のシート回収用カートリッジ8は、動力伝達部83とシート移動機構5(回転駆動部)とを嵌合させるという簡便な操作により、シートの回収に係る操作を完了させることができる。特に、シート移動機構5と動力伝達部83の嵌合位置が常に一定となるように接続させることで、シートの回収における位置合わせに係る操作が簡略化され、観察に係る作業について一層の効率化が可能となる。
【0094】
ケーシング81は分割可能な構造を有することが好ましい。これにより、軸82に巻き付けられたシート量が許容上限に達した場合、ケーシング81内から軸82ごとシートを取り外し、新しい軸82と交換することが容易となる。これにより、ケーシング81を繰り返し使用することが可能となる。
【0095】
ケーシング81のシート回収口81aは、使用前にケーシング81内へ異物が混入することを防止するために、粘着剤がついた薄膜フィルム(シール)等で封止されていることが好ましい。なお、このとき封止に用いた薄膜フィルムは、シート回収の際にシート同士を接続するために用いるものとしてもよい。これにより、シート回収に係る作業が容易となる。
また、シート回収口81aには、シートがケーシング81内に引き込まれることを防ぐために、シートを係止するシート係止構造を備えるものとしてもよい。このようなシート係止構造としては、シート回収口81aに摩擦力(摩擦係数)の高い材質からなる構造物を設けることや、逆止弁のような構造を設けることなどが挙げられる。なお、上述した封止用の薄膜フィルム(シール)を利用して、シートを係止するものとしてもよい。
【0096】
本実施態様のシート回収用カートリッジ8について、使用される個数については特に限定されない。
例えば、
図10Aに示すように、シートごと(第1のシート2a及び第2のシート2b)に独立した回収部80を設け、シートの回収に際し、複数のカートリッジを用いるものとしてもよい。なお、シート回収用カートリッジ8を複数用いる場合、
図10Aに示すように、それぞれのケーシング81の軸82に対し、動力伝達部83を個々に設けるものとしてもよく、複数の軸82に対し、1つの動力伝達部83を接続し、回転駆動に係る動力を伝える構造とするものとしてもよい。
また、
図10Bに示すように、回収部80のケーシング81内に第1のシート2a及び第2のシート2bを巻き付けるための2つの軸82を配置し、シートの回収に際し、1つのカートリッジを用いるものとしてもよい。このとき、1つの動力伝達部83により、2つの軸82に対して回転駆動に係る動力を伝える構造とすることが好ましい。これにより、ケーシング81の小型化が可能になるとともに、シート移動機構5における構成も簡略化することが可能となる。
さらに、ケーシング81内に設けた1つの軸82に対し、複数のシート(第1のシート2a及び第2のシート2b両方)を巻き付けるようにして、1つのカートリッジで複数のシート(第1のシート2a及び第2のシート2b両方)を回収するものとしてもよい。これにより、ケーシング81をより一層小型化することが可能となる。
【0097】
なお、本実施態様の回収部80に係る構造は、
図10に示すものに限定されない。
例えば、軸82は、
図10に示すように、直接シートが巻き付けられる構造に限定されるものではなく、シートが巻き付けられる構造体を別途設け、この構造体と軸82が嵌合接続する構造とするものであってもよい。シートが巻き付けられる構造体を別途設ける場合、シートの巻き付けによる軸82への影響を抑制することが可能となる。
また、動力伝達部83は、
図10に示すように、軸82と別体として設けられる構造に限定されるものではなく、軸82と動力伝達部83が一体化しているものであってもよい。軸82と動力伝達部83が一体化している場合、ケーシング81を小型化することが可能となる。
【0098】
また、観察対象物Sが生体である場合、回収したシートについて安全に廃棄するための後処理を行うことが好ましい。したがって、回収部80は、オートクレーブや電磁波(電子線、紫外線等)による滅菌処理や、焼却処理が可能な材質であることが好ましい。このような材質としては、ガラス、樹脂などが挙げられ、焼却処理による有害物質が発生しない樹脂からなるものが特に好ましい。
【0099】
本実施態様の観察システム1Aにおいて、シート供給・回収用カートリッジを設けることにより、第1のシート2aと第2のシート2bの供給・回収を容易とし、シート交換や保管に係る作業を簡便に行うことが可能となる。これにより、観察対象物に対し、試料調整に係る作業や観察に係る作業について、より一層の効率化を図ることが可能となる。
また、シート供給・回収用カートリッジに係る構成は、本発明に係るシート供給・回収用カートリッジとして独立したものとすることができる。このシート供給・回収用カートリッジは、既設の観察手段4(例えば、顕微鏡等)に適用することにより、大掛かりな装置更新を伴うことなく、本発明の観察システム及び観察手段を提供することができる。
【0100】
また、本実施態様における観察システム1Aには、配置手段3、観察手段4及びシート移動機構5における各種動作の調整を行う制御手段Cを設けることが好ましい。より具体的には、
図1に示すように、配置手段3、観察手段4及びシート移動機構5に接続され、データの入出力及び制御を可能とする制御部C1を設けることが挙げられる。制御部C1は、各種手段ごとに設けるものとしてよいが、
図1に示すように、1つの制御部C1に複数の手段を接続し、総合的に制御可能とすることが好ましい。これにより、各種動作の調整及び調整に係る操作を簡便かつ効率的に行うことが可能となる。
ここで、制御部C1における制御対象となる動作の一例としては、観察手段4の操作に係る動作、観察手段4による観察データの取得及び保存に係る動作、観察手段4における観察結果に係るデータを基に、配置手段3の供給部31や制御機構32の駆動制御による、観察対象物Sのシート(第1のシート2a)への配置動作のほか、シート移動機構5における速度調整機能53(回転駆動制御部53a)や支持機構52の回転駆動制御によるシートの移動速度やシートの移動・停止などシートの水平移動に直接的に関連する動作、及び、支持機構52や調整機構54の駆動制御によるシートの水平移動を補助することに関連する動作のようなシート動作などが挙げられる。また、各種手段ごとにおける個別の動作だけではなく、各種手段における動作を複数組み合わせることによる動作も制御対象とすることが好ましい。例えば、シート移動機構5によりシートの移動を停止したタイミングに合わせて、観察手段4による観察データの取得を行うといった一連の動作を制御することや、複数の観察対象物Sに対し、観察対象物Sごとに、配置手段3、観察手段4及びシート移動機構5に係る一連の動作を制御することなどが挙げられる。これにより、観察手段4により取得する観察データの精度向上や、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0101】
以下、本実施態様における制御手段C(制御部C1)による制御対象となる動作について、より具体的な例を列記するが、これに限定されるものではない。
例えば、観察手段4の操作に係る動作としては、顕微鏡やカメラの操作が挙げられる。
また、観察手段4による観察データの取得及び保存に係る動作としては、まず、観察データの取得については、顕微鏡による観察方法、観察時間及び観察条件(倍率等)、並びに、カメラによる撮影方法、撮影時間、撮影枚数及び撮影条件の設定・選択などが挙げられる。一方、観察データの保存については、データ名、データの保存形式及びデータ保存場所の設定・選択などが挙げられる。
また、配置手段3に係る観察対象物Sのシート(第1のシート2a)への配置動作としては、観察対象物Sをシート上に配置(供給)する際の供給量、供給速度、供給間隔などの設定・選択が挙げられる。
さらに、シート移動機構5に係るシート動作としては、シートの移動速度や移動時間、停止時間、観察対象物Sの種類を切り替えるまでの時間に係る設定・選択や、緊急停止に係る判断・実行、シート量の管理などが挙げられる。
これらの動作については、上述したように、いずれか一つを制御対象とするものとしてもよく、複数を任意に組み合わせて制御対象とするものとしてもよい。観察に係る作業効率を向上させるという観点からは、複数の動作について制御対象とすることが好ましい。
【0102】
本実施態様における観察システム1Aには、上述したもの以外の構成を設けるものとしてもよい。
例えば、本実施態様における観察システム1Aは、外部からの不純物の混入を防ぐための手段を設けることが好ましい。このような手段としては、配置手段3及びシート移動機構5を収容可能な密閉部を設け、外部環境との接触を遮断することが挙げられる。また、観察システム1A全体をクリーンルームやクリーンベンチなどの環境下に設置するものとしてもよい。これにより、観察時における外部からの不純物による影響を抑制することが可能となる。また、外部からの不純物の混入をより確実に抑制するための部材を更に設けるものとしてもよい。このような部材としては、例えば、密閉部にフィルタ等を設けること等が挙げられる。なお、シート供給用カートリッジ7及びシート回収用カートリッジ8を用いることで、外部からの不純物の混入を防ぐものとしてもよい。
【0103】
また、外部からの不純物の混入を防ぐための他の手段として、本実施態様における観察システム1Aに、イオナイザ等の除電機構を設け、第1のシート2a及び第2のシート2bの除電を行うことが挙げられる。これにより、第1のシート2a及び第2のシート2bへ不純物が付着することを低減させることが可能となるとともに、静電気による他機器への影響を低減させることも可能となる。
【0104】
以上のように、本実施態様の観察システム及び観察方法により、2枚のシート間に観察対象物を配置・固定した状態とし、その状態で観察を行うことで、カバーガラスとスライドガラスを用いたプレパラート作製によらない試料調製及び試料観察が可能となる。これにより、試料調製に係る工程を大幅に簡略化し、観察作業を迅速に行うことが可能となる。また、2枚のシート間に観察対象物を固定するため、観察対象物に対し、必要以上に強い外力をかけることがない。このため、観察対象物として、生細胞や生きた状態の微生物などの生体を扱うことが容易となる。
したがって、本実施態様の観察システム及び観察方法により、大量の観察対象物の観察に係る作業効率を高めることができ、特に生体に関する観察データのデータベース化やデータの有効活用においても作業の効率化を図ることができる。
【0105】
また、本実施態様のシート配置調整機構により、第1のシートと第2のシート間の距離及び位置合わせの調整を容易とし、観察対象物の観察に際してシートの歪みや撓みが生じることを抑制し、観察対象物の確実な固定を行うとともに、観察精度を高めることが可能となる。
さらに、本実施態様のシート供給用カートリッジ、シート回収用カートリッジにより、第1のシートと第2のシートの供給・回収を容易とし、シート交換や保管等に係る作業を簡便に行うことが可能となる。
これにより、観察対象物に対し、試料調整に係る作業や観察に係る作業について、より一層の効率化を図ることが可能となる。
【0106】
〔第2の実施態様〕
図11は、本発明の第2の実施態様における観察システムを示す概略説明図である。また、
図12は、本発明の第2の実施態様における観察システムの別態様を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る観察システム1Bは、第1の実施態様における観察システム1Aに加え、観察手段4の後段に、観察対象物Sを回収する回収手段9を設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0107】
本実施態様における観察システム1Bは、観察手段4による観察後、観察対象物Sを回収する回収手段9を備えるものである。
回収手段9としては、観察対象物Sを回収することができるものであればよく、特に限定されない。
【0108】
回収手段9の一例としては、第1のシート2a及び第2のシート2bを剥離した後、シートの間に固定されていた観察対象物Sを取り出す手段を備えることが挙げられる。
【0109】
本実施態様における回収手段9の一例としては、
図11に示すように、シートの移動方向として観察手段4の下流側において、支持機構52(支持ローラ52a)を介して、第1のシート2a及び第2のシート2bの移動方向を異なるものとすることで、第1のシート2a及び第2のシート2bを剥離し、シート間に固定されていた観察対象物Sを取り出す手段として、第1のシート2a上にある観察対象物Sを吸引する吸引部90を設けることが挙げられる。
【0110】
吸引部90は、観察対象物Sを吸引し、回収することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、吸引装置(減圧ポンプ等)に接続したチップやシリンジを用い、液体の吸引を行うものとすることが挙げられる。また、吸引部90に対し、XYZ軸及び回転軸に沿って駆動可能な機構を設けるものとし、第1のシート2a上の任意の観察対象物Sを回収可能とするものとしてもよい。
【0111】
回収手段9の他の例としては、第1のシート2a及び第2のシート2bの間に観察対象物Sが固定された状態で、シートを切り取る手段を備えることが挙げられる。
より具体的には、
図12に示すように、シートの移動方向として観察手段4の下流側において、切取部91を設け、観察対象物Sを固定した第1のシート2a及び第2のシート2bごと切り取り、試料切片91aとして回収することが挙げられる。このとき、第1のシート2a及び第2のシート2bは、熱により接着する材質を用い、切取部91として、加熱可能な円筒状部材とシートの切り離しが可能な刃状の部材を備えるものを用いることが挙げられる。これにより、切取部91を第2のシート2b側から押下することで、シート同士の接着及び切り離しが行われ、試料切片91aを回収することが可能となる。
【0112】
回収した試料切片91a内に固定されている観察対象物Sについては、第1のシート2a及び第2のシート2bを剥離することで、観察対象物Sを直接回収することができる。また、試料切片91a内に固定された状態のまま保管するものとしてもよい。この場合、観察対象物Sの回収と保存を一体的に行うことが可能となる。
【0113】
回収手段9により直接回収された観察対象物Sは、別の保存容器に保管することが挙げられる。また、回収手段9により試料切片91aとして回収された観察対象物Sについても、別の保存容器に保管するものとしてもよい。このとき、回収した観察対象物Sの観察データの情報と保存容器の情報をリンクさせ、参照可能とすることが好ましい。これにより、回収した観察対象物Sの活用に係る判断が容易となる。
また、観察対象物Sが生体である場合、本実施態様における観察システム1Bは、生体の観察だけではなく、特定の生体の分離、回収を行うことが可能となる。さらに、観察システム1Bにおいて回収した生体について、得られた観察データから生体の有用性や増殖の必要性の有無を判断した後、必要に応じて回収した生体を培地に投入して増殖を行うものとしてもよい。このとき、試料切片91aごと培養するものとしてもよい。なお、試料切片91aごと培養する際、第1のシート2a及び第2のシート2bの材質は、回収した生体の培養に適した酸素透過性などの物性を有するものを用いることが好ましい。
【0114】
また、本実施態様における観察システム1Bには、配置手段3、観察手段4及びシート移動機構5における各種動作の調整と併せ、回収手段9における各種動作の調整を行う制御手段Cを設けることが好ましい。より具体的には、
図11に示すように、配置手段3、観察手段4、シート移動機構5及び回収手段9に接続され、データの入出力及び制御を可能とする制御部C2を設けることが挙げられる。なお、
図11では、巻取ロール51bと速度調整機能53の接続(一点鎖線の矢印)については図示を省略している。
ここで、制御部C2における制御対象となる動作の一例としては、上述した配置手段3、観察手段4、シート移動機構5に係る各種動作に加え、回収手段9に係る回収動作(吸引部90や切取部91に係る動作)が挙げられる。
回収動作の具体例としては、吸引部90による吸引量、分取量の設定・選択や、切取部91によるシートの切り取り(試料切片91aの回収)のタイミングに係る設定・選択などが挙げられる。
また、回収手段9に係る回収動作と、配置手段3、観察手段4及びシート移動機構5に係る各種動作とを組み合わせることによる動作についても制御対象とすることが好ましい。
これにより、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0115】
従来のプレパラートによる観察では、スライドガラスからカバーガラスを剥がすことは難しく、観察後の観察対象物を回収することは困難であった。
一方、本実施態様における観察システム1Bは、重ね合わせた2枚のシートは容易に剥離することができるため、第1のシート及び第2のシート間にある観察対象物を、観察した後に回収することが可能となる。特に、観察対象物として生体を用いた場合、特定の生体の分離、回収技術としても活用することができる。
【0116】
〔第3の実施態様〕
図13は、本発明の第3の実施態様における観察システムを示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る観察システム1Cは、第1又は第2の実施態様に係る観察システム1A、1Bにおいて、観察手段4として更にカメラ41a、41bを設けるものである。なお、
図13は、本実施態様における観察システム1Cとして、第1の実施態様の構成にカメラ41a、41bを加えたものを示している。ここで、第1の実施態様における構成と同じものについては、説明を省略する。また、制御手段Cについては図示及び説明を省略する。
【0117】
本実施態様における観察システム1Cは、観察手段4として顕微鏡の構成に加えて、カメラ41a、41bを設けるものである。カメラ41a、41bは、シート間に固定された観察対象物S(あるいは液滴)の輪郭が判別できる程度の画像が得られるものであればよく、対物レンズ40よりも低倍率のものを用いることができる。
また、カメラ41a、41bを設ける箇所及び個数については特に限定されない。例えば、
図13に示すように、対物レンズ40に対し、シートの移動方向における上流側及び下流側に設けるものとしてもよく、いずれか一方のみに設けるものとしてもよい。
さらに、本実施態様における観察システム1Cは、カメラ41a、41bにより取得する画像の鮮明化等のために、カメラ41a、41bの近傍に光源を設けるものとしてもよい。なお、観察手段4における各種分析(特に光学分析等)への影響を抑制するため、光源の照射範囲や照射時間、照射のタイミングなどを制御する制御機構を設けるものとしてもよい。
【0118】
対物レンズ40の上流側にカメラ41aを設け、画像取得することにより、観察手段4の対物レンズ40による観察実施箇所に到達する前の観察対象物S(あるいは液滴)の形状を把握することが可能となる。また、観察対象物Sの位置情報の記録を行うことも可能となる。
カメラ41aにより、観察対象物S(あるいは液滴)の位置を把握し、この位置情報に基づき、対物レンズ40の位置及びシートの移動速度を調整することが好ましい。これにより、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。このとき、上述したように、シートに位置情報に係る識別用情報を組み込んでおくと、位置調整の精度が向上する。特に、配置手段3による観察対象物Sの配置がうまくいかず、試料の抜けや観察に不適な状態があることをあらかじめ把握することで、対物レンズ40による観察において、観察に適した箇所だけを観察することが可能となる。これにより、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0119】
また、対物レンズ40の下流側にカメラ41bを設け、画像取得することにより、対物レンズ40による観察終了後の観察対象物Sの位置情報の記録及び把握が可能となる。これにより、回収手段9による観察対象物Sの回収を行う場合、回収位置の特定が可能となり、回収手段9の位置調整を迅速に行うことが可能となる。このとき、上述したように、シートに位置情報に係る識別用情報を組み込んでおくと、回収位置の特定に係る精度が向上する。
【0120】
カメラ41a、41bによる画像取得によって得られる観察対象物Sの形状や位置に係る情報及びシートに設けた識別用情報に基づき、各種パラメータを算出するものとしてもよい。また、算出したパラメータを基に、シート移動機構5を制御するものとしてもよい。
このようなパラメータの算出としては、例えば、第1のシート2a及び第2のシート2bの移動速度の算出、第1のシート2a及び第2のシート2bの張力の算出、第1のシート2a及び第2のシート2b間の距離の推計などが挙げられる。
また、これらのパラメータを基にしたシート移動機構5の制御としては、例えば、第1のシート2a及び第2のシート2bの移動速度にずれが生じていることや、第1のシート2a及び第2のシート2bの張力が過剰あるいは不足していることなどを検知し、観察に適した状態となるように、シートの移動速度、位置及び張力などを補正することが挙げられる。
【0121】
以上のように、本実施態様における観察システム1Cは、観察手段として顕微鏡とカメラを組み合わせて観察を行うことで、観察対象物自体の情報(観察データ)を得るとともに、観察作業に必要な情報も同時に得ることが可能となる。これにより、大量の観察対象物の観察に係る作業効率をより一層高めることができる。
【0122】
なお、上述した実施態様は、観察システム及び観察方法の一例を示すものである。本発明に係る観察システム及び観察方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る観察システム及び観察方法を変形してもよい。
【0123】
例えば、本実施態様における観察システムの観察手段として、油浸レンズを用いるものとしてもよい。また、観察手段として油浸レンズを用いる場合、第2のシート上に油浸レンズ用のオイルを供給するオイル供給部を設け、第2のシートが移動することで、オイルと油浸レンズが接触するようにすることや、油浸レンズ自体にオイル供給部を備えるものとすることが挙げられる。これにより、高倍率での観察が可能となる。
【0124】
また、例えば、本実施態様の観察システムに対し、巻出部における第1のシート及び第2のシートの残量を推定し、一定量以下になった場合に警告を行う機能を設けるものとしてもよい。これにより、試料調製及び試料観察の途中でシートがなくなり、予告なしに作業が中断することを防止することが可能となる。なお、巻出部におけるシート残量を推定する手段としては、シート自体にあらかじめマーカーを設けるものとすることや、巻取部側の巻取ロールの回転数のほか、シートの移動速度及び時間、接触式あるいは非接触式センサを用いた巻出部の巻径の測定結果等から巻出部におけるロール状シートの残量を推計することなどが挙げられる。
一方、第1のシート及び第2のシートを巻き取る巻取部において、シートを巻き取り過ぎると、他の構成(観察手段やシート配置調整機構等)との予期せぬ接触が生じ、観察システムに対する支障を来す場合がある。したがって、巻取部におけるシートの巻き取り量を推定し、一定量以上になった場合に警告を行う機能や巻取部の駆動を停止する機能を設けるものとしてもよい。なお、巻取部におけるシート量を推定する手段としては、巻取部側の巻取ロールの回転数のほか、シートの移動速度及び時間、接触式あるいは非接触式センサを用いた巻取部の巻径の測定結果等から巻取部におけるシート量を推計することなどが挙げられる。また、巻取部のシート量が増加し過ぎると、巻取部の巻径が拡大することで、シート移動機構における支持機構やシート配置調整機構における支持部からシートが浮き上がるという現象が生じる。したがって、シート移動機構における支持機構やシート配置調整機構における支持部において、シートとの接触状態が維持できていないと判断された場合に、警告を行う機能や巻取部の駆動を停止する機能を設けるものとしてもよい。ここで、支持機構や支持部と、シートとの接触状態を確認する手段としては、センサ等による接触の有無を直接検知する検知手段を設けることのほか、支持機構や支持部が回転を伴うものである場合、回転の有無を検知することにより、接触の有無を間接的に検知する検知手段を設けることが挙げられる。
【0125】
また、例えば、本実施態様におけるシート(第1のシート及び第2のシート)は、幅方向の両辺端部に一定間隔で孔を設けるものとしてもよい。このとき、シート移動機構の駆動部の軸形状を歯車状にし、この歯の部分が、シートに設けた孔と噛み合うように設計する。これにより、シートの移動を円滑に行うことができるとともに、シートの移動時における位置ずれや、歪みや撓みの発生を抑制することが可能となる。
【0126】
また、例えば、本実施態様における巻取部に対し、観察対象物Sや観察に使用した薬品の飛散を防ぐための被覆部を設けるものとしてもよい。被覆部としては、アクリルなどの樹脂製ケースなどが挙げられる。これにより、巻取部での巻き取り時に観察対象物Sや薬品の飛散が生じることを防ぐとともに、乾燥に伴う観察対象物Sや薬品の飛散も防ぐことが可能となる。なお、被覆部を設ける代わりに、シート回収用カートリッジの構成を用いるものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の観察システム及び観察方法は、各種観察対象物の観察に利用することができる。特に、生体を観察対象物とする観察において、好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0128】
1A,1B,1C 観察システム、2a 第1のシート、2b 第2のシート、3 配置手段、30 分注部、31 供給部、31a 貯留部、31b 供給ライン、31c ポンプ、32 制御機構、4 観察手段、40 対物レンズ、41a,41b カメラ、5
シート移動機構、50 巻出部、50a,50b 巻出ロール、51 巻取部、51a,51b 巻取ロール、52 支持機構、52a 支持ローラ、53 速度調整機能、53a 回転駆動制御部、54 調整機構、54a 押圧部材、6 シート配置調整機構、61 固定治具、610,610a,610b 部材、611 範囲、611a 孔、612 構造物、612a 突起物、612b ガイド用部材、62 支持部、620 支持用部材、620a 接触部、621 シート固定部、7 シート供給用カートリッジ、70 収容部、71 ケーシング、71a シート供給口、72 軸、73 動力伝達部、8 シート回収用カートリッジ、80 回収部、81 ケーシング、81a シート回収口、82 軸、83 動力伝達部、9 回収手段、90 吸引部、91 切取部、91a 試料切片、C 制御手段、C1,C2 制御部、S 観察対象物