(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】光学用シート状接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20250210BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20250210BHJP
C09J 129/14 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J163/00
C09J129/14
(21)【出願番号】P 2022512166
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021013141
(87)【国際公開番号】W WO2021200757
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020059987
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 樹
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 健太
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 幹広
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082228(JP,A)
【文献】特開2014-043543(JP,A)
【文献】特開2018-168305(JP,A)
【文献】特開2010-275373(JP,A)
【文献】特開2010-230944(JP,A)
【文献】特開2017-179055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 5/10
C09J 7/00 - 7/50
C09J 9/00 -201/10
C08G 59/00 - 59/72
C08L 63/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、及び(B)成分を含有する光学用シート状接着剤であって、光学用シート状接着剤の硬化物の
、1Hz、0℃における貯蔵せん断弾性率(G’
0)が、2×10
7Pa以下である光学用シート状接着剤。
(A)成分:ガラス転移温度(Tg)が50℃以上のバインダー樹脂を含むバインダー樹脂成分
(B)成分:多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ系硬化性成分
【請求項2】
前記(A)成分を構成するガラス転移温度(Tg)が50℃以上の樹脂の少なくとも1種がフェノキシ樹脂である、請求項1に記載の光学用シート状接着剤。
【請求項3】
前記(A)成分を構成するガラス転移温度(Tg)が50℃以上の樹脂の少なくとも1種がポリビニルアセタール樹脂である、請求項1又は2に記載の光学用シート状接着剤。
【請求項4】
前記(B)成分を構成する多官能エポキシ樹脂の少なくとも1種が、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の硬化物を与えるもの〔エポキシ樹脂(BL)〕である、請求項1~3のいずれかに記載の光学用シート状接着剤。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(BL)の含有量が、光学用シート状接着剤全体に対して50~75質量%である、請求項4に記載の光学用シート状接着剤。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(BL)が、オキシアルキレン構造を有する多官能エポキシ樹脂である、請求項4又は5に記載の光学用シート状接着剤。
【請求項7】
前記(B)成分を構成する多官能エポキシ樹脂の少なくとも1種が、23℃で液状のものである、請求項1~6のいずれかに記載の光学用シート状接着剤。
【請求項8】
光学用シート状接着剤の硬化物のヘイズが1%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の光学用シート状接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れ、かつ、低温条件下での屈曲性が高い硬化物を与え、さらに、硬化前における形状保持性に優れる光学用シート状接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示デバイスや発光デバイス等の各種デバイスの携帯性、設置性、意匠性、視認性等を向上させるため、デバイスのフレキシブル化が進められている。このため、フレキシブルデバイスの製造に用いられる接着剤として、屈曲性が高い硬化物を与えるものが要望されている。
【0003】
従来、デバイスを製造する際に、エポキシ樹脂を含有するシート状接着剤が用いられることがあった。しかしながら、エポキシ樹脂を含有する接着剤の硬化物は、貯蔵弾性率が高く、靭性に劣る傾向があった。
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂を含む熱硬化性接着シートであって、前記熱硬化性接着シートの硬化物の25℃における貯蔵弾性率(x1)が1GPa以上であり、かつ、100℃における貯蔵弾性率(x2)が1GPa以上であることを特徴とする熱硬化性接着シートが記載されている。
【0004】
エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物の硬化物の靭性を改良する方法として、樹脂組成物にゴム微粒子等を添加する方法が知られている。
例えば、特許文献2には、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ゴム微粒子、硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物が記載されている。特許文献2には、そのエポキシ樹脂組成物の硬化物は靭性に優れることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-110128号公報
【文献】特開2013-87124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されるように、エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物にゴム微粒子を添加することで、その硬化物の靭性や耐衝撃性を向上させることができる場合がある。しかしながら、ゴム微粒子を含有する樹脂組成物の硬化物は透明性に劣る傾向があった。このため、ゴム微粒子を過剰に含有するシート状接着剤は、光学用シート状接着剤としては適さないおそれがあった。
また、本発明者らの検討によれば、透明性に優れ、かつ、低温条件下での屈曲性が高い硬化物を与えるシート状接着剤が得られる可能性があるとしても、硬化前のシート状接着剤の凝集性を確保し、硬化前の形状保持性にも優れるシート状接着剤を得ることが困難な場合があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、透明性に優れ、かつ、低温条件下での屈曲性が高い硬化物を与え、さらに、硬化前における形状保持性に優れる光学用シート状接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく、バインダー樹脂及びエポキシ樹脂を含有するシート状接着剤について鋭意検討し、本発明を完成するに至った。本発明によれば、下記〔1〕~〔8〕の光学用シート状接着剤が提供される。
〔1〕下記(A)成分、及び(B)成分を含有する光学用シート状接着剤であって、光学用シート状接着剤の硬化物の0℃における貯蔵せん断弾性率(G’0)が、2×107Pa以下である光学用シート状接着剤。
(A)成分:ガラス転移温度(Tg)が50℃以上のバインダー樹脂を含むバインダー樹脂成分
(B)成分:多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ系硬化性成分
〔2〕前記(A)成分を構成するガラス転移温度(Tg)が50℃以上の樹脂の少なくとも1種がフェノキシ樹脂である、〔1〕に記載の光学用シート状接着剤。
〔3〕前記(A)成分を構成するガラス転移温度(Tg)が50℃以上の樹脂の少なくとも1種がポリビニルアセタール樹脂である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学用シート状接着剤。
〔4〕前記(B)成分を構成する多官能エポキシ樹脂の少なくとも1種が、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の硬化物を与えるもの〔エポキシ樹脂(BL)〕である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光学用シート状接着剤。
〔5〕前記エポキシ樹脂(BL)の含有量が、光学用シート状接着剤全体に対して50~75質量%である、〔4〕に記載の光学用シート状接着剤。
〔6〕前記エポキシ樹脂(BL)が、オキシアルキレン構造を有する多官能エポキシ樹脂である、〔4〕又は〔5〕に記載の光学用シート状接着剤。
〔7〕前記(B)成分を構成する多官能エポキシ樹脂の少なくとも1種が、23℃で液状のものである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の光学用シート状接着剤。
〔8〕光学用シート状接着剤の硬化物のヘイズが1%以下である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の光学用シート状接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透明性に優れ、かつ、低温条件下での屈曲性が高い硬化物を与え、さらに、硬化前における形状保持性に優れる光学用シート状接着剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光学用シート状接着剤は、上記(A)成分、及び(B)成分を含有する光学用シート状接着剤であって、上記硬化物の0℃における貯蔵せん断弾性率の要件(以下「低温弾性率要件」ともいう。)を満たすものである。
シート状接着剤とは、常温(23℃、以下同じ)では非流動性を示す、シート状に成形された接着剤をいう。本発明において、シート状接着剤は、短冊状のものであっても、長尺状(帯状)のものであってもよい。
本明細書において、「光学用シート状接着剤」を、「シート状接着剤」と記載することがある。
【0011】
〔(A)成分〕
本発明の光学用シート状接着剤は、(A)成分として、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上のバインダー樹脂(以下、「バインダー樹脂(AH)」と記載することがある。)を含むバインダー樹脂成分を含有する。
本発明において「バインダー樹脂成分」とは、光学用シート状接着剤がバインダー樹脂を1種含有するときはそのバインダー樹脂を意味し、光学用シート状接着剤がバインダー樹脂を2種以上含有するときはそれらの混合物を意味する。
「バインダー樹脂」とは、シート状接着剤に形状保持性又は可とう性を与える重合体成分をいう。
【0012】
本発明の光学用シート状接着剤のように、多官能エポキシ樹脂を含有する接着剤は、未硬化の状態では一定の形状を保持できないおそれがある。特に、本発明の光学用シート状接着剤においては、(B)成分の含有割合が高まるにつれて光学用シート状接着剤の硬化をより顕著に起こさせる(すなわち、硬度がより高い硬化物を得る)ことができるが、(B)成分の含有割合が高くなることで、光学用シート状接着剤の形状保持性はさらに低下する。
本発明においては、この問題を解決するために(A)成分を利用する。すなわち、本発明の光学用シート状接着剤は(A)成分を含有することで、(B)成分を多く含む場合であっても、十分な形状保持性を有する。
【0013】
(A)成分は、バインダー樹脂のみで構成されるものであって、少なくともバインダー樹脂(AH)を必須成分とするものである。
(A)成分は、バインダー樹脂(AH)のみで構成されていてもよいし、バインダー樹脂(AH)に加えて、ガラス転移温度(Tg)が50℃未満のバインダー樹脂をさらに含有してもよいが、バインダー樹脂(AH)のみで構成されているものが好ましい。
【0014】
バインダー樹脂(AH)は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上のものであって、光学用シート状接着剤に、形状保持性又は可とう性を与える重合体成分であれば特に限定されない。
バインダー樹脂(AH)のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上であり、好ましくは80℃以上である。上限値は特にないが、通常200℃以下である。
【0015】
バインダー樹脂(AH)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計を用い、JIS K 7121に準じて測定することができる。
【0016】
(A)成分がバインダー樹脂(AH)を含まないときは、光学用シート状接着剤の形状保持性が十分でないため、例えば、光学用シート状接着剤を使用するために、剥離シートを剥がす際に、光学用シート状接着剤の破壊が生じるおそれがある。すなわち、バインダー樹脂(AH)を含まない光学用シート状接着剤は、硬化前の形状保持性に劣る。
このような観点から、バインダー樹脂(AH)の含有量は、光学用シート状接着剤全体に対して、好ましくは20~45質量%であり、より好ましくは25~43質量%である。
【0017】
バインダー樹脂(AH)の重量平均分子量(Mw)は好ましくは10,000~300,000、より好ましくは、30,000~200,000である。
バインダー樹脂(AH)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0018】
バインダー樹脂(AH)としては、オレフィン系樹脂、アクリル重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系材料、ポリビニルエーテル、ポリイミド樹脂、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
バインダー樹脂(AH)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
バインダー樹脂(AH)の少なくとも1種はフェノキシ樹脂であることが好ましい。
フェノキシ樹脂は、主鎖が芳香族ジオールと芳香族ジグリシジルエーテルとの重付加構造である高分子である。フェノキシ樹脂は、一般に、高分子量のエポキシ樹脂に該当し、重合度が100程度以上のものをいう。
【0020】
フェノキシ樹脂の中には高いガラス転移温度(Tg)を有するものがあり、そのようなフェノキシ樹脂はバインダー樹脂(AH)として好適に用いられる。
【0021】
フェノキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは5,000g/eq以上、より好ましくは7,000g/eq以上である。エポキシ当量の値は、JIS K7236に準じて測定することができる(以下にて同じである)。
【0022】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の共重合体型フェノキシ樹脂、ビスフェノールE型フェノキシ樹脂、ナフタレン型フェノキシ樹脂、ノボラック型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂、シクロペンタジエン型フェノキシ樹脂等が挙げられる。
これらのフェノキシ樹脂は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
フェノキシ樹脂は、二官能フェノール類とエピハロヒドリンとを高分子量まで反応させる方法、又は、二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類を重付加反応させる方法により得ることができる。
例えば、フェノキシ樹脂は、二官能フェノール類とエピハロヒドリンとをアルカリ金属水酸化物の存在下で、不活性溶媒中、40~120℃の温度で反応させることにより得ることができる。また、フェノキシ樹脂は、二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類とを、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下で、沸点が120℃以上の、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、ラクトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶剤中で、反応固形分濃度が50重量%以下で50~200℃に加熱して重付加反応させて得ることもできる。
【0024】
二官能フェノール類は、2個のフェノール性水酸基をもつ化合物であれば、特に限定されない。例えば、ハイドロキノン、2-ブロモハイドロキノン、レゾルシノール、カテコールなどの単環二官能フェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール類;4,4’-ジヒドロキシビフェニルなどのジヒドロキシビフェニル類;ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシフェニルエーテル類;及びこれらのフェノール骨格の芳香環に直鎖アルキル基、分枝アルキル基、アリール基、メチロール基、アリル基、環状脂肪族基、ハロゲン(テトラブロモビスフェノールA等)、ニトロ基等を導入したもの;これらのビスフェノール骨格の中央にある炭素原子に直鎖アルキル基、分枝アルキル基、アリル基、置換基のついたアリル基、環状脂肪族基、アルコキシカルボニル基等を導入した多環二官能フェノール類;等が挙げられる。
【0025】
エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリンなどが挙げられる。
【0026】
また、本発明においては、フェノキシ樹脂として、市販品を用いることもできる。例えば、三菱ケミカル社製の商品名:YX7200(ガラス転移温度(Tg):150℃)、YX6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂、ガラス転移温度(Tg):130℃)、日鉄ケミカル&マテリアル社製の商品名:YP70(ガラス転移温度(Tg):70℃)等が挙げられる。
【0027】
バインダー樹脂(AH)の少なくとも1種はポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール(あるいはそのエステルの部分ケン化物。以下にて同じ。)の水酸基と、アルデヒドとのアセタール化反応によって得られる高分子である。
【0028】
より接着強度に優れる硬化物を与える光硬化性シート状接着剤を得るためには、光学用シート状接着剤は(B)成分を多く含有することが好ましい。しかしながら、(B)成分を多く含有する光学用シート状接着剤は成分の均一性が低下する傾向があり、その結果、得られる硬化物の透明性が低下するおそれがあった。
ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂(AH)として用いることで、成分の均一性を向上させることができる。したがって、ポリビニルアセタール樹脂を用いることで、塗工適性に優れる硬化物を与える光学用シート状接着剤が得られ易くなる。
【0029】
また、フェノキシ樹脂をバインダー樹脂(AH)として用いた場合に、このような成分の均一性の低下が起こることがあるが、(A)成分がフェノキシ樹脂と、ポリビニルアセタール樹脂の両方を含むことで、光学シート用接着剤の成分の均一性を向上させることができる。
【0030】
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールとホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール、ポリビニルアルコールとアセトアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルアセトアセタール等が挙げられる。
これらのポリビニルアセタール樹脂は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
ポリビニルアセタール樹脂は、適当な溶媒中、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを酸触媒を用いて反応させることにより合成することができる。用いる溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒;水とアルコールからなる混合溶媒;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;等が挙げられる。
【0032】
また、ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル溶液に酸触媒とアルデヒドを添加して反応させることによっても合成することができる。
用いる酸触媒としては特に限定されず、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸;が挙げられる。
上記反応は、アルカリを添加することによって停止される。用いるアルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;アンモニア;硝酸ナトリウム等の金属硝酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。
【0033】
〔(B)成分〕
本発明の光学用シート状接着剤は、(B)成分として、多官能エポキシ樹脂(以下、「エポキシ樹脂(BP)」と記載することがある。)を含有するエポキシ系硬化性成分を含有する。
本発明において「エポキシ系硬化性成分」とは、光学用シート状接着剤がエポキシ樹脂を1種含有するときはそのエポキシ樹脂を意味し、光学用シート状接着剤がエポキシ樹脂を2種以上含有するときはそれらの混合物を意味する。
「多官能エポキシ樹脂」とは、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を意味する。
なお、エポキシ基を有する化合物であっても、(A)成分を構成するバインダー樹脂に該当するものは、(B)成分を構成しないものとする。
【0034】
(B)成分を含有する光学用シート状接着剤は硬化性を有する。そして、その光学用シート状接着剤の硬化物は、高温条件下(例えば100℃)においてもある程度の硬度を有する。
【0035】
(B)成分の含有量は、光学用シート状接着剤全体に対して好ましくは50~75質量%であり、より好ましくは52~70質量%であり、さらに好ましくは54~65質量%である。
(B)成分の含有量が上記範囲内であることで、硬化物が、高温条件下においてもある程度の硬度を有する光学用シート状接着剤が得られ易くなる。さらに、光学用シート状接着剤の形状保持性及び粘着性、並びに、硬化物の、高温条件下における形状保持性がバランスよく保たれる。
【0036】
(B)成分は、エポキシ樹脂のみで構成されるものであって、少なくともエポキシ樹脂(BP)を必須成分とするものである。
(B)成分は、エポキシ樹脂(BP)のみで構成されていてもよいし、エポキシ樹脂(BP)に加えて、単官能エポキシ樹脂をさらに含有してもよいが、エポキシ樹脂(BP)のみで構成されていているものが好ましい。
(B)成分を構成するエポキシ樹脂(BP)の含有量(エポキシ樹脂(BP)が2種以上の場合はそれらの合計量)は、(B)成分全体に対して、通常90~100質量%、好ましくは95~100質量%である。
エポキシ樹脂(BP)の含有量が、(B)成分全体に対して90質量%以上であることで、硬化物が、高温条件下においてもある程度の硬度を有する光学用シート状接着剤が得られ易くなる。
【0037】
エポキシ樹脂(BP)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは200~4,000である。
エポキシ樹脂(BP)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0038】
エポキシ樹脂(BP)のエポキシ当量は、好ましくは100g/eq以上500g/eq以下、より好ましくは115g/eq以上450g/eq以下である。エポキシ当量が100g/eq以上500g/eq以下のエポキシ樹脂(B)を含有する光学用シート状接着剤を硬化させることで、接着強度に優れる硬化物を得ることができる。
【0039】
エポキシ樹脂(BP)としては、脂肪族エポキシ化合物(脂環式エポキシ化合物を除く)、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
【0040】
脂肪族エポキシ化合物としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル化物やエポキシノボラック樹脂;レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;フェニルジメタノールやフェニルジエタノール、フェニルジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のグリシジルエーテル化物;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のグリシジルエステル;等が挙げられる。
【0042】
脂環式エポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAの水添物のような、少なくとも1個以上の脂環式構造を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化物、シクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物等のシクロアルケンオキサイド化合物が挙げられる。
【0043】
これらのエポキシ樹脂(BP)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
エポキシ樹脂(BP)の少なくとも1種は、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の硬化物を与えるもの(以下、「エポキシ樹脂(BL)」と記載することがある。すなわち、エポキシ樹脂(BL)は、単独で、又は、硬化剤等の存在下で十分に硬化したときに、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の硬化物を与えるものである。)であることが好ましい。エポキシ樹脂(BL)は、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以下の硬化物を与えるものであることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が-20℃以下の硬化物を与えるものであることがより好ましい。
エポキシ樹脂(BL)を含有する(B)成分を用いることで、低温条件下においても低い貯蔵せん断弾性率(G’)を有する硬化物を与える光学用シート状接着剤が得られ易くなる。このため、エポキシ樹脂(BL)を含有する光学用シート状接着剤は上記低温弾性率要件を満たし易くなる。したがって、低温条件下(例えば0℃)での屈曲性により優れる光学用シート状接着剤が得られ易くなる。
【0045】
本発明の光学用シート状接着剤がエポキシ樹脂(BL)を含有する場合、エポキシ樹脂(BL)の含有量は、光学用シート状接着剤全体に対して好ましくは50~75質量%であり、より好ましくは52~70質量%であり、さらに好ましくは54~65質量%である。
エポキシ樹脂(BL)の含有量が光学用シート状接着剤全体に対して50質量%以上であることで、上記低温弾性率要件を満たす光学用シート状接着剤が得られ易くなる。
【0046】
エポキシ樹脂(BP)の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、エポキシ樹脂(BP)が十分に硬化する条件で硬化反応を行って得られたサンプルを用いて、示差走査熱量測定を行うことにより求めることができる。サンプルの調製条件(エポキシ樹脂(BP)の硬化条件)としては、例えば、実施例に記載の条件が挙げられる。
【0047】
エポキシ樹脂(BL)としては、オキシアルキレン構造を有する多官能エポキシ樹脂が挙げられる。オキシアルキレン構造を有する多官能エポキシ樹脂は、比較的低いガラス転移温度(Tg)の硬化物を与える傾向があるため、エポキシ樹脂(BL)として好ましく用いられる。
【0048】
オキシアルキレン構造としては、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基、オキシへキシレン基、オキシヘプチレン基、オキシオクチレン基、オキシノニレン基、オキシデシレン基、オキシウンデシレン基、オキシドデシレン基、オキシトリデシレン基、オキシテトラデシレン基、オキシペンタデシレン基、オキシシクロプロピレン基、オキシシクロブチレン基、オキシシクロペンチレン基、オキシシクロへキシレン基、オキシデカヒドロナフタニレン基、オキシノルボルナニレン基、オキシアダマンタニレン基などが挙げられる。
【0049】
エポキシ樹脂(BP)の少なくとも1種は、23℃で液状のものであることが好ましい。
「23℃で液状」とは、23℃において流動性を有することを意味する。エポキシ樹脂(BP)は、E型粘度計を用いて、23℃、1.0rpmにて測定した粘度が、2~10000mPa・sであることが好ましい。
23℃で液状のエポキシ樹脂(BP)を用いることで、常温における弾性率が低い光学用シート状接着剤を得ることができる。そのような光学用シート状接着剤は常温での貼付性に優れるため、貼付工程において、光学用シート状接着剤を加熱して軟化させる必要がない。
【0050】
本発明の光学用シート状接着剤が23℃で液状のエポキシ樹脂(BP)を含有する場合、23℃で液状のエポキシ樹脂(BP)の含有量は、光学用シート状接着剤全体に対して好ましくは50~75質量%であり、より好ましくは52~70質量%であり、さらに好ましくは54~65質量%である。
23℃で液状のエポキシ樹脂(B)の含有量が上記範囲内であることで、上記特性を有する光学用シート状接着剤が得られ易くなる。
【0051】
低温条件下においても低い貯蔵せん断弾性率(G’)を有する硬化物を与える光学用シート状接着剤が得られ易くすることと、光学用シート状接着剤の貼付性のいずれも向上させる観点からは、エポキシ樹脂(BL)が23℃で液状であることが好ましい。
【0052】
〔(C)成分〕
本発明の光学用シート状接着剤は、(C)成分として、カチオン重合開始剤を含有してもよい。
カチオン重合開始剤は、(B)成分の重合反応を効率よく進行させ、また、他の硬化剤に比べて光学用シート状接着剤の保存安定性を向上させることができるため好ましい。
カチオン重合開始剤としては、熱カチオン重合開始剤や、光カチオン重合開始剤が挙げられ、接着剤の貯蔵安定性を向上させることができ、光の照射後は、速やかに重合反応が進行することから光カチオン重合開始剤が好ましい。
【0053】
光カチオン重合開始剤は、紫外線が照射されることによってカチオン種を発生して、カチオン硬化性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、紫外線を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。
【0054】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、ジアゾニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等が挙げられる。これらの中でも、他の成分との相溶性に優れることから、スルホニウム塩系化合物が好ましく、芳香族基を有する芳香族スルホニウム塩系化合物がより好ましい。
【0055】
スルホニウム塩系化合物としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’-ビス[ジフェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロホスフェート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロホスフェート、フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロホスフェート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-{4-(2-クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートのハロゲン化物、4,4’,4’’-トリ(β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4’-ビス[ジフェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、トリス[4-(4-アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド、カチオン部が4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、アニオン部がフッ素及びパーフルオロアルキル基が付加したリン系アニオンである塩等が挙げられる。
【0056】
ヨードニウム塩系化合物としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0057】
ホスホニウム塩系化合物としては、トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等が挙げられる。
【0058】
アンモニウム塩系化合物としては、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0059】
カチオン重合開始剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
光学用シート状接着剤がカチオン重合開始剤を含有する場合、カチオン重合開始剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1~6質量部、より好ましくは0.3~5質量部、さらに好ましくは0.5~4質量部である。
【0060】
光学用シート状接着剤は、カチオン重合開始剤以外の反応性硬化剤を含有していてもよい。カチオン重合開始剤以外の反応性硬化剤としては、ベンジルメチルアミン、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール等のアミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物;三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素・ピペラジン錯体などのルイス酸;ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の過酸化物;等の熱反応性硬化剤が挙げられる。
【0061】
〔その他の成分〕
本発明の光学用シート状接着剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤、軟化剤等の添加剤が挙げられる。
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のシート状接着剤がこれらの添加剤を含有する場合、その含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。
【0062】
〔光学用シート状接着剤の層構成〕
本発明の光学用シート状接着剤の厚みは、通常1~50μmであり、好ましくは1~40μm、より好ましくは2~30μmである。
光学用シート状接着剤の厚みは、公知の厚み計を用いて、JIS K 7130(1999)に準じて測定することができる。なお、光学用シート状接着剤が後述する剥離フィルムを有するものである場合、光学用シート状接着剤の厚みは、剥離フィルムの厚みを除いた厚みである。
【0063】
本発明の光学用シート状接着剤は、外部環境からの保護の観点から、少なくとも一方の面に剥離フィルムを有することが好ましく、両面に剥離フィルムを有していてもよい。
【0064】
なお、少なくとも一方の面に剥離フィルムを有する本発明の光学用シート状接着剤は使用前の状態を表したものであり、本発明の光学用シート状接着剤を使用する際は、通常、剥離フィルムは剥離除去される。光学用シート状接着剤が両面に剥離フィルムを有する場合、通常、剥離力の低い剥離フィルムが先に剥離除去される。
【0065】
剥離フィルムとしては、通常、樹脂フィルムを利用することができる。
樹脂フィルムの樹脂成分としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体、ポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0066】
剥離フィルムが剥離剤層を有するものである場合、剥離剤としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0067】
剥離フィルムの厚みは、通常10~300μm、好ましくは10~200μm、より好ましくは15~100μmである。
【0068】
〔光学用シート状接着剤の製造方法〕
本発明の光学用シート状接着剤の製造方法は、特に限定されない。例えば、キャスト法を用いて製造することができる。
【0069】
光学用シート状接着剤をキャスト法により製造する方法は、公知の方法を用いて、原料である接着剤組成物を剥離フィルムに塗工し、得られた塗膜を乾燥することで、剥離フィルム付光学用シート状接着剤を得るものである。
【0070】
接着剤組成物は、前記(A)成分及び(B)成分と、必要に応じてその他の成分を含有するものである。
接着剤組成物は、さらに溶媒を含有してもよい。
溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
接着剤組成物が溶媒を含有するとき、溶媒の含有量は、塗工性等を考慮して適宜決定することができる。
接着剤組成物は、各成分を、常法に従って適宜混合・攪拌することにより調製することができる。
【0071】
光学用シート状接着剤の製造に用いる剥離フィルムは、光学用シート状接着剤の製造工程においては支持体として機能するとともに、光学用シート状接着剤を使用するまでの間は、上述した光学用シート状接着剤の剥離フィルムとして機能する。
【0072】
前記接着剤組成物を塗工する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0073】
接着剤組成物の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が挙げられる。
塗膜を乾燥するときの条件としては、例えば、80~150℃で30秒から5分間である。
【0074】
〔光学用シート状接着剤の特性〕
本発明の光学用シート状接着剤が光硬化性である場合、例えば、光学用シート状接着剤に紫外線を照射することにより、光学用シート状接着剤を硬化させることができる。
紫外線源の具体例としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。また、照射する紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。
紫外線の種類や照射量、照射時間等は、照射するシート状接着剤の構成成分や各構成成分の含有量などにより、適宜決定することができる。
照射照度は、20~1000mW/cm2、光量50~3000mJ/cm2程度が好ましい。
【0075】
本発明の光学用シート状接着剤が熱硬化性である場合、光学用シート状接着剤を熱硬化させる際の条件は特に限定されない。
加熱温度は、(B)成分の反応を効率的に進行させる観点から、80~200℃、好ましくは90~190℃である。
加熱時間は、通常、30分から12時間、好ましくは1~6時間である。
【0076】
本発明の光学用シート状接着剤は、光学用シート状接着剤の硬化物の100℃における貯蔵せん断弾性率(G’100)が、1×105Pa以上であることが好ましい。
【0077】
このような要件を満たす光学用シート状接着剤は、高温条件下(例えば100℃)においても熱変形し難い硬化物を与えるため、耐熱性が求められるデバイス用の接着剤として好適に用いられる。また、このように高温で高い貯蔵弾性率を示す硬化物は、高温でも軟化することがなく、温度変化があっても接着性が低下しにくい。
この観点から、光学用シート状接着剤の硬化物の100℃における貯蔵せん断弾性率(G’100)は、好ましくは2×105Pa以上であり、より好ましくは5×105Pa以上である。
また、光学用シート状接着剤の硬化物の100℃における貯蔵せん断弾性率(G’100)の上限値は特にないが、本発明の光学用シート状接着剤が低温弾性率要件を満たし、通常100℃の貯蔵せん断弾性率が0℃の貯蔵せん断弾性率を超えることはないことから、2×107Pa以下である。
【0078】
硬化物の100℃における貯蔵せん断弾性率(G’100)が、1×105Pa以上である光学用シート状接着剤は、光学用シート状接着剤中に(B)成分を多く含有させることにより効率よく得ることができる。
【0079】
本発明の光学用シート状接着剤は、上記低温弾性率要件を満たすものである。
すなわち、光学用シート状接着剤の硬化物の0℃における貯蔵せん断弾性率(G’0)が、2×107Pa以下である。
【0080】
低温弾性率要件を満たす光学用シート状接着剤は、高温条件下だけでなく低温条件下(例えば0℃)においても屈曲性が高い硬化物を与えるため、フレキシブルデバイス用の接着剤として好適に用いられる。
この観点から、光学用シート状接着剤の硬化物の0℃における貯蔵せん断弾性率(G’0)は、好ましくは1.5×107Pa以下であり、より好ましくは1.2×107Pa以下である。
また、光学用シート状接着剤の硬化物の0℃における貯蔵せん断弾性率(G’0)の下限値は特にないが、上述のとおり、本発明の光学用シート状接着剤が硬化物の100℃における貯蔵せん断弾性率(G’100)が、1×105Pa以上であることが好ましく、通常0℃の貯蔵せん断弾性率が100℃の貯蔵せん断弾性率を下回ることはないことから、1×105Pa以上であることが好ましい。
【0081】
低温における貯蔵せん断弾性率が低く、低温弾性率要件を満たす硬化物を与える光学用シート状接着剤は、光学用シート状接着剤中にエポキシ樹脂(BL)を含有させることにより効率よく得ることができる。
【0082】
上記のように本発明の光学用シート状接着剤の硬化物は、低温弾性率要件を満たすものである。また、光学用シート状接着剤の硬化物の100℃における貯蔵せん断弾性率(G’100)が、1×105Pa以上であることが好ましい。
この場合、本発明の光学用シート状接着剤の硬化物の貯蔵せん断弾性率(G’)の値は、0~100℃の範囲では、通常1×105~2×107Paである。この貯蔵せん断弾性率(G’)の範囲は、エポキシ樹脂を含有する従来のシート状接着剤の硬化物の貯蔵せん断弾性率(G’)の範囲に比べて狭いものである。
例えば、本発明の光学用シート状接着剤の硬化物は、0℃における貯蔵せん断弾性率(G’0)と100℃における貯蔵せん断弾性率(G’100)の比の値(G’0/G’100)は、通常1~20であり、好ましくは1.2~15である。
このように本発明の光学用シート状接着剤は、低温(0℃付近)から高温(100℃付近)の範囲で貯蔵せん断弾性率(G’)の変動が小さい硬化物(すなわち、低温条件下での屈曲性と高温条件下での屈曲性の差が小さい硬化物)を与えるものであれば、温度変化が大きい環境下で用いられるデバイス用の接着剤として好適に用いられる。
【0083】
光学用シート状接着剤の硬化物の貯蔵せん断弾性率(G’)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、測定試料の作製は、各光学用シート状接着剤の特性に応じて、適切な硬化条件を用いて行うことができる。このことは後述する全光線透過率やヘイズを測定する際に用いる測定試料においても同じである。
例えば、光学用シート状接着剤が光硬化性を有するものである場合、測定試料は、実施例に記載の条件で作製することができる。
【0084】
本発明の光学用シート状接着剤は、(A)成分に含まれる樹脂の種類や量、(B)成分に含まれる樹脂の種類や量を調整して硬化物の屈曲性を向上させることができ、透明性を低下させる成分を必要としない。したがって、本発明の光学用シート状接着剤は透明性に優れる。
【0085】
本発明の光学用シート状接着剤の硬化物の全光線透過率は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。
光学用シート状接着剤の硬化物の全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準じて測定することができる。
【0086】
本発明の光学用シート状接着剤の硬化物のヘイズは、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.5%以下である。
光学用シート状接着剤の硬化物のヘイズは、JIS K7136:2000に準じて測定することができる。
【0087】
〔光学用シート状接着剤の用途〕
上記のように、本発明の光学用シート状接着剤は、透明性に優れ、かつ、低温条件下での屈曲性が高い硬化物を与え、さらに、硬化前における形状保持性に優れるものである。したがって、本発明の光学用シート状接着剤は、発光素子、受光素子、表示用素子等を備える光関連デバイスを製造する際に好適に用いられる。
光関連デバイスとしては、有機ELディスプレイ、有機EL照明、液晶ディスプレイ、太陽電池、電子ペーパー等が挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0089】
〔実施例又は比較例で使用した化合物〕
・バインダー樹脂(AH1):フェノキシ樹脂〔三菱ケミカル株式会社製、商品名:YX7200B35、ガラス転移温度(Tg):150℃、Mw:30,000〕
・バインダー樹脂(AH2):ポリビニルアセタール樹脂〔積水化学工業社製、商品名:エスレックKS-5Z、ガラス転移温度(Tg):113℃、Mw:130,000〕
・バインダー樹脂(AH3):ポリビニルアセタール樹脂〔積水化学工業社製、商品名:エスレックBX-25Z、ガラス転移温度(Tg):86℃、重合度:2,300〕
・バインダー樹脂(AH4):フェノキシ樹脂〔日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名:YP70、ガラス転移温度(Tg):70℃、Mw:55,000〕
・バインダー樹脂(A1):フェノキシ樹脂〔三菱ケミカル社製、商品名:YX7180BH40、ガラス転移温度(Tg):15℃、Mw:40,000〕
・エポキシ樹脂(BL1):オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂(23℃で液状)〔三菱ケミカル社製、商品名:YX7400、エポキシ当量:440g/eq、硬化物のガラス転移温度(Tg):-69℃〕
・エポキシ樹脂(BL2):オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂(23℃で液状)〔ADEKA社製、商品名:ED-506、エポキシ当量:300g/eq、硬化物のガラス転移温度(Tg):-50.7℃〕
・エポキシ樹脂(BP1):水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(23℃で液状)〔三菱ケミカル社製、商品名:YX8000、エポキシ当量:205g/eq、硬化物のガラス転移温度(Tg):96.4℃〕
・エポキシ樹脂(BP2):エポキシ樹脂(23℃で液状)〔ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P、エポキシ当量:128~145g/eq、硬化物のガラス転移温度(Tg):94.5℃〕
・カチオン重合開始剤(C1):光カチオン重合開始剤、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート〔サンアプロ社製、商品名:CPI-100P〕
【0090】
なお、(B)成分を構成するエポキシ樹脂の硬化物のガラス転移温度(Tg)は以下の方法により測定した。
(測定試料の作製)
各エポキシ樹脂100質量部に対し、熱カチオン重合開始剤〔三新化学工業社製、商品名:SI-B3A〕0.5質量部を添加した。得られた混合物を厚さ1mm、20mm×20mmのサイズのポリテトラフルオロエチレン製の型に流し込み、100℃で60分加熱して硬化させ、硬化物(測定試料)を得た。
(示差走査熱量測定)
示差走査熱量計〔TAインスツルメント社製、製品名:DSCQ2000〕を用いて、以下の方法で示差走査熱量測定を行い、次いでガラス転移温度を求めた。
すなわち、上記測定試料を砕いて5mgを採り、アルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度120℃で5分ホールドした後、冷却した。その後-100℃から+120℃まで、10℃/分の昇温速度で測定した。
得られた曲線の、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0091】
〔実施例1〕
バインダー樹脂(A1)100質量部(溶媒を除いた有効成分換算、以下同じ。)、エポキシ樹脂(BL1)135質量部、カチオン重合開始剤(C1)5.4質量部をメチルエチルケトンで希釈し、有効成分濃度40質量%の樹脂組成物(1)を調製した。
この樹脂組成物(1)を剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET752150)の剥離処理面上に塗工し、得られた塗膜を100℃で2分間乾燥し、厚み5μmのシート状接着剤を形成した。このシート状接着剤の上に、もう1枚の剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET381031)の剥離処理面を貼り合わせて剥離フィルム付きシート状接着剤(1)を作製した。
【0092】
〔実施例2~6、比較例1~4〕
シート状接着剤を構成する成分として、第1表に記載のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして剥離フィルム付きシート状接着剤(2)~(10)を作製した。
【0093】
実施例1~6、比較例1~4で得た剥離フィルム付きシート状接着剤(1)~(10)について、以下の試験を行った。結果を第1表に示す。
【0094】
〔シート状接着剤の硬化物の貯蔵せん断弾性率(G’)〕
シート状接着剤の硬化物の貯蔵せん断弾性率(G’)は、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定装置(Anton paar社製、製品名:MCR302)を用いて、ねじりせん断法により測定した。
測定方法の詳細を以下に示す。
(測定試料の作製)
実施例及び比較例で得られた剥離フィルム付きシート状接着剤から剥離シートを剥がした後、シート状接着剤を重ねて、厚さ0.5mmの積層体を得た。得られたシート状接着剤の積層体にUV照射を行い、シート状接着剤からなる積層体を硬化させた。UV照射後、硬化反応を促進させるため、積層体を100℃で60分加熱し、シート状接着剤(積層体)の硬化物を得た。
なお、UV照射はアイグラフィックス社製、高圧水銀ランプを使用し、照度200mW/cm2、積算光量1000mJ/cm2の条件で行った。光量計は、アイグラフィックス社製、「UVPF-A1」を使用した。
シート状接着剤(積層体)の硬化物を、直径8mmの円柱体(高さ0.5mm)に打ち抜き、これを測定試料とした。
(貯蔵せん断弾性率(G’)の測定)
得られた測定試料を用いて、周波数1Hz、試験開始温度-20℃、試験終了温度+150℃、昇温速度3℃/分の条件で貯蔵せん断弾性率(G’)を測定した。0℃と100℃における値を第1表に示す。
【0095】
なお、比較例1及び2で得られたシート状接着剤(積層体)の硬化物は貯蔵せん断弾性率が高すぎるため、上記のねじりせん断法では滑りが生じて測定ができなかった。
このため、比較例1及び2で得られたシート状接着剤(積層体)の硬化物については、JIS K7244-4(1999)に準じて、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、DMAQ800)を用いて貯蔵弾性率(E’)を測定し、近似式「E’=3G’」から貯蔵せん断弾性率(G’)を算出した。
貯蔵弾性率(E’)の測定方法の詳細を以下に示す。
(測定試料の作製)
上記と同様の方法によりシート状接着剤(積層体)の硬化物を得た後、シート状接着剤(積層体)の硬化物を縦30mm、横5mmの大きさに加工し、これを測定試料とした。
(貯蔵弾性率(E’)の測定)
得られた測定試料を用いて、周波数1Hz、試験開始温度-20℃、試験終了温度150℃、昇温速度3℃/分の条件で貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0096】
(全光線透過率の測定)
実施例及び比較例で得られた剥離フィルム付きシート状接着剤から、剥離フィルム(軽剥離フィルム、リンテック社製、商品名:SP-PET381130)を剥がし、露出したシート状接着剤をガラスに貼合し、もう一方の剥離フィルムを剥がした後、上記と同様の条件でシート状接着剤を硬化させて測定試料を得た。
ガラスでバックグラウンド測定を行った上で、得られた測定試料を用いて、JIS K7361-1:1997に準じて全光線透過率を測定した。
【0097】
(ヘイズ値の測定)
実施例及び比較例で得られた剥離フィルム付きシート状接着剤から、剥離フィルム(軽剥離フィルム、リンテック社製、商品名:SP-PET381130)を剥がし、露出したシート状接着剤をガラスに貼合し、もう一方の剥離フィルムを剥がした後、上記と同様の条件でシート状接着剤を硬化させて測定試料を得た。
ガラスでバックグラウンド測定を行った上で、得られた測定試料を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値を測定した。
【0098】
(剥離テスト)
実施例及び比較例で得られた剥離フィルム付きシート状接着剤を縦150mm、横50mmの大きさに加工し、試験片を得た。
得られた試験片について、剥離フィルム(軽剥離フィルム、リンテック社製、商品名:SP-PET381130)を300mm/分の速度で剥がすことにより、180°剥離試験を行った。その際、剥がした剥離フィルムのみが剥がれた場合は○、シート状接着剤が引き裂かれ、剥がした剥離フィルムに接着剤が付着した場合を×とした。なお、比較例4の剥離フィルム付きシート状接着剤では、本テストにおいて不良が生じるが、上述の各測定においては、うまく剥がれた部分のみを用いて測定を実施した。
【0099】
【0100】
第1表から以下のことが分かる。
実施例1~6で得られたシート状接着剤(1)~(6)は、低温弾性率要件を満たすものである。
すなわち、シート状接着剤(1)~(6)の硬化物の0℃における貯蔵せん断弾性率(G’0)は2×107Pa以下である。このため、シート状接着剤(1)~(6)の硬化物は、低温における屈曲性が高い。また、シート状接着剤(1)~(6)の硬化物は、100℃における貯蔵せん断弾性率(G’100)が高いことから、低温条件下での屈曲性と高温条件下での屈曲性の差が小さいものである。
さらに、シート状接着剤(1)~(6)の硬化物は透明性にも優れている。
また、低温弾性率要件を満たすシート状接着剤は、形状保持性が低下する傾向があるが、シート状接着剤(1)~(6)は(A)成分を含有するため、剥離テストで剥離フィルムのみを綺麗に剥がすことができ、良好な形状保持性を有している。
一方、比較例1~3で得られたシート状接着剤(7)~(9)は、低温弾性率要件を満たさないため、それらの硬化物は低温における屈曲性に劣る。
比較例4で得られたシート状接着剤(10)は低温弾性率要件を満たすものであり、屈曲性に優れ、また、低温条件下での屈曲性と高温条件下での屈曲性の差が小さいものである。
しかしながら、シート状接着剤(10)は(A)成分を含有しないため、剥離テストで剥離フィルムのみを綺麗に剥がすことができず、形状保持性に劣っている。また、シート状接着剤(10)の硬化物は透明性に劣っている。