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特許7631323エチレンと1,3-ジエンのターポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】エチレンと1,3-ジエンのターポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20250210BHJP
   C08L 23/08 20250101ALI20250210BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250210BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20250210BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20250210BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20250210BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
C08F210/02
C08L23/08
C08K3/013
C08F8/30
C08F8/42
C08L15/00
B60C1/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022516372
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2020075933
(87)【国際公開番号】W WO2021053051
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】1910303
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】モレソ エマ
(72)【発明者】
【氏名】ラファキエール ヴァンサン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504148(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180356(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0371129(US,A1)
【文献】特公昭46-016732(JP,B2)
【文献】特公昭40-028950(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/02
C08L 23/08
C08K 3/013
C08F 8/30
C08F 8/42
C08L 15/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと、4~6個の炭素原子を有する第1の1,3-ジエンと、下記式(I)
CH2=CR-CH=CH2 (I)
(記号Rは、3~20個の炭素原子を有する炭化水素鎖を表す)
の第2の1,3-ジエンとのターポリマーであって、前記ターポリマーが、50モル%超かつ最大で85モル%のエチレン単位、30モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位及び少なくとも1モル%かつ最大で20モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する、前記ターポリマー。
【請求項2】
前記ターポリマーが、60モル%超のエチレン単位を含有する、請求項1に記載のターポリマー。
【請求項3】
前記第1の1,3-ジエンが、1,3-ブタジエン又はイソプレンである、請求項1又は2に記載のターポリマー。
【請求項4】
前記ターポリマーが、さらに1,2-シクロヘキサンジイルモチーフの単位を含有し、かつ前記第1の1,3-ジエンが、1,3-ブタジエン又はその1つが1,3-ブタジエンである第1の1,3-ジエンの混合物である、請求項1又は2に記載のターポリマー。
【請求項5】
記号Rが、6~16個の炭素原子を有する炭化水素鎖を表す、請求項1~4のいずれか1項に記載のターポリマー。
【請求項6】
前記第2の1,3-ジエンが、ミルセン又はβ-ファルネセンである、請求項1~5のいずれか1項に記載のターポリマー。
【請求項7】
前記ターポリマーが、統計ターポリマーである、請求項1~6のいずれか1項に記載のターポリマー。
【請求項8】
前記ターポリマーが、アミン、アルコキシシラン又はシラノール官能基を持っている、請求項1~7のいずれか1項に記載のターポリマー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の少なくとも1種のターポリマー、補強フィラー及び架橋系を含むゴム組成物であって、前記ターポリマーがエラストマーである、前記ゴム組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、エチレン単位に富み、かつタイヤ用ゴム組成物中でエラストマーとして使用できる、共役ジエンとエチレンのコポリマーの分野である。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造で最も広く使用されているジエンエラストマーは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、特に天然ゴム、及び1,3-ブタジエンとスチレンのコポリマーである。これらのエラストマーの共通点は、エラストマー中のジエン単位の高いモル比であり、一般的に50%よりずっと高く、特にオゾンの作用下で、酸化に対してエラストマーを敏感にすることができる。
出願会社は、逆に、特に酸化現象に対するそれらの感度を低減させる目的で、ジエン単位が相対的に乏しいエラストマーについて記載した。これらのエラストマーは、例えば、文献WO 2007054223に記載されている。これらは、50モル%超のエチレン単位を含有する、1,3-ブタジエンとエチレンのコポリマーである。これらのエラストマーは、エチレンリッチジエンエラストマーと記述される。
【0003】
1,3-ブタジエンとエチレンのエチレンリッチコポリマーは結晶性であり、エチレン含量と共にそれらの結晶化度の増大を経験する。コポリマー中の結晶性部分の存在は、コポリマーをゴム組成物中で使用するときに問題になりことがある。コポリマーの結晶性部分の融解はその剛性の降下につながるので、結晶性部分の融点に等しいか又は融点を超える温度にコポリマーを至らされると、該コポリマーを含有する組成物もその剛性の降下を経験する。従って、温度の関数としての剛性のこの依存性は、ゴム組成物の特性にゆらぎをもたらし、特性のより良好な温度安定性を必要とする特定用途にコポリマーを適さないようにする恐れがある。その結晶化度が低減され、実際には排除さえされる、エチレン単位に富む利用可能なジエンポリマーがあれば有利である。
文献WO 2007054224において、出願会社は、低減した結晶化度を示すエチレンリッチジエンコポリマーについて記載した。これらのコポリマーは、さらに飽和6員環状炭化水素モチーフを含有する、1,3-ブタジエンとエチレンのコポリマーである。それにもかかわらず、ゴム組成物に導入されたこれらのコポリマーは、ゴム組成物に過度に高い剛性を与える可能性がある。ゴム組成物の高い剛性は、エラストマーの同様に高い剛性に起因する。ゴム組成物の高い剛性は、それ自体もゴム組成物を特定用途に適さないようにするので問題となり得る。
エチレンリッチジエンエラストマーを合成するというその目的を達成しようとして、出願会社は、特にタイヤに使用するためのエチレン含量、剛性及び結晶化度の間の改善された妥協を示すことによって、上記課題の解決を可能にする新規ポリマーを発見した。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の第1の主題は、エチレンと、4~6個の炭素原子を有する第1の1,3-ジエンと、下記式(I)
CH2=CR-CH=CH2 (I)
(記号Rは、3~20個の炭素原子を有する炭化水素鎖を表す)
の第2の1,3-ジエンとのターポリマー、好ましくはエラストマーであり、このターポリマーは、50モル%超のエチレン単位及び少なくとも1モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する。
本発明の第2の主題は、本発明のターポリマーの調製プロセスである。
本発明は、本発明のターポリマー、補強フィラー及び架橋系を含むゴム組成物であって、ターポリマーがエラストマーである、ゴム組成物にも関する。
本発明は、本発明のゴム組成物を含むタイヤにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
表現「aとbの間」で示される値のいずれの間隔も、「a」より大きく、「b」より小さい(すなわ限界a及びbは除外される)値の範囲を表し、一方、表現「a~b」で示される値のいずれの間隔も、「a」から「b」までに及ぶ(すなわち、厳密な限界a及びbを含む)値の範囲を意味する。略記「phr」は、エラストマー(数種のエラストマーが存在する場合はエラストマーの合計の)100質量部当たりの質量部を意味する。
触媒系又は組成物の成分を定義するために用いる表現「をベースとする」は、これらの成分の混合物、又はこれらの成分の一部若しくは全ての相互の反応の生成物を意味するものとする。
別段の指示がない限り、モノマーのコポリマーへの挿入の結果生じる単位の含量は、コポリマーのモノマー単位の全てに対するモル百分率として表す。
本説明で言及する化合物は、化石起源のもの又はバイオベースであり得る。バイオベースの場合、それらは、部分的又は完全にバイオマス由来であってよく、或いはバイオマス由来の再生可能出発材料から得てもよい。エラストマー、可塑剤、フィラー等が特に該当する。
【0006】
第1の1,3-ジエンの本質的な特徴は、それが4~6個の炭素原子を含有することである。第1の1,3-ジエンは、唯一の化合物、すなわち4~6個の炭素原子を有する唯一の1,3-ジエンであるか、又は4~6個の炭素原子を有する異なった1,3-ジエンの混合物である。4~6個の炭素原子を有する1,3-ジエンとして、特に1,3-ブタジエン及びイソプレンを挙げることができる。第1の1,3-ジエンは、優先的には1,3-ブタジエンである。
第2の1,3-ジエンの本質的な特徴は、それが下記式(I)(式中、記号Rは、3~20個の炭素原子を有する炭化水素鎖を表す)に相当することである。
CH2=CR-CH=CH2 (I)
第2の1,3-ジエンは、唯一の化合物、すなわち式(I)の唯一の1,3-ジエンであるか、又は式(I)の1,3-ジエンの混合物、すなわち記号Rで表される基が互いに異なる1,3-ジエンの混合物である。
好ましくは、記号Rは、6~16個の炭素原子を有する炭化水素鎖を表す。記号Rで表される炭化水素鎖は、飽和又は不飽和鎖であり得る。好ましくは、記号Rは脂肪族鎖を表し、この場合、1,3-ジエンの式(I)中、記号Rで表される炭化水素鎖は脂肪族炭化水素鎖である。それは直鎖又は分岐鎖であってよく、この場合記号Rは直鎖又は分岐鎖を表す。好ましくは、炭化水素鎖は非環式であり、この場合、記号Rは、非環式鎖を表す。より良くは、記号Rは、不飽和の分岐環式炭化水素鎖を表す。記号Rで表される炭化水素鎖は、有利には3~20個の炭素原子、特に6~16個の炭素原子を含有する不飽和の分岐非環式鎖である。非常に有利には、1,3-ジエンはミルセン又はβ-ファルネセンである。本発明の優先的実施形態によれば、1,3-ジエンはミルセンである。
本発明の別の優先的実施形態によれば、1,3-ジエンはβ-ファルネセンである。
【0007】
本発明のターポリマーは、エチレンと、第1の1,3-ジエンと、第2の1,3-ジエンとのターポリマーであり、ターポリマーのモノマー単位は、エチレン、第1の1,3-ジエン及び第2の1,3-ジエンの重合の結果生じる単位であることを意味する。従って、コポリマーは、エチレン単位、第1の1,3-ジエンの単位及び第2の1,3-ジエンの単位を含む。
第2の1,3-ジエンは置換1,3-ジエンなので、その重合は、下記式(1)で表される1,2配置の単位、下記式(2)で表される3,4配置の単位及びそのトランス形が下記式(3)で表される1,4配置の単位を生じさせ得る。
【0008】
【化1】
【0009】
周知のように、第1の1,3-ジエンは、例えば、イソプレンの場合のように、1,2又は3,4配置の単位、並びに1,4配置の単位を生じさせ得る。
同様に周知のように、エチレン単位は、-(CH2-CH2)-モチーフの単位である。
本発明のターポリマーは、有利には、本発明の実施形態のいずれか1つの統計ターポリマーである。非常に有利には、ターポリマーは、本発明の実施形態のいずれか1つのアタクティックポリマーである。
本発明によれば、ターポリマーは、50モル%超のエチレン単位を含有する。好ましくは、ターポリマーは、60モル%超のエチレン単位を含有する。さらに優先的には、ターポリマーは、少なくとも70モル%のエチレン単位を含有する。
ターポリマーは、優先的には最大で90モル%のエチレン単位、さらに優先的には最大で85モル%のエチレン単位を含有する。
【0010】
本発明によれば、ターポリマーは、少なくとも1モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する。好ましくは、ターポリマーは、最大で20モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する。さらに優先的には、ターポリマーは、最大で10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する。
本発明の一実施形態によれば、ターポリマーは、60モル%超~90モル%のエチレン単位及び1モル%~20モル%、優先的には1モル%~10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する。本発明のこの実施形態によれば、ターポリマーは、優先的には30モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位を含有し、又は優先的には20モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位を含有する。
本発明の別の実施形態によれば、ターポリマーは、70モル%~90モル%のエチレン単位及び1モル%~20モル%、優先的には1モル%~10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する。本発明のこの実施形態によれば、ターポリマーは、優先的には20モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位を含有する。
本発明のさらに別の実施形態によれば、ターポリマーは、60モル%超~85モル%のエチレン単位及び1モル%~20モル%、優先的には1モル%~10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する。本発明のこの実施形態によれば、ターポリマーは、優先的には30モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位を含有し、又は優先的には20モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位を含有する。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態によれば、ターポリマーは、70モル%~85モル%のエチレン単位及び1モル%~20モル%、優先的には1モル%~10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する。本発明のこの実施形態によれば、ターポリマーは、優先的には20モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位を含有する。
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、ターポリマーは、優先的には80モル%未満のエチレン単位、さらに優先的には最大で75モル%のエチレン単位を含有する。
本発明の特定実施形態によれば、特に第1の1,3-ジエンが、1,3-ブタジエンであるか又はその1つは1,3-ブタジエンである1,3-ジエンの混合物であるとき、ターポリマーは、さらに1,2-シクロヘキサンジイルモチーフの単位を含有する。ターポリマーにおけるこれらの環状構造の存在は、重合中のエチレン及び1,3-ブタジエンの非常に特殊な挿入に起因する。ターポリマー中の1,2-シクロヘキサンジイルモチーフの単位の含量は、ターポリマー中のエチレン及び1,3-ブタジエンのそれぞれの含量に応じて異なる。ターポリマーは、好ましくは15モル%未満の1,2-シクロヘキサンジイルモチーフの単位を含有する。
【0012】
好ましくは、本発明のターポリマーは、-35℃未満、優先的には-70℃と-35℃の間のガラス転移温度を有する。
ターポリマーは、本発明の別の主題であるプロセスであって、少なくとも下記式(II)のメタロセン及び下記式(III)の有機マグネシウム化合物をベースとする触媒系の存在下でのエチレンと、第1の1,3-ジエンと、第2の1,3-ジエンとの混合物の重合を含むプロセスによって調製可能である。
【0013】
【化2】
【0014】
Cp1及びCp2は、同一であるか又は異なり、式C5H4のシクロペンタジエニル基、式C13H8の非置換フルオレニル基及び置換フルオレニル基から成る群より選択され、
Pは、2つのCp1及びCp2基を架橋する基であり、ZR3R4基を意味し、Zは、ケイ素又は炭素原子を表し、R3及びR4は、同一であるか又は異なり、それぞれ1~20個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくはメチルを表し、
整数であるyは、0以上であり、
整数であるか又は整数でないxは、0以上であり、
Lは、リチウム、ナトリウム及びカリウムから成る群より選択されるアルカリ金属を表し、
Nは、エーテル、好ましくはジエチルエーテル又はテトラヒドロフランの分子を表し、
R1及びR2は、同一であるか又は異なり、炭素基を表す。
置換フルオレニル基としては、1~6個の炭素原子を有するアルキル基又は6~12個の炭素原子を有するアリール基で置換されたものを挙げることができる。基の選択は、置換フルオレンである対応分子の入手しやすさによっても導かれる。置換フルオレンは市販されているか又は容易に合成できるからである。
置換フルオレニル基として、さらに特に2,7-ジ(tert-ブチル)フルオレニル及び3,6-ジ(tert-ブチル)フルオレニル基を挙げることができる。2、3、6及び7位は、それぞれ下記スキームに示す環の炭素原子の位置を意味し、9位は、ブリッジPが付着される炭素原子に相当する。
【0015】
【化3】
【0016】
触媒系は、特許出願WO 2007054224又はWO 2007054223に記載のプロセスに類似のプロセスによって従来どおりに調製可能である。例えば、有機マグネシウム化合物及びメタロセンを炭化水素溶媒中で典型的に20℃~80℃の範囲の温度で5分と60分の間の時間反応させる。触媒系は、一般的にメチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、又はトルエン等の芳香族炭化水素溶媒中で調製される。一般的に、その合成後に、この形態で触媒系を本発明のポリマーの合成プロセスに使用する。
その代わりに、特許出願WO 2017093654 A1又は特許出願WO 2018020122 A1に記載のプロセスに類似のプロセスによって触媒系を調製することができる。この代替手段によれば、触媒系は、共役ジエン、エチレン又はエチレンと共役ジエンとの混合物から選択される予形成(preformation)モノマーをさらに含有し、この場合、触媒系は、少なくともメタロセン、有機マグネシウム化合物及び予形成モノマーをベースとする。例えば、有機マグネシウム化合物及びメタロセンを炭化水素溶媒中で典型的に20℃~80℃の温度で10~20分間反応させて第1の反応生成物を得てから、共役ジエン、エチレン又はエチレンと共役ジエンとの混合物から選択される予形成モノマーをこの第1の反応生成物と40℃~90℃の範囲の温度で1時間~12時間反応させる。このようにして得られた触媒系は、即座に本発明のプロセスに使用するか、又は本発明のプロセスで使用するまで不活性雰囲気下で貯蔵することができる。
【0017】
触媒系の調製に用いるメタロセンは、結晶性又は非結晶性粉末の形態、或いは単結晶の形態であり得る。メタロセンをモノマー又はダイマーの形態で供給してもよく、これらの形態は、例えば特許出願WO 2007054224又はWO 2007054223に記載されているように、メタロセンの調製方法によって決まる。メタロセンは、特許出願WO 2007054224又はWO 2007054223に記載のプロセスに類似のプロセスで、特に、不活性かつ無水条件下、適切な溶媒、例えばエーテル、例えばジエチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン、又は当業者に既知の任意の他の溶媒中での配位子のアルカリ金属の塩と希土類金属ボロヒドリドとの反応によって調製することができる。反応後、メタロセンを反応副生成物から当業者に既知の技術、例えば濾過又は第2の溶媒からの沈殿によって分離する。最後に、メタロセンを乾燥させ、固体形態で単離する。
有機金属化合物の存在下で行なういずれの合成とも同様に、メタロセンの合成及び該触媒系の合成は、無水条件下、不活性雰囲気下で行なわれる。典型的に、これらの反応は、無水窒素又はアルゴン下で無水溶媒及び化合物から出発して行なわれる。
【0018】
本発明の要求に合わせて用いる有機マグネシウム化合物は、式MgR1R2の化合物であり、式中、R1及びR2は、同一であるか又は異なり、炭素基を表す。炭素基は、1個以上の炭素原子を含有する基を意味するものとする。好ましくは、R1及びR2は、2~10個の炭素原子を含有する。さらに優先的には、R1及びR2はそれぞれアルキルを表す。有機マグネシウム化合物は、有利にはジアルキルマグネシウム化合物であり、ブチルエチルマグネシウム又はブチルオクチルマグネシウムがより良く、ブチルオクチルマグネシウムがさらに良い。
本発明のいずれか1つの実施形態によれば、有機マグネシウム化合物の、メタロセンを構成する金属Ndに対するモル比は、好ましくは1~100に及ぶ範囲内、より優先的には1以上かつ10未満である。高モル質量のポリマーを得るためには、1から10未満に及ぶ値の範囲が特にさらに好ましい。
【0019】
ターポリマーが、1,2-シクロヘキサンジイルモチーフの単位を含むポリマーであるとき、それは、本特許出願に記載のプロセスに従って式(II)(式中、Cp1及びCp2は、同一であるか又は異なり、置換フルオレニル基及び式C13H8の非置換フルオレニル基から成る群より選択される)のメタロセンを用いて調製される。この代替形態のためには、下記式(式中、記号Fluは、式C13H8のフルオレニル基を表す)のメタロセンが特に適している:[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}2];[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)];[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)(THF)];[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)(THF)}2];[Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)]。
また、当業者は、重合及び種々の化学反応を行なうために使用する機器(装置、反応器)に応じて重合条件及び各反応物(触媒系の成分、モノマー)の濃度を採択する。当業者には知られているように、重合は、またモノマー、触媒系及び重合溶媒の取扱いも、無水条件下かつ不活性雰囲気下で行なわれる。重合溶媒は、典型的に脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒である。
【0020】
重合は、好ましくは溶液中で、連続的又はバッチ式で行なわれる。重合溶媒は、芳香族又は脂肪族炭化水素溶媒であり得る。重合溶媒の例として、トルエン及びメチルシクロヘキサンを挙げることができる。重合溶媒及び触媒系を含有する反応器にモノマーを導入することができ、或いは逆に、重合溶媒及びモノマーを含有する反応器に触媒系を導入することができる。共重合は、典型的に無水条件下かつ酸素の非存在下、任意に不活性ガスの存在下で行なわれる。重合温度は、一般的に30℃~150℃、優先的には30~120℃に及ぶ範囲内で変動する。好ましくは、共重合は、一定エチレン圧力で行なわれる。
重合反応器内でのエチレンと1,3-ジエンの重合中、エチレン及び1,3-ジエンを重合反応器に連続的に添加してよく、この場合、重合反応器はフェドリアクター(fed reactor)である。この実施形態は、統計ターポリマーの合成に非常に特に適している。
【0021】
重合媒体の冷却又はアルコールの添加によって重合を停止させることができる。当業者に知られる従来技術に従って、例えば、沈殿、減圧下での溶媒の蒸発又は蒸気ストリッピングによってポリマーを回収することができる。
或いは、アルコールの代わりに、官能化剤を添加することができ、この場合、アミン官能基、シラノール官能基又はアルコキシシラン官能基等の官能基を持つポリマーが回収される。本発明の特定実施形態によれば、ターポリマーは、アミン、アルコキシシラン又はシラノール官能基を持っている。
ポリマーが持つ官能基がアミン官能基である第1の代替形態によれば、官能化剤は、好ましくは下記式(IV)の化合物である。
Si(Fc1)3-g(Rc2)g(Rca) (IV)
記号Fc1は、同一であるか又は異なり、アルコキシ基を表し、
記号Rc2は、同一であるか又は異なり、水素原子又は炭化水素鎖を表し、
記号Rcaは、アミン官能基で置換された炭化水素鎖を表し、
gは、0~1の範囲の整数である。
【0022】
式(IV)中、記号Fc1で表されるアルコキシ基は、好ましくはメトキシ又はエトキシである。
式(IV)中、記号Rcaに示されるアミン官能基、すなわち官能化剤のアミン官能基は、保護され一級アミン官能基、保護された二級アミン官能基又は三級アミン官能基である。一級アミン及び二級アミン官能基の保護基として、シリル基、例えばトリメチルシリル及びtert-ブチルジメチルシリル基を挙げることができる。好ましくは、官能化剤のアミン官能基は三級アミン官能基である。有利には、官能化剤のアミン官能基は、式(-N(RB)2(式中、各RBは、アルキル、優先的にはメチル又はエチルを表す)の三級アミンである。
第1の代替形態に従ってアミン官能基を持つポリマーを調製するための官能化剤としては、化合物(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジエトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジエトキシシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン及び(N-(3-トリエトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、好ましくは(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン及び(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、さらに好ましくは(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン及び(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミンを挙げることができる。
【0023】
ポリマーが持つ官能基がシラノール又はアルコキシシラン官能基である第2の代替形態によれば、官能化剤は、好ましくは下記式(V)の化合物である。
Si(Fc1)4-g(Rc2)g (V)
記号Fc1は、同一であるか又は異なり、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。
記号Rc2は、同一であるか又は異なり、水素原子、炭化水素鎖又は化学官能基Fc2で置換された炭化水素鎖を表し、
gは、0~2の範囲の整数である。
式(V)において記号Fc1がアルコキシ基を表すとき、アルコキシ基は好ましくはメトキシ又はエトキシである。式(V)において記号Fc1がハロゲン原子を表すとき、ハロゲン原子は好ましくは塩素である。
式(V)において記号Rc2で表される炭化水素鎖の中で、アルキル、好ましくは最大で6個の炭素原子を有するアルキル、さらに優先的にはメチル又はエチル、より良くはメチルを挙げることができる。
【0024】
式(V)において記号Rc2で表されている、化学官能基Fc2で置換された炭化水素鎖の中で、アルカンジイル鎖、好ましくは最大で6個の炭素原子を含むもの、さらに優先的には1,3-プロパンジイル基を挙げることができ、アルカンジイル基は、置換基、すなわち化学官能基Fc2を持っている。言い換えれば、アルカンジイル鎖の一方の原子価は官能基Fc2に使われ、他方の原子価はメトキシシラン官能基のケイ素に使われる。
式(V)において、用語「化学官能基」は、飽和炭化水素基と異なり、化学反応に関与できる基を意味するものとする。式(V)中の化学官能基Fc2は、重合媒体中に存在する化学実体に対して化学的に不活性な基であることが当業者なら分かる。式(V)中の化学官能基Fc2は、例えば、一級アミン、二級アミン又はチオール官能基の場合のような保護された形態であり得る。化学官能基Fc2としては、エーテル、チオールエーテル、保護された一級アミン、保護された二級アミン、三級アミン、保護されたチオール又はシリル官能基を挙げることができる。好ましくは、式(V)中の官能基Fc2は、保護された一級アミン官能基、保護された二級アミン官能基、三級アミン官能基又は保護されたチオール官能基である。一級アミン、二級アミン及びチオール官能基の保護基としては、シリル基、例えばトリメチルシリル及びtert-ブチルジメチルシリル基を挙げることができる。
【0025】
第2の代替形態に従ってシラノール又はアルコキシシラン官能基を持つポリマーの調製のための官能化剤としては、化合物ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジエトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジエトキシシラン、3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン、(N-(3-トリエトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン及び3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、好ましくはジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)メチルジメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)エチルジメトキシシラン、3-メトキシ-3,8,8,9,9-ペンタメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン及び3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカン、より優先的にはトリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、(N,N-ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(トリメチルシリル)シランアミン及び3,3-ジメトキシ-8,8,9,9-テトラメチル-2-オキサ-7-チア-3,8-ジシラデカンを挙げることができる。
【0026】
第1の代替形態であろうと第2の代替形態であろうと、官能化剤は、典型的に重合媒体に添加される。それは、典型的にはコポリマーの所望のマクロ構造に応じて当業者が選択したモノマーの転化率で重合媒体に添加される。重合段階は一般的にエチレン圧力下で行なわれるので、官能化剤の添加前に重合反応器の脱気を行なってよい。官能化剤は、重合温度で維持された重合媒体に不活性かつ無水条件下で添加される。典型的に触媒1モル当たり0.25~10モルの官能化剤、好ましくは触媒1モル当たり2~4モルの官能化剤を利用する。官能化剤は、重合反応を可能にするのに十分な時間重合媒体と接触させられる。この接触時間は、反応媒体の濃度及び反応媒体の温度の関数として当業者により賢明に選択される。典型的に、官能化反応は、17℃~80℃の範囲の温度で、0.01~24時間撹拌しながら行なわれる。
【0027】
官能化剤が、上記保護された官能基を持っているとき、ポリマーの官能化段階の後に、一級アミン、二級アミン又はチオール官能基等の脱保護された官能基を持つコポリマーを形成するために加水分解反応を行なうことができる。
官能化反応がアルコキシシラン官能基を持つポリマーの形成をもたらすときは、ポリマーの官能化のための反応の後に加水分解反応が続くこともある。アルコキシシラン官能基を持つポリマーの加水分解は、シラノール官能基も持つポリマーの調製につながる。
【0028】
本発明の実施形態の、それらの優先的な代替形態を含めたいずれか1つに従って述べた本発明のターポリマーは、同じエチレン含量を示すにもかかわらず、エチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーより低い剛性及び匹敵する、実際には低くさえある結晶化度を両方とも示す。ゴム組成物において、エチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーを本発明のターポリマーに置き換えると、同じエチレン含量を示すにもかかわらず、ゴム組成物により低い剛性を与えることができる。本発明のターポリマーは、有利にはエラストマーである。それは、特にタイヤ用のゴム組成物での使用を特に企図している。
【0029】
本発明の別の主題であるゴム組成物は、本発明のエラストマー、補強フィラー及び架橋系を含むという特徴を有する。
ゴム組成物は、タイヤの製造に使用できるゴム組成物を補強するその能力で知られているいずれのタイプの「補強」フィラー、例えばカーボンブラック等の有機フィラー、シリカ等の補強無機フィラーを既知の方法でカップリング剤と組み合わせて、或いはこれら2つのタイプのフィラーの混合物を含んでもよい。該補強フィラーは、典型的にその(重量)平均サイズがマイクロメートル未満、一般的に500nm未満、最も多くは20nmと200nmの間、特にさらに優先的には20nmと150nmの間であるナノ粒子から成る。補強フィラーの含量は、ゴム組成物の用途に応じて当業者によって調整される。
架橋系は、硫黄、硫黄供与体、ペルオキシド、ビスマレイミド又はそれらの混合物をベースとしてよい。架橋系は、優先的には加硫系、すなわち硫黄(又は硫黄供与剤)及び一次加硫促進剤をベースとする系である。この基本加硫系に加えて、種々の既知の二次加硫促進剤又は加硫活性化剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸若しくは同等化合物、又はグアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)、又は既知の加硫遅延剤があり得る。
ゴム組成物は、さらに、タイヤ用組成物に使用することで知られる他の添加剤、例えば可塑剤、オゾン防止剤又は酸化防止剤を含有することができる。
【0030】
本発明のゴム組成物は、典型的に適切なミキサーで、当業者に周知の下記2つの連続調製段階:130℃と200℃の間の最高温度までの高温における第1の熱機械加工又は混練段階(「非生産」段階)、次により低い温度、典型的に110℃未満、例えば40℃と100℃の間の温度まで下げて、最終段階中に架橋系が組み込まれる第2の機械加工段階(「生産」段階)を利用して製造される。
本発明のゴム組成物は、未硬化状態(架橋又は加硫前)又は硬化状態(架橋又は加硫後)のどちらであってもよく、タイヤ用の半完成品に使用可能である。
本発明の別の主題であるタイヤは、本発明の実施形態のいずれか1つで定義した本発明のゴム組成物を含む。
【0031】
要約すれば、本発明は、下記実施形態1~35のいずれか1つに従って有利に実施される。
実施形態1:エチレンと、4~6個の炭素原子を有する第1の1,3-ジエンと、下記式(I)
CH2=CR-CH=CH2 (I)
(記号Rは、3~20個の炭素原子を有する炭化水素鎖を表す)
の第2の1,3-ジエンとのターポリマーであって、ターポリマーが、50モル%超のエチレン単位及び少なくとも1モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する、ターポリマー。
実施形態2:ターポリマーが、60モル%超のエチレン単位を含有する、実施形態1に記載のターポリマー。
実施形態3:ターポリマーが、少なくとも70モル%のエチレン単位を含有する、実施形態1又は2に記載のターポリマー。
実施形態4:ターポリマーが、最大で90モル%のエチレン単位を含有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態5:ターポリマーが、最大で85モル%のエチレン単位を含有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態6:ターポリマーが、最大で20モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態7:ターポリマーが、最大で10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載のターポリマー。
【0032】
実施形態8:ターポリマーが、60モル%超~90モル%のエチレン単位及び1モル%~20モル%、優先的には1モル%~10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する、実施形態1に記載のターポリマー。
実施形態9:ターポリマーが、70モル%~90モル%のエチレン単位及び1モル%~20モル%、優先的には1モル%~10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する、実施形態1に記載のターポリマー。
実施形態10:ターポリマーが、60モル%超~85モル%のエチレン単位及び1モル%~20モル%、優先的には1モル%~10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する、実施形態1に記載のターポリマー。
実施形態11:ターポリマーが、70モル%~85モル%のエチレン単位及び1モル%~20モル%、優先的には1モル%~10モル%の第2の1,3-ジエンの単位を含有する、実施形態1に記載のターポリマー。
実施形態12:ターポリマーが、30モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位を含有する、実施形態8~10のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態13:ターポリマーが、20モル%未満の第1の1,3-ジエンの単位を含有する、実施形態8~11のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態14:第1の1,3-ジエンが、1,3-ブタジエン、イソプレン、又はその1つは1,3-ブタジエンである1,3-ジエンの混合物である、実施形態8~13のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態15:第1の1,3-ジエンが1,3-ブタジエンである、実施形態8~14のいずれか1つに記載のターポリマー。
【0033】
実施形態16:ターポリマーが、さらに1,2-シクロヘキサンジイルモチーフの単位を含有する、実施形態14又は15に記載のターポリマー。
実施形態17:ターポリマーが、15モル%未満の1,2-シクロヘキサンジイルモチーフの単位を含有する、実施形態16に記載のターポリマー。
実施形態18:記号Rが、6~16個の炭素原子を有する炭化水素鎖を表す、実施形態1~17のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態19:記号Rが、飽和又は不飽和鎖を表す、実施形態1~18のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態20:記号Rが、脂肪族鎖を表す、実施形態1~19のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態21:記号Rが、非環式鎖を表す、実施形態1~20のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態22:記号Rが、直鎖又は分岐鎖を表す、実施形態1~21のいずれか1つに記載のターポリマー。
【0034】
実施形態23:ターポリマーが、-35℃未満のガラス転移温度を有する、実施形態1~22のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態24:ターポリマーが、-70℃と-35℃の間のガラス転移温度を有する、実施形態1~23のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態25:第2の1,3-ジエンが、ミルセンである、実施形態1~24のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態26:第2の1,3-ジエンが、β-ファルネセンである、実施形態1~24のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態27:ターポリマーが、統計ターポリマーである、実施形態1~26のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態28:ターポリマーが、アミン、アルコキシシラン又はシラノール官能基を持っている、実施形態1~27のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態29:ターポリマーが、80モル%未満のエチレン単位を含有する、実施形態1~28のいずれか1つに記載のターポリマー。
実施形態30:ターポリマーが、最大で75モル%のエチレン単位を含有する、実施形態1~29のいずれか1つに記載のターポリマー。
【0035】
実施形態31:実施形態1~30のいずれか1つに記載の少なくとも1種のターポリマー、補強フィラー及び架橋系を含むゴム組成物であって、ターポリマーがエラストマーである、ゴム組成物。
実施形態32:補強フィラーが、カーボンブラック又はシリカを含む、実施形態31に記載のゴム組成物。
実施形態33:架橋系が、加硫系である、実施形態31又は32に記載のゴム組成物。
実施形態34:実施形態31~33のいずれか1つに記載のゴム組成物を含むタイヤ。
実施形態35:実施形態1~30のいずれか1つに記載のターポリマーの調製プロセスであって、少なくとも下記式(II)のメタロセン及び下記有機マグネシウム化合物
【0036】
【化4】
【0037】
(Cp1及びCp2は、同一であるか又は異なり、式C5H4のシクロペンタジエニル基、式C13H8の非置換フルオレニル基及び置換フルオレニル基から成る群より選択され、
Pは、2つのCp1及びCp2基を架橋する基であり、ZR3R4基を意味し、Zは、ケイ素又は炭素原子を表し、R3及びR4は、同一であるか又は異なり、それぞれ1~20個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくはメチルを表し、
整数であるyは、0以上であり、
整数であるか又は整数でないxは、0以上であり、
Lは、リチウム、ナトリウム及びカリウムから成る群より選択されるアルカリ金属を表し、
Nは、エーテル、好ましくはジエチルエーテル又はテトラヒドロフランの分子を表し、
R1及びR2は、同一であるか又は異なり、炭素基を表す)
をベースとする触媒系の存在下でのエチレンと、第1の1,3-ジエンと、第2の1,3-ジエンとの混合物の重合を含む、プロセス。
限定ではなく、実例として与える本発明のいくつかの実行例の下記説明を読めば、本発明の上記特徴、及びまた他の特徴のより良い理解が得られるであろう。
【実施例
【0038】
1) サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるポリマーのマクロ構造の決定:
a) 測定原理
サイズ排除クロマトグラフィー、すなわちSECは、多孔性ゲルを詰めたカラムを通る高分子のサイズに応じた高分子の分離を可能にする。高分子は、それらの熱力学的体積に応じて分離され、最もかさ高いものが最初に溶出される。
3種の検出器(3D)、すなわち屈折計、粘度計及び90°光散乱検出器を組み合わせると、SECは、ポリマーの絶対モル質量分布の理解を可能にする。種々の数平均(Mn)及び重量平均(Mw)絶対モル質量並びに分散度(D=Mw/Mn)を計算することもできる。
b) ポリマーの調製:
各サンプルをテトラヒドロフランに、約1g/lの濃度で溶かす。次に注入前に0.45μmの空隙率を有するフィルターを通して溶液を濾過する。
【0039】
c) 3D SEC分析:
ポリマーの数平均モル質量(Mn)、及び適切な場合は重量平均モル質量(Mw)及び多分散指数(PI)を決定するため、下記方法を使用する。
ポリマー(以降、サンプル)の数平均モル質量(Mn)、重量平均モル質量(Mw)及び多分散指数は、三重検出サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により絶対的方法で決定する。三重検出サイズ排除クロマトグラフィーは、較正せずに直接平均モル質量を測定するという利点を示す。
サンプルの溶液の屈折率増分dn/dcの値は、液体クロマトグラフィー機器の屈折計(RI)により検出されるピーク面積を用いてインラインで測定する。この方法を適用するため、サンプル質量の100%が注入され、カラムを通って溶出されることを検証しなければならない。RIピークの面積は、サンプルの濃度、RI検出器の定数及びdn/dcの値に依存する。
平均モル質量を決定するため、前もって調製して濾過した1g/lの溶液を利用し、クロマトグラフシステムに注入する。使用装置はWaters Allianceクロマトグラフィーラインである。溶出溶媒は、250ppmのBHT(2,6-ジ(tert-ブチル)-4-ヒドロキシトルエン)を含有するテトラヒドロフランであり、流速は1ml・分-1であり、システムの温度は35℃であり、分析時間は60分である。使用カラムは、商品名PL Gel Mixed B LSの3つのAgilentカラムのセットである。サンプル溶液の体積は、100μlである。検出システムは、商品名Viscostar IIのWyatt示差粘度計、波長658nmの商品名Optilab T-RexのWyatt示差屈折計並びに波長658nm及び商品名Dawn Heleos 8+のWyatt多角静的光散乱検出器で構成される。
数平均モル質量及び多分散指数の計算のため、上で得られたサンプル溶液の屈折率増分dn/dcの値を積分する。クロマトグラフデータを処理するためのソフトウェアは、WyattからのAstraシステムである。
【0040】
2) ポリマーのミクロ構造の決定:
a) エチレン-ブタジエン-ミルセンターポリマーのミクロ構造の決定:
エチレン-ブタジエン-ミルセンコポリマーのミクロ構造のスペクトルの特徴づけ及び測定は、核磁気共鳴(NMR)分光法により行なう。
これらの測定のためには、Bruker cryo-BBFO z-grad 5mmプローブを備えたBruker Avance III HD 400 MHz分光器を使用する。高周波パルスを傾斜角30°で用いて1H実験を記録し、反復数は128で、5秒の待ち時間(recycle delay)である。HSQC(Heteronuclear Single Quantum Coherence)及びHMBC(Heteronuclear Multiple-Bond Correlation)1H-13C NMR相関実験を128の反復数及び128の増分数で記録する。実験は25℃で行なう。
25mgのサンプルを1mlの重水素化オルト-ジクロロベンゼン(ODCB)に溶かす。
1H及び13Cの化学シフトの軸は、溶媒のプロトン化不純物に対してδ1H=7.2ppm(最も大きく遮蔽されたシグナルについて)及びδ13C=127ppm(最も少なく遮蔽されたシグナルについて)で較正する。
ターポリマー中で考えられるモノマー単位は、-CH2-CH(CH=CH2)-、-CH2-CH=CH-CH2-、-CH2-CH2-、1,2-シクロヘキサンジイルモチーフ及び下記構造体であり、R1及びR2は、ポリマー鎖を表す。
【0041】
【化5】
【0042】
1,2-シクロヘキサンジイルモチーフは、下記構造を有する。
【0043】
【化6】
【0044】
ミルセンの挿入型Aのシグナルは、記録された異なるスペクトルで観察された。S. Georges et al. (S. Georges, M. Bria, P. Zinck and M. Visseaux., Polymer, 55 (2014), 3869-3878)によれば、型Cに特徴的な-CH=基番号8''のシグナルは、-CH=基番号3と同一の1H及び13C化学シフトを示す。
ポリマーに特徴的なシグナルの化学シフトを下表1(1,3-ブタジエンの単位のもの以外のエチレン-ブタジエン-ミルセンターポリマーの1H及び13Cシグナルの帰属)に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
Topspinソフトウェアを用いて1D 1H NMRスペクトルの積分から定量化を行なった。
様々なモチーフの定量化のための積分シグナルは以下のとおりである:
エチレン:ターポリマーの他のモチーフの脂肪族寄与の減算による0.5ppmと3.0ppmの間の全てのシグナル。この計算は、エチレンモチーフの4個のプロトンに相当する。
型A:シグナル番号7(4.67ppm)は2個のプロトンに相当する。
型Cの比率は直接到達できないが、型Aの寄与を減算することによってシグナル番号3+8''から計算することができる。
PB1-4:5.71ppmと5.32ppmの間のシグナルは2個のプロトンに相当する(PB1-2の寄与を除去することによって)。
PB1-2:5.11ppmと4.92ppmの間のシグナルは2個のプロトンに相当する。
シクロヘキサン環:1.80ppmと1.70ppmの間のシグナルは2個のプロトンに相当する。
ミクロ構造の定量化は、モル百分率(モル%)で以下のように行なう:
モチーフのモル%=モチーフの1H積分*100/Σ(各モチーフの1H積分)。
【0047】
b) エチレン-ブタジエン-ファルネセンターポリマーのミクロ構造の決定:
エチレン-ブタジエン-ファルネセンコポリマーのミクロ構造のスペクトルの特徴づけ及び測定は、核磁気共鳴(NMR)分光法により行なう。これらの測定のためには、Bruker cryo-BBFO z-grad 5mmプローブを備えたBruker Avance III HD 400 MHz分光器を使用する。高周波パルスを傾斜角30°で用いて1H実験を記録し、反復数は128で、5秒の待ち時間である。HSQC(Heteronuclear Single Quantum Coherence)及びHMBC(Heteronuclear Multiple-Bond Correlation)1H-13C NMR相関実験を128の反復数及び128の増分数で記録する。実験は25℃で行なう。25mgのサンプルを1mlの重水素化オルト-ジクロロベンゼン(ODCB)に溶かす。1H及び13Cの化学シフトの軸は、溶媒のプロトン化不純物に対してδ1H=7.2ppm(最も大きく遮蔽されたシグナルについて)及びδ13C=127ppm(最も少なく遮蔽されたシグナルについて)で較正する。
ターポリマー中で考えられるモノマー単位は、-CH2-CH(CH=CH2)-、-CH2-CH=CH-CH2-、-CH2-CH2-、1,2-シクロヘキサンジイルモチーフ及び下記構造体であり、R1及びR2は、ポリマー鎖を表す。
【0048】
【化7】
【0049】
ファルネセンの挿入型Aのシグナルは、記録された異なるスペクトルで観察された。型Cに特徴的な-CH=基番号11''のシグナルは、-CH=基番号3及び番号7と同一の1H及び13C化学シフトを示す。
ポリマーに特徴的なシグナルの化学シフトを表2(1,3-ブタジエンの単位のもの以外のエチレン-ブタジエン-ファルネセンターポリマーの1H及び13Cシグナルの帰属)に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
Topspinソフトウェアを用いて1D 1H NMRスペクトルの積分から定量化を行なった。
様々なモチーフの定量化のための積分シグナルは以下のとおりである:
ファルネセンモチーフ型A:2個のプロトンについてのシグナル番号14のCH2=から、
ファルネセンモチーフ型C:2個のプロトンについてのシグナル番号3、11''及び番号7のCH=から(型Aの寄与を減算することによって)、
ファルネセンモチーフ型B:1個のプロトンについてのこの型特有のシグナル番号11''から。
PB1-4:5.71ppmと5.32ppmの間のシグナルは2個のプロトンに相当する(PB1-2の寄与を除去することによって)。
PB1-2:5.11ppmと4.92ppmの間のシグナルは2個のプロトンに相当する。
シクロヘキサン環:1.80ppmと1.70ppmの間のシグナルは2個のプロトンに相当する。
エチレンモチーフは脂肪族シグナル(約0.5~3ppm)の全てを積分し、全ての他の脂肪族モチーフ(PB1-4、PB1-2、EBR環、ファルネセン型A及びC)を減算することによる。
ミクロ構造の定量化は、モル百分率(モル%)で以下のように行なう:
モチーフのモル%=モチーフの1H積分*100/Σ(各モチーフの1H積分)。
【0052】
3) ポリマーのガラス転移温度の決定:
ガラス転移温度は、示差熱量計(示差走査熱量計)を利用してASTM規格D3418(1999)に従って測定する。
4) ポリマー(未硬化状態)の剛性の決定:
測定は、Anton PaarモデルMCR301レオメーターで制御ジオメトリ(1.5mmと3mmの間の厚さ及び22mmと28mmの間の直径)の円筒試験片を用いてせん断モードで行なう。固定温度(10Hzでの温度掃引にわたるエラストマーのガラス転移の経過の最後に相当する)で、0.01Hz~100Hzに及ぶ周波数範囲にわたってサンプルに正弦せん断応力を施す。C. Liu, J. He, E. van Ruymbeke, R. Keunings and C. Bailly, Evaluation of different methods for the determination of the plateau modulus and the entanglement molecular weight, Polymer, 47 (2006), 4461-4479に従って、サンプルのゴム状プラトーの剛性であるとして選ばれた剛性値は、損失モジュラスG''がその最大に達する周波数に対するせん断モジュラスG'の値である。
5) ポリマーの結晶化度の測定:
ISO規格11357-3:2011を利用して示差走査熱量測定(DSC)により使用ポリマーの融解及び結晶化の温度とエンタルピーを決定する。ポリエチレンの基準エンタルピーは277.1J/g(Polymer Handbook, 4th Edition, J. Brandrup, E. H. Immergut and E. A. Grulke, 1999に準拠)である。
【0053】
6) ポリマーの合成:
本発明のターポリマーの合成において、使用する第1の1,3-ジエンは1,3-ブタジエンであり、第2の1,3-ジエンはミルセン又はβ-ファルネセンである。ミルセンは、Rが、6個の炭素原子を有する式CH2-CH2-CH=CMe2の炭化水素基である、式(I)の1,3-ジエンである。
特許出願WO 2007054224及びWO 2007054223に記載の手順に従って調製するメタロセン[{Me2SiFlu2Nd(μ-BH4)2Li(THF)}]及び[Me2SiCpFluNd(μ-BH4)2Li(THF)]を除き、全ての反応物は商業的に得る。
ブチルオクチルマグネシウムBOMAG(ヘプタン中20%、C=0.88モル・l-1)は、Chemturaを起源に持ち、シュレンク管に不活性雰囲気下で貯蔵する。N35グレードのエチレンは、Air Liquideに起源を持ち、予備精製せずに使用する。ミルセン(純度≧95%)は、Sigma-Aldrichから得る。
【0054】
本発明に従わない例1:エチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーの合成
下記手順に従ってポリマーを合成する。
300mlのトルエンを含有する500mlのガラス製反応器に共触媒、ブチルオクチルマグネシウム(BOMAG)、次いでメタロセン[Me2SiCpFluNd(μ-BH4)2Li(THF)]を添加する。アルキル化時間は10分であり、反応温度は20℃である。触媒系の成分のそれぞれの量は下表3に現れる。引き続き、表3に示すそれぞれの比率に従ってモノマーを添加する。エチレン(Eth)及び1,3-ブタジエン(Bde)は、ガス混合物の形態である。80℃及び4バールの一定エチレン圧力で重合を行なう。
冷却、反応器の脱気及び10mlのエタノールの添加によって重合反応を停止させる。ポリマー溶液に酸化防止剤を添加する。真空下オーブン内で一定重量まで乾燥させることによってコポリマーを回収する。
【0055】
本発明に従わない例2:エチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーの合成
下記手順に従ってポリマーを合成する。
300mlのメチルシクロヘキサンを含有する500mlのガラス製反応器に共触媒、ブチルオクチルマグネシウム(BOMAG)、次いでメタロセン[Me2Si(Flu)2Nd(μ-BH4)2Li(THF)]を添加する。アルキル化時間は10分であり、反応温度は20℃である。触媒系の成分のそれぞれの量は表3に現れる。引き続き、表3に示すそれぞれの比率に従ってモノマーを添加する。エチレン(Eth)及び1,3-ブタジエン(Bde)は、ガス混合物の形態である。80℃及び4バールの一定エチレン圧力で重合を行なう。
冷却、反応器の脱気及び10mlのエタノールの添加によって重合反応を停止させる。ポリマー溶液に酸化防止剤を添加する。真空下オーブン内で一定重量まで乾燥させることによってコポリマーを回収する。
【0056】
本発明に従わない例3:エチレンと1,3-ブタジエンのコポリマーの合成
下記手順に従ってポリマーを合成する。
メチルシクロヘキサンを含有する反応器に共触媒、ブチルオクチルマグネシウム(BOMAG)、次いでメタロセン[Me2Si(Flu)2Nd(μ-BH4)2Li(THF)]を添加する。アルキル化時間は10分であり、反応温度は20℃である。触媒系の成分のそれぞれの量は表3に現れる。
引き続き、表3に示すそれぞれの比率に従ってモノマーを連続的に添加する。80℃及び4バールの一定エチレン圧力で重合を行なう。冷却、反応器の脱気及びエタノールの添加によって重合反応を停止させる。ポリマー溶液に酸化防止剤を添加する。真空下オーブン内で一定重量まで乾燥させることによってコポリマーを回収する。
【0057】
本発明の例4~10:エチレンと、1,3-ブタジエンと、ミルセン又はβ-ファルネセンとのターポリマー
下記手順に従ってポリマーを合成する。
炭化水素溶媒:メチルシクロヘキサン(MCH)を含有する反応器に共触媒、ブチルオクチルマグネシウム(BOMAG)、次いでメタロセン[Me2Si(Flu)2Nd(μ-BH4)2Li(THF)]を添加する。アルキル化時間は10分であり、反応温度は20℃である。
重合は、80℃及び4バールの一定圧力で、300mlの重合溶媒メチルシクロヘキサン、触媒系及びモノマーを含有する500mlのガラス製反応器内で行ない、モノマー、すなわちミルセン(Myr)又はβ-ファルネセン(Far)は液体状態で反応器に導入し、エチレン/1,3-ブタジエンは気体状態で導入する。冷却し、反応器を脱気することによって重合反応を停止させる。メタノールからの沈殿、次に乾燥によって、又は直接乾燥させることによってコポリマーを回収する。
触媒系の成分のそれぞれの量、供給量中のエチレンと1,3-ブタジエンの気体混合物の組成及びミルセン又はβ-ファルネセンの量は下表4に現れる。
【0058】
7) 結果:
合成されたポリマーの特性は下表5及び6に現れる。
例4~9のエラストマーは、匹敵するか又は実際にはより高いエチレン単位含量を示すにもかかわらず、例1のエラストマーよりずっと低い結晶化度を有する。80%超のエチレン単位含量を有する例7及び10のエラストマーでさえ、エチレン単位がずっと少ない例1のエラストマーよりずっと低い結晶化度を示す。
例4、6及び8と例2との比較は、第2の1,3-ジエンの単位を本発明に従う含量でポリマーに挿入すると、エチレン単位の含量は同等でありながら、ポリマーの剛性の低減を可能にすることをさらに示す。
例5及び9のエラストマーと例2のエラストマーとの比較は、第2の1,3-ジエンの単位を1%まで低い含量で挿入すると、例5及び9のエラストマーが例2のエラストマーと同じ高さのエチレン単位含量であるにもかかわらず、エラストマーの剛性の低減を可能にすることをさらに示す。例5及び9のエラストマーは、同様のエチレン単位含量を示す例3のエラストマーの結晶化度より低い結晶化度をも有する。
エチレンリッチジエンコポリマーの中に式(I)の1,3-ジエンの単位が本発明に従う含量で存在すると、ポリマー中のエチレン単位の含量と、ポリマーの結晶化度及び剛性との間の妥協の改善を可能にする。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】