(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】押し歩き補助動作モードのために電気モータを制御する方法、制御装置、および二輪車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20250210BHJP
B62M 6/50 20100101ALI20250210BHJP
B62J 45/414 20200101ALI20250210BHJP
B62J 45/413 20200101ALI20250210BHJP
B62J 45/411 20200101ALI20250210BHJP
【FI】
B62M6/45
B62M6/50
B62J45/414
B62J45/413
B62J45/411
(21)【出願番号】P 2022552516
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2021053771
(87)【国際公開番号】W WO2021175582
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】102021200971.9
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020202621.1
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】バウムゲルトナー,ダニエル
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123474(JP,A)
【文献】特開平04-358988(JP,A)
【文献】独国特許発明第102018212636(DE,B3)
【文献】特開2016-203813(JP,A)
【文献】特開2021-084498(JP,A)
【文献】独国特許発明第102016218374(DE,B3)
【文献】特開2018-184147(JP,A)
【文献】特開2019-177719(JP,A)
【文献】特開2019-142460(JP,A)
【文献】特開2017-214062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/40- 6/75,23/02
B62J 45/41
B62K 17/00
B60L 1/00- 3/12, 7/00-13/00,
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車(100)の駆動モータとしての電気モータ(111)を制御する方法であって、
センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップと、
押し歩き補助動作モードを起動するために、前記押し歩きの検知(220)に応じて
、ユーザの入力の検出(240)の有効化に関する情報の通知(230)を行うステップと、
前記押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザの入力の検出(240)を行うステップと、
前記押し歩きの検知(220)および前記ユーザの入力の検出(240)に応じて、前記押し歩き補助動作モードで前記二輪車(100)を駆動するためのモータトルクの生成(250)を行うステップと、
を備える方法。
【請求項2】
二輪車(100)の駆動モータとしての電気モータ(111)を制御する方法であって、
押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザの入力の検出(240)を行うステップと、
前記押し歩き補助動作モードを起動するために、前記ユーザの入力の検出(240)に応じて、押し歩きの検知(220)の有効化に関する情報の通知(230)を行うステップと、
センサ利用による前記二輪車(100)の
前記押し歩きの検知(220)を行うステップと、
前記押し歩きの検知(220)および前記ユーザの入力の検出(240)に応じて、前記押し歩き補助動作モードで前記二輪車(100)を駆動するためのモータトルクの生成(250)を行うステップと、
を備える方法。
【請求項3】
前記情報の通知(230)を行うステップが、前記押し歩き補助動作モードを起動するための前記ユーザの入力用のボタンの照明の適合によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップとして、
前記二輪車(100)の長手軸(190)の方向および/または前記二輪車(100)の横軸の方向での前記二輪車(100)の加速度を検出する(206)ステップと、
前記二輪車(100)の当該検出された加速度に応じて前記押し歩きの検知(220)を行うステップと、
が実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップとして、さらに、
前記二輪車(100)の前記長手軸(190)の方向および/または前記二輪車(100)の前記横軸(191)の方向での当該検出された加速度に応じて、統計量を算出する(211)ステップと、
さらに当該算出された統計量および閾値に応じて前記押し歩きの検知(220)を行うステップであって、当該算出された統計量が前記閾値を超えたときに、前記押し歩きが検知される、ステップと、
が実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記統計量は標準偏差である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップとして、さらに、
前記二輪車(100)の速度を検出する(201)ステップと、
当該検出された速度に応じて前記押し歩きの検知(220)を行うステップと、
が実行される、請求項4~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップとして、さらに、
所定の時間内に、前記横軸(191)の方向での当該検出された加速度の方向変化を検知する(210)ステップと、
さらに前記横軸(191)の方向での当該検出された加速度の当該検知された方向変化に応じて、前記押し歩きの検知(220)を行うステップと、
が実行される、請求項4~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップとして、さらに、
前記二輪車のハンドルバーに対する前記二輪車の前記長手軸の方向での前記ユーザによる圧力を検出する(204)ステップと、
前記ユーザによる当該検出された圧力に応じて前記押し歩きの検知(220)を行うステップと、
が実行される、請求項4~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップとして、
前記電気モータ(111)のロータの回転を検出する(202)ステップと、
当該検出されたロータの回転に応じて前記押し歩きの検知(220)を行うステップと、
が実行される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップとして、
前記二輪車(100)の周囲の少なくとも一部のカメラ画像を撮像する(203)ステップと、
当該撮像されたカメラ画像に応じて前記押し歩きの検知(220)を行うステップと、
が実行される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記センサ利用による前記二輪車(100)の押し歩きの検知(220)を行うステップとして、
前記ユーザのペダリング変数を検出する(205)ステップと、
前記ユーザの当該検出されたペダリング変数に応じて前記押し歩きの検知(220)を行うステップであって、ペダリング変数が検出されたときに、押し歩きが検知されない、ステップと、
が実行される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ユーザのペダリング変数はケイデンスまたは運転者トルクである、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された制御装置(180)。
【請求項15】
請求項
14に記載の制御装置(180)を備える二輪車(100)。
【請求項16】
請求項
14に記載の制御装置(180)を備える電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し歩き補助動作モードのために二輪車の駆動モータとしての電気モータを制御する方法に関する。さらに、本発明は、本発明による方法を実行するように設計されている制御装置、およびこの制御装置を備えた二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータを駆動モータとして備える二輪車、特に電動自転車が知られている。電気モータの制御は、通常動作では、好ましくは、二輪車または電動自転車のペダルに対する自転車運転者のペダル踏力の検出に応じて行われ、例えばこのためにセンサによって運転者トルクが検出される。さらに、二輪車の押し歩きに関して、二輪車の押し歩き時の自転車運転者のパワーアシストのための押し歩き補助動作モードが知られている。押し歩き補助動作モード(略して単に押し歩き補助とも呼ばれる)は、特に走行経路の坂道では押し歩きが大変な場合もあるので、大抵は比較的重い二輪車の重要な機能になってきている。押し歩き補助動作モードでは、自転車運転者は、自転車の横で二輪車を押しながら歩く間、比較的低い速度までモータによってアシストされる。言い換えると、押し歩き補助動作モードで生成されたモータトルクによるパワーアシスト中は、自転車運転者はペダルにペダル踏力を加えることはない。例えば2つのボタンを押すことにより押し歩き補助動作モードを2段階で有効化することによって、典型的には、押し歩き補助動作モードが意図せずに起動されることを回避することができる。そのような意図しない起動は、例えば、急勾配の段差での誤操作による起動、または修理中の起動である。しかし、押し歩き補助動作モードを起動するために入力を2回検出することはそれほど直感的なものではないので、押し歩き補助動作モードを起動できる方法が分からないユーザもいる。
【0003】
DE 102016218374B3は、押し歩き補助の起動時に、電動自転車を駆動するための電気モータによってトルクを生成するための制御方法を開示する。
【0004】
DE 102016209570B3は、電動自転車の押し歩き補助の制御方法を開示する。
【0005】
DE 102016209560B3には、電動自転車の押し歩き補助のために電気モータを調整する制御方法が記載されている。この制御方法は、電動自転車の横軸周りでの検出されたピッチ角に応じて電気モータを調整する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、自転車運転者またはユーザのために押し歩き補助動作モードの起動を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明に係る独立請求項1、12、および13によって解決される。
【0008】
本発明は、二輪車の駆動モータとしての電気モータを制御する方法に関する。二輪車は、特に電動自転車である。制御方法は、センサ利用による二輪車の押し歩きを検知するステップ、またはセンサもしくはセンサユニットによって、ユーザによる二輪車の押し歩きを検知するステップを有し、センサまたはセンサユニットは、好ましくは加速度センサを有する。言い換えると、有利には、ユーザが二輪車を押して歩いているときが検知される。任意選択で、さらに、ユーザによる二輪車の押し歩きの押し歩き方向が検知される。押し歩きの検知は、有利にはセンサ利用で行われ、それにより押し歩きの自動検知がなされる。この方法のさらなるステップでは、特に入力手段を用いた、例えばスイッチ、ボタン、タッチスクリーンまたは押しボタンを用いた、押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザの入力が検出される。特に、入力は、入力手段を用いた連続的な入力または連続的な動作の場合にのみ検出される。入力手段の連続的な入力または作動は、例えば、入力が所定の時間以上続くとすぐに検知または検出がなされ、この所定の時間は例えば1~10秒である。ユーザの入力の検出は、有利には、押し歩きの検知に応じて、または押し歩き中に行われる。言い換えると、この任意選択の形態では、二輪車の押し歩きの検知によって、押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザの入力の検出が有効化される、または可能にされる。代替として、押し歩きの検知は、有利にはユーザの入力の検出後に行われ、押し歩きの検知は、有利には入力の検出に応じて実行される。言い換えると、この任意選択の形態では、ユーザの入力の検出により、押し歩きの検知が有効化される、または可能にされる。その後、二輪車を駆動するためのモータトルクが、押し歩き補助動作モードを起動するための入力の検出に応じて、および押し歩きの検知に応じて生成される。言い換えると、有利には、センサによって検知された押し歩き中、押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザによる入力の検出によって、押し歩き補助のためのモータトルクが生成される、または押し歩き補助が起動される。生成されるモータトルクは、有利には、押し歩きの検知された押し歩き方向に応じて、二輪車を走行方向で前方または後方に駆動するように設計されていてもよい。さらに、モータトルクは、有利には押し歩きの検知に応じて生成される。これにより、例えばユーザの入力が以前に検出される場合、モータトルクの生成が起動される。それにより、例えば追加または代替として、二輪車の押し歩きがもはや検知されない場合、または二輪車が運転者によって能動的に制動される場合、モータトルクの生成が中断され、および/または任意選択で、検知された押し歩きの検出された押し歩き速度に応じて二輪車の速度の調整がなされる。この方法によって、押し歩き補助を起動するため、または押し歩きをアシストするモータトルクを生成するために、押し歩き補助動作モードを起動するための自転車運転者またはユーザの入力を一回だけ検出すればよいという利点が得られ、押し歩き補助が誤って起動されることはあり得ない。有利には、さらに押し歩き補助動作モードの停止も容易に達成され得、例えば、入力手段が連続的に作動される場合にのみユーザの入力が検出される。それにより、この制御方法は、簡単であり直感的な操作性を可能にし、モータトルクを生成するためまたは押し歩き補助動作モードを起動するための必要条件としての、ユーザまたは自転車運転者による二輪車の押し歩きの自動的な検知により、押し歩き補助動作モードの誤った起動をほぼ防ぐことができる。言い換えると、制御方法は、有利には、一段階として押し歩きを検知し、別の段階としてユーザの入力を検出することによって、モータトルクを生成するための押し歩き補助動作モードの2段階の起動を示すものである。特に、ユーザの入力の検出およびその後の押し歩きの検知によって、モータトルクを生成するための押し歩き補助動作モードを起動するようにされており、二輪車または電動自転車を駆動するためのモータトルクが生成され、特に、モータトルクを生成するためのユーザの入力の連続的な検出が必要とされる。代替として、押し歩きの検知およびその後のまたは同時のユーザの入力の検出によって、モータトルクを生成するための押し歩き補助動作モードを起動するようにされており、二輪車または電動自転車を駆動するためのモータトルクが生成され、特に、モータトルクを生成するためのユーザの入力の連続的な検出が必要である。特に好ましくは、センサユニットによるおよび二輪車の駆動ユニットの制御装置による押し歩きの検知、ならびに二輪車のハンドルバーにある制御装置での入力手段もしくはボタンを用いたおよび/または二輪車のハンドルバーでの表示装置を用いたユーザの入力の検出が実行され、それにより、二輪車のこれらの構成要素のうちのただ1つが誤動作した場合でも、押し歩き補助動作モードのためのモータトルクが生成されないという利点が得られる。これにより、有利には、二輪車のユーザの安全性が高められる。
【0009】
好ましい形態では、押し歩きの検知に応じて、または押し歩き中に、押し歩き補助動作モードを起動するための入力の検出の有効化に関する情報がユーザに示される。言い換えると、押し歩きの検知後、ユーザの入力が検出されるとすぐにまたはその時に押し歩き補助動作モードを起動することができることがユーザに示され、特に、入力は連続的に行われなければならない。情報の通知は、有利には、例えば二輪車のハンドルバーに配置された表示装置のディスプレイによって、特にヒューマンマシンインターフェース(HMI)によって行われる。代替または追加として、情報の通知はライトによって行われ、ライトは、例えば、ハンドルバーに、および/または二輪車のフレームに、および/または押し歩き補助を起動するためのボタンに配置され、ライトは特に発光ダイオードを含む。代替または追加として、情報の通知は、音響信号によって、および/または少なくとも1つのアクチュエータによって行うことができ、アクチュエータは、二輪車のハンドルバーおよび/またはフレームにおける触覚信号または振動を生成するように設計される。この形態により、ユーザは情報を知らされ、押し歩き補助動作モードの操作または起動が直感的に行われる。
【0010】
別の特に好ましい形態では、押し歩き補助動作モードを起動するために、ユーザの入力の検出に応じて、二輪車の押し歩きの検知の有効化に関する情報がユーザに示され、特に、ユーザの入力の検出後、その後のセンサ利用による二輪車の押し歩きの検知によってモータトルクが生成される、またはセンサ利用による押し歩きの検知によって押し歩き補助動作モードが起動されることがユーザに示される。言い換えると、入力の検出後、二輪車の押し歩きが検知されるとすぐにまたはその時に押し歩き補助動作モードが起動されることがユーザに示され、入力の検出は特に連続的に行われなければならない。情報の通知は、有利には、例えば二輪車のハンドルバーに配置された表示装置のディスプレイによって、特にヒューマンマシンインターフェース(HMI)によって行われる。代替または追加として、情報の通知はライトによって行われ、ライトは、例えば、ハンドルバーに、および/または二輪車のフレームに、および/または押し歩き補助を起動するためのボタンに配置されており、ライトは特に発光ダイオードを含む。代替または追加として、情報の通知は、音響信号によって、および/または少なくとも1つのアクチュエータによって行うことができ、アクチュエータは、二輪車のハンドルバーおよび/またはフレームにおける触覚信号または振動を生成するように設計されている。この形態により、同様にユーザは情報を知らされ、押し歩き補助動作モードの操作または起動が直感的に行われる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、押し歩きの検知の前のステップで二輪車の速度が検出される。次いで、検出された速度に応じて押し歩きの検知が行われ、特に、検出された速度が例えば最高速度6km/h以下の場合にのみ、押し歩きが検知される。この実施形態によって、ほとんどの走行状態に関して、通常動作での二輪車による走行中に、押し歩き補助動作モードの誤った起動が回避される。
【0012】
本発明の好ましい形態では、二輪車の長手軸方向および/または二輪車の横軸方向での二輪車の加速度の検出が行われる。次いで、検出された二輪車の加速度に応じて押し歩きが検知される。任意選択で、さらに、検出された二輪車の加速度に応じて押し歩き方向も検知される。この形態によって、静止時、または非常に低い加速度および/または速度の場合にも二輪車の動きを検知することができるという利点が得られる。検出された加速度に応じた押し歩きの検知は、好ましくは、特に、加速度を表すセンサユニットの信号のフィルタリング後に閾値を超えた場合、および/または機械学習(マシンラーニング)による検知技術もしくは人工知能もしくは学習済みニューラルネットワークによって実行される。それにより、例えば、走行経路の坂道などでの低速での二輪車の走行の加速度プロファイルを、二輪車の押し歩き時の加速度プロファイルと識別することができ、それにより、押し歩きが自動的におよび確実に検知される。
【0013】
特に好ましい形態では、加速度の検出後、検出された二輪車の長手軸方向および/または二輪車の横軸方向での加速度、または検出された加速度のプロファイルに応じて、少なくとも1つの統計量の算出が行われる。統計量として、例えば、検出された2つの加速度プロファイル間の標準偏差、平均、分散、または共分散が算出される。統計量、例えば標準偏差は、有利には所定の時間にわたって算出され、時間は例えば1~10秒である。次いで、この形態では、さらに少なくとも1つの算出された統計量、例えば標準偏差、および閾値に応じて押し歩きが検知される。特に、算出された標準偏差が所定の時間中に閾値を超えるときに押し歩きが検知される。この形態により、自転車の小さなまたはわずかな動きでも押し歩きとして検知することができるという利点が得られる。
【0014】
さらなる実施形態では、所定の時間内に、検出された横軸方向での加速度の方向変化の検知を実行するようにされていてもよい。次いで、この実施形態では、さらに、横軸方向での検出された加速度の検知された方向変化に応じて押し歩きの検知が行われる。この実施形態により、ユーザは、押し歩きまたは押し歩きの所望の検知のための覚えやすく直感的な動作パターンを実施することができるという利点が得られる。
【0015】
別の実施形態では、二輪車の長手軸に沿った二輪車の後方に向かう動きのための電気モータのロータ(回転子)の回転が検出される。次いで、検出されたロータ回転に応じて押し歩きの検知が行われる。特に、ここで、検出されたロータ回転に応じて押し歩き方向の検知も行われる。これにより、前方に向けられた回転方向でのモータフリーホイールを備える典型的な駆動装置において、二輪車の動きを非常に迅速に検出し、押し歩きとして検知または解釈することができるという利点が得られる。
【0016】
さらに、1つのステップで、二輪車の周囲の少なくとも一部のカメラ画像またはカメラ画像シーケンスを撮像するようにされている場合もある。カメラは、有利には二輪車の構成要素に配置されていてもよく、例えば、カメラは、二輪車のハンドルバーに、走行方向での視線方向または二輪車の長手軸に沿った視線方向で前方に向けて配置されている。次いで、撮像されたカメラ画像またはカメラ画像シーケンスに応じて押し歩きおよび/または押し歩き方向の検知が実行される。例えば、算出されたオプティカルフローに応じて決定される二輪車の動きに基づいて押し歩きが検知されるようにされていてもよい。オプティカルフローは、カメラ画像シーケンスに応じて算出され得る。本発明のこの形態により、有利には、ユーザによる二輪車の押し歩きは比較的確実および迅速に検知され得る。
【0017】
さらに、本発明のさらなる形態では、二輪車のハンドルバーに対する二輪車の長手軸方向でのユーザまたは自転車運転者による圧力を検出するようにされていてもよい。この形態では、次いで、検出されたユーザの圧力に応じて押し歩きおよび/または押し歩き方向が検知される。この形態により、二輪車の所望の押し歩きおよび/または押し歩き方向は非常に確実に検知され得る。
【0018】
さらに、この方法のさらなるステップで、ユーザのペダリング変数、特にケイデンスの検出、および/または運転者トルクの検出を実行することができる。次いで、ユーザの検出されたペダリング変数に応じて押し歩きの検知が行われ、ペダリング変数が検出された場合、特に押し歩きが検知されない。この実施形態により、押し歩き補助または押し補助動作モードの誤った起動が確実に回避される。
【0019】
好ましくは、押し歩き補助動作モードの起動が可能であるという情報の通知は、押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザの入力用のボタンの照明の適合によって行われる。有利には、ボタンは、押し歩きの検知の際に、色付きで、特に緑色に点灯または点滅する。この形態により、検知された押し歩き補助要求をユーザまたは自転車運転者に容易に示すことができる。
【0020】
本発明は、制御装置にも関する。制御装置は、本発明による方法を実施するように構成される。言い換えると、制御装置は、本発明による方法を実行するように設計されている。
【0021】
本発明はさらに、本発明による制御装置を備えた二輪車に関する。
【0022】
さらなる利点は、図面を参照した例示的実施形態の以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】ブロック図としての方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に、二輪車100として電動自転車が概略的に示されている。代替として、二輪車100はオートバイ(二輪自動車)でもよく、オートバイは、電気モータ111によって駆動される。
図1での電動自転車または二輪車100は、車輪として前輪101および後輪102を有する。
図1の二輪車100は、ペダル軸106またはクランクシャフトに駆動ユニット110を含み、駆動ユニット110は、駆動モータとして電気モータ111を有する。駆動ユニット110は制御装置180を有し、制御装置180は、二輪車100または電動自転車を駆動するためのモータトルクを生成するために電気モータ111を制御するように構成されている。言い換えると、制御装置180は、電気モータ111を制御するように設計されており、それにより、二輪車100を駆動するためのモータトルクが生成される。ペダル115は、運転者による運転者トルクの生成のために、クランク114によってペダル軸106またはクランクシャフトに連結されている。運転者のトルクは、ペダル軸106の領域にあるトルクセンサ105によってペダリング変数として検出されてもよい。代替として、例えばペダル軸106および/またはペダル115にある回転数センサによって、ユーザのペダリング変数として、ペダリング頻度またはケイデンスが検出され得る。ペダル軸106またはクランクシャフトおよび電気モータ111は、変速機によって出力ピニオン117に連結されている。出力ピニオン117は、例えばチェーンまたはベルトなどの連結要素116によって、二輪車100を駆動するための駆動輪としての後輪102のハブと連結されている。少なくとも1つの回転数センサ107が、電気モータ111に、および/または駆動ユニット110の変速機に、および/または出力ピニオン117に、および/または連結要素116に、および/または後輪102に、および/または前輪101に配置するようにされている場合もある。言い換えると、回転数センサ107は、二輪車100の駆動系の構成要素の回転数、または二輪車100の速度、特に駆動ユニット110の電気モータ111の回転もしくは回転数および/または回転方向を検出するように設計されている。車両はさらに、少なくとも1つの速度センサ114a、114bおよび/または114cを備える。速度センサ114a、114bおよび/または114cは、例えば、前輪101または後輪102にあるリードセンサ114a、回転数センサ114c、衛星利用の測位センサ114bおよび/またはレーダセンサを有する。速度センサ114a、114b、114cは、二輪車100の速度を検出するように設計されている。速度センサ114cは、好ましくは、後輪102のホイールハブおよび/または前輪101のホイールハブに配置されている。必須ではないが好ましくは、速度センサ114cは回転数センサ107である。駆動ユニット110に電力供給するために、特に電気モータ111に電力供給するために、二輪車100にバッテリモジュール120が配置されている。さらに、駆動ユニット110は、慣性計測ユニットまたはセンサユニット112またはセンサを含む。センサユニット112は、少なくとも1つの加速度センサを有する。有利には、センサユニット112は、二輪車100の長手軸190の方向での加速度を検出するための加速度センサと、二輪車100の横軸191の方向での加速度を検出するための加速度センサとを含む。さらに、二輪車100または電動自転車のハンドルバー103には、押し歩き補助動作モードを起動および/または停止するための入力手段またはボタン130またはスイッチが配置されている。ボタン130は、透光性部分領域131と照明手段132とを含んでもよく、照明手段132は、特に透光性部分領域131の奥に配置されており、例えば緑色の発光ダイオードを有する。二輪車100はさらに、ディスプレイ141を備える表示装置140を有する。表示装置140は、特に二輪車100のハンドルバー103に配置される。ディスプレイ141は、ユーザまたは自転車運転者に情報を表示するように設計されている。表示装置140の代替または追加として、少なくとも1つのアクチュエータ142、例えば振動モータまたはアンバランスな質量を有する電気モータが、ハンドルバー103に配置されている。ハンドルバー103に配置されたアクチュエータ142は、有利には、ハンドルバー103の少なくとも1つのハンドルバーグリップ104でユーザに対して触覚信号を生成するように設計されている。さらに、ハンドルバー103に圧力センサ160を配置するようにされている場合もある。圧力センサ160は、ハンドルバー103に対する長手方向でのユーザによる圧力を検出するように設計されている。さらに、二輪車は、例えば二輪車100のハンドルバー103またはフレーム108に配置された任意選択のカメラユニット150を含み、カメラユニット150は、有利には、視線方向で長手方向前方に向けられているカメラ151を有する。カメラ151は、二輪車100の周囲の少なくとも一部をカメラ画像として撮像するように設計されている。
【0025】
図2に、この方法のフローチャートがブロック図として概略的に示されている。任意選択のステップ201で、二輪車の速度が検出される。さらなる任意選択のステップ202で、特にロータの回転が二輪車100の長手方向後方に向かう動きを表す場合、二輪車の電気モータのロータ(回転子)の回転が検出され得る。代替または追加として、任意選択のステップ203で、二輪車の周囲の少なくとも一部のカメラ画像が撮像される。さらに、任意選択で、ステップ204で、二輪車のハンドルバーに対する二輪車100の長手軸方向でのユーザによる圧力を検出するようにされている場合もある。さらに、任意選択で、ユーザのペダリング変数、特にケイデンスおよび/または運転者トルクの検出205が実行される。任意選択のステップ206で、二輪車の長手軸方向および/または二輪車の横軸方向での二輪車の加速度の検出が行われる。後続の任意選択のステップ210では、所定の時間内に、横軸方向での検出された加速度の方向変化を検知するようにされている場合もある。代替または追加として、ステップ211で、任意選択で、二輪車の長手軸方向および/または二輪車の横軸方向での検出された加速度に応じて、標準偏差を算出するようにされている場合もある。ステップ220で、センサまたはセンサユニット112によって、ユーザによる二輪車の押し歩きの検知が行われる。このセンサ利用の押し歩きの検知220は、例えば検出された速度に応じて行われる。センサ利用の押し歩きの検知220は、代替または追加として、好ましくは、検出された速度、検出されたロータ回転、検出されたカメラ画像、検出されたユーザの圧力、および/または検出されたユーザのペダリング変数、および/または長手軸および/または横軸の方向での検出された加速度に応じて行われる。例えば、ステップ220で、閾値6km/h以下の速度の場合には、押し歩きが検知され、または6km以下の速度に加えてペダリング変数が検出された場合には、特に押し歩きは検知されない。好ましくは、センサ利用の押し歩きの検知220は、代替または追加として、検出された二輪車の加速度に応じて行われる。特に、ステップ220で、さらに、検出された加速度に関する算出された標準偏差と、標準偏差に対する閾値とに応じて押し歩きを検知するようにされており、算出された標準偏差が閾値を超えるとき、特に押し歩きが検知される。代替または追加として、さらに、横軸方向での検出された加速度の検知された方向変化に応じてセンサ利用の押し歩きの検知220を実行するようにされている場合もある。特に好ましくは、ステップ220におけるセンサ利用の押し歩きの検知は、複数の検出された変数に応じて、例えば速度および加速度に応じて実行される。次いで、任意選択のステップ230で、検知された押し歩きに応じて、押し歩き補助動作モードを起動するための入力の有効化に関する情報が示される。任意選択の通知230は、好ましくは、表示装置140またはディスプレイ141によって、アクチュエータ142により生成される触覚信号によって、および/または、押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザの入力を検出するためのボタンの照明の適合によって行われる。ステップ240で、例えば入力手段またはボタン130を用いた、押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザの入力の検出240が実行される。任意選択で、ユーザの入力は、入力手段またはボタンの作動が連続的に行われるときにのみ検出される。この検出240は、有利には、押し歩きの検知に応じて実行され得る。言い換えると、有利には、事前にステップ220で二輪車の押し歩きが検知されたときにのみ、ステップ240でユーザの入力が検出または考慮される。代替として、まずステップ240で、特にユーザの入力が連続的に検出される、または入力手段が連続的に作動されるときにのみ、押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザ入力の検出(240)が行われる。この代替形態では、次いで、ステップ220で、ユーザの入力の検出後、ユーザの入力の検出に応じて、センサまたはセンサユニット112によって、ユーザによる二輪車の押し歩きの検知が行われる。言い換えると、この代替実施形態では、順序が逆にされる。すなわち、この代替形態では、押し歩き補助動作モードを起動するためのユーザの入力が、センサ利用の二輪車の押し歩きの検知のための条件である。有利には、入力の検出後にユーザに情報が示されるようにされている場合もあり、情報は、ユーザが二輪車の押し歩きによって押し歩き補助を起動することでモータトルクが生成されるというユーザのための指示を含む。ステップ250で、ユーザの入力の検出に応じて、および押し歩きの検知に応じて、二輪車を駆動するためのモータトルクが生成される。したがって、ステップ250によって、二輪車の押し歩き時にユーザまたは自転車運転者をアシストするために、押し歩き補助が起動される、またはモータ力もしくはモータトルクが生成される。さらに二輪車の押し歩きの検知220に応じてモータトルクが生じるようにされている場合もある。特に、ステップ250は、二輪車の押し歩きが検知されなくなるとすぐに中断されるようにされている。言い換えると、方法が繰り返しまたは連続的に実行されるようにされている場合もある。