(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20250210BHJP
F16K 17/06 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
F16K17/04 A
F16K17/06 C
(21)【出願番号】P 2022553885
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021034995
(87)【国際公開番号】W WO2022071092
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2020166935
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】東堂園 英樹
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110260001(CN,A)
【文献】特開2018-115684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
F16K 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座と、
前記弁座に対して離接する弁体と、
前記弁体を閉弁方向に付勢する第1付勢手段および当該第1付勢手段よりバネ力の低い第2付勢手段と、を備え、第1流路における作動流体の圧力に応じて該作動流体を第2流路へ放出可能な流体制御弁であって、
前記弁体は、前記第1付勢手段によって付勢される基部と、前記弁座に対して離接する開閉部と、が軸方向に分割されて配設されており、前記第2付勢手段が前記基部と前記開閉部とを軸方向に離間可能に配設されて
おり、
前記基部および前記第1付勢手段が内装されるバルブハウジング内の空間をパイロット制御室とし、前記開閉部には、前記第1流路と前記パイロット制御室とを連通する連通路を有している流体制御弁。
【請求項2】
前記基部は、該基部が内装されるバルブハウジングに対して軸方向に摺動可能である請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記開閉部は、前記基部に対して軸方向に摺動可能である請求項2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記第2付勢手段は、前記基部と前記開閉部との間、かつ前記パイロット制御室の外側に配設されている請求項
1ないし3のいずれかに記載の流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体を制御する弁に係り、例えば作動流体を放出可能なリリーフ機能等を有する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で作動流体の制御を行うために利用されている弁は、弁座に対して離接する弁体を備え、弁開度が調節されることで作動流体の流量や圧力の制御が可能となっており、このような流体制御弁には、2次側の流体圧を検知して弁開度の調節を行い1次側からの流体導入量を絞り1次側における作動流体の流量や圧力等を制御する弁(例えば減圧弁等)と、作動流体の流体圧を検知して所定以上の流体圧に対して作動流体を外部に放出することにより作動流体の流量や圧力を制御する弁、所謂リリーフ機能を有する弁に大別される。リリーフ機能を有する流体制御弁にあっては、利用される機器によっては極めて高い応答性を有するリリーフ機能が要求されることがある。
【0003】
高応答性のリリーフ機能を有する流体制御弁が用いられる機器には、ショックアブソーバ等が挙げられ、減衰力を制御するために、ショックアブソーバにおけるピストンが配置されているピストン室と、ピストン室に連通可能に設けられたリザーバ室とに、ピストン室の流体圧に応じて弁体が弁座から離間するリリーフ機能を有する流体制御弁が、流体的に接続配設されている。
【0004】
ショックアブソーバで用いられるリリーフ機能を有する流体制御弁の一例として、特許文献1等が挙げられ、ここに示される流体制御弁は、ショックアブソーバのピストン室に連通する第1流路、およびリザーバ室に連通する第2流路を有するバルブハウジングと、第1流路と第2流路間に設けられた弁体および弁座と、弁体を閉弁方向に付勢する第1付勢手段、および第1付勢手段よりもバネ力の低い第2付勢手段を備え、第1付勢手段および第2付勢手段は、直列に配設されている。これら第1付勢手段および第2付勢手段により弁体が弁座に押圧されて、閉弁状態を保持可能となっている。
【0005】
この流体制御弁は、第1流路に流入した作動流体の圧力が大である場合に第2付勢手段および第1付勢手段を同時に圧縮させて作動流体を放出し、また第1流路における作動流体の圧力が小であった場合に第2付勢手段を優先して圧縮させることが可能となっている。すなわち第1流路における作動流体の圧力が小以上かつ大未満であれば、第1付勢手段の付勢力に抗する動きを不要として作動流体の放出が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-501798号公報(第6,7頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように特許文献1のような流体制御弁にあっては、第1流路における作動流体の圧力が小な場合においては、第1付勢手段の付勢力に抗する動きを不要として作動流体の放出が可能となっているものの、移動する弁体の質量、さらには流体抵抗等により、応答性観点から満足度の高いリリーフ機能には至っていない。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、第1流路に流入した作動流体の圧力が大である場合における応答性は然ることながら、第1流路における作動流体の圧力が小である場合において極めて応答性の高い流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の流体制御弁は、
弁座と、
前記弁座に対して離接する弁体と、
前記弁体を閉弁方向に付勢する第1付勢手段および当該第1付勢手段よりバネ力の低い第2付勢手段と、を備え、第1流路における作動流体の圧力に応じて該作動流体を第2流路へ放出可能な流体制御弁であって、
前記弁体は、前記第1付勢手段によって付勢される基部と、前記弁座に対して離接する開閉部と、が軸方向に分割されて配設されており、前記第2付勢手段が前記基部と前記開閉部とを軸方向に離間可能に配設されている。
これによれば、第1流路における作動流体の圧力が高まった際に、基部および第1付勢手段よりも優先してバネ力の低い第2付勢手段に抗して開閉部が移動する。そのため、第1流路における作動流体の圧力が小である場合、基部や第1付勢手段の移動を伴うことなく開閉部の移動が可能となり、応答性の高い流体制御弁を提供できる。また、第1流路における作動流体の圧力が大である場合、第2付勢手段に抗して開閉部が移動している状態からさらに第2付勢手段および開閉部により基部が押圧され、第1付勢手段に抗して基部、第2付勢手段および開閉部が移動するので、応答性の高い流体制御弁を提供できる。
【0010】
前記基部は、該基部が内装されるバルブハウジングに対して軸方向に摺動可能であってもよい。
これによれば、バルブハウジングによって基部が案内されるため、弁体の動作を安定させることができる。
【0011】
前記開閉部は、前記基部に対して軸方向に摺動可能であってもよい。
これによれば、開閉部が基部に相対的に同軸で案内されて移動するため、弁開度を精度良く制御できる。
【0012】
前記基部および前記第1付勢手段が内装されるバルブハウジング内の空間をパイロット制御室とし、前記開閉部には、前記第1流路と前記パイロット制御室とを連通する連通路を有していてもよい。
これによれば、パイロット制御室を流れる作動流体の流量を変化させてパイロット制御室における作動流体の圧力を変化させることが可能となるため、これ応じて、高い応答性を維持したまま流体制御特性を変化させることができる。
【0013】
前記第2付勢手段は、前記基部と前記開閉部との間、かつ前記パイロット制御室の外側に配設されていてもよい。
これによれば、第2付勢手段が、作動流体が通過するパイロット制御室に露出しないため、第2付勢手段の劣化や第2付勢手段によるコンタミの噛み込みを防止できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施例1の流体制御弁を示す断面図である。
【
図2】実施例1の流体制御弁においてパイロット弁が開放された様子を示す断面図である。
【
図3】実施例1の流体制御弁においてパイロット弁が閉塞された様子を示す断面図である。
【
図4】実施例1の流体制御弁において主弁を拡大して示す断面図である。
【
図5】主弁を構成する第2付勢手段を示す平面図である。
【
図6】実施例1の流体制御弁において主弁が閉塞された様子、第2付勢手段を圧縮して開放された様子を並べて示す断面図である。
【
図7】実施例1の流体制御弁において主弁が閉塞された様子、第1付勢手段および第2付勢手段を圧縮して開放された様子を並べて示す断面図である。
【
図8】本発明に係る実施例2の流体制御弁の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る流体制御弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係る流体制御弁につき、
図1から
図7を参照して説明する。尚、実施例1はショックアブソーバに使用される流体制御弁を例にして説明するが、その他の用途にも適用可能である。以下、
図1の正面から見て上下を流体制御弁の上下として説明する。詳しくは、主弁60が配置される紙面下側を流体制御弁の下側、駆動源としてのソレノイド80が配置される紙面上側を流体制御弁の上側として説明する。
【0017】
図1を参照して、本発明の流体制御弁Vは、ショックアブソーバAのアブソーバピストン室Pとリザーバ室Rとに流体的に接続配置されている。
【0018】
アブソーバピストンが軸方向に移動し第1流路11における作動流体の圧力が高まると、流体制御弁Vは、主弁60が開放されて第2流路13からリザーバ室Rに作動流体を流出させる。これにより、流体制御弁Vは、アブソーバピストン室Pからリザーバ室Rへ向かって流れる作動流体の流量を制御する。
【0019】
また、流体制御弁Vでは、主弁60における流体制御特性がパイロット弁50により調整されている。
【0020】
これらにより、流体制御弁Vは、ショックアブソーバAにおける減衰力を制御するものである。
【0021】
次いで、流体制御弁Vの構造について説明する。
図1に示されるように、流体制御弁Vは、バルブハウジング10と、パイロット弁50と、主弁60と、ソレノイド80と、から主に構成されている。
【0022】
これらのうち、パイロット弁50は、バルブハウジング10内において上端部に配置されている。また、主弁60は、バルブハウジング10内においてパイロット弁50の下方に配設されている。
【0023】
パイロット弁50は、パイロット弁体51とパイロット弁座40aとにより構成されている。パイロット弁50は、パイロット弁体51を構成する封止体54がパイロット弁座40aに離接することで開閉するようになっている。
【0024】
主弁60は、弁体としての主弁体61と弁座としての主弁座45aとにより構成されている。主弁60は、主弁体61を構成する開閉部63が主弁座45aに離接することで開閉するようになっている。
【0025】
まず、ソレノイド80について説明する。ソレノイド80はバルブハウジング10に接続されパイロット弁体51に駆動力を及ぼすものである。
【0026】
図1に示されるように、ソレノイド80は、ケーシング81と、センタポスト82と、ロッド83と、可動鉄心84と、コイルスプリング85と、コイル86と、スリーブ87と、軸受88,89と、から主に構成されている。
【0027】
ケーシング81は、センタポスト82が軸方向下方から挿嵌・固定されている段付き円筒状の本体部81aを備えている。
【0028】
また、ケーシング81には、本体部81aにおける下端に連続し、下方側に開放している開口部81bが形成されている。
【0029】
センタポスト82は、鉄やケイ素鋼等の磁性材料である剛体から段付き円筒状に形成されている。
【0030】
センタポスト82は、軸方向に延びる円筒状の本体部82aを備えている。
【0031】
また、センタポスト82は、本体部82aにおける下端に連続し、センタポスト82の下方側に開放している開口部82bが形成されている。
【0032】
ロッド83は、円筒状に形成されている。ロッド83は、センタポスト82に挿通され軸方向に往復動自在に配置されている。
【0033】
また、ロッド83は、可動鉄心84に挿嵌・固定されている。これにより、ソレノイド80への通電時に、ロッド83は、閉弁方向に移動する可動鉄心84に従動して移動される。これに伴って、ロッド83は、パイロット弁体51を閉弁方向、すなわち軸方向下方に移動させる。
【0034】
また、ロッド83は、上端部が軸受88に挿通され、下端部が軸受89に挿通されている。これら軸受88,89によって、ロッド83は軸方向への移動が案内される。そのため、ロッド83は軸方向への移動において径方向に傾動し難くなっている。
【0035】
また、ロッド83は、軸方向に貫通する連通路83aが形成されている。
【0036】
軸受88には、軸方向に延びる連通溝88aが形成されている。これにより、ロッド83および可動鉄心84の移動時の作動流体の影響が低減されている。
【0037】
コイルスプリング85は、パイロット弁座部材40とパイロット弁体51との間に配設されている。
【0038】
コイルスプリング85は、パイロット弁体51をパイロット弁50の開弁方向、すなわち軸方向上方に付勢している。
【0039】
コイル86は、センタポスト82の外側にボビンを介して巻き付けられた励磁用のコイルである。
【0040】
スリーブ87は、有底円筒状に形成されている。また、スリーブ87には、ロッド83の移動をガイドする軸受88,89が嵌合・固定されている。
【0041】
次いで、バルブハウジング10側の構成について説明する。バルブハウジング10側の要素はバルブハウジング10、パイロット弁50、主弁60である。
【0042】
図1に示されるように、バルブハウジング10は、金属材料または樹脂材料により内側段付き円筒状に形成されている。
【0043】
バルブハウジング10には、軸方向上方から順に、円筒部10aと、小径有底円筒部10bと、中径有底円筒部10cと、大径有底円筒部10dが形成されている。
【0044】
円筒部10aには、パイロット弁体51が軸方向上方から挿入されている。
【0045】
図2に示されるように、パイロット弁体51は、断面視T字状に形成されている。詳しくは、パイロット弁体51は、円筒部52と、フランジ部53と、封止体54と、から構成されている。
【0046】
円筒部52における上端部には、軸方向下方に凹む凹部52aが形成されている。凹部52aの底面には、ロッド83における下端部が当接している。これにより、コイルスプリング85の付勢力を受けるパイロット弁体51は、ロッド83に圧接されている。
【0047】
凹部52aの内径側には、軸方向に貫通する連通路52bが形成されている。
【0048】
また、円筒部52は、軸方向に延びる段付き円筒状である。詳しくは、円筒部52には、軸方向上方から順に、大径部52cと、中径部52dと、小径部52eが形成されている。
【0049】
大径部52cにおける上端には、外径方向に延びるフランジ部53が連続している。また、大径部52cにおける下端には、大径部52cより小径の中径部52dが連続している。
【0050】
フランジ部53は、円筒部52における上端部から外径方向に延びる円盤状である。
【0051】
フランジ部53における下端部には、軸方向上方に凹む環状の環状凹部53aが形成されている。
【0052】
環状凹部53aは、その外径が後述するパイロット弁座部材40の環状凹部41の外径と略同一に形成されている。これらの外径はコイルスプリング85の外径よりもわずかに大きく形成されている。
【0053】
環状凹部53aおよびパイロット弁座部材40の環状凹部41には、コイルスプリング85が配設されている。そのため、コイルスプリング85は、軸方向に圧縮される際に環状凹部53aおよびパイロット弁座部材40の環状凹部41の外周面によって案内され、コイルスプリング85に捻じれや屈曲が生じることが防止されている。
【0054】
また、フランジ部53には、軸方向に貫通する連通路53bが形成されている。連通路53bは、バルブハウジング10における円筒部10aと、センタポスト82の開口部82b(
図1参照)とを連通している。
【0055】
また、フランジ部53における外周面は、バルブハウジング10における円筒部10aの内周面に摺接しながら移動可能に形成されている。これにより、円筒部10aはパイロット弁体51の移動をガイド可能となっている。
【0056】
中径部52dにおける下端には、中径部52dより小径の小径部52eが連続している。
【0057】
小径部52eには、中径部52dの下端面に連続して内径側に凹む環状の環状溝52fが形成されている。環状溝52fには、円盤状の封止体54の内径側端部が挿嵌・固定されている。すなわち、封止体54は、環状溝52fによって片持ち支持され、環状溝52fから外径方向に突出している。
【0058】
封止体54は、金属材料により形成されており、軸方向に向けて曲げ弾性変形可能となっている(
図3参照)。言うまでもないが、封止体54を形成する材料は金属に限られない。
【0059】
封止体54は、パイロット弁座40aに着座または離座するものである。
【0060】
バルブハウジング10の構成に戻って、小径有底円筒部10bは、円筒部10aに連続し、円筒部10aよりも内側が拡径されて軸方向上方に凹んでいる。
【0061】
小径有底円筒部10bには、軸方向下方から圧入されたパイロット弁座部材40が略密封状態で一体に固定されている。
【0062】
図2に示されるように、パイロット弁座部材40は、金属材料または樹脂材料により円形の板状に形成されている。パイロット弁座部材40における上端部には、軸方向下方側に凹む環状の環状凹部41が形成されている。
【0063】
また、パイロット弁座部材40における上端部には、環状凹部41の内径側にて軸方向上方に突出する環状の環状凸部42が形成されている。環状凸部42における上端部は、パイロット弁座40aである。
【0064】
また、パイロット弁座部材40における上端部には、環状凸部42の内径側において、環状凹部41の底面よりも軸方向下方に凹む円状凹部43が形成されている。また、円状凹部43の底部には、軸方向に貫通する連通路44が形成されている。
【0065】
バルブハウジング10の構成に戻って、中径有底円筒部10cは、小径有底円筒部10bに連続し、小径有底円筒部10bよりも内側が拡径されて軸方向上方に凹んでいる。
【0066】
中径有底円筒部10cには、主弁体61およびコイルスプリング64が軸方向下方側から挿入されている。また、中径有底円筒部10cには、軸方向下方から圧入された主弁座部材45の上端部が、略密封状態で一体に固定されている。
【0067】
尚、
図1に示されるように、バルブハウジング10における小径有底円筒部10bおよび中径有底円筒部10c内の空間には、パイロット制御室Sが形成されている。パイロット制御室Sは、小径有底円筒部10b、中径有底円筒部10c、パイロット弁座部材40、パイロット弁体51および主弁体61によって画成されている。
【0068】
すなわち、パイロット制御室Sは、パイロット弁座部材40の円状凹部43および連通路44を含み、パイロット弁体51の上流側の流路、すなわちパイロット弁50の上流側流路である(
図2参照)。
【0069】
図4に示されるように、主弁体61は、断面視U字状の円筒状に形成された基部としてのピストン62と、開閉部63と、から主に構成されている。すなわち、主弁体61は、ピストン62と開閉部63により、軸方向に2分割されて構成されている。
【0070】
ピストン62は、軸方向に延設された円筒部62aと、円筒部62aの下端部から内径方向に延びる底部62bを備え、底部62bの中央には軸方向に貫通する貫通孔62cが形成されている。
【0071】
また、ピストン62の底部62bとパイロット弁座部材40との間には、ピストン62を閉弁方向、すなわち軸方向下方に付勢する第1付勢手段としてのコイルスプリング64が圧縮状態で配置されている。また、ピストン62と開閉部63との間には、開閉部63を閉弁方向、すなわち軸方向下方に付勢する第2付勢手段としての板バネ65が配置されている。
【0072】
また、ピストン62には、円筒部62aの内周面と、底部62bの上端面によって画成され、軸方向下方に漏斗状に凹む凹部61aが形成されている。
【0073】
円筒部62aの外径側下端部には、軸方向上方に凹む環状の凹部62dが形成されている。
【0074】
開閉部63は、外径側端部から軸方向上方に突出する環状の外径側凸部63aと、径方向中央部から軸方向上方に突出する環状の内径側凸部63bを有し、外径側凸部63aと内径側凸部63bの間には環状凹部63cが形成されている。内径側凸部63bは、ピストン62の貫通孔62cに挿入されている。
【0075】
開閉部63の内径側凸部63bがピストン62の貫通孔62cに挿入された状態において、内径側凸部63bの外周面とピストン62の底部62bの内側面とが互いに略平行となるように形成されている。そのため、開閉部63はピストン62に摺接しながら軸方向に移動可能となっている。
【0076】
開閉部63の径方向中心部には、軸方向に貫通する連通路63dが形成されている。尚、主弁体61の内部は、開閉部63の連通路63d通じて第1流路11に連通している。
【0077】
開閉部63の外径側下端部には、軸方向上方に凹む環状の環状凹部63eが形成されている。環状凹部63eの外径側に位置する開閉部63の下端部63fは、主弁60の閉弁状態において主弁座45aに着座する。
【0078】
図4,
図5に示されるように、板バネ65は、断面段付きの円環かつ板状であり、コイルスプリング64よりもバネ定数の低いバネある。また、板バネ65は、円環状の内径板部65aと、内径板部65aの外径端から上方に屈曲して橋絡された複数の連結部65bと、連結部65bの外径端から下方に屈曲して連結されている円環状の外径板部65cと、から主に構成されている。
【0079】
板バネ65において、内径板部65aと外径板部65cとは略平行となっている。これにより、板バネ65は軸方向の荷重を受けることで、連結部65bの屈曲角度が小さくなるように、すなわち内径板部65aと外径板部65cとの軸方向距離が小さくなるように変形可能となっている。
【0080】
板バネ65は、主弁60の閉弁状態において、内径板部65aの上端面がピストン62の底部62bの下端面に当接し、外径板部65cの下端面が開閉部63の外径側凸部63aの上端面に当接して配設されている。また、板バネ65は、主弁60の閉弁状態において、そのバネ力がコイルスプリング64のバネ力よりも小さくなっている。
【0081】
バルブハウジング10の構成に戻って、大径有底円筒部10dは、中径有底円筒部10cに連続し、中径有底円筒部10cよりも内側が拡径されて軸方向上方に凹んでいる。
【0082】
大径有底円筒部10dには、軸方向下方から圧入された主弁座部材45が、略密封状態で一体に固定されている。
【0083】
図4に示されるように、主弁座部材45は、金属材料または樹脂材料により、軸方向に貫通する第1流路11を有する円筒状に形成されている。
【0084】
主弁座部材45は、軸方向に延びる円筒部46と、円筒部46の下端部から外径側に延びる環状のフランジ部47を備えている。また、主弁座部材45は、円筒部46の上端部が中径有底円筒部10cの下端部に挿入された状態で、フランジ部47が軸方向下方から大径有底円筒部10dにガスケットを介して密封状態で圧入固定されている。
【0085】
また、円筒部46の上端部には、軸方向下方に断面視U字状に凹む環状凹部48が形成されている。環状凹部48の内径側には、軸方向に貫通し、アブソーバピストン室Pから作動流体が流入する連通路45bが形成されている。
【0086】
また、円筒部46の内径側は、環状凹部48と連通路45bとの間が環状のランド49となっている。ランド49の上端部には、径方向に延びて環状凹部48と連通路45bとを連通する連通溝49aが周方向に複数形成されている。この連通溝49aにより、主弁60が閉弁状態であっても、作動流体を環状凹部48および開閉部63の環状凹部63e内に導入可能となっている。
【0087】
これら主弁座部材45の連通路45b、環状凹部48および連通溝49aは、開閉部63の下端部と共に主弁60の上流側の流路、すなわち第1流路11を構成している。
【0088】
図1に戻って、バルブハウジング10における外面には、円筒部10aの上端から側面にかけて、断面視下向きL字状の連通溝10eが形成されている。詳細には、連通溝10eは、バルブハウジング10の上端面に沿って外径方向に延びた後、バルブハウジング10の外周面に沿って略直交して軸方向下方に延びている。
【0089】
また、連通溝10eの下方側端部は、バルブハウジング10がケーシング81の開口部81bに挿嵌されている状態では、開口部81bの下端よりも下方側に延びており、連通溝10eの下端からリザーバ室Rに作動流体が流入可能となっている。
【0090】
これにより、連通溝10eは、パイロット弁50のパイロット下流流路12を構成している。
【0091】
より詳しくは、パイロット下流流路12は、バルブハウジング10における円筒部10a、小径有底円筒部10b、連通溝10e、パイロット弁座部材40における環状凸部42よりも外径側の上端部、ケーシング81における開口部81bおよびセンタポスト82における開口部82bによって構成されている。
【0092】
また、
図4に示されるように、バルブハウジング10には、中径有底円筒部10cから外径側に延び、中径有底円筒部10cにおける内側とリザーバ室Rとを連通する連通路10fが形成されており、連通路10fからリザーバ室Rに作動流体が流入可能となっている。
【0093】
これにより、連通路10fは、主弁60の下流側の流路、すなわち第2流路13を構成している。
【0094】
より詳しくは、第2流路13は、バルブハウジング10における中径有底円筒部10c、大径有底円筒部10d、連通路10f、主弁体61および主弁座部材45によって構成されている。
【0095】
次いで、流体制御弁Vの動作、主にパイロット弁50および主弁60の開閉動作について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0096】
先ず、非通電状態における流体制御弁Vについて説明する。
図1,
図2を参照して、非通電状態において、パイロット弁50は、パイロット弁体51がコイルスプリング85の付勢力により軸方向上方へと押圧されている。これにより、パイロット弁体51の封止体54(
図2参照)がパイロット弁座40aから離間し、パイロット弁50は開放されている。このときのパイロット弁開度は本実施例において最大となっている。
【0097】
非通電状態において、ショックアブソーバAが作動し第1流路11における作動流体の圧力が高まると、作動流体は、開閉部63の連通路63d(
図4参照)、パイロット制御室Sを通過して、パイロット下流流路12からリザーバ室Rに流入する。これと共に、以下説明するように作動流体の圧力によっては第2流路13からもリザーバ室Rに作動流体が流入することもある。
【0098】
流体制御弁Vは、開閉部63の連通路63dにおける流路断面積が狭く形成されている。そのため、第1流路11における作動流体の圧力が高まっても、パイロット制御室Sにおける作動流体の圧力は、第1流路11における作動流体の圧力に即応して高まり難くなっている。そのため、第1流路11における作動流体の圧力とパイロット制御室Sにおける作動流体の圧力との間で差圧が発生する。この差圧が大きくなるほど、主弁60は開放されやすくなる。
【0099】
これを踏まえて、本実施例では、パイロット制御室Sにおける作動流体の圧力に対して、板バネ65のみを変形させるに足る第1流路11における作動流体の圧力を圧力P1、板バネ65およびコイルスプリング64を変形させるに足る第1流路11における作動流体の圧力を圧力P2とする。ここで、圧力P1は圧力P2よりも低い(P1<P2)。尚、以下の説明において、第1流路11における作動流体の圧力を「第1流路11における圧力Pin」、パイロット制御室Sにおける作動流体の圧力を「パイロット制御室Sにおける圧力Ps」と記載する。
【0100】
主弁60が開放された後、第1流路11における圧力Pinとパイロット制御室Sにおける圧力Psとの差圧ΔP(=Pin-Ps)が小さくなると主弁60は閉弁する。
【0101】
差圧ΔPが小さくなる要因は、主弁60を通過して第2流路13からリザーバ室Rに作動流体が流入して第1流路11における圧力Pinが小さくなる、連通路63dからパイロット制御室Sに作動流体が流入して第1流路11における圧力Pinが小さくなる、主弁体61の移動によりパイロット制御室Sの容積が狭まりパイロット制御室Sにおける圧力Psが高まる等である。以下、主弁60の開閉動作について具体例を交えてより詳しく説明する。
【0102】
図1,
図6を参照して、例えば平滑な路面を走行時にショックアブソーバAにおけるアブソーバピストンが微小なストロークで往復動する等、第1流路11における圧力Pinが圧力P1未満である場合(Pin<P1)には、コイルスプリング64および板バネ65の付勢力によって、主弁体61は、開閉部63の下端部63fが主弁座45aに着座し、主弁60は閉塞している。
【0103】
図6の左半分を参照して、主弁60の閉弁状態では、コイルスプリング64がピストン62を下方に付勢する力は板バネ65がピストン62を上方に付勢する力よりも大きくなっている。これにより、板バネ65は、内径側の内径板部65aがコイルスプリング64によって軸方向下方に押し込まれるとともに、外径側の外径板部65cが開閉部63の外径側凸部63aに下方から当接支持されており、圧縮方向に屈曲変形されている。このとき、板バネ65の内径板部65aと開閉部63の環状凹部63cの底面、板バネ65の外径板部65cとピストン62の凹部62dの底面がそれぞれ軸方向に離間しており、開閉部63の軸方向への移動代となっている。
【0104】
図1,
図6を参照して、例えば凹凸のある路面を走行時にショックアブソーバAにおけるアブソーバピストンが小さいストロークで繰り替えし往復動する等、第1流路11における圧力Pinが圧力P1以上かつ圧力P2未満の場合(P2>Pin≧P1)には、板バネ65の付勢力に抗して開閉部63だけが軸方向上方に移動する。
【0105】
すなわち、開閉部63の下端部63fが主弁座45aからわずかに離間し、主弁60が開放される。これにより、作動流体は、主弁60を通じて第2流路13からリザーバ室Rに流入する(
図6右半分参照)。
【0106】
このとき、開閉部63だけが移動することに伴って、パイロット制御室Sにおいて余剰となる作動流体は、パイロット下流流路12からリザーバ室Rに流入する。
【0107】
尚、上述したように差圧ΔPが小さくなることで主弁60が閉塞するため、主弁60における弁開度は、第1流路11における圧力Pinが圧力P2に近付くほど大きくなる。
【0108】
また、板バネ65の付勢力に抗して開閉部63が移動すると、板バネ65の内径板部65aの下端面が環状凹部63cの底面に圧接され、板バネ65の外径板部65cの上端面がピストン62の凹部62dの底面に近付くないし当接する。これにより、第1流路11における作動流体の圧力Pinが圧力P2のときは、板バネ65の外径板部65cの上端面がピストン62の凹部62dの底面に当接するため、第1流路11の作動流体から作用する圧力が開閉部63を介してピストン62に作用しやすくなる。
【0109】
図1,
図7を参照して、例えば路面の段差を乗り越えるためにショックアブソーバAにおけるアブソーバピストンが大きくストロークしようとする等、第1流路11における圧力Pinが圧力P2以上の場合(Pin≧P2)には、コイルスプリング64および板バネ65の付勢力に抗して、開閉部63ばかりでなくピストン62も軸方向上方に移動する。
【0110】
すなわち、開閉部63の下端部63fが主弁座45aからさらに離間し、主弁60が開放される。これにより、作動流体は、主弁60を通じて第2流路13からリザーバ室Rに流入する。
【0111】
尚、第1流路11における圧力Pinが圧力P2以上の場合(Pin≧P2)の主弁60における弁開度は、本実施例において最大となる(
図7右半分参照)。
【0112】
また、開閉部63が移動することに伴って、パイロット制御室Sにおいて余剰となる作動流体は、パイロット下流流路12からリザーバ室Rに流入する。
【0113】
このように、流体制御弁Vは、第1流路11における圧力Pinの上昇に応じて、主弁60を略2段階に開放して作動流体をリザーバ室R側にリリーフすることが可能となっている。
【0114】
また、非通電状態においてパイロット弁50におけるパイロット弁開度が最大であれば、主弁60が開放しやすい弁特性となっているため、ショックアブソーバAにおける減衰力は最小となるように制御されている。
【0115】
その後、主弁60を通じて第2流路13からリザーバ室Rに作動流体が流入し、第1流路11における圧力Pinが小さくなるにつれコイルスプリング64が伸長して弁開度が小さくなり、上述したように、第1流路11における圧力Pinが圧力P1以上かつ圧力P2未満の場合(P2>Pin≧P1)には、板バネ65の付勢力に抗して開閉部63だけが軸方向上方に移動する(
図6右半分参照)。
【0116】
さらに主弁60を通じて第2流路13からリザーバ室Rに作動流体が流入し、第1流路11における圧力Pinが圧力P1未満(Pin<P1)となると、板バネ65が伸長して開閉部63の下端部63fが主弁座45aに着座し、主弁60は閉塞される。
【0117】
次に、通電状態における流体制御弁Vについて、主にパイロット弁50による減衰力の制御について説明する。尚、主弁60は、通電状態においても非通電状態と概ね同様に動作するため、その説明を省略する。
【0118】
図1,
図3を参照して、通電状態(すなわち所謂デューティ制御時)において、ソレノイド80に電流が印加されることにより発生する電磁力がコイルスプリング85の付勢力を上回ると、可動鉄心84がセンタポスト82側、すなわち軸方向下側に引き寄せられる。
【0119】
これにより、可動鉄心84に固定されたロッド83は、パイロット弁体51と共に軸方向下方へ移動する。これに応じて、パイロット弁50はパイロット弁開度が小さくなり、所定以上の電流が通電されると閉塞される。
【0120】
非通電状態と比較してパイロット弁開度小で開放されている場合であれば、非通電状態と同様に、第1流路11における作動流体は、ショックアブソーバAの動作に伴いパイロット下流流路12からリザーバ室Rに流入する。また、上述したように第1流路11における圧力Pinによっては第2流路13からもリザーバ室Rに作動流体が流入する。
【0121】
そして、パイロット弁開度を小さくすればするほど、作動流体はパイロット制御室Sからパイロット下流流路12に流入し難くなる。そのため、第1流路11における圧力Pinとパイロット制御室Sにおける圧力Psとの差圧ΔPが発生し難くなり、主弁60は開放され難くなる。すなわち、ショックアブソーバAにおける減衰力を大きくすることができる。
【0122】
言い換えれば、パイロット弁開度が最大である場合に、ショックアブソーバAにおける減衰力は最小となる。つまり、最も小さい減衰力に制御されるのは、流体制御弁Vが非通電状態にある場合である。
【0123】
さらに、主弁60が開放されたとしても、パイロット弁50におけるパイロット弁開度が小さいほどに差圧ΔPが短時間で小さくなる。すなわち、主弁60は、パイロット弁50におけるパイロット弁開度が小さいほど開放される時間が短縮される。
【0124】
これらのことから、パイロット弁50におけるパイロット弁開度に応じて、主弁60における流体制御特性が制御される。これにより、流体制御弁VはショックアブソーバAにおける減衰力を可変制御することができる。
【0125】
所定以上の電流が通電されパイロット弁50が閉塞されている場合においても、第1流路11における高い圧力Pinが生じると、この作動流体によってパイロット弁50がわずかに開放される。これにより、非通電状態と同様に、作動流体はパイロット下流流路12からリザーバ室Rに流入する。
【0126】
このように、通電状態においてパイロット弁50が閉塞されている場合であれば、流体制御弁Vはパイロット弁50を作動流体が最も通過し難い状態、かつ主弁60が開放され難い状態となっている。そのため、流体制御弁VはショックアブソーバAにおける減衰力を最大とすることができる。
【0127】
尚、ソレノイド80を構成するコイル86に通電される電流値は、車両速度、車両加減速、操舵角、路面状態、バネ上荷重等の入力パラメータに基づいて設定される。
【0128】
また、開放状態にあるパイロット弁50は、所定以上の電流値が設定されることで閉塞される場合もある。
【実施例2】
【0129】
次に、実施例2に係る流体制御弁につき、
図8を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0130】
図8に示されるように、本実施例2の流体制御弁の板バネ165は、断面段付きの円環かつ板状であり、コイルスプリング64よりもバネ定数の低いバネある。また、板バネ165は、円環状の内径板部165aと、内径板部165aの外径端から下方に屈曲して橋絡された複数の連結部165bと、連結部165bの外径端から上方に屈曲して連結されている円環状の外径板部165cから主に構成されている。
【0131】
板バネ165において、内径板部165aおよび外径板部165cは互いに略平行となっている。これにより、板バネ165は軸方向の荷重を受けることで、連結部165bの屈曲角度が大きくなるように、すなわち内径板部165aと外径板部165cとの軸方向距離が大きくなるように変形可能となっている。
【0132】
板バネ165は、外径板部165cがコイルスプリング64とピストン62との間に設置されている。
【0133】
また、板バネ165は、内径板部165aの下端面が開閉部63の内径側凸部63bの上端面に当接し、コイルスプリング64により軸方向の荷重を受けた状態で配置されている。また、板バネ165は、主弁60の閉弁状態(
図8の左半分参照)においても、開弁状態(
図8の左半分参照)においても、板バネ165の内径板部165aがピストン62を上方に付勢する力はコイルスプリング64が板バネ165の内径板部165aを下方に付勢する力よりも小さくなっている。すなわち、板バネ165は、そのバネ力がコイルスプリング64のバネ力よりも小さくなっている。
【0134】
これにより、主弁60の閉弁状態において、板バネ165は、内径側の内径板部165aが開閉部63の内径側凸部63bの上端面によって軸方向上方に押し込まれており、拡張方向に屈曲変形されている(
図8の左半分参照)。このとき、開閉部63とピストン62が軸方向に離間しており、開閉部63の軸方向への移動代となっている。
【0135】
また、主弁60は、第1流路11における圧力Pinが圧力P1以上かつ圧力P2未満の場合(P2>Pin≧P1)には、板バネ165の付勢力に抗して開閉部63だけが軸方向上方に移動する。
【0136】
すなわち、開閉部63の下端部63fが主弁座45aからわずかに離間し、主弁60が開放される。これにより、作動流体は、主弁60を通じて第2流路13からリザーバ室Rに流入する。このとき、板バネ165は、開閉部63がピストン62に近付くほどに拡張方向に屈曲変形される。
【0137】
また、
図8の右半分を参照して、板バネ165に抗して開閉部63が移動すると、開閉部63がピストン62に近付くないし当接する。これにより、第1流路11における圧力Pinが大のときは、開閉部63がピストン62に当接するため、第1流路11の作動流体から作用する圧力が開閉部63を介してピストン62に作用しやすくなる。
【0138】
その後、第1流路11における圧力Pinが圧力P1未満(Pin<P1)となると、板バネ165が伸長して開閉部63の下端部63fが主弁座45aに着座し、主弁60は閉塞される。
【0139】
以上説明したように、本実施例の流体制御弁Vは、第1流路11における圧力Pinが高まった際に、ピストン62およびコイルスプリング64よりも優先してバネ力の低い板バネ65に抗して開閉部63が移動する。そのため、第1流路11における圧力が小である場合、
図6に示されるように、ピストン62やコイルスプリング64の移動を伴うことなく開閉部63の移動が可能となり、応答性の高い流体制御弁Vを提供できる。
【0140】
また、第1流路11における作動流体の圧力が大である場合、
図7に示されるように、板バネ65に抗して開閉部63が移動している状態からさらに板バネ65および開閉部63によりピストン62が押圧され、コイルスプリング64に抗してピストン62、板バネ65および開閉部63が移動するので、応答性の高い流体制御弁Vを提供できる。
【0141】
また、
図4に示されるように、ランド49の連通溝49aにおける流路断面積よりも、開閉部63の内径側凸部63bとピストン62の貫通孔62cの間における流路断面積の方が狭められているため、第1流路11の圧力が高まった場合に、開閉部63が板バネ65に抗して移動する際の応答性が高められている。
【0142】
また、ピストン62は、軸方向に移動するにあたってバルブハウジング10の中径有底円筒部10cの内周面に摺動可能となっており、その移動が案内されるため、主弁体61の動作を安定させることができる。
【0143】
また、開閉部63は、その内径側凸部63bがピストン62の底部62bの内周面に摺動可能となっており、開閉部63がピストン62に相対的に同軸で案内されて移動するため、主弁60の弁開度を精度良く制御できる。
【0144】
また、開閉部63は、その外径がバルブハウジング10の中径有底円筒部10cの内径よりも小径であり、その外周面が中径有底円筒部10cの内周面から離間しているため、同外周面が中径有底円筒部10cの内周面に摺接可能に配設されている構成と比較して、応答性が高められている。
【0145】
また、第2付勢手段として板バネ65が適用されていることから、例えばコイルスプリングが適用されている構成と比較して、主弁60の軸方向の寸法を短寸とすることができる。
【0146】
また、パイロット制御室Sを流れる作動流体の流量を変化させてパイロット制御室Sにおける圧力を変化させることが可能となるため、これ応じて、高い応答性を維持したまま主弁60の流体制御特性を変化させることができる。
【0147】
また、板バネ65は、作動流体が通過するパイロット制御室Sの外側に配設されており、パイロット制御室Sに露出しないため、板バネ65の劣化や板バネ65によるコンタミの噛み込みを防止できることになる。
【0148】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0149】
例えば、前記実施例では、主弁体は、ピストンと開閉部に2分割されている構成として説明したが、これに限らず、基部が2分割以上に分割される等、基部と開閉部を含む3分割以上に分割されていてもよい。例えば、剛体である基部を軸方向に2分割にし、上方側の基部と下方側に基部との間に第1付勢手段および第2付勢手段のバネ力とは異なる第3付勢手段を介在させることで、主弁を略3段階に開放可能としてもよい。
【0150】
また、弁座は、バルブハウジングとは別体の弁座部材に形成されている構成として説明したが、これに限らず、バルブハウジングと一体に形成されていてもよい。
【0151】
また、基部はバルブハウジングの内周面に摺動するピストンを例に説明したが、これに限らず、基部はバルブハウジングの内周面から離間して軸方向に移動可能であってもよい、すなわち基部はピストン以外の構成であってもよい。
【0152】
また、開閉部はピストンの底部の内側面に摺動する構成として説明したが、これに限らず、開閉部がバルブハウジングの内周面に摺動する等、別途その移動を案内する手段を備えているのであれば、基部に摺動可能に設けられていなくともよい。
【0153】
また、第2付勢手段は板バネである構成として説明したが、これに限らず、コイルスプリングや皿バネ等、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0154】
10 バルブハウジング
11 第1流路
12 パイロット下流流路
13 第2流路
40a パイロット弁座
45a 主弁座(弁座)
50 パイロット弁
51 パイロット弁体
60 主弁
61 主弁体(弁体)
62 ピストン(基部)
63 開閉部
63d 連通路
64 コイルスプリング(第1付勢手段)
65 板バネ(第2付勢手段)
80 ソレノイド
A ショックアブソーバ
P アブソーバピストン室
R リザーバ室
S パイロット制御室
V 流体制御弁