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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】歯科用器具及び関連する製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/00 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
A61C7/00
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2022566495
(86)(22)【出願日】2021-05-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 US2021030377
(87)【国際公開番号】W WO2021225916
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】62/704,293
(32)【優先日】2020-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/704,295
(32)【優先日】2020-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520116735
【氏名又は名称】ブリウス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロウイン パイカー セイエド メヒディ
(72)【発明者】
【氏名】ラテン ジェームズ シルベスター
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-503919(JP,A)
【文献】特表2018-536527(JP,A)
【文献】特表2022-502182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055600(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0189434(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0321136(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110559093(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、前記方法は、
初期構成の前記歯科矯正器具を特徴付ける器具のデジタルモデルを取得するステップと、
前記器具の形状を設定するためのフィクスチャを特徴付けるフィクスチャのデジタルモデルを取得するステップと、
前記フィクスチャのデジタルモデルに基づいて、前記器具のデジタルモデルを仮想的に変形させる有限要素解析(FEA)を実行するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フィクスチャのデジタルモデルが、
前記患者の歯肉の表面に実質的に対応する形状を有する歯肉部分と、
前記歯肉部分によって運ばれ、前記器具の一部分を保持するように構成された少なくとも1つの固定部分と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FEAを実行するステップが、前記器具のデジタルモデルの少なくとも1つの部分を前記フィクスチャのデジタルモデルに実質的に一致させることを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記器具が、アンカと、前記アンカから離れる方向に延在するアームとを備え、
前記アームが、前記アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分とを備え、
前記FEAを実行するステップが、前記器具のデジタルモデルのアームの遠位部分を前記フィクスチャのデジタルモデルの固定部分に又は前記フィクスチャのデジタルモデルの前記固定部分中に位置決めすることを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記器具が、アンカと、前記アンカから離れる方向に延在するアームとを備え、
前記FEAを実行するステップが、前記器具のデジタルモデルのアンカに非ゼロの変位を適用することを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記器具が前記初期構成において実質的に平面である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、前記方法は、
前記歯科矯正器具を装着前の構成で特徴付ける器具のデジタルモデルを取得するステップと、
患者の歯及び歯肉を元の配置で特徴付ける解剖学的デジタルモデルを取得するステップと、
FEAを実行して、前記解剖学的デジタルモデルに基づいて前記器具のデジタルモデルを仮想的に変形させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記器具が、アンカと、前記アンカから離れる方向に延在するアームとを備え、
前記アームは、前記アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分とを備え、
前記FEAを実行するステップが、前記アームの前記遠位部分を前記患者の歯の1本に、又はそれに隣接させて配置させる、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記器具が、前記装着前の構成において実質的に3次元(3D)形状を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記変形された器具のデジタルモデルを評価するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記変形された器具のデジタルモデルを評価するステップが、前記変形された器具のデジタルモデルが前記歯肉に当たるか、又は前記歯肉から所定の閾値より大きく離間しているかどうかを判定することを含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記変形された構成を評価するステップが、前記変形された器具のデジタルモデルのいずれかの部分が弾性ひずみ限界を超えているかどうかを判定することを含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記変形された構成を評価するステップが、前記変形された器具によって前記歯に加わる力及び/又はモーメントと、目標とする力及び/又はモーメントとの差を判定することを含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記評価に基づいて、前記器具のデジタルモデルを修正するステップをさらに含み、
前記器具のデジタルモデルを修正するステップは、前記器具のアームの形状、前記器具のアンカの形状、又は前記装着前の構成における前記器具の形状の少なくとも1つを変更することを含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、前記方法は、
予備的な構成で器具を仮想的に表す予備的な器具のデジタルモデルを取得するステップと、
熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得するステップであって、前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルは、器具を形状設定するための熱処理フィクスチャの形状を特徴付け、前記熱処理フィクスチャが、前記患者の歯肉表面の形状に実質的に対応する形状を有する歯肉表面と、前記器具の一部分を解放可能に保持するように構成された固定部分と、を備える、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得するステップと、
前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルに基づいて、前記予備的な器具のデジタルモデルを仮想的に変形させる第1のFEAを実行するステップと、
前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルに少なくとも部分的に基づく形状を有する3次元構成で前記器具を仮想的に表す目標とする器具のデジタルモデルを取得するステップと、
元の配置における患者の歯及び歯肉を仮想的に表す元の歯の配置(OTA)デジタルモデルを取得するステップと、
前記OTAデジタルモデルに基づいて、前記目標とする器具のデジタルモデルを仮想的に変形させる第2のFEAを実行するステップと、
変形後の、目標とする器具のデジタルモデルと解析結果を取得するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記器具は、前記予備構成において実質的に平面である、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のFEAを実行するステップが、
前記予備的な器具のデジタルモデル及び前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方を、複数の有限要素及び複数のノードに離散化するステップと、
前記予備的な器具のデジタルモデルと前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方に、材料特性を割り当てるステップと、
前記予備的な器具のデジタルモデルと前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルとの間の接触相互作用を定義するステップと、
前記予備的な器具のデジタルモデルと前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方に境界条件を割り当てるステップと、
解析パラメータを定義するステップと、
終了条件に達するまで前記FEAを実行するステップと、
を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記境界条件を割り当てるステップは、平面状の器具のデジタルモデルの一部分に非ゼロの変位を割り当てるステップと、又は前記平面状の器具のデジタルモデルの一部分の向きと前記熱処理フィクスチャの固定部分の基底面との間の関係を定義するステップの少なくとも一方を含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のFEAを実行するステップは、
前記目標とする器具のデジタルモデル及び前記OTAデジタルモデルの少なくとも一方を、複数の有限要素と複数のノードに離散化するステップと、
前記目標とする器具のデジタルモデルと前記OTAデジタルモデルの少なくとも一方に材料特性を割り当てるステップと、
前記目標とする器具のデジタルモデルと前記OTAデジタルモデルとの間の接触相互作用を定義するステップと、
前記目標とする器具のデジタルモデルと前記OTAデジタルモデルの少なくとも一方に境界条件を割り当てるステップと、
解析パラメータを定義するステップと、
終了条件に達するまで前記FEAを実行するステップと、
を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記境界条件を割り当てるステップが、前記目標とする器具のデジタルモデルの一部分に変位を割り当てることを含み、
前記変位が、前記元の配置から所望の最終的な配置への前記患者の歯の動きに少なくとも部分的に基づいている、
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記解析結果が、前記変形後の、目標とする器具のデジタルモデルにおけるひずみ又は前記変形後の、目標とする器具のデジタルモデルと前記患者の前記歯肉表面との間の距離の少なくとも一方を含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
歯科矯正器具が、アンカと、前記アンカから離れる方向に延在する少なくとも1つのアームとを備え、
前記アームが、前記アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分とを備える、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のFEAを実行するステップにより、前記器具の前記アンカが、前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルの前記歯肉表面に、又は前記歯肉表面に隣接する位置に配置される、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のFEAを実行するステップにより、前記器具の前記アームの前記遠位部分が、前記患者の歯の1本に位置するか又は隣接する位置に配置される、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、前記方法は、
元の配置における患者の歯及び歯肉のOTAデジタルモデルを取得するステップであって、前記OTAデジタルモデルは、患者の口内に装着されたときに前記歯科矯正器具によって再配置される歯の元の位置データを含む、OTAデジタルモデルを取得するステップと、
前記患者の歯及び歯肉を所望の最終的な配置で特徴付けるFTAデジタルモデルを取得するステップであって、前記FTAデジタルモデルは前記歯の最終位置データを含む、FTAデジタルモデルを取得するステップと、
前記歯の前記元の位置データと前記歯の前記最終位置データとの間の変位を特徴付ける変位データを判定するステップと、
前記OTAデジタルモデル又は前記FTAデジタルモデルの少なくとも一方に基づいて、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得するステップと、
前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルに基づいて、3Dテンプレートデジタルモデルを取得するステップと、
平面状テンプレートデジタルモデルを取得するステップであって、前記平面状テンプレートデジタルモデルは、前記3Dテンプレートデジタルモデルの実質的に平面状の構成である、平面状テンプレートデジタルモデルを取得するステップと、
前記平面状のテンプレートデジタルモデルに基づく平面状の器具のデジタルモデルを取得するステップと、
目標とする器具のデジタルモデルを取得するステップであって、前記目標とする器具のデジタルモデルは、前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルに基づく3D構成で前記歯科矯正器具を特徴付ける、目標とする器具のデジタルモデルを取得するステップと、
前記変位データに基づいて前記目標とする器具のデジタルモデルを変形させるために、前記OTA及び目標とする器具のデジタルモデルに対してFEAを実行するステップと、
仮想的な変形の解析結果を評価するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記変位データは、3つの並進及び3つの回転からなる、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記目標とする器具のデジタルモデルに基づいて前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルを修正するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルを修正するステップが、前記熱処理フィクスチャのデジタルモデルの歯肉表面と前記目標とする器具のデジタルモデルの歯肉に面する表面との間の接線関係を定義することを含む、
ことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記平面状テンプレートデジタルモデル、前記熱処理フィクスチャのデジタルモデル、又は前記目標とする器具のデジタルモデルのうちの少なくとも1つを製造するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記歯科矯正器具が、アンカと、前記アンカから離れる方向に延在するアームとを備え、
前記アームが、前記アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分とを含む、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月2日に出願された米国仮出願第62/704,293号、及び2020年5月2日に出願された米国仮出願第62/704,295号の優先権の利益を主張するものであり、共に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2020年1月1日に出願された「ORTHODONTIC APPLIANCES AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS OF USE」と題された米国仮特許出願第62/956,290号、2020年5月2日に出願された「DENTAL APPLIANCES,SYSTEMS AND METHODS」と題された米国特許出願第16/865,323号、2020年5月2日に出願された「DENTAL APPLIANCES,SYSTEMS AND METHODS」と題された国際特許出願PCT/US20/31211号、2020年5月2日に出願された「DENTAL APPLIANCES AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS OF USE」と題された米国特許出願第15/929,443号、2020年5月2日に出願された「DENTAL APPLIANCES AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS OF USE」と題された米国特許出願第15/929,444号、2020年5月2日に出願された「DENTAL APPLIANCES AND ASSOCIATED SYSTEMS AND METHODS OF USE」と題された国際特許出願PCT/US20/70017号、2020年5月2日に出願された、「DENTAL APPLIANCES AND ASSOCIATED METHODS OF MANUFACTURING」と題する米国特許出願第15/929,442号、及び2020年5月2日に出願された、「DENTAL APPLIANCES AND ASSOCIATED METHODS OF MANUFACTURING」と題する国際特許出願PCT/US20/70016号の出願に関連しており、各出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本技術は、歯科矯正の分野に関連し、特に、歯科矯正器具を設計及び製造するためのデバイス、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
歯科矯正における共通の目的は、患者の歯を、歯が最適かつ審美的に機能する位置に動かすことである。歯を動かすために、歯科矯正医は、患者の歯の複数の走査像及び/又は歯型を取得することによって開始し、歯の初期位置と所望の終了位置との間の一連の矯正経路を決定する。次に、歯科矯正医は、患者に2つの主要な器具タイプのうちの1つである、ブレース又はアライナのいずれかを取り付ける。
【0005】
従来のブレースは、ブラケットと、歯の前側を横切って配置されたアーチワイヤと、アーチワイヤをブラケットに固定するための弾性タイ又は結紮線とからなる。場合によっては、セルフライゲーションブラケットがタイ又はワイヤの代わりに使用され得る。アーチワイヤの形状及び剛性と、アーチワイヤとブラケットの相互作用によって、歯に加わる力が決まり、歯の動きの方向と程度が決定される。歯に所望の力を加えるために、歯科矯正医は手動でアーチワイヤを曲げることがある。歯科矯正医は定期的な予約を通じて患者の進行状況を監視し、その間、歯科矯正医は治療の進行状況を視覚的に評価し、アーチワイヤを手動で調整する(新たに曲げるなど)及び/又はブラケットを交換若しくは再配置する。調整プロセスは、患者にとって多大な時間を要し、面倒であり、予約後の数日間は患者に不快感を与えることが多い。さらに、ブレースは審美的に好ましくなく、歯磨き、デンタルフロス、及び他の歯科衛生処置がしづらくなる。
【0006】
アライナは、歯を受容して再配置するように成形された空洞を有する、透明で取り外し可能なポリマシェルで構成され、最終的な歯の配置を生成する。「見えないブレース」と呼ばれるアライナは、患者に、ブレースよりも大幅に改善された審美性を提供する。アライナは、歯科矯正医がワイヤを曲げ、又はブラケットを再配置する必要がなく、一般的にブレースよりも快適である。しかし、ブレースとは異なり、アライナは全ての不正咬合を効果的に治療できるわけではない。歯の再配置ステップ、例えば、エクストルージョン、並進、及び特定の回転は、アライナでは達成が困難又は不可能な場合がある。さらに、アライナは取り外し可能であるため、治療の成功は患者のコンプライアンスに大きく依存し、予測不可能で一貫性がない場合がある。
【0007】
リンガルブレースは、アライナ及び従来の(頬側)ブレースに代わるものであり、近年人気が高まっている。既存のリンガルブレースの2つの例として、Incognito(商標)Appliance System(3M United States)とINBRACE(登録商標)(Swift Health Systems、アーバイン、カリフォルニア州、USA)があり、それぞれは歯の舌側又は舌の側面に配置されたブラケットとアーチワイヤで構成される。従来のブレースとは対照的に、リンガルブレースは実質的に見えず、アライナとは異なり、リンガルブレースは患者の歯に固定され、コンプライアンスを強制する。しかし、これらの既存の舌側技術には、いくつかの欠点もある。最も注目すべきことに、従来の舌側器具は依然として歯を動かすためにブラケットアーチワイヤシステムに依存し、そのため複数回の来院と痛みを伴う調整を要する。例えば、舌側技術はブラケット間の距離が比較的短く、一般的にアーチワイヤのコンプライアンスが強化される。その結果、舌側器具全体がアーチワイヤの調整に対してより敏感になり、患者にとって大きい痛みを引き起こす。さらに、器具の舌側表面は舌を刺激し、発話に影響を与え、器具の洗浄を困難にする場合がある。
【0008】
したがって、改善された歯科矯正器具の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
対象の技術は、例えば、図1A図25を参照することを含めて、以下に説明される様々な態様に従って示される。対象の技術の様々な態様の例は、便宜上、番号付きの条項(1、2、3など)として説明される。これらは例として提供されるものであり、対象の技術を制限するものではない。
条項1.歯科矯正器具の設計方法であって、配置における患者の歯肉と歯を表す解剖学的デジタルモデルを取得することと、患者の歯に使用するように構成された歯科矯正器具の設計を表す器具のデジタルモデルを取得することと、器具のデジタルモデルを、器具が配置において患者の歯に結合される構成に仮想的に変形させることと、器具のデジタルモデルの変形された構成を評価することと、を含む方法。
条項2.歯科矯正器具が、患者の1本以上の歯を再配置するための器具を含む、条項1に記載の方法。
条項3.歯科矯正器具が、患者の歯に隣接して配設されるように構成されたアンカと、アンカから離れる方向に延在する1本以上のアームとを備え、1本以上のアームの各々が、患者の歯のそれぞれの1本以上に結合するように構成されている、条項1又は条項2に記載の方法。
条項4.配置は、元の歯の配置を含む、条項1~条項3のいずれか1項に記載の方法。
条項5.配置は、中間の歯の配置を含む、条項1~条項3のいずれか1項に記載の方法。
条項6.配置は、最終的な歯の配置を含む、条項1~条項3のいずれか1項に記載の方法。
条項7.変形された構成を評価することが、変形された器具のデジタルモデルが歯肉に当たるかどうかを判定することを含む、条項1~条項6のいずれか1項に記載の方法。
条項8.変形された構成を評価することが、器具のデジタルモデルと歯肉の相対的な位置を評価することを含む、条項1~条項7のいずれか1項に記載の方法。
条項9.変形された構成を評価することが、器具が歯肉から所定の閾値より大きく離間しているかどうかを判定することを含む、条項1~条項8のいずれか1項に記載の方法。
条項10.変形された構成を評価することが、変形された器具のデジタルモデルのいずれかの部分が弾性ひずみ限界を超えているかどうかを判定することを含む、条項1~条項9のいずれか1項に記載の方法。
条項11.変形された構成を評価することが、変形された器具によって歯に加わる力及び/又はモーメントと、目標とする力及び/又はモーメントとの差を判定することを含む、条項1~条項10のいずれか1項に記載の方法。
条項12.変形された構成を評価することが、変形された器具によって歯に加わる力及び/又はモーメントと、目標とする力及び/又はモーメントとの差が所定の精度限界を超えているかどうかを判定することを含む、条項11に記載の方法。
条項13.変形された構成を評価することが、変形された器具によって歯に加わる力及び/又はモーメントが所定の最大の力及び/又はモーメントを超えているかどうかを判定することを含む、条項1~条項12のいずれか1項に記載の方法。
条項14.評価に基づいて、器具のデジタルモデルを修正することをさらに含む、条項1~条項13のいずれか1項に記載の方法。
条項15.器具のデジタルモデルを修正することは、器具のデジタルモデルの少なくとも1本のアームの構成を変更することを含む、条項14に記載の方法。
条項16.器具のデジタルモデルを修正することは、器具のデジタルモデルに対する形状設定構成の形状を変更することを含む、条項14又は条項15に記載の方法。
条項17.器具のデジタルモデルを修正することは、器具のデジタルモデルのアンカの構成を変更することを含む、条項14~条項16のいずれか1項に記載の方法。
条項18.器具のデジタルモデルを修正することの後に、修正された器具のデジタルモデルを、器具が患者の歯に嵌合される構成に仮想的に変形させることと、修正された器具のデジタルモデルの変形させた構成を評価することと、をさらに含む条項14~条項17のいずれか1項に記載の方法。
条項19.器具を仮想的に変形させることが、器具のデジタルモデルを用いて有限要素解析(FEA)を実行することを含む、条項1~条項18のいずれか1項に記載の方法。
条項20.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、歯科矯正器具は、アンカと、アンカから離れる方向に延在するアームとを有し、方法は、配置における患者の歯肉と歯を特徴付ける解剖学的デジタルモデルを取得することと、歯科矯正器具の設計を特徴付ける器具のデジタルモデルを取得することと、解剖学的デジタルモデルに基づいて、器具のデジタルモデルを仮想的に変形させることと、を含む方法。
条項21.器具モデルを仮想的に変形させることは、有限要素解析(FEA)を実行することを含む、条項20に記載の方法。
条項22.解剖学的デジタルモデルに基づいて器具のデジタルモデルを仮想的に変形させることから出力を取得することをさらに含む、条項20又は条項21に記載の方法。
条項23.出力が、変形された器具のデジタルモデルである、条項22に記載の方法。
条項24.出力が、解剖学的デジタルモデルの患者の歯肉の位置に対する、歯科矯正器具のアンカに対応する器具のデジタルモデルの第1の部分の位置を含む、条項22又は条項23に記載の方法。
条項25.出力は、器具のデジタルモデルにおけるひずみの測定値を含む、条項22~条項24のいずれか1項に記載の方法。
条項26.出力が所定の閾値よりも大きいかどうかを判定することをさらに含む、条項22~条項25のいずれか1項に記載の方法。
条項27.出力が所定の閾値より小さいかどうかを判定することをさらに含む、条項22~条項26のいずれか1項に記載の方法。
条項28.所定の閾値が弾性ひずみ限界である、条項26又は条項27に記載の方法。
条項29.所定の閾値は、解剖学的デジタルモデルと器具のデジタルモデルとの間の距離である、条項26又は条項27に記載の方法。
条項30.出力に基づいて、器具のデジタルモデルを修正することをさらに含む、条項22~条項29のいずれか1項に記載の方法。
条項31.出力に基づいて、解剖学的デジタルモデルを修正することをさらに含む、条項22~条項30のいずれか1項に記載の方法。
条項32.配置は、元の歯の配置である、条項20~条項31のいずれか1項に記載の方法。
条項33.配置は、所望の最終的な歯の配置である、条項20~条項32のいずれか1項に記載の方法。
条項34.配置は、中間の歯の配置である、条項20~条項33のいずれか1項に記載の方法。
条項35.器具のデジタルモデルが、歯科矯正器具を実質的に平面形状で仮想的に表す平面状の器具のデジタルモデルを含む、条項20~条項34のいずれか1項に記載の方法。
条項36.器具のデジタルモデルが、歯科矯正器具の形状を形状設定された形態で仮想的に表す、目標とする器具のデジタルモデルを含む、条項20~条項34のいずれか1項に記載の方法。
条項37.器具のデジタルモデルが、装着された形態における歯科矯正器具の形状を仮想的に表す、変形後の、目標とする器具のデジタルモデルを含む、条項20~条項34のいずれか1項に記載の方法。
条項38.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、歯科矯正器具は、アンカと、アンカから離れる方向に延在する少なくとも1つのアームとを有し、方法は、平面状の器具のデジタルモデルを取得することであって、平面状の器具のデジタルモデルは、実質的に平面状の構成で器具を仮想的に表す、平面状の器具のデジタルモデルを取得することと、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得することであって、熱処理フィクスチャのデジタルモデルは、器具を形状設定するための熱処理フィクスチャの形状を特徴付ける、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得することと、平面状の器具のデジタルモデルと熱処理フィクスチャのデジタルモデルを用いて、第1のFEAを実行することと、目標とする器具のデジタルモデルを取得することであって、目標とする器具のデジタルモデルは、熱処理フィクスチャのデジタルモデルに少なくとも部分的に基づく形状を有する3次元構成で器具を仮想的に表す、目標とする器具のデジタルモデルを取得することと、元の歯の配置(OTA)デジタルモデルを取得することであって、OTAのデジタルモデルは、患者の歯及び歯肉を元の配置で仮想的に表す、元の歯の配置デジタルモデルを取得することと、目標とする器具のデジタルモデルとOTAのデジタルモデルを使用して、第2のFEAを実行することと、変形後の、目標とする器具のデジタルモデルと解析結果を取得することと、を含む、方法。
条項39.解析結果に基づいて、平面状の器具のデジタルモデルを修正することをさらに含む、条項38に記載の方法。
条項40.解析結果に基づいて、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを修正することをさらに含む、条項38又は条項39に記載の方法。
条項41.第1のFEAを実行することは、平面状の器具のデジタルモデル及び熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方を、複数の有限要素及び複数のノードに離散化することと、平面状の器具のデジタルモデルと熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方に材料特性を割り当てることと、平面状の器具のデジタルモデルと熱処理フィクスチャのデジタルモデルとの間の接触相互作用を定義することと、平面状の器具のデジタルモデルと熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方に境界条件を割り当てることと、解析パラメータを定義することと、終了条件件に達するまでFEAを実行することと、を含む、条項38~条項40のいずれか1項に記載の方法。
条項42.境界条件を割り当てることは、平面状の器具のデジタルモデルのアンカ部分に非ゼロの変位を割り当てることを含む、条項41に記載の方法。
条項43.境界条件を割り当てることが、平面状の器具のデジタルモデルのアームの向きと熱処理フィクスチャの固定部分の基底面との間の関係を定義することを含む、条項41又は条項42に記載の方法。
条項44.平面状の器具のデジタルモデルのアームが、熱処理フィクスチャの固定部分の基底面に対して接線である、条項43に記載の方法。
条項45.境界条件を割り当てることは、平面状の器具のデジタルモデルのアタッチメント部分に変位を割り当てることを含む、条項41~条項44のいずれか1項に記載の方法。
条項46.アタッチメント部分に割り当てられた変位は、ゼロの大きさを有する、第45に記載の方法。
条項47.アタッチメント部分に割り当てられた変位は、非ゼロの大きさを有する、条項45に記載の方法。
条項48.第2のFEAを実行することは、目標とする器具のデジタルモデル及びOTAのデジタルモデルの少なくとも一方を、複数の有限要素と複数のノードに離散化することと、目標とする器具のデジタルモデルとOTAデジタルモデルの少なくとも一方に材料特性を割り当てることと、目標とする器具のデジタルモデルとOTAのデジタルモデルとの間の接触相互作用を定義することと、目標とする器具のデジタルモデルとOTAのデジタルモデルの少なくとも一方に境界条件を割り当てることと、解析パラメータを定義することと、終了条件に達するまでFEAを実行することと、を含む、条項38~条項47のいずれか1項に記載の方法。
条項49.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、歯科矯正器具は、アンカと、アンカから離れる方向に延在するアームとを有し、方法は、元の配置における患者の歯及び歯肉のOTAのデジタルモデルを取得することであって、OTAのデジタルモデルは、患者の口内に装着されたときに歯科矯正器具によって再配置される歯の元の位置データを含む、OTAのデジタルモデルを取得することと、患者の歯及び歯肉を所望の最終的な配置で特徴付けるFTAのデジタルモデルを取得することであって、FTAのデジタルモデルは歯の最終位置データを含む、FTAのデジタルモデルを取得することと、歯の元の位置データと歯の最終位置データとの間の変位を特徴付ける変位データを判定することと、FTAのデジタルモデルに基づいて、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得することと、治療構成における歯科矯正器具のアンカに対応する第1の部分と、治療構成におけるアームに対応する第2の部分とを含む熱処理フィクスチャのデジタルモデルに基づいて、3Dテンプレートデジタルモデルを取得することと、平面状テンプレートデジタルモデルを取得することであって、平面状テンプレートデジタルモデルは、3Dテンプレートデジタルモデルの実質的に平面状の構成である、平面状テンプレートデジタルモデルを取得することと、平面状のテンプレートデジタルモデルに基づく平面状の器具のデジタルモデルを取得することと、目標とする器具のデジタルモデルを取得することであって、目標とする器具のデジタルモデルが、熱処理フィクスチャのデジタルモデルに基づく3D構成で歯科矯正器具を特徴付ける、目標とする器具のデジタルモデルを取得することと、変位データに基づいて目標とする器具のデジタルモデルを変形させるためにOTAのデジタルモデル及び目標とする器具のデジタルモデルに対してFEAを実行することと、を含む、方法。
条項50.OTAのデジタルモデルを取得することが、患者の歯及び歯肉を走査することを含む、条項49に記載の方法。
条項51.患者の歯及び歯肉を走査することが、光学的走査を含む、条項50に記載の方法。
条項52.患者の歯及び歯肉を走査することが、コンピュータ断層撮影走査を含む、条項50に記載の方法。
条項53.患者の歯及び歯肉を走査することが、患者の歯及び歯肉の印象を走査することを含む、条項50に記載の方法。
条項54.OTAのデジタルモデルを、各歯及び少なくとも1本の歯肉の複数のデジタルモデルにセグメント化することをさらに含む、条項49~条項53のいずれか1項に記載の方法。
条項55.固定部材を表す固定部材デジタルモデルを取得することをさらに含み、固定部材は、歯の表面に接着され、歯科矯正器具の一部分と着脱可能に結合して歯科矯正器具を歯に固定するように構成される、条項49~条項54のいずれか1項に記載の方法。
条項56.OTAのデジタルモデルと固定部材デジタルモデルとの組み合わせからなる固定部材付きOTAのデジタルモデルを取得することをさらに含み、組み合わせは、治療中に歯科矯正器具が患者の口内に装着される際の、患者の歯の上における固定部材の所望の配置に基づく、条項55に記載の方法。
条項57.FTAのデジタルモデルと固定部材デジタルモデルとの組み合わせからなる固定部材付きFTAのデジタルモデルを取得することをさらに含み、組み合わせは所望の配置に基づく、条項55又は条項56に記載の方法。
条項58.固定部材の所望の配置が、患者の歯の舌側表面上にある、条項56又は条項57に記載の方法。
条項59.変位データは、3つの並進及び3つの回転からなる、条項49~条項58のいずれか1項に記載の方法。
条項60.目標とする器具のデジタルモデルを取得することは、平面状の器具のデジタルモデル及び熱処理フィクスチャのデジタルモデルを用いてFEAを実行することを含む、条項49~条項59のいずれか1項に記載の方法。
条項61.方法は、目標とする器具のデジタルモデルに基づいて熱処理フィクスチャのデジタルモデルを修正することをさらに含む、条項49~条項60のいずれか1項に記載の方法。
条項62.熱処理フィクスチャのデジタルモデルを修正することが、熱処理フィクスチャのデジタルモデルの歯肉表面と目標とする器具のデジタルモデルの歯肉に面する表面との間に接線関係を定義することを含む、条項59に記載の方法。
条項63.平面状テンプレートデジタルモデルを製造することをさらに含む、条項61~条項62のいずれか1項に記載の方法。
条項64.熱処理フィクスチャのデジタルモデルを製造することをさらに含む、条項1~条項63のいずれか1項に記載の方法。
条項65.目標とする器具のデジタルモデルを製造することをさらに含む、条項1~条項64のいずれか1項に記載の方法。
条項66.本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法に従って製造された歯科矯正器具。
条項67.本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法に従って製造された熱処理フィクスチャ。
条項68.1つ以上の処理装置によって実行されると、1つ以上の処理装置に本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を格納するように構成された、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体。
条項69.1つ以上の処理装置と、1つ以上の処理装置によって実行されると、1つ以上の処理装置に本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を格納するように構成された、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を備える、デバイス。
条項70.歯列矯正装置の配置を決定するための方法であって、方法は、患者の元の歯の配置(OTA)に対応する位置データを取得することと、患者の第1の最終的な歯の配置(FTA)に対応する位置データを取得することであって、第1のFTAはOTAとは異なる、位置データを取得することと、第2のFTAに対応する位置データを判定することであって、第2のFTAは、第1のFTAと所定のパラメータに少なくとも部分的に基づいており、第2のFTAは第1のFTAとは異なる、位置データを判定することと、を含み、第2のFTAは、フィクスチャ及び/又は歯科矯正器具を形成するために使用でき、器具は、患者の歯をOTAから第1のFTA又は第2のFTAに向かって動かすように構成されている、方法。
条項71.第2のFTAに対応するデータに少なくとも従ってフィクスチャ及び/又は器具を製造することをさらに含む、条項70に記載の方法。
条項72.器具が、患者の歯を概してOTAから第1のFTA又は第2のFTAに動かすように構成される、条項70又は条項71に記載の方法。
条項73.器具が実質的に無負荷状態にある第2のFTAに概ね対応する配置となるように、器具が構成される、条項70~条項72のいずれか1項に記載の方法。
条項74.器具が、第2のFTAに概ね対応する第1の配置及びOTAに概ね対応する第2の配置となるように構成されており、第1の配置が実質的に無負荷状態に対応し、第2の配置が負荷状態に対応する、条項70~条項73のいずれか1項に記載の方法。
条項75.所定のパラメータが、器具を介した少なくとも1本の歯の第2のFTAへの再配置後の、患者の少なくとも1本の歯の予想される動きに関連付けられている、条項70~条項74のいずれか1項に記載の方法。
条項76.予想される動きが、近心-遠位方向、舌-顔面方向、又は咬合-歯肉方向のうちの少なくとも1つである、条項75に記載の方法。
条項77.予想される動きが、近心-遠位方向、舌-顔面方向、又は咬合-歯肉方向の少なくとも1つによって画定される軸を中心とする回転である、条項75又は条項76に記載の方法。
条項78.実質的に無負荷の構成における器具が、第2のFTAに概ね対応するように、器具を製造することをさらに含み、第1のFTAが、患者の歯の所定の所望の位置に対応する、条項70~条項77のいずれか1項に記載の方法。
条項79.予想される後戻りが、第1のFTAと第2のFTAとの間の位置差に対応する、条項70~条項78のいずれか1項に記載の方法。
条項80.歯列矯正装置の配置を決定するための方法であって、方法は、患者の元の歯の配置(OTA)に対応するデータを取得することと、OTAと所定のパラメータに基づいて、最終的な歯の配置(FTA)に対応するデータを判定することと、を含み、FTAが、フィクスチャ及び/又は歯科矯正器具を形成するために使用でき、器具は、患者の歯をOTAからFTAに向かって動かすように構成されており、所定のパラメータは、患者の歯をOTAから再配置した後に予想される後戻りに少なくとも部分的に基づいている、方法。
条項81.最小閾値力が、器具を介して患者の少なくとも1本の歯を動かすために必要とされ、所定のパラメータが最小閾値力に関連付けられている、条項80に記載の方法。
条項82.器具が、第2のFTAに概ね対応する無負荷状態での構成を有する、条項80又は条項81に記載の方法。
条項83.器具が、第2のFTAに概ね対応する無負荷状態における構成を有し、器具が、患者の歯を第1のFTAに動かすように構成される、条項80~条項82のいずれか1項に記載の方法。
条項84.器具が、第2のFTAに概ね対応する無負荷状態における構成を有し、器具が、患者の歯を第1のFTAに動かし、第2のFTAには動かさないように構成される、条項80~条項83のいずれか1項に記載の方法。
条項85.器具を介して患者の少なくとも1本の歯を動かすために最小閾値力が必要であり、所定のパラメータは、最小閾値力に関連付けられており、器具は、少なくともOTAと第1のFTAによって画定される経路に沿って、最小閾値より大きい非ゼロの力を提供するように構成される、条項80~条項84のいずれか1項に記載の方法。
条項86.器具を介して患者の少なくとも1本の歯を動かすために最小閾値力が必要であり、所定のパラメータは、最小閾値力に関連付けられており、器具は、第1のFTAに概ね対応する構成にあるとき、最小閾値より小さい非ゼロの力を提供するように構成される、条項80~条項85のいずれか1項に記載の方法。
条項87.歯列矯正装置の配置を決定するための方法であって、方法は、患者の元の歯の配置(OTA)に対応するデータを取得することと、OTAと所定のパラメータに基づいて、最終的な歯の配置(FTA)に対応するデータを判定することと、を含み、FTAが、フィクスチャ及び/又は歯科矯正器具を形成するために使用でき、器具は、患者の歯をOTAからFTAに向かって動かすように構成されており、最小閾値力が、器具を介して患者の少なくとも1本の歯を動かすために必要とされ、所定のパラメータが、最小閾値力に関連付けられている、方法。
条項88.器具が、患者の歯に固定された固定部材に結合されるように構成されており、所定のパラメータが、器具と固定部材との間の、予想される自由な遊びに関連付けられている、条項87に記載の方法。
条項89.器具が、患者の歯に固定された固定部材に結合されるように構成されたアタッチメント部分を含み、所定のパラメータが、アタッチメント部分と固定部材との間の予想される自由な遊びと関連付けられている、条項87又は条項88に記載の方法。
条項90.器具は、患者の歯に固定された固定部材に結合されるように構成されたアタッチメント部分を有するアームを含んでおり、所定のパラメータは、アタッチメント部分と固定部材との間の自由な遊びに関連付けられており、自由な遊びは、アタッチメント部分が固定部材に対して回転することができる回転角度に対応しており、第2のFTAは、第1のFTAと少なくとも回転角度だけ異なる、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項91.回転角度が、近心、遠位、咬合、歯肉、顔面、及び/又は舌の方向のうちの少なくとも1つに対応する方向である、条項90に記載の方法。
条項92.器具は、患者の歯に固定された固定部材に結合されるように構成されたアタッチメント部分を有するアームを含んでおり、所定のパラメータは、アタッチメント部分と固定部材との間の自由な遊びに関連付けられており、自由な遊びは、アタッチメント部分が固定部材に対して移動可能である寸法に対応しており、第2のFTAは、第1のFTAと少なくとも寸法だけ異なる、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項93.寸法が、近心-遠位、咬合-歯肉、及び/又は顔面-舌の方向の少なくとも1つに対応する方向に延在する、条項92に記載の方法。
条項94.器具のアームが、患者の歯に固定された固定部材に結合されるように構成されており、所定のパラメータが、アームと固定部材との間の予想される自由な遊びに関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項95.歯列矯正装置の配置を決定するための方法であって、方法は、患者の元の歯の配置(OTA)に対応するデータを取得することと、OTAと所定のパラメータに基づいて、最終的な歯の配置(FTA)に対応するデータを判定することと、を含み、FTAが、フィクスチャ及び/又は歯科矯正器具を形成するために使用でき、器具は、対応する固定部材を介して患者の歯に結合されると、患者の歯をOTAからFTAに向かって動かすように構成される複数のアームを有し、所定のパラメータが、少なくとも1本のアームと対応する固定部材との間の予想される自由な遊びに少なくとも部分的に基づいている、方法。
条項96.所定のパラメータは、第1のFTAと第2のFTAとの間の位置差に関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項97.器具が第1のFTAに対応する第1の配置となるように構成されており、フィクスチャが第2のFTAに対応する第2の配置となるように構成されており、所定のパラメータが第1及び第2の配置の間の差に関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項98.第2のFTAに対応した配置になるようにフィクスチャを製造することと、フィクスチャの上に配設された器具を処理し、それによって、器具が第1のFTAに対応する配置になるようにすることと、をさらに含む、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項99.第2のFTAに対応した配置になるようにフィクスチャを製造することと、器具を、2次元的な構成になるように製造することと、器具をフィクスチャの上に結合させることと、フィクスチャの上に配設された器具を処理し、それによって、器具が第2のFTAに対応する配置をとるようにすることと、器具をフィクスチャから外し、それによって器具が第1のFTAに対応する配置をとるようにすることと、を含む本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項100.歯列矯正装置の配置を決定するための方法であって、患者の元の歯の配置(OTA)に対応するデータを取得することと、OTAと所定のパラメータに基づいて、最終的な歯の配置(FTA)に対応するデータを判定することと、を含み、FTAが、フィクスチャ及び/又は歯科矯正器具を形成するために使用でき、器具は、患者の歯をOTAからFTAに向かって動かすように構成されており、所定のパラメータは、器具の予想される塑性変形閾値と関連付けられている、方法。
条項101.所定のパラメータが、OTAにあるときに器具が受ける応力に関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項102.所定のパラメータは、器具の材料特性に関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項103.器具が超弾性材料を含み、所定のパラメータが超弾性材料に関連付けられている塑性変形に関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項104.器具がニチノールを含み、所定のパラメータがニチノールに関連付けられている塑性変形に関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項105.器具がニチノールを含み、所定のパラメータがニチノールのヒステリシスに関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項106.所定のパラメータが、OTA又はFTAの少なくとも一方に対応する構成にあるときに器具が経験する応力に関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項107.所定のパラメータは、器具の予想される塑性変形閾値に関連付けられており、器具は、アンカ部分と、アンカ部分から延在するアームとを含み、塑性変形閾値は、器具のアームに関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項108.所定のパラメータは、器具の予想される塑性変形閾値に関連付けられており、器具は、アンカ部分と、アンカ部分から延在するアームとを含み、アームは付勢部分を含み、塑性変形閾値は、器具の付勢部分に関連付けられている、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項109.患者の歯に結合されたときに、器具が、OTAに対応する第1の構成から移行するように構成されており、FTAに対応するデータを判定することが、第1の構成における器具の一部分が器具の材料の降伏強度を超えているかどうかを判定することを含む、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項110.器具は、患者の歯に結合されたときに、OTAに対応する第1の構成から移行するように構成されており、FTAに対応するデータを判定することは、第1の構成における器具の一部分が器具の材料の降伏強度を超えているかどうかを判定することを含む、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項111.患者の歯に結合されたときに、器具が、OTAに対応する第1の構成からFTAに対応する第2の構成に移行するように構成されており、FTAに対応するデータを判定することが、第1又は第2の構成における器具の一部分が器具の材料の降伏強度を超えているかどうかを判定することを含む、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項112.歯列矯正装置の配置を決定するための方法であって、患者の元の歯の配置(OTA)に対応するデータを取得することと、OTAと所定のパラメータに基づいて、最終的な歯の配置(FTA)に対応するデータを判定することと、を含み、FTAは、フィクスチャ及び/又は歯科矯正器具を形成するために使用し得て、器具は、患者の歯をOTAからFTAに向かって動かすように構成されている、方法。
条項113.所定のパラメータが、本明細書の条項のいずれか1項に記載のものである、本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法。
条項114.歯科矯正器具を製造する方法であって、患者の元の歯の配置(OTA)に対応する位置データを取得することと、患者の所望の最終的な歯の配置(FTA)に対応する位置データを取得することと、患者の口内に装着されると、患者の歯をOTAからFTAに付勢するように構成された歯科矯正器具を製造することであって、器具がFTAにおいて患者の歯に結合されたときに、器具が患者の1本以上の歯に非ゼロの力を加え、非ゼロの力が最小閾値力未満である歯科矯正器具を製造することと、を含む、方法。
条項115.歯科矯正器具を製造する方法であって、患者の元の歯の配置(OTA)に対応する位置データを取得することと、患者の所望の最終的な歯の配置(FTA)に対応する位置データを取得することと、患者の歯をOTAからFTAに向かって動かすように構成された歯科矯正器具を製造することと、器具が第1の構成をとるように器具を処理フィクスチャに適用することによって器具を形状設定することであって、器具がフィクスチャから取り外された後、器具の少なくとも一部分が第1の構成から離れる方向に偏向する第2の構成をとるように、フィクスチャはFTAから逸脱した形状を有する、形状設定することと、を含む方法。
条項116.1つ以上の処理装置によって実行されると、1つ以上の処理装置に本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を格納する、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体。
条項117.1つ以上の処理装置と、1つ以上の処理装置によって実行されると、1つ以上の処理装置に本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を格納する、有形の非一時的なコンピュータ可読媒体とを備えるデバイス。
条項118.本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法に従って製造された歯科矯正器具。
条項119.本明細書の条項のいずれか1項に記載の方法に従って製造された熱処理フィクスチャ。
条項120.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を製造するための方法であって、歯科矯正器具は、アンカと、アンカから離れる方向に延在する少なくとも1つのアームとを有し、アームは、アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分とを含み、この方法は、器具による歯の再配置の前に、患者の歯の第1の位置を特徴付ける第1の位置データを取得することと、器具による歯の再配置後の患者の歯の第2の位置を特徴付ける第2の位置データを取得することと、器具による歯の再配置後に歯の予想される動きの後の患者の歯の所望の位置を特徴付ける第3の位置データを取得することと、器具のアームの遠位部分が第2の位置に位置するように、器具の3次元構成を形成することと、を含み、器具が、歯が予想される動きに従って動いた後に、歯が所望の位置に配置されるように、歯を第1の位置から第2の位置に再配置するように構成される、方法。
条項121.器具が、第1の方向の経路に沿って第1の位置から第2の位置に歯を再配置するように構成されている、条項120に記載の方法。
条項122.歯の予想される動きが、第1の方向とは反対の第2の方向に経路に沿っている、条項120又は条項121に記載の方法。
条項123.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、方法は、患者の歯の初期位置を特徴付ける第1の位置データを取得することと、患者の歯の目標とする位置を特徴付ける第2の位置データを取得することと、器具を形状設定フィクスチャから取り外す際に予想される器具の変形を特徴付ける変形データを取得することと、第1の位置データ、第2の位置データ、及び変形データに基づいて、器具が歯を初期位置から目標とする位置に再配置するように構成されるような器具の3次元(3D)構成を特徴付ける器具データを取得することと、を含む、方法。
条項124.予想される変形が、器具の超弾性特性によるものである、条項123に記載の方法。
条項125.歯科矯正器具が、アンカと、アンカから離れる方向に延在する少なくとも1本のアームとを備え、アームが、アンカ上に位置する近位部分と、患者の歯に固定されるように構成される歯列矯正ブラケットに固定されるように構成される遠位部分とを含み、3次元構成におけるアームの遠位部分の位置が歯の目標とする位置とは異なる、条項123又は条項124に記載の方法。
条項126.弾力性データは、器具が形状設定用フィクスチャに固定されている間に器具の形状を設定した後の器具の予想される変形を特徴付ける、条項123~条項125のいずれか1項に記載の方法。
条項127.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、方法は、患者の歯の初期位置を特徴付ける第1の位置データを取得することと、患者の歯の目標とする位置を特徴付ける第2の位置データを取得することと、器具の装着前の構成を特徴付ける器具データを取得することと、装着前の構成から装着された構成への器具の予想される変形を特徴付ける変形データを取得することと、第1の位置データ、第2の位置データ、及び変形データに基づいて、器具の修正された装着前の構成を特徴付ける修正された器具データを取得することと、を含む、方法。
条項128.変形データが、器具の1つ以上の部分における応力及び/又はひずみを特徴付ける、条項127に記載の方法。
条項129.装着前の構成から装着された構成への器具の予想される変形により、器具の1つ以上の部分で塑性変形が発生すると予想されるかどうかを判定することをさらに含む、条項127又は条項128に記載の方法。
条項130.塑性変形が起こると予想されるかどうかを判定することが、変形データを器具の材料の降伏応力又は降伏ひずみの少なくとも1つと比較することを含む、条項129に記載の方法。
条項131.修正された装着前の構成は、第1の修正された装着前の構成であり、修正された器具データを取得した後に、第1の修正された装着前の構成から装着された構成への器具の予想される変形を特徴付ける第2の変形データを取得することと、第1の位置データ、第2の位置データ、及び変形データに基づいて、器具の第2の修正された装着前の構成を特徴付ける第2の修正された器具データを取得することと、をさらに含む、条項127~条項130のいずれか1項に記載の方法。
条項132.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計する方法であって、歯科矯正器具は、アンカと、アンカから離れる方向に延在する少なくとも1本のアームとを有し、アームは、アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットの固定部分内に受容されるように構成された遠位部分を含み、方法は、器具による歯の再配置の前に、患者の歯の初期位置を特徴付ける第1の位置データを取得することと、器具による歯の再配置後の患者の歯の目標とする位置を特徴付ける第2の位置データを取得することと、器具のアームの遠位部分の寸法を特徴付けるアームデータを取得することと、歯列矯正ブラケットの固定部分の寸法を特徴付けるブラケットデータを取得することと、アームデータとブラケットデータとの差分を特徴付ける遊びデータを取得することと、遊びデータに基づいて、器具によってブラケットに加えられると予想される力を特徴付ける力データを取得することと、力データに基づいて、器具が形状設定された後の器具のアームの遠位部分の受動位置を特徴付ける第3の位置データを取得することであって、受動位置は歯の目標とする位置及び/又は歯の元の位置とは異なる、取得することと、を含む方法。
条項133.器具のアームの遠位部分が第2の位置に位置するように、器具の3次元構成を形成することをさらに含む、条項132に記載の方法。
条項134.遊びデータを取得することが、アームの遠位部分の平面とブラケットの固定部分の平面との間の予想される最大角変位を決定することを含む、条項132又は条項133に記載の方法。
条項135.力データを取得することが、アームの遠位部分とブラケットの固定部分との間の接続に関連付けられている予想されるトルク損失パラメータを判定することを含む、条項132~条項134のいずれか1項に記載の方法。
条項136.アームデータが、アームの遠位部分の咬合面歯肉寸法、アームの遠位部分の頬舌方向の寸法、又はアームの遠位部分の近遠心寸法の少なくとも2つを特徴付ける、条項132~条項135のいずれか1項に記載の方法。
条項137.ブラケットデータが、ブラケットの固定部分の咬合面歯肉寸法、ブラケットの固定部分の頬舌方向の寸法、又はブラケットの固定部分の近遠心寸法のうちの少なくとも2つを特徴付ける、条項132~条項136のいずれか1項に記載の方法。
条項138.遊びデータを取得することは、アームの遠位部分とブラケットの固定部分との間の予想される最大距離を計算することを含む、条項132~条項137のいずれか1項に記載の方法。
条項139.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を製造するための方法であって、歯科矯正器具は、アンカと、アンカから離れる方向に延在する少なくとも1本のアームとを有し、アームは、アンカ上に位置する近位部分と、患者の歯に固定される歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分とを含み、方法は、器具による歯の再配置の前に、患者の歯の元の位置を特徴付ける第1の位置データを取得することと、器具による歯の再配置後の患者の歯の目標とする位置を特徴付ける第2の位置データを取得することと、アームの遠位部分が歯に固定されているブラケットに固定され、器具が目標とする位置に歯を再配置したときに、器具が歯に力を加え、力が所定の閾値よりも大きな大きさを有するように、器具の形状を設定することと、を含む方法。
条項140.所定の閾値は、ゼロより大きい、条項139に記載の方法。
条項141.所定の閾値が約5グラムと約150グラムの間である、条項139又は条項140に記載の方法。
条項142.器具の形状を設定した後、アームの遠位部分が受動位置に位置し、受動位置が歯の目標とする位置及び/又は歯の元の位置とは異なる、条項139~条項141のいずれか1項に記載の方法。
条項143.所定の閾値が歯に固有のものである、条項139~条項142のいずれか1項に記載の方法。
条項144.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、方法は、初期構成の歯科矯正器具を特徴付ける器具のデジタルモデルを取得することと、器具の形状を設定するためのフィクスチャを特徴付けるフィクスチャのデジタルモデルを取得すること、フィクスチャのデジタルモデルに基づいて、器具のデジタルモデルを仮想的に変形させる有限要素解析(FEA)を実行することと、を含む方法。
条項145.フィクスチャのデジタルモデルが、患者の歯肉の表面に実質的に対応する形状を有する歯肉部分と、歯肉部分によって運ばれ、器具の一部分を保持するように構成された少なくとも1つの固定部分と、を備える、条項144に記載の方法。
条項146.FEAを実行することが、器具のデジタルモデルの少なくとも一部分をフィクスチャのデジタルモデルに実質的に一致させることを含む、条項144又は条項145に記載の方法。
条項147.器具が、アンカと、アンカから離れる方向に延在するアームとを備え、アームが、アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分とを備え、FEAを実行することが、器具のデジタルモデルのアームの遠位部分をフィクスチャのデジタルモデルの固定部分に又はフィクスチャのデジタルモデルの固定部分中に配置することを含む、条項144~条項146のいずれか1項に記載の方法。
条項148.器具が、アンカと、アンカから離れる方向に延在するアームとを備え、FEAを実行することが、器具のデジタルモデルのアンカに非ゼロの変位を適用することを含む、条項144~条項147のいずれか1項に記載の方法。
条項149.器具が初期構成において実質的に平面である、条項144~条項148のいずれか1項に記載の方法。
条項150.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、方法は、歯科矯正器具を装着前の構成で特徴付ける器具のデジタルモデルを取得することと、患者の歯及び歯肉を元の配置で特徴付ける解剖学的デジタルモデルを取得することと、FEAを実行して、解剖学的デジタルモデルに基づいて器具のデジタルモデルを仮想的に変形させることと、を含む、方法。
条項151.器具が、アンカと、アンカから離れる方向に延在するアームとを備え、アームは、アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分と、を備え、FEAを実行することによって、アームの遠位部分を患者の歯の1つに、又はそれに隣接し配置する、条項150に記載の方法。
条項152.器具が、装着前の構成において実質的に3次元(3D)形状を有する、条項150又は条項151に記載の方法。
条項153.変形された器具のデジタルモデルを評価することをさらに含む、条項150から条項152のいずれか1項に記載の方法。
条項154.変形された器具のデジタルモデルを評価することが、変形された器具のデジタルモデルが歯肉に当たるか、又は歯肉から所定の閾値より大きく離間しているかどうかを判定することを含む、条項153に記載の方法。
条項155.変形された構成を評価することが、変形された器具のデジタルモデルのいずれかの部分が弾性ひずみ限界を超えているかどうかを判定することを含む、条項153又は条項154に記載の方法。
条項156.変形された構成を評価することが、変形された器具によって歯に加わる力及び/又はモーメントと、目標とする力及び/又はモーメントとの差を判定することを含む、条項153~条項155のいずれか1項に記載の方法。
条項157.評価に基づいて、器具のデジタルモデルを修正することをさらに含み、器具のデジタルモデルを修正することは、器具のアームの形状、器具のアンカの形状、又は装着前の構成における器具の形状の少なくとも1つを変更することを含む、条項153~条項156のいずれか1項に記載の方法。
条項158.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、方法は、予備的な構成で器具を仮想的に表す予備的な器具のデジタルモデルを取得することと、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得することであって、熱処理フィクスチャのデジタルモデルは、器具を形状設定するための熱処理フィクスチャの形状を特徴付け、熱処理フィクスチャが、患者の歯肉表面の形状に実質的に対応する形状を有する歯肉表面と、器具の一部分を解放可能に保持するように構成された固定部分と、を備える、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得することと、熱処理フィクスチャのデジタルモデルに基づいて、予備的な器具のデジタルモデルを仮想的に変形させる第1のFEAを実行することと、熱処理フィクスチャのデジタルモデルに少なくとも部分的に基づく形状を有する3次元構成で器具を仮想的に表す目標とする器具のデジタルモデルを取得することと、元の配置における患者の歯及び歯肉を仮想的に表す元の歯の配置(OTA)デジタルモデルを取得することと、OTAのデジタルモデルに基づいて、目標とする器具のデジタルモデルを仮想的に変形させる第2のFEAを実行することと、変形後の、目標とする器具のデジタルモデルと解析結果を取得することと、を含む、方法。
条項159.器具は、予備構成において実質的に平面である、条項158に記載の方法。
条項160.第1のFEAを実行することが、予備的な器具のデジタルモデル及び熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方を、複数の有限要素及び複数のノードに離散化することと、予備的な器具のデジタルモデルと熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方に、材料特性を割り当てることと、予備的な器具のデジタルモデルと熱処理フィクスチャのデジタルモデルとの間の接触相互作用を定義することと、予備的な器具のデジタルモデルと熱処理フィクスチャのデジタルモデルの少なくとも一方に境界条件を割り当てることと、解析パラメータを定義することと、終了条件に達するまでFEAを実行することと、を含む、条項158又は条項159に記載の方法。
条項161.境界条件を割り当てることは、平面状の器具のデジタルモデルの一部分に非ゼロの変位を割り当てること、又は平面状の器具のデジタルモデルの一部分の向きと熱処理フィクスチャの固定部分の基底面との間の関係を定義することの少なくとも一方を含む、条項160に記載の方法。
条項162.第2のFEAを実行することは、目標とする器具のデジタルモデル及びOTAのデジタルモデルの少なくとも一方を、複数の有限要素と複数のノードに離散化することと、目標とする器具のデジタルモデルとOTAのデジタルモデルの少なくとも一方に材料特性を割り当てることと、目標とする器具のデジタルモデルとOTAのデジタルモデルとの間の接触相互作用を定義することと、目標とする器具のデジタルモデルとOTAのデジタルモデルの少なくとも一方に境界条件を割り当てることと、解析パラメータを定義することと、終了条件に達するまでFEAを実行することと、を含む、条項158に記載の方法。
条項163.境界条件を割り当てることが、目標とする器具のデジタルモデルの一部分に変位を割り当てることを含み、変位が、元の配置から所望の最終的な配置への患者の歯の動きに少なくとも部分的に基づいている、条項162に記載の方法。
条項164.解析結果が、変形後の、目標とする器具のデジタルモデルにおけるひずみ又は変形後の、目標とする器具のデジタルモデルと患者の歯肉表面との間の距離の少なくとも一方を含む、条項158~条項163のいずれか1項に記載の方法。
条項165.歯科矯正器具が、アンカと、アンカから離れる方向に延在する少なくとも1本のアームとを備え、アームが、アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分と、を備える、条項158~条項164のいずれか1項に記載の方法。
条項166.第1のFEAを実行することにより、器具のアンカが、熱処理フィクスチャのデジタルモデルの歯肉表面に、又は歯肉表面に隣接する位置に配置される、条項165に記載の方法。
条項167.第2のFEAを実行することにより、器具のアームの遠位部分が、患者の歯の1つに配置されるか又は患者の歯に隣接する位置に配置される、条項165に記載の方法。
条項168.患者の歯を再配置するための歯科矯正器具を設計するための方法であって、方法は、元の配置における患者の歯及び歯肉のOTAのデジタルモデルを取得することであって、OTAのデジタルモデルは、患者の口内に装着されたときに歯科矯正器具によって再配置される歯の元の位置データを含む、OTAのデジタルモデルを取得することと、患者の歯及び歯肉を所望の最終的な配置で特徴付けるFTAのデジタルモデルを取得することであって、FTAのデジタルモデルは歯の最終位置データを含む、FTAのデジタルモデルを取得することと、歯の元の位置データと歯の最終位置データとの間の変位を特徴付ける変位データを判定することと、OTAのデジタルモデル又はFTAのデジタルモデルの少なくとも一方に基づいて、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得することと、熱処理フィクスチャのデジタルモデルに基づいて、3Dテンプレートデジタルモデルを取得することと、平面状テンプレートデジタルモデルを取得することであって、平面状テンプレートデジタルモデルは、3Dテンプレートデジタルモデルの実質的に平面状の構成である、平面状テンプレートデジタルモデルを取得することと、平面状のテンプレートデジタルモデルに基づく平面状の器具のデジタルモデルを取得することと、目標とする器具のデジタルモデルを取得することであって、目標とする器具のデジタルモデルは、熱処理フィクスチャのデジタルモデルに基づく3D構成で歯科矯正器具を特徴付ける、目標とする器具のデジタルモデルを取得することと、変位データに基づいて目標とする器具のデジタルモデルを変形させるために、OTAと目標とする器具のデジタルモデルに対してFEAを実行することと、仮想的な変形の解析結果を評価することと、を含む方法。
条項169.変位データは、3つの並進及び3つの回転からなる、条項168に記載の方法。
条項170.目標とする器具のデジタルモデルに基づいて熱処理フィクスチャのデジタルモデルを修正することをさらに含む、条項168又は条項169に記載の方法。
条項171.熱処理フィクスチャのデジタルモデルを修正することが、熱処理フィクスチャのデジタルモデルの歯肉表面と目標とする器具のデジタルモデルの歯肉に面する表面との間の接線関係を定義することを含む、条項170に記載の方法。
条項172.平面状テンプレートデジタルモデル、熱処理フィクスチャのデジタルモデル、又は目標とする器具のデジタルモデルのうちの少なくとも一つを製造することをさらに含む、条項168~条項171のいずれか1項に記載の方法。
条項173.歯科矯正器具が、アンカと、アンカから離れる方向に延在するアームとを備え、アームが、アンカ上に位置する近位部分と、歯列矯正ブラケットに固定されるように構成された遠位部分と、を含む、条項168~条項172のいずれか1項に記載の方法。
【0010】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照することで、より理解を深めることができる。図面に示す構成要素は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。その代わり、本開示の原理を明確に説明することに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】患者の口内で患者の歯列に隣接して装着された、本技術に従って構成された歯科矯正器具の概略図を示す。
図1B】本技術の実施形態に従って構成された接続構成オプションの概略図である。
図1C】本技術の実施形態に従って構成された器具の一部分の概略図である。
図2A】患者の歯が元の歯の配置である状態における、患者の口の上顎及び下顎に装着された本技術のいくつかの実施形態に従って構成された器具の立面図である。
図2B】患者の歯が最終的な歯の配置である状態における、患者の口の上顎及び下顎に装着された本技術のいくつかの実施形態に従って構成された器具の立面図である。
図2C】ニチノール及び鋼の応力-ひずみ曲線を示すグラフである。
図3】本技術に従って歯科矯正器具を製造するための例示的なプロセスの流れ図である。
図4】本技術に従って歯科矯正器具を製造するためのシステムの概略ブロック図である。
図5】本技術に従って歯科矯正器具を設計するためのプロセスの流れ図である。
図6】患者の歯を走査して元の歯の配置データを取得することを示す図である。
図7】元の歯の配置における患者の歯及び歯肉のデジタルモデルの例を示す図である。
図8】最終的な歯の配置における患者の歯及び歯肉のデジタルモデルの例を示す図である。
図9】固定部材のデジタルモデルの例を示す図である。
図10】元の歯の配置における患者の歯及び歯肉と複数の固定部材のデジタルモデルの例を示す図である。
図11】最終的な歯の配置における患者の歯及び歯肉と複数の固定部材のデジタルモデルの例を示す図である。
図12】熱処理フィクスチャのデジタルモデルの例を示す図である。
図13】熱処理フィクスチャモデルに基づく3次元器具のテンプレートのデジタルモデルの例を示す図である。
図14】実質的に平面状の器具のテンプレートのデジタルモデルの例を示す図である。
図15】実質的に平面状の器具のデジタルモデルの例を、各歯の決定された変位に基づく固有のアーム形状を備えて示す図である。
図16】本技術の実施形態による歯科矯正器具の斜視図を示す。
図17】本技術に従った器具の熱処理フィクスチャの斜視図を示す。
図18】本技術に従って熱処理フィクスチャに締結された歯科矯正器具の斜視図である。
図19】歯科矯正器具の設計を決定するための例示的なプロセスの流れ図である。
図20】歯科矯正器具の設計を決定するための例示的なプロセスの流れ図である。
図21】平面状の器具のデジタルモデルと熱処理フィクスチャのデジタルモデルを用いて有限要素解析を実行することにより得られる、目標とする器具のデジタルモデルの例を示す図である。
図22】目標とする器具のデジタルモデルとOTAのデジタルモデルを用いて有限要素解析を実行することにより得られる、変形された目標とする器具のデジタルモデルの例を示す図である。
図23】有限要素解析の結果の例を示す図である。
図24】解析結果の別の例を示す図である。
図25】反復有限要素解析の結果の例を示す図である。
図26】患者の歯に加わる力と患者の歯の位置関係との関係を示すプロット図である。
図27】本技術の実施形態による、歯列矯正装置の配置に対応するデータを判定するための方法の流れ図である。
図28A】本技術の実施形態による固定部材の斜視図である。
図28B図28Aに示す固定部材に結合された歯科矯正器具のアームの一部分の斜視図である。
図28C図28Bに示す固定部材及び器具の拡大側面図である。
図29A】本技術の実施形態による固定部材の斜視図である。
図29B図29Aに示される固定部材に結合された歯科矯正器具のアームの一部分の斜視図である。
図29C図23Bに示される固定部材及び器具の拡大側面図である。
図30】本技術の実施形態による、歯列矯正装置の配置に対応するデータを判定するための方法の流れ図である。
図31】本技術の実施形態による、歯列矯正装置の配置に対応するデータを判定するための方法の流れ図である。
図32】本技術の実施形態に従って構成された、歯科矯正器具の側方斜視図である。
図33】本技術の実施形態による、歯列矯正装置の配置に対応するデータを判定するための方法の流れ図である。
図34】本技術の実施形態による、歯列矯正装置の配置に対応するデータを判定するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本技術は、一般的に、1本以上の患者の歯を再配置するように構成された歯科矯正器具及び関連するシステムに関する。特定の実施形態では、本技術は、歯科矯正器具を歯に取り付ける、又は固定するためのデバイス、システム、及び方法と、そのような器具を設計及び製造するための関連方法に関する。本技術のいくつかの実施形態の特定の詳細を、図1A図34を参照して以下に説明する。
【0013】
I.定義
解剖学的方向又は向きを提供するために本明細書で使用される用語は、患者の口内に装着される際に器具の異なる方向を包含することを意図し、説明されている構造が図面において口内に装着して示されているかどうかは関係ない。例えば「近心」とは、患者の湾曲した歯列弓に沿って、患者の顔の正中線に向かう方向を意味し、「遠位」とは、患者の湾曲した歯列弓に沿って、患者の顔の正中線から離れる方向を意味し、「咬合方向」とは、患者の歯の咀嚼面に向かう方向を意味し、「歯肉方向」とは、患者の歯茎又は歯肉に向かう方向を意味し、「顔面側」とは、患者の唇又は頬に向かう方向を意味し(本明細書では「頬側」及び「舌側」と置き換え可能に使用される)、「舌側」とは、患者の舌に向かう方向を意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「近位」及び「遠位」という用語は、所与の基準点からそれぞれより近い、及びより遠い位置を指す。多くの場合、基準点はアンカなどの特定のコネクタであり、「近位」及び「遠位」は、基準コネクタから分岐する器具の部分の断面の重心を通る線に沿って、基準コネクタからそれぞれより近い位置とより遠い位置を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「一般的に」、「実質的に」、「約」などの用語は、程度の用語としてではなく、近似の用語として使用され、測定値又は計算値の固有の変動を説明することを意図しており、それらは当業者によって認識されるであろう。
【0016】
本明細書で使用される場合、「オペレータ」という用語は、臨床医、開業医、技術者、あるいは、歯科矯正器具若しくはその一部分を設計及び/又は製造する、及び/又は器具若しくはその一部分の設計及び/又は製造を促進する任意の人又は機械、及び/又は器具を患者の口内に装着すること、及び/又は器具に関連付けられている患者のその後の治療に関連付けられている任意の人又は機械を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「力」という用語は、力、トルク、又はそれらの組み合わせの大きさ及び/又は方向を指す。
【0018】
II.本技術の歯科矯正器具の概要
図1Aは、本技術の実施形態に従って構成された歯科矯正器具100(又は「器具100」)の概略図であり、患者の口内で患者の歯に隣接して配置されて示される。図1Bは、器具100の一部分の拡大図である。器具100は、患者の口内に装着されて、1本以上の歯に力を与えて、全部又は一部分の歯を再配置するように構成される。場合によっては、器具100は、さらに、あるいは代替的に、1本以上の歯の位置を維持するように構成され得る。図1A及び図1Bに概略的に示されるように、器具100は、1つ以上のアタッチメント部分140(それぞれがボックスによって概略的に表される)を含む変形可能部材を含み得て、それぞれが固定部材160を介して直接又は間接的に歯の表面に固定されるように構成される。器具100は、1つ以上のコネクタ102(概略的に示される)をさらに含み得て、これらはそれぞれがアタッチメント部分140(「第1のコネクタ104」)同士の間、アタッチメント部分140と1つ以上の他のコネクタ102(「第2のコネクタ106」)との間、又は2つ以上の他のコネクタ102(「第3のコネクタ108」)同士の間に直接延在する。図1Aでは、説明を簡単にするために、2つのアタッチメント部分140及び2つのコネクタ102のみに参照番号が付されている。本明細書で論じられるように、コネクタ102及びアタッチメント部分140の数、構成、及び位置は、器具100が装着されたときに1本以上の歯に所望の力を提供するように選択され得る。
【0019】
アタッチメント部分140は、動かされる歯の1つの表面に結合、接着、又は他の方法で固定される固定部材160に取り外し可能に結合されるように構成され得る。いくつかの実施形態において、1つ以上のアタッチメント部分140は、歯に固定部材又は他の接続インターフェースなしで、対応する歯に直接結合、接着、又は他の方法で固定され得る。所与の器具100の異なるアタッチメント部分140は、同じ若しくは異なる形状、同じ若しくは異なるサイズ、及び/又は同じ若しくは異なる構成を有し得る。アタッチメント部分140は、米国特許出願公開第2017/0156823A1号に開示されるアタッチメント部分、ブラケットコネクタ、及び/又は雄型コネクタ要素のいずれかを含み得て、参照によりその特許全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
器具100は、所望の動きを達成するために、器具100を患者の1本以上の歯に確実に取り付けるのに適した任意の数のアタッチメント部分140を含み得る。いくつかの例では、複数のアタッチメント部分140を1本の歯に取り付け得る。器具100は、全ての歯のアタッチメント部分、歯よりも少ないアタッチメント部分、又は歯よりも多いアタッチメント部分140を含み得る。これら及びその他の実施形態では、器具100は、アタッチメント部分140の1つ以上が、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上のコネクタ102に結合されるように構成され得る。
【0021】
前述のように、コネクタ102は、アタッチメント部分140の間に直接延在する1つ以上の第1のコネクタ104を含み得る。1つ以上の第1のコネクタ104は、器具100が患者の口内に装着されると、概ね近遠心寸法に沿って延在し得る。これら及びその他の実施形態では、器具100は、器具100が患者の口内に装着されると、一般的に咬合面歯肉及び/又は頬舌方向の寸法に沿って延在する1つ以上の第1のコネクタ104を含み得る。いくつかの実施形態において、器具100は、第1のコネクタ104を含まない。
【0022】
追加的又は代替的に、コネクタ102は、1つ以上のアタッチメント部分140と1つ以上のコネクタ102との間に延在する1つ以上の第2のコネクタ106を含み得る。1つ以上の第2のコネクタ106は、器具100が患者の口内に装着される場合、一般的に咬合面歯肉方向の寸法に沿って延在し得る。これら及びその他の実施形態では、器具100は、器具100が患者の口内に装着されると、一般的に近遠心及び/又は頬舌方向の寸法に沿って延在する、1つ以上の第2のコネクタ106を含み得る。いくつかの実施形態において、器具100は、第2のコネクタ106を含まない。そのような実施形態では、器具100は、アタッチメント部分140の間に延在する第1のコネクタ104のみを含み得る。第2のコネクタ106及びそれが取り付けられるアタッチメント部分140は、本明細書で使用される「アーム」(図1A及び図1Bのアーム130など)を含み得る。いくつかの実施形態において、複数の第2のコネクタ106は、器具100に沿った同じ場所から同じアタッチメント部分140まで延在し得る。そのような場合、複数の第2のコネクタ106及びアタッチメント部分140は、本明細書で使用されるように、共に「アーム」を含む。器具100上の2点を接続するために2つ以上のコネクタを使用することにより、より大きな力(同じ点を接続する単一のコネクタと比較して)を、個々のコネクタにひずみを増大することなく、加えることができる。このような構成は、本明細書の固定変位処置の空間的制約を考えると特に有益である。
【0023】
追加的又は代替的に、コネクタ102は、2つ以上の他のコネクタ102の間に延在する1つ以上の第3のコネクタ108を含み得る。1つ以上の第3のコネクタ108は、器具100が患者の口内に装着されると、一般的に近遠心寸法に沿って延在し得る。これら及びその他の実施形態では、器具100は、器具100が患者の口内に装着されると、一般的に咬合面歯肉及び/又は頬舌方向の寸法に沿って延在する1つ以上の第3のコネクタ108を含み得る。いくつかの実施形態において、器具100は、第3のコネクタ108を含まない。第3のコネクタ108の1つ、いくつか、又は全ては、第1のコネクタ104の1つ、いくつか、又は全てに対して歯肉側に配置され得る。いくつかの実施形態において、器具100は、単一の第3のコネクタ108を含み、それは少なくとも2つの隣接する歯に沿って延在し、2つ以上の第2のコネクタ106に共通のアタッチメントを提供する。いくつかの実施形態において、器具100は、それぞれが少なくとも2本の隣接する歯に沿って延在する、複数の隣接しない第3のコネクタ108を含む。
【0024】
図1Aに示すように、いくつかの実施形態において、器具100は、器具100が患者の口内に装着されると、コネクタ102の1つ、いくつか、又は全ての全部又は一部分が患者の歯肉に近接して配設されように構成され得る。例えば、1つ以上の第3のコネクタ108は、1つ以上の第3のコネクタ108の全部又は一部分が患者の歯肉線の下に配置され、歯肉に隣接するが、歯肉からは離間するように構成され得る。多くの場合、第3のコネクタ(複数可)108と患者の歯肉との間に、小さな間隙(例えば、0.5mm以下)を設けることが有益となり得る。これは第3のコネクタ(複数可)108(又は器具100の任意の部分)と歯肉との間の接触が、刺激と患者の不快感を引き起こし得るためである。いくつかの実施形態において、第3のコネクタ(複数可)108の全部又は一部分は、器具100が患者の口内に配設されたときに歯肉と直接接触するように構成される。追加的又は代替的に、1つ以上の第1のコネクタ104及び/又は第2のコネクタ106の全部又は一部分は、歯肉に近接して配設されるように構成され得る。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上のコネクタ102は、アタッチメント部分140又はコネクタ102と、(a)2つ以上のコネクタ102、(b)2つ以上のアタッチメント部分140、又は(c)少なくとも1つのアタッチメント部分140及び少なくとも1つのコネクタ102を含むジョイントとの間に延在し得る。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のコネクタ102は、(a)2つ以上のコネクタ102、(b)2つ以上のアタッチメント部分140、又は(c)少なくとも1つの取り付け部材及び少なくとも1つのコネクタ102を含む第1のジョイントと、(a)2つ以上のコネクタ102、(b)2つ以上のアタッチメント部分140、又は(c)少なくとも1つのアタッチメント部分140及び少なくとも1つのコネクタ102を含む第2のジョイントとの間に延在し得る。(a)第2のコネクタ106と第3のコネクタ108との間のジョイントと、(b)第2のコネクタ106とアタッチメント部分140との間のジョイントとの間に延在するコネクタ102の例は、概略的に描かれ、図1Bでは109と参照番号が付されている。
【0026】
コネクタ102のそれぞれは、所望の剛性を有するように設計されることで、個々のコネクタ102又はコネクタ102の組み合わせが1本以上の歯に所望の力を与える。多くの場合、所与のコネクタ102によって加わる力は、フックの法則、すなわちF=k×xによって決定され得る。ここで、Fはコネクタ102によって加えられる復元力であり、kはコネクタ102の剛性係数であり、xは変位である。最も基本的な例では、コネクタ102が器具100上の2点の間に存在しない場合、その経路に沿った剛性係数はゼロであり、力は加えられない。この場合、本技術の個々のコネクタ102は、変化する非ゼロの剛性係数を有し得る。例えば、コネクタ102の1つ以上は剛性(すなわち、剛性係数が無限大)であり得て、コネクタ102はその2つの端点の間で湾曲又は屈曲しない。いくつかの実施形態において、コネクタ102の1つ以上は「可撓性」(すなわち、剛性係数が非ゼロで正である)であり得る。その結果、コネクタ102は変形して関連する1本以上の歯、又は他のコネクタ102に力を与える(又は吸収する)ことができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、2本以上の歯の間に1つ以上の剛性コネクタを含めることが有益となり得る。剛性コネクタ102は、本明細書では「剛性バー」又は「アンカ」と呼ばれる場合がある。各剛性コネクタ102は、その形状を保持及び維持し、かつ屈曲に抵抗するのに十分な剛性を有し得る。コネクタ102の剛性は、特定の形状、幅、長さ、厚み、及び/又は材料を選択することによって達成され得る。比較的剛性であるように構成されたコネクタ102は、例えば、コネクタ102又はアームに接続される歯が動かされない(又は限られた量だけ動かされる)場合に採用されてもよく、固定のために使用され得る。例えば、大臼歯は良好な固定を提供できる。なぜならそれらの歯はほとんどの歯よりも根が大きく、動かすのに大きな力が必要なためである。さらに、器具100の1つ以上の部分を複数の歯に固定することは、1本の歯に固定するよりも安全である。別の例として、剛性接続は、歯のグループを1つ以上の別の歯に対して動かす場合に望ましい場合がある。例えば、患者に1本の歯から空隙をおいて5本の歯があり、処置計画がその空隙を埋めることである場合を考える。治療の最良のコースは、通常、1本の歯を5本の歯に向かって動かすことであり、その逆はない。この場合、1つ以上の剛性コネクタを5本の歯の間に設けることが有益となり得る。前述の全ての理由及び他の多くの理由により、器具100は、1つ以上の剛性の第1のコネクタ104、1つ以上の剛性の第2のコネクタ106、及び/又は1つ以上の剛性の第3のコネクタ108を含み得る。
【0028】
これら及びその他の実施形態では、器具100は、1つ以上の可撓性の第1のコネクタ104、1つ以上の可撓性の第2のコネクタ106、及び/又は1つ以上の可撓性の第3のコネクタ108を含み得る。各可撓性コネクタ102は、特定の形状、幅、厚み、長さ、材料、及び/又は他のパラメータを有して、所望の程度の可撓性を提供し得る。本技術のいくつかの実施形態によれば、所与のコネクタ102の剛性は、1つ以上の弾性的に可撓性の付勢部分150を組み込むことによって調整され得る。図1Bに概略的に示されるように、コネクタ102の1つ、いくつか、又は全ては、1つ以上の付勢部分150、例えばばねを含み得て、それぞれは、それが取り付けられる歯に固有のカスタマイズされた力を加えるように構成される。
【0029】
図1Cに示される概略図に示されるように、付勢部分(複数可)150は、それぞれのコネクタ102の長手方向軸L1の全部又は一部分に沿って延び得る(第2のコネクタ106の長手方向軸L1及び第3のコネクタ108の長手方向軸L2のみに図1Cでは参照符号を付している)。付勢部分150によって歯に加わる力及びトルクの方向及び大きさは、少なくとも部分的に、付勢部分150の形状、幅、厚み、長さ、材料、形状設定条件、及び他のパラメータに依存する。したがって、付勢部分150の1つ以上の態様(前述のパラメータを含む)は変更され得る。その結果、対応するアーム130、コネクタ102、及び/又は付勢部分150は、器具100が患者の口内に装着されると、所望の歯の動きを生成する。各アーム130及び/又は付勢部分150は、1本以上の歯を1つ、2つ、又は3つ全ての並進方向(すなわち、近遠心、頬舌、及び咬合面歯肉)において、及び/又は1つ、2つ、又は3つ全ての回転方向(すなわち、頬舌根トルク、近遠心角形成及び近心アウトイン(out-in)回転)において動かすように設計され得る。
【0030】
本技術の付勢部分150は、それぞれの歯を所望の位置に向かって動かすのに十分な任意の長さ、幅、形状、及び/又はサイズを有し得る。いくつかの実施形態において、コネクタ102の1つ、いくつか、又は全ては、それぞれの付勢部分150に沿って1つ以上の変曲点を有し得る。コネクタ102及び/又は付勢部分150は、蛇行構成を有し得る。その結果、コネクタ102及び/又は付勢部分150は、少なくとも1回以上、正反対の方向に折り返した後、アタッチメント部分140に向かって延在する。例えば、いくつかの実施形態において、第2のコネクタ106は、付勢部分150に沿ってそれ自体で2回折り返し、それによって、一般的に互いに対して異なる方向に面する第1及び第2の凹面領域を形成する。付勢部分150に対応するコネクタ102の開ループ又は重なり合う部分は、アーム130及び/又はコネクタ102の全幅W(図1C)を二等分する平面P(図1C)のいずれかの側に配設され得る。その結果、アーム130及び/又はコネクタ102の余分な長さは、アーム130及び/又はコネクタ102の近心、及び/又は遠位のスペースによって収容される。これにより、アーム130及び/又はコネクタ102は、関連する第3のコネクタ108とアーム130が歯に取り付けられる位置との間の咬合歯肉又は垂直寸法のスペースが限られているにも関わらず、より大きな歯の動きに対応するために(線形アームと比較して)より長尺の長さを有することが許容される。
【0031】
付勢部分150は、他の形状又は構成を有し得ることが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態において、コネクタ102及び/又は付勢部分150は、アタッチメント部分140に向かってジグザグに動く1つ以上の線形領域を含み得る。コネクタ102及び/又は付勢部分150の1つ、いくつか、又は全ては、線形セグメント又は領域のみを有し得る、あるいは湾曲領域及び線形領域の組み合わせを有し得る。いくつかの実施形態において、コネクタ102及び/又は付勢部分150の1つ、いくつか、又は全ては、湾曲部分を含まない。
【0032】
いくつかの例によれば、単一のコネクタ102は、それぞれのコネクタ102の長手方向軸に沿って直列に複数の付勢部分150を有し得る。いくつかの実施形態において、複数のコネクタ102は、同じ又は異なる経路に沿った2点の間に延在し得る。そのような実施形態では、異なるコネクタ102は、同じ剛性又は異なる剛性を有し得る。
【0033】
器具100が、付勢部分150を備えた2つ以上のコネクタ102を有する実施形態では、コネクタ102のいくつか、又は全ては、同じ又は異なる長さ、同じ又は異なる幅、同じ又は異なる厚み、同じ又は異なる形状を有し得てよく、又はいずれも有さなくてもよく、及び/又は、他の特性の中でも、同じ又は異なる材料で作られてもよく、又はいずれも作られなくてもよい。いくつかの実施形態において、コネクタ102の一部分は、付勢部分150を有する。付勢部分150のないコネクタ102は、例えば、剛性の第3のコネクタ108とアタッチメント部分140との間に1つ以上の剛性接続を含み得る。いくつかの実施形態において、器具100のコネクタ102のいずれも、付勢部分150を有さない。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、例えば、図1Aに概略的に示されるように、器具100は、単一の連続した実質的に剛性の第3のコネクタ(「アンカ120」と呼ばれる)と、アンカ120から離れる方向に延在する複数の可撓性アーム130とを含み得る。器具100が患者の口内に装着されると、アーム130のそれぞれは、動かされる歯の異なる1つに接続し、それぞれの歯に特定の力を加え、それによって、オペレータが各歯を独立して動かし得る。このような構成は、1本の歯の動きが1本以上の近くの歯の意図しない動きを引き起こす可能性があるような、全ての歯が単一のアーチワイヤによって接続される従来のブレースに対して著しい改善を提供する。本明細書でより詳細に論じられるように、本技術の器具によって可能になる独立したカスタマイズされた歯の動きにより、オペレータが歯を元の歯の配置(「OTA」)から最終的な歯の配置(「FTA」)により効率的に動かすことができるようになり、それによって、定期的な調整が不要となり、来院回数を減らし、患者の不快感を軽減又は排除し、全体的な治療時間(すなわち、器具が患者の口内に装着される時間の長さ)を、従来のブレースの全体的な治療時間に対して少なくとも50%まで短縮することを可能にする。
【0035】
アンカ120は、患者の口内に快適に嵌合し、1本以上のアーム130に共通の支持を提供するように構成された任意の形状及びサイズの任意の構造を含み得る。多くの実施形態では、アンカ120は、例えば図1Bに示されるように、器具100が患者の口内に装着されるときに、患者の歯肉の近くに配設される。例えば、器具は、患者の口内に装着されると、アンカ120の全部又は一部分が患者の歯肉線の下で、歯肉に隣接するが離間して配置されるように設計され得る。多くの場合、アンカ120と歯肉との間の接触が刺激と患者の不快感を引き起こし得るため、アンカ120(又は器具100の任意の部分)と患者の歯肉との間に小さな間隙(例えば、0.5mm以下)を設けることが有益となり得る。いくつかの実施形態において、アンカ120の全部又は一部分は、器具100が患者の口内に配設されるときに歯肉と接触するように構成される。
【0036】
アンカ120は、アーム130よりも著しく剛性であり得、その結果、それぞれの歯に力を加えるときに各アーム130が受ける等しく、かつ反対の力は、アンカ120の剛性及び他のアーム130によって加わる力によって打ち消され、他の歯にかかる力に重大な影響を及ぼさない。したがって、アンカ120は、各アーム130が受ける力を残りのアーム130から効果的に隔離し、それにより、独立した歯の動きを可能にする。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、例えば、図1A及び図1Bに概略的に示されるように、アンカ120は、細長い部材を含み、それは長手方向軸L2(図1Cを参照)を有し、器具100が装着されたときに患者の顎に沿って延在するように構成されたアーチ形状を形成する。これら及びその他の実施形態では、アンカ120は、患者の口内に配置されたときに、患者の歯の2本以上にまたがるように形状及びサイズ決定され得る。いくつかの例では、アンカ120は、剛性の線形バーを含み、又は線形セグメントと湾曲セグメントの両方を有する構造を含み得る。これら及びその他の実施形態では、アンカ120は、患者の口の全部又は一部分を横切って(例えば、口蓋の全部又は一部分を横切って、下顎の全部又は一部分を横切ってなど)、及び/又は一般的に前後方向に延在し得る。さらに、器具100は、単一のアンカ又は複数のアンカを含み得る。例えば、器具100は、それぞれがそこから延在する2つ以上のアーム130を有する、複数の別個の離間されたアンカを含み得る。これら及びその他の実施形態では、器具100は、隣接するアーム130の間に延在する1つ以上の他のコネクタを含み得る。
【0038】
アンカ120に関して上述された特徴のいずれか及び全ては、本明細書に開示される第3のコネクタ108のいずれかに適用され得る。
【0039】
図1Bに示されるように、アーム130のそれぞれは、近位又は第1の端部130aと遠位又は第2の端部130bとの間に延在し得て、第1の端部130aと第2の端部130bとの間に延在する長手方向軸Lを有し得る。アーム130の1つ、いくつか、又は全ての第1の端部130aは、アンカ120に配設され得る。いくつかの実施形態において、アーム130の1つ、いくつか、又は全ては、アンカ120と一体であり、その結果、そのようなアームの第1の端部130aは、アンカ120と連続する。アーム130は、図1Aに示されるように、アンカ120の長手方向軸L2に沿って離れた間隔でアンカ120から延在し得る。いくつかの実施形態において、アーム130は、アンカ120の長手方向軸L2に沿って、互いに対して等間隔で、又は互いに対して不均一な間隔で離間され得る。
【0040】
アーム130の1つ、いくつか、又は全ては、第2の端部130bに又はその近くにアタッチメント部分140を含み得る。いくつかの実施形態において、例えば、図1A図1Cに示されるように、アーム130のうちの1つ以上はアンカ120から片持ち支持されることで、片持ち支持されたアーム(複数可)130の第2の端部130bは自由な遠位端部130bを有する。これら及びその他の実施形態では、アタッチメント部分140の遠位末端は、アーム130の遠位末端と一致し得る。アタッチメント部分140は、動かされる歯の1つの表面に結合、接着、又は他の方法で固定される固定部材(例えば、ブラケット)にそれぞれのアーム130を取り外し可能に結合するように構成され得る。いくつかの実施形態において、アタッチメント部分140は、対応する歯に直接結合、接着、又は他の方法で固定され得て、固定部材又は他の接続インターフェースが歯になくてもよい。
【0041】
図1A及び図1Bを尚も4参照すると、アーム130の1つ、いくつか、又は全ては、ばねなどの1つ以上の弾性的な可撓性の付勢部分150を含み得て、そのそれぞれは、取り付けられる歯に固有の、カスタマイズされた力、トルク、又は力とトルクの組み合わせを加えるように構成される。付勢部分(複数可)150は、アンカ120とアタッチメント部分140との間のそれぞれのアーム130の長手方向軸L1の全部又は一部分に沿って延在し得る。付勢部分150によって歯に加わる力及びトルクの方向及び大きさは、少なくとも部分的に、付勢部分150の形状、幅、厚み、長さ、材料、形状設定条件、及び他のパラメータに依存する。したがって、アーム130及び/又は付勢部分150(前述のパラメータを含む)の1つ以上の態様は変更され得て、アーム130及び/又は付勢部分150は、器具100が患者の口内に装着されたときに所望の歯の動きを生成する。各アーム130及び/又は付勢部分150は、1本以上の歯を1つ、2つ、又は3つ全ての並進方向(すなわち、近遠心、頬舌、及び咬合面歯肉)において、及び/又は1つ、2つ、又は3つ全ての回転方向(すなわち、頬舌根トルク、近遠心角形成及び近心アウトイン(out-in)回転)において動かすように設計され得る。
【0042】
本技術の付勢部分150は、それぞれの歯を所望のFTAに向かって動かすのに十分な任意の長さ、幅、形状、及び/又はサイズを有し得る。いくつかの実施形態において、アーム130の1つ、いくつか、又は全ては、それぞれの付勢部分150に沿って1つ以上の変曲点を有し得る。アーム130及び/又は付勢部分150は、蛇行構成を有し得て、アーム130及び/又は付勢部分150が少なくとも1回以上、正反対の方向に折り返した後、アタッチメント部分140に向かって延在する。図1Bに示されるように、アーム130は、付勢部分150に沿ってそれ自体で2回折り返し、それによって、一般的に互いに対して異なる方向に面する第1及び第2の凹面領域を形成する。付勢部分150に対応するアーム130の開ループ又は重なり合う部分は、アーム130の全幅Wを二等分する平面Pのいずれかの側に配設され得る。その結果、アーム130の余分な長さは、アーム130の近心、及び/又は遠位のスペースによって収容される。これにより、アーム130は、アンカ120とアーム130が歯に取り付けられる位置との間の咬合面歯肉又は垂直寸法のスペースが限られているにも関わらず、より大きな歯の動きに対応するために(線形アームと比較して)より長尺の長さを有することが許容される。
【0043】
付勢部分150は、他の形状又は構成を有し得ることが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態において、アーム130及び/又は付勢部分150は、アタッチメント部分140に向かってジグザグに動く1つ以上の線形領域を含み得る。アーム130及び/又は付勢部分150の1つ、いくつか、又は全ては、線形セグメント又は領域のみを有し得る、又は湾曲領域及び線形領域の組み合わせを有し得る。いくつかの実施形態において、アーム130及び/又は付勢部分150の1つ、いくつか、又は全ては、湾曲部分を含まない。
【0044】
いくつかの例によれば、単一のアーム130は、複数の付勢部分150を有し得る。複数の付勢部分150は、それぞれのアーム120の長手方向軸L1に沿って直列であり得る。いくつかの実施形態において、複数のアーム130は、同じ経路に沿った、又は異なる経路に沿った2点の間で平行に延在し得る。そのような実施形態では、異なるアーム130は、同じ剛性又は異なる剛性を有し得る。
【0045】
器具100が、付勢部分150を備えた2本以上のアーム130を有する実施形態では、アーム130のいくつか、又は全ては、同じ又は異なる長さ、同じ又は異なる幅、同じ又は異なる厚み、同じ又は異なる形状を有し得て、又はいずれも有さなくてもよく、及び/又は、他の特性の中でも、同じ又は異なる材料で作られてもよく、又はいずれも作られなくてもよい。いくつかの実施形態において、アーム130の一部分は、付勢部分150を有する。付勢部分150のないアーム130は、例えば、アンカ120とアタッチメント部分140との間に1つ以上の剛性接続を含み得る。いくつかの実施形態において、器具100のアーム130のいずれも、付勢部分150を有さない。
【0046】
本技術の器具は、患者の歯を再配置するのに適した任意の数のアーム130を含み、同時に患者の快適さを考慮し得る。本明細書に特定の数のアームに対する明示的な定めがない限り、本技術の器具は、単一のアーム、2本のアーム、3本のアーム、5本のアーム、10本のアーム、16本のアームなどを含み得る。いくつかの例では、器具のアーム130の1本、いくつか、又は全ては、複数の歯に個別に接続するように構成され得る(すなわち、単一のアーム130は、同時に2本の歯に結合するように構成され得る)。これら及びその他の実施形態では、器具100は、同じ歯に同時に接続するように構成された2本以上のアーム130を含み得る。
【0047】
本技術の器具の任意の部分は、付勢部分150を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、その部分(例えば、アンカ(複数可)、アーム(複数可)、付勢部分(複数可)、アタッチメント部分(複数可)、リンク(複数可)など)は、1つ以上の超弾性材料を含み得る。
【0048】
付勢部分150、又はより一般的にはアーム130を介して加えられる個々の方向性のある力(複数可)に関連する追加の詳細は、米国特許出願公開第2017/0156823A1号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0049】
本明細書に開示される器具及び/又はその任意の部分(例えば、アンカ(複数可)、アーム(複数可)、付勢部分(複数可)、アタッチメント部分(複数可)、リンク(複数可)など)は、1つ以上の超弾性材料を含み得る。本明細書に開示される器具及び/又はその任意の部分(例えば、アンカ(複数可)、アーム(複数可)、付勢部分(複数可)、アタッチメント部分(複数可)、リンク(複数可)など)は、ニチノール、ステンレス鋼、ベータチタン、コバルトクロム、MP35N、35N LT、1つ以上の金属合金、1つ以上のポリマ、1つ以上のセラミック、及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0050】
図2A及び図2Bは、患者の口Mの上部アーチ及び下部アーチの両方に装着された器具100の立面図であり、アーム130が歯の舌側表面に取り付けられた固定部材160に結合される。上部アーチ及び下部アーチの一方又は両方の器具100は、患者の歯の頬側に近接して配置されてもよく、固定要素160及び/又はアーム130は、代わりに、歯の頬側表面に結合され得ることが理解されよう。
【0051】
図2Aは、アーム130が変形又は負荷された状態にあるOTA内の歯を示し、図2Bは、アーム130が実質的に無負荷状態にあるFTA内の歯を示す。アーム130は、歯がOTA内にあるときに最初に固定部材160に固定されると、アーム130はそれらの「設計された」構成とは異なる形状又は経路をとるように強制される。弾性の付勢部分150の固有の記憶のために、アーム130は、歯に連続的な矯正力を与えて、歯をFTAに向かって動かす。その時、付勢部分150は、設計された、又は無負荷の構成にある。したがって、本技術の器具を使用する歯の再配置は、単一の器具を使用して、単一のステップで達成され得る。本技術の器具は、より少ない来院及びより短い治療時間を可能にすることに加えて、ブレースと比較して、歯が動く結果として患者が経験する痛みを大幅に軽減又は排除する。従来のブレースでは、歯科矯正医が調整(新しいアーチワイヤの装着、既存のアーチワイヤの曲げ、ブラケットの再配置など)を行うたびに、影響を受けた歯に大きな力がかかり、患者にとって非常に苦痛となる。経時的に、加えられた力は弱まり、最終的には新しいワイヤが必要となる。しかし、本技術の器具は、器具が装着されている間、歯に動きを生成する力を連続的に加え、これによって歯の動く速度がより遅くてもよく、患者に対する痛みが(たとえ痛みがあるとしても)大幅に少ない。本明細書に開示される器具は、より低く、より痛みの少ない力を歯に加えるが、加わる力は連続的であり、歯が独立して(したがってより効率的に)動くことができるため、本技術の器具は、いずれも中間調整を必要とする従来のブレース又はアライナよりも、速くFTAに到達する。
【0052】
多くの実施形態では、動きの生成力は、従来のブレースによって加わる力よりも低い。器具が超弾性材料(ニチノールなど)を含むこれらの実施形態では、超弾性材料は、特定の範囲のひずみに対して一定の力のばねのように作用し、したがって、歯が動くときに加わる力の顕著な低下はない。例えば、図2Cのニチノール及び鋼の応力-ひずみ曲線に示されるように、ニチノールの曲線は、鋼の曲線と比べて比較的平坦である。したがって、本技術の超弾性コネクタ、付勢部分、及び/又はアームは、多くの異なるレベルのひずみ(例えば、偏向)に対して本質的に同じ応力を加える。結果として、歯が治療中に動く間、少なくとも歯が最終的な配置に非常に接近するか、又は最終的な配置になるまで、所与の歯に加わる力は一定に保たれる。本技術の器具は、痛みの閾値の直下の力を加えるように構成されており、その結果、器具は歯の動き中に常に痛みを伴わない最大の力を歯(又は複数の歯)に加える。これにより、痛みのない最も効率的な(つまり最速の)歯の動きを生じる。
【0053】
いくつかの実施形態において、歯の再配置は、複数の器具を使用することによって、漸進的に実行される複数のステップを含み得る。複数のステップ(又は複数の器具、又はその両方)を伴う実施形態は、元の歯の配置(OTA)と所望の最終的な歯の配置(FTA)との間に1つ以上の中間の歯の配置(ITA)を含み得る。同様に、本明細書に開示される器具は、最初の又は後続して使用される器具が歯をOTAからITAに(又はあるITAから別のITAに)動かし、その後で取り外された後に、装着されるように設計され得る。したがって、本技術の器具は、歯をITAからFTA(又は別のITA)に動かすように設計され得る。追加的又は代替的に、器具は、歯をOTAからITAに、又はOTAからFTAにITAでの器具の変更なしに動かすように設計され得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される器具は、一旦、患者の歯に装着されると、器具を患者が取り外すことができないように構成され得る。いくつかの実施形態において、器具は、患者によって取り外し可能であり得る。
【0055】
本明細書に記載の例示的な器具又は器具部分のいずれも、任意の適切な1つ以上の材料で作製され得て、例えば、限定するものではないが、ニチノール、ステンレス鋼、ベータチタン、コバルトクロム又は他の金属合金、ポリマ又はセラミックなどであり、また単一構造、一体構造として、又は、代替的に、複数の別々に形成された構成要素が単一構造に一体化して接続され作製され得る。しかし、特定の例では、これらの例で説明される器具(又は器具の一部分)の剛性バー、ブラケットコネクタ、及びループ又は湾曲特徴は、以下でより詳細に説明するプロセスに従って、器具の2次元(2D)形状を2Dシート材料から切断し、2D形状を器具の所望の3D形状に折り曲げることによって作製される。追加的又は代替的に、そのような器具(又は器具の一部分)は、米国特許出願公開第2017/0156823A1号に記載されているものを含む、任意の適切な技術を使用して形成され得て、これは、参照によりその全体は本明細書に組み込まれる。
【0056】
III.歯科矯正器具及びフィクスチャを製造するための選択された方法
図3は、本明細書の他の場所で説明されるような歯科矯正器具を設計及び製造するための例示的なプロセス300を示す。本明細書に記載の特定のプロセスは単なる例示であり、所望の結果(例えば、器具によって各歯に加わる所望の力、器具の所望の材料特性など)を達成するために適切に修正され得る。様々な実施形態において、他の適切な方法又は技術を利用して、歯科矯正器具を製造し得る。さらに、本明細書に開示される方法の様々な態様は一連のステップに言及するが、様々な実施形態において、ステップは異なる順序で実行され得て、2つ以上のステップを一緒に組み合わせることができ、特定のステップを省略でき、必要に応じて明示的に論じられていない追加のステップをプロセスに含み得る。
【0057】
上記のように、いくつかの実施形態において、歯科矯正器具は、歯が元の歯の配置(OTA)にある間に、患者の歯に結合されるように構成される。この位置では、器具の要素は個々の歯にカスタマイズされた負荷をかけ、所望の最終的な歯の配置(FTA)に向けて付勢する。例えば、器具100のアーム130は、歯に結合され、力を加えてFTAに向かう所望の方向に歯を付勢するように構成され得る。一例では、器具100のアーム130は、顔面舌側軸に沿って歯を舌側に付勢する引張力を加えるように構成され得る。アーム130の適切な寸法、形状、形状設定、材料特性、及び他の態様を選択することにより、カスタマイズされた負荷を各歯に加えて、各歯をそのOTAからそのFTAに向かって動かし得る。いくつかの実施形態において、各アーム130は、アーム130が結合されている歯がそのFTAを達成すると、力をほとんど又は一切加えないように構成される。言い換えると、器具100は、アーム130がFTA状態で静止するように構成され得る。
【0058】
図3に示すように、プロセス300は、ブロック302で開始でき、患者の元の歯の配置(OTA)を特徴付けるデータ(例えば、位置データ)を取得する。いくつかの実施形態において、オペレータは、患者のOTAのデジタル表現を取得してもよく、例えば、光学走査、コーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)、患者の印象の走査、又は他の適切な撮像技術を使用して、患者の歯、歯肉、及び任意選択で他の隣接する解剖学的構造の位置データを、患者の歯が元の状態又は治療前の状態にある間に取得する。
【0059】
プロセス300は、ブロック304に続き、患者の目標とする又は所望の最終的な歯の配置(FTA)を特徴付けるデータ(例えば、位置データ)を取得する。FTAを特徴付けるデータは、患者の歯及び歯肉のそれぞれの座標(例えば、X、Y、Z座標)を含み得る。追加的又は代替的に、そのようなデータは、患者の各歯を、患者の別の歯及び/又は歯肉に対して位置決めることを含み得る。いくつかの実施形態において、オペレータは、患者のFTAのデジタル表現、例えば、セグメンテーションソフトウェア(例えば、iROK Digital Dentistry Studio)を使用して生成されたFTAのデジタルモデルを取得して、OTAデータから個々の仮想歯及び歯肉を作成し得る。いくつかの実施形態において、固定部材160のデジタルモデルを、セグメント化されたOTAのデジタルモデルに追加し得る(例えば、オペレータが、固定部材160をその上に配置するために舌側表面(又は他の適切な表面)上の位置を選択することによる)。適切なソフトウェアを使用して、取り付けられた固定部材160を有する仮想歯をOTAから所望の最終位置(例えば、FTA)に、固定部材のデジタルモデルの含有の有無にかかわらず動かし得る。
【0060】
ブロック306では、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得し得る。いくつかの実施形態において、熱処理フィクスチャのデジタルモデルは、1つ以上の解剖学的デジタルモデル(例えば、OTAのデジタルモデル、FTAのデジタルモデル、それらの組み合わせなど)に対応し得る、及び/又はそこから導出され得る。例えば、解剖学的デジタルモデルを様々な方法で修正(例えば、MeshMixerや他の適切なモデリングソフトウェアを使用)して、熱処理フィクスチャを製造するために適したモデルをレンダリングし得る。いくつかの実施形態において、複数の解剖学的デジタルモデルを組み合わせて、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを形成し得る。例えば、OTAのデジタルモデルの歯肉部分とFTAのデジタルモデルの歯部分及び/又は固定部材部分とを組み合わせて、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを形成し得る。いくつかの実施形態において、解剖学的デジタルモデルは、固定部材160(器具100(図2A及び図2B)のアーム130に結合するように構成されている)をフック状部材(形状設定のために熱処理フィクスチャを器具に一時的に結合することを容易にするように構成され得る)に置き換えるように修正され得る。追加的又は代替的に、解剖学的デジタルモデルは、歯肉を拡張又は肥厚するため、歯の1本以上を除去するため、及び/又は剛性を高めるために構造部品を追加するために修正され得る。いくつかの実施形態において、解剖学的デジタルモデルに部分的に基づく製造後の器具の部分(例えば、アンカ)が、器具が装着されたときに患者の歯肉に係合又は接触しないことを保証するために、歯肉を拡張又は肥厚し得る。その結果、本明細書に記載されるような解剖学的デジタルモデルを修正して、患者に、より痛みの少ない歯の再配置経験を提供し得る。
【0061】
プロセス300は、ブロック308に続き、器具のデジタルモデルを取得する。本明細書で使用される場合、「デジタルモデル」及び「モデル」という用語は、対象物又は対象物の集合の仮想表現を指すことを意図している。例えば、「器具のデジタルモデル」という用語は、器具の構造と形状の仮想表現を指し、その個々の構成要素(アンカ、アーム、付勢部分、アタッチメント部分など)を含む。いくつかの実施形態において、器具の実質的に平面状デジタルモデルは、少なくとも部分的に熱処理フィクスチャのデジタルモデル(及び/又はFTAのデジタルモデル)に基づいて生成される。いくつかの例によれば、FTA及び/又はOTAの1つ以上の部分に概ね対応する、輪郭付けられた、又は3D器具のデジタルモデルを最初に生成し得る。これは、熱処理フィクスチャのデジタルモデルの表面及びアタッチメント特性に適合する。いくつかの実施形態において、3D器具のデジタルモデルは、特定の患者がアームの特定の形状、寸法、又は他の特性を選択又は定義することなく、一般的なアーム部分及び固定部材を含み得る。次に、3D器具のデジタルモデルを平坦化して、実質的に平面状又は実質的に2D器具のデジタルモデルを生成し得る。次に、いくつかの実施形態において、アーム130の特定の構成(例えば、付勢部分150の形状、アンカ120に沿った位置(図1B)など)は、所望の力を加えて、対応する歯(アーム130が取り付けられる)をそのOTAからそのFTAに向けて付勢するように選択される。前述のように、いくつかの実施形態において、アームは、FTAにあるとき、実質的に静止しているか、又は実質的に無応力の状態になるように構成される。次に、選択されたアーム構成は、平面状の器具のデジタルモデルに置き換られ得る、あるいは、組み込まれ得る。
【0062】
ブロック310において、熱処理フィクスチャが製造され得る。例えば、熱処理フィクスチャのデジタルモデル(ブロック306)を使用して、熱処理フィクスチャは、上にある器具の形状設定用の加熱に耐えるように構成された適切な材料を使用して、鋳造、成型、3Dプリント、又は他の方法で製造され得る。
【0063】
ブロック312で、器具が製造され得る。いくつかの実施形態において、器具を製造することは、最初に、平面状の器具のデジタルモデルに基づく平面状の構成で器具を製造することを含む。例えば、平面状の器具は、金属のシート又は他の適切な材料から切り出され得る。いくつかの実施形態において、器具は、ニチノール又は他の金属のシートから、レーザ切断、ウォータジェット、スタンピング、化学エッチング、機械加工、又は他の適切な技術を使用して切り出される。材料の厚みは、器具の材料を、例えば、電解研磨、エッチング、研削、堆積、又は他の方法で操作することによって器具全体で変更され、所望の材料特性を達成し得る。
【0064】
いくつかの例によれば、平面状部材(例えば、金属薄板から切り出されたもの)は、所望の配置(例えば、FTA及び/又はOTAの1つ以上の部分に実質的に対応する)に曲げられるか又は他の方法で操作されて、輪郭付けられた器具を形成し得る。いくつかの実施形態において、平面状の器具は、ブロック310で製造した熱処理フィクスチャに平面状の器具を結合することによって、定位置まで曲げられ得る。例えば、器具のアームは、熱処理フィクスチャのフック部材に取り外し可能に結合され得て、また任意選択で、結紮線又は他の一時的な留め具を使用して、器具のアーム又は他の部分を熱処理フィクスチャに固定し得る。その後、得られるアセンブリ(すなわち、熱処理フィクスチャに締結された器具)を加熱して、器具を最終的な形状に形状設定し得る。いくつかの実施形態において、器具の最終形態は、FTA及び/又はOTAに対応し得る、又は実質的に対応し得る。例えば、器具が最終形態にあるとき、器具のアンカ部分はOTAからの歯肉に実質的に対応し得て、器具のアームはFTAの歯に実質的に対応する。その結果、器具はFTAで無応力の状態、又はほとんど無応力の状態になるように構成される。操作中、器具は患者の口内に装着され得る(例えば器具のアームを曲げ、あるいは操作して、患者の歯のブラケットに、OTAにある間に結合させることによる)。器具の形状設定とアーム及びアンカの形状により、アームは各歯をそのOTAからFTAに向けて付勢する傾向がある。
【0065】
器具及び熱処理フィクスチャを設計及び製造するためのプロセスの追加の詳細とさらなる例を以下に説明する。本明細書に開示される特定のプロセスは例示であり、所望の結果(例えば、器具によって各歯に加わる所望の力、最終的な器具の所望の材料特性など)を達成するために必要に応じて修正され得る。さらに、本明細書に開示される方法の様々な態様は一連のステップに言及するが、様々な実施形態において、ステップは異なる順序で実行され得て、2つ以上のステップを一緒に組み合わせることができ、特定のステップを省略でき、明示的に論じられていない追加のステップを必要に応じてプロセスに含み得る。
【0066】
本明細書に開示される方法のいくつかは、図4に概略的に示される製造システム400の1つ以上の態様を使用して実行され得る。システム400は、コンピューティングデバイス404に通信可能に結合された撮像デバイス402を含み得る。撮像デバイス402は、患者の歯、歯肉、及び他の歯の解剖学的構造の画像データ又は他のデジタル表現を取得するように構成された任意の適切なデバイス又はデバイスの集合を含み得る。例えば、撮像デバイス402は、光学走査デバイス(例えば、ITERO、3SHAPEなどによって市販されるもの)、コーンビームコンピュータ断層撮影スキャナ、又は任意の他の適切な撮像デバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、撮像デバイス402は、患者の解剖学的構造(例えば、OTA)のデジタル表現を取得するための任意の適切なデバイスであり得、たとえ、そのようなデジタル表現が患者の解剖学的構造に基づいておらず、患者の解剖学的構造をグラフィック表現できなくてもよい。
【0067】
コンピューティングデバイス404は、ソフトウェア及びハードウェアの任意の適切な組み合わせであり得る。例えば、コンピューティングデバイス404は、専用コンピュータ又はデータプロセッサを含み得て、それは本明細書で詳細に説明される1つ以上のコンピュータ実行可能命令を実行するように特別にプログラム、構成、又は構築される。追加的又は代替的に、コンピューティングデバイス404は、タスク又はモジュールが遠隔処理デバイスによって実行される分散コンピューティング環境を含むことができ、これらは、通信ネットワーク(例えば、無線通信ネットワーク、有線通信ネットワーク、セルラ通信ネットワーク、インターネット、短距離無線ネットワーク(例えば、ブルートゥース(登録商標)を介して))を介してリンクされる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールはローカルメモリストレージデバイスと遠隔メモリストレージデバイスの両方に配置され得る。
【0068】
本技術の態様の下でのコンピュータ実装命令、データ構造、及び他のデータは、コンピュータ可読記憶媒体上に記憶又は分散され得て、磁気的又は光学的な可読コンピュータディスクを、半導体メモリ、ナノテクノロジメモリ、有機又は光メモリ、あるいは他のポータブル及び/又は非一時的なデータ記憶媒体上に、マイクロコードとして含んでいる。いくつかの実施形態において、本技術の態様は、インターネット又は他のネットワーク(例えば、ブルートゥースネットワーク)を介して、伝播媒体(例えば、電磁波(複数可)、音波)上の伝播された信号上で、ある期間にわたって分散され得る、あるいは任意のアナログ又はデジタルネットワーク(パケット交換、回線交換、又は他のスキーム)で提供され得る。
【0069】
システム400はまた、コンピューティングデバイス404に結合された、1つ以上の入力デバイス406(例えば、タッチスクリーン、キーボード、マウス、マイクロフォン、カメラなど)及び1つ以上の出力デバイス408(例えば、ディスプレイ、スピーカなど)を含み得る。操作中、ユーザは、コンピューティングデバイス404に命令を供給し、入力及び出力デバイス406及び408を介してコンピューティングデバイス404から出力を受け取る。
【0070】
図4に示すように、コンピューティングデバイス404は、1つ以上の製造システム410(製造機を含む)に接続され得て、本明細書に記載されるように、器具、熱処理フィクスチャ、及びそれらの他の任意の構成要素や関連するツールを製造する。コンピューティングデバイス404は、限定するものではないが、直接電子接続、ネットワーク接続などを含む、任意の適切な通信接続によって製造システム(複数可)410に接続され得る。代替的に、又はさらに、接続は、製造システム410へ、コンピューティングデバイス404からのデータが格納されている物理的で非一時的な記憶媒体の配信によって提供され得る。
【0071】
歯科矯正器具及びフィクスチャの設計方法
図5は、歯科矯正器具を設計するためのプロセス500の流れ図である。プロセス500は、ブロック502で始まり、元の歯の配置(OTA)を特徴付けるデータを取得する。例えば、図6に示されるように、OTAデータは、患者の歯を、口内光学スキャナ600を使用して走査することによって取得され得る。このようなスキャナ600を使用して、患者の上歯と下歯の両方を走査して、それぞれの3Dモデルを生成し得る。走査は、任意の適切な技術、例えば、歯科用コーンビームCTスキャナ、又は磁気共鳴撮像(MRI)、あるいは同様のデバイス又は技術を使用して実行され得る。様々な例において、OTAデータは、歯の根及び露出部分に関連付けられているデータを含むことができ、適切な歯科矯正器具を設計するのに有用であり得る。いくつかの例では、OTAデータは、患者の上顎及び下顎で作製された印象を使用して取得し得る(例えば、ポリビニルシロキサン又は他の適切な印象材を使用して)。次に、印象が走査されて、3Dデータを作成でき、このデータには、上顎と下顎の関係を含有し得る(例えば、患者の咬合を記録するため)。印象を使用する例では、上下の歯の配置弓の歯の関係(歯の配置弓間の関係)は、患者のワックスバイトを中心位でとることで取得され得る。様々な実施形態において、OTAデータは、直接(例えば、適切な撮像デバイスを使用して患者の口を撮像することによって)、又は間接的に(例えば、オペレータ又は別のソースから既存のOTAデータを受信することによって)取得し得る。
【0072】
図5に戻って、プロセス500は、ブロック504でOTAのデジタルモデルを取得することに続く。図7は、OTAのデジタルモデル700の例のグラフィック表現である。デジタルモデル700は、元の歯の配置における患者の歯及び歯肉の配置を仮想的に表現又は特徴付けることができる。図7に見られるように、OTAの歯は、不正咬合、歯の配置不正、叢生歯、あるいは歯科矯正を必要とする場合がある。いくつかの実施形態において、OTAに存在する1本以上の歯は、歯科矯正器具を使用する前に抜歯するように指定され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、OTAデータに対応するOTAのデジタルモデルを取得することは、最初に、患者の顎の単一の複合3Dデータベースを取得することを含み得て、それは次にセグメント化され、患者の歯を別々の3Dボディ(例えば、個々の歯又は複数の歯のブロック)に分離し、それはオペレータによって仮想的に操作され得る。このようなセグメンテーションは、任意の適切な技術又はソフトウェア、例えば、iROK Digital Dentistry Studio、又は他の適切なソフトウェアを使用して実行され得る。セグメンテーションに続いて、結果として得られる3Dデータベースの上下の歯は、歯肉のモデルと各歯の独立したモデルを含み得る。その結果、OTAデータはオペレータによって操作され、歯を歯肉に対して仮想的に動かし得る。本明細書の他の場所でより詳細に説明されるように、歯は、OTAから最終的な歯の配置(FTA)に向かって操作され得る。図8は、例示的な最終的な歯の配置(FTA)を示す。図8に見られるように、FTA内の歯は、OTAと比較して、より歯の配置が整合され、不正咬合が少なく、あるいは、審美的及び機能的に改善され得る(例えば、デジタルモデル700に反映されるように)。いくつかの実施形態において、FTAは、例えば、オペレータの処方に基づいて、所望の又は好ましいアーチ間及びアーチ内の配置を有し得る。例えば、上顎又は下顎(又は両方)の1本以上(又は全部)の歯は、それらの咬頭が適切に噛み合い、嵌合するまで動かされる。
【0074】
図5に戻ると、プロセス500は、ブロック506に続き、固定部材のデジタルモデル(複数可)を取得する。前に説明したように、固定部材(例えば、固定部材160、ブラケットなど)を患者の歯に結合して、歯科矯正器具(例えば、器具10)をそれに嵌合させ得る。固定部材のデジタルモデルは、固定部材(複数可)の形状及び/又は他の構造的特徴の仮想表現を含み得る。様々な実施形態において、固定部材のデジタルモデルは、各固定部材について同一であり得るか、又は固定部材間で異なってもよい。例えば、異なる固定部材は、切歯よりも臼歯で使用され得る。図9は、固定部材のデジタルモデル900の例を示す。
【0075】
図5を引き続き参照すると、プロセス500は、ブロック508に続き、固定部材が取り付けられたOTAのデジタルモデルを取得する。例えば、固定部材のデジタルモデル900(図9)は、OTAのデジタルモデル700(図7)内の患者の歯の適切な位置に適用され得る。得られたデジタルモデル1000は図10に示され、固定部材900の複数のデジタルモデルが、患者の歯の舌側表面に沿って配設される。いくつかの実施形態において、デジタルモデル1000では、患者の歯のそれぞれは、それに結合された固定部材を有し得る。前述のように、歯科矯正器具は、患者の歯に取り付けられた固定部材(例えば、ブラケット)に結合されるように構成されたアタッチメント部分を有する複数のアームを含み得る。
【0076】
いくつかの例では、固定部材のデジタルモデル900は、適切なソフトウェア(例えば、iROK Digital Dentistry Studio)を使用して、OTAの歯に仮想的に配置され得る。いくつかの実施形態において、固定部材を仮想的に配置することは、特定の固定部材の仮想モデルを利用可能な固定部材のライブラリから選択し、次に選択された固定部材を1本以上の歯に配置することを含み得る。いくつかの実施形態において、ブラケットの位置決めは、自動的に(例えば、ブラケットを歯の中心又は予め規定された部分に自動的に配置することによって)、又は手動で(例えば、オペレータが各固定部材のためのアタッチメント位置を選択及び/又は操作することによって)配置され得る。いくつかの実施形態において、各固定部材の位置は、要望に応じてオペレータによって微調整され得る。例えば、固定部材を可能な限り歯肉の近くに配置し、口が閉じているときに、他方の顎の固定部材との干渉、又は他方の顎の歯との干渉を回避することが望ましい場合がある。
【0077】
いくつかの実施形態において、OTA内の歯及びそれに取り付けられた固定部材を備えたデジタルモデル1000を使用して、ボンディングトレイの構成を決定することができ、次に、これを使用して、固定部材をオペレータによって患者の歯に物理的に取り付け得る。例えば、ボンディングトレイは、アライナと同様に患者の歯に嵌合するように構成され得て、各歯の側面に凹部を含むことができ、それらは適切な固定部材(例えば、ブラケット)をその中に受け入れるようにサイズ設定及び構成される。様々な実施形態において、そのような凹部は、対応するブラケットを結合しようとする歯の舌側、頬側、近心/遠位、咬合、歯根、又は任意の適切な表面上に配置され得る。操作中、適切な固定部材は各凹部に配置され得て、次に接着剤(例えば、紫外線によって照射されると硬化する接着剤)が各固定部材の結合面に塗布され得る。次に、トレイが患者の歯の上に置かれ、接着剤が硬化されて、全ての固定部材を各歯の適切な位置に結合し得る。
【0078】
そのようなボンディングトレイを生成するために、デジタルモデル1000を使用して、固定部材が取り付けられた状態でOTAの歯を特徴付けることができる。デジタルモデル1000をさらに操作して、例えば、余分な仮想歯肉を除去し、トレイのサイズを制限して、固定部材を患者の歯に対して所定の位置に保持するために必要なもののみにし得る。次に、トリミングされたデジタルモデルを使用して、固定部材が配設された患者の歯の物理的3Dモデルを、例えばポリマ樹脂での3Dプリント又は他の適切な技術を用いて生成し得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、次に、適切な材料(例えば、透明なポリマ樹脂)は、OTA内に固定部材を備えた状態で、患者の歯の物理的モデル上に形成(例えば、熱形成)され得る。これにより、固定部材を受け入れるように成形及び構成された凹部を備えたアライナ状のトレイを作成し得る。次に、固定部材はトレイの対応する凹部に配置され得て、トレイは硬化性接着剤を使用して患者の歯に適用され、固定部材をOTAの患者の歯に取り付け得る。次に、トレイは、固定部材を所定の位置に残した状態で取り外され得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、ボンディングトレイは、患者の歯の物理的モデルを必要とせず、また熱形成を使用することなく、直接的に3Dプリントされ得る。例えば、ボンディングトレイのデジタルモデルは、固定部材が取り付けられた状態でOTAの歯を特徴付けるデジタルモデル1000から導出され得る。いくつかの実施形態において、デジタルモデル1000のネガが生成され、トリミングされて、デジタルモデル1000の歯及び固定部材に対応する表面を備える一般的なトレイ状構造を提供し得る。得られたモデルを操作して、対応する凹部にブラケットを保持するための特徴を設けることができる。最後に、ボンディングトレイは、このデジタルモデルに基づいて3Dプリントされ得て、例えば3Dプリント可能なポリマ樹脂もしくは他の適切な材料を用いるか、又は堆積技術を使用する。
【0081】
代替的に、オペレータは、トレイの支援なしに、固定部材を患者の歯に直接取り付け得る。
【0082】
図5に戻ると、プロセス500は、ブロック510に続き、固定部材900が取り付けられたFTAのデジタルモデル1100(図11)を取得する。例えば、固定部材900のモデルが取り付けられたOTAの歯のデジタルモデル1000(図10)を使用して、FTAのデジタルモデル1100(図11)を生成し得る。いくつかの実施形態において、デジタルモデル1000を操作して、FTAに歯を配置し得る。
【0083】
FTAのデジタルモデル1100は、FTAの歯を特徴付けるデータに少なくとも部分的に基づいて導出され得る。このようなFTAデータには、患者の歯の相互及び歯肉に対する、所望の最終位置と向きのデジタル表現を含めることができる。FTAデータは、直接取得することができ(例えば、オペレータによって生成される)、又は外部ソースから受信され得る(例えば、FTAデータは、第三者によって生成され、適切な歯科矯正器具の設計のためにオペレータに提供され得る)。
【0084】
いくつかの実施形態において、FTAデータは、OTAデータを操作して患者の歯を仮想的に動かすことによって取得され得る。適切なソフトウェア、例えばiROK Digital Dentistry Studioは、オペレータによって使用されて、歯を所望のFTAに動かし得る。いくつかの実施形態において、OTAに対する歯の仮想的な動きはまた、OTAに対する歯肉の動きを生じて、歯肉の自然な外観を維持し、歯がFTAに位置するときの歯肉の向き及び位置をより正確に反映する。歯肉のこの動きは、歯肉モーフィング又は他の適切な技術を使用して達成され得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、FTAは、治療プロセスの一部として起こり得る患者の歯への変化を反映し得る。例えば、オペレータは患者の1本以上の歯を抜く場合があり、それは、全ての歯がアーチに収まるためのスペースが不足しているため(又は他の理由)であり、治療の一部とされる。その場合、抜いた歯はFTAデータから除外され得る。オペレータが、スペースの不足のために歯を小さくする必要があると判定した場合は、隣接歯間整復(IPR)が患者に行われることもある。この場合、FTAでの歯のストリッピングとサイズの縮小は、オペレータが行うIPRと一致するように実行され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、提案されたFTAは、オペレータによって展開され(例えば、独立して、又は全体的若しくは部分的に治療する歯科矯正医からの入力に基づいて)、次にレビューとコメントのために治療する歯科矯正医に送られ得る。治療する歯科矯正医にコメントがある場合、彼女は、オペレータに、電子的又は他の方法で送信され得る入力(例えば、書面によるメモ、1本以上の歯又は固定部材の提案された操作など)を提供し得る。次に、オペレータはFTAを修正し、修正提案されたFTAを、さらなるレビューとコメントのために治療する歯科矯正医に送り返してもよい。この反復プロセスは、治療する歯科矯正医が提案されたFTAと、結果として得られるデジタルモデル1100とを承認するまで繰り返され得る。
【0087】
追加的又は代替的に、FTAのデジタルモデル(例えば、図8に示されるような)は、適切な位置で歯に結合された固定部材900のデジタルモデルを有するように操作され得る。いくつかの実施形態において、それぞれの歯に対する各固定部材の相対位置は、デジタルモデル1000(図10)から取得又は導出され得て、デジタルモデル1000では固定部材がOTA内の歯に取り付けられている。いくつかの実施形態において、固定部材は、最初に、デジタルモデル1100(図11)を生成するためにFTAの歯に配置され得、このモデルを用いてデジタルモデル1000(図10)を、例えば、デジタルモデル1100を操作して歯をOTAに動かすことによって生成し得る。
【0088】
図5に戻って参照すると、プロセス500は、ブロック512に続き、OTAとFTAとの間の個々の歯又は歯のグループの変位を判定する。例えば、OTAとFTAとの間の各歯の変位は、6つの自由度を使用して記述され得る(例えば、X、Y、及びZ軸に沿った並進と、同じ3つの軸の周りの回転、又は代替的に、近遠心、頬舌、及び/又は咬合面歯肉方向に沿った並進と、頬舌根トルク、近遠心角形成の形での回転、及び/又は近心アウトイン回転)。いくつかの実施形態において、これらの値は、FTAデータとOTAデータにおける各歯の位置の間の差を計算することによって決定され得る。これは、各顎の各歯に対して実行されて、各歯について6つの自由度に沿った必要な変位を含むデータセットを生成し得る。
【0089】
プロセス500は、ブロック514において、熱処理フィクスチャのデジタルモデルを取得することで継続する。図12は、OTAデジタルモデル700(図7)、FTAデジタルモデル800(図8)、固定部材が取り付けられたOTAデジタルモデル1000(図10)、及び/又は固定部材が取り付けられたFTAデジタルモデル1100(図11)を操作することによって生成され得る例示的なフィクスチャのデジタルモデル1200を示している。例えば、デジタルモデル(複数可)700、800、1000、1100は、器具の製造に使用するためのフィクスチャ(例えば、熱処理フィクスチャ)のデジタル表現を生成するために操作され得る。デジタルモデル(複数可)700、800、1000、1100は、多くの方法で操作して、適切なフィクスチャデータを生成し得る。いくつかの実施形態において、このような操作は、適切なソフトウェア、例えばAudodesk(登録商標)によるMeshMixerを使用して実行し得る。
【0090】
いくつかの例では、デジタルモデル(複数可)1000、1100における固定部材は、それぞれが器具のアームに結合するように構成され、器具をフィクスチャに一時的に固定することを容易にする適切な固定部分1202で修正され得る又は置き換えられ得る。追加的又は代替的に、固定部分1202をデジタルモデル700、800に追加し得る。例えば、ブラケット状の固定部材は、器具100のアタッチメント部分140と嵌合するように構成された水平チャネル1204及び垂直チャネル1206の両方を含む固定部分1202と交換され得る。複数の突起1208は、固定部分1202の1つ以上の側面に沿って配設され得る。一緒に、チャネル1204及び1206と突起1208は、それを通して結紮線又は他の留め具を受け入れるように構成された構造を設けることができる。例えば、オペレータは、器具100をフィクスチャに結合し、次に、結紮線を水平チャネル1204に通して、隣接する突起1208の間のスペース内で巻き付けて、器具100をフィクスチャに対して所定の位置に保持し得る。追加的又は代替的に、水平チャネル1204は、例えば、そこにアタッチメント部分140を受け入れると同時に、そこを通して結紮ワイヤ又は他のファスナを受け入れるために十分な深さの(例えば、デジタルモデル(複数可)1000、1100の固定部材900の対応するチャネルより深い)器具100のアタッチメント部分140と嵌合するように構成され得る。いくつかの実施形態において、垂直チャネル1206は、器具100のアタッチメント部分140の一部分と嵌合するように構成され得る。その結果、単一のアタッチメント部分140が水平チャネル1204内に部分的に受容され、垂直チャネル1206内に部分的に受容され得る。突起1208は、結紮線又は他の細長い留め具を受け入れるように構成された溝又は凹部をさらに規定し得る。フィクスチャモデル1200はまた、各固定部分1202内に貫通チャネル又は開口を規定し得る。これらの貫通チャネルにより、熱処理が完了し、結紮線又は他の留め具が取り外された後に、押しツールを、固定部分1202の背面から(例えば、フィクスチャモデル1200の頬側表面を通して)挿入することが可能になり、アタッチメント部分40を固定部分1202から離れる方向に押すことができる。
【0091】
追加的又は代替的に、デジタルモデル(複数可)700、800、1000、1100は、歯肉の形状又は構成を変更するために操作され、フィクスチャモデル1200を生成し得る。器具を装着する際、器具のいずれかの部分部が歯肉に当たると、患者はかなりの不快感を抱く可能性がある。したがって、患者の歯肉に当たることなく、歯肉に密着する器具を設計することが望ましいと思われる。いくつかの実施形態において、これは、デジタルモデル(複数可)700、800、1000、1100の歯肉を拡張してフィクスチャモデル1200を生成することによって達成し得る。例えば、デジタルモデル(複数可)700、800、1000、1100における歯肉の舌側表面は、所定の量(例えば、約1.5mm未満、約1.4mm未満、約1.3mm未満、約1.2mm未満、約1.1mm未満、約1.0mm未満、約0.9mm未満、約0.8mm未満、約0.7mm未満、約0.6mm未満、約0.5mm未満、約0.4mm未満、約0.3mm未満、約0.2mm未満、又は約0.1mm未満)だけ(例えば、より舌側に移動して)拡張し得ると考えられる。このように、器具がフィクスチャデータの表面を使用して生成される場合(例えば、器具100は、以下でより詳細に説明するように、フィクスチャモデル1200の舌側表面の一部分に実質的に対応するように成形され得る)、器具は、患者の歯肉に当たらずに歯肉から短距離だけ離れて静止するようにサイズ設定及び構成され得る。
【0092】
ブロック514を引き続き参照すると、固定部材が取り付けられていないデジタルモデル(複数可)700、800及び/又は固定部材が取り付けられたデジタルモデル(複数可)1000、1100は、器具の熱処理に不要な歯又は他の構造要素を除去し、及び/又は熱処理プロセス中に十分な剛性を得るためにフィクスチャを補強する構造的特徴を追加するように操作し得る。例えば、図12に示すように、フィクスチャモデル1200は、歯を含まないが、歯肉表面1210の少なくとも一部分を保持する。追加的に、フィクスチャモデル1200は、結果として得られるフィクスチャの剛性を高め得る安定化クロスバー1212を含む。デジタルモデル(複数可)700、800、1000、1100に他の様々な修正を加えて所望の熱処理フィクスチャモデル1200を実現し得る。
【0093】
図5に戻ると、プロセス500は、ブロック516に続き、器具のテンプレートのデジタルモデルを取得する。図13は、器具のテンプレートのデジタルモデル1300の例を示しており、ここでは、フィクスチャモデル1200と嵌合した構成で表される。
【0094】
モデル1300は、アンカ部分1302、アーム部分1304、及びアタッチメントバー部分1306を規定する。これらの構成要素は、(図15に関して以下でより詳細に説明されるように)後で特定の患者に対してカスタマイズされる、器具用の一般化されたテンプレートの形状をとることができる。例えば、アンカ部分1302は、完成した器具のアンカ120に対応し得、アーム部分1304は、完成した器具のアーム130のプレースホルダとして機能し得る。アタッチメントバー部分1306は、アーム130のそれぞれを接続する連続ストリップの形状をとる。図13に示されるように、アーム部分1306は、フィクスチャモデル1200の固定部分1202のチャネル1204内で受容されるように構成され得る。アタッチメントバー部分1306は、完成した器具のアーム130のアタッチメント部分140の部分に部分的に対応し得る。
【0095】
様々な実施形態において、器具のテンプレートのデジタルモデル1300は、フィクスチャモデル1200の表面データを使用して生成され得る。例えば、器具のテンプレートのデジタルモデル1300は、実質的にフィクスチャモデル1200の表面、例えば、患者の歯肉を特徴付けるデータから導出されるフィクスチャモデル1200の輪郭に対応するアンカ部分1302、に対応するように構成され得る。以前に述べたように、熱処理フィクスチャモデル1200は、OTAモデル1100に関して、とりわけ歯肉を拡張することによって修正され得る。したがって、アンカ部分1302がフィクスチャモデル1200の歯肉部分と接触するとき、アンカ部分1302は、OTAモデル700で特徴付けられるように、実際の歯肉からわずかに離間されるように配置され得る。いくつかの実施形態において、器具のテンプレートモデル1300は、厚み寸法がなくてもよく、代わりに、フィクスチャモデル1200の輪郭に続く3次元表面に対応し得る。いくつかの実施形態において、器具のテンプレートモデル1300は、少なくともある程度の厚みを有し得る。
【0096】
ブロック518では、器具のテンプレートのデジタルモデル1300は、平面状の器具のテンプレートモデル1400(図14)を生成するために平坦化され得る、あるいは、操作され得る。平面状のテンプレートモデル1400は、2次元又は実質的に平面状データに反映され得て、それは輪郭付けられた器具のテンプレートモデル1300に対応するか、又は少なくともそれから導出される。例えば、器具のテンプレートのデジタルモデル1300(図13)は、デジタルモデル1300を平坦化、平面化、又は他の方法で変換することによって、平面状の器具のテンプレートモデル1400(図14)に変換し、平面状の器具のテンプレートモデル1400を生成し得る。このような変換は、プロセッサシステムと、適切なソフトウェア、例えば、ExactFlat(登録商標)、Solidworks(登録商標)、Autodesk(登録商標)Inventor、Creo(登録商標)、又は他の適切なソフトウェアを使用して実行され得る。
【0097】
ブロック520で、平面状の器具のデジタルモデルが取得される。平面状の器具モデル1500の例は図15に示される。この段階では、器具のアームの特定の形状及び構成は、平面状テンプレートモデル1400(図14)の部分又は構成要素を修正又は置換することによって決定され得る。例えば、器具のアームの特定の寸法、形状、及び材料特性は、ブロック512で決定された所望の変位を達成するために必要な力及び/又はトルクを加えるように選択され得る。いくつかの実施形態において、アーム設計の事前入力されたライブラリを使用して、適切な設計及び構成を選択し、所望の変位を達成し得る。いくつかの実施形態において、事前入力されたアーム設計のライブラリは、有限要素解析(FEA)又は他の技術を使用して解析され、そのようなアームが加えるばね力を、特定の量(例えば、FTA(アームが静止する場合)とOTAとの間の偏向量)だけ偏向された場合に決定し得る。いくつかの実施形態において、特定のアーム設計の完全に又は部分的に自動化された選択は、関連する基準に基づきオペレータによってレビュー及び/又は修正され得る。例えば、提案されたアーム設計が重なり合う、又は他の方法で干渉するアームを含む場合、オペレータは、アームの形状及び/又は構成を手動で調整し得る。
【0098】
決定された変位に基づいて、各歯をOTAからFTAに動かすために必要な力及び/又はトルクが決定され得る。歯を動かすのに必要な力は、一般的にセンチニュートンの範囲であり、動く距離は通常ミリメートルの範囲である。歯を回転させるように作用するモーメントの量(ニュートンミリメートル)は、加えられた力の大きさに力アームを掛けることによって求められ得る。一般的に、変位は、並進運動と回転運動の両方を組み合わせた3Dの歯の動きであり得る。
【0099】
FTAを達成するために必要とされる力及び/又はトルクは、患者の解剖学的構造、例えば、動かされる特定の歯のサイズ、歯根の解剖学的構造などに依存し得る。力及び/又はトルクは、他の生理学的パラメータ(例えば、骨密度、生物学的決定因子、性別、民族性、顎(上顎又は下顎)、動いている歯の周りの周囲の組織(唇、舌、歯肉、骨など)の機械的特性)にも依存し得る。所与の歯に加えられる特定の力及び/又はトルクはまた、固定部材(例えば、ブラケット)の特定の位置決めに依存し得る。例えば、歯の抵抗中心からさらに離れて配置された固定部材は、所与の加えられた力の下で、歯の抵抗中心の近くに配置された固定部材よりも、より多くのトルクを生成し得る。所望の変位(例えば、6つの自由度に沿った)、患者の解剖学的構造、及び固定部材の位置に基づいて、特定のアーム構成は選択され得て、対象の歯に所望の力及び/又はトルクを生成し、歯をOTAからFTAに動かす。歯科矯正器具のアーム及び他の構成要素の適切な厚み、幅、形状、及び構成を決定することにより、適切な歯に力及びトルクを加えて、歯をFTAに動かす器具構成が決定される。
【0100】
特定の例では、器具の設計は、限定するものではないがCADソフトウェアなどのプロセッサシステムと適切な設計ソフトウェアを用いてオペレータによって実行され得て、例えば、限定するものではないが、Solidworks(登録商標)、Autodesk(登録商標) Inventor、Creo(登録商標)等である。FEAソフトウェア、例えば、限定するものではないが、Abaqus、Ansysなどを使用して、ばね及びアームを設計して、所望の又は最適な力を歯に加えてもよい。例えば、そのようなソフトウェア及び処理システムを使用して、各アームの厚み、切断幅、長さ、及び全体的な設計を、アームが接続されている歯の動きに少なくとも部分的に基づいて、設計及び変更し得る。
【0101】
いくつかの例では、歯をより長い距離で変位させる必要がある場合、又は歯がより小さい場合(例えば、下部切歯)、アーム130は、より可撓性であるように設計され得る。いくつかの実施形態において、アーム130の選択又は設計は、方向に基づく歯の動き速度の変動を説明し得る。所与の力が歯に加えられたときの歯の動き速度が、動く方向によって異なることは既知である。例えば、エクストルージョンは所与の力に対して最も速い動きであり、イントルージョンは最も遅く、近遠心及び頬舌方向の動きはこれら両極端の間のどこかである。一例では、同じ加えられた力の下で歯が月に2mm、咬合方向に、月に1mm、遠位方向に動く場合、咬合方向の動きは遠位の動きよりも速いため、歯は直線的に動かない。咬合方向の動きが最初に終了し、次に歯はそこから遠位方向に、そのモーションが完了するまで直線的に動く。特定の軌道で歯を動かすことが望ましい場合があり、そのため、遠位方向に加わる力は、咬合方向に加わる力とは異なる場合がある。例えば、歯を直線的に動かすことが望ましい場合があり、したがって、遠位方向の力は、OTAからFTAへの直線軌道をもたらすために、咬合方向の力よりも大きくなる必要があり得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、アーム130は、骨吸収、歯根吸収、又はアタッチメントロスなどの歯周病の問題のために、歯の一部又は全てに、より少ない力をかけるように設計され得る。各歯に加わる力又はトルク(又はその両方)をカスタマイズする能力は、従来の歯科矯正に比べて大きな利点を提供し得る。特定の例では、コンピュータ支援手順は、アルゴリズムを使用して、器具のアーム又は他の特徴を、例えば、1つ以上の事前定義されたオプションのセット又は1つ以上のオプションの範囲から選択又は構成する。したがって、例えば、オプションのセット又はオプションの範囲は、アーム又は他の特徴に関連付けられている1つ以上のパラメータに対して事前定義され得る。
【0103】
アーム130に関連付けられている1つ以上のパラメータは、限定するものではないが、アームの全長、付勢部分150の形状又は構成、アタッチメント部分140の形状又は構成、アーム130の1つ以上のセクションの幅寸法、アーム130の1つ以上のセクションの厚み寸法などを含み得る。
【0104】
平面状の器具のデジタルモデル1500を取得することはまた、アンカ120の形状及び構成を決定することを含み得る。例えば、アンカ120は、患者の歯肉に当たることなく実質的に歯肉に一致するように選択され得る。アンカ120の厚み、深さ、又は他の特性もまた、アームによって生成される力に対して十分な剛性を備えるように選択され得る。いくつかの実施形態において、アンカ120の設計は、自動的に生成され得る(例えば、FTAモデル(例えば、モデル1100)又はOTAモデル(例えば、モデル700又は1000)における患者の歯肉又は他の位置に実質的に一致するように自動的に生成されることによって)。いくつかの実施形態において、オペレータは、要望に応じて、アンカの設計及び構成を手動で選択又は修正し得る。
【0105】
図示の実施形態では、アーム130の特定の特徴は、器具モデルが実質的に平面状又は2Dの形状である間に選択されるが、他の実施形態では、器具の特徴は、患者の解剖学的構造に対応するように輪郭付けられたデジタルモデルに基づいて選択及び構成され得る。例えば、3D器具のテンプレートモデル1300(図13)は、特定のアーム130、アンカ120、又はそれらの任意の態様を選択して、所望の器具を達成するように修正され得る。いくつかの実施形態において、テンプレートは完全に省略され、カスタマイズされた器具モデルは、介在するテンプレートモデルを使用せずに、OTAモデル及び/又はFTAモデルに基づいて生成される。
【0106】
いくつかの実施形態において、平面状の器具モデル1500は2Dであり得る。その結果、モデルは、器具の厚みを規定しない。このようなモデルを使用して、例えば、器具をシート材料から切り出し得る。このような場合、厚みは、シート材料を選択し、研磨、エッチング、研削、堆積、又は器具の最終的な厚みを変更するために使用される他の技術によって決定され得る。いくつかの実施形態において、平面状の器具モデル1500は、厚み寸法を、実質的に平面状又は平坦の状態において規定し得る。例えば、平面状の器具モデル1500は、器具の厚みを規定でき、それは均一であってもよく、又はアンカ120及びアーム130の一部又は全てにわたって変化してもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、3D又は輪郭付けられた器具モデルは、例えば、平面状の器具モデル1500を湾曲した、又は輪郭付けられた構成に操作することによって生成され得る。いくつかの実施形態において、3D器具モデルは、(例えば、平面状の器具モデル1500を、OTAモデル1000(図10)の固定部材900の位置データを使用して操作することによって、又は平面状の器具モデル1500を、FTAモデル1100(図11)の固定部材900の位置データを使用して操作することによって)OTAの歯に装着された器具に対応し得る。
【0108】
ブロック516、518、及び520を一緒に参照すると、いくつかの例では、コンピュータ支援手順を使用して、器具のアーム、アンカ、及び/又は他の任意の特徴の形状及び構成を選択又は決定し得る。この手順は、1つ(又は複数)のアーム、固定部材、アンカ、又はそれらのパラメータ、あるいは器具の他の任意の態様を、1つ以上の入力データに基づいて選択するように構成され得る。例えば、入力データは、限定するものではないが、歯のタイプ(例えば、臼歯、犬歯、切歯など)、又は歯のサイズを含み得る。大きな歯(臼歯など)は、小さな歯(切歯など)よりも大きな力を提供するために、より大きなアーム、より大きな、より幅広い、又はより厚いループ又は湾曲特徴を必要とする場合がある。追加的又は代替的に、入力データは、1本以上の歯の歯根膜(PDL)のサイズを含み得る。PDLのサイズは、例えば、限定するものではないが、CBCT走査、又は他の撮像技術を含む任意の適切なプロセスによって取得され得る。他の入力データには、限定するものではないが、3次元空間内の1本以上の歯に加わる力の数、又は方向が含まれる場合がある。例えば、所望の歯の動き方向は、異なる歯の動き方向に必要な形状又は構成とは異なるアームの1つ以上の形状又は構成を必要とし得る。他の入力データには、限定するものではないが、1本以上の歯に加えられる回転力(又はトルク)の数又は方向が含まれ得る。例えば、回転方向での所望の歯の動きは、異なる歯の動き方向に必要な形状又は構成とは異なるアームの1つ以上の形状又は構成を必要とし得る。追加的に、いくつかの実施形態において、2つ以上のアームは、各アームが別個の固定部材に結合されるか、又は2つのアームが同じ固定部材に結合されるかのいずれかで、単一の歯に取り付けられ得る。そのような場合、入力データは、各歯に結合されたアーム及び/又は固定部材の数を含むことができ、代替的に、アーム及び/又は固定部材の数は出力データとして生成され得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、このコンピュータ支援手順は、アルゴリズムを含み得て、このアルゴリズムは入力として、(限定するものではないが)(a)OTAからITA又はFTAへ、あるいはITAから別のITA又はFTAへの最大3つの並進及び最大3つの回転移動、(b)各歯の、歯根膜(PDL)の表面、又は歯根の範囲、(c)患者の骨密度、(d)例えば、唾液、歯肉液(GCF)、血液、尿、粘膜、又は他のソースから取得される生物学的決定因子、(e)患者の性別、(f)患者の民族性、(g)器具が装着される顎(上顎又は下顎)、(i)器具が装着される歯の数、及び(j)動かされる歯の周りの組織(唇、舌、歯肉)及び骨の機械的特性のうちの1つ以上を表す1つ以上の値を含む。様々な実施形態において、そのような入力の1つ以上は、各歯をOTAからFTAに、又はFTAに向かって動かすのに必要な力(例えば、大きさ、方向、接触点)に影響を及ぼし得る。
【0110】
他の例では、他の適切な入力データが使用され得る。コンピュータ支援プロセスは、適切な非一時的なソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせでプログラム又は構成されたコンピュータを使用して、出力(1つ以上の選択されたアーム構成、アンカ構成、又は固定部材構成など)を、1つ以上の入力データに基づき生成する。
【0111】
そのような入力に基づいてコンピュータ支援手順によって生成される出力は、限定するものではないが(a)アームの設計、(b)そのようなアームの1つ以上の幅又は切断幅、(c)器具全体の器具の任意の部分の厚み寸法、(d)そのようなアームの機械的特性で、限定するものではないが、可撓性の量、又は付勢力若しくは弾性の大きさを含む、(e)アンカの設計、(f)アンカの幅又は厚み、(g)アームとアンカとの間の接続位置、及び/又は(h)器具の1つ以上(又は各)セクションにおけるニチノール(又は他の材料)の変態温度のうちの1つ以上を含み得る。前に述べたように、いくつかの実施形態において、出力は、事前入力されたアンカ及び/又はアームのライブラリの中から選択された特定の構成を含み得る。例えば、入力に基づいて、所望の力(例えば、大きさ及び方向)が各歯について決定され得る。所望の力に基づいて、適切なアンカ部材及び/又はアーム構成が選択され得て、それは所望の力又はその適切な近似を提供する。いくつかの実施形態において、器具の構成(上記の出力のいずれかを含む)は、事前入力されたライブラリとは独立して生成され得る。いくつかの実施形態において、出力の生成は、有限要素解析(FEA)又は他の技術を使用して暫定的な選択又は設計を解析し、性能パラメータ、例えば、特定の量(例えば、FTA(アームが静止しているとき)とOTAとの間の偏向の量)だけ偏向されたときに、当該アームが加えるばね力を決定することを含み得る。
【0112】
特定の例では、コンピュータ支援プロセスを使用して、所与の患者ごとにカスタマイズされた器具を作製し得る。他の例では、器具は、人口集団に基づいて、複数の事前定義されたサイズ、形状、構成などで作製され得る。したがって、半カスタマイズされた様々なサイズ、形状、又は構成を構成して、人口集団のそれぞれ異なる選択された部分に適合させ得る。このようにして、異なるサイズ、形状、及び構成を有する器具をより限定された数だけ作成して、人口集団の比較的大きい部分に対応させ得る。
【0113】
アーム及びアンカの決定された形状及び構成に基づいて、完全な器具形状データが生成され得る。いくつかの実施形態において、器具形状データは、3Dデータ(例えば、熱処理又は他の適切な設定技術に続く、形状設定された形態にある器具)又は平面状若しくは実質的に2Dデータ(例えば、シート材料から切り出されたような、平らな形状の器具)の形状をとることができる。
【0114】
ブロック522で、(例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500(ブロック520)に基づく)器具が製造され得る。ブロック524で、(例えば、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200(ブロック514)に基づく)熱処理フィクスチャが製造され得る。熱処理フィクスチャと器具の製造については、以下で詳しく説明する。
【0115】
いくつかの実施形態において、完全な器具形状データを生成することは、(例えば、図12に関して以下に説明するような)熱処理フィクスチャモデルを取得することと、熱処理フィクスチャモデルに基づいて予備器具モデルを生成することと、を含み得る。例えば、予備器具モデルは、熱処理フィクスチャモデルの舌側表面の少なくとも一部分に一致し得る。次に、予備器具モデルを修正して、例えば、決定されたアームとアンカを含め、決定された厚みプロファイルを有するようにする。次に、修正された器具モデルは、以下に説明するように、製造で使用するために平坦化され得る。
【0116】
歯科矯正器具の製造方法
上記のように、1つ以上のデジタルモデルが生成され得て、器具を特徴付け、又は規定する(例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500、又は輪郭付けられた器具のデジタルモデル)。様々な実施形態において、1つ以上のそのようなデジタルモデルを使用して、患者に使用する器具を製造し得る。図16は、本明細書に記載の1つ以上のデジタルモデルを使用して製造された器具100の例を示す。特定の製造プロセスの例を以下に説明する。しかし、当業者は、本明細書に開示されるように、任意の適切な製造プロセスを使用して、器具(又はその構成要素)を製造し取得することを理解するであろう。
【0117】
いくつかの実施形態において、歯科矯正器具100は、平面状のデジタル器具モデル(例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500)を使用して製造され得る。例えば、平面状の器具のデジタルモデルは、平面状又は実質的に2D形状データを含め得る。平面形状データは、適切な製造デバイス(例えば、限定するものではないが、切断、レーザ切断、フライス加工、化学エッチング、ワイヤ放電加工(EDM)、ウォータジェット、パンチング(スタンピング)を実行する1つ以上の機械など)に提供されて、平坦なシート材料を、平面状の器具のデジタルモデル1500に対応する形状を有する部材に切断する。部材は、平坦な任意の適切なシート材料、例えば、限定するものではないが、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、又は別のタイプの金属、ポリマ、超弾性材料、から切断され得る。シート材料は、得られる部材の所望の材料特性を達成するために選択された厚みを有し得る。様々な実施形態において、シート材料の厚みは、均一であり得るか、又は変化し得る(例えば、勾配に沿って、エッチング、研削などを使用して特定の領域で薄化されるか、又は堆積などを使用して特定の領域で肥厚される)。いくつかの例では、シートの厚みは、約0.1mm~約1.0mmの間、約0.2mm~約0.9mmの間、約0.3mm~約0.8mmの間、約0.4mm~約0.7mmの間、又は約0.5mmであり得る。いくつかの実施形態において、シートは、約1.5mm未満、約1.4mm未満、約1.3mm未満、約1.2mm未満、約1.1mm未満、約1.0mm未満、約0.9mm未満、約0.8mm未満、約0.7mm未満、約0.6mm未満、約0.5mm未満、約0.4mm未満、約0.3mm未満、約0.2mm未満、又は約0.1mm未満の厚みを有し得る。
【0118】
次に、切断部材は、その実質的に平面形状から輪郭付けられた配置に曲げられ得る。図16は、平面状部材のそのような曲げから生じる完成した器具100の例を示す。図示され、本明細書の別の場所で説明されるように、器具100は、アンカ120と、アンカ120から離れる方向に延在する複数のアーム130とを含み得る。各アーム130は、患者の歯に接着された固定部材と嵌合するように構成されたアタッチメント部分40、及びアタッチメント部分40とアンカ120との間に配設された付勢部分150を含み得る。器具100が患者の口内に装着されると、アーム130のそれぞれは、動かされる歯の異なる1つに接続し、それぞれの歯に特定の力を加え、それにより、オペレータが各歯を独立して動かすことを可能にする。
【0119】
いくつかの実施形態において、平面状部材は、シートから切り取られた後、又は他の方法で形成された後、FTA構成に対応する、又は実質的に対応する形状又は輪郭に曲げられるか、又は他の方法で操作され得る。例えば、部材は、ニチノール又は他の適切な平らなシート材料から切り取られた形状であり得て、一般的に平面状の構成をとることができる。部材は、例えば、輪郭付けられた器具のデジタルモデル1600に対応して、所望の3D又は輪郭付けられた構成に曲げられ得る。特定の例では、1つ以上のフィクスチャは、平面状部材を所望の3D形状に曲げるのに使用するように構成される。そのような例では、平面状部材を切断した後、平面状部材は1つ以上のフィクスチャ上又はその間に固定され得て、曲げられるか、又は他の方法で操作して、所望の3D形状を形成し得る。いくつかの実施形態において、シートから部材を切断する前又は後のいずれかで、部材の厚みは少なくともいくつかの部分で修正されて、所望の材料特性を達成し得る。例えば、部材の厚みは、研削、化学エッチング、フォトエッチング、放電加工、又は他の適切な材料除去プロセスを使用して、少なくともいくつかの領域で低減し得る。例えば、部材の厚みは、薄膜堆積、電気めっき、又は他の適切な添加技術を使用して、少なくともいくつかの領域で増大させ得る。いくつかの実施形態において、平面状部材は、3Dプリント又は他の技術を使用して、シート材料から平面状部材を切断する代わりに、又はそれに加えて形成され得る。3Dプリントは、特定の利点を提供し得て、例えば、器具の様々な部分の厚みを簡単に制御する。いくつかの実施形態において、平面状部材は、3Dプリント金属、ポリマ、又は3Dプリントによる積層造形に修正可能な任意の他の適切な材料によって形成され得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、器具は、所望の輪郭付けられた又は3D構成(例えば、OTA、FTA、熱処理フィクスチャに対応する)に形状設定され得る。1つ以上の形状設定手順、例えば、限定するものではないが、熱処理は、曲げ操作中又は曲げ操作後に、所望の3D形状に保持された状態で器具に適用して、所望の3D形状を設定し得る。熱処理を伴う形状設定手順は、曲げている間、又は曲げた後の部材の加熱に続く急速冷却を含み得る。熱処理例及び関連するフィクスチャに関する追加の詳細を以下に説明する。
【0121】
切断された平面状部材を従来の単一直径ワイヤの代わりに使用することにより、単一直径ワイヤを曲げることによって作製された形状と比較して、結果としてより多様性を有する3D形状を生成し得る。切断された平面状部材は、設計された、又は変化する幅及び長さを有し得て、これは所望の形状に曲げられたときに、3D器具の部分に厚み、幅、及び長さの寸法の多様性を生じ得る。このようにして、平面状部材は、器具の付勢部分、アーム、又は他の構成要素の所望の厚み、幅、及び長さを提供する形状に切断され得る。より多様な形状は、単一直径のワイヤを曲げることと比較して、カスタム切断された平面状部材を曲げることによって提供し得る。
【0122】
いくつかの例では、器具全体(アーム及びアンカを含む)は、切断された平面状部材を所望の3D形状の部材に曲げることによって製造される。他の例では、追加の構成要素は、例えば曲げた後に、3D形状に取り付けられ得る。そのような追加の構成要素は、限定するものではないが、アタッチメント部分40、付勢部分150、アーム130などを含み得る。そのような追加の構成要素は、任意の適切な取り付け機構によって3D形状部材に取り付けられ得、限定するものではないが、接着材料、溶接、摩擦嵌合などを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、器具は、所望の輪郭付けられた、又は3D形状の構成に直接3Dプリントされ得る。いくつかの実施形態において、例えば、任意の適切な材料を使用して3D形状部材を3Dプリントし得る。器具がニチノールを使用して3Dプリントされる場合、形状設定プロセス(熱処理など)は必要でない場合がある。追加的に、3Dプリントにより、異なる形状の使用を許容し得る(例えば、アンカ部材の断面形状が長方形ではなく楕円形であってもよく、これは、アンカの歯肉側と舌側の両方で患者の快適さを向上し得る)。
【0124】
歯科矯正器具を形状設定する方法
前述のように、いくつかの実施形態において、熱処理フィクスチャモデル(例えば、熱処理フィクスチャモデル1200(図12))を使用して、器具のデジタルモデルを生成し得る。例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500は、少なくとも部分的に熱処理フィクスチャモデル1200に基づいて取得され得る。熱処理フィクスチャモデル1200はまた、熱処理フィクスチャを製造するために使用され得て、次に、器具を形状設定するために使用される(例えば、シート材料から切断された平面状部材は、熱処理フィクスチャを使用することによって、所望の3D形状に形成され得る)。
【0125】
図17は、熱処理フィクスチャ1700の例を示す。フィクスチャ1700は、熱処理フィクスチャのデジタルモデル(例えば、フィクスチャのデジタルモデル1200(図12))に基づいて製造され得る。例えば、デジタルモデル又は関連データを製造システムに提供して、フィクスチャモデルに基づいて物理的モデルを生成し得る。一例では、フィクスチャデータを使用して、フィクスチャのモデルをワックスで3Dプリントし得る。次に、ワックスモデルを使用して、フィクスチャを、真鍮又は他の適切な材料でインベストメント鋳造してもよい。いくつかの実施形態において、フィクスチャは、真鍮又は他の適切な材料(例えば、ステンレス鋼、青銅、セラミック、又は熱処理に必要な高温に耐える他の材料)で直接3Dプリントされ得る。図17に示されるように、フィクスチャ1700は、器具100のアタッチメント部分40と嵌合するように構成された固定部分1702を含み得る。
【0126】
いくつかの実施形態において、製造されたフィクスチャを使用して、器具を熱設定し得る。例えば、図18に示されるように、組み合わされたアセンブリ1800は、熱処理フィクスチャ1700の表面に対して曲げられるか、あるいは形状に操作された器具100を含み得る。器具100は、アームのアタッチメント部分をフィクスチャの固定部分1702に配置することによって、フィクスチャ1700に結合され得る。結紮線1802又は他の適切な留め具は、複数の位置で器具100の周りに巻き付けられ、器具100をフィクスチャ1700に対して固定し得る。次に、熱を加えて器具100を熱設定でき、その後、器具100はフィクスチャ1700から取り外され得る。
【0127】
熱処理手順の例は、器具100を、選択された温度(例えば、限定するものではないが、525℃)に選択された期間(例えば、限定するものではないが、20分)加熱し、続いて急速冷却することを含み得る。急速冷却は、任意の適切な冷却手順、例えば、限定するものではないが、水冷又は空冷によって達成され得る。他の例では、熱処理の時間及び温度は、上記で論じた、例えば、特定の処置計画に基づくものとは異なる場合がある。例えば、熱処理温度は、200℃~700℃の範囲内であり得て、熱処理時間は、最大約120分までの範囲の時間であり得る。特定の例では、熱処理手順は、空気若しくは真空炉、塩浴、流動砂床又は他の適切なシステムで実行され得る。熱処理が完了した後、器具は、所望の3D形状及び構成を有する(例えば、実質的に熱処理フィクスチャ及び/又は所望のFTAに対応する)。他の例では、限定するものではないが、抵抗加熱又は器具構造の金属に電流を流すことによる加熱を含む他の適切な熱処理手順が使用され得る。
【0128】
1つ以上の追加の後処理操作は、限定するものではないが、研磨グリットブラスト、ショットピーニング、研磨、化学エッチング、電解研磨、電気めっき、コーティング、超音波洗浄、滅菌、又は他の洗浄若しくは汚染除去手順を含む3D造形品に提供され得る。
【0129】
器具が複数の構成要素から作製される例では、器具の構成要素のいくつか(又はそれぞれ)は、上記の方法に従って作製され、次いで、互いに接続されて、所望の3D器具構成を形成し得る。これら又は他の例では、器具(又は器具の一部又は各構成要素)は、限定するものではないが、金属を直接プリントすること、最初にワックス部材をプリントし、次にワックス部材を金属又は他の材料へインベストメント鋳造すること、エラストマ材料又は他のポリマをプリントすること、固体材料からの切断又は機械加工、あるいは構成要素を金属のシートから切断し、所望の3D構成に形状設定することを含む、他の適切な方法で作製され得る。
【0130】
本明細書で論じられるように、1つ以上の熱処理フィクスチャは、切断された平面状部材を所望の3D形状構成に曲げる際に使用するように構成され得る。特定の例では、1つ以上の熱処理フィクスチャは、患者の各顎に提供される(限定するものではないが、カスタムメイドされる)。例えば、熱処理フィクスチャは、患者ごとに形状及び構成をカスタマイズされてもよく、限定するものではないが、成型、機械加工、ステンレス鋼又は他の適切な金属の直接金属プリント、適切な材料、例えば限定するものではないが、粉末床溶融によるステンレス鋼への、又はバインダジェットによる鋼/銅混合物への3Dプリント、及び最初にワックスの構成をプリントし、次にワックスを様々な金属にインベストメント鋳造することを含む、任意の適切な方法で作製され得る。本明細書に記載の様々な例において、熱処理フィクスチャは、熱処理の温度に対して十分に耐性のある材料で構成され得る。特定の例では、1つ以上の熱処理フィクスチャの有無にかかわらず、1つ以上のロボットを使用して、切断された平面状部材を所望の3D形状構成に曲げることができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、単一の形状設定ステップを完了して、部材をその平面状の構成からその所望の3D構成に変形させ得る。しかし、特定の実施形態では、形状設定は、2つ以上の形状設定ステップ(例えば、2つ以上の異なる熱処理フィクスチャを潜在的に使用する、2つ以上の熱処理プロセス)を含み得る。そのような場合、各形状設定ステップ内で器具に与えられる変形の量は制限され得て、その後の各形状設定ステップは、器具を所望の3D構成に向かってさらに動かす。
【0132】
次に、完成した器具は、治療する臨床医に(任意選択で、ボンディングトレイ及び/又は固定部材と共に)送られ得る。器具を装着するために、歯科矯正医は患者の歯の舌側を洗浄し、それらを結合する準備をすることができる(例えば、軽石粉末を用いる)。次に、歯の表面はサンドブラストされ得る(例えば、50ミクロンの酸化アルミニウムを用いる)。次に、固定部材は、本明細書の別の場所で説明されるように、ボンディングトレイを使用して取り付けられ得る。
【0133】
器具が製造され、固定部材が歯に取り付けられた後、各アームは対応する固定部材要素に結合されて、器具を装着し得る。装着されると、器具は歯に力とトルクを与えて、歯を所望のFTAに動かす。治療が完了した後(例えば、OTAからFTA、OTAからITA、ITAからITA、又はITAからFTA)、アームは固定部材に受動的に着座し得、力はもはや歯に加えられなくなる。代替的に、アームによって加えられる残りの力は、歯のさらなる変位を引き起こすための閾値を下回る場合がある。
【0134】
患者は、健康診断の予約のために来院でき(例えば、約2~3ヶ月で)、治療が計画通りに進んでいる場合、患者が器具の取り外しのために計画時期に来院するまで何も行われない。この段階で、固定部材は取り外され得る。処置が計画通りに進んでいない場合は、器具を取り外し、患者の口を再走査し、新しい器具が修正後の処置計画に基づいて設計及び装着され得る。
IV.歯科矯正器具及び治療用フィクスチャの設計における有限要素解析の活用
【0135】
先に述べたように、いくつかの実施形態において、歯科矯正器具(又はその構成要素)又は熱処理フィクスチャ(又はその構成要素)を設計及び/又は製造することは、コンピュータ支援解析又はコンピュータ自動化解析を用いることを含み得る。いくつかの実施形態において、そのようなコンピュータ支援解析は、1つ以上のデジタルモデルを取得することと、1つ以上のそのようなモデルを用いて有限要素解析(FEA)を実行することとを含み得る。例えば、患者の歯、歯肉、上顎、下顎、及び/又は口腔の他の解剖学的構造(例えば、OTA、ITA、又はFTAのいずれであっても)、歯科矯正器具(例えば、平面形状、3D装着前の形態、変形構成など)、及び/又は熱処理フィクスチャを特徴付ける又は表すデジタルモデルが取得され得る。以下に詳述するように、FEAを使用して、歯科矯正器具及び/又は熱処理フィクスチャを製造する前に、器具及び/又は熱処理フィクスチャの設計と構成を評価し得る。このように、製造に進む前に、評価に基づいて設計の訂正、改良、あるいは、修正を行い得て、コストのかかるエラーを減らし、デバイスの設計を改善し得る。
【0136】
前述のように、本技術の歯科矯正器具は、平坦化された又は実質的に2次元(2D)構成に対応する平面形状、製造後の器具の実質的に3次元(3D)構成(例えば、熱処理後の器具の形状)に対応する装着前の形態、及び/又は患者の口内に装着されると(例えば、OTA又はITAで患者の歯に器具が結合されると)治療開始時の器具の実質的に3次元構成に対応する装着後の形態を有し得る。いくつかの実施形態によれば、器具の装着前の形態は、先に説明したように、平面形状の器具を熱処理フィクスチャに結合し、器具とフィクスチャを熱処理して器具の3Dの輪郭付けられた形状を形成することによって作成し得る。いくつかの実施形態において、器具の装着前の形態は、例えば、器具を3D印刷すること、器具を機械的に変形させることなどを含む任意の適切なプロセスによって作成し得る。いくつかの実施形態において、器具の装着前の形態は、OTA、FTA、及び/又は熱処理フィクスチャにおける患者の歯に実質的に対応し得る。例えば、器具を熱処理フィクスチャに結合した状態で器具を熱処理することにより、器具の装着前の形態を形成し得る。いくつかの実施形態において、器具が熱処理フィクスチャに結合されるとき、アンカは、熱処理フィクスチャの歯肉表面に実質的に一致し、アームは、熱処理フィクスチャの固定部分に実質的に一致する。先に述べたように、これら及び他の実施形態では、熱処理フィクスチャの歯肉表面は、OTA又はFTAにおける患者の歯肉から導出し得る、及び/又は実質的に対応し得る。器具の各形態は、固有のデジタルモデルとして仮想的に表現し得る。例えば、平面形状の器具は、平面状の器具のデジタルモデルとして仮想的に表現され得る。
【0137】
場合によっては、治療中に物理的な器具がどのように機能するかを評価するためには、目標とする器具設計に基づく物理的な器具を製造する前に、目標とする器具設計を評価することが有益となり得る。例えば、器具の装着前の形態は、少なくとも部分的に所望のFTAに基づいているので、物理的な器具が患者の口内に装着されると(例えば、患者の歯がOTA又はITAの状態で)、器具の1つ以上の部分の位置が歯肉に対してずれる場合がある。その結果、物理的な器具の1つ以上のずれた位置は、患者に痛みを引き起こし、治療のコンプライアンス及び/又は満足度を低下させ得る。例えば、器具のアンカ部材は、治療中、患者の歯肉に隣接するとともに、わずかに離間して着座するように意図され得る。装着後の形態では、アンカ部材が歯肉から離れすぎて舌を刺激する場合もあり、アンカ部材が歯肉に近すぎて歯肉に痛みを伴う圧力がかかったりする場合もある。したがって、本技術の1つ以上のシステム及び方法は、患者の口内に装着されると、局所解剖学に対する器具の位置、例えば、歯肉に対するアンカの位置を評価し得る。この評価に基づいて、熱処理フィクスチャや器具の1つ以上のパラメータを修正し得る。
【0138】
追加的に、物理的な器具を患者の口内に装着する際、器具は装着前の形態から装着後の形態に変形し、器具の特定の部分(例えば、アーム部)に大きなひずみが生じ得る。器具のひずみが器具の材料の弾性限界を超えると、塑性変形が起こり、器具によって加わる力が変化し得る。したがって、本技術の1つ以上のシステム及び方法は、器具の潜在的な塑性変形を評価し、評価に基づいて、器具の1つ以上のパラメータ、例えばアームの形状、3D装着前の形態の形状、及び/又は歯上の固定部材の位置を修正し得る。
【0139】
本発明の歯科矯正器具は、歯を元の位置(例えば、OTA又はITA)から別の位置(例えば、ITA又はFTA)に動かすために、患者の歯に力及び/又はモーメントを加えるように構成され得る。先に説明したように、歯科矯正器具の設計の様々なパラメータ(アーム形状、アンカ形状、材料特性など)は、歯に加えられる目標とする力及び/又はモーメントに基づいて選択及び調整され得る。場合によっては、目標とする器具設計に基づく物理的な器具が目標とする通りに機能するかどうかを判定するために、器具を物理的に製造する前に、目標とする器具設計が患者の歯に加える力及び/又はモーメントを評価することが有益となり得る。したがって、本技術の1つ以上のシステム及び方法は、患者の歯及び/又は目標とする器具設計に加わる力及び/又はモーメントを評価し、評価に基づいて、器具及び/又は熱処理フィクスチャの1つ以上のパラメータを修正し得る。
【0140】
前述の課題に対処するために、物理的な器具を製造し、患者の口内に物理的な器具を装着する前に、1つ以上のプロセスを実行して、1つの形態の器具のデジタルモデルを仮想的に変形することによって目標とする器具設計を評価して、別の形態の器具のデジタルモデルを製作し得る。例えば、装着前の形態の器具のデジタルモデルを変形させて、装着された形態における器具のデジタルモデルを取得し得る。仮想的な変形の出力を評価して、物理的な器具が目標とするとおりに機能するかどうかを評価し、出力された評価に基づいて目標とする器具の設計を修正し得る、又は、最終的な器具の設計を取得し得る。
【0141】
本明細書に記載された解析の一部又は全ては、適切なコンピューティングデバイス(例えば、前述したコンピューティングデバイス404)を用いて実行し得る。このプロセスは、1つのコンピューティングデバイス又は協調して動作するコンピューティングデバイスのクラスタで実行し得る、或いは様々なプロセスは、異なるエンティティ及び/又は異なるコンピューティングデバイスによって実行される異なるステップで、遠隔又は分散コンピューティングデバイスによって実行し得る。例えば、本明細書で説明する解析プロセスの一部又は全ては、タスク又はモジュールが遠隔処理デバイスによって実行される分散コンピューティング環境において実行し得て、これら遠隔処理デバイスは、通信ネットワーク(例えば、無線通信ネットワーク、有線通信ネットワーク、セルラ通信ネットワーク、インターネット、短距離無線ネットワーク(例えば、ブルートゥース(登録商標)を介して))を介してリンクされる。様々な実施形態において、本明細書に記載されたプロセスの一部又は全ては、自動的に実行し得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載されるプロセスの一部は、臨床医や技術者などの人間のオペレータからの1つ以上の入力に少なくとも部分的に依存し得る。
【0142】
図19は、歯科矯正器具の設計を決定するためのプロセス1900の流れ図である。いくつかの実施形態において、プロセス1900は、配置における患者の歯及び/又は歯肉の形状を表す又は特徴付ける解剖学的デジタルモデル(プロセス部分1902)を取得することを含み得る。配置は、元の歯の配置(OTA)、中間の歯の配置(ITA)、又は最終的な歯の配置(FTA)であり得る。いくつかの実施形態において、解剖学的デジタルモデルは、患者の歯及び/又は歯肉の修正後の表現であり得る。例えば、解剖学的デジタルモデルは、OTA及び/又は所望のFTAに基づく熱処理フィクスチャを表し得て、熱処理フィクスチャは、本明細書で先に説明したように、歯肉表面の厚みの増加又は構造的特徴の追加などのOTA及び/又はFTAへの修正を含む。プロセス1900は、特定の形態の歯科矯正器具を表す器具のデジタルモデル(プロセス部分1904)を取得することを含み得る。例えば、器具のデジタルモデルは、歯科矯正器具を実質的に平坦化された構成又は2D構成で表す平面状の器具のデジタルモデルであり得る。
【0143】
プロセス1900は、プロセス部分1906において、解剖学的デジタルモデルに基づいて、器具のデジタルモデルを仮想的に変形させることを継続し得る。プロセス1900は、有限要素解析(FEA)、有限差分手法、有限体積手法、又は他の任意の適切な数値的手法によって仮想的な変形1906を実行し得る。例えば、器具のデジタルモデル1906を仮想的に変形させることは、器具のデジタルモデル及び解剖学的デジタルモデルでFEAを実行して、器具のデジタルモデルの一部分と解剖学的デジタルモデルの一部分との間の位置の差に基づいて器具のデジタルモデルを変形させることを含み得る。プロセス1900は、プロセス部分1908で仮想的な変形の出力を取得して、プロセス部分1910でその出力を評価し得る。その出力は、仮想的に変形された器具のデジタルモデル、解剖学的デジタルモデル、及び/又は、変位、力、ひずみ、応力、又は相対位置などの仮想的な変形によって生成されたデータを含み得る。出力を評価することは、出力と所定の閾値又はパラメータとの定量的比較を実行することを含み得る。いくつかの実施形態において、出力を評価することは、出力の定性的評価を実行することを含み得る。例えば、人間のオペレータが目視で出力を確認し得る。出力1910の評価に基づいて、プロセス1900は、以前に取得したデジタルモデルの1つ以上を修正すること(プロセス部分1912)を継続し得る。例えば、プロセス1900は、器具のデジタルモデルにおけるひずみが所定の閾値を超えていることを判定し得るとともに、ひずみを低減するために器具のデジタルモデルの1つ以上の部分の形状を変更し得る。出力1910の評価に基づいて、プロセス1900は、プロセス部分1914を継続し得ると共に、1つ以上の以前に取得したデジタルモデルを出力し得る。プロセス部分1914によって出力されたデジタルモデル(複数可)は、先に説明したように、物理的な器具及び/又はフィクスチャを製造するために使用され得る。
【0144】
図20は、歯科矯正器具の設計を評価するための例示的なプロセス2000を示す図である。いくつかの実施形態において、プロセス2000の各プロセス部分は、例えば、人間のオペレータによって、自動的に又は手動で実行し得る。プロセス2000は、プロセス部分2002において、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200を取得することから始め得る。熱処理フィクスチャモデル1200の例を、上述した図12に示す。先に説明したように、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200は、特定の修正(例えば、歯肉を拡張すること)を伴うOTA及び/又は所望のFTAに対応し、及び/又はそれから導出され得る。プロセス部分2004において、平面状の器具のデジタルモデル1500が取得され得る。上述の平面状の器具のデジタルモデル1500の例は図15に示される。先に説明したように、平面状の器具のデジタルモデル1500は、実質的に平坦化された又は2D構成を有してよく、アンカ及び/又は複数のアームからなる器具の設計を実質的に表現し得る。いくつかの実施形態において、平面状の器具のデジタルモデル1500は、器具にわたって均一であり得るか又は、器具の異なる部分にわたって変化し得る厚み寸法を含み得る。プロセス2000は、プロセス部分2006において、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200に基づいて平面状の器具のデジタルモデル1500で第1のFEAを実行することを継続し得る。例えば、第1のFEAは、平面状の器具のデジタルモデル1500が、熱処理フィクスチャモデル1200の特徴(例えば、固定部分1202、歯肉表面1210)に基づいて変形され、その結果、(例えば、図16に示されるように)完成した器具10と同様の形状及び構成の、輪郭付けられた又は3Dの器具となる、目標とする器具のデジタルモデルを生成し得る。いくつかの実施形態において、プロセス2000は、適切な市販のFEAソフトウェア(例えば、Abaqus、Ansys)及び/又は適切な専有FEAソフトウェアを用いて第1のFEAを実行し得る。
【0145】
いくつかの実施形態は、器具のデジタルモデルの3D又は輪郭付けられた構成を生成するために熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200を使用することを説明するが、いくつかの実施形態において、FTAのデジタルモデル(例えば、上述のFTAモデル800又は1100)が使用され得る。例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500は、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200を必要とせずに、FTAのデジタルモデルの表面に一致するように変形され得る。
【0146】
いくつかの実施形態において、プロセス部分2006において第1のFEAを実行することは、デジタルモデルの1つ以上をメッシングすることを含み得て、メッシングは、デジタルモデルを複数の有限要素及び複数のノードに離散化することを含む。メッシングは、人間のオペレータによる手作業、及び/又は、適切なソフトウェアを使用した自動で行い得る。適切なソフトウェアとしては、市販のメッシングソフトウェア(Hypermesh(登録商標)など)、メッシング機能を持つ市販のFEAソフトウェア(Abaqusなど)、及び/又は、独自のメッシングソフトウェアを含み得る。有限要素は、2D(例えば、三角形、四角形)又は3D(例えば、四面体、四辺形)要素を含むが、これらに限定されない、デジタルモデルの形状に基づく次元を有し得る。例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500の有限要素は、六面体3次元要素を含み得る。FEAの精度と安定性を制御するために、要素パラメータ(要素タイプ、要素次数、積分点数、砂時計制御など)を選択し得る。いくつかの実施形態において、FEAを実行することは、要素フリーGalerkinプロセス、一般化ひずみメッシュフリー定式化、アイソジオメトリック解析、又は外部近似のプロセスなどのメッシュフリー技法を含み得る。
【0147】
プロセス部分2006において第1のFEAを実行することは、平面状の器具のデジタルモデル1500及び熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200に材料特性(例えば、ヤング率、ポアソン比、密度)を割り当てることを含み得る。例えば、ニチノールの材料特性は、約28GPaと83GPaの間のヤング率など、平面状の器具のデジタルモデル1500に割り当てられ得る。いくつかの実施形態において、熱処理フィクスチャモデル1200は、約100GPa~130GPaの間のヤング率など、真鍮の材料特性を有する変形可能な構成要素として表し得る。いくつかの実施形態において、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200は、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200が第1のFEA中に変形しないように、剛性構成要素として表し得る。熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200に人為的に大きなヤング率を割り当てることで、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200を剛性構成要素として表し得る。プロセス2000は、データベースから材料特性を取得し得て、材料特性を手動で入力し得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、FEAを実行すること(プロセス部分2006)は、器具のデジタルモデル1500の少なくとも一部分と熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の少なくとも一部分との間の接触相互作用を定義することを含み得る。接触相互作用を定義することは、平面状の器具のデジタルモデル1500のデジタルノード、要素、及び/又は表面を選択することによって、第1の接触面を作成することを含み得る。熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200のデジタルノード、要素、及び/又は表面を選択することにより、別の接触面を作成し得る。接触相互作用を定義することは、接触面間の接触相互作用を支配するための接触定式化を定義することをさらに含み得る。接触定式化の種類(例えば、接着、摩擦、摩擦なしなど)は、接触定式化のデータベースから選択され得、及び/又は、接触定式化を手動で入力し得る。このプロセスは、摩擦係数、ペナルティ接触剛性、及び/又は節点探索距離を含むが、これらに限定されない接触定式化の関連パラメータを入力することをさらに含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、器具のデジタルモデル1500のアタッチメント部分140と、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の水平チャネル1204、垂直チャネル1206、及び/又は固定部分1202との間に、結合接触相互作用を定義し得る。いくつかの実施形態において、器具のデジタルモデル1500のアタッチメント部分140と熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の固定部分1202との間に摺動接触相互作用を定義し得る。例えば、アタッチメント部分と固定部材の間の相互作用をシミュレートするために、摺動接触相互作用を定義し得る。
【0149】
プロセス部分2006でFEAを実行することは、デジタルモデルの少なくとも1つに境界条件を割り当てることを含み得る。いくつかの実施形態において、境界条件は、1つ以上のデジタルモデルの1つ以上の部分の並進及び/又は回転を防止するための制約を含み得る。例えば、境界条件は、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200と、平面状の器具のデジタルモデル1500の1つ以上のアタッチメント部分140の制約を含み得る。追加的又は代替的に、境界条件は、非ゼロの力、モーメント、変位、及び/又は回転を含み得る。例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500を、器具の装着前の形態を表す輪郭付けられた又は3Dデジタルモデルに仮想的に変形させるために、平面状の器具のデジタルモデル1500のアンカ部材20の一部分に非ゼロの変位が適用され得る。非ゼロの変位は、平面状の器具のデジタルモデル1500のアタッチメント部分140が熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の固定部分1202内にあるとき、アンカ部材20と熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の遠位-歯肉表面1210との間の距離に対応し得る。いくつかの実施形態において、平面状の器具のデジタルモデル1500は、平面状の器具のデジタルモデル1500のアタッチメント部分140に、アタッチメント部分140が熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の対応する固定部分1202内に配置されるように非ゼロの変位を加えることによって、器具の装着前の形態を表す輪郭付けられた又は3Dデジタルモデルへと仮想的に変形させ得る。追加的又は代替的に、平面状の器具のデジタルモデル1500のアタッチメント部分140及び/又はアーム130に、アタッチメント部分140及び/又はアーム130が熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の対応する固定部分1202の基底面に対して接線をなす、非ゼロの変位を適用させ得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、プロセス部分2006でFEAを実行することは、解析タイプ(例えば、静的又は動的)、幾何学的直線性、統合スキーム(例えば、陰的、陽的)、シミュレーション期間、増分サイズ、及び/又は増分制御などの1つ以上の解析パラメータを定義することを含み得る。FEAを実行することは、終了条件に達するまでFEAを実行することを含み得る。例えば、FEAを実行することは、平面状の器具のデジタルモデル1500に非ゼロの変位を適用することを含み得て、終了条件件は、非ゼロの変位の大きさ全体が適用された後に到達される。
【0151】
図20に戻って参照すると、プロセス2000は、プロセス部分2008において、装着前の形態で器具を仮想的に表す目標とする器具のデジタルモデル2102を取得することで継続し得る。図21に描かれているように、第1のFEA(プロセス部分2006)から得られるデジタルモデル2100は、輪郭付けられた構成で器具の装着前の形態を表し、熱処理フィクスチャモデル2104と嵌合する、目標とする器具のデジタルモデル2102を含み得る。プロセス部分2008で得られた目標とする器具のデジタルモデル2102は、プロセス2000のプロセス部分2006で実行された第1のFEAから取得し得る。いくつかの実施形態において、製造後の器具の輪郭付けられた又は3D構成を表す目標とする器具のデジタルモデル2102は、第1のFEAを実行することなく取得し得る。例えば、目標とする器具のデジタルモデル2102は、Solidworks(登録商標)、Autodesk(登録商標) Inventor、Autodesk(登録商標) MeshMixer、Creo(登録商標)などのCADソフトウェアから直接取得し得る。追加的又は代替的に、目標とする器具のデジタルモデル2102は、製造後の器具、器具モールドなどの器具の物理的表現の走査から取得し得る。プロセス部分2010では、患者の歯を元の配置で仮想的に表現したOTAのデジタルモデルを取得し得る。例えば、図10に関して上述したように、固定部材を取り付けたOTAのデジタルモデル1000を用い得る。いくつかの実施形態において、OTAのデジタルモデルは、患者の歯及び/又は歯肉の修正後の表現を含み得る。例えば、OTAのデジタルモデルは、患者の実際の歯及び/又は歯肉の仮想表現の代わりに、又はそれに加えて、熱処理フィクスチャ1200と同様の特徴(例えば、水平チャネル1204及び/又は垂直チャネル1206による固定部分1202、安定化クロスバー1212)を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、元の配置における患者の歯の位置の固定部分は、OTAのデジタルモデルにおける患者の実際の歯の仮想表現に置き換え得る。いくつかの実施形態によれば、OTAのデジタルモデルは、元の配置における患者の歯の空間座標を特徴付ける位置データを含むデータセットを構成し得る。
【0152】
図20に戻って参照すると、プロセス2000は、目標とする器具のデジタルモデル2102及びOTAのデジタルモデル(プロセス部分2012)を用いて第2のFEAの実行を継続して、装着された形態における器具を表す、変形後の、目標とする器具のデジタルモデルを生成し得る。図22は、OTAのデジタルモデル1000と嵌合する変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2202を含むデジタルモデル2200の例を示す図である。図22に示されるように、変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2202は、患者の口内(例えば、OTA又はITA内)に装着された形態における器具を仮想的に表し得る。例えば、第2のFEAを介して、目標とする器具のデジタルモデル2102(例えば、装着前の形態における器具を特徴付ける)は、OTAのデジタルモデル1000に反映されるように、器具がOTA(又はITA)において患者の歯に嵌合される装着後の形態に仮想的に変形させ得る。この仮想的な変形は、変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2202を生成することができ、これは、患者の口内に装着されたときの製造後の器具の実世界の挙動を効果的にモデル化し得る。このように、変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2202の評価により、人間のオペレータ及び/又は自動化されたプロセスが、患者の口内に装着されたときの器具の動作及び挙動を評価及び/又は予測できる。
【0153】
いくつかの実施形態において、第2のFEAを実行することは、デジタルモデル(複数可)を離散化すること、材料特性を割り当てること、任意の接触相互作用を定義すること、境界条件を割り当てること、任意の解析パラメータを定義すること、及び/又は前述のように終了条件件に達するまでFEAを実行することを含み得る。例えば、第2のFEAを実行するために境界条件を割り当てることは、FTAとOTAの間の各歯の変位を決定することを含み得る。先に説明したように、歯の変位は、FTAデータとOTAデータの各歯の位置の間の差を計算することで、6つの自由度で定義し得る。境界条件を割り当てることは、FTAとOTAとの間の各歯の変位を、目標とする器具のデジタルモデル2102の対応するアタッチメント部分に割り当てることを含み得る。境界条件を割り当てることは、OTAのデジタルモデル1000及び/又は目標とする器具のデジタルモデル2102の1つ以上の部分の回転及び/又は並進を防止するための制約を割り当てることを含み得る。
【0154】
図20に戻って参照すると、プロセス部分2014において、プロセス2000は、変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2202(図22)、及び/又は解析結果を取得し得る。変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2202及び/又は解析結果は、第2のFEAから取得し得る。変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2202は、器具が患者の口に装着されると(例えば、OTA又はITAにおいて患者の歯に器具が結合されると)、装着された形態で仮想的に器具を表し得る。解析結果は、第2のFEAからの出力データを含み得る。例えば、解析結果は、第2のFEAで使用される1つ以上のデジタルモデルにおける位置、変位、回転、力、モーメント、応力、又はひずみの測定値であり得る。プロセス2000は、プロセス部分2016において、解析結果を評価することで継続し得る。いくつかの実施形態において、解析結果を評価することは、解析結果を1つ以上の所定の閾値と比較することを含む。解析結果の評価に基づいて、プロセス2000は、プロセス部分2018へ続き、平面状の器具のデジタルモデル1500及び/又は熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200を修正し得る。
【0155】
様々な実施形態において、器具のデジタルモデル(例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500、又は3D器具のデジタルモデル)を修正することは、器具のアンカ及び/又はアームの特定の形状及び/又は構成、器具の3D装着前の形態、及び/又は、歯上の固定部材の位置を修正することを含み得る。例えば、修正可能なアーム(複数可)の特徴としては、限定はされないが、アームの全長、付勢部分の形状又は構成、ブラケットコネクタの形状又は構成、アームの1つ以上のセクションの幅寸法、アーム130の1つ以上のセクションの厚み寸法を含む。アンカの修正し得る特性は、限定されるものではないが、アンカの形状、長さ、厚み、深さ、又は他の特性を含む。いくつかの実施形態において、人間のオペレータは、アンカ及び/又はアームの設計及び構成を、要望に応じて手動で選択又は修正し得る。いくつかの実施形態において、1本以上のアームは、アームの設計の事前入力されたライブラリに基づいて交換し得る。いくつかの実施形態において、器具のデジタルモデル又は熱処理フィクスチャのデジタルモデルの完全又は部分的な自動修正は、関連する基準に基づいてオペレータによってレビュー及び/又は修正され得る。
【0156】
図23は、OTAのデジタルモデル1000に反映された、患者の歯に嵌合された構成における、変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2202の解析結果の例を示す図である。解析結果は、器具のデジタルモデル2202のひずみの測定値を含み得る。ひずみの測定値は、例えば、器具における単一の最大ひずみ、ひずみ閾値を超える要素の体積、及び/又は器具の一部分の平均ひずみを含み得る。図23に描かれているように、ひずみの測定値は、プロセス2000によって、器具のデジタルモデル2202の上に重畳されたヒートマップとして表示され得る。このようなヒートマップ(又は他のグラフィック表現)は、器具のデジタルモデル2202の異なる領域におけるひずみを視覚的に示すことができる。いくつかの実施形態において、ひずみの測定値は、数値及び/又は数値の集合であり得る。プロセス2000は、プロセス部分2016において、ひずみの測定値を所定の最大ひずみ閾値と比較し得る。いくつかの実施形態において、所定の最大ひずみは、器具材料の弾性限界であり得る。例えば、ニチノールの場合、所定の最大ひずみは約4%から約10%の間であり得る。ひずみの測定値が所定の最大ひずみ閾値を超える場合、プロセス2000は、プロセス部分2018に進み、平面状の器具のデジタルモデル1500を修正し得る。平面状の器具のデジタルモデルを修正することは、例えば、器具の1つ以上の部分の厚みを増やすこと、器具のアーム又はアンカ部分の異なる形状を選択することなどを含み得る。
【0157】
いくつかの実施形態において、解析結果は、器具が患者の歯に加える力及び/又はモーメントを評価するために、力及び/又はモーメントを含み得る。例えば、解析結果は、器具のデジタルモデル2202のアンカの一部分、OTAのデジタルモデル1000の固定部材、OTAのデジタルモデルの歯、又は他の任意の適切な位置で測定された反力及び/又はモーメントであり得る。力及び/又はモーメントを測定する位置は、少なくとも部分的に、第2のFEAで割り当てられた境界条件に基づき得る。いくつかの実施形態において、解析結果を評価すること(プロセス部分2016)は、力及び/又はモーメントを所定の値と比較することを含む。いくつかの実施形態において、所定の値は、目標とする力及び/又はモーメントに対応し得る。測定された力及び/又はモーメントと目標とする力及び/又はモーメントとの間の差は、目標とする器具設計に基づく物理的な器具が目標とする力及び/又はモーメントを十分に加え、意図通りに機能するかどうかを判定するために取得及び評価され得る。いくつかの実施形態において、所定の値は、器具及び/又は患者の解剖学的構造に対する最大許容力に対応する安全閾値とし得る。いくつかの実施形態によれば、所定の値は、最小の力及び/又はモーメント、許容される力及び/又はモーメントの範囲、又は他の任意の適切なメトリックである。力及び/又はモーメントと所定の値との比較に基づいて、プロセス2000は、平面状の器具のデジタルモデル1500、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200、目標とする器具のデジタルモデル2100、又は別の適切なデジタルモデルの1つ以上のパラメータを修正し得る。
【0158】
解析結果の別の例としては、患者の歯肉に当たる可能性のある器具の部分を特定することを含む。例えば、図23に示すように、領域2302において、器具のデジタルモデル2202の一部分が、OTAのデジタルモデル1000の歯肉表面の下に入り込んでいる。これは、目標とする器具のデジタルモデル2102から、先に説明した変形された器具のデジタルモデル2202へのモデルの変形の結果として起こり得る。領域2302に示される交差点は、実際の製造後の器具が、装着されたときに患者の歯肉に接触する危険性がある領域を示し得る。このような接触は不快であり、患者の歯肉を刺激し得る。したがって、そのような接触点を特定した結果、器具の設計が修正されてもよく(例えば、平面状の器具のデジタルモデル1500を修正することによって)、器具の装着前の形態が修正されてもよく(例えば、熱処理フィクスチャモデル1200を修正することによって)、又は他の任意の適切な修正、補正、若しくは補償をし得る。
【0159】
図24は、変形された器具のデジタルモデル2202とOTAのデジタルモデル1000の相対位置の評価に基づく解析結果の別の例を示す図である。例えば、図24に示すように、器具のデジタルモデル2202の一部分は、器具の形状設定形態により、OTAのデジタルモデル1000の歯肉表面から局所距離2400だけ離間している。器具と患者の歯肉の間の隙間が大きすぎると、患者の舌を刺激し、患者に痛み及び/又は不快感を与え得る。したがって、いくつかの実施形態において、解析は、局所距離2400が所定の最大距離閾値よりも大きいかどうかを判定することを含み得る。図24に示す例では、解析結果は、変形された目標とする器具のデジタルモデル2202の一部分と、OTAのデジタルモデル1000の患者の歯肉の舌側表面の一部分との間の局所距離2400が、所定の最大距離閾値を超えることを含み得る。いくつかの例では、変形後の、目標とする器具のデジタルモデルの一部分と患者の歯肉の舌側表面の一部分との間の局所距離の最大距離閾値は、約0mmと約5mmとの間であり得る。局所距離2400が最大距離閾値よりも大きい場合、プロセス2000は、1つ以上のデジタルモデルを修正し(プロセス部分2018)、それによって、装着後の形態における器具と患者の歯肉との相対位置を修正し得る。例えば、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の歯肉表面の厚みは、1つ以上の場所で増加及び/又は減少させ得る。プロセス2000は、局所距離2400が最大距離閾値を下回るかどうか、及び修正後のデジタルモデル(複数可)がより好ましい設計であるかどうかを判定するために、修正されたデジタルモデル(複数可)を用いて繰り返し得る。
【0160】
器具による患者の歯肉の刺激を最小にするために、器具のアンカ20を患者の歯肉から離して配置することが好ましい場合がある。その結果、いくつかの実施形態において、解析結果は、変形された目標とする器具のデジタルモデル2202の一部分と、OTAのデジタルモデル1000の患者の歯肉の舌側表面の一部分との間の局所距離2400が、所定の最小距離閾値未満であることを含み得る。いくつかの例では、最小閾値は約0.00mmから0.5mmの間であり得る。局所距離2400が最小距離閾値より小さい場合、プロセス2000は、1つ以上のデジタルモデル(複数可)を修正し得る(プロセス部分2018)。例えば、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200の歯肉表面の厚みは、1つ以上の場所で増加及び/又は減少し得る。このような修正は、器具の装着前の形態を変更し得る。プロセス2000は、修正後のデジタルモデル(複数可)で繰り返し、局所距離が最小閾値を上回るかどうかを判定し得る。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、プロセス2000は、好ましい器具設計が取得されるまで反復して繰り返し得る。例えば、図25は、元の配置における患者の歯を表すOTAのデジタルモデル1000に嵌合された4つの変形後の、目標とする器具のデジタルモデル2500a、2500b、2500c、及び2500dを描写している。第1の器具のデジタルモデル2500aは、第2のFEAの結果として、第1の交差領域2502aにおいてOTAのデジタルモデル1000の歯肉表面を貫通した。プロセス2000は、この解析結果に基づいて1つ以上のデジタルモデル(複数可)を修正し(プロセス部分2018)、修正後のデジタルモデル(複数可)でプロセス部分2002から2016を、最終化された器具設計が取得されるまで繰り返し得る。例えば、図25は、OTAのデジタルモデル1000の歯肉表面を第1の器具のデジタルモデル2500aよりも少なく貫通して、第1の交差領域2502aよりも小さい第2の交差領域2502bを形成する第2の器具のデジタルモデル2500bを示す。第3の器具のデジタルモデル2022cは、第1及び第2の交差領域2502a、2502bより小さい第3の交差領域2502cを形成する。図25に描かれた第4の器具のデジタルモデル2502dは、OTAのデジタルモデル1000の歯肉表面を貫通せず、好ましい器具設計であり得る。好ましい第4の器具のデジタルモデル2502dに基づいて、プロセス2000は、反復的な繰り返しを停止し、最終化された器具設計を選択し得る。いくつかの実施形態において、人間のオペレータは、最終化された器具の設計を選択し得る。いくつかの実施形態において、最終化された器具設計は、これらに限定されるものではないが、例えば、反復間の解析結果の変化、解析結果と所定の閾値又はパラメータとの比較などの定量的メトリックに基づいて、自動的に及び/又は人間のオペレータによって選択し得る。追加的又は代替的に、プロセス2000は、所定の反復最大数に達した場合、反復を停止し、最終化された器具設計を選択し得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200は、最終的な器具設計に基づいて修正され得る。例えば、熱処理フィクスチャ1200の歯肉表面1210は、器具のアタッチメント部分が熱処理フィクスチャ1200の固定部分1202の基底面内に接線をなして配置されると、熱処理フィクスチャ1200の舌側歯肉面1210が器具の歯肉に対向する面に対して接線となるように修正され得る。
【0163】
最終器具設計及び/又は最終熱処理フィクスチャ設計を選択すると、プロセス2000は、プロセス部分2020に続き、平面状の器具のデジタルモデル1500、熱処理フィクスチャのデジタルモデル1200、及び/又は目標とする器具のデジタルモデル2102を出力し得る。プロセス部分2020における出力に基づいて、例えば、本明細書において以前に説明された技術のいずれかを用いて、器具及び/又は熱処理フィクスチャを作製し得る。
IV.過矯正及び/又は補償パラメータに基づく歯科矯正器具を製造するための選択されたデバイス、システム、及び方法
【0164】
先に説明したように、本技術の実施形態による歯列矯正装置(例えば、歯科矯正器具又はフィクスチャ)を作成する製造プロセスは、患者のOTAに対応するデータを取得し、次に、データを使用して、患者の歯が最適な位置にあるFTAモデルを開発することを含み得る。FTAモデルは、FTAに概ね対応するが、1つ以上の修正を加えたフィクスチャ(例えば、熱処理フィクスチャ)を作成するための基礎として用い得る(本明細書の他の箇所で説明する)。次に、フィクスチャを使用して、器具の3D構成(例えば、患者の口内に装着したときに、OTAからFTAに向かって歯を付勢することができる器具の湾曲した又は輪郭付けられた構成)を形成し得る。例えば、本明細書の他の箇所に記載されているように、器具の実質的に平面状の構成は、フィクスチャの上に操作及び/又は配設され、その後、器具が概してフィクスチャに適合する3D形状をとるようにフィクスチャ上で熱処理され得る。
【0165】
このような方法で器具を製造することで、器具は上記のFTAを正確に再現し、装着時に患者の歯をOTAから所望のFTAに再配置することが可能になるはずである。しかし、実際には、ある要因によって、所望のFTAと、器具を介して再配置した後の患者の歯の実際の最終的な配置との間に差異が生じ得る。以下により詳細に説明するように、この差異は、(a)実施上の考慮(例えば、患者の歯を動かすのに必要な最小閾値力、及び/又は、器具と固定部材との間の自由な遊び又は公差)、(b)器具の材料特性(例えば、塑性変形、ヒステリシスなど)、(c)製造プロセスに伴うばらつき、及び/又は(d)再配置後の予想される歯の動き(例えば、後戻り)に起因し得る。これらの問題を軽減するために、本技術の実施形態は、これらの差異を考慮し、その製造中又は製造前に、フィクスチャ及び/又は器具の設計パラメータを(例えば、過矯正又は補償を介して)変更し得る。
【0166】
当業者であれば、過矯正又は補償に関連する本技術の実施形態が個々のパラメータ又は因子として以下に記載されているが、記載された要素のいずれかが単一の実施形態において組み合わせられることを認識するであろう。例えば、器具及び/又はフィクスチャの設計又は製造は、患者の歯を動かすのに必要な最小閾値力と、製造プロセスに伴うばらつきの両方を考慮し得る。
【0167】
A.歯列矯正装置実装に関する考察
先に説明したように、本技術の歯科矯正器具は、一般に、患者の歯(例えば、個々の歯)をOTAから所望の又は最適なFTAに再配置するために必要な力(複数可)(例えば、負荷/モーメント/大きさ及び/又は方向)に少なくとも部分的に基づいて設計及び製造されている。いくつかの実施形態において、これらの器具は、それに作用する外的要素(例えば、患者の歯を動かすのに必要な最小閾値力、及び/又は器具と固定部材との間の自由な遊び)を考慮し得、その結果、FTAを望みどおりに再配置するために器具及び/又はその一1つ以上の部分が患者の歯に与えなければならない必要力に影響を与え得る。
【0168】
1.患者の歯を動かすための最小閾値力
先に説明したように、本技術の器具は、患者の歯をOTAから決められたFTAまでの経路に沿って動かすように構成されている。より具体的には、器具の個々のアームは、元の位置からそれぞれの最終位置までそれぞれの経路に沿ってそれぞれの患者の歯を動かすように構成される。器具を介して患者の歯に加わる力、又はいくつかの実施形態において、器具の対応するアームを介して患者の歯に加わる力は、器具が負荷状態又は応力状態にあるとき、一般にOTA又はその付近で最も高く、器具が無負荷状態又は非応力状態にあるとき、患者の歯がFTAに近づくにつれて減少する。そのため、患者の歯がFTAに近づいたとき、器具は一般的に歯に最小限の力を加えることになる。しかし、特定の歯の歯根や歯肉内の歯の位置など、さまざまな外的要因によって、それぞれの歯を動かすために克服しなければならない最小閾値力が存在し得る。つまり、器具のアームを介して歯にかかる力が最小閾値力より小さいと、歯は動かない。したがって、この最小閾値を考慮せずに、無負荷状態の器具がFTAに類似するように、あるいは他の方法で対応するように製造された場合、患者の歯の動きは、実際にFTAに達する前に停止し得る。
【0169】
この点をさらに説明するために、図26は、y軸上の患者の歯に加わる力と、x軸上の患者の歯の位置決めとの間の関係を示すプロット2600である。図26に示すように、線2610は、患者の歯を動かすのに必要な最小閾値力に対応し、線2620は、OTAから第1の最終的な歯の配置(FTA)への動きの途中に患者の歯に、例えば、第1の器具を介して加わる力を変化させることに対応し、線2630は、OTAから第2の最終的な歯の配置(FTA)への動きの途中に患者の歯に、例えば、第2の器具を介して加わる力を変化させることに対応している。いくつかの実施形態において、最小閾値力は、少なくとも約5グラム力(GF)、10GF、15GF、20GF、25GF、又は50GFであり得る。第1の器具は、患者に対して決定された最適な歯の配置である第1の最終的な歯の配置(FTA)に対応する無負荷状態又は無応力状態を有し、第2の器具は、第1の最終的な歯の配置(FTA)とは異なる第2の最終的な歯の配置(FTA)に対応する無負荷状態を有している。
【0170】
図26に示すように、線2620、2630は、患者の歯に加わる力とその位置決めとの間の概ね直線的な関係を示す。しかしながら、当業者であれば、いくつかの実施形態において、加えられた力と患者の歯の位置決めとの間の関係は、非線形(例えば、指数、対数など)であり得ることは理解できよう。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、患者の歯に加わる力とその位置決めとの間の関係は、その部分(例えば、器具のアーム(複数可))の器具のひずみに応じて、線形、非線形、及び/又は一定であり得る。例えば、ニチノールを含む器具又はアームに関して、ニチノール器具を介して患者の歯に加わる力は、歯の動きの第1の部分の間は一定又はほぼ一定であり、歯の動きの第2の異なる部分の間は患者の歯の位置に対して線形又は非線形の関係を有し得る。
【0171】
図26の線2620によって示されるように、第1の器具(第1の最終的な歯の配置(FTA)に対応する無負荷構成となるように製造される)は、患者の歯をOTAから第1の最終的な歯の配置(FTA)に向かう経路に沿って再配置させることになる。このような器具は、患者の口内に移植され、患者の歯に接着された固定部材に固定されると(前述のように)、OTAに概ね対応する負荷構成から、第1の最終的な歯の配置(FTA)に概ね対応する無負荷構成に向かって移行することになる。しかしながら、患者の歯を動かすのに必要な最小閾値力(TMIN)のために(線2610で示すように)、第1の器具は、患者の歯を第1の最終的な歯の配置(FTA)までずっと動かすことができず、代わりに、図26の位置(P)で表すように、器具を介して与えられる力が最小閾値力(TMIN)に等しくなるまでしか患者の歯を動かさないであろう。
【0172】
本技術の実施形態は、歯科矯正器具を設計する際に最小閾値力(TMIN)を考慮することにより、上述した問題を軽減し得る。いくつかの実施形態において、器具は、その無負荷の構成において、第1の最終的な歯の配置(FTA)とは異なる第2の最終的な歯の配置(FTA)となるように設計及び/又は製造され得る。患者の口内に移植され、患者の歯に接着された固定部材に固定されると、第2の器具は、患者の歯をOTAから第1の最終的な歯の配置(FTA)に向けて及び/又は第1の最終的な歯の配置へと再配置するように構成される。そのような実施形態において、第2の最終的な歯の配置(FTA)に対応する無負荷の構成を有する第2の器具が、第1の最終的な歯の配置(FTA)に概ね対応する構成をとるとき、第2の器具は、患者の歯に最小閾値力(TMIN)を提供するよう設計されている。図26に示されるように、第2の器具は、第2の最終的な歯の配置(FTA)に概ね対応する無負荷の構成となるように製造され得る。患者の口内に移植され、対応する固定部材に固定されると、第2の器具は、線2630で示されるように、患者の歯をOTAから第2の最終的な歯の配置(FTA)に向かう経路に沿って再配置させる。最小閾値力(TMIN)により、第2の器具を介した患者の歯の動きは、第2の器具が概して第1の最終的な歯の配置(FTA)をとり、最小閾値力(TMIN)にほぼ等しい力を患者の歯に与えているときに停止される。図26に示すように、このような器具は、患者の歯が第1の歯の配置(FTA)に再配置されるようになったときに、患者の歯に非ゼロの力を加えるように構成される。非ゼロの力は、(i)少なくとも約5GF、10GF、15GF、20GF、25GF、又は50GF、及び/又は(ii)500GF、400GF、300GF、250GF、100GF、又は50GF以下であり得る。
【0173】
最小閾値力に関する上記の説明は、一般的に器具及び患者の歯に適用されるが、同じ又は類似の原理が、器具の個々のアーム及び患者の個々の歯にも適用される。例えば、器具の各アームは、アームの位置が第1の最終的な歯の配置(FTA)における対応するアームの位置に概ね対応するとき、アームを介して与えられる力が最小閾値力(TMIN)に等しくなるように、対応する患者の歯を動かすように構成され得る。さらに、特定の歯を動かすのに必要な最小閾値は、例えば、歯の種類(例えば、臼歯又は切歯)、歯の位置(例えば、隣接する歯肉表面に対する相対的な位置)、及び/又は他の要因によって、他の歯とわずかに異なり得る。このように、個々の歯に対する別個の最小閾値力は、器具の対応する部分(例えば、アーム、付勢部分、アタッチメント部分など)を設計する際に各々考慮され得る。
【0174】
図27は、本技術の実施形態による、歯列矯正装置の配置に関連付けられているデータセットを決定するための方法2700の流れ図である。方法2700は、患者のOTAに対応するデータ(例えば、第1の入力)を取得すること(プロセス部分2702)と、患者の第1のFTAに対応するデータ(例えば、第2の入力)を取得すること(プロセス部分2704)とを含む。本明細書の他の箇所に記載されているように、OTAは、患者の歯の走査に基づき得るとともに、FTAは、OTA及び歯の所望の最適位置決めに基づいて、オペレータ(例えば、臨床医、歯科矯正医、又は技術者)によって決定及び/又は提供され得る。
【0175】
方法2700は、患者の少なくとも1本の歯を動かすのに必要な最小閾値力に部分的に基づいて、(第1のFTAとは異なる)第2のFTAに対応するデータ(例えば、第3の入力)を判定すること(プロセス部分2706)をさらに含み得る。最小閾値力は、最小閾値力が既知であるか、又はデバイスの製造前に判定することができるという点で、所定のパラメータであり得る。いくつかの実施形態において、最小閾値力は、器具に一般的に適用される修正(例えば、同じ修正が各個別のアームに適用される)、又は器具の各個別のアームに適用される複数の異なる修正に対応し得る。追加的又は代替的に、最小閾値は、一般的に全ての患者に共通する因子に基づいて、又は特定の患者に固有の因子に基づいて決定され得る。例えば、いくつかの実施形態において、考慮される最小閾値は、例えば、臼歯又は大きめの歯は、切歯又は小さめの歯の閾値よりも大きい最小閾値を有するような、人間の歯の一般的な解剖学に基づき得る。別の例として、いくつかの実施形態において、考慮される最小閾値は、患者の歯の個々のものを囲む患者の特定の歯肉(例えば、歯肉表面)に基づき得る。
【0176】
いくつかの実施形態において、方法2700は、プロセス部分2706を省略し、最小閾値力を考慮する単一のFTAのみを含み得る。そのような実施形態では、方法2700は、患者のOTAに対応する第1のデータを取得することと、患者のFTAに対応する第2のデータを提供することとを含み得、一方、第2のデータは、少なくとも部分的に最小閾値力に基づく。いくつかの実施形態において、方法2700は、少なくとも第2のFTAに対応するデータに従ってフィクスチャ及び/又は器具を製造することをさらに含み得る。このようなフィクスチャ及び/又は器具の製造は、本明細書の他の箇所に記載された製造プロセスに対応し得る。
【0177】
2.器具と固定部材の間の自由な遊び
先に説明したように、本技術の器具は、患者の歯をOTAから決められたFTAまでの経路に沿って動かすように構成されている。より具体的には、器具の個々のアームは、元の位置からそれぞれの最終位置までそれぞれの経路に沿ってそれぞれの患者の歯を動かすように構成される。また、先に述べたように、個々のアームは、患者の個々の歯に接着された対応する固定部材(例えば、ブラケット)に取り付けられる。したがって、器具の個々のアームを介して加えられた力は、対応する固定部材にかかり、そこで対応する個々の患者の歯にかかり、再配置が起きる。この点、固定部材は器具とは別の部品であるため、個々のアームと対応する固定部材との間に自由な遊び(例えば、製造公差による隙間、小刻みな動き、又は不適合)が存在することが多いと思われる。いくつかの実施形態において、個々のアームと対応する固定部材の各々について、自由な遊びは、同じである。さらに、いくつかの実施形態において、自由な遊びは、個々のアーム及び対応する固定部材の少なくとも1つが、他の個々のアーム及び対応する固定部材とは異なる。自由な遊びの結果、自由な遊びを介して力の一部が失われるため、個々のアームを介して提供された力が対応する歯に完全に伝達されない場合がある。例えば、個々のアームが、対応する歯を特定の方向(例えば、近心、遠位、咬合、歯肉、頬側、及び/又は舌側方向)に所定の距離及び/又は特定の軸(例えば、近遠心軸、咬合面歯肉軸、及び/又は頬舌軸)に対して所定の回転角度を動かすように構成されていると、自由な遊びによって、対応する歯が全距離及び/又は全回転角度を動かせなくなることがある。
【0178】
図28Aは、本技術の実施形態による固定部材2800の斜視図であり、図28Bは、図28Aに示す固定部材2800に結合された歯科矯正器具のアーム2830の一部分の斜視図である。図28Aに示すように、固定部材2800は、(i)患者の歯に取り付けられる裏面又は表面2810を有する本体領域2805と、(ii)本体領域2805内にあって歯科矯正器具又はアームの一部分を受け入れるように構成されたスロット又は凹部2812と、(iii)スロット2812内に位置付けられると、器具又はアーム2830の一部分を固定するよう構成された本体領域2805に結合された移動可能クリップ部分2820とを含む。スロット2812は、3面又はU字型の開口を形成し得る。図28Bに示すように、アーム2830、より詳細にはアーム2830のアタッチメント部分2840は、スロット2812内に配設される。図28Bにも示されるように、x軸は一般に頬舌軸に対応し得、y軸は一般に咬合面歯肉軸に対応し得、z軸は一般に近遠心軸に対応し得る。
【0179】
図28Cは、図28Bに示す固定部材2800及びアーム2830の拡大断面側面図であり、固定部材2800とアタッチメント部分2840との間の自由な遊びに伴って先に述べた問題をさらに説明することを意図している。図28Cに示すように、アタッチメント部分2840はスロット2812内に配設されるが、1つ以上の隙間2880(2880a~cとして識別される個々の隙間)が、アタッチメント部分2840とスロット2812の対応する隣接表面との間に存在する。このように、アタッチメント部分2840の、例えば、第1の方向(R)への回転は、アタッチメント部分2840をスロット2812に対して、ひいては固定部材2800に対して回転させる。すなわち、(θ)で示されるようなアタッチメント部分2840の最初の回転は、固定部材2800及び/又は患者の対応する歯に伝達されない。このような伝達の問題は、1つ以上の方向(例えば、近心、遠位、咬合、歯肉、頬側、及び/又は舌の方向)及び/又は1つ以上の軸(例えば、近遠心軸、咬合面歯肉軸、及び/又は頬舌軸)に関して発生(例えば、同時に発生)することがある。例えば、アタッチメント部分と固定部材との間の自由な遊びは、近遠心軸、咬合面歯肉軸、及び/又は頬舌軸を中心とした固定部材に対するアタッチメント部分のある程度の回転を許容し得る。その結果、アタッチメント部分と対応する固定部材の間の隙間により、そのような回転は対応する歯に伝達されないことになる。別の例として、アタッチメント部分と固定部材との間の自由な遊びは、近遠心軸、咬合面歯肉軸、及び/又は頬舌軸に沿って固定部材に対するアタッチメント部分のある程度の初期移動を許容し得る。その結果、アタッチメント部分と対応する固定部材の間に隙間があるため、そのような動きは対応する歯に伝達されないことになる。
【0180】
図29Aは、本技術の実施形態によって構成された別の固定部材2900の斜視図であり、器具のアームと固定部材との間の自由な遊びに関する上述した概念の別の例である。図29Aに示すように、固定部材2900は、(i)患者の歯に取り付けられる第1の裏面又は表面と、第2の対向する側面又は表面とを有する本体領域2905と、(ii)本体領域2905の第2の側面に取り付けられた1本以上のカップリングアーム2910と、を含む。各カップリングアーム2910は、本体領域2905に固定された第1の、長尺部分2912と、第1の部分2912から延び、本体領域2905から部分的に離間している第2の、結合部分2914と、を含み得る。結合部分2914は、(図29Bに示されるように)歯科矯正器具又はアームの一部分を受け取り、部分的に取り囲むように構成されたスロット又は開口2915を規定し得る。いくつかの実施形態において、固定部材2900は、Bernhard Foerster GmbHによって製造された市販の2D(登録商標)リンガルブラケットであり得る。
【0181】
図29Bは、図29Aに示す固定部材2900に結合された歯科矯正器具のアーム2930の一部分を示す斜視図である。図29Bに示すように、アーム2930は、スロット2915内に配設された領域又は延長部2965を有するアタッチメント部分又は端部2940を含む。図29Bにも示すように、アーム2930及び固定部材2900が患者の口内に装着されるとき、x軸は一般に頬舌軸に対応し、y軸は一般に咬合面歯肉軸に対応し、z軸は一般に近遠心軸に対応し得る。
【0182】
図29Cは、図29Bに示される固定部材2900及びアタッチメント部分2940の一部分の拡大側面図であり、固定部材2900とアーム2930との間の自由な遊びに伴って先に述べた問題をさらに説明することを意図している。図29Cに示すように、アタッチメント部分2940の領域2965は、領域2965と固定部材2900のカップリングアーム2910の対応する隣接表面との間に1つ以上の隙間2980(2980a、2980b、2980cとして識別される個々の隙間)が存在するように固定部材2900に隣接して配設される。このように、アタッチメント部分2940と固定部材2900との間の自由な遊びは、近遠心軸、咬合面歯肉軸、及び/又は頬舌軸に沿ってカップリングアーム2910に対する領域2965のある程度の移動を許容し得る。例えば、図29Cに示すように、アタッチメント部分2940と固定部材2900との間の自由な遊びは、Y軸に沿った距離(D)及び/又はX軸に沿った距離(D)によるカップリングアーム2910に対する領域2965の移動を許容し得る。その結果、1つ以上の隙間2980のために、そのような動きは対応する歯に伝達されないであろう。別の例として、領域2965の第1の方向(R)への回転は、領域2965をカップリングアーム2910、ひいては固定部材2900に対して回転させ得る。すなわち、領域2965の最初の回転は、固定部材2900及び/又は患者の対応する歯に伝達されない場合がある。このような伝達の問題は、1つ以上の方向(例えば、近心、遠位、咬合、歯肉、頬側、及び/又は舌の方向)及び/又は1つ以上の軸(例えば、近遠心軸、咬合面歯肉軸、及び/又は頬舌軸)に関して発生(例えば、同時に発生)することがある。例えば、アタッチメント部分2940と固定部材2900との間の自由な遊びは、固定部材2900に対するアタッチメント部分2940の近遠心軸、咬合面歯肉軸、及び/又は頬舌軸を中心としたある程度の回転を許容し得る。その結果、アタッチメント部分2940と対応する固定部材2900との間に隙間があるため、そのような回転は対応する歯に伝達されないであろう。
【0183】
本技術の実施形態は、歯列矯正装置を設計する際に自由な遊びを考慮することによって、アタッチメント部分と固定部材との間の自由な遊びに伴うこの問題(図28A~29Cを参照して説明したような)を軽減し得る。図30は、本技術の実施形態による、設計パラメータを生成し、及び/又は歯科矯正器具又は関連するフィクスチャを製造するための方法3000の流れ図である。方法3000は、患者のOTAに対応するデータを取得すること(プロセス部分3002)と、患者の第1のFTAに対応するデータを取得すること(プロセス部分3004)とを含む。本明細書の他の箇所に記載されているように、OTAは、患者の歯の走査に基づき得るとともに、FTAは、OTA及び歯の所望の最適位置決めに基づいて、オペレータによって決定され得る、及び/又は提供され得る。
【0184】
方法3000は、器具のアタッチメント部分と対応する固定部材との間の予想される自由な遊びに部分的に基づいて、第2のFTA(第1のFTAとは異なる)に対応するデータを判定すること(プロセス部分3006)をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、予想される自由な遊びは、予想される自由な遊びが既知である、又は器具の製造前に決定することができるという点で、(例えば、使用されるアタッチメント部分及び固定部材に基づく)所定のパラメータであり得る。いくつかの実施形態において、予想される自由な遊びは、器具又はその部分(例えば、アーム、付勢部分、アタッチメント部分など)の設計(例えば、形状、厚み、ばねのタイプなど)を修正させる寸法又は角度に対応し得る。例えば、アタッチメント部分と固定部材との間の予想される自由な遊びが第1の方向(例えば、近遠心軸、咬合面歯肉軸、及び/又は頬舌軸に関する方向)に15°で、特定の歯(例えば、OTAから第1のFTAまで)に必要な第1の方向の総回転が45°であれば、器具のアーム(例えば、アタッチメント部分)は第1の方向に60°回転するよう設計し得る。そうすることで、アーム又はアタッチメント部分は、対応する固定部材を介して対応する歯に結合されると、対応する固定部材に対して15°回転し、その後、所望の通り、対応する固定部材及び対応する歯とともに45°回転することになる。先に説明したように、自由な遊びは、個々のアームについて、複数の方向及び/又は複数の軸について同時に調整し得る。追加的又は代替的に、器具の各アームの自由な遊びは、他のアームに対して一意に調整し得る。
【0185】
いくつかの実施形態において、方法3000は、プロセス部分3006を省略し、予想される自由な遊びを考慮する単一のFTAのみを含み得る。そのような実施形態において、方法3000は、患者のOTAに対応する第1のデータを受信することと、患者のFTAに対応する第2のデータを提供することとを含み得て、一方、第2のデータは、器具のアタッチメント部分と対応する固定部材又はその部分との間の予想される自由な遊びに少なくとも部分的に基づくものである。
【0186】
いくつかの実施形態において、方法3000は、少なくとも第2のFTAに対応するデータに従ってフィクスチャ及び/又は器具を製造することをさらに含み得る。このようなフィクスチャ及び/又は器具の製造は、本明細書の他の箇所に記載された製造プロセスに対応し得る。
【0187】
B.器具の材料特性を考慮する
本技術の器具は、患者の歯をOTAから経路に沿って決定された最適なFTAに動かすように構成される。先に説明したように、器具は、その無負荷又は無応力状態において、患者の歯のFTAに概ね対応する構成を有するように製造され得る。この器具は患者の口内に移植され、器具の個々のアームは患者の歯に接着された対応する固定部材に結合される。個々のアームがOTAの患者の歯にある対応する固定部材に結合されると、器具は負荷がかかった又は応力がかかった構成をとる。このような負荷のかかった構成では、器具に最も応力がかかる状態が多いため、塑性変形を起こす可能性が最も高くなる。塑性変形が生じると、個々のアームがOTAからFTAに所望の経路で移行しない可能性があり、及び/又は対応する歯に必要な力を与えることができない可能性がある。より一般的には、塑性変形は患者の歯の治療効果を制限し、歯がFTAに到達するのを阻止又は阻害することになる。
【0188】
本技術の実施形態は、歯科矯正器具及び/又はフィクスチャを設計する際に、塑性変形を考慮する、より詳細には塑性変形を回避することによって、これらの問題を軽減し得る。先に説明したように、本技術の実施形態は、OTAからFTAまでの患者の歯の経路を決定し得る。このように、OTAに概ね対応する第1の構成からFTAに概ね対応する第2の構成への器具の経路も知られている。器具の個々のアームの予想される経路及び器具を形成するために使用される材料(複数可)(例えば、アーム、付勢部分、アタッチメント部分など)に基づいて、本技術の実施形態は、各アームに対して塑性変形が生じる器具の降伏強度を判定し、必要に応じて回避し得る。例えば、本技術の実施形態は、OTAに概ね対応する第1の構成、又はOTAとFTAとの間の他の構成にあるとき、器具の個々のアームが受ける応力をシミュレートすることができるようになり得る。そのような構成においてアームの1つが受ける応力が、アームの材料に対する降伏強度を超えると予想される場合には、本技術の実施形態は、降伏強度を超えないようにアームの1つ以上のパラメータを調整し得る。いくつかの実施形態において、アームの1つ以上のパラメータを変更することは、器具の任意の部分(例えば、アンカ、アーム、及び/又は付勢部分)の形状、構成、及び/又は寸法(例えば、長さ、幅、及び/又は厚み)を変更することを含み得る。これらのパラメータのうち1つ以上を変更することで、アームの降伏強度を、受けると予想される最高応力よりも大きくし得る。例として、特定の付勢部分(例えば、スプリング設計)は、他の付勢部分よりも大きな応力を受け得る。したがって、OTAからFTAへのアームの移動がアームの降伏強度を超えると判定された場合、本技術の実施形態は、アームの付勢部分を変更してその降伏強度を高め、それによって塑性変形を回避し得る。
【0189】
追加的又は代替的に、降伏強度が超過する可能性があるという判定に応答して器具の一部分を変更することで、本技術の実施形態は、器具の降伏強度が経路に沿って超過しないように、OTAからの患者の歯の経路を変更し得る。すなわち、患者の歯を第1の経路に沿ってOTAからFTAに動かすと降伏強度が超過することになる場合、本技術の実施形態は、代わりに、器具、より詳細には器具の対応するアームを変更して、患者の歯が第1の経路とは異なる第2の経路に沿ってOTAからFTAに動いて、降伏強度が超過されないようにし得る。
【0190】
図31は、本技術の実施形態による、設計パラメータの生成及び/又は歯科矯正器具若しくは関連するフィクスチャの製造のための方法3100の流れ図である。方法3100は、患者のOTAに対応するデータを取得すること(プロセス部分3102)と、患者のFTAに対応するデータを取得すること(プロセス部分3104)とを含む。本明細書の他の箇所に記載されているように、OTAは、患者の歯の走査に基づき得て、FTAは、OTA及び歯の所望の位置に基づいて、オペレータによって決定及び/又は提供され得る。
【0191】
方法3100は、器具が降伏強度に関連付けられている所定の閾値を超えると予想されるかどうかを判定すること(プロセス部分3106)をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、プロセス部分3106は、第1の構成(例えば、OTAに対応する)から第2の構成(例えば、FTAに対応する)に向かって移行するように構成された器具が、器具の降伏強度を超えることが予想されるかどうかを判定することを含み得る。追加的又は代替的に、器具が降伏強度を超えると予想されるかどうかを判定することは、器具の任意の部分(例えば、個々のアーム、付勢部分、アタッチメント部分など)が降伏強度を超えると予想されるかどうかを判定することを含み得る。このように、本技術の実施形態は、第1の構成(例えば、OTAにおいて)、第2の構成(例えば、FTAにおいて)、及び/又は第1の構成と第2の構成との間の経路に沿った複数の離散点(例えば、中間の歯の配置(ITA)において)にあるときに器具又はその任意の部分が受ける応力を判定し得る。
【0192】
いくつかの実施形態において、器具が降伏強度を超えると予想されるかどうかを判定することは、例えば、器具を形成する材料(複数可)のヒステリシス挙動に基づき得る。本技術に関して、ヒステリシスは、アームがOTAからFTAへの経路に沿って圧縮又は張力を受けているかどうかに応じて、器具のアームが通る経路を変更し得る。例えば、ニチノールやニッケルチタン合金を含むアームは、引張時のアームとは異なる、圧縮時の応力-ひずみ曲線に追従し得る。したがって、OTAとFTAとの間及びそれを含む離散点における器具又はその任意の部分の予想される応力を判定することに加えて又はそれに代えて、本技術の実施形態は、器具がこれらの離散点に位置する前に器具又はその任意の部分の構成を考慮し得る。
【0193】
いくつかの実施形態において、方法3100は、器具が所定の閾値を超えると予想される場合、降伏強度が超えないように器具を修正すること(プロセス部分3108)を含み得る。そのような方法で器具を修正することは、(i)器具(例えば、アンカ、アーム、及び/又は付勢部分)の形状、構成、及び/又は寸法(例えば、長さ、幅、及び/又は厚み)、及び/又は(ii)アームの材料を変更することを含み得る。これらのパラメータの1つ以上を変更することにより、アームの降伏強度を、受けると予想される最も高い応力よりも大きくし得て、それによって、患者の歯の治療効果を制限する方法で器具(又はその任意の部分)が塑性変形しないことを保証し得る。例として、器具が所定の閾値を超えると判定された場合、器具の単一の付勢部分(例えば、ばね)は、2つ以上の低負荷付勢部分と交換され得る。このような交換は、所定の閾値を超えると予想される器具のアームごとに実施してもよい。
【0194】
いくつかの実施形態において、方法3100は、フィクスチャ及び/又は器具を製造することをさらに含み得る。このようなフィクスチャ及び/又は器具の製造は、本明細書の他の箇所に記載された製造プロセスに対応し得る。
C.製造上のばらつきを考慮する
【0195】
先に説明したように、歯科矯正器具の3D構成は、FTAに概ね対応する3D構成をとるために器具の実質的に平面状の構成を曲げることによって作成し得る。いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所に記載されているように、この曲げることは、器具の実質的に平面状の構成を、FTAに概ね対応する熱処理フィクスチャに(例えば、結紮ワイヤを介して)取り付け(潜在的には、先に記載されたように、若干の修正を伴って)、次いで、実質的に平面状の構成に熱処理して、器具が熱処理後に3次元構成をとり、3次元構成を維持するようにすることによって、達成される。いくつかの実施形態において、器具は、少なくとも部分的に超弾性材料(例えば、ニチノール)から作られる。このような実施形態では、熱処理後の超弾性材料が実質的にその弾性特性を確実に維持するように、先に述べた熱処理プロセスは比較的穏やかであり得る。しかしながら、そのような穏やかな熱処理の結果として、3D構成の器具又はその一部分は、熱処理プロセスが完了し、器具がフィクスチャから取り外された後、以前の実質的に平面状の構成に向かって部分的に後退する傾向があり得る。例えば、3D構成の器具の個々のアームは、器具が熱処理後にフィクスチャから取り外された後に、方向(例えば、舌側、頬側、歯肉側、咬合側、近心、及び/又は遠位方向)又は軸(例えば、近遠心軸、咬合面歯肉軸及び/又は頬舌軸)に対して移動し得る。その結果、熱処理された器具の3次元構成は、フィクスチャ、より一般的にはFTAの形状に正確に対応しない場合がある。このような相違は、器具の個々のアームが目標とする力とは異なる力(例えば、方向及び/又は大きさ)を加える原因となり、したがって、患者の歯が所望のFTAに達するのを妨げ得る。
【0196】
図32は、本技術の実施形態による歯科矯正器具100の側面斜視図であり、熱処理後に後退する器具に関する問題をさらに説明するためのものである。例示の目的のために、器具100の単一のアーム130のみが示されているが、当業者であれば、本明細書に記載された原理が器具の任意のアーム130(例えば、図16に示された器具100)に適用し得ることを理解できよう。図32に示すように、アーム130は、患者の歯のFTAに対応する軸(AFTA)に沿って延びている。先に説明したように、少なくとも部分的には器具の材料に起因して、器具をフィクスチャの上で熱処理されてそこから離すと、器具はFTAの位置以外の前の位置に後退する傾向がある。図32に示すように、軸(A)は、例えば、軸(AFTA)から後退した後に器具が有するであろう配置に対応する。すなわち、アーム130が軸AFTAに沿って配置されている間にフィクスチャが熱設定された場合、後退した後に得られる器具のアーム130は、熱設定された軸(AFTA)から離れて、及び/又はより平面状の構成に向かって偏向されている軸(A)に沿って配置されることになる。このようなアーム、又は一般に器具は、軸(AFTA)から離間しているため、患者の歯に接着された固定部材に結合されると、目標とするものとは異なる力を与え、したがって、患者の歯がFTAに達するのを妨ぐ。
【0197】
本技術の実施形態は、歯科矯正器具及び/又はフィクスチャを設計する際に、器具の材料特性及び熱処理に伴う凹凸、又はより一般的には製造プロセスを考慮することによって、この問題を軽減し得る。例えば、本技術の実施形態は、熱処理後に後退してFTAに概ね対応する構成となるように器具を設計し、及び/又は製造し得る。図32に示すように、軸(A)は、熱処理後かつ器具がフィクスチャから取り外される前のフィクスチャ及び/又は器具の配置に対応する。熱処理後、及びフィクスチャから取り外された後、器具100のアーム130は、一般に、軸(A)から患者の歯のFTAに対応する軸(AFTA)へと後退し得る。したがって、軸(A)は、器具100のアーム130が、器具が熱処理された後に対応する歯のFTAに対応する配置となることを可能にする位置に対応し得るとともに、一方では、例えば、患者の歯をFTAに再配置し得る、材料の望ましい弾性特性を維持する。別の言い方をすれば、フィクスチャが軸(A)に対応する配置となるように設計されている場合、予想される後退の後にフィクスチャを介して形成される結果としての器具は、軸(AFTA)に対応する配置となり得る、又は軸(AFTA)に沿って配置され得る。いくつかの実施形態において、軸(A)から軸(AFTA)への後退量は、軸(AFTA)から軸(A)への後退量と同じであってもよいし、異なっていてもよい。したがって、このような後退量の変化は、製造プロセス中、例えばフィクスチャを設計する際に考慮し得る。
【0198】
図33は、本技術の実施形態による、設計パラメータの生成及び/又は歯科矯正器具若しくは関連するフィクスチャの製造のための方法3300の流れ図である。方法3300は、患者のOTAに対応するデータを取得すること(プロセス部分3302)と、患者の第1のFTAに対応するデータを取得すること(プロセス部分3304)とを含む。本明細書の他の箇所に記載されているように、OTAは、患者の歯の走査に基づき得て、FTAは、OTA及び歯の所望の位置に基づいて、オペレータによって決定及び/又は提供され得る。
【0199】
方法3300は、装置の製造に伴って起きると予想される歯列矯正装置の変動に基づいて、(第1のFTAとは異なる)第2のFTAに対応するデータを判定すること(プロセス部分3306)をさらに含み得る。予想される変動は、FTAの位置又は配置に対する熱処理後の(先に述べたような)後退した器具の予想される異なる位置又は配置に対応し得る。例えば、後退した器具の特定のアームの位置が、FTAにおける対応するアームの位置から(例えば、舌側、咬合、及び/又は遠位方向に)離間している場合、予想される変動、ひいては第2のFTAに対応するデータは、後退位置におけるアームと第2のFTA位置におけるアームとの位置差に対応し得る。予想される変動は、予想される変動が既知であるか、又は器具の製造前に判定することができるという点から、所定のパラメータであり得る。いくつかの実施形態において、予想される変動は、(i)器具(例えば、アンカ、アーム、及び/又は付勢部分)の形状、構成、及び/又は寸法(例えば、長さ、幅、及び/又は厚み)、(ii)器具の材料(複数可)、(iii)適用された又は適用が見込まれる熱処理の種類(例えば、熱処理の最高温度、熱処理の経過時間、など)、及び/又は(iv)特定の患者の歯列の他の態様、などを含む1つ以上の要因に基づき得る。いくつかの実施形態において、予想される変動は、器具の各アームに固有であり得る。このように、予想される変動は、各アーム(例えば、各付勢部分、アタッチメント部分など)に対して行われる異なる値又は修正に対応し得る。
【0200】
いくつかの実施形態において、方法3300は、プロセス部分3306を省略し、器具の予想される変動を考慮する単一のFTAのみを含み得る。そのような実施形態では、方法3300は、患者のOTAに対応する第1のデータを受信することと、患者のFTAに対応する第2のデータを提供することとを含み得て、第2のデータは、上述のように、製造に伴って起きると予想される器具又はフィクスチャの変動に部分的に基づく。
【0201】
いくつかの実施形態において、方法3300は、少なくとも第2のFTAに対応するデータに従ってフィクスチャ及び/又は器具を製造することをさらに含み得る。このようなフィクスチャ及び/又は器具の製造は、本明細書の他の箇所に記載された製造プロセスに対応し得る。
【0202】
D.再配置後の予想される歯の動きを考慮する
本技術の器具は、患者の歯をOTAから決定された最適なFTAへの経路に沿って再配置するように構成される。FTAに到達した後、患者の歯は歯科矯正の後戻りが起こり得、以前の位置(例えば、OTA)に向かって、ひいては最適な位置から遠ざかる方向に動き得る。例えば、患者の歯は、器具を介してFTAに歯が再配置された後、一般的に部分的に頬側方向及び/又は部分的に咬合方向に動き得る。そのため、後戻り後の患者の歯は、もはやFTAとは類似していないこともある。このような後戻りを防止するために保定装置や他のデバイスが使用され得るが、複数の理由(患者のコンプライアンス不足など)により、これらのデバイスは有効でないことが多い。
【0203】
本技術の実施形態は、歯科矯正器具及び/又はフィクスチャを設計する際に歯科矯正の後戻りを考慮することによって、これらの問題を軽減し得る。先に説明したように、歯科矯正器具の3D構成は、器具の実質的に平面状の構成を曲げて、FTAに概ね対応する3D構成をとることによって作成し得る。いくつかの実施形態において、この曲げることは、器具の実質的に平面状の構成を、FTAに概ね対応するフィクスチャに取り付け(先に記載されたように、若干の修正を伴って)、次いで、実質的に平面状の構成に熱処理して、器具が3次元構成をとり、3次元構成を維持するようにすることによって、達成される。患者の歯をFTAに再配置した後の歯科矯正の後戻りを考慮するために、本技術の実施形態は、発生すると予想される後戻りの量を判定し、それに応じて器具及び/又はフィクスチャの設計を変更し得る。
【0204】
図34は、本技術の実施形態による、設計パラメータの生成及び/又は歯科矯正器具若しくは関連するフィクスチャの製造のための方法3400の流れ図である。方法3400は、患者のOTAに対応するデータを取得すること(プロセス部分3402)と、患者の第1のFTAに対応するデータを取得すること(プロセス部分3404)とを含む。本明細書の他の箇所に記載されているように、OTAは、患者の歯の走査に基づき得るとともに、FTAは、OTA及び歯の所望の最適位置決めに基づいて、オペレータによって決定され得る、及び/又は提供され得る。
【0205】
方法3400は、例えば、第1のFTA及び/又は第2のFTAへの再配置後の患者の歯の予想される後戻りに部分的に基づいて、第2のFTA(第1のFTAとは異なる)に対応するデータを判定すること(プロセス部分3406)をさらに含み得る。第2のFTAは、予想される後戻りによって患者の歯が第2のFTAから第1のFTAに移行するような歯の配置に対応し得て、これは、患者にとって最適な歯の配置である。その結果、いくつかの実施形態において、第2のFTAに概ね対応する構成を有する器具は、第1のFTAに概ね対応する構成を有する器具の対応する個々のアームの位置から特定の方向(例えば、舌、頬、歯肉、咬合、近心、及び/又は遠位方向)及び/又は特定の軸(例えば、近遠心、咬合面歯肉、及び/又は頬舌)に関して離間した位置をとる個々のアームを有し得る。
【0206】
いくつかの実施形態において、予想される後戻りは、器具及び/又はフィクスチャを製造する前に知られているか又は判定され得るという点で、所定のパラメータであり得る。予想される後戻りの判定は、第2のFTA、第1のFTA、OTA、及び/又は患者の歯列に固有の他の要因に基づき得る。追加的又は代替的に、予想される後戻りは個々の歯で異なり得る。例えば、小さめの歯(切歯など)は大きめの歯(臼歯など)よりも後戻りしやすい。このように、個々の歯に対応する器具の個々の部分(例えば、アンカ、アーム、付勢部分、アタッチメント部分など)及び/又はフィクスチャは、その特定の部分に対する予想される後戻りに基づいて、異なるようにかつ明確に調整され得る。例えば、後戻りしやすいと予想される小さめの歯に対して行われる修正は、後戻りしにくいと予想される大きめの歯に対して行われる修正より小さくてもよい。
【0207】
いくつかの実施形態において、方法3400は、プロセス部分3406を省略し、器具の予想される後戻りを考慮する単一のFTAのみを含み得る。そのような実施形態では、方法3400は、患者のOTAに対応する第1のデータを受信することと、患者のFTAに対応する第2のデータを提供することとを含み得て、第2のデータは、再配置後の患者の歯の予想される後戻りに部分的に基づく。
【0208】
いくつかの実施形態において、方法3400は、少なくとも第2のFTAに対応するデータに従ってフィクスチャ及び/又は器具を製造することをさらに含み得る。このようなフィクスチャ及び/又は器具の製造は、本明細書の他の箇所に記載された製造プロセスに対応し得る。
【0209】
本明細書で詳述したいずれのプロセスも、本明細書で詳述した他のあらゆるプロセスと共に使用し得る。例えば、図19図25に関して説明したプロセスのいずれも、図26図34に関して説明したどのプロセスとも合わせて使用し得る。
【0210】
結論
実施形態の多くは、主に、患者の歯の舌側に配置された歯科矯正器具のためのシステム、デバイス、及び方法に関して上述されるが、本技術は、他の器具及び/又は他のアプローチ、例えば、患者の歯の顔面側に配置された歯科矯正器具に適用可能である。さらに、本明細書に記載されたものに加えて他の実施形態は、本技術の範囲内にある。追加的に、本技術の他のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されているものとは異なる構成、構成要素、又は手順を有し得る。したがって、当業者は、本技術が追加の要素を備えた他の実施形態を有することができること、又は本技術が、図1A図34を参照して上に示し、説明したいくつかの特徴なしに他の実施形態を有し得ることを理解できよう。
【0211】
本技術の実施形態の説明は、網羅的であること、又は本技術を上に開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。文脈が許す場合、単数又は複数の用語はまた、それぞれ、複数又は単数の用語を含み得る。例えば、複数のカップリングアームを使用するものとして本明細書に記載される実施形態は、より少ない(例えば、1つ)、又はより多い(例えば、3つの)カップリングアームを含むように同様に修正され得る。本技術の特定の実施形態及びその例は、例示の目的で上に説明されているが、様々な同等の修正は、関連技術の当業者が認識するように、本技術の範囲内で可能である。例えば、ステップは所与の順序で提示されているが、代替の実施形態は、異なる順序でステップを実行し得る。本明細書に記載の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することも可能である。
【0212】
さらに、「又は」という単語が、2つ以上のアイテムのリストに関して他のアイテムから排他的な単一のアイテムのみを意味するように明示的に限定されない限り、そのようなリストにおける「又は」の使用は、(a)リスト内の任意の単一のアイテム、(b)リスト内の全てのアイテム、又は(c)リスト内のアイテムの任意の組み合わせ、を含むと解釈される。追加的に、「含む」という用語は少なくとも列挙された特徴(複数可)を含むことを意味し、同じ特徴及び/又は追加のタイプの他の特徴のより多くの数が排除されないために全体を通して使用される。特定の実施形態は、例示の目的で本明細書に記載されているが、様々な変更を本技術から逸脱することなく行い得ることも理解できよう。さらに、本技術の特定の実施形態に関連付けられている利点は、それらの実施形態の文脈で説明されてきたが、他の実施形態もそのような利点を示し得て、また全ての実施形態が、本技術の範囲内に入るために必ずしもそのような利点を示す必要はない。したがって、本開示及び関連する技術は、本明細書に明示的に示されていない、又は記載されていない他の実施形態を包含し得る。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図29C
図30
図31
図32
図33
図34