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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】基地局、受信方法及び集積回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20250210BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20250210BHJP
   H04W 52/30 20090101ALI20250210BHJP
【FI】
H04L27/26 200
H04L27/26 114
H04B7/06 984
H04W52/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023018329
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2020500323の分割
【原出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2023058618
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2018025861
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞木 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩井 敬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀俊
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/112374(WO,A1)
【文献】LG Electronics,Text proposals on UL PT-RS power boosting and DL PT-RS reception,3GPP TSG RAN WG1 Meeting AH 1801 R1-1800369,2018年01月13日,pp.1-8,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_AH/NR_AH_1801/Docs/R1-1800369.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02 - 7/12
H04L 1/02 - 1/06
H04L 27/00 - 27/30
3GPP TSG RAN WG1-4
3GPP TSG SA WG1-2
3GPP TSG CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信における、位相トラッキング用参照信号(PT-RS)とデータ信号との電力比率を変更することによって、前記PT-RSのパワーブースティング適用後の送信電力を調整するか否かを判断するための指示を、端末に送信する送信部と、
前記指示に基づいて調整された送信電力で、前記端末から送信された前記PT-RSを受信する受信部と、
を具備する、
基地局。
【請求項2】
前記PT-RSの送信電力は、前記PT-RSが送信されるアンテナポートの最大送信電力以下に調整される、
請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記指示に基づいて、前記PT-RSが送信されるアンテナポートにおける前記送信電力が調整され、前記アンテナポート以外の他のアンテナポートにおける送信電力は調整されない、
請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
前記指示に基づいて、前記PT-RSの送信電力が調整され、データ信号の送信電力は調整されない、
請求項1に記載の基地局。
【請求項5】
前記指示に基づいて、前記PT-RSのリソース・エレメント(RE)あたりの前記送信電力が、データ信号のREあたりの送信電力よりも大きくなるように、調整される、
請求項1に記載の基地局。
【請求項6】
前記指示に基づいて、前記PT-RSのリソース・エレメント(RE)あたりの前記送信電力が、データ信号のREあたりの送信電力よりも大きくなるように調整されるか否かが決定される、
請求項1に記載の基地局。
【請求項7】
前記端末全体の最大送信電力及びデータ信号の送信電力を用いて算出されるPHR(Power Headroom Report)が閾値未満の場合、前記送信電力が調整される、
請求項1に記載の基地局。
【請求項8】
前記端末の前記PT-RSが送信されるアンテナポートにおける最大送信電力及びデータ信号の送信電力を用いて算出されるPHR(Power Headroom Report)が閾値未満の場合、前記送信電力が調整される、
請求項1に記載の基地局。
【請求項9】
前記送信部は、信号波形、符号化変調方式及び割当帯域の少なくとも1つの指示を送信し、
前記指示に基づいて、前記PT-RSのリソース・エレメント(RE)あたりの前記送信電力が、データ信号のREあたりの送信電力よりも大きくなるように調整されるか否かが決定される、
請求項1に記載の基地局。
【請求項10】
基地局が、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信における、位相トラッキング用参照信号(PT-RS)とデータ信号との電力比率を変更することによって、前記PT-RSのパワーブースティング適用後の送信電力を調整するか否かを判断するための指示を、端末に送信し、
前記基地局が、前記指示に基づいて調整された送信電力で、前記端末から送信された前記PT-RSを受信する、
受信方法。
【請求項11】
ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信における、位相トラッキング用参照信号(PT-RS)とデータ信号との電力比率を変更することによって、前記PT-RSのパワーブースティング適用後の送信電力を調整するか否かを判断するための指示を、端末に送信する処理と、
前記指示に基づいて調整された送信電力で、前記端末から送信された前記PT-RSを受信する処理と、
を制御する、
集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信機及び送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G)と呼ばれる通信システムが検討されている。5Gでは、通信トラフィックの増大、接続する端末数の増大、高信頼性、低遅延が必要とされるそれぞれのユースケース毎に機能を柔軟に提供することが検討されている。代表的なユースケースとして、拡張モバイルブロードバンド(eMBB:enhanced Mobile Broadband)、大規模コミュニケーション/多数接続(mMTC:massive Machin Type Communications)、超信頼性・低遅延 コミュニケーション(URLLC:Ultra Reliable and Low Latency Communicant)の3つがある。国際標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、LTEシステムの高度化と、New RAT(Radio Access Technology)(例えば、非特許文献1を参照)の両面から、通信システムの高度化を検討している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】RP-161596, "Revision of SI: Study on New Radio Access Technology", NTT DOCOMO, September 2016
【文献】R1-1612335, "On phase noise effects", Ericsson, November 2016
【文献】3GPP TR 38.214 V15.0.0, "NR Physical layer procedure for data (Release 15)" (2017-12)
【文献】R1-1611665, "Multi-panel based UL MIMO transmission", Huawei, HiSilicon, November 2016
【文献】3GPP TR 38.211 V15.0.0, "NR Physical channels and modulation (Release 15)" (2017-12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
New RATでは、例えば、6GHz以上の周波数の信号が搬送波として利用される。特に、高い周波数帯かつ高次の変調多値数(Modulation order)を使用する場合、局部発振器(Local Oscillator)の位相雑音(Phase Noise)によって発生するCPE(Common Phase Error、共通位相誤差)又はICI(Inter-carrier Interference、キャリア間干渉)によって誤り率特性が劣化する(例えば、非特許文献2を参照)。そこで、New RATでは、受信機が、チャネル等化(Channel Equalization)に加えて、位相トラッキング用参照信号(PT-RS:Phase Tracking Reference Signal)を用いたCPE補正(CPE Correction)又はICI補正(ICI Correction)(以下、「CPE/ICI補正」と呼ぶこともある)を行うことが検討されている。
【0005】
しかしながら、PT-RSを送信するアンテナポート(以下、「PT-RSポート」と呼ぶこともある)における送信電力制御については更なる検討が必要である。
【0006】
本開示の一態様は、PT-RSポートにおいて送信電力制御を適切に行うことができる送信機及び送信方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る送信機は、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲で、位相トラッキング用参照信号(PT-RS)及びデータ信号の送信電力を決定する制御回路と、前記決定された送信電力で、前記PT-RS及び前記データ信号を送信する送信回路と、を具備する。
【0008】
本開示の一態様に係る送信方法は、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲で、位相トラッキング用参照信号(PT-RS)及びデータ信号の送信電力を決定し、前記決定された送信電力で、前記PT-RS及び前記データ信号を送信する。
【0009】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、PT-RSポートにおいて送信電力制御を適切に行うことができる。
【0011】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】MIMOにおけるDMRS及びPT-RSのマッピング例を示す図
図2】パワーブースティングの一例を示す図
図3】ノンコヒーレント送信及びコヒーレント送信の一例を示す図
図4】ノンコヒーレント送信におけるPT-RSの送信例を示す図
図5】実施の形態1に係る送信機の一部の構成を示すブロック図
図6】実施の形態1に係る送信機の構成を示すブロック図
図7】実施の形態1に係る受信機の構成を示すブロック図
図8】実施の形態1に係る送信機の動作を示すフローチャート
図9】実施の形態1の動作例1に係る送信電力調整の一例を示す図
図10】実施の形態1の動作例2に係る送信電力調整の一例を示す図
図11】実施の形態1の動作例3に係る送信電力調整の一例を示す図
図12】実施の形態1の動作例4に係る送信電力調整の一例を示す図
図13】実施の形態1の動作例5に係る送信電力調整の一例を示す図
図14】実施の形態2に係る送信機の構成例を示すブロック図
図15】実施の形態2に係る受信機の構成例を示すブロック図
図16】実施の形態3に係る送信機の構成例を示すブロック図
図17】実施の形態3に係る受信機の構成例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[パワーブースティング]
PT-RSを送信するアンテナポート(PT-RSポート)の数と、データ及びDMRSを送信するアンテナポート(DMRSポート)の数とが異なる場合、1つのアンテナポートにおけるPT-RSのRE(Resource Element)あたりの送信電力は、同じ基地局・移動局間で送受信される1つのアンテナポートにおけるデータのREあたりの送信電力と比較して大きく設定されることがある。このPT-RSに対する送信電力制御を「パワーブースティング(power boosting)」と呼んでもよい。PT-RSのパワーブースティングによって、PT-RSの受信精度及びCPE/ICI推定精度が向上し、伝送速度/伝送効率の改善が期待できる。
【0015】
また、NRの上りコードブックベース送信(codebook based uplink)では、コヒーレント送信(full-coherent transmission)、ノンコヒーレント送信(non-coherent transmission)、及び、部分的コヒーレント送信(partial-coherent transmission)がサポートされることが想定されている。このうち、ノンコヒーレント送信及び部分的コヒーレント送信においては、アンテナポート毎に送信電力の上限(最大送信電力)が設けられるため、PT-RSのパワーブースティングは難しいとの意見がある。しかしながら、より高精度なCPE/ICI推定のためには、何れの送信方式においても、PT-RSを可能な限りパワーブースティングするべきである。よって、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信においても、PT-RSをパワーブースティングする方法について検討する必要がある。
【0016】
[PT-RS]
信号が割り当てられる周波数帯が高いほど、又は、信号に使用される変調多値数が高いほど、誤り率特性に対するCPE/ICIの影響は大きい。そこで、上述したように、高い周波数帯・高次の変調多値数を使用する場合には、受信機では、チャネル等化に加えて、PT-RSを用いたCPE/ICI補正を行うことが検討されている。
【0017】
PT-RSは、時間的にランダムに変動するCPE/ICIをトラッキングするために、チャネル推定用(復調用)の参照信号(DMRS:Demodulation Reference Signal)と比較して時間軸上に高密度にマッピングされる。具体的には、PT-RSは、シンボル毎、隣接する2シンボルのうち1シンボル、又は、隣接する4シンボルのうち1シンボル等の密度でマッピングされることが想定されている。また、CPE/ICIのサブキャリア間での変動は少ないという特性から、PT-RSは、周波数領域では比較的低密度にマッピングされる。具体的には、PT-RSは、RB(Resource Block)毎に1つ(例えば、1サブキャリア)、隣接する2RB毎に1つ、又は、隣接する4RB毎に1つ等の密度でマッピングされることが想定される。
【0018】
3GPP RAN1#88でのPT-RSに関する合意事項によると、PT-RSは、基地局(BS、eNB、gNB)と、上位レイヤシグナリング(例えば、RRC(Radio Resource Control)シグナリング)によって基地局から通知された移動局(端末、UE)との間で使用される。また、PT-RSの時間領域及び周波数領域での配置密度は、当該基地局と移動局との間で使用される変調多値数又は帯域幅等によって柔軟に変化することが想定されている。
【0019】
また、移動局がPT-RSの配置密度を判断する方法について検討されている。一つの方法としては、PT-RSの配置密度が、基地局からPT-RS専用の制御信号(例えば、DCI(Downlink Control Information)又はRRC信号等)によって通知されるという方法である(明示的通知/explicit indication)。他の方法としては、PT-RSの配置密度と他のパラメータ(例えば、変調多値数又は帯域幅等)との対応関係を決めておき、移動局が、通信時にDCIで通知される当該他のパラメータとその対応関係とを照合してPT-RSの配置密度を判断するという方法である(暗黙的通知/implicit indication)。なお、これらの方法以外の方法が使用される可能性もある。
【0020】
一方、チャネル推定に用いられるDMRSは、チャネル特性の周波数領域の変化が大きく、また、時間領域の変化が位相雑音ほど大きくないことから、PT-RSと比較して周波数領域には高密度に、時間領域には低密度にマッピングされる。さらに、New RATでは、データ復調のタイミングを早めるため、スロットの前方に配置されるfront-loaded DMRSの導入が想定されている。
【0021】
また、PT-RSは、あるDMRSと同一アンテナポート(このポートをPT-RSポートと呼んでもよい)に配置されること、また、PT-RSに対してDMRSポートと同じプリコーディングが適用されることが検討されている。このため、受信機では、PT-RSをDMRSと同様に、チャネル推定に利用する可能性もある。
【0022】
また、PT-RSはDMRSの一部として定義されることも考えられる。この場合、PT-RSとして使用されるDMRSは、他のDMRSよりも時間領域では高密度にマッピングされ、周波数領域では低密度にマッピングされる。また、位相雑音により発生するCPE/ICIの補正に使用する参照信号は、「PT-RS」とは異なる名称で呼ばれる可能性もある。
【0023】
また、New RATでは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)が使用されることが想定されている。すなわち、基地局、および、当該基地局が構成するセル内の1つ又は複数の移動局は、同じ時間・周波数リソースを用いる異なるプリコーディングに対応する複数のアンテナポートを用いて送受信することができる。
【0024】
基地局及び移動局では、それぞれの最大送信電力に制限がある。このため、データ送信に利用する複数のアンテナポートの送信電力の合計が送信電力の最大値を超えないように運用されることが想定されている。また、基本的には、アンテナポート同士のデータの送信電力は等しいことが想定されている。したがって、例えば、データ又は参照信号を1つのアンテナポートを用いて送信する場合と、n個のアンテナポートを用いて送信する場合とでは、アンテナポート1つあたりの送信電力は前者の方が後者よりもn倍大きいと考えられる。
【0025】
PT-RSは、基地局と、当該基地局が構成するセル内のそれぞれの移動局との間で送受信される。ここで、送信機(下りリンクでは基地局、上りリンクでは移動局)の局部発振器を共有するアンテナポートのグループ(DMRSポートグループと呼ばれてもよい)では、CPE/ICIの値が同じである可能性が高い。このため、このグループのうち何れか1つのアンテナポートからPT-RSが送信されることが想定されている。
【0026】
さらに、1つの移動局に対して送受信されるPT-RSは、データに対して時間/周波数/空間的に直交多重されることが考えられている。したがって、ある1アンテナポート(あるRE)においてPT-RSが送信される場合、当該移動局が使用する他のアンテナポートでは、当該REにおいて何も送信されない。言い換えると、あるREにおいては、1つのアンテナポートでPT-RS用に電力が使用され、他のアンテナポートでは一切の電力が使用されない(何も送信されない)。
【0027】
New RATでは、このような他のアンテナポートが使用していないリソースの電力を利用し、この使用していないリソースの電力分だけ、PT-RSの1アンテナポートのREあたりの送信電力を、データの1アンテナポートのREあたりの送信電力よりも大きくして送信する送信電力制御、すなわち、「PT-RSのパワーブースティング」が検討されている。
【0028】
一例として、図1は、MIMOにおけるDMRS、PT-RS、及びデータのマッピング例を示す。図1の最下部のサブキャリアにおけるRE(シンボル×サブキャリア)において、アンテナポート1000では、PT-RSが送信されている。このとき、アンテナポート1000でPT-RSが送信されているRE群と同一RE群(つまり、最下部のサブキャリア)において、アンテナポート1001では何も送信されない(blank)。
【0029】
図2は、PT-RSをパワーブースティングする前後のアンテナポート1000、1001の各々のREにおける送信電力割り当ての一例を示す。図2に示す例では、アンテナポート1000は、アンテナポート1001において使用していないREの電力をPT-RSに上乗せして(パワーブースティングして)、PT-RSを送信する。このため、図2に示すように、PT-RSのパワーブースティング後では、PT-RSが送信されるREのみでなく、アンテナポート1000全体の送信電力についても、アンテナポート1001の送信電力よりも大きくなる。
【0030】
ここで、非特許文献3における上りリンクのPT-RSのパワーブースティングに関する記載によると、上りリンクにおいてPT-RSが1つのアンテナポート(1つのPT-RSポート)において送信される場合、PT-RSポートにおける、1RE毎の「データの電力はPT-RSの電力の何倍であるか」を表す比率をρPTRS,iとし、次式によって求められる。
【数1】
【0031】
式(1)において、nlayer PUSCHは、基地局(つまり、受信機)に設定された送信データのレイヤ数を示す。
【0032】
[送信機のプリコーディング]
New RATの上りリンク送信では、コードブックベース送信(codebook based UL transmission)、及び、ノンコードブックベース送信(non-codebook based UL transmission)の2つの送信方法が想定されている(例えば、非特許文献3を参照)。さらに、コードブックベース送信では、移動局がサポートできるコヒーレント送信の種類によって、使用できるプリコーディング行列(precoding matrix)の数が異なる。コヒーレント送信に関する移動局の能力(UE capability)の種類は下記3つに分けられると想定される。
fullAndPartialAndNonCoherent
partialAndNonCoherent
Non-Coherent
【0033】
1つ目の「fullAndPartialAndNonCoherent」はすべてのコヒーレント送信のタイプをサポートできるcapabilityがあることを示す。2つ目の「partialAndNonCoherent」は部分的コヒーレント送信とノンコヒーレント送信をサポートできるcapabilityがあることを示す。3つ目の「Non-Coherent」はノンコヒーレント送信のみサポートできるcapabilityがあることを示す。
【0034】
ここで、「ノンコヒーレント送信」とは、複数の一様でないアンテナパネルが実装された送信機において、異なるアンテナパネルに対して独立したプリコーディングが適用される送信方式である(例えば、非特許文献4を参照)。この場合、異なるレイヤ上のデータは異なるパネルから送信される。「コヒーレント送信」とは、一様なアンテナパネルが実装された送信機において、全てのレイヤ上のデータがそれぞれ全てのアンテナパネルから送信できる送信方式である。また、「部分的コヒーレント送信」とは、一部のレイヤ群のデータが一部のアンテナパネル群から送信され、他のレイヤのデータが残りのアンテナパネル群から送信される送信方式である。
【0035】
表1は、レイヤ数2、アンテナポート数2のとき使用できると想定されるプリコーディング行列を示す(例えば、非特許文献5を参照)。コヒーレント送信では、表1の全ての行列が使用できる一方で、ノンコヒーレント送信では、表1の一番左の行列のみ使用できることが想定される。
【表1】
【0036】
図3は、ノンコヒーレント送信及びコヒーレント送信の送信例を示す。図3に示すように、ノンコヒーレント送信の場合、プリコーディング行列により、各レイヤ(Layer #1, #2)のデータは独立したパネルから送信される。
【0037】
図4は、ノンコヒーレント送信においてPT-RSを送信する場合の送信例を示す。前述したとおり、PT-RSは一部のアンテナポート(図4ではPort #1)で送信されてもよい。このため、ノンコヒーレント送信(又は部分的コヒーレント送信)の場合、PT-RSを送信するパネル(図4ではPort #1に対応するパネル)の送信電力が他のパネル(図4ではPort #2に対応するパネル)の送信電力よりも大きくなり得る。さらに、図4に示すPT-RSがパワーブースティングされると、当該パネルの送信電力が、性能として送信可能な電力を上回る可能性がある。この結果、PT-RSを含む信号が歪んだり、または、PT-RSが意図した電力で送信されなかったりして、CPE/ICI推定精度が劣化することで、データの伝送効率を劣化させる可能性がある。
【0038】
そこで、本開示の一態様では、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信において、PT-RSに対して適切に送信電力制御(パワーブースティングを含む)を行い、CPE/ICI推定精度を向上させ、データの伝送効率を向上させる方法について説明する。
【0039】
[信号波形]
New RATでは、下りリンク(基地局から移動局への方向、downlink)においてCP-OFDM(Cyclic Prefix - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式の使用が想定されている。一方、上りリンク(移動局から基地局への方向、uplink)においてCP-OFDM方式及びDFT-S-OFDM(Descrete Fourier Transform - Spread OFDM)方式の両方が検討されており、通信環境に合わせて通信方式を切り替えるなどして使用されることが想定されている。
【0040】
[PHR]
New RATでは、上りリンクの送信において、LTEと同様の送信電力余力情報(PHR:Power Headroom Report)の送信が想定されている。すなわち、送信機である移動局は、移動局の最大送信電力から実際のデータの送信電力を引いた値を、PHRとして基地局に報告する。ただし、PHRの値は、アンテナポート毎の送信電力の余力ではなく、全てのアンテナポートをまとめた、移動局全体としての値である。
【0041】
(実施の形態1)
[通信システムの概要]
本実施の形態に係る通信システムは、送信機100及び受信機200を備える。すなわち、上りリンクでは、送信機は移動局であり、受信機は基地局である。また、下りリンクでは、送信機は基地局であり、受信機は移動局である。
【0042】
図5は、本実施の形態に係る送信機100の一部の構成を示すブロック図である。図5に示す送信機100において、制御部101は、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲で、位相トラッキング用参照信号(PT-RS)及びデータ信号の送信電力を決定し、送信部105は、決定された送信電力で、PT-RS及びデータ信号を送信する。
【0043】
[送信機の構成]
図6は、本実施の形態に係る送信機100の構成を示すブロック図である。図6において、送信機100は、制御部101と、誤り訂正符号化部102と、変調部103と、信号割当部104と、送信部105と、アンテナ106と、を有する。
【0044】
制御部101には、送信機100の送信電力余力などの情報が入力される。制御部101は、この情報等に基づいて、データ又はPT-RS等の送信電力を決定する。そして、制御部101は、決定した送信電力を示す送信電力情報を信号割当部104に出力する。
【0045】
誤り訂正符号化部102は、入力される送信データ信号を誤り訂正符号化し、誤り訂正符号化後のデータ信号を変調部103に出力する。
【0046】
変調部103は、誤り訂正符号化部102から入力される信号に対して変調処理を施し、変調後のデータ信号を信号割当部104に出力する。
【0047】
信号割当部104は、DMRS、PT-RS、又は、変調部103から入力されるデータ信号を、時間・周波数領域にマッピングし、マッピング後の信号を送信部105に出力する。この際、信号割当部104は、制御部101から入力される送信電力情報に基づいて、各信号の送信電力を設定する。
【0048】
送信部105は、信号割当部104から入力される信号に対して、搬送波を用いた周波数変換などの無線送信処理を行い、無線送信処理後の信号をアンテナ106に出力する。
【0049】
アンテナ106は、送信部105から入力される信号を受信機200に向けて放射する。
【0050】
[受信機の構成]
図7は、本実施の形態に係る受信機200の構成例を示すブロック図である。図7において、受信機200は、アンテナ201と、受信部202と、信号分離部203と、チャネル推定部204と、CPE/ICI推定部205と、データ復調部206と、誤り訂正復号部207と、を有する。
【0051】
アンテナ201は、送信機100(図6を参照)から送信される信号を受信し、受信信号を受信部202に出力する。
【0052】
受信部202は、アンテナ201から入力される受信信号に対して、周波数変換などの無線受信処理を行い、無線受信処理後の信号を信号分離部203に出力する。
【0053】
信号分離部203は、受信部202から入力される信号の中のデータ信号、DMRS、及び、PT-RSがマッピングされた時間・周波数領域の位置を特定し、分離する。信号分離部203は、分離した信号のうち、データ信号をデータ復調部206に出力し、DMRSをチャネル推定部204及びCPE/ICI推定部205に出力し、PT-RSをチャネル推定部204及びCPE/ICI推定部205に出力する。
【0054】
チャネル推定部204は、信号分離部203から入力されるDMRSを用いてチャネルを推定し、チャネル推定値(チャネル情報)をデータ復調部206に出力する。なお、チャネル推定部204は、信号分離部203から入力されるPT-RSを用いてチャネルを推定してもよい。この場合、チャネル推定部204は、入力されるPT-RSの振幅に関する情報(例えば、送信機100から送信されるPT-RSとデータ信号との振幅(電力)比率)を用いて、PT-RSに基づくチャネル推定を行えばよい。
【0055】
CPE/ICI推定部205は、信号分離部203から入力されるPT-RS及びDMRSを用いてCPE/ICIを推定し、CPE/ICI推定値をデータ復調部206に出力する。
【0056】
データ復調部206は、チャネル推定部204から入力されるチャネル推定値及びCPE/ICI推定部205から入力されるCPE/ICI推定値を用いて、信号分離部203から入力されるデータ信号を復調する。データ復調部206は、復調信号を誤り訂正復号部207に出力する。
【0057】
誤り訂正復号部207は、データ復調部206から入力される復調信号を復号し、得られた受信データ信号を出力する。
【0058】
[送信機100及び受信機200の動作]
次に、送信機100及び受信機200の動作について詳細に説明する。
【0059】
図8は送信機100の処理のフローを示すフローチャートである。
【0060】
なお、送信機100は、例えば、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信を行う。
【0061】
まず、送信機100(制御部101)は、PT-RS及びデータ信号(DMRS)の送信電力を設定する(ST101)。この際、送信機100は、データ信号に対して規定の送信電力を設定し、PT-RSに対してパワーブースティングを適用してもよい。
【0062】
次に、送信機100(制御部101)は、設定した送信電力の調整が必要であるか否かを判断する(ST102)。例えば、送信機100は、PT-RSが送信されるアンテナポート(PT-RSポート)において、ST101で設定された送信電力で信号(PT-RS及びデータ信号)を送信するための余力電力が不足している場合、送信電力の調整が必要であると判断する。
【0063】
送信電力の調整が必要でない場合(ST102:NO)、送信機100は、ST104の処理に進む。
【0064】
一方、送信電力の調整が必要である場合(ST102:YES)、送信機100(制御部101)は、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように(つまり、最大送信電力以下に)、送信電力を調整する(ST103)。すなわち、送信機100は、設定された送信電力で信号を送信するための余力電力が不足している場合、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように送信電力を減少させる。
【0065】
そして、送信機100(送信部105)は、ST101で設定された送信電力又はST103で調整された送信電力で、各アンテナポートから信号を送信する(ST104)。
【0066】
次に、設定された送信電力で信号を送信するための余力電力が不足している場合における、送信機100による送信電力調整(図8のST103)の動作例1~5について詳細に説明する。
【0067】
なお、以下では、一例として、アンテナポート1000において、データ(DMRS)及びPT-RSが割り当てられ、アンテナポート1001において、データ(DMRS)が割り当てられる場合について説明する。また、送信機100は、例えば、高い周波数帯かつ高次の変調多値数を使用し、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信において、PT-RSに対してパワーブースティングを適用する。
【0068】
また、図9図13の左側は送信電力を低減する前(調整前)の各アンテナポート1000, 1001におけるデータ及びPT-RSに対して設定されるRE毎の送信電力を示し、図9図13の右側は送信電力を低減した後(調整後)の各アンテナポート1000, 1001におけるデータ及びPT-RSのRE毎の送信電力を示す。
【0069】
<動作例1>
送信機100は、まず、i番目のPT-RSポートにおける、1RE毎の「データの電力はPT-RSの電力の何倍であるか」を表す比率をρPTRS,iとし、次式によって求める。
【数2】
【0070】
ここで、NPTRSは、送信機100に設定されたPT-RSポート数(the # of PT-RS ports configured with the TX)を示す。また、nDMRS PTRS,iは、i番目のPT-RSポートに紐付けられたDMRSポートグループに属するDMRSポートの数(the # of DMRS ports associated with PT-RS port i)を示す。例えば、図9に示す例では、NPTRS=1となり、nDMRS PTRS,i=2となる。
【0071】
なお、送信機100は、式(2)の代わりに、式(1)を用いて比率ρPTRS,iを算出してもよい。
【0072】
次に、送信機100は、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように、信号の送信電力を低減(調整)する。
【0073】
図9は、動作例1における送信電力調整の一例を示す。
【0074】
図9に示すように、送信機100は、データとPT-RSとの電力の比率ρPTRS,iを調整前後で保ったまま、全てのアンテナポート1000,1001で送信されるPT-RS及びデータ信号の送信電力を低減する。すなわち、送信機100は、PT-RSポートであるアンテナポート1000のPT-RS及びデータ信号を低減するとともに、他のアンテナポート1001のデータ信号の送信電力も低減する。
【0075】
これにより、送信電力の調整後においてもアンテナポート間においてデータの送信電力が一定(同一)となるので、送信機100は、全てのアンテナポート上のデータを公平に送信できる。
【0076】
また、送信電力の調整前後においてデータとPT-RSとの送信電力の比率が変化しないので、当該比率を使用する受信処理に影響を与えない。
【0077】
また、受信機200は、「送信機100のPT-RSポートにおける、設定された送信電力で送信するための余力電力が不足している」という情報を得ている場合、この情報からPT-RSとデータとの振幅(電力)比率を推定し、推定した比率に基づいて、PT-RSを用いてチャネル推定を行ってもよい。
【0078】
<動作例2>
図10は、動作例2における送信電力調整の一例を示す。
【0079】
図10に示すように、送信機100は、データとPT-RSとの電力比率ρPTRS,iを調整前後で保ったまま、PT-RSポート(アンテナポート1000)で送信されるPT-RS及びデータ信号の送信電力を低減する。すなわち、送信機100は、PT-RSポートでは送信電力を低減するのに対して、PT-RSポート以外のアンテナポート1001では送信電力を低減しない。
【0080】
これにより、PT-RSポートでは、送信電力の調整前後においてデータとPT-RSとの送信電力の比率が変化しないので、当該比率を使用する受信処理に影響を与えない。
【0081】
また、PT-RSポート以外のアンテナポートでは、データの送信電力が低減されないので、受信機200におけるデータの受信精度の劣化を防ぐことができる。
【0082】
<動作例3>
図11は、動作例3における送信電力調整の一例を示す。
【0083】
図11に示すように、送信機100は、PT-RSポート(アンテナポート1000)において、PT-RSの送信電力を低減せずに維持したまま、データの送信電力を低減する。つまり、動作例3では、送信機100は、調整前におけるデータとPT-RSとの電力比率ρPTRS,iを維持しない。
【0084】
これにより、PT-RSポートでは、PT-RSの送信電力が減少しないので、受信機200におけるPT-RSの受信精度の劣化を防ぐことができる。
【0085】
<動作例4>
図12は、動作例4における送信電力調整の一例を示す。
【0086】
図12に示すように、送信機100は、PT-RSポート(アンテナポート1000)において、データがマッピングされるREのうちの一部のREにおいて、何も送信しないことで、送信電力を低減する。つまり、動作例4では、送信機100は、PT-RSポートにおいて、データ信号がマッピングされた一部のREにおいて送信電力を低減し、他のREにマッピングされたPT-RS及びデータ信号の送信電力を低減せずに維持する。
【0087】
これにより、PT-RSポートでは、送信機100から実際に送信されるREにおけるPT-RS及びデータの送信電力が減少しないので、受信機200におけるPT-RS及びデータの受信精度の劣化を防ぐことができる。
【0088】
<動作例5>
図13は、動作例5における送信電力調整の一例を示す。
【0089】
図13に示すように、送信機100は、PT-RSポート(アンテナポート1000)において、PT-RSの送信電力をデータ信号の送信電力まで低減する。すなわち、送信機100は、PT-RSポートにおいて、PT-RSの送信電力を低減し、データ信号の送信電力を低減しない。
【0090】
つまり、図13に示すように、送信機100は、データとPT-RSとの電力比率ρPTRS,i=1とし、PT-RSを、データと同一の「アンテナポートあたり、REあたりの電力」で送信する。換言すると、送信機100は、PT-RSのパワーブースティングを解除する。
【0091】
これにより、データ信号の送信電力が減少しないので、受信機200におけるデータの受信精度の劣化を防ぐことができる。
【0092】
なお、図13では、PT-RSの送信電力をデータ信号の送信電力まで低減する場合について説明したが、これに限定されず、送信機100は、PT-RSポートの最大送信電力を超えないように、PT-RSの送信電力を低減してもよい。すなわち、調整後のPT-RSの送信電力は、データ信号の送信電力よりも大きくてもよく、小さくてもよい。
【0093】
以上、動作例1~5について説明した。
【0094】
このように、本実施の形態では、送信機100は、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信する場合に、規定の送信電力でデータ信号を送信し、PT-RSをパワーブースティングして送信する。この際、PT-RSポートにおいて、設定された送信電力で送信するための余力電力が不足している場合、送信機100は、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように送信電力を調整する。
【0095】
すなわち、送信機100は、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲において、PT-RS、及び、PT―RSと同時に送信される信号(データなど)の送信電力を設定する。この送信電力の設定には、PT-RSのパワーブースティングの適用及び解除が含まれてもよい。また、送信機100は、PT-RSポートにおいて設定された送信電力がPT-RSポートの最大送信電力を超える場合、送信電力を、アンテナポート毎の最大送信電力以下に調整する。
【0096】
これにより、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信のように、アンテナポート間で電力の調整ができない送信においても、送信機100は、送信機100の送信電力の余力に応じて、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲で、PT-RSを可能な限り強い電力で送信できる。これにより、受信機200では雑音推定精度を向上でき、伝送速度/伝送効率の改善が期待できる。
【0097】
また、送信機100は、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように送信電力を調整することにより、送信機100の送信電力の余力が少ない場合に、意図した電力より低い電力で送られたり、また信号が歪んだりすることを防ぐことができる。
【0098】
なお、上述した送信電力の設定方法(例えば、動作例1~5)をどのように行うかについては、送信機100の実装に依存してもよい。例えば、送信機100は、上記動作例1~5の何れかの方法を適用して送信電力を調整してもよく、無線状況又は条件に応じて、上記動作例1~5の何れかの方法を選択して送信電力を調整してもよい。
【0099】
また、上述した動作例1~5のように送信電力を減少させた後に、送信機100の余力電力が大きくなった場合等には、送信機100は、送信電力減少の設定を解除してもよい。
【0100】
また、本実施の形態において、式(2)に示す比率ρPTRS,iの計算方法は、上記の内容に限定されず、他の方法を用いてもよい。
【0101】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上りリンクにおいて、送信機(すなわち、移動局)がPT-RSをパワーブースティングして送信する場合について説明する。また、本実施の形態では、基地局(受信機)が、実施の形態1で説明した送信電力の調整の要否を移動局に指示する。
【0102】
[通信システムの概要]
本実施の形態に係る通信システムは、移動局300(送信機)及び基地局400(受信機)を備える。PT-RSは、移動局300から基地局400へ送信される。
【0103】
[移動局の構成]
図14は、本実施の形態に係る移動局300(送信機)の構成を示すブロック図である。なお、図14において、実施の形態1(図6)と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。具体的には、図14に示す移動局300は、図6に示す送信機100の構成に加え、受信部302と、信号分離部303と、データ復調部304と、誤り訂正復号部305とを新たに備える。また、アンテナ301、制御部306及び誤り訂正符号化部307の動作が、図6に示すアンテナ106、制御部101及び誤り訂正符号化部102の動作と一部異なる。
【0104】
アンテナ301は、送信部105から入力される信号を基地局400に向けて放射する。また、アンテナ301は、基地局400から送信される信号を受信し、受信信号を受信部302に出力する。
【0105】
受信部302は、アンテナ301から入力される受信信号に対して、周波数変換などの無線受信処理を行い、無線受信処理後の信号を信号分離部303に出力する。
【0106】
信号分離部303は、受信部302から入力される信号の中から、DCIとデータ信号とを分離し、DCIを制御部306に出力し、データ信号をデータ復調部304に出力する。
【0107】
データ復調部304は、信号分離部303から入力されるデータ信号を復調し、復調信号を誤り訂正復号部305に出力する。
【0108】
誤り訂正復号部305は、データ復調部304から入力される復調信号を復号し、得られた受信データ信号からRRC信号を抽出して、制御部306に出力する。
【0109】
制御部306は、移動局300の送信電力余力を示すパワーヘッドルーム(PH:Power Headroom)を計算し、基地局400へ報告するPHR(Power Headroom Report)を生成し、誤り訂正符号化部307に出力する。また、制御部306は、信号分離部303から入力されるDCIに含まれる情報、及び、誤り訂正復号部305から入力されるRRC信号に含まれる情報に基づいて、データ信号及びPT-RS等の送信信号の送信電力を決定する。DCI又はRRC信号には、例えば、送信電力の調整の要否を示す情報(又は送信電力の調整を指示する情報)が含まれてもよい。制御部306は、決定した送信電力情報を信号割当部104に出力する。
【0110】
誤り訂正符号化部307は、入力される送信データ信号、又は、制御部306から入力されるPHRを誤り訂正符号化し、誤り訂正符号化後の信号を変調部103に出力する。
【0111】
[基地局の構成]
図15は、本実施の形態に係る基地局400(受信機)の構成を示すブロック図である。なお、図15において、実施の形態1(図7)と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。具体的には、図15に示す基地局400は、図7に示す受信機200の構成に加え、制御部402と、誤り訂正符号化部403と、変調部404と、信号割当部405と、送信部406とを新たに備える。また、アンテナ407、チャネル推定部408、誤り訂正復号部401の動作が、図7に示すアンテナ201、チャネル推定部204及び誤り訂正復号部207の動作と一部異なる。
【0112】
誤り訂正復号部401は、データ復調部206から入力される復調信号を復号し、得られた受信データ信号を出力する。また、誤り訂正復号部401は、データ信号の中からPHRを抽出し、PHRを制御部402に出力する。
【0113】
制御部402は、誤り訂正復号部401から入力されるPHRに基づいて、移動局300が、実施の形態1で説明した送信電力制御(送信電力調整)を適用すべきか否かを判断する。また、制御部402は、例えば、移動局300におけるデータ送信に適用する信号波形 (waveform)、変調方式 (MCS)、割り当て帯域を決定する。制御部402は、判断結果及び決定した内容に基づいて、DCI(すなわち、ダイナミックシグナリング)及びRRC信号(すなわち、上位レイヤシグナリング)を生成し、DCIを信号割当部405に出力し、RRC信号を誤り訂正符号部403に出力する。
【0114】
また、制御部402は、送信電力調整の要否に関する判断結果に基づいて、移動局300から受信する信号に対して、実施の形態1で説明した送信電力制御が適用されているか否かを示す「PT-RS等の振幅の情報」をチャネル推定部408に出力する。PT-RS等の振幅の情報には、例えば、送信電力調整後におけるPT-RSとデータ信号との振幅(電力)比率に関する情報が含まれてもよい。
【0115】
誤り訂正符号化部403は、制御部402から入力されるRRC信号を誤り訂正符号化し、誤り訂正符号化後の信号を変調部404に出力する。
【0116】
変調部404は、誤り訂正符号化部403から入力される信号に対して変調処理を施し、変調後の信号を信号割当部405に出力する。
【0117】
信号割当部405は、変調部404から入力される信号、及び、制御部402から入力されるDCIを、時間・周波数領域にマッピングし、マッピング後の信号を送信部406に出力する。
【0118】
送信部406は、信号割当部405から入力される信号に対して、搬送波を用いた周波数変換などの無線送信処理を行い、無線送信処理後の信号をアンテナ407に出力する。
【0119】
アンテナ407は、移動局300(図14を参照)から送信される信号を受信し、受信信号を受信部202に出力する。また、アンテナ407は、送信部406から入力される信号を移動局300に向けて放射(送信)する。
【0120】
チャネル推定部408は、信号分離部203から入力されるDMRSを用いてチャネルを推定する。このとき、チャネル推定部408は、PT-RSを用いてチャネルを推定してもよい。PT-RSを用いる場合、チャネル推定部408は、制御部402から入力されるPT-RS等の振幅の情報に基づいて、PT-RSとデータ信号との振幅(電力)比率を判断してもよい。チャネル推定部408は、チャネル推定値(チャネル情報)をデータ復調部206に出力する。なお、チャネル推定部408でのチャネル推定において、PT-RSが使用されない場合には、PT-RS等の振幅の情報はチャネル推定部408に入力されなくてもよい。
【0121】
[移動局300及び基地局400の動作]
次に、移動局300及び基地局400の動作について詳細に説明する。
【0122】
移動局300は、上りリンクにおいて、高い周波数帯かつ高次の変調多値数を用いて、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信を行う。
【0123】
基地局400は、移動局300において、「PT-RSポートにおける、設定された送信電力で送信するための余力電力が不足している」か否か、つまり、送信電力調整が必要であるか否かを判断する。
【0124】
そして、基地局400は、PT-RSポートにおいて、設定された送信電力で信号を送信するための余力電力が不足している場合、実施の形態1で説明した送信電力調整の適用を、移動局300に対して指示する。すなわち、移動局300は、基地局400からの送信電力調整の指示が有る場合、実施の形態1で説明したように、アンテナポート毎の最大送信電力以下となるように、送信電力を調整する。
【0125】
以下、移動局300及び基地局400の具体的な動作例1,2について説明する。
【0126】
<動作例1>
動作例1では、移動局300は、まず、基地局400から通知されるパラメータ等を用いて、データ信号の送信電力を計算する。また、移動局300は、式(2)に示す比率ρPTRS,iを用いて、PT-RSポートにおける1RE毎の送信電力を決定する。すなわち、移動局300は、PT-RSに対してパワーブースティングする。
【0127】
次に、移動局300は、PHを計算する。PHは、例えば、移動局300全体の最大送信電力から、上記計算した全てのアンテナポートにおけるデータ信号の送信電力を引いた値である。そして、移動局300は、計算したPHをPHRとして基地局400へ報告する。
【0128】
基地局400は、受信したPHRの値が閾値未満の場合、移動局300ではPT-RSポートにおいて十分な余力電力が無いと判断し、移動局300に対して、実施の形態1で説明したように、送信電力の調整(低減)を指示する。この指示は、RRC信号又はDCIによって明示的(explicit)又は暗黙的(implicit)に通知されてもよい。
【0129】
移動局300は、送信電力調整の指示が有った場合、実施の形態1で説明したように、PT-RS又はデータ信号の送信電力を低減し、調整後のPT-RS及びデータ信号等を基地局400へ送信する。
【0130】
このように、動作例1では、移動局300全体の最大送信電力及びデータ信号の送信電力を用いて算出されるPHRが閾値未満の場合、基地局400から移動局300に対して、送信電力の調整が指示される。これにより、送信電力制御において、LTEと同様のPHRを使用することができるので、移動局300及び基地局400では、送信電力制御のために追加で実装する構成を少なくすることができる。
【0131】
なお、ここでは、PHRが移動局300の全アンテナポートにおける余力電力を表す場合について説明したが、これに限定されない。例えば、PHRは、PT-RSポートにおける最大送信電力から、PT-RSポートにおけるデータ信号の送信電力を引いた値としてもよい。すなわち、移動局300のPT-RSポートにおける最大送信電力及びデータ信号の送信電力を用いて算出されるPHRが閾値未満の場合、基地局400から移動局300送信機に対して、送信電力の調整が指示される。これにより、基地局400は、当該PT-RSポートの送信電力状況をより細かく把握できるので、送信電力を減少させる必要があるか否かをより精度良く判断し、移動局300に対して適切に指示できる。
【0132】
<動作例2>
動作例2では、移動局300は、動作例1と同様、まず、基地局400から通知されるパラメータ等を用いて、データの送信電力を計算する。また、移動局300は、式(2)に示す比率ρPTRS,iを用いて、PT-RSポートにおける1RE毎の送信電力を決定する。すなわち、移動局300は、PT-RSに対してパワーブースティングする。
【0133】
一方、基地局400は、移動局300に対して、データ信号の送信に用いるwaveform(例えば、CP-OFDM又はDFT-S-OFDM)、MCS、及び帯域(例えば、PRB数)の少なくとも1つを指示する。
【0134】
移動局300は、基地局400から指示されるwaveform、MCS、及び帯域の少なくとも1つに基づいて、実施の形態1で説明したような送信電力調整を行うか否かを判断する。
【0135】
例えば、移動局300は、通知されたwaveformが「DFT-S-OFDM」である場合、実施の形態1で説明したように、PT-RS又はデータ信号の送信電力を低減し、調整後のPT-RS及びデータ信号等を基地局400へ送信する。これは、通知されたwaveformがDFT-S-OFDM(つまり、シングルキャリア波形)である場合、移動局300はセルエッジに存在する可能性が高いため、送信電力が極めて大きい可能性が高いからである。
【0136】
また、移動局300は、通知されたMCSが「閾値より低度のMCS」である場合、実施の形態1で説明したように、PT-RS及びデータ信号の送信電力を低減し、調整後のPT-RS及びデータ信号等を基地局400へ送信する。これは、通知されたMCSが、PT-RSが送信されるような高度なMCSの範囲内のMCSより低度のMCSである場合、移動局300は基地局400に対して、雑音の多い環境での送信を強いられている可能性が高く、送信電力が大きい可能性が高いからである。
【0137】
また、移動局300は、通知された帯域が「閾値よりも広い」場合、実施の形態1で説明したように、PT-RS及びデータ信号の送信電力を低減し、調整後のPT-RS及びデータ信号等を基地局400へ送信する。これは、データの送信電力は割り当て帯域に依存して大きくなるため、通知された帯域がある値よりも広い場合には送信電力が大きい可能性が高いからである。
【0138】
このように、移動局300は、データの送信に用いるwaveform、MCS、及び帯域の何れか1つ又は複数のパラメータに基づいて、送信電力調整を行うか否かを判断すればよい。
【0139】
すなわち、基地局400は、waveform、MCS、及び帯域の少なくとも1つの通知によって、移動局300に対して、実施の形態1で説明したような送信電力制御の適用の有無を暗黙的に指示する。このように暗黙的な通知では、送信電力制御において、動作例1で説明したPHRを用いる必要がない。このため、移動局300及び基地局400では、送信電力制御のために追加で実装する構成を少なくすることができる。
【0140】
以上、動作例1,2について説明した。
【0141】
このように、本実施の形態では、移動局300は、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信する場合に、規定の送信電力でデータ信号を送信し、PT-RSをパワーブースティングして送信する。この際、基地局400は、移動局300のPT-RSポートにおいて、設定された送信電力で送信するための余力電力が不足していると判断する場合、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように送信電力を調整するように移動局300へ指示する。移動局300は、基地局400の指示に従って送信電力制御を行う。
【0142】
これにより、実施の形態1と同様、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信のように、アンテナポート間で電力の調整ができない送信においても、移動局300は、移動局300の送信電力の余力に応じて、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲で、PT-RSを可能な限り強い電力で送信できる。これにより、基地局400では雑音推定精度向上による伝送速度/伝送効率の改善が期待できる。
【0143】
また、移動局300は、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように送信電力を調整することにより、移動局300の送信電力の余力が少ない場合に、意図した電力より低い電力で送られたり、また信号が歪んだりすることを防ぐことができる。
【0144】
また、本実施の形態では、基地局400が移動局300に対して、送信電力調整を指示するので、移動局300と基地局400との間で送信電力の認識を揃えた状態で通信することができる。
【0145】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上りリンクにおいて、送信機(すなわち、移動局)がPT-RSをパワーブースティングして送信する場合について説明する。また、本実施の形態では、移動局が、実施の形態1で説明した送信電力の調整の要否を判断する。
【0146】
[通信システムの概要]
本実施の形態に係る通信システムは、移動局500(送信機)及び基地局600(受信機)を備える。PT-RSは、移動局500から基地局600へ送信される。
【0147】
[移動局の構成]
図16は、本実施の形態に係る移動局500(送信機)の構成を示すブロック図である。なお、図16において、実施の形態1(図6)と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。具体的には、制御部501及び誤り訂正符号化部502の動作が、図6に示す制御部101及び誤り訂正符号化部102の動作と一部異なる。
【0148】
制御部501は、移動局500の送信電力余力を示すPHを計算し、基地局600へ報告するPHRを生成し、誤り訂正符号化部502に出力する。また、制御部501は、計算したPHの値に基づいて、実施の形態1で説明した送信電力制御(送信電力調整)を適用すべきか否かを判断する。そして、制御部501は、判断結果に従って、データ信号及びPT-RS等の送信信号の送信電力を決定する。制御部501は、決定した送信電力情報を信号割当部104に出力する。
【0149】
誤り訂正符号化部502は、入力される送信データ信号、又は、制御部501から入力されるPHRを誤り訂正符号化し、誤り訂正符号化後の信号を変調部103に出力する。
【0150】
[基地局の構成]
図17は、本実施の形態に係る基地局600(受信機)の構成を示すブロック図である。なお、図17において、実施の形態1(図7)と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。具体的には、図17に示す基地局600は、図7に示す受信機200の構成に加え、制御部602を新たに備える。また、チャネル推定部603、誤り訂正復号部601の動作が、図7に示すチャネル推定部204及び誤り訂正復号部207の動作と異なる。
【0151】
誤り訂正復号部601は、データ復調部206から入力される復調信号を復号し、得られた受信データ信号を出力する。また、誤り訂正復号部601は、データ信号の中からPHRを抽出し、PHRを制御部602に出力する。
【0152】
制御部602は、誤り訂正復号部601から入力されるPHRに基づいて、移動局500が、実施の形態1で説明した送信電力制御を適用するか否かを判断する。制御部602は、判断結果に基づいて、移動局500から受信する信号に対して、実施の形態1で説明した送信電力制御が適用されているか否かを示す「PT-RS等の振幅の情報」をチャネル推定部603に出力する。
【0153】
チャネル推定部603は、信号分離部203から入力されるDMRSを用いてチャネルを推定する。このとき、チャネル推定部603は、PT-RSを用いてチャネルを推定してもよい。PT-RSを用いる場合、チャネル推定部603は、制御部602から入力されるPT-RS等の振幅の情報に基づいて、PT-RSとデータ信号との振幅(電力)比率を判断してもよい。チャネル推定部603は、チャネル推定値(チャネル情報)をデータ復調部206に出力する。
【0154】
なお、チャネル推定部603でのチャネル推定において、PT-RSが使用されない場合には、上記基地局600の構成は無くてもよく、基地局は、図7に示す受信機200と同様の構成を備えればよい。
【0155】
[移動局500及び基地局600の動作]
次に、移動局500及び基地局600の動作について詳細に説明する。
【0156】
移動局500は、上りリンクにおいて、高い周波数帯かつ高次の変調多値数を用いて、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信を行う。
【0157】
また、移動局500は、「PT-RSポートにおける、設定された送信電力で送信するための余力電力が不足している」か否か、つまり、送信電力調整が必要であるか否かを判断する。
【0158】
そして、移動局500は、PT-RSポートにおいて、設定された送信電力で信号を送信するための余力電力が不足している場合、実施の形態1で説明した送信電力調整を行う。
【0159】
一方、基地局600は、移動局500と同様にして、移動局500において「PT-RSポートにおける、設定された送信電力で送信するための余力電力が不足している」か否かを判断する。そして、基地局600は、PT-RSポートにおいて、設定された送信電力で信号を送信するための余力電力が不足している場合、移動局500において、実施の形態1で説明した送信電力制御を適用して信号が送信されると判断する。この場合、基地局600は、例えば、PT-RS又はデータ信号の送信電力が低減されていることを考慮して、チャネル推定を行う。
【0160】
以下、移動局500及び基地局600の具体的な動作例について説明する。
【0161】
動作例では、移動局500は、まず、基地局600から通知されるパラメータ等を用いて、データ信号の送信電力を計算する。また、移動局500は、式(2)に示す比率ρPTRS,iを用いて、PT-RSポートにおける1RE毎の送信電力を決定する。すなわち、移動局500は、PT-RSに対してパワーブースティングする。
【0162】
次に、移動局500は、PHを計算する。PHは、例えば、移動局500全体の最大送信電力から、上記計算した全てのアンテナポートにおけるデータ信号の送信電力を引いた値である。そして、移動局500は、計算したPHをPHRとして基地局600へ報告する。
【0163】
また、移動局500は、算出したPHの値が閾値未満の場合、移動局500のPT-RSポートにおいて十分な余力電力が無いと判断し、実施の形態1で説明したように、PT-RS又はデータ信号の送信電力を低減し、調整後のPT-RS及びデータ信号等を基地局600へ送信する。
【0164】
同様に、基地局600は、移動局500から報告されるPHRの値が閾値未満の場合、受信したデータ信号又はPT-RSに対して実施の形態1で説明したような送信電力調整が適用されていると判断し、送信電力の減少を考慮してチャネル推定を行う。
【0165】
このように、動作例では、移動局500全体の最大送信電力及びデータ信号の送信電力を用いて算出されるPHRが閾値未満の場合、移動局500は送信電力を調整し、基地局600は、移動局500において送信電力調整が行われると判断する。これにより、送信電力制御において、LTEと同様のPHRを使用することができるので、移動局500及び基地局600では、送信電力制御のために追加で実装する構成を少なくすることができる。
【0166】
なお、ここでは、PHRが移動局500の全アンテナポートにおける余力電力を表す場合について説明したが、これに限定されない。例えば、PHRは、PT-RSポートにおける最大送信電力から、PT-RSポートにおけるデータ信号の送信電力を引いた値としてもよい。すなわち、移動局500のPT-RSポートにおける最大送信電力及びデータ信号の送信電力を用いて算出されるPHRが閾値未満の場合、移動局500は、送信電力を調整する。これにより、移動局500及び基地局600は、当該PT-RSポートの送信電力状況をより細かく把握できるので、送信電力を減少させる必要があるか否かをより精度良く判断できる。
【0167】
以上、動作例について説明した。
【0168】
このように、本実施の形態では、移動局500は、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信する場合に、規定の送信電力でデータ信号を送信し、PT-RSをパワーブースティングして送信する。この際、移動局500は、移動局500のPT-RSポートにおいて、設定された送信電力で送信するための余力電力が不足していると判断する場合、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように送信電力を調整する。
【0169】
これにより、実施の形態1と同様、ノンコヒーレント送信又は部分的コヒーレント送信のように、アンテナポート間で電力の調整ができない送信においても、移動局500は、移動局500の送信電力の余力に応じて、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲で、PT-RSを可能な限り強い電力で送信できる。これにより、基地局600では雑音推定精度向上による伝送速度/伝送効率の改善が期待できる。
【0170】
また、移動局500は、アンテナポート毎の最大送信電力に収まるように送信電力を調整することにより、移動局500の送信電力の余力が少ない場合に、意図した電力より低い電力で送られたり、また信号が歪んだりすることを防ぐことができる。
【0171】
また、本実施の形態では、移動局500が送信電力を調整するか否かを判断するので、基地局600の指示を待つことなく適切な送信電力の設定が可能となる。
【0172】
以上、本開示の各実施の形態について説明した。
【0173】
(他の実施の形態)
(1)上記実施の形態において用いた「CPE/ICI補正」とは、「CPEを補正」すること、「ICIを補正」すること、又は、「CPE及びICIの双方を補正」することを意味する。
【0174】
(2)上記実施の形態では、主に上りリンクの送信を想定しているが、下りリンクの送信においても上述した送信電力制御が適用されてもよい。
【0175】
(3)上記実施の形態では、ノンコヒーレント送信及び部分コヒーレント送信を想定しているが、これらの送信以外の方式においても本開示の内容を適用することができる。
【0176】
(4)上記実施の形態では、2つのアンテナポート(1000, 1001)を用いてデータを送信する場合を一例として説明した。しかし、データを送信するアンテナポートは、2つに限らず、2個以外のアンテナポート数が用いられてもよい。ただし、データを送信できるアンテナポートが1つの場合には、「他のアンテナポートが使用していないリソースの電力を利用する」ということができないため、PT-RSのパワーブースティングは適用されないことが想定される。
【0177】
また、1つのアンテナポートにPT-RSがマッピングされる場合について説明したが、PT-RSがマッピングされるアンテナポートは1つに限定されない。PT-RSがマッピングされるアンテナポートは2つ以上でもよい。
【0178】
(5)実施の形態2及び3において用いたPHRは、時間的に周期的に送信されてもよく、また送信電力余力の変化の都度、送信されてもよい。また、送信電力余力の変化の都度、実施の形態1で説明した送信電力の減少の適用及び解除を切り替えてもよい。
【0179】
(6)制御チャネル(PDCCH(Physical Downlink Control CHannel)、PUCCH(Physical Uplink Control CHannel))とデータのチャネル(PDSCH(Physical Downlink Shared CHannel)、PUSCH(Physical Uplink Shared CHannel))とが周波数多重される場合には、そのシンボルにPT-RSがマッピングされてもよい。
【0180】
(7)上記実施の形態(図1)ではスロットの長さを14シンボルと想定しているが、スロットの長さは14シンボルに限定されず、例えば、スロットの長さは7シンボル又は他のシンボル数でもよい。
【0181】
(8)本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0182】
本開示の送信機は、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲で、位相トラッキング用参照信号(PT-RS)及びデータ信号の送信電力を決定する制御回路と、前記決定された送信電力で、前記PT-RS及び前記データ信号を送信する送信回路と、を具備する。
【0183】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記PT-RSが送信される第1のアンテナポートにおいて設定された前記送信電力が前記第1のアンテナポートの最大送信電力を超える場合、前記送信電力を、前記アンテナポート毎の最大送信電力以下に調整する。
【0184】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記PT-RSと前記データ信号との電力比率を保ったまま、全てのアンテナポートで送信される前記PT-RS及び前記データ信号の前記送信電力を低減する。
【0185】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記第1のアンテナポートにおいて前記送信電力を低減し、前記第1のアンテナポート以外の他のアンテナポートにおいて前記送信電力を低減しない。
【0186】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記PT-RSと前記データ信号との電力比率を保ったまま、前記第1のアンテナポートで送信される前記PT-RS及び前記データ信号の前記送信電力を低減する。
【0187】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記第1のアンテナポートにおいて、前記データ信号の送信電力を低減し、前記PT-RSの送信電力を低減しない。
【0188】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記第1のアンテナポートにおいて、前記データ信号がマッピングされる一部のリソースエレメントの送信電力を低減し、前記一部のリソースエレメント以外の他のリソースエレメントにマッピングされる前記データ信号及び前記PT-RSの送信電力を低減しない。
【0189】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記第1のアンテナポートにおいて、前記PT-RSの送信電力を低減し、前記データ信号の送信電力を低減しない。
【0190】
本開示の送信機において、前記送信機は移動局であって、前記制御回路は、基地局からの指示が有る場合、前記アンテナポート毎の最大送信電力以下となるように前記送信電力を調整する。
【0191】
本開示の送信機において、前記送信機全体の最大送信電力及び前記データ信号の送信電力を用いて算出されるPHR(Power Headroom Report)が閾値未満の場合、前記基地局から前記送信機に対して、前記送信電力の調整が指示される。
【0192】
本開示の送信機において、前記送信機の前記PT-RSが送信されるアンテナポートにおける最大送信電力及び前記データ信号の送信電力を用いて算出されるPHR(Power Headroom Report)が閾値未満の場合、前記基地局から前記送信機に対して、前記送信電力の調整が指示される。
【0193】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記基地局から指示される、信号波形、符号化変調方式及び割当帯域の少なくとも1つに基づいて、前記送信電力の調整を行うか否かを判断する。
【0194】
本開示の送信機において、前記送信機は移動局であって、前記制御回路は、アンテナポート毎の最大送信電力以下となるように前記送信電力を調整する。
【0195】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記送信機全体の最大送信電力及び前記データ信号の送信電力を用いて算出されるPHR(Power Headroom Report)が閾値未満の場合、前記送信電力を調整する。
【0196】
本開示の送信機において、前記制御回路は、前記送信機の前記PT-RSが送信されるアンテナポートにおける最大送信電力及び前記データ信号の送信電力を用いて算出されるPHR(Power Headroom Report)が閾値未満の場合、前記送信電力を調整する。
【0197】
本開示の送信方法は、アンテナポート毎の最大送信電力を超えない範囲で、位相トラッキング用参照信号(PT-RS)及びデータ信号の送信電力を決定し、前記決定された送信電力で、前記PT-RS及び前記データ信号を送信する。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本開示の一態様は、移動通信システムに有用である。
【符号の説明】
【0199】
100,300,500 送信機
101,306,402,501,602 制御部
102,307,403,502 誤り訂正符号化部
103,404 変調部
104,405 信号割当部
105,406 送信部
106,201,301,407 アンテナ
200,400,600 受信機
202,302 受信部
203,303 信号分離部
204,408,603 チャネル推定部
205 CPE/ICI推定部
206,304 データ復調部
207,305,401,601 誤り訂正復号部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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