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特許7631413エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20250210BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
B66B13/14 R
B66B1/14 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023086874
(22)【出願日】2023-05-26
(65)【公開番号】P2024169977
(43)【公開日】2024-12-06
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】竹山 和徳
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-210801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/14
B66B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体の寸法情報を取得する寸法情報取得部と、
前記寸法情報取得部が取得した寸法情報に基づいて、前記移動体が前記エレベータの乗りかごに乗り込む際の前記乗りかごのかご扉の開度を決定するかご開度決定部と、
前記移動体が前記乗りかごに乗り込む際に、前記かご開度決定部が決定した開度まで前記かご扉を戸開させる戸開閉制御部と、を備え
前記寸法情報取得部が複数の移動体の寸法情報を取得したときに、前記かご開度決定部は、前記複数の移動体のうち、最大の移動体の寸法情報に基づいて、前記複数の移動体が前記エレベータの乗りかごに乗り込む際の前記乗りかごのかご扉の開度を決定する、エレベータ制御装置。
【請求項2】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体の寸法情報を取得する寸法情報取得部と、
前記寸法情報取得部が取得した寸法情報に基づいて、前記移動体が前記エレベータの乗りかごに乗り込む際の前記乗りかごのかご扉の開度を決定するかご開度決定部と、
前記移動体が前記乗りかごに乗り込む際に、前記かご開度決定部が決定した開度まで前記かご扉を戸開させる戸開閉制御部と、を備え
前記乗りかごのかご扉の上部に設置され、前記かご扉が戸開したときに下方を撮影するカメラ装置に通信可能に接続され、
前記戸開閉制御部は、前記移動体が前記乗りかごに乗り込む際に、前記カメラ装置で撮影された撮像情報を解析することで、前記かご開度決定部が決定した開度まで前記かご扉が戸開したか否かを監視し、前記かご開度決定部が決定した開度まで戸開したと判断すると戸開動作を停止させる、エレベータ制御装置。
【請求項3】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体の寸法情報を取得する寸法情報取得部と、
前記寸法情報取得部が取得した寸法情報に基づいて、前記移動体が前記エレベータの乗りかごに乗り込む際の前記乗りかごのかご扉の開度を決定するかご開度決定部と、
前記移動体が前記乗りかごに乗り込む際に、前記かご開度決定部が決定した開度まで前記かご扉を戸開させる戸開閉制御部と、
前記移動体が前記乗りかごに乗り込む際に、前記エレベータの乗場に設置された到着灯、階床表示灯、および前記乗りかご内の照明を消灯するとともに、前記乗りかごに乗り込み不可能であることを報知する報知情報を前記乗場に出力するエレベータ制御部と、を備える、エレベータ制御装置。
【請求項4】
前記乗りかごのかご扉は上方向に戸開し、
前記かご開度決定部は、前記かご扉が全開したときの開口部の高さと、前記移動体の高さとの差分が所定値以上のときには、前記移動体の高さより高く、前記かご扉が全開したときの開口部の高さよりも低い位置まで前記かご扉を開けるように前記開度を決定し、
前記かご扉が全開したときの開口部の高さと、前記移動体の高さとの差分が所定値未満のときには、前記かご扉を全開させる、請求項1~3いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記乗りかごのかご扉は左右方向に戸開し、
前記かご開度決定部は、前記かご扉が全開したときの開口部の幅と、前記移動体の幅との差分が所定値以上のときには、前記移動体の幅より広く、前記かご扉が全開したときの開口部の幅よりも狭い位置まで前記かご扉を開けるように前記開度を決定し、
前記かご扉が全開したときの開口部の幅と、前記移動体の幅との差分が所定値未満のときには、前記かご扉を全開させる、請求項1~3いずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
エレベータ制御装置が、
エレベータを利用して移動する複数の移動体の移動体の寸法情報を取得し、
前記複数の移動体のうち、最大の移動体の寸法情報に基づいて、前記複数の移動体が前記エレベータの乗りかごに乗り込む際の前記乗りかごのかご扉の開度を決定し、
前記複数の移動体が前記乗りかごに乗り込む際に、決定した開度まで前記かご扉を戸開させる、エレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内の清掃や荷物の運搬、建物利用者への道案内などの業務を行う自律走行可能な移動体(以降、単に「移動体」と記載する)の実用化が進められている。ビルのように複数の階床が存在する建物において、上記の業務を行わせるには、移動体のエレベータの利用が不可欠となる。
【0003】
移動体がエレベータを利用する場合、移動体と利用者が乗りかごに同乗すると、移動体の動作効率が低下したり、エレベータ利用者へのサービスの質が低下したりするおそれがある。これに鑑み、移動体の利用を優先させる運転パターンと、利用者の利用を優先させる運転パターンとを切り替えることで、移動体と利用者とが乗りかごに乗り合わせることを回避するようにエレベータの運転を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6819767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したようにエレベータの運転を制御しても、移動体の利用を優先させているときに戸開した乗りかごに、移動体と扉との隙間から利用者が乗り込んでしまい、移動体の優先運転が阻害される場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、自律走行可能な移動体と利用者との同乗を確実に回避することが可能な、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、寸法情報取得部とかご開度決定部と戸開閉制御部とを備える。寸法情報取得部は、エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体の寸法情報を取得する。かご開度決定部は、寸法情報取得部が取得した寸法情報に基づいて、移動体がエレベータの乗りかごに乗り込む際の乗りかごのかご扉の開度を決定する。戸開閉制御部は、移動体が乗りかごに乗り込む際に、かご開度決定部が決定した開度までかご扉を戸開させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1および第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図2】第1および第2実施形態によるエレベータ制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図3】(a)第1実施形態によるエレベータ制御装置が制御する乗りかごのかご扉から、高さが低い移動体が乗車する際に決定する乗りかごの開度に関する説明図であり、(b)は、高さが高い移動体が乗車する際に決定する乗りかごの開度に関する説明図である。
図4】(a)第2実施形態によるエレベータ制御装置が制御する乗りかごのかご扉から、幅が狭い移動体が乗車する際に決定する乗りかごの開度に関する説明図であり、(b)は、幅が広い移動体が乗車する際に決定する乗りかごの開度に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態として、自律走行可能なロボット等の移動体(以降、単に「移動体」と記載する)を用いたエレベータシステムについて、説明する。
【0010】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータシステムの構成〉
図1は、第1実施形態によるエレベータシステム1Aの構成を示す全体図である。エレベータシステム1Aは、エレベータ10Aと、エレベータ10Aに通信可能に接続された移動体30とを備える。
【0011】
エレベータ10Aは、巻き上げ機11と、巻き上げ機11にかけ渡されたロープ12に吊り下げられた乗りかご13Aと、エレベータ制御装置20Aとを有する。巻き上げ機11は、エレベータ制御装置20Aからの指示に基づいて動作し、乗りかご13Aを昇降させる。
【0012】
乗りかご13Aは、テールコード14を介してエレベータ制御装置20Aに接続される。乗りかご13Aは、1側面に開口部131を有し、開口部131にはかご扉132Aが設置されている。本実施形態においてかご扉132Aは、上方向に移動することで開口部131の開度を大きくして戸開し、下方向に移動することで開口部131の開度を小さくして戸閉する。
【0013】
かご扉132Aの上部には、かご扉132Aが戸開したときに下方を撮影するカメラ装置133が設置されている。図1では、かご扉132Aが全開したときのカメラ装置133の位置を示している。
【0014】
エレベータ制御装置20Aは、第1無線通信部21と、第1CPU22Aとを有する。第1無線通信部21は、移動体30との無線通信を行う。
【0015】
第1CPU22Aは、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定のエレベータ制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。第1CPU22Aは、2つ以上の情報処理部として、呼び登録部221と、エレベータ制御部222と、寸法情報取得部223と、かご開度決定部224Aと、戸開閉制御部225とを有する。
【0016】
呼び登録部221は、エレベータ10A内の乗場操作盤(図示せず)で利用者により操作された乗場呼びの情報、乗りかご13A内のかご内操作盤(図示せず)で利用者により操作されたかご呼びの情報、および移動体30から取得した移動体30がエレベータ10Aを利用するための呼び情報を登録する。エレベータ制御部222は、呼び登録部221に登録された情報に基づいて、エレベータ10A内の機器、例えば巻き上げ機11の動作を制御する。
【0017】
寸法情報取得部223は、移動体30の寸法情報を取得する。かご開度決定部224Aは、寸法情報取得部223が取得した移動体30の寸法情報に基づいて、移動体30が乗りかご13Aに乗り込む際のかご扉132Aの開度を決定する。戸開閉制御部225は、移動体30が乗りかご13Aに乗り込む際に、かご開度決定部224Aが決定した開度までかご扉132Aを戸開させる。
【0018】
移動体30は、第2無線通信部31と、移動機構32と、第2CPU33とを有する。第2無線通信部31は、エレベータ制御装置20Aとの無線通信を行う。移動機構32は、移動体30を移動させる機構である。
【0019】
第2CPU33は、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定の移動体制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。第2CPU33は、2つ以上の情報処理部として、呼び情報送信部331と、動作制御部332とを有する。
【0020】
呼び情報送信部331は、移動体30がエレベータ10Aを利用する際に、移動体30の乗車階および降車階の情報と、予め保持した移動体30の寸法情報とを含む呼び登録要求を生成し、第2無線通信部31を介してエレベータ制御装置20Aに送信する。動作制御部332は、移動機構32を制御する。
【0021】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの動作〉
図2は、本実施形態によるエレベータシステム1Aが稼動する際に、エレベータ制御装置20Aが実行する動作を示すフローチャートである。
【0022】
移動体30がエレベータ10Aを利用する際に、移動体30の呼び情報送信部331が、移動体30の乗車階および降車階の情報と、予め保持した移動体30の寸法情報とを含む呼び登録要求を生成し、第2無線通信部31を介してエレベータ制御装置20Aに送信する。本実施形態において移動体30の寸法情報は、移動体30の高さ示す情報を含む。
【0023】
エレベータ制御装置20Aは、移動体30から送信された呼び情報を取得すると、呼び情報に含まれる移動体30の乗車階および降車階の情報を、移動体の呼び情報として呼び登録部221が登録する(S1の「YES」)。
【0024】
移動体30の呼び情報が登録されると、寸法情報取得部223が呼び情報に含まれる移動体30の寸法情報の高さを示す情報を取得し(S2)、かご開度決定部224Aに送出する。
【0025】
かご開度決定部224Aは、予め乗りかご13Aのかご扉132Aが全開したときの開口部131の高さの情報を保持する。かご開度決定部224A、保持した開口部131の高さと移動体30の高さとを比較し、その差分が予め設定された閾値T1以上であるか否かを判定する。この閾値T1は、例えば、かご扉132Aが全開したときの開口部131の高さと、人間の身長に相当する高さとの差分値である。
【0026】
かご開度決定部224Aが、開口部131の高さと移動体30の高さとの差分が閾値T1以上であると判定したときには(S3の「YES」)、移動体30が乗りかご13Aに乗り込む際に、移動体専用の開度でかご扉132Aを戸開すると決定する(S4)。本実施形態において移動体専用の開度は、移動体30の高さに所定値αを加算した高さまで戸開するための値であり、移動体30の高さより高く、かご扉132Aが全開したときの開口部131の高さよりも低い位置までの開度である。値αは、移動体30が開口部131を安全に通過するために必要な間隙の高さである。
【0027】
図3(a)は、かご扉132Aから、低い高さHR1の移動体30aが乗車する際に決定する乗りかごの開度に関する説明図である。この場合、開口部131の高さHDと移動体30の高さHR1との差分HD - HR1が閾値T1以上であるため、かご開度決定部224Aは、移動体30aが乗りかご13Aに乗り込む際には、移動体専用の開度(HR1 + αまで戸開する開度)でかご扉132Aを戸開すると決定する。
【0028】
また、ステップS3において、かご開度決定部224Aが、開口部131の高さと移動体30の高さとの差分が閾値T1未満であると判定したときには(S3の「NO」)、移動体30が乗りかご13Aに乗り込む際に、通常の開度、つまり全開状態でかご扉132Aを戸開すると決定する(S5)。
【0029】
図3(b)は、かご扉132Aから、高い高さHR2の移動体30bが乗車する際に決定する乗りかごの開度に関する説明図である。この場合、開口部131の高さHDと移動体30の高さHR2との差分HD - HR2が閾値T1未満であるため、かご開度決定部224Aは、移動体30bが乗りかご13Aに乗り込む際には、かご扉132Aを全開すると決定する。
【0030】
エレベータ制御部222は、呼び登録部221に登録された移動体30の呼び情報に基づいて、乗りかご13Aを移動体30の乗車階に移動させ、この乗車階に乗りかご13Aが着床すると、戸開閉制御部225が、かご開度決定部224Aが決定した開度でかご扉132Aを戸開させる(S6)。
【0031】
乗りかご13Aが戸開すると、移動体30の動作制御部332が移動機構32を制御することで、移動体30が乗りかご13Aに乗り込む。
【0032】
エレベータ制御部222は、乗りかご13Aに設置されたカメラ装置(図示せず)または荷重検知装置(図示せず)等のセンサ情報により移動体30が乗りかご13Aに乗り込んだことを検知すると(S7の「YES」)、戸開閉制御部225によりかご扉132Aを戸閉させ、移動体30の降車階へ乗りかご13Aを移動させる(S8)。
【0033】
ここで、乗りかご13Aが到着した階にいる他の移動体の乗場呼びが呼び登録部221に登録されているときには(S9の「YES」)、寸法情報取得部223が他の移動体の寸法情報である高さを示す情報を取得する(S10)。
【0034】
かご開度決定部224Aは、移動体30と他の移動体とのうち、高さが高い方の移動体を選択して(S11)、ステップS3に戻り、開口部131の高さと、選択した移動体30の高さとの差分が閾値T1以上であるか否かを判定する(S3)。
【0035】
そして、判定結果に応じてステップS4またはS5の処理によりかご扉132Aの開度を決定し、乗りかご13Aが移動体30の降車階に着床すると、戸開閉制御部225がかご扉132Aを決定した開度で戸開させる(S6)。
【0036】
乗りかご13Aが戸開すると、移動体30の動作制御部332が移動機構32を制御することで移動体30が乗りかご13Aから降車し、その後他の移動体が乗り込む。
【0037】
ステップS9において、他の移動体の乗場呼びが呼び登録部221に登録されていないときには(S9の「NO」)、かご開度決定部224Aは、移動体30が降車する際に、全開状態でかご扉132Aを戸開すると決定する(S12)。
【0038】
乗りかご13Aが全開すると(S13)、移動体30の動作制御部332が移動機構32を制御することで、移動体30が乗りかご13Aから降車する。移動体30が乗りかご13Aから降車すると(S14の「YES」)、ステップS1に戻る。
【0039】
以上の第1実施形態によれば、かご扉が上下方向に戸開する乗りかごを有するエレベータに移動体が乗車する際に、移動体の高さが乗りかごの開口部の高さよりも所定値以上低ければ、移動体の乗り込みを可能にしつつ、なるべく低い開度で乗りかごを戸開させることで、乗場にいる利用者が移動体とともに乗りかごに乗り込み辛くなり、移動体と同乗することを回避することができる。
【0040】
上述した第1実施形態において、複数台の移動体が同時に乗りかご13Aに乗り込む場合には、寸法情報取得部223がこれら複数の移動体の寸法情報を取得し、かご開度決定部224Aが、これらの複数の移動体のうち、寸法情報が最大の移動体、具体的には最も高さが高い移動体の高さと開口部131の高さとの差分が閾値T1以上であるか否かを判定することで、かご扉132Aの開度を決定してもよい。このように処理を行うことで、複数台の移動体が一度の戸開動作で確実に乗りかご13Aに乗り込むことができる。
【0041】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータシステムの構成〉
第2実施形態によるエレベータシステム1Bは、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aと同様の構成を有するため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施形態においてエレベータ10Bが有する乗りかご13Bは、1側面に開口部131を有し、開口部131にはかご扉132Bが設置されている。本実施形態においてかご扉132Bは、左右方向に適宜移動することで開口部131の開度を変更する。
【0043】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態によるエレベータシステム1Bが稼動する際に、エレベータ制御装置20Bが実行する動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
移動体30がエレベータ10Bを利用する際に、移動体30の呼び情報送信部331が、移動体30の乗車階および降車階の情報と、予め保持した移動体30の寸法情報とを含む呼び登録要求を生成し、第2無線通信部31を介してエレベータ制御装置20Bに送信する。本実施形態において移動体30の寸法情報は、移動体30の幅を示す情報を含む。
【0045】
エレベータ制御装置20Bは、移動体30から送信された呼び情報を取得すると、呼び情報に含まれる移動体30の乗車階および降車階の情報を呼び登録部221が登録する(S1の「YES」)。
【0046】
移動体30の呼び情報が登録されると、寸法情報取得部223が呼び情報に含まれる移動体30の幅を示す情報を取得し(S2)、かご開度決定部224Bに送出する。
【0047】
かご開度決定部224Bは、予め乗りかご13Bのかご扉132Bが全開したときの開口部の幅の情報を保持する。かご開度決定部224B、保持した開口部131の幅と移動体30の幅とを比較し、その差分が予め設定された閾値T2以上であるか否かを判定する。この閾値T2は、例えば、かご扉132Bが全開したときの開口部131の幅から、人間が通過可能な幅の2倍を差し引いた値である。
【0048】
かご開度決定部224Bが、開口部131の幅と移動体30の幅との差分が閾値T2以上であると判定したときには(S3の「YES」)、移動体30が乗りかご13Bに乗り込む際に、移動体専用の開度でかご扉132Bを戸開すると決定する(S4)。本実施形態において移動体専用の開度は、移動体30の幅に所定値αを加算した幅まで戸開するための値であり、移動体30の幅より広く、かご扉132Bが全開したときの開口部131の幅よりも狭い位置までの開度である。値αは、移動体30が開口部131を安全に通過するために必要な間隙の幅である。
【0049】
図4(a)は、かご扉132Bから、狭い幅WR1の移動体30cが乗車する際に決定する乗りかごの開度に関する説明図である。この場合、かご扉132Bは2枚の板が中央から左右方向に移動することで戸開するため、かご開度決定部224Bは、例えば開口部131の左半分の幅WD/2と移動体30の左半分の幅WR1/2との差分WD/2 - WR1/2が閾値T2の1/2以上であるか否かを判定する。
【0050】
ここでは、かご開度決定部224Bは、開口部131の左半分の幅WD/2と移動体30の左半分の幅WR1/2との差分WD/2 - WR1/2が閾値T2の1/2以上であると判定し、移動体30cが乗りかご13Bに乗り込む際には、移動体専用の開度WR1+ αでかご扉132Bを戸開すると決定する。
【0051】
また、ステップS3において、かご開度決定部224Bが、開口部131の幅と移動体30の幅との差分が閾値T2未満であると判定したとき、つまり、開口部131の左半分の幅WD/2と移動体30の左半分の幅WR1/2との差分WD/2 - WR1/2が閾値T2の1/2未満であると判定したときには、(S3の「NO」)、開口部131の幅と移動体30の幅との差分が閾値T2以上とし、移動体30が乗りかご13Bに乗り込む際に、通常の開度、つまり全開状態でかご扉132Bを戸開すると決定する(S5)。
【0052】
図4(b)は、かご扉132Bから、広い幅WR2の移動体30dが乗車する際に決定する乗りかごの開度に関する説明図である。この場合、かご開度決定部224Bは、開口部131の左半分の幅WD/2と移動体30の左半分の幅WR1/2との差分WD/2 - WR1/2が閾値T2の1/2未満であり、開口部131の幅と移動体30の幅との差分が閾値T2未満であると判定し、移動体30cが乗りかご13Bに乗り込む際には、かご扉132Bを全開すると決定する。
【0053】
エレベータ制御部222は、呼び登録部221に登録された移動体30の呼び情報に基づいて、乗りかご13Bを移動体30の乗車階に移動させ、乗りかご13Bが移動体30の乗車階に着床すると、戸開閉制御部225が、かご開度決定部224Bが決定した開度でかご扉132Bを戸開させる(S6)。
【0054】
乗りかご13Bが戸開すると、移動体30の動作制御部332が移動機構32を制御することで、移動体30が乗りかご13Bに乗り込む。
【0055】
エレベータ制御部222は、乗りかご13Bに設置されたカメラ装置(図示せず)または荷重検知装置(図示せず)等のセンサ情報により移動体30が乗りかご13Bに乗り込んだことを検知すると(S7の「YES」)、戸開閉制御部225によりかご扉132Bを戸閉させ、移動体30の降車階へ乗りかご13Bを移動させる(S8)。
【0056】
ここで、乗りかご13Bが到着した階にいる他の移動体の乗場呼びが呼び登録部221に登録されているときには(S9の「YES」)、寸法情報取得部223が他の移動体の幅を示す情報を取得する(S10)。
【0057】
かご開度決定部224Bは、移動体30と他の移動体とのうち、幅が広い方の移動体を選択して(S11)、ステップS3に戻り、開口部131の幅と、選択した移動体30の幅との差分が閾値T2以上であるか否かを判定する(S3)。
【0058】
そして、判定結果に応じてステップS4またはS5の処理によりかご扉132Bの開度を決定し、乗りかご13Bが移動体30の降車階に着床すると、戸開閉制御部225がかご扉132Bを決定した開度で戸開させる(S6)。
【0059】
乗りかご13Bが戸開すると、移動体30の動作制御部332が移動機構32を制御することで移動体30が乗りかご13Bから降車し、その後他の移動体が乗り込む。
【0060】
ステップS9において、他の移動体の乗場呼びが呼び登録部221に登録されていないときには(S9の「NO」)、かご開度決定部224Bは、移動体30が降車する際に、全開状態でかご扉132Bを戸開すると決定する(S12)。
【0061】
乗りかご13Bが全開すると(S13)、移動体30の動作制御部332が移動機構32を制御することで、移動体30が乗りかご13Bから降車する。移動体30が乗りかご13Bから降車すると(S14の「YES」)、ステップS1に戻る。
【0062】
以上の第2実施形態によれば、かご扉が左右方向に戸開する乗りかごを有するエレベータに移動体が乗車する際に、移動体の幅が乗りかごの開口部の幅よりも所定値以上小さければ、移動体の乗り込みを可能にしつつ、なるべく狭い開度で乗りかごを戸開させることで、乗場にいる利用者が移動体とともに乗りかごに同乗することを回避することができる。
【0063】
上述した第2実施形態において、複数台の移動体が同時に乗りかご13Bに乗り込む場合には、寸法情報取得部223がこれら複数の移動体の寸法情報を取得し、かご開度決定部224Bが、これらの複数の移動体のうち、寸法情報が最大の移動体、具体的には最も幅が広い移動体の幅と開口部131の幅との差分が閾値T2以上であるか否かを判定することで、かご扉132Bの開度を決定してもよい。このように処理を行うことで、複数台の移動体が一度の戸開動作で確実に乗りかご13Bに乗り込むことができる。
【0064】
上述した第1実施形態または第2実施形態において、移動体30が乗りかご13A、13Bに乗り込む際に、戸開閉制御部225は、カメラ装置133で撮影された撮像情報を解析することで、かご開度決定部224A、224Bが決定した開度までかご扉132A、132Bが戸開したか否かを監視し、決定した開度まで戸開したと判断すると戸開動作を停止させるようにしてもよい。このように構成することにより、既存の設備であるカメラ装置を用いて、精度良くかご扉132A、132Bの開度を調整することができる。
【0065】
また上述した第1実施形態または第2実施形態において、移動体30が乗りかご13A、13Bに乗り込む際に、エレベータ制御部222が、エレベータ乗場に設置された到着灯(図示せず)、階床表示灯(図示せず)、および乗りかご13A、13B内の照明(図示せず)を消灯するとともに、乗りかご13A、13Bに乗り込み不可能であることを報知する報知情報を乗場に設置された出力装置(図示せず)から出力するようにしてもよい。このように処理を行うことで、乗場にいる利用者は、移動体30が乗りかご13A、13Bに乗り込む際にエレベータ10A、10Bが利用不可能な状況であることを認識して乗り込みを回避し、乗りかご13A、13Bに利用者と移動体30とが同乗することを避けることができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1A,1B…エレベータシステム、10A、10B…エレベータ、11…巻き上げ機、12…ロープ、13A、13B…乗りかご、14…テールコード、20A、20B…エレベータ制御装置、21…第1無線通信部、22A、22B…第1CPU、30,30a,30b,30c,30d…移動体、31…第2無線通信部、32…移動機構、33…第2CPU、131…開口部、132A,132B…かご扉、133…カメラ装置、221…呼び登録部、222…エレベータ制御部、223…寸法情報取得部、224A,224B…かご開度決定部、225…戸開閉制御部、331…呼び情報送信部、332…動作制御部
図1
図2
図3
図4