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特許7631414エレベータ制御装置、移動体、およびエレベータを利用する移動体の制御方法
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  • 特許-エレベータ制御装置、移動体、およびエレベータを利用する移動体の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置、移動体、およびエレベータを利用する移動体の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20250210BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20250210BHJP
   G05D 1/435 20240101ALI20250210BHJP
【FI】
B66B1/14 F
G05D1/43
G05D1/435
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023087632
(22)【出願日】2023-05-29
(65)【公開番号】P2024170881
(43)【公開日】2024-12-11
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】判治 孝佳
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125198(JP,A)
【文献】特開2021-066600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/14
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する適正度マップ記憶部と、
前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得するかご内情報取得部と、
前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報および前記かご内情報取得部が取得した情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備えたエレベータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ制御装置に通信可能に接続され、
移動機構と、
前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、を備える移動体。
【請求項3】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する適正度マップ記憶部と、
前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備えたエレベータ制御装置に通信可能に接続され、
移動機構と、
前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、
所定範囲内にあるオブジェクトを検知する近接センサと、
音声を出力するスピーカ部と、を備え、
前記動作制御部は、前記近接センサにより前記移動経路上にオブジェクトがあることが検知されると、導線確保のための報知情報を前記スピーカ部から出力させるか、前記移動経路決定部により決定される迂回経路を新たな移動経路とするか、または、前記移動経路決定部により決定される新たな乗り込み候補位置までの移動経路を新たな移動経路とする、移動体
【請求項4】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する適正度マップ記憶部と、
前記適正度マップ記憶部に記憶した適正度マップ情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定する乗り込み候補位置決定部と、
前記乗りこみ候補位置決定部が決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する移動体情報処理部と、を備えたエレベータ制御装置に通信可能に接続され、
移動機構と、
前記エレベータ制御装置から前記乗り込み指示情報を取得すると、前記乗り込み候補位置までの移動経路を決定する移動経路決定部と、
前記移動経路を移動するように前記移動機構を制御する動作制御部と、
所定範囲内にあるオブジェクトを検知する近接センサと、
自位置情報を取得する位置センサと、を備え、
前記動作制御部は、前記近接センサにより前記乗り込み候補位置にオブジェクトがあることが検知されたときに、前記位置センサにより取得された自位置情報が前記乗り込み候補位置から所定範囲内にある場合には、前記乗り込み候補位置への移動が完了したと判定する、移動体
【請求項5】
エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続されたエレベータ制御装置が、
前記エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、前記移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、前記乗りかご内の位置ごとの前記移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶し、
前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報を取得し、
記憶した適正度マップ情報、および前記乗りかご内の利用者または他の移動体の位置情報に基づいて、前記乗りかご内における前記移動体の乗り込み候補位置を決定し、
決定した前記乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して前記移動体に送信する、エレベータを利用する移動体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置、移動体、およびエレベータを利用する移動体の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内の清掃や荷物の運搬、建物利用者への道案内などの業務を行う自律走行可能な移動体(以降、単に「移動体」と記載する)の実用化が進められている。ビルのように複数の階床が存在する建物において、上記の業務を行わせるには、移動体のエレベータの利用が不可欠となる。
【0003】
当然、エレベータは人も利用しており、エレベータという限られた空間内への出入りの際には人への安全配慮が重要となる。
【0004】
人と移動体が共通のエレベータを利用する際の人への安全配慮としては、人と移動体が同乗できないようにする手法も考えられるが、これはエレベータの運転効率、ロボットの業務効率、利用者の利便性の悪化につながる。
【0005】
そこで、人と移動体が同乗する際の、人への安全を配慮した各種システムが提案されている。このようなシステムでは例えば、既に乗りかごに乗り込んでいる利用者がいる位置を避けて、移動体の乗り込み位置を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-125198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、利用者が乗りかごに乗り込む際には、乗りかご内で、他の利用者が出入りすることが想定されるエリア、例えばかごドア付近またはかご内操作盤の前のエリア等を敢えて避けることが多い。
【0008】
これに対し、システム側で移動体の乗り込み位置を決定する際には、上述したような利用者の意思に関わらず、乗りかご内で空いているエリアを移動体の乗り込み位置として選択する。そのため、利用者が敢えて乗り込みを避けたエリアを空きエリアとして認識し、移動体の乗り込み位置として選択してしまい、利用者の利便性が低下する場合があるという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータの利用者の利便性を低下させないようにしつつ、利用者と自律走行可能な移動体とが安全に乗りかごに同乗できるようにする、エレベータ制御装置、移動体、およびエレベータを利用する移動体の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、エレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と通信可能に接続され、適正度マップ記憶部と乗り込み候補位置決定部と移動体情報処理部とを備える。適正度マップ記憶部は、エレベータの乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を移動体の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、乗りかご内の位置ごとの移動体の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する。乗り込み候補位置決定部は、記憶した適正度マップ情報に基づいて、乗りかご内における移動体の乗り込み候補位置を決定する。移動体情報処理部は、決定した乗り込み候補位置への乗り込みを指示する乗り込み指示情報を生成して移動体に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図2】一実施形態によるエレベータ制御装置および移動体の詳細な構成を示すブロック図である。
図3】(a)は、一実施形態によるエレベータ制御装置が制御する乗りかごの床面について、かご内操作盤の位置に基づいて設定された移動体の乗り込み適正度を示す図であり、(b)は、かごドアの位置に基づいて設定された移動体の乗り込み適正度を示す図である。
図4】一実施形態によるエレベータ制御装置が予め記憶する適正度マップの一例を示す図である。
図5】一実施形態によるエレベータ制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図6】一実施形態による移動体が、乗場呼び情報を送信した後、乗りかごに乗り込むまでの間に実行する処理を示すフローチャートである。
図7】一実施形態による移動体が、乗りかごに乗車してから乗り込み候補位置までの移動経路上にオブジェクトを検知したときに実行する処理を示すフローチャートである。
図8】一実施形態による移動体が、乗り込み候補位置にあるオブジェクトを検知したときに実行する処理を示すフローチャートである。
図9】一実施形態による移動体が、乗りかご13から降車するときに実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態として、自律走行可能なロボット等の移動体(以降、単に「移動体」と記載する)を用いたエレベータシステムについて説明する。
【0013】
〈一実施形態によるエレベータシステムの構成〉
図1は、一実施形態によるエレベータシステム1の構成を示す全体図である。エレベータシステム1は、エレベータ10と、エレベータ10に通信可能に接続された移動体30とを備える。
【0014】
エレベータ10は、巻き上げ機11と、巻き上げ機11にかけ渡されたロープ12に吊り下げられた乗りかご13と、エレベータ制御装置20とを有する。
【0015】
巻き上げ機11は、エレベータ制御装置20からの指示に基づいて動作し、乗りかご13を昇降させる。乗りかご13は、テールコード14を介してエレベータ制御装置20に接続され、かごドア131と、かご内操作盤132a、132b、132cと、カメラ装置133と、荷重検知装置134とを有する。
【0016】
かご内操作盤132a、132b、132cは、利用者による行先階指定操作、および戸開閉操作等を入力する。かご内操作盤132aは、一般利用者用の操作盤であり、かご内操作盤132bおよび132cは、車椅子利用者用の操作盤である。カメラ装置133は、乗りかご13内を撮影し、撮像情報を解析して乗りかご13内の利用者および移動体30等の形状および位置を取得する。荷重検知装置134は、乗りかご13内にかかる荷重を検知する。
【0017】
図2は、一実施形態によるエレベータ制御装置20および移動体30の詳細な構成を示すブロック図である。エレベータ制御装置20は、適正度マップ記憶部21と、第1無線通信部22と、第1CPU23とを有する。
【0018】
適正度マップ記憶部21は、エレベータ10の乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、移動体30の乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、乗りかご13内の位置ごとの移動体30の乗り込み位置としての適正度を示した適正度マップ情報を記憶する。第1無線通信部22は、移動体30との無線通信を行う。
【0019】
第1CPU23は、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定のエレベータ制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。第1CPU23は、2つ以上の情報処理部として、呼び登録部231と、かご内情報取得部232と、エレベータ制御部233と、乗り込み候補位置決定部234と、移動体情報処理部235とを有する。
【0020】
呼び登録部231は、利用者の乗場操作盤(図示せず)の操作による乗場呼び、またはかご内操作盤132a、132b、または132cの操作によるかご呼びの情報を登録する。また呼び登録部231は、移動体30から取得した移動体30の乗車階および降車階の情報を登録する。
【0021】
かご内情報取得部232は、乗りかご13内の情報として、カメラ装置133により取得された乗りかご13内の利用者および移動体の形状および位置の情報、荷重検知装置134による検知情報、かご内操作盤132a、132b、132cから入力された情報等を取得する。
【0022】
エレベータ制御部233は、呼び登録部231に登録された情報およびかご内情報取得部232で取得した情報に基づいて巻き上げ機11を動作させることで、乗りかご13を昇降させる。
【0023】
乗り込み候補位置決定部234は、適正度マップ記憶部21に記憶した適正度マップ情報およびかご内情報取得部232が取得した情報に基づいて移動体30が乗りかご13に乗り込み可能か否かを判定する。乗り込み候補位置決定部234は、移動体30が乗りかご13に乗り込み可能と判定すると、適正度マップ情報およびかご内情報取得部232が取得した情報に基づいて乗りかご13内における移動体30の乗り込み候補位置を決定する。
【0024】
移動体情報処理部235は、移動体30からの要求に応じて、乗り込み候補位置決定部234で決定された情報等に基づいて、移動体30への動作指示を生成して送信する。
【0025】
移動体30は、位置センサ31と、移動機構32と、近接センサ33と、スピーカ部34と、マップ情報記憶部35と、第2無線通信部36と、第2CPU37とを有する。
【0026】
位置センサ31は、例えばLiDAR等を用いて移動体30の位置情報(自位置情報)を取得する。移動機構32は、移動体30を移動させる機構である。近接センサ33は、例えば赤外線を用いて、所定距離内にある物体を検知する。スピーカ部34は、音声情報を出力する。
【0027】
マップ情報記憶部35は、各階の乗場の形状を示した乗場マップ情報および乗りかご13内の形状を示したかご内マップ情報を記憶する。第2無線通信部36は、エレベータ制御装置20との無線通信を行う。
【0028】
第2CPU37は、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定の移動体制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。第2CPU37は、2つ以上の情報処理部として、移動経路決定部371と、動作制御部372とを有する。
【0029】
移動経路決定部371は、エレベータ制御装置20から送信された乗り込み指示を取得すると、この乗り込み指示で示される乗り込み候補位置までの移動経路を、マップ情報記憶部35に記憶された乗場マップ情報およびかご内マップ情報を用いて決定する。動作制御部372は、移動経路決定部371が決定した移動経路を移動するように、移動機構32を制御する。
【0030】
移動経路決定部371が保持するかご内マップ情報と、エレベータ制御装置20の適正度マップ記憶部21が記憶する適正度マップ情報とは、乗りかご13床面内の2次元の座標位置情報の起点となる位置が予め合わせて設定されている。
【0031】
〈一実施形態によるエレベータシステムの動作〉
本実施形態によるエレベータシステム1のエレベータ制御装置20内の適正度マップ記憶部21に予め記憶される適正度マップ情報について、説明する。
【0032】
適正度マップ情報は、エレベータ10の乗りかごの中で、利用者が乗り込む頻度が低い位置を、移動体30の乗り込み位置としての適正度(以降、「乗り込み適正度」と称する)が低い位置とすることで、乗りかご13内の位置ごとの乗り込み適正度を示した情報である。
【0033】
本実施形態では、他の利用者が頻繁に出入りする、乗りかご13内のかご内操作盤132a、132b、132cに近い位置と、かごドア131に近い位置、つまり乗りかご13の乗降口に近い位置とを利用者が乗り込む頻度が低く、乗り込み位置としての適正度が低い位置とすることで、適正度マップ情報を生成する。
【0034】
図3(a)は、かご内操作盤132a、132b、132cの位置に基づいて設定された、乗りかご13の床面内の位置ごとの移動体30の乗り込み適正度を示す図である。図3(b)は、かごドア131の位置に基づいて設定された、乗りかご13内の位置ごとの乗り込み適正度を示す図である。図3(a)、(b)内では、色が濃い程、適正度が低いエリアを示し、色が薄い程、適正度が高いエリアを示している。
【0035】
図4は、図3(a)の情報と(b)の情報とを足し合わせて生成された、適正度マップの一例を示す図である。生成された適正度マップの情報は、適正度マップ記憶部21に記憶される。
【0036】
以下に、エレベータシステム1の動作例として、移動体30がエレベータ10を利用して異なる階間を移動する場合について説明する。移動体30の動作制御部372は、移動体30が乗降階にあるときに、予め保持した乗場マップ情報に基づいてエレベータ10に近づくように移動機構32を制御する。移動体30がエレベータ10の手前で停止すると、動作制御部372が、エレベータ10を利用するために、乗車階および降車階の情報を含む乗場呼び情報を生成して第2無線通信部36を介してエレベータ制御装置20に送信する。
【0037】
図5は、エレベータ制御装置20が、移動体30から乗場呼び情報を取得してから移動体30が降車階で降車するまでの間に実行する処理を示すフローチャートである。図6は、移動体30がエレベータ制御装置20に乗場呼び情報を送信した後、乗りかご13に乗り込むまでの間に実行する処理を示すフローチャートである。
【0038】
エレベータ制御装置20では、移動体30から取得した乗場呼び情報を、第1無線通信部22を介して移動体情報処理部235が取得し、呼び登録部231に登録する(S1の「YES」)。
【0039】
移動体30の乗場呼び情報が呼び登録部231に登録されると、乗り込み候補位置決定部234が、乗りかご13に移動体30が乗り込み可能か否かを判定する(S2)。乗り込み候補位置決定部234は、例えば乗場呼び情報とともに移動体30の荷重情報を取得し、かご内情報取得部232が取得した荷重検知装置134による検知情報と、取得した移動体30の荷重情報とに基づいて、移動体30が乗り込んだときに乗りかご13の定格積載量を超える場合には乗り込み不可能と判定する。
【0040】
また乗り込み候補位置決定部234は、かご内情報取得部232が取得した乗りかご13内の利用者および移動体の形状および位置の情報に基づいて、移動体30が乗り込むスペースがない場合には乗り込み不可能と判定する。
【0041】
また乗り込み候補位置決定部234は、かご内情報取得部232が取得した乗りかご13内の利用者および移動体の形状および位置の情報と、適正度マップ記憶部21に記憶した情報に基づいて、乗りかご13内で移動体30が乗り込み可能なエリアが、すべて適正度が所定値よりも低いエリアである場合には乗り込み不可能と判定する(S2の「NO」)。
【0042】
乗り込み候補位置決定部234が乗りかご13への移動体30の乗り込みが不可能と判定すると、移動体情報処理部235が、乗り込み不可通知を生成し、移動体30に送信する(S3)。移動体30は、乗り込み不可通知を受信すると、乗りかご13への乗り込みを中止し、エレベータ乗場の所定の待機位置に戻る。
【0043】
乗り込み候補位置決定部234は、上述したように乗り込み不可能と判定する事由がなく、乗りかご13に移動体30が乗り込み可能と判定すると(S2の「YES」)、適正度マップ記憶部21に記憶した適正度マップ情報およびかご内情報取得部232が取得した情報に基づいて、乗りかご13内における移動体30の乗り込み候補位置を決定する(S4)。
【0044】
このとき、乗り込み候補位置決定部234は、既に他の移動体に対して乗りかご13内の乗り込み候補位置を決定済みであるときには、他の移動体の数に応じて乗りかご13内への第2、第3・・・の移動体の乗り込み候補位置として、移動体30の乗り込み候補位置を決定する。
【0045】
乗り込み候補位置決定部234は、第2、第3・・・の移動体の乗り込み候補位置を決定する際には、既に決定済みの他の移動体の乗り込み候補位置以外のエリアの中から決定する。また乗り込み候補位置決定部234は、他の移動体の形状情報を取得可能であるときには、乗りかご13の床面内で他の移動体が占める範囲以外のエリアの中から、第2、第3・・・の移動体の乗り込み候補位置を決定する。
【0046】
具体的には、乗り込み候補位置決定部234は、適正度マップ情報内の適正度が最も高いエリアの中から、移動体30の乗り込み候補位置を決定する。例えば図4内の◎印で示す位置を、移動体30の乗り込み候補位置として決定する。ここで、適正度が最も高いエリアが複数あるときには、この複数エリアのうち、最も面積が広いエリアの中から移動体30の乗り込み候補位置を決定する。
【0047】
また、乗り込み候補位置決定部234が、乗りかご13に移動体30が乗り込み可能と判定すると、エレベータ制御部233が、移動体30の乗車階に乗りかご13を移動させ、戸開させる(S5)。乗りかご13が戸開すると、移動体情報処理部235は、乗り込み候補位置決定部234が決定した移動体30の乗り込み候補位置を含む乗り込み指示情報を生成し、移動体30に送信する(S6)。
【0048】
図6に移り、移動体30では、エレベータ制御装置20から乗り込み指示情報を取得すると(S21の「YES」)、移動経路決定部371が、予めマップ情報記憶部35が保持した乗車階の乗場マップ情報および乗りかご13のかご内マップ情報を用いて、この乗り込み指示で示される乗り込み候補位置までの移動経路を決定する(S22)。この移動経路は、エレベータ乗場内の移動体30の現在位置から、乗りかご13のかごドア131が戸開したときに形成される乗りかご13の開口である乗降口を通って、乗り込み候補位置まで移動する経路である。
【0049】
移動経路決定部371が乗り込み候補位置までの移動経路を決定すると、動作制御部372が、決定した移動経路を移動するように移動機構32を制御する。動作制御部372が移動機構32を制御すると、移動体30が移動経路上の移動を開始する(S23)。
【0050】
移動体30の移動中に近接センサ33が、乗降口に利用者または他の移動体等の物体(オブジェクト)があることを検知すると(S24の「YES」)、動作制御部372は、移動体30の導線確保のための報知情報をスピーカ部34から出力させる(S25)。このとき、動作制御部372は、移動体30の移動経路または乗り込み候補位置を含む報知情報、例えば「移動体が背面の壁まで直進します」を、出力させてもよい。
【0051】
スピーカ部34から報知情報を出力させたことにより、オブジェクトが移動して乗降口からなくなったことを近接センサ33が検知し(S26の「YES」)、動作制御部372が、移動体30が乗降口を通過可能と判定すると(S27の「YES」)、移動機構32を制御して移動体30を乗降口から乗りかご13内に乗車させる(S28)。
【0052】
ステップS26において、乗降口にあるオブジェクトがなくならずに検知し続けて所定時間が経過したときには(S26の「NO」→S29の「YES」)、動作制御部372は乗りかご13への乗り込みを中止し、中止した旨をエレベータ制御装置20に通知する。また、ステップS27において、例えば乗降口の段差等により移動体30が乗降口を通過不可能と判定すると(S27の「NO」)、同様に動作制御部372は乗りかご13への乗り込みを中止し、中止した旨をエレベータ制御装置20に通知する。移動体30は、エレベータ乗場の所定の待機位置に戻る。
【0053】
図7は、移動体30が乗りかご13に乗車してから乗り込み候補位置までの移動経路上にオブジェクトを検知したときに実行する処理を示すフローチャートである。
【0054】
移動体30の移動中に、近接センサ33が、乗り込み候補位置までの移動経路上にオブジェクトを検知すると(S30の「YES」)、移動経路決定部371が迂回経路算出機能を有していれば(S31の「YES」)、迂回経路の算出処理を実行する。ここで移動経路決定部371が迂回経路を算出できたときには(S32の「YES」)、迂回経路を移動体30の新たな移動経路として決定し(S33)、ステップS30に戻って移動動作を継続する。
【0055】
ステップS32において、移動経路決定部371が迂回経路を算出できず(S32の「NO」)、所定時間が経過したときには(S34の「YES」)、動作制御部372は、移動体30の導線確保のための報知情報をスピーカ部34から出力させる(S35)。
【0056】
スピーカ部34から報知情報を出力させたことにより、オブジェクトが移動して移動経路上からなくなったことを動作制御部372が検知すると(S36の「YES」)、ステップS30に戻って移動動作を継続する。
【0057】
ステップS36において、移動経路上のオブジェクトがなくならずに所定時間が経過したときには(S36の「NO」)、動作制御部372は、後述するように第2の乗り込み候補位置の情報を既に取得しているときには(S37の「YES」)、移動体30の乗りかご13への乗り込みは失敗と判断し、失敗した旨をエレベータ制御装置20に通知する。動作制御部372は、移動体30をその場で待機させ、乗り込みに失敗した旨を報知する報知情報をスピーカ部34から出力させる。
【0058】
ステップS37において第2の乗り込み候補位置の情報を未だ取得していないときには(S37の「NO」)、動作制御部372は、新たな乗り込み候補位置の算出要求をエレベータ制御装置20に送信する(S38)。
【0059】
図5のフローチャートに戻り、エレベータ制御装置20では、移動体30の乗りかご13への乗り込みが完了する前に(S7の「NO」)、移動体情報処理部235が新たな乗り込み候補位置の算出要求を取得すると(S8の「YES」)、乗り込み候補位置決定部234が、新たな乗り込み候補位置を決定する。乗り込み候補位置決定部234は、適正度マップ記憶部21に記憶した適正度マップ情報およびかご内情報取得部232が取得した情報に基づいて、前回決定した乗り込み候補位置以外の位置を、新たな乗り込み候補位置として決定する。
【0060】
移動体情報処理部235は、乗り込み候補位置決定部234が決定した新たな乗り込み候補位置である第2の乗り込み候補位置を、移動体30に送信する(S9)。
【0061】
図7に戻り、移動体30では、エレベータ制御装置20から第2の乗り込み候補位置を取得すると(S39の「YES」)、移動経路決定部371が、取得した第2の乗り込み候補位置までの移動経路を決定する(S40)。
【0062】
移動経路決定部371が第2の乗り込み候補位置までの移動経路を決定すると、動作制御部372が、決定した移動経路を移動するように移動機構32を制御する。動作制御部372が移動機構32を制御すると、移動体30が移動経路上の移動を開始する(S41)。移動体30が移動経路上の移動を開始すると、ステップS30に戻る。
【0063】
ステップS31において、移動経路決定部371が迂回経路算出機能を有していなければ(S31の「NO」)、ステップS35に移行して、動作制御部372が、移動体30の導線確保のための報知情報をスピーカ部34から出力させる(S35)。ステップS30において、移動経路上にあるオブジェクトを検知せずに移動体30が乗り込み候補位置まで近づいたときには(S30の「NO」)、図8のフローチャートで示す処理に移行する。
【0064】
図8は、移動体30が乗り込み候補位置にあるオブジェクトを検知したときに実行する処理を示すフローチャートである。
【0065】
移動体30が乗り込み候補位置まで近づき、近接センサ33が乗り込み候補位置にあるオブジェクトを検知したときには(S42の「YES」)、動作制御部372は、エレベータ制御装置20から取得する情報または移動体30に搭載された環境センサ(図示せず)等の検知情報に基づいて、検知したオブジェクトの形状を認識可能であるか否かを判定する(S43)。環境センサは、近接センサ33で構成してもよい。
【0066】
検知したオブジェクトの形状を認識可能であるときには(S43の「YES」)、認識したオブジェクトの形状に基づいて、乗り込み候補位置により接近可能な移動経路を移動経路決定部371が算出し、動作制御部372が移動機構32を制御して移動させることで、可能な限り移動体30を乗り込み候補位置に接近させる(S44)。
【0067】
ステップS43においてオブジェクトの形状を認識可能ではないと判定したとき(S43の「NO」)、またはステップS44において移動体30を乗り込み候補位置に接近させた後は、動作制御部372は、移動体30をその場で待機させる(S45)。
【0068】
動作制御部372は、待機位置が乗り込み候補位置から所定範囲内にあると判定すると(S46の「YES」)、乗り込み候補位置への乗り込みが完了したと判定する。このように判定することで、移動体30が乗りかご13に他の利用者等と同乗する際の乗り込み処理を柔軟に行うことができる。動作制御部372は、乗り込み候補位置への乗り込みが完了したことを、エレベータ制御装置20に通知する(S47)。
【0069】
ステップS42において、近接センサ33が乗り込み候補位置にあるオブジェクトを検知せずに移動体30が乗り込み候補位置に到着したとき(S48の「YES」)にも、動作制御部372は、乗り込み候補位置への乗り込みが完了したことを、エレベータ制御装置20に通知する(S47)。
【0070】
図5に戻り、エレベータ制御装置20では、移動体情報処理部235が、乗りかご13の乗り込み候補位置への移動体30の乗り込みが完了した旨の通知を取得すると(S7の「YES」)、算出した乗り込み候補階を移動体30の乗り込み位置として認識する。その後エレベータ制御部233は、移動体30の降車階に乗りかご13を移動させ、戸開させる(S10)。乗りかご13が戸開すると、移動体情報処理部235は降車指示情報を生成し、移動体30に送信する(S11)。
【0071】
図9は、移動体30が乗りかご13から降車するときに実行する処理を示すフローチャートである。移動体30では、エレベータ制御装置20から降車指示情報を取得した後(S50の「YES」)、近接センサ33が乗りかご13の乗降口にオブジェクトがあることを検知すると(S51の「YES」)、動作制御部372は、移動体30の導線確保のための報知情報を、スピーカ部34から出力させる(S52)。
【0072】
スピーカ部34から報知情報を出力させたことにより、オブジェクトが移動して乗降口からなくなったことを近接センサ33が検知し(S53の「YES」)、動作制御部372が、移動体30が乗降口を通過可能と判定すると(S54の「YES」)、移動機構32を制御して移動体30を乗降口から乗場に降車させる(S55)。動作制御部372は、移動体30が乗りかご13から降車した旨をエレベータ制御装置に通知する(S56)。
【0073】
ステップS53において、乗降口にあるオブジェクトがなくならずに検知し続けて所定時間が経過したときには(S53の「NO」→S57の「YES」)、動作制御部372は乗りかご13からの降車を中止し、中止した旨をエレベータ制御装置20に通知する。また、ステップS54において、例えば乗降口の段差等により移動体30が乗降口を通過不可能と判定すると(S54の「NO」)、同様に動作制御部372は乗りかご13からの降車を中止し、中止した旨をエレベータ制御装置20に通知する(S58)。移動体30は、降車を中止すると、乗りかご13内の乗り込み位置に戻る。
【0074】
図5に戻り、エレベータ制御装置20の移動体情報処理部235は、移動体30が乗りかご13から降車した旨の通知を取得したときには(S12の「YES」)処理を終了する。また移動体情報処理部235は、移動体30が乗りかご13からの降車を中止した旨の通知を取得したとき(S12の「NO」→S13の「YES」)には、呼び登録部231に移動体30の降車階を再登録する(S14)。移動体30の降車階が再登録されると、ステップS10に戻る。
【0075】
エレベータ制御部233は、移動体30から降車を中止した旨の通知を取得し、乗りかご13を戸閉させた後、再登録されたことにより再度降車階に乗りかご13を移動させて戸開させる。ステップS10、S11、S13、S14の処理は、移動体30が降車するまで繰り返される。
【0076】
以上の実施形態によれば、エレベータ制御装置は、乗りかご内の空きエリアから移動体の乗り込み位置を決定する際に、エレベータの利用者が他の利用者のために敢えて乗り込みを避けるエリアを除く空きエリアから決定するようにする。このように移動体の乗り込み位置を決定することで、エレベータの利用者の利便性を低下させないようにしつつ、利用者と移動体とが安全に乗りかごに同乗することができる。
【0077】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…エレベータシステム、10…エレベータ、11…巻き上げ機、12…ロープ、13…乗りかご、14…テールコード、20…エレベータ制御装置、21…適正度マップ記憶部、22…第1無線通信部、23…第1CPU、30…移動体、31…位置センサ、32…移動機構、33…近接センサ、34…スピーカ部、35…マップ情報記憶部、36…第2無線通信部、37…第2CPU、131…かごドア、132a,132b,132c…かご内操作盤、133…カメラ装置、134…荷重検知装置、231…呼び登録部、232…かご内情報取得部、233…エレベータ制御部、234…乗り込み候補位置決定部、235…移動体情報処理部、371…移動経路決定部、372…動作制御部
図1
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図9