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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】光照射システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023517473
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2022018362
(87)【国際公開番号】W WO2022230744
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2021075308
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021106968
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 伸子
(72)【発明者】
【氏名】京本 政之
(72)【発明者】
【氏名】石水 敬大
(72)【発明者】
【氏名】山口 絢加
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/124036(WO,A1)
【文献】特開2004-313213(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0099914(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0231880(US,A1)
【文献】特表2012-507335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の眼に所定の波長帯の光を照射する照射部と、
前記光の1回の処置における照射時間を計測する時間計測部と、
前記対象の眼が受ける光を制御する制御部と、を備え、
前記所定の波長帯は、450~600nmであり、
前記制御部は、前記照射時間が8時間未満となるように制御する、
前記対象が感じる身体の痛みを緩和するための光照射システム。
【請求項2】
対象の眼に所定の波長帯の光を照射する照射部と、
前記光の1回の処置における照射時間を計測する時間計測部と、
前記照射部を制御する制御部と、
前記照射部と、前記対象の眼と、の距離を計測する距離計測部と、
前記対象に付すための照度センサと、
を備え、
前記距離計測部は、前記照度センサの検出照度に基づいて、前記照射部と、前記対象の眼との距離を計測し、
前記制御部は、前記照射時間が8時間未満となるように制御する、
光照射システム。
【請求項3】
前記処置の時間の長さが0.5時間以上である、
請求項1または2に記載の光照射システム。
【請求項4】
前記処置の時間の長さが1時間以下である、
請求項1または2に記載の光照射システム。
【請求項5】
前記対象の識別情報と、該対象が受けた前記処置における前記照射時間および前記処置の回数を含む処置履歴情報とを、対象毎に対応付けて管理する対象情報管理部と、
前記処置履歴情報を、該処置履歴情報に対応する前記対象に提示する提示部と、をさらに備える、
請求項1または2に記載の光照射システム。
【請求項6】
前記提示部は、前記対象が現在受けている前記処置の終了予定時刻に関する情報を各対象に提示する、
請求項5に記載の光照射システム。
【請求項7】
前記対象の通信機器と通信するための通信部をさらに備え、
前記対象情報管理部は、前記対象の識別情報と、該対象が受けた前記処置における前記照射時間および前記回数を含む処置履歴情報と、該対象が受ける予定の前記処置のスケジュールに関する処置予定情報とを対応付けて管理しており、
前記処置予定情報を、該処置予定情報に対応する前記対象の通信機器に送信する、
請求項5に記載の光照射システム。
【請求項8】
前記照射部と、前記対象の眼と、の距離を計測する距離計測部を備え、
前記提示部は、前記距離に応じて、前記対象に頭または顔の位置を動かすよう指示するための提示画面、または前記対象に姿勢を変更するように指示する提示画面を提示する、請求項5に記載の光照射システム。
【請求項9】
前記対象に付すための照度センサを備え、
前記制御部は、前記照度センサの検出照度に基づいて、前記照射部の光の出力を調整する、
請求項8に記載の光照射システム。
【請求項10】
前記所定の波長帯の光とは異なる光に含まれる、少なくとも前記所定の波長帯とは異なる波長帯の光の照度を減じる遮蔽機構をさらに備える、
請求項1または2に記載の光照射システム。
【請求項11】
対象の身体の所定の部位に所定の波長帯の光を照射する照射部と、
前記光の1回の処置における照射時間を計測する時間計測部と、
前記照射部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記照射時間が8時間未満となるように制御し、
前記対象の身体の所定の部位とは、眼および耳の少なくとも1つであり、
前記照射部に対向して位置し、前記光の照度を示す照度情報を取得する照度情報取得部と、
前記光の照度が所定の照度未満である場合、該対象の状態の変更を促す情報を出力する対象情報出力部と、をさらに備える、光照射システム。
【請求項12】
前記対象の状態の変更を促す情報は、該対象の顔の向きを前記照射部の方へ向けさせる情報、または、該対象の顔を前記照射部に近づけさせる情報である、
請求項11に記載の光照射システム。
【請求項13】
前記照度情報に基づいて、前記照射部から照射する前記光の強度を調整する照射制御部をさらに備える、
請求項11に記載の光照射システム。
【請求項14】
前記照射部は、前記光を発する複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、配列されており、
照射制御部は、前記複数の発光素子の少なくとも1つを発光させる、
請求項13に記載の光照射システム。
【請求項15】
前記照射制御部は、配列されている前記複数の発光素子のうち、発光させる数を制御することによって、前記照射部から照射する前記光の強度を調整する、
請求項14に記載の光照射システム。
【請求項16】
前記照射制御部は、配列されている前記複数の発光素子のうち、発光させる発光素子の配置を制御することによって、発光している素子と、発光していない素子とから構成されるオブジェクトを前記照射部に表示する、
請求項15に記載の光照射システム。
【請求項17】
前記照射時間は、前記光の照度が所定の照度以上である時間であり、
前記時間計測部は、前記照射時間の長さが、所定時間に達した場合に前記照射部の照射を終了させる、
請求項11に記載の光照射システム。
【請求項18】
前記所定の波長帯は、450~600nmである、
請求項2または11に記載の光照射システム。
【請求項19】
前記所定の波長帯は、500~550nmである、
請求項1に記載の光照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼には光受容能を有するものの、視覚機能に対する直接的な関連性を有さない、内因性光感受性網膜神経節細胞(iPRGC:intrinsically photosensitive retinal ganglion cell)等の神経節細胞が存在する。
【0003】
内因性光感受性網膜神経節細胞が光を受容すると、心身にさまざまな非視覚的な作用をもたらすことが知られている。例えば、青色の光に該当する波長帯の光を照射すると松果体のメラトニンの分泌量が抑制されることが知られている。また、非特許文献1には、緑色の光に該当する波長帯の光を8時間以上照射することで、急性および慢性の痛みが緩和されることが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Mohab M. Ibrahima et, al.,「Long-lasting antinociceptive effects of green light in acute and chronic pain in rats」, Pain. Vol. 158,No.2, p.347-360, 2017.
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る光照射システムは、対象の身体の所定の部位に所定の波長帯の照射光を照射する照射部と、前記照射光が1回の処置における照射時間を計測する時間計測部と、前記照射部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記照射時間が8時間未満となるように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の実施形態1係る光照射システムの構成例を示す外観図である。
図2】本開示の実施形態1に係る光照射システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図3】本開示の実施形態1に係る光照射システムが行う処理の流れを示すフローチャートである。
図4】本開示の実施形態2に係る光照射システムの構成例を示す外観図である。
図5】本開示の実施形態2に係る光照射システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図6】提示部に提示される提示画面の一例を示す。
図7】提示部に提示される提示画面の一例を示す。
図8】通信機器の画面に表示される、処置予定情報の一例である。
図9】実施形態3に係る光照射システムの構成例を示す斜視図である。
図10】本開示の実施形態4に係る光照射システムの構成例を示す外観図である。
図11】本開示の実施形態4に係る光照射システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図12】複数の発光素子が配列されている照射部の一例を示す図である。
図13】複数の発光素子が配列されている照射部の一例を示す図である。
図14】照射部に表示されるオブジェクトの一例を示す図である。
図15】本開示の実施形態4に係る光照射システムが行う制御方法の流れを示すフローチャートである。
図16】本開示の実施形態5に係る光照射システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図17】本開示の実施形態5に係る光照射システムが行う制御方法の流れを示すフローチャートである。
図18】光照射試験のスケジュールを示す図である。
図19】鎮痛試験の結果を示すグラフである。
図20】血中エンケファリン濃度分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(光照射システム100の構成)
本開示の一態様に係る光照射システム100の構成について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本開示の一態様に係る光照射システム100の構成例を示す図である。図2は、本開示の実施形態1に係る光照射システム100の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0009】
光照射システム100は、対象の身体の所定の部位に所定の波長帯の照射光を照射するための装置である光照射装置1を備えている。光照射装置1は、設置型の装置であってもよいし、ウェアラブル装置であってもよい。本明細書では、照射光を照射する対象が人間である場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。例えば、犬、猫、ウサギ、モルモット、ラット等を含むさまざまな動物が、照射光を照射される対象となり得る。
【0010】
光照射する対象の身体の所定の部位は、疼痛緩和の効果が得られればどの部位でもよいが、本開示では、例えば、対象の眼に光を照射している。また、光を照射する所定の部位は、例えば、耳であってもよい。対象の耳に光照射する場合、光照射装置1は、例えば、対象の耳孔に挿入して使用されるイヤホン型であってもよい。また、イヤホン型の光照射装置1は、対象の外耳道を通じて鼓膜に向けて光照射してもよい。
【0011】
本開示の一態様に係る光照射システム100は、対象の眼と耳との両方に対して光照射をしてもよい。
【0012】
図1に示す光照射装置1は、一例として、設置型であり、光照射される対象の顎および額を固定するための固定部4を備えていてもよい。固定部4によって、対象の顔が固定されるため、対象の眼の位置も固定される。この場合、対象は椅子に座った状態で光照射される形態であってもよい。図1に示す光照射装置1は、所定の波長帯の光を対象の両眼に照射可能であるが、これに限定されない。光照射装置1は、対象の片方の眼に、所定の波長帯の光を照射する構成であってもよい。
【0013】
図1に示す光照射装置1は、例えば、医療機関に設置されていてもよく、対象の自宅に設置されていてもよい。
【0014】
次に、図2を用いて、光照射装置1の構成について説明する。図2に示すように、光照射装置1は、制御部10、照射部11、および時間計測部12を備えている。
【0015】
<照射部11>
照射部11は、対象の身体の所定の部位に所定の波長帯の照射光を照射するための1以上の光源を備えている。照射部11は、例えば、発光ダイオード(LED)および半導体レーザ(LD)などの発光素子を光源として備えていてもよい。これらの発光素子を使用することにより、照射部11は、発光波長の波長幅が狭い単色光を選択的に照射することができる。あるいは、照射部11は、白色光を発する光源と、所定の波長帯の光のみを透過させる光学フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)とを備えていてもよい。適切な光学フィルタを選択して用いることにより、照射部11は、所望の波長帯の照射光を選択的に照射することができる。
【0016】
[照射光の波長帯]
照射光の所定の波長帯は、対象の眼に照射することで、該対象の心身の状態を改善させる効果が期待される光の波長帯であればよい。
【0017】
緑色光を対象の眼に照射することによって、照射後において、該対象が感じている疼痛等の身体の痛みを持続的に緩和することが可能である。それゆえ、照射光の波長帯は、緑色光の波長帯であってもよい。この場合、照射光の所定の波長帯は、例えば、450~600nmであり、500~550nmであってよい。照射光は、ピークトップが525nmの緑色光であってよい。例えば、「450~600nm」とは、450nmおよび600nmの波長も含まれることを意図しており、その他の波長の表記についても同様である。
【0018】
紫色光を対象の眼に照射することによって、該対象の視力の低下の程度を低減したり、近視の進行速度を低下させたりすることが可能である。それゆえ、照射光の波長帯は、紫色光の波長帯であってもよい。この場合、照射光の所定の波長帯は、350~410nmであってもよい。
【0019】
また、青色光を対象の眼に照射することによって、該対象の時差ボケの症状を緩和できることが可能である。それゆえ、照射光の波長帯は、青色光の波長帯であってもよい。ただし、青色光を対象の眼に照射する場合、該対象の眼に与えるダメージを少しでも低減させるために、紫外線および近紫外線を遮断する光学フィルタをさらに備えてもよい。
【0020】
対象の心身の状態を改善させる効果が期待されるのであれば、照射光は、対象の眼に連続して照射される連続光であってもよいし、間欠的に照射されるパルス光であってもよい。
【0021】
<時間計測部12>
時間計測部12は、1回の処置における照射時間を計測する。時間計測部12は、照射部11が光照射を開始した時間から時間計測を開始し、光照射の停止と共に時間計測を停止してもよい。
【0022】
<制御部10>
制御部10は、1回の処置における照射時間が8時間未満となるように照射部11を制御する。制御部10は、時間計測部12より、照射時間を取得する。制御部10は、該照射時間が、8時間未満の所定の処置の時間に到達した時点で、照射部11の光照射を停止させる。所定の処置の時間は、予め設定されてもよく、例えば、対象毎に設定されてもよい。
【0023】
[照射時間]
1回の処置における照射時間の上限は、7.5時間以下であってよく、4時間以下であればよりよく、2時間以下であればさらによく、1時間以下であれば最もよい。これによれば、対象が処置によって拘束される時間が低減され、対象の身体的負担および精神的負担が小さい。
【0024】
また、1回の処置における照射時間の下限は、30分以上であってよく、1時間以上であればよりよい。これによれば、対象に疼痛緩和の効果を与えることができる。
【0025】
耳に照射光を照射する光照射装置1は、上述した眼に光を照射する光照射装置1と同様に、制御部10、照射部11、および時間計測部12を備えている。例えば、光照射装置1がイヤホン型である場合、照射部11は、光照射装置1の耳孔に挿入される側に設置され、耳の奥に向けて光を照射してもよい。また、制御部10および時間計測部12は、イヤホン型の光照射装置1の照射部11側とは逆側である、耳孔の外側の部分に設置されてもよい。また、制御部10は、照射時間が8時間未満となるように照射部11を制御する。
【0026】
(光照射システム100が実行する処理)
図3は、本実施形態に係る光照射システム100によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0027】
S1では、まず、照射部11が対象の眼に向かって、所定の波長帯の照射光を照射する(照射ステップ)。
【0028】
S2では、時間計測部12が、照射時間の計測を開始する(時間計測ステップ)。
【0029】
S3では、制御部10が、照射時間が8時間未満の所定の時間に達したか否かを判定する。制御部10が、照射時間が所定の時間に達したと判定した場合は、S4へ進む。制御部10が、照射時間が所定の時間に達していないと判定した場合は、所定の時間に達したと判定されるまでS3の処理を繰り返す。
【0030】
S4では、照射時間が所定の時間に達したと判定された後、制御部10は、照射部11に光照射を停止させる(照射時間制御ステップ)。
【0031】
上記の処理によれば、照射部11は所定の波長帯の照射光を照射し、時間計測部12は照射時間を計測し、制御部10は照射時間が8時間未満となるように制御することができる。これにより、対象の眼に所定の波長帯の光を8時間未満、対象の眼に照射して、該対象に疼痛緩和の効果を与えることができる。
【0032】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0033】
実施形態1に係る光照射システム100は、所定の波長帯の照射光の、1回の処置における照射時間が8時間未満である光照射システムであった。
【0034】
疼痛緩和の効果の観点から、1回の処置において行われる光照射は複数回に分けて断続的に行われてもよい。また、対象の眼に光を照射する処置は、2回以上行われてもよい。また、各処置が行われる頻度は、特に限定されないが、1日に1回処置が行われてもよいし、連続した日に1回ずつの処置が行われてもよい。一例として、1日1回の処置が、連続した2日~5日間を1サイクルとして行われてもよい。この場合、例えば、1サイクルに行われるトータルの処置時間を予め設定し、設定されたトータルの処置時間であれば、1回あたりの処置時間が日によって異なる時間であってもよい。また、この1サイクルは週単位、または月単位において、定期的に行われてもよい。また、処置は連続した日に行われなくてもよい。例えば、隔日に行われてもよいし、1日数時間の処置を連続する数日間に亘って行い、1日処置を行わない日を挟んだ後、1日数時間の処置を数日行ってもよい。また、1日複数回の処置が行われてもよい。例えば、1回1時間の処置を1日に2回行ってもよい。トータルの処置時間が4時間である例を挙げると、例えば、1回4時間の処置が連続して行われてもよいし、1回1時間の処置が処置後1時間の休憩時間を挟みながら4回繰り返されてもよい。
【0035】
本実施形態に係る光照射システムは、上記の観点により、対象の身体の所定の部位に光照射の処置を繰り返し受けさせるための光照射システムである。
【0036】
本実施形態について、図4および図5を用いて説明する。図4は、実施形態2に係る光照射システムの構成例を示す外観図である。図5は、実施形態2に係る光照射システムの構成例を示すブロック図である。
【0037】
図4に示すように、本実施形態の光照射システム100aは、一例として、設置型の光照射装置1aを備える。例えば、対象は、光照射装置1aと対峙して処置を受ける。この時、対象は例えば椅子に座った状態で処置を受けることができる。光照射装置1aは、照射部11を備え、一例として、照射部11の下部には提示部13を備える。図4に示すように、照射部11は、光照射装置1aの一面に配されてもよい。光照射装置1aは、対象と、照射部11との距離を計測する距離計測部14を備えてもよい。また、光照射システム100aは、一例として、照度センサ16を備える。
【0038】
図5に示すように、本実施形態の光照射システム100aは、光照射装置1aの他に、サーバ2と、照度センサ16とをさらに備えてもよい。サーバ2は、対象情報管理部20を備えてもよい。また、光照射装置1aは、制御部10a、照射部11、および時間計測部12の他に、提示部13、距離計測部14、および通信部18を備える。
【0039】
(サーバ2)
サーバ2は、一例として、光照射装置1と通信可能に接続される。サーバ2は、例えば医療機関が保有するサーバであってもよい。サーバ2は、対象情報管理部20を備える。
【0040】
<対象情報管理部20>
対象情報管理部20は、対象の識別情報21と、処置履歴情報22と、処置予定情報23とを、対象毎に対応付けて管理する。対象の識別情報21は、対象を識別するために対象毎に付与される情報であって、一例として、数字列、文字列からなる。処置履歴情報22は、対象が受けた1回の処置における照射時間と、対象が受けた処置の回数とを含む情報である。処置履歴情報22は、例えば、処置を受けた日時を含んでもよく、1回の処置を開始した時間、および終了時間を含んでもよい。また、処置履歴情報22は、対象が処置を受けた連続した日数と、1回の照射時間とを乗じた、積算の照射時間を含んでもよい。処置予定情報23は、対象が受ける予定の処置のスケジュールに関する情報である。処置予定情報23は、例えば、翌日の処置開始時間、および処置終了時間であってもよく、次の処置サイクルである翌週または翌月の処置開始日、処置終了日などであってもよい。
【0041】
また、光照射装置1aは、必要に応じて、対象情報管理部20から、格納されている情報を受けとってもよい。
【0042】
このように、対象情報管理部20が、対象の識別情報21と、処置履歴情報22と、処置予定情報23とを、対象毎に対応づけることにより、対象毎に処置履歴情報22と、処置予定情報23とを管理することができる。
【0043】
<提示部13>
提示部13は、処置履歴情報22を対象情報に提示する。提示部13は、例えば、文字を表示するためのディスプレイであってもよく、音声を発するスピーカであってもよい。図6は、提示部13がディスプレイであって、提示部13に提示される提示画面110の一例を示す。提示画面110には、識別情報21として「対象者ID」が表示され、処置履歴情報22として「処置日数」が表示されてもよい。また、提示部13は、処置履歴情報22と共に、現在受けている処置の終了予定時刻に関する情報を対象に提示してもよい。終了予定時刻に関する情報は、終了予定時刻であってもよく、終了予定時刻までの残り時間であってもよい。例えば、提示部13に提示される提示画面110には、「本日の照射時間残り00:04:00です」のように、現在受けている処置の終了予定時刻までの残り時間が示されてもよい。
【0044】
<距離計測部14>
距離計測部14は、照射部11と、対象の眼との距離を計測する。疼痛緩和の効果を得るためには、所定の照度の光が対象の眼に照射されることが要される。そのためには、照射部11と、対象の眼とが適正な距離にあることが必要である。距離計測部14は、照射部11と、対象の眼との距離を計測できれば、特に限定されないが、例えば、赤外線カメラである。これによれば、照射部11と、対象の眼との距離を計測することができる。
【0045】
また、距離計測部14の結果に基づき、提示部13は、対象に身体の所定の部位の位置を動かすよう指示するための提示画面を提示してもよい。例えば、対象の眼に照射する場合、提示部13は、照射部11と、対象の眼との距離を適切に調節するために、対象に対して頭または顔の位置を変更するように指示する提示画面を提示してもよい。あるいは提示部13は、照射部11と、対象の眼との距離を適切に調節するために、対象に対して姿勢を変更するように指示する提示画面を提示してもよい。提示部13に提示画面を提示させるための制御は、制御部10が行ってもよい。図7は、提示部13がディスプレイであって、提示部13に提示される提示画面111の一例を示す。提示画面111には、一例として「顔をもう少し近づけてください。」というメッセージが提示される。このように、提示部13が対象に身体の所定の部位の位置を動かすよう指示するための提示画面を提示することにより、例えば、対象に顔を照射部11に近づけさせるよう促すことができる。これによれば、照射部11と、対象の眼との距離が適切に調節され、照射部11が対象の眼に適当な照度の光を照射することができる。
【0046】
<通信部18>
通信部18は、光照射装置1の外部の通信機器3と通信する。通信機器3は、光照射装置1と通信する機能を有していれば特に限定されないが、例えば、通信機器3は、PC、タブレット、スマートフォンなどであってよい。また、通信機器3は、光照射装置1とのみ直接通信する機能を有するPCであってもよい。例えば、通信機器3は、対象が所有する通信機器3であってもよい。通信部18は、対象情報管理部20が管理する処置予定情報23を、該処置予定情報に対応する対象の通信機器3に送信してもよい。図8は、対象の通信機器3の画面に表示される、通信部18から送信された処置予定情報23の一例である。通信機器3は、一例として、対象が所有するスマートフォンである。該スマートフォンの画面には、処置予定情報23として、対象に処置の予定を通知するための情報が表示される。一例として、スマートフォンの画面には、「本日の照射開始予定時間は19時です。」というメッセージが表示されている。通信部18が、対象の通信機器に処置予定情報23を送信することにより、対象は処置予定を知ることができ、忘れずに処置を受けることができる。
【0047】
<照度センサ16>
照度センサ16は、照度を検出するセンサである。<距離計測部14>でも述べたように、疼痛緩和の効果を得るためには、所定の照度の光が対象の眼に照射されることが要される。そのため、照度センサ16は、対象の眼に近い場所に付され、眼に近い場所の照度を検出してよい。図4では、一例として、メガネのフレームに照度センサ16が付されている。照度センサ16の形態はこれに限定されず、例えば、対象の皮膚に直接貼付される形態でもよく、照度センサ16が付された帽子を対象が被る形態であってもよい。
【0048】
距離計測部14は、照度センサ16が検出した検出照度に基づいて、照射部11と、対象の眼との距離を計測してもよい。これにより、照射部11と、対象の眼との距離を計測することができる。
【0049】
また、制御部10は、照度センサ16が検出した検出照度に基づいて、照射部11の出力を調整してもよい。これにより、対象の眼に適切な照度の光が照射される。
【0050】
〔実施形態3〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0051】
実施形態1および2では、設置型の光照射装置を備える光照射システムについて説明したが、本実施形態では、ウェアラブル型の光照射装置を備える光照射システム100bについて説明する。
【0052】
本実施形態について、図9を用いて説明する。図9は、実施形態3に係る光照射システム100bの構成例を示す斜視図である。
【0053】
光照射システム100bは、光照射装置1bを備える。光照射装置1bは、制御部10b、照射部11、時間計測部12の他に、遮蔽機構17を備える。また、光照射装置1bは移動機構15を備えてもよい。
【0054】
<遮蔽機構17>
遮蔽機構17は、照射光とは異なる光の照度、または照射光とは異なる光に含まれる、所定の波長帯とは異なる波長帯の光の照度を減じてもよい。ここで、照射光とは異なる光とは、例えば、太陽光、および屋内の照明からの光であってもよい。
【0055】
遮蔽機構17は、遮光性を有する布製、樹脂製であってもよいし、遮光性または光反射性を有する金属製であってもよい。あるいは、遮蔽機構17は、所定の波長帯の光を選択的に透過し、所定の波長帯とは異なる波長帯の光を透過しない光学フィルタを備えていてもよい。遮蔽機構17が遮光性を有する材料である場合、遮蔽機構17は、光照射装置1bの外部からの光の照度を全波長帯に亘り減じることができる。また、遮蔽機構17が所定の波長帯の光を選択的に透過し、所定の波長帯とは異なる波長帯の光を透過しない材料である場合、遮蔽機構17は、光照射装置1bの外部からの光に含まれる、所定の波長帯とは異なる波長帯の光の照度を減じることができる。これにより、遮蔽機構17は、所定の波長帯の照射光を対象の眼に照射するときに、該対象の眼に到達する、照射光とは異なる波長帯の光の照度を低減させることができる。遮蔽機構17が、光反射性の材料から成る場合には、光照射装置1bの外部からの光を減じることができる一方で、光照射装置1bの内部の光を照射対象へ反射することも可能である。
【0056】
遮蔽機構17は、光照射装置1bを装着した対象と、光照射装置1bとの間の隙間が生じないように配置されればよい。また、遮蔽機構17は、光照射装置1bと一体であってもよく、別体であってもよい。
【0057】
遮蔽機構17は、図9に示すように、光照射装置1bのフレーム部分全体を覆うゴーグル様の形状を有していてもよい。この場合、遮蔽機構17は、光照射装置1bのフレーム部分を覆うことができる。これにより、光照射装置1bの外部からの光が、対象の額、こめかみ、頬、および鼻と、光照射装置1bとの間の隙間から侵入し、該対象の眼に到達することを回避することができる。あるいは、遮蔽機構17は、対象の頭部全体を覆う構成であってもよい。また、図9に示す光照射装置1bを装着した対象または対象の頭部などを、別体の遮蔽機構17によって覆う構成であってもよい。
【0058】
図9に示す遮蔽機構17は、光照射装置1bの外部から対象の両眼に到達する光を遮蔽するが、これに限定されない。例えば、光照射装置1bが、右眼用の遮蔽機構17および左眼用の遮蔽機構17を備える構成であってもよい。この場合、照射光を対象の片方の眼に照射している場合には、同じ側の遮蔽機構17のみを用いてもよい。この構成によれば、照射光を照射されていない側の眼の視界は、遮蔽機構17によって遮られない。これにより、対象は、照射光を照射されていない側の眼によって周囲の状況を視認することが可能である。
【0059】
<移動機構15>
また、光照射装置1bは、照射部11の位置を調節するために、移動機構15を備えていてもよい。移動機構15は、対象の眼、特に瞳孔に向けて照射部11の光を照射できるよう、照射部11の位置を移動させるために設けられた機構である。
【0060】
移動機構15は、対象の眼の瞳孔の位置に対する照射部11の位置を変更することが可能であれば、任意の構成であってよい。一例として、移動機構15は、図9に示すように、照射部11を第1端1511に保持する保持部151、および保持部151がX軸方向(左右方向)に移動するためのガイドレール152を備えていてもよい。
【0061】
ガイドレール152は、例えば、光照射装置1bのフレームの上部に設けられた溝であってもよい。保持部151の第1端1511と反対側の第2端1512は、該溝の内側面にスライド可能に当接していてもよい。これにより、保持部151は、ガイドレール152に沿って、X軸方向に移動可能である。
【0062】
また、移動機構15は、照射部11の位置をY軸方向(上下方向)に移動することが可能であってもよい。例えば、保持部151がY軸方向に伸縮可能な構造を有していてもよい。あるいは、照射部11を保持部151に固定する固定部材(図示せず)が保持部151に沿ってスライド可能であり、照射部11が保持部151に沿って移動可能となっていてもよい。
【0063】
例えば、対象を担当する医師および看護師等の医療関係者(あるいは、対象本人)は、照射部11の位置をガイドレール152に沿って手動で変更することができる。
【0064】
移動機構15を備えることによって、光照射装置1bは、対象の眼、特に瞳孔に照射光を的確に照射して、網膜の中心窩に照射光を到達させることができる。
【0065】
〔まとめ〕
本発明の態様1Aに係る光照射システムは、対象の身体の所定の部位に所定の波長帯の照射光を照射する照射部と、前記照射光が1回の処置における照射時間を計測する時間計測部と、前記照射部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記照射時間が8時間未満となるように制御する。
【0066】
本発明の態様2Aに係る光照射システムは、上記態様1Aにおいて、前記対象の身体の所定の部位とは、眼および耳の少なくとも1つであってもよい。
【0067】
本発明の態様3Aに係る光照射システムは、上記態様1Aまたは2Aにおいて、前記処置の時間の長さが0.5時間以上であってもよい。
【0068】
本発明の態様4Aに係る光照射システムは、上記態様1Aから3Aのいずれかにおいて、前記処置の時間の長さが4時間以下であってもよい。
【0069】
本発明の態様5Aに係る光照射システムは、上記態様1Aから3Aのいずれかにおいて、前記処置の時間の長さが2時間以下であってもよい。
【0070】
本発明の態様6Aに係る光照射システムは、上記態様1Aから3Aのいずれかにおいて、前記処置の時間の長さが1時間以下であってもよい。
【0071】
本発明の態様7Aに係る光照射システムは、上記態様1Aから3Aのいずれかにおいて、前記処置の時間の長さが0.5時間であってもよい。
【0072】
本発明の態様8Aに係る光照射システムは、上記態様1Aから7Aのいずれかにおいて、前記対象の識別情報と、該対象が受けた前記処置における前記照射時間および前記処置の回数を含む処置履歴情報とを、対象毎に対応付けて管理する対象情報管理部と、前記処置履歴情報を、該処置履歴情報に対応する前記対象に提示する提示部と、をさらに備えていてもよい。
【0073】
本発明の態様9Aに係る光照射システムは、上記態様8Aにおいて、前記提示部は、前記対象が現在受けている前記処置の終了予定時刻を各対象に提示してもよい。
【0074】
本発明の態様10Aに係る光照射システムは、上記態様8Aまたは9Aにおいて、前記対象の通信機器と通信するための通信部を備え、前記対象情報管理部は、前記対象の識別情報と、該対象が受けた前記処置における前記照射時間および前記回数を含む処置履歴情報と、該対象が受ける予定の前記処置のスケジュールに関する処置予定情報とを対応付けて管理しており、前記処置予定情報を、該処置予定情報に対応する前記対象の通信機器に送信してもよい。
【0075】
本発明の態様11Aに係る光照射システムは、上記態様8Aから10Aのいずれかにおいて、前記照射部と、前記対象の眼と、の距離を計測する距離計測部をさらに備え、前記提示部は、前記距離に応じて、前記対象に前記身体の所定の部位の位置を動かすよう指示するための提示画面を提示してもよい。
【0076】
本発明の態様12Aに係る光照射システムは、上記態様11Aにおいて、前記対象に付すための照度センサを備え、前記距離計測部は、前記照度センサの検出照度に基づいて、前記照射部と、前記対象の眼との距離を計測してもよい。
【0077】
本発明の態様13Aに係る光照射システムは、上記態様11Aまたは12Aにおいて、前記対象に付すための照度センサを備え、前記制御部は、前記照度センサの検出照度に基づいて、前記照射部の照射光の出力を調整してもよい。
【0078】
本発明の態様14Aに係る光照射システムは、上記態様1Aから13Aのいずれかにおいて、前記照射光とは異なる光であって、少なくとも前記所定の波長帯とは異なる波長帯の光の照度を減じる遮蔽機構をさらに備えていてもよい。
【0079】
本発明の態様15Aに係る光照射装置は、対象の身体の所定の部位に所定の波長帯の照射光を照射する照射部と、前記照射光が1回の処置における照射時間を計測する時間計測部と、前記照射部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記照射時間が8時間未満となるように制御する。
【0080】
本発明の態様16Aに係る光照射システムの制御方法は、対象の身体の所定の部位に所定の波長帯の照射光を照射する照射ステップと、前記照射光が1回の処置における照射時間を計測する時間計測ステップと、前記照射時間が8時間未満となるように制御する照射時間制御ステップと、を含む。
【0081】
〔実施形態4〕
(光照射システム100cの構成)
本開示の一態様に係る光照射システム100cの構成について、図10および図11を用いて説明する。図10は、本開示の一態様に係る光照射システム100cの構成例を示す外観図である。図11は、本開示の実施形態4に係る光照射システム100cの要部構成の一例を示すブロック図である。
【0082】
光照射システム100cは、対象の眼に所定の波長帯の光を照射するための装置である光照射装置1cを備えている。光照射装置1cは、設置型の装置であってもよい。図10に示す光照射システム100cにおける光照射装置1cは、一例として、設置型の装置である。
【0083】
対象は、例えば、光照射装置1cに対向して座った状態で所定の波長帯の光を照射されてもよい。以降、対象に光を照射することを、「処置」または「施術」とも称する。また、対象は、照度情報取得部42を備えたメガネを装着していてもよい。これによれば、照度情報取得部42は、光照射装置1から照射される光による、対象の眼の近傍の照度を示す照度情報を取得することができる。照度情報取得部42は、上述のように、対象が装着可能なものに備えられてもよく、対象が座る椅子に備えられてもよい。対象の眼の近傍の照度を取得してもよい。
【0084】
対象の眼に照射される光の照度は、例えば、対象が座る位置、対象の姿勢などに依存する。上述のように、対象が照度情報取得部42を備えたメガネを装着した状態で、光の照度が所定の照度未満である場合、例えば、対象が背もたれに深く腰掛けて、照射部11からの距離が遠い場合、対象が俯いている場合などが想定される。対象情報出力部33は、光の照度が所定の照度未満である場合は、対象の状態の変更を促す情報を出力する。対象情報出力部33の詳細については、後述する。
【0085】
図10に示す光照射システム100cは、例えば、医療機関に導入されていてもよく、対象の自宅に導入されていてもよい。
【0086】
次に、図11を用いて、光照射システム100cの構成について説明する。図2に示すように、光照射システム100cは、光照射装置1c、照度情報取得部42、および遮蔽機構17aを備える。
【0087】
<照度情報取得部42>
照度情報取得部42は、照射部11aに対向して位置し、光の照度を示す照度情報を取得する。ここで、照度情報は、照度を測定した測定値であってもよいし、測定された照度が所定の範囲内であるか否かを判定した判定結果であってもよい。あるいは、照度情報は、測定された照度に基づいて、対象の網膜に到達する光の照度を推定した推定値であってもよい。照度情報取得部42は、例えば、照度センサであってよい。照度センサの種類は特に限定されないが、フォトトランジスタを用いたものであってもよく、フォトダイオードを用いたものであってもよく、フォトダイオードにアンプ回路を追加したものであってもよい。
【0088】
<光照射装置1c>
光照射装置1cは、照射部11a、および制御部10cを備える。制御部10cは、対象情報出力部33、照射制御部34、および時間計測部12aを備える。
【0089】
[照射部11a]
照射部11aは、対象の眼に所定の波長帯の光を照射する。照射部11aは、光を発する複数の発光素子を備えていてもよい。複数の発光素子は、例えば、発光ダイオード(LED)および半導体レーザ(LD)などの発光素子であってもよい。これらの発光素子を使用することにより、照射部11aは、発光波長の波長幅が狭い単色光を選択的に照射することができる。
【0090】
[照射部11aの発光素子]
照射部11aは、所定の波長の光を発する複数の発光素子を有しており、これら複数の発光素子は配列されていてもよい。図12は、複数の発光素子112が配列されている照射部11aの一例を示す図である。図12の照射部11aには、一例として発光素子が150個配列されているが、発光素子の数はこれに限定されない。複数の発光素子は、同じ単色の発光素子であってよく、例えば、緑色の発光素子のみが配列されていてもよい。また、赤色、緑色、青色の発光素子が配列されていてもよい。これによれば、所定の波長帯の光を発することができる。発光素子を発光させる制御については、照射制御部34の説明において行う。
【0091】
[光の照度]
照射部11cによって、照射される光の所定の照度は、4~110Luxであってよい。光の照度が上記の範囲であれば、対象に疼痛緩和の効果を与えることができる。
【0092】
[対象情報出力部33]
対象情報出力部33は、光の照度が所定の照度未満である場合、対象の状態の変更を促す情報を出力する。対象の状態の変更を促す情報は、該対象の顔の向きを照射部11aの方へ向けさせる情報、または、対象の顔を照射部11aに近づけさせる情報である。対象情報出力部33は、アラーム、アナウンス、音楽などの音を出力するスピーカであってもよく、文字、数字および絵などを表示するディスプレイであってもよい。
【0093】
対象情報出力部33がスピーカであって、光の照度が所定未満である場合、警告音やアラームが出力されてもよい。また、対象情報出力部33は、例えば「光が適切に照射されていません」、「顔を上げてください」、「背筋を伸ばしてください」、「顔を近づけてください」などの音声アナウンスを出力してもよい。また、光の照度が所定の照度未満になったり、所定の照度以上になったり、と揺れ動く場合は、対象が寝ている可能性があるため、対象情報出力部33は、「起きてください」というアナウンス、またはアラーム音を出力してもよい。これによれば、対象は、光が適切に照射されていないことを知ることができ、光が適切に照射されるよう姿勢を正したり、顔を近づけたりすることができる。また、対象情報出力部33がスピーカである場合、光の照度が所定以上である場合は音楽が出力され、光の照度が所定未満になった場合に音楽の再生が中断する構成であってもよい。これによれば、音楽の再生が中断せぬよう、姿勢を正したり、照射部11aの方を向くよう対象に意識させることができる。
【0094】
対象情報出力部33がディスプレイであって、光の照度が所定未満である場合、例えば「光が適切に照射されていません」、「顔を上げてください」、「背筋を伸ばしてください」、「顔を近づけてください」などの文字が表示されてもよい。また、対象情報出力部33は、文字と共に絵を表示してもよい。光照射装置1cは、対象情報出力部33として、上述のスピーカおよびディスプレイの両方を備えていてもよい。
【0095】
対象情報出力部33が情報を出力するタイミングは、例えば、所定の照度未満の時間が数十秒続いたときであってもよい。所定の照度未満の時間は、例えば後述する時間計測部12aによって計測されてもよい。対象情報出力部33は、例えば、光の照度が所定の照度未満であるという情報を、上述した、照度情報取得部42から取得してもよい。この場合、対象情報出力部33と、照度情報取得部42とは、無線通信機能または有線通信機能によって、通信可能に接続されていてもよい。
【0096】
図10および11では、光照射装置1cが対象情報出力部33を備え、対象の変更を促す情報を出力する構成を示したが、これに限定されない。例えば、光照射装置1cとは異なる装置が対象の状態の変更を促す情報を出力する構成であってもよい。例えば、図10における対象が装着するメガネが、対象情報出力部33を備えてもよい。この場合、対象情報出力部33は、音および振動によって対象の状態の変更を促す情報を出力してもよい。これによれば、対象情報出力部33が、対象から近い場所で対象の状態の変更を促す情報を出力することができるため、対象は、該情報に注意を向けることができる。
【0097】
対象が個室で処置を受け、個室の外に医療関係者がいる場合が想定される。対象が、対象情報出力部33からの出力に気が付かなかったり、寝てしまっていたりする可能性がある。そこで、対象の状態の変更を促す情報は、医療関係者が使用する通信機器からも出力される構成であってもよい。この場合、光照射装置1cは、医療関係者が使用する通信機器に、対象の状態の変更を促す情報の出力を指示する出力指示を送信してもよい。これによれば、医療関係者が、対象の状態の変更を促す情報を受け取ることができる。また、対象が対象情報出力部33からの出力に気が付かない場合であっても、医療関係者が、対象に直接、対象の状態の変更を促すことができる。
【0098】
[照射制御部34]
照射制御部34は、照度情報に基づいて、照射部11aから照射する光の強度を調整してもよい。例えば、照射制御部34は、照度が所定の照度未満であるという照度情報に基づいて、照射部11aから照射する光の強度を強くしてもよい。また、照射制御部34が照射部11aから照射する光の強度を強くしたにも拘わらず、照度が所定の照度未満である場合は、対象情報出力部33から情報を出力する構成であってよい。
【0099】
処置を開始する前に、対象を所定の位置に座らせて照度情報を取得し、取得された照度情報に基づいて、照射制御部34が照射部11aから照射する光の強度を決定してもよい。また、照射制御部34が光の強度を決定する前に、光照射装置1cの角度、高さなどの変更を促すよう対象情報出力部33が情報を出力してもよい。
【0100】
光の強度は、発光する発光素子の数、および発光素子に与えられる電流の大きさに依存する。照射制御部34は、照射部11aに備えられた複数の発光素子の少なくとも1つを発光させてもよい。このように、照射制御部34は、発光素子を発光させることにより、照射部11aから光を照射することができる。
【0101】
照射制御部34は、配列されている複数の発光素子(以降、単に「素子」とも称する)のうち、発光させる数を制御することによって、照射部11aから照射する光の強度を調整してもよい。照射制御部34が行う発光させる素子の数の制御について、[照射部11aの発光素子]でも説明した図12を用いて説明する。図12の照射部11aに配列した複数の発光素子112のうち、一例として、白色の発光素子112は、発光している素子であり、黒色の発光素子112は、非発光の素子である。例えば、照射部11aに配列されている150個の素子のうち、137個の素子が発光することにより所定の照度が確保できる場合、照射制御部34は、図12に示すように137個の素子を発光させてもよい。このように照射制御部34が発光させる発光素子の数を制御することによって、照射部11aから照射する光の強度を調整することができる。また、これにより、所定の照度を確保することができる。また、照射制御部34は、発光素子に与える電流の大きさを変えることによって、照射部11aから照射する光の強度を調整してもよい。
【0102】
また、照射制御部34は、配列されている複数の発光素子のうち、発光させる発光素子の配置を制御することによって、発光している素子と、発光していない素子とから構成されるオブジェクトを照射部11aに表示してもよい。オブジェクトとは、特に限定されないが、例えば、文字、数字、および絵などであってよい。図12には、一例として、発光していない発光素子112によって、アルファベットの「T」の文字が表示されている。
【0103】
照射部11aに表示されるオブジェクトは、単位時間毎に異なるものであってよい。図13は、複数の発光素子112が配列されている照射部11aの一例を示す図である。図13の照射部11aには、図12の照射部11aと同様、150個の発光素子112が配列されている。図13に示すように、照射部11aは、発光していない発光素子112によって、アルファベットの「E」の文字が表示されている。例えば、図12の照射部11aのように「T」の文字が表示された後に、図13の照射部11aのように「E」の文字が表示されてもよい。このように、照射制御部34が、配列されている複数の発光素子のうち、発光させる発光素子の配置を制御することによって、照射部11aにオブジェクトを表示することができる。また、照射部11aが、単に光を照射するだけでなく、オブジェクトを表示することにより、処置を受ける対象の集中力を持続させることができる。
【0104】
また、照射部11aに表示されるオブジェクトが単位時間ごとに変更される場合であっても、照射制御部34によって、発光させる発光素子112の数が制御されてもよい。ここで、図12の照射部11aと、図13の照射部11aとでは、表示されているオブジェクトは異なるが、発光している発光素子112の数は、両者とも137個である。このように、照射制御部34が発光させる発光素子112の数を制御することによって、処置の間、所定の照度を保つことができる。
【0105】
[オブジェクトの例]
照射制御部34が、照射部11aに表示させるオブジェクトは、特に限定されないが、静止画、動画、メッセージなどであってもよい。メッセージには、例えば、文字、数字、記号が含まれてもよい。オブジェクトは、処置の間の対象の集中力を保持するため、また、対象を処置中にリラックスさせるために、様々なものが適用可能である。
【0106】
図14は、照射部11aに表示されるオブジェクトの一例である。図14の照射部11aには、一例として、天気を文字で表すオブジェクト113、天気を絵で表すオブジェクト114、処置の残り時間を表すオブジェクト115が表示されている。これらの文字、絵、数字は、上述のように、複数の発光素子112のうち、発光する素子、発光しない素子によって表されてよい。対象の眼に十分な光を照射する観点より、例えば、図14の文字、絵、数字の部分は、発光していない素子によって表され、文字、絵、数字の背景の部分が発光する素子によって表されてもよい。また、表示されるオブジェクトの割合が、照射部11aの面積に対して大きい場合は、オブジェクトを表す素子を発光させ、背景を表す素子を発光させない構成であってもよい。これにより、所定の照度を保つことができる。
【0107】
照射制御部34が、照射部11aに表示させるオブジェクトは、この他に、例えば、ニュースの文章であってもよく、小説の文章であってもよく、アニメーションであってもよい。これらのオブジェクトは、単位時間毎に変更されてもよい。また、処置の前に、どのオブジェクトを表示させるか対象に選択させる構成であってもよい。これによれば、対象の注意をひくことができ、対象の顔を自然と照射部11aの方に向けさせることができる。また、対象をリラックスさせることができる。また、これらのオブジェクトに合わせた音声、音楽などがスピーカから流れてもよい。
【0108】
本開示における照射部11aは、上述のように、文字、絵、数字などを表示できる、例えばディスプレイであってよいため、照射部11aは、対象の状態の変更を促す情報を照射部11aに表示してもよい。
【0109】
照射制御部34は、照射部11aにどのようなオブジェクトを表示させる場合であっても、発光させる素子、発光させない素子の比率を制御して、対象の眼に所定の照度以上の照度の光を到達させてもよい。これによれば、対象の眼に所定の波長帯の光を安定的に照射することができる。
【0110】
[時間計測部12a]
本実施形態において、照射時間は、光の照度が所定の照度以上である時間であり、時間計測部12aは、照度情報に基づいて、前記光の照度が所定の照度以上である時間を照射時間として計測する。時間計測部12aは、例えばタイマーであってよい。例えば、時間計測部12aは、照射部11aが光の照射を開始した時間から時間計測を開始すればよい。時間計測部12aは、光の照度が所定の照度以上であるときのみ時間を計測し、光の照度が所定の照度未満であるときは時間を計測しない構成であってよい。または、時間計測部12aは、光の照度が所定の照度以上であるときの時間と、光の照度が所定の照度未満であるときの時間をそれぞれ計測する構成であってもよい。また、光の照度が所定の照度以上であるときの時間を積算時間として、例えば対象毎に対象データベース(不図示)に格納してもよい。これによれば、対象毎に照射時間を管理することができる。
【0111】
また、時間計測部12aは、照射時間の長さが所定時間に達した場合に照射部11aの照射を終了させてもよい。所定時間については後述の[照射の所定時間]にて説明する。また、処置の終了時において、対象に処置の終了を知らせるために、対象情報出力部33が終了を知らせるアナウンスをしてもよいし、制御部10cが室内の照明が点灯してもよい。これによれば、対象が自身で時間を計測する必要がなく、疼痛緩和の効果が発揮されるのに十分な時間、光が照射される。
【0112】
[照射の所定時間]
光が照射される所定時間の長さは0.5時間以上8時間未満であってもよい。また、所定時間の上限は、7.5時間以下であってもよく、4時間以下であってもよく、2時間以下であってもよく、1時間以下であってもよい。これによれば、対象が光を照射される処置によって拘束される時間が低減され、対象の身体的負担および精神的負担が小さい。
【0113】
また、所定時間の長さの下限は、30分以上であってもよく、1時間以上であってもよい。これによれば、対象に疼痛緩和の効果を与えることができる。
【0114】
<遮蔽機構17a>
遮蔽機構17aは、光照射装置1cが照射する光とは異なる光に含まれる、少なくとも所定の波長帯とは異なる波長帯の光の照度を減じてもよい。ここで、照射光とは異なる光とは、例えば、太陽光、および屋内の照明からの光であってもよい。
【0115】
遮蔽機構17aは、遮光性を有する布製、樹脂製であってもよいし、遮光性または光反射性を有する金属製であってもよい。これによれば、遮蔽機構17aは、光照射装置1の外部からの光の照度を全波長帯に亘り減じることができる。ここで、遮蔽機構17aは、具体的にカーテンであってもよく、暗室であってもよい。室内の照明を消灯させることができる場合は、必ずしも遮蔽機構を具備する必要はない。
【0116】
(光照射システム100cが実行する制御方法)
図15は、本実施形態に係る光照射システム100cによって実行される制御方法の流れを示すフローチャートである。
【0117】
S11では、まず、照射部11aが対象の眼に所定の波長帯の光を照射する(照射ステップ)。
【0118】
S12では、照度情報取得部42が照度情報を取得する(照度情報取得ステップ)。
【0119】
S13では、照度が所定の照度未満である場合、対象情報出力部33が対象の状態の変更を促す情報を出力する(情報出力ステップ)。
【0120】
上記の制御方法によれば、照射部11aは対象の眼に所定の波長帯の光を照射し、照度情報取得部42は照度情報を取得し、照度が所定の照度未満である場合、対象情報出力部33は対象の状態の変更を促す情報を出力することができる。これにより、光照射システム100cは、対象の眼に所定の波長帯の光を安定的に照射することができる。よって、上記の制御方法によれば、例えば、対象の心身に効果的に作用をもたらす所定の波長帯の照射光を対象の眼に照射することができる。
【0121】
〔実施形態5〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0122】
(光照射装置1dの構成)
実施形態4に係る光照射システム100cは、照度情報取得部42が光の照度を示す照度情報を取得し、光の照度が所定の照度未満である場合、対象の状態の変更を促す情報を出力する形態であった。また、実施形態4に係る光照射装置1cは、照射部11a、対象情報出力部33、照射制御部34、時間計測部12aを備えていた。
【0123】
本実施形態に係る光照射装置1dは、実施形態4と同様に設置型の光照射装置であってよく、対象は例えば椅子に座った状態で処置を受けることができる。
【0124】
図16を用いて、本実施形態に係る光照射装置1dについて説明する。図16は、実施形態5に係る光照射装置1dの構成例を示すブロック図である。
【0125】
図16に示すように、本実施形態に係る光照射装置1dは、照射部11a、および制御部10dを備えており、制御部10dは、対象情報出力部33、照射制御部34に加えて、距離計測部37、および照度算出部38をさらに備える。
【0126】
本実施形態に係る光照射装置1dは、距離計測部37および照度算出部38を備えることにより、対象側に照度情報取得部42がなくても照度を算出することができる。これによれば、処置には光照射装置1dのみを使用すればよく、対象側に別途照度情報取得部42を備える必要がない。例えば、照度情報取得部42を備えたメガネ等を対象に装着させる必要が無い。
【0127】
[距離計測部37]
距離計測部37は、対象が撮像された画像に基づいて、該対象の眼の位置を特定し、照射部11aからの距離を計測する。すなわち、距離計測部37は、対象の眼と、照射部11aとの距離を計測する。対象が撮像された画像は、例えば、赤外線カメラによって取得されればよく、赤外線カメラは光照射装置1dが備えていてもよく、光照射装置1dとは別に配されていてもよい。また、撮像される画像は、対象の眼の位置をリアルタイムで特定するために、動画像であってもよい。
【0128】
距離計測部37が対象の眼の位置を特定する方法は、特に限定されず、公知の方法が適用されてもよい。例えば、距離計測部37は、角度の異なる照明の反射光間の差分に基づいて瞳孔を検出することにより眼の位置を特定してもよい。距離計測部37は、画像における眼の位置、および眼の大きさに基づいて、照射部11aからの距離を算出してもよい。
【0129】
距離計測部37は、処置を開始する前に、予め対象を照射部11aから所定の距離の位置に座らせた状態で、対象が撮像された画像を取得し、取得した画像における対象の眼の位置を基準の位置として設定する較正処理を行ってもよい。これにより、対象毎に距離を正確に計測することができる。
【0130】
[照度算出部38]
照度算出部38は、距離計測部37が計測した距離と、照射部11aから照射された光の強度とに基づいて、対象の眼または眼の近傍における光の照度を算出する。照度算出部38は、予め、距離と、照射部11aから照射された光の強度とから算出される照度の対応関係を示す情報、すなわち関係式を保持しており、該情報に基づいて、距離と、光の強度とから光の照度を算出してもよい。
【0131】
(光照射装置1dが実行する制御方法)
図17は、本実施形態に係る光照射装置1dによって実行される制御方法の流れを示すフローチャートである。
【0132】
S21では、まず、照射部11aが対象の眼に所定の波長帯の光を照射する(照射ステップ)。
【0133】
S22では、距離計測部37が対象が撮像された画像に基づいて、該対象の眼の位置を特定し、照射部11aからの距離を計測する(距離計測ステップ)。
【0134】
S23では、照度算出部38が、距離と、照射部11aから照射された照射光の強度とに基づいて、対象の眼または眼の近傍における前記照射光の照度を算出する(照度算出ステップ)。
【0135】
S24では、対象情報出力部33が対象の眼または眼の近傍における照射光の照度が所定の照度未満である場合、該対象の状態の変更を促す情報を出力する(対象情報出力ステップ)。
【0136】
上記の制御方法によれば、照射部11aは対象の眼に所定の波長帯の光を照射し、距離計測部37は照射部11aからの距離を計測し、照度算出部38は照射光の照度を算出し、対象情報出力部33は対象の状態の変更を促す情報を出力することができる。これにより、光照射システム100dは、対象の眼に所定の波長帯の光を安定的に照射することができる。よって、上記の制御方法によれば、例えば、対象の心身に効果的に作用をもたらす所定の波長帯の照射光を対象の眼に照射することができる。
【0137】
〔変形例〕
実施形態5では、距離計測部37が、対象が撮像された画像に基づいて、該対象の眼の位置を特定した。制御部10dは、例えば、対象が撮像された画像において、対象の顔、または眼に基づいて、対象を特定してもよい。例えば、予め対象データベースに、対象の顔画像と、対象IDとを対応付けた表が格納されていてもよい。制御部10dは、処置をこれから受けようとする対象の顔の画像と、対象データベース内の画像とが一致する場合、処置を受けようとする対象に対して対象データベース内の対応したIDを付してもよい。これによれば、対象または管理者(医療関係者)が対象のIDを入力する必要がない。
【0138】
また、対象データベースには、対象毎に過去の照射時間、日付、照度、積算照度などの処置履歴が格納されていてもよい。制御部10dは、これらの対象データベースの処置履歴に基づき、対象毎に処置を管理してもよい。例えば、これから処置を受けようとする対象が光照射装置1dの前に座った時点で、制御部10dは、上述のように該対象に対応する対象IDを特定し、対象IDに対応した処置履歴に基づいて、照射時間、照度などを設定して処置を開始してもよい。これによれば、対象毎に適切な光の照射がされ、対象に疼痛緩和の効果を与えることができる。
【0139】
〔まとめ〕
本発明の態様1Bに係る光照射システムは、対象の眼に所定の波長帯の光を照射する照射部と、前記照射部に対向して位置し、前記光の照度を示す照度情報を取得する照度情報取得部と、前記光の照度が所定の照度未満である場合、該対象の状態の変更を促す情報を出力する対象情報出力部と、を備える。
【0140】
本発明の態様2Bに係る光照射システムは、上記態様1Bにおいて、前記対象の状態の変更を促す情報は、該対象の顔の向きを前記照射部の方へ向けさせる情報、または、該対象の顔を前記照射部に近づけさせる情報であってもよい。
【0141】
本発明の態様3Bに係る光照射システムは、上記態様1Bまたは2Bにおいて、前記照度情報に基づいて、前記照射部から照射する前記光の強度を調整する照射制御部を備えていてもよい。
【0142】
本発明の態様4Bに係る光照射システムは、上記態様3Bにおいて、前記照射部は、前記光を発する複数の発光素子を有し、前記複数の発光素子は、配列されており、照射制御部は、前記複数の発光素子の少なくとも1つを発光させてもよい。
【0143】
本発明の態様5Bに係る光照射システムは、上記態様4Bにおいて、前記照射制御部は、配列されている前記複数の発光素子のうち、発光させる数を制御することによって、前記照射部から照射する前記光の強度を調整してもよい。
【0144】
本発明の態様6Bに係る光照射システムは、上記態様5Bにおいて、前記照射制御部は、配列されている前記複数の発光素子のうち、発光させる発光素子の配置を制御することによって、発光している素子と、発光していない素子とから構成されるオブジェクトを前記照射部に表示してもよい。
【0145】
本発明の態様7Bに係る光照射システムは、上記態様1Bから6Bのいずれかにおいて、前記光とは異なる光に含まれる、少なくとも前記所定の波長帯とは異なる波長帯の光の照度を減じる遮蔽機構をさらに備えていてもよい。
【0146】
本発明の態様8Bに係る光照射システムは、上記態様1Bから7Bのいずれかにおいて、前記照度情報に基づいて、前記光の照度が所定の照度以上である時間を照射時間として計測する時間計測部をさらに備え、記照射時間の長さが、所定時間に達した場合に前記照射部の照射を終了させてもよい。
【0147】
本発明の態様9Bに係る光照射システムは、上記態様8Bにおいて、前記所定の波長帯は、450~600nmであってもよい。
【0148】
本発明の態様10Bに係る光照射システムは、上記態様8Bまたは9Bにおいて、前記所定時間の長さは0.5時間以上8時間未満であってもよい。
【0149】
本発明の態様11Bに係る光照射装置は、対象の眼に所定の波長帯の光を照射する照射部と、前記対象の眼または眼の近傍における前記光の照度が所定の照度未満である場合、該対象の状態の変更を促す情報を出力する対象情報出力部と、を備える。
【0150】
本発明の態様12Bに係る光照射装置は、対象の眼に所定の波長帯の光を照射する照射部と、前記対象が撮像された画像に基づいて、該対象の眼の位置を特定し、前記照射部からの距離を計測する距離計測部と、前記距離と、前記照射部から照射された光の強度とに基づいて、前記対象の眼または眼の近傍における前記光の照度を算出する照度算出部と、前記算出された算出照度が所定の照度以下である場合、該対象の状態の変更を促す情報を出力する対象情報出力部と、を備える。
【0151】
本発明の態様13Bに係る光照射システムの制御方法は、対象の眼に所定の波長帯の光を照射する照射ステップと、前記対象の眼または眼の近傍における前記光の照度を示す照度情報を取得する照度情報取得ステップと、眼または眼の近傍における前記光の照度が所定の照度未満である場合、該対象の状態の変更を促す情報を出力する対象情報出力ステップと、を含む。
【0152】
本発明の態様14Bに係る光照射システムの制御方法は、対象の眼に照射部から所定の波長帯の光を照射する照射ステップと、前記対象が撮像された画像に基づいて、該対象の眼の位置を特定し、前記照射部からの距離を計測する距離計測ステップと、前記距離と、前記照射部から照射された光の強度とに基づいて、前記対象の眼または眼の近傍における前記光の照度を算出する照度算出ステップと、前記対象の眼または眼の近傍における前記光の照度が所定の照度未満である場合、該対象の状態の変更を促す情報を出力する対象情報出力ステップと、を含む。
【0153】
〔ソフトウェアによる実現例〕
光照射システム100、100a、100b、100cおよび100dの制御ブロック(制御部10、10a、10b、10cおよび10d)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0154】
後者の場合、光照射システム100、100a、100b、100cおよび100dは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本開示の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。本開示の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【実施例
【0155】
以下、ラット(対象)に対して行った光照射試験について説明する。
【0156】
<試験方法>
ラット(n=5)に対して光照射試験を行い、照射時間について検討した。図18は、ラットに対して行った光照射試験の5日間の照射スケジュールを示す図である。図18のスケジュールは、具体的に、ラットの飼育室の照明がON(明期)および照明がOFF(暗期)の期間、ラットに対して光照射を行う照射のタイミング、照射時間の長さ、および鎮痛効果試験と採血とを行うタイミングを示すスケジュールである。試験期間は5日間であり、9時から21時までは明期、21時から翌日の9時までは暗期とした。
【0157】
まず、1日目の明期のある時間にラットに対して、鎮痛試験および採血を行った。その後、暗期の所定の時刻に、所定の時間、ラットに対して光照射(波長:527nm、出力強度:100Lux)を行った。5日間連続して同じ条件で光照射を行い、5日目の翌日の明期に、1日目と同様に鎮痛試験および採血を行った。
【0158】
〔鎮痛試験〕
ランダルセリット式鎮痛効果測定装置(ユニコム株式会社製、型番K-201)を用いて、ラットの足先端に圧刺激を加え、ラットが逃避反応を示す加圧値(mmHg)を測定し、
回避反応閾値圧とした。
【0159】
〔血中エンケファリン濃度分析〕
ラットから採血した血液の血中エンケファリン濃度(pg/mL)を分析した。分析はRat Enkephalin ELISA Kit(LSBio)を用いて行った。
【0160】
〔統計学的分析〕
得られた鎮痛試験結果、血中エンケファリン濃度分析結果は平均値±標準誤差で示した。検定はStudentのt検定を行い、有意水準をp<0.05およびp<0.01に設定した。
【0161】
図19は、鎮痛試験の結果を示すグラフである。図19のグラフは、横軸に5日間繰り返し光照射した際の連続照射時間、縦軸にラットの回避反応閾値圧(mmHg)を示す。回避反応閾値圧が高い程、ラットが痛みに対して鈍感であることを示す。図11のグラフにおいて、p<0.05である群に1個のアスタリスク(*)を付し、p<0.01である群に2個のアスタリスクを付した。図19のグラフより、30分間光照射されたラット群は、光照射30分未満の対照群と比較して回避反応閾値圧が高いことがわかった。また、1時間光照射されたラット群は、さらに回避反応閾値圧が高くなったが、光照射2時間、4時間、8時間のラット群の回避反応閾値圧は、光照射1時間のラット群の回避反応閾値圧とほぼ変わらなかった。寧ろ、光照射8時間のラット群の回避反応閾値圧は、光照射4時間のラット群の回避反応閾値圧よりも低下していた。以上より、光照射を30分間以上行うことにより、ラットに対する疼痛緩和効果があることが明らかになった。また、光照射が8時間未満であってもラットに対する疼痛緩和効果が十分にあることが明らかになった。
【0162】
図20は、血中エンケファリン濃度分析の結果を示すグラフである。図20のグラフは、横軸に5日間繰り返し光照射した際の連続照射時間、縦軸にラットの血中エンケファリン濃度(pg/mL)を示す。図20のグラフにおいて、p<0.05である群に1個のアスタリスク(*)を付し、p<0.01である群に2個のアスタリスクを付した。図20のグラフより、30分間光照射されたラット群は、光照射30分未満の対照群と比較して血中エンケファリン濃度が高いことがわかった。また、1時間光照射されたラット群の血中エンケファリン濃度は、30分光照射のラット群のそれより高かった。しかし、光照射2時間以上のラット群は、血中エンケファリン濃度が低下する傾向にあった。以上より、光照射を30分以上行うことより、ラットに対する疼痛緩和効果が十分にあることが明らかになった。
【0163】
本実施例では、本開示に係る発明の光照射システムによる光照射によって、ラットに対する疼痛緩和効果が明らかになった。血中エンケファリン濃度が高くなると痛みに対する緩和効果が表れることは、ラットに限らず、動物全般に共通であるため、本開示に係る発明の光照射システムは、動物全般に適用可能であり、ラットと同様に疼痛緩和効果がみられると考えられる。
【0164】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0165】
1、1a、1b、1c、1d 光照射装置
10、10a、10b、10c、10d 制御部
11、11a 照射部
12、12a 時間計測部
13 提示部
14 距離計測部
16 照度センサ
18 通信部
20 対象情報管理部
21 識別情報
22 処置履歴情報
23 処置予定情報
42 照度情報取得部
33 対象情報出力部
34 照射制御部
17、17a 遮蔽機構
37 距離計測部
38 照度算出部
100、100a、100b、100c、100d 光照射システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20