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特許7631520真空ポンプ用のオイル供給ナット及びオイルリザーバ
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  • 特許-真空ポンプ用のオイル供給ナット及びオイルリザーバ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】真空ポンプ用のオイル供給ナット及びオイルリザーバ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
F04D19/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023527002
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 GB2021052798
(87)【国際公開番号】W WO2022090720
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】2017309.2
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】コベット アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウェストン キース
(72)【発明者】
【氏名】ホーラー リチャード グリン
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157651(JP,A)
【文献】特開2008-121889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0309408(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0177165(US,A1)
【文献】特開2018-105394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
F16C 19/00-19/56、
33/30-33/66
F16C 32/00-32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプのハウジングに結合されるように構成されたオイルリザーバであって、
前記真空ポンプの軸受に供給される潤滑剤を含むカートリッジと、
前記真空ポンプのオイル供給ナットに接触し、前記オイル供給ナットの表面に潤滑剤を塗布する供給チップと、
前記カートリッジ内に配置され、前記真空ポンプの軸受ジャーナル要素を収容するように構成されたバックアップ軸受と、
を備えるオイルリザーバ。
【請求項2】
前記オイルリザーバは、前記真空ポンプに解放可能に結合されている、請求項1に記載のオイルリザーバ。
【請求項3】
真空ポンプに後付けされるように構成された、オイル供給ナットと、請求項1又は2に記載のオイルリザーバとを備えるキットであって、
前記オイル供給ナットは真空ポンプの軸受に潤滑剤を供給するためのものであり、
第1の端部と、前記真空ポンプの軸に結合するように構成されている、反対側の第2の端部と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間に延びるオイル供給要素であって、前記オイル供給要素は、前記第2の端部に向かって増大する直径を有し、前記潤滑剤を前記第2の端部に向かって運ぶために前記潤滑剤に作用する大きな回転力を作り出すようになっている、オイル供給要素と、
前記真空ポンプのバックアップ軸受に収容されるように構成された円筒面を有する軸受ジャーナル要素と、
を備える、キット
【請求項4】
真空ポンプ、詳細にはターボ分子ポンプであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたロータ軸と、
前記ハウジングに結合された請求項1又は2に記載のオイルリザーバと、
前記ロータ軸に結合されるオイル供給ナットであって、前記オイル供給ナットの第1の端部と第2の端部との間に延びるオイル供給要素を備え、前記オイル供給要素は、前記第2の端部に向かって増大する直径を有し、潤滑剤を前記第2の端部に向かって運ぶために前記潤滑剤に作用する大きな回転力を作り出すようなっている、オイル供給ナットと、
前記オイル供給ナット又は前記ロータ軸に結合され、前記オイルリザーバの前記バックアップ軸受に収容されるように構成された円筒面を有する、軸受ジャーナル要素と、
を備える、真空ポンプ。
【請求項5】
前記ロータ軸は、前記真空ポンプの出口に向かう第1の端部と、前記真空ポンプの入口に向かう反対側の第2の端部とを有し、前記オイル供給ナットは、前記ロータ軸の前記第1の端部に結合されている、請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記オイルリザーバは、前記ロータ軸の前記第1の端部を取り囲む、請求項5に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記軸受ジャーナル要素の前記円筒面は、前記真空ポンプの正常運転時、前記円筒面が前記バックアップ軸受と接触しないように、前記バックアップ軸受の内径よりも小さい直径を有する、請求項4から6のいずれかに記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプの軸受に潤滑剤を供給するオイル供給ナット、潤滑剤を収容して供給するオイルリザーバ、既存の真空ポンプに後付けするためのこのようなオイル供給ナット及びオイルリザーバを備えたキット、並びにこのようなオイル供給ナット及びオイルリザーバを有する真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の真空ポンプ、詳細にはターボ分子ポンプは、入口及び出口を有するハウジングを備える。ハウジング内には、少なくとも1つのステータ要素と相互作用する少なくとも1つのポンプ要素を有するロータ軸が回転可能に配置される。ロータ軸は電気モータによって回転され、少なくとも1つのポンプ要素と少なくとも1つのステータ要素との相互作用により、ガス状媒体が真空ポンプの入口から出口まで運ばれる。ロータ軸は、回転可能なように、ボール軸受などのローラ軸受とすることができる1又は2以上の軸受によって支持される。
【0003】
作動時、ローラ軸受の摩耗及び疲労を低減するために、ローラ軸受に潤滑剤を供給する必要がある。通常、潤滑剤はオイルリザーバに収容され、そこからオイル供給ナットによってローラ軸受に供給される。その場合、オイルリザーバは、適切な機能を与えてローラ軸受への潤滑剤の十分な供給を保証するために、真空ポンプのメンテナンス時に適宜、交換する必要がある。
【0004】
真空ポンプが故障した場合にロータ軸が高速回転するため、ロータ軸、詳細にはポンプ要素がステータに衝突し、真空ポンプに大きな損傷を与え、破壊する可能性もあり、さらにオペレータが負傷するリスクもある。従って、真空ポンプには、故障時にロータ軸を支持し、ローターハウジング又はステータ要素の破壊を回避するために、バックアップ軸受を有することが望まれる。しかしながら、バックアップ軸受及びオイルリザーバの両方をオイル供給ナットと一緒に配置することは困難である。ローラ軸受の潤滑の必要性から、バックアップ軸受は省略されることが多い。詳細には、バックアップ軸受のない既存の真空ポンプでは、この真空ポンプの運転の安全性を高めるために、バックアップ軸受を後付けする可能性はほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、オイル供給ナットとバックアップ軸受を一緒に有する可能性を提供し、さらに、真空ポンプに大規模に侵入することなく、このようなバックアップ軸受を既存の真空ポンプに後付けする可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の所与の課題は、本発明により、請求項1によるオイル供給ナット、請求項6によるオイルリザーバ、請求項8によるそのようなオイル供給ナット及びそのようなオイルリザーバを含むキット、及び請求項9による真空ポンプによって解決される。
【0007】
本発明の第1の態様では、真空ポンプの軸受に潤滑剤を供給するためのオイル供給ナットが提供される。オイル供給ナットは、第1の端部と反対側の第2の端部とを備え、真空ポンプのロータ軸に結合されるように構成される。詳細には、オイル供給ナットは、真空ポンプのロータ軸に解放可能に結合される。さらに、オイル供給ナットは、オイル供給ナットの第1の端部と第2の端部との間で軸方向に延びるオイル供給要素を備え、オイル供給要素は、円錐形になるように、第2の端部に向かって増大する直径を有する。直径が増大することにより、オイル供給要素の表面で潤滑剤に作用する回転力が増加し、それによって潤滑剤は、第2の端部に向かい、第2の端部からオイル供給ナットの第2の端部の近くに配置された真空ポンプの軸受に運ばれる。本発明によれば、オイル供給ナットは、円筒面を有し、真空ポンプのバックアップ軸受に収容されるように構成された軸受ジャーナル要素を備える。従って、本発明によって、オイル供給ナットは、2つの複合した機能性を提供する、すなわち、オイル供給要素によってオイルリザーバから軸受に潤滑剤を供給する機能と、真空ポンプの故障時に真空ポンプのロータ軸を支持するために、真空ポンプのバックアップ軸受と相互作用する軸受ジャーナル要素を提供する機能である。従って、これらの機能性が一体部品に組み込まれているため、製造が容易であり、既存の真空ポンプに後付けすることが可能である。
【0008】
好ましくは、軸受ジャーナル要素及びオイル供給要素は、一体部品として一体的に構築される。さらに好ましくは、オイル供給ナットは一体部品として構築される。
【0009】
好ましくは、軸受ジャーナル要素はオイル供給ナットの第1の端部に配置され、オイル供給要素は第2の端部に配置される。より詳細には、軸受ジャーナル要素は、オイル供給要素に直接隣接する。
【0010】
好ましくは、オイル供給ナットは、真空ポンプのロータ軸に結合される結合要素を備える。従って、結合要素によって、オイル供給ナットの真空ポンプのロータ軸への結合が容易になる。詳細には、結合要素は、オイル供給ナットをロータ軸に解放可能に結合する。いずれの場合にも、結合要素は、ねじ結合(threated connection)、焼き嵌め、クランプなどによってもたらすことができる。
【0011】
好ましくは、結合要素は第2の端部に配置される。あるいは、オイル供給ナットは、第1の端部から第2の端部までオイル供給ナットを貫通して延び、真空ポンプのロータ軸の一部を受け入れるように構成された貫通孔を備え、結合要素は、第1の端部に配置され、結合要素が第1の端部にある状態で、オイル供給ナットはロータ軸に結合可能である。貫通穴により、オイル供給ナットはロータ軸を取り囲み、ロータ軸とオイル供給ナットの同心性が向上する。
【0012】
本発明の第2の態様では、真空ポンプのハウジングに結合されるオイルリザーバが提供される。オイルリザーバは、真空ポンプの軸受に供給される潤滑剤を含むカートリッジを備える。詳細には、カートリッジは、潤滑剤を収容して貯蔵するための多孔質材料又は繊維状材料を含む。供給チップは、カートリッジに接続され、詳細にはカートリッジ内の材料に接続され、供給チップも繊維状又は多孔質材料で作られ、真空ポンプのオイル供給ナットと接触するように構成されている。この材料により、潤滑剤は、毛細管力によってチップの端部に運ばれ、そこからオイル供給ナットの表面に運ばれ、オイル供給ナットによって真空ポンプの軸受に供給される。さらに、本発明では、カートリッジ内にはバックアップ軸受が配置され、バックアップ軸受は、真空ポンプの軸受ジャーナル要素を収容するように構成されている。従って、オイルリザーバは、2つの機能性を提供する、すなわち、オイル供給ナットに潤滑剤を収容して供給する機能と、故障の場合に、詳細には真空ポンプのロータ軸と相互作用するバックアップ軸受を提供する機能である。
【0013】
好ましくは、バックアップ軸受は、ボール軸受などのローラ軸受、又は摩擦軸受などとして構築される。
【0014】
好ましくは、オイルリザーバは、真空ポンプに解放可能に結合可能である。従って、オイルリザーバ内の十分な量の潤滑剤と、真空ポンプの供給チップとオイル供給ナットとの間の十分な接触とを保証するために、オイルリザーバは、真空ポンプのメンテナンス時に交換することができる。
【0015】
好ましくは、オイルリザーバは、欧州公開第3256733号及び欧州公開第3494308号で出願された発明と併せてさらに開発される。
【0016】
本発明の第3の態様では、既存の真空ポンプに後付けするために、上述のオイル供給ナット及び上述のオイルリザーバを備えるキットが提供される。詳細には、オイル供給ナットによって提供される軸受ジャーナル要素は、オイルリザーバのカートリッジ内に配置されたバックアップ軸受と相互作用する。従って、本発明によるキットにより、オイル供給ナット及びオイルリザーバは、真空ポンプへ大規模に侵入することなく、メンテナンス時に既存の真空ポンプに後付けすることができる。既存の真空ポンプに本発明を後付けすることは、
1.既存のオイルリザーバを取り外すステップ、
2.真空ポンプから既存のオイル供給ナットを取り外すステップ、
3.本発明によるオイル供給ナットを組み込むステップ、
4.本発明によるオイルリザーバを組み立てるステップ、
を含む。
【0017】
これにより、バックアップ軸受は、既存の真空ポンプに使用され、真空ポンプの故障時にロータ軸を支持し、さもなければ真空ポンプの著しい損傷さらには破壊につながる真空ポンプ内の回転要素の衝突を防ぐ。
【0018】
本発明の第4の態様では、ハウジングを備える真空ポンプ、詳細にはターボ分子ポンプが提供される。少なくとも1つのポンプ要素を有するロータ軸がハウジング内に配置され、ロータ軸は、1又は2以上の軸受によって回転可能に支持される。この場合、少なくとも1つの軸受は、ボール軸受などのローラ軸受として構築される。さらに、真空ポンプは、好ましくはハウジングに解放可能に結合され、少なくとも1つのローラ軸受に供給される潤滑剤を含む、上述のオイルリザーバを備える。さらに、オイル供給ナットがロータ軸に結合される。その場合、好ましくは、オイル供給ナットは、ロータ軸の一端に結合される。オイル供給ナットは、オイル供給ナットの第1の端部と第2の端部との間で軸線方向に延びるオイル供給要素を備える。その場合、オイル供給要素は、第2の端部に向かって直径が増大する円錐形状を有し、潤滑剤を第2の端部に向かって運ぶために潤滑剤に作用する大きな回転力を作り出すようになっている。好ましくは、第2の端部は、ローラ軸受の位置に配置される、すなわち、ローラ軸受の少なくとも一部は、オイル供給ナットの第2の端部を取り囲む。潤滑剤には、第2の端部から真空ポンプのローラ軸受に向かって遠心力が作用し、ローラ軸受の適切な動作のために潤滑剤が供給される。さらに、本発明によれば、オイル供給ナットに結合される、オイルリザーバのカートリッジ内に配置されたバックアップ軸受に収容されるように構成された円筒面を有する軸受ジャーナル要素が提供される。従って、オイル供給ナットは、バックアップ軸受のための軸受ジャーナル要素を提供する。あるいは、軸受ジャーナル要素は、ロータ軸に直接結合され、同様にオイルリザーバのバックアップ軸受に収容されるように構成された円筒面を有している。好ましくは、軸受ジャーナル要素は、ロータ軸と一体的に形成されている。従って、ロータ軸自体が、オイルリザーバのバックアップ軸受と相互作用する軸受ジャーナルを構成する。
【0019】
好ましくは、オイル供給ナットは、真空ポンプのロータ軸の少なくとも一部を受け入れるように構成された、第1の端部から第2の端部までオイル供給ナットを貫通して延びる貫通孔を有する。従って、ロータ軸は、オイル供給ナットを貫通して延びている。軸受ジャーナル要素は、好ましくは、オイルリザーバのバックアップ軸受と相互作用できるように、オイル供給ナットの第1の端部に配置される。
【0020】
好ましくは、オイル供給ナットは、上述したような特徴に従って構築することができる。
【0021】
好ましくは、ロータ軸は、真空ポンプの出口に向かう第1の端部と、真空ポンプの入口に向かう反対側の第2の端部とを備え、オイル供給ナットはロータ軸の第1の端部に結合されている。その場合、オイル供給ナットは、第1の端部でロータ軸に結合すること又はロータ軸の第1の端部に直接接触してロータ軸の第1の端部に直接結合することができる。
【0022】
好ましくは、オイルリザーバは、ロータ軸の第1の端部を取り囲む。それによって、オイルリザーバは、ロータ軸の第1の端部に結合されたオイル供給ナットと相互作用することができ、一方で、軸受ジャーナル要素は、オイルリザーバのバックアップ軸受と相互作用することができる。
【0023】
好ましくは、軸受ジャーナル要素の円筒面は、バックアップ軸受の内径よりも小さい直径を有し、真空ポンプの正常運転時、軸受ジャーナル要素の円筒面はバックアップ軸受と接触しない。真空ポンプの故障時のみ、軸受ジャーナル要素の円筒面は軸受と接触してロータ軸を支持する。
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による真空ポンプを示す。
図2】本発明によるオイル供給ナットの詳細図を示す。
図3】本発明によるオイル供給ナットの第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
真空ポンプ10は、入口14及び出口16を有するハウジング12を備える。ハウジング12内には、ハウジング12のステータ要素22と相互作用する1又は2以上のポンプ要素20を有するロータ軸18が配置される。図1の例では、真空ポンプ10は、ターボ分子真空ポンプであり、ポンプ要素20は、ステータ要素22のベーンと相互作用するベーンによって構築される。ロータ軸18は、電気モータ24によって回転され、ロータ軸18の回転により、ガス状媒体は入口14から出口16に運ばれる。そこでは、ロータ軸18は、真空ポンプ10の入口14側で、磁気軸受として構築された第1の軸受26によって回転可能に支持されている。ロータ軸18を支持する第2の軸受は、ロータ軸18の第2の端部32とは反対側のロータ軸18の第1の端部30において、ロータ軸の出口側でボール軸受28として構築されている。
【0027】
ロータ軸18の第1の端部30には、第1の端部38と反対側の第2の端部39とを有する図2に詳細に示すオイル供給ナット34が結合されている。その場合、オイル供給ナット34は、オイル供給要素34の第2の端部39に向かって増大する外面を有するオイル供給要素36を備える。したがって、オイル供給要素36は、円錐形の外面を有する。さらに、オイル供給ナット34は、少なくとも部分的に、真空ポンプのハウジング12に解放可能に結合されるオイルリザーバ40によって取り囲まれている。詳細には、オイルリザーバ40は、真空ポンプのメンテナンス時にオイルリザーバ40への簡単なアクセスを可能にするために、ハウジング12の凹部に挿入される。オイルリザーバ40は、ボール軸受28に供給される潤滑剤を収容して貯蔵するカートリッジ42を備える。その場合、カートリッジ42は、潤滑剤を貯蔵するために、繊維状又は多孔質材料で満たすことができる。この材料には、オイル供給ナット34のオイル供給要素36の円錐面に接触する供給チップ44が接続されている。好ましくは、供給チップは、同様に繊維状又は多孔質材料から作られており、毛細管力によってカートリッジ42から潤滑剤を引き込み、オイル供給ナットのオイル供給要素36の表面に潤滑剤を塗布する。オイル供給ナット34は、ロータ軸18と一緒に回転する。真空ポンプの軸18によるオイル供給ナットの回転により、潤滑剤は遠心力によってボール軸受28に向かって運ばれ、オイル供給ナット34の第2の端部は、ボール軸受28の範囲の中に又は範囲内にある。従って、潤滑剤は、供給チップ44からオイル供給要素36を経由してオイル供給要素34の第2の端部まで運ばれ、そこから真空ポンプ10のボール軸受28に滴り落ちる。
【0028】
さらに、図2に示すように、オイル供給ナット34は、円筒形の外周面を有する軸受ジャーナル要素46をさらに備える。軸受ジャーナル要素46は、オイルリザーバ40のカートリッジ42内に配置されたバックアップ軸受48と相互作用する。その場合、バックアップ軸受48は、ボール軸受、摩擦軸受などとして構築することができる。その場合、真空ポンプの正常運転時、オイル供給ナット34の軸受ジャーナル要素46は、軸受ジャーナル46の直径がバックアップ軸受48の内径よりも小さいために、バックアップ軸受48と接触しない。真空ポンプが故障した場合、軸受ジャーナル要素46はバックアップ軸受48と接触し、ロータ軸18の最小限の支持をもたらす。
【0029】
バックアップ軸受48は、交換可能な部品でありメンテナンス時に交換することができるオイルリザーバ40に実装されるので、既存の真空ポンプにバックアップ軸受を後付けすることも可能である。従って、第1のステップでは、古いオイルリザーバが取り外され。第2のステップでは、古いオイル供給ナットも取り外される。第3のステップでは、軸受ジャーナル要素46を有する、例えば図2に示す新しいオイル供給ナットが、ロータ軸18の第1の端部30に組み込まれる。第4のステップでは、オイル供給ナット34の軸受ジャーナル要素46と相互作用するバックアップ軸受48を含む、本発明によるオイルリザーバが組み込まれる。
【0030】
図3は、別の実施形態を示し、ここで、同一又は類似の要素は、同一の参照符号で示されている。この場合、オイル供給ナット34は、オイル供給ナット34を貫通して延びる貫通孔50を備える。貫通孔50は、ロータ軸18の一部を受け入れるように構成されており、ロータ軸18の第1の端部30は、オイル供給ナット34を貫通して延び、軸受ジャーナル要素52を提供するようになっている。従って、バックアップ軸受は、同心性を容易にするためにロータ軸18自体によって提供される軸受ジャーナル要素と相互作用する。
【0031】
従って、本発明により、真空ポンプのボール軸受に潤滑剤を供給し、さらにバックアップ軸受を提供することで、真空ポンプの著しい損傷、さらには破壊を回避する、複合システムが提供される。さらに、本発明によるオイル供給ナット及び本発明によるオイルリザーバを含むキットによって、バックアップ軸受による高い安全性を提供するために、既存の真空ポンプを容易に改造することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 真空ポンプ
12 ハウジング
14 入口
16 出口
18 ロータ軸
20 ロータ要素
22 ステータ要素
24 エレクトロモーター
26 磁気軸受
28 ボール軸受
30 第1の端部
32 第2の端部
34 オイル供給ナット
36 オイル供給要素
38 第1の端部
39 第2の端部
40 オイルリザーバ
42 カートリッジ
44 供給チップ
46 軸受ジャーナル要素
48 バックアップ軸受
50 貫通孔
52 軸受ジャーナル要素
図1
図2
図3