(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】単一作動の高精度投与量中間ポンピングチャンバ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20250210BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
A61M5/142 520
A61M5/145 504
A61M5/142 530
(21)【出願番号】P 2023541309
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2022011356
(87)【国際公開番号】W WO2022150418
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-09-05
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ナザーロ
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-134171(JP,A)
【文献】特表2005-533545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0241076(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブル薬剤吐出装置であって、
液剤を貯蔵するように構成されたタンクと、
前記タンクから前記液剤を受け取るために前記タンクに結合された吐出ポンプ装置
と、を備え、
前記吐出ポンプ装置は、
ポンプチャンバを形成するチャンバ本体と、
前記液剤を前記タンクから前記ポンプチャンバ内に引き込むことができるように構成された入口ポートと、
流通口及び針への流体経路を
含む摺動流体部材と、
前記摺動流体部材と係合するように構成され
、プランジャチャネルを
含むプランジャと、
前記摺動流体部材に結合された形状記憶合金ワイヤと、を
有し、
前記形状記憶合金ワイヤは、前記摺動流体部材及び前記プランジャを第1の方向に引くことによって、前記液剤を前記タンクから前記入口ポートを通って前記ポンプチャンバ内に引き込むように動作可能であり、
前記摺動流体部材は、前記液剤が前記ポンプチャンバ内に引き込まれ、前記ポンプチャンバから出力用の針への流体経路内に供給されることを可能にするように構成される、ウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項2】
前記摺動流体部材は、前記形状記憶合金ワイヤが
前記摺動流体部材を引っ張るときに、前記プランジャの第1のプランジャ表面に対して耐流体シールを維持するように構成された面シール
をさらに
有する、請求項1に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項3】
前記摺動流体部材は、
前記形状記憶合金ワイヤに結合されたアンカー部分であって
、前記形状記憶合金ワイヤによる前記引っ張りに応答して前記プランジャのプランジャチャネル内
を動くことによって前記プランジャと係合するように構成される、アンカー部分と、
前記アンカー部分に接続された針継手と、をさらに
有する、請求項1に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項4】
前記プランジャは、前記チャンバ本体の内面と直接物理的に接触して前記ポンプチャンバを形成するように構成される、請求項1に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項5】
前記摺動流体部材に結合された第1の端部を有する流体部材バネと、
前記プランジャに結合された第1の端部を有するプランジャバネと、をさらに
備え、
前記流体部材バネ及びプランジャバネは、前記形状記憶合金ワイヤによって休止位置から圧縮位置まで引っ張られるように構成される、
請求項1に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項6】
前記入口ポートの反対側にあるハードストップと、
前記摺動流体部材に結合された第1の端部を有する流体部材バネと、
前記プランジャに結合された第1の端部を有するプランジャバネと、をさらに
備え、
前記ハードストップは、前記プランジャバネの前記第1の端部とは反対側の前記プランジャバネの第2の端部に接触する
とともに、前記
摺動流体部材に結合された前記流体部材バネの前記第1の端部とは反対側の前記流体部材バネの第2の端部に接触するよう
に構成される、
請求項1に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項7】
前記ハードストップは
、ハードストップ屈曲スナップをさらに
有し、
前記プランジャは
、プランジャ屈曲スナップをさらに
有し、
前記プランジャ屈曲スナップと前記ハードストップ屈曲スナップとは、前記形状記憶合金ワイヤが前記
摺動流体部材を引っ張るときに互いに係合するように構成される、請求項6に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項8】
前記入口ポートは、受動逆止弁をさらに
有する、請求項1に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項9】
前記形状記憶合金
ワイヤに結合された電源
をさらに備え、
前記電源からの電力
が前記形状記憶合金
ワイヤに印加
されて
該形状記憶合金ワイヤを収縮
することによって、
前記摺動流体部材を引っ張る
、請求項1に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項10】
前記電源に通信可能に結合されたコントローラ
をさらに備え、
前記コントローラは、前記電源を作動させて、自動インスリン吐出アプリケーション設定に応じて前記形状記憶合金
ワイヤに電力を印加するように動作可能であ
る、請求項
9に記載のウェアラブル薬剤吐出装置。
【請求項11】
ウェアラブル薬剤吐出装置の吐出ポンプ装置であって
、
ポンプチャンバを形成するチャンバ本体であって
、ハードストップと、タンクから液剤を受け取るように動作可能な入口弁と
、を
有する、チャンバ本体と、
前記チャンバ本体の前記ポンプチャンバ内で移動可能であり、プランジャチャネルを
形成するプランジャと、
前記ポンプチャンバ内で移動可能であり、針継手、流通口、面シール及びアンカー部分を
有する摺動流体部材であって、前記アンカー部分は、漏れ防止構成で前記プランジャチャネル内に位置決めされ、移動可能である、摺動流体部材と、
前記アンカー部分に結合された形状記憶合金ワイヤであって
、前記アンカー部分及び前記プランジャを前記ハードストップに向かって引っ張るように動作可能である、形状記憶
合金ワイヤと、を
備える、吐出ポンプ装置。
【請求項12】
前記面シールは、前記プランジャの第1の表面に対して漏れ防止シールを維持して前記漏れ防止構成を形成するように構成される、請求項11に記載の吐出ポンプ装置。
【請求項13】
前記プランジャは、
前記チャンバ本体の前記ハードストップと係合するように構成されたプランジャハードストップと、プランジャバネと、をさらに
有し、
前記プランジャバネは、前記プランジャハードストップが前記チャンバ本体の前記ハードストップと係合するときに圧縮位置にある、請求項11に記載の吐出ポンプ装置。
【請求項14】
前記形状記憶合金ワイヤは、
前記形状記憶合金ワイヤへの電流の印加に応
じて、前記摺動流体部材及び前記プランジャを前記チャンバ本体の前部から離れる第1の方向に引っ張
り、前記液剤
を前記タンクから前記入口弁を通って前記ポンプチャンバ内に引き込
み、
前記形状記憶
合金ワイヤに前記電流が印加されなくなったことに応
じて、前記摺動流体部材及び前記プランジャの引っ張りを停止
し、前記ポンプチャンバ
に前記液剤
を充填する、請求項11に記載の吐出ポンプ装置。
【請求項15】
プランジャバネと、
流体部材バネと、をさらに
備え、
前記プランジャバネは、前記チャンバ本体の前記ハードストップに接触するように構成され、
前記流体部材バネは、前記チャンバ本体の前記ハードストップに接触するように構成され、
前記形状記憶合金ワイヤが前記摺動流体部材の引っ張りを停止すると、前記プランジャバネ及び前記流体部材バネは
、圧縮される、
請求項14に記載の吐出ポンプ装置。
【請求項16】
前記形状記憶合金ワイヤが前記摺動流体部材の引っ張りを停止したことに応
じて、前記流体部材バネが減圧を開始し、前記摺動流体部材が前記チャンバ本体の前方に向かって移動する
一方、前記プランジャは、前記ポンプチャンバ内の前記液剤によって液圧的に阻止されることにより静止し
て留まるようにさらに構成される、請求項15に記載の吐出ポンプ装置。
【請求項17】
前記摺動流体部材が初期位置に到達すると、前記流通口が利用可能になり、前記液剤が前記針継手に流入することが可能になり、
前記プランジャバネが減圧を開始し、前記液剤が前記ポンプチャンバから前記針継手内に排出されるようにさらに構成される、請求項16に記載の吐出ポンプ装置。
【請求項18】
前記タンク
を入口ポートと接続する第1の流体経路部品と、
出口ポートをカニューレと接続する第2の流体経路部品
と、をさらに備え、
前記入口弁は
、前記入口ポート内に位置決めされ、出口弁
が前記出口ポート内に位置決めされる
、請求項
11に記載の吐出ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年1月8日に出願された米国仮特許出願第63/135,081号の利益を主張する。この米国特許仮特許出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示した例は、薬剤の吐出に概ね関する。さらに具体的には、開示した例は、1回のポンピングサイクル内で吐出され再充填される一定量の流体を提供するための技術、プロセス、システム及びポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの薬剤吐出装置が、液剤を貯蔵するためのタンクと、貯蔵された液剤をユーザに供給するためにタンクから排出するように動作するポンプ機構とを備える。ポンプ機構は、タンクから弁操作又は往復移動を通じて1回分の薬剤を患者に対して押し出す容積式ポンプである場合がある。他の従来のポンプとしては、隔膜ポンプ、回転ポンプ、羽根ポンプ、ネジ/タービンポンプ又は他のタイプの従来のポンプが挙げられるが、ここに挙げたものに限定されない。従来の駆動機構のなかには、タンクから液剤を排出するためにプランジャを使用するものがあるが、その結果、駆動機構の長さが概ねタンクの長さと同じになる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さまざまなポンプ機構の構成により、ポンプ機構の機械的な「固着」又は「滑り」により、時間の経過とともに液剤の投与量が見かけ上過小又は過大に吐出される場合がある。
【0005】
このため、液剤をタンクから正確に排出するための簡素化されたシステムが必要であり、これによって薬剤吐出装置の全体のサイズも縮小される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明する概念の選択を簡略化した形式で紹介するために提供される。この概要は、請求された主題の主要な特徴又は必須の特徴を特定することを意図したものではなく、請求された主題の範囲を判定するのを助けることを意図したものでもない。
【0007】
いくつかの提案では、タンク及び吐出ポンプ装置を備えるウェアラブル薬剤吐出装置を開示する。タンクは、液剤を貯蔵するように構成されてもよい。吐出ポンプ装置は、タンクから液剤を受け取るためにタンクに結合されてもよい。吐出ポンプ装置は、ポンプチャンバを形成するチャンバ本体と、タンクからの液剤をポンプチャンバ内に引き込むことができるように構成された入口ポートと、流通口及び針への流体経路を備える摺動流体部材と、摺動流体部材と係合するように構成されたプランジャチャネルを含むプランジャと、摺動流体部材に結合された形状記憶合金ワイヤと、を備えてもよい。形状記憶合金ワイヤは、摺動流体部材及びプランジャを第1の方向に引くことによって、液剤をタンクから入口ポートを通ってポンプチャンバ内に引き込むように動作可能である。摺動流体部材は、液剤がポンプチャンバ内に引き込まれ、ポンプチャンバから出力用の針への流体経路内に排出されることを可能にするように構成される。
【0008】
別の態様では、ウェアラブル薬剤吐出装置の吐出ポンプ装置を提供する。吐出ポンプ装置は、チャンバ本体、プランジャ、摺動流体部材及び形状記憶合金を備える。チャンバ本体は、ポンプチャンバを形成し、ハードストップ及び入口弁を備え、タンクから液剤を受け取るように動作可能である。プランジャは、チャンバ本体のポンプチャンバ内で移動可能であり、プランジャチャネルを備える構成としてもよい。摺動流体部材は、ポンプチャンバ内で移動可能であり、針継手、流通口、面シール及びアンカー部分を備えてもよい。アンカー部分は、漏れのない構成でプランジャチャネル内で位置決めされ、移動可能である。形状記憶合金ワイヤはアンカー部分に結合されてもよい。形状記憶合金ワイヤは、アンカー部分及びプランジャをハードストップに向かって引っ張るように動作可能である。
【0009】
追加の態様では、液剤を出力するように吐出ポンプ装置を制御する方法を開示する。この方法は、吐出ポンプ装置から液剤を出力する時間を判定することを含む。吐出ポンプ装置を作動させるための制御信号を生成してもよい。吐出ポンプ装置のポンプ機構に制御信号を印加してもよい。ポンプ機構は、印加された制御信号に応答するように構成された形状記憶合金ワイヤを備える。吐出ポンプ装置のポンプチャンバが液剤で満たされると、印加された制御信号が吐出ポンプ装置のポンプ機構から除去されるべきであると判定される。印加された制御信号は、ポンプ機構から除去されて、液剤がポンプチャンバから吐出されることを可能にしてもよい。液剤の吐出を確認してもよい。
【0010】
図面では、類似する参照符号が異なる図を通して同じ部品を概ね指す。以下の説明では、本開示のさまざまな例を以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の例による薬剤吐出システムの概略図を示す。
【0012】
【
図2】
図2は、ポンピングサイクルの初期状態での吐出ポンプ装置の中間ポンピングチャンバの側断面図を示す。
【0013】
【
図3A】
図3Aは、
図2の例に示す中間ポンピングチャンバのポンピングサイクルの初期状態から移行中の吐出ポンプ装置の中間ポンピングチャンバの側断面図を示す。
【0014】
【
図3B】
図3Bは、中間ポンピングチャンバの例示的なポンプチャンバの例示的な充填エリアを示す。
【0015】
【
図4】
図4は、ポンプチャンバから液剤を吐出する前に充填状態にある例示的な中間ポンピングチャンバの断面図を示す。
【0016】
【
図5】
図5は、
図4の例の充填状態から吐出準備状態へ移行する例示的な中間ポンピングチャンバの断面図を示す。
【0017】
【
図6】
図6は、ポンプチャンバから液剤の吐出を開始する例示的な中間ポンピングチャンバの断面図を示す。
【0018】
【
図7】
図7は、プランジャの移動によりポンプチャンバから液剤が吐出される状態の例示的な中間ポンピングチャンバの断面図を示す。
【0019】
【
図8】
図8は、中間ポンピングチャンバの別の例示的な構造の断面図を示す。
【0020】
【
図9】
図9は、
図8の例に示す中間ポンピングチャンバのポンピングサイクルの初期状態から移行中の吐出ポンプ装置の中間ポンピングチャンバの側断面図を示す。
【0021】
【
図10】
図10は、ポンプチャンバから液剤を吐出する前の充填状態の
図9の例での中間ポンピングチャンバの側断面図を示す。
【0022】
【
図11】
図11は、ポンプチャンバから液剤を吐出するプランジャの移動により、
図4の例の充填状態から吐出状態に移行する例示的な中間ポンピングチャンバの断面図を示す。
【0023】
【
図12】
図12は、吐出ポンプ装置の一例のさまざまな制御態様のための電気接点の構成例を示す。
【0024】
【
図13】
図13は、吐出ポンプ装置から薬剤を排出するための
図1~
図12の例を利用し得るプロセスのフローチャートである。
【0025】
図面は必ずしも一定の縮尺ではない。図面は単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを描写することを意図したものではない。図面は本開示の例を示すことを意図しているため、範囲を限定するものとは考えられない。さらに、図のいくつかでの特定の要素を、説明を明確にするために、省略する場合も、一定の縮尺で示さない場合もある。さらに、明確にするために、特定の図面ではいくつかの参照番号を省略する場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、本開示によるシステム、装置及び方法を、1つ又は複数の例を示している添付の図面を参照して、以下でさらに全体的に説明する。システム、装置及び方法は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の例に限定されるものとして解釈されるべきではない。その代わりに、このような例は、本開示が全体的かつ完全なものであり、当業者に方法及び装置の範囲を充分に伝えることになるように提供されるものである。本明細書に開示するシステム、装置及び方法のそれぞれは、従来のシステム、構成要素及び方法を超える1つ又は複数の利点を提供する。
【0027】
本明細書で説明するポンプ機構は、上記の有利な特性を有することを意図するものである。さらに、ポンプ機構は、ポンプの各「パルス」中に設定量の液剤を出力するように構成される。これは、ポンプ機構の移動部材がそれぞれの「開始」端からそれぞれの「停止」端まで移動することを想定している。ポンプ機構の移動距離は、「ポンプストローク」と呼ばれてもよく、移動距離は可変であってもよい。いくつかの例では、ポンプストロークは調整可能であっても、事前設定された距離であってもよい。「パルス」を、制御信号に応答したポンプの作動と考えてもよい。その作動の間に、ウェアラブル薬剤吐出装置のタンクからある用量の液剤を出力する。
【0028】
図1は、例示的なシステム100の簡略化されたブロック図を示す。システム100は、患者103の皮膚に取り付けられるように構成されたウェアラブル、即ち、身体装着型の薬剤吐出装置であってもよい。システム100は、コントローラ102、ポンプ機構104(「ポンプ104」とも呼ばれる)及びセンサ108を備えてもよい。
【0029】
センサ108は、ケトン、乳酸塩、尿酸、アルコール、グルコースなどを検出するように動作可能な検体センサであってもよい。例えば、センサ108は、例えば、連続グルコースモニタなどのグルコースモニタであってもよい。センサ108は、例えば、ユーザの血糖(BG)値を測定して、測定されたBGレベル信号112を生成するように動作可能であってもよい。コントローラ102、ポンプ104及びセンサ108は、有線又は無線の通信経路を介して互いに通信可能に接続されてもよい。例えば、コントローラ102、ポンプ104及びセンサ108のそれぞれは、Bluetooth(登録商標)などの1つ又は複数の通信プロトコルを介して通信するように動作可能な無線高周波トランシーバを装備していてもよい。本明細書でさらに詳細に説明するように、システム100はこのほか、中間ポンピングチャンバ115を形成するハウジング114、入口ポート116及び出口ポート117を備える吐出ポンプ装置(「装置」とも呼ばれる)105を備えてもよい。システム100は、簡潔にするために図示も説明もしていない追加の構成要素を備えてもよい。
【0030】
一例では、コントローラ102は、患者103に対する所望のBGレベル又はBG範囲を示す所望のBGレベル信号を受信してもよい。所望のBGレベル信号は、例えば、コントローラ102又は別の装置への(図示しない)ユーザインターフェースから受信されても、患者103にとって理想的なBGレベルを自動的に判定するアルゴリズムによって受信されてもよい。センサ108は患者103に結合され、ユーザのBGレベルの近似値を測定するように動作可能であってもよい。測定されたBGレベル又はBG値に応答して、センサ108は、測定されたBG値を示す信号を生成してもよい。この例に示すように、コントローラ102はこのほか、通信経路を介してセンサ108から、測定されたBGレベル信号112を受信してもよい。
【0031】
所望のBGレベル信号及び測定されたBGレベル信号112に基づいて、コントローラ102は、ポンプ104の動作を指示するための1つ又は複数の制御信号を生成してもよい。例えば、コントローラ102からの1つの制御信号119が、装置105に動作可能に接続された1つ又は複数の電力素子123を起動又は作動させてもよい。
図2~
図13の例を参照して説明するように、電力素子123は、中間ポンピングチャンバ115内の(この例では図示しない)SMAワイヤを作動させてもよい。それに応答して、SMAワイヤは、形状及び/又は長さを変化させてもよく、これにより、中間ポンピングチャンバ115の構成を変化させてもよい。
【0032】
中間ポンピングチャンバ115の構成の変化による圧力の変化に応答して、ある量の液剤125(例えば、インスリン)が入口ポート116を通って中間ポンピングチャンバ115内に引き込まれてもよい。例えば、液剤125の量は、所望のBGレベル信号と実際のBG信号レベル112との間の差に基づいて判定されてもよい。液剤125の量は、ユーザの測定されたBGレベルを所望のBGレベルに導くためのインスリンの適切な量として判定されてもよい。制御信号119によって判定されるポンプ104の動作に基づいて、患者103は、一連のパルスを通じてタンク126から液剤を受け取ってもよい。システム100は、閉ループシステム、開ループシステム又はハイブリッドシステムとして動作してもよい。
【0033】
さらに示すように、システム100は、コントローラ102と通信する針配置部品128を備えてもよい。針配置部品128は、患者103内に配置可能な針/カニューレ129を備えてもよい。カニューレ129は、患者103をタンク126に結合する流体経路の一部を形成してもよい。
【0034】
さらに示すように、出口ポート117はカニューレ129に結合されてもよい。中間ポンピングチャンバ115は、出口ポート117を介して、タンク126からの流体がカニューレ129に移送されることを可能にする(別の図に示す)針/カニューレ継手に結合される。カニューレ129は、装置105から排出される流体が患者103に提供されることを可能にするように構成されてもよい。
【0035】
コントローラ102は、ハードウェア、ソフトウェア又はその任意の組み合わせで実装されてもよい。コントローラ102は、例えば、メモリ106に結合されたプロセッサ、論理回路又はマイクロコントローラであってもよい。メモリ106は、論理回路106-1及び調整装置106-2を含んでもよい。コントローラ102は、日付と時刻を維持し、システムのさまざまな構成要素の状況又は状態を判定するために使用可能なさまざまな機能(例えば、計算など)を実施してもよい。コントローラ102は、コントローラ102がポンプ104の動作を指示することができるように動作可能であり得る論理回路106-1としてメモリ106に保存された人工膵臓(AP)アルゴリズムなどのアルゴリズムを実行するように動作可能であってもよい。論理回路106-1は、吐出装置105の動作を可能にしてもよい。例えば、コントローラ102は、センサ108から入力を受信するように動作可能であってもよく、この入力は、自動インスリン吐出(AID)などの自動薬剤吐出、コントローラ102が中間ポンピングチャンバ115の制御に利用し得るアプリケーション設定に対応する。コントローラ102は、ポンプ104の挙動と、その結果として装置105を介して患者103に吐出される液剤125の量とを、AIDアプリケーション設定に基づいて改変してもよい。
【0036】
いくつかの例では、センサ108は、例えば、持続的グルコースモニタ(CGM)であってもよい。センサ108は、ポンプ104から物理的に分離していても、ポンプ104と同じか、その隣接するハウジング内に一体化された構成要素であってもよい。センサ108は、ユーザの測定された血糖値又は検出された血糖値を示すデータをコントローラ102に提供してもよい。
【0037】
電力素子123は、装置105に電力を供給するためのバッテリ、圧電装置などであってもよい。他の例では、電力素子123又は(図示しない)追加の電源はこのほか、コントローラ102、メモリ106、センサ108及び/又は針配置部品128などのポンプ104の他の構成要素に電力を供給してもよい。
【0038】
一例では、センサ108は、コントローラ102に通信可能に結合された装置であってもよく、約5分ごと、10分ごとなどの所定の時間間隔で血糖値を測定するように動作可能であってもよい。センサ108は、コントローラ102又は外部制御装置によって実行されるAPアプリケーションに多数の血糖測定値を提供してもよい。
【0039】
いくつかの例では、ポンプ104は、通常動作モードで動作するとき、タンク126に貯蔵されているインスリンを、センサ108又はポンプ104の他の機能素子によって提供される情報(例えば、血糖測定値、目標血糖値、搭載インスリン、以前のインスリン投与、時刻、曜日、慣性測定ユニットからの入力、全地球測位システム対応装置、Wi-Fi対応装置など)に基づいて患者103に提供する。例えば、ポンプ104は、薬剤又は治療薬の吐出を制御するためのコントローラ102として実装され得るアナログ回路及び/又はデジタル回路を含んでもよい。コントローラ102を実装するために使用される回路は、個別の特殊な論理回路及び/又はコンポーネントか、特定用途向け集積回路か、ソフトウェア命令、ファームウェア、例えば、メモリ106に保存されたAPアプリケーションを可能にするプログラミング命令又はプログラミングコードを実行するマイクロコントローラ又はプロセッサか、その任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、コントローラ102は、APアプリケーションなどの制御アルゴリズムをはじめとするプログラミングコードを実行し、所定の間隔で、あるいは必要に応じて、ポンプ104に薬剤又は治療薬の用量をユーザに対して供給し、血糖測定値を目標血糖値又は目標血糖範囲にするようにコントローラ102を操作可能にしてもよい。用量の大きさ及び/又はタイミングは、有線又は無線のリンクを使用して、患者103又は第三者(医療提供者、親又は保護者、ウェアラブル薬剤吐出装置の製造業者など)によって、例えば、APアプリケーションに事前にプログラムされてもよい。APアプリケーションはこのほか、中間ポンピングチャンバ115内のセンサ108又は(別の図に示す)検出器から受信したデータに基づいて、事前にプログラムされ得る任意の設定(インスリンの用量制限、吐出するストローク又はパルスの数など)を自動的に調整するように実行可能であってもよい。コントローラ102は、通信経路188を介して中間ポンピングチャンバ115に結合されてもよい。コントローラ102は、中間ポンピングチャンバ115の(他の例で示す)構成要素に制御信号を送信してもよい。
【0040】
図示していないが、いくつかの例では、センサ108は、プロセッサと、メモリと、感知装置又は測定装置と、(この例では図示しない)通信装置と、を備えてもよい。メモリは、APアプリケーションのインスタンスのほか、他のプログラミングコードを保存してもよく、APアプリケーションに関連するデータを保存するように動作可能であってもよい。
【0041】
さまざまな例では、センサ108の感知/測定装置は、血糖測定素子、心拍数モニタ、血中酸素センサ素子などの1つ又は複数の感知素子を含んでもよい。一例では、センサプロセッサは、個別の特殊な論理回路及び/又はコンポーネントか、特定用途向け集積回路か、ソフトウェア命令、ファームウェア、メモリに保存されたプログラミング命令を実行するマイクロコントローラ又はプロセッサか、あるいはその任意の組み合わせを含んでもよい。
【0042】
図2は、初期位置にある
図1のウェアラブル薬剤吐出システムの例の中間ポンピングチャンバの側断面図を示す。中間ポンピングチャンバ200は、前部200a及び後部200bを有し、タンク継手201を介して液剤を収容するタンクに結合されてもよい。中間ポンピングチャンバ200は、動作中に構成を変更するように動作可能であってもよい。例えば、
図2の初期位置は、液剤がタンクからポンプチャンバ内に引き込まれていない(別の図でさらに詳細に示す)位置であってもよい。例示的な中間ポンピングチャンバ200の構成要素には、摺動流体部材1、チャンバ本体10及びプランジャ3が含まれてもよい。追加の構成要素には、受動逆止弁などの弁2、プランジャバネ4、流体部材(FM)バネ5、形状記憶合金(SMA)ワイヤ6、ハードストップ7及び面シール11が含まれてもよい。
図1の入口ポート116は、受動逆止弁2によって形成され、液剤をタンクからポンプチャンバ内に引き込むことができるように構成されてもよい(別の図でさらに詳細に示す)。プランジャバネ4及びFMバネ5は圧縮バネであってもよい。FMバネ5及びプランジャバネ4は、中間ポンプチャンバ200がこの初期位置にあるときのそれぞれの休止位置にあるように示している(
図2)。もちろん、例示的な中間ポンピングチャンバ200内のバネの代わりに、他の種類のバネ又は他の種類の装置を使用してもよい。
【0043】
この例では、
図2に示すような摺動流体部材1の位置は、休止位置又は初期位置と考えられてもよい。摺動流体部材1は、アンカー部分1a、針/カニューレ継手1b及び流通口12を備えて構成されてもよい。針/カニューレ継手1bは、(この例では図示しない)針/カニューレへの流体経路16を提供するために、例えば、中空部材として構成されてもよい。摺動流体部材1は、アンカー部分1aと針/カニューレ継手1bとの間の摺動流体部材1に組み込まれた流通口12を備えてもよい。例えば、摺動流体部材1は、流通口12と、針への流体経路16と、を備えてもよい。摺動流体部材1は、
図1の129などの針又はカニューレに結合されてもよい。アンカー部分1aは、アンカー部分1aを針/カニューレ継手1bに接続する(この例では図示を容易にするために図示しない)構造を備えてもよい。針/カニューレ継手1bは、(この例では図示しない)針/カニューレに結合された状態を維持し、チャンバ本体10内に延びるように構成されてもよい。例えば、針/カニューレ継手1bは、弾性部材、多数の部分から構成される漏れ防止の伸縮可能なチューブ、あるいはその組み合わせなどであってもよい。流通口12は、針/カニューレ継手1bをアンカー部分1aに結合するが、液剤がポンプチャンバ内にあるときに液剤が流通口12に入り、流体経路16内を(
図1に示す)針/カニューレに流れることを可能にする構造によって囲まれてもよい。
【0044】
例示的な中間ポンピングチャンバ200では、受動逆止弁2は、ポンプチャンバが(
図1に示す)タンクからの(後述の例/図に示す)液剤で満たされるときに、液剤の逆流を防止するように構成されてもよい。
【0045】
プランジャ3は、チャンバ本体10の側面に対して漏れ防止シールを形成するように構成されてもよい。後述の例に示すプランジャ3は、液剤をタンクから引き出し、液剤を流体経路16を通って(この例では図示しない)針又はカニューレに吐出するように動作可能である。中間ポンプチャンバ200の後部200bに面するプランジャ3の表面を、プランジャバネ4に結合しても、当接してもよい。プランジャバネ4は、例えば、
図2に静止状態で示す圧縮バネであってもよい。プランジャバネ4のプランジャ3とは反対側の端は、ハードストップ7に結合されても、寄りかかってもよい。
【0046】
この例では、プランジャ3は、プランジャチャネル3a及びプランジャ屈曲スナップ9を備えて構成される。プランジャチャネル3aは、摺動流体部材1のアンカー部分1aが嵌合する中空の中央部であってもよい。プランジャチャネル3aは、摺動流体部材1のアンカー部分1aを取り囲むように構成されてもよい。プランジャチャネル3aとアンカー部分1aとの間の界面は漏れ防止であるが、アンカー部分1aは、プランジャチャネル3aを通って前後に摺動するように構成される。プランジャ屈曲スナップ9は、可撓性であり、摺動流体部材1のアンカー部分1aの表面に沿って延在し、球根状部分(又は、別の実施形態では、凹面、あるいはハードストップ屈曲スナップ8と相補的な部分)で終端してもよい。
【0047】
面シール11を、摺動流体部材1のアンカー部分1aと針/カニューレ継手1bとの間かつ流通口12の周囲に配置してもよい。面シール11は、流通口12を通過するか、その周囲を通って、針又はカニューレへの流体経路16への液剤の漏洩を制限する流通口12の漏れ防止シールを提供するように使用可能であってもよい。面シール11は、中間ポンピングチャンバが初期位置にある間、患者への液剤の流れを防止するように構成されてもよい。動作のいくつかの段階では、面シール11は、例えば、液剤が流体経路16に入るのを防ぐ中間ポンピングチャンバ200のプランジャバネ4からの圧力下にあってもよい。
【0048】
SMAワイヤ6は、電流の印加に応答して、長さ又は形状を変化させるように動作可能なニチノール又は他の既知の形状記憶合金ワイヤであってもよい。例えば、SMAワイヤ6は、(
図1に示すような)コントローラからの制御信号に応答して作動されると、電流又は電圧を印加してSMAワイヤ6を作動させるように構成された回路を介して電源に結合されてもよい。
【0049】
ハードストップ7は、プランジャ3の動きを制限するように構成されてもよい。ハードストップ7は、ハードストップ7から中間ポンプチャンバ200の前部200aに向かって延在するように構成された2つのハードストップ屈曲部8aを備えるように構成されてもよい。例示的な中間ポンピングチャンバ200では、2つのハードストップ屈曲部8aのそれぞれは、プランジャ3に最も近いハードストップ屈曲部8aの端部にハードストップ屈曲スナップ8を備えてもよい。ハードストップ屈曲スナップ8は、この例では、可撓性アーム状構造のそれぞれの端部に内向きの凹部(又は、別の実施形態では、突出部、あるいはプランジャ屈曲スナップ9と相補的な部分)を有する2つの可撓性アーム状構造である。2つのハードストップ屈曲スナップ8を示しているが、ハードストップ屈曲スナップ8の数は、おおよそ1、3又は4などであってもよく、他の例では、プランジャ3の多少のプランジャ屈曲スナップ9と係合するために利用されてもよい。ハードストップ屈曲スナップ8とプランジャ屈曲スナップ9の相互作用については、後述の例でさらに詳細に説明する。
【0050】
図3Aは、初期位置から充填段階へ移行中の中間ポンピングチャンバの側断面図を示す。
【0051】
図3Aでは、タンク継手201を介したタンクからの液剤20の充填に応答した中間ポンピングチャンバ200の動作を示す。SMAワイヤ6は、アンカー部分1aと、(前の例で示した)コントローラからの信号に応答する(この例では示していない)回路と、に結合される。
【0052】
作動に応答して、SMAワイヤ6は、矢印Aで示す方向にプランジャ3を引っ張る摺動流体部材1のアンカー部分1aを引っ張ってもよい。SMAワイヤ6を矢印Aの方向に引っ張ることにより、摺動流体部材1及びプランジャ3が中間ポンピングチャンバ200の前面205から引き離され、受動逆止弁2から引き離される。アンカー部分1a上のSMAワイヤ6の引っ張り動作により、ポンプチャンバ22内に真空が生成される。真空により、受動逆止弁2は、(受動逆止弁2の符号のない矢印で示すように)摺動流体部材1及びプランジャ3が移動しているのと同じ方向に開き、ポンプチャンバ22が、タンク継手201を介してタンクからの液剤20での充填を開始することができる。
【0053】
この充填段階中、流体部材バネ5の圧縮により、面シール11を流通口12に押し付ける(プランジャ3の第1のプランジャ表面3cに対する)力が増大する(例えば、F=-kx、ここで、Fは力、kはバネ定数、xはバネがその休止位置から圧縮される距離である)。中間ポンピングチャンバ200の前面205とは反対側のハードストップ7の位置は、ポンプストロークの調整を可能にする厳密に制御された条件下で変更されてもよく、あるいは、これとは別に、ハードストップ7の位置は、予め設定されたポンプストロークに合わせて工場で構成されてもよい。SMAワイヤ6の長さは、適正な量のポンプストロークを達成するために、プランジャのポンプストローク及びハードストップ7の位置の調整又は設定に基づいて構成されてもよい。
【0054】
図3Aの例では、プランジャ3及び摺動流体部材1は、中間ポンプチャンバ200の後部200bに向かって後方に並進している。プランジャ3及び摺動流体部材1が後方に並進しているとき、ハードストップ屈曲部8aが相互作用することになる。プランジャ屈曲スナップ9は、ハードストップ屈曲部8aと接触すると、ハードストップ7の両側のハードストップ屈曲部8aをチャンバ本体10のそれぞれの側に向かって開かせる半円形突起を備えて構成される。ハードストップ屈曲部8aが分離すると、プランジャ屈曲スナップ9上の半円形突起が、ハードストップ7のハードストップ屈曲部8aの凹みであるハードストップ屈曲スナップ8を埋める。これにより、摺動流体部材1及びプランジャ3が中間ポンピングチャンバ200の後部200bに向かってさらに後方に並進するのを防止する双方向のラッチ/スナップが生じる。
【0055】
図3Bは、
図3Aの例でのポンプチャンバの有効流路エリアの一例を示す。
図3Bの例に示すように、有効流路エリア33は環状であってもよい。環状の有効流路面積33により、プランジャ3、摺動可能流体部材1、中間ポンピングチャンバ10などの大きめの部品を使用することができるようになり、構成要素の製造及び組立てに有利となる。例えば、環状有効流路33は、製造及び組み立てがさらに容易な円筒構造((前述の例に示す)円筒プランジャ及び円筒チャンバ本体10など)を使用した結果であってもよい。もちろん、楕円形、長方形、正方形などの他の形状を使用してもよい。例えば、有効流路エリア33区画の寸法制御を行うことができるように、d1とd2との間の比率を設定することができる。この寸法制御により、製造公差が装置105の実際のサイズの小さい割合かさらに小さい割合になり得るように、ポンプチャンバのサイズ及びプランジャサイズの尺度を拡大することが容易になる。そのような寸法d1及びd2を制御することによって、所望のポンプチャンバ容積を達成してもよい。ポンプ容積が小さい場合、チャンバとプランジャが大きくなるほど、チャンバとプランジャは呼び寸法に近づくことになる。有効流路エリア33のおおよその面積は、以下の式:[(d2/2)2×π]-[(d1/2)2×π]-(d1を超えて延びる流通口12の面積)を使用して判定されてもよい。ここで、d2はプランジャ3の直径であり、d1は摺動流体部材1の直径である。
【0056】
図4では、中間ポンピングチャンバ200はフルストロークに達し、ポンプチャンバ22は液剤20で満たされ、圧力が本質的に約0ポンド/平方インチゲージ(psig)に戻るため、受動逆止弁22は閉じている。プランジャバネ4とFMバネ5は両方とも圧縮され、エネルギーを蓄積する。この例では、プランジャ屈曲スナップ9は、液剤20をタンク(即ち、
図1の126)からポンプチャンバ22内に引き込む際に、中間ポンピングチャンバ200内のプランジャ3の移動を制限し、SMAワイヤ6がプランジャバネ4及びFMバネ5の蓄積エネルギーを維持するのを助け、摺動流体部材1がそのストロークの特定点に達するまでプランジャ3が前面205に向かって戻るのを防ぐなど、いくつかの動きを達成するように動作可能である。別の図を参照してさらに説明するように、プランジャ屈曲スナップ9及びハードストップ屈曲スナップ8は、制御回路に結合されると、ポンプチャンバ22が満杯であること又は液剤の吐出が開始されたことを確認するように動作可能な電気インターフェース(例えば、その各表面上の電気接点など)を提供してもよい。
図4に示す位置は、満杯位置又は充填位置と呼ばれる場合がある。
【0057】
図5では、SMAワイヤ6から放出される電流に応答して、SMAワイヤ6は通電されず、作動前の状態に戻り始める。さらに、FMバネ5は、
図2に示す初期位置に向かって(矢印Bで示すように)摺動流体部材1を押し戻す。SMAワイヤ6及びFMバネ5の構成に応じて、SMAワイヤ6は、FMバネ5に対する制動として機能し(さらに、FMバネ5が付加した力を制限し)、矢印Bの方向での摺動流体部材1の動きを遅くしてもよい。これとは別に、SMAワイヤ6は、FMバネ5がその全力を摺動流体部材1に作用させることができるように構成されてもよい。
【0058】
摺動流体部材1が前面205に向かって移動すると、面シール11がプランジャ3の前面によって損なわれていない状態ではなくなるため、流通口12が露出するようになる。この例では、摺動流体部材1は、液剤を流体経路16内に移動させるとしても、あまり移動させることなく、ポンプチャンバ22の空間内を移動することができる。
【0059】
さらに、摺動流体部材1が前面205に向かって移動するとき、プランジャ屈曲スナップ9とハードストップ屈曲スナップ8とが摺動流体部材1によって提供される支持により結合されたままであるため、プランジャ3は静止したままである。
【0060】
例では、摺動流体部材1のアンカー部分1aは、(
図3Aに示すように)プランジャ3内に完全に後退したとき、プランジャ屈曲スナップ9を支持する。摺動流体部材1によってプランジャ屈曲スナップ9に提供される支持は、プランジャ屈曲スナップ9をハードストップ屈曲スナップ8に結合した状態に保つように機能する。
【0061】
しかし、摺動流体部材1が
図5の矢印B方向に移動すると、プランジャ屈曲スナップ9とハードストップ屈曲スナップ8との間の結合が不安定になる。
【0062】
図6には、SMAワイヤ6の弛緩を示しており、摺動流体部材1は、アンカー部分1aに対するFMバネ5の力に応答して中間ポンピングチャンバ200の前部の内側に衝突することにより、その移動の前方限界に達したことが示されている。
【0063】
アンカー部分1aによるプランジャ屈曲部9aへの支持が不足しているため、プランジャ屈曲部9aは、さらに曲がりやすくなる可能性がある。支持が不足しているため、ハードストップ屈曲部8aは、それぞれのプランジャ屈曲スナップ9とハードストップ屈曲スナップ8の結合を解除するためにそれほど大きく曲がる必要がない。それぞれのハードストップ屈曲スナップ8及びプランジャ屈曲スナップ9の移動を、矢印E及び矢印Fによって示す。
図6に示すように、プランジャバネ4によってプランジャ3に加えられる力により、プランジャ3が矢印Cで示す方向に移動し、それぞれのプランジャ屈曲スナップ9とハードストップ屈曲スナップ8の結合に不安定性が生じる。この不安定性により、プランジャバネ4の力が、プランジャ屈曲スナップ9とハードストップ屈曲スナップ8との結合を維持する摩擦力に打ち勝つことができ、それぞれのプランジャ屈曲部9aとハードストップ屈曲部8aが曲がり、それによってプランジャ3が解放され、中間ポンピングチャンバ200の前部に向かって継続的に移動する。
【0064】
追加の例では、プランジャ屈曲スナップ9とハードストップ屈曲スナップ8の結合解除はこのほか、結合されたプランジャ屈曲スナップ9とハードストップ屈曲スナップ8によって形成された電気接続を切断する。コントローラは、これを流体経路16及びユーザへの液剤の吐出として判断してもよい。
【0065】
図7は、ポンプチャンバ22から液剤を吐出するプランジャの動きを示す。
図7の例では、プランジャ3が、プランジャバネ4の力を受けてポンプチャンバ22を潰し、ポンプチャンバ22の液剤20を出口オリフィス12から排出する様子を示している。受動逆止弁2は、液剤20の圧力下で閉じられ、少しの液剤20もタンクに戻らないようにする。ポンプ流量Qは、バネ定数、流通口の直径/長さ及び患者へのパイプ寸法の係数であり、以下のように、ポアズイユの法則で最もよく説明される。
【0066】
【0067】
ポンプチャンバ22がプランジャバネ4の力で完全に潰されると、中間ポンプチャンバ200は
図2に示すように初期位置に戻る。この状態では、中間ポンピングチャンバ200は静止しており、液剤をユーザに吐出するために別のパルスに再通電する準備ができている。
【0068】
図2~
図7に示す実施形態とは対照的に、プランジャ3の移動を制限する他の手段が利用可能である場合、プランジャ屈曲スナップ9及びハードストップ屈曲部8a及びハードストップ屈曲スナップ8は任意選択であってもよい。例えば、
図8では、中間ポンピングチャンバはそれ自体を油圧的に制限してもよい。さらに、いくつかの構成又は用途(例えば、インスリン用の薬剤吐出装置の使用サイクルよりも長く持続するポンピング用途)では、屈曲スナップの使用により、摩擦損失の増大を誘発する可能性がある。これは長期間(例えば、1週間を超える期間)の使用には耐えられない可能性がある。
【0069】
図8は、ウェアラブル薬剤吐出システムの中間ポンピングチャンバの別の例の側断面図を示す。中間ポンピングチャンバ800は、前部800a及び後部800bを有し、タンク継手801を介して液剤を収容するタンクに結合されてもよい。中間ポンピングチャンバ800は、動作中の構成を変更するように操作可能であってもよい。例えば、
図8の初期位置は、(後述の図でさらに詳細に示す)液剤がタンクからポンプチャンバに引き込まれていない位置であってもよい。例示的な中間ポンピングチャンバ200の主な構成要素は、摺動流体部材815、チャンバ本体880及びプランジャ820を含んでもよい。追加の構成要素には、受動逆止弁810、プランジャバネ830、流体部材(FM)バネ840、形状記憶合金(SMA)ワイヤ850、ハードストップ870及び面シール811が含まれてもよい。プランジャバネ830及びFMバネ840は、例えば、圧縮バネであってもよく、中間ポンピングチャンバ800がこの初期位置にあるとき、それぞれの休止位置にあるように示されている。
図8の例に示すプランジャ820及び摺動流体部材815の初期位置は、中間ポンピングチャンバ800の前部800aの停止位置とも呼ばれる。もちろん、例示的な中間ポンピングチャンバ800内のバネの代わりに、他の種類のバネ又は他の種類の装置を使用してもよい。
【0070】
摺動流体部材815は、アンカー部分815a、針/カニューレ継手815b及び流通口812を備えて構成されてもよい。摺動流体部材815は、摺動流体部材815に組み込まれた流通口812を備えてもよい。摺動流体部材1は、
図1の129などの針又はカニューレに結合されてもよい。アンカー部分815aは、針/カニューレ継手815bに接続する(この例では説明を容易にするために図示しない)構造を備えてもよい。このような構造は、液剤が流通口に入り、流体経路816を通って針/カニューレに流れることを可能にする流体通路を流通口812内に提供するように構成される。
【0071】
例示的な中間ポンピングチャンバ800では、受動逆止弁810は、ポンプチャンバが(
図1に示す)タンクからの(後述の例に示す)液剤で満たされるときに、液剤の逆流を防止するように構成されてもよい。
【0072】
プランジャ820は、チャンバ本体880の側面に対して漏れ防止シールを形成するように構成されてもよい。後述の例に示すプランジャ820は、液剤をタンクから引き出し、流体経路816を通じて(この例では図示しない)針又はカニューレに吐出するように動作可能である。中間ポンピングチャンバ800の後部800bに面するプランジャ820の表面を、プランジャバネ830に結合するか、当接してもよい。プランジャ820の反対側のプランジャバネ830の端部は、ハードストップ870に結合されるか、寄りかかってもよい。
【0073】
この例では、プランジャ820は、プランジャチャネル820a及びプランジャハードストップ860を備えて構成される。プランジャチャネル820aは、摺動流体部材815のアンカー部分815aに嵌合する中空の中央部分であってもよい。プランジャチャネル820aは、摺動流体部材815のアンカー部分815aを取り囲むように構成されてもよい。プランジャチャネル3aとアンカー部分1aとの間の界面は漏れ止めされているが、アンカー部分1aは、プランジャチャネル820aを通って前後に摺動するように構成される。
【0074】
面シール811を、プランジャ820と摺動流体部材815の針/カニューレ継手815bとの間に配置して、漏れ防止シールを提供してもよい。面シール811は、摺動流体部材815とプランジャ820の表面との間の圧縮シールとして形成されてもよい。これとは別に、あるいはこれに加えて、面シール811は、摺動流体部材815(又はプランジャ820)に結合されたエラストマーシールであってもよい。面シール811は、流通口812を通った、あるいは流通口812周りでの針又はカニューレへの流体経路16への液剤の漏洩を制限するように構成されてもよい。面シール811は、中間ポンピングチャンバが初期位置にある間、患者への液剤の流れを防止するようにさらに構成されてもよい。動作のいくつかの段階では、面シール811は、例えば、中間ポンピングチャンバ800のプランジャバネ830から圧力を受け、液剤が少しでも流体経路816に入るのを防止してもよい。
【0075】
SMAワイヤ850は、電流の印加に応答して長さ又は形状を変化させるように動作可能なニチノール又は他の既知の形状記憶合金ワイヤであってもよい。例えば、SMAワイヤ850は、(
図1に示すような)コントローラからの制御信号に応答して作動すると、電流又は電圧を印加してSMAワイヤ850を作動させるように構成された回路を介して電源に結合されてもよい。ハードストップ870は、ハードストップ870がプランジャハードストップ860と接触したときに、プランジャ830の動きを制限するように構成されてもよい。
【0076】
図9は、
図8の例に示す中間ポンピングチャンバのポンピングサイクルの初期状態から移行中の吐出ポンプ装置の中間ポンピングチャンバの側断面図を示す。
図9の例では、SMAワイヤ850は、コントローラによって通電(又は作動)されてもよい。通電又は作動に応答して、SMAワイヤ850は、摺動流体部材815のアンカー部分815aを中間ポンピングチャンバ800の後部800bに向かって(矢印Gで示す方向に後部800bに向かって)引っ張り始めてもよい。
【0077】
アンカー部分815aが後部800bに向かって引っ張られると、プランジャバネ830及びFMバネ840がそれぞれの静止位置から圧縮される。さらに、真空が生成され、液剤825がタンク継手801を介してタンクからポンプチャンバ822内に引き込まれる。面シール811は、アンカー部分815aがSMAワイヤ850によって後部800bに向かって引っ張られるとき、プランジャ820に対する圧力を維持し、それによって、液剤が流通口812に入るのを防止する。
【0078】
図10は、ポンプチャンバから液剤を吐出する前の充填状態の
図9の例での中間ポンピングチャンバの側断面図を示す。
図10の例では、(この例では図示しない)コントローラは、もはやSMAワイヤ850に電流を印加させることはない。
【0079】
電流がSMAワイヤ850から排除されると、FMバネ840によって与えられる力によって、摺動流体部材815のアンカー部分815aの反転運動が引き起こされ始める可能性がある。面シール811の反対側の摺動流体部材の表面積の一部に対するプランジャの表面積の方が大きいため、プランジャ820は、ハードストップ860に対して(液剤825の非圧縮性体積によって)所定の位置に油圧的に瞬間的に停止している間に、アンカー部分815aは、プランジャ820内でプランジャチャネル820aを通って移動し始める可能性がある。
【0080】
図10の例では、SMAワイヤ850は、例えば、プランジャハードストップ860がハードストップ870によって形成された壁に当たるときに電流スパイクがコントローラによって検出されるまで、コントローラによって通電されてもよい。この例では、プランジャ820の解放のタイミングは、満たされたポンプチャンバ822内の液剤825による油圧減衰と、通電されたSMAワイヤ850によってアンカー部分815aに加えられる引っ張りと、によって調整されてもよい。
【0081】
摺動流体部材815は、前部800aに向かう移動中に流体を移動させないため、プランジャ820が前部800aに向かって移動し始める前に、摺動流体部材815が「停止位置」に達するのを妨げる追加の力は存在しなくてもよい。プランジャ820が移動すると、全部の液剤825がポンピングチャンバ822から排出されてもよい。
【0082】
図11は、
図4の例の充填状態から吐出状態に移行する例示的な中間ポンピングチャンバの断面図を示す。
【0083】
FMバネ840のバネ定数、流体と接触するプランジャの表面積、流体の粘度及び流通口12のパラメータ、流体経路816のパラメータなどに基づいて、
図11の例では、プランジャ820は、摺動流体部材815が中間ポンピングチャンバ800の前部800aに接触する停止位置に到達する前に、前部800aの停止位置に向かって移動し始めてもよい。
図11では、摺動流体部材815が、中間ポンピングチャンバ800の前部800aに接触する停止位置に示されている。プランジャバネ830は、プランジャ820に力を加えて、プランジャ820を前部800aに向かって移動させる。プランジャ820が移動し、流通口812が面シール811によって封止されなくなると、中間ポンピングチャンバ800の前部800aに向かうプランジャ820の移動によって、液剤825がポンプチャンバ822から排出される。
【0084】
プランジャバネ4が
図8に示すようにその初期位置又は停止位置に戻ると、中間ポンピングチャンバ800は準備が整い、別のパルスを待つことができる。
【0085】
図12は、吐出ポンプ装置のさまざまな制御態様のための電気接点の例示的な構成を示す。
【0086】
例示的な構成1200は、プランジャ屈曲部1230、ハードストップ屈曲部1240及びコントローラ1210の例を示す。
【0087】
プランジャ屈曲部1230はプランジャ屈曲スナップ1233を備えてもよい。プランジャ屈曲スナップ1233は、
図2~
図7のこれまでに挙げた実施形態に示すように、プランジャ屈曲部1230の端部に配置された突起であってもよい。プランジャ屈曲スナップ1233は、ワイヤ121によって互いに結合されるプランジャ屈曲スナップ(PFS)接点1237a及び1237bを備えてもよい。
【0088】
ハードストップ屈曲部1240は、ハードストップスナップ1243を備えてもよい。ハードストップ屈曲スナップ1243内には、ハードストップスナップ(HSS)接点1247a及び1247bが配置されている。ハードストップ屈曲スナップ1243は、
図2~
図7のこれまでに挙げた実施形態に示すように、ハードストップ屈曲部1240の凹み又はボウル状の窪みであってもよい。HSS接点1247a及び1247bは、
図1の例の104などの薬剤吐出装置のコントローラ1210に有線接続を介して結合された状態で示されている。プランジャ屈曲スナップ1233は、ハードストップスナップ1243と相互作用するように構成される。もちろん、プランジャ屈曲スナップ1233及びハードストップスナップ1243は、それぞれのスナップ1233及び1243の結合を可能にする他の形状を有してもよい。
【0089】
コントローラ1210は、コネクタ1203を介してHSS接点1247aに結合され、コネクタ1207によってHSS接点1247bに結合されてもよい。コントローラ1210は、プランジャ屈曲スナップ1233が矢印Mの方向に移動し、PSF接点1237a及び1237bがHSS接点1247a及び1247bにそれぞれ接触すると、応答するように動作可能であってもよい。接触すると、コントローラ1210内で回路が完了する。これは、プランジャが(前述の例で示した)中間ポンピングチャンバのハードストップに到達したことを示す。1200の例では、電気接点を例として示す。しかし、
図1の105などの薬剤吐出装置の状況を判定するために、他の装置及び機構、例えば、追加の電気スイッチ及び相互接続、コントローラに結合され、プランジャの位置を示すように構成された光学装置、磁気/渦電流検出器、ポンプチャンバ内のさまざまな構成要素に結合された容量性流体検出装置、線形可変変位変換器(LVDT)又は他の線形変位測定ツール、圧力センサ、注入管又はブルドン管上の流量センサなど、を使用してもよい。例えば、ブルドン管(Bourdon tube)は、流体経路16又は816などの配管内に歪み又は変形を引き起こす圧力を検出するように構成されてもよい。例えば、流量センサは、逆止弁の漏れ又は逆流に応答するように動作可能であってもよい。
【0090】
別の例では、
図1の102又は
図12の1210などのコントローラを、異なる機能をコントローラに実施させる論理を実行するように構成してもよい。
図13は、吐出ポンプ装置から薬剤を排出するために
図1~
図12の例を利用し得るプロセスのフローチャートである。
【0091】
プロセス1300では、例えば、コントローラは、吐出ポンプ装置から薬剤を出力する時間であると判定してもよい。例えば、コントローラには、ある用量の薬剤がユーザに吐出されるべきであることをコントローラに示す時計又は入力装置が装備されていてもよい(1310)。
【0092】
この判定に応答して、コントローラは、吐出ポンプ装置を作動させるための制御信号を生成してもよい(1320)。コントローラは、例えば、
図2~
図11の例を参照して説明したように、摺動流体部材を移動させるように動作可能なポンプ機構に制御信号を出力するように動作可能であってもよい。
【0093】
この例では、コントローラは、制御信号をポンプ機構に印加するように動作可能であってもよい(1330)。ポンプ機構は、(前述の例を参照して説明したような)形状記憶合金ワイヤ又は電気モータであってもよい。いくつかの例では、中間ポンピングチャンバ及び関連する機構は、(
図2~
図11の例に示す)摺動流体部材に結合された駆動システムを備えてもよい。駆動システムは、例えば、回転カム、リンク機構、ラック、あるいは脱進機構を備えた親ネジによって動かされるように構成されてもよい。別の特定の例では、駆動システムは、低出力の電気モータの使用を可能にするように調整されてもよい。
【0094】
制御信号をポンプ機構に印加するにつれて、(前述の例で示した)ポンプチャンバが液剤で満たされていく。前述の例を参照して説明したように、形状記憶ワイヤを使用して摺動流体部材を引っ張って、ポンプチャンバの充填を可能にする。
【0095】
コントローラは、例えば、制御信号が吐出ポンプ装置のポンプ機構から除去されるべきであると判定するように構成されてもよい(1340)。この判定は、
図12に示す例示的な構成を参照して説明したように実施されてもよい。代替例として、摺動流体部材に磁気を与えてもよく、渦電流を測定し、評価して、摺動流体部材のハードストップ壁への近接度を判定することができる。渦電流構成は、摺動流体部材が移動するにつれて渦電流が異なる値を有するであろうから、同じ中間ポンピングチャンバ内で部分的投与又は複数回投与を可能にしてもよい。もちろん、他の方法又は電気接点の配置を使用して、中間ポンピングチャンバ内の摺動流体部材の位置を判定してもよい。コントローラは、制御信号がポンプ機構から除去され得ると判定すると、1350で、形状記憶合金などの駆動機構への(制御信号に応答する)信号を印加することを停止するか、又は、印加していたことを停止してもよい。制御信号の印加を停止することにより、コントローラは、中間ポンピングチャンバのバネが液剤をポンプチャンバから針/カニューレへの流体経路を介して患者に排出し始めることを可能にする。例えば、液剤の排出により、薬剤吐出装置からの液剤の吐出が可能になってもよい。
【0096】
動作例では、ポンプ機構からの制御信号の除去に応答した針又はカニューレへの液剤の吐出は、追加のステップを含んでもよい。例えば、形状記憶合金が摺動流体部材の引っ張りを停止することに応答して、流体部材バネが減圧を開始してもよい。プランジャは、ポンプチャンバ内の液剤によって液圧的に阻止されるため静止した状態のままで、流体部材バネを減圧することにより、摺動流体部材をチャンバ本体の前方に移動させてもよい。液剤は非圧縮性であり、
図2の例に示すように、摺動流体部材が静止位置又は初期位置に到達するような時間まで、プランジャバネによって及ぼされる力に対抗する。この例では、流通口は、摺動流体部材が初期位置に到達すると、液剤が針継手に流入できるようにするために利用可能である。摺動流体部材が初期位置又は休止位置にあると、プランジャバネが減圧を開始し、液剤がポンプチャンバから針継手内に排出される。
【0097】
コントローラは、1360にて、液剤がポンプチャンバから吐出されたか排出されたこと、あるいは吐出又は排出が開始されたことを確認するように動作可能であってもよい。例えば、摺動流体部材は、前述の渦電流の例などの電気接点などを備えてもよい。
【0098】
システム全体は、プランジャ/摺動流体部材の背面を封止し、小型エアポンプを使用して真空引きすることにより、移動することができる。このシステムにより、真空チャンバ内の圧力を測定することができるであろう。さらに、ボイルの法則(P1V1=P2V2)を使用した計算を通じて、プランジャの位置を確立することができる。
【0099】
このシステムは、米国特許第10,391,237号明細書に記載されているように、プランジャの動きに形状記憶合金の代わりに相変化ワックスを利用するように改変されてもよい。この米国特許の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
本明細書で説明する技術のソフトウェア関連の実装には、ファームウェア、アプリケーション固有のソフトウェア、あるいは1つ又は複数のプロセッサによって実行され得る任意の他の種類のコンピュータ可読命令が含まれてもよいが、ここに挙げたものに限定されない。本明細書で説明する技術のハードウェア関連の実装には、集積回路(IC)、特定用途向けIC(ASIC)、フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)及び/又はプログラマブル論理装置(PLD)が含まれてもよいが、ここに挙げたものに限定されない。いくつかの例では、本明細書に記載の技術及び/又は本明細書に記載の任意のシステム又は構成部品は、1つ又は複数のメモリコンポーネントに保存されたコンピュータ可読命令を実行するプロセッサによって実装されてもよい。
【0101】
これに加えて、あるいはこれとは別に、閉ループアルゴリズムの実装を参照して例を説明しているが、開示した例の変形は、開ループの使用を可能にするために実装されてもよい。開ループの実装により、スマートペン、注射器などのさまざまなインスリン吐出様式の使用が可能になる。例えば、開示したAPアプリケーション及びアルゴリズムは、体重又は年齢などの情報の入力を要求するプロンプトの生成など、開ループ動作に関連するさまざまな機能を実行するように動作可能であってもよい。同じように、インスリンの投与量を、APアプリケーション又はアルゴリズムによってユーザからユーザインターフェースを介して受信してもよい。このほか、他の開ループ動作を、APアプリケーション又はアルゴリズムのユーザ設定などを調整することによって実施してもよい。
【0102】
開示の装置のいくつかの例を、例えば、命令又は命令のセットを保存し得る記憶媒体、コンピュータ可読媒体又は製品を使用して実装してもよい。命令又は命令のセットは、機械(即ち、プロセッサ又はマイクロコントローラ)によって実行される場合に、機械に本開示の例による方法及び/又は動作を実施させてもよい。そのような機械が、例えば、任意の適切な処理プラットフォーム、計算プラットフォーム、計算装置、処理装置、計算システム、処理システム、コンピュータ、プロセッサなどを備えてもよく、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の適切な組み合わせを使用して実装されてもよい。コンピュータ可読媒体又は物品には、例えば、任意の適切なタイプのメモリユニット、メモリ、メモリ物品、メモリ媒体、記憶装置、記憶物品、記憶媒体及び/又は記憶ユニット、例えば、(非一時的メモリを含む)メモリ、取り外し可能媒体又は取り外し不可能媒体、消去可能媒体又は消去不可能媒体、書き込み可能媒体又は再書き込み可能媒体、デジタル媒体又はアナログ媒体、ハードディスク、フロッピーディスク、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、記録可能コンパクトディスク(CD-R)、書き換え可能コンパクトディスク(CD-RW)、光ディスク、磁気媒体、光磁気媒体、リムーバブルメモリカード又はディスク、各種のデジタル多用途ディスク(DVD)、テープ、カセットなどが含まれてもよい。命令は、任意の適切な高レベルプログラミング言語、低レベルプログラミング言語、オブジェクト指向プログラミング言語、視覚的なプログラミング言語、コンパイラ型プログラミング言語及び/又はインタープリタ型プログラミング言語を使用して実装されたソースコード、コンパイル済みコード、解釈済みコード、実行可能コード、静的コード、動的コード、暗号化されたコード、プログラミングコードなどの任意の適切なタイプのコードを含んでもよい。非一時的コンピュータ可読媒体に組み込まれたプログラミングコードは、プログラミングコードを実行するときにプロセッサに、本明細書に記載しているような機能を実施させてもよい。
【0103】
本開示の特定の例をこれまで説明した。しかし、本開示はそのような例に限定されず、むしろ本明細書に明示的に記載したものへの追加及び改変も、開示した例の範囲内に含まれることを意図していることに明示的に留意されたい。さらに、本明細書に記載したさまざまな例の特徴は、相互に排他的ではなく、開示した例の精神及び範囲から逸脱することなく、たとえそのような組み合わせ又は並べ替えを本明細書に明示しなかったとしても、さまざまな組み合わせ及び並べ替えで存在し得ることを理解されたい。実際、当業者であれば、開示した例の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した内容の変形、改変及び他の実装を思いつくであろう。このため、開示した例は、前述の例示的な説明によってのみ規定されるべきではない。
【0104】
この技術のプログラムの態様を、典型的には、ある種の非一時的機械可読媒体上に担持されるか、その媒体に組み込まれる実行可能コード及び/又は関連データの形態の「製品」又は「物品」と考えてもよい。記憶型媒体には、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的な記憶を提供し得るコンピュータ、プロセッサなどの有形メモリの一部又は全部、あるいはさまざまな半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの関連モジュールが含まれる。なお、開示の要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認することができるようにするために提供される。要約は、請求項の範囲又は意味を解釈するか制限するために使用されるものではないという理解の下で提出される。さらに、前述の詳細な説明では、開示を簡素化するために、さまざまな特徴を単一の例にまとめている。この開示方法は、各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を請求された例が必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、開示した単一の例の全特徴に本発明の主題があるわけではない。このため、以下の請求項は本明細書では詳細な説明に組み込まれ、各請求項は別個の例として独立して存在する。添付の請求項では、用語「含む」及び「その中で」はそれぞれ、「具備する」及び「ここで」というそれぞれの用語の平易な英語の等価物として使用される。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は単にラベルとして使用しており、それぞれの対象に数値要件を課すことを意図したものではない。
【0105】
例についての前述の説明は、例示及び説明を目的として提示されたものである。これは、網羅的であること、あるいは開示した正確な形式に本開示を限定することを意図するものではない。この開示に照らして、多くの改変及び変形が可能である。本開示の範囲は、この詳細な説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されることを意図するものである。本出願の優先権を主張する将来の出願では、開示した主題を異なる方法で主張する可能性があり、一般に、本明細書でさまざまに開示するか明示しているような、1つ又は複数の制限の任意のセットを含む場合がある。