(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】コイル部材の製造方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
H02K 15/0414 20250101AFI20250210BHJP
【FI】
H02K15/04 A
(21)【出願番号】P 2023543561
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031208
(87)【国際公開番号】W WO2023026410
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391032358
【氏名又は名称】平田機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】津川 仁
(72)【発明者】
【氏名】光木 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊川 隆博
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-047059(JP,A)
【文献】特開2016-063588(JP,A)
【文献】特開2019-033554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線と、前記専用線とは形状が異なる特殊線とを有するコイル部材の製造方法であって、
前記専用線および前記特殊線に形成される前の所定長さの線材を準備する線材準備工程と、
前記線材をU字状に曲げて前記専用線を作製する専用線曲げ工程と、
前記線材を曲げて前記特殊線を作製する特殊線曲げ工程と、
前記専用線と前記特殊線によって前記コイル部材を作製するコイル作製工程と、を有し、
前記線材準備工程において、前記専用線曲げ工程に要する加工時間と前記特殊線曲げ工程に要する加工時間の比率に応じて、前記専用線曲げ工程へ振り分ける前記線材の個数と前記特殊線曲げ工程へ振り分ける前記線材の個数の比率が調整される、コイル部材の製造方法。
【請求項2】
ステータに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線と、前記専用線とは形状が異なる特殊線とを有するコイル部材の製造方法であって、
前記専用線または前記特殊線に形成される前の第一所定長さの第一線材および第二所定長さの第二線材を準備する線材準備工程と、
前記第一線材をU字状に曲げて前記専用線を作製する専用線曲げ工程と、
前記第二線材を曲げて前記特殊線を作製する特殊線曲げ工程と、
前記専用線と前記特殊線によって前記コイル部材を作製するコイル作製工程と、を有し、
前記線材準備工程は、前記第一線材を前記専用線曲げ工程へ振り分け、前記第二線材を前記特殊線曲げ工程へ振り分ける振分工程を有し、
前記振分工程において、前記専用線曲げ工程に要する加工時間と前記特殊線曲げ工程に要する加工時間の比率に応じて、前記専用線曲げ工程へ振り分ける前記第一線材の個数と前記特殊線曲げ工程へ振り分ける前記第二線材の個数の比率が調整される、コイル部材の製造方法。
【請求項3】
前記振分工程は、作製される前記専用線および前記特殊線としての種類および数に基づいて、前記専用
線曲げ工程および前記特殊
線曲げ工程に前記第一線材および前記第二線材を振り分ける、請求項2に記載のコイル部材の製造方法。
【請求項4】
前記線材準備工程は、準備した金属線の長さに基づき第一所定長さの前記第一線材と第二所定長さの前記第二線材とを判別する長さ判別工程を有する、請求項2に記載のコイル部材の製造方法。
【請求項5】
前記線材準備工程は、前記第一線材および前記第二線材となる連続する一本の前記金属線が巻き付けられた単一のリールから前記金属線を切り出す線材切り出し工程を有する、請求項4に記載のコイル部材の製造方法。
【請求項6】
前記専用線曲げ工程は、
前記第一線材を専用線ストッカにストックする専用線ストック工程を含み、
前記特殊線曲げ工程は、
前記第二線材を特殊線ストッカにストックする特殊線ストック工程を含み、
前記専用線曲げ工程は、前記専用線ストッカから送り出された前記第一線材で前記専用線を作製し、
前記特殊線曲げ工程は、前記特殊線ストッカから送り出された前記第二線材で前記特殊線を作製する、請求項2に記載のコイル部材の製造方法。
【請求項7】
前記コイル部材は、前記コイル本体となる第一専用線および該第一専用線の長さと異なる長さを有する第二専用線を有し、
前記専用線曲げ工程において、前記第一専用線および前記第二専用線を作製する、請求項2に記載のコイル部材の製造方法。
【請求項8】
前記専用線曲げ工程は、
前記第一線材の一端部と他端部との間に設定された曲げ支点部を支点に前記一端部と前記他端部とを接近させることでU字状に前記第一線材を形成する専用線形成工程と、
前記支点部と前記支点との位置の位置合わせをする支点位置合わせ工程と、を含み、
前記支点位置合わせ工程は、前記一端部または前記他端部のいずれかの一方と前記支点部との間隔を調節することで位置合わせを行う、請求項2に記載のコイル部材の製造方法。
【請求項9】
前記特殊線曲げ工程は、
前記第二線材の一端部を基準となる基準位置に位置合わせして前記第二線材の一端部側を保持する基準保持工程と、
前記第二線材の他端部を移動させて所望の形状に前記第二線材を形成する特殊線形成工程と、を含み、所望の形状の前記特殊線を作製する、請求項2に記載のコイル部材の製造方法。
【請求項10】
前記コイル作製工程において、前記専用線および前記特殊線の組合せ作業が所定の作業領域で行われ、
一つの前記コイル部材に必要な数の前記専用線曲げ工程で作製された前記専用線および一つの前記コイル部材に必要な数の前記特殊線曲げ工程で作製された前記特殊線がともに前記作業領域に供給される、請求項2に記載のコイル部材の製造方法。
【請求項11】
ステータに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線と、前記専用線とは形状が異なる特殊線とを有するコイル部材の製造システムであって、
前記専用線および前記特殊線に形成される形成前の所定長さの線材を準備する線材準備部と、
前記線材をU字状に曲げて前記専用線を作製する専用線曲げ部と、
前記線材を曲げて前記特殊線を作製する特殊線曲げ部と、
前記専用線と前記特殊線によって前記コイル部材を作製するコイル作製部と、を有し、
前記線材準備部は、前記専用線曲げ部に要する加工時間と前記特殊線曲げ部に要する加工時間の比率に応じて、前記専用線曲げ部へ振り分ける前記線材の個数と前記特殊線曲げ部へ振り分ける前記線材の個数の比率を調整する、コイル部材の製造システム。
【請求項12】
ステータに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線と、前記専用線とは形状が異なる特殊線とを有するコイル部材の製造システムであって、
前記専用線または前記特殊線に形成される形成前の第一所定長さの第一線材および形成前の第二所定長さの第二線材を準備する線材準備部と、
前記第一線材をU字状に曲げて前記専用線を作製する専用線曲げ部と、
前記第二線材を曲げて前記特殊線を作製する特殊線曲げ部と、
前記専用線と前記特殊線によって前記コイル部材を作製するコイル作製部と、を有し、
前記線材準備部は、前記第一線材を前記専用線曲げ部へ振り分け、前記第二線材を前記特殊線曲げ部へ振り分ける振分部を有し、
前記振分部は、前記専用線曲げ部に要する加工時間と前記特殊線曲げ部に要する加工時間の比率に応じて、前記専用線曲げ部へ振り分ける前記第一線材の個数と前記特殊線曲げ部へ振り分ける前記第二線材の個数の比率を調整する、コイル部材の製造システム。
【請求項13】
前記振分部は、作製される前記専用線および前記特殊線としての種類および数に基づいて、前記専用
線曲げ部および前記特殊
線曲げ部に前記第一線材および前記第二線材を振り分ける、請求項12に記載のコイル部材の製造システム。
【請求項14】
前記線材準備部は、準備した金属線の長さに基づき第一所定長さの前記第一線材と第二所定長さの前記第二線材とを判別する長さ判別部を有する、請求項12に記載のコイル部材の製造システム。
【請求項15】
前記線材準備部は、前記第一線材および前記第二線材となる連続する一つの前記金属線から前記金属線を切り出す線材切り出し部を有する、請求項14に記載のコイル部材の製造システム。
【請求項16】
前記線材準備部は、前記線材切り出し部から切り出された前記金属線を前記長さ判別部へ送る線材移送部を有する、請求項15に記載のコイル部材の製造システム。
【請求項17】
前記専用線曲げ部は、
前記第一線材をストックする専用線ストッカと、
前記専用線を作製する専用線加工部と、
前記第一線材を前記専用線ストッカから前記専用線加工部へ移送する専用線移送機構と、を有し、
前記特殊線曲げ部は、
前記第二線材をストックする特殊線ストッカと、
前記特殊線を作製する特殊線加工部と、
前記第二線材を前記特殊線ストッカから前記特殊線加工部へ移送する特殊線移送機構と、を有する、請求項12に記載のコイル部材の製造システム。
【請求項18】
前記コイル部材は、前記コイル本体となる第一専用線および該第一専用線の長さと異なる長さを有する第二専用線を有し、
前記専用線曲げ部は、
前記第一専用線を作製する第一専用線作製部と、
前記第一専用線の長さと異なる前記第二専用線を作製する第二専用線作製部と、を有する、請求項12に記載のコイル部材の製造システム。
【請求項19】
前記専用線曲げ部は、
前記第一線材の一端部と他端部との間に設定された曲げ支点部と当接し、曲げる際の支点となる支点規定部と、
前記第一線材の一端部を保持する第一曲げチャックと、
前記第一線材の他端部を保持する第二曲げチャックと、
前記第一線材の前記支点部と前記支点規定部との位置を合わせる位置合わせユニットと、を有する、請求項12に記載のコイル部材の製造システム。
【請求項20】
前記特殊線曲げ部は、
前記第二線材の一端部を当接させて基準となる所定の位置に支持する基準当接部と、
前記基準当接部に当接される前記第二線材の一端部側を保持する基準保持部と、
前記第二線材の他端部側を移動させて所望の形状に形成する形成ユニットと、を有する、請求項12に記載のコイル部材の製造システム。
【請求項21】
前記専用線曲げ部で作製された前記専用線を前記コイル作製部に搬送させる専用線搬送部と、前記特殊線曲げ部で作製された前記特殊線を前記コイル作製部に搬送させる特殊線搬送部とを有する、請求項12に記載のコイル部材の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部材の製造方法およびコイル部材の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、モータや発電機等の回転電機の製造に用いられる回転電機の製造システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータのステータに組み込まれるコイル部材には、コイル本体をなすU字状の専用線と、専用線へ電力を供給するための特殊線が用いられている。一般に、ステータに組み込まれるコイル部材には同じ形状の複数の専用線と、専用線と形状が異なる複数種の特殊線とが使用されており、それらの線材がステータコアに挿入され、線材の端部同士が接続されて組み合わされることでステータのコイル部が形成される。それらの線材は、ステータの種類に応じて必要な数量が決まっており、必要数以上に製造するすると無駄が発生することになる。また、ステータに必要な数の専用線および特殊線をバラバラに準備し、管理するとステータコアにコイル部材を組み込む際の管理や、組込み作業が煩雑となり、ステータの製造効率が低下する虞がある。したがって、コイル部材の製造効率の点においてさらなる改善が望まれる。
【0005】
本発明は、ステータに用いられるコイル部材を効率よく製造するコイル部材の製造方法および製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係るコイル部材の製造方法は、
ステータに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線と、前記専用線とは形状が異なる特殊線とを有するコイル部材の製造方法であって、
前記専用線および前記特殊線に形成される前の所定長さの線材を準備する線材準備工程と、
前記線材をU字状に曲げて前記専用線を作製する専用線曲げ工程と、
前記線材を曲げて前記特殊線を作製する特殊線曲げ工程と、
前記専用線と前記特殊線によって前記コイル部材を作製するコイル作製工程と、を有し、
前記線材準備工程において、前記専用線曲げ工程に要する加工時間と前記特殊線曲げ工程に要する加工時間の比率に応じて、前記専用線曲げ工程へ振り分ける前記線材の個数と前記特殊線曲げ工程へ振り分ける前記線材の個数の比率が調整される。
【0007】
また、本発明の一側面に係るコイル部材の製造方法は、
ステータに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線と、前記専用線とは形状が異なる特殊線とを有するコイル部材の製造方法であって、
前記専用線または前記特殊線に形成される前の第一所定長さの第一線材および第二所定長さの第二線材を準備する線材準備工程と、
前記第一線材をU字状に曲げて前記専用線を作製する専用線曲げ工程と、
前記第二線材を曲げて前記特殊線を作製する特殊線曲げ工程と、
前記専用線と前記特殊線によって前記コイル部材を作製するコイル作製工程と、を有し、
前記線材準備工程は、前記第一線材を前記専用線曲げ工程へ振り分け、前記第二線材を前記特殊線曲げ工程へ振り分ける振分工程を有し、
前記振分工程において、前記専用線曲げ工程に要する加工時間と前記特殊線曲げ工程に要する加工時間の比率に応じて、前記専用線曲げ工程へ振り分ける前記第一線材の個数と前記特殊線曲げ工程へ振り分ける前記第二線材の個数の比率が調整される。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係るコイル部材の製造システムは、
ステータに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線と、前記専用線とは形状が異なる特殊線とを有するコイル部材の製造システムであって、
前記専用線および前記特殊線に形成される形成前の所定長さの線材を準備する線材準備部と、
前記線材をU字状に曲げて前記専用線を作製する専用線曲げ部と、
前記線材を曲げて前記特殊線を作製する特殊線曲げ部と、
前記専用線と前記特殊線によって前記コイル部材を作製するコイル作製部と、を有し、
前記線材準備部は、前記専用線曲げ部に要する加工時間と前記特殊線曲げ部に要する加工時間の比率に応じて、前記専用線曲げ部へ振り分ける前記線材の個数と前記特殊線曲げ部へ振り分ける前記線材の個数の比率を調整する。
【0009】
また、本発明の一側面に係るコイル部材の製造システムは、
ステータに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線と、前記専用線とは形状が異なる特殊線とを有するコイル部材の製造システムであって、
前記専用線または前記特殊線に形成される形成前の第一所定長さの第一線材および形成前の第二所定長さの第二線材を準備する線材準備部と、
前記第一線材をU字状に曲げて前記専用線を作製する専用線曲げ部と、
前記第二線材を曲げて前記特殊線を作製する特殊線曲げ部と、
前記専用線と前記特殊線によって前記コイル部材を作製するコイル作製部と、を有し、
前記線材準備部は、前記第一線材を前記専用線曲げ部へ振り分け、前記第二線材を前記特殊線曲げ部へ振り分ける振分部を有し、
前記振分部は、前記専用線曲げ部に要する加工時間と前記特殊線曲げ部に要する加工時間の比率に応じて、前記専用線曲げ部へ振り分ける前記第一線材の個数と前記特殊線曲げ部へ振り分ける前記第二線材の個数の比率を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ステータに用いられるコイル部材を効率よく製造するコイル部材の製造方法および製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のコイル部材の製造システムを含むステータ製造システムの構成図である。
【
図3】コイル部材の製造システムにおける線材準備部の切断部を示す図である。
【
図7】線材準備部の振分部と、曲げ加工部と、コイル作製部と、を示す図である。
【
図8】第一切断部、第一振分部、第一プッシャ部および第一線材ストッカ部を示す図である。
【
図9】曲げ加工部と、コイル作製部と、を示す斜視図である。
【
図10】第一の第一専用線加工部における専用線の曲げ加工の様子を示す図である。
【
図11】第一特殊線加工部における特殊線の曲げ加工の様子を示す図である。
【
図12】専用線と特殊線を搬送するコイル作製部の搬送部を示す部分拡大図である。
【
図14】ステータコアとコイル部材で構成されるステータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、本実施形態のコイル部材の製造システムを含む、ステータ製造システム200の構成図である。
図1に示すように、ステータ製造システム200は、コイル部材Cを製造する製造システム1(以下、コイル製造システム1という。)と、製造されたコイル部材CをステータコアSCに組み付けてステータSTを作製するコイル組付けシステム100と、を備えている。
【0014】
コイル製造システム1は、コイル部材Cを作製するための線材を準備する線材準備部2と、線材の曲げ加工を行う曲げ加工部5と、曲げ加工された線材を組み合わせてコイル部材Cを作製するコイル作製部8と、を有している。線材準備部2は、切断された線材を曲げ加工部5へ払い出す振分部4を有している。また、線材準備部2は、線材を所定の長さに切断する切断部3を有している。
【0015】
図中に示す矢印は、コイル部材CとステータコアSCとによりステータSTが製造されるまでの流れを示している。線材準備部2の切断部3において切り出された線材は、線材準備部2の振分部4に搬送される。振分部4に搬送された線材は、製造されるコイル部材Cに必要な数の線材が曲げ加工部5に払い出される。曲げ加工部5に払い出された線材は、曲げ加工部5に配置される曲げ加工装置において所定の形状に曲げ加工された後にコイル作製部8に搬送される。コイル作製部8に搬送され、所定の形状に曲げ加工された複数の線材は、それぞれの線材がお互いに組み合わされることによりコイル部材Cとして完成する。完成されたコイル部材Cは、コイル作製部8からコイル組付けシステム100へと移送される。
【0016】
本実施例のコイル製造システム1においては、二つのコイル部材Cを並行してそれぞれ一つずつの作製が可能であり、線材準備部2は、第一線材準備部2Aおよび第二線材準備部2Bが配置され、曲げ加工部5は、第一曲げ加工部5Aおよび第二曲げ加工部5Bが配置され、コイル作製部8は、第一コイル作製部8Aおよび第二コイル作製部8Bが配置される。また、第一線材準備部2Aは、第一振分部4Aを有し、第二線材準備部2Bは、第二振分部4Bを有している。また、第一線材準備部2Aは、第一切断部3Aを有している。また、第二線材準備部2Bは、第二切断部3Bを有している。
【0017】
コイル組付けシステム100は、コイル部材Cを組付ける前のステータコアSCを準備するステータコア準備部100aと、製造されたコイル部材CをステータコアSCに組み付けるコイル組付け部100bと、ステータコアSCにコイル部材Cが組付けられた状態で所定の処理を行うステータ処理部100cと、を備える。
【0018】
ステータコア準備部100aは、ステータコア供給部101からステータコアSCが供給され、コイル部材Cが組付けられる前の準備処理が行われる。本実施例に用いられるステータコアSCは、
図2に示すように、円筒状に構成され、中心軸に向かって所定の寸法で形成される溝(または開口)が所定の角度間隔で複数形成される。ステータコアSCに形成される複数の溝には、コイル部材Cの線材が挿入される。
【0019】
コイル組付け部100bは、ステータコアSCを所定の位置に位置決めする位置決め部と、ステータコアSCを位置決め部に移送するステータコア移送部と、コイル部材Cを位置決め部に移送するコイル移送部と、コイル部材CがステータコアSCに組み込まれたステータSTを移送するステータ移送部と、を備える。また、コイル組付け部100bは、位置決め部に位置決めされたステータコアSCにコイル部材Cを組付けるコイル挿入部102を更に備える。ステータコアSCには、コイル挿入部102において、コイル製造システム1のコイル作製部8で製造されたコイル部材Cが挿入される。
【0020】
ステータ処理部100cは、コイル部材Cが挿入されたステータコアSCのコイル部材Cの端部をステータコアSCの周方向に移動させる作業を行うコイル捻り部103を備える。コイル捻り部103において、コイル部材Cの端部を移動させる作業が行われることでコイル部材Cに構成される所定の線材同士の端部を接近させることができ、ステータコアSCに対してコイル部材Cが装着される。また、ステータ処理部100cは、ステータコアSCに装着させたコイル部材Cの線材の端部同士の接続を行うコイル溶着部104を更に備える。コイル溶着部104において、接近された線材の端部同士は、例えば、溶接ツールによりコイルエンド溶着等の作業が行われ、ステータSTが製造される。また、ステータ処理部100cは、製造されたステータSTに対して、糸縛り、外観等の検査を行う最終検査部105を更に備える。最終検査部105での作業が行われることでステータSTの製造が完成する。また、ステータ処理部100cは、完成されたステータSTをコイル組付けシステム100から取出しを行う取出し部106を更に備える。
【0021】
次に、コイル製造システム1について、詳しく説明する。
図3は、コイル製造システム1における第一線材準備部2Aの第一切断部3Aを示す図である。なお、切断部3は、
図1に示すように第一切断部3Aと第二切断部3Bとが並行するようにして二つ設けられている。第一切断部3Aと第二切断部3Bは同じ構成である。したがって、以下においては、第一切断部3Aについてのみ説明する。
【0022】
図3に示すように、第一切断部3Aには、コイル部材Cを作製するための線材の基の線材として、連続する一つの金属線G32(例えば、銅線)を供給するコイル送出し部31が設けられている。コイル送出し部31から送り出された金属線G32は、癖矯正部33に設けられた複数のローラ間を通過することで、線材の大きな歪み(巻き癖)が矯正され、直線状の金属線G32とされる。矯正された金属線G32は、上下面剥離部34と側面剥離部35とを通過することで、所定の範囲の非導電部の被覆が剥離された状態の金属線G32に加工される。
【0023】
剥離加工された金属線G32は、線材切出し部36を通過することで、コイル部材Cを作製するための線材として線材の種類に応じて予め設定されている長さに切断される。具体的には、線材の種類の長さに応じて予め設定される非導電部が剥離され、露出された導電部の所定の位置が切断される。また、ステータの種類に応じたコイル部材Cに応じて、同じ長さまたは長さが異なる複数種類の長さのI型の金属線32に切断される。切断されたI型の金属線32は、線材移送部37によって線材切出し部36から長さ判別部38へと移送される。長さ判別部38は、I型の金属線32が設定された所定の長さに切り出されているか否か判別し、設定された所定の長さに切り出されていると判別したI型の金属線32を振分部4(
図2においては、第一振分コンベア部41A)に送り出す。第一切断部3Aの各部の動作は、第一線材準備部2Aに設けられた第一線材準備制御部21Aによって制御される。
【0024】
線材切出し部36で所定の長さに切り出されたI型の金属線32は、ステータSTのコイル部材Cにおいて、コイル本体をなすU字状の線材(以下、「専用線P」ともいう。)、あるいは専用線Pとは形状が異なる線材(以下、「特殊線S」ともいう。)として用いられる。専用線Pとは形状が異なる線材としては、電力を供給する相電力用線、ジャンパー線、ニュートラル線等の複数種類のものが挙げられる。I型の金属線32は、一台のコイル部材Cを作製するために必要な線材数(以下、「必要線材数[本/台]」ともいう。)ごとに線材切出し部36で切り出される。
【0025】
本実施例に用いられる線材は、
図4に示すように、矩形状の断面を有する直線状の部材であり、導電材質の導電部と、導電部の周囲に密着して導電部を被覆する非導電材質の非導電部とを備え、所定の長さに切断された棒状の部材(I型の金属線32)である。
【0026】
本実施例に用いられる専用線Pは、
図5に示すように、所定の長さに切断された線材(I型の金属線32)をU字状に曲げ加工させた部材である。また、特殊線Sは、例えば、
図6に示すように、所定の長さに切断された線材(I型の金属線32)を所定の形状に曲げ加工させた部材である。
【0027】
図7は、線材準備部2の振分部4と、曲げ加工部5と、コイル作製部8と、を示す図である。
【0028】
図7に示すように、第一振分部4Aは、第一振分コンベア部41Aと、第一プッシャ部42Aと、を有している。第一振分コンベア部41Aは、第一切断部3Aから送り出されるI型の金属線32を一つずつ受け入れ、受け入れたI型の金属線32を所定のピッチで順次送り、第一曲げ加工部5Aに移動させるコンベアを含む。第一プッシャ部42Aは、第一振分コンベア部41Aの動作により移動するI型の金属線32を第一曲げ加工部5Aに払い出すプッシャを備える。具体的には、第一プッシャ部42Aは、第一振分コンベア部41Aの動作により移動するI型の金属線32を第一曲げ加工部5Aの第一線材ストッカ部51Aに移動させる。第一プッシャ部42Aと第一線材ストッカ部51Aとは、第一振分コンベア部41Aを挟んで対向配置される。
【0029】
第二振分部4Bは、第二振分コンベア部41Bと、第二プッシャ部42Bと、を有している。第二振分コンベア部41Bは、第二切断部3Bから送り出されるI型の金属線32を一つずつ受け入れ、受け入れたI型の金属線32を所定のピッチで順次送り、第二曲げ加工部5Bに移動させるコンベアを含む。第二プッシャ部42Bは、第二振分コンベア部41Bの動作により移動するI型の金属線32を第二曲げ加工部5Bに払い出すプッシャを備える。具体的には、第二プッシャ部42Bは、第二振分コンベア部41Bの動作により移動するI型の金属線32を第二曲げ加工部5Bの第二線材ストッカ部51Bに移動させる。
【0030】
図8は、第一切断部3A、第一振分コンベア部41A、第一プッシャ部42Aおよび第一線材ストッカ部51Aに関する図である。
図8に示すように、第一プッシャ部42Aは、複数(図示の例では3個)のプッシャとして第一の第一プッシャ42A1,第一の第二プッシャ42A2,第一の第三プッシャ42A3を含んでいる。第一の第一プッシャ42A1,第一の第二プッシャ42A2,第一の第三プッシャ42A3は、それぞれに対応する矢印43a,43b,43c方向(第一振分コンベア部41Aによって移送されるI型の金属線32の移送方向と交差する方向)に不図示の移動部をそれぞれスライドするように構成される。第一の第一プッシャ42A1,第一の第二プッシャ42A2,第一の第三プッシャ42A3は、例えば、サーボプレス型のプッシャである。
【0031】
第一の第一プッシャ42A1,第一の第二プッシャ42A2,第一の第三プッシャ42A3は、第一振分コンベア部41Aによって移動されるI型の金属線32を、例えば、作製されるI型の金属線32の種類ごとの個数に基づいて、第一線材ストッカ部51Aに含まれる複数のストッカにそれぞれ振り分けるように構成されている。第一振分部4Aの各部の動作および第一線材ストッカ部51Aの動作は、第一線材準備部2Aに設けられた第一線材準備制御部21Aによって制御される。
【0032】
ところで、第一曲げ加工部5Aには、第一振分部4Aの第一振分コンベア部41Aから振り分けられるI型の金属線32をストックする第一線材ストッカ部51Aが設けられている。また、第二曲げ加工部5Bには、第二振分部4Bの第二振分コンベア部41Bから振り分けられるI型の金属線32をストックする第二線材ストッカ部51Bが設けられている。上述したように、I型の金属線32は専用線Pおよび特殊線Sとして用いられる。したがって、第一線材ストッカ部51Aおよび第二線材ストッカ部51Bは、専用線Pとして用いられるI型の金属線32をストックするストッカ、あるいは特殊線Sとして用いられるI型の金属線32をストックするストッカとして機能する。
【0033】
図示される例では、第一線材ストッカ部51Aにおいて、第一の第一プッシャ42A1に対向する第一線材ストッカ部51Aの第一ストッカが専用線Pとして用いられるI型の金属線32(
図8においては、金属線32a)をストックする第一の第一専用線ストッカ51A1として設けられている。また、第一の第二プッシャ42A2に対向する第一線材ストッカ部51Aの第二ストッカが専用線Pとして用いられるI型の金属線32(
図8においては、金属線32a)をストックする第一の第二専用線ストッカ51A2として設けられている。そして、第一の第三プッシャ42A3に対向する第一線材ストッカ部51Aの第三ストッカが特殊線Sとして用いられるI型の金属線32(
図8においては、金属線32b)をストックする第一の特殊線ストッカ51A3として設けられている。
【0034】
同様に、線材ストッカ51Bにおいて、第二プッシャ42B1に対向するストッカが、専用線Pとして用いられるI型の金属線32(金属線32a)をストックする第一専用線ストッカ51B1として設けられている。第二プッシャ42B2に対向するストッカが、専用線Pとして用いられるI型の金属線32(金属線32a)をストックする第二専用線ストッカ51B2として設けられている。第二プッシャ42B3に対向するストッカが、特殊線Sとして用いられるI型の金属線32(金属線32b)をストックする特殊線ストッカ51B3として設けられている。
【0035】
図9は、曲げ加工部5と、コイル作製部8と、を示す斜視図である。
図9に示すように、曲げ加工部5は、I型の金属線32を曲げ加工して専用線Pを作製する専用線曲げ部60と、I型の金属線32を曲げ加工して特殊線Sを作製する特殊線曲げ部70と、を有している。
【0036】
専用線曲げ部60は、振分部4の第一振分コンベア部41Aから振り分けられるI型の金属線32を曲げ加工して専用線Pを作製する第一専用線曲げ部60Aを有している。また専用線曲げ部60は、振分部4の第二振分コンベア部41Bから振り分けられるI型の金属線32を曲げ加工して専用線Pを作製する第二専用線曲げ部60Bを有している。
【0037】
特殊線曲げ部70は、振分部4の第一振分コンベア部41Aから振り分けられるI型の金属線32を曲げ加工して特殊線Sを作製する第一特殊線曲げ部70Aを有している。また特殊線曲げ部70は、振分部4の第二振分コンベア部41Bから振り分けられるI型の金属線32を曲げ加工して特殊線Sを作製する第二特殊線曲げ部70Bを有している。さらに、第一専用線曲げ部60Aには、第一の第一専用線曲げ部60A1と第一の第二専用曲げ部60A2とが含まれている。また第二専用線曲げ部60Bには、第二の第一専用線曲げ部60B1と第二の第二専用曲げ部60B2とが含まれている。
【0038】
第一の第一専用線曲げ部60A1は、第一の第一専用線加工部61A1を有している。また第一の第一専用線曲げ部60A1は、第一の第一専用線ストッカ51A1を有している。第一の第二専用線曲げ部60A2は、第一の第二専用線加工部61A2を有している。また第一の第二専用線曲げ部60A2は、第一の第二専用線ストッカ51A2を有している。
【0039】
第二の第一専用線曲げ部60B1は、第二の第一専用線加工部61B1を有している。また第二の第一専用線曲げ部60B1は、第二の第一専用線ストッカ51B1を有している。第二の第二専用線曲げ部60B2は、第二の第二専用線加工部61B2を有している。また第二の第二専用線曲げ部60B2は、第二専用線ストッカ51B2を有している。
【0040】
第一特殊線曲げ部70Aは、第一特殊線加工部71Aを有している。また第一特殊線曲げ部70Aは、第一の特殊線ストッカ51A3を有している。第二特殊線曲げ部70Bは、第二特殊線加工部71Bを有している。また第二特殊線曲げ部70Bは、第二の特殊線ストッカ51B3を有している。
【0041】
第一の第一専用線加工部61A1は、第一の第一専用線ストッカ51A1から移送されてくるI型の金属線32をU字状に曲げ加工して専用線Pを作製する加工部である。第一の第二専用線加工部61A2は、第一の第二専用線ストッカ51A2から移送されてくるI型の金属線32をU字状に曲げ加工して専用線Pを作製する加工部である。
【0042】
第二の第一専用線加工部61B1は、第二の第一専用線ストッカ51B1から移送されてくるI型の金属線32をU字状に曲げ加工して専用線Pを作製する加工部である。第二の第二専用線加工部61B2は、第二の第二専用線ストッカ51B2から移送されてくるI型の金属線32をU字状に曲げ加工して専用線Pを作製する加工部である。
【0043】
第一の第一専用線加工部61A1には、I型の金属線32を第一の第一専用線ストッカ51A1から第一の第一専用線加工部61A1に移送するための、例えば、送りローラからなる第一の第一専用線移送機構62A1が設けられている。同様に、第一の第二専用線加工部61A2には、I型の金属線32を第一の第二専用線ストッカ51A2から第一の第二専用線加工部61A2に移送する第一の第二専用線移送機構62A2が設けられている。同様に、第二の第一専用線加工部61B1には、I型の金属線32を第二の第一専用線ストッカ51B1から第二の第一専用線加工部61B1に移送する第二の第一専用線移送機構62B1が設けられている。同様に、第二の第二専用線加工部61B2には、I型の金属線32を第二の第二専用線ストッカ51B2から第二の第二専用線加工部61B2に移送する第二の第二専用線移送機構62B2が設けられている。
【0044】
第一特殊線加工部71Aは、第一の特殊線ストッカ51A3にストックされているI型の金属線32を所定の形状に曲げ加工して特殊線Sを作製する加工部である。第二特殊線加工部71Bは、第二の特殊線ストッカ51B3にストックされているI型の金属線32を所定の形状に曲げ加工して特殊線Sを作製する加工部である。
【0045】
第一特殊線加工部71Aには、第一の特殊線ストッカ51A3にストックされているI型の金属線32を第一特殊線加工部71Aの作業領域まで移送してくる第一の特殊線移送機構72Aが設けられている。第二特殊線加工部71Bには、第二の特殊線ストッカ51B3にストックされているI型の金属線32を第二特殊線加工部71Bの作業領域まで移送してくる第二の特殊線移送機構72B(
図7参照)が設けられている。
【0046】
図10は、第一の第一専用線加工部61A1の構成、および第一の第一専用線加工部61A1における専用線Pの曲げ加工の様子を示す図である。なお、第一の第二専用線加工部61A2、第二の第一専用線加工部61B1、および第二の第二専用線加工部61B2についても同様に構成され、同様の曲げ加工が行われる。
【0047】
図9および
図10に示すように、第一の第一専用線加工部61A1は、専用線Pに曲げ加工されるI型の金属線32の曲げ支点部p1と当接する支点規定部611と、曲げ加工されるI型の金属線32の一端部側を保持する第一曲げチャック612aと、一端部側とは反対側の他端部側を保持する第二曲げチャック612bと、を有している。さらに、第一の第一専用線加工部61A1は、専用線Pの曲げ支点部p1と第一の第一専用線加工部61A1の支点規定部611との位置を合わせるための位置合わせユニット613を有している。
【0048】
第一の第一専用線加工部61A1は、第一の第一専用線ストッカ51A1から移送されてくるI型の金属線32を位置合わせユニット613に当接させることで支点規定部611に専用線Pの曲げ支点部p1の位置を合わせる。続いて、金属線32を保持した第一曲げチャック612aと第二曲げチャック612bとを互いに近づくように矢印614a,614bの方向へ移動させることで、金属線32の曲げ支点部p1が当接する支点規定部611を支点として、I型の金属線32をU字状の専用線Pに曲げ加工する。
【0049】
図11は、第一特殊線加工部71Aの構成、および第一特殊線加工部71Aにおける特殊線Sの曲げ加工の様子を示す図である。なお、第二特殊線加工部71Bについても同様に構成され、同様の曲げ加工が行われる。
【0050】
図9および
図11に示すように、第一特殊線加工部71Aは、I型の金属線32の曲げ加工の作業が行われる第一の載置部714と、I型の金属線32を移動させる形成ユニット710と、I型の金属線32を形成ユニット710の取出し位置に移送する第一の特殊線移送機構72Aと、を備える。第一の載置部714は、特殊線Sに曲げ加工されるI型の金属線32の一端部が当接される基準当接部711と、基準当接部711に当接されたI型の金属線32の一端部側を保持する基準保持部712と、を備える。形成ユニット710は、所定の形状の特殊線SにI型の金属線32を曲げ加工する形成機構部713と、形成機構部713の移動を行う形成移動機構7101と、を有している。特殊線Sは、第一の載置部714に保持されるI型の金属線32の一端部側とは反対側の端部側の所定の部分を形成ユニット710が曲げることで曲げ加工される。第二特殊線加工部71Bは第一特殊線加工部71Aと同様に、I型の金属線32の曲げ加工の作業が行われる第二の載置部724と、I型の金属線32を移動させる形成ユニット720と、I型の金属線32を形成ユニット720の取出し位置に移送する第二の特殊線移送機構72B(
図7参照)と、を備える。
【0051】
なお、
図11中の丸領域R内の形成機構部713は、丸領域r内の形成機構部713を拡大して示したものである。形成機構部713は、I型の金属線32の曲げ加工を行う作業ツールである。形成移動機構7101は、形成機構部713を所定の位置および姿勢に移動させる。形成移動機構7101には、例えば、腕を自在に曲げることが可能な6軸ロボット(多関節ロボット)が採用される。
【0052】
第一特殊線加工部71Aは、第一の特殊線ストッカ51A3から第一の載置部714(
図7参照)に移送され、載置されるI型の金属線32を形成機構部713の把持部715で把持し、I型の金属線32の一端部を基準当接部711に当接させてI型の金属線32を所定の位置に支持する。また、第一特殊線加工部71Aは、基準当接部711に当接したI型の金属線32の一端部側を基準保持部712で保持してI型の金属線32を所定の位置に固定する。第一特殊線加工部71Aは、形成ユニット710を動作させることでI型の金属線32を所定の形状に曲げ加工して、特殊線Sが製造される。第一特殊線加工部71Aは、形成ユニット710を動作させることで、曲げ加工が完了した特殊線Sを専用パレット716の所定の載置位置に差し込む。
【0053】
第一の第一専用線加工部61A1および第一の第二専用線加工部61A2で曲げ加工された専用線Pと、第一特殊線加工部71Aで曲げ加工された特殊線Sとは、コイル作製部8へと搬送される。同様に、第二の第一専用線加工部61B1および第二の第二専用線加工部61B2で曲げ加工された専用線Pと、第二特殊線加工部71Bで曲げ加工された特殊線Sとは、コイル作製部8へと搬送される。
【0054】
図12は、曲げ加工された専用線Pと特殊線Sを搬送するコイル作製部8の搬送部を示す部分拡大図である。
図7、
図9および
図12に示すように、コイル作製部8は、第一作製部80と、第二作製部90と、を有している。また、コイル作製部8は、製作したコイル部材Cを移送するコイル移送部8Hを有している。第一作製部80は、第一の第一専用線加工部61A1および第一の第二専用線加工部61A2で曲げ加工された専用線Pと第一特殊線加工部71Aで曲げ加工された特殊線Sを用いてコイル部材Cを作製する。第二作製部90は、第二の第一専用線加工部61B1および第二の第二専用線加工部61B2で曲げ加工された専用線Pと第二特殊線加工部71Bで曲げ加工された特殊線Sを用いてコイル部材Cを作製する。コイル移送部8Hは、第一作製部80および第二作製部90で作製されたコイル部材Cを次の工程(コイル作製部8より下流の工程)へ移送する。コイル移送部8Hは、例えば、コンベアであり、コイル部材Cを移送する。コイル部材Cの移送は、コイル部材Cを所定の位置に支持する移送体8Pにより、移送される。
【0055】
図13はコイル本体の一例を示す図である。
図13に示したように、本実施形態で作製される二つのコイル部材Cは、一つ目が外側層のコイル部材となる第一のコイル部材C1と二つ目が内側層のコイル部材となる第二のコイル部材C2とを有する二層型のコイル部材Cである。第一作製部80は、外側層のコイル部材となる第一のコイル部材C1を作製する作製部である。第二作製部90は、内側層のコイル部材となる第二のコイル部材C2を作製する作製部である。第一作製部80および第二作製部90は、コイル移送部8Hのそれぞれ所定の位置に設けられる。本実施例の場合、第二作製部90は、第一作製部80よりも上流側(例えば
図7の上側)のコイル移送部8Hの所定の位置に設けられている。
【0056】
第一作製部80と、第一の第一専用線加工部61A1との間には、第一の第一専用線加工部61A1で曲げ加工された専用線Pを搬送する第一の第一専用線搬送部81が配置される。また、第一作製部80と第一の第二専用線加工部61A2との間には、第一の第二専用線加工部61A2で曲げ加工された専用線Pを搬送する第一の第二専用線搬送部82が配置される。また、第一作製部80と第一特殊線加工部71Aとの間には、第一特殊線加工部71Aで曲げ加工された特殊線Sを搬送する第一特殊線搬送部83が配置される。各搬送部81,82,83は、コンベアである。また第一作製部80と第一の第一専用線搬送部81との間には、第一の第一専用線搬送部81から専用線Pを受け取り、第一作製部80へ専用線Pを移送する第一の第一専用線搬送シュート811が配置される。また、第一作製部80と第一の第二専用線搬送部82との間には、第一の第二専用線搬送部82から専用線Pを受け取り、第一作製部80へ専用線Pを移送する第一の第二専用線搬送シュート821が配置される
【0057】
第二作製部90と第二の第一専用線加工部61B1との間には、第二の第一専用線加工部61B1で曲げ加工された専用線Pを搬送する第二の第一専用線搬送部91が配置される。また、第二作製部90と第二の第二専用線加工部61B2との間には、第二の第二専用線加工部61B2で曲げ加工された専用線Pを搬送する第二の第二専用線搬送部92が配置される。また、第二作製部90と第二特殊線加工部71Bとの間には、第二特殊線加工部71Bで曲げ加工された特殊線Sを搬送する第二特殊線搬送部93が配置されている。各搬送部91,92,93は、コンベアである。また第二作製部90と第二の第一専用線搬送部91との間には、第二の第一専用線搬送部91から専用線Pを受け取り、第二作製部90へ専用線Pを移送する第二の第一専用線搬送シュート911が配置される。また、第二作製部90と第二の第二専用線搬送部92との間には、第二の第二専用線搬送部92から専用線Pを受け取り、第二作製部90へ専用線Pを移送する第二の第二専用線搬送シュート921が配置される。
【0058】
第一の第一専用線加工部61A1でU字状に曲げ加工された専用線Pは、
図12に示すように、第一の第一専用線搬送部81に設けられている第一の第一専用線搬送シュート811に引掛けられた状態で第一作製部80へ搬送される。同様に、第一の第二専用線加工部61A2でU字状に曲げ加工された専用線Pは、第一の第二専用線搬送部82に設けられている第一の第二専用線搬送シュート821に引掛けられた状態で第一作製部80へ搬送される。また、第一特殊線加工部71Aで曲げ加工された特殊線Sは、
図12に示すように、第一特殊線搬送部83に準備された専用パレット716に載置された状態(本実施例においては、差し込まれた状態)で第一作製部80へ搬送される。なお、図示は省略するが、第二作製部90側においても同様にして専用線Pおよび特殊線Sが第二作製部90へ搬送される。
【0059】
第二作製部90には、第二のコイル部材C2を製造するために用いられる第二コイル部材製造ユニット901が準備されている。第二作製部90では、第二のコイル部材C2を製造するための専用線Pおよび特殊線Sが第二コイル部材製造ユニット901に配置され、所定の作業を行い、ステータコアSCに組み付ける前の第二のコイル部材C2が製造される。一方、特殊線Sは、第二のコイル部材C2が製造される第二コイル部材製造ユニット901の所定の配置位置に配置され、第二のコイル部材C2と共に移動され、コイル挿入部102に移送される途中に設けられる特殊線Sの特殊線取付部で第二のコイル部材C2の所定の位置に取り付けられる。
【0060】
第一作製部80には、第一のコイル部材C1を製造するために用いられる第一コイル部材製造ユニット801が準備されている。第一作製部80では、第二作製部90と同様に第一のコイル部材C1が製造される。第一作製部80では、第一のコイル部材C1を製造するための専用線Pおよび特殊線Sが第一コイル部材製造ユニット801に配置され、所定の作業が行い、ステータコアSCに組み付ける前の第一のコイル部材C1が製造される。
一方、特殊線Sは、第一のコイル部材C1が製造される第一コイル部材製造ユニット801の所定の配置位置に配置され、第一のコイル部材C1と共に移動され、コイル挿入部102に移送される途中に設けられる特殊線Sの特殊線取付部で第一のコイル部材C1の所定の位置に取り付けられる。
【0061】
図14は、ステータコアSCとコイル部材Cで構成されるステータSTの一例を示す図である。上述のようにして作製されたコイル部材Cに特殊線Sが所定の位置に組み込まれ、ステータコアSCに組み込まれ、コイル組付けシステム100において所定の作業を行うことでステータSTが製造される。
【0062】
次に、上述のような構成のコイル製造システム1において、線材準備部2で準備された所定の長さのI型の金属線32が線材準備部2から曲げ加工部5へ払い出される払出調整の制御について以下に説明する。なお、上述したように線材準備部2(切断部3、振分部4)の動作は、線材準備制御部21によって制御されている。
【0063】
(払出調整の制御例)
複数層のコイル部材C(本実施例においては、二つのコイル部材の層を有するコイル部材C)を構成する外側層となる第一のコイル部材C1と内側層となる第二のコイル部材C2は、42本の専用線Pと9本の特殊線Sとを組み合わせることによってそれぞれ作製される。第一のコイル線材C1および第2のコイル部材C2の必要線材数はそれぞれ51[本/台]であり、第一コイル部材C1と第二のコイル部材C2とを合わせたコイル部材Cの必要線材数は102[本/台]である。
【0064】
42本の専用線Pに曲げ加工されるI型の金属線には、第一長さのI型の金属線(以下、第一I型金属線という。)が36本と、第二長さのI型の金属線(以下、第二I型金属線という。)が6本含まれている。9本の特殊線Sに曲げ加工されるI型の金属線には、第三長さのI型の金属線(以下、第三I型金属線という。)が3本と、第四長さのI型の金属線(以下、第四I型金属線という。)が6本含まれている。
【0065】
線材準備部2の第一線材準備部2Aから払い出されるI型の金属線32を専用線Pと特殊線Sに曲げ加工する曲げ加工部5の第一曲げ加工部5Aは、外側層となる第一のコイル部材C1を作製する加工部として、専用線Pを曲げ加工する第一の第一専用線加工部61A1および第一の第二専用線加工部61A2と、特殊線Sを曲げ加工する第一特殊線加工部71Aと、を有している。
【0066】
第一の第一専用線加工部61A1によって第一I型金属線(36本)が曲げ加工され、第一の第二専用線加工部61A2によって第二I型金属線(6本)が曲げ加工されるように設定されている。また、第一特殊線加工部71Aによって第三I型金属線(3本)および第四I型金属線(6本)が曲げ加工されるように設定されている。
【0067】
また、第一の第一専用線加工部61A1が一本の第一I型金属線を曲げ加工するために必要な第一加工時間S1[秒/本]、第一の第二専用線加工部61A2が一本の第二I型金属線を曲げ加工するために必要な第二加工時間S2[秒/本]、第一特殊線加工部71Aが一本の第三I型金属線を曲げ加工するために必要な第三加工時間S3[秒/本]、第一特殊線加工部71Aが一本の第四I型金属線を曲げ加工するために必要な第四加工時間S4[秒/本]は、それぞれ決まっている。例えば、第一I型金属線の第一加工時間S1は、第三I型金属線の第三加工時間S3あるいは第四I型金属線の第四加工時間S4よりも短い。すなわち、単一の加工時間を比べた場合、専用線Pの方が特殊線Sよりも速く曲げ加工することができる。
【0068】
このような製造条件において、線材準備制御部21は、コイル部材Cの必要線材数(外側層の第一のコイル部材C1の必要線材数、内側層の第二のコイル部材C2の必要線材数)ごとに、線材準備部2から曲げ加工部5へのI型の金属線32の払出調整の制御を行う。また、線材準備制御部21は、例えば、専用線Pを曲げ加工するのに要する加工時間と特殊線Sを曲げ加工するのに要する加工時間の比率に応じて線材準備部2から曲げ加工部5へのI型の金属線32の払出調整の制御を行う。
【0069】
線材準備制御部21の第一線材準備制御部21Aは、例えば、第一線材準備部2Aの第一切断部3Aにおける線材切出し部36の動作制御において、先ず、12本の第一I型金属線の切り出し制御を行い、次に、2本の第二I型金属線の切り出し制御を行い、次に、1本の第三I型金属線の切り出し制御を行い、次に、2本の第四I型金属線の切り出し制御を行う。そして、この順番での各線材の切り出しを一サイクルとして、3サイクルの繰り返し制御が第一線材準備部2Aで行われることで外側層の第一のコイル部材C1の必要線材数(51本)が切り出される。第一線材準備制御部21Aに第一線材準備部2Aが制御されることで切り出された各線材は、切り出された順に第一切断部3Aから第一振分部4Aの第一振分コンベア部41Aに搬送される。
【0070】
第一線材準備制御部21Aは、第一振分部4Aにおいて、第一振分コンベア部41A上を移動する各線材を種類ごとに第一曲げ加工部5Aの第一の第一専用線ストッカ51A1、第一の第二専用線ストッカ51A2、および第一の特殊線ストッカ51A3への振り分けの制御を行う。具体的には、第一線材準備制御部21Aは、第一振分部4Aにおいて、第一の第一専用線ストッカ51A1に12本の第一I型金属線を、第一の第二専用線ストッカ51A2に2本の第二I型金属線を、第一の特殊線ストッカ51A3に1本の第三I型金属線および2本の第四I型金属線を振り分ける制御を行う。換言すると、第一線材準備制御部21Aは、第一振分部4Aにおいて、第一の第一専用線加工部61A1に12本の第一I型金属線を、第一の第二専用線加工部61A2に2本の第二I型金属線を、第一特殊線加工部71Aに1本の第三I型金属線および2本の第四I型金属線を振り分けるために、各種線材を第一線材ストッカ部51Aに振り分ける制御を行う。
【0071】
そして、第一線材準備制御部21Aは、三サイクルの切り出し制御に伴って行われる第一振分部4Aの振り分け制御において、第一の第一専用線ストッカ51A1に36本の第一I型金属線を、第一の第二専用線ストッカ51A2に6本の第二I型金属線を、第一の特殊線ストッカ51A3に3本の第三I型金属線および6本の第四I型金属線を振り分ける制御を行う。換言すると、第一線材準備制御部21Aは、三サイクルの切り出し制御に伴って行われる第一振分部4Aの振り分け制御において、第一の第一専用線加工部61A1に36本の第一I型金属線を、第一の第二専用線加工部61A2に6本の第二I型金属線を、第一特殊線加工部71Aに3本の第三I型金属線および6本の第四I型金属線を振り分けるために、各種線材を第一線材ストッカ部51Aに振り分ける制御を行う。
【0072】
なお、上記制御例では、第一の第一専用線ストッカ51A1に第一I型金属線を、第一の第二専用線ストッカ51A2に第二I型金属線を振り分ける場合の振り分け制御を説明したがこれに限られない。例えば、第一の第一専用線ストッカ51A1に第二I型金属線を振り分け、第一の第二専用線ストッカ51A2に第一I型金属線を振り分けるように制御してもよい。
【0073】
また、上記制御例では、特殊線Sに曲げ加工する第三I型金属線と第四I型金属線とを一台の第一特殊線加工部71Aに振り分けて曲げ加工する場合の振り分け制御について説明したがこれに限られない。例えば、二か所の特殊線加工部を設けて、第三I型金属線と第四I型金属線とをそれぞれ一ヶ所ずつの特殊線加工部に振り分け制御して曲げ加工するようにしてもよい。
【0074】
また、上記制御例では、専用線Pに曲げ加工されるI型の金属線が、長さの異なる第一I型金属線と第二I型金属線との2種類である場合の振り分け制御について説明したがこれに限られない。例えば、I型の金属線は、長さが同じで、曲げる位置が相違するI型の金属線であってもよい。このような場合にも、二か所の専用線加工部を設けて、上記制御例と同じように一方の専用線加工部に36/42本のI型の金属線を、もう一方の専用線加工部に6/42本のI型の金属線を振り分けるように制御してもよい。さらに、専用線Pに曲げ加工されるI型の金属線は、長さも曲げる位置も相違する2種類のI型の金属線であってもよい。
【0075】
また、上記制御例では、二か所の専用線加工部を準備して、第一の第一専用線加工部61A1に36本の第一I型金属線を、第一の第二専用線加工部61A2に6本の第二I型金属線を振り分ける場合の振り分け制御について説明したがこれに限られない。例えば、専用線加工部を三か所準備するようにしてもよい。この場合、例えば、一ヶ所目の専用線加工部に18/42本の第一I型金属線を、二か所目の専用線加工部に18/42本の第一I型金属線を、3台三か所目の専用線加工部に6/42本の第二I型金属線を振り分けるように制御してもよい。
【0076】
以上説明したように、種類の異なる専用線Pと特殊線Sとを製造ライン上で自動的に組み合わせてコイル部材Cを製造する場合、例えば、線材を所定形状の専用線Pに加工するのに必要な加工時間と、線材を所定形状の特殊線Sに加工するのに必要な加工時間とが相違するために、コイル部材Cの製造効率が問題となり得る。
【0077】
これに対して、本実施形態に係るコイル製造システム1によれば、第一の第一専用線加工部61A1および第一の第二専用線加工部61A2においてI型の金属線32を専用線Pに曲げ加工する加工時間と、第一特殊線加工部71AでI型の金属線32を特殊線Sに曲げ加工する加工時間との比率に応じて、各加工部へ振り分けるI型の金属線32の個数を調整することができるように構成されている。すなわち、いずれかの加工部での加工負荷が大きくならないように加工負荷のバランスを調整することができる。このため、曲げ加工を行っている加工部と曲げ加工を行っていない加工部とが同時に存在する期間の発生を抑制することができ、コイル部材Cの製造効率を向上させることができる。
【0078】
具体的には、専用線Pの曲げ加工時間と特殊線Sの曲げ加工時間の比率に応じて、第一線材準備部2Aの第一切断部3Aで切り出す第一I型金属線と第二I型金属線と第三I型金属線と第四I型金属線との切出し個数を調整し、切り出した各金属線を切り出した順に第一振分部4Aにより第一曲げ加工部5Aの各加工部へと振り分けることができる。このため、それぞれの線材加工部に待機時間が生じないように、無駄なく常に各加工部での加工装置を動作させておくようにすることができる。また、第一曲げ加工部5Aの第一線材ストッカ51部AにI型の金属線32が途切れる(空になる)ことなくストックさせておくことができる。また、第一曲げ加工部5Aの第一線材ストッカ部51Aが、第一振分部4Aから振り分けられるI型の金属線32をストックすることで、第一曲げ加工部5Aの作業が停止しても第一振分部4Aの振り分け動作を継続させることができる。これにより、コイル部材Cの製造効率を向上させることができる。
【0079】
次に、コイル製造システム1を用いたコイル部材Cの製造方法について説明する。コイル製造システム1によれば以下のようなコイル部材Cの製造方法が実施される。
本実施形態の製造方法は、
ステータSTに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線Pと、専用線Pとは形状が異なる特殊線Sとを有するコイル部材Cの製造方法であって、
専用線Pおよび特殊線Sに形成される前の所定長さのI型の金属線32を準備する線材準備工程と、
I型の金属線32をU字状に曲げて専用線Pを作製する専用線曲げ工程と、
I型の金属線32を曲げて特殊線Sを作製する特殊線曲げ工程と、
専用線Pと特殊線Sによってコイル部材Cを作製するコイル作製工程と、を有する。
線材準備工程において、専用線曲げ工程に要する加工時間と特殊線曲げ工程に要する加工時間の比率に応じて、専用線曲げ工程へ振り分けるI型の金属線32の個数と特殊線曲げ工程へ振り分けるI型の金属線32の個数の比率が調整される。
本製造方法における線材準備工程はコイル製造システム1における線材準備部2で行われ、専用線曲げ工程は曲げ加工部5の専用線曲げ部60で行われ、特殊線曲げ工程は曲げ加工部5の特殊線曲げ部70で行われ、コイル作製工程はコイル作製部8で行われる。
【0080】
本実施形態の製造方法によれば、専用線Pと特殊線Sを有するコイル部材Cの製造にあたり、それぞれのI型の金属線32の加工時間に合わせて各々の線材曲げ工程へ振り分けるI型の金属線32の個数の比率が調整される。このため、専用線曲げ工程の処理と特殊線曲げ工程の処理とが完了する完了タイミングを近づけ、それぞれの処理時間を均一化することができるので、他方の線材曲げ工程を待つ大きな時間のズレが生じず、効率的にコイル部材Cを製造できる。これにより、コイル部材Cの製造に適した製造方法とすることができる。
【0081】
本実施形態の製造方法は、
ステータSTに用いる、コイル本体をなすU字状の専用線Pと、専用線Pとは形状が異なる特殊線Sとを有するコイル部材Cの製造方法であって、
専用線Pまたは特殊線Sに形成される前の第一所定長さの第一線材および第二所定長さの第二線材を準備する線材準備工程と、
第一線材をU字状に曲げて専用線Pを作製する専用線曲げ工程と、
第二線材を曲げて特殊線Sを作製する特殊線曲げ工程と、
専用線Pと特殊線Sによってコイル部材Cを作製するコイル作製工程と、を有する。
線材準備工程は、第一I線材を専用線曲げ工程へ振り分け、第二線材を特殊線曲げ工程へ振り分ける振分工程を有する。
振分工程において、専用線曲げ工程に要する加工時間と特殊線曲げ工程に要する加工時間の比率に応じて、専用線曲げ工程へ振り分ける第一線材の個数と特殊線曲げ工程へ振り分ける第二線材の個数の比率が調整される。
【0082】
本実施形態の製造方法によれば、一つのステータSTに用いられる必要な数の専用線Pと特殊線Sとを効率よく製造することができる。
【0083】
本実施形態の製造方法において、
振分工程は、作製される専用線Pおよび特殊線Sとしての種類および数に基づいて、専用曲げ工程および特殊曲げ工程にI型の金属線32を振り分ける。
【0084】
本実施形態の製造方法において、
線材準備工程は、準備したI型の金属線32の長さに基づき、第一所定長さの第一線材と第二所定長さの第二線材とを判別する長さ判別工程を有する。
【0085】
本実施形態の製造方法において、
線材準備工程は、第一線材および第二線材となる連続する一本の金属線が巻き付けられた単一のリールからI型の金属線32を切り出す線材切り出し工程を有する。
【0086】
本実施形態の製造方法において、
専用線曲げ工程は、
第一線材を第一の第一専用線ストッカ51A1および第一の第二専用線ストッカ51A2にストックする専用線ストック工程を含み、
特殊線曲げ工程は、
第二線材を第一の特殊線ストッカ51A3にストックする特殊線ストック工程を含む。
専用線曲げ工程は、第一の第一専用線ストッカ51A1および第一の第二専用線ストッカ51A2から送り出された第一線材を曲げ加工して専用線Pを作製し、
特殊線曲げ工程は、第一の特殊線ストッカ51A3から送り出された第二線材を曲げ加工して特殊線Sを作製する。
【0087】
本実施形態の製造方法によれば、ストッカによる線材のストックをすることにより、線材を途切れることなく専用線曲げ工程および特殊線曲げ工程に供給することができる。また、それぞれの線材をストックさせておくことで、それぞれの曲げ工程により作製を継続することができる。また、それぞれの曲げ工程による作製作業が停滞しても、振分工程による振り分け動作を継続することができる。
【0088】
本実施形態の製造方法において、
コイル部材Cは、コイル本体となる第一の専用線Pおよび該第一の専用線Pの長さと異なる長さを有する第二の専用線Pを有し、
専用線曲げ工程において、第一の専用線Pおよび第二の専用線Pを作製する。
図7および
図9を用いて説明したように、第一の専用線Pは、第一の第一専用線ストッカ51A1から移送されてくるI型の金属線32をU字状に曲げ加工して作製される専用線Pである。第二の専用線Pは、第一の第二専用線ストッカ51A2から移送されてくるI型の金属線32をU字状に曲げ加工して作製される専用線Pである。
【0089】
本実施形態の製造方法において、
図10で示されるように、
専用線曲げ工程は、
第一線材の一端部と他端部との間に設定された曲げ支点部p1を支点に一端部と他端部とを接近させることでU字状に第一線材を形成する専用線形成工程と、
支点部p1を支点の位置に位置合わせをする支点位置合わせ工程と、を含む。
支点位置合わせ工程は、一端部または他端部のいずれかの一方と支点部p1との間隔を調節することで位置合わせを行う。
【0090】
本実施形態の製造方法において、
図11で示されるように、
特殊線曲げ工程は、
第二線材の一端部を基準となる基準位置に位置合わせして第二線材の一端部側を保持する基準保持工程と、
第二線材の他端部を移動させて所望の形状に第二線材を形成する特殊線形成工程と、を含み、所望の形状の特殊線Sを作製する。
【0091】
本実施形態の製造方法は、
図7、
図9および
図12で示されるように、
コイル作製工程において、専用線Pおよび特殊線Sの組合せ作業が所定の作業領域で行われ、
一つのコイル部材Cに必要な数の専用線曲げ工程で作製された専用線Pおよび一つのコイル部材Cに必要な数の特殊線曲げ工程で作製された特殊線Sがともに作業領域に供給される。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0093】
1:コイル製造システム、2:線材準備部、3:切断部、3A:第一切断部、3B:第二切断部、4:振分部、5:曲げ加工部、8:コイル作製部、21:線材準備制御部、31:コイル送出し部、32:金属線、36:線材切出し部、37:線材移送部、38:長さ判別部、41A:第一振分コンベア部、41B:第二振分コンベア部、42A:第一プッシャ部、42B:第二プッシャ部、51A:第一線材ストッカ部、51B:第二線材ストッカ部、51A1:第一の第一専用線ストッカ、51A2:第一の第二専用線ストッカ、51A3:第一の特殊線ストッカ、51B1:第二の第一専用線ストッカ、51B2:第二の第二専用線ストッカ、51B3:第二の特殊線ストッカ、60:専用線曲げ部、60A:第一専用線曲げ部、60B:第二専用線曲げ部、61A1:第一の第一専用線加工部、61A2:第一の第二専用線加工部、61B1:第二の第一専用線加工部、61B2:第二の第二専用線加工部、62A1:第一の第一専用線移送機構、62A2:第一の第二専用線移送機構、62B1:第二の第一専用線移送機構、62B2:第二の第二専用線移送機構、70:特殊線曲げ部、70A:第一特殊線曲げ部、70B:第二特殊線曲げ部、71A:第一特殊線加工部、71B:第二特殊線加工部、72A:第一の特殊線移送機構、72B:第二の特殊線移送機構、80:第一作製部、81:第一の第一専用線搬送部、82:第一の第二専用線搬送部、83:第一特殊線搬送部、90:第二作製部、91:第二の第一専用線搬送部、92:第二の第二専用線搬送部、93:第二特殊線搬送部、100:コイル組付けシステム、100a:テータコア準備部、100b:コイル組付け部、100c:ステータ処理部、101:ステータコア供給部、102:コイル挿入部、106:取出し部、200:ステータ製造システム、611:支点規定部、612a:第一曲げチャック、612b:第二曲げチャック、613:位置合わせユニット、711:基準当接部、712:基準保持部、713:形成機構部、714:第一の載置部、801:第一コイル部材製造ユニット、811:第一の第一専用線搬送シュート、821:第一の第二専用線搬送シュート、901:第二コイル部材製造ユニット、911:第二の第一専用線搬送シュート、921:第二の第二専用線搬送シュート、C:コイル部材、P:専用線、S:特殊線、SC:ステータコア、ST:ステータ