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  • 特許-プロピレン系樹脂組成物およびその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20250210BHJP
   C08L 25/00 20060101ALI20250210BHJP
   C08L 23/08 20250101ALI20250210BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L25/00
C08L23/08
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023548415
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2022033285
(87)【国際公開番号】W WO2023042701
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2021149550
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 晃
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 蒼
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-079924(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043824(WO,A1)
【文献】特開平06-032951(JP,A)
【文献】特表2014-523460(JP,A)
【文献】特開2019-031097(JP,A)
【文献】特開2005-264032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体部の135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が4.0~9.0dl/gの範囲にある、n-デカン可溶部として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)を5~22質量%と、プロピレン単独重合体(a2)を78~95質量%〔但し、(a1)+(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含み、ASTM D-1238に準拠する温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFRが70~150g/10分の範囲にあるプロピレン系重合体(A)を50~90質量%、
ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが10~80g/10分の範囲にあるアルケニル芳香族化合物から導かれる単位を含有する共重合体(B)を5~50質量%、および、
ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが20~40g/10分の範囲にあるエチレン系共重合体(C)を0~20質量%〔但し、(A)+(B)+(C)の合計量を100質量%とする。〕で含むプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが40~120g/10分の範囲にある請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
アルケニル芳香族化合物から導かれる単位を含有する共重合体(B)が、密度が0.88~0.98g/cm3の範囲にある請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
エチレン系共重合体(C)が、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体であり、密度が0.85~0.98g/cm3の範囲にある請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
プロピレン系樹脂組成物が、(A)+(B)+(C)の合計量100質量部に対して、結晶核剤(D)を0~0.5質量部の範囲で含む請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
プロピレン系樹脂組成物が、(A)+(B)+(C)の合計量100質量部に対して、発泡剤(E)を0.1~10質量部の範囲で含む請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を発泡させて得られる発泡体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を射出発泡成形してなる自動車内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル径が均一で、外観が良好でかつ面衝撃性に優れる発泡成形体を得るに好適なプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンの重要な成形加工法の一つとして、発泡成形がある。押出発泡成形や射出発泡成形で得られた各種の成形体は、断熱性や遮音性、クッション性、エネルギー吸収特性などの優れた特性を生かし、幅広い用途で使用されている。発泡体の発泡倍率が高くなるほど、緩衝性、断熱性に優れ、連続気泡率が高いほど吸音性に優れ、且つ軽量化できることが一般に知られている。しかしながら、発泡成形体は、非発泡成形体に比べると面衝撃性能が大きく低下し、スワルマークなどの発泡特有の外観不良が発生しやすいため、衝撃性能と良外観を両立する発泡用プロピレン系樹脂組成物が市場で求められている。
【0003】
射出発泡成形体の衝撃性能を改良する方法として、ポリプロピレン系樹脂に、溶融張力が大きいエチレン・α‐オレフィン共重合体と溶融張力が低いオレフィン重合体樹脂を配合する方法(特許文献1)、ポリプロピレン系樹脂に、溶融張力が大きいポリエチレン系樹脂、並びに、アルケニル芳香族化合物単位含有ゴム、および、エチレン・α‐オレフィン系共重合体から選ばれる少なくとも一種以上の熱可塑性樹脂を配合する方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/043824号パンフレット
【文献】特開2013-1826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、セル径が均一で、外観が良好でかつ面衝撃性に優れる発泡成形体を得るに好適なプロピレン系樹脂組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体部の135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が4.0~9.0dl/gの範囲にある、n-デカン可溶部として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)を5~22質量%と、プロピレン単独重合体(a2)を78~95質量%〔但し、(a1)+(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含み、ASTM D-1238に準拠する温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFRが70~150g/10分の範囲にあるプロピレン系重合体(A)を50~90質量%の範囲、
ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが10~80g/10分の範囲にあるアルケニル芳香族化合物から導かれる単位を含有する共重合体(B)を5~50質量%の範囲、および、
ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが20~40g/10分の範囲にあるエチレン系共重合体(C)を0~20質量%の範囲〔但し、(A)+(B)+(C)の合計量を100質量%とする。〕で含むことを特徴とするプロピレン系樹脂組成物に係る。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプロピレン系樹脂組成物を射出発泡成形してなる射出発泡成形体は、セル径が均一で、外観が良好でかつ面衝撃性に優れるので、自動車内外装用部品、ダンボールなどの代替え品、電器製品、建材等の各種用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例および比較例で得られた射出発泡成形体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るプロピレン系重合体組成物および当該組成物からなる射出発泡成形体(以下、単に「成形体」と略称する場合がある。)について具体的に記載する。
【0010】
<プロピレン系重合体(A)>
本発明のプロピレン系樹脂組成物に含まれる成分の一つであるプロピレン系重合体(A)は、23℃におけるn-デカン可溶部(Dsol)として特定されるプロピレン・エチレン共重合体部の135℃のテトラリン中での極限粘度[η]が4.0~9.0dl/g、好ましくは5.0~8.0dl/g、より好ましくは6.0~8.0dl/gの範囲にある、n-デカン可溶部として特定されるプロピレン・エチレン共重合体(a1)を5~22質量%、好ましくは5~15質量%、より好ましくは5~13質量%と、プロピレン単独重合体(a2)を78~95質量%、好ましくは85~95質量%、より好ましくは87~95質量%〔但し、(a1)+(a2)の合計量を100質量%とする。〕を含み、ASTM D-1238に準拠する温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFRが70~150g/10分、好ましくは73~130g/10分、より好ましくは75~110g/10分の範囲にある。
【0011】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、単独であっても、二種以上であってもよい。
【0012】
プロピレン・エチレン共重合体(a1)の含有量が5質量%未満のプロピレン系重合体は、当該組成物から得られる成形体の耐衝撃性が悪くなる虞があり、一方、22質量%を超えるプロピレン系重合体は、組成物の粘度が著しく低下するため、得られる成形体は外観不良が発生する虞がある。
【0013】
プロピレン・エチレン共重合体(a1)の含有量が上記範囲を満たすプロピレン系重合体(A)は、当該組成物から得られる成形体の外観が良好でかつ面衝撃性に優れる。
【0014】
プロピレン系重合体(A)が、極限粘度[η]が上記範囲を満たすプロピレン・エチレン共重合体(a1)を含むことにより、得られる組成物の粘度が最適な範囲となりとなるので、均一なセル径を有し、外観が良好でかつ面衝撃性に優れる成形体を得ることができる。
【0015】
MFRが70g/10分未満のプロピレン系重合体(A)は、粘度が高いため樹脂充填時のせん断発熱が大きくなる。その結果ガス発生量が増加し、得られる成形体の外観が悪化する虞がある。一方、MFRが150g/10分を超えると粘度が低いため発泡性が悪くなり、均一なセルを有する成形体が得られない虞がある。MFRが上記範囲を満たすプロピレン系重合体(A)は均一なセル径を形成し、外観が良好でかつ面衝撃性に優れる成形体を得ることができる。
【0016】
〈プロピレン・エチレン共重合体(a1)〉
本発明に係るプロピレン系重合体(A)に含まれるプロピレン・エチレン共重合体(a1)は、通常、エチレンから導かれる構成単位を20~60モル%、好ましくは30~60モル%、より好ましくは35~55モル%の範囲〔但し、プロピレンから導かれる構造単位とエチレンから導かれる構成単位の合計量を100モル%とする。〕で含む。
【0017】
本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(a1)は、バイオマス由来モノマー(プロピレン、エチレン)を含んでいてもよい。重合体を構成するモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D-6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。
【0018】
本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(a1)がバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス重合温度、などの重合体製造条件が同等であれば、原料モノマーがバイオマス由来モノマーを含んでいても、14C同位体を10-12~10-14程度の割合で含む以外の分子構造は、化石燃料由来モノマーからなるプロピレン・エチレン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0019】
本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(a1)は、ケミカルリサイクル由来モノマー(プロピレン、エチレン)を含んでいてもよい。重合体を構成するモノマーがケミカルリサイクル由来モノマーのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来モノマーと化石燃料由来モノマーおよび/またはバイオマス由来モノマーを含んでもよい。ケミカルリサイクル由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るプロピレン・エチレン共重合体(a1)がケミカルリサイクル由来モノマーを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。原料モノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含んでいても、ケミカルリサイクル由来モノマーは廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でエチレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン・エチレン共重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0020】
〈プロピレン単独重合体(a2)〉
本発明に係るプロピレン系重合体(A)に含まれるプロピレン単独重合体(a2)は、プロピレン系重合体(A)のMFRが上記範囲を満たす限り、そのMFRは特に限定はされないが、通常、ASTM D-1238に準拠する温度230℃、2.16kg荷重で測定したMFRが50~1000g/10分、好ましくは、100~800g/10分、さらに好ましくは200~800g/10分の範囲にある。
【0021】
本発明に係るプロピレン単独重合体(a2)は、バイオマス由来プロピレンを含んでいてもよい。重合体を構成するプロピレンがバイオマス由来プロピレンのみでもよいし、バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの両方を含んでもよい。バイオマス由来プロピレンとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるプロピレンで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D-6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来プロピレンは、従来から知られている方法により得られる。
【0022】
本発明に係るプロピレン単独重合体(a2)がバイオマス由来プロピレンを含むことは環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス、重合温度、などの重合体製造条件が同等であれば、原料プロピレンがバイオマス由来プロピレンを含んでいても、14C同位体を10-12~10-14程度の割合で含む以外の分子構造は化石燃料由来プロピレンからなるプロピレン単独重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0023】
本発明に係るプロピレン単独重合体(a2)は、ケミカルリサイクル由来プロピレンを含んでいてもよい。重合体を構成するプロピレンがケミカルリサイクル由来プロピレンのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンおよび/またはバイオマス由来プロピレンを含んでもよい。ケミカルリサイクル由来プロピレンは、従来から知られている方法により得られる。
【0024】
本発明に係るプロピレン単独重合体(a2)がケミカルリサイクル由来プロピレンを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。原料モノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含んでいても、ケミカルリサイクル由来モノマーは廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でプロピレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン単独重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0025】
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、種々公知の製造方法、例えば、上記物性を満たすプロピレン単独重合体(a2)およびプロピレン・エチレン共重合体(a1)を重合した後、上記範囲で、プロピレン単独重合体(a2)とプロピレン・エチレン共重合体(a1)とを混合、あるいは溶融混練してプロピレン系重合体(A)を得る方法、あるいは、上記物性を満たすプロピレン単独重合体(a2)およびプロピレン・エチレン共重合体(a1)を一つの重合系あるいは二つ以上の重合系で重合する方法等を例示できる。
【0026】
また、本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、公知の製造方法で製造されたブロックコポリマーの名称で市販されている。
【0027】
<アルケニル芳香族化合物から導かれる単位を含有する共重合体(B)>
本発明のプロピレン系樹脂組成物に含まれる成分の一つであるアルケニル芳香族化合物から導かれる単位を含有する共重合体(B)〔以下、「共重合体(B)」と呼称する場合がある。〕は、ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが10~80g/10分、好ましくは11~75g/10分、より好ましくは12~73g/10分の範囲にある共重合体である。
【0028】
本発明に係る共重合体(B)は、好ましくは密度が0.88~0.98g/cm3の範囲にあり、また、好ましくは、オレフィン系共重合体もしくは共役ジエン重合体に対し、アルケニル芳香族化合物を重合、反応等により結合させる方法で製造されるものであり、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、前記ブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が水素添加されているブロック共重合体等が挙げられ、より好ましくは、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合が水素添加されているブロック共重合体であり、さらに好ましくは、ブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合の80%以上水素添加されているブロック重合体であり、更に好ましくはブロック共重合体の共役ジエン部分の二重結合の85%以上が水素添加されているブロック共重合体である。
【0029】
本発明に係る共重合体(B)としては、より具体的には、スチレン-エチレン-ブテン-スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン-ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレン系ゴム(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体又はこれらのゴム成分を水添したブロック共重合体等が挙げられる。中でも、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンゴム(SEBS)を使用することが、上記プロピレン系重合体(A)との相溶性が良好であるため好ましい。
【0030】
これら共重合体(B)の中でも、得られる射出発泡成形体などの成形体の耐衝撃性の観点からSEBSの構成成分比はスチレンブロックが19~29質量%、およびエチレン・ブテンブロックが71~81質量%〔但し、ブロックの合計量を100質量%とする。〕の範囲であることが好ましい。具体的にはスチレン-エチレン-ブテン-スチレン系ゴム(SEBS)(旭化成ケミカルズ製、商品名タフテックH1052(密度=890kg/m3、MFR(230℃)=13g/10分)などが好ましい。
【0031】
本発明に係る共重合体(B)の製造方法としては、例えば、オレフィン系共重合体もしくは共役ジエンゴムに対し、アルケニル芳香族化合物を重合、反応等により結合させる方法等が挙げられる。
【0032】
本発明に係るアルケニル芳香族化合物から導かれる単位を含有する共重合体(B)は、単独で、あるいは2種以上の異なる同様の共重合体を組み合わせて用いることができる。
【0033】
<エチレン系共重合体(C)>
本発明のプロピレン系樹脂組成物に含まれてもよい成分であるエチレン系共重合体(C)は、ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが20~40g/10分、好ましくは21~38g/10分、より好ましくは22~35g/10分の範囲にあるエチレンを主体とする共重合体である。
【0034】
本発明に係るエチレン系共重合体(C)は、好ましくは密度が0.85~0.98g/cm3、より好ましくは0.85~0.88g/cm3、さらに好ましくは0.86~0.87g/cm3の範囲にある。密度が低いエチレン系共重合体(C)ほど、得られる射出発泡成形体などの成形体の耐衝撃性が改良される。
【0035】
本発明に係るエチレン系共重合体(C)は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体で、一般に、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)と呼称されているエチレン系重合体、非晶性、あるいは低結晶性のエチレン・α‐オレフィン共重合体であり、エチレンを主体とする共重合体である。
【0036】
エチレンと共重合されるα-オレフィンは、好ましくは炭素数3~20のα-オレフィンであり、具体的には、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセンおよび12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。これらα-オレフィンの中でも、1-ブテンおよび1-オクテンが特に好ましい。これらα-オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0037】
本発明に係るエチレン系共重合体(C)は、単独で、あるいは2種以上の異なるエチレン系共重合体を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明に係るエチレン系共重合体(C)は、種々、公知の製造方法で製造し得る。
【0039】
《プロピレン系樹脂組成物》
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上記プロピレン系重合体(A)を50~90質量%、好ましくは60~90質量%、より好ましくは70~80質量%の範囲、上記アルケニル芳香族化合物から導かれる単位を含有する共重合体(B)を5~50質量%、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~30質量%の範囲、および上記エチレン系共重合体(C)を0~20質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは10~20質量%の範囲〔但し、(A)+(B)+(C)の合計量を100質量%とする。〕で含む組成物である。
【0040】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上記プロピレン系重合体(A)に加え、上記共重合体(B)を上記範囲で含むことにより、均一なセル径を有し、外観が良好でかつ面衝撃性に優れる成形体を得ることができる。
【0041】
本発明のプロピレン系樹脂組成物のASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが好ましくは40~120g/10分、より好ましくは40~100g/10分の範囲である。下限値以上では外観が良好である成形体を得ることができる。
【0042】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物が、エチレン系共重合体(C)を含んでも同様の効果を発現する。
【0043】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上記プロピレン系重合体(A)、上記共重合体(B)および上記エチレン系共重合体(C)に加え、下記、成分を含んでいてもよい。
【0044】
〈結晶核剤(D)〉
結晶核剤は、プロピレン系重合体(A)のα晶を優先的に形成させる造核剤であり、α晶核剤としては、リン酸エステル金属塩系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤、ロジン金属塩系造核剤、ソルビトール系造核剤、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、アミド系造核剤等が挙げられる。
【0045】
本発明のプロピレン系樹脂組成物が結晶核剤(D)を含む場合は、プロピレン系樹脂組成物の(A)+(B)+(C)の合計量100質量部に対して、0.5質量部以下、好ましくは0.4質量部以下である。
【0046】
〈発泡剤(E)〉
本発明のプロピレン系樹脂組成物に配合される発泡剤には特に制限はなく、目的とする発泡成形に利用できるものを選択して用いればよい。
【0047】
発泡剤としては、化学発泡剤及び物理発泡剤を用いることができる。
【0048】
化学発泡剤としては分解型発泡剤が、物理発泡剤としては溶剤型発泡剤及び気体状発泡剤が挙げられる。
【0049】
1種の発泡剤を単独で、2種以上の発泡剤を組み合わせて用いることができる。
【0050】
分解型発泡剤の具体例としては、次の化合物を挙げることができる。(1)無機系発泡剤:重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム。(2)有機系発泡剤:(a)N-ニトロソ化合物:N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン。(b)アゾ化合物:アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート。(c)スルフォニルヒドラジド化合物:ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン-3,3'-ジスルフォニルヒドラジド。(d)アジド化合物:カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルフォニルアジド、p-トルエンスルフォニルアジド。
【0051】
分解型発泡剤は、分解による気体の発生を誘導する、クエン酸等の有機酸やクエン酸ナトリウム等の有機酸金属塩などの発泡助剤と併用してもよい。
【0052】
溶剤型発泡剤としては、各種の液化ガスを用いることができ、具体例としては、プロパン、ブタン、ネオペンタン、ヘプタン、イソヘキサン、ヘキサン、イソヘプタン、ヘプタン等の低沸点脂肪族炭化水素や、フロンガスで代表される低沸点のフッ素含有炭化水素を挙げることができる。
【0053】
気体状発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アスタチンなどの不活性ガスが挙げられる。気体状発泡剤は、超臨界状態で用いてもよい。
【0054】
発泡剤の配合割合は、プロピレン系樹脂組成物の(A)+(B)+(C)の合計量100質量部に対して、0.1~10質量部の範囲にあり、0.1~5質量部の範囲にあることが好ましく、0.1~3.0質量部の範囲にあることがより好ましい。
【0055】
〈その他の成分〉
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、その目的を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックスを挙げることができる。これらの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
《プロピレン系樹脂組成物の製造方法》
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、種々公知の製造方法、例えば、上記プロピレン系重合体(A)、上記共重合体(B)および上記エチレン系共重合体(C)、並びに必要に応じてと結晶核剤(D)、発泡剤(E)などを所定の量で、ドライブレンドや押出機内での溶融混練等の通常の方法で混合して製造できる。
【0057】
《射出発泡成形体の製造方法》
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いた射出発泡成形体の製造の一形態について以下に説明する。
【0058】
射出発泡成形体の製造方法の一形態は、射出発泡成形用の金型内に、プロピレン系樹脂組成物を充填する工程と、前記金型内のプロピレン系樹脂組成物を発泡及び固化させて射出発泡成形体を得る工程と、を有する。
【0059】
射出発泡成形用の金型、成形用の金型内へのプロピレン系樹脂組成物の充填方法、並びに発泡成形条件は、目的とする発泡成形体の形状や物性に応じて選択すればよい。
【0060】
成形用の金型内へのプロピレン系樹脂組成物の充填を射出によって行う射出成形法を用いることで、射出発泡成形体を得ることができる。
【0061】
発泡剤を、プロピレン系樹脂組成物の発泡剤以外の成分と混合してから成形用の金型内に導入してもよいし、成形用の型内への樹脂材料の導入路中に、例えば射出成形する際のシリンダーまたは、シリンダーからキャビティへの流路中で樹脂材料に注入混合してもよい。
【0062】
厚みが1.0~5.0mm程度の薄肉状部分を有する射出発泡成形体の形成には、コアバック成形法を好適に用いることができる。
【0063】
コアバック成形法に用いる成形金型の一形態は、固定型と可動型とを有する。これらの型はプロピレン系樹脂組成物の射出充填時には型締状態にあることが好ましい。また、金型内のプロピレン系樹脂組成物が射出充填されるキャビティの容積は、可動型を後退(コアバック)させてキャビティを拡開させることにより増大させることができる。射出充填完了後の可動型を作動させるタイミングは、目的とする発泡率、発泡形状、射出発泡成形体の各種の物性等に応じて決定することができる。
【0064】
コアバック時の可動型の移動速度は、射出発泡成形体の厚み、プロピレン系樹脂組成物の組成、発泡剤の種類及び添加量、金型温度、樹脂温度等の条件に応じて選択することができる。
【0065】
射出するプロピレン系樹脂組成物の温度および金型温度は、成形体の厚み、プロピレン系樹脂組成物の組成、発泡剤の種類及び添加量などにより選択することができる。たとえば、射出する樹脂材料の温度は、170~250℃、好ましくは180~220℃の範囲とすることができる。また固定型および可動型の金型温度は、10~100℃、好ましくは30~80℃の範囲とすることができる。射出圧力は、10~250MPa、好ましくは12~200MPaの範囲から選択することができる。良好な発泡性を得る上で、金型内に射出充填されるプロピレン系樹脂組成物の温度は、金型温度よりも高いことが好ましい。
【0066】
本発明にかかる射出発泡成形体は、自動車内外装用部品、ダンボールなどの代替え品、電器製品、建材等の各種用途に好適に用いることができる。かかる射出発泡成形体は、自動車内装用部品の用途に特に好適に用いることができる。自動車内装用部品としてはドアトリム、リアサイドトリム、ラゲージトリム、ルーフトリム、バックドアトリムあるいはデッキサイドトリム等に好適であるといえる。
【実施例
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
実施例および比較例で用いたプロピレン系樹脂組成物に含まれる重合体として、以下の重合体等を用いた。
(1)プロピレン系重合体(A)
(1-1)プロピレン系重合体(A-1)
プロピレン系重合体(A)として、ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが75g/10分、プロピレン・エチレン共重合体(a1-1)〔室温n-デカン可溶部〕:極限粘度[η]=7.0dl/g、含有量=10.4質量%、プロピレン単独重合体(a2-1)〔室温n-デカン不溶部〕:MFR=198g/10分、含有量=89.6質量%、のプロピレン系重合体(A-1)を用いた。
(1-2)プロピレン系重合体(A-2)
プロピレン系重合体(A)として、ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが90g/10分、プロピレン・エチレン共重合体(a1-2)〔室温n-デカン可溶部〕:極限粘度[η]=7.0dl/g、含有量=11.0質量%、プロピレン単独重合体(a2-2)〔室温n-デカン不溶部〕:MFR=382g/10分、含有量=89.0質量%、のプロピレン系重合体(A-2)を用いた。
(2)アルケニル芳香族化合物から導かれる単位を含有する共重合体
(2-1)共重合体(B-1)
共重合体(B)として、MFR=13g/10分、密度=0.89g/cm3、スチレンブロック/エチレン・ブテンブロック=20/80(質量比)のSEBS〔旭化成社製 商品名 タフテックH-1052〕の共重合体(B-1)を用いた。
(2-2)共重合体(B-2)
共重合体(B)として、MFR=70g/10分(230℃測定)、スチレンブロック/エチレン・プロピレンブロック=30/70(質量比)のSEPS〔クラレ製 商品名 セプトン2002〕の共重合体(B-2)を用いた。
(2-3)共重合体(H-1)
共重合体として、MFR=7g/10分(230℃測定)、スチレンブロック/エチレン・プロピレンブロック=13/87(質量比)のSEPS〔クラレ製 商品名 セプトン2063〕の共重合体(H-1)を用いた。
(3)エチレン系共重合体(C)
(3-1)エチレン系共重合体(C-1)
エチレン系共重合体(C)として、密度=0.864g/cm3、MFR=26g/10分、エチレン含有量=80モル%のエチレン・1-オクテン共重合体〔ダウ・ケミカル社製、ENGAGE(登録商標)8137〕を、エチレン系共重合体(C-1)として用いた。
(4)プロピレン系重合体(F)
(4-1)プロピレン系重合体(F-1)
プロピレン系重合体(F)として、ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが66g/10分、プロピレン・エチレン共重合体(f1-1)〔室温n-デカン可溶部〕:極限粘度[η]=7.0dl/g、含有量=10.0質量%、プロピレン単独重合体(f2-1)〔室温n-デカン不溶部〕:MFR=166g/10分、含有量=90.0質量%、のプロピレン系重合体(F-1)を用いた。
(4-2)プロピレン系重合体(F-2)
プロピレン系重合体(F)として、ASTM D-1238に準拠して温度230℃で測定したMFRが60g/10分、プロピレン・エチレン共重合体(f1-2)〔室温n-デカン可溶部〕:極限粘度[η]=2.7dl/g、含有量=23.0質量%、プロピレン単独重合体(f2-2)〔室温n-デカン不溶部〕:MFR=220g/10分、含有量=77.0質量%、のプロピレン系重合体(F-2)を用いた。
(5)エチレン系共重合体(G)
(5-1)エチレン系共重合体(G-1)
エチレン系共重合体(G)として、密度=0.87g/cm3、MFR=60g/10分、のエチレン・1-オクテン共重合体〔ダウ・ケミカル社製、ENGAGE(登録商標)8407〕を、エチレン系共重合体(G-1)として用いた。
【0069】
実施例および比較例で用いたプロピレン系樹脂組成物に含まれる配合剤は以下の配合剤を用いた。
(6)結晶核剤(D)
リン酸エステル金属塩系造核剤〔商品名 アデカスタブNA-11(ADEKA社製)〕を結晶核剤(D-1)として用いた。
(7)発泡剤(E)
重炭酸ナトリウム系発泡剤〔商品名 ポリスレンEE65C(永和化成社製)〕を発泡剤(E-1)として用いた。
〔射出発泡成形方法〕
実施例および比較例で得たプロピレン系樹脂組成物の射出発泡成形体は、以下の方法で成形した。
【0070】
射出成形機:日本製鋼所社製 J350ADS-460H(型締め力350t)
金型:
キャビティサイズ:縦:400mm、横:200mm、厚さ:1.5mm
ゲート:ダイレクトゲート(成型品中心に設置)
射出シリンダー設定温度:200℃
金型表面温度:40℃
射出速度:120mm/s
発泡成形条件:
発泡工程終了後の成形型クリアランス:3.0mm
コアバック時間:0.2s
組成物充填後の発泡開始遅延時間:0s
射出時金型キャビティクリアランス(L0):1.5mm
射出発泡成形体の物性は以下の方法で測定した。
〔パンクチャ―エネルギー値〕
ISO 6603-2に準拠して、射出発泡成形体から切り出した100mm×100mmの試験片を用い、測定温度:23℃、ストライカ直径:20mm、支持台内径:40mm、衝撃速度:4.4mm/sの条件でパンクチャーエネルギー値を測定した。
【0071】
〇:パンクチャーエネルギー値が8.0J以上。
【0072】
×:パンクチャーエネルギー値が8.0J未満。
〔セル径〕
ゲートから100mmの位置で、かつ射出発泡成形体の中心の流れ方向と垂直の断面に、カミソリ刃にて薄く切削し観察サンプルを作成した。
【0073】
観察サンプルをマイクロスコープにて観察し明暗による二値化を行い、セルの周囲長さ平均を測定した。大きい程セル径が粗いことを示す。セル径が小さく均一である方が発泡体の物性は優れる。セルサイズについて次のように判定した。
【0074】
セル周囲長さの平均値が190μm未満を良、
【0075】
セル周囲長さの平均値が190μm以上を不良とした。
〔射出発泡成形体の外観〕
射出発泡成形体の外観を目視で観察し、アバタおよびスワルマークの有無を目視で判定し、外観評価を行った。アバタおよびスワルマークいずれも目視で確認できれば×、確認できなければ〇とした。
【0076】
〔実施例1〕
上記プロピレン系重合体(A-1)を76質量%、および上記共重合体(B-1)を24質量%混合し、造粒して発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0077】
次いで、得られた組成物:100質量部に対して、上記発泡剤(E-1):3質量部を配合(添加)し、上記記載の方法で射出発泡成形して射出発泡成形体を得た。
【0078】
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0079】
〔実施例2〕
実施例1で用いたプロピレン系重合体(A-1)に替えて、上記プロピレン系重合体(A-2)を74質量%、および共重合体(B-1)を26質量%、結晶核剤(D-1)を(A)+(B)の合計量100質量部に対して0.2質量部とする以外は、実施例1と同様に行い射出発泡成形体を得た。
【0080】
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0081】
〔実施例3〕
実施例1で用いた発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(A-1)を76質量%、共重合体(B-1)を6質量%、およびエチレン系共重合体(C-1)を18質量%とする以外は、実施例1と同様に行い射出発泡成形体を得た。
【0082】
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0083】
〔実施例4〕
実施例1で用いた発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(A-1)を76質量%、共重合体(B-2)を24質量%とする以外は、実施例1と同様に行い射出発泡成形体を得た。
【0084】
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0085】
〔比較例1〕
実施例1で用いた発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(A-1)を76質量%、および、エチレン系共重合体(G-1)を24質量%とする以外は、実施例1と同様に行い射出発泡成形体を得た。
【0086】
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0087】
〔比較例2〕
実施例1で用いた発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(F-1)を76質量%、および、共重合体(B-1)を24質量%とする以外は、実施例1と同様に行い射出発泡成形体を得た。
【0088】
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0089】
〔比較例3〕
実施例1で用いた発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に替えて、プロピレン系重合体(F-2)を90質量%、および、共重合体(B-1)を10質量%とする以外は、実施例1と同様に行い射出発泡成形体を得た。
【0090】
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0091】
〔比較例4〕
実施例1で用いた発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物に替えてプロピレン系重合体(A-1)を76質量%、共重合体(H-1)を24質量%とする以外は、実施例1と同様に行い射出発泡成形体を得た。
【0092】
得られた射出発泡成形体を上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
表1に示すように、実施例1~3で得られた射出発泡成形体は、パンクチャーエネルギー値が8.0J以上で、しかも、セル周囲長さの平均値が190μm未満であり、外観も綺麗である。
【0094】
これに対して、比較例1で得られた射出発泡成形体は、共重合体(B-1)を含まないので、パンクチャーエネルギー値が7.4Jと低く、且つエチレン系共重合体(G-1)のMFRが高いためか、セル径が粗大である。
【0095】
比較例2で得られた射出発泡成形体は、プロピレン系重合体のMFRが小さく流動性に劣るためか、せん断発熱によるガス発生量が増加し、外観が悪化している。
【0096】
比較例3で得られた射出発泡成形体は、プロピレン系重合体のMFRが小さく流動性に劣り、しかも、含まれるプロピレン・エチレン共重合体の極限粘度[η]が低いためか、せん断発熱によるガス発生量が増加し、セル径が粗大である。
【0097】
比較例3で得られた射出発泡成形体は、プロピレン系重合体のMFRが小さく流動性に劣り、せん断発熱によるガス発生量が増加し外観が悪い。しかも、含まれるプロピレン・エチレン共重合体の極限粘度[η]が低いためか、セル径が粗大である。
【0098】
また、比較例4で得られた射出発泡成形体は、樹脂のMFRが小さく流動性に劣るためか、せん断発熱によるガス発生量が増加し、外観が悪化している。また、共重合体(H-1)はMFR=7g/10分であり流動性が劣るためパンクチャーエネルギー値が7.9Jと低い。
図1