(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】エレベータシステムおよびエレベータの運転方法
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20250210BHJP
【FI】
B66B1/14 M
(21)【出願番号】P 2024001703
(22)【出願日】2024-01-10
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】瀬木 伸吾
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-194150(JP,A)
【文献】実開平01-111676(JP,U)
【文献】特開2005-132555(JP,A)
【文献】特開平11-035242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行先階が固定された2階床間を移動するエレベータシステムであって、
エレベータの各乗場に設置され、
人感センサ、乗場荷重センサおよび乗場カメラの少なくとも何れかで構成されてエレベータの利用者を検出する乗場利用者検出部と、
かご内に設置され、
人感センサ、かご荷重センサ、光電管センサおよびかご内カメラの少なくとも何れかで構成されてかご内の利用者を検出するかご内利用者検出部と、
前記乗場利用者検出部により乗場のエレベータ利用者が検出された場合には、乗場呼び
を登録し、乗場呼びに応答してエレベータが乗場階に到着し開扉するとかご呼びを登録する呼び登録部と、
前記乗場呼びに応答したエレベータが乗場階に到着し開扉した後、前記かご内利用者検出部によりかご内の利用者が検出されない場合には、前記かご呼びの登録をキャンセルする呼び登録キャンセル部と、を備え、
前記乗場利用者検出部は、少なくとも乗場の複数個所に設置され、
前記呼び登録部は、複数の乗場利用者検出部の検出信号の入力順に基づき、利用者の乗車または降車を判断して乗場呼びおよびかご呼びを登録するか否かを決定する、エレベータシステム。
【請求項2】
前記呼び登録部は、前記乗場利用者検出部からの検出信号の入力順が、かごドアに近い方の乗場利用者検出部の検出信号がかごドアから遠い方よりも早く入力された場合には、かご内の利用者が降車するものとみなして乗場呼びは登録せず、かごドアから遠い方の検出信号が先に入力された場合には乗場呼びを登録する、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
エレベータの各乗場
の複数個所に設置され、
人感センサ、乗場荷重センサおよび乗場カメラの少なくとも何れかで構成されてエレベータの利用者を検出する乗場利用者検出部と、かご内に設置され、
人感センサ、かご荷重センサ、光電管センサおよびかご内カメラの少なくとも何れかで構成されてかご内の利用者を検出するかご内利用者検出部とを備え、行先階が固定された2階床間を移動するエレベータの運転方法であって、
前記乗場利用者検出部により乗場のエレベータ利用者が検出された場合には、呼び登録部が乗場呼び
を登録し、乗場呼びに応答してエレベータが乗場階に到着し開扉するとかご呼びを登録し、
前記乗場呼びに応答したエレベータが乗場階に到着し開扉した後、前記かご内利用者検出部によりかご内の利用者が検出された場合には、行先階へ移動し、かご内の利用者が検出されない場合には、前記かご呼びの登録をキャンセルして待機
し、
前記かご内利用者検出部により、かご内の利用者が検出された前記エレベータが行先階へ到着して戸開後に、前記乗場利用者検出部により利用者が検出された場合には、かご呼びを登録し、戸開後、乗場利用者検出部により利用者が検出され、かつ前記かご内利用者検出部によりかご内利用者が検出されない場合には、利用者が降車したと判断してかご呼びの登録をキャンセルし、
前記呼び登録部は、複数の乗場利用者検出部の検出信号の入力順が、かごドアに近い方の乗場利用者検出部の検出信号がかごドアから遠い方よりも早く入力された場合には、かご内の利用者が降車するものとみなして乗場呼びは登録せず、かごドアから遠い方の検出信号が先に入力された場合には乗場呼びを登録する、エレベータの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムおよびエレベータの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2階床間を移動するエレベータで、一方の階で乗場呼びを行うと他方の階のかご呼び(「行先階呼び」とも称する)が自動登録される技術がある。また、乗場ボタンに人を検知するセンサを設置し、乗場呼び後に乗場に人がいるかをセンサで判断し、人がいない時は乗場呼びをキャンセルする技術もある。さらに、乗場の所定区域内に車椅子利用者が入った後、上呼びなら前進、下呼びなら後進をするようアナウンスしその動作をカメラで検知して乗場呼びを作る技術も確立されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-113179号公報
【文献】特開2015-113205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例では、乗場センサで乗客が検知され、乗場呼びとかご呼びが自動登録された後、乗客がかごに乗り、自動登録された目的階に移動すると、かご移動後、降車した際、乗場センサが降車した乗客を検知する処理を実行する。
【0005】
ところが、乗場センサは降車した乗客を新規乗客と判断し、他階床へのかご呼びを生成するので、かごには乗客がいないまま、他階床へ移動してしまい、無駄な走行動作が発生してしまうという不具合がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、かご内に利用者がいない場合には行先階の自動登録をキャンセルでき、無駄なエレベータの移動を抑制できるエレベータシステムおよびエレベータの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための実施形態は、行先階が固定された2階床間を移動するエレベータシステムであって、乗場利用者検出部と、かご内利用者検出部と、呼び登録部と、呼び登録キャンセル部とを備える。
【0008】
乗場利用者検出部は、エレベータの各乗場に設置され、エレベータの利用者を検出する。かご内利用者検出部は、かご内に設置され、かご内の利用者を検出する。呼び登録部は、乗場利用者検出部により乗場のエレベータ利用者が検出された場合には、乗場呼びおよびかご呼びを登録する。呼び登録キャンセル部は、乗場呼びに応答したエレベータが乗場階に到着し開扉した後、かご内利用者検出部によりかご内の利用者が検出されない場合には、かご呼びの登録をキャンセルする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1、第2実施形態のエレベータシステムの全体構成を示す説明図。
【
図2】第1実施形態のエレベータシステムの制御構成を示すブロック図。
【
図3A】第1実施形態のエレベータシステムの処理手順を示すフローチャート。
【
図3B】第1実施形態のエレベータシステムの処理手順を示すフローチャート。
【
図4】第1実施形態のエレベータシステムの動作を示す説明図。
【
図5】第1実施形態のエレベータシステムの動作を示す説明図。
【
図6】第2実施形態のエレベータシステムの制御構成を示すブロック図。
【
図7】第2実施形態のエレベータシステムの動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は実施形態のエレベータシステムの全体構成を示している。
【0011】
図1に示すように、エレベータシステム1A(1B)は、建屋2の1階と2階との間で昇降路3を移動するかご4を備えたエレベータを想定している。1階乗場および2階乗場にはそれぞれ乗場ボタン5が設置されており、また、かご4内には行先階ボタン6が設置されている。また、各階の乗場には、利用者7を検出する乗場利用者検出部10としての乗場人感センサ(乗場センサ)11、乗場荷重センサ12および乗場カメラ13の少なくとも何れかが設置されている。また、かご4には、かご内の利用者7を検出するかご内利用者検出部20としてのかご内人感センサ(かご内センサ)21、かご荷重センサ22、光電管センサ23およびかご内カメラ24の少なくとも何れかが設置されている。光電管センサ23は、かご内の例えば幅木の四方に設置され、かご内の利用者7を検知する。
【0012】
<第1実施形態>
図2は第1実施形態のエレベータシステム1Aの制御構成を示している。
【0013】
エレベータシステム1Aの制御中枢となるエレベータ制御装置30Aは、乗場利用者検出信号入力部31と、かご内利用者検出信号入力部32と、呼び登録部33と、呼び登録キャンセル部34と、走行制御部35とを備える。
【0014】
乗場利用者検出信号入力部31は、乗場利用者検出部10としての乗場人感センサ(乗場センサ)11、乗場荷重センサ12および乗場カメラ13の少なくとも何れかで乗場利用者7が検出された場合、その検出信号を入力する。
【0015】
かご内利用者検出信号入力部32は、かご内利用者検出部20としてのかご内人感センサ(かご内センサ)21、かご荷重センサ22、光電管センサ23およびかご内カメラ24の少なくとも何れかによりかご内利用者7が検出された場合、その検出信号を入力する。
【0016】
呼び登録部33は、乗場利用者検出部10により乗場のエレベータ利用者7が検出された場合には、乗場呼びおよびかご呼び(行先階呼び)を登録する。
【0017】
呼び登録キャンセル部34は、乗場呼びに応答したエレベータが乗場階に到着し開扉した後、かご内利用者検出部20によりかご内の利用者7が検出されない場合には、かご呼びの登録をキャンセルする。
【0018】
走行制御部35は、1階と2階との間を移動するエレベータの走行を制御する。
【0019】
図3A、
図3Bは、第1実施形態のエレベータシステムの処理手順を示すフローチャートである。
図3A、
図3Bにおいて、「乗場センサ」は「乗場人感センサ11」を、「かご内センサ」は「かご内人感センサ21」をそれぞれ指す。また、同図に示す例は、1階と2階との間を利用者7が移動することを想定している。
【0020】
乗場利用者検出信号入力部31は、1階の乗場人感センサ11が利用者7を検知したか否かを判定する(ステップS1)。利用者7が検知されると、呼び登録部33により乗場呼びが自動登録される(ステップS1YES,S2)。そして、乗場呼びに応答してかご4が乗場呼び登録階(出発階)である1階に到着する(ステップS3,S4)。その後、かごドアが戸開して、かご呼びが自動登録される(ステップS5,S6)。
【0021】
次いで、かご内人感センサ21が利用者7を検知したか否かが判定される(ステップS7)。利用者7が検知されない場合は、かご呼びはキャンセルされ、ステップS1に戻る(ステップS8)。利用者7がかご4に乗り込んで、かご内人感センサ21が利用者7を検知すると戸閉が開始される(ステップS9)。戸閉開始後、乗場人感センサ11が利用者7を検知すると(ステップS10YES)、乗場に未だ利用者7が居るものとしてかごドアを戸開し、利用者7を乗せる(ステップS11)。
【0022】
利用者7が乗車して戸閉完了すると、目的階(行先階)へ移動を開始する(ステップS12,S13)。目的階に到着し戸開して利用者7が降車する(ステップS14,S15,S16)。目的階の乗場人感センサ11が降車した利用者7を検知すると、出発階である1階を行先階とするかご呼びを自動登録する(ステップS17,S18)。
【0023】
かご呼びが自動登録された後、かご内人感センサ21により利用者7が検知されたか否かが判定される。(ステップS19)。利用者7が検知された場合には(ステップS19YES)、戸閉し、行先階である出発階へ移動し、到着すると一連の処理は終了する(ステップS20,S21,S22)。一方、利用者が検出されない場合には(ステップS19NO)、かご呼びはキャンセルされ、戸閉して待機状態となる(ステップS23,S24)。
【0024】
第1実施形態の動作を
図4、
図5を用いて具体的に説明する。
図4、
図5の例では、2階を出発階として1階へ移動する場合を例としている。
【0025】
図4(a)に示すように、2階乗場の天井に設置された乗場人感センサ11が利用者7を感知すると、乗場ボタン5が点灯し、エレベータが到着し、開扉する。そのとき、行先階登録が自動登録され、かご4の行先階ボタン6が点灯する。利用者7はかご4内に乗り込んで1階に移動する。そして、
図4(b)に示すように、1階に到着後、かごドアが開き、利用者7は降車する。かご内の利用者7が降車すると、降車した利用者7を乗場人感センサ11が感知するので、無乗車状態でもかご呼び(行先階呼び)が自動登録される。しかし、降車時に乗場人感センサ11が利用者を感知した際、かご内人感センサ21が利用者7を感知していないときには、2階のかご呼びはキャンセルされる。
【0026】
また、
図5に示すように、乗場人感センサ11が乗場の利用者7を感知すると、乗場ボタン5が点灯し乗場呼びが登録される。エレベータが到着し、開扉すると、行先階登録が自動登録されかご4の行先階ボタンが点灯する。しかし、戸閉後、利用者7がかご4内に乗車していない場合には、かご呼びは自動キャンセルされる。
【0027】
このように、第1実施形態によれば、乗場人感センサ11が利用者7を感知すると、乗場呼びおよびかご呼びを自動登録するが、かご4に利用者が乗車しないことが確認されると、かご呼びがキャンセルされるようにした。このため、利用者7が居ないまま、かご4が移動するといった無駄な走行を抑制することが可能になる。
【0028】
<第2実施形態>
第2実施形態のエレベータシステム1Bは乗場利用者検出部10として、第1乗場利用者検出部(第1乗場人感センサ)14と、第2乗場利用者検出部(第2乗場人感センサ)15の2つの乗場センサを備えている。また、エレベータ制御装置30Bは、第1乗場利用者検出部(第1乗場人感センサ)14からの乗場利用者検出信号を入力する第1検出信号入力部36と、第2乗場利用者検出部(第2乗場人感センサ)15からの乗場利用者検出信号を入力する第2検出信号入力部37とを備える。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0029】
具体的に第2実施形態では、
図7に示すように、かご4から遠い位置の乗場天井に第1乗場人感センサ14が設置され、第1乗場人感センサ14よりもかご4に近い側に第2乗場人感センサ15が設置されている。乗場に居る利用者7がエレベータを利用しようとして乗場に来ると、第1乗場人感センサ14→第2乗場人感センサ15の順で乗場利用者検出信号が出力される。第1検出信号入力部36および第2検出信号入力部37もこの順番で乗場利用者検出信号を入力する。これにより、呼び登録部33は、乗場呼びとかご呼びを自動登録する。
【0030】
一方、かご内に居る利用者7が行先階に到着して開扉後、降車する際には、第2乗場人感センサ15→第1乗場人感センサ14の順で乗場利用者検出信号が出力される。第2検出信号入力部37および第1検出信号入力部36もこの順番で乗場利用者検出信号を入力する。これにより、呼び登録部33は、利用者7の降車動作と判断して乗場呼びもかご呼びを登録することはない。
【0031】
このように第2実施形態によれば、利用者7の行動が乗車か降車かを判断して呼びを登録するか否かを判断しているので、利用者7が居ないまま、かご4が移動するといった無駄な走行を抑制することが可能になる。
【0032】
以上の各実施形態では、利用者検出として乗場人感センサ11、かご内人感センサ21を用いたがこれに限られない。乗場利用者検出部10としては、乗場人感センサ(乗場センサ)11の他に、乗場荷重センサ12および乗場カメラ13の少なくとも何れか、またはそれらの組合せであってもよい。かご内利用者検出部20としては、かご内人感センサ(かご内センサ)21の他に、かご荷重センサ22、光電管センサ23およびかご内カメラ24の少なくとも何れか、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0033】
また、各実施形態では、1階と2階との間を移動するエレベータを想定したが、本発明はこれに限られず、特定階と特定階との間を固定して移動するエレベータの全てに適用することができる。
【0034】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1A,1B…エレベータシステム、2…建屋、3…昇降路、4…かご、5…乗場ボタン、6…行先階ボタン、7…利用者、10…乗場利用者検出部、11…乗場人感センサ(乗場センサ)、12…乗場荷重センサ、13…乗場カメラ、14…第1乗場利用者検出部(第1乗場人感センサ)、15…第2乗場利用者検出部(第2乗場人感センサ)、20…かご内利用者検出部、21…かご内人感センサ(かご内センサ)、22…かご荷重センサ、23…光電管センサ、24…かご内カメラ、30A,30B…エレベータ制御装置、31…乗場利用者検出信号入力部、32…かご内利用者検出信号入力部、33…呼び登録部、34…呼び登録キャンセル部、35…走行制御部、36…第1検出信号入力部、37…第2検出信号入力部
【要約】
【課題】かご内に利用者がいない場合には行先階の自動登録をキャンセルでき、無駄なエレベータの移動を抑制できるようにする。
【解決手段】行先階が固定された2階床間を移動するエレベータシステムであって、乗場利用者検出部と、かご内利用者検出部と、呼び登録部と、呼び登録キャンセル部とを備える。乗場利用者検出部は、エレベータの各乗場に設置され、エレベータの利用者を検出する。かご内利用者検出部は、かご内に設置され、かご内の利用者を検出する。呼び登録部は、乗場利用者検出部により乗場のエレベータ利用者が検出された場合には、乗場呼びおよびかご呼びを登録する。呼び登録キャンセル部は、乗場呼びに応答したエレベータが乗場階に到着し開扉した後、かご内利用者検出部によりかご内の利用者が検出されない場合には、かご呼びの登録をキャンセルする。
【選択図】
図2