(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】熱伝導体、ヒートスプレッダおよび放熱構造体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20250210BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2024053895
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】行▲徳▼ 聡人
(72)【発明者】
【氏名】澤村 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】馬場 健吾
(72)【発明者】
【氏名】五十君 智
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層に並べられた複数のダイヤモンドと、前記ダイヤモンドを固定する金属とを含むダイヤモンド含有金属層を有する熱伝導体であって、
前記ダイヤモンドが、八面体以上の多面体であり、かつ、隣接する前記ダイヤモンド同士が面接触しており、
前記ダイヤモンドの前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部が、頂点または稜線となるように、前記ダイヤモンドが配置されている、熱伝導体。
【請求項2】
前記ダイヤモンド含有金属層における前記ダイヤモンドの体積割合が50%以上である、請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項3】
前記ダイヤモンドが、切頭八面体または六・八面体である、請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項4】
平面部を有する熱伝導性部材と、
前記平面部の少なくとも一方の面側に配置された前記ダイヤモンド含有金属層とを有する、請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の熱伝導体からなる、ヒートスプレッダ。
【請求項6】
熱源体の上に配置され、熱的に接合される、請求項5に記載のヒートスプレッダと、
前記ヒートスプレッダの上に配置され、熱的に接合された、ヒートシンクとを備える、放熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導体およびヒートスプレッダに関するものである。また、前記ヒートスプレッダを備えた放熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートシンク、ヒートスプレッダの性能を向上させるために熱伝導性に優れたダイヤモンドを使用することが知られている。例えば、特許文献1には、絶縁体層と、該絶縁体層の両側に配置された高熱伝導体層とを備え、前記絶縁体層が、接合層と、前記高熱伝導体層に突出されている絶縁性高熱伝導硬質粒子とを有する絶縁伝熱構造体において、前記接合層の面内方向の一方向で前記絶縁性高熱伝導硬質粒子を等間隔に複数配置した粒子群が、前記面内方向の前記一方向は異なる方向に等間隔で複数配置されていることを特徴とする絶縁伝熱構造体が開示されており、前記絶縁性高熱伝導硬質粒子の一つとして、ダイヤモンドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱源とヒートシンクの間にダイヤモンドが配置された層を備える構造とすることにより、熱源からのヒートシンクへの熱流路(縦ルート)の改善はなされる。しかし、特許文献1の構造体は、ダイヤモンドが間隔を空けて配置されており、ダイヤモンド間(横ルート)の熱移動がないため、十分にダイヤモンドの伝熱性能を使い切れているとはいえなかった。
【0005】
かかる状況下、本発明は、隣接するダイヤモンド同士の熱流路を形成できる、熱伝導体およびヒートスプレッダを提供することを目的とする。また、前記ヒートスプレッダを備えた放熱構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱伝導体は、1層に並べられた複数のダイヤモンドと、前記ダイヤモンドを固定する金属とを含むダイヤモンド含有金属層を有する熱伝導体であって、前記ダイヤモンドが、八面体以上の多面体であり、かつ、隣接する前記ダイヤモンド同士が面接触しており、前記ダイヤモンドの前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部が、頂点または稜線となるように、前記ダイヤモンドが配置されている。
【0007】
このように、八面体以上のダイヤモンドを用い、ダイヤモンドの頂点または稜線(以下、「頂点または稜線」を「エッジ部」と称する。)がダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部に来るように、ダイヤモンドを1層に配置させることで、薄くできるとともに、隣接するダイヤモンドが面で向かい合った構造となりやすく、密によるならい動作もあり、隣接するダイヤモンド同士が面接触する面積が増大する。その結果、熱源体からの熱流路(縦ルート)に加えて、ダイヤモンド間の熱流路(横ルート)を形成することで、より広く熱を拡散することができ、ダイヤモンドの伝熱性能を十分に発揮することができる。
【0008】
さらに、このような構成とすることで、ダイヤモンドの形状や向きの揃い具合によらず、隣り合うダイヤモンド同士が面接触しやすいので、使用するダイヤモンドの形状の自由度を高めることができ、生産自由度を高めることができる。
【0009】
なお、「頂点」は、ダイヤモンドの3本以上の稜線(辺)が共有している点であり、「稜線」は、ダイヤモンドの頂点と頂点を結ぶ線である。また、本願において、「端部」とは、厚さ方向において、中央から最も離れた部分を意味する。例えば、「ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部」とは、ダイヤモンド含有金属層の厚さ方向において、ダイヤモンドの中の、中央からダイヤモンド含有金属層の一方の面の方向に最も離れた部分を意味し、ダイヤモンドの頂点が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部は頂点であり、ダイヤモンドの稜線が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部は稜線であり、ダイヤモンドの面が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部は面である。
【0010】
また、前記ダイヤモンド含有金属層における前記ダイヤモンドの体積割合が50%以上であることが好ましい。このようにダイヤモンドの充填率を高めることで、隣接するダイヤモンド同士がさらに接触しやすくなり、より多くのダイヤモンド間の熱流路(横ルート)を形成できるため、熱伝導性をより高めることができる。
【0011】
また、本発明の熱電体は、前記ダイヤモンドが、切頭八面体または六・八面体であることが好ましい。
このような形状のダイヤモンドを用いることで、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部がエッジ部となるように配置させるときに、より高密度にダイヤモンドを並べることができ、ダイヤモンド間の熱流路をさらに増大させることができる。
【0012】
また、本発明の熱伝導体は、平面部を有する熱伝導性部材と、前記平面部の少なくとも一方の面側に配置された前記ダイヤモンド含有金属層とを有するものとすることができる。このように熱伝導性部材と組み合わせることで、熱伝導体の形状の設計の自由度を高めることができる。
【0013】
本発明の熱伝導体は、ヒートスプレッダとして利用することができる。すなわち、本発明のヒートスプレッダは、本発明の熱伝導体からなるものである。
【0014】
また、本発明のヒートスプレッダは、放熱構造体に組み込むことができる。本発明の放熱構造体は、熱源体の上に配置され、熱的に接続される、本発明のヒートスプレッダと、前記ヒートスプレッダの上に配置され、熱的に接続された、ヒートシンクとを備える、放熱構造体である。
このように本発明のヒートスプレッダを組み込むことで、熱源体からヒートスプレッダに流入した熱を、効率的にヒートスプレッダからヒートシンクへ伝えることができ、放熱性に優れた放熱構造体とできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、隣接するダイヤモンド同士の熱流路を形成できる、熱伝導体およびヒートスプレッダ、ならびに、前記ヒートスプレッダを備えた放熱構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図2】
図1の熱伝導体の製造方法を説明するための図である。
【
図3】ダイヤモンドの並べ方による違いを説明するための図である。
【
図4】本発明の別の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図5】本発明の別の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図6】本発明の別の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図7】本発明の実施形態にかかる放熱構造体の模式図である。
【
図8】
図7の放熱構造体の構成をより詳しく説明するための図である。
【
図9】本発明の別の実施形態にかかる放熱構造体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図9を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。また、
図1~
図9中において共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0018】
<実施形態1>
図1は、本発明にかかる熱伝導体100の模式図である。
図1に示す熱伝導体100は、1層に並んだ複数のダイヤモンド40と、ダイヤモンド40を固定する金属42とを含むダイヤモンド含有金属層20からなる板状体である。
【0019】
ダイヤモンド含有金属層20において、ダイヤモンド40は、切頭八面体である。ダイヤモンド40は、ダイヤモンド含有金属層20の一方の面である面20B側の端部40Bが、面20B上にあり、端部40Bがエッジ部となるように配置されている。すなわち、ダイヤモンド40のエッジ部だけが、ダイヤモンド含有金属層20の面20Bと接している。また、ダイヤモンド40のエッジ部だけが、ダイヤモンド含有層20の他方の面(面20Bと反対側の面)と接している。また、隣接するダイヤモンド40同士は、面接触している。このとき、ダイヤモンド40の六角形の面同士で面接触させることで、横方向の接触面積を大きいものとできる。
【0020】
さらに、ダイヤモンド含有金属層20におけるダイヤモンド40の体積割合は50%以上(例えば、50%~80%)である。なお、ダイヤモンド40の体積割合は、ダイヤモンド40の質量をダイヤモンド40の比重で除して求められるダイヤモンド40の体積を、ダイヤモンド含有金属層20の体積で除して求められる値である。
【0021】
(製造例1)
本発明の熱伝導体は、例えば、ダイヤモンドのエッジ部を基板に向けて、基板上に複数のダイヤモンドを1層に並べる工程と、ダイヤモンドが並んだ基板にめっきを施しめっき層を形成する工程とを有する方法により得ることができる。
【0022】
熱伝導体100は、例えば、
図2に示すように、ダイヤモンド40のエッジ部を基板44に向けて、基板44上に複数のダイヤモンド40を1層に並べる工程と、ダイヤモンド40が並んだ基板44上にめっきを施しダイヤモンド含有金属層20を形成させる工程と、基板44とダイヤモンド含有金属層20とを分離する工程とを有する方法により得ることができる。
【0023】
図2に示す方法では、まず、振動を与えながら基板44上にダイヤモンド40を充填し、隣接するダイヤモンド40と面接触した状態で、エッジ部を下にしてダイヤモンド40を高密度に並べる(
図2(A))。この場合、ダイヤモンド40の基板44側の端部が、ダイヤモンド40の端部40Bである。基板44としては、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム、鋼、超硬合金、モリブデン、モリブデン合金、サーメット、チタンなどの金属、セラミックス、プラスチック等が用いられる。
【0024】
ダイヤモンド40は、平均粒径が35μm~1000μmのものの中から適宜選択して用いることが好ましい。また、平均粒径±15%の粒径を有するダイヤモンド40の割合は、90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。このように、粒径の揃ったダイヤモンド40を用いることで、ダイヤモンド40のエッジ部を基板に向けた状態で、より高密度にダイヤモンド40を配列させた構造を形成させやすい。この平均粒径は、任意の100個のダイヤモンド40の粒径の平均値であり、各ダイヤモンド40の粒径は、外接する四角形の長辺と短辺の平均値である。また、この平均粒径を算出する際に、下記の平均粒径±15%の粒径を有するダイヤモンド40の割合も求めることができる。
【0025】
次いで、基板44上にめっき処理により金属42を析出させることで、ダイヤモンド40を金属42により固着し、ダイヤモンド含有金属層20が基板44上に形成される(
図2(B))。金属42としては、ニッケルおよびその合金が好ましく、その例としては、Ni、Ni-S合金、Ni-P合金、Ni-B合金、Ni-Co合金などが挙げられる。
【0026】
なお、
図2(B)では、ダイヤモンド40の上端までめっきを行っているが、めっき処理はこれに限定されない。ダイヤモンド40の上端までめっきせずに、ダイヤモンド40のエッジ部が突き出すようにめっき処理を行ってもよく、ダイヤモンド含有金属層20は、他方の面20Sからダイヤモンド40が突き出している構造であってもよい。また、めっきを厚く形成し、めっき後に研磨を行い、ダイヤモンド含有金属層20におけるダイヤモンド40の体積割合が50%以上となるように調整してもよいが、生産性等を考慮すると、ダイヤモンド含有金属層20におけるダイヤモンド40の体積割合が50%以上となるようにめっきを行うことが好ましい。固定されたダイヤモンド40の安定性や生産性等を考慮して、めっき厚みは、ダイヤモンド40の平均粒径の35~95%程度が好ましい。
【0027】
そして、めっき処理後に、基板44とダイヤモンド含有金属層20を分離することで、板状のダイヤモンド含有金属層20が得られる(
図2(C))。
【0028】
また、後述するように、ダイヤモンド含有金属層20は基板44から分離せずに用いてもよく、熱伝導体100とヒートシンク等の他の部材を組み合わせる場合には、他の部材の上に熱伝導体100を直接形成させてもよい。
【0029】
なお、ダイヤモンド含有金属層20に並べられた複数のダイヤモンド40は、端部40Bがエッジ部であるものが大半であればよく、端部40Bが面であるものを一部含んでもよい。端部40Bがエッジ部であり、隣接するダイヤモンド40と面接触しているダイヤモンド40の割合は、具体的には、ダイヤモンド含有金属層20に含まれるダイヤモンドのうち50%以上であり、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。ダイヤモンドの端部40Bの形状や隣接するダイヤモンドとの面接触の有無は、例えば、ダイヤモンド含有金属層20を顕微鏡で観察することで判断でき、必要に応じて表面または裏面のダイヤモンド40を露出させてから顕微鏡観察を行うことで評価することができる。
【0030】
また、熱伝導体100において、ダイヤモンドは切頭八面体であるが、本発明の熱伝導体において、ダイヤモンドの形状はこれに限定されるものでなく、八面体以上の形状であればよい。
図3に示すように、ダイヤモンド46が並ぶ面B1に、面Sを向けてダイヤモンド46を1層に並べた構造(
図3(A))は、隣接するダイヤモンド46と点接触(図中の点線で囲んだ部分)しやすい。これに対して、面B1に、エッジ部Eを向けてダイヤモンド46を1層に並べた構造(
図3(B))とすることで、ダイヤモンド46の形状や向きの揃い具合にかかわらず、隣接するダイヤモンド46間で面接触(図中の点線で囲んだ部分)しやすい構成とできる。さらに、本発明の熱伝導体のようにダイヤモンドを密に配置させることで、密によるならい動作もあり、隣接するダイヤモンド同士の接触面積の多い面接触が期待できる。よって、使用するダイヤモンドの形状の制限を緩やかにでき、生産性を上げつつ、隣り合うダイヤモンドへの熱流路(横ルート)をしっかり形成させることができる。
【0031】
より高密度なダイヤモンドの配置を達成しやすいものとする観点からは、ダイヤモンドは、切頭八面体または六・八面体であることが好ましい。
【0032】
<実施形態2>
図4は、本発明にかかる熱伝導体110の模式図である。
図4に示す熱伝導体110は、平面部50Xを有する熱伝導性部材50と、平面部50Xの一方の面の上に配置されたダイヤモンド含有金属層20とを備える。ダイヤモンド含有金属層20は、熱伝導体100のダイヤモンド含有金属層20と同様の構成であり、ダイヤモンド40の端部40Bが、ダイヤモンド40の平面部50X側の端部となるように配置されている。すなわち、複数のダイヤモンド40は、平面部50X側にエッジ部を向けて1層に並んでいる。
【0033】
熱伝導性部材50は、熱伝導性を有する材料によって形成された部材であり、ダイヤモンド含有金属層20の面20Bに平行な面を有する平面部50Xを備える。熱伝導体110において、熱伝導性部材50は平面部50Xからなる板状部材であるが、熱伝導性部材50の形状は、特に限定されない。熱伝導性部材50は、平面部と熱源体を囲むための壁部とを有し、一方が開口した箱型のフレーム(
図6参照)などとしてもよい。熱伝導性部材が、箱型のフレームの場合、ダイヤモンド含有金属層は、平面部の熱源体側と反対側に設けられる構成であっても、平面部の熱源体側に設けられる構成であってもよい。
【0034】
ダイヤモンド含有金属層20と熱伝導性部材50とは、接合され、熱的に接続されている。この接合は、例えば、熱伝導グリスや放熱ギャップフィラー等の熱伝導を有する接着剤を用い、ダイヤモンド含有金属層20と熱伝導性部材50の平面部50Xとを接着させるものとしてもよいし、熱伝導性部材50の平面部50Xにダイヤモンド含有金属層20を直接形成するものとしてもよい。
【0035】
(製造例2-1)
熱伝導性を有する接着剤を用いる方法としては、例えば、製造例1の方法と同様にして、ダイヤモンド含有金属層20を得たのち、熱伝導性部材50の平面部50Xとダイヤモンド含有金属層20の面20B(基板44側の面)を、熱伝導性を有する接着剤を介して重ねて接着させる方法が挙げられる。
【0036】
(製造例2-2)
熱伝導性部材50の平面部50Xにダイヤモンド含有金属層20を直接形成する方法としては、例えば、熱伝導性部材50を基板44として用い、製造例1のダイヤモンド40の充填、めっき処理を行う方法が挙げられる。
【0037】
また、熱伝導体110では、ダイヤモンド40の平面部50X側の端部が端部40Bとなるように、熱伝導性部材50の平面部50Xの上にダイヤモンド含有金属層20を配置しているが、これに限定されない。本発明の熱伝導体は、ダイヤモンド40の平面部50X側と反対側の端部が端部40Bとなるように、熱伝導性部材50の平面部50Xの上にダイヤモンド含有金属層20を配置した構成としてもよい。このような構造の熱伝導体は、製造例2-1において、平面部50Xとダイヤモンド含有金属層20の一方の面20Bを接着剤で接着させる代わりに、平面部50Xとダイヤモンド含有金属層20の他方の面20Sを接着剤で接着させることで得ることができる。
【0038】
<実施形態3>
図5は、本発明にかかる熱伝導体120の模式図である。
図5に示す熱伝導体120は、ダイヤモンド含有金属層21と、ダイヤモンド含有金属層21の上に配置された平面部50Xを有する熱伝導性部材50と、熱伝導性部材50の平面部50Xの上に配置されたダイヤモンド含有金属層22とを備える。ダイヤモンド含有金属層21、22は、熱伝導体100のダイヤモンド含有金属層20と同様の構成であり、ダイヤモンド含有層21は、ダイヤモンド40の平面部50X側の端部が、ダイヤモンド含有金属層20における端部40Bとなるように配置されており、ダイヤモンド含有金属層22は、ダイヤモンド40の平面部50X側と反対側の端部が、ダイヤモンド含有金属層20における端部40Bとなるように配置されている。また、ダイヤモンド含有金属層21,22は、熱伝導性部材50と接合され、熱的に接続されている。
【0039】
ダイヤモンド含有金属層21および熱伝導性部材50の接合方法と、ダイヤモンド含有金属層22および熱伝導性部材50の接合方法は、同じであっても、異なってもよい。熱伝導体120は、ダイヤモンド40の端部40Bの向きに応じて、製造例1、製造例2-1、製造例2-2の方法等を適宜選択して製造することができ、これらの製造方法は組み合わせてもよい。
【0040】
<実施形態4>
図6は、本発明にかかる熱伝導体130の模式図である。
図6に示す熱伝導体130は、箱型の熱伝導性部材52と、板状の熱伝導性部材53と、ダイヤモンド含有金属層23と、板状の熱伝導性部材54と、ダイヤモンド含有金属層24とを備える。熱伝導性部材52は、熱伝導性を有する材料によって形成された部材であり、平面部52Xと、熱源体を囲むための壁部52Yとを有し、一方が開口した箱型のフレームである。熱伝導性部材53、54は、熱伝導性を有する材料によって形成された板状の部材であり、熱伝導性部材53は、熱伝導性部材52の平面部52Xに一方の面側に配置されており、熱伝導性部材54は、熱伝導性部材52の平面部52Xに他方の面側に配置されている。ダイヤモンド含有金属層23は、熱伝導性部材53の平面部52X側と反対側の位置に配置されており、ダイヤモンド含有金属層24は、熱伝導性部材54の平面部52X側と反対側の位置に配置されている。これらの部材は、熱的に接続されている。ダイヤモンド含有金属層23、24は、熱伝導体100のダイヤモンド含有金属層20と同様の構成であり、ダイヤモンド含有金属層23は、ダイヤモンド40の熱伝導性部材53側の端部が、ダイヤモンド含有金属層20における端部40Bとなるように配置されており、ダイヤモンド含有金属層24は、ダイヤモンド40の熱伝導性部材54側の端部が、ダイヤモンド含有金属層20における端部40Bとなるように配置されている。
【0041】
(製造例4)
熱伝導体130は、例えば、熱伝導性部材52の平面部52Xの一方の面に、ダイヤモンド含有金属層23を形成した熱伝導性部材53を接合し、熱伝導性部材52の平面部52Xの他方の面に、ダイヤモンド含有金属層24を形成した熱伝導性部材54を接合することで得ることができる。具体的には、まず、基板44として熱伝導性部材53を用いて、ダイヤモンド含有金属層23を形成した熱伝導性部材53を得る。これとは別に、基板44として熱伝導性部材54を用いて、ダイヤモンド含有金属層24を形成した熱伝導性部材54を得る。次いで、熱伝導性を有する接着剤を用いて、熱伝導性部材52の平面部52Xの一方の面と熱伝導性部材53とを接着し、熱伝導性部材52の平面部52Xの他方の面と熱伝導性部材54とを接着する。
【0042】
なお、ダイヤモンド含有金属層21~24の向きは、上記の構成に限定されない。本発明の熱伝導体が、熱伝導性部材の平面部の両側にダイヤモンド含有金属層が配置された構成であるとき、ダイヤモンド含有金属層は、それぞれ独立して、複数のダイヤモンドが、熱伝導性部材の平面部側にエッジ部を向けて1層に並んでいてもよいし、平面部側と反対側にエッジ部を向けて1層に並んでいてもよい。
【0043】
<実施形態5>
本発明の熱伝導体は、ヒートスプレッダとすることができ、ヒートシンクなどの放熱部材と組み合わせて、熱源体の熱を逃がすための放熱構造体とすることができる。
【0044】
図7は、本発明にかかる放熱構造体200の模式図である。
図7に示す放熱構造体200は、熱源体1の上に配置されるヒートスプレッダ10と、ヒートスプレッダ10の上に配置されたヒートシンク3とを備える。
【0045】
ヒートシンク3は、熱源体1に対向する面30Sを有するベース部30とベース部30の面30Sと反対側の面に立設された複数の放熱フィン(図示せず)を備える部材であるが、ヒートシンクの形状はこれに限定されない。ヒートスプレッダ10は、熱源体1とヒートシンク3のベース部30の面30Sとの間に配置される部材である。ヒートスプレッダ10は、本発明の熱伝導体である。熱源体1とヒートスプレッダ10とヒートシンク3とを熱的に接続することで、熱源体1の熱をヒートスプレッタ10からヒートシンク3に伝え、ヒートシンク3から外へ逃がすことができる。
【0046】
例えば、放熱構造体200は、
図8(A)に示す放熱構造体200aのように、ヒートスプレッダ10が、ダイヤモンド含有金属層20(熱伝導体100)であり、熱源体1と接着剤5(熱伝導性を有する接着剤)によって接合されるヒートスプレッダ10と、ヒートスプレッダ10と接着剤5によって接合されたヒートシンク3とを備える構造とすることができる。
【0047】
また、放熱構造体200は、
図8(B)に示す放熱構造体200bのように、ヒートスプレッダ10が、平面部50Xを有する熱伝導性部材50と、熱伝導性部材50の平面部50Xの一方の面と接着剤5によって接合されたダイヤモンド含有金属層20と、熱伝導性部材50の平面部50Xの他方の面と接着剤5によって接合されたダイヤモンド含有金属層20とを備える熱伝導体であり、熱源体1に接着剤5によって接合されるヒートスプレッダ10と、ヒートスプレッダ10と接着剤5によって接合されたヒートシンク3とを備える構造とすることができる。
【0048】
また、
図8(C)、
図8(D)に示すように、放熱構造体200は、本発明の熱伝導体のダイヤモンド含有金属層をヒートシンク3に直接形成させた構成としてもよい。これにより、電着で、ダイヤモンド含有金属層を接合できる。
【0049】
図8(C)に示す放熱構造体200cは、熱源体1と接着剤5によって接合されるダイヤモンド含有金属層20が、ヒートシンク3に直接形成された構造である。この場合、ダイヤモンド含有金属層20がヒートスプレッダ10である。放熱構造体200cでは、ヒートシンク3を基板44として用いて、ヒートシンク3の面30Sにダイヤモンド含有金属層20を直接形成した後、ヒートシンク3とダイヤモンド含有金属層20とを分離せずに用いる。
【0050】
図8(D)に示す放熱構造体200dは、ヒートシンク3と、ヒートシンク3に直接形成されたダイヤモンド含有金属層20と、ダイヤモンド含有金属層20と接着剤5によって接合された熱伝導性部材50と、熱伝導性部材50に直接形成されたダイヤモンド含有金属層20とを備える構造であり、熱伝導性部材50に直接形成されたダイヤモンド含有金属層20が、接着剤5によって熱源体1と接合される。この場合、ダイヤモンド含有金属層20と熱伝導性部材50とダイヤモンド含有金属層20との積層部分がヒートスプレッダ10である。放熱構造体200dは、次の方法で得ることができる。まず、ヒートシンク3を基板44として用いて、ヒートシンク3の面30Sにエッジ部が向くようにダイヤモンドを並べ、めっき処理をし、ダイヤモンド含有金属層20を形成する。これとは別に、熱伝導性部材50の平面部50Xの一方の面にエッジ部が向くようにダイヤモンドを並べ、めっき処理をして、ダイヤモンド含有金属層20を形成する。そして、ヒートシンク3に形成されたダイヤモンド含有金属層20と熱伝導性部材50とを接着剤5により接合する。
【0051】
<実施形態6>
本発明の放熱構造体は、電子機器等に組み込み利用することができる。
図9は、放熱構造体210を、CPUダイの放熱構造体として組み込んだ例である。
【0052】
図9に示す放熱構造体210は、ヒートスプレッダである熱伝導体140と、ヒートシンク3を備える。熱伝導体140は、ダイヤモンド含有金属層25が形成された銅板70、および、箱型の熱伝導性部材52を備える。ダイヤモンド含有金属層25は、1層に並べられた複数のダイヤモンド48と、ダイヤモンド48を固定する金属42とを含み、ダイヤモンド48は、八面体以上の多面体であり、かつ、隣接するダイヤモンド48と面接触している。また、ダイヤモンド48のダイヤモンド含有金属層25の一方の面側(銅板70側)の端部48Bが、頂点または稜線となるように、ダイヤモンド48が配置されている。ダイヤモンド含有金属層25を形成した銅板70は、熱伝導性を有する接着剤5を介して、熱伝導性部材52の平面部52Xの両側に接合されている。ヒートシンク3は、熱伝導性部材52の平面部52Xの外側に位置するダイヤモンド含有金属層25と接着剤5によって接合されている。
【0053】
CPUダイ1aの放熱構造体とするときは、熱伝導性部材52の壁部52Yが、CPUダイ1aを囲むように、放熱構造体210をパッケージ基板7上に配置し、熱伝導体140とCPUダイ1aとを接着剤5によって接着する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、ヒートシンク、ヒートスプレッダ等に用いられる熱を効果的に逃がすための熱伝導体として、電子機器等の分野において利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 熱源体
1a CPUダイ
3 ヒートシンク
5 接着剤
7 パッケージ基板
10 ヒートスプレッダ
20、21、22、23、24、25 ダイヤモンド含有金属層
20S、20B、30S、B1 面
30 ベース部
40、46、48 ダイヤモンド
40B、48B 端部
42 金属
44 基板
50、52、53、54 熱伝導性部材
50X、52X 平面部
52Y 壁部
70 銅板
100、110、120、130、140 熱伝導体
200、200a、200b、200c、200d、210 放熱構造体
【要約】
【課題】隣接するダイヤモンド同士の熱流路を形成できる、熱伝導体を提供する。
【解決手段】本発明の熱伝導体100は、1層に並べられた複数のダイヤモンド40と、ダイヤモンド40を固定する金属42とを含むダイヤモンド含有金属層20を有する。ダイヤモンド40は、八面体以上の多面体であり、かつ、隣接するダイヤモンド40同士が面接触しており、ダイヤモンド40のダイヤモンド含有金属層20の一方の面20B側の端部40Bが、頂点または稜線となるように、ダイヤモンド40が配置されている。
【選択図】
図1