(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】熱伝導体、ヒートスプレッダおよび放熱構造体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20250210BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2024053896
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】行▲徳▼ 聡人
(72)【発明者】
【氏名】澤村 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】馬場 健吾
(72)【発明者】
【氏名】五十君 智
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層に並べられた複数のダイヤモンドと、前記ダイヤモンドを固定する金属とを含むダイヤモンド含有金属層を有する熱伝導体であって、
下記(I)と、下記(II)と、下記(III-1)または(III-2)とを満たす熱伝導体。
(I)前記ダイヤモンドが、八面体以上の多面体であり、前記ダイヤモンド含有金属層から突き出しておらず、かつ、隣接するダイヤモンドと面接触している。
(II)前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面は、前記ダイヤモンドの前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部が、前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面になるように平滑化された面である。
(III-1)前記ダイヤモンドの前記ダイヤモンド含有金属層の他方の面側の端部が、前記ダイヤモンドの頂点または稜線である。
(III-2)前記ダイヤモンド含有金属層の他方の面は、前記ダイヤモンドの前記他方の面側の端部が前記他方の面と同一面になるように平滑化された面であり、前記ダイヤモンドの前記他方の面側の平滑化前の端部が、頂点または稜線である。
【請求項2】
前記ダイヤモンド含有金属層が、その頂点または稜線を下にして1層に並べた、八面体以上の多面体である複数のダイヤモンドを前記金属で固着した層の少なくとも上側の面を平滑化したものである、請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項3】
前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面における、前記ダイヤモンドの露出面積の割合が30%以上である、請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項4】
前記(I)と、前記(II)と、前記(III-2)とを満たし、
前記ダイヤモンド含有金属層の前記他方の面における前記ダイヤモンドの露出面積の割合が30%以上である、請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項5】
前記ダイヤモンドが、切頭八面体の頂点もしくは稜線の一部が切り取られた形状、または、六・八面体の頂点もしくは稜線の一部が切り取られた形状であり、
前記ダイヤモンドは、(i)切り取られた部分の面を1つ有し、前記切り取られた部分の面が前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面であるか、または、(ii)切り取られた部分の面を2つ有し、一方の前記切り取られた部分の面が前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面であり、他方の前記切り取られ部分の面が前記ダイヤモンド含有金属層の前記他方の面と同一面である、請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項6】
平面部を有する熱伝導性部材と、
前記平面部の少なくとも一方の面側に配置された前記ダイヤモンド含有金属層とを有し、
前記ダイヤモンド含有金属層は、前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面が、前記平面部が位置する側と反対側となるように配置されている、請求項1に記載の熱伝導体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の熱伝導体からなる、ヒートスプレッダ。
【請求項8】
熱源体の上に配置され、熱的に接合される、請求項7に記載のヒートスプレッダと、
前記ヒートスプレッダの上に配置され、熱的に接合された、ヒートシンクとを備える、放熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導体およびヒートスプレッダに関するものである。また、前記ヒートスプレッダを備えた放熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートシンク、ヒートスプレッダの性能を向上させるために熱伝導性に優れたダイヤモンドを使用することが知られている。例えば、特許文献1には、絶縁体層と、該絶縁体層の両側に配置された高熱伝導体層とを備え、前記絶縁体層が、接合層と、前記高熱伝導体層に突出されている絶縁性高熱伝導硬質粒子とを有する絶縁伝熱構造体において、前記接合層の面内方向の一方向で前記絶縁性高熱伝導硬質粒子を等間隔に複数配置した粒子群が、前記面内方向の前記一方向は異なる方向に等間隔で複数配置されていることを特徴とする絶縁伝熱構造体が開示されており、前記絶縁性高熱伝導硬質粒子の一つとして、ダイヤモンドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱源とヒートシンクの間にダイヤモンドが配置された層を備える構造とすることにより、熱源からのヒートシンクへの熱流路(縦ルート)の改善はなされる。しかし、特許文献1の構造体は、ダイヤモンドが間隔を空けて配置されており、ダイヤモンド間(横ルート)の熱移動がないため、十分にダイヤモンドの伝熱性能を使い切れているとはいえなかった。
【0005】
また、ヒートシンクとヒートスプレッダは、一般的に、熱伝導グリスや放熱ギャップフィラーといった接着剤によって接合されている。
図11に示すように、ヒートシンク3とヒートスプレッダ14を接合する際に、ヒートシンク3やヒートスプレッダ14の表面の凹部60に熱伝導グリスや放熱ギャップフィラー等の接着剤5が詰まり、凹部60の空隙を埋めることで空気ポケット(エアギャップ)を埋めて、熱がしっかり伝わるようにされている。しかし、ダイヤモンドは硬い材料であるため、ヒートスプレッダ14の表面にダイヤモンド4bが突き出していると、ヒートシンク3と接合するときに、ヒートシンク3がダイヤモンド4bの先端に押されていびつな穴3Hができる可能性があった。そして、ダイヤモンド4bに押されたヒートシンク3に穴3Hができるときに、接着剤5が押し出され、穴3Hの形状もいびつな故に接着剤5が不十分となるおそれがあった。また、これにより、空気ポケットができる可能性があり、熱伝導率が低下するおそれがあった。
【0006】
かかる状況下、本発明は、隣接するダイヤモンド同士の熱流路を形成でき、他の部材と接合したときに他の部材を変形させにくい、熱伝導体およびヒートスプレッダを提供することを目的とする。また、前記ヒートスプレッダを備えた放熱構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱伝導体は、1層に並べられた複数のダイヤモンドと、前記ダイヤモンドを固定する金属とを含むダイヤモンド含有金属層を有する熱伝導体であって、下記(I)と、下記(II)と、下記(III-1)または(III-2)とを満たす。
(I)前記ダイヤモンドが、八面体以上の多面体であり、前記ダイヤモンド含有金属層から突き出しておらず、かつ、隣接するダイヤモンドと面接触している。
(II)前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面は、前記ダイヤモンドの前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部が、前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面になるように平滑化された面である。
(III-1)前記ダイヤモンドの前記ダイヤモンド含有金属層の他方の面側の端部が、前記ダイヤモンドの頂点または稜線である。
(III-2)前記ダイヤモンド含有金属層の他方の面は、前記ダイヤモンドの前記他方の面側の端部が前記他方の面と同一面になるように平滑化された面であり、前記ダイヤモンドの前記他方の面側の平滑化前の端部が、頂点または稜線である。
【0008】
このような構造のダイヤモンド含有金属層は、その頂点または稜線を下にして1層に並べた、八面体以上の多面体である複数のダイヤモンドを前記金属で固着した層の少なくとも上側の面を平滑化することで得ることができる。
【0009】
このように、八面体以上のダイヤモンドを1層に配置した構成とすることで、薄くできるとともに、隣接するダイヤモンドを面接触させつつ、ダイヤモンドの露出面積を増やすことで、熱源体からの熱流路(縦ルート)に加えて、ダイヤモンド間の熱流路(横ルート)が形成され、より広く熱を拡散することができ、ダイヤモンドの伝熱性能を十分に発揮することができる。
【0010】
また、他の部材と接合したときに、他の部材にダメージを与えにくいものとできる。例えば、ヒートシンクおよび熱源体と組み合わせる場合、硬いダイヤモンドの方を相手側(ヒートシンクおよび熱源体)の表面形状に合わせる形になることから、相手側へダイヤモンドの硬さによる予期せぬダメージ(凹部形成)を与えないで済むようになる。ダイヤモンドは熱による変形が少ないが相手側はその限りではないことから、ダイヤモンドで相手側へダメージ(凹部形成)を与えた場合、熱による変形が無いタイミングでは空気ギャップが無い状態であったとしても、熱による変形が生じた際に、ダメージ(凹部形成)部分の変形により空気ギャップが発生する可能性がある。しかし、本発明の熱伝導体は、予期せぬダメージ(凹部形成)を与える可能性が低いため、熱による変形が無いタイミングで熱伝導グリスや放熱ギャップフィラー等の接着剤を用いて空気ギャップを埋めることで、熱による変形が生じても埋めが維持される期待値が高い。具体的には、
図10に示すように、本発明の熱伝導体からなるヒートスプレッダ12をヒートシンク3に押し付け接合する場合には、ダイヤモンド4aによってヒートシンク3に予期せぬ穴が発生することが起こりにくい。また、ヒートシンク3が熱膨張しても、不規則な膨張が少なくなり、ヒートシンク3とヒートスプレッダ12の間の接着剤5がやや足りない状況でも、空気ギャップが発生しにくい。よって、縦方向の高い伝熱性を熱による変形が始まっても維持できる可能性を高くすることができる。
【0011】
また、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の他方の面側の端部、または、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の他方の面側の平滑化前の端部が、頂点または稜線(以下、「頂点または稜線」を「エッジ部」と称する場合がある。)となるようにダイヤモンドが配置されていることで、ダイヤモンドの形状や向きの揃い具合によらず、隣り合うダイヤモンド同士を面接触させやすく、使用するダイヤモンドの形状の自由度を高めることができ、生産自由度を高めることができる。さらに、隣り合うダイヤモンド同士が面接触する面積が増大する。そのため、ダイヤモンド間の熱流路(横ルート)での熱伝導が増大し、熱がより拡散しやすいものとできる。
【0012】
なお、「頂点」は、ダイヤモンドの3本以上の辺(稜線)が共有している点であり、「稜線」は、ダイヤモンドの頂点と頂点を結ぶ線である。また、本願において、「端部」とは、厚さ方向において、中央から最も離れた部分を意味する。例えば、「ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部」とは、ダイヤモンド含有金属層の厚さ方向において、ダイヤモンドの中の、中央からダイヤモンド含有金属層の一方の面の方向に最も離れた部分を意味し、ダイヤモンドの頂点が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部は頂点であり、ダイヤモンドの稜線が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部は稜線であり、ダイヤモンドの面が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側の端部は面である。「ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の他方の面側の端部」とは、ダイヤモンド含有金属層の厚さ方向において、ダイヤモンドの中の、中央からダイヤモンド含有金属層の他方の面の方向に最も離れた部分を意味し、ダイヤモンドの頂点が、ダイヤモンド含有金属層の他方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の他方の面側の端部は頂点であり、ダイヤモンドの稜線が、ダイヤモンド含有金属層の他方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の他方の面側の端部は稜線であり、ダイヤモンドの面が、ダイヤモンド含有金属層の他方の面の方向に最も離れている部分であるとき、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の他方の面側の端部は面である。
【0013】
また、本発明の熱伝導体は、前記ダイヤモンドの前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面における、前記ダイヤモンドの露出面積の割合が30%以上であることが好ましい。
ダイヤモンドの露出面積を大きくすることで、ダイヤモンド含有金属層への熱の流入またはダイヤモンド含有金属層からの熱の流出の効率が高まり、熱伝導性を高めることができる。また、頂点またや稜線(すなわち、点や線)でなく、面で露出した状態のダイヤモンドを増やすことができるため、ダイヤモンド含有金属層の一方の面と隣接する部分に効率的に熱を伝えることができる。
【0014】
さらに熱伝導性を高めるためには、本発明の熱伝導体は、前記(I)と、前記(II)と、前記(III-2)とを満たし、前記ダイヤモンド含有金属層の前記他方の面における、前記ダイヤモンドの露出面積の割合が30%以上であることが好ましい。
ダイヤモンド含有金属層の両面のダイヤモンド露出面積を大きくすることで、ダイヤモンド含有金属層への熱の流入およびダイヤモンド含有金属層からの熱の流出が起こりやすく、熱伝導性をさらに高めることができる。
【0015】
また、本発明の熱伝導体は、前記ダイヤモンドが、切頭八面体の頂点もしくは稜線の一部が切り取られた形状、または、六・八面体の頂点もしくは稜線の一部が切り取られた形状であり、かつ、前記ダイヤモンドは、(i)切り取られた部分の面を1つ有し、前記切り取られた部分の面が前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面であるか、または、(ii)切り取られた部分の面を2つ有し、一方の前記切り取られた部分の面が前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面であり、他方の前記切り取られ部分の面が前記ダイヤモンド含有金属層の前記他方の面と同一面であることが好ましい。
このような構造は、切頭八面体または六・八面体であるダイヤモンドを1層に並べ、少なくともダイヤモンド含有金属層の一方の面を平滑化することで得られる。切頭八面体または六・八面体のダイヤモンドを用いることで、より高密度のダイヤモンドを並べることができ、ダイヤモンド間の熱流路をさらに増大させることができる。
【0016】
また、本発明の熱伝導体は、平面部を有する熱伝導性部材と、前記平面部の少なくとも一方の面側に配置された前記ダイヤモンド含有金属層とを有し、前記ダイヤモンド含有金属層は、前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面が、前記平面部が位置する側と反対側となるように配置されていることが好ましい。
このような構成とすることで、他の部材と接合したときに、他の部材にダメージを与えにくいものとできる。また、熱伝導性部材と組み合わせることで、熱伝導体の形状の設計の自由度を高めることができる。
【0017】
本発明の熱伝導体は、ヒートスプレッダとして利用することができる。すなわち、本発明のヒートスプレッダは、本発明の熱伝導体からなるものである。
【0018】
また、本発明の熱伝導体は、放熱構造体に組み込むことができる。本発明の放熱構造体は、熱源体の上に配置され、熱的に接続される、本発明のヒートスプレッダと、前記ヒートスプレッダの上に配置され、熱的に接続された、ヒートシンクとを備えた、放熱構造体である。
このような構成とすることで、ヒートスプレッダ中のダイヤモンドによって熱源体およびヒートシンクが変形させられることが抑えられ、また、熱源体からヒートスプレッダに流入した熱を、効率的にヒートスプレッダからヒートシンクへ伝えることができ、放熱性に優れた放熱構造体とできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、隣接するダイヤモンド同士の熱流路を形成でき、他の部材と接合したときに他の部材を変形させにくい、熱伝導体およびヒートスプレッダ、ならびに、前記ヒートスプレッダを備えた放熱構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図2】
図1の熱伝導体の製造方法を説明するための図である。
【
図3】本発明の別の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図4】本発明の別の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図5】本発明の別の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図6】本発明の別の実施形態にかかる熱伝導体の模式図である。
【
図7】本発明の実施形態にかかる放熱構造体の模式図である。
【
図8】
図7の放熱構造体の構成をより詳しく説明するための図である。
【
図9】本発明の別の実施形態にかかる放熱構造体の模式図である。
【
図10】ヒートシンクと本発明のヒートスプレッダとを接合するときの様子を説明するための図である。
【
図11】ヒートシンクと従来のヒートスプレッダとを接合するときの様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図9を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。また、
図1~
図9中において共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0022】
<実施形態1>
図1は、本発明にかかる熱伝導体100の模式図である。
図1に示す熱伝導体100は、1層に並んだ複数のダイヤモンド40と、ダイヤモンド40を固定する金属42とを含むダイヤモンド含有金属層20からなる板状体である。また、ダイヤモンド40は、ダイヤモンド含有金属層20から突き出しておらず、隣接するダイヤモンド40同士は面接触している。
【0023】
ダイヤモンド含有金属層20において、ダイヤモンド含有金属層の20の一方の面である面20Sは、ダイヤモンド40の面20S側の端部40S(すなわち、面20Sに露出したダイヤモンド40の面)が面20Sと同一面となるように平滑化された面である。さらに、ダイヤモンド含有金属層20の面20Sにおけるダイヤモンド40の露出面積の割合が30%以上(例えば、30%以上100%未満)である。このダイヤモンド40の露出面積は、例えば、ダイヤモンド含有金属層20の面20Sをデジタルマイクロスコープなどの顕微鏡にて撮影し、この撮影画像から求めることができる。
【0024】
また、ダイヤモンド40は、ダイヤモンド含有金属層20の他方の面である面20B側の端部40Bが、エッジ部となるように配置されている。すなわち、ダイヤモンド40のエッジ部だけが、ダイヤモンド含有金属層20の面20Bと接している。
【0025】
ダイヤモンド含有金属層20は、後述のように、
図2に示すように、その頂点または稜線(エッジ部)を下(基板44側)にして1層に並べられた、切頭八面体形状の複数のダイヤモンド40bを、金属42によって固着した層21の上側の面21Sを研磨等の加工により平滑化したものである。研磨等の加工を行うことで、面21Sの表面の凹凸がきっちり平滑状態となる。このとき、ダイヤモンド40b同士を六角形の面で面接触させて並べることで、横方向の接触面積を大きいものとできる。
【0026】
ダイヤモンド含有金属層20において、ダイヤモンド40は、切頭八面体の頂点もしくは稜線の一部が切り取られた形状である。具体的には、
図2に示すように、基板44に、エッジ部を下に向けて、1層に並べられた切頭八面体のダイヤモンドの列の上側を、基板44の表面と平行な面で切り取った構造であり、ダイヤモンド40は、切り取られた部分の面を1つ有し、この切り取られた部分の面が、端部40S(すなわち、面20Sに露出したダイヤモンド40の面)であり、ダイヤモンド含有金属層20の面20Sと同一面である。このとき、ダイヤモンド40は、100面および111面以外の面が面20Sに露出することになる。
【0027】
なお、ダイヤモンド含有金属層20において、複数のダイヤモンド40は、端部40Bがエッジ部Eであるものが大半であればよく、端部40Bが面であるものを一部含んでもよい。端部40Bがエッジ部Eであり、隣接するダイヤモンド40と面接触しているダイヤモンド40の割合は、具体的には、ダイヤモンド含有金属層20に含まれるダイヤモンドのうち50%以上であり、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。ダイヤモンドの端部40Bの形状や隣接するダイヤモンドとの面接触の有無は、例えば、ダイヤモンド含有金属層20を顕微鏡で観察することで判断でき、必要に応じて表面または裏面のダイヤモンド40を露出させてから顕微鏡観察を行うことで評価することができる。
【0028】
(製造例1)
本発明の熱伝導体は、例えば、ダイヤモンドのエッジ部を基板に向けて、基板上に複数のダイヤモンドを1層に並べる工程と、ダイヤモンドが並んだ基板にめっきを施しめっき層を形成する工程と、めっき層の表面を研磨等の加工により平滑化し、ダイヤモンド含有金属層とする工程とを有する方法により得ることができる。熱伝導体100の場合は、めっき層の表面を平滑化した後、基板とダイヤモンド含有金属層とを分離することで得られる。
【0029】
熱伝導体100の製造方法について、
図2を参照して具体的に説明すると、まず、振動を与えながら基板44上にダイヤモンド40b(研磨等の加工前のダイヤモンド)を充填し、隣接するダイヤモンド40bと面接触した状態で、エッジ部Eを下にしてダイヤモンド40bを高密度に並べる(
図2(A))。基板44としては、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム、鋼、超硬合金、モリブデン、モリブデン合金、サーメット、チタンなどの金属、セラミックス、プラスチック等が用いられる。
【0030】
ダイヤモンド40b(研磨等の加工前のダイヤモンド)は、平均粒径が35μm~1000μmのものの中から適宜選択して用いることが好ましい。また、平均粒径±15%の粒径を有するダイヤモンド40bの割合は、90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。このように、粒径の揃ったダイヤモンド40bを用いることで、ダイヤモンド40のエッジ部Eを基板44に向けた状態で、より高密度にダイヤモンド40bを配列させた構造を形成させやすい。この平均粒径は、任意の100個のダイヤモンド40bの粒径の平均値であり、各ダイヤモンド40bの粒径は、外接する四角形の長辺と短辺の平均値である。また、この平均粒径を算出する際に、下記の平均粒径±15%の粒径を有するダイヤモンド40bの割合も求めることができる。
【0031】
次いで、基板44上にめっき処理により金属42を析出させることで、ダイヤモンド40bを金属42により固着し、めっき層21(研磨等の加工前のダイヤモンド含有金属層)が基板44上に形成される(
図2(B))。金属42としては、ニッケルおよびその合金が好ましく、その例としては、Ni、Ni-S合金、Ni-P合金、Ni-B合金、Ni-Co合金などが挙げられる。
【0032】
なお、
図2(B)では、ダイヤモンド40bが突き出すよう金属42をめっきしているが、めっき処理はこれに限定されない。ダイヤモンド40bが覆われるように金属42をめっきしてもよい。固定されたダイヤモンド40の安定性や生産性等を考慮して、めっき厚みは、ダイヤモンド40bの平均粒径の35~95%程度が好ましい。
【0033】
次いで、基板44上に形成されためっき層21の表面(面21S)を研磨等の加工により平滑化し、ダイヤモンド含有金属層20とする(
図2(C))。研磨等の加工は、ダイヤモンド40が突き出しておらず、形成されるダイヤモンド含有金属層20の表面(面20S)におけるダイヤモンド40の露出面積が30%以上となるまで行われる。
【0034】
そして、研磨等の加工後に、ステンレス基板44とダイヤモンド含有金属層20とを分離することで、ダイヤモンド含有金属層20が得られる(
図2(D))。得られたダイヤモンド含有金属層20は、一方の面である面20Sが研磨等の加工により平滑化されており、他方の面である面20Bも基板44に沿って形成された面であるため平滑である。そのため、他の部材と接合したときに、他の部材を変形させにくい。
【0035】
また、後述するように、ダイヤモンド含有金属層20は基板44から分離せずに用いてもよく、熱伝導体100とヒートシンク等の他の部材を組み合わせる場合には、他の部材の上に熱伝導体100を直接形成させてもよい。
【0036】
なお、本発明にかかる熱伝導体は、ダイヤモンドのダイヤモンド含有金属層の一方の面側に配置される端部が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面である。すなわち、ダイヤモンドの面またはエッジ部が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面上にある。ただし、熱伝導性の観点から、ダイヤモンドの面が、ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面上であることが好ましく、ダイヤモンドの露出面積を30%以上とすることがより好ましい。
【0037】
<実施形態2>
図3は、本発明にかかる熱伝導体110の模式図である。
図3に示す熱伝導体110は、1層に並んだ複数のダイヤモンド46と、ダイヤモンド46を固定する金属42とを含むダイヤモンド含有金属層22からなる板状体である。また、隣接するダイヤモンド46同士は面接触している。
【0038】
ダイヤモンド含有金属層22において、一方の面である面22Sは、ダイヤモンド46の面22S側の端部46S(すなわち、面22Sに露出したダイヤモンド46の面)が面22Sと同一面となるように平滑化された面であり、面22Sにおけるダイヤモンド46の露出面積の割合は30%以上(例えば、30%以上100%未満)である。また、ダイヤモンド含有金属層22の他方の面である面22Bは、ダイヤモンド46の面22B側の端部46B(すなわち、面22Bに露出したダイヤモンド46の面)が面22Bと同一面となるように平滑化された面であり、面22Bにおけるダイヤモンド46の露出面積の割合は30%以上(例えば、30%以上100%未満)である。
【0039】
ダイヤモンド含有金属層22は、面22Bにおけるダイヤモンド46の露出面積の割合が30%以上となるように、
図1のダイヤモンド含有金属層20の面20Bを研磨等の加工により平滑化したものである。すなわち、エッジ部Eを下にして1層に並べられた、切頭八面体形状の複数のダイヤモンド40bを、金属42によって固着した層の両面を研磨等の加工により平滑化したものである。よって、ダイヤモンド46の面22B側の平滑化前の端部(すなわち、
図1の40B)は、頂点または稜線である。なお、平滑化の有無は、平滑化された面における研磨等の加工の跡および平滑化後のダイヤモンドの形状から判断可能であり、また、平滑化後のダイヤモンドの形状から、平滑化前のダイヤモンドの端部の形状を判断することができる。具体的には、平滑化後のダイヤモンドの他方の面と接する稜線を延長したときの交点が平滑化前の他方の面上にあれば、ダイヤモンドの他方の面側の平滑化前の端部は、頂点又は稜線であると推定できる。
【0040】
ダイヤモンド含有金属層22において、ダイヤモンド46は、切頭八面体の頂点もしくは稜線の一部が切り取られた形状である。具体的には、エッジ部を下に向けて、1層に並べられた切頭八面体のダイヤモンドの列の上側と下側を、対向する平行な面で切り取った構造であり、ダイヤモンド46は、切り取られた部分の面を2つ有し、一方の切り取られた部分の面が、端部46Sであり、ダイヤモンド含有金属層22の面22Sと同一面であり、他方の切り取られた部分の面が、端部46Bであり、ダイヤモンド含有金属層22の面22Bと同一面である。
【0041】
なお、ダイヤモンドの形状は、八面体以上の形状であり、かつ、ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面となる面を有するものであれば特に限定されない。より高密度なダイヤモンドの配置を達成しやすいものとする観点からは、研磨等の加工前のダイヤモンドは、切頭八面体または六・八面体が好ましい。よって、ダイヤモンドは、切頭八面体の頂点もしくは稜線の一部が切り取られた形状、または、六・八面体の頂点もしくは稜線の一部が切り取られた形状であり、かつ、ダイヤモンドは、(i)切り取られた部分の面を1つ有し、切り取られた部分の面がダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面であるか、または、(ii)切り取られた部分の面を2つ有し、一方の切り取られた部分の面が前記ダイヤモンド含有金属層の一方の面と同一面であり、他方の切り取られた部分の面がダイヤモンド含有金属層の他方の面と同一面であることが好ましい。
【0042】
<実施形態3>
図4は、本発明にかかる熱伝導体120の模式図である。
図4に示す熱伝導体120は、平面部50Xを有する熱伝導性部材50と、平面部50Xの一方の面上に配置されたダイヤモンド含有金属層20とを備える。ダイヤモンド含有金属層20は、熱伝導体100のダイヤモンド含有金属層20と同様の構成であり、面20Sが平面部50X側と反対側に位置するように配置されている。
【0043】
熱伝導性部材50は、熱伝導性を有する材料によって形成された部材であり、ダイヤモンド含有金属層20の面20Bと平行な面を有する平面部50Xを備える。熱伝導体120において、熱伝導性部材50は平面部50Xからなる板状部材であるが、熱伝導性部材50の形状は、特に限定されない。熱伝導性部材50は、平面部と熱源体を囲むための壁部とを有し、一方が開口した箱型のフレーム(
図6参照)などとしてもよい。熱伝導性部材が、箱型のフレームの場合、ダイヤモンド含有金属層は、平面部の熱源体側と反対側に設けられる構成であっても、平面部の熱源体側に設けられる構成であってもよい。
【0044】
ダイヤモンド含有金属層20と熱伝導性部材50とは、接合され、熱的に接続されている。この接合は、例えば、熱伝導グリスや放熱ギャップフィラー等の熱伝導を有する接着剤を用い、ダイヤモンド含有金属層20と熱伝導性部材50の平面部50Xとを接着させるものとしてもよいし、熱伝導性部材50の平面部50Xにダイヤモンド含有金属層20を直接形成するものとしてもよい。
【0045】
(製造例3-1)
熱伝導性を有する接着剤を用いる方法としては、例えば、製造例1の方法と同様にして、ダイヤモンド含有金属層20を得たのち、熱伝導性部材50の平面部50Xとダイヤモンド含有金属層20の面20B(基板44側の面)を、熱伝導性を有する接着剤を介して重ねて接着させる方法が挙げられる。
【0046】
(製造例3-2)
熱伝導性部材50の平面部50Xにダイヤモンド含有金属層20を直接形成する方法としては、例えば、熱伝導性部材50を基板44として用い、製造例1のダイヤモンド40の充填、めっき処理を行う方法が挙げられる。
【0047】
また、熱伝導体120では、ダイヤモンド含有金属層20の面20Sが熱伝導性部材50の平面部50X側と反対側に位置するように、ダイヤモンド含有金属層20を配置しているが、これに限定されない。本発明の熱伝導体は、ダイヤモンド含有金属層20の面20Sが熱伝導性部材50の平面部50X側に位置するように、ダイヤモンド含有金属層20を配置した構成としてもよい。このような構造の熱伝導体は、製造例3-1において、平面部50Xとダイヤモンド含有金属層20の面20Bを接着剤で接着させる代わりに、平面部50Xとダイヤモンド含有金属層20の面20Sを接着剤で接着させることで得ることができる。また、熱伝導体120において、ダイヤモンド含有金属層20を、ダイヤモンド含有金属層22とした構成としてもよい。
【0048】
<実施形態4>
図5は、本発明にかかる熱伝導体130の模式図である。
図5に示す熱伝導体130は、ダイヤモンド含有金属層23と、ダイヤモンド含有金属層23の上に配置された平面部50Xを有する熱伝導性部材50と、熱伝導性部材50の平面部50Xの上に配置されたダイヤモンド含有金属層24とを備える。ダイヤモンド含有金属層23、24は、熱伝導体100のダイヤモンド含有金属層20と同様の構成であり、ダイヤモンド含有金属層23、24は、共に、ダイヤモンド含有金属層20の面20Sに相当する面23S、24Sが平面部50X側と反対側に位置するように配置され、複数のダイヤモンド40は、平面部50X側にエッジ部を向けて1層に並んでいる。また、ダイヤモンド含有金属層23、24は、熱伝導性部材50と接合され、熱的に接続されている。
【0049】
ダイヤモンド含有金属層23および熱伝導性部材50の接合方法と、ダイヤモンド含有金属層24および熱伝導性部材50の接合方法は、同じであっても、異なってもよい。熱伝導体130は、面23S、面24Sの向きに応じて、製造例1、製造例3-1、製造例3-2の方法等を適宜選択して製造することができ、これらの製造方法は組み合わせてもよい。
【0050】
<実施形態5>
図6は、本発明にかかる熱伝導体140の模式図である。
図6に示す熱伝導体140は、箱型の熱伝導性部材52と、板状の熱伝導性部材53と、ダイヤモンド含有金属層25と、板状の熱伝導性部材54と、ダイヤモンド含有金属層26とを備える。熱伝導性部材52は、熱伝導性を有する材料によって形成された部材であり、平面部52Xと、熱源体を囲むための壁部52Yとを有し、一方が開口した箱型のフレームである。熱伝導性部材53、54は、熱伝導性を有する材料によって形成された板状の部材であり、熱伝導性部材53は、熱伝導性部材52の平面部52Xに一方の面側に配置されており、熱伝導性部材54は、熱伝導性部材52の平面部52Xに他方の面側に配置されている。ダイヤモンド含有金属層25は、熱伝導性部材53の平面部52X側と反対側の位置に配置されており、ダイヤモンド含有金属層26は、熱伝導性部材54の平面部52X側と反対側の位置に配置されている。これらの部材は、熱的に接続されている。ダイヤモンド含有金属層25、26は、熱伝導体100のダイヤモンド含有金属層20と同様の構成であり、ダイヤモンド含有金属層25は、ダイヤモンド含有金属層20の面20Sに相当する面25Sが熱伝導性部材53側と反対側に位置するように配置されており、ダイヤモンド含有金属層26は、ダイヤモンド含有金属層20の面20Sに相当する面26Sが熱伝導性部材54側と反対側に位置するように配置されている。
【0051】
(製造例5)
熱伝導体140は、例えば、熱伝導性部材52の平面部52Xの一方の面に、ダイヤモンド含有金属層25を形成した熱伝導性部材53を接合し、熱伝導性部材52の平面部52Xの他方の面に、ダイヤモンド含有金属層26を形成した熱伝導性部材54を接合することで得ることができる。具体的には、まず、製造例3-2の基板44として熱伝導性部材53を用いて、ダイヤモンド含有金属層25を形成した熱伝導性部材53を得る。これとは別に、製造例3-2の基板44として熱伝導性部材54を用いて、ダイヤモンド含有金属層26を形成した熱伝導性部材54を得る。次いで、熱伝導性を有する接着剤を用いて、熱伝導性部材52の平面部52Xの一方の面と熱伝導性部材53とを接着し、熱伝導性部材52の平面部52Xの他方の面と熱伝導性部材54とを接着する。
【0052】
なお、ダイヤモンド含有金属層23~26の向きは、上記の構成に限定されない。本発明の熱伝導体が、熱伝導性部材の平面部の両側にダイヤモンド含有金属層が配置された構成であるとき、ダイヤモンド含有金属層は、それぞれ独立して、平滑化されている一方の面を、熱伝導性部材の平面部側に向けてもよいし、平面部側と反対側に向けてもよい。また、熱伝導体130、140において、ダイヤモンド含有金属層の一方または両方をダイヤモンド含有金属層22とする構成としてもよい。
【0053】
<実施形態6>
本発明の熱伝導体は、ヒートスプレッダとすることができ、ヒートシンクなどの放熱部材と組み合わせて、熱源体の熱を逃がすための放熱構造体とすることができる。
図7は、本発明にかかる放熱構造体200の模式図である。
図7に示す放熱構造体200は、熱源体1の上に配置されるヒートスプレッダ10と、ヒートスプレッダ10の上に配置されたヒートシンク3とを備える。
【0054】
ヒートシンク3は、熱源体1に対向する面30Sを有するベース部30を備える部材であり、例えば、ベース部30とベース部30の面30Sと反対側の面に立設された複数の放熱フィン(図示せず)を備える部材が挙げられる。ヒートスプレッダ10は、熱源体1とヒートシンク3のベース部30の面30Sとの間に配置される部材である。ヒートスプレッダ10は、本発明の熱伝導体である。熱源体1とヒートスプレッダ10とヒートシンク3とを熱的に接続することで、熱源体1の熱をヒートスプレッタ10からヒートシンク3に伝え、ヒートシンク3から外へ逃がすことができる。
【0055】
例えば、放熱構造体200は、
図8(A)に示す放熱構造体200aのように、ヒートスプレッダ10が、ダイヤモンド含有金属層20(熱伝導体100)であり、熱源体1と接着剤5(熱伝導性を有する接着剤)によって接合されるヒートスプレッダ10と、ヒートスプレッダ10と接着剤5によって接合されたヒートシンク3とを備える構造とすることができる。
【0056】
また、放熱構造体200は、
図8(B)に示す放熱構造体200bのように、ヒートスプレッダ10が、平面部50Xを有する熱伝導性部材50と、熱伝導性部材50の平面部50Xの一方の面と接着剤5によって接合されたダイヤモンド含有金属層20と、熱伝導性部材50の平面部50Xの他方の面と接着剤5によって接合されたダイヤモンド含有金属層20とを備える熱伝導体であり、熱源体1と接着剤5によって接合されるヒートスプレッダ10と、ヒートスプレッダ10と接着剤5によって接合されたヒートシンク3とを備える構造とすることができる。
【0057】
また、
図8(C)、
図8(D)に示すように、放熱構造体200は、本発明の熱伝導体のダイヤモンド含有金属層をヒートシンク3に直接形成させた構成としてもよい。これにより、電着で、ダイヤモンド含有金属層を接合できる。
【0058】
図8(C)に示す放熱構造体200cは、熱源体1と接着剤5によって接合されるダイヤモンド含有金属層20が、ヒートシンク3に直接形成された構造である。この場合、ダイヤモンド含有金属層20がヒートスプレッダ10である。放熱構造体200cでは、ヒートシンク3を基板44として用いて、ヒートシンク3の面30Sにダイヤモンド含有金属層20を直接形成した後、ヒートシンク3とダイヤモンド含有金属層20とを分離せずに用いる。
【0059】
図8(D)に示す放熱構造体200dは、ヒートシンク3と、ヒートシンク3に直接形成されたダイヤモンド含有金属層20と、ダイヤモンド含有金属層20と接着剤5によって接合された熱伝導性部材50と、熱伝導性部材50に直接形成されたダイヤモンド含有金属層20とを備える構造であり、熱伝導性部材50に直接形成されたダイヤモンド含有金属層20が、接着剤5によって熱源体1と接合される。この場合、ダイヤモンド含有金属層20と熱伝導性部材50とダイヤモンド含有金属層20との積層部分がヒートスプレッダ10である。放熱構造体200dは、次の方法で得ることができる。まず、ヒートシンク3を基板44として用いて、ヒートシンク3の面30Sにエッジ部が向くようにダイヤモンドを並べ、めっき処理をした後、その表面を平滑化し、ダイヤモンド含有金属層20を形成する。これとは別に、熱伝導性部材50の平面部50Xの一方の側にエッジ部が向くようにダイヤモンドを並べ、めっき処理をした後、その表面を平滑化し、ダイヤモンド含有金属層20を形成する。そして、ヒートシンク3に形成されたダイヤモンド含有金属層20と熱伝導性部材50とを接着剤5により接合する。
【0060】
<実施形態7>
本発明の放熱構造体は、電子機器等に組み込み利用することができる。
図9は、放熱構造体210を、CPUダイの放熱構造体として組み込んだ例である。
【0061】
図9に示す放熱構造体210は、ヒートスプレッダである熱伝導体150と、ヒートシンク3を備える。熱伝導体150は、ダイヤモンド含有金属層27が形成された銅板70、および、箱型の熱伝導性部材52を備える。ダイヤモンド含有金属層27は、1層に並べられた複数のダイヤモンド48と、ダイヤモンド48を固定する金属42とを含み、ダイヤモンド48は、八面体以上の多面体であり、ダイヤモンド含有金属層27から突き出しておらず、かつ、隣接するダイヤモンド48と面接触している。また、ダイヤモンド含有金属層27の一方の面である面27Sは、ダイヤモンド48の面27S側の端部48S(すなわち、面27Sに露出したダイヤモンド48の面)が面27Sと同一面になるように平滑化された面であり、ダイヤモンド48のダイヤモンド含有金属層27の他方の面側(銅板70側)の端部48Bが、頂点または稜線である。ダイヤモンド含有金属層27を形成した銅板70は、熱伝導性を有する接着剤5を介して、熱伝導性部材52の平面部52Xの両側に接合されている。ヒートシンク3は、熱伝導性部材52の平面部52Xの外側に位置するダイヤモンド含有金属層27と接着剤5によって接合されている。
【0062】
CPUダイ1aの放熱構造体とするときは、熱伝導性部材52の壁部52Yが、CPUダイ1aを囲むように、放熱構造体210をパッケージ基板7上に配置し、熱伝導体150とCPUダイ1aとを接着剤5によって接着する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、ヒートシンク、ヒートスプレッダ等に用いられる熱を効果的に逃がすための熱伝導体として、電子機器等の分野において利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 熱源体
1a CPUダイ
3 ヒートシンク
3H 穴
4a、4b、40、40b、46、48 ダイヤモンド
5 接着剤
7 パッケージ基板
10、12、14 ヒートスプレッダ
20、21、22、23、24、25、26、27 ダイヤモンド含有金属層
20S、20B、21S、22S、22B、23S、24S、25S、26S、27S30S 面
30 ベース部
40S、40B、46S、46B、48S、48B 端部
42 金属
44 基板
50、52、53、54 熱伝導性部材
50X、52X 平面部
52Y 壁部
60 凹部
70 銅板
100、110、120、130、140、150 熱伝導体
200、200a、200b、200c、200d、210 放熱構造体
【要約】
【課題】隣接するダイヤモンド同士の熱流路を形成でき、他の部材と接合したときに他の部材を変形させにくい、熱伝導体を提供する。
【解決手段】本発明の熱伝導体100は、1層に並べられた複数のダイヤモンド40と、ダイヤモンド40を固定する金属42とを含むダイヤモンド含有金属層20を有し、ダイヤモンド40が、八面体以上の多面体であり、ダイヤモンド含有金属層20から突き出しておらず、かつ、隣接するダイヤモンド40と面接触している。ダイヤモンド含有金属層20の一方の面20Sは、平滑化された面である。また、ダイヤモンド40のダイヤモンド含有金属層20の他方の面20B側の端部40Bが、頂点または稜線であるか、ダイヤモンド含有金属層20の他方の面20Bは、平滑化された面であり、ダイヤモンド40の他方の面20B側の平滑化前の端部が、頂点または稜線である。
【選択図】
図1