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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
A61B17/11
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021543682
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2020031073
(87)【国際公開番号】W WO2021044837
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2019161292
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白濱 憲昭
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0072173(US,A1)
【文献】国際公開第2013/115141(WO,A1)
【文献】特表2019-522556(JP,A)
【文献】特開2015-142790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/11
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの管腔臓器を連通し、前記2つの管腔臓器のうちの一方の管腔臓器から他方の管腔臓器に体液を流すステントであって、
前記2つの管腔臓器の各内腔壁を貫通するとともに、軸方向及び前記軸方向と交差する方向に位置決めされて留置可能な、線材からなる本体用骨格部を有する筒状の本体部と、
前記本体部における前記軸方向の端部に連設され、前記本体部における流体の逆流を防止する弁部と、を備え、
前記弁部は、前記本体部の前記先端部から前記体液の流出口側に向かって偏平形状に窄まるテーパー部を有し、
前記テーパー部は、線材からなる弁部用骨格部と、前記弁部用骨格部に沿って配置された膜体と、を有し、
前記弁部用骨格部の前記線材は、山部と谷部とを交互に複数有するジグザグ形状に折り返し、且つ、前記軸方向の中心軸周りに螺旋状に延在するとともに、前記複数の谷部が前記弁部と前記本体部との連設部位に向かって凸となるように配置され、
前記複数の山部は、前記テーパー部の前記軸方向に直交する幅方向に対向する位置に設けられ、且つ、前記流出口側の端部が前記流出口側に突出する2つの山部を含む、
ステント。
【請求項2】
前記弁部は、一方の端部が前記テーパー部に連設され、他方の端部に前記流出口が設けられ、前記軸方向及び前記幅方向に直交する上下方向の長さ並びに前記幅方向の長さが保持された平坦部を有する、請求項に記載のステント。
【請求項3】
筒状の前記本体部と、
前記本体部の前記軸方向の少なくとも一方の端部に設けられ、前記2つの管腔臓器のうちの少なくとも一方の管腔臓器の内腔壁に係合する係合部と、を備える、請求項1又は2に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの管腔臓器間に内瘻を形成するステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食道、胃、十二指腸、大腸、膵臓、胆道、胆嚢等の腫瘍、周囲のリンパ節、血管等の検査や治療を、超音波内視鏡(EUS:Endoscopic Ultrasonography)を用いて経口的に行う手技が知られている。このような手技の一例として、超音波内視鏡下において、十二指腸又は胃から胆のう又は胆管に穿刺してステントを留置することにより内瘻を形成する超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(EUS-BD:EUS-guided biliary drainage)がある。特許文献1には、隣接する管腔臓器を貫通して配置され、これらの管腔臓器間に内瘻を形成するのに適した医療デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-142790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の医療デバイスの場合、臓器から送出された体液を一方向にのみ流すことができないという問題がある。例えば、特許文献1の医療デバイスは、胆のうから十二指腸に胆汁を直接流すことはできるが、十二指腸から胆のう側への流体の逆流を防止できるようには構成されていない。
【0005】
本発明の目的は、一方の管腔臓器からの体液を一方向に流すことができるステントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステントは、
2つの管腔臓器を連通し、前記2つの管腔臓器のうちの一方の管腔臓器から他方の管腔臓器に体液を流すステントであって、
前記2つの管腔臓器の各内腔壁を貫通するとともに、軸方向及び前記軸方向と交差する方向に位置決めされて留置可能な、線材からなる本体用骨格部を有する筒状の本体部と、
前記本体部における前記軸方向の端部に連設され、前記本体部における流体の逆流を防止する弁部と、を備え、
前記弁部は、前記本体部の前記先端部から前記体液の流出口側に向かって偏平形状に窄まるテーパー部を有し、
前記テーパー部は、線材からなる弁部用骨格部と、前記弁部用骨格部に沿って配置された膜体と、を有し、
前記弁部用骨格部の前記線材は、山部と谷部とを交互に複数有するジグザグ形状に折り返し、且つ、前記軸方向の中心軸周りに螺旋状に延在するとともに、前記複数の谷部が前記弁部と前記本体部との連設部位に向かって凸となるように配置され、
前記複数の山部は、前記テーパー部の前記軸方向に直交する幅方向に対向する位置に設けられ、且つ、前記流出口側の端部が前記流出口側に突出する2つの山部を含む
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一方の管腔臓器からの体液を一方向に流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1A図1Bは、ステントの使用状態の一例を示す図である。
図2図2A図2Bは、ステントの外観を示す斜視図である。
図3図3A図3Dは、ステントの留置工程の一例を示す図である。
図4図4は、ステントの変形例を示す図である。
図5図5は、ステントの使用状態の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態では、本発明の一例として、超音波内視鏡下胆のうドレナージ術(EUS-GBD:EUS-guided gallbladder drainage)に適用するステント1について説明する。
【0010】
図1は、ステント1の使用状態の一例を示す図である。図1Bは、図1Aにおけるドレナージ部位の拡大図であり、胆汁の流れを矢印で示している。図2A図2Bは、互いに異なる方向から視たステント1の外観を示す斜視図である。
【0011】
図1A図1Bに示すように、ステント1は、胆のうGと十二指腸Dとの間に胆汁の流路となる内瘻を形成するために使用される連通部材であり、胆のう壁GWと十二指腸壁DWを貫通するように留置される。ステント1により胆のうGと十二指腸Dとが連通され、胆のうGに貯留された胆汁が十二指腸Dに直接流入可能となる。
【0012】
図2A図2Bに示すように、ステント1は、本体部10と、本体部10における流体の逆流を防止する弁部20と、連通対象である2つの管腔臓器の内腔壁(内腔壁に形成される貫通孔の内面を含む)に係合する係合部30と、を備える。本実施の形態では、係合部30として、ステント1の留置時に、胆のう壁GWに係合する第1係合部31と、十二指腸壁DWに係合する第2係合部32とが設けられている。
【0013】
本体部10は、例えば、軸方向に直交する横断面形状が円形状であり、軸方向に所定の長さを有する筒状に形成されている。本体部10の外径は、胆のう壁GW及び十二指腸壁DWに形成される貫通孔GW1、DW1(図3A等参照)の外径よりも大きく、本体部10が貫通孔GW1、DW1に圧入されるようになっている。また、本体部10の長さは、連通対象である胆のう壁GWの厚さと十二指腸壁DWの厚さを加算した値以下であることが好ましい。これにより、胆のう壁GWと十二指腸壁DWを、確実に密着した状態で保持することができる。
【0014】
以下において、本体部10の図2Aにおける右手奥側となる一方の端部10aを「第1の端部10a」と称し、図2Aにおける左手前側となる他方の端部10bを「第2の端部10b」と称する。ステント1は、胆汁の流れ方向において、第1の端部10aが上流側、第2の端部10bが下流側となるように留置される(図1B等参照)。
【0015】
本体部10は、骨格部11と皮膜部12を有する、いわゆるカバードステントである。
骨格部11は、例えば、1又は複数の金属線材を山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら、軸方向に螺旋状に巻回した構成を有する。また例えば、骨格部11は、金属線材を山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら円環状に形成した複数の骨格を、軸方向に所定の間隔で配置して形成されてもよい。
骨格部11は、軸方向に略直交する径方向において、内側に収縮した収縮状態から、外側に拡張して筒状流路を画成する拡張状態へと自己拡張可能に構成されている。
【0016】
骨格部11を形成する線材の材料、線種(例えば、ワイヤー等の円形線材、又は、レーザーカットによる角状線材)、線径(断面積)、周方向における折り返し回数及び折り返し形状(山部の数及び山部の形状)、並びに、軸方向における線材間隔(螺旋ピッチ(単位長さ当たりの骨格量))等は、留置部位に応じて必要となる本体部10の柔軟性を基準として適宜選択される。ここで、柔軟性とは、本体部10の曲がり易さのことであり、特に、軸方向の曲げ剛性により規定される。すなわち、本体部10の柔軟性が高いとは、軸方向の曲げ剛性が適度に低く、留置部位やシース内でキンクすることなく当該留置部位やシースの形状に追従する性質を有することをいう。
【0017】
骨格部11を形成する金属線材の材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金(ニチノール)、チタン合金等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。また、X線造影性を有する合金材料を用いてもよい。なお、骨格部11は、金属材料以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されてもよい。
また、骨格部11は、例えば、1本の金属パイプ(例えば、Ni-Ti合金からなるパイプ等)をレーザー加工(レーザーカット)することにより形成されてもよい。
後述する弁部20に設けられる骨格部23を形成する金属線材、並びに、第1係合部31及び第2係合部32を形成する金属線材についても同様である。
【0018】
皮膜部12は、胆汁の流路を形成する膜体である。皮膜部12は、骨格部11を挟み込むように、骨格部11の外周面及び内周面に配置されてもよいし、骨格部11の外周面及び内周面の何れか一方だけに配置されてもよい。
【0019】
皮膜部12を形成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0020】
弁部20は、胆のうGからの胆汁を一方向にのみ通過させ、十二指腸Dからの逆方向の流れ(例えば、消化物の流れ)を防止する。本実施の形態では、弁部20は、本体部10における胆汁の流れ方向下流側である第2の端部10bに連設され、胆汁の流出口20bを有する。弁部20は、本体部10の皮膜部12と同様に、膜体によって形成され、皮膜部12と一体的に形成される。
【0021】
弁部20は、例えば、本体部10における胆汁(体液)の流れ方向の下流側に向けて先細り形状に形成される。本実施の形態では、弁部20は、本体部10に連設されたテーパー部21と、テーパー部21の先端側に連設された平坦部22を有し、流体圧によって外形が変形する吹き流し形状に形成されている。
【0022】
テーパー部21は、流入口20aから平坦部22に向かって、軸方向に直交する幅方向D2の長さはほとんど変化することなく、軸方向及び幅方向D2に略直交する上下方向D1の長さが短くなるように形成されている。
【0023】
また、テーパー部21は、例えば、ジグザグ形状に折り返した金属線材を螺旋状に延在させた骨格部23が本体部10との連設部位に沿って配置されている。また、骨格部23は、その先端側(平坦部22側)の端部が先端側に突出する2つの山部23aを有している。2つの山部23aは、軸方向に関して対称、すなわち幅方向D2に対向する位置に設けられる。山部23aを有する骨格部23に沿って膜体が配置されることで、テーパー部21が先端側に向かって偏平形状に窄まっている。
【0024】
平坦部22は、上下方向D1及び幅方向D2の長さが保持されるように形成され、上下方向D1の長さ(平坦部22の厚さ)が幅方向D2の長さ(平坦部22の幅)よりも小さい偏平形状を有する。また、平坦部22の胆汁流出側(先端側)の端部に流出口20bが設けられている。
流出口20bは、胆汁が通過していないときは一直線上に閉塞する。一方、流出口20bは、胆汁が通過するときは、胆汁による内圧によって流出口20bが押し拡げられ、例えば、楕円形状や矩形状を呈する。これにより、胆汁の流れを阻害することなく、十二指腸Dから本体部10への流体(例えば、消化物)の流入が抑制される。なお、胆汁が通過するときの流出口20bの形状は、胆汁が通過可能な形状であれば、特に限定されない。
【0025】
また、骨格部23は、例えば、2つの山部23aの頂部同士が互いに幅方向D2に離隔するように付勢されていてもよい。これにより、胆汁が通過していない状態では、2つの山部23aによりテーパー部21の先端側(平坦部22の後端側)が幅方向D2に離れるように引っ張られるので、流出口20aを開状態から閉状態に速やかに移行させ、十二指腸Dからの流体の流入を効果的に防止することができる。
【0026】
第1係合部31及び第2係合部32は、本体部10の軸方向に沿う第1形状、及び、本体部10の軸方向と交わる(例えば、略直交する)方向に張り出す第2形状を呈するように変形可能となっている。
第1係合部31及び第2係合部32は、例えば、ステント留置装置100のシース101(図3A等参照)に収納された状態では軸方向に引き延ばされて又は折り畳まれて第1形状を呈し、ステント留置装置から放出されると第2形状を呈して、管腔臓器の内腔壁(例えば、胆のう壁GW及び十二指腸壁DW)に係合する。すなわち、第1係合部31及び第2係合部32は、自己展開可能に構成されている。図2A図2Bでは、第1係合部31及び第2係合部32が、第2形状を呈している場合を示している。
【0027】
第1係合部31及び第2係合部32は、例えば、形状記憶材料(例えば、Ni-Ti合金)で形成され、第2形状となっている状態で熱処理が施され、全体の形状が記憶される。これにより、ステント1のシース101(図3A等参照)からの放出に伴い、第1係合部31及び第2係合部32は確実に展開して第1形状を呈する。
【0028】
第1係合部31及び第2係合部32は、例えば、金属細線が網目状に編み込まれて、ドーナツ型の第2形状を呈するように形成される。第1係合部31及び第2係合部32は、本体部10の骨格部11を形成する金属線材により、骨格部11と一体的に形成されてもよいし、本体部10とは別体で形成されてもよい。第1係合部31及び第2係合部32は、本体部10と別体で形成される場合は、例えば、骨格部11にかしめて接続される。
【0029】
胆のう壁GWに係合される第1係合部31は、第2形状を呈するときに、本体部10の第1の端部10aが第1係合部31から突出しないように、第1の端部10aの後端に連設されるのが好ましい。本体部10の第1の端部10aが第1係合部31から突出していると、皮膜部12が形成されている第1の端部10aを胆汁が乗り越えて本体部10に流入することになり、胆汁の流れが阻害される虞があるためである。すなわち、第1係合部31を第1の端部10aの後端に連設することにより、胆汁を本体部10にスムーズに流入させることができる。
【0030】
なお、第1係合部31及び第2係合部32の第2形状は、適宜任意に変更可能であり、例えば、ドーナツ型よりも軸方向に潰れたフランジ形状であってもよい。
【0031】
また、ステント1は、留置されているステント1を抜去する際に使用される抜去補助部40(ラッソ)を有する。抜去補助部40は、例えば、本体部10の軸方向両端部のうちの第2の端部10b(下流側端部)に、軸方向に突出するように設けられる。抜去補助部40は、回収用カテーテルの先端に設けられた引掛け具(スネア:回収用部材)が係着される係着部41を有する。この係着部41は、例えば、線材を屈曲加工することにより形成され、例えば、フック形状を有していてもよいし、ループ形状を有していてもよい。抜去補助部40を形成する線材には、例えば、骨格部11等と同様のものを適用することができ、抜去補助部40を骨格部11と一体的に形成してもよい。
【0032】
図3A図3Dは、ステント1の留置工程の一例を示す図である。
超音波内視鏡下胆のうドレナージ術(ここでは、EUS-GBD)では、超音波内視鏡が、経口的に導入され、食道、胃を通って、十二指腸Dの所定部位まで送達される。ステント1は、例えば、第1係合部31及び第2係合部32が折り畳まれた状態でステント留置装置100のシース101に収納され、超音波内視鏡を介して体内に導入される。また、ステント留置装置100は、例えば、シース101の先端側に先端チップ102が設けられている。なお、先端チップ102には、管腔臓器の内腔壁を高周波通電により切開可能な切開部(図示略)を有し、十二指腸壁DW及び胆のう壁GWを切開しつつシース101を挿入できるようにしてもよい。
【0033】
まず、図3Aに示すように、ステント留置装置100の先端チップ102側から十二指腸壁DW及び胆のう壁GWの貫通孔DW1、GW1にシース101を貫通させる。このとき、超音波内視鏡により、穿刺ライン上に血管などがないことを確認した上で、穿刺が行われる。
【0034】
次に、ステント1の位置を固定した状態で、ステント1に対してシース101を近位側に移動させる。これに伴い、ステント1の遠位側が展開を始める。そして、ステント1に対してシース101をさらに近位側に移動させると、ステント1の第1係合部31が完全に展開して第2形状となる(図3B参照)。
【0035】
この状態で、シース101とともにステント1を近位側に移動させることで、ステント1の第1係合部31は胆のう壁GWに係止される。ステント1及びシース101をさらに近位側に移動させると、ステント1の第1係合部31が胆のう壁GWの内面に係止されているので、胆のう壁GWが十二指腸壁DW側に引き寄せられ、胆のう壁GWの外面と十二指腸壁DWの外面が密着する(図3C参照)。このとき、ステント1の本体部10のシース101から放出された部分は、十二指腸壁DW及び胆のう壁GWに形成された貫通孔DW1、GW1に圧入され、軸方向及び径方向に位置決めされた状態となる。
なお、図3Bの状態を経ることなく、ステント1の第1係合部31が放出されて完全に展開して第2形状となった状態で、第1係合部31が胆のう壁GWに係止されるようにしてもよい。
【0036】
次に、ステント1に対してシース101をさらに近位側に移動させる。これに伴い、シース101からステント1が完全に放出されると、ステント1の近位側の第2係合部32が展開して第2形状となり、十二指腸壁DWの内面に係止される(図3D参照)。ステント1の本体部10の長さが、十二指腸壁DW及び胆のう壁GWの厚さと同等以下に設定されている場合、両者は強固に密着した状態で保持される。このとき、弁部20は、十二指腸Dに露出した状態となる。
以上の工程によって、胆のうGと十二指腸Dとがステント1によって連通され、胆汁が胆のうGからステント1の内腔を経て十二指腸Dに流入するようになる。
【0037】
このように、ステント1は、胆のうGと十二指腸D(2つの管腔臓器)を連通し、胆のうG(一方の管腔臓器)から十二指腸D(他方の管腔臓器)に胆汁(体液)を流すステントであって、胆のう壁GWと十二指腸壁DW(2つの管腔臓器の各内腔壁)を貫通するとともに、軸方向及び軸方向と交差する方向に位置決めされて留置可能な本体部10と、本体部10における流体の逆流を防止する弁部20と、を備える。
ステント1によれば、本体部10が軸方向及び軸方向と交差する方向に位置決めされた状態で留置でき、ステント1を適正に留置して内瘻を形成することができる。そして、弁部20により本体部10における流体の逆流を防止することができ、一方の管腔臓器である胆のうGからの体液(胆汁)を一方向に流すことができる。
【0038】
また、弁部20は、膜体により形成され、この膜体は、本体部10における体液の流れ方向の下流側に向けて先細り形状に形成されている。これにより、弁部20の形状によって本体部10への流体の流入が物理的に阻止され、本体部10における流体の逆流を確実に防止することができる。
【0039】
また、弁部20は、本体部10における第2の端部10b(軸方向の一端部)に設けられ、本体部10を流れる胆汁(体液)の流出口20bを有する。これにより、消化物等の意図しない流体が本体部10に流入し、本体部10が消化物等によって詰まるのを防止することができ、本体部10の流通状態を正常に維持することができる。
【0040】
また、ステント1は、筒状の本体部10と、本体部10の第1の端部10a(軸方向の少なくとも一方の端部)に設けられ、胆のう壁GWに係合する第1係合部31及び第2の端部10bに設けられ、十二指腸壁DWに係合する第2係合部32と、を備える。これにより、ステント1の軸方向の位置ずれを防止でき、適正な留置状態を維持することができる。
【0041】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0042】
例えば、図4に示すように、ステント1は、弁機能を有さないステント2がすでに留置されている場合に、この留置済みの弁なしステント2に対して係合することもできる。留置済みのステント2が、胆のう壁GW及び十二指腸壁DWに係合する係合部51、52を有している場合、ステント1の第1係合部31及び第2係合部32は、それぞれ、ステント2の係合部51、52の外側若しくは内腔側に係合する。また、ステント1の本体部10は、ステント2の本体部50に内接して密着する。この場合、留置済みのステント2によって胆汁の漏出は防止されるので、ステント1の本体部10は、径方向への拡張力を発揮する骨格部11を備えていればよく、皮膜部12を備えていなくてもよい。
【0043】
また例えば、実施の形態では、弁部20が平坦部22を有している場合について説明したが、弁部20は、平坦部22を有していなくてもよい。ただし、実施の形態のように、弁部20に平坦部22を設けた方が弁機能は向上する。また、弁部20は、骨格部23を有していなくてもよい。例えば、弁部20と同様の形状を有する基材に沿って膜体を形成することにより、骨格部23がなくても弁部20の形状は保持される。
【0044】
また、弁部20は、本体部10と別部材で形成され、本体部10の一方の端部(例えば、第1の端部10a)に接続されてもよい。弁部20は、本体部10の内部に設けられてもよいし、本体部10の一方の端部と内部の両方に設けられてもよい。弁部20を本体部10の内部に設ける場合、例えば、人工心臓弁のように弁体の開閉により流通状態と遮断状態が切り替わる構造を適用することができる。また、本体部10の内部において、弁部20を複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0045】
また、本体部10は、皮膜部12を有さず、骨格部11のみからなるベアステントで構成されてもよい。この場合、骨格部11の編み目を極めて小さく形成したり、骨格部11を複数層重ねることで、本体部10を流下する体液(例えば、胆汁)の本体部10からの漏出を防止することができる。
【0046】
また、ステント1は、第1係合部31及び第2係合部32のうちの一方(例えば、第1係合部31)だけ備える構成であってもよいし(図5のステント1A参照)、両方とも備えない構成であってもよい(図示略)。第1係合部31及び第2係合部32の両方を備えないステントにおいては、本体部10が十二指腸壁GW及び胆のう壁DWの貫通孔DW1、GW1に圧入されることで、例えば、骨格部11が貫通孔DW1、GW1に埋没して係合部30として機能し、軸方向及び径方向に位置決めされる。
【0047】
本発明に係るステントは、超音波内視鏡下胆のうドレナージ術(EUS-GBD)に限らず、胃と胆管を接続するEUS-HGS(EUS-guided hepaticogastrostomy)、十二指腸と胆管を接続するEUS-CDS(EUS-guided choledochoduodenostomy)など、超音波内視鏡下で行われるドレナージ術全般に使用することができる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0049】
2019年9月4日出願の特願2019-161292の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0050】
1、1A ステント
10 本体部
10a 第1の端部
10b 第2の端部
12 皮膜部
20 弁部
20b 流出口
30 係合部
31 第1係合部
32 第2係合部
図1
図2
図3
図4
図5