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特許7631637活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20250212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250212BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C09D11/38
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022540119
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2021025774
(87)【国際公開番号】W WO2022024704
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2024-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2020128738
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
(72)【発明者】
【氏名】明瀬 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】川端 潤
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-035650(JP,A)
【文献】国際公開第2009/148124(WO,A1)
【文献】特開2020-100777(JP,A)
【文献】特開2018-168321(JP,A)
【文献】特開2019-056111(JP,A)
【文献】特開2018-188581(JP,A)
【文献】特表2008-507598(JP,A)
【文献】国際公開第2022/024706(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/024705(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/186838(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/160784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00 - 13/00
B41J 2/01 - 2/215
B41M 5/00
B41M 5/50
B41M 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A~Eの要件を満たし、且つ(D)と(E)の化合物の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中30.0~60.0質量%である活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物:
(A)分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物を、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中1.0~20.0質量%含有、
(B)アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中2.0~20.0質量%含有、
(C)炭素数10~20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中2.0~25.0質量%含有、
(D)1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレートおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中、5.0~25.0質量%含有、
(E)植物油由来の1,10-デカンジオールジアクリレートを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中10.0~40.0質量%含有。
【請求項2】
(B)のアルコキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーの50~100質量%が、多官能アルコキシ(メタ)アクリレートモノマーである請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
(F)光重合開始剤を含有する請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項4】
(F)光重合開始剤が、
2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド
エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}
ポリマータイプの開始剤
ビス[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]エーテル、
から選ばれた1種以上である請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項5】
(G)水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中3.0~20.0質量%含有する、請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項6】
(C)炭素数10~20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、植物油由来のラウリルアクリレートである請求項1~5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項7】
(H)着色剤を含む、請求項1~6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙類、塩化ビニル系重合体やエチレン-酢酸ビニル系共重合体等の樹脂からなるシート等の基材、特に、段ボールシートに対して印刷するのに適した活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物、及びそれを用いて得られる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インクの硬化時において、硬化しわの発生防止を課題とすることは公知である。
また、アミン変性オリゴマーを含有し、同時に複数の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含有したインクジェット用インク組成物も、例えば、特許文献2に記載されるように公知である。しかしながらこのようなインク組成物は、本発明におけるCやDの要件等を満たさない。
また、近年、枯渇性資源でない産業資源として「バイオマス」が注目されている。「バイオマス」は、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」である。また、環境保全を目的に、1980年代から、バイオマスを原材料とする、バイオマスポリマーが開発されている。バイオマスポリマーは、地球環境温暖化防止策として、有用と考えられており、成型加工、繊維、不織布、包装、トナー、インク、塗料、フィルム、シート、フォーム、コーティング剤、接着剤等、各種多様な製品の素材として期待されている。
段ボールに使用する活性エネルギー線硬化型インクジェット分野でも「バイオマス」を使用した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及び臭気が少なく、耐折れ曲がり性、耐摩擦性に優れた活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2007/074768号
【文献】国際公開第2017/073654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決する課題は、植物由来の原料を使用した活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得ることであり、さらに、臭気が少なく、低粘度であり、活性エネルギー線による硬化性に優れ、硬化皮膜に硬化しわが発生せず、硬化性、折り曲げ耐性に優れる活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.下記(A)~(E)の要件を満たし、且つ(D)と(E)の化合物の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中30.0~60.0質量%である活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
(A)分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物を、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中1.0~20.0質量%含有
(B)アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中2.0~20.0質量%含有
(C)炭素数10~20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中2.0~25.0質量%含有
(D)1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレートおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中、5.0~25.0質量%含有
(E)植物油由来の1,10-デカンジオールジアクリレートを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中10.0~40.0質量%含有
2.(B)のアルコキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーの50~100質量%が、多官能アルコキシ(メタ)アクリレートモノマーである1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
3.(F)光重合開始剤を含有する1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
4.(F)光重合開始剤が、
2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、
エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、
ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、
オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、
ポリマータイプの開始剤、
ビス[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]エーテル、
から選ばれた1種以上である1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
5.(G)水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中3.0~20.0質量%含有する、1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
6.(C)炭素数10~20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、植物油由来のラウリルアクリレートである1~5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
7.(H)着色剤を含む、1~6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、植物由来の原料を使用した原料を含有しても、十分に適切に印刷ができる。臭気が少なく、低粘度であり、活性エネルギー線による硬化性に優れ、硬化皮膜に硬化しわが発生せず、硬化性、折り曲げ耐性に優れるという効果を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、上記A~Eの要件を満たすものであり、以下に順に説明する。
<要件A>
要件Aとしては、分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物を、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中1.0~20.0質量%含有することである。
ここで、分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物は限定されるものではない。一例を挙げると、アクリル化アミン化合物における光重合性官能基は、可視光または紫外線や電子線等の電離放射線を含む不可視光により重合反応し、分子間に架橋結合を形成し得る官能基が挙げられる。また、光重合性官能基は、光照射により直接活性化して光重合反応する狭義の光重合性官能基、光重合性官能基と光重合開始剤とを共存させて光照射した時に光重合開始剤から発生した活性種の作用により重合反応が開始、促進される広義の光重合性官能基のいずれも含まれる。
【0008】
光重合性官能基は、エチレン性二重結合等の光ラジカル重合反応性を有するもの、エポキシ基等の環状エーテル基等の光カチオン重合および光アニオン重合反応性を有するもの等である。これらの中でも、光重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物は、2個の光重合性官能基が共に(メタ)アクリロイル基であり、また、アミン価が130~142KOHmg/gであることが好ましい。なお、このアミン価は固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(たとえば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM-900、BURET B-900、TITSTATION K-900)、平沼産業(株)製)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値である。
【0009】
分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物は、2官能(メタ)アクリレートとアミン化合物とを反応させて得られるアクリル化アミン化合物であることが好ましい。
2官能(メタ)アクリレートは、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、臭素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールアルキレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート等である。これらの中でも、2官能(メタ)アクリレートは、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0010】
アミン化合物は、ベンジルアミン、フェネチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、n-ペンチルアミン、イソペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン等の単官能アミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、メンタンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシルメタン、イソフォロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、スピロアセタール系ジアミン等の多官能アミン化合物等である。また、アミン化合物は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の高分子量タイプの多官能アミン化合物であってもよい。
【0011】
上記分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物は、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートとアミン化合物とを反応させて得られる化合物であることが好ましい。具体的には、分子内に2個の活性エネルギー線重合性官能基及び2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物のオリゴマーであるCN371、CN373、CN383、CN386(サートマー社製)等のアクリル化アミン化合物である。さらに、EB7100(EBECRYL 7100、サイテック社製)、Agi008(DSM社製)等も使用できる。
活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の、分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物の含有量は、1.0質量%以上であり、好ましくは4.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上である。
また、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の、分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物の含有量は、20.0質量%以下であり、好ましくは12.0質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以下である。
分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物の含有量が1.0質量%未満である場合には、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、硬化性が劣る傾向がある。一方、含有量が20.0質量%を超える場合には、インク組成物は、保存安定性および吐出安定性が低下する傾向がある。
【0012】
また、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の全光重合性成分に対する、分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物の含有量は、好ましくは1.2質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上である。
また、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の全光重合性成分に対する、分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物の含有量は、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは14.0質量%以下である。
【0013】
<要件B>
要件Bとしては、アルコキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の全重合性成分中2.0~20.0質量%含有することである。
アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、(メタ)アクリレートモノマーは、臭気の少ない各種単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能(メタ)アクリレートモノマー、4官能以上の多官能アクリレートモノマー等である。環境面を考慮して、バイオマス由来のアルコキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。
具体的には、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール構造含有単官能アルコキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、
さらにエトキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能のアルコキシ基含有(メタ)アクリレートを採用することもできる。
【0014】
活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中のアルコキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、好ましくは2.0質量%以上である。
また、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の、アルコキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、20.0質量%以下であり、好ましくは13.0質量%以下である。
活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中のアルコキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が2.0質量%未満であると、耐折り曲げ性に劣ることになり、20.0質量%を超えると耐水性が劣ることがある。
また、要件B中のアルコキシ基含有(メタ)アクリレートの50~100質量%が、アルコキシ基含有多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。アルコキシ基含有多官能(メタ)アクリレートがこの範囲であると耐摩擦性に優れる被膜を得ることができる。
【0015】
<要件C>
要件Cとしては、炭素数10~20のアルキル基含有(メタ)アクリレートを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に2.0~25.0質量%含有することである。炭素数10~20のアルキル基は直鎖、分岐及び脂環構造のいずれの構造も有することができる。
ここで、炭素数10~20のアルキル基含有(メタ)アクリレートは単官能の(メタ)アクリレートである。
その例として、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の炭素数10~20のアルキル基含有(メタ)アクリレートの含有量は、2.0質量%以上であり、好ましくは3.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上である。
また、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の、炭素数10~20のアルキル基含有(メタ)アクリレートの含有量は、25.0質量%以下であり、好ましくは23.0質量%以下であり、より好ましくは21.0質量%以下である。
炭素数10~20のアルキル基含有(メタ)アクリレートの含有量が、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の2.0質量%未満であると、耐折り曲げ性が劣ることになり、25.0質量%を超えると耐摩擦性が劣ることになる。
【0017】
この炭素数10~20のアルキル基含有(メタ)アクリレートの原料の一つは、(メタ)アクリル酸であり、他方の原料は、炭素数10~20のアルコールである。そして、このアルコールは例えば植物由来の原料から得ることができ、再生可能な炭素を有するものである。この植物由来の原料としては、パーム油やパーム核油、ヤシ油等の植物原料である。
炭素数10~20のアルキル基は比較的炭素数が多いので、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中これを原料とした(メタ)アクリレートをより多く使用するほど、組成物全体中のバイオマス由来の炭素を多く使用できる効果がある。
【0018】
<要件D>
要件Dとしては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレートおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートから選択される少なくとも1種を、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に5.0~25.0質量%含有することである。
活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中のこれらのジ(メタ)アクリレートの合計含有量は、5.0質量%以上であり、好ましくは7.0質量%以上であり、より好ましくは9.0質量%以上である。
また、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の、これらのジアクリレートの合計含有量は、25.0質量%以下であり、好ましくは23.0質量%以下であり、より好ましくは21.0質量%以下である。
【0019】
<要件E>
要件Eとしては、植物油由来の1,10-デカンジオールジアクリレートを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中10.0~40.0質量%含有することである。
この植物油由来とは、原料の一つである1,10-デカンジオールが植物油由来であることを示す。
活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の1,10-デカンジオールジアクリレートの合計含有量は、10.0質量%以上であり、好ましくは13.0質量%以上であり、より好ましくは17.0質量%以上である。
また、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の、これらのジ(メタ)アクリレートの合計含有量は、40.0質量%以下であり、好ましくは35.0質量%以下であり、より好ましくは33.0質量%以下である。
なお、要件Dと要件Eの化合物の合計量が活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中30.0~60.0質量%となる範囲で含有させる。要件Dと要件Eの合計量が30.0質量%未満であると耐摩擦性が劣り、60.0質量を超える場合は耐折り曲げ性が劣る。
【0020】
<要件G>
要件Gとしては、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に3.0~20.0質量%含有させることができる。但し、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有しても良くしなくても良い。
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、下記のモノマーから1種以上を使用することができる。
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド、EO(エチレンオキサイド)変性コハク酸(メタ)アクリレート等、また、臭気の少ない(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
【0021】
本発明において、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の全光重合性成分中の水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、好ましくは7.0質量%以上であり、好ましくは15.0質量%以下である。
【0022】
<要件I>
要件Iとして、ビニルモノマーを、含有させることができる。ビニルモノマーは、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中の全重合性成分中に1.0~20.0質量%含有させることができる。ビニルモノマーを含有させることにより、段ボールシート等に印刷し、かつ、段ボールシート等が折り曲げられた場合、折り曲げ耐性がより良好となる。
但し、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中にビニルモノマーを含有しても良くしなくても良い。
ビニルモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、ビニルモノマーは、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等である。
これらの中でも、ビニルモノマーは、臭気の少ないトリエチレングリコールジビニルエーテル等であることが好ましい。
【0023】
<その他の化合物>
本発明において、要件A~E、G、Iにて対象となった重合性成分以外に、性能が低下しない範囲で、臭気の少ない範囲で重合性化合物を含有させることができる。
なお下記の化合物の記載のうち、ポリオール部分の前の(ポリ)は、モノ-又はジ-以上のポリオールの縮合体を意味する。
(アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート)
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
【0024】
((ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート)
グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、
((ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート)
トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、
【0025】
((ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート)
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート。
【0026】
(その他の多価アクリレート)
上記に包含されない多価アクリレートとして以下のものを使用できる。
ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキシドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー等、
ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等。
なお、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルや2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルは含有してもしなくても良い。
【0027】
<その他の光重合性成分>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物に配合できる光重合性成分として、以下のものが挙げられる。
ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、
その他に、アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリル酸、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
なおアミド基含有モノマーを含有しても良く含有しなくても良い。
【0028】
<要件F>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に光重合開始剤を含有させることができる。なお活性エネルギー線として電子線を使用する際には、光重合開始剤を含有させても良く、または含有させなくても良い。
使用できる光重合開始剤は例えば下記のものが挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤である、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(Irgacure 819、又はSB-PI719)、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(TPOL)等、
α-ヒドロキシケトン系重合開始剤である、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル〕-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(Irgacure127)、2-ヒドロキシ-4’-ヒドロキシエトキシ-2-メチルプロピオフェノン(Irgacure2959)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure184)、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}(ESACURE ONE)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]エーテル(KIP160)等。
【0029】
その他、ベンゾフェノン系化合物(4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等)、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4’-(メチルチオ)-α-モルホリノ-α-メチルプロピオフェノン、チオフェニル系化合物(4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド)、チオキサントン系化合物(2,4-ジエチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン)、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、エチルミヒラーズケトン、ポリマータイプの開始剤(Omnipol TP、Omnipol BP)、1-〔4-(4-ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル〕-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン(ESACURE1001M)である。
このような光重合開始剤は市販されており、たとえばIrgacure907、Irgacure369、Irgacure184、Irgacure379、Irgacure819、TPO等の商品名で入手することができる。複数の光重合開始剤は、併用されてもよい。
【0030】
なかでも、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤とα-ヒドロキシケトン系重合開始剤を併用することが好ましく、さらに、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、及びオリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}を併用することが好ましい。
なお、チオキサントン系光重合開始剤を含有しなくても良い。
【0031】
光重合開始剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光源として紫外線(UV)、紫外線(発光ダイオード(LED))を用いる場合は、光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中、3.0質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中、25.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であることにより、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、充分な硬化性、内部硬化性および低コストとし得る。
【0032】
(増感剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、さらに、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性を促進する等のために、400nm以上の主に紫外線の波長域で光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応の増感機能が発現する光増感剤(化合物)を重合開始剤と共に使用できる。なお、上記「400nm以上の波長の光により増感機能が発現する」とは、400nm以上の波長域で光吸収特性を有することをいう。このような増感剤を用いることで、本実施形態のインク組成物は、LED硬化性を促進され得る。
【0033】
そのような増感剤としては、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等で、好ましくは、チオキサントン系増感剤である。これらは単独又は2種以上を併用できる。
具体的には、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤を挙げることができる。市販品の代表例としては、アントラセン系増感剤では、DBA、DEA(川崎化成工業社製)、チオキサントン系増感剤では、DETX、ITX、CPTX(Lambson社製)、Omnipol TX(IGM社製)等が例示できる。
増感剤の含有量は、好ましくは活性エネルギー線重合性成分の総質量に対して0~8.0質量%である。8.0質量%を超えても効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
なお、増感剤として、チオキサントン系増感剤を使用した場合は、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を黄色に変色させる傾向があるため、顔料等に基づく色(本来の色相)より黄味がかった色相になるので、色毎に、チオキサントン系増感剤の含有量を適宜決めることが好ましい。
具体的には、色味の変化の影響を受けやすいホワイトインク組成物及びクリアーインク組成物では、増感剤として、チオキサントン系化合物は含まないようにすることが好ましい。また、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物では、色相の変化が問題となるので、色相に問題が生じない範囲で使用することが好ましい。また、ブラックインク組成物、及びイエローインク組成物は、変色があっても色相に影響しないこと、活性エネルギー線重合性が他の色相より乏しいことから、増感剤として、チオキサントン系化合物を併用することが好ましい。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の性能が低下しない範囲内で、上記アクリル系樹脂以外の樹脂、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂及びエチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等を併用することも可能である。
【0035】
(要件H)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物に含有される着色剤としては、従来から活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物に使用されている公知の顔料、染料を使用でき、有機着色顔料及び無機着色顔料等の着色顔料であることが好ましい。この結果、各色の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得ることができる。
【0036】
有機着色顔料は、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等である。
無機着色顔料は、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、群青、紺青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料等である。
【0037】
上記の着色顔料の代表的な色相ごとの具体例は以下のとおりである。
イエロー顔料は、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等であり、C.I.Pigment Yellow 150、155、180、213等であることが好ましい。
マゼンタ顔料は、C.I.Pigment Red 5、7、12、19、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等であり、C.I.Pigment Red 122、202、C.I.Pigment Violet 19等であることが好ましい。
シアン顔料は、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等であり、C.I.Pigment Blue 15:4等であることが好ましい。
ブラック顔料は、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等である。
ホワイト顔料は、酸化チタン、酸化アルミニウム等であり、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理された酸化チタン等であることが好ましい。
着色剤の含有量は、インク組成物中1質量%以上であることが好ましく、インク組成物中20質量%以下であることが好ましい。着色剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、得られる印刷物の画像品質が適切となり、かつ、粘度特性が優れる。
【0038】
(顔料分散剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物が顔料を有する際に含有しても良い顔料分散剤としては、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物等である。
中でも高分子化合物であるものが好ましく、例えば、特開2004-083872号公報、国際公開第2003/076527号、国際公開第2004/000950号に記載されているカルボジイミド系化合物、塩基性官能基含有共重合物であるアジスパーPB821、822(味の素ファインテクノ社製)、ソルスパース56000(ルーブリゾール社製)、ソルスパース32000(ルーブリゾール社製)、ソルスパース39000(ルーブリゾール社製)、DISPERBYK(ビックケミー・ジャパン社製)等が好ましい。これら顔料分散剤は1種または2種以上を混合して使用できる。
中でもアミン価が10~40mgKOH/gの塩基性官能基含有共重合物が好ましい。
なお、上記顔料分散剤は、顔料の種類、使用する有機溶剤の種類に応じて適宜選択して使用する。
【0039】
(有機溶剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、全ての液体成分が硬化反応されて固化するいわゆる無溶剤型でも良く、印刷後の塗膜を乾燥して溶媒を除去したのちに硬化させる溶剤型でも良い。但し、溶媒として水を使用しない。
以下本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物に有機溶剤を含有させた場合について記載する。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物に含有しても良い有機溶剤は、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル及びジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等である。
【0040】
ジエチレングリコールジアルキルエーテルとしてはジエチレングリコールエチルメチルエーテル及び/又はジエチレングリコールジエチルエーテルを使用することが好ましく、さらに別のジエチレングリコールジアルキルエーテルを併用することができる。
ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートとしては、好ましくは炭素数6以下のアルキル基であるもの、更に好ましくは炭素数3以下のアルキル基であるもの、より好ましくは炭素数2以下のアルキル基であるものを採用できる。
【0041】
また、乾燥性の調整及びモタリング発生防止性をさらに向上させるために、ジエチレングリコールジアルキルエーテル以外に、引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体を併用することができる。
このような引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体としては、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の(ポリ)プロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート等の(ポリ)エチレングリコールジエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の(ポリ)エチレングリコールモノエーテルモノエステル等が例示できる。
引火点50~150℃のアルキレングリコール誘導体の内で、まず、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
また、溶媒全体の引火点を大きく変更しない範囲において、引火点が50~150℃の範囲内ではない、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を併用しても良い。
【0042】
(その他成分)
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、必要に応じて、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0043】
(活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、25℃における粘度が好ましくは30.0mPa・s以下である。30mPa・sを超えるとインクジェット印刷用ノズルからのインク組成物の吐出が困難になる可能性がある。
なお、その粘度は、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を用いて、25℃、20rpmの条件で測定した粘度である。
【0044】
(活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の製造)
次に、これらの材料を用いて本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を製造する方法について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して分散混合し、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度が2~10mPa・sとなるように調整することによって得ることができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物中における全有機溶剤の含有量は、インク組成物全量から、各固形分、必要により使用するその他の添加剤の合計量を差し引いた量であるが、インク粘度が前記範囲内になるように適宜変更するのが好ましい。
このようにして得られた本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、少なくとも表面層が紙や塩化ビニル系重合体やエチレン-酢酸ビニル系共重合体等の樹脂からなる基材に、インクジェット用プリンターを用いて使用できる。
【0045】
(印刷物の製造方法)
次に、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を用いて印刷物を製造する方法について説明する。
この製造方法は、上記した活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を、インクジェット方式にて基材に印刷する工程を含む。
基材は特に限定されない。一例を挙げると、基材は、各樹脂基材、紙、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布等の基材、特に、段ボールシートである。本実施形態のインク組成物は、基材に印刷された後に、基材が折り曲げられる場合であっても、優れた折り曲げ耐性を示す。そのため、インク組成物は、基材が段ボールシート等の折り曲げられる用途に使用される基材である場合に、特に好適に使用される。
基材がCライナー、Kライナー等の段ボールシートである場合、インク組成物は、段ボールシートに対して直接付与してもよく、段ボールシートにプレコート層(プライマー層)を設けたり、コロナ放電処理等を施したりした後に、付与してもよい。すなわち、近年、環境に配慮するために、段ボールシートは、古紙や再生紙等が利用される場合がある。段ボールシートとしてKライナーを使用する場合は、表面の凹凸が粗く、色合いが不鮮明であり、印字した際にインクの浸透性が高い。そのため、段ボールシートにインク組成物が印字されると、下地であるライナー原紙の茶色が印刷品質の低下の原因となりやすい。
【0046】
特に、印刷部分に下地の色が発現すると、インクジェット画像がくすんで見え、印刷物の見栄えが損なわれ得る。このような段ボールシートに対し、上記凹凸等を解消するために、プレコート層が適宜設けられる。
プレコート層は、段ボールシートを構成するライナー原紙の白色度や色味等を調整し、下地の白色度を高めること等を目的として設けられる。プレコート層は、顔料および接着剤を含むプレコート剤を塗布することにより形成され得る。
顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、二酸化チタン(アナターゼ、ルチル)のほか、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、無定形シリカ、クレー等の体質顔料が挙げられる。また、白色顔料の含有量はプレコート剤100質量部中20~85質量部が好ましく、より好ましくは20~80質量部である。
段ボールのプレコート層に使用されるバインダー樹脂は、水性樹脂であることが好ましい。水性樹脂は、天然樹脂、合成樹脂等であることが好ましく、澱粉誘導体、カゼイン、シェラック、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系およびマレイン酸系樹脂等がより好ましい。より具体的には、水性樹脂は、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそのアルキルエステル、あるいはスチレン等を主なモノマー成分として共重合した水性アクリル系樹脂、水性スチレン-アクリル樹脂、水性スチレン-マレイン酸樹脂、水性スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等が好適に用いられる。バインダー樹脂の含有量は、プレコート剤100質量部中1~25質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。
【0047】
プレコート層(プライマー層)で使用できる水性媒体は、水または水と水混和性溶剤との混合物が挙げられる。水混和性溶剤は、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類等である。具体的には、水混和性溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等である。
プレコート層には、上記に示した成分以外に、必要に応じて造膜剤、顔料分散剤または顔料分散樹脂、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤等の種々の添加剤を適宜選択して使用することができる。
これら各種材料を使用してプレコート剤を製造する方法は特に限定されない。一例を挙げると、プレコート剤を製造する方法は、白色顔料、水性バインダー樹脂、水、必要に応じて水混和性溶剤、および顔料分散剤または顔料分散樹脂を混合して混練し、さらに、添加剤、水、必要に応じて水混和性溶剤、および所定の材料の残りを添加、混合する方法が一般的である。
なお、プレコート剤は、上記の各成分を必要量混合し、ホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、3本ロールミルやビーズミル等の分散機にて混合、分散することにより容易に得ることが出来る。
プライマー層が設けられる場合、プライマー層の厚み(プレコート剤の塗布量)は特に限定されない。プライマー層は、固形分塗布量が0.1~5g/mの範囲であることが好ましい。プライマー層の厚み(プレコート剤の塗布量)が上記範囲内であることにより、段ボールシートは、白色度や色味が適切に調整されやすい。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を印字、硬化する方法として、具体的には、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾した本発明のインク組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法が挙げられる。
例えば、基材への吐出(画像の印字)は、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物をインクジェット記録用プリンターの低粘度対応のプリンタヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、例えば、1~60μmとなるように該インク組成物をプリンタヘッドから吐出することにより行うことができる。また、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布された本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射することにより行うことができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を印字するインクジェット記録方式用プリンター装置としては、従来から使用されているインクジェット記録方式用プリンター装置が利用できる。なお、コンティニュアスタイプのインクジェット記録方式用プリンター装置を用いる場合は、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物にさらに導電性付与剤を加え電導度の調節をする。
上記塗膜の硬化における活性エネルギー線源としては、紫外線(UVランプ)、紫外線(発光ダイオード(LED))、電子線、可視光線等を挙げることができる。具体的には装置として、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、重水素ランプ、蛍光灯、Nd-YAG3倍波レーザー、He-Cdレーザー、窒素レーザー、Xe-Clエキシマレーザー、Xe-Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザー、LEDランプ等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。環境面から好ましくは発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)である。
なお、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線とは、「発光ピーク波長が350~420nmの範囲である紫外線を発生する、発光ダイオードから照射される光」とする。
なお印刷時のインク組成物の温度としては20~26℃程度の室温でも良く、その他の温度でも良い。
【実施例
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。表中の顔料、分散剤、樹脂、溶剤及び合計に関する欄の数値の単位は「質量%」である。
【0050】
(顔料)
P.Y.155 :ピグメントイエロー155
P.V.19 :ピグメントバイオレット19
P.B.15:4:ピグメントブルー15:4
P.Bl.7 :ピグメントブラック7
P.G.7 :ピグメントグリーン7
P.O.13 :ピグメントオレンジ13
P.V.23 :ピグメントバイオレット23
P.Y.150 :ピグメントイエロー150
(顔料分散剤)
PB822(アジスパーPB822、味の素ファインテクノ社)
【0051】
(アミン変性オリゴマー)
CN371(Sartomer社製)
(光重合開始剤)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド
TPO-L:エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
ESACURE ONE:オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}
SB-PI719:ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
Omnipol TP(IGM社製)
(増感剤)
DETX:ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
Omnipol TX(IGM社製)
(重合禁止剤)
MEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル)
HQ(ヒドロキノン)
(表面調整剤)
BYK-331:シリコン系界面活性剤
【0052】
(実施例1~11、比較例1~5)
<活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の製造>
表1の配合(各材料の配合比率は質量%である)に従って、各材料を撹拌混合後に練肉して各色の顔料分散液を得た。そして、表2の配合に従って実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得た。
【0053】
<段ボール基材>
Kライナー、Cライナー
<プレコート剤>
平均粒子径0.05μmの炭酸カルシウム45質量部、酸価170mgKOH/gのスチレンマレイン酸樹脂(固形分25%)25質量部、水の30質量部をビーズミルで分散させ炭酸カルシウムの45%スラリーを得た。炭酸カルシウムの45%スラリーの80質量部、酸価170mgKOH/gのスチレン-マレイン酸樹脂(固形分25%)20質量部を混合撹拌し、プレコート剤を得た。
<Kライナーへのプレコート剤の塗布>
上記で調整したプレコート剤を、0.1mmメアバーを用いて、塗布量が約4g/m2の塗布量となるようにKライナーに塗布を行った。次いで、プレコート剤塗布面の乾燥を、熱風乾燥により間行った。
【0054】
<評価方法及び評価基準>
表2に記載の評価基準は以下の通りである。
(粘度)
実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物をE型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で、粘度を測定した。
【0055】
(塗膜臭気)
塗膜大きさが8cm×12cmになるように、基材上に塗膜を形成・硬化させたのち、基材を24cm×34cmのチャック袋に入れ、一時間後袋内の臭気を確認。10人に嗅いでもらい以下5段階で評価。表は10人の平均値を小数点以下四捨五入で表示。
5:無臭
4:低臭
3:中臭
2:強臭
1:激臭
【0056】
(保存安定性)
活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物をガラス瓶に採り、密栓して70℃で7日間保存した後の状態を、下記評価基準に従って評価した。
○:活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、増粘、沈降物が共に認められなかった。
△:活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、軽く振ると元に戻る程度の増粘や沈降物が認められた。
×:活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、強く振っても元に戻らない程度の増粘や沈降物が認められた。
【0057】
(吐出安定性)
25℃の雰囲気温度下に、インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置と、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物とを24時間置き、インクジェット記録装置および活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の温度を25℃とした。その後、25℃で、インク組成物を用いてプレコートを塗布したKライナー、Cライナー上に、連続的に印刷(印字)して、吐出安定性を以下の評価基準にしたがって評価した。
○:印刷の乱れがなく、安定して吐出できた。
△:印刷の乱れが若干あったが、ほぼ安定して吐出できた。
×:印刷の乱れがあったか、または、安定して吐出できなかった。
【0058】
(硬化性)
25℃の雰囲気温度下に、インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置と、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物とを24時間置き、インクジェット記録装置および活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の温度を25℃とした。その後、25℃で、インク組成物を用いてプレコートを塗布したKライナー、Cライナー上に、連続的に印刷(印字)した後、フォセオン・テクノロジー社製UV-LED光ランプにて、ランプとインクの塗布面との距離2cm下で、UV積算光量180mJ/cm2で硬化させた。その後コンベア式光照射装置(ヘレウス社製STM-250E-16、ランプ:Z-8ランプ(メタルハライドタイプ))を用いて、120W×50m/min、UV積算光量75mJ/cm〔UV積算光量は、測定器としてEIT社製UVIMAP(UM 365H-S)を用い、測定レンジ:250-260nm、280-320nm、320-390nm、395-445nmでの照射量を測定して求めた〕の照射条件で照射した。得られた硬化性塗膜を綿棒でこすり、下記評価基準に従ってその取られ具合により硬化性を評価した。
○:取られがなかった。
△:わずかに取られがあった。
×:取られがあった。
【0059】
(硬化しわ)
プレコートを塗布したKライナー、Cライナー上にインク組成物を印字し、印字された試料に硬化しわがあるかどうか目視にて評価した。
○:硬化しわがない。
×:硬化しわがある。
【0060】
(耐折り曲げ性)
一方の面にプレコート層を形成したKライナー、Cライナーのプレコート層上に、インク組成物を印字し、印字した表面が外側を向くように(Kライナー、Cライナーの印字した面ではない裏面どうしが対向するように)90度折り曲げ、下記評価基準に沿って評価した。
○:折り曲げた際に、塗膜に罫線割れや細かなクラックが生じなかった。
△:折り曲げた際に、細かなクラックが生じた。
×:折り曲げた際に、罫線割れを生じた。
【0061】
(耐摩擦性)
上記硬化性の評価において得られた硬化膜について、学振型堅牢度試験機((株)大栄科学精器製作所製)を用いて、晒し布で500g×200回塗膜を擦ったときの、プレコートを塗布したKライナー、Cライナーからの硬化膜の取られ具合を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:硬化膜の取られが無かった。
△:硬化膜の表面に傷があった。
×:硬化膜が取られ、シートがみえた。
【0062】
(耐水性)
上記硬化性の評価において得られた硬化膜について、学振型堅牢度試験機((株)大栄科学精器製作所製)を用いて、水に浸した晒し布で500g×30回塗膜を擦ったときの、プレコートを塗布したKライナー、Cライナーからの硬化膜の取られ具合を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:硬化膜の取られが無かった。
△:硬化膜の表面に傷があった。
×:硬化膜が取られ、シートがみえた。
【0063】
(バイオマス度)
バイオマス度は下記式で計算される。
(活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の固形分中の植物油成分由来の含有量/活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物の固形分量)×100
【0064】
【表1】
【0065】
【表2-1】
【0066】
【表2-2】
【0067】
本発明に沿った例である各実施例によれば、インク組成物の粘度が低く、臭気を有さず、保存安定性、吐出安定性、硬化性に優れ、かつ硬化時に硬化しわが発生せず、硬化した塗膜は耐折り曲げ性、耐摩擦性及び耐水性にも優れ、かつバイオマス度が高い活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得ることができた。
しかし、アミン変性オリゴマーを含有せず、要件Dの成分を過剰に含有する比較例1によれば、硬化性、耐折り曲げ性及び耐摩擦性に劣っており、アミン変性オリゴマーを過剰に含有し、要件Dの成分が少なすぎる比較例2によれば、粘度が高く、保存安定性及び吐出安定性に劣っていた。
要件Cの成分の含有量が少ない比較例3によれば、耐折り曲げ性に劣っており、要件Cの成分の含有量が過剰である比較例4によれば、保存安定性に劣り、硬化しわを生じ、耐摩擦性に劣っていた。
また要件Bの成分が過剰である比較例5によれば、塗膜が耐水性に劣っていた。