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特許7631665全固体電池用外装材及びこれを用いた全固体電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】全固体電池用外装材及びこれを用いた全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/122 20210101AFI20250212BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250212BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20250212BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20250212BHJP
【FI】
H01M50/122
H01M10/0562
H01M50/129
H01M10/052
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020029521
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021136091
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】村田 光司
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179618(JP,A)
【文献】特開2017-001187(JP,A)
【文献】特開2018-107062(JP,A)
【文献】特開2008-103288(JP,A)
【文献】特開2009-209200(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013295(WO,A1)
【文献】特開2019-029305(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055429(WO,A1)
【文献】特開2019-220328(JP,A)
【文献】特開2008-004506(JP,A)
【文献】特開2003-339836(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179864(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層、バリア層、及び、シーラント層をこの順に備えた、硫化物系固体電解質を含む全固体電池用の外装材であって、
前記基材層と前記バリア層との間に配置された第1の接着剤層、前記バリア層と前記シーラント層との間に配置された第2の接着剤層、及び、前記バリア層と前記シーラント層との間に配置された接着性樹脂層のうちの少なくとも一層を更に備え、
前記第1の接着剤層、前記第2の接着剤層、前記接着性樹脂層及び前記シーラント層からなる群より選択される少なくとも一層が、硫化水素と反応して色が変化する顕色剤を含有し、
前記顕色剤が、CuSO 、Pb(CH COO) 及びAg SO からなる群より選択される少なくとも一種を含む、全固体電池用外装材。
【請求項2】
少なくとも基材層、バリア層、及び、シーラント層をこの順に備えた、硫化物系固体電解質を含む全固体電池用の外装材であって、
前記基材層と前記バリア層との間に配置された第1の接着剤層、前記バリア層と前記シーラント層との間に配置された第2の接着剤層、及び、前記バリア層と前記シーラント層との間に配置された接着性樹脂層のうちの少なくとも一層と、前記基材層の前記バリア層側とは反対側の面上に配置された保護層と、を更に備え、
前記保護層、前記第1の接着剤層、前記第2の接着剤層、前記接着性樹脂層及び前記シーラント層からなる群より選択される少なくとも一層が、硫化水素と反応して色が変化する顕色剤を含有し、
前記顕色剤が、CuSO 、Pb(CH COO) 及びAg SO からなる群より選択される少なくとも一種を含む、全固体電池用外装材。
【請求項3】
前記顕色剤を含有する層における前記顕色剤の含有量が、当該層全量を基準として0.01質量%以上30質量%以下である、請求項1又は2に記載の全固体電池用外装材。
【請求項4】
前記外装材を構成する層のうちの少なくとも一層が、前記顕色剤に該当しない硫化水素吸着物質を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材。
【請求項5】
前記全固体電池用外装材の前記基材層側を外側、前記シーラント層側を内側とした場合に、前記バリア層よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層が前記顕色剤を含有し、且つ、前記顕色剤を含有する層及びそれよりも前記バリア層側に配置された層のうちの少なくとも一層が、前記硫化水素吸着物質を含有する、請求項に記載の全固体電池用外装材。
【請求項6】
前記硫化水素吸着物質が酸化亜鉛及び/又は亜鉛イオンを含む、請求項又はに記載の全固体電池用外装材。
【請求項7】
前記顕色剤を含有する層における前記顕色剤及び硫化水素吸着物質の合計の含有量が、当該層全量を基準として0.01質量%以上30質量%以下である、請求項4~6のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材。
【請求項8】
前記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材。
【請求項9】
硫化物系固体電解質を含む電池要素と、
前記電池要素から延在する電流取出し端子と、
前記電流取出し端子を挟持し且つ前記電池要素を収容する、請求項1~のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材と、
を備える全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池用外装材及びこれを用いた全固体電池に関し、より詳しくは、硫化物系固体電解質を含む全固体電池用の外装材及びこれを用いた全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池は、携帯電子機器や、電気を動力源とする電気自動車及びハイブリッド電気自動車等に広く用いられている。リチウムイオン電池の安全性を高めた電池として、有機溶媒電解質に代えて無機固体電解質を用いた全固体リチウム電池が検討されている。全固体リチウム電池は、短絡等による熱暴走が生じ難いという点でリチウムイオン電池よりも安全性に優れている。
【0003】
無機固体電解質の中でも硫化物系固体電解質は、イオン伝導度が酸化物系固体電解質等と比較して高く、より高性能な全固体電池を得る上で多くの利点を有している。しかしながら、硫化物系固体電解質を用いた全固体電池は硫黄を含有しているため、電池内に浸入した水分と硫黄とが反応して、毒性を持った硫化水素(HS)が発生する場合がある。そのため、電池の外装材が破壊された場合には、この硫化水素が漏れ出してしまうという懸念がある。硫化水素が漏れ出すことを防ぐために、例えば特許文献1及び2には、発生した硫化水素を捕捉して無毒化する安全設計が施された全固体電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-103283号公報
【文献】特開2008-103288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硫化物系固体電解質を用いた全固体電池において、硫化水素が発生することは、硫化物系固体電解質の劣化が進んでいたり、外装材が破損していたりといった、何らかの異常が発生していることを意味する。このような異常が発生している全固体電池は、速やかに交換する等の対応を行うことが望ましい。しかしながら、硫化水素は刺激臭を有するものの無色であるため、硫化水素が発生していることを把握し難い。また、特許文献1及び2に記載された方法では、発生した硫化水素を無毒化できたとしても、全固体電池の異常自体は解消できず、かえって異常の発見を遅らせてしまう恐れがある。
【0006】
本開示は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、全固体電池の異常を早期に発見できる全固体電池用外装材及びそれを用いた全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示は、少なくとも基材層、バリア層、及び、シーラント層をこの順に備えた、硫化物系固体電解質を含む全固体電池用の外装材であって、上記外装材を構成する層のうちの少なくとも一層が、硫化水素と反応して色が変化する顕色剤を含有する、全固体電池用外装材を提供する。
【0008】
上記外装材によれば、上記顕色剤を含有する層を備えることにより、硫化物系固体電解質を含む全固体電池において硫化水素が発生した場合に、顕色剤を含有する層が変色するため、硫化水素の発生を視覚的に検知することができ、全固体電池の異常を目視にて早期発見することができる。
【0009】
ここで、外装材の基材層側を外側、シーラント層側を内側として、バリア層よりも内側に顕色剤を含有する層を設けた場合、外装材内部で発生した硫化水素を検知することができ、全固体電池の異常を目視にて早期発見することができる。なお、バリア層が不透明である場合、バリア層よりも内側の層の変色は、例えば電池の端部(外装材の断面)を観察することで確認することが可能である。電池の端部の観察は目視で行ってもよく、ルーペや顕微鏡等を用いて行ってもよい。一方、バリア層よりも外側に顕色剤を含有する層を設けた場合、バリア層にピンホール等の欠陥があった場合に、その欠陥部分から外装材内部で発生した硫化水素が透過してくることから、欠陥部分近傍において顕色剤を含有する層の変色が顕著となり、全固体電池の異常を発見できることに加えて、欠陥部分の特定も容易となる。また、全固体電池はモジュール化して用いられることがあるが、バリア層よりも外側に顕色剤を含有する層を設けた場合、モジュール内のいずれかの全固体電池に異常が生じて硫化水素が漏れ出した場合に、その周辺の全固体電池の外装材に変色が生じることとなるため、モジュール内の異常の発見、及び、異常が生じている全固体電池の特定が容易となる。
【0010】
上記全固体電池用外装材は、上記基材層と上記バリア層との間に配置された第1の接着剤層、上記バリア層と上記シーラント層との間に配置された第2の接着剤層、及び、上記バリア層と上記シーラント層との間に配置された接着性樹脂層のうちの少なくとも一層を更に備え、上記第1の接着剤層、上記第2の接着剤層、上記接着性樹脂層及び上記シーラント層からなる群より選択される少なくとも一層が、上記顕色剤を含有してもよい。上記特定の層が顕色剤を含有することで、硫化物系固体電解質を含む全固体電池において硫化水素が発生した場合に、顕色剤を含有する層の変色が起こり易く、目視による全固体電池の異常の早期発見がより容易となる。
【0011】
上記全固体電池用外装材は、上記基材層と上記バリア層との間に配置された第1の接着剤層、上記バリア層と上記シーラント層との間に配置された第2の接着剤層、及び、上記バリア層と上記シーラント層との間に配置された接着性樹脂層のうちの少なくとも一層と、上記基材層の上記バリア層側とは反対側の面上に配置された保護層と、を更に備え、上記保護層、上記第1の接着剤層、上記第2の接着剤層、上記接着性樹脂層及び上記シーラント層からなる群より選択される少なくとも一層が、上記顕色剤を含有してもよい。上記特定の層が顕色剤を含有することで、硫化物系固体電解質を含む全固体電池において硫化水素が発生した場合に、顕色剤を含有する層の変色が起こり易く、目視による全固体電池の異常の早期発見がより容易となる。
【0012】
上記全固体電池用外装材において、上記顕色剤が、Cu、Pb、Ag、Mn、Ni、Co、Sn及びCdからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むものであってよい。上記元素を含む顕色剤は、硫化水素の硫黄と反応して変色し易く、色の変化も視認し易いため、目視による全固体電池の異常の早期発見がより容易となる。
【0013】
上記全固体電池用外装材において、上記顕色剤が、CuSO、Pb(CHCOO)及びAgSOからなる群より選択される少なくとも一種を含むものであってよい。上記化合物を含む顕色剤は、硫化水素の硫黄と反応して変色し易く、色の変化も視認し易いため、目視による全固体電池の異常の早期発見がより容易となる。
【0014】
上記全固体電池用外装材において、上記顕色剤を含有する層における上記顕色剤の含有量は、当該層全量を基準として0.01質量%以上30質量%以下であってよい。顕色剤の含有量が上記下限値以上であることで、色の変化がより視認し易く、上記上限値以下であることで、顕色剤を含有する層の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制できる。
【0015】
上記全固体電池用外装材において、上記外装材を構成する層のうちの少なくとも一層が、上記顕色剤に該当しない硫化水素吸着物質を含有してよい。この場合、全固体電池の異常の早期発見に加えて、発生した硫化水素を無害化することができる。
【0016】
上記全固体電池用外装材の上記基材層側を外側、上記シーラント層側を内側とした場合に、上記バリア層よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層が上記顕色剤を含有し、且つ、上記顕色剤を含有する層及びそれよりも上記バリア層側に配置された層のうちの少なくとも一層が、上記硫化水素吸着物質を含有してよい。顕色剤を含有する層よりも内側の層が硫化水素吸着物質を含有する場合、外装材内部で発生した硫化水素は初めに硫化水素吸着物質と接触して吸着又は分解され、顕色剤を含有する層に到達する硫化水素の量が減少し、色の変化が小さくなる恐れがある。これに対し、硫化水素吸着物質を上記特定の層に含有させることで、外装材内部で発生した硫化水素は、顕色剤を含有する層と接触して該層の色変化を生じさせた後、同じ層又はそれよりもバリア層側の層に含有される硫化水素吸着物質により吸着又は分解されて無害化されることとなる。そのため、硫化水素による色の変化と、硫化水素の無害化とを高水準で両立させることが可能となる。
【0017】
上記全固体電池用外装材において、上記硫化水素吸着物質は、酸化亜鉛及び/又は亜鉛イオンを含むものであってよい。酸化亜鉛及び/又は亜鉛イオンを含む硫化水素吸着物質は、硫化水素を吸着又は分解する性能に優れると共に、コストや取り扱い性も良好であるため好ましい。
【0018】
上記全固体電池用外装材において、上記顕色剤を含有する層における上記顕色剤及び硫化水素吸着物質の合計の含有量は、当該層全量を基準として0.01質量%以上30質量%以下であってよい。
【0019】
上記全固体電池用外装材において、上記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられていてよい。腐食防止処理層を設けることで、バリア層の腐食を防止できるとともに、腐食防止処理層が介在することでバリア層とそれに隣接する層との密着力を高めることができる。また、バリア層としてアルミニウム箔等の金属箔を用いた場合、金属箔が硫化水素により変色する場合があり、それに伴ってバリア性が低下する恐れがある。また、顕色剤や硫化水素吸着物質と硫化水素との反応物として水や酸等が生成し得るため、この生成物により金属箔の腐食が生じる恐れがある。このような金属箔の劣化を、腐食防止処理層を設けることで防止することができる。
【0020】
本開示はまた、硫化物系固体電解質を含む電池要素と、上記電池要素から延在する電流取出し端子と、上記電流取出し端子を挟持し且つ上記電池要素を収容する、上記本開示の全固体電池用外装材と、を備える全固体電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、全固体電池の異常を早期に発見できる全固体電池用外装材及びそれを用いた全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一実施形態に係る全固体電池用外装材の概略断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る全固体電池用外装材の概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る全固体電池用外装材の概略断面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る全固体電池の斜視図である。
図5】実施例におけるヒートシール強度測定用サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0024】
[全固体電池用外装材]
図1は、本開示の全固体電池用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(全固体電池用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面側に設けられた第1の接着剤層12aと、該第1の接着剤層12aの基材層11とは反対側に設けられた、両面に第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bを有するバリア層13と、該バリア層13の第1の接着剤層12aとは反対側に設けられた第2の接着剤層12bと、該第2の接着剤層12bのバリア層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、第1の腐食防止処理層14aはバリア層13の基材層11側の面に、第2の腐食防止処理層14bはバリア層13のシーラント層16側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を全固体電池の外部側、シーラント層16を全固体電池の内部側に向けて使用される。
【0025】
本実施形態の外装材10を構成する層のうちの少なくとも一層は、硫化水素と反応して色が変化する顕色剤を含有する。また、本実施形態の外装材10を構成する層のうちの少なくとも一層は、硫化水素吸着物質を含有していてもよい。以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
【0026】
<基材層11>
基材層11は、全固体電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の全固体電池の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
【0027】
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された層であることが好ましい。樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アセチルセルロース樹脂等を使用することができる。
【0028】
これらの樹脂は、基材層11に適用する場合、延伸又は未延伸のフィルム形態でも、コーティング被膜としての形態のどちらでも構わない。また。基材層11は単層でも多層でもよく、多層の場合は異なる樹脂を組み合わせて使用できる。フィルムであれば共押し出ししたのもの、もしくは接着剤を介して積層したものが使用できる。コーティング被膜の場合は積層回数分コーティングしたものが使用でき、フィルムとコーティング被膜を組み合わせて多層とすることもできる。
【0029】
これらの樹脂の中でも、基材層11としては、成型性に優れることから、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミドフィルムを構成するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,ナイロン9T、ナイロン10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0030】
これらの樹脂をフィルム形態で使用する場合は二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸フィルムにおける延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より優れた深絞り成型性が得られる観点から、チューブラー二軸延伸法により延伸されたものであることが好ましい。
【0031】
基材層11の厚さは、6~40μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが40μmを超えると、外装材10の総厚が大きくなる傾向がある。
【0032】
基材層11の融点ピーク温度は、シール時の基材層11の変形を抑制するため、シーラント層16の融点ピーク温度より高く、さらにはシーラント層16の融点ピーク温度よりも30℃以上高いことが好ましい。
【0033】
<第1の接着剤層12a>
第1の接着剤層12aは、基材層11とバリア層13とを接着する層である。第1の接着剤層12aを構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。上述した各種ポリオールは、外装材10に求められる機能や性能に応じて、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記以外にもエポキシ樹脂を主剤として、硬化剤を配合したものなども使用可能であるが、これに限らない。また、接着剤に求められる性能に応じて、上述した接着剤に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0034】
第1の接着剤層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましい。
【0035】
<バリア層13>
バリア層13は、水分が全固体電池の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
【0036】
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
【0037】
バリア層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9~200μmとすることが好ましく、15~100μmとすることがより好ましい。
【0038】
<第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b>
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、バリア層13と第1の接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、バリア層13と第2の接着剤層12bとの密着力を高める役割を果たす。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」とも言う)としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
【0039】
脱脂処理としては、酸脱脂及びアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、特にバリア層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐腐食性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
【0040】
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
【0041】
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤をバリア層13上に塗布する方法が挙げられる。
【0042】
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、バリア層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要なはい。
【0043】
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
【0044】
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いたバリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態になるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
【0045】
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
【0046】
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用したバリア層13との密着性の向上、(3)アルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる腐食耐性の付与、(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層(酸化物層)14a,14bの凝集力の向上、などが期待される。
【0047】
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
【0048】
腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
【0049】
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005~0.200g/mが好ましく、0.010~0.100g/mがより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/mを超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
【0050】
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層とバリア層との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1~100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
【0051】
<第2の接着剤層12b>
第2の接着剤層12bは、バリア層13とシーラント層16とを接着する層である。第2の接着剤層12bには、バリア層13とシーラント層16とを接着するための一般的な接着剤を用いることができる。
【0052】
バリア層13上に腐食防止処理層14bが設けられており、且つ、第2の腐食防止処理層14bが上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、第2の接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bに含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含む層であることが好ましい。
【0053】
例えば、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。第2の腐食防止処理層14bがアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。また、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含む。ただし、第2の接着剤層12bは必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。また、第2の接着剤層12bは、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0054】
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0055】
これら多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示した多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリマーとの反応性が高く、架橋構造を形成しやすい点で、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0056】
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性ポリマーとの反応性が高い点で、グリシジル化合物が好ましい。
【0057】
第2の接着剤層12bが酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基とも反応性を有する(すなわち、酸性基と共有結合を形成する)ことが好ましい。これにより、第2の腐食防止処理層14bとの接着性がより高まる。加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材10の耐溶剤性がより向上する。
【0058】
反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、10倍等量を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂との架橋反応としては十分飽和に達しているため、未反応物が存在し、各種性能の低下が懸念される。したがって、例えば、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5~20質量部(固形分比)であることが好ましい。
【0059】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸性基をポリオレフィン樹脂に導入したものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、酸無水物基などが挙げられ、無水マレイン酸基や(メタ)アクリル酸基などが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、シーラント層16に用いる変性ポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることができる。
【0060】
第2の接着剤層12bには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0061】
第2の接着剤層12bは、硫化水素等の腐食性ガスや電解液が関与する場合のラミネート強度の低下を抑制する観点及び絶縁性の低下をさらに抑制する観点から、例えば、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含むものであってもよい。なお、カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’-ジ-o-トルイルカルボジイミド、N,N’-ジフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’-ジオクチルデシルカルボジイミド、N-トリイル-N’-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-2,2-ジ-t-ブチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0062】
また、第2の接着剤層12bを形成する接着剤として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。接着剤として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂やエポキシ基を有する主剤にアミン化合物などを作用させたエポキシ樹脂等が挙げられ、耐熱性の観点から好ましい。
【0063】
第2の接着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1~10μmが好ましく、2~7μmがより好ましい。
【0064】
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層であり、全固体電池の組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。
【0065】
シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。これらのシーラント層16を構成する樹脂(以下、「ベース樹脂」とも言う)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;プロピレンを共重合成分として含むブロック又はランダム共重合体;及び、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0067】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、及び、それらの共重合体等が挙げられる。
【0068】
シーラント層16は、ポリオレフィン系エラストマーを含んでいてもよい。ポリオレフィン系エラストマーは、上述したベース樹脂に対して相溶性を有するものであっても、相溶性を有さないものであってもよいが、相溶性を有する相溶系ポリオレフィン系エラストマーと、相溶性を有さない非相溶系ポリオレフィン系エラストマーの両方を含んでいてもよい。相溶性を有する(相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。相溶性を有さない(非相溶系)とは、ベース樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
【0069】
ベース樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、プロピレン-ブテン-1ランダム共重合体が挙げられ、非相溶系ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-ブテン-1ランダム共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
また、シーラント層16は、添加成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤等を含んでいてもよい。これらの添加成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
【0071】
シーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、薄膜化と高温環境下でのヒートシール強度の向上とを両立する観点から、5~100μmの範囲であることが好ましく、10~100μmの範囲であることがより好ましく、20~80μmの範囲であることが更に好ましい。
【0072】
シーラント層16は、単層フィルム及び多層フィルムのいずれであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。
【0073】
<顕色剤>
本実施形態の外装材10を構成する層のうちの少なくとも一層は、硫化水素と反応して色が変化する顕色剤を含有する。外装材10において、顕色剤は、第1の接着剤層12a、第2の接着剤層12b及びシーラント層16からなる群より選択される少なくとも一層に含有されていてよい。顕色剤がバリア層13よりも内側(シーラント層16側)のいずれかの層に含有される場合、顕色剤はシーラント層16に含有されることが好ましい。外装材10における最も内側の層がシーラント層16であるため、シーラント層16が顕色剤を含有することで、外装材10内部で発生した硫化水素が顕色剤と接触し易く、顕色剤と硫化水素とが反応してシーラント層16の変色が速やかに生じることとなる。また、通常、第2の接着剤層12bよりもシーラント層16の方が厚みがあるため、シーラント層16に顕色剤を含有させた方が外装材10の断面を観察したときに変色を確認し易い。顕色剤は、外装材10を構成する層のうちの1層にのみ含有されていてもよく、2層以上に含有されていてもよい。
【0074】
顕色剤は、Cu、Pb、Ag、Mn、Ni、Co、Sn及びCdからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むものであってよい。上記元素は、イオン化した状態で硫化水素と速やかに反応して変色する。また、Cu及びAgは、金属状態でも大気中で硫化水素と反応して変色する。上記元素は、変色し易さの観点から、イオン化した状態又はイオン化し易い状態で存在していることが好ましい。
【0075】
顕色剤は、CuSO、Pb(CHCOO)及びAgSOからなる群より選択される少なくとも一種を含むものであってよい。これらの化合物は水和し易く、金属元素がイオン化し易い傾向がある。そのため、上記化合物を含む顕色剤は、硫化水素の硫黄と反応して変色し易く、色の変化も視認し易いため、目視による全固体電池の異常の早期発見がより容易となる。なお、上記化合物は、水和した状態で存在していてもよい。
【0076】
顕色剤を添加する層には、顕色剤の分散性を向上させる観点から、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸を添加してもよい。顕色剤を金属石鹸と併用することで、層内での顕色剤の分散性を高めることができ、変色ムラを抑制し易いと共に、顕色剤を含有する層の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制し易い。
【0077】
顕色剤は、シーラント層16や後述する接着性樹脂層15に添加する場合、予めポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂に高濃度(例えば30質量%以上)で分散させてマスターバッチを作製し、これを押出ラミネート等を行う際に他の樹脂と混ぜ合わせて使用してもよい。また、このマスターバッチを作製する際に、上述した金属石鹸を添加してもよい。マスターバッチを作製することで、層内での顕色剤の分散性を高めることができ、変色ムラを抑制し易いと共に、顕色剤を含有する層の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制し易い。
【0078】
顕色剤を含有する層における顕色剤の含有量は、当該層全量を基準として0.01質量%以上30質量%以下であってよく、0.05質量%以上20質量%以下であってよく、0.1質量%以上15質量%以下であってよい。顕色剤の含有量が上記下限値以上であることで、色の変化がより視認し易く、上記上限値以下であることで、顕色剤を含有する層の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制できる。
【0079】
顕色剤を含有する層は、50mm×50mmのサイズに切り出して、濃度5質量ppmのHSガス2Lと共に容器(例えば2Lのテドラーバック等)に封入し、室温(25℃)にて72時間放置する試験の前後での色差(ΔE)が、0.5以上であってよい。色差(ΔE)が上記下限値以上であることで、顕色剤を含有する層の変色を視認することがより容易となる。特に、顕色剤をバリア層13よりも内側(シーラント層16側)のいずれかの層に含有させた場合において、外装材10の断面観察による変色の視認が容易となる。上記色差(ΔE)は、色差計を用いて測定することができる。上記色差(ΔE)は、例えば、顕色剤の種類及び配合量、並びに、同じ層に硫化水素吸着物質を添加する場合には硫化水素吸着物質の種類及び配合量などによって調整することができる。
【0080】
<硫化水素吸着物質>
本実施形態の外装材10を構成する層のうちの少なくとも一層は、硫化水素吸着物質を含有していてもよい。本明細書において硫化水素吸着物質は、上述した顕色剤に該当しない(すなわち、硫化水素と接触しても変色しない)ものであって、硫化水素を吸着及び/又は分解することができるものを意味する。外装材10において、硫化水素吸着物質は、第1の接着剤層12a、第2の接着剤層12b及びシーラント層16からなる群より選択される少なくとも一層に含有されていてよい。硫化水素吸着物質は、顕色剤が含有されている層に含有されていてもよく、顕色剤が含有されていない層に含有されていてもよい。また、顕色剤がバリア層13よりも内側(シーラント層16側)のいずれかの層に含有される場合、硫化水素吸着物質は、顕色剤を含有する層及びそれよりもバリア層13側に配置された層のうちの少なくとも一層に含有されていることが好ましい。すなわち、外装材10において顕色剤がバリア層13よりも内側に含有されている場合、顕色剤はシーラント層16に含有されており、硫化水素吸着物質はシーラント層16及び/又は第2の接着剤層12bに含有されていることが好ましい。また、顕色剤がバリア層13よりも内側に含有されている場合に、硫化水素吸着物質が第1の接着剤層12aに含有されていてもよい。硫化水素吸着物質は、外装材10を構成する層のうちの1層にのみ含有されていてもよく、2層以上に含有されていてもよい。
【0081】
硫化水素吸着物質としては、酸化亜鉛、非晶質金属ケイ酸塩(主に金属が銅、亜鉛であるもの)、ジルコニウム・タンタノイド元素の水和物、4価金属リン酸塩(特に金属が銅であるもの)、ゼオライト及び亜鉛イオンの混合物、ゼオライトと酸化亜鉛と酸化銅(II)との混合物、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、硫酸銀、酢酸銀、酸化アルミニウム、水酸化鉄、イソシアネート化合物、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、ゼオライト、活性炭、アミン系化合物、アイオノマー等が挙げられる。また、硫化水素吸着物質は、硫化水素をより無害化しやすく、コストや取り扱い性の観点から、酸化亜鉛(ZnO)及び/又は亜鉛イオンを含むものであることが好ましい。硫化水素吸着物質は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
硫化水素吸着物質としては、以下のような硫化水素について消臭効果がある消臭剤を用いてもよい。具体的には、例えば、大日精化工業株式会社製の「ダイムシュー PE-M 3000-Z」(ポリエチレンマスターバッチ品)、東亞合成株式会社製の「ケスモン」、ラサ工業株式会社製の「シュークレンズ」、並びに、株式会社シナネンゼオミック製の「ダッシュライト ZU」及び「ダッシュライト CZU」等が挙げられる。
【0083】
硫化水素吸着物質が有色である場合、その色味は、顕色剤の変色の視認を阻害しない色味であることが好ましく、顕色剤の変色が視認し易くなる色味であることが好ましい。硫化水素吸着物質の色味は、使用する顕色剤の変色前後の色味に応じて調整してよい。例えば、硫化水素吸着物質が白色等である場合、顕色剤の変色が視認し易くなる傾向があるため好ましい。一方、硫化水素吸着物質が褐色や黒色等である場合、顕色剤の変色が視認し難くなる傾向がある。
【0084】
硫化水素吸着物質を添加する層には、硫化水素吸着物質の分散性を向上させる観点から、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸を添加してもよい。硫化水素吸着物質を金属石鹸と併用することで、層内での硫化水素吸着物質の分散性を高めることができ、硫化水素を無毒化する効果の偏りが生じ難くなると共に、硫化水素吸着物質を含有する層の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制し易い。
【0085】
硫化水素吸着物質は、顕色剤と同様に、予めマスターバッチ化して用いてもよい。硫化水素吸着物質を顕色剤と同じ層に添加する場合には、硫化水素吸着物質と顕色剤とをマスターバッチ化してもよい。
【0086】
硫化水素吸着物質を含有する層における硫化水素吸着物質の含有量は、当該層全量を基準として0.01質量%以上30質量%以下であってよく、0.05質量%以上20質量%以下であってよく、0.1質量%以上15質量%以下であってよい。硫化水素吸着物質の含有量が上記下限値以上であることで、硫化水素無害化の効果が十分に得られ易く、上記上限値以下であることで、硫化水素吸着物質を含有する層の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制できる。
【0087】
同じ層に顕色剤及び硫化水素吸着物質の両方が含有されている場合、当該層における顕色剤及び硫化水素吸着物質の合計の含有量は、当該層全量を基準として0.01質量%以上30質量%以下であってよく、0.05質量%以上20質量%以下であってよく、0.1質量%以上15質量%以下であってよい。この含有量が上記下限値以上であることで、色の変化がより視認し易く且つ硫化水素無害化の効果が十分に得られ易く、上記上限値以下であることで、顕色剤及び硫化水素吸着物質を含有する層の機能(例えば、密着強度やシール強度等)の低下を抑制できる。
【0088】
以上、本実施形態の全固体電池用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0089】
例えば、図1では、バリア層13の両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合を示したが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよく、腐食防止処理層が設けられていなくてもよい。
【0090】
また、顕色剤がバリア層13よりも内側(シーラント層16側)のいずれかの層に含有される場合、顕色剤を含有する層の変色を確認し易くするために、顕色剤を含有する層の一部を露出させてもよい。例えば、顕色剤を含有する層の一部が露出するように、外装材10に切り欠き部を設けてもよい。また、顕色剤を含有する層の形状を、当該層の一部が他の層よりも突出する形状にしてもよい。また、顕色剤を含有する層の一部が露出するように、顕色剤を含有する層と他の層とをずらして積層してもよい。
【0091】
図1では、第2の接着剤層12bを用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、図2に示す全固体電池用外装材20のように接着性樹脂層15を用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されていてもよい。また、図2に示す全固体電池用外装材20において、バリア層13と接着性樹脂層15との間に第2の接着剤層12bを設けてもよい。
【0092】
<接着性樹脂層15>
接着性樹脂層15は、主成分となる接着性樹脂組成物と必要に応じて添加剤成分とを含んで概略構成されている。接着性樹脂組成物は、特に制限されないが、変性ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0093】
変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸、並びにその酸無水物及びエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体により、グラフト変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0094】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、及びプロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
【0095】
変性ポリオレフィン樹脂は無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂であることが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂には、例えば、三井化学株式会社製の「アドマー」、三菱化学株式会社製の「モディック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂は、各種金属及び各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して接着性樹脂層15に密着性を付与することができる。また、接着性樹脂層15は、必要に応じて、例えば、各種相溶系及び非相溶系の、エラストマー、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、並びに粘着付与剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0096】
接着性樹脂層15の厚さは、特に限定されないが、応力緩和や水分透過の観点から、シーラント層16と同じ又はそれ未満であることが好ましい。
【0097】
また、全固体電池用外装材20においては、接着性樹脂層15及びシーラント層16の合計の厚さは、薄膜化と高温環境下でのヒートシール強度の向上とを両立する観点から、5~100μmの範囲であることが好ましく、20~80μmの範囲であることがより好ましい。
【0098】
外装材20において、顕色剤及び/又は硫化水素吸着物質は、接着性樹脂層15に含有されていてもよい。外装材20において、顕色剤及び/又は硫化水素吸着物質は、第1の接着剤層12a、接着性樹脂層15及びシーラント層16からなる群より選択される少なくとも一層に含有されていてよい。
【0099】
また、本開示の外装材は、図3に示す全固体電池用外装材30のように、基材層11のバリア層13側とは反対側の面上に配置された保護層17を更に備えていてもよい。なお、図3において、接着性樹脂層15は、第2の接着剤層12bであってもよい。
【0100】
<保護層17>
保護層17は、基材層11を保護する層である。保護層17を構成する材料としては、第1の接着剤層12aと同様の材料を用いることができる。保護層17は、基材層11上にコーティング等により形成することができる。
【0101】
外装材30において、顕色剤及び/又は硫化水素吸着物質は、保護層17に含有されていてもよい。外装材30において、顕色剤及び/又は硫化水素吸着物質は、保護層17、第1の接着剤層12a、接着性樹脂層15及びシーラント層16からなる群より選択される少なくとも一層に含有されていてよい。
【0102】
外装材30において、顕色剤がバリア層13よりも外側(基材層11側)のいずれかの層に含有される場合、顕色剤は、目的に応じて、保護層17に含有されていてもよく、第1の接着剤層12aに含有されていてもよい。顕色剤が保護層17に含有されている場合、外装材10における最も外側の層が保護層17であるため、全固体電池モジュールにおいて、モジュール内のいずれかの全固体電池に異常が生じて硫化水素が漏れ出した場合に、モジュール内の異常の発見、及び、異常が生じている全固体電池の特定が容易となる。一方、顕色剤が第1の接着剤層12aに含有されている場合、バリア層13にピンホール等の欠陥があった場合に、その欠陥部分近傍において第1の接着剤層12aの変色が顕著となり、全固体電池の異常の発見が容易となると共に、欠陥部分の特定も容易となる。なお、顕色剤は、保護層17及び第1の接着剤層12aの両方に含有されていてもよい。
【0103】
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0104】
本実施形態の外装材10の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
【0105】
(バリア層13への腐食防止処理層14a,14bの積層工程)
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
【0106】
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合は、例えば、下層側(バリア層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)をバリア層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成すればよい。
【0107】
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて行えばよい。熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて行えばよい。化成処理については化成処理のタイプに応じ、浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
【0108】
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
【0109】
上述したように、各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
【0110】
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005~0.200g/mが好ましく、0.010~0.100g/mがより好ましい。
【0111】
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60~300℃の範囲で行うことができる。
【0112】
(基材層11とバリア層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材層11とを、第1の接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した第1の接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる。第1の接着剤層12aは、ドライ塗布量として1~10g/mの範囲、より好ましくは2~7g/mの範囲で設ける。
【0113】
(第2の接着剤層12b及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、バリア層13の第2の腐食防止処理層14b側に、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーション等が挙げられる。
【0114】
ウェットプロセスの場合は、第2の接着剤層12bを構成する接着剤の溶液又は分散液を、第2の腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16を積層し、外装材10を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。第2の接着剤層12bの好ましいドライ塗布量は、第1の接着剤層12aと同様である。
【0115】
この場合、シーラント層16は、例えば、上述したシーラント層16の構成成分を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
【0116】
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/第2の接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温~100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1~10日である。
【0117】
このようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
【0118】
次に、図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0119】
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、接着性樹脂層15及びシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。なお、基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
【0120】
(接着性樹脂層15及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、先の工程により形成された第2の腐食防止処理層14b上に、接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16とともにサンドラミネーションする方法が挙げられる。さらには、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成では、例えば、上述した接着性樹脂層15及びシーラント層16の構成を満たすように、各成分が配合される。シーラント層16の形成には、上述したシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。
【0121】
本工程により、図2に示すような、基材層11/第1の接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
【0122】
なお、接着性樹脂層15は、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒した造粒物を、押出ラミネート機を用いて押出すことで積層させてもよい。
【0123】
シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、接着性樹脂層15及びシーラント層16は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機で接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、又は共押出法で積層させてもよい。また、シーラント層形成用樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。接着性樹脂層15及びシーラント層16の形成速度(加工速度)は、生産性の観点から、例えば、80m/分以上であることができる。
【0124】
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/接着性樹脂層15/シーラント層16間での密着性を向上させることができる。熱処理の方法としては、少なくとも接着性樹脂層15の融点以上の温度で処理することが好ましい。
【0125】
このようにして、図2に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
【0126】
以上、本開示の全固体電池用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0127】
[全固体電池]
図4は、上述した外装材を用いて作製した全固体電池の一実施形態を示す斜視図である。図4に示されるように、全固体電池50は、電池要素52と、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(電流取出し端子)53と、電池要素52を気密状態で包含する外装材10とを含んで構成される。外装材10は、上述した本実施形態に係る外装材10であり、電池要素52を収容する容器として用いられる。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を全固体電池50の外部側、シーラント層16を全固体電池50の内部側となるように、1つのラミネートフィルムを2つ折りにして周縁部を熱融着することにより、又は、2つのラミネートフィルムを重ねて周縁部を熱融着することにより、内部に電池要素52を包含した構成となる。金属端子53は、シーラント層16を内側として容器を形成する外装材10によって挟持され、密封されている。金属端子53は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。なお、全固体電池50では、外装材10に代えて外装材20又は外装材30を用いてもよい。
【0128】
電池要素52は、正極と負極との間に硫化物系固体電解質を介在させてなるものである。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。本実施形態の全固体電池50においては、電池要素52から硫化水素が発生した場合に、外装材10の顕色剤を含有する層が変色するため、全固体電池50の異常を目視にて早期に発見することが可能となる。
【実施例
【0129】
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0130】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<保護層(厚さ3μm)>
主剤:バイロン UR1400(東洋紡社製)に、硬化剤:タケネート A-50(三井化学社製)を配合した保護層形成用組成物を用いた。
【0131】
<基材層(厚さ15μm)>
ナイロン(Ny)フィルム(東洋紡社製)を用いた。
【0132】
<第1の接着剤層(厚さ5μm)>
ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合したポリウレタン系接着剤(東洋インキ社製)を用いた。
【0133】
<第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)>
(CL-1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL-2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
【0134】
<バリア層(厚さ40μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
【0135】
<接着性樹脂層(厚さ20μm)>
接着性樹脂として、ランダムポリプロピレン(PP)ベースの酸変性ポリプロピレン樹脂組成物(三井化学社製)を用いた。
【0136】
<シーラント層(厚さ60μm)>
ポリプロピレン-ポリエチレンランダム共重合体(プライムポリマー社製、商品名:F744NP)を、シーラント層形成用樹脂組成物として用いた。
【0137】
<顕色剤>
実施例において、下記の顕色剤a~cを、保護層、第1の接着剤層、接着性樹脂層、又は、シーラント層に添加した。添加の有無、及び、配合量については、表1に示した。配合量は、各層の全量(100質量%)に占める割合(質量%)を示している。顕色剤は、各層を構成する材料と混合して用いた。
顕色剤a:酢酸鉛(Pb(CHCOO)
顕色剤b:硫酸銅(CuSO
顕色剤c:硫酸銀(AgSO
【0138】
<硫化水素(HS)吸着物質>
一部の実施例及び比較例において、下記の硫化水素吸着物質a~cを、第1の接着剤層、接着性樹脂層、又は、シーラント層に添加した。添加の有無、及び、配合量については、表1に示した。配合量は、各層の全量(100質量%)に占める割合(質量%)を示している。硫化水素吸着物質は、各層を構成する材料と混合して用いた。なお、接着性樹脂層又はシーラント層に顕色剤及び/又は硫化水素吸着物質を添加する場合は、接着性樹脂層又はシーラント層を構成する樹脂の一部と予め混合した後、当該混合物を各層を構成する残りの材料と混合した。また、第1の接着剤層に顕色剤及び/又は硫化水素吸着物質を添加する場合は、第1の接着剤層を構成する主剤と予め混合した後、当該混合物を硬化剤と混合した。
硫化水素吸着物質a:酸化亜鉛(ZnO、白色顔料)
硫化水素吸着物質b:大日精化工業株式会社製、商品名:ダイムシュー PE-M 3000-Z(ポリエチレンマスターバッチ品)
硫化水素吸着物質c:東亞合成株式会社製、商品名:ケスモンNS10C(総合消臭剤)
【0139】
[外装材の作製]
(実施例1~4及び7~17)
まず、バリア層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、バリア層の両方の面に(CL-1)を、ドライ塗布量として70mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL-2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL-1)と(CL-2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL-1)と(CL-2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
【0140】
次に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。バリア層と基材層との積層は、バリア層の第1の腐食防止処理層側の面上にポリウレタン系接着剤を、硬化後の厚さが5μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、基材層とラミネートし、60℃で72時間エージングすることで行った。
【0141】
次いで、バリア層と基材層との積層体を押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に270℃、100m/minの加工条件で共押出しすることで接着性樹脂層(厚さ20μm)及びシーラント層(厚さ60μm)をこの順で積層した。なお、接着性樹脂層及びシーラント層は、事前に二軸押出機を用いて各種材料のコンパウンドを作製しておき、水冷・ペレタイズの工程を経て、上記押出ラミネートに使用した。
【0142】
このようにして得られた積層体を、該積層体の最高到達温度が190℃になるように、熱処理を施して、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を作製した。なお、各実施例において、顕色剤及び/又は硫化水素吸着物質は、表1に示す層に表1に示す配合量で添加した。
【0143】
(実施例5~6)
まず、基材層上に保護層形成用組成物をリバースコートにより塗工して乾燥させることで、厚さ3μmの保護層を形成した。次に、実施例1と同様にして、バリア層と保護層付基材層との積層体を得た。得られた保護層と基材層とバリア層との積層体における第2の腐食防止処理層上に、実施例1と同様の方法で接着性樹脂層及びシーラント層を積層し、熱処理を施して、外装材(保護層/基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を作製した。なお、各実施例において、顕色剤は、表1に示す層に表1に示す配合量で添加した。
【0144】
(実施例18)
バリア層として、焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔に、予めピンホールを1個/5cm角の密度で設けたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を作製した。
【0145】
(比較例1)
顕色剤及び硫化水素吸着物質をいずれの層にも添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を作製した。
【0146】
(比較例2)
硫化水素吸着物質をシーラント層に表1に示す配合量で添加したこと以外は比較例1と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を作製した。
【0147】
[外層/内層ラミネート強度の測定]
外装材を15mm×200mmのサイズに切り出し、外層ラミネート強度を測定する場合は、バリア層と基材層との間で部分的に剥離し、内層ラミネート強度を測定する場合は、バリア層とシーラント層との間で部分的に剥離することで、サンプルをチャックする部分を形成し、ラミネート強度測定用サンプルを得た。このサンプルに対し、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いてT字剥離試験を行った。測定は、室温(25℃)環境下で行った。結果を表1に示す。
【0148】
[ヒートシール強度の測定]
外装材を120mm×60mmのサイズに切り出し、シーラント層が内側になるように半分に折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部を190℃/0.5MPa/3秒で幅10mmにわたってヒートシールし、6時間室温で保管した。その後、ヒートシール部の長手方向中央部を幅15mm×30mmで切り出し(図5を参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。このサンプルのヒートシール部に対し、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いてT字剥離試験を行った。測定は、室温(25℃)環境下で行った。結果を表1に示す。
【0149】
[顕色性の評価]
外装材を50mm×50mmのサイズに切り出し、顕色性評価用サンプルとした。このサンプルについて、下記(1)~(5)のいずれかの試験を行った。その後、サンプルの顕色剤を添加した層の変色の有無を目視にて確認した。変色が確認できた場合を「A」、変色が確認できなかった場合を「B」と判定した。結果を表1に示す。
(1)バリア層よりも内側(シーラント層側)の層に顕色剤を添加した場合(実施例2~3、7、16)
サンプルを2Lのテドラーバック内に入れ、シーラント層側が袋の内部を向くようにテドラーバッグに貼り付けた。このとき、基材層側にHSが回り込まないように、サンプル周辺をテープで固定した。この状態でテドラーバックを封止した。このテドラーバック内に濃度5質量ppmのHSガスを2L流し込み、室温(25℃)にて72時間放置した。
(2)バリア層よりも外側(基材層側)の層に顕色剤を添加した場合(実施例1、5、8~15、17)
サンプルを2Lのテドラーバック内に入れ、基材層側又は保護層側が袋の内部を向くようにテドラーバッグに貼り付けた。このとき、シーラント層側にHSが回り込まないように、サンプル周辺をテープで固定した。この状態でテドラーバックを封止した。このテドラーバック内に濃度5質量ppmのHSガスを2L流し込み、室温(25℃)にて72時間放置した。
(3)バリア層よりも内側及び外側の両方に顕色剤を添加した場合(実施例4、6)
上記(1)及び上記(2)の両方の試験を行い、それぞれ判定を行った。両方とも変色が確認できた場合を「A」、一方又は両方の変色が確認できなかった場合を「B」と判定した。
(4)ピンホールを有するバリア層を用いた場合(実施例18)
ピンホールから透過するHSを検知するために、上記(1)の試験を行った。
(5)顕色剤を添加しなかった場合(比較例1~2)
上記(1)及び上記(2)の両方の試験を行い、それぞれ判定を行った。一方又は両方の変色が確認できた場合を「A」、両方の変色が確認できなかった場合を「B」と判定した。
【0150】
[硫化水素(HS)吸収性の評価]
外装材を50mm×50mmのサイズに切り出し、HS吸収性評価用サンプルとした。このサンプルについて、下記(1)~(3)のいずれかの試験を行った。その後、テドラーバック内のHS濃度を測定し、濃度が5質量ppm以下である場合を「A」、5質量ppmを超える場合を「B」と判定した。結果を表1に示す。
(1)バリア層よりも内側(シーラント層側)の層にHS吸着物質を添加した場合(実施例7~8、10~13、17、比較例2)
サンプルを2Lのテドラーバック内に入れ、シーラント層側が袋の内部を向くようにテドラーバッグに貼り付けた。このとき、基材層側にHSが回り込まないように、サンプル周辺をテープで固定した。この状態でテドラーバックを封止した。このテドラーバック内に濃度20質量ppmのHSガスを2L流し込み、室温(25℃)にて144時間放置した。
(2)バリア層よりも外側(基材層側)の層にHS吸着物質を添加した場合(実施例9)
サンプルを2Lのテドラーバック内に入れ、基材層側又は保護層側が袋の内部を向くようにテドラーバッグに貼り付けた。このとき、シーラント層側にHSが回り込まないように、サンプル周辺をテープで固定した。この状態でテドラーバックを封止した。このテドラーバック内に濃度20質量ppmのHSガスを2L流し込み、室温(25℃)にて144時間放置した。
(3)HS吸着物質を添加しなかった場合(実施例1~6、14~16、18、比較例1)
上記(1)及び上記(2)の両方の試験を行い、HS濃度がより低くなった方の結果を用いて判定を行った。
【0151】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0152】
本開示の全固体電池用外装材によれば、硫化水素が発生した場合に外装材における顕色剤を含有する層の色が変化するため、全固体電池の異常を目視にて早期に発見することができる。
【符号の説明】
【0153】
10,20,30…全固体電池用外装材、11…基材層、12a…第1の接着剤層、12b…第2の接着剤層、13…バリア層、14a…第1の腐食防止処理層、14b…第2の腐食防止処理層、15…接着性樹脂層、16…シーラント層、17…保護層、50…全固体電池、52…電池要素、53…金属端子。
図1
図2
図3
図4
図5