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特許7631671移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置
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  • 特許-移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置 図1
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  • 特許-移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置 図4
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  • 特許-移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置 図5B
  • 特許-移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置 図6
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  • 特許-移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置 図8
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  • 特許-移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置 図15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20250212BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20250212BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20250212BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20250212BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250212BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/14 H
H02H7/18
H01M10/44 P
H01M10/48 P
B60R16/02 645A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020068793
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021166434
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059732(WO,A1)
【文献】特開2016-086506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/36
H02H7/00
H02H7/10-7/20
H01M10/42-10/48
B60R16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置を備えており、
前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、
当該制御方法は、
各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1ステップと、
電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2ステップと、
を含み、
前記第1ステップは、
全ての前記蓄電装置が正常な場合に、各前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するステップと、
前記蓄電装置の前記管理装置が、当該蓄電装置の異常を検出した場合に電流を遮断する許可を要求するステップと、
前記管理装置から電流を遮断する許可を要求されると、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように、電流を遮断する許可を要求した前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止するステップと、
を含む、移動体の電源システムの制御方法。
【請求項2】
移動体の電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置を備えており、
前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、
当該制御方法は、
各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1ステップと、
電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2ステップと、
を含み、
前記第1ステップにおいて、2つ以上の前記蓄電装置が正常な場合に、それら正常な前記蓄電装置のうちいずれかの前記蓄電装置が異常になって当該蓄電装置の前記電流遮断装置を遮断状態にしたと仮定したときに他の正常な前記蓄電装置の残電力量の合計が前記電源システムに必要とされる電力量未満となる場合は、正常な全ての前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止する、移動体の電源システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動体の電源システムの制御方法であって、
前記第1ステップにおいて、全ての前記蓄電装置が異常な場合に、いずれの前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するかを各前記蓄電装置の異常の種類に基づいて決定する、移動体の電源システムの制御方法。
【請求項4】
移動体の電源システムであって、
移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置と、
制御部と、
を備えており、
前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、
前記制御部が、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1処理と、
電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2処理と、
を実行し、
前記第1処理は、
全ての前記蓄電装置が正常な場合に、各前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止する処理と、
前記蓄電装置の前記管理装置が、当該蓄電装置の異常を検出した場合に電流を遮断する許可を要求する処理と、
前記管理装置から電流を遮断する許可を要求されると、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように、電流を遮断する許可を要求した前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する処理と、
を含む、移動体の電源システム。
【請求項5】
移動体の電源システムであって、
移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置と、
制御部と、
を備えており、
前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、
前記制御部が、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1処理と、
電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2処理と、
を実行し、
前記第1処理において、2つ以上の前記蓄電装置が正常な場合に、それら正常な前記蓄電装置のうちいずれかの前記蓄電装置が異常になって当該蓄電装置の前記電流遮断装置を遮断状態にしたと仮定したときに他の正常な前記蓄電装置の残電力量の合計が前記電源システムに必要とされる電力量未満となる場合は、正常な全ての前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止する、移動体の電源システム。
【請求項6】
移動体の電源システムであって、
移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置を備えており、
前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、
いずれか1つの前記管理装置は、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1処理を実行し、
電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置は、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2処理を実行し、
前記第1処理は、
全ての前記蓄電装置が正常な場合に、各前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止する処理と、
前記蓄電装置の前記管理装置が、当該蓄電装置の異常を検出した場合に電流を遮断する許可を要求する処理と、
前記管理装置から電流を遮断する許可を要求されると、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように、電流を遮断する許可を要求した前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する処理と、
を含む、移動体の電源システム。
【請求項7】
移動体の電源システムであって、
移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置を備えており、
前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、
いずれか1つの前記管理装置は、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1処理を実行し、
電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置は、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2処理を実行し、
前記第1処理において、2つ以上の前記蓄電装置が正常な場合に、それら正常な前記蓄電装置のうちいずれかの前記蓄電装置が異常になって当該蓄電装置の前記電流遮断装置を遮断状態にしたと仮定したときに他の正常な前記蓄電装置の残電力量の合計が前記電源システムに必要とされる電力量未満となる場合は、正常な全ての前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止する、移動体の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
移動体の電源システムの制御方法、移動体の電源システム、及び、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各車両メーカーにおいて、自動ブレーキシステムや自動運転技術の開発が盛んに行われている。このような車両(移動体)の電化の流れは車両の電源システムの重要性を一段と増加させている。車両の電源システムとしては、1つの蓄電装置とオルタネータとによる電源供給が現在も主流である。蓄電装置が突然故障したり、蓄電装置の外部端子に接続されたハーネスが外れたりすると車両に対する電力供給が途絶える場合があることから、蓄電装置を2つ並列に接続して冗長性を持たせることが求められていた。下記文献1には、車両用電源装置を、制御装置と、電気負荷と、メインリレーと、スタータと、オルタネータと、鉛蓄電池と、ニッケル水素充電池などを含んで構成する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-67042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置は、安全性を確保するため、過充電などの異常が発生したときに電流を遮断する電流遮断装置を設けている場合がある。例えば2つの蓄電装置を並列に接続する電源システムでは、2つの蓄電装置のうち一方の蓄電装置が異常になった場合、一方の蓄電装置の電流を遮断しても、もう一方の蓄電装置で車両への電力供給を継続することが可能である。
しかしながら、もう一方の蓄電装置が異常になった時点で電流を遮断すると、2つの蓄電装置とも遮断された状態となり、移動体負荷に電力供給されなくなる。このため、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減する上で改善の余地があった。
【0005】
本明細書では、並列に接続された複数の蓄電装置が全て異常になっても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
移動体の電源システムの制御方法であって、前記電源システムは、移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置を備えており、前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、当該制御方法は、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1ステップと、電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2ステップと、を含む、移動体の電源システムの制御方法。
【発明の効果】
【0007】
並列に接続された複数の蓄電装置が全て異常になっても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る車両の模式図
図2】電源システムのブロック図
図3】第1蓄電装置のブロック図
図4】蓄電装置の分解斜視図
図5A】二次電池の平面図
図5B図5AのA-A線断面図
図6】第2蓄電装置のブロック図
図7】充電カーブを示すグラフ
図8】電源システムの制御処理のシーケンス
図9】電源システムの制御処理のシーケンス
図10】電源システムの制御処理のシーケンス
図11】実施形態2に係る電源システムの制御処理のシーケンス
図12】電源システムの制御処理のシーケンス
図13】電源システムの制御処理のシーケンス
図14】実施形態3に係る電源システムのブロック図
図15】実施形態4に係る電源システムの制御処理のシーケンス
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
(1)移動体の電源システムの制御方法であって、前記電源システムは、移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置を備えており、前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、当該制御方法は、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1ステップと、電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2ステップと、を含む、移動体の電源システムの制御方法。
【0010】
上記の「異常」は、蓄電装置が既に異常に至っている場合に限定されず、異常に至ることが予見される場合も含む。
上記の制御方法では、電流遮断により蓄電装置の安全性を確保する従来の発想を逆にして、各蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの蓄電装置の電流遮断装置が通電状態になるように各蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止し、電流の遮断を許可された蓄電装置の管理装置が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に電流遮断装置を遮断状態にする。電流の遮断を許可された蓄電装置の電流遮断装置を遮断状態にするので、電流の遮断を許可された蓄電装置を異常から保護できる。全ての蓄電装置が異常になっても少なくとも1つの蓄電装置は移動体に接続された状態になることから、いずれの蓄電装置も移動体に接続されない場合に比べ、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0011】
(2)前記蓄電装置の異常は前記管理装置の異常を含んでもよい。
【0012】
蓄電装置の異常には蓄電素子の異常と管理装置の異常とがある。管理装置が異常になると蓄電装置の状態を正しく検出できず、蓄電装置が異常でないにもかかわらず異常と判断して電流が遮断される可能性がある。このため、蓄電装置を1つしか備えていない従来の電源システムでは、管理装置に異常が発生すると電流の遮断を禁止することで移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減している。しかしながら、電流の遮断を禁止するとその後に蓄電素子に異常が発生しても電流が遮断されず、蓄電装置の安全性を確保できなくなる可能性がある。
【0013】
本願発明者は、冗長性を持たせた電源システムでは、ある蓄電装置の管理装置に異常が発生しても、他に正常な蓄電装置がある場合は、管理装置に異常が発生した蓄電装置の電流を遮断することにより、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減しつつ、管理装置に異常が発生した蓄電装置の安全性を確保できることを見出した。
上記の制御方法によると、ある蓄電装置の管理装置に異常が発生した場合に、他に正常な蓄電装置がある場合は、管理装置に異常が発生した蓄電装置に対して電流の遮断を許可し、正常な蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するので、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減しつつ、管理装置の異常が発生した蓄電装置の安全性を確保できる。
【0014】
(3)前記蓄電装置の異常は前記管理装置の異常であってもよい。
【0015】
本願発明者は、冗長性を持たせた電源システムでは、ある蓄電装置の管理装置に異常が発生しても、他に管理装置が正常な蓄電装置がある場合は、管理装置に異常が発生した蓄電装置の電流を遮断することにより、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減しつつ、管理装置に異常が発生した蓄電装置の安全性を確保できることを見出した。
【0016】
上記の制御方法によると、ある蓄電装置の管理装置に異常が発生した場合に、他に管理装置が正常な蓄電装置がある場合は、管理装置に異常が発生した蓄電装置に対して電流の遮断を許可し、管理装置が正常な蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するので、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減しつつ、管理装置の異常が発生した蓄電装置の安全性を確保できる。
【0017】
(4)前記第1ステップは、全ての前記蓄電装置が正常な場合に、各前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するステップと、前記蓄電装置の前記管理装置が、当該蓄電装置の異常を検出した場合に電流を遮断する許可を要求するステップと、前記管理装置から電流を遮断する許可を要求されると、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように、電流を遮断する許可を要求した前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止するステップと、を含んでもよい。
【0018】
移動体の電源システムの構成として、移動体が備える制御部と蓄電装置とが通信可能に接続されており、制御部が蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する構成が考えられる。この場合の制御方法として、全ての蓄電装置が正常のときに制御部が各蓄電装置に対して電流の遮断を許可しておき、蓄電装置が異常になったときに管理装置が電流を遮断する構成が考えられる。しかしながら、この制御方法では、何らかの障害が発生して制御部と蓄電装置との通信が途絶えた場合に、蓄電装置に対して電流の遮断を禁止すべき状況になっても禁止できず、電流が遮断されて移動体負荷に電力供給されなくなる可能性がある。
【0019】
上記の制御方法によると、全ての蓄電装置が正常な場合に、各蓄電装置に対して電流の遮断を禁止する。このようにすると、その後に制御部と蓄電装置との通信が途絶えた場合、蓄電装置に異常が発生しても制御部から電流の遮断が許可されないことから、蓄電装置は電流の遮断が禁止されたままとなる。このため、制御部と蓄電装置との通信が途絶えても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。上記の制御方法は移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減することが強く求められている電源システムの場合に特に有用である。
ここでは移動体が備える制御部が各蓄電装置に電流の遮断を許可又は禁止する場合を例示したが、複数の蓄電装置のうちいずれか1つの蓄電装置の管理装置が上述した制御部として機能する構成であってもよい。
【0020】
(5)前記第1ステップは、2つ以上の前記蓄電装置が正常な場合に、全ての前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可するステップと、正常な前記蓄電装置の数が1である場合に、正常な前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するステップと、を含んでもよい。
【0021】
上記の制御方法によると、正常な蓄電装置の数が2つ以上である場合は全ての蓄電装置に対して電流の遮断を許可するので、異常な蓄電装置の場合は電流が遮断され、正常な蓄電装置の場合はその後に異常になったときに電流が遮断される。これにより蓄電装置の安全性を確保できる。
例えば2つの蓄電装置が正常である場合に、その後にいずれか一方の蓄電装置が異常になった場合は、正常な蓄電装置が1つだけとなる。正常な蓄電装置が1つだけになった場合はその蓄電装置に対して電流の遮断を禁止することにより、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0022】
(6)前記第1ステップにおいて、全ての前記蓄電装置が異常な場合は2つ以上の前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止してもよい。
【0023】
全ての蓄電装置が異常になった場合、最低限1つの蓄電装置に対して電流の遮断を禁止すれば移動体負荷に電力供給されなくなることを防止できる。しかしながら、電流の遮断を禁止するとその後にオルタネータから供給される充電電流によって蓄電装置が過充電になり、電池性能が失われる可能性がある。電池性能を失うとは、充電も放電もできなくなることを意味する。
全ての蓄電装置の電池性能が失われると移動体負荷に電力供給されなくなる。移動体の走行中に移動体負荷に電力供給されなくなると電源システムの制御部、ブレーキシステム、パワーステアリングなどに電力が供給されなくなり、移動体が安全に停止できなくなる可能性がある。移動体負荷に電力供給されなくなった場合はハザードランプも点灯できなくなる。このため、全ての蓄電装置が異常になった場合でも、移動体が安全に停止できるまでの時間を確保することが望ましい。
【0024】
上記の制御方法によると、全ての蓄電装置が異常になった場合は2つ以上の蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するので、2つ以上の蓄電装置によって充電電流を分担して受け入れることができる。充電電流を分担して受け入れると1つの蓄電装置だけで受け入れる場合に比べて各蓄電装置の電圧上昇が遅くなるので、蓄電装置が過充電に至るまでの時間(言い換えると電池性能が失われるまでの時間)が長くなる。このため、移動体が安全に停止できる時間を確保できる。
【0025】
(7)前記第1ステップにおいて、全ての前記蓄電装置が異常な場合に、いずれの前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するかを各前記蓄電装置の異常の種類に基づいて決定してもよい。
【0026】
蓄電装置が異常になった場合、その蓄電装置に対して電流の遮断を禁止したままにすると蓄電装置が完全に使用不能になる可能性がある。しかし、蓄電装置が完全に使用不能になる可能性は異常の種類によって異なる。
上記の制御方法によると、いずれの蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するかを異常の種類に基づいて決定するので、異常の種類によらず決定する場合に比べ、蓄電装置が完全に使用不能になる可能性を低減できる。
【0027】
(8)前記第1ステップにおいて、2つ以上の前記蓄電装置が正常な場合に、それら正常な前記蓄電装置のうちいずれかの前記蓄電装置が異常になって当該蓄電装置の前記電流遮断装置を遮断状態にしたと仮定したときに他の正常な前記蓄電装置の残電力量の合計が前記電源システムに必要とされる電力量未満となる場合は、正常な全ての前記蓄電装置に対して電流の遮断を禁止してもよい。
【0028】
電源システムに必要とされる電力量が100であると仮定する。正常な蓄電装置Aと正常な蓄電装置Bとがあり、蓄電装置Aの残電力量が70、蓄電装置Bの残電力量が60であるとする。この場合に、蓄電装置Aの残電力量と蓄電装置Bの残電力量との合計は130であるので電源システムに必要とされる電力量(=100)以上である。この場合に、例えば蓄電装置Aが異常になったと仮定すると、正常な蓄電装置は蓄電装置Bだけとなることから、他の正常な蓄電装置の残電力量の合計は60となり、電源システムに必要とされる電力量未満となる。
上記の制御方法によると、正常な蓄電装置のうちいずれかの蓄電装置が異常になって当該蓄電装置の電流遮断装置を遮断状態にしたと仮定したときに他の正常な蓄電装置の残電力量の合計が電源システムに必要とされる電力量未満となる場合は、正常な全ての蓄電装置に対して電流の遮断を禁止するので、いずれかの蓄電装置が異常になっても電源システムに必要とされる電力量を確保できる。これにより、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクをより確実に低減できる。
【0029】
(9)移動体の電源システムであって、移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置と、制御部と、を備えており、前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、前記制御部が、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1処理と、電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2処理と、を実行する、移動体の電源システム。
【0030】
上記の電源システムによると、並列に接続された複数の蓄電装置が全て異常になっても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0031】
(10)移動体の電源システムであって、移動体負荷に接続され、互いに並列に接続されている複数の蓄電装置を備えており、前記蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備えており、いずれか1つの前記管理装置は、各前記蓄電装置の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの前記蓄電装置の前記電流遮断装置が通電状態になるように各前記蓄電装置に対して電流の遮断を許可又は禁止する第1処理を実行し、電流の遮断を許可された前記蓄電装置の前記管理装置は、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、電流の遮断を許可された後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2処理を実行する、移動体の電源システム。
【0032】
上記の電源システムによると、並列に接続された複数の蓄電装置が全て異常になっても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0033】
(11)移動体の電源システムに用いられる蓄電装置であって、蓄電素子と、前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断装置と、管理装置とを備え、前記管理装置は、当該蓄電装置の正常、異常を検出し、外部装置に送信する第3処理と、前記外部装置から電流の遮断を許可する許可信号又は電流の遮断を禁止する禁止信号を受信する第4処理と、前記許可信号を受信した時点で当該蓄電装置の異常を検出している場合、又は、前記許可信号を受信した後に当該蓄電装置の異常を検出した場合に前記電流遮断装置を遮断状態にする第2処理と、を実行する、蓄電装置。
【0034】
上記の蓄電装置によると、並列に接続された複数の蓄電装置が全て異常になっても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0035】
本明細書によって開示される発明は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0036】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図10によって説明する。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0037】
(1-1)車両の電源システム
図1に示す車両10(移動体の一例)はエンジン駆動車であり、セルモータ等のエンジン始動装置21及び電源システム30が搭載されている。
図2に示すように、車両10には車両発電機であるオルタネータ23、電気負荷25なども搭載されている。電気負荷25は定格12Vであり、エアコン、オーディオ、カーナビゲーションなどを例示できる。エンジン始動装置21及び電気負荷25は移動体負荷の一例である。
【0038】
電源システム30は車両ECU(電子制御装置:Electronic Control Unit)31、第1蓄電装置50A(蓄電装置の一例)、第2蓄電装置50B(蓄電装置の一例)、DC-DCコンバータ35を含んで構成されている。以降の説明では、第1蓄電装置50Aと第2蓄電装置50Bとを区別しない場合は単に蓄電装置50という。他の構成要素についても同様である。
【0039】
車両ECU31(制御部、外部装置の一例)は電源システム30の制御部である。車両ECU31は第1蓄電装置50A、第2蓄電装置50B及びDC-DCコンバータ35と通信可能に接続されている。車両ECU31はCPU32、RAM33、ROM34などを備える。ROM34にはCPU32によって実行される各種の制御プログラムが記憶されている。車両ECU31は例えば車両10のイグニッションスイッチがオンにされるか又はスタートボタンが押下されると起動する。車両ECU31はイグニッションスイッチがオフにされている間も第1蓄電装置50Aあるいは第2蓄電装置50Bから電力が供給されて常に起動していてもよい。
【0040】
車両ECU31はDC-DCコンバータ35を制御することで蓄電装置50の充放電制御を行う。車両ECU31は車両10のエンジン(駆動装置)を制御する他のECUからエンジンの動作状態や車両10の走行状態の情報を得ることが出来る。詳しくは後述するが、車両ECU31は蓄電装置50の状態(正常、異常)を一定周期で受信し、各蓄電装置50の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの蓄電装置50が通電状態になるように各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可又は禁止する処理も実行する。
【0041】
第1蓄電装置50Aは電力線37に接続されている。第1蓄電装置50Aには電力線37を介してエンジン始動装置21、オルタネータ23、電気負荷25が接続されている。第1蓄電装置50Aは第1電流遮断装置53A(電流遮断装置の一例)、第1組電池60A、及び、第1BMU100A(電池管理装置:Battery Management Unit)を含む。第1蓄電装置50Aは定格12Vである。第1BMU100Aは管理装置の一例である。
【0042】
第2蓄電装置50BはDC-DCコンバータ35を介して第1蓄電装置50Aと並列に接続されている。第2蓄電装置50Bは第2電流遮断装置53B(電流遮断装置の一例)、第2組電池60B、及び、第2BMU100Bを含む。第2蓄電装置50Bは定格12Vである。第2BMU100Bは管理装置の一例である。
【0043】
DC-DCコンバータ35は第2蓄電装置50Bに対する充電と放電とを制御可能な双方向のDC-DCコンバータである。DC-DCコンバータ35は第2蓄電装置50Bの充放電を制御する調整装置である。調整装置はDC-DCコンバータ35以外でもよい。
DC-DCコンバータ35は、負荷側のA点の電圧を制御することで、第2蓄電装置50Bから電気負荷25への電力供給を制御することが出来る。オルタネータ23の出力電圧よりもA点の電圧を高くすることで、電気負荷25に対して電力供給を行い、オルタネータ23の出力電圧よりもA点の電圧を低くすることで、電気負荷25に対する電力供給をストップ出来る(放電制御)。
【0044】
DC-DCコンバータ35は、第2蓄電装置50B側のB点の電圧を制御することで、第2蓄電装置50Bへの電力供給を制御することが出来る。第2蓄電装置50Bの出力電圧よりもB点の電圧を高くすることで、オルタネータ23から電力線37を経由して第2蓄電装置50Bに対して電力供給を行い、第2蓄電装置50Bの出力電圧よりもB点の電圧を低くすることで、第2蓄電装置50Bに対する電力供給をストップ出来る(充電制御)。
【0045】
2つの蓄電装置50を並列に接続することで、一方の蓄電装置50(例えば、第1蓄電装置50A:メイン蓄電装置)に異常が起きた場合でも、もう一方の蓄電装置50(例えば、第2蓄電装置50B:サブ蓄電装置)で、車両10に対する電力供給を継続することが出来、車両10の電源に冗長性を持たせることが出来る。
【0046】
(1-2)蓄電装置の構成
図3に示すように、第1蓄電装置50Aは第1組電池60A、第1組電池60Aと直列に接続されている第1電流遮断装置53A、第1BMU100A、及び、コネクタ57を備える。
【0047】
詳しくは後述するが、第1BMU100Aは電流センサ54を備えている。第1電流遮断装置53A、第1組電池60A及び電流センサ54はパワーライン55P,55Nを介して直列に接続されている。パワーライン55Pは正極の外部端子51と第1組電池60Aの正極とを接続するパワーラインである。パワーライン55Nは負極の外部端子52と第1組電池60Aの負極とを接続するパワーラインである。第1電流遮断装置53Aは第1組電池60Aの正極側に位置し、正極側のパワーライン55Pに設けられている。電流センサ54は第1組電池60Aの負極側に位置し、負極のパワーライン55Nに設けられている。
【0048】
第1組電池60Aは12個の二次電池62(蓄電素子の一例)が3並列で4直列に接続されている。図3では並列に接続された3つの二次電池62を1つの電池記号で表している。二次電池62は一例としてリチウムイオン二次電池である。
第1電流遮断装置53Aはリレーなどの有接点スイッチ(機械式)や、FETやトランジスタなどの半導体スイッチによって構成されている。第1電流遮断装置53Aは第1BMU100Aによって遮断状態/通電状態(開/閉、オープン/クローズ、オフ/オン)が切り替えられる。第1電流遮断装置53Aを遮断状態にすると第1蓄電装置50Aが車両10の電力線37から切り離され、電流が遮断される。第1電流遮断装置53Aを通電状態にすると第1蓄電装置50Aが電力線37に接続され、車両10への電力供給が可能となる。
【0049】
第1BMU100Aは電流センサ54、電圧検出回路110、温度センサ115、管理部120などを備えている。電圧検出回路110及び管理部120は回路基板ユニット65(図4参照)に実装されている。
電流センサ54は第1組電池60Aの充放電電流[A]を計測して管理部120に出力する。
【0050】
電圧検出回路110は信号線によって各二次電池62の両端にそれぞれ接続されている。電圧検出回路110は各二次電池62の電池電圧[V]を計測して管理部120に出力する。第1組電池60Aの総電圧[V]は直列に接続された4つの二次電池62の合計電圧である。
温度センサ115は接触式あるいは非接触式であり、二次電池62の温度[℃]を計測して管理部120に出力する。図3では省略しているが、温度センサ115は2つ以上設けられている。各温度センサ115は互いに異なる二次電池62の温度を検出する。
【0051】
管理部120はCPUやRAMなどが1チップ化されたマイクロコンピュータ121、ROM123及び通信部125を備える。ROM123には各種のプログラムやデータが記憶されている。マイクロコンピュータ121はROM123に記憶されているプログラムを実行することによって第1蓄電装置50Aを管理する。
第1コネクタ57は第1蓄電装置50Aを車両ECU31と通信可能に接続するための通信ケーブルが接続されるコネクタである。
【0052】
図4に示すように、第1蓄電装置50Aは収容体71を備える。収容体71は合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は底面部75と4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。
収容体71は第1組電池60Aと回路基板ユニット65を収容する。回路基板ユニット65は第1組電池60Aの上部に配置されている。
【0053】
蓋体74は本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち一方の隅部に正極の外部端子51が固定され、他方の隅部に負極の外部端子52が固定されている。
図5A及び図5Bに示すように、二次電池62は直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。ケース82はケース本体84とその上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0054】
電極体83は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状であり、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0055】
正極要素には正極集電体86を介して正極端子87が接続されており、負極要素には負極集電体88を介して負極端子89が接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は平板状の台座部90とこの台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
蓋85は圧力開放弁95を有している。図5Aに示すように、圧力開放弁95は正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95はケース82の内圧が制限値を超えた時に開放してケース82の内圧を下げる。
【0056】
図6に示すように、第2蓄電装置50Bは複数の二次電池62から構成される第2組電池60B、第2組電池60Bと直列に接続されている第2電流遮断装置53B、第2BMU100B及びコネクタ57を備える。第2蓄電装置50Bの構造は第1蓄電装置50Aと実質的に同一であるので詳細な説明は省略する。
【0057】
(1-3)充電カーブ
図7は、二次電池62を所定レートで充電した時の充電カーブであり、横軸は時間、縦軸は電圧である。Vaは電流遮断装置53を遮断状態にする閾値電圧(二次電池62を安全に使用できる上限電圧)であり、一例として4Vである。Vbは二次電池62が電池性能を失う限界電圧であり、一例として5.8Vである。電池性能を失うとは、充電も放電も出来ないことを意味する。Vcは圧力開放弁95が動作する電圧であり、一例として7Vである。
【0058】
(1-4)電源システムの制御方法
各蓄電装置50(第1蓄電装置50A,第2蓄電装置50B)のBMU100(第1BMU100A,第2BMU100B)は、所定の周期(例えば10ミリ秒)で蓄電装置50の状態(正常、異常)を検出し、検出した状態を表す状態信号を車両ECU31に送信する。車両ECU31は各BMU100から状態信号を受信すると、各蓄電装置50の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの蓄電装置50が通電状態になるように各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可又は禁止する。電流の遮断を許可された蓄電装置50のBMU100は、電流の遮断を許可された時点で蓄電装置50の異常を検出している場合に電流遮断装置53を遮断状態にして電流を遮断する。以下、具体的に説明する。
【0059】
(1-4-1)蓄電装置の状態の検出
蓄電装置50の状態の検出とは、蓄電装置50が正常であるか異常であるかを検出することをいう。蓄電装置50の異常には二次電池62の異常とBMU100の異常とがある。以下、二次電池62の異常の検出、及び、BMU100の異常の検出について説明する。
【0060】
(1-4-1-1)二次電池の異常の検出
二次電池62の異常は、具体的には過充電、過放電、過電流、温度異常などである。
BMU100は電流センサ54によって一定周期で電流値を計測し、電流積算法によって充電状態(SOC:State Of Chareg)を推定する。電流積算法は、電流センサ54によって組電池の充放電電流を常時計測することで組電池に出入りする電力量を計測し、これを初期容量から加減することでSOCを推定する方法である。BMU100は、推定したSOCが所定の上限値より大きい場合は過充電と判断し、所定の下限値より小さい場合は過放電と判断する。二次電池62が過充電になる要因としてはオルタネータ23の故障を例示することが出来る。
【0061】
ここでは電流積算法によって推定されたSOCから過充電や過放電を判断する場合を例に説明したが、電圧検出回路110によって計測された電圧値から判断してもよい。具体的には、蓄電装置50の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)とSOCとには比較的精度の良い相関関係があるので、電圧検出回路110によって計測された電圧が所定の上限電圧以上である場合は過充電と判断し、所定の下限電圧以下である場合は過放電と判断してもよい。
【0062】
BMU100は、電流センサ54によって電流値を計測する毎に、計測した電流値が所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上である場合は過電流と判断する。過電流が発生する原因としてはオルタネータ23の故障や外部短絡を例示することが出来る。
BMU100は温度センサ115によって一定周期で二次電池62の温度を計測し、計測した温度が所定値以上である場合は温度異常と判断する。
ここでは二次電池62の異常として過充電、過放電、過電流及び温度異常を例に説明したが、二次電池62の異常はこれらに限られるものではない。
【0063】
(1-4-1-2)BMUの異常の検出
BMU100の異常は、具体的にはBMU100を構成している構成要素(管理部120、電流センサ54、電圧検出回路110、温度センサ115、通信部125など)の異常である。便宜上、本実施形態では電流遮断装置53をBMU100の構成要素に含めていないので、電流遮断装置53の異常はBMU100の異常に含まれない。
【0064】
BMU100は所定の周期で自己診断を行うことにより、BMU100の異常を検出する。具体的には例えば、管理部120の異常の検出では、BMU100はROM34のCRC(Cyclic Redundancy Check)を行い、予め記憶された値と異なる場合は管理部120の異常であると判断する。
電流センサ54の異常は種々の方法で検出できる。例えば電流センサ54を2つ備え、BMU100はそれらの検出結果の差が所定値以上である場合は電流センサ54の異常であると判断してもよい。あるいは電流センサ54の異常を検出するための回路を備えることによって異常を検出してもよい。電圧検出回路110についても同様である。
温度センサ115の異常の検出では、BMU100は複数の温度センサ115によって二次電池62の温度を検出し、それらの検出結果の差が所定値以上である場合は温度センサ115が異常であると判断する。通信部125の異常の検出では、BMU100は通信エラーが発生した回数をカウントし、発生した回数が所定値以上である場合は通信部125の異常であると判断する。
BMU100の異常を検出する方法は上述した方法に限定されるものではなく、適宜の方法で検出できる。
【0065】
(1-4-2)車両ECUによる電流の遮断の許可又は禁止
以下に示す表1を参照して、実施形態1に係る電流の遮断の許可又は禁止について説明する。
【表1】
【0066】
車両ECU31は、全ての蓄電装置50が正常である場合は全ての蓄電装置に対して電流の遮断を禁止する。
車両ECU31は、正常な蓄電装置50と異常な蓄電装置50とがある場合(正常な蓄電装置50の数が1以上であり、且つ、異常な蓄電装置50の数が1以上である場合)は、異常な蓄電装置50に対して電流の遮断を許可する。例えば蓄電装置50の数が2であり、それら2つの蓄電装置50がいずれも正常である場合、それら2つの蓄電装置50は電流の遮断が禁止される。その後にそれら2つの蓄電装置50のうちいずれか一方の蓄電装置50が異常になると、正常な蓄電装置50と異常な蓄電装置50とがある状態になるので、異常になった蓄電装置50は電流の遮断が許可される。これにより蓄電装置50を異常から保護できる。正常な蓄電装置50は電流の遮断が禁止されたままとなるので、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0067】
車両ECU31は、全ての蓄電装置50が異常である場合は2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止する。実施形態1では蓄電装置50の数が2であるので、結果として全ての蓄電装置50が電流の遮断を禁止される。例えば蓄電装置50の数が2であり、それら2つの蓄電装置50のうちいずれか一方の蓄電装置50が異常になると、一方の蓄電装置50は電流の遮断が許可される。その後に他方の蓄電装置50も異常になると、一方の蓄電装置50は電流の遮断が禁止される。これにより2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断が禁止される。
【0068】
全ての蓄電装置50が異常になった場合、2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止すると、2つ以上の蓄電装置50によって充電電流が分担して受け入れられる。充電電流を分担して受け入れると1つの蓄電装置50だけで受け入れる場合に比べて各蓄電装置50の電圧上昇が遅くなるので、蓄電装置50の電池性能が失われるまでの時間が長くなる。このため、車両10の走行中に全ての蓄電装置50が異常になっても車両10が安全に停止できる時間を確保できる。
【0069】
(1-4-3)シーケンス
図8から図10を参照して、電源システム30の制御方法のシーケンスについて説明する。電源システム30が起動すると、エンジン始動装置21に電力が供給されて車両10のエンジンが駆動する。エンジンが駆動するとオルタネータ23が発電を開始する。オルタネータ23の発電量が電気負荷25を上回っている場合、充電電流が2つの蓄電装置50に流れ、2つの蓄電装置50が充電される。
【0070】
図8に示すシーケンスは電源システム30が起動すると開始される。図8に示すシーケンスの開始時点では各蓄電装置50は正常であり、各蓄電装置50の電流遮断装置53は通電状態である。
第1BMU100Aは、第1蓄電装置50Aの状態(正常、異常)を検出し(S101)、検出した状態を表す状態信号(正常)を車両ECU31に送信する(S102、第3処理の一例)。
第2BMU100Bは、第2蓄電装置50Bの状態を検出し(S103)、検出した状態を表す状態信号(正常)を車両ECU31に送信する(S104、第3処理の一例)。
【0071】
車両ECU31は、各BMU100から状態信号を受信すると、各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するか否かを前述した表1に基づいて判断する(S105)。図8に示す例では全ての蓄電装置50が正常であるので、車両ECU31は全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止すると判断する。車両ECU31は、全ての蓄電装置50が正常である場合は全ての蓄電装置50に遮断禁止信号を送信する(S105、S106)。
BMU100は、遮断禁止信号を受信した場合は、蓄電装置50が正常であるか異常であるかによらず電流遮断装置53を通電状態にする(既に電流遮断装置53が通電状態である場合は通電状態を維持する)。
【0072】
図9は、図8に示すシーケンスの後に第1蓄電装置50Aで異常が発生した場合のシーケンスである。図9に示すシーケンスの開始時点では各蓄電装置50はいずれも正常であり、各蓄電装置50の電流遮断装置53は通電状態である。
【0073】
第1BMU100Aは、第1蓄電装置50Aが異常であることを検出し(S201)、車両ECU31に異常を表す状態信号を送信する(S202)。第1BMU100AはS105で電流の遮断が禁止されていることから、S201で異常を検出しても通電状態を維持する。
第2BMU100Bは、第2蓄電装置50Bが正常であることを検出し(S203)、車両ECU31に正常を表す状態信号を送信する(S204)。
【0074】
車両ECU31は、各BMU100から状態信号を受信すると、各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するか否かを前述した表1に基づいて判断する(S205)。図9に示す例の場合、正常な蓄電装置50と異常な蓄電装置50とがあるので、車両ECU31は異常な蓄電装置50に対して電流の遮断を許可すると判断する。具体的には、図9に示す例では第1蓄電装置50Aが異常であり、第2蓄電装置50Bが正常であるので、車両ECU31は第1蓄電装置50Aに対して電流の遮断を許可すると判断する。
【0075】
第1BMU100Aは、S201で第1蓄電装置50Aの異常を検出すると、S202で車両ECU31に状態信号(異常)を送信した後、車両ECU31に遮断許可要求を送信する(S206、電流を遮断する許可を要求するステップの一例)。
車両ECU31は第1BMU100Aから遮断許可要求を受信すると、S205で第1蓄電装置50Aに対して電流の遮断を許可すると判断していることから、第1BMU100Aに遮断許可信号を送信する(S207、電流の遮断を許可又は禁止するステップの一例)。第1BMU100Aは、遮断許可信号を受信すると第1電流遮断装置53Aを遮断状態にする(S208)。
【0076】
図10は、図9に示すシーケンスの後に第2蓄電装置50Bで異常が発生した場合のシーケンスである。図10に示すシーケンスの開始時点では第1蓄電装置50Aは異常であり、第2蓄電装置50Bは正常である。図10に示すシーケンスの開始時点では、第1電流遮断装置53Aは遮断状態であり、第2電流遮断装置53Bは通電状態である。
【0077】
第1BMU100Aは、第1蓄電装置50Aが異常であることを検出し(S301)、車両ECU31に異常を表す状態信号を送信する(S302)。第1BMU100Aは図9に示すS207で遮断許可信号を受信しているので、電流遮断装置53を遮断状態に維持する。
第2BMU100Bは、第2蓄電装置50Bが異常であることを検出し(S303)、車両ECU31に異常を表す状態信号を送信する(S304)。第2BMU100BはS106で遮断禁止信号を受信しているので、異常を検出しても電流遮断装置53を通電状態に維持する。
【0078】
車両ECU31は、各BMU100から状態信号を受信すると、各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するか否かを前述した表1に基づいて判断する(S305)。図10に示す例の場合、全ての蓄電装置50が異常であるので、車両ECU31は2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止すると判断する。本実施形態では蓄電装置50の数が2であるので、結果として全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止すると判断する。車両ECU31は、2つ以上の蓄電装置50(ここでは全ての蓄電装置50)に対して電流の遮断を禁止すると判断しても、直ちに遮断禁止信号を送信するのではなく、各蓄電装置50から遮断許可要求を受信した後に遮断禁止信号を送信する。以下、具体的に説明する。
【0079】
第1BMU100Aは、S301で第1蓄電装置50Aの異常を検出すると、S302で車両ECU31に状態信号(異常)を送信した後、車両ECU31に遮断許可要求を送信する(S306)。第1BMU100Aは既にS207で遮断許可信号を受信しているが、実施形態1では異常を検出する度に遮断許可要求を送信するものとする。
車両ECU31は、第1BMU100Aから遮断許可要求を受信すると、全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止すると判断していることから、第1BMU100Aに遮断禁止信号を送信する(S307)。第1BMU100Aは遮断禁止信号を受信すると第1電流遮断装置53Aを遮断状態から通電状態に切り替える(S308)。
【0080】
第2BMU100Bは、S303で第2蓄電装置50Bの異常を検出すると、S304で車両ECU31に状態信号(異常)を送信した後、車両ECU31に遮断許可要求を送信する(S309)。
車両ECU31は、第2BMU100Bから遮断許可要求を受信すると、全てのBMU100Bに対して電流の遮断を禁止すると判断していることから、第2BMU100Bに遮断禁止信号を送信する(S310)。このため、第2BMU100Bは第2蓄電装置50Bの異常を検出しても第2電流遮断装置53Bを通電状態に維持する。
【0081】
車両ECU31は、全ての蓄電装置50が異常であると判断した場合は警告処理を実行する(S311)。警告処理は運転者に車両10の緊急停車を警告する処理である。例えば、車両ECU31は車両10に搭載された異常報知灯(図略)を点灯させる。異常報知灯の点灯によって運転者に車両10の異常を報知し、緊急停車を促すことが出来る。警告音を発してもよい。オルタネータ23の故障など、過充電が発生している場合は、車両10の挙動が異常なことが考えられる。その場合は運転者が異常報知灯に気付き難いが、音声によっても緊急停車を促すことで運転者が異常を認識し易くなる。
【0082】
車両10が緊急停車し、その後、車両10のエンジンが停止すると、エンジンを制御するECUは、車両ECU31に対して、車両10が緊急停車し、エンジンが停止したことを通知する。車両ECU31は通知を受けると各BMU100に遮断許可信号を送信する(S312,S314)。
各BMU100は車両ECU31から遮断許可信号を受信すると電流遮断装置53を遮断状態にする(S313,S315)。このようにすることで、車両10の緊急停車後、第1蓄電装置50A及び第2蓄電装置50Bの使用を禁止できる。
【0083】
(2-2)車両ECUとBMUとの通信が途絶えた場合
図9に示す時点T1で車両ECU31とBMU100との通信が途絶えたと仮定する。第1BMU100Aは、S202で車両ECU31に状態信号(異常)を送信した後、S206で車両ECU31に遮断許可要求を送信する。しかしながら、S206の時点で車両ECU31との通信が途絶えていることから、車両ECU31からの応答を受信しない。このため、第1BMU100Aは電流の遮断が禁止されたままとなる。第2蓄電装置50BはS106で遮断禁止信号を受信しているので電流の遮断が禁止されている。
【0084】
その後に図10に示すシーケンスが実行された場合、第1BMU100AはS105で電流の遮断が禁止されていることから、S301で異常を検出しても電流遮断装置53を通電状態に維持する。第1BMU100Aは、S301で第1蓄電装置50Aの異常を検出すると、S302で車両ECU31に状態信号(異常)を送信した後、S306で車両ECU31に遮断許可要求を送信する。しかしながら、車両ECU31との通信が途絶えていることから、車両ECU31からの応答を受信しない。このため第1BMU100Aは電流の遮断が禁止されたままとなる。
【0085】
第2BMU100Bも電流の遮断が禁止されていることから、S303で異常を検出しても電流遮断装置53を通電状態に維持する。第2BMU100Bも、S303で第2蓄電装置50Bの異常を検出すると、S304で車両ECU31に状態信号(異常)を送信した後、S309で車両ECU31に遮断許可要求を送信する。しかしながら、車両ECU31との通信が途絶えていることから、車両ECU31からの応答を受信しない。このため第2BMU100Bは電流の遮断が禁止されたままとなる。
【0086】
(1-5)実施形態の効果
実施形態1に係る制御方法では、各蓄電装置50の正常、異常の組み合わせに基づいて、少なくとも1つの蓄電装置50が通電状態になるように各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可又は禁止し、電流の遮断を許可された蓄電装置50のBMU100が、電流の遮断を許可された時点で当該蓄電装置50の異常を検出している場合に電流遮断装置53を遮断状態にする。電流の遮断を許可された蓄電装置50の電流遮断装置53を遮断状態にするので、電流の遮断を許可された蓄電装置50を異常から保護できる。全ての蓄電装置50が異常になっても少なくとも1つの蓄電装置50は車両10に接続された状態になることから、いずれの蓄電装置50も車両10に接続されない場合に比べ、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0087】
実施形態1に係る制御方法によると、蓄電装置50の異常はBMU100の異常を含むので、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減しつつ、BMU100の異常が発生した蓄電装置50の安全性を確保できる。
【0088】
実施形態1に係る制御方法によると、全ての蓄電装置50が正常の場合は各蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止する。このようにすると、その後に車両ECU31と蓄電装置50との通信が途絶えた場合に、蓄電装置50に異常が発生しても車両ECU31から電流の遮断が許可されないことから、蓄電装置50は電流の遮断が禁止されたままとなる。このため、車両ECU31と蓄電装置50との通信が途絶えても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。実施形態1に係る制御方法は移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減することが強く求められている電源システムの場合に特に有用である。
【0089】
実施形態1に係る制御方法によると、全ての蓄電装置50が異常になった場合は2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止するので、蓄電装置50が過充電に至るまでの時間(言い換えると電池性能が失われるまでの時間)が長くなる。このため、車両10が安全に停止できる時間を確保できる。
【0090】
実施形態1に係る電源システム30によると、並列に接続された複数の蓄電装置50が全て異常になっても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0091】
実施形態1に係る蓄電装置50によると、並列に接続された複数の蓄電装置50が全て異常になっても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0092】
<実施形態2>
実施形態2では、正常な蓄電装置50の数が2以上である場合は全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を許可する。電流の遮断を許可された蓄電装置50のBMU100は、電流の遮断を許可された後に蓄電装置50の異常を検出した場合に電流遮断装置53を遮断状態にして電流を遮断する。
【0093】
(1-4-2)車両ECUによる電流の遮断の許可又は禁止
以下に示す表2を参照して、実施形態2に係る電流の遮断の許可又は禁止について説明する。
【表2】
【0094】
車両ECU31は、正常な蓄電装置50の数が2以上である場合は、全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を許可する。全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するので、各蓄電装置50のBMU100はその後に蓄電装置50の異常を検出すると電流遮断装置53を遮断状態にする。これにより蓄電装置50を異常から保護できる。
【0095】
車両ECU31は、正常な蓄電装置50の数が1である場合は、異常な蓄電装置50に対して電流の遮断を許可する一方、最後まで正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止する。例えば正常な蓄電装置50の数が2である場合、それらの蓄電装置50は電流の遮断を許可される。その後にそれら2つの蓄電装置50のうちいずれか一方の蓄電装置50が異常になると、正常な蓄電装置50の数が1になるため、最後まで正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50は電流の遮断が禁止される。最後まで正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止することにより、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
表2はその他の点において表1と実質的に同一であるので説明は省略する。
【0096】
(2-1)シーケンス
図11から図13を参照して、実施形態2に係る電源システム30の制御処理のシーケンスについて説明する。
【0097】
図11に示すシーケンスは電源システム30が起動すると開始される。図11に示すシーケンスの開始時点では各蓄電装置50は正常であり、各蓄電装置50の電流遮断装置53は通電状態である。
第1BMU100Aは、第1蓄電装置50Aの状態(正常、異常)を検出し(S401)、検出した状態を表す状態信号を車両ECU31に送信する(S402、第3処理の一例)。
第2BMU100Bは、第2蓄電装置50Bの状態を検出し(S403)、検出した状態を表す状態信号を車両ECU31に送信する(S404、第3処理の一例)。
【0098】
車両ECU31は、各BMU100から状態信号を受信すると、各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するか否かを前述した表2に基づいて判断する(S405)。車両ECU31は、電流の遮断を許可すると判断した蓄電装置50のBMU100に遮断許可信号(許可信号の一例)を送信し、電流の遮断を禁止すると判断した蓄電装置50のBMU100に遮断禁止信号(禁止信号の一例)を送信する。
図11に示す例では2つ以上の蓄電装置50が正常であるので、車両ECU31は全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を許可すると判断する。このため、車両ECU31は全てのBMU100に遮断許可信号を送信する(S406,S407、第1ステップ、第1処理及び第4処理の一例)。
【0099】
図11に示す例では、第1BMU100Aが遮断許可信号を受信した時点で第1蓄電装置50Aが正常であり、第1電流遮断装置53Aは既に通電状態である。このため第1BMU100Aは第1電流遮断装置53Aを通電状態に維持する。第2蓄電装置50Bについても同様である。
【0100】
図12は、図11に示すシーケンスの後に第1蓄電装置50Aで異常が発生した場合のシーケンスである。図12に示すシーケンスの開始時点では各蓄電装置50はいずれも正常であり、各蓄電装置50の電流遮断装置53は通電状態である。
【0101】
第1BMU100Aは、第1蓄電装置50Aが異常であることを検出し(S501)、車両ECU31に異常を表す状態信号を送信する(S502)。第1BMU100Aは図11に示すS406で既に遮断許可信号を受信しているので、S501で異常を検出すると第1電流遮断装置53Aを遮断状態にして電流を遮断する(S503、第2ステップ及び第2処理の一例)。
第2BMU100Bは、第2蓄電装置50Bが正常であることを検出し(S504)、車両ECU31に正常を表す状態信号を送信する(S505)。
【0102】
車両ECU31は、各BMU100から状態信号を受信すると、各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するか否かを前述した表2に基づいて判断する(S506)。図12に示す例の場合、正常な蓄電装置50の数が1であるので、車両ECU31は異常な蓄電装置50(第1蓄電装置50A)に対して電流の遮断を許可すると判断し、正常な蓄電装置50(第2蓄電装置50B)に対して電流の遮断を禁止すると判断する。このため、車両ECU31は第1BMU100Aに遮断許可信号を送信し(S507)、第2BMU100Bに遮断禁止信号を送信する(5208)。
【0103】
図12に示す例の場合、第1BMU100AはS507で遮断許可信号を受信した時点で第1蓄電装置50Aが異常であり、既に第1電流遮断装置53Aが遮断状態であるので、第1電流遮断装置53Aを遮断状態に維持する。第2BMU100Bは、S508で遮断禁止信号を受信した時点で既に第2電流遮断装置53Bが通電状態であるので、第2電流遮断装置53Bを通電状態に維持する。
【0104】
図13は、図12に示すシーケンスの後に第2蓄電装置50Bで異常が発生した場合のシーケンスである。図13に示すシーケンスの開始時点では第1蓄電装置50Aは異常であり、第2蓄電装置50Bは正常である。図13に示すシーケンスの開始時点では第1電流遮断装置53Aは遮断状態であり、第2電流遮断装置53Bは通電状態である。
【0105】
第1BMU100Aは、第1蓄電装置50Aが異常であることを検出し(S601)、車両ECU31に異常を表す状態信号を送信する(S602)。第1BMU100Aは図12に示すS507で遮断許可信号を受信しているので、第1電流遮断装置53Aを遮断状態に維持する。
第2BMU100Bは、第2蓄電装置50Bが異常であることを検出し(S603)、車両ECU31に異常を表す状態信号を送信する(S604)。第2BMU100Bは図12に示すS508で遮断禁止信号を受信しているので、異常を検出しても第2電流遮断装置53Bを通電状態に維持する。
【0106】
車両ECU31は、各BMU100から状態信号を受信すると、各蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するか否かを前述した表2に基づいて判断する(S605)。図13に示す例の場合、全ての蓄電装置50が異常であるので、車両ECU31は2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止すると判断する。本実施形態では蓄電装置50の数が2であるので、結果として全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止すると判断する。このため、車両ECU31は第1BMU100A及び第2BMU100Bに遮断禁止信号を送信する(S606,S608)。
【0107】
第1BMU100Aは、遮断禁止信号を受信した時点で第1電流遮断装置53Aが遮断状態であるので、第1電流遮断装置53Aを直ちに通電状態にする(S607)。第2BMU100Bは、遮断禁止信号を受信した時点で既に第2電流遮断装置53Bが通電状態であるので、第2電流遮断装置53Bを通電状態に維持する。
【0108】
(2-3)実施形態の効果
実施形態2に係る制御方法によると、正常な蓄電装置50の数が2以上である場合は全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するので、異常な蓄電装置50の場合は直ちに電流が遮断され、正常な蓄電装置50の場合はその後に異常になったときに電流が遮断される。これにより蓄電装置50の安全性を確保できる。2つの蓄電装置50が正常である場合に、その後にいずれか一方の蓄電装置50が異常になった場合は、正常な蓄電装置50が1つだけとなる。正常な蓄電装置50が1つだけになった場合はその蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止することにより、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0109】
<実施形態3>
前述した実施形態1では車両ECU31が各BMU100に対して電流の遮断を許可又は禁止する。これに対し、実施形態3では車両ECU31に替わって第1BMU100Aが各BMU100(第1BMU100Aを含む)に対して電流の遮断を許可又は禁止する。
【0110】
(3-1)電源システムの構成
図14に示すように、実施形態3に係る電源システム30は、第1蓄電装置50Aと第2蓄電装置50Bとが信号線210によって通信可能に接続されている。
【0111】
第2BMU100Bは、第2蓄電装置50Bの状態を表す状態信号を第1BMU100Aに送信する。第1BMU100Aは、第1蓄電装置50Aの状態と第2蓄電装置50Bの状態とに基づいて、各蓄電装置50(第1蓄電装置50Aを含む)に対して電流の遮断を許可するか否かを判断する。この判断は前述した表1に基づいて行われる。第1BMU100Aは、第1蓄電装置50Aに対して電流の遮断を許可する場合は自身に対して遮断を許可し、電流の遮断を禁止する場合は自身に対して電流の遮断を禁止する。第1BMU100Aは、第2蓄電装置50Bに対して電流の遮断を許可する場合は遮断許可信号を送信し、電流の遮断を禁止する場合は遮断禁止信号を送信する。
【0112】
ここでは第1BMU100Aが各BMU100に対して電流の遮断を許可又は禁止する場合を例に説明したが、第2BMU100Bが各BMU100(第2BMU100Bを含む)に対して電流の遮断を許可又は禁止する構成であってもよい。
【0113】
(3-2)実施形態の効果
実施形態3に係る電源システム30によると、並列に接続された複数の蓄電装置50が全て異常になっても移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0114】
<実施形態4>
図15を参照して、実施形態4について説明する。実施形態4は実施形態1~3の変形例である。ここでは実施形態2の変形例である場合を例に説明する。
実施形態4に係る制御方法では、2つ以上の蓄電装置50が正常な場合に、それら正常な蓄電装置50のうちいずれかの蓄電装置50が異常になって当該蓄電装置50の電流遮断装置53を遮断状態にしたと仮定したときに他の正常な蓄電装置50の残電力量の合計が電源システム30に必要とされる電力量未満となる場合は、電源システム30に必要とされる電力量を確保するために、正常な全ての蓄電装置50のBMU100に電流の遮断を禁止する。
【0115】
実施形態4では3つの蓄電装置50(前述した第1蓄電装置50A、前述した第2蓄電装置50B、及び、図示しない第3蓄電装置50C)が並列に接続されている。第2蓄電装置50Bの残電力量と第3蓄電装置50Cの残電力量との合計の残電力量は電源システム30に必要とされる電力量より多い。しかしながら、第2蓄電装置50B及び第3蓄電装置50Cの単体の残電力量は電源システム30に必要とされる電力量未満である。
【0116】
(4-1)シーケンス
図15を参照して、実施形態4に係るシーケンスについて説明する。図15において第3BMU100Cは第3蓄電装置50CのBMUである。図15は実施形態1の図9に相当するシーケンスである。図15に示すシーケンスの開始時点では各蓄電装置50はいずれも正常であり、各蓄電装置50の電流遮断装置53は通電状態である。図15に示すシーケンスの開始時点では各蓄電装置50のBMU100は既に車両ECU31から遮断許可信号を受信している。
【0117】
第1BMU100Aは第1蓄電装置50Aが異常であることを検出し(S701)、車両ECU31に異常を表す状態信号を送信する(S702)。第1BMU100Aは既に遮断許可信号を受信しているので、S701で異常を検出すると第1電流遮断装置53Aを遮断状態にして電流を遮断する(S703、第2ステップ及び第2処理の一例)。
【0118】
第2BMU100Bは第2蓄電装置50Bが正常であることを検出し(S704)、車両ECU31に正常を表す状態信号を送信する(S705)。第3BMU100Cは第3蓄電装置50Cが正常であることを検出し(S706)、車両ECU31に正常を表す状態信号を送信する(S707)。
【0119】
実施形態4に係る車両ECU31は、各BMU100から状態情報を受信すると、2つ以上の蓄電装置50が正常であることから、異常が発生した第1蓄電装置50Aに対して電流の遮断を許可する(S709)。
【0120】
車両ECU31は、2つ以上の蓄電装置50が正常な場合は、正常な蓄電装置50(第2蓄電装置50B及び第3蓄電装置50C)のうちいずれかの蓄電装置50が異常になって当該蓄電装置50の電流遮断装置53を遮断状態にしたと仮定し、他の正常な蓄電装置50の残電力量の合計が電源システム30に必要とされる電力量未満となるか否かを判断する(S708)。第2蓄電装置50Bと第3蓄電装置50Cとの残電力量の合計は電源システム30に必要とされる電力量以上であるが、第2蓄電装置50B及び第3蓄電装置50Cの単体の残電力量は電源システム30に必要とされる電力量未満である。このため、第2蓄電装置50B及び第3蓄電装置50Cのうちいずれかの蓄電装置50の電流を遮断すると他の正常な蓄電装置50の残電力量の合計が電源システム30に必要とされる電力量未満となる。このため、車両ECU31は正常な全ての蓄電装置50(第2蓄電装置50B及び第3蓄電装置50C)に対して電流の遮断を禁止する。具体的には、車両ECU31は第2BMU100B及び第3BMU100Cに遮断禁止信号を送信する(S710,S711)。
【0121】
(4-2)実施形態の効果
実施形態4に係る制御方法によると、蓄電装置50が異常になっても電源システム30に必要とされる電力量を確保できるので、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0122】
<実施形態5>
実施形態5は実施形態1から4の変形例である。ここでは実施形態2の変形例として説明する。前述した実施形態2では蓄電装置50の異常に二次電池62の異常とBMU100の異常とがある。これに対し、実施形態5では、蓄電装置50の異常とはBMU100の異常のことをいう。このため、実施形態5では、二次電池62の異常は蓄電装置50の異常に含まれない。
以下に示す表3を参照して、実施形態5に係る電流の遮断の許可又は禁止について説明する。
【表3】
【0123】
車両ECU31は、BMU100が正常な蓄電装置50の数が2以上である場合は、全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を許可する。全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するので、各蓄電装置50のBMU100はその後にBMU100の異常を検出すると電流遮断装置53を遮断状態にする。これにより蓄電装置50を異常から保護できる。
【0124】
車両ECU31は、BMU100が正常な蓄電装置50の数が1である場合は、BMU100が異常な蓄電装置50に対して電流の遮断を許可する一方、最後までBMU100が正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止する。例えばBMU100が正常な蓄電装置50の数が2である場合、それらの蓄電装置50は電流の遮断を許可される。その後にそれら2つの蓄電装置50のうちいずれか一方の蓄電装置50のBMU100が異常になると、BMU100が正常な蓄電装置50の数が1になるため、最後までBMU100が正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50は電流の遮断が禁止される。最後までBMU100が正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止することにより、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0125】
車両ECU31は、全ての蓄電装置50のBMU100が異常である場合は2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止する。実施形態5では蓄電装置50の数が2であるので、結果として全ての蓄電装置50が電流の遮断を禁止される。例えば蓄電装置50の数が2であり、それら2つの蓄電装置50のうちいずれか一方の蓄電装置50のBMU100が異常になると、BMU100が正常な蓄電装置50の数が1になるので、最後までBMU100が正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50は電流の遮断が禁止される。その後に、最後までBMU100が正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50のBMU100も異常になると、一方の蓄電装置50は電流の遮断が禁止される。これにより2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断が禁止される。
実施形態5はその他の点において実施形態2と実質的に同一であるので説明は省略する。
【0126】
実施形態5に係る制御方法によると、BMU100が正常な蓄電装置50の数が2以上である場合は全ての蓄電装置50に対して電流の遮断を許可するので、BMU100が異常な蓄電装置50の場合は直ちに電流が遮断され、BMU100が正常な蓄電装置50の場合はその後に異常になったときに電流が遮断される。これにより蓄電装置50の安全性を確保できる。2つの蓄電装置50のBMU100が正常である場合に、その後にいずれか一方の蓄電装置50のBMU100が異常になった場合は、BMU100が正常な蓄電装置50が1つだけとなる。BMU100が正常な蓄電装置50が1つだけになった場合は、最後までBMU100が正常な蓄電装置50として残った1つの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止することにより、移動体負荷に電力供給されなくなるリスクを低減できる。
【0127】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0128】
(1)上記実施形態1では蓄電装置50が複数の二次電池62を備えている場合を例に説明したが、二次電池62は1つだけでもよい。
蓄電素子は二次電池62に限らず、キャパシタ等でもよい。
電源システム30に、DC-DCコンバータ35を含めたが、DC-DCコンバータ35は無くてもよい。例えば、第1蓄電装置50Aと第2蓄電装置50Bの使われ方に差がない場合は、第2蓄電装置50Bの充放電を単独で調整する必要性が少なく、DC-DCコンバータ35は無くてもよい。
DC-DCコンバータ35などの調整装置がある場合、2つの蓄電装置50の定格電圧は同一でもいいし、異なっていてもよい。
第1蓄電装置50Aの第1電流遮断装置53Aを遮断状態にする閾値電圧Vaと、第2蓄電装置50Bの第2電流遮断装置53Bを遮断状態にする閾値電圧Vaは異なっていてもよい。
【0129】
(2)上記実施形態1では蓄電素子(二次電池62)、電流遮断装置53及びBMU100が蓄電装置50の収容体71に収容されている。収容体71には少なくとも蓄電素子と計測類とが収容されていればよく、電流遮断装置53やBMU100は収容体71の外部に設けられていてもよい。
【0130】
(3)上記実施形態1では、車両10の緊急停車が完了し、エンジンが停止したら、電流遮断装置53を遮断状態にして、蓄電装置50の使用を禁止した。蓄電装置50の使用を禁止するタイミングは、エンジン停止から所定期間経過後でもよい。蓄電装置50の使用を禁止するタイミングをエンジン停止から所定時間経過後にすることで、ハザードランプ等の点灯により、車両10が緊急停止状態であることを外部に知らせるための時間を確保することが出来る。
【0131】
(4)上記実施形態では、全ての蓄電装置50が異常になった場合は2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止する場合を例に説明したが、1つの蓄電装置50に対してのみ電流の遮断を禁止してもよい。最低限1つの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止すれば移動体負荷に電力供給されなくなることを防止できるからである。
【0132】
全ての蓄電装置50が異常になった場合に1つの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止する場合は、いずれの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止するかを異常の種類に基づいて決定してもよい。この場合、各蓄電装置50は異常の種類を車両ECU31に送信するものとする。具体的には、二次電池62の異常である場合、蓄電装置50を使用し続けると蓄電装置50が完全に使用不能になる可能性がある。これに対し、BMU100の異常である場合は、二次電池62が正常であることから、蓄電装置50を使用し続けても蓄電装置50が完全に使用不能になる可能性は相対的に低い。
【0133】
このため、一方の蓄電装置50が二次電池62の異常であり、他方の蓄電装置50がBMU100の異常である場合は、二次電池62の異常である蓄電装置50に対して遮断を許可し、BMU100の異常である蓄電装置50に対して遮断を禁止してもよい。このようにすると、二次電池62の異常である蓄電装置50に対して遮断を禁止する場合に比べ、蓄電装置50が完全に使用不能になる可能性を低減できる。
【0134】
あるいは、蓄電装置50の異常の種類は大きく過充電とそれ以外とに分けることができる。それ以外の異常は、例えば過放電、過電流、温度異常、BMU100の異常などである。過充電後、充電が継続した場合、過充電である蓄電装置50はそれ以外の異常である蓄電装置50に比べて電池性能を失う電圧に到達するまでの時間が短い。このため、一方の蓄電装置50が過充電であり、他方の蓄電装置50が過充電以外の異常である場合は、過充電である蓄電装置50に対して遮断を許可し、それ以外の異常である蓄電装置50に対して遮断を禁止してもよい。このようにすると、充電が継続した場合、過充電でない蓄電装置50によって受け入れることが出来る。過充電でない蓄電装置50によって受け入れることで、過充電である蓄電装置50で、充電電流を受ける場合に比べて、蓄電装置50が電池性能を失う電圧に到達するまでの時間が長くなるため、車両10が安全に停止できるまでの時間を確保することが出来る。
【0135】
全ての蓄電装置50が異常になった場合に2つ以上の蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止する場合も、いずれの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止するかを異常の種類に基づいて決定してもよい。例えば3つの蓄電装置50があり、そのうち1つは二次電池62の異常であり、他の2つはBMU100の異常であるとする。この場合、BMU100の異常である2つの蓄電装置50に対して電流の遮断を禁止してもよい。このようにすると、異常の種類によらず決定する場合に比べ、電流の遮断が禁止された蓄電装置50が完全に使用不能になる可能性を低減できる。
【0136】
(5)上記実施形態では電流遮断装置53の異常はBMU100の異常に含まれないが、BMU100の異常は電流遮断装置53の異常を含んでもよい。
【0137】
(6)上記実施形態では蓄電装置としてリチウムイオン電池を備える蓄電装置50を例に説明した。これに対し、複数の蓄電装置の一部は鉛蓄電池であってもよい。例えば蓄電装置が2つである場合、一方がリチウムイオン電池を備える蓄電装置50であり、他方が鉛蓄電池であってもよい。通常、鉛蓄電池は電流遮断装置53やBMU100を備えていない。このため、鉛蓄電池の場合は鉛蓄電池の外部に電流遮断装置53や電流センサ(あるいは電圧センサ)を備え、車両ECU31が鉛蓄電池のBMUとして機能してもよい。この場合、鉛蓄電池に対して電流の遮断を許可又は禁止するとは、車両ECU31が自身(鉛蓄電池のBMUとして機能する車両ECU31)に対して電流遮断装置の遮断を許可又は禁止することになる。
【0138】
(7)上記実施形態では移動体として車両10(エンジン駆動車)を例示したが、移動体はエンジン駆動車に限定されない。例えば移動体は電気自動車やハイブリッド自動車であってもよいし、電気モータで走行するフォークリフトや無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などであってもよい。
【符号の説明】
【0139】
10 車両(移動体の一例)
21 エンジン始動装置(移動体負荷の一例)
25 電気負荷(移動体負荷の一例)
30 電源システム
31 車両ECU(制御部の一例)
50A 第1蓄電装置(蓄電装置の一例)
50B 第2蓄電装置(蓄電装置の一例)
50C 第3蓄電装置(蓄電装置の一例)
53A 第1電流遮断装置(電流遮断装置の一例)
53B 第2電流遮断装置(電流遮断装置の一例)
62 二次電池(蓄電素子の一例)
100A 第1BMU(管理装置の一例)
100B 第2BMU(管理装置の一例)
100C 第3BMU(管理装置の一例)
図1
図2
図3
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図5A
図5B
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