(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法および画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20250212BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 370
G03G21/00 318
(21)【出願番号】P 2020120136
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-05-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠人
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-333810(JP,A)
【文献】特開平08-234643(JP,A)
【文献】特開2015-152855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0286636(US,A1)
【文献】特開2014-186108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0234348(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0247772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーで構成されるトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体を回転させる駆動部と、
前記像担持体に接触し、前記像担持体が前記駆動部により正回転される間に前記像担持体に残存するトナーを除去するトナー除去部と、
前記像担持体または前記トナー除去部の劣化度を評価する劣化度評価部と、
前記劣化度評価部により評価された劣化度に基づいて、前記像担持体を逆回転させた後に正回転させる除去動作の実行回数を決定する実行回数決定部と、
前記実行回数決定部により決定された実行回数だけ前記除去動作が実行されるように前記駆動部を制御する除去動作実行部と、
1以上のページの画像を含むジョブに基づいて、1ページごとに前記ページに対応するトナー像を前記像担持体に担持させる画像形成実行部と、を備え
前記除去動作実行部は、
前記画像形成実行部により前記ジョブに応答したトナー像が前記像担持体に担持された後に、前記除去動作が実行されるように前記駆動部を制御し、
前記除去動作が実行されるように前記駆動部を制御している間に、前記画像形成実行部により次のジョブが受け付けられる場合、最後の前記除去動作における前記像担持体の正回転の実行を省略する画像形成装置。
【請求項2】
前記劣化度評価部は、前記像担持体の表面の粗さ、前記トナー除去部の摩耗度または前記トナー除去部の歪みに基づいて前記像担持体または前記トナー除去部の劣化度を評価する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記劣化度評価部は、前記像担持体の総回転量に基づいて前記像担持体または前記トナー除去部の劣化度を評価する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動部の回転力により前記像担持体と同時に回転する同時駆動部材をさらに備え、
前記除去動作実行部は、前記除去動作において、前記同時駆動部材が逆回転しないように、制限された回転量で前記像担持体を逆回転させる、請求項1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記除去動作実行部は、前記除去動作において、逆回転時における前記像担持体の回転量よりも正回転時における前記像担持体の回転量が大きくなるように前記駆動部を駆動させる、請求項1~4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記実行回数決定部は、前記ジョブに応答したトナー像が転写された記録媒体の種類に基づいて、前記除去動作の実行回数を決定する、請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記実行回数決定部は、前記ジョブに応答したトナー像が転写された記録媒体の枚数に基づいて、前記除去動作の実行回数を決定する、請求項1~6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー像が転写される記録媒体を搬送する搬送部を、さらに備え、
前記実行回数決定部は、前記搬送部が記録媒体を搬送した供給履歴に基づいて、前記除去動作の実行回数を決定する、請求項1~7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記実行回数決定部は、前記除去動作の実行回数の選択が受け付けられた場合、前記除去動作の実行回数を選択された実行回数に決定する、請求項1~8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
トナーで構成されるトナー像を像担持体により担持する像担持ステップと、
駆動部により前記像担持体を回転させる駆動ステップと、
前記像担持体が前記駆動部により正回転される間に、前記像担持体に接触するトナー除去部により前記像担持体に残存するトナーを除去するトナー除去ステップと、
前記像担持体または前記トナー除去部の劣化度を評価する劣化度評価ステップと、
評価された劣化度に基づいて、前記像担持体を逆回転させた後に正回転させる除去動作の実行回数を決定する実行回数決定ステップと、
決定された実行回数だけ前記駆動部による前記除去動作を実行する除去動作実行ステップと、
1以上のページの画像を含むジョブに基づいて、1ページごとに前記ページに対応するトナー像を前記像担持体により担持する画像形成実行ステップと、を含み、
前記除去動作実行ステップは、
前記画像形成実行ステップにおいて前記ジョブに応答したトナー像が前記像担持体に担持された後に、前記除去動作を実行することと、
前記除去動作が実行される間に、前記画像形成実行ステップにおいて次のジョブが受け付けられる場合、最後の前記除去動作における前記像担持体の正回転の実行を省略することと、を含む画像形成方法。
【請求項11】
画像形成装置を制御するコンピューターで実行される画像形成プログラムであって、
トナーで構成されるトナー像を像担持体により担持する像担持ステップと、
駆動部により前記像担持体を回転させる駆動ステップと、
前記像担持体が前記駆動部により正回転される間に、前記像担持体に接触するトナー除去部により前記像担持体に残存するトナーを除去するトナー除去ステップと、
前記像担持体または前記トナー除去部の劣化度を評価する劣化度評価ステップと、
評価された劣化度に基づいて、前記像担持体を逆回転させた後に正回転させる除去動作の実行回数を決定する実行回数決定ステップと、
決定された実行回数だけ前記駆動部による前記除去動作を実行する除去動作実行ステップと、
1以上のページの画像を含むジョブに基づいて、1ページごとに前記ページに対応するトナー像を前記像担持体により担持する画像形成実行ステップと、を前記コンピューターに実行させ、
前記除去動作実行ステップは、
前記画像形成実行ステップにおいて前記ジョブに応答したトナー像が前記像担持体に担持された後に、前記除去動作を実行することと、
前記除去動作が実行される間に、前記画像形成実行ステップにおいて次のジョブが受け付けられる場合、最後の前記除去動作における前記像担持体の正回転の実行を省略することと、を含む画像形成プログラム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法および画像形成プログラムに関し、特に、中間転写ベルトに接触するように設けられたクリーニングブレードを有する画像形成装置、その画像形成装置で実行される画像形成方法および画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写方式の画像形成装置においては、感光体ドラム上の潜像が現像されることによりトナー像が形成される。感光体ドラムに形成されたトナー像は、中間転写ベルトに転写される。中間転写ベルトに転写されたトナー像が用紙等の記録媒体にさらに転写されることにより、記録媒体に画像が形成される。中間転写ベルトに残存するトナー像は、中間転写ベルトに接触するように設けられたクリーニングブレードにより除去される。ここで、中間転写ベルトとクリーニングブレードとの間に紙粉が噛み込まれることにより、クリーニング不良が発生することがある。噛み込まれた紙粉は、中間転写ベルトを逆回転させることにより除去することが可能である。また、逆回転の量が増加されると、より多量の紙粉が除去される。
【0003】
例えば、特開2010-26380号公報には、少なくとも、潜像担持体と、潜像担持体上の潜像を現像してトナー像化する現像手段とを備え、装置本体に対して着脱可能に構成された画像形成ユニットと、トナー像または記録紙を搬送する画像形成ユニットと接触するエンドレスベルトと、エンドレスベルト上の残トナーを除去するクリーニング手段と、エンドレスベルトを正逆両方に回転駆動できる駆動手段と、を備えた画像形成装置において、エンドレスベルトを一定間隔で逆方向に回転する第1の逆転と、画像形成ユニットのライフエンド検知後にエンドレスベルトを逆方向に回転する第2の逆転とを行い、第2の逆転の逆転量は、第1の逆転の逆転量よりも多いことを特徴とする画像形成装置が記載されている。
【0004】
特開2010-26380号公報に記載の画像形成装置によれば、画像形成ユニットがライフエンドである場合には、エンドレスベルトの逆転量が増加されることにより、クリーニング手段の異物を従来よりも効果的に除去することができる。しかしながら、画像形成ユニットがライフエンドになる前においては、クリーニング手段によるクリーニングの性能は従来と同程度である。そのため、クリーニング手段によるクリーニングの性能を向上させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、この発明の目的の一つは、クリーニングブレードによるクリーニングの性能を向上させることが可能な画像形成装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、クリーニングブレードによるクリーニングの性能を向上させることが可能な画像形成方法を提供することである。
【0008】
この発明のさらに他の目的は、クリーニングブレードによるクリーニングの性能を向上させることが可能な画像形成プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、この発明のある局面によれば、画像形成装置は、トナーで構成されるトナー像を担持する像担持体と、像担持体を回転させる駆動部と、像担持体に接触し、像担持体が駆動部により正回転される間に像担持体に残存するトナーを除去するトナー除去部と、像担持体またはトナー除去部の劣化度を評価する劣化度評価部と、劣化度評価部により評価された劣化度に基づいて、像担持体を逆回転させた後に正回転させる除去動作の実行回数を決定する実行回数決定部と、実行回数決定部により決定された実行回数だけ除去動作が実行されるように駆動部を制御する除去動作実行部と、を備える。
【0010】
この局面に従えば、像担持体またはトナー除去部の劣化度に基づいて除去動作の実行回数が決定されるので、像担持体またはトナー除去部の劣化度が大きい場合でも、像担持体とトナー除去部との間に噛み込まれた異物を効率的に除去することができる。また、像担持体またはトナー除去部の劣化度が小さい場合には、除去動作の際のトナー除去部と像担持体との摩擦によるトナー除去部の捲れが発生することが抑制される。これにより、トナー除去部によるクリーニングの性能を向上させることができる。
【0011】
好ましくは、劣化度評価部は、像担持体の表面の粗さ、トナー除去部の摩耗度またはトナー除去部の歪みに基づいて像担持体またはトナー除去部の劣化度を評価する。
【0012】
この局面に従えば、像担持体またはトナー除去部の劣化度を容易に評価することができる。
【0013】
好ましくは、劣化度評価部は、像担持体の総回転量に基づいて像担持体またはトナー除去部の劣化度を評価する。
【0014】
この局面に従えば、像担持体またはトナー除去部の劣化度を容易に評価することができる。
【0015】
好ましくは、画像形成装置は、駆動部の回転力により像担持体と同時に回転する同時駆動部材をさらに備え、除去動作実行部は、除去動作において、同時駆動部材が逆回転しないように、制限された回転量で像担持体を逆回転させる。
【0016】
この局面に従えば、像担持体と同時駆動部材とが共通の駆動部により駆動される。そのため、画像形成装置を小型化するとともに、画像形成装置のコストを低減することができる。また、像担持体の逆回転時に同時駆動部材が逆回転することが防止されるので、同時駆動部材が逆回転することによる不具合を防止することができる。
【0017】
好ましくは、除去動作実行部は、除去動作において、逆回転時における像担持体の回転量よりも正回転時における像担持体の回転量が大きくなるように駆動部を駆動させる。
【0018】
この局面に従えば、像担持体の逆回転により像担持体とトナー除去部との間から抜き出された異物を像担持体の正回転により確実に除去することができる。
【0019】
好ましくは、画像形成装置は、1以上のページの画像を含むジョブに基づいて、1ページごとにページに対応するトナー像を像担持体に担持させる画像形成実行部を、さらに備え、除去動作実行部は、画像形成実行部によりジョブに応答したトナー像が像担持体に担持された後に、除去動作が実行されるように駆動部を制御する。
【0020】
この局面に従えば、ジョブに応答したトナー像が像担持体に担持される間に像担持体とトナー除去部との間に噛み込まれた異物が除去される。このため、次のジョブにおける画質の低下を防止できる。また、画像形成が除去動作により阻害されることがない。これにより、生産性の低下を防止することができる。
【0021】
好ましくは、除去動作実行部は、除去動作が実行されるように駆動部を制御している間に、画像形成実行部により次のジョブが受け付けられる場合、最後の除去動作における像担持体の正回転の実行を省略する。
【0022】
この局面に従えば、最後の除去動作における像担持体の正回転の実行が省略された場合でも、最後の除去動作における像担持体の逆回転により像担持体とトナー除去部との間から抜き出された異物が、次のジョブに対応する画像形成時に、像担持体の最初の正回転により除去される。これにより、トナー除去部によるクリーニングの性能を維持しつつ、除去動作の時間が短縮されることにより次のジョブに対応する画像形成を高速に行うことができる。
【0023】
好ましくは、実行回数決定部は、ジョブに応答したトナー像が転写された記録媒体の種類に基づいて、除去動作の実行回数を決定する。
【0024】
この局面に従えば、除去動作の実行回数をより適切に決定することができる。
【0025】
好ましくは、実行回数決定部は、ジョブに応答したトナー像が転写された記録媒体の枚数に基づいて、除去動作の実行回数を決定する。
【0026】
この局面に従えば、除去動作の実行回数をより適切に決定することができる。
【0027】
好ましくは、画像形成装置は、トナー像が転写される記録媒体を搬送する搬送部を、さらに備え、実行回数決定部は、搬送部が記録媒体を搬送した供給履歴に基づいて、除去動作の実行回数を決定する。
【0028】
この局面に従えば、除去動作の実行回数をより適切に決定することができる。
【0029】
好ましくは、実行回数決定部は、除去動作の実行回数の選択が受け付けられた場合、除去動作の実行回数を選択された実行回数に決定する。
【0030】
この局面に従えば、ユーザーの所望の回数だけ除去動作を実行することができる。
【0031】
この発明の他の局面によれば、画像形成方法は、トナーで構成されるトナー像を像担持体により担持する像担持ステップと、駆動部により像担持体を回転させる駆動ステップと、像担持体が駆動部により正回転される間に、像担持体に接触するトナー除去部により像担持体に残存するトナーを除去するトナー除去ステップと、像担持体またはトナー除去部の劣化度を評価する劣化度評価ステップと、評価された劣化度に基づいて、像担持体を逆回転させた後に正回転させる除去動作の実行回数を決定する実行回数決定ステップと、実行回数決定部により決定された実行回数だけ駆動部による除去動作を実行する除去動作実行ステップと、を含む。
【0032】
この局面に従えば、トナー除去部によるクリーニングの性能を向上させることができる。
【0033】
この発明のさらに他の局面によれば、画像形成プログラムは、画像形成装置を制御するコンピューターで実行される画像形成プログラムであって、トナーで構成されるトナー像を像担持体により担持する像担持ステップと、駆動部により像担持体を回転させる駆動ステップと、像担持体が駆動部により正回転される間に、像担持体に接触するトナー除去部により像担持体に残存するトナーを除去するトナー除去ステップと、像担持体またはトナー除去部の劣化度を評価する劣化度評価ステップと、評価された劣化度に基づいて、像担持体を逆回転させた後に正回転させる除去動作の実行回数を決定する実行回数決定ステップと、実行回数決定部により決定された実行回数だけ駆動部による除去動作を実行する除去動作実行ステップと、をコンピューターに実行させる。
【0034】
この局面に従えば、トナー除去部によるクリーニングの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本実施の形態におけるMFPの外観を示す斜視図である。
【
図2】MFPのハードウェア構成の概要を示すブロック図である。
【
図3】画像形成部および給紙部の一部の内部構成を示す模式的側面図である。
【
図4】中間転写ベルトおよび画像形成ユニットの駆動機構の一部を示す模式図である。
【
図5】クリーニングブレードを示す側断面図である。
【
図6】クリーニングブレードを示す側断面図である。
【
図9】逆回転時における中間転写ベルトおよび画像形成ユニットの駆動機構の一部を示す模式図である。
【
図10】中間転写ベルトまたはクリーニングブレードの劣化度と紙粉の噛み込み数との関係を示すグラフである。
【
図11】除去動作が行われた場合の紙粉の噛み込み数の変化を示すグラフである。
【
図12】除去動作の実行回数を変化させた場合の中間転写ベルトとクリーニングブレードとの間の静止摩擦係数の変化を示すグラフである。
【
図13】除去動作の実行回数を変化させた場合の紙粉の噛み込み数の変化を示すグラフである。
【
図14】本実施の形態におけるMFPのCPUが有する機能の一例を示す図である。
【
図15】中間転写ベルトの劣化度と紙粉の噛み込み数との関係の一例を示すグラフである。
【
図16】印字枚数と紙粉の噛み込み数との関係の一例を示すグラフである。
【
図17】印字枚数と紙粉の噛み込み数との関係の他の例を示すグラフである。
【
図18】画像形成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態における画像形成装置について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下の説明においては、画像形成装置の一例としてMFPを説明する。さらに、以下に説明するMFP(Multi Function Peripheral)においては、画像を形成する対象となる記録媒体は、普通紙、上質紙、再生紙または写真用紙等の用紙と、OHP(Over Head Projector)フィルムとを含む。
【0037】
図1は、本実施の形態におけるMFPの外観を示す斜視図である。
図2は、MFPのハードウェア構成の概要を示すブロック図である。
図1および
図2を参照して、MFP100は、画像形成装置の一例であり、メイン回路110と、原稿を読み取るための原稿読取部130と、原稿を原稿読取部130に搬送するための自動原稿搬送装置120と、画像データに基づいて記録媒体に画像を形成するための画像形成部140と、画像形成部140に記録媒体を供給するための給紙部150と、ユーザーインターフェースとしての操作パネル160とを含む。
【0038】
自動原稿搬送装置120は、原稿トレイ125上にセットされた複数枚の原稿を1枚ずつ自動的に原稿読取部130の原稿読み取り位置まで搬送し、原稿読取部130により原稿に形成された画像が読み取られた原稿を原稿排紙トレイ127上に排出する。自動原稿搬送装置120は、原稿トレイ125に載置される原稿を検出する原稿検出センサーを備える。
【0039】
原稿読取部130は、原稿を読み取るための矩形状の読取面を有する。読取面は、例えばプラテンガラスにより形成される。自動原稿搬送装置120は、読取面の1つの辺に平行な軸を中心に回転可能にMFP100の本体に接続され、開閉可能である。自動原稿搬送装置120の下方に、原稿読取部130が配置されており、自動原稿搬送装置120が回転して開いた開状態で、原稿読取部130の読取面が露出する。このため、ユーザーは、原稿読取部130の読取面に原稿を載置可能である。自動原稿搬送装置120は、原稿読取部130の読み取り面が露出する開状態と、読み取り面を覆う閉状態とに状態を変化可能である。自動原稿搬送装置120は、自動原稿搬送装置120の開状態を検出する状態検出センサーを備える。
【0040】
原稿読取部130は、光を照射する光源と、光を受光する光電変換素子とを含み、読取面に載置された原稿に形成されている画像を走査する。読取領域に原稿が載置されている場合、光源から照射された光は原稿で反射し、反射した光が光電変換素子で結像する。光電変換素子は、原稿で反射した光を受光すると、受光した光を電気信号に変換した画像データを生成する。原稿読取部130は、画像データをメイン回路110が備えるCPU(中央演算処理装置)111に出力する。
【0041】
給紙部150は、複数の給紙トレイのいずれか、または手差しトレイに収納された記録媒体を取り出し、記録媒体を画像形成部140に搬送する。
【0042】
画像形成部140は、CPU111により制御され、周知の電子写真方式により給紙部150により搬送される記録媒体に画像を形成するものである。本実施の形態では、画像形成部140は、CPU111から入力される画像データの画像を、給紙部150により搬送される記録媒体に形成する。画像が形成された記録媒体は排紙トレイ159に排出される。CPU111が画像形成部140に出力する画像データは、原稿読取部130から入力される画像データの他、外部から受信されるプリントデータ等の画像データを含む。
【0043】
メイン回路110は、MFP100の全体を制御するCPU111と、通信インターフェース(I/F)部112と、ROM(Read Only Memory)113と、RAM(Random Access Memory)114と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)115と、ファクシミリ部116と、外部記憶装置118と、を含む。CPU111は、自動原稿搬送装置120、原稿読取部130、画像形成部140、給紙部150および操作パネル160と接続され、MFP100の全体を制御する。
【0044】
ROM113は、CPU111が実行するプログラム、またはそのプログラムを実行するために必要なデータを記憶する。RAM114は、CPU111がプログラムを実行する際の作業領域として用いられる。また、RAM114は、原稿読取部130から連続的に送られてくる画像データを一時的に記憶する。
【0045】
操作パネル160は、MFP100の上部に設けられる。操作パネル160は、表示部161と操作部163とを含む。表示部161は、例えば、液晶表示装置(LCD)であり、ユーザーに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。なお、LCDに代えて、画像を表示する装置であれば、例えば、有機EL(electroluminescence)ディスプレイを用いることができる。
【0046】
操作部163は、タッチパネル165と、ハードキー部167とを含む。タッチパネル165は、静電容量方式である。なお、タッチパネル165は、静電容量方式に限らず、例えば、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式または電磁誘導方式等の他の方式を用いることができる。
【0047】
タッチパネル165は、その検出面が表示部161の上面または下面に表示部161に重畳して設けられる。ここでは、タッチパネル165の検出面のサイズと、表示部161の表示面のサイズとを同じにしている。このため、表示面の座標系と検出面の座標系は同じである。タッチパネル165は、ユーザーが、表示部161の表示面を指示する位置を検出面で検出し、検出した位置の座標をCPU111に出力する。表示面の座標系と検出面の座標系は同じなので、タッチパネル165が出力する座標を、表示面の座標に置き換えることができる。
【0048】
ハードキー部167は、複数のハードキーを含む。ハードキーは、例えば接点スイッチである。タッチパネル165は、表示部161の表示面中でユーザーにより指示された位置を検出する。ユーザーがMFP100を操作する場合は直立した姿勢となる場合が多いので、表示部161の表示面、タッチパネル165の操作面およびハードキー部167は、上方を向いて配置される。ユーザーが表示部161の表示面を容易に視認することができ、ユーザーが指で操作部163を容易に指示することができるようにするためである。
【0049】
通信I/F部112は、ネットワークにMFP100を接続するためのインターフェースである。通信I/F部112は、TCP(Transmission Control Protocol)またはUDP(User Datagram Protocol)等の通信プロトコルで、ネットワークに接続された他のコンピューターと通信する。なお、通信I/F部112が接続されるネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)であり、接続形態は有線または無線を問わない。またネットワークは、LANに限らず、ワイドエリアネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)またはインターネット等であってもよい。
【0050】
ファクシミリ部116は、公衆交換電話網(PSTN)に接続され、PSTNにファクシミリデータを送信する、またはPSTNからファクシミリデータを受信する。ファクシミリ部116は、受信したファクシミリデータを、HDD115に記憶するとともに、画像形成部140でプリント可能なプリントデータに変換して、画像形成部140に出力する。これにより、画像形成部140は、ファクシミリ部116により受信されたファクシミリデータの画像を用紙に形成する。また、ファクシミリ部116は、HDD115に記憶されたデータをファクシミリデータに変換して、PSTNに接続されたファクシミリ装置に送信する。
【0051】
外部記憶装置118は、CPU111により制御され、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)118A、または半導体メモリが装着される。本実施の形態においては、CPU111は、ROM113に記憶されたプログラムを実行する例を説明するが、CPU111は、外部記憶装置118を制御して、CD-ROM118AからCPU111が実行するためのプログラムを読出し、読み出したプログラムをRAM114に記憶し、実行するようにしてもよい。
【0052】
なお、CPU111が実行するためのプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM118Aに限られず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROMまたはEPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU111がネットワークに接続されたコンピューターからプログラムをダウンロードしてHDD115に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピューターがプログラムをHDD115に書込みするようにして、HDD115に記憶されたプログラムをRAM114にロードしてCPU111で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU111により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラムまたは暗号化されたプログラム等を含む。
【0053】
図3は、画像形成部および給紙部の一部の内部構成を示す模式的側面図である。
図3を参照して、MFP100の内部には、太い点線の矢印で示される主搬送経路41が基本的に上下方向に延びるように形成されている。主搬送経路41は、給紙部150から搬送される用紙を画像形成部140を通して排紙トレイ159へ導くための経路である。本例の主搬送経路41においては、画像形成部140よりも上方に位置する上端部13の反対側の下端部30が給紙部150から用紙を受ける搬入口を構成する。また、主搬送経路41の上端部13が、画像形成後の用紙を排紙トレイ159に排出する排出口を構成する。主搬送経路41の上端部13には、排紙ローラー15が設けられている。
【0054】
給紙部150は、3つの給紙トレイ151,152,153および手差しトレイ154を含む。3つの給紙トレイ151,152,153は、この順で上方から下方に向かって並ぶように積層配置されている。手差しトレイ154は、MFP100の側壁に設けられ、画像形成部140よりも下方に位置する。
図3に太い一点鎖線で示すように、給紙トレイ151,152,153および手差しトレイ154は、副搬送経路SP1,SP2,SP3,SP4をそれぞれ通して主搬送経路41の下端部30に接続されている。
【0055】
給紙トレイ151に対応して、ピックアップローラー151pおよび給紙ローラー151rが設けられている。給紙ローラー151rは副搬送経路SP1に設けられる。給紙トレイ152に対応して、ピックアップローラー152pおよび給紙ローラー152rが設けられている。給紙ローラー152rは副搬送経路SP2に設けられる。給紙トレイ153に対応して、ピックアップローラー153pおよび給紙ローラー153rが設けられている。給紙ローラー153rは副搬送経路SP3に設けられる。手差しトレイ154に対応して、ピックアップローラー154pおよび給紙ローラー154rが設けられている。給紙ローラー154rは、副搬送経路SP4に設けられる。給紙トレイ151,152,153および手差しトレイ154それぞれから記録媒体を取り出し、搬送する動作は同じなので、ここでは給紙トレイ151を例に説明する。
【0056】
給紙トレイ151には、1以上の記録媒体が積層した状態で収納されている。給紙トレイ151は、それに収納された1以上の記録媒体を上方に押し上げるリフトアップ機構を有する。ピックアップローラー151pは、給紙トレイ151に収納された1以上の記録媒体の最上段の記録媒体に上方から当接するようにばね等の弾性部材により付勢されている。ピックアップローラー151pは、記録媒体の上方から押圧する。ピックアップローラー151pが回転することにより、記録媒体との間の摩擦力により最上段の記録媒体が副搬送経路SP1に送り出される。副搬送経路SP1に送り出された記録媒体は給紙ローラー151rにより主搬送経路41へ供給される。
【0057】
MFP100においては、画像形成時に、3つの給紙トレイ151,152,153および手差しトレイ154のうちから画像形成されるべき記録媒体が収納されたトレイが対象トレイとして選択される。3つの給紙トレイ151,152,153および手差しトレイ154のうち対象トレイとして選択されたトレイに対応するピックアップローラーおよび給紙ローラーが動作することにより、対象トレイとして選択されたトレイから副搬送経路SP1,SP2,SP3,SP4のいずれかを通して主搬送経路41に記録媒体が供給される。
【0058】
画像形成部140は、中間転写方式で画像を形成する。画像形成部140は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックそれぞれの画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kを備える。画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kの少なくとも1つが駆動されることにより、記録媒体に画像が形成される。画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kのすべてが駆動されることにより、フルカラーの画像が形成される。画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kには、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの印字用データがそれぞれ入力される。画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kは、取扱うトナーの色彩が異なるのみなので、ここでは、イエローの画像を形成するための画像形成ユニット51Yについて説明する。
【0059】
画像形成ユニット51Yは、イエローの印字用データが入力される露光ヘッド52Yと、感光体ドラム53Yと、帯電ローラー54Yと、現像ローラー55Yと、1次転写ローラー56Yとを備える。露光ヘッド52Yは、受取った印字用データ(電気信号)に応じてレーザ光を発光する。発光されたレーザ光は露光ヘッド52Yが備えるポリゴンミラーにより1次元走査され、感光体ドラム53Yを露光する。感光体ドラム53Yを1次元走査する方向は、主走査方向である。帯電ローラー54Yは、弾性体であり、感光体ドラム53Yに圧接するように配置される。感光体ドラム53Yは、帯電ローラー54Yによって帯電された後、露光ヘッド52Yが発光するレーザ光が照射される。これにより、感光体ドラム53Yに静電潜像が形成される。続いて、現像ローラー55Yにより、静電潜像上にトナーが載せられてトナー像が形成される。感光体ドラム53Y上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト57(像担持体)上に、1次転写ローラー56Yにより転写される。
【0060】
同様に、画像形成ユニット51Mは、マゼンタの印字用データが入力される露光ヘッド52Mと、感光体ドラム53Mと、帯電ローラー54Mと、現像ローラー55Mと、1次転写ローラー56Mとを備える。画像形成ユニット51Cは、シアンの印字用データが入力される露光ヘッド52Cと、感光体ドラム53Cと、帯電ローラー54Cと、現像ローラー55Cと、1次転写ローラー56Cとを備える。画像形成ユニット51Kは、ブラックの印字用データが入力される露光ヘッド52Kと、感光体ドラム53Kと、帯電ローラー54Kと、現像ローラー55Kと、1次転写ローラー56Kとを備える。
【0061】
中間転写ベルト57は、駆動ローラー54とローラー54Aとにより弛まないように懸架されている。駆動ローラー54が図中で反時計回りに回転すると、中間転写ベルト57が所定の速度で図中反時計回りに回転する。中間転写ベルト57の回転に伴って、ローラー54Aが、反時計回りに回転する。
【0062】
これにより、画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kが、順に中間転写ベルト57上にトナー像を転写する。画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kそれぞれが、中間転写ベルト57上にトナー像を転写するタイミングは、中間転写ベルト57に付された基準マークを検出することにより、調整される。これにより、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト57上に重畳される。
【0063】
上記の主搬送経路41には、下端部30から上端部13にかけて、タイミングローラー45、2次転写ローラー47および定着ローラー49がこの順で間隔をおいて配置されている。2次転写ローラー47は、発泡ゴム等の弾性体により形成され、中間転写ベルト57を挟んでローラー54Aと圧接している。給紙部150から主搬送経路41へ供給された記録媒体はタイミングローラー45へ送られる。
【0064】
タイミングローラー45は、中間転写ベルト57に形成されたトナー像がローラー54Aと2次転写ローラー47との間に到達するタイミングで記録媒体がローラー54Aと2次転写ローラー47との間に到達するように、主搬送経路41における記録媒体の搬送状態を調整する。タイミングローラー45により搬送される記録媒体は、2次転写ローラー47により中間転写ベルト57に押し当てられ、2次転写ローラー47を帯電させることにより、中間転写ベルト57上に重畳して形成されたイエロー、マゼンタ、シアンまたはブラックのトナー像が記録媒体に転写される。2次転写ローラー47の帯電量は、記録媒体の坪量に適した値となるように、2次転写ローラー47に印加される電圧がCPU111によって制御される。
【0065】
トナー像が転写された記録媒体は、定着ローラー49に搬送され、定着ローラー49により加熱される。これにより、トナーが溶かされて記録媒体に定着する。その後、画像形成後の記録媒体は、排紙ローラー15によって主搬送経路41の上端部13から排紙トレイ159上に排出される。定着ローラー49の温度は、記録媒体の坪量に適した値となるように、CPU111によって制御される。
【0066】
図4は、中間転写ベルトおよび画像形成ユニットの駆動機構の一部を示す模式図である。
図4においては、画像形成ユニット51Yの感光体ドラム53Yを駆動するための駆動機構が図示され、現像ローラー55Yを駆動するための駆動機構の図示は省略されている。また、画像形成ユニット51M,51C,51Kを駆動するための駆動機構の図示は省略されているが、これらの駆動機構は、画像形成ユニット51Yを駆動するための駆動機構と同様の構成を有する。後述する
図9においても同様である。
【0067】
図4を参照して、画像形成部140は、中間転写ベルト57および画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kを駆動するための共通のモーター60(駆動部)を含む。モーター60の回転軸には、ベルト駆動ギア61、感光体駆動ギア62および図示しない現像駆動ギアが取り付けられている。ベルト駆動ギア61は、点線により図示されている。中間転写ベルト57の駆動ローラー54の回転軸には、ベルト従動ギア63が取り付けられている。感光体ドラム53Yの回転軸には、感光体従動ギア65が取り付けられている。感光体駆動ギア62と感光体従動ギア65との間には、中継ギア64が配置される。現像ローラー55Yの回転軸には、図示しない現像従動ギアが取り付けられている。
【0068】
ベルト駆動ギア61は、ベルト従動ギア63と嵌合する。感光体駆動ギア62は、中継ギア64を介して感光体従動ギア65と嵌合する。現像駆動ギアは、現像従動ギアと嵌合する。後述するように、感光体駆動ギア62と感光体従動ギア65との間のバックラッシュ、および現像駆動ギアと現像従動ギアとの間のバックラッシュは、ベルト駆動ギア61とベルト従動ギア63との間のバックラッシュよりも大きい。モーター60が一方向に回転することにより、中間転写ベルト57、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kの全部が所定の方向に回転する。一方、モーター60が逆方向に回転することにより、中間転写ベルト57、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kの全部が上記の所定の方向とは逆方向に回転する。したがって、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kは、モーター60の回転力により中間転写ベルト57と同時に回転する同時駆動部材となる。
【0069】
本例では、画像形成部140は、モーター60と、画像形成ユニット51Y,51M,51C,51Kとの接続を切り離すクラッチ機構を有さない。そのため、MFP100をコストダウンするとともに、小型化することができる。以下の説明では、トナー像転写時における中間転写ベルト57、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kの回転を正回転と呼ぶ。正回転とは逆方向の中間転写ベルト57、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kの回転を逆回転と呼ぶ。
図4では、正回転時の各ギアの回転方向が矢印で示されている。
【0070】
画像形成部140は、クリーニングブレード58(トナー除去部)をさらに備える。
図5および
図6は、クリーニングブレードを示す側断面図である。
図5を参照して、クリーニングブレード58は、例えばウレタンゴム系の弾性体により形成され、中間転写ベルト57を摺擦可能に配置される。クリーニングブレード58は、記録媒体にトナー像が転写された後、中間転写ベルト57の正回転に伴って、中間転写ベルト57上の残存トナー像RTを掻き取ることにより残存トナー像RTを除去する。これにより、中間転写ベルト57がクリーニングされる。
【0071】
記録媒体が駆動ローラー54と2次転写ローラー47との間を通過する際に、記録媒体から発生する細かい繊維または填料等の紙粉PDが中間転写ベルト57に付着することがある。この場合、紙粉PDは、中間転写ベルト57によりクリーニングブレード58まで運ばれ、クリーニングブレード58により残存トナー像RTとともに中間転写ベルト57から除去される。しかしながら、
図6を参照して、紙粉PDは、クリーニングブレード58により除去されず、クリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に噛み込まれることがある。クリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に紙粉PDが噛み込まれた場合、クリーニングブレード58と中間転写ベルト57との接触が不均一になることにより、クリーニング不良が発生する。この場合、残存トナー像RTが十分に除去されないため、次の画像形成時に、記録媒体に筋状のノイズが付着することにより画質が低下する。
【0072】
そこで、クリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に噛み込まれた紙粉PDを除去するための除去動作が行われる。
図7および
図8は、除去動作を説明するための図である。
図7を参照して、中間転写ベルト57が逆回転されることにより、噛み込まれた紙粉PDがクリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間から抜き出される。その後、
図8を参照して、中間転写ベルト57が正回転されることにより、クリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間から抜き出された紙粉PDがクリーニングブレード58により掻き取られる。
図7における中間転写ベルト57の逆回転と、
図8における中間転写ベルト57の正回転とからなる除去動作が実行されることにより、紙粉PDが中間転写ベルト57から除去される。
【0073】
除去動作は、例えば画像形成動作が終了した直後のMFP100が停止したタイミングで実行されることが好ましい。この場合、印字ジョブに応答したトナー像が中間転写ベルト57に担持される間に、中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間に噛み込まれた異物が除去される。したがって、次の印字ジョブにおける画質の低下を防止できる。また、画像形成が除去動作により阻害されることがない。これにより、生産性が低下することが防止される。しかしながら、除去動作の実行タイミングは本例に限定されず、除去動作は任意のタイミングで実行されてもよい。
【0074】
除去動作において、中間転写ベルト57の逆回転量を増加させることにより、クリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に噛み込まれた紙粉PDをより多量に抜き出すことが可能である。しかしながら、上記のように、中間転写ベルト57、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kのそれぞれは、共通のモーター60により駆動される。この場合、中間転写ベルト57の逆回転量を増加させると、感光体ドラム53Yの逆回転量も増加する。
【0075】
感光体ドラム53Yが逆回転することにより現像ローラー55Yから感光体ドラム53Yに付着したトナーが帯電ローラー54Yに到達すると、帯電ローラー54Yが汚染され、感光体ドラム53Yの帯電不良が発生する場合がある。また、感光体ドラム53Yの逆回転時には、現像ローラー55Yから感光体ドラム53Yに搬送される現像剤の量の調整が行われない。そのため、大量の現像剤が感光体ドラム53Yに搬送されることにより、現像剤の詰まりが発生する場合がある。また、現像剤がトナーとキャリアーとを含む2成分現像剤である場合、感光体ドラム53Yにキャリアーが付着する場合がある。これらの不具合は、感光体ドラム53M,53C,53Kにおいても同様に発生する。
【0076】
図9は、逆回転時における中間転写ベルトおよび画像形成ユニットの駆動機構の一部を示す模式図である。上記の不具合を防止するために、
図9を参照して、中間転写ベルト57が逆回転しても、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが逆回転しないように、除去動作における中間転写ベルト57の逆回転量が制限される。
【0077】
具体的には、感光体駆動ギア62と感光体従動ギア65との間のバックラッシュは、ベルト駆動ギア61とベルト従動ギア63との間のバックラッシュよりも大きい。また、図示しない現像駆動ギアと現像従動ギアとの間のバックラッシュは、ベルト駆動ギア61とベルト従動ギア63との間のバックラッシュよりも大きい。そこで、除去動作における中間転写ベルト57の逆回転量は、感光体駆動ギア62と感光体従動ギア65との間のバックラッシュ未満で、かつ現像駆動ギアと現像従動ギアとの間のバックラッシュ未満にされる。
【0078】
すなわち、逆回転時におけるモーター60の回転量が、ベルト駆動ギア61とベルト従動ギア63との間のバックラッシュ以上で、感光体駆動ギア62と感光体従動ギア65との間のバックラッシュ未満で、かつ現像駆動ギアと現像従動ギアとの間のバックラッシュ未満にされる。これにより、
図9に矢印で示すように、モーター60が逆方向に回転することにより、ベルト従動ギア63(中間転写ベルト57)が逆回転する場合でも、感光体従動ギア65(感光体ドラム53Y)が逆回転することが防止される。同様に、現像ローラー55Yが逆回転することが防止される。
【0079】
また、除去動作を複数回実行することにより、除去動作1回あたりの中間転写ベルト57の逆回転量を制限しつつ、中間転写ベルト57の総合的な逆回転量を増加させることができる。各除去動作においては、正回転時の中間転写ベルト57の回転量は、逆回転時の中間転写ベルト57の回転量よりも大きいことが好ましい。これにより、中間転写ベルト57の逆回転により中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間から抜き出された異物を中間転写ベルト57の正回転により確実に除去することができる。また、除去動作が繰り返される場合でも、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが逆回転することを確実に防止することができる。
【0080】
このように、本例では、中間転写ベルト57が逆回転する場合でも、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが逆回転しないようにモーター60の動作が制御されるが、実施の形態はこれに限定されない。感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kの逆回転量が一定量以下である場合には、上記の不具合は発生しない。そのため、中間転写ベルト57が逆回転する場合には、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kの逆回転量が一定量以下になるようにモーター60の動作が制御されてもよい。また、各除去動作において、正回転時の中間転写ベルト57の回転量は、逆回転時の中間転写ベルト57の回転量よりも等しいか、またはわずかに小さくてもよい。
【0081】
クリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に噛み込まれる紙粉PDの数(噛み込み数)は、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度により変化する。
図10は、中間転写ベルトまたはクリーニングブレードの劣化度と紙粉の噛み込み数との関係を示すグラフである。
図10を参照して、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が小さいときには、紙粉PDの噛み込み数は小さい。一方、経年劣化により、中間転写ベルト57の表面が荒れたり、クリーニングブレード58が変形または摩耗したりする。このように中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が大きくなったときには、紙粉PDの噛み込み数は増加する。
【0082】
図11は、除去動作が行われた場合の紙粉の噛み込み数の変化を示すグラフである。
図12は、除去動作の実行回数を変化させた場合の中間転写ベルトとクリーニングブレードとの間の静止摩擦係数の変化を示すグラフである。
図11においては、一定枚数の印字ジョブが終了するごとに除去動作が行われる。また、画像形成動作時に中間転写ベルト57が正回転することによる紙粉PDの噛み込み数の変化が実線で示され、除去動作時に中間転写ベルト57が逆回転することによる紙粉PDの噛み込み数の変化が点線で示される。後述する
図13においても同様である。
【0083】
図11を参照して、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が小さいときには、紙粉PDの噛み込み数が小さいので、除去動作が1回実行されるごとに噛み込まれた紙粉PDを十分に除去することができる。一方、除去動作が実行されると、クリーニングブレード58の先端に供給された潤滑剤がクリーニングブレード58により残存トナー像RTおよび紙粉PDとともに除去される。そのため、
図12を参照して、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が小さい状態において、除去動作の実行回数を多くすると、潤滑剤が過剰に除去されることにより、中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間の静止摩擦係数が増加する。静止摩擦係数が一定値以上に増加すると、クリーニングブレード58の捲れが発生する。
【0084】
中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が大きいときには、紙粉PDの噛み込み数が大きいので、除去動作が1回実行されただけでは、噛み込まれた紙粉PDを十分に除去することができない。したがって、除去動作の実行回数が少ない場合には、印字枚数の増加に伴って紙粉PDの噛み込み数が増加する。紙粉PDの噛み込み数が一定値以上に増加すると、クリーニング不良が発生する。一方、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58が劣化した状態においては、中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間の静止摩擦係数が低下するので、クリーニングブレード58の先端に供給された潤滑剤が枯渇してもクリーニングブレード58の捲れはほとんど発生しない。
【0085】
そこで、除去動作の実行回数は、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に応じて変更される。
図13は、除去動作の実行回数を変化させた場合の紙粉の噛み込み数の変化を示すグラフである。
図13を参照して、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が小さいときには、除去動作の実行回数が1回に決定される。この場合、
図11の例と同様に、除去動作が1回実行されるごとに噛み込まれた紙粉PDを十分に除去することができる。一方、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が大きいときには、除去動作の実行回数が2回に決定される。この構成によれば、紙粉PDの噛み込み数が
図11の例に比べて減少する。これにより、クリーニング不良が発生するまでの時期を遅らせることができる。
【0086】
図14は、本実施の形態におけるMFPのCPUが有する機能の一例を示す図である。
図14に示す機能は、MFP100が備えるCPU111が、ROM113、HDD115またはCD-ROM118Aに記憶された記録媒体搬送プログラムを実行することにより、CPU111により実現される機能である。
図14を参照して、CPU111は、画像形成受付部210と、画像形成実行部220と、劣化度評価部230と、実行回数決定部240と、除去動作実行部250と、を含む。画像形成受付部210は、ユーザーから画像形成の実行指示を1以上のページの画像を含む印字ジョブとして受け付ける。画像形成実行部220は、画像形成受付部210が印字ジョブを受け付けることに応答して、1ページごとにページに対応するトナー像を中間転写ベルト57に担持させるように画像形成部140を制御するとともに、および記録媒体を搬送するように給紙部150を制御することにより、記録媒体への画像形成を実行する。
【0087】
劣化度評価部230は、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度を評価する。画像形成受付部210が印字ジョブを受け付けることに応答して、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度は、中間転写ベルト57の表面の粗さ、クリーニングブレード58の摩耗度またはクリーニングブレード58の歪みの一部または全部に基づいて評価されてもよい。
【0088】
本例では、劣化度評価部230は、印字履歴取得部231および回転履歴取得部232を含む。印字履歴取得部231は、MFP100により画像形成(印字)された記録媒体の総枚数を印字履歴として取得する。回転履歴取得部232は、中間転写ベルト57の総回転量を回転履歴として取得する。劣化度評価部230は、印字履歴取得部231により取得された印字履歴および回転履歴取得部232により取得された回転履歴の少なくとも一方に基づいて、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度を評価する。
【0089】
実行回数決定部240は、劣化度評価部230により評価された中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に応じて除去動作の実行回数を決定する。中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度と、除去動作の実行回数との関係は、予め定められている。中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度と、除去動作の実行回数との関係の例については後述する。
【0090】
本例では、実行回数決定部240は、選択受付部241、媒体種類取得部242、給紙履歴取得部243および印字枚数取得部244を含む。選択受付部241は、除去動作の実行回数の選択を受け付ける。ユーザーは、操作パネル160の操作部163を操作することにより、除去動作の実行回数を選択することができる。選択受付部241により除去動作の実行回数の選択が受け付けられた場合、実行回数決定部240は、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に応じて除去動作の実行回数を決定することなく、ユーザーにより選択された実行回数に決定する。なお、実行回数決定部240は、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に応じて除去動作の実行回数を決定した後、その実行回数をユーザーにより選択された実行回数に変更してもよい。
【0091】
媒体種類取得部242は、画像が形成される記録媒体の種類を取得する。記録媒体の種類は、例えば普通紙、上質紙、再生紙、写真用紙およびOHPフィルムを含む。記録媒体の種類は、ユーザーの選択に基づいて取得されてもよい。あるいは、給紙部150に記録媒体の種類を識別するためのセンサーがある場合には、記録媒体の種類は、当該センサーの識別結果に基づいて取得されてもよい。媒体種類取得部242により記録媒体の種類が取得された場合、実行回数決定部240は、決定された除去動作の実行回数を取得された記録媒体の種類に基づいて補正する。例えば、記録媒体が再生紙である場合にクリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に噛み込まれる紙粉PDの量は、記録媒体が普通紙である場合にクリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に噛み込まれる紙粉PDの量よりも多い。そのため、記録媒体が再生紙である場合には、記録媒体が普通紙である場合よりも除去動作の実行回数が多くなるように補正される。
【0092】
給紙履歴取得部243は、給紙ローラー151r,152r,153r,154rの使用量(例えば総回転量)を給紙履歴として取得する。給紙履歴取得部243により給紙履歴が取得された場合、実行回数決定部240は、決定された除去動作の実行回数を取得された給紙履歴に基づいて補正する。給紙ローラー151r,152r,153r,154rの使用量が多いほど、給紙ローラー151r,152r,153r,154rに付着する紙粉PDの量が多くなる。このため、給紙ローラー151r,152r,153r,154rの使用量が多いほど、記録媒体とともに搬送される紙粉PDの量が多くなる。例えば、給紙履歴が長い場合にクリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に噛み込まれる紙粉PDの量は、給紙履歴が短い場合にクリーニングブレード58と中間転写ベルト57との間に噛み込まれる紙粉PDの量よりも多い。そのため、給紙履歴が長い場合には、給紙履歴が短い場合よりも除去動作の実行回数が多くなるように補正される。
【0093】
印字枚数取得部244は、印字ジョブにおいて画像形成が実行される記録媒体の部数を印字枚数として取得する。印字枚数取得部244により印字枚数が取得された場合、実行回数決定部240は、決定された除去動作の実行回数を取得された印字枚数に基づいて補正する。印字枚数と、除去動作の実行回数との関係の例については後述する。
【0094】
記録媒体の種類、給紙履歴および印字枚数のうち2つ以上の情報が取得された場合には、除去動作の実行回数は、取得された2つ以上の情報のそれぞれに基づく実行回数の合計として補正されてもよい。一方、記録媒体の種類、給紙履歴および印字枚数のうち2つ以上の情報の組み合わせによっては、除去動作の適切な実行回数が、取得された2つ以上の情報のそれぞれに基づく実行回数の合計とは異なることがある。そのため、記録媒体の種類、給紙履歴および印字枚数のうち2つ以上の情報が取得された場合には、除去動作の実行回数は、取得された2つ以上の情報の組み合わせに基づいて補正されてもよい。記録媒体の種類、給紙履歴および印字枚数のうち2つ以上の情報の組み合わせと、除去動作の適切な実行回数との関係は、予めテーブルとしてHDD115等に記憶されていてもよい。
【0095】
除去動作実行部250は、実行回数決定部240により決定または補正された回数だけ除去動作が実行されるように中間転写ベルト57を駆動する。除去動作における逆回転時には、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが逆回転しないように中間転写ベルト57の回転量が予め定められた一定の回転量に制限される。また、除去動作における正回転時には、中間転写ベルト57の回転量の絶対値が逆回転時の中間転写ベルト57の回転量の絶対値よりも大きくされる。
【0096】
さらに、本例では、次の印字ジョブがある場合は、最後の除去動作における中間転写ベルト57の正回転の実行が省略される。最後の除去動作における中間転写ベルト57の正回転の実行が省略された場合でも、最後の除去動作における中間転写ベルト57の逆回転により中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間から抜き出された異物が、次のジョブに対応する画像形成時に、中間転写ベルト57の最初の正回転により除去される。このため、クリーニングブレード58によるクリーニングの性能を維持しつつ、除去動作の時間が短縮されることにより次のジョブに対応する画像形成を高速に行うことができる。すなわち、次の印字ジョブに対応する画像形成を迅速に開始することができる。一方、次の印字ジョブがある場合でも、最後の除去動作における中間転写ベルト57の正回転の実行が省略されずに、実行されてもよい。
【0097】
図15は、中間転写ベルトの劣化度と紙粉の噛み込み数との関係の一例を示すグラフである。
図15を参照して、中間転写ベルト57の劣化度が小さい場合、具体的には中間転写ベルト57の総回転量が30kmである場合、記録媒体の印字枚数10枚当たりの紙粉PDの噛み込み数は1個となった。一方、中間転写ベルト57の劣化度が大きい場合、具体的には中間転写ベルト57の総回転量が150kmである場合、記録媒体の印字枚数10枚当たりの紙粉PDの噛み込み数は5個となった。したがって、紙粉PDの噛み込み数は、中間転写ベルト57の劣化度に比例する。
【0098】
図15の例によれば、中間転写ベルト57の劣化度が小さい場合に50枚の記録媒体に連続印字すると、紙粉PDの噛み込み数が5個になる。中間転写ベルト57の劣化度が大きい場合に50枚の記録媒体に連続印字すると、紙粉PDの噛み込み数が25個になる。ここで、除去動作が1回行われると、噛み込まれた紙粉PDの3割程度が除去され、残りの7割程度が除去されずに残存する。
【0099】
図16は、印字枚数と紙粉の噛み込み数との関係の一例を示すグラフである。
図16を参照して、印字枚数50枚の印字ジョブが終了するごとに除去動作が行われる。ここで、中間転写ベルト57の劣化度が小さい場合には、除去動作が1回実行されるごとに紙粉PDの噛み込み数を十分に低減することができる。しかしながら、中間転写ベルト57の劣化度が大きい場合には、除去動作が1回実行されただけでは、紙粉PDの噛み込み数を十分に低減することができない。そのため、5~6回分の印字ジョブに応答するとクリーニング不良が発生する。一方、中間転写ベルト57の劣化度が大きい場合に、除去動作が2回実行されると、紙粉PDの噛み込み数を十分に低減することができる。これにより、クリーニング不良が発生することが防止される。
【0100】
図17は、印字枚数と紙粉の噛み込み数との関係の他の例を示すグラフである。
図17を参照して、印字枚数100枚の印字ジョブが終了するごとに除去動作が行われる。この場合、
図16の例と同様に、中間転写ベルト57の劣化度が小さい場合には、除去動作が1回実行されるごとに紙粉PDの噛み込み数を十分に低減することができる。しかしながら、中間転写ベルト57の劣化度が大きい場合には、除去動作が1回実行されただけでは、紙粉PDの噛み込み数を十分に低減することができない。そのため、2~3回分の印字ジョブに応答するとクリーニング不良が発生する。一方、中間転写ベルト57の劣化度が大きい場合に、除去動作が4回実行されると、紙粉PDの噛み込み数を十分に低減することができる。これにより、クリーニング不良が発生することが防止される。
【0101】
このように、除去動作の実行回数は、
図15に示す中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度と紙粉PDの噛み込み数との関係に基づいて、クリーニング不良が発生しないように、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に対応して決定される。また、除去動作の実行回数は、印字ジョブにおける印字枚数に基づいて、クリーニング不良が発生しないように補正される。
【0102】
図18は、画像形成処理の流れの一例を示すフローチャートである。画像形成処理は、MFP100が備えるCPU111が画像形成プログラムを実行することにより、CPU111により実行される処理である。
図18を参照して、MFP100が備えるCPU111は、印字ジョブを受け付けたか否かを判断する(ステップS01)。印字ジョブが受け付けられるまで待機状態となり(ステップS01でNO)、印字ジョブが受け付けられたならば(ステップS01でYES)、処理はステップS02に進む。ステップS02においては、画像形成(印字)が実行され、処理はステップS03に進む。
【0103】
ステップS03においては、ユーザーにより除去動作の実行回数が選択されたか否かが判断される。ユーザーにより除去動作の実行回数が選択されたならば処理はステップS04に進むがそうでなければ処理はステップS05に進む。ステップS04においては、除去動作の実行回数がユーザーにより選択された実行回数に決定され、処理はステップS13に進む。
【0104】
ステップS05においては、印字履歴が取得され、処理はステップS06に進む。ステップS06においては、中間転写ベルト57の回転履歴が取得され、処理はステップS07に進む。ステップS05とステップS06とは、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。ステップS07においては、印字履歴および中間転写ベルト57の回転履歴の少なくとも一方に基づいて、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が評価され、処理はステップS08に進む。ステップS08においては、評価された中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に応じて除去動作の実行回数が決定され、処理はステップS09に進む。
【0105】
ステップS09においては、ステップS02において画像が形成された記録媒体の種類が取得され、処理はステップS10に進む。ステップS10においては、給紙履歴が取得され、処理はステップS11に進む。ステップS11においては、印字ジョブにおける印字枚数が取得され、処理はステップS12に進む。ステップS09とステップS10とステップS11とは、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。ステップS12においては、ステップS08において決定された除去動作の実行回数が取得された記録媒体の種類、給紙履歴または印字枚数に基づいて補正され、処理はステップS13に進む。
【0106】
ステップS13においては、変数iの値が1に設定され、処理はステップS14に進む。ステップS14においては、中間転写ベルト57が逆回転され、処理はステップS15に進む。ステップS15においては、変数iの値がnであるか否かが判断される。ここで、nは、ステップS04で決定またはステップS12で補正された除去動作の実行回数である。変数iの値がnであるならば処理はステップS18に進むがそうでなければ処理はステップS16に進む。ステップS16においては、中間転写ベルト57が正回転され、処理はステップS17に進む。ステップS17においては、変数iの値がi+1に更新され、処理はステップS14に進む。変数iの値がnになるまでステップS14~S17が繰り返される。
【0107】
ステップS18においては、次の印字ジョブがあるか否かが判断される。次の印字ジョブがあるならば、最後(第n回目)の除去動作における正回転が行われることなく画像形成処理が終了する。この場合、次の印字ジョブに対応する他の画像形成処理が開始される。次の印字ジョブがなければ、処理はステップS19に進む。ステップS19においては、最後(第n回目)の除去動作における正回転が実行され、画像形成処理が終了する。
【0108】
<変形例>
中間転写ベルト57、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kおよび現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが共通のモーター60により駆動されるが、実施の形態はこれに限定されない。中間転写ベルト57および感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kが同一のモーター60により駆動され、現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが他のモーターにより駆動されてもよい。あるいは、中間転写ベルト57および現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが同一のモーター60により駆動され、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kが他のモーターにより駆動されてもよい。
【0109】
また、除去動作の実行回数は、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に応じて決定された後に、記録媒体の種類、給紙履歴および印字枚数の少なくとも1つに基づいて補正されるが、実施の形態はこれに限定されない。除去動作の実行回数は、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に加えて、記録媒体の種類、給紙履歴および印字枚数の少なくとも1つに基づいて決定されてもよい。あるいは、除去動作の実行回数は、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度に応じて決定され、記録媒体の種類、給紙履歴および印字枚数に基づいて補正されなくてもよい。この場合、画像形成処理のステップS05~S12は省略される。
【0110】
以上説明したように本実施の形態におけるMFP100は、画像形成装置として機能し、中間転写ベルト57がトナーで構成されるトナー像を担持し、モーター60が中間転写ベルト57を回転させる。クリーニングブレード58が、中間転写ベルト57に接触し、中間転写ベルト57がモーター60により正回転される間に中間転写ベルト57に残存するトナーを除去する。MFP100において、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が評価され、劣化度に基づいて、中間転写ベルト57を逆回転させた後に正回転させる除去動作の実行回数が決定され、決定された実行回数だけ除去動作が実行されるようにモーター60が制御される。このため、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が大きい場合でも、中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間に噛み込まれた異物を効率的に除去することができる。また、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度が小さい場合には、除去動作の際のクリーニングブレード58と中間転写ベルト57との摩擦によるクリーニングブレード58の捲れが発生することが抑制される。これにより、クリーニングブレード58によるクリーニングの性能を向上させることができる。
【0111】
好ましくは、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度は、中間転写ベルト57の表面の粗さ、クリーニングブレード58の摩耗度またはクリーニングブレード58の歪みに基づいて評価される。このため、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度を容易に評価することができる。
【0112】
好ましくは、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度は、中間転写ベルト57の総回転量に基づいて評価される。このため、中間転写ベルト57またはクリーニングブレード58の劣化度を容易に評価することができる。
【0113】
好ましくは、MFP100は、モーター60の回転力により中間転写ベルト57と同時に回転する感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kまたは現像ローラー55Y,55M,55C,55Kをさらに備える。除去動作において、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kまたは現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが逆回転しないように、制限された回転量で中間転写ベルト57が逆回転される。このため、中間転写ベルト57と感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kまたは現像ローラー55Y,55M,55C,55Kとが共通のモーター60により駆動されるので、MFP100を小型化するとともに、MFP100のコストを低減することができる。また、中間転写ベルト57の逆回転時に感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kまたは現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが逆回転することが防止されるので、感光体ドラム53Y,53M,53C,53Kまたは現像ローラー55Y,55M,55C,55Kが逆回転することによる不具合を防止することができる。
【0114】
好ましくは、除去動作において、逆回転時における中間転写ベルト57の回転量よりも正回転時における中間転写ベルト57の回転量が大きくなるようにモーター60が駆動される。このため、中間転写ベルト57の逆回転により中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間から抜き出された異物を中間転写ベルト57の正回転により確実に除去することができる。
【0115】
好ましくは、1以上のページの画像を含むジョブに基づいて、1ページごとにページに対応するトナー像を中間転写ベルト57に担持され、ジョブに応答したトナー像が中間転写ベルト57に担持された後に、除去動作が実行されるようにモーター60が制御される。このため、ジョブに応答したトナー像が中間転写ベルト57に担持される間に中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間に噛み込まれた異物が除去される。したがって、次のジョブにおける画質の低下を防止できる。また、画像形成が除去動作により阻害されることがない。これにより、生産性の低下を防止することができる。
【0116】
好ましくは、除去動作が実行されるようにモーター60が制御されている間に次のジョブが受け付けられる場合、最後の除去動作における中間転写ベルト57の正回転の実行が省略される。最後の除去動作における中間転写ベルト57の正回転の実行が省略された場合でも、最後の除去動作における中間転写ベルト57の逆回転により中間転写ベルト57とクリーニングブレード58との間から抜き出された異物が、次のジョブに対応する画像形成時に、中間転写ベルト57の最初の正回転により除去される。このため、クリーニングブレード58によるクリーニングの性能を維持しつつ、除去動作の時間が短縮されることにより次のジョブに対応する画像形成を高速に行うことができる。
【0117】
好ましくは、ジョブに応答したトナー像が転写された記録媒体の種類に基づいて、除去動作の実行回数が決定される。このため、除去動作の実行回数をより適切に決定することができる。
【0118】
好ましくは、除去動作の実行回数は、ジョブに応答したトナー像が転写された記録媒体の枚数に基づいて決定される。このため、除去動作の実行回数をより適切に決定することができる。
【0119】
好ましくは、除去動作の実行回数は、搬送部が記録媒体を搬送した供給履歴に基づいて決定される。このため、除去動作の実行回数をより適切に決定することができる。
【0120】
好ましくは、除去動作の実行回数の選択が受け付けられた場合、除去動作の実行回数は、選択された実行回数に決定される。このため、ユーザーの所望の回数だけ除去動作を実行することができる。
【0121】
<付記>
好ましくは、前記画像形成装置は、
前記駆動部と前記像担持体との間に設けられ、前記駆動部の回転力を前記像担持体に伝達する第1伝達部材と、
前記駆動部と前記同時駆動部材との間に設けられ、前記駆動部の回転力を前記同時駆動部材に伝達する第2伝達部材と、をさらに備え、
前記第1伝達部材のバックラッシュは、前記第2伝達部材のバックラッシュより小さい。
【0122】
好ましくは、前記画像形成装置は、
帯電後に露光されることにより静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体に形成された前記静電潜像をトナーで現像する現像部と、
前記現像部により前記静電潜像がトナーで現像されることにより前記感光体に形成されるトナー像を前記像担持体に転写する転写部と、をさらに備え、
前記同時駆動部材は、前記感光体および前記現像部の少なくとも一方である。
【0123】
好ましくは、前記除去動作実行部は、逆回転時における前記駆動部の回転量が前記第1伝達部材のバックラッシュ以上で、かつ前記第2伝達部材のバックラッシュ未満となるように前記駆動部を制御する。
【符号の説明】
【0124】
13 上端部、15 排紙ローラー、30 下端部、41 主搬送経路、45 タイミングローラー、47 2次転写ローラー、49 定着ローラー、51C,51K,51M,51Y 画像形成ユニット、52C,52K,52M,52Y 露光ヘッド、53C,53K,53M,53Y 感光体ドラム、54 駆動ローラー、54A ローラー、54C,54K,54M,54Y 帯電ローラー、55C,55K,55M,55Y 現像ローラー、56C,56K,56M,56Y 1次転写ローラー、57 中間転写ベルト、58 クリーニングブレード、60 モーター、61 ベルト駆動ギア、62 感光体駆動ギア、63 ベルト従動ギア、64 中継ギア、65 感光体従動ギア、100 MFP、110 メイン回路、111 CPU、112 I/F部、113 ROM、114 RAM、115 HDD、116 ファクシミリ部、118 外部記憶装置、118A CD-ROM、120 自動原稿搬送装置、125 原稿トレイ、127 原稿排紙トレイ、130 原稿読取部、140 画像形成部、150 給紙部、151,152,153 給紙トレイ、151p,152p,153p,154p ピックアップローラー、151r,152r,153r,154r 給紙ローラー、154 手差しトレイ、159 排紙トレイ、160 操作パネル、161 表示部、163 操作部、210 画像形成受付部、220 画像形成実行部、230 劣化度評価部、231 印字履歴取得部、232 回転履歴取得部、240 実行回数決定部、241 選択受付部、242 媒体種類取得部、243 給紙履歴取得部、244 印字枚数取得部、250 除去動作実行部、RT 残存トナー像、SP1,SP2,SP3,SP4 副搬送経路