(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】マウスウォータリング感増強剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20250212BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20250212BHJP
【FI】
A23L27/20 E
A23L27/20 G
A23L29/00
(21)【出願番号】P 2020152966
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(72)【発明者】
【氏名】黒田 素央
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和洋
(72)【発明者】
【氏名】田島 高穂
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-050774(JP,A)
【文献】特開2019-050775(JP,A)
【文献】特開2012-143171(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181629(WO,A1)
【文献】特開2017-131176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0027442(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108125203(CN,A)
【文献】OGAWA, Y. et al.,Evaluation of Taste Solutions with or without Aromas Based on the Relationship between lndividual Resting and Stimulated Salivation,Food Scienee and Technology Research,2020年07月,Vol.26, No.3,p.451-457
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び下記(B)の加熱物を含有する、マウスウォータリング感増強剤。
(A)(A1)
フルフラールと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレ
ン
【請求項2】
ジューシー感増強剤である、請求項
1記載の増強剤。
【請求項3】
下記(A)及び下記(B)の加熱物を食品に添加することを含む、食品のマウスウォータリング感増強方法。
(A)(A1)
フルフラールと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレ
ン
【請求項4】
ジューシー感増強方法である、請求項
3記載の増強方法。
【請求項5】
下記(A)及び下記(B)の加熱物を添加することを含む、
マウスウォータリング感が増強された食品の製造方法。
(A)(A1)
フルフラールと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレ
ン
【請求項6】
下記(A)及び下記(B)の加熱物を含有する
、マウスウォータリング感が増強された食品。
(A)(A1)
フルフラールと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレ
ン
【請求項7】
下記(A)及び下記(B)を加熱することを含む、マウスウォータリング感増強剤の製造方法。
(A)(A1)
フルフラールと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレ
ン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスウォータリング感増強剤及びその製造方法に関する。また本発明は、マウスウォータリング感が増強された食品及びその製造方法、並びに、マウスウォータリング感の増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「マウスウォータリング感」とは、口腔内から唾液の分泌が誘発される感覚をいい、当該感覚は、例えばガムを噛み続けたとき等に、特に顕著に感じられるが、唾液分泌は、食品の咀嚼や味刺激等によって誘発され得るものであり、マウスウォータリング感は、程度の差はあれど、どのような食品においても感じられ得る感覚である。食品のマウスウォータリング感が増強されることにより、食感のパサつき等が抑えられ得、マウスウォータリング感の増強は、食品の嗜好性の向上等に有用であると考えられる。
【0003】
マウスウォータリング感を増強する方法としては、従来、果実の果汁を添加する方法(特許文献1)、遊離脂肪酸を添加する方法(特許文献2)、ヒドロキシ-α-サンショール/フェニルブテナール/有機酸の配合物を添加する方法(特許文献3)、スピラントール/有機酸/香料成分の配合物を添加する方法(特許文献4)等が報告されている。しかしながら、これらの方法は、例えば、果汁や有機酸を食品に添加する場合(特許文献1、3、4)、酸味等の食品そのものには感じられない味を付与してしまうという課題を有している。また、ヒドロキシ-α-サンショールやスピラントール等の香辛成分を添加する場合(特許文献3、4)、特有の刺激味も付与してしまうという課題を有している。さらには遊離脂肪酸を添加する場合(特許文献2)、脂肪酸特有の異味や脂肪酸の分解によって発生する異風味が付与されるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-089524号公報
【文献】特開2017-85943号公報
【文献】特開2015-043769号公報
【文献】特表2009-539397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、マウスウォータリング感を効果的に増強できるマウスウォータリング感増強剤、マウスウォータリング感が効果的に増強された食品及びその製造方法、マウスウォータリング感を効果的に増強する方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、下記(A)及び/又は下記(B)の加熱物、並びに下記(C)が、それぞれマウスウォータリング感増強作用に優れることを見出し、さらに研究を重ねることによって、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1]下記(A)及び/又は下記(B)の加熱物、あるいは下記(C)を含有する、マウスウォータリング感増強剤。
(A)(A1)一般式(I):
【0008】
【0009】
〔式中、
R1は、炭素原子数1~6のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zは、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2は、置換基であり;
nは、0~3の整数を示す〕
で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレン及びβ-カリオフィレン類縁化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物
(C)β-カリオフィレン含酸素誘導体、リモネンオキシド及びα-テルピネノールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物
[2]前記(A1)の一般式(I)で表される化合物が、フルフラール、5-メチルフルフラール、2-フリルメチルケトン、フルフリルアルコール、及び1-フルフリルピロールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[1]記載の増強剤。
[3]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、一般式(II):
【0010】
【0011】
〔式中、
環Aは、5員又は6員の、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環であり;
R3は、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基であるとき、当該炭化水素基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4は、炭素原子数1~8の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mは、1~3の整数を示す〕
で表される化合物(シクロテンを除く)である、[1]又は[2]記載の増強剤。
[4]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、3-メチル-2-シクロペンテノン、γ-ブチロラクトン、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン、α-アンゲリカラクトン、エチルシクロペンテノロン、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジオン、マルトール、テトラヒドロピラン-3-オン、2,5-シクロヘキサジエン-1-オン、4-メチルピロリジン-2-オン、2-メチル-2,4-シクロペンタジエン-1-オン、4-エチルピペリジン-2-オン、1-メチルピペリジン-3-オン、テトラヒドロ-3-メチルピラン-2-オン、ジヒドロ-5-オクチル-2(3H)-フラノン、6-ヘプチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、2,5-ジメチル-4-メトキシ-3(2H)-フラノン、D-erythro-ヘキサ-2-エノン酸γ-ラクトン、4-(アセトキシ)-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタン酢酸メチル、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2(5H)-フラノン、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、(1R,4R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、(5R)-2-メチル-5-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-オン、3-プロピリデン-1(3H)-イソベンゾフラノン及び3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[1]又は[2]記載の増強剤。
[5]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖を含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載の増強剤。
[6]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン、並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸又はその塩を更に含む、[5]記載の増強剤。
[7]前記(B)のβ-カリオフィレン類縁化合物が、イソカリオフィレン、β-ピネン、サビネン、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、オイゲノール、リモネン、4-ビニルフェノール、リナロール、リナロールオキシド、p-シメン、ファルネセン、ミルセン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン及びテルピノレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の増強剤。
[8]前記(C)のβ-カリオフィレン含酸素誘導体が、β-カリオフィレンオキシド、β-カリオフィレノール、β-カリオフィレンジオール及びクロバンジオールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の増強剤。
[9](A)及び/又は(B)の加熱物が、
(A)の加熱物、
(B)の加熱物、
(A)の加熱物及び(B)の加熱物の組み合わせ、並びに、
(A1)、(A2)及び(B)を含有する組成物の加熱物
からなる群より選択される、[1]~[8]のいずれか一つに記載の増強剤。
[10]前記(B)の加熱物が、(B)の油中加熱物である、[9]記載の増強剤。
[11]ジューシー感増強剤である、[1]~[10]のいずれか一つに記載の増強剤。
[12]下記(A)及び/又は下記(B)の加熱物、あるいは下記(C)を食品に添加することを含む、食品のマウスウォータリング感増強方法。
(A)(A1)一般式(I):
【0012】
【0013】
〔式中、
R1は、炭素原子数1~6のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zは、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2は、置換基であり;
nは、0~3の整数を示す〕
で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレン及びβ-カリオフィレン類縁化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物
(C)β-カリオフィレン含酸素誘導体、リモネンオキシド及びα-テルピネノールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物
[13]前記(A1)の一般式(I)で表される化合物が、フルフラール、5-メチルフルフラール、2-フリルメチルケトン、フルフリルアルコール、及び1-フルフリルピロールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[12]記載の増強方法。
[14]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、一般式(II):
【0014】
【0015】
〔式中、
環Aは、5員又は6員の、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環であり;
R3は、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基であるとき、当該炭化水素基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4は、炭素原子数1~8の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mは、1~3の整数を示す〕
で表される化合物(シクロテンを除く)である、[12]又は[13]記載の増強方法。
[15]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、3-メチル-2-シクロペンテノン、γ-ブチロラクトン、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン、α-アンゲリカラクトン、エチルシクロペンテノロン、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジオン、マルトール、テトラヒドロピラン-3-オン、2,5-シクロヘキサジエン-1-オン、4-メチルピロリジン-2-オン、2-メチル-2,4-シクロペンタジエン-1-オン、4-エチルピペリジン-2-オン、1-メチルピペリジン-3-オン、テトラヒドロ-3-メチルピラン-2-オン、ジヒドロ-5-オクチル-2(3H)-フラノン、6-ヘプチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、2,5-ジメチル-4-メトキシ-3(2H)-フラノン、D-erythro-ヘキサ-2-エノン酸γ-ラクトン、4-(アセトキシ)-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタン酢酸メチル、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2(5H)-フラノン、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、(1R,4R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、(5R)-2-メチル-5-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-オン、3-プロピリデン-1(3H)-イソベンゾフラノン及び3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[12]又は[13]記載の増強方法。
[16]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖を含む、[12]~[15]のいずれか一つに記載の増強方法。
[17]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン、並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸又はその塩を更に含む、[16]記載の増強方法。
[18]前記(B)のβ-カリオフィレン類縁化合物が、イソカリオフィレン、β-ピネン、サビネン、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、オイゲノール、リモネン、4-ビニルフェノール、リナロール、リナロールオキシド、p-シメン、ファルネセン、ミルセン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン及びテルピノレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[12]~[17]のいずれか一つに記載の増強方法。
[19]前記(C)のβ-カリオフィレン含酸素誘導体が、β-カリオフィレンオキシド、β-カリオフィレノール、β-カリオフィレンジオール及びクロバンジオールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[12]~[18]のいずれか一つに記載の増強方法。
[20](A)及び/又は(B)の加熱物が、
(A)の加熱物、
(B)の加熱物、
(A)の加熱物及び(B)の加熱物の組み合わせ、並びに、
(A1)、(A2)及び(B)を含有する組成物の加熱物
からなる群より選択される、[12]~[19]のいずれか一つに記載の増強方法。
[21]前記(B)の加熱物が、(B)の油中加熱物である、[20]記載の増強方法。
[22]ジューシー感増強方法である、[12]~[21]のいずれか一つに記載の増強方法。
[23]下記(A)及び/又は下記(B)の加熱物、あるいは下記(C)を添加することを含む、食品の製造方法。
(A)(A1)一般式(I):
【0016】
【0017】
〔式中、
R1は、炭素原子数1~6のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zは、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2は、置換基であり;
nは、0~3の整数を示す〕
で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレン及びβ-カリオフィレン類縁化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物
(C)β-カリオフィレン含酸素誘導体、リモネンオキシド及びα-テルピネノールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物
[24]前記(A1)の一般式(I)で表される化合物が、フルフラール、5-メチルフルフラール、2-フリルメチルケトン、フルフリルアルコール、及び1-フルフリルピロールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[23]記載の製造方法。
[25]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、一般式(II):
【0018】
【0019】
〔式中、
環Aは、5員又は6員の、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環であり;
R3は、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基であるとき、当該炭化水素基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4は、炭素原子数1~8の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mは、1~3の整数を示す〕
で表される化合物(シクロテンを除く)である、[23]又は[24]記載の製造方法。
[26]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、3-メチル-2-シクロペンテノン、γ-ブチロラクトン、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン、α-アンゲリカラクトン、エチルシクロペンテノロン、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジオン、マルトール、テトラヒドロピラン-3-オン、2,5-シクロヘキサジエン-1-オン、4-メチルピロリジン-2-オン、2-メチル-2,4-シクロペンタジエン-1-オン、4-エチルピペリジン-2-オン、1-メチルピペリジン-3-オン、テトラヒドロ-3-メチルピラン-2-オン、ジヒドロ-5-オクチル-2(3H)-フラノン、6-ヘプチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、2,5-ジメチル-4-メトキシ-3(2H)-フラノン、D-erythro-ヘキサ-2-エノン酸γ-ラクトン、4-(アセトキシ)-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタン酢酸メチル、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2(5H)-フラノン、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、(1R,4R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、(5R)-2-メチル-5-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-オン、3-プロピリデン-1(3H)-イソベンゾフラノン及び3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[23]又は[24]記載の製造方法。
[27]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖を含む、[23]~[26]のいずれか一つに記載の製造方法。
[28]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン、並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸又はその塩を更に含む、[27]記載の製造方法。
[29]前記(B)のβ-カリオフィレン類縁化合物が、イソカリオフィレン、β-ピネン、サビネン、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、オイゲノール、リモネン、4-ビニルフェノール、リナロール、リナロールオキシド、p-シメン、ファルネセン、ミルセン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン及びテルピノレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[23]~[28]のいずれか一つに記載の製造方法。
[30]前記(C)のβ-カリオフィレン含酸素誘導体が、β-カリオフィレンオキシド、β-カリオフィレノール、β-カリオフィレンジオール及びクロバンジオールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[23]~[29]のいずれか一つに記載の製造方法。
[31](A)及び/又は(B)の加熱物が、
(A)の加熱物、
(B)の加熱物、
(A)の加熱物及び(B)の加熱物の組み合わせ、並びに、
(A1)、(A2)及び(B)を含有する組成物の加熱物
からなる群より選択される、[23]~[30]のいずれか一つに記載の製造方法。
[32]前記(B)の加熱物が、(B)の油中加熱物である、[31]記載の製造方法。
[33]食品が、マウスウォータリング感が増強された食品である、[23]~[32]のいずれか一つに記載の製造方法。
[34]食品が、ジューシー感が増強された食品である、[23]~[32]のいずれか一つに記載の製造方法。
[35]下記(A)及び/又は下記(B)の加熱物、あるいは下記(C)を含有する食品。
(A)(A1)一般式(I):
【0020】
【0021】
〔式中、
R1は、炭素原子数1~6のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zは、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2は、置換基であり;
nは、0~3の整数を示す〕
で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレン及びβ-カリオフィレン類縁化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物
(C)β-カリオフィレン含酸素誘導体、リモネンオキシド及びα-テルピネノールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物
[36]前記(A1)の一般式(I)で表される化合物が、フルフラール、5-メチルフルフラール、2-フリルメチルケトン、フルフリルアルコール、及び1-フルフリルピロールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[35]記載の食品。
[37]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、一般式(II):
【0022】
【0023】
〔式中、
環Aは、5員又は6員の、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環であり;
R3は、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基であるとき、当該炭化水素基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4は、炭素原子数1~8の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mは、1~3の整数を示す〕
で表される化合物(シクロテンを除く)である、[35]又は[36]記載の食品。
[38]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、3-メチル-2-シクロペンテノン、γ-ブチロラクトン、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン、α-アンゲリカラクトン、エチルシクロペンテノロン、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジオン、マルトール、テトラヒドロピラン-3-オン、2,5-シクロヘキサジエン-1-オン、4-メチルピロリジン-2-オン、2-メチル-2,4-シクロペンタジエン-1-オン、4-エチルピペリジン-2-オン、1-メチルピペリジン-3-オン、テトラヒドロ-3-メチルピラン-2-オン、ジヒドロ-5-オクチル-2(3H)-フラノン、6-ヘプチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、2,5-ジメチル-4-メトキシ-3(2H)-フラノン、D-erythro-ヘキサ-2-エノン酸γ-ラクトン、4-(アセトキシ)-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタン酢酸メチル、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2(5H)-フラノン、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、(1R,4R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、(5R)-2-メチル-5-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-オン、3-プロピリデン-1(3H)-イソベンゾフラノン及び3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[35]又は[36]記載の食品。
[39]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖を含む、[35]~[38]のいずれか一つに記載の食品。
[40]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン、並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸又はその塩を更に含む、[39]記載の食品。
[41]前記(B)のβ-カリオフィレン類縁化合物が、イソカリオフィレン、β-ピネン、サビネン、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、オイゲノール、リモネン、4-ビニルフェノール、リナロール、リナロールオキシド、p-シメン、ファルネセン、ミルセン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン及びテルピノレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[35]~[40]のいずれか一つに記載の食品。
[42]前記(C)のβ-カリオフィレン含酸素誘導体が、β-カリオフィレンオキシド、β-カリオフィレノール、β-カリオフィレンジオール及びクロバンジオールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[35]~[41]のいずれか一つに記載の食品。
[43](A)及び/又は(B)の加熱物が、
(A)の加熱物、
(B)の加熱物、
(A)の加熱物及び(B)の加熱物の組み合わせ、並びに、
(A1)、(A2)及び(B)を含有する組成物の加熱物
からなる群より選択される、[35]~[42]のいずれか一つに記載の食品。
[44]前記(B)の加熱物が、(B)の油中加熱物である、[43]記載の食品。
[45]食品が、マウスウォータリング感が増強された食品である、[35]~[44]のいずれか一つに記載の食品。
[46]食品が、ジューシー感が増強された食品である、[35]~[44]のいずれか一つに記載の食品。
[47]下記(A)及び/又は下記(B)を加熱することを含む、マウスウォータリング感増強剤の製造方法。
(A)(A1)一般式(I):
【0024】
【0025】
〔式中、
R1は、炭素原子数1~6のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zは、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2は、置換基であり;
nは、0~3の整数を示す〕
で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレン及びβ-カリオフィレン類縁化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物
[48]前記(A1)の一般式(I)で表される化合物が、フルフラール、5-メチルフルフラール、2-フリルメチルケトン、フルフリルアルコール、及び1-フルフリルピロールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[47]記載の製造方法。
[49]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、一般式(II):
【0026】
【0027】
〔式中、
環Aは、5員又は6員の、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環であり;
R3は、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基であるとき、当該炭化水素基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4は、炭素原子数1~8の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mは、1~3の整数を示す〕
で表される化合物(シクロテンを除く)である、[47]又は[48]記載の製造方法。
[50]前記(A1)のシクロテン類縁化合物が、3-メチル-2-シクロペンテノン、γ-ブチロラクトン、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン、α-アンゲリカラクトン、エチルシクロペンテノロン、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジオン、マルトール、テトラヒドロピラン-3-オン、2,5-シクロヘキサジエン-1-オン、4-メチルピロリジン-2-オン、2-メチル-2,4-シクロペンタジエン-1-オン、4-エチルピペリジン-2-オン、1-メチルピペリジン-3-オン、テトラヒドロ-3-メチルピラン-2-オン、ジヒドロ-5-オクチル-2(3H)-フラノン、6-ヘプチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン、2,5-ジメチル-4-メトキシ-3(2H)-フラノン、D-erythro-ヘキサ-2-エノン酸γ-ラクトン、4-(アセトキシ)-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタン酢酸メチル、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2(5H)-フラノン、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、(1R,4R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン、(5R)-2-メチル-5-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-オン、3-プロピリデン-1(3H)-イソベンゾフラノン及び3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[47]又は[48]記載の製造方法。
[51]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖を含む、[47]~[50]のいずれか一つに記載の製造方法。
[52]前記(A1)の、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン、並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸又はその塩を更に含む、[51]記載の製造方法。
[53]前記(B)のβ-カリオフィレン類縁化合物が、イソカリオフィレン、β-ピネン、サビネン、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、オイゲノール、リモネン、4-ビニルフェノール、リナロール、リナロールオキシド、p-シメン、ファルネセン、ミルセン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン及びテルピノレンからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である、[47]~[52]のいずれか一つに記載の製造方法。
[54](A)及び/又は(B)の加熱物が、
(A)の加熱物、
(B)の加熱物、
(A)の加熱物及び(B)の加熱物の組み合わせ、並びに、
(A1)、(A2)及び(B)を含有する組成物の加熱物
からなる群より選択される、[47]~[53]のいずれか一つに記載の製造方法。
[55]前記(B)の加熱物が、(B)の油中加熱物である、[54]記載の製造方法。
[56]ジューシー感増強剤の製造方法である、[47]~[55]のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、マウスウォータリング感を効果的に増強できるマウスウォータリング感増強剤及びその製造方法を提供し得る。また、本発明のマウスウォータリング感増強剤は、ジューシー感も効果的に増強し得る。
本発明によれば、マウスウォータリング感が効果的に増強された食品及びその製造方法を提供し得る。また、本発明によれば、ジューシー感が効果的に増強された食品及びその製造方法も提供し得る。
本発明によれば、マウスウォータリング感を効果的に増強する方法を提供し得る。また、本発明によれば、ジューシー感を効果的に増強する方法も提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<マウスウォータリング感増強剤及びその製造方法>
本発明のマウスウォータリング感増強剤(本明細書中、「本発明の増強剤」と称する場合がある)は、下記(A)及び/又は下記(B)の加熱物、あるいは下記(C)を有効成分として含有することを、特徴の一つとする。
(A)(A1)一般式(I):
【0030】
【0031】
〔式中、
R1は、炭素原子数1~6のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zは、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2は、置換基であり;
nは、0~3の整数を示す〕
で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つと、(A2)油脂とを含有する組成物
(B)β-カリオフィレン及びβ-カリオフィレン類縁化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物
(C)β-カリオフィレン含酸素誘導体、リモネンオキシド及びα-テルピネノールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物
【0032】
本明細書中、「一般式(I)で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つ」及び「油脂」を、それぞれ単に「(A1)」及び「(A2)」と称する場合があり、「(A1)と(A2)とを含有する組成物」(すなわち「(A1)一般式(I)で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つと(A2)油脂とを含有する組成物」)を、単に「(A)」又は「組成物(A)」と称する場合があり、「β-カリオフィレン及びβ-カリオフィレン類縁化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物」を、単に「(B)」と称する場合があり、「β-カリオフィレン含酸素誘導体、リモネンオキシド及びα-テルピネノールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物」を、単に「(C)」と称する場合がある。
【0033】
本発明において、「(A)及び/又は(B)の加熱物」とは、(A)及び/又は(B)を加熱して得られる物質を意味する。(A)及び/又は(B)の加熱物は、(A)の加熱物、(B)の加熱物、並びに、(A)及び(B)の加熱物を包含する概念である。ここで「(A)及び(B)の加熱物」には、(A)及び(B)を併せて加熱して得られる物質(例えば、(A1)、(A2)及び(B)を含有する組成物の加熱物等)に加え、個別に調製された(A)の加熱物及び(B)の加熱物を組み合わせたものも包含される。本明細書中、(A)及び/又は(B)の加熱物を、単に「加熱物」と称する場合がある。
【0034】
[組成物(A)]
本発明の(A)は、(A1)一般式(I):
【化12】
【0035】
〔式中、
R1は、炭素原子数1~6のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zは、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2は、置換基であり;
nは、0~3の整数を示す〕
で表される化合物、シクロテン、シクロテン類縁化合物、並びに、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質からなる群より選択される少なくとも一つと、(A2)油脂とを含有する組成物である。
【0036】
[(A1):一般式(I)で表される化合物]
本明細書中、一般式(I)で表される化合物を、「化合物(I)」と称する場合がある。
【0037】
以下、一般式(I)の各基について説明する。
【0038】
本明細書中、「炭素原子数1~6のアシル基」は、直鎖状であってよく、又は分岐を有していてもよい。炭素原子数1~6のアシル基は、飽和であってよく、又は不飽和結合を含んでいてもよい。炭素原子数1~6のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。
【0039】
本明細書中、「炭素原子数1~6のアルキレン基」は、直鎖状であってよく、又は分岐を有していてもよい。炭素原子数1~6のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0040】
一般式(I)におけるR1は、炭素原子数1~6のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基を示す。
【0041】
R1における「炭素原子数1~6のアシル基」の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基等が挙げられ、好ましくはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基であり、より好ましくはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基であり、特に好ましくはホルミル基、アセチル基である。当該アシル基に含まれる炭素原子数は、好ましくは1~4である。
【0042】
一般式(I)におけるR1は、好ましくは、炭素原子数1~4のアシル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり、より好ましくは、ホルミル基、アセチル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり、特に好ましくは、ホルミル基又はアセチル基である。
【0043】
一般式(I)におけるZは、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基を示す。
【0044】
Zにおける「炭素原子数1~6のアルキレン基」の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基であり、より好ましくはメチレン基、エチレン基であり、特に好ましくはメチレン基である。当該アルキレン基に含まれる炭素原子数は、好ましくは1~4である。
【0045】
一般式(I)におけるZは、好ましくは、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基であり、より好ましくは、単結合又メチレン基である。
【0046】
化合物(I)は、一態様として、R1が、炭素原子数1~6のアシル基であり、かつZが、単結合であることが好ましく;R1が、炭素原子数1~4のアシル基であり、かつZが、単結合であることがより好ましく;R1が、ホルミル基又はアセチル基であり、かつZが、単結合であることが特に好ましい。
化合物(I)は、他の一態様として、R1が、ヒドロキシ基又はピロール基であり、かつZが、炭素原子数1~6のアルキレン基であることが好ましく;R1が、ヒドロキシ基又はピロール基であり、かつZが、炭素原子数1~4のアルキレン基であることがより好ましく;R1が、ヒドロキシ基又はピロール基であり、かつZが、メチレン基であることが特に好ましい。
【0047】
一般式(I)におけるR2は、置換基を示す。R2における置換基は特に限定されるものでないが、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等)、炭素原子数3~8のシクロアルキル基(例、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、炭素原子数2~6のアルケニル基(例、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等)、炭素原子数2~6のアルキニル基(例、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等)、炭素原子数1~6のアシル基(例、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等)、炭素原子数1~6のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、炭素原子数1~6のヒドロキシアルキル基(例、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基等)等が挙げられ、好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0048】
一般式(I)におけるnは、0~3の整数を示す。nは、好ましくは0~2の整数を示し、より好ましくは0又は1を示す。
【0049】
一態様として、一般式(I)におけるnが2又は3である場合、複数のR2は、同一であってよく、又は異なっていてもよい。
【0050】
以下に好適な化合物(I)を示す。
【0051】
[化合物(I-A)]
R1が、ホルミル基、アセチル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zが、単結合又はメチレン基であり;
R2が、置換基(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)であり;
nが、0~3の整数を示す
化合物(I)。
【0052】
[化合物(I-B)]
R1が、ホルミル基、アセチル基、ヒドロキシ基又はピロール基であり;
Zが、単結合又はメチレン基であり;
R2が、置換基(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)であり;
nが、0又は1を示す
化合物(I)。
【0053】
[化合物(I-C)]
R1が、炭素原子数1~6のアシル基又はヒドロキシ基であり;
Zが、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2が、置換基(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)であり;
nが、0~3の整数を示す
化合物(I)。
【0054】
[化合物(I-D)]
R1が、ホルミル基、アセチル基又はヒドロキシ基であり;
Zが、単結合又はメチレン基であり;
R2が、置換基(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)であり;
nが、0~3の整数を示す
化合物(I)。
【0055】
[化合物(I-E)]
R1が、ホルミル基、アセチル基又はヒドロキシ基であり;
Zが、単結合又はメチレン基であり;
R2が、置換基(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)であり;
nが、0又は1を示す
化合物(I)。
【0056】
[化合物(I-F)]
R1が、炭素原子数1~6のアシル基又はピロール基であり;
Zが、単結合又は炭素原子数1~6のアルキレン基であり;
R2が、置換基(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)であり;
nが、0~3の整数を示す
化合物(I)。
【0057】
[化合物(I-G)]
R1が、ホルミル基、アセチル基又はピロール基であり;
Zが、単結合又はメチレン基であり;
R2が、置換基(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)であり;
nが、0~3の整数(好ましくは、0又は1)を示す
化合物(I)。
【0058】
[化合物(I-H)]
R1が、ホルミル基、アセチル基又はピロール基であり;
Zが、単結合又はメチレン基であり;
R2が、置換基(好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基)であり;
nが、0又は1を示す
化合物(I)。
【0059】
好適な化合物(I)の具体例としては、
・フルフラール(CAS登録番号:98-01-1等):
【0060】
【0061】
・5-メチルフルフラール(CAS登録番号:620-02-0):
【0062】
【0063】
・2-フリルメチルケトン(CAS登録番号:1192-62-7等):
【0064】
【0065】
・フルフリルアルコール(CAS登録番号:98-00-0等):
【0066】
【0067】
・1-フルフリルピロール(CAS登録番号:1438-94-4等):
【0068】
【0069】
等が挙げられる。中でも、フルフラール、5-メチルフルフラール、2-フリルメチルケトン、フルフリルアルコールが好ましく、明確な効果が得られ、風味質が良いことから、フルフラールがより好ましい。
【0070】
化合物(I)の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で製造でき、例えば合成品又は抽出品等であってよい。また市販品も利用でき、簡便であることから好ましい。
【0071】
本発明において用いられ得る化合物(I)は、一態様として、化学合成法によって製造された化学合成品、あるいは、化合物(I)を含有する素材から抽出、精製された単離品であってよい。化合物(I)を含有する素材としては、例えば、農畜水産品等の天然物(例、糖蜜、シロップ、樹液の濃縮物、サトウキビ、甜菜、麦芽等);微生物を培養して得られた培養液、菌体等の発酵生産物;及び、それらの加工品(例、糖異性化物、でんぷん分解物等)等が挙げられる。
本発明は、化合物(I)の化学合成品、単離品に代替して、あるいは、当該化学合成品、単離品に加えて、化合物(I)を含有する素材を、そのまま又は所望の程度に精製して用いてもよい。当該素材における化合物(I)の含有量は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)により測定され得る。
【0072】
[(A1):シクロテン]
本発明において用いられ得るシクロテン(一般に、メチルシクロペンテノロン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテノン等とも称される)は、下記式で表される化合物である(CAS登録番号:80-71-7)。
【0073】
【0074】
本発明において用いられ得るシクロテンの製造方法は特に制限されず、自体公知の方法(例えば、化学合成法、酵素法、発酵法、抽出法等)又はこれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。シクロテンは市販品を用いてもよい。
【0075】
本発明において用いられ得るシクロテンは、一態様として、化学合成法によって製造された化学合成品、あるいは、シクロテンを含有する素材から抽出、精製された単離品であってよい。シクロテンを含有する素材としては、例えば、農畜水産品等の天然物(例、メープル、ウォールナッツ等);微生物を培養して得られた培養液、菌体等の発酵生産物;及び、それらの加工品(例、燻煙剤、カラメルソース、ワイン、和三盆糖等)等が挙げられる。
本発明は、シクロテンの化学合成品、単離品に代替して、あるいは、当該化学合成品、単離品に加えて、シクロテンを含有する素材を、そのまま又は所望の程度に精製して用いてもよい。当該素材におけるシクロテンの含有量は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)により測定され得る。
【0076】
[(A1):シクロテン類縁化合物]
本発明において「シクロテン類縁化合物」とは、シクロテンと構造、性質が類似した化合物をいい、例えば、少なくとも1個のオキソ基(=O)を環上に有する環状構造(炭素環、複素環)を有する、下記の一般式(I):
【0077】
【0078】
〔式中、
環Aは、5員又は6員の、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環であり;
R3は、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基であるとき、当該炭化水素基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4は、炭素原子数1~8の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mは、1~3の整数を示す〕
で表される化合物(シクロテンを除く)等が挙げられる。
本明細書中、一般式(II)で表される化合物を、「化合物(II)」と称する場合がある。
以下、一般式(II)の各基について説明する。
【0079】
本明細書中、「炭化水素基」は、飽和又は不飽和であってよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基等が挙げられる。
【0080】
本明細書中、「炭素原子数1~8のアルキル基」は、直鎖状であってよく、又は分岐を有していてもよい。炭素原子数1~8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0081】
本明細書中、「炭素原子数2~8のアルケニル基」は、直鎖状であってよく、又は分岐を有していてもよい。炭素原子数2~8のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘプテニル基、1-オクテニル基等が挙げられる。
【0082】
本明細書中、「炭素原子数2~8のアルキニル基」は、直鎖状であってよく、又は分岐を有していてもよい。炭素原子数2~8のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、1-オクチニル基等が挙げられる。
【0083】
本明細書中、「炭素原子数1~8のアルキリデン基」は、直鎖状であってよく、又は分岐を有していてもよい。炭素原子数1~8のアルキリデン基の具体例としてはメチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基等が挙げられる。
【0084】
本明細書中、「置換基を有していてもよい」とは、無置換であるか、あるいは、置換可能な位置に1個又は2個以上の置換基を有することを意味し、2個以上の置換基を有する場合の各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0085】
本明細書中、「置換基を有していてもよい」の「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、オキソ基等が挙げられる。当該置換基は、さらに上記置換基で置換されていてもよい。
【0086】
本明細書中、「炭素原子数1~4のアルコキシ基」は、直鎖状であってよく、又は分岐を有していてもよい。炭素原子数1~4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0087】
本明細書中、「炭素原子数1~4のアシルオキシ基」の具体例としては、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。
【0088】
一般式(II)における環Aは、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環を示し、好ましくは、飽和又は不飽和の、炭素環又は含酸素複素環である。環Aの員数は、5又は6であり、好ましくは5である。環Aが含酸素又は含窒素複素環である場合、当該複素環のヘテロ原子数は、1又は2であり、好ましくは1である。
【0089】
環Aは、一態様として、5員の、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環であってよい。
環Aは、他の一態様として、5員又は6員の、飽和又は不飽和の、炭素環又は含酸素複素環(好ましくは、炭素環又はヘテロ原子数が1である含酸素複素環)であってよい。
環Aは、他の一態様として、5員の、飽和又は不飽和の、炭素環又は含酸素複素環(好ましくは、炭素環又はヘテロ原子数が1である含酸素複素環)であってよい。
【0090】
環Aの具体例としては、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、1,3-シクロヘキサジエン環、1,4-シクロヘキサジエン環、ベンゼン環等の炭素環;テトラヒドロフラン環、2,3-ジヒドロフラン環、2,5-ジヒドロフラン環、フラン環、テトラヒドロピラン環、2H-ピラン環、4H-ピラン環等の含酸素複素環;ピロリジン環、ピペリジン環等の含窒素複素環等が挙げられる。
【0091】
環Aは、一般式(II)に示される通り、少なくとも1個のオキソ基で置換されている。
【0092】
一般式(II)におけるR3及びR4は、いずれも環Aの置換可能な位置に結合する置換基である。R3及びR4は、それぞれ異なる原子(炭素原子、ヘテロ原子)に結合していてよく、又は、置換可能であれば同一の炭素原子に結合していてもよい。
【0093】
一般式(II)におけるR3は、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基又は水素原子を示す。
【0094】
R3における「炭素原子数1~4のアルコキシ基」の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基である。当該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~3であり、より好ましくは1、2である。
【0095】
R3における「炭素原子数1~4のアシルオキシ基」の具体例としては、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられ、好ましくはホルミルオキシ基、アセトキシ基である。当該アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~3であり、より好ましくは1、2である。
【0096】
R3における「置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基」の「炭素原子数1~8の炭化水素基」としては、例えば、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数2~8のアルキニル基、炭素原子数1~8のアルキリデン基等が挙げられ、好ましくは、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数2~8のアルケニル基である。
【0097】
R3における「炭素原子数1~8のアルキル基」の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。当該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~5であり、更に好ましくは1~4であり、特に好ましくは1~3である。
【0098】
R3における「炭素原子数2~8のアルケニル基」の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-ヘプテニル基、1-オクテニル基等が挙げられ、好ましくはエテニル基、1-メチルエテニル基である。当該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~5であり、更に好ましくは2~4であり、特に好ましくは2、3である。
【0099】
R3における「炭素原子数2~8のアルキニル基」の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、1-オクチニル基等が挙げられ、好ましくはエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基である。当該アルキニル基の炭素原子数は、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~5であり、更に好ましくは2~4であり、特に好ましくは2、3である。
【0100】
R3における「炭素原子数1~8のアルキリデン基」の具体例としてはメチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基等が挙げられ、好ましくはメチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基である。当該アルキリデン基の炭素原子数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~5であり、更に好ましくは1~4であり、特に好ましくは1~3である。
【0101】
R3における「置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基」の「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、オキソ基等が挙げられ、中でも、酸素原子を含む置換基(例、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基等)が好ましい。R3における「炭素原子数1~8の炭化水素基」が置換基を有する場合、置換基の数は、置換可能な数であれば特に限定されないが、好ましくは1~3個であり、より好ましくは1個又は2個である。R3における「炭素原子数1~8の炭化水素基」が2個以上の置換基を有する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0102】
一般式(II)におけるR3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基であるとき、当該炭化水素基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよい。
【0103】
R3は、好ましくは、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基(例、メトキシ基等)、炭素原子数1~4のアシルオキシ基(例、アセトキシ基等)、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の炭化水素基(例、アルキル基、アルケニル基等)又は水素原子であり、より好ましくは、オキソ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、アセトキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8のアルキル基(例、メチル基、エチル基、ヘプチル基、オクチル基等)、置換基を有していてもよい炭素原子数2~8のアルケニル基(例、1-メチルエテニル基等)又は水素原子であり、特に好ましくは、オキソ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、アセトキシ基、置換基(例、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基等)を有していてもよいメチル基、置換基(例、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基等)を有していてもよいエチル基、イソプロペニル基、ヘプチル基、オクチル基又は水素原子である。
【0104】
一般式(II)におけるR4は、炭素原子数1~8の炭化水素基、ヒドロキシ基又は水素原子を示す。
【0105】
R4は、好ましくは、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルキリデン基、ヒドロキシ基又は水素原子であり、より好ましくは、炭素原子数1~8のアルキル基(例、メチル基、エチル基、ペンチル基等)、炭素原子数1~8のアルキリデン基(例、プロピリデン基等)、ヒドロキシ基又は水素原子であり、特に好ましくは、メチル基、ペンチル基、プロピリデン基、ヒドロキシ基又は水素原子である。
【0106】
一般式(II)におけるmは、1~3の整数を示す。mは、好ましくは1、2を示し、より好ましくは1を示す。
【0107】
一態様として、一般式(II)におけるmが2又は3である場合、複数のR4は、同一であってよく、又は異なっていてもよい。
【0108】
以下に好適な化合物(II)を示す。
【0109】
[化合物(II-A)]
環Aが、5員又は6員の、飽和又は不飽和の炭素環であり;
R3が、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~8(好ましくは、2~6)のアルケニル基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数2~8(好ましくは、2~6)のアルケニル基であるとき、当該アルキル基又はアルケニル基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4が、炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基、炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキリデン基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mが、1~3の整数(好ましくは、1、2)を示す、化合物(II)。
【0110】
[化合物(II-B)]
環Aが、5員又は6員の、飽和又は不飽和の含酸素複素環であり;
R3が、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~8(好ましくは、2~6)のアルケニル基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数2~8(好ましくは、2~6)のアルケニル基であるとき、当該アルキル基又はアルケニル基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4が、炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基、炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキリデン基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mが、1~3の整数(好ましくは、1、2)を示す、化合物(II)。
【0111】
[化合物(II-C)]
環Aが、5員又は6員の、飽和又は不飽和の含窒素複素環であり;
R3が、オキソ基、ヒドロキシ基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、炭素原子数1~4のアシルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~8(好ましくは、2~6)のアルケニル基又は水素原子であり、R3が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数2~8(好ましくは、2~6)のアルケニル基であるとき、当該アルキル基又はアルケニル基中の炭素原子は、環Aの炭素原子と結合して、架橋構造、あるいは、飽和又は不飽和の環構造を形成していてもよく;
R4が、炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキル基、炭素原子数1~8(好ましくは、1~6)のアルキリデン基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
mが、1~3の整数(好ましくは、1、2)を示す、化合物(II)。
【0112】
化合物(II)は、一態様として、下記の一般式(IIa):
【0113】
【0114】
〔式中、
環Aaは、5員又は6員の、飽和又は不飽和の、炭素環あるいは含酸素又は含窒素複素環であり;
R3aは、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
R4aは、炭素原子数1~8のアルキル基又は水素原子を示す〕
で表される化合物(シクロテンを除く)であってよい。
本明細書中、一般式(IIa)で表される化合物を、「化合物(Ia)」と称する場合がある。
以下、一般式(IIa)の各基について説明する。
【0115】
一般式(IIa)における環Aaは、一般式(II)における環Aと同様のものであり、好適な態様や具体例も同様である。
【0116】
環Aaは、一般式(IIa)に示される通り、少なくとも1個のオキソ基で置換されている。
【0117】
一般式(IIa)中、
【0118】
【0119】
で表される部分は、以下から選択されることが好ましい。
【0120】
【0121】
中でも、一般式(IIa)における前記部分は、以下から選択されることがより好ましい。
【0122】
【0123】
一般式(IIa)における前記部分は、以下から選択されることが特に好ましい。
【0124】
【0125】
一般式(IIa)におけるR3a及びR4aは、いずれも環Aaの置換可能な位置に結合する置換基である。R3a及びR4aは、それぞれ異なる原子(炭素原子、ヘテロ原子)に結合していてよく、又は、置換可能であれば同一の炭素原子に結合していてもよい。
【0126】
一般式(IIa)におけるR3aは、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子を示す。R3aは、好ましくはヒドロキシ基又は水素原子である。
【0127】
一般式(IIa)におけるR4aは、炭素原子数1~8のアルキル基又は水素原子を示す。
【0128】
R4aにおける「炭素原子数1~8のアルキル基」の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基である。当該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~5であり、更に好ましくは1~4であり、特に好ましくは1~3である。
【0129】
R4aは、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基又は水素原子であり、より好ましくは、炭素原子数1~4のアルキル基又は水素原子であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又は水素原子であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基又は水素原子である。
【0130】
以下に好適な化合物(IIa)を示す。
【0131】
[化合物(IIa-A)]
環Aaが、5員又は6員の、飽和又は不飽和の炭素環であり;
R3aが、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
R4aが、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す、化合物(IIa)。
【0132】
[化合物(IIa-B)]
環Aaが、5員又は6員の、飽和又は不飽和の含酸素複素環であり;
R3aが、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
R4aが、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す、化合物(IIa)。
【0133】
[化合物(IIa-C)]
環Aaが、5員又は6員の、飽和又は不飽和の含窒素複素環であり;
R3aが、水素原子であり;
R4aが、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す、化合物(IIa)。
【0134】
[化合物(IIa-D)]
一般式(IIa)中
【0135】
【0136】
で表される部分が、以下から選択され;
【0137】
【0138】
R3aが、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
R4aが、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す、化合物(IIa)。
【0139】
[化合物(IIa-E)]
一般式(IIa)中
【0140】
【0141】
で表される部分が、以下から選択され;
【0142】
【0143】
R3aが、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
R4aが、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す、化合物(IIa)。
【0144】
[化合物(IIa-F)]
以下から選択される一般式で表される、化合物(IIa);
【0145】
【0146】
〔各式中、
R3aは、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子(好ましくは、ヒドロキシ基又は水素原子)であり;
R4aは、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す〕。
【0147】
[化合物(IIa-G)]
以下から選択される一般式で表される、化合物(IIa);
【0148】
【0149】
〔各式中、
R3aは、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
R4aは、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す〕。
【0150】
[化合物(IIa-H)]
以下から選択される一般式で表される、化合物(IIa);
【0151】
【0152】
〔各式中、
R3aは、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子であり;
R4aは、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す〕。
【0153】
[化合物(IIa-I)]
以下から選択される一般式で表される、化合物(IIa);
【0154】
【0155】
〔各式中、
R4aは、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す〕。
【0156】
[化合物(IIa-J)]
以下から選択される一般式で表される、化合物(IIa);
【0157】
【0158】
〔各式中、
R3aは、オキソ基、ヒドロキシ基又は水素原子(好ましくは、ヒドロキシ基又は水素原子)であり;
R4aは、炭素原子数1~6(好ましくは、1~4)のアルキル基又は水素原子を示す〕。
【0159】
好適な化合物(II)の具体例としては、
・3-メチル-2-シクロペンテノン(CAS登録番号:2758-18-1):
【0160】
【0161】
・γ-ブチロラクトン(CAS登録番号:96-48-0):
【0162】
【0163】
・2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン(CAS登録番号:3188-00-9):
【0164】
【0165】
・α-アンゲリカラクトン(CAS登録番号:591-12-8):
【0166】
【0167】
・エチルシクロペンテノロン(CAS登録番号:21835-01-8):
【0168】
【0169】
・3-メチル-1,2-シクロヘキサンジオン(CAS登録番号:3008-43-3):
【0170】
【0171】
・マルトール(CAS登録番号:118-71-8):
【0172】
【0173】
・テトラヒドロピラン-3-オン(CAS登録番号:23462-75-1):
【0174】
【0175】
・2,5-シクロヘキサジエン-1-オン(CAS登録番号:5664-33-5):
【0176】
【0177】
・4-メチルピロリジン-2-オン(CAS登録番号:2996-58-9、3級炭素がS体の場合;31551-66-3、3級炭素がR体の場合;260061-31-2):
【0178】
【0179】
・2-メチル-2,4-シクロペンタジエン-1-オン(CAS登録番号:94618-71-0):
【0180】
【0181】
・4-エチルピペリジン-2-オン(CAS登録番号:50549-26-3):
【0182】
【0183】
・1-メチルピペリジン-3-オン(CAS登録番号:5519-50-6):
【0184】
【0185】
・テトラヒドロ-3-メチルピラン-2-オン(CAS登録番号:10603-03-9):
【0186】
【0187】
・ジヒドロ-5-オクチル-2(3H)-フラノン(CAS登録番号:2305-05-7):
【0188】
【0189】
・6-ヘプチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(CAS登録番号:713-95-1):
【0190】
【0191】
・2,5-ジメチル-4-メトキシ-3(2H)-フラノン(CAS登録番号:4077-47-8):
【0192】
【0193】
・D-erythro-ヘキサ-2-エノン酸γ-ラクトン(CAS登録番号:89-65-6):
【0194】
【0195】
・4-(アセトキシ)-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン(CAS登録番号:4166-20-5):
【0196】
【0197】
・3-オキソ-2-ペンチル-1-シクロペンタン酢酸メチル(CAS登録番号:24851-98-7):
【0198】
【0199】
・4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2(5H)-フラノン(CAS登録番号:28664-35-9):
【0200】
【0201】
・3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン(CAS登録番号:13494-06-9):
【0202】
【0203】
・(1R,4R)-1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン(CAS登録番号:464-49-3):
【0204】
【0205】
・3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-2-オン(CAS登録番号:119-84-6):
【0206】
【0207】
・(5R)-2-メチル-5-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-オン(CAS登録番号:6485-40-1):
【0208】
【0209】
・3-プロピリデン-1(3H)-イソベンゾフラノン(CAS登録番号:17369-59-4):
【0210】
【0211】
・3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン(CAS登録番号:78-59-1):
【0212】
【0213】
等が挙げられる。中でも、マウスウォータリング感を特に効果的に向上し得る加熱物が得られることから、3-メチル-2-シクロペンテノン、γ-ブチロラクトン、2-メチルテトラヒドロフラン-3-オン、α-アンゲリカラクトン、エチルシクロペンテノロン、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジオン、マルトールが好ましい。
【0214】
シクロテン類縁化合物の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で製造できる。例えば、シクロテン類縁化合物は、コーヒー豆等植物からの抽出(MA. Gianturco, AS. Giammarino, R.G. Pitcher,Tetrahedron 19 2051 (1963))、木材の高温処理(J. Meyerfeld, Chem. Ztg. 36 549 (1912))又は熱アルカリ処理(T. Enkvist, B. Alfredsson, M. Merikallio, P.Paakonen, O. Jarrela, Acta. Chem. Scand. 8 51 (1954))、糖類の加熱処理(国際公開第2014/157381号;K. Heyns, R. Stute & H. Paulsen, Carbohydrate Res.,2, 132 (1966);R. R. Johnson, E. D. Alford & G. W. Kinzer, J. Agr.Food Chem., 17, 22 (1969);清水康夫,松任茂樹,水沼保之,岡田郁之助,食品工誌,17, 385, 391, 397 (1970))等の方法又はそれに準ずる方法で得ることができる。シクロテン類縁化合物は市販品も利用できる。
【0215】
本発明において用いられ得るシクロテン類縁化合物は、一態様として、化学合成法によって製造された化学合成品、あるいは、シクロテン類縁化合物を含有する素材から抽出、精製された単離品であってよい。
本発明は、シクロテン類縁化合物の化学合成品、単離品に代替して、あるいは、当該化学合成品、単離品に加えて、シクロテン類縁化合物を含有する素材を、そのまま又は所望の程度に精製して用いてもよい。当該素材におけるシクロテン類縁化合物の含有量は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)により測定され得る。
【0216】
[(A1):加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質]
本発明において、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質とは、その物質自体はシクロテン及びシクロテン類縁化合物を含有しないが、加熱されることでシクロテン及び/又はシクロテン類縁化合物が生成し得る物質(換言すると、加熱されることでシクロテン及び/又はシクロテン類縁化合物を含有するものになり得る物質)をいう。加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質は、一種類の物質からなるものであってよく、又は複数の種類(例、二種類以上)の物質が組み合わせられたものであってもよい。
【0217】
加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質の具体例としては、単糖(例、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース等)、二糖(例、シュークロース、マルトース、ラクトース等)、オリゴ糖、多糖(例、デンプン、セルロース、ヘミセルロース等)の糖が挙げられ、好ましくは単糖、二糖であり、より好ましくは、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース、ラクトースであり、更に好ましくはキシロース、グルコース、フラクトースであり、特に好ましくはフラクトースである。これらは単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0218】
加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質として、糖(例えば、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖等)が用いられる場合、アミノ酸又はその塩を併せて用いてよい。すなわち、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、糖(例えば、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖等)を含む場合、当該物質は、アミノ酸又はその塩を更に含むものであってよい。加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が、糖に加えて、アミノ酸又はその塩を更に含むことにより、シクロテン又はシクロテン類縁化合物の生成効率が向上し得る。
【0219】
加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が含み得るアミノ酸又はその塩としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン、ヒスチジン及びそれらの塩等が挙げられる。本発明において用いられ得るアミノ酸にはD体とL体とが存在するが、本発明はそのどちらを用いてもよく、ラセミ混合物であるDL体を用いてもよい。
【0220】
本発明において用いられ得るアミノ酸の塩は、可食性であれば特に限定されないが、例えば、カルボキシル基等の酸性基に対しては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;アルミニウム塩;亜鉛塩;トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロヘキシルアミン等の有機アミンとの塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。
また、アミノ基等の塩基性基に対しては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩;酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩等が挙げられる。
【0221】
加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が含み得るアミノ酸又はその塩は、好ましくはアスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムであり、より好ましくはグルタミン酸ナトリウムである。
【0222】
加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質は、好ましくは、リボース、キシロース、アラビノース、グルコース、フラクトース、シュークロース、マルトース及びラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖と、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、バリン及びヒスチジン、並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸又はその塩とを含み;より好ましくは、キシロース、グルコース及びフラクトースからなる群より選択される少なくとも一つの糖と、アスパラギン酸及びグルタミン酸、並びにそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸又はその塩とを含み;特に好ましくは、フラクトースと、アスパラギン酸ナトリウム又はグルタミン酸ナトリウムとを含む。
【0223】
加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で製造できる。また、市販品を用いてもよい。
【0224】
加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質は、一態様として、化学合成法によって製造された化学合成品、あるいは、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質を含有する素材から抽出、精製された単離品であってよい。例えば、アミノ酸は、アミノ酸を含有する素材(例、酵母エキス、たん白加水分解物等)から抽出、精製された単離品であってよい。
本発明は、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質の化学合成品、単離品に代替して、あるいは、当該化学合成品、単離品に加えて、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質を含有する素材を、そのまま又は所望の程度に精製して用いてもよい。当該素材におけるシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質の含有量は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)により測定され得る。
【0225】
[(A2):油脂]
本発明において「油脂」とは、アシルグリセロール(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド等)を主成分とする物質をいい、一般に常温で流動性を有するものを「油」、流動性を有しないものを「脂肪」と呼ぶ場合があるが、それらの両方を包含する概念である。本発明において用いられ得る油脂としては、例えば、菜種油、コーン油、大豆油、ごま油、米油、糠油、紅花油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、荏油、えごま油、アマニ油、オリーブ油、グレープシード油、中鎖脂肪酸油等の植物油脂;豚脂(ラード)、牛脂、鶏油、羊脂、馬脂、魚油、鯨油等の動物油脂等が挙げられる。また、上述の油脂をエステル交換したエステル交換油、上述の油脂に水素添加した硬化油等も用いることができる。上述の油脂は精製されたもの(例、サラダ油等)であってよい。これらの油脂は単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0226】
組成物(A)は、本発明の目的を損なわない限り(A1)及び(A2)以外の成分(例、水等)を含有してよいが、組成物(A)における(A1)及び(A2)の含有量の合計は、組成物(A)に対して、好ましくは15重量%以上であり、より好ましくは35重量%以上であり、特に好ましくは85重量%以上である。組成物(A)における(A1)及び(A2)の含有量の合計の上限は特に制限されず、100重量%であってよい(すなわち、組成物(A)は、(A1)及び(A2)のみからなるものであってよい)。
【0227】
組成物(A)に含有される(A1)の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)(すなわち、油脂)の量に対して、好ましくは0.001重量ppm以上であり、より好ましくは0.005重量ppm以上であり、更に好ましくは1重量ppm以上であり、特に好ましくは10重量ppm以上である。この場合、組成物(A)に含有される(A1)の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)の量に対して、好ましくは200000重量ppm以下であり、より好ましくは100000重量ppm以下であり、更に好ましくは25000重量ppm以下であり、特に好ましくは10000重量ppm以下である。
【0228】
一態様として、(A1)が少なくとも化合物(I)を含む場合、組成物(A)に含有される化合物(I)の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)(すなわち、油脂)の量に対して、好ましくは0.005重量ppm以上であり、より好ましくは0.5重量ppm以上であり、特に好ましくは50重量ppm以上である。この場合、組成物(A)に含有される化合物(I)の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)の量に対して、好ましくは25000重量ppm以下であり、より好ましくは15000重量ppm以下であり、特に好ましくは12000重量ppm以下である。
【0229】
一態様として、(A1)が少なくともシクロテンを含有する場合、組成物(A)に含有されるシクロテンの量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)(すなわち、油脂)の量に対して、好ましくは0.001重量ppm以上であり、より好ましくは0.005重量ppm以上であり、更に好ましくは1重量ppm以上であり、特に好ましくは10重量ppm以上である。この場合、組成物(A)に含有されるシクロテンの量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)の量に対して、好ましくは10000重量ppm以下であり、より好ましくは1000重量ppm以下であり、特に好ましくは500重量ppm以下である。
【0230】
一態様として、(A1)が少なくともシクロテン類縁化合物を含有する場合、組成物(A)に含有されるシクロテン類縁化合物の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)(すなわち、油脂)の量に対して、好ましくは0.001重量ppm以上であり、より好ましくは0.005重量ppm以上であり、更に好ましくは1重量ppm以上であり、特に好ましくは10重量ppm以上である。この場合、組成物(A)に含有されるシクロテン類縁化合物の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)の量に対して、好ましくは10000重量ppm以下であり、より好ましくは1000重量ppm以下であり、特に好ましくは500重量ppm以下である。
【0231】
一態様として、(A1)が少なくとも、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質を含有し、当該物質が糖を含む場合、組成物(A)に含有される糖の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)(すなわち、油脂)の量に対して、好ましくは1重量ppm以上であり、より好ましくは10重量ppm以上であり、特に好ましくは50重量ppm以上である。この場合、組成物(A)に含有される糖の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)の量に対して、好ましくは200000重量ppm以下であり、より好ましくは500重量ppm以下であり、特に好ましくは150重量ppm以下である。
また、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質が糖に加えてアミノ酸又はその塩も含む場合、組成物(A)に含有されるアミノ酸又はその塩の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)の量に対して、好ましくは1重量ppm以上であり、より好ましくは10重量ppm以上であり、特に好ましくは50重量ppm以上である。この場合、組成物(A)に含有されるアミノ酸又はその塩の量は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、組成物(A)に含有される(A2)の量に対して、好ましくは200000重量ppm以下であり、より好ましくは500重量ppm以下であり、特に好ましくは150重量ppm以下である。
【0232】
一態様として、(A1)が少なくとも、加熱によりシクロテン又はシクロテン類縁化合物を生成し得る物質を含有し、当該物質が糖並びにアミノ酸又はその塩を含む場合、組成物(A)に含有される糖とアミノ酸又はその塩の重量比(糖:アミノ酸又はその塩)は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、好ましくは1:0.02~50であり、より好ましくは1:0.05~20であり、特に好ましくは1:0.1~10である。
【0233】
(A)の加熱物を得るための(A)の加熱方法は特に制限されず、例えば、(A)を直接に加熱するものであってよく、あるいは、(A)を例えば溶媒、分散媒等の媒体に、溶解又は分散させた後、これを加熱するもの、すなわち(A)を媒体中で加熱するものであってもよい。(A)を媒体中で加熱する場合、静置条件下で加熱してよく、又は適宜、撹拌しながら加熱してもよい。また(A)は、本発明の目的を損なわない限り、媒体以外の成分(例、(B)等)の共存下で加熱してもよい。(A)の加熱は、常圧下で行ってよく、又は加圧下で行ってもよい。
【0234】
(A)の加熱温度は、加熱時間等に応じて適宜調整してよいが、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、好ましくは40~200℃であり、より好ましくは50~150℃であり、更に好ましくは、50~120℃であり、特に好ましくは80~120℃である。
【0235】
(A)の加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜調整してよいが、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、好ましくは0.1~3840分間であり、より好ましくは2.5~3840分間であり、より好ましくは3.5~600分間であり、特に好ましくは8~100分間である。
【0236】
(A)を媒体中で加熱する場合、得られた(A)の加熱物は、媒体から分離して用いられてよい。又は、例えば加熱に用いた媒体が食品材料として使用され得るもの等である場合は、得られた(A)の加熱物を媒体から分離せずに、当該媒体ごと用いられてよい。
【0237】
[(B)]
本発明の(B)は、β-カリオフィレン及びβ-カリオフィレン類縁化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物である。
【0238】
[(B):β-カリオフィレン]
本発明において用いられ得るβ-カリオフィレン(CAS登録番号:87-44-5)の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法(例えば、化学合成法、酵素法、発酵法、抽出法等)又はこれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。β-カリオフィレンは市販品を用いてもよい。
【0239】
本発明において用いられ得るβ-カリオフィレンは、一態様として、化学合成法によって製造された化学合成品、あるいは、β-カリオフィレンを含有する素材から抽出、精製された単離品であってよい。β-カリオフィレンを含有する素材としては、例えば、農畜水産品等の天然物(例、黒胡椒、ラベンダー、ローズマリー、イランイラン、クローブ、バジル、オレガノ、シナモン、ホップ等);微生物を培養して得られた培養液、菌体等の発酵生産物;及び、それらの加工品等が挙げられる。
本発明は、β-カリオフィレンの化学合成品、単離品に代替して、あるいは、当該化学合成品、単離品に加えて、β-カリオフィレンを含有する素材を、そのまま又は所望の程度に精製して用いてもよい。当該素材におけるβ-カリオフィレンの含有量は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)により測定され得る。
【0240】
[(B):β-カリオフィレン類縁化合物]
本発明において「β-カリオフィレン類縁化合物」とは、β-カリオフィレンと構造、性質が類似した化合物を意味し、例えば、イソカリオフィレン(CAS登録番号:118-65-0)、β-ピネン(CAS登録番号:127-91-3、18172-67-3等)、サビネン(CAS登録番号:3387-41-5)、オイゲノール(CAS登録番号:97-53-0)、リモネン(CAS登録番号:5989-27-5等)、リナロール(CAS登録番号:78-70-6等)、リナロールオキシド(CAS登録番号:60047-17-8等)、p-シメン(CAS登録番号:99-87-6等)、ファルネセン(CAS登録番号:502-61-4、26560-14-5等)、ミルセン(CAS登録番号:123-35-3等)、オシメン(CAS登録番号:13877-91-3等)、α-フェランドレン(CAS登録番号:99-83-2等)、α-テルピネン(CAS登録番号:99-86-5)、γ-テルピネン(CAS登録番号:99-85-4)、テルピノレン(CAS登録番号:586-62-9等)等のテルペン系炭化水素類;4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール(CAS登録番号:6627-88-9)、4-ビニルフェノール(CAS登録番号:2628-17-3等)等のフェノール類等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0241】
β-カリオフィレン類縁化合物の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で製造でき、例えば合成品又は抽出品等であってよい。また、β-カリオフィレン類縁化合物は市販品も利用できる。
【0242】
本発明において用いられ得るβ-カリオフィレン類縁化合物は、一態様として、化学合成法によって製造された化学合成品、あるいは、β-カリオフィレン類縁化合物を含有する素材から抽出、精製された単離品であってよい。
本発明は、β-カリオフィレン類縁化合物の化学合成品、単離品に代替して、あるいは、当該化学合成品、単離品に加えて、β-カリオフィレン類縁化合物を含有する素材を、そのまま又は所望の程度に精製して用いてもよい。当該素材におけるβ-カリオフィレン類縁化合物の含有量は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)により測定され得る。
【0243】
(B)の加熱物を得るための(B)の加熱方法は特に制限されず、例えば、(B)を直接に加熱するものであってよく、あるいは、(B)を例えば溶媒、分散媒等の媒体に、溶解又は分散させた後、これを加熱するもの、すなわち(B)を媒体中で加熱するものであってもよい。(B)を媒体中で加熱する場合、静置条件下で加熱してよく、又は適宜、撹拌しながら加熱してもよい。また(B)は、本発明の目的を損なわない限り、媒体以外の成分(例、(A)等)の共存下で加熱してもよい。(B)の加熱は、常圧下で行ってよく、又は加圧下で行ってもよい。
【0244】
(B)の加熱温度及び加熱時間は、上述の(A)の加熱温度及び加熱時間と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0245】
本発明において用いられ得る(B)の加熱物は、(B)をどのような方法で加熱したものであってもよく、例えば、(B)を媒体中で加熱して得られるもの等であってよい。一態様として、(B)を媒体中で加熱する場合、用いられる媒体は特に制限されないが、例えば、油脂、脂肪酸(例、酢酸、イソ吉草酸等)、ステロール、カロテノイド、リン脂質、糖脂質、ろう等の脂質類;グリセロール、脂肪族アルコール、炭化水素油(例、ミネラルオイル等)、エタノール、ポリエチレングリコール、水、無機酸(例、塩酸、硫酸等)が挙げられる。(B)の加熱物のうち、油脂を含有する媒体中で(B)を加熱したものを、本発明において「(B)の油中加熱物」と称する場合がある。
【0246】
(B)の加熱に用いられ得る油脂としては、例えば、菜種油、コーン油、大豆油、ごま油、米油、糠油、紅花油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、荏油、えごま油、アマニ油、オリーブ油、グレープシード油、中性脂肪酸油等の植物油脂;豚脂(ラード)、牛脂、鶏油、羊脂、馬脂、魚油、鯨油等の動物油脂等が挙げられる。また、上述の油脂をエステル交換したエステル交換油、上述の油脂に水素添加した硬化油等も用いることができる。上述の油脂は精製されたもの(例、サラダ油等)であってよい。これらの油脂は単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0247】
油脂を含有する媒体中で(B)を加熱する場合、当該媒体は、本発明の目的を損なわない限り油脂以外の成分(例、水等)を含有してよいが、当該媒体における油脂の含有量は、当該媒体に対して、好ましくは15重量%以上であり、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、より好ましくは35重量%以上であり、特に好ましくは85重量%以上である。この場合、媒体における油脂の含有量の上限は特に制限されず、100重量%であってよい(すなわち、(B)の加熱に用いられる媒体は、油脂のみからなるものであってよい)。
【0248】
本発明において用いられ得る(B)の加熱物が、(B)を媒体(例、油脂等)中で加熱して得られるものである場合、加熱時の媒体中の(B)の濃度は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、好ましくは1重量ppm以上であり、より好ましくは10重量ppm以上であり、特に好ましくは50重量ppm以上である。この場合、加熱時の媒体中の(B)の濃度は、マウスウォータリング感増強効果に優れる加熱物を得ることができることから、好ましくは100000重量ppm以下であり、より好ましくは50000重量ppm以下であり、特に好ましくは15000重量ppm以下である。
【0249】
(B)を媒体(例、油脂等)中で加熱する場合、得られた(B)の加熱物は、媒体から分離して、本発明の増強剤に用いられてよい。又は、例えば加熱に用いた媒体が食品材料として使用され得るもの等である場合は、得られた(B)の加熱物を媒体から分離せずに、当該媒体ごと用いられてよい。
【0250】
本発明の増強剤が、一態様として、(A)及び(B)の加熱物を含有し、当該加熱物が、(A)及び(B)を併せて加熱して得られるものである場合、(B)を加熱するための媒体として、組成物(A)に含有される(A2)を用いてよい(例えば、(A)及び(B)の加熱物は、(A1)、(A2)及び(B)を含有する組成物を加熱して得られるもの等であってよい)。この場合、(A2)に対する(B)の量は、上記の加熱時の媒体中の(B)の濃度と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0251】
本発明の増強剤が、一態様として、(A)及び(B)の加熱物((A)及び(B)を併せて加熱して得られるもの、あるいは、個別に調製された(A)の加熱物及び(B)の加熱物を組み合わせたもの)を含有する場合、当該加熱物を得るために加熱された(A1)と(B)の重量比は、特に制限されないが、好ましくは1:0.01~15000であり、より好ましくは1:0.1~10であり、特に好ましくは1:0.2~5である。
【0252】
[(C)]
本発明の(C)は、β-カリオフィレン含酸素誘導体、リモネンオキシド(CAS登録番号:1195-92-2等)及びα-テルピネノール(CAS登録番号:98-55-5)からなる群より選択される少なくとも一つの化合物である。
【0253】
本発明の(C)として用いられる「β-カリオフィレン含酸素誘導体」とは、β-カリオフィレンの一部分又は複数の部分を、官能基の導入、原子の置換、又はその他の化学反応によって変化させて得られる化合物(β-カリオフィレン誘導体)のうち、分子内に酸素原子を有するものをいう。β-カリオフィレン含酸素誘導体の具体例としては、β-カリオフィレンオキシド(CAS登録番号:1139-30-6)、β-カリオフィレノール((1R,3Z,5R,9S)-4,11,11-トリメチル-8-メチレンビシクロ-[7.2.0]ウンデス-3-エン-5-オール)、β-カリオフィレンジオール((1R,4R,5R,9S)-4,11,11-トリメチル-8-メチレンビシクロ-[7.2.0]ウンデカン-4,5-ジオール)、クロバンジオール(CAS登録番号:2649-64-1)等が挙げられる。
【0254】
本発明において用いられ得る(C)の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法(例えば、化学合成法、酵素法、発酵法、抽出法等)又はこれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。成分(C)は市販品を用いてもよい。
【0255】
本発明において用いられ得る(C)は、一態様として、化学合成法によって製造された化学合成品、あるいは、(C)を含有する素材から抽出、精製された単離品であってよい。(C)を含有する素材としては、例えば、農畜水産品等の天然物(例、コショウ、バジル、ホップ、クローブ、オレガノ、シナモン、イランイラン等);微生物を培養して得られた培養液、菌体等の発酵生産物;及び、それらの加工品等が挙げられる。
本発明は、(C)の化学合成品、単離品に代替して、あるいは、当該化学合成品、単離品に加えて、(C)を含有する素材を、そのまま又は所望の程度に精製して用いてもよい。当該素材における(C)の含有量は、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)により測定され得る。
【0256】
本発明の増強剤の形態は特に制限されず、例えば、固体状(粉末状、顆粒状等を含む)、液体状(スラリー状等を含む)、ゲル状、ペースト状等が挙げられる。
【0257】
本発明の増強剤は、(A)及び/又は(B)の加熱物、並びに(C)から選択される少なくとも一つのみからなるものであってよいが、これらに加えて、本発明の増強剤の形態等に応じた慣用の基剤をさらに含有することもできる。
【0258】
本発明の増強剤の形態が液体状の場合の基剤としては、例えば、水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。
本発明の増強剤の形態が固体状の場合の基剤としては、例えば、澱粉、デキストリン、シクロデキストリン、スクロース及びグルコース等の各種糖類、たん白質、ペプチド、食塩、固形脂、二酸化ケイ素、及びそれらの混合物、また酵母菌体や各種の粉末エキス類等が挙げられる。
【0259】
本発明の増強剤は、本発明の目的を損なわない限り、(A)及び/又は(B)の加熱物、並びに(C)から選択される少なくとも一つに加えて、例えば、賦形剤、pH調整剤、酸化防止剤、増粘安定剤、甘味料(例、砂糖類等)、酸味料、香辛料、着色料、香料等を更に含有してよい。
【0260】
本発明の増強剤の製造は、自体公知の手法により行い得る。本発明の増強剤は、例えば、濃縮処理、乾燥処理、脱色処理等を、単独で又は組み合わせて施されてもよい。
【0261】
本発明の増強剤が、(A)の加熱物を含有する場合、当該増強剤の製造方法は、(A)を加熱することを含み得る。
また、本発明の増強剤が、(B)の加熱物を含有する場合、当該増強剤の製造方法は、(B)を加熱することを含み得る。本発明の増強剤が、(B)の油中加熱物を含有する場合、当該増強剤の製造方法は、油脂を含む媒体中で(B)を加熱することを含み得る。
また、本発明の増強剤が、(A)及び(B)の加熱物を含有する場合、当該増強剤の製造方法は、(A)(すなわち、(A1)と(A2)とを含有する組成物)及び(B)を併せて加熱すること、あるいは、(A)及び(B)を個別に加熱し、得られた(A)の加熱物及び(B)の加熱物を組み合わせることを含み得る。この場合、加熱される(A1)と(B)の重量比は、特に制限されないが、好ましくは1:0.01~15000であり、より好ましくは1:0.1~10であり、特に好ましくは1:0.2~5である。
【0262】
本発明の増強剤は、食品に添加されて用いられ得る。本発明の増強剤を食品に添加することにより、当該食品のマウスウォータリング感を増強し得る。また、本発明の増強剤を食品に添加することにより、当該食品に異風味を付与することなく、マウスウォータリング感を増強し得る。
本発明において「マウスウォータリング感」とは、口腔内から唾液の分泌が誘発される感覚をいう。唾液分泌は、食品の咀嚼や味刺激等によって促進され得るものであり、マウスウォータリング感(口腔内から唾液の分泌が誘発される感覚)は、健常人であれば、通常、どのような食品においても感じられ得る感覚である。マウスウォータリング感の「増強」とは、口腔内から唾液の分泌が誘発される感覚が増強されることをいう。マウスウォータリング感の程度は、専門パネルによる官能評価によって評価できる。
本発明において「異風味」とは、食品に通常感じられない不快な風味(呈味、香気)をいう。食品に異風味が付与される態様としては、例えば、食品に元来含まれない成分が添加されることにより、特定の好ましくない呈味や香気が食品に付与される場合、食品が元来有する呈味や香気が好ましくない様に変化する場合等が挙げられる。異風味の有無や程度は、専門パネルによる官能評価によって評価できる。
また、本発明において「食品」とは、経口的に摂取し得るものを広く包含する概念であり、例えば、飲料、調味料、食品添加物等も包含する。
【0263】
本発明の増強剤は、食品に添加されることによって、当該食品のジューシー感を増強し得る。
本発明において、食品の「ジューシー感」とは、食品の咀嚼中に液状物が口腔内に広がる快い感覚をいう。ジューシー感は、咀嚼中の食品から流出する液状成分(例、水分、油等)が増加することによって強く感じられるようになり得るが、食品の咀嚼中の唾液分泌が増加することによっても、口腔内に広がる液状物が増加し、ジューシー感を強く感じられるようになり得る。そのため、食品のマウスウォータリング感を増強することにより、ジューシー感も増強し得る。本発明の増強剤は、上述の通り、食品のマウスウォータリング感を増強し得ることから、食品のジューシー感を増強するためにも好適に用いられ得る。ジューシー感の「増強」とは、食品の咀嚼中に液状物が口腔内に広がる快い感覚が増強されることをいう。ジューシー感の有無や程度は、専門パネルによる官能評価によって評価できる。
【0264】
本発明の増強剤は、唾液分泌促進剤としても用いられ得る。本発明において「唾液分泌促進剤」とは、唾液の分泌量を増加させる機能を有する経口物をいう。唾液分泌促進剤は、例えば、唾液の分泌量の増加を必要とする対象に有効量を摂取させること等により、唾液の分泌量を増加させ得る。唾液分泌促進剤を対象に摂取させる方法は、特に制限されないが、例えば、唾液分泌促進剤を食品とあわせて対象に摂取させてよく、または、唾液分泌促進剤のみを対象に摂取させてもよい。
【0265】
マウスウォータリング感は、上述の通り、通常、どのような食品においても感じられ得る感覚であり、本発明の増強剤が添加され得る食品は、どのような食品であってもよく特に制限されないが、マウスウォータリング感又はジューシー感が増強されることを所望され得るものが好ましい。例えば、本発明の増強剤は、マウスウォータリング感又はジューシー感が不足しやすい食品(例、植物性たん白を含有する挽肉加工食品;冷凍食品;ハム、ソーセージ等の食肉加工食品;肉様食品;ツナ缶詰、魚肉ソーセージ、かまぼこ、竹輪、鰹節、煮干し等の水産加工食品等)、摂食機能(例、嚥下機能等)が低下した者向けの食品(例、高齢者向け食品等)、米飯類(例、チャーハン、パエリア、ピラフ等)、麺類(例、フライ麺等)、スープ類(例、コンソメスープ、鶏がらスープ、ラーメンスープ等)、菓子類(例、クッキー、ビスケット、ケーキ、ガム、グミ、ゼリー、寒天菓子等)等に好適に用いられ得る。
【0266】
植物性たん白を含有する挽肉加工食品は、例えば、植物性たん白を混ぜ込んだ挽肉等を原料に用いて製造され、そのためジューシー感が、植物性たん白を混ぜ込んでいない通常の挽肉を用いて製造されたものに比べて弱い傾向がある。そのようなジューシー感が不足した、植物性たん白を含有する挽肉加工食品に、本発明の増強剤を添加することによって、ジューシー感が増強され、植物性たん白を含有してもジューシー感を充分に有する好ましい挽肉加工食品を得ることができる。ここで、「植物性たん白」とは、採油用の種実(例、大豆等)若しくはその脱脂物、又は穀類(例、小麦等)の粉末に加工処理を施して、たん白質含有率を高めたものをいい、具体例としては、大豆たん白、小麦たん白等が挙げられる。また、「挽肉加工食品」とは、挽肉を原料の一つとする加工食品をいい、具体例としては、ハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、メンチカツ、コロッケ、ギョーザ、シュウマイ、包子、小籠包、ラビオリ、春巻き等が挙げられる。
【0267】
本発明において「肉様食品」とは、原料に食肉を用いず、代わりに植物性の素材(例えば、植物性たん白、豆腐、グルテンミート等)を用いて、食肉の食感、味、風味等を模倣した食品をいい、一般に、擬似肉食品等とも称される。肉様食品は、本物の食肉が用いられた食品に比べ、ジューシー感が充分でない場合があり、そのようなジューシー感が不足した肉様食品に、本発明の増強剤を添加することによって、ジューシー感が増強され、ジューシー感を充分に有する好ましい肉様食品を得ることができる。本発明の増強剤が添加され得る肉様食品は、肉以外の動物性素材(例、乳、卵等)を含むものであってよく、または、動物性素材を含まないものであってもよい。肉様食品の具体例としては、挽肉加工食品様の食品(例、ハンバーグ様食品、ミートボール様食品、ソーセージ様食品、メンチカツ様食品、コロッケ様食品、ギョーザ様食品、シュウマイ様食品、包子様食品、小籠包様食品、ラビオリ様食品、春巻き様食品等)、ハム様食品等が挙げられる。
【0268】
冷凍食品は、食感がパサつく場合があり、そのような冷凍食品に、本発明の増強剤を添加することによって、ジューシー感が増強され、食感のパサつきが抑えられた好ましい冷凍食品を得ることができる。本発明の増強剤が添加され得る冷凍食品の種類は、特に制限されないが、例えば、食肉加工食品の冷凍食品、野菜加工食品の冷凍食品、水産加工食品の冷凍食品等が挙げられる。ここで、「食肉加工食品」とは、食肉(例、畜肉、家禽肉等)を原料の一つとする加工食品をいい、例えば、ハム、挽肉加工食品等が挙げられる。「野菜加工食品」とは、野菜を原料の一つとする加工食品をいう。「水産加工食品」とは、魚介類を原料の一つとする加工食品をいい、例えば、ツナ缶詰、魚肉ソーセージ、かまぼこ、竹輪、鰹節、煮干し等が挙げられる。
【0269】
摂食機能(例、嚥下機能)が低下した者(例、高齢者等)に喫食される食品に、本発明の増強剤を添加することによって、当該食品は、マウスウォータリング感が増強され、嚥下(飲み込み)が容易になり得る。したがって、本発明の増強剤は、摂食機能が低下した者のQOL(Quality of Life)の改善に貢献し得る。また、唾液分泌能は、加齢にともなって低下することが知られているが、本発明の増強剤が添加された食品は、マウスウォータリング感又はジューシー感が増強され、唾液分泌能が低下した高齢者であっても、マウスウォータリング感又はジューシー感を得ることができる。したがって、本発明の増強剤は、例えば、高齢者向け食品等に好適に利用できる。ここで、「高齢者向け食品」とは、高齢者の嗜好、食べやすさ及び栄養状態等を勘案して、味付け、軟らかさ及び栄養バランス等が調整された、高齢者の喫食に適した食品をいう。
【0270】
本発明の増強剤が添加され得る食品は、元から喫食に適した状態で提供(販売、流通)されるものであってよく、又は喫食に適した状態になるための所定の処理や調理を必要とする状態で提供されるものであってもよい。例えば、本発明の増強剤が添加され得る食品は、喫食に適した状態となるために水等で希釈することを必要とする濃縮物等として提供されてよい。
【0271】
本発明の増強剤の食品への添加量は、加熱物の調製条件や食品の種類等に応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、一態様として、本発明の増強剤が、(A)及び/又は(B)の加熱物を少なくとも含有する場合、本発明の増強剤は、(A)及び/又は(B)の加熱物の濃度が、食品の喫食時の総重量に対して、通常0.00001~10重量%、好ましくは0.0001~5重量%、より好ましくは0.0005~0.5重量%になるように、食品に添加され得る。
【0272】
本発明の増強剤が、一態様として、(C)を少なくとも含有する場合、本発明の増強剤は、異風味を食品に付与することなく効果的にマウスウォータリング感を増強し得ることから、食品における(C)の濃度が、食品の喫食時の総重量に対して特定の範囲となるように、食品に添加されることが好ましい。具体的には、食品における(C)の濃度は、食品の喫食時の総重量に対して、好ましくは0.0001重量ppm以上であり、より好ましくは0.001重量ppm以上であり、特に好ましくは0.005重量ppm以上である。また、食品における(C)の濃度は、食品の喫食時の総重量に対して、好ましくは100重量ppm以下であり、より好ましくは50重量ppm以下であり、特に好ましくは25重量ppm以下であり、一態様として(C)がβ-カリオフィレン含酸素誘導体である場合、食品の喫食時の総重量に対して、好ましくは100重量ppm以下であり、より好ましくは50重量ppm以下であり、特に好ましくは25重量ppm以下であり、他の一態様として(C)がリモネンオキシド又はα-テルピネノールである場合、食品の喫食時の総重量に対して、好ましくは0.8重量ppm以下であり、より好ましくは0.5重量ppm以下であり、特に好ましくは0.3重量ppm以下である。
【0273】
本発明の増強剤を食品に添加する方法及び条件は特に限定されず、本発明の増強剤の形態や食品の種類等に応じて適宜設定できる。本発明の増強剤を食品に添加する時期は特に限定されず、いかなる時点で添加してもよいが、例えば、食品の製造中、食品の完成後(食品の喫食直前、食品の喫食中等)等が挙げられる。食品を製造する前の原料に本発明の増強剤を添加してもよい。
【0274】
<マウスウォータリング感増強方法>
本発明は、(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を食品に添加することを含む、食品のマウスウォータリング感増強方法(本明細書中、「本発明の増強方法」と称する場合がある)も提供する。
【0275】
本発明の増強方法において用いられ得る(A)及び/又は(B)の加熱物、並びに(C)は、本発明の増強剤に含有され得る上述の(A)及び/又は(B)の加熱物、並びに(C)と同様のものであり、好適な態様も同様である。またそれらの製造も、上述の方法と同様に行い得る。
【0276】
一態様として、本発明の増強方法が(A)の加熱物を食品に添加することを含む場合、当該増強方法は、(A)を加熱すること、及び、得られた(A)の加熱物を食品に添加することを含み得る。
また、一態様として、本発明の増強方法が(B)の加熱物を食品に添加することを含む場合、当該増強方法は、(B)を加熱すること、及び、得られた(B)の加熱物を食品に添加することを含み得る。本発明の増強方法が(B)の油中加熱物を食品に添加することを含む場合、当該増強方法は、油脂を含む媒体中で(B)を加熱すること、及び、得られた(B)の油中加熱物を食品に添加することを含み得る。
また、一態様として、本発明の増強方法が(A)及び(B)の加熱物を食品に添加することを含む場合、当該増強方法は、(A)(すなわち、(A1)と(A2)とを含有する組成物)及び(B)を併せて加熱すること、あるいは、(A)及び(B)を個別に加熱し、得られた(A)の加熱物及び(B)の加熱物を組み合わせること、並びに、得られた(A)及び(B)の加熱物を食品に添加すること含み得る。この場合、加熱される(A1)と(B)の重量比は、特に制限されないが、好ましくは1:0.01~15000であり、より好ましくは1:0.1~10であり、特に好ましくは1:0.2~5である。
【0277】
本発明の増強方法によれば、食品のマウスウォータリング感を増強し得る。また、本発明の増強方法によれば、食品に異風味を付与することなく、マウスウォータリング感を増強し得る。本発明の増強方法により、マウスウォータリング感を増強し得る食品の例としては、本発明の増強剤が添加され得る食品として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0278】
本発明の増強方法によれば、食品のジューシー感を増強し得、本発明の増強方法は、ジューシー感増強方法であってもよい。また、本発明の増強方法は、唾液分泌を促進でき、本発明の増強方法は、唾液分泌促進方法であってもよい。
【0279】
本発明の増強方法において、(A)及び/又は(B)の加熱物、(C)の添加量は、加熱物の調製条件や食品の種類等に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、一態様として、本発明の増強方法が少なくとも(A)及び/又は(B)の加熱物を食品に添加することを含む場合、(A)及び/又は(B)の加熱物の添加は、(A)及び/又は(B)の加熱物の重量が、食品の喫食時の総重量に対して、好ましくは0.00001~10重量%、より好ましくは0.0001~5重量%、特に好ましくは0.0005~0.5重量%となるように行われ得る。
【0280】
本発明の増強方法が少なくとも(C)を食品に添加することを含む場合、(C)の添加は、異風味を食品に付与することなく効果的にマウスウォータリング感を増強し得ることから、食品における(C)の濃度が、食品の喫食時の総重量に対して特定の範囲となるように行われることが好ましい。具体的には、本発明の増強方法において、食品における(C)の濃度は、少なくとも(C)を含有する本発明の増強剤を食品に添加するときの(C)の濃度(上述)と同様に設定し得、好ましい範囲も同様である。
【0281】
本発明の増強方法において、(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を食品に添加する方法及び条件は特に限定されず、食品の種類等に応じて適宜設定できる。(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を添加する時期は特に限定されず、いかなる時点で添加してもよいが、例えば、食品の製造中、食品の完成後(食品の喫食直前、食品の喫食中等)等が挙げられる。食品を製造する前の原料に(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を添加してもよい。
【0282】
<食品及びその製造方法>
本発明は、(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を添加することを含む、食品の製造方法(本明細書中、「本発明の製造方法」と称する場合がある)も提供する。
【0283】
本発明の増強方法において用いられ得る(A)及び/又は(B)の加熱物、並びに(C)は、本発明の増強剤に含有され得る上述の(A)及び/又は(B)の加熱物、並びに(C)と同様のものであり、好適な態様も同様である。またそれらの製造も、上述の方法と同様に行い得る。
【0284】
一態様として、本発明の製造方法が(A)の加熱物を添加することを含む場合、当該製造方法は、(A)を加熱すること、及び、得られた(A)の加熱物を添加することを含み得る。
また、一態様として、本発明の製造方法が(B)の加熱物を添加することを含む場合、当該製造方法は、(B)を加熱すること、及び、得られた(B)の加熱物を添加することを含み得る。本発明の製造方法が(B)の油中加熱物を添加することを含む場合、当該製造方法は、油脂を含む媒体中で(B)を加熱すること、及び、得られた(B)の油中加熱物を添加することを含み得る。
また、一態様として、本発明の製造方法が(A)及び(B)の加熱物を添加することを含む場合、当該製造方法は、(A)(すなわち、(A1)と(A2)とを含有する組成物)及び(B)を併せて加熱すること、あるいは、(A)及び(B)を個別に加熱し、得られた(A)の加熱物及び(B)の加熱物を組み合わせること、並びに、得られた(A)及び(B)の加熱物を添加すること含み得る。この場合、加熱される(A1)と(B)の重量比は、特に制限されないが、好ましくは1:0.01~15000であり、より好ましくは1:0.1~10であり、特に好ましくは1:0.2~5である。
【0285】
本発明の製造方法において、(A)及び/又は(B)の加熱物、(C)の添加量は特に制限されず、加熱物の調製方法や食品の種類等に応じて、適宜調整すればよいが、一態様として、本発明の製造方法が少なくとも(A)及び/又は(B)の加熱物を添加することを含む場合、(A)及び/又は(B)の加熱物の添加は、(A)及び/又は(B)の加熱物の重量が、食品の喫食時の総重量に対して、好ましくは0.00001~10重量%、より好ましくは0.0001~5重量%、特に好ましくは0.0005~0.5重量%となるように行われ得る。
【0286】
本発明の製造方法が少なくとも(C)を添加することを含む場合、(C)の添加は、効果的にマウスウォータリング感が増強され、異風味を有しない食品を製造し得ることから、食品における(C)の濃度が、食品の喫食時の総重量に対して特定の範囲となるように行われることが好ましい。具体的には、本発明の製造方法において、食品における(C)の濃度は、本発明の増強剤を食品に添加するときの(C)の濃度(上述)と同様に設定し得、好ましい範囲も同様である。
【0287】
本発明の製造方法において、(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を添加する方法及び条件は特に限定されず、食品の種類等に応じて適宜設定できる。(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を添加する時期は特に限定されず、食品の製造開始から完成までのいかなる時点で添加してもよい。また、食品を製造する前の原料に(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を添加してもよい。
【0288】
本発明の製造方法は、(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を添加することに加えて、食品の製造において慣用の処理工程、調理工程を、製造する食品の種類等に応じて適宜含んでよい。
【0289】
本発明の製造方法によれば、(A)及び/又は(B)の加熱物、あるいは(C)を含有する食品(本明細書中、「本発明の食品」と称する場合がある)を製造し得る。本発明の食品は、好ましくは、マウスウォータリング感又はジューシー感が増強された食品であり、より好ましくは、マウスウォータリング感又はジューシー感が増強され、異風味を有しない食品である。
【0290】
本発明の食品における、(A)及び/又は(B)の加熱物、(C)の濃度は、加熱物の調製条件や食品の種類等に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、一態様として、本発明の食品が少なくとも(A)及び/又は(B)の加熱物を含有する場合、本発明の食品における(A)及び/又は(B)の加熱物の濃度は、食品の喫食時の総重量に対して、好ましくは0.00001~10重量%、より好ましくは0.0001~5重量%、特に好ましくは0.0005~0.5重量%である。
【0291】
本発明の食品が成分(D)を少なくとも含有する場合、本発明の食品が異風味を有することなく、効果的にマウスウォータリング感が増強され得ることから、本発明の食品における成分(D)の濃度は、食品の喫食時の総重量に対して特定の範囲であることが好ましい。具体的には、本発明の食品における成分(D)の濃度は、本発明の増強剤を食品に添加するときの成分(D)の濃度(上述)と同様に設定し得、好ましい範囲も同様である。
【0292】
本発明の製造方法によって製造され得る食品の例としては、本発明の増強剤が添加され得る食品として例示したものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0293】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。尚、本明細書において「%」、「ppm」、「ppb」と記載されている場合は、特に断りのない限り「重量%」、「重量ppm」、「重量ppb」を意味する。
【実施例】
【0294】
[実験例]
下表1に示す化合物(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、下表1に示す濃度になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。評価用豚骨ラーメンスープは、市販のインスタント豚骨ラーメン(東洋水産株式会社製、商品名「マルちゃん正麺 豚骨味」)の別添粉末スープ1袋を、熱湯550gに溶解することにより調製した。尚、上記の粉末スープ1袋を熱湯500gに溶解して得られた豚骨ラーメンスープを、下記の官能評価のポジティブコントロールとして用いた。
下表1に示す化合物が下表1に示す濃度で添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、「口腔内から唾液の分泌が誘発される感覚」をマウスウォータリング感と定義して、この感覚について、無添加の評価用豚骨ラーメンスープの評点を0点とし、ポジティブコントロールの評点を3.0点として、-5点(非常に弱い)から5点(非常に強い)の11点評価法により行った。2名の専門パネルは、0.1点刻みでそれぞれ評点付けを行い、2名の専門パネルの評点の平均点を算出した。当該平均点が1.0点以上である場合、マウスウォータリング感増強作用を有すると判断した。尚、2名の専門パネルは、評点が0.1点変動するには、マウスウォータリング感がどの程度変動すればよいのか等がパネル間で共通となるよう予め訓練された。
官能評価の結果を下表1に示す。
【0295】
【0296】
表1に示されるように、表1に示すいずれの化合物を添加しても、評価用豚骨ラーメンスープのマウスウォータリング感は増強されなかった。また、β-カリオフィレン及びフルフラールを組み合わせて添加しても、評価用豚骨ラーメンスープのマウスウォータリング感は増強されなかった。
これらの結果から、表1に示す化合物自体は、マウスウォータリング感増強作用を有していないことが確認された。
【0297】
[実施例1]
β-カリオフィレン及びフルフラール(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、それぞれ紅花油に対して100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプル(以下において「加熱サンプル」とも称する)を得た。得られた加熱サンプルを、下表2に示す濃度になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
加熱サンプルが下表2に示す濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対して0.0015~1.0重量%)で添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」及び「異風味」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
異風味の評価は、0点(全く感じない)から3点(強く感じる)の4点評価法により行った。2名の専門パネルは、0.1点刻みでそれぞれ評点付けを行い、2名の専門パネルの平均点を算出した。尚、2名の専門パネルは、評点が0.1点変動するには、異風味がどの程度変動すればよいのか等がパネル間で共通となるよう予め訓練された。
官能評価の結果を下表2に示す。
【0298】
【0299】
表2に示されるように、本実施例1で得られた加熱サンプルが添加されることにより、評価用豚骨ラーメンスープのマウスウォータリング感が増強された。尚、加熱サンプルが1重量%添加された評価用豚骨ラーメンスープは、充分なマウスウォータリング感を有していたものの、異風味が感じられたことから、本評価系においては、加熱サンプルの添加濃度は1重量%未満が好ましいと考えられた。
【0300】
[実施例2]
(β-カリオフィレン及びフルフラールからのマウスウォータリング感増強剤調製における加熱媒体(油脂)の種類の影響)
β-カリオフィレン及びフルフラール(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)又は中鎖脂肪酸油(日清オイリオ株式会社製)に、それぞれ紅花油又は中鎖脂肪酸油に対して100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「加熱サンプル」とも称する)。得られた加熱サンプルを、0.1重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対する加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
加熱サンプルが下表3に示す加熱媒体(紅花油又は中鎖脂肪酸油)で添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表3に示す。
【0301】
【0302】
表3に示されるように、β-カリオフィレン及びフルフラールの加熱媒体として、紅花油を用いた場合及び中鎖脂肪酸油を用いた場合のいずれにおいても、評価用豚骨ラーメンスープのマウスウォータリング感が増強された。
【0303】
[実施例3]
(β-カリオフィレン及びフルフラールからのマウスウォータリング感増強剤調製における加熱時の各成分濃度の影響)
β-カリオフィレン及びフルフラール(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、中鎖脂肪酸油(日清オイリオ株式会社製)に、下表4に示す濃度になるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「加熱サンプル」とも称する)。得られた各加熱サンプルを、下表4に示す濃度になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
各加熱サンプルが下表4に示す濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対して0.001~0.1重量%)で添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表4に示す。
【0304】
【0305】
表4に示されるように、各加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、いずれも同程度にマウスウォータリング感が増強された。
【0306】
[実施例4]
(β-カリオフィレン及びシクロテンからのマウスウォータリング感増強剤の調製)
β-カリオフィレン及びシクロテン(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、β-カリオフィレンの紅花油に対する濃度が100重量ppm、シクロテンの紅花油に対する濃度が10重量ppbになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「加熱サンプル」とも称する)。また、加熱を行わなかったこと以外は加熱サンプルと同様の手順で、未加熱のサンプルを調製した(以下において「未加熱サンプル」とも称する)。得られた加熱サンプル及び未加熱サンプルを、それぞれ0.1重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対する加熱サンプル又は未加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
加熱サンプル又は未加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表5に示す。
【0307】
【0308】
表5に示されるように、紅花油中でβ-カリオフィレン及びシクロテンを加熱して得られた加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、マウスウォータリング感が増強された。一方、未加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、マウスウォータリング感が増強されなかった。これらの結果から、β-カリオフィレン及び/又はシクロテンを用いてマウスウォータリング感増強剤を調製する場合、β-カリオフィレン及び/又はシクロテンの加熱が必要であることが推察された。
【0309】
[実施例5]
(β-カリオフィレン及びシクロテンからのマウスウォータリング感増強剤調製における加熱媒体の影響)
β-カリオフィレン及びシクロテン(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、水、プロピレングリコール(シグマアルドリッチ社製)、紅花油(味の素株式会社製)、大豆油(味の素株式会社製)又は菜種油(味の素株式会社製)に、β-カリオフィレンの各加熱媒体に対する濃度が100重量ppm、シクロテンの各加熱媒体に対する濃度が100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「加熱サンプル」とも称する)。得られた各加熱サンプルを、0.1重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対する加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
水、プロピレングリコール、紅花油、大豆油又は菜種油を加熱媒体として調製された各加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表6に示す。
【0310】
【0311】
表6に示されるように、水又はプロピレングリコールを加熱媒体として調製された加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、マウスウォータリング感が観察された。紅花油、大豆油又は菜種油を加熱媒体として調製された加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、マウスウォータリング感が増強され、水又はプロピレングリコールを加熱媒体として調製された加熱サンプルに比べ、高評点を示した。これらの結果から、加熱媒体としてアシルグリセロール(トリグリセリド等)を主成分とする食用油脂を用いることが好ましいと推察された。
【0312】
[実施例6]
(β-カリオフィレンオキシドのマウスウォータリング感増強効果の検討)
β-カリオフィレンオキシド(シグマアルドリッチ社製)を、下表7に示す濃度になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
β-カリオフィレンオキシドが下表7に示す濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対して0.01~20重量ppm)で添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」及び「異風味」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行い、異風味の評価は、実施例1と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表7に示す。
【0313】
【0314】
表7に示されるように、β-カリオフィレンオキシドが添加されることにより、評価用豚骨ラーメンスープのマウスウォータリング感が増強された。尚、β-カリオフィレンオキシドが20重量ppm添加された評価用豚骨ラーメンスープは、十分なマウスウォータリング感を有していたものの、異風味が感じられたことから、本評価系においては、β-カリオフィレンオキシドの添加濃度は20重量ppm未満が好ましいと考えられた。
【0315】
[実施例7]
(クロバンジオール、β-カリオフィレノール、α-テルピネノール、リモネンオキシドのマウスウォータリング感増強効果の検討)
クロバンジオール、β-カリオフィレノール、α-テルピネノール又はリモネンオキシド(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、下表8に示す濃度になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
クロバンジオール、β-カリオフィレノール、α-テルピネノール又はリモネンオキシドが下表7に示す濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対して0.1重量ppm又は1重量ppm)で添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」及び「異風味」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行い、異風味の評価は、実施例1と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表8に示す。
【0316】
【0317】
表8に示されるように、クロバンジオール、β-カリオフィレノール、α-テルピネノール又はリモネンオキシドが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、いずれもマウスウォータリング感が増強された。尚、α-テルピネノール又はリモネンオキシドが1重量ppm添加された評価用豚骨ラーメンスープは、十分なマウスウォータリング感を有していたものの、異風味が感じられた。
【0318】
[実施例8]
(β-カリオフィレン及びフルフラールの油中加熱物の唾液分泌量に対する影響)
本実施例では、上述の実施例1で調製した加熱サンプル(マウスウォータリング感増強剤)が、実際の食品に添加されたとき、唾液分泌量を増加させるかについて検討を行った。
鶏挽肉(むね肉ともも肉の合い挽き肉、株式会社イトーヨーカ堂加工・製造)100g、食塩(ナイカイ塩業株式会社製)0.7g、白コショウ粉末(株式会社ギャバン製)0.1g及び実施例1で調製した加熱サンプル0.15gを混合し、当該混合物を25gずつ丸型に成形した。得られた成形物を、1個ずつ市販の食品用ラップフィルムで包んだ後、1個あたり30秒間、電子レンジ(600W)で加熱して、鶏肉団子を作製した(以下において「評価用の鶏肉団子」とも称する)。
また、実施例1で調製した加熱サンプルに代えて、紅花油(味の素株式会社製)を用いたこと以外は、評価用の鶏肉団子と同様の手順で、鶏肉団子を作製した(以下において「対照の鶏肉団子」とも称する)。
作製した各鶏肉団子を約9gの半球状にカットし、36~38℃に加温したものを、被験者(n=8)が90秒間口に含み、その間に分泌された唾液の重量を測定した。結果を表9に示す。
【0319】
【0320】
表9に示されるように、実施例1で調製した加熱サンプル(本発明のマウスウォータリング感増強剤)を添加した鶏肉団子を口に含むことにより、対象の鶏肉団子を口に含んだ場合と比較して、有意に(危険率5%以下)唾液分泌量が増加した。
【0321】
[実施例9]
(β-カリオフィレンオキシドの唾液分泌量に対する影響)
本実施例では、β-カリオフィレンオキシドが、実際の食品に添加されたとき、唾液分泌量を増加させるかについて検討を行った。
鶏挽肉(むね肉ともも肉の合い挽き肉、株式会社イトーヨーカ堂加工・製造)100g、食塩(ナイカイ塩業株式会社製)0.7g及び白コショウ粉末(株式会社ギャバン製)0.1g及びβ-カリオフィレンオキシドを混合した。β-カリオフィレンオキシドは、混合物におけるβ-カリオフィレンオキシドの濃度が5重量ppmとなる量を用いた。得られた混合物を25gずつ丸型に成形し、当該成形物を、1個ずつ市販の食品用ラップフィルムで包んだ後、1個あたり30秒間、電子レンジ(600W)で加熱して、鶏肉団子を作製した(以下において「評価用の鶏肉団子」とも称する)。
また、β-カリオフィレンオキシドを用いなかったこと以外は、評価用の鶏肉団子と同様の手順で、鶏肉団子を作製した(以下において「対照の鶏肉団子」とも称する)。
作製した各鶏肉団子を約9gの半球状にカットし、36~38℃に加温したものを、被験者(n=6)が90秒間口に含み、その間に分泌された唾液の重量を測定した。結果を表10に示す。
【0322】
【0323】
表10に示されるように、β-カリオフィレンオキシドを添加した鶏肉団子を口に含むことにより、対象の鶏肉団子を口に含んだ場合と比較して、有意に(危険率5%以下)唾液分泌量が増加した。
【0324】
[実施例10]
(β-カリオフィレン及びフルフラールの油中加熱物の、鶏肉団子系での評価結果)
上述の実施例8と同様の方法で、評価用の鶏肉団子及び対照の鶏肉団子をそれぞれ作製した。
専門パネル9名が、評価用の鶏肉団子と対照の鶏肉団子の比較評価を行った。具体的には、専門パネル9名に、各鶏肉団子を食べさせ、マウスウォータリング感、ジューシー感がより強いと感じた鶏肉団子を選択させた。その結果、9名中9名が、評価用の鶏肉団子、すなわち実施例1で調製した加熱サンプル(本発明のマウスウォータリング感増強剤)を添加した鶏肉団子、を選択した。
【0325】
[実施例11]
下表11に示す原料を、下表11に示す割合で混合し、モデルハンバーグのタネを調製した。調製したタネは、1個当たり約250gの小判型に成形した。180℃に加熱したホットプレートにキャノーラ油を引いた後、成形したタネ2個を並べ、それらの両面を2分間ずつ焼き調理した。次いで、200gの水道水を加えてからホットプレートに蓋をして、6分間蒸し調理した。蒸し調理の後、タネを裏返して更に2分間蒸し調理して、ハンバーグを作製した(以下において「評価用のハンバーグ」とも称する)。
また、実施例1で調製した加熱サンプルに代えて、紅花油(味の素株式会社製)を用いたこと以外は、評価用のハンバーグと同様の手順でハンバーグを作製した(以下において「対照のハンバーグ」とも称する)。
【0326】
【0327】
専門パネル8名が、評価用のハンバーグと対照ハンバーグの比較評価を行った。具体的には、専門パネル8名に、各ハンバーグを食べさせ、マウスウォータリング感、ジューシー感がより強いと感じたハンバーグを選択させた。その結果、8名中8名が、評価用のハンバーグ、すなわち実施例1で調製した加熱サンプル(本発明のマウスウォータリング感増強剤)を添加したハンバーグ、を選択した。
【0328】
[実施例12]
(β-カリオフィレン及びシクロテンからのマウスウォータリング感増強剤調製における加熱の有無の影響)
β-カリオフィレン及びシクロテン(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、β-カリオフィレンの紅花油に対する濃度が150重量ppm、シクロテンの紅花油に対する濃度が100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「加熱サンプル」とも称する)。また、加熱を行わなかったこと以外は加熱サンプルと同様の手順で、未加熱のサンプルを調製した(以下において「未加熱サンプル」とも称する)。得られた加熱サンプル及び未加熱サンプルを、それぞれ0.1重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対する加熱サンプル又は未加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
加熱サンプル又は未加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表12に示す。
【0329】
【0330】
表12に示されるように、紅花油中でβ-カリオフィレン及びシクロテンを加熱して得られた加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、マウスウォータリング感が増強された。一方、未加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、マウスウォータリング感が増強されなかった。
【0331】
[実施例13]
(β-カリオフィレン及びシクロテンがそれぞれ単独で加熱された場合のマウスウォータリング感増強効果の確認)
β-カリオフィレン(シグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、β-カリオフィレンの紅花油に対する濃度が1000重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「β-カリオフィレン加熱サンプル」とも称する)。
得られたβ-カリオフィレン加熱サンプルを、0.01重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対するβ-カリオフィレン加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。
また、シクロテン(シグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、シクロテンが紅花油に対して100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「シクロテン加熱サンプル」とも称する)。
得られたシクロテン加熱サンプルを、0.1重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対するシクロテン加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。
また、β-カリオフィレン加熱サンプル及びシクロテン加熱サンプルを、β-カリオフィレン加熱サンプルの評価用豚骨ラーメンスープに対する濃度が0.01重量%、シクロテン加熱サンプルの評価用豚骨ラーメンスープに対する濃度が0.1重量%になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。
尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
β-カリオフィレン加熱サンプル及び/又はシクロテン加熱サンプル加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表13に示す。
【0332】
【0333】
表13に示されるように、β-カリオフィレンを単独で加熱して得られた加熱サンプル(β-カリオフィレン加熱サンプル)又はシクロテンを単独で加熱して得られた加熱サンプル(シクロテン加熱サンプル)が添加された評価用豚骨ラーメンスープは、マウスウォータリング感が増強された。また、β-カリオフィレン加熱サンプル及びシクロテン加熱サンプルが両方添加された評価用豚骨ラーメンスープは、マウスウォータリング感がより顕著に増強された。
【0334】
[実施例14]
β-カリオフィレン及びシクロテン(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、β-カリオフィレンの紅花油に対する濃度が150重量ppm、シクロテンの紅花油に対する濃度が100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプル(以下において「加熱サンプル」とも称する)を得た。得られた加熱サンプルを、下表14に示す濃度になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
加熱サンプルが下表14に示す濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対して0.001~1.0重量%)で添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」及び「異風味」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行い、異風味の評価は、実施例1と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表14に示す。
【0335】
【0336】
表14に示されるように、本実施例15で得られた加熱サンプルが添加されることにより、評価用豚骨ラーメンスープのマウスウォータリング感が増強された。尚、加熱サンプルが1重量%添加された評価用豚骨ラーメンスープは、十分なマウスウォータリング感を有していたものの、異風味が感じられたことから、本評価系においては、加熱サンプルの添加濃度は1重量%未満が好ましいと考えられた。
【0337】
[実施例15]
(β-カリオフィレン及びフルフラール類縁化合物の加熱物のマウスウォータリング感増強効果の確認)
β-カリオフィレン及び下表15に示すフルフラール類縁化合物(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、それぞれ紅花油に対して100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「加熱サンプル」とも称する)。得られた加熱サンプルを、0.1重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対する加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
β-カリオフィレン及び下表15に示すフルフラール類縁化合物を加熱して調製された各加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表15に示す。
【0338】
【0339】
表15に示されるように、β-カリオフィレン及び表15に示すフルフラール類縁化合物(5-メチルフルフラール、フルフリルアルコール、2-フリルメチルケトン)を加熱して得られた各加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、いずれもマウスウォータリング感が増強された。これらの結果から、本実施例で用いられたフルフラール類縁化合物(5-メチルフルフラール、フルフリルアルコール、2-フリルメチルケトン)は、いずれもβ-カリオフィレンとともに油脂含有組成物中で加熱することにより、マウスウォータリング感を増強させ得る成分を生成し得るものと考えられた。
【0340】
[実施例16]
(シクロテン類縁化合物の油中加熱物及びフルフラールの油中加熱物のマウスウォータリング感増強効果の確認)
下表16に示す化合物(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、それぞれ紅花油に対して100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「加熱サンプル」とも称する)。得られた加熱サンプルを、0.1重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対する加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
下表16に示す化合物を加熱して調製された各加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表16に示す。
【0341】
【0342】
表16に示されるように、表16に示す化合物を加熱して得られた各加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、いずれもマウスウォータリング感が増強された。これらの結果から、本実施例で用いられた化合物は、いずれも油脂含有組成物中で加熱することにより、マウスウォータリング感を増強させ得る成分を生成し得るものと考えられた。
【0343】
[実施例17]
(シクロテン類縁化合物の加熱物を、β-カリオフィレン加熱物と共存させた際のマウスウォータリング感増強効果の確認)
下表17に示すシクロテン類縁化合物(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、それぞれ紅花油に対して100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「シクロテン類縁化合物加熱サンプル」とも称する)。
また、β-カリオフィレン(シグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、β-カリオフィレンの紅花油に対する濃度が1000重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプルを得た(以下において「β-カリオフィレン加熱サンプル」とも称する)。
各シクロテン類縁化合物加熱サンプル及びβ-カリオフィレン加熱サンプルを、シクロテン類縁化合物加熱サンプルの評価用豚骨ラーメンスープに対する濃度が0.1重量%、β-カリオフィレン加熱サンプルの評価用豚骨ラーメンスープに対する濃度が0.01重量%になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。
尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
各シクロテン類縁化合物加熱サンプル及びβ-カリオフィレン加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表17に示す。
【0344】
【0345】
表17に示されるように、表17に示すシクロテン類縁化合物を加熱して得られた各加熱サンプル及びβ-カリオフィレンを加熱して得られた加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、いずれもマウスウォータリング感が増強された。これらの結果から、本実施例で用いられたシクロテン類縁化合物の加熱物は、β-カリオフィレン加熱物との共存により、マウスウォータリング感を増強し得ることが示唆された。
【0346】
[実施例18]
(シクロテン類縁化合物及びβ-カリオフィレン加熱物のマウスウォータリング感増強効果の確認)
下表18に示すシクロテン類縁化合物及びβ-カリオフィレン(いずれもシグマアルドリッチ社製)を、紅花油(味の素株式会社製)に、シクロテン類縁化合物の紅花油に対する濃度が100重量ppm、β-カリオフィレンの紅花油に対する濃度が100重量ppmになるように溶解させたのち、ウォーターバス(東京理化機械株式会社製)を用いて100℃で30分間加熱して、サンプル(以下において「加熱サンプル」とも称する)を得た。得られた加熱サンプルを、0.1重量%の濃度(評価用豚骨ラーメンスープに対する加熱サンプルの濃度)になるように、評価用豚骨ラーメンスープに添加した。尚、評価用豚骨ラーメンスープ、及び下記の官能評価のポジティブコントロール用の豚骨ラーメンスープは、それぞれ実験例と同様に調製した。
下表18に示すシクロテン類縁化合物及びβ-カリオフィレンを加熱して調製された各加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープの「マウスウォータリング感」について、2名の専門パネルによる官能評価を実施した。
マウスウォータリング感の評価は、実験例と同様の方法で行った。
官能評価の結果を下表18に示す。
【0347】
【0348】
表18に示されるように、表18に示すシクロテン類縁化合物及びβ-カリオフィレンを加熱して得られた加熱サンプルが添加された評価用豚骨ラーメンスープは、いずれもマウスウォータリング感が増強された。これらの結果から、本実施例で用いられたシクロテン類縁化合物及びβ-カリオフィレンの加熱物は、マウスウォータリング感を増強し得ることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0349】
本発明によれば、マウスウォータリング感を効果的に増強できるマウスウォータリング感増強剤及びその製造方法を提供し得る。また、本発明のマウスウォータリング感増強剤は、ジューシー感も効果的に増強し得る。
本発明によれば、マウスウォータリング感が効果的に増強された食品及びその製造方法を提供し得る。また、本発明によれば、ジューシー感が効果的に増強された食品及びその製造方法も提供し得る。
本発明によれば、マウスウォータリング感を効果的に増強する方法を提供し得る。また、本発明によれば、ジューシー感を効果的に増強する方法も提供し得る。