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特許7631724検出装置、蓄電装置、移動体、内部短絡の検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】検出装置、蓄電装置、移動体、内部短絡の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20250212BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20250212BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250212BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/52
H01M10/48 P
H01M10/48 A
H02J7/00 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020169815
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061709
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-08-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 悠
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-20732(JP,A)
【文献】国際公開第2018/083802(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0336762(US,A1)
【文献】特開2002-8631(JP,A)
【文献】特表2010-536133(JP,A)
【文献】特開2014-230473(JP,A)
【文献】特開2016-58298(JP,A)
【文献】特開2020-136224(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014201162(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G01R 31/50-31/74
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電セルの内部短絡を検出する検出装置であって、
前記検出装置は、前記蓄電セルの振動の周波数スペクトルと、前記蓄電セルのセル電圧の周波数スペクトルとを比較することにより、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出する、検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記蓄電セルの振動と前記セル電圧のそれぞれの周波数スペクトルにおいて、直流成分を除く信号強度が最大となるピーク周波数が一致している場合、前記蓄電セルは内部短絡と判断する、検出装置。
【請求項3】
蓄電セルの内部短絡を検出する検出装置であって、
前記検出装置を含む蓄電装置は、複数の前記蓄電セルを有し、
前記蓄電装置が振動している期間の各前記蓄電セルのセル電圧の周波数スペクトル同士を比較することにより、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出する、検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検出装置であって、
一の前記蓄電セルの周波数スペクトルが他の前記蓄電セルの周波数スペクトルと異なる場合、一の前記蓄電セルは内部短絡していると判断する、検出装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の検出装置であって、
セル電圧の変動幅が閾値以下である場合に、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出する、検出装置。
【請求項6】
蓄電セルと、
前記蓄電セルの電圧を検出する電圧検出部と、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の検出装置と、を含む、蓄電装置。
【請求項7】
蓄電セルの内部短絡の検出方法であって、
前記蓄電セルの振動の周波数スペクトルと、前記蓄電セルのセル電圧の周波数スペクトルとを比較することにより、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出する、内部短絡の検出方法。
【請求項8】
蓄電セルの内部短絡の検出方法であって、
前記蓄電セルが振動している期間の各前記蓄電セルのセル電圧の周波数スペクトル同士を比較することにより、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出する、内部短絡の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セルの内部短絡を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電セルの故障モードの一つに内部短絡がある。内部短絡の発生を検出する手段として、下記特許文献1には、自己放電量に基づく方法が開示されている。
【0003】
下記特許文献2には、二次電池の電圧差が閾値を超える回数が所定期間内に規定回数以上の場合、1番目に電圧が低い二次電池を内部短絡と判断する点が開示されている。この方法では、移動体の振動により発生するソフトショートなど、正極要素と負極要素が接触と非接触を繰り返す現象に起因する電圧低下の異常を検出できる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-018482号公報
【0005】
【文献】特開2020-020732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自己放電量を測定するには、蓄電セルのセル電圧を長時間に亘って測定する必要がある。また、自己放電以外の要因によるセル電圧の変化を避けるため、測定期間中は充放電することができない。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、蓄電セルの自己放電量を使用せずに、蓄電セルの内部短絡を検出する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
蓄電セルの内部短絡を検出する検出装置は、前記蓄電セルの振動とセル電圧とに基づいて、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出する。
【0009】
蓄電セルの内部短絡を検出する検出装置は、前記蓄電セルが振動している期間のセル電圧の周波数スペクトルに基づいて、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出する。
【0010】
この発明は、蓄電装置に適用することが出来る。蓄電装置を備えた移動体に適用することが出来る。内部短絡の検出方法、内部短絡の検出プログラムに適用することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓄電セルの自己放電量を使用せずに、蓄電セルの内部短絡を検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1における自動車の側面図
図2】バッテリの分解斜視図
図3】二次電池セルの平面図
図4図3のA-A線断面図
図5】電極体を図3のX方向から見た側面図
図6】自動車の電気的構成を示すブロック図
図7】バッテリの電気的構成を示すブロック図
図8】二次電池セルの断面図
図9】振動の時間変化を示すグラフ
図10】セル電圧の時間変化を示すグラフ
図11】振動の周波数スペクトル
図12】セル電圧の周波数スペクトル
図13】内部短絡の判断フロー
図14】セル電圧と振動の検出タイミングを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<検出装置の概要>
蓄電セルの内部短絡を検出する検出装置は、前記蓄電セルの振動とセル電圧とに基づいて、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出する。
【0014】
この構成では、蓄電セルの内部短絡の有無を、蓄電セルの振動とセル電圧とに基づいて検出する。振動とセル電圧は、自己放電量に比べて短時間で計測出来る。そのため、振動とセル電圧とに基づく内部短絡の検出は、自己放電量に基づく内部短絡の検出に比べて短時間で行うことが出来る。内部短絡の有無の判断要素に、セル電圧だけでなく、振動を加えることにより、セル電圧と振動の関係性に基づいて内部短絡の有無を判断する。セル電圧と振動の関係性に基づくことで、充放電に伴うセル電圧の変化など、振動に依存しない電圧変動を誤って内部短絡と判断することを抑制出来る。そのため、内部短絡の有無を高精度に検出することが出来る。
【0015】
前記検出装置は、前記蓄電セルの振動の周波数スペクトルと、前記蓄電セルのセル電圧の周波数スペクトルとを比較することにより、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出してもよい。
【0016】
蓄電セルの振動とセル電圧の周波数スペクトルを比較することで、振動と同じ周期又は近い周期で変動するセル電圧の変動成分を検出することが出来る。そのため、セル電圧の変動が振動に依存しているか否かを、精度よく判断することができ、内部短絡の検出精度が高くなる。
【0017】
前記蓄電セルの振動とセル電圧のそれぞれの周波数スペクトルにおいて、信号強度が最大となるピーク周波数が一致している場合、前記蓄電セルは内部短絡が発生していると判断してもよい。
【0018】
振動とセル電圧の周波数スペクトルにおいて、信号強度が最大となるピーク周波数が一致している場合、蓄電セルのセル電圧の変動は、振動に依存すると判断出来るので、その蓄電セルは、内部短絡を起こしていると判断出来る。
【0019】
蓄電セルの内部短絡を検出する検出装置は、前記蓄電セルが振動している期間のセル電圧の周波数スペクトルに基づいて、前記蓄電セルの内部短絡の有無を検出してもよい。周波数スペクトルを求めることで、セル電圧に、前記蓄電セルの振動と同じ周波数成分が含まれているか判断出来るので、その蓄電セルが内部短絡をしているか否かを検出することが出来る。
【0020】
蓄電装置は、蓄電セルと、前記蓄電セルの電圧を検出する電圧検出部と、前記検出装置と、を含んでもよい。この構成では、専用の検査装置を使用することなく、蓄電装置にて内部短絡の有無を検出することが出来る。出荷後でも、内部短絡の有無を検出することが出来る。
【0021】
蓄電装置は、前記蓄電セルの振動を検出する第1センサを備えてもよい。この構成では、第1センサにより蓄電セルの振動を直接測定出来るため、蓄電セルの振動を精度よく得ることが出来る。これにより、内部短絡の有無の判断をより精度よく行うことが出来る。
【0022】
前記第1センサは、3軸センサであってもよい。この構成では、蓄電セルに加わる振動の向きに関わらず、振動を検出出来るため、検出漏れを抑制することが出来る。
【0023】
<実施形態1>
1.バッテリの説明
図1は自動車10の側面図、図2はバッテリ50の分解斜視図である。自動車10は、エンジン駆動車であり、バッテリ50を備えている。図1では、自動車10とバッテリ50のみ図示し、自動車10を構成する他の部品は省略している。自動車10は「移動体」の一例、バッテリ50は「蓄電装置」の一例である。
【0024】
バッテリ50は、組電池60と、回路基板ユニット65と、収容体71を備える。
【0025】
図2に示すように、収容体71は、合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は、底面部75と、4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。以下の説明において収容体71の奥行方向をX方向とし、収容体71の幅方向をY方向とし、収容体71の高さ方向をZ方向とする。
【0026】
収容体71は、組電池60と回路基板ユニット65を収容する。組電池60は12個の二次電池セル62を有する。12個の二次電池セル62は、3並列で4直列に接続されている。回路基板ユニット65は、組電池60の上部に配置されている。図7のブロック図では、並列に接続された3つの二次電池セル62を1つの電池記号で表している。二次電池セル62は「蓄電セル」の一例である。
【0027】
蓋体74は、本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は、平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部(図2における左手前側)のうち、一方の隅部に正極の外部端子51が固定され、他方の隅部に負極の外部端子52が固定されている。
【0028】
図3及び図4に示すように、二次電池セル62は、直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。二次電池セル62は一例としてリチウムイオン二次電池である。ケース82は、ケース本体84と、その上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0029】
電極体83は、例えば図5に示すように、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素83Nと、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素83Pとの間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータ83Sを配置したものである。これらはいずれも帯状で、セパレータ83Sに対して負極要素83Nと正極要素83Pとを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0030】
正極要素83Pには正極集電体86を介して正極端子87が、負極要素83Nには負極集電体88を介して負極端子89がそれぞれ接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は、平板状の台座部90と、この台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素83P又は負極要素83Nに接続されている。
【0031】
正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0032】
蓋85は、圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は、図3に示すように、正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95は、ケース82の内圧が制限値を超えた時に、開放して、ケース82の内圧を下げる。
【0033】
図6は自動車10の電気的構成を示すブロック図、図7はバッテリ50の電気的構成を示すブロック図である。
【0034】
自動車10は、図6に示すように、駆動装置であるエンジン20、エンジン制御部21、エンジン始動装置23、車両発電機であるオルタネータ25、一般電気負荷27、車両ECU(電子制御装置:Electronic Control Unit)30、バッテリ50などを備えている。
【0035】
バッテリ50は、電力線37に接続されている。バッテリ50には、電力線37を介して、エンジン始動装置23、オルタネータ25、一般電気負荷27が接続されている。
【0036】
エンジン始動装置23は、セルモータである。イグニッションスイッチ24をオンにすると、バッテリ50からクランキング電流が流れ、エンジン始動装置23が駆動する。エンジン始動装置23の駆動により、クランクシャフトが回転し、エンジン20を始動することがきる。
【0037】
一般電気負荷27は、エンジン始動装置23を除く、自動車10に搭載された電気負荷である。一般電気負荷27は、定格12Vであり、エアコン、オーディオ、カーナビゲーション、補機類などである。
【0038】
オルタネータ25は、エンジン20の動力により発電する車両発電機である。オルタネータ25の発電量が自動車10の電気負荷量を上回っている場合、オルタネータ25によりバッテリ50は充電される。オルタネータ25の発電量が自動車10の電気負荷量よりも小さい場合、バッテリ50は放電し、発電量の不足を補う。
【0039】
車両ECU30は、通信線L1を介してバッテリ50と通信可能に接続されており、通信線L2を介してオルタネータ25と通信可能に接続されている。車両ECU30は、バッテリ50からSOC(充電状態:State of Charge)の情報を受け、オルタネータ25の発電量を制御することで、バッテリ50のSOCをコントロールする。
【0040】
車両ECU30は、通信線L3を介してエンジン制御部21と通信可能に接続されている。エンジン制御部21は、自動車10に搭載されており、エンジン20の動作状態を監視する。エンジン制御部21は、速度計測器などの計器類の計測値から、自動車10の走行状態を監視する。車両ECU30は、エンジン制御部21から、イグニッションスイッチ24の入り切りの情報、エンジン20の動作状態の情報及び自動車10の走行状態(走行中、走行停止、アイドリングストップなど)の情報を得る。
【0041】
バッテリ50は、図7に示すように、電流遮断装置53と、組電池60と、電流センサ54と、管理装置100と、温度センサ115と、第1センサ116と、を備える。バッテリ50は、定格12Vのバッテリである。
【0042】
電流遮断装置53、組電池60及び電流センサ54は、パワーライン55P、55Nを介して、直列に接続されている。パワーライン55Pは、正極の外部端子51と組電池60の正極とを接続する。パワーライン55Nは、負極の外部端子52と組電池60の負極とを接続する。
【0043】
電流遮断装置53は正極のパワーライン55Pに設けられている。電流センサ54は、負極のパワーライン55Nに設けられている。
【0044】
電流遮断装置53は、リレーなどの有接点スイッチ(機械式)や、FETなどの半導体スイッチを用いることが出来る。電流遮断装置53は常時はCLOSEに制御される。バッテリ50に異常がある場合、電流遮断装置53をOPENして電流を遮断することで、バッテリ50を保護する。
【0045】
電流センサ54は、組電池60の電流I[A]を計測して、電流値に応じたレベルの出力信号を制御装置120に出力する。温度センサ115は、接触式あるいは非接触式で、組電池60の温度[℃]を計測し、温度に応じたレベルの出力信号を制御装置120に出力する。
【0046】
第1センサ116は、組電池60の外側に固定されている。第1センサ116は、組電池60の振動Gを検出し、振動Gのレベルに応じた出力信号を制御装置120に出力する。振動Gは加速度や速度変化、位置変化から検出することが出来る。この例では、加速度の変化から振動Gを検出する。第1センサ116は3軸センサであり、XYZの各軸に沿う方向の加速度を別々に検出出来る。第1センサ116は、XYZ軸それぞれの方向の加速度を適宜合成及び分解して、任意の方向の振動成分のみを検出することも出来る。
【0047】
管理装置100は、回路基板ユニット65に設けられている。管理装置100は、電圧検出部110と制御装置120とを備える。
【0048】
電圧検出部110は、信号線によって各二次電池セル62の両端にそれぞれ接続され、各二次電池セル62のセル電圧V[V]を計測し、各二次電池セル62のセル電圧Vのレベルに応じた出力信号を制御装置120に出力する。
【0049】
制御装置120は、演算機能を有するCPU121と、記憶部であるメモリ123と、解析部125と、通信部127と、を含む。
【0050】
制御装置120は、各センサ54、110、115より計測される電流I、各二次電池セル62の電圧V及び温度の情報をモニタして、バッテリ50の状態を監視する。
【0051】
制御装置120は、通信部127を介して、車両ECU30と通信する。制御装置120は、車両ECU30から、自動車10が駐車中か走行中であるかなど、自動車10の状態に関する情報を得る。
【0052】
メモリ123は、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性の記憶媒体である。メモリ123には、組電池60の状態を監視するプログラム、内部短絡の有無を判断する判断フローの実行プログラム及びプログラムの実行に必要なデータが記憶されている。
【0053】
2.内部短絡とその検出原理
内部短絡は、図8に示すように、二次電池セル62の内部で、セパレータ83Sを貫通する短絡物Dにより、正極要素83Pと負極要素83Nが短絡する現象である。内部短絡は、例えば、充電に伴う金属の析出や金属片(異物)の混入により起きることが知られている。
【0054】
図9図10は、二次電池セル62に振動Gを一定期間加え、その期間中におけるセル電圧Vを解析した結果であり、図9は二次電池セル62の振動波形、図10は二次電池セル62の電圧波形である。一点鎖線aは内部短絡が起きている二次電池セル62の電圧波形、実線bは内部短絡が起きていない二次電池セル62の電圧波形である。
【0055】
内部短絡が起きている場合、セル電圧Vは変動しており、内部短絡が起きていない場合、セル電圧Vは一定で変動が無い。
【0056】
セル電圧Vの変動は、二次電池セル62に対して振動Gが加わることで、短絡物Dが電極要素83に接触する状態(内部短絡)と接触しない状態(非内部短絡)を交互に繰り返すことにより、電池内部の抵抗が変動して発生したと考えられる。セル電圧Vの変化量ΔVは、以下の(1)式の通りである。
【0057】
ΔV=(Ri/Rs)×E・・・(1)
Riは二次電池セル62の内部抵抗、Rsは短絡物Dが導通した場合の抵抗値、Eはセル電圧Vである。
【0058】
短絡物Dは二次電池セル62とほぼ同じ周期で振動することから、セル電圧Vは振動Gと同じ周期又は近い周期で変動すると考えられる。従って、二次電池セル62の振動Gとセル電圧Vとに基づいて、二次電池セル62の内部短絡の有無を判断することが出来る。
【0059】
図11は二次電池セル62に加わる振動Gの周波数スペクトル、図12は二次電池セル62のセル電圧Vの周波数スペクトルである。図11図12において、縦軸は信号強度、横軸は周波数である。周波数スペクトルは、解析対象となる信号の強度を、それに含まれる周波数成分ごと分解した強度分布であり、例えば、信号をフーリエ変換等することにより得られる。
【0060】
図12の(a)のデータは、内部短絡が起きていない場合の周波数スペクトルである。内部短絡が起きていない場合、振動Gの有無に拘わらず、二次電池セル62の電圧Vは一定で変化がないことから、直流成分の周波数f0(ゼロ[Hz])のみ検出され、それ以外の帯域の周波数成分は、ほとんど検出されない。
【0061】
図12(b)のデータは、内部短絡が起きている場合の周波数スペクトルである。内部短絡が起きている場合、直流成分の周波数f0だけでなく、それ以外の周波数成分f1~f11が検出される。セル電圧Vは、二次電池セル62に加わる振動Gの周波数成分と同じ帯域f5~f7で信号強度が高い傾向を示しており、両分布は概ね一致する。
【0062】
従って、二次電池セル62の振動Gの周波数スペクトルと、セル電圧Vの周波数スペクトルとを比較することで、内部短絡の有無を高精度に判断することが出来る。
【0063】
例えば、セル電圧Vと振動Gの周波数スペクトルにおいて、直流成分の周波数f0を除く帯域で、信号強度が最大となるピーク周波数が一致している場合、セル電圧Vの変動は、振動Gに依存すると判断出来る。
【0064】
そのため、直流成分の周波数f0を除く帯域で、ピーク周波数fが一致している場合、その二次電池セル62は内部短絡していると判断することが出来る。
【0065】
図11及び図12に示す周波数スペクトルの例では、直流成分の周波数f0を除く帯域を対象として、短絡を起こしている二次電池セル62のセル電圧Vの周波数スペクトル(図12の(b))を、振動Gの周波数スペクトル(図11)と比較すると、双方とも「f6」でピークになっており、ピーク周波数は「f6」で一致している。
【0066】
制御装置120は、CPU121、メモリ123、通信部127に加えて、解析部125を有している。
【0067】
解析部125は、電圧検出部110の出力信号や第1センサ116の出力信号に対して、高速フーリエ変換(FFT)を実行することにより、各二次電池セル62のセル電圧Vの周波数スペクトルの解析、及び組電池60に加わる振動Gの周波数スペクトルを解析する。
【0068】
制御装置120は、セル電圧Vと振動Gの周波数スペクトルの解析結果に基づいて、二次電池セル62の内部短絡を検出する機能を備える。制御装置120は、二次電池セル62の内部短絡を検出する検出装置である。
【0069】
以下、自動車走行中の振動Gを利用して、二次電池セル62の内部短絡を検出する例を説明する。
【0070】
3.走行中の振動を利用した内部短絡の判断フロー
図13は、自動車走行中の振動を利用した内部短絡の判断フローであり、ステップS10~ステップS70の7ステップからなる。この判断フローは、制御装置120により、所定の検出周期(例えば、1日おき)で定期的に実行される。
【0071】
CPU121は、処理が開始されると、自動車10の状態を判定する(S10)。具体的には、車両ECU30との通信により、自動車10が走行中か駐車中か判定する。自動車10が駐車中の場合(S10:NO)、待機状態となる。
【0072】
自動車10が駐車中から走行中に移行すると、車両ECU30から制御装置120に対して「自動車10は走行中」と通知される。
【0073】
CPU121は、「自動車10は走行中」の情報を受けると、第1センサ116により組電池60の振動Gを計測する(S20)。自動車10の走行中、エンジン20の回転や車軸の回転に伴う振動Gがバッテリ50に継続的に加わるため、バッテリ50は振動し、その振動Gが第1センサ116により検出される。
【0074】
電圧検出部110は、自動車10の状態とは無関係に、各二次電池セル62のセル電圧Vを常時計測する。従って、図14に示すように、振動Gの計測開始以降、第1センサ116による振動計測と電圧検出部110による電圧計測が並行して行われ、第1センサ116の出力信号と電圧検出部110の出力信号は、メモリ123に一時的に記憶される。
【0075】
CPU121は、振動Gの計測開始から所定期間(例えば、数分程度)Tsが経過すると、電圧検出部110の出力信号が示すセル電圧Vの変動幅が、所定の閾値(例えば10mV)以下か否かを判断する。セル電圧Vの変動幅が閾値以下である場合は、所定期間Tsに計測された第1センサ116の出力信号と電圧検出部110の出力信号を、メモリ123から解析部125に出力する。一方、電圧の変動幅が閾値よりも大きい場合は、取得したセル電圧Vにノイズが加わっているとして、判断フローを終了する(S25)。
【0076】
解析部125は、第1センサ116の出力信号及び電圧検出部110の出力信号に対して、高速フーリエ変換(FFT)を行い、組電池60の振動Gの周波数スペクトルと、各二次電池セル62のセル電圧Vの周波数スペクトルをそれぞれ求める(S30)。
【0077】
CPU121は、周波数スペクトルの解析が終了すると、各二次電池セル62のセル電圧Vの周波数スペクトルを、振動Gの周波数スペクトルと比較する(S40)。
【0078】
そして、CPU121は、直流成分の周波数f0を除く帯域で、ピーク周波数が一致しているか、否かを判断する(S50)。
【0079】
CPU121は、2つの周波数スペクトルのピーク周波数が一致している場合、その二次電池セル62は内部短絡していると判断し、ピーク周波数が一致していない場合、その二次電池セル62は、内部短絡していないと判断する。CPU121は、ピーク周波数に基づく内部短絡の有無の検査を、全二次電池セル62に対して行う。
【0080】
CPU121は、全二次電池セル62のうち、1つでも異常(内部短絡有り)があった場合、組電池60を「異常」と判断する(S60)。
【0081】
一方、二次電池セル62が全て正常(内部短絡無し)の場合、組電池60を「正常」と判断する(S70)。
【0082】
「正常」と判断された場合(S70)、内部短絡の判断フローは終了する。判断フローの終了から検出周期(例えば、1日)が経過すると、内部短絡の判断フローが再度実行される。そのため、二次電池セル62が内部短絡しているか否かを定期的に確認出来る。
【0083】
そして、二次電池セル62のいずれかで内部短絡が起きると、次のサイクルで内部短絡の判断フローを実行した時に、組電池60は異常と判断される(S60)。
【0084】
組電池60の異常を検出した場合、CPU121は、エラーを報知する。例えば、車両ECU30に異常を通知して自動車10のモニタに「バッテリ交換を促すメッセージ」を表示する。エラーの報知により、ユーザに内部短絡の発生したバッテリ50の交換を促すことが出来る。
【0085】
4.効果説明
この構成では、二次電池セル62の内部短絡の有無を、二次電池セル62の振動Gとセル電圧Vとに基づいて検出する。振動Gとセル電圧Vは、自己放電量に比べて短時間で計測することが可能であり、二次電池セル62の内部短絡の有無を、短時間で検出することが出来る。
【0086】
内部短絡の有無の判断要素に、セル電圧Vだけでなく振動Gを加えて、セル電圧Vと振動Gの関係性に基づいて内部短絡の有無を判断することで、充放電に伴うセル電圧Vの変化など、振動Gに依存しない電圧変動を誤って内部短絡と判断することを抑制出来る。そのため、内部短絡の有無を高精度に検出することが出来る。
【0087】
この構成では、二次電池セル62のセル電圧Vの周波数スペクトルと、二次電池セル62の振動Gの周波数スペクトルとを比較することにより、二次電池セル62の内部短絡の有無を検出する。
【0088】
セル電圧Vと振動Gの周波数スペクトルを比較することで、振動Gと同じ周期又は近い周期で変動するセル電圧Vの変動成分を検出することが出来る。そのため、セル電圧Vの変動が振動Gに依存しているか否かを、精度よく判断することが出来るため、内部短絡の検出精度が高くなる。
【0089】
この構成は、振動Gにより短絡物Dが導通と非導通を繰り返す初期段階の内部短絡(いわゆるソフトショート)の検出に適している。そのため、二次電池セル62の内部短絡を、初期段階で検出することが出来る。リチウムイオン二次電池セル62は、過放電後の充電により、リチウム金属が析出して、内部短絡につながる場合がある。蓄電セルにリチウムイオン二次電池セル62を用いたバッテリ50に、この構成を適用することで、リチウム金属の析出による内部短絡を早期に検出することが出来る。
【0090】
この構成は、二次電池セル62に加わる振動Gとセル電圧Vさえ計測できれば、内部短絡の有無の検出が可能であり、二次電池セル62の充電状態(SOC)や電圧特性(SOC-OCV特性)に関わらず、内部短絡の有無を検出出来るメリットがある。
【0091】
この構成では、電圧検出部110により検出されたセル電圧Vの変動幅が所定の閾値(例えば10mV)以下である場合に、内部短絡の有無を検出する。自動車10等に用いられる二次電池セル62においては、内部短絡が生じていなくても、充放電に伴ってセル電圧Vは変動する。内部短絡に起因するセル電圧Vの変動幅がμV~mVのオーダーであるのに対し、充放電に起因する電圧の変動幅は数十mV~Vのオーダーであり、値が大きい。セル電圧Vの変動幅が閾値よりも大きい場合は、内部短絡ではなく充放電に起因したセル電圧Vの変動であるとして、判断フローは終了する(S25:NO)。
【0092】
上述のように、セル電圧Vの変動幅が閾値を超えた場合には判断フローは終了するが(S25)、車両の走行中は振動が常に生じており、判断フローは走行中に複数回実行される。そのため、最終的な判断(ピーク周波数の一致/不一致)を行わずに判断フローを終了しても、すぐに次の判断フローが実行されて、充放電の影響が除外された判断結果を得ることが出来る。
【0093】
この構成では、二次電池セル62に加わる振動Gを、3軸センサである第1センサ116で測定している。第1センサ116を3軸センサとすることで、二次電池セル62に加わる振動Gの方向や、自動車10におけるバッテリ50(二次電池セル62)の設置の向きに関わらず、より確実に振動Gを検出することが出来る。
【0094】
<実施形態2>
実施形態1では、二次電池セル62の振動Gの周波数スペクトルとセル電圧Vの周波数スペクトルを比較することで、内部短絡の有無を検出した。具体的には、振動Gとセル電圧Vの周波数スペクトルにおいて、信号強度が最大となるピーク周波数が一致している場合、二次電池セル62は内部短絡していると判断した。
【0095】
実施形態2では、実施形態1に対して、振動Gの周波数スペクトルとセル電圧Vの周波数スペクトルの比較の仕方が異なっており、信号強度の高い帯域の重なりに基づいて、内部短絡の有無を判断する。具体的には、2つの周波数スペクトルを比較した結果、信号強度の高い帯域に重なりが有る場合(少なくとも一部に重なりがある場合)、その二次電池セル62は内部短絡していると判断し、信号強度の高い帯域に重なりが無い場合、その二次電池セル62は内部短絡していないと判断する。
【0096】
図11に示す振動Gの周波数スペクトルは、帯域H1にて、信号強度が高い。一方、図12の(b)に示すセル電圧Vの周波数スペクトルは、帯域H2にて、信号強度が高い。2つの帯域H1、H2の少なくとも一部が重なっている場合、その二次電池セル62は内部短絡していると判断される。
【0097】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが出来る。
【0098】
(1)上記実施形態では、蓄電セルとして、二次電池セル62を例示した。蓄電セルは二次電池セル62に限らず、キャパシタでもよい。二次電池セル62は、リチウムイオン二次電池セルに限らず、他の非水電解質二次電池セルでもよい。鉛蓄電池セルでもよい。蓄電セルは、複数を直並列に接続する場合に限らず、直列の接続や、単セルの構成でもよい。
【0099】
(2)上記実施形態では、バッテリ50を自動車用としたが自動二輪用でもよい。船舶用、AGV、航空機用など他の移動体用として使用してもよい。バッテリ50に外部から振動Gを加えることが出来れば、無停電電源システムや太陽光発電システムの蓄電装置など、移動体以外の用途に使用してもよい。
【0100】
(3)上記実施形態では、制御装置120をバッテリ50の内部に設けた。制御装置120はバッテリ50の外部に設けてもよい。つまり、バッテリ50の外に設けた制御装置120で、二次電池セル62の内部短絡の有無を検出してもよい。この場合、制御装置120は、バッテリ50の内部に設けた電圧検出部110と第1センサ116とからセル電圧Vと振動Gの情報を通信により取得して、内部短絡の有無を検出すればよい。
【0101】
(4)上記実施形態では、バッテリ50が第1センサ116を有する場合を例示したが、必ずしもバッテリ50が、振動センサを有していなくてもよい。例えば、自動車10の車体に加わる振動を検出する第2センサが、車体におけるバッテリ50以外の場所に固定されていてもよい。実際の自動車10には、車体に加わる振動を検出するためのセンサ(第2センサ)を有している場合があり、この第2センサを利用することができる。この場合、第2センサの出力信号が通信部127で受信され、組電池60の振動Gの検出信号に代えて利用される。
【0102】
バッテリ50は自動車10の車体に固定されており、車体に振動が加わるときは、同時に同方向の振動がバッテリ50及び二次電池セル62に加わる。そのため、二次電池セル62の振動Gを、第2センサが検出した振動で代用することが出来る。この場合、バッテリ50の内部に配されるセンサ(第1センサ116)が不要になり、バッテリ50の部品点数の減少による故障リスクの低減、コストダウン、及びセンサの故障診断における診断工数の削減を実現出来る。
【0103】
(5)組電池60や車体の振動Gは、必ずしもリアルタイムに計測する必要はなく、同じ状況で計測した過去のデータや実験で求めたデータを用いてもよい。例えば、同じ自動車10の場合、自動車走行中における組電池60や自動車10の振動Gの周波数スペクトルはそれほど変化がないと考えられるので、過去に計測した振動Gの周波数スペクトルを比較用のデータとしてメモリ123に記憶しておき、それをセル電圧Vの周波数スペクトルと比較して、内部短絡の有無を検出してもよい。
【0104】
(6)上記実施形態では、自動車走行中の所定期間Tsのみ、第1センサ116で組電池60に加わる振動Gを計測したが、振動Gの計測は常時行ってもよい。自動車が走行中であるか否かに拘わらず、計測結果から組電池60の振動Gが検出された場合に、二次電池セル62の振動Gとセル電圧Vとに基づいて、内部短絡の有無を検出してもよい。
【0105】
(7)上記実施形態では、セル電圧Vと振動Gの周波数スペクトルを比較することにより、二次電池セル62の内部短絡の有無を検出した。二次電池セル62のセル電圧Vと振動Gに基づいて、内部短絡の有無を検出するものであれば、必ずしも周波数スペクトルを用いる必要はない。例えば、セル電圧Vが変動する期間(図9のT1)と振動Gの発生する期間(図10のT2)が一致しているか否かにより、内部短絡の有無を検出してもよい。
【0106】
(8)上記実施形態では、二次電池セル62のセル電圧Vと振動Gとに基づいて、内部短絡の有無を検出した。これ以外にも、自動車走行中のセル電圧Vの周波数スペクトルに基づいて、内部短絡の有無を検出してもよい。つまり、振動Gのデータを使用せずに、自動車走行中など、組電池60に振動Gが加わっている期間のセル電圧Vの周波数スペクトルのみに基づいて、内部短絡の有無を検出してもよい。例えば、自動車走行中に4つの二次電池セル62のセル電圧Vをそれぞれ計測して、各セル電圧Vの周波数スペクトルを解析する。そして、各二次電池セル62の周波数スペクトルを比較し、他セルで検出されない強度の周波数成分(例えば、f6、f7)を含んでいるなど、周波数スペクトルが他セルと異なる場合、その二次電池セル62は内部短絡していると判断してもよい。比較対象は、他セルの周波数スペクトルに限らず、内部短絡を起こしていない自セルの過去の周波数スペクトルでもよい。
【0107】
(9)上記実施形態では、第1センサ116は、全方向の成分を含む二次電池セル62の振動から、加速度の大きさのみを検出した。これ以外にも、振動センサは、複数の方向、例えばXYZのそれぞれの方向における加速度と、セル電圧Vと、に基づいて内部短絡の有無を検出してもよい。例えば、二次電池セル62の内部における極板の積層方向(図5におけるY方向)の加速度が検出された期間にのみ、セル電圧Vが変動する場合には、二次電池セル62で内部短絡が発生していることをより高精度に判断できる。
【0108】
(10)上記実施形態では、振動Gとセル電圧Vの周波数スぺクトルの解析を解析部125で行ったが、CPU121で行ってもよい。
【0109】
(11)上記実施形態では、自動車走行中の振動Gを利用して二次電池セル62の内部短絡を検出した。二次電池セル62に加わる振動は、自動車走行に伴う振動に限定されない。振動発生器など、どのような方法でバッテリ50に振動を加えてもよい。
【0110】
(12)上記実施形態では、第1センサ116として3軸センサを用いているが、第1センサ116及び第2センサとして、単軸、2軸、その他多軸センサを用いてもよい。
【0111】
(13)上記実施形態では、セル電圧Vの変動幅が閾値以下の場合に(S25:YES)内部短絡の有無を判断した(S30~S70)。しかし、閾値に基づく判断は付随的な処理であり、セル電圧Vの変動幅を考慮せずに内部短絡の有無を判断してもよい。
【符号の説明】
【0112】
10: 自動車(「移動体」の一例)
50: バッテリ(「蓄電装置」の一例)
60: 組電池
62: 二次電池セル(「蓄電セル」の一例)
100: 管理装置(「制御部」の一例)
110: 電圧検出部
116: 第1センサ
120: 処理部
121: CPU
123: メモリ
127: 通信部
図1
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図3
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図5
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