(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】水分散型活性エネルギー線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20250212BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20250212BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20250212BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20250212BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20250212BHJP
C08J 3/02 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C08F299/00
C09D133/04
C09D133/14
C09D5/02
C09D7/40
C08J3/02 C CEY
(21)【出願番号】P 2020185352
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】望月 克信
(72)【発明者】
【氏名】岩見 みづほ
(72)【発明者】
【氏名】神戸 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 栄一
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-248023(JP,A)
【文献】特開2008-214494(JP,A)
【文献】特開2011-209354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート重合体(A)〔以下、「成分(A)」という〕を含み、成分(A)が水中に分散してなる組成物であって、組成物全量中の有機溶媒含有量が5重量%未満であ
り、成分(A)のアクリル当量が3000g/eq以下である水分散型活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)に由来する構成単位と、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)に由来する構成単位とを有する共重合体(a1)(以下、「共重合体(a1)」という)と、前記反応
性基に反応する基と、アクリロイル基とを有する化合物(a2)(以下、「不飽和化合物(a2)」という)との反応物である請求項1に記載の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記共重合体(a1)を構成する反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)が、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれた反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体である請求項2に記載の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記不飽和化合物(a2)がガラス転移温度(Tg)が-30~-90℃のアクリレートオリゴマーである請求項2又は3に記載の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
前記成分(A)を前記組成物全量に対して15~60重量%の割合で含む請求項1~4のいずれか1項に記載の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
活性エネルギー線が電子線である請求項1~5のいずれか1項に記載の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を含むコーティング剤用硬化性組成物。
【請求項8】
側鎖にアクリロイル基を有し、かつ、アクリル当量が3000g/eq以下の(メタ)アクリレート重合体(A)、界面活性剤(C)及び水溶性有機溶媒(D)を、水に混合して分散させた後、減圧下に加熱して、組成物全量中の有機溶媒含有量を5重量%未満とする水分散型活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性に優れ、実質的に有機溶媒を含まず、環境負荷の低く、その硬化物が引張物性及び耐候性に優れる水分散型活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線、可視光線及び電子線等の活性エネルギー線をごく短時間照射することで硬化可能であり、熱硬化等と比較して、硬化時間が短く、硬化のために必要とするエネルギーが少ない等のプロセス上のメリットを有している。
【0003】
一方、アクリル系重合体は、他の重合体と比較して、引張強度及び伸び等の引張物性、並びに耐候性が優れるメリットを有している。
【0004】
そこで、これらを両立する重合体として、側鎖にアクリロイル基を有するアクリル系重合体、いわゆる、アクリルアクリレートが知られている(特許文献1~3参照)。
しかしながら、これらのアクリルアクリレートは、有機溶媒系で使用されており、環境負荷が高いという問題があった。
【0005】
従来、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系重合体の水分散体も提案されている(特許文献4~7)。しかし、これらの水分散体の多くは、カルボン酸基含有ポリマーにグリシジルメタクリレートを付加したものであり、側鎖がメタクリロイル基であるため、硬化速度が遅いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭58-25365号公報
【文献】特開平04-366178号公報
【文献】特開2011-57905号公報
【文献】特開平10-195142号公報
【文献】特開平10-195361号公報
【文献】特開平10-195371号公報
【文献】特開平10-195372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、硬化性に優れ、実質的に溶媒を含まず、環境負荷が低く、その硬化物が引張物性及び耐候性に優れる水分散型活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(メタ)アクリレート重合体の側鎖にアクリロイル基を導入することにより、前記課題を解決でき、硬化性に優れ、実質的に溶媒を含まず、環境負荷が低く、その硬化物が引張強度及び伸び等の引張物性及び耐候性に優れる水分散型活性エネルギー線硬化性組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート重合体(A)〔以下、「成分(A)」ともいう〕を含み、成分(A)が水中に分散してなる組成物であって、組成物全量中の有機溶媒含有量が5重量%未満である水分散型活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
前記成分(A)としては、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)に由来する構成単位と、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)に由来する構成単位とを有する共重合体(a1)(以下、「共重合体(a1)」という)と、前記反応基に反応する基と、アクリロイル基とを有する化合物(a2)(以下、「不飽和化合物(a2)」という)との反応物が好ましい。
【0010】
又、前記共重合体(a1)を構成する反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)が、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれた反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体であることが好ましい。
さらに、前記不飽和化合物(a2)がガラス転移温度(Tg)が-30~-90℃のアクリレートオリゴマーであることが好ましい。
前記組成物は、成分(A)を前記組成物全量に対して15~60重量%の割合で含むものが好ましい。
【0011】
活性エネルギー線としては、電子線が好ましい。
さらに、本発明の組成物は、コーティング剤用硬化性組成物として好ましく使用することができる。
組成物の製造方法としては、前記成分(A)、界面活性剤(C)及び水溶性有機溶媒(D)を、水に混合して分散させた後、減圧下に加熱して、組成物全量中の有機溶媒含有量を5重量%未満とする方法が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性成分として側鎖にアクリロイル基を有する水分散性(メタ)アクリレート重合体を含有するので、側鎖にメタクリロイル基を有する水分散性(メタ)アクリル酸エステル重合体を硬化性成分として含有する従来の硬化性組成物と比較して、硬化性に優れ、他の有機溶媒系硬化性組成物と比較して、環境への影響が少ない。さらに加えて、その硬化物は、引張強度及び伸び等の引張物性、並びに耐候性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート重合体(A)〔成分(A)〕を含み、成分(A)が水中に分散してなる組成物であって、組成物全量中の有機溶媒含有量が5重量%未満である水分散型活性エネルギー線硬化性組成物(以下、単に「組成物」ともいう)関する。
以下、成分(A)、水分散型活性エネルギー線硬化性組成物、及び使用方法について説明する。
尚、本発明において、「(メタ)アクリレート重合体」とは、構成単位の主成分として(メタ)アクリレートを含有する重合体を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。
【0014】
1.成分(A)
成分(A)は、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート重合体である。
前記した通り、(メタ)アクリレート重合体とは、構成単位の主成分として(メタ)アクリレートを含有する重合体を意味し、全構成単量体単位中に、(メタ)アクリレートを80~100重量%含む重合体を意味する。
成分(A)は、従来の重合方法により製造可能であり、その製造方法は特に限定されないが、代表的には、(メタ)アクリレート重合体の側鎖に適当な原子又は原子団を介してアクリロイル基を結合させた重合体が挙げられる。
成分(A)の好ましい例としては、例えば、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)(以下、「単量体(a1-1)」ともいう)に由来する構成単位と、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体(a1-2)(以下、「単量体(a1-2)」ともいう)に由来する構成単位とからなる共重合体(a1)(以下、「共重合体(a1)」ともいう)と、前記反応基と反応する基とアクリロイル基とを有する化合物(a2)(以下、「不飽和化合物(a2)」ともいう)の反応物等が挙げられる。
即ち、成分(A)としては、共重合体(a1)を幹ポリマーとし、当該幹ポリマーの反応性基と、不飽和化合物(a2)の反応性基と反応させることにより得られた、アクリロイル基を側鎖として結合させた重合体が好ましい。
以下、共重合体(a1)、不飽和化合物(a2)、成分(A)の製造方法、及び成分(A)の物性について説明する。
【0015】
(1)共重合体(a1)
成分(A)の原料共重合体である共重合体(a1)は、単量体(a1-1)に由来する構成単位と、単量体(a1-2)に由来する構成単位とからなる共重合体である。
以下、単量体(a1-1)及び単量体(a1-2)について説明する。
【0016】
(1-1)単量体(a1-1)
単量体(a1-1)は、反応性基を有しない(メタ)アクリレート系単量体(a1-1)である。
単量体(a1-1)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;
N-(メタ)アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;並びに
アクリロニトリル及びメタクロニトリル等が挙げられる。
【0017】
(1-2)単量体(a1-2)
単量体(a1-2)は、反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体である。
単量体(a1-2)としては、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソシアネート基からなる群より選ばれた反応性基を有する(メタ)アクリレート系単量体が好ましい。
【0018】
反応性基としてエポキシ基を有する単量体(a1-2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0019】
反応性基としてヒドロキシル基を有する単量体(a1-2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0020】
反応性基としてイソシアネート基を有する単量体(a1-2)としては、例えば、(メタ)アクリロキシエチルイソシアネートが挙げられ、具体的な製品としては、「カレンズMOI」、「カレンズAOI」(何れも商品名、昭和電工製)が挙げられる。
【0021】
反応性基としてカルボキシル基を有する単量体(a1-2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、β―カルボキシエチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートの無水フタル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートの無水コハク酸付加物、ジペンタエリスリトールトリアクリレートの無水コハク酸付加物、ジペンタエリスリトールトリアクリレートの無水フタル酸付加物等が挙げられる。
【0022】
(1-3)好ましい共重合割合
共重合体(a1)中の単量体(a1-1)と単量体(a1-2)との共重合割合としては、目的とする成分(A)におけるアクリロイル基のアクリロイル基当量に応じて設定すれば良く、単量体(a1-1)と単量体(a1-2)の合計100重量%中に、単量体(a1-1)を5~70重量%であることが好ましく、15~50重量%であることがより好ましく、20~40重量%であることがさらにより好ましい。
【0023】
(1-4)共重合体(a1)の重合方法
不飽和化合物(a2)で変性する前の共重合体(a1)の製造方法としては、特に制限はないが、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の公知の方法を用いることができる。
これらの中でも、重合体の製造が容易、かつ乳化剤等の不純物を含まない点で、塊状重合、溶液重合が好ましい。
【0024】
(1-4-1)溶液重合
溶液重合法としては、使用する原料モノマーを有機溶媒に溶解し、熱重合開始剤を添加し、加熱攪拌する方法が挙げられる。溶液重合法でラジカル重合により合成する場合は、使用する原料モノマーを有機溶媒に溶解し、熱ラジカル重合開始剤を添加し、加熱攪拌することにより得られる。又、必要に応じて、重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤を使用することができる。
【0025】
溶液重合法に用いられる有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;並びにヘキサン、ヘプタン及びミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0026】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル及びアゾビスシアノバレリックアシッド等のアゾ系開始剤;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジt-ブチルパーオキシド及びジクミルパーオキシド等の有機過酸化物;並びに過酸化水素-鉄(II)塩、ペルオキソ二硫酸塩-亜硫酸水素ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド-鉄(II)塩等が挙げられる。
熱重合開始剤の使用割合は、目標とする分子量に応じて適宜設定すれば良い。熱ラジカル重合開始剤の使用割合は、使用する全モノマーの合計100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましい。
【0027】
(1-4-2)塊状重合
塊状重合法としては、特開昭57-502171号公報、特開昭59-6207号公報、特開昭60-215007号公報等に開示された公知の方法が挙げられる。
例えば、加圧可能な反応機を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、各単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応器へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の重合液を抜き出す方法が挙げられる。
又、単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を配合することもできる。その配合する場合の配合量としては、単量体混合物100重量部に対して0.001~2重量部であることが好ましい。
圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、所定の反応温度を維持できる圧力であればよい。
単量体混合物の滞留時間は、1~60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が十分に反応しない恐れがあり、滞留時間が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2~40分である。
【0028】
共重合体(a1)を得るために用いる重合開始剤の例としては、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば何でもよい。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤はこれらの内の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
重合開始剤の使用量は、重合開始剤及び単量体の種類、所望する分子量、重合条件等により適宜調整することができるが、一般的には、使用する単量体100重量部に対して0.001~10重量部である。
【0030】
共重合体(a1)の製造に有機溶媒を用いる場合、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。(メタ)アクリレート共重合体をよく溶解しない有機溶媒では、反応器の壁にスケールが成長しやすく洗浄工程等で生産上の問題がおきやすい。
【0031】
有機溶媒の使用量は、全ビニル単量体100重量部に対して、80重量部以下とすることが好ましい。80重量部以下とすることにより、短時間で高い転化率が得られる。より好ましくは、1~50重量部である。又、オルト酢酸トリメチル、オルト蟻酸トリメチル等の脱水剤を添加することもできる。
共重合体(a1)の製造には、公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0032】
反応器から抜き出された反応液は、そのまま次の工程に進むか、あるいは蒸留等により未反応単量体、有機溶媒、及び低分子量オリゴマー等の揮発性成分を留去することによって重合体を単離することができる。反応液から留去した未反応単量体、有機溶媒、及び低分子量オリゴマー等の揮発性成分の一部を原料タンクに戻すか又は直接反応器に戻し、再度重合反応に利用することもできる。
このように未反応単量体及び有機溶媒をリサイクルする方法は経済性の面から好ましい方法である。リサイクルする場合には、反応器内で望ましい単量体比と望ましい有機溶媒量を維持するように新たに供給する単量体混合物の混合比を決定する必要がある。
【0033】
(1-5)共重合体(a1)の物性
共重合体(a1)の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、通常1500~50000であり、1500~40000が好ましく、さらに好ましくは、2000~30000、さらにより好ましくは、2500~25000、特に好ましくは3000~15000である。Mwが50000以下であることにより、得られる成分(A)は比較的高濃度でも低粘度化できるため、塗工性が良くなり、又、他の硬化性樹脂と混合した場合、相溶性が良くなる。Mwが1500以上であることにより、得られた成分(A)の硬化物は、耐候性、引張物性が優れたものとなる。
尚、本発明におけるMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)によって測定された分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0034】
共重合体(a1)のガラス転移温度(以下、「Tg」という)については、特に制限はないが、通常-40℃以上90℃以下であり、0℃以上90℃以下であることが好ましい。0℃以上であることにより、硬化物の強度が優れたものとなり、90℃以下であることにより、硬化物の柔軟性に優れたものとなる。さらに好ましくは、30~80℃である。
【0035】
尚、本発明において、Tgとは、TA Instrument製(Q-100)等の示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと変曲点での接線の交点から決定したものを意味する。熱流束曲線は窒素雰囲気下で試料約10mgを-100℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/分で300℃まで昇温し、引き続き-100℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/分で350℃まで昇温する条件で得られる。
【0036】
特開2014-115538号公報に開示されているような通常の溶液重合法の場合、重合温度が比較的低温であるため、共重合反応性比の影響を受け、官能基の個数が重合体分子ごとに偏りを持つことになる。一方、高温重合の場合、共重合反応性比の影響が低くなり、かつ連続重合した場合、一定の重合体が生成し続けるため、分子ごとの官能基の個数の偏りは極めて小さくなる。
又、通常の溶液重合と高温重合を比較すると、同じ分子量の重合体を合成する場合、高温重合の方が、重合開始剤の使用量が少なくなり、開始剤残渣の量も少なくなるため、耐候性が良くなる。特に、電子線硬化の場合、硬化反応において光開始剤等の重合触媒を使用しないため、重合体に含まれる開始剤残渣の量は、耐候性の影響に顕著に表われる。
したがって、本発明で使用する共重合体(a1)は、一般的に、末端二重結合濃度が0.5meq/g以下のものが好ましく、0.4meq/g以下のものがより好ましい。末端二重結合濃度が0.5meq/g以下である場合、硬化速度の低下を抑制することができる。又、本発明において、共重合体(a1)として高温連続重合で得られたものを用いる場合、共重合体(a1)の末端二重結合濃度は、0.02meq/g以上0.5meq/g以下が好ましい。0.02meq/g以上であることにより、硬化時の急速な硬化が抑制され、残留応力が残りにくくなるため力学物性が良くなる。
【0037】
(2)不飽和化合物(a2)
不飽和化合物(a2)は、共重合体(a1)の反応基に反応する基とアクリロイル基とを有する化合物である。
上記のとおり、上記成分(A)は、上記重合方法等により得られた共重合体(a1)における反応性基を、上記不飽和化合物(a2)の反応性基と反応させことにより得られる。より具体的には、上記反応性基を有する共重合体(a1)に、上記反応性基を介して、上記不飽和化合物(a2)を化学的に結合させて付加することにより得られる。
【0038】
上記共重合体(a1)が上記反応性基としてエポキシ重合体又はヒドロキシル基を有する場合、上記不飽和化合物(a2)としては、上記反応性基と反応する官能基としてカルボキシル基又はイソシアネート基を有する化合物が使用できる。
カルボキシル基を有する不飽和化合物(a2)としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、アクリル酸のγ-ブチロラクトン付加物、及びアクリル酸のδ-バレロラクトン付加物等が挙げられる。
その他の具体例としては、アクリル酸のε-カプロラクトン付加物等が挙げられる。
アクリル酸のε-カプロラクトン付加物は市販されており、アロニックスM-5300〔東亞合成(株)製商品名。ポリカプロラクトン鎖長≒2)が挙げられる。
【0039】
イソシアネート基を有する不飽和化合物(a2)としては、2-(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート及び片末端がイソシアネート基であるウレタンアクリレート等が挙げられる。
片末端がイソシアネート基であるウレタンアクリレートは、ジオールとジイソシアネートを反応させて両末端にイソシアネート基を有する化合物を製造し、これと水酸基含有アクリレートを反応させた化合物が挙げられる。この場合、ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソアネート等が挙げられ、ジオールとしては、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。水酸基含有アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
当該化合物の製造方法としては、例えば、ジオクチルスズ等のスズ系触媒存在下、有機溶媒中でジイソシアネート類とジオール類を反応させて両末端にイソシアネート基を有する化合物を得た後、重合禁止剤存在下、水酸基含有アクリレート類を反応させる方法等が挙げられる。
【0040】
上記共重合体(a1)が上記反応性基としてイソシアネート基又はカルボキシル基を有する共重合体の場合、不飽和化合物(a2)としては、上記反応性基と反応する官能基として、ヒドロキシル基を有する化合物を使用することができる。
ヒドロキシル基を有する不飽和化合物(a2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート等が挙げられる。
その他の具体例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン付加物、アクリル酸のポリプロピレングリコール付加物、アクリル酸のポリエチレングリコール付加物、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのポリ(3-ヒドロキシブチレート)付加物、アクリル酸のポリテトラメチレングリコール付加物等が挙げられる。
これら2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン付加物は市販されており、プラクセルFA5〔ダイセル(株)製製商品名。以下同様。〕、プラクセルFA2D(分子量344)等が挙げられる。
【0041】
不飽和化合物(a2)としては、これらの化合物の中でも、アクリレートオリゴマーが好ましく、さらに、硬化物のTgが-30~-90℃であるアクリレートオリゴマーがより好ましい。
尚、本発明においてオリゴマーとは、分子量250以上2,000以下の化合物を意味する。
カルボキシルヒドロキシル基を有するアクリレートオリゴマーとしては、例えば、アクリル酸のε-カプロラクトン付加物が挙げられる。
アクリル酸のε-カプロラクトン付加物は市販されており、アロニックスM-5300〔東亞合成(株)製商品名。Tg=-78℃、ポリカプロラクトン鎖長≒2)が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するアクリレートオリゴマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン付加物、アクリル酸のポリプロピレングリコール付加物、アクリル酸のポリエチレングリコール付加物、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのポリ(3-ヒドロキシブチレート)付加物、及びアクリル酸のポリテトラメチレングリコール付加物が挙げられる。
2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン付加物は市販されており、プラクセルFA2D(Tg=-78℃)が挙げられる。
アクリル酸のポリプロピレングリコール付加物としては、Tg=-75℃の化合物が例示され、アクリル酸のポリエチレングリコール付加物としては、Tg=-41℃の化合物が例示され、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのポリ(3-ヒドロキシブチレート)付加物としては、Tg=-40℃の化合物が例示され、及びアクリル酸のポリテトラメチレングリコール付加物としては、Tg=-84℃の化合物が例示される。
イソシアネート基を有するアクリレートオリゴマー(a2)としては、例えば、片末端がイソシアネート基であるウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0042】
(3)成分(A)の製造方法
成分(A)は、共重合体(a1)の反応性基と、不飽和化合物(a2)における前記反応性基と反応性を有する基を反応させることより製造することが好ましい。
すなわち、共重合体(a1)に上記不飽和化合物(a2)を付加する反応としては、反応性基としてエポキシ基又はヒドロキシル基を有する共重合体(a1)に、カルボキシル基を有する不飽和化合物(a2)を反応させる方法、及び、反応性基としてイソシアネート基又はカルボキシル基を有する共重合体(a1)に、ヒドロキシル基を有する不飽和化合物(a2)を反応させる方法が挙げられる。
【0043】
共重合体(a1)と不飽和化合物(a2)の反応割合としては、製造する成分(A)の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
共重合体(a1)が有する反応性基の1モルに対して、不飽和化合物(a2)が有する反応性基が、0.5~1.5モルが好ましく、より好ましくは0.8~1.2モル、さらに好ましくは0.9~1.1モルである。
【0044】
エポキシ基を有する共重合体(a1)に、カルボキシル基を有する不飽和化合物(a2)を反応させて付加する方法としては、エポキシ基を有する共重合体(a1)、カルボキシル基を有する不飽和化合物(a2)、触媒、及び溶媒を混合した状態で、60~120℃に加熱し、5~30時間程度加熱する方法が挙げられる。
【0045】
エポキシ基を有する共重合体(a1)とカルボキシル基を有する不飽和化合物(a2)の反応割合としては、エポキシ基を有する共重合体(a1)のエポキシ基1モルに対して、カルボキシル基を有する不飽和化合物(a2)のカルボキシル基が0.5~1.5モルが好ましく、より好ましくは0.8~1.2、さらに好ましくは0.9~1.1である。
【0046】
触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンが挙げられる。これらのうちで、硬化物の耐熱性試験後の着色が少ないという点で、トリフェニルホスフィンを使用することが好ましい。
【0047】
触媒の添加量は、エポキシ基を有する共重合体(a1)及びカルボンキシル基を有する不飽和化合物(a2)の合計量に対して、0.5~5重量%程度が好ましい。
【0048】
有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。尚、エポキシ基を有する共重合体(a1)が液状である場合には、有機溶媒無添加で変性反応を行うこともできる。
【0049】
ヒドロキシル基を有する共重合体(a1)に、カルボキシル基を有する不飽和化合物(a2)を反応させる方法としては、一般的な脱水エステル化の方法が挙げられる。ヒドロキシル基を有する共重合体(a1)、カルボキシル基を有する不飽和化合物(a2)、触媒、及び溶媒を混合した状態で、100~120℃で加熱し、溶媒及び生成する水を共沸脱水することにより反応を進行させる方法が挙げられる。
【0050】
触媒としては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及び硫酸が挙げられ、触媒の使用量としては、反応させる水酸基のモル数に対して、0.05~5mol%用いられる。
【0051】
溶媒としては、脱水エステル化反応で生成する水との溶解度が低く、水を共沸させて留去しながら反応を進行できる有機溶媒を使用することが好ましい。好ましい有機溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、並びにメチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトンが挙げられる。溶媒の割合は、反応液全量に対して30~70重量%が好ましい。
【0052】
反応後、水又はアルカリ水溶液により酸を除去することが一般的である。
【0053】
イソシアネート基を有する共重合体(a1)に、ヒドロキシル基を有する不飽和化合物(a2)を反応させて付加する方法としては、イソシアネート基を有する共重合体(a1)をヒドロキシル基を有する不飽和化合物(a2)と混合後、必要に応じて、ジブチルスズジラウレート等の硬化触媒を添加し、60~100℃に加熱する方法が挙げられる。
【0054】
カルボキシル基を有する共重合体(a1)に、ヒドロキシル基を有する不飽和化合物(a2)を反応させて付加する方法としては、カルボキシル基を有する共重合体(a1)とヒドロキシル基を有する不飽和化合物(a2)を混合後、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、Nafion-H等の触媒を加え、場合によって、トルエン等の有機溶媒の存在下80~120℃に加熱し、エステル化反応を進行させるとともに生成する水を留去する方法が挙げられる。
さらに、反応後に残留した触媒は、水洗、アルカリ中和、イオン交換樹脂、触媒除去用ケミカルフィルター、及びろ過等の方法を一つ又は二つ以上組み合わせることにより除去できる。
【0055】
又、上記何れの変性方法の場合も、ゲル化を抑制する目的、又は、変性物である成分(A)の貯蔵安定性を向上させる目的で、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、メトキシフェノール、ハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。硬化物の着色抑制の観点から、ジブチルヒドロキシトルエンを用いることが特に好ましい。
【0056】
(4)成分(A)の物性(アクリル当量及び分子量)>
成分(A)のアクリル当量は、3000g/eq以下が好ましく、より好ましくは150g/eq以上2500g/eq以下であり、更により好ましくは300g/eq以上2000g/eq以下であり、更により好ましくは400g/eq以上1400g/eq以下、特に好ましくは700g/eq以上1000g/eq以下である。
アクリル当量が150g/eq以上であることにより、硬化物の伸び率、柔軟性を確保することができ、3000g/eq以下であることにより、硬化物の強度及び耐候性を確保することができ、又硬化速度を良好に維持できる。
【0057】
本発明において、アクリル当量(g/eq)はアクリロイル基1当量(eq)あたりの重量(g)を表し、数値が大きくなるほどアクリロイル基の濃度は低くなり、数値が小さくなるほどアクリロイル基の濃度は高くなる。
【0058】
アクリル当量は以下の式で求められる。以下の式中、成分(A)のアクリロイル基のモル数は、上記変性反応で共重合体(a1)に付加した不飽和化合物(a2)のアクリルロイル基のモル数であり、上記変性反応後に混在する未反応の不飽和化合物(a2)に由来するアクリロイル基は除外される。
【0059】
【0060】
成分(A)の分子量は、Mwで、2,000~60,000が好ましく、2,000~50,000がより好ましい。
Mwが2,000以上であることにより、硬化物が耐候性、引張物性が優れたものとなり、60,000以下であることにより、比較的高濃度でも低粘度化できるため、塗工性に優れ、又、他の硬化性化合物と混合した場合、相溶性に優れたものとなる。成分(A)のMwとしては、より好ましくは、3,000~40,000、さらにより好ましくは30,00~30,000であり、なおさらにより好ましくは、4,000~20,000である。
又、成分(A)の数平均分子量(以下、「Mn」という)としては、1,000~30,000が好ましい。
Mnが1,000以上であることにより、硬化物が耐候性、引張物性が優れたものとなり、30,000以下であることにより、比較的高濃度でも低粘度化できるため、塗工性に優れ、又、他の硬化性化合物と混合した場合、相溶性に優れたものとなる。成分(A)のMnとしては、より好ましくは、1,500~15,000、さらに好ましくは、2,000~10,000、なおさらに好ましくは、2,500~7,000である。
尚、本発明におけるMnとは、GPCによって測定された分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0061】
2.水分散型活性エネルギー線硬化性組成物
本発明は、成分(A)を含み、成分(A)が水中に分散してなる組成物であって、組成物全量中の有機溶媒含有量が5重量%未満である水分散型活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
成分(A)を水中に分散させる方法は、常法に従えば良い。
【0062】
(1)水性化
共重合体(a1)と不飽和化合物(a2)の反応を有機溶媒中で行った場合は、その後、水性化を行い成分(A)の水分散体とする方法等が挙げられる。
水性化は、例えば、上記反応で得られた成分(A)の有機溶媒溶液に、水〔以下、「成分(B)」ともいう〕及び界面活性剤(分散剤)〔以下、「成分(C)」ともいう〕を添加して、撹拌及び混合して成分(A)を水中に分散させ、減圧加熱により有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。
この場合、有機溶媒含有量を5重量%未満となるまで脱溶媒する必要があり、好ましくは3重量%未満であり、より好ましくは1.5重量%未満である。
【0063】
他の水性化の方法としては、予め単離された成分(A)に対して、水〔成分(B)〕及び成分(C)を添加して撹拌することにより行うこともできる。
成分(A)が有機溶媒を含んだ混合液である場合には、上述のとおり、減圧加熱や蒸留により有機溶媒を留去することが一般的である。
【0064】
又、成分(A)(又はその有機溶媒混合液)が水に不溶の場合には、水及び成分(C)を添加しても、変性体が沈殿し、系の均一性が保てず、均質な分散体が得られない場合がある。
そのような場合には、水〔成分(B)〕及び成分(C)を添加する前、又は同時に、水溶性有機溶媒〔以下、「成分(D)」ともいう〕を添加して水分散体とし、その後、成分(D)を蒸留により留去することもできる。
【0065】
成分(C)としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、及び両性イオン性乳化剤等の各種の乳化剤を用いることができる。
アニオン性乳化剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、高分子乳化剤等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系乳化剤、ソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、グリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリカルボン酸系高分子乳化剤、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
カチオン性乳化剤としては、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジミチルアミンオキシド等が挙げられる。
成分(C)としては、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
成分(C)としては、これら乳化剤の中でも、ノニオン性界面活性剤が特に好ましい。
【0066】
成分(C)の添加割合としては、成分(A)を100重量部に対して、又は、後記する成分(E)を含む場合には、成分(A)及び成分(E)の合計量100重量部に対して、成分(C)の純分として、0.5~15重量部が好ましく、より好ましくは1~10重量部、さらに好ましくは2~7重量部である。
成分(C)を0.5重量部以上とすることで、分散安定性を良好にすることができ、15重量部以下とすることで、硬化物の耐水性が良好となる。
【0067】
成分(D)としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、及びtert-ブチルアルコール等の炭素数1~4のアルキルアルコール類;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、及びジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、及びジエチレングリコール等のアルキレン基が2~6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;
グリセリン、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、及びトリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;
N-メチル-2-ピロリドン、及び2-ピロリドン等のピロリドン類;並びに
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0068】
成分(D)は、上記の化合物を、必要に応じ、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
(2)その他の成分
本発明の組成物には、目的に応じて種々に成分を配合することができる。
好ましい成分としては、成分(A)以外のエチレン性不飽和化合物(以下、「成分(E)」ともいう)、及び光重合開始剤(以下、「成分(F)」ともいう)等が挙げられる。
又、上記成分以外に、分散剤、消泡剤、粘性調整剤、増粘剤、レベリング剤、垂れ防止剤、顔料、pH調整剤、架橋剤、可塑剤、安定剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、成膜助剤、溶剤、抗菌剤、酸化防止剤、光安定剤、及び紫外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
尚、組成物に顔料を配合する場合は、さらに、分散剤を配合することが好ましく、水系用分散剤がより好ましい。
水系用分散剤としては、前記で成分(C)の例として挙げた化合物等が挙げられ、これらの中でも、特に、ポリカルボン酸系高分子乳化剤であるカルボキシル基含有ポリマーのアミン又はアンモニア等の中和塩が好ましい。
ポリカルボン酸系高分子乳化剤の具体例としては、市販されており、フローレンG-700AMP〔共栄社化学(株)製〕、フローレンGW-1640〔共栄社化学(株)製〕、ノプコール5200〔サンノプコ(株)製〕、ノプコスパース6100〔サンノプコ(株)製〕、DISPERBYK-190(BYK Chemie製)、DISPERBYK-180(BYK Chemie製)、及びDISPERBYK-2010(BYK Chemie製)等が挙げられる。
以下、成分(E)及び成分(F)について説明する。
【0070】
(2-1)成分(E)
本発明の組成物には、組成物全体の粘度を低下させる目的や、その他の物性を調整する目的で、必要に応じて、成分(E)である成分(A)以外のエチレン性不飽和化合物を含有してもよい。
【0071】
成分(E)の具体例としては、単量体(a1-1)、単量体(a1-2)、単量体(a1-1)及び(a1-2)以外の(メタ)アクリレート〔以下、「その他(メタ)アクリレート」という〕、及びN-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0072】
単量体(a1-1)、及び単量体(a1-2)としては、前記と同様の化合物を挙げることができる。
【0073】
その他(メタ)アクリレートとしては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕や2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
【0074】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、о-フェニルフェノールEO変性(n=1~4)(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(n=1~4)(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、о-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェニル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルホルムアミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0075】
多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ポリエステル骨格を有するウレタンアクリレート等のウレタン(メタ)アクリレート及びポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート等のウレタン(メタ)アクリレート;
ビスフェノールA EO変性(n=1~2)ジ(メタ)アクリレート、及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=5~14)ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=5~14)ジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=3~16)ジ(メタ)アクリレート、及びポリ(1-メチルブチレングリコール)(n=5~20)ジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート
1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;
トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、及びε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート骨格を有する(メタ)アクリレート
グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;並びに
グリセリンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ、テトラ、ペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート等等が挙げられる。
尚、上記においてEO変性とは、エチレンオキサイド変性を意味し、nはアルキレンオキサイド単位の繰返し数を意味する。
多官能(メタ)アクリレートとしては、これら化合物の中でも、ウレタン(メタ)アクリレート及びイソシアレート骨格を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0076】
成分(E)としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0077】
成分(E)の配合割合は、目的に応じて適宜設定すれば良く、得られる硬化物の柔軟性を低下させない量であれば良いが、成分(A)及び成分(E)の合計量100重量部に対して、成分(E)を1~70重量部含むことが好ましく、より好ましくは1~50重量部、さらに好ましくは、1~25重量部である。
【0078】
(2-2)成分(F)
本発明の組成物は、活性エネルギー線として紫外線及び可視光線を用いる場合、成分(F)(光重合開始剤)を含有してもよい。
尚、活性エネルギー線として電子線を使用する場合は、必ずしも成分(F)を配合する必要はないが、硬化性改良のため必要に応じて成分(F)を少量配合することもできる。
【0079】
成分(F)としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシー2-メチルー1-プロパンー1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシー2-メチルー1-[4-1-(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2-ヒドロキシー1-[4-[4-(2-ヒドロキシー2-メチループロピオニル)-ベンジル]-フェニル]-2-メチルプロパンー1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)]フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジルー2-ジメチルアミノー1-(4-モルフォリノフェニル)ブタンー1-オン、2-ジメチルアミノー2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルーフェニル)-ブタンー1-オン、アデカオプトマーN-1414((株)ADEKA製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル-2-ベンゾフェノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルフォニル)プロパンー1-オン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6-ジメトキシベンゾ
イル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン、3-[3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イル]オキシ]-2-ヒドロキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン、10-ブチル-2-クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]及びエタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体及び2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9-フェニルアクリジン及び1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
【0080】
これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することもできる。
【0081】
成分(F)の配合割合としては、成分(A)100重量部に対して、前記成分(E)を含む場合には、成分(A)及び成分(E)の合計量100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、より好ましくは0.1~5重量部である。
成分(F)の配合割合を0.01重量部以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線量で組成物を硬化させることができ、生産性を向上させることができ、一方10重量部以下とすることで、硬化物の耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
【0082】
(3)組成物について
本発明の組成物は、成分(A)が水中に分散してなる組成物であり、又は、必要に応じて配合する前記したその他の成分をさらに含む組成物である。
組成物中の成分(A)の割合としては、又は、その他の成分をさらに含む場合において、成分(A)とその他の成分の合計量の割合としては、使用に適した粘度となるように調整すればよいが、組成物中に固形分として15~60重量%含むものが好ましく、より好ましくは、20~50重量%、さらにより好ましくは、20~40重量%である。
組成物の粘度としては、使用方法により適宜設定すれば良く、例えば、アプリケータで塗工する場合には、好ましくは、500~30000mPas、より好ましくは、1000~15000mPasである。粘度が低すぎると、塗着後に、液だれ等が起こりやすく、粘度が高すぎると仕上がりの外観が悪くなる。スプレー塗装の場合には、50~1000mPasが好ましく、100~500mPasがより好ましい。
本発明において粘度とは、E型粘度計(コーンプレート型粘度計)により25℃で測定した値を意味する。
【0083】
(4)硬化物の物性
本発明の組成物は、その硬化物が引張強度及び伸び等の引張物性、並びに耐候性に優れるという効果を奏する。
引張物性において、破断強度としては、4MPa以上が好ましく、15MPa以上がより好ましく、30MPa以上が特に好ましい。
次に、伸び率としては、2%以上が好ましい。
抗張積としては、50MPa以上が好ましい。破断強度と伸び率は、一般的にトレードオフの関係にあるため、抗張積(破断強度×伸び率/2)が高いほど引張物性に優れる。
【0084】
3.使用方法
本発明の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物は、目的に応じて種々の使用方法を採用することができる。
例えば、本発明の組成物をコーティング剤として使用する場合は、基材に組成物を塗工し、加熱により組成物中の水分を蒸発させた後、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が挙げられる。
又、本発明の組成物を接着剤として使用する場合は、基材に組成物を塗工し、加熱により組成物中の水分を蒸発させた後、別の基材と貼り合せた後、さらに活性エネルギー線を照射して硬化させる方法が挙げられる。
【0085】
本発明の組成物が適用できる基材としては、種々の材料に適用でき、無機材料、プラスチック、及び紙等が挙げられる。
無機材料としては、ガラス、金属、モルタル、コンクリート及び石材等が挙げられる。
金属としては、鋼板、アルミ及びクロム等の金属、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物等が挙げられる。
プラスチックの具体例としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET樹脂」という)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。プラスチックとしては熱可塑性プラスチックが好ましく、その具体例としては、PET樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン及びポリエチレン等が例示でき、PET樹脂が好ましい。
基材としては、これら材料の中でも、金属及びプラスチックが好ましい。
基材の形状は特に限定されず、シート状、フィルム状、及び板状等の何れであってもよい。
【0086】
組成物の塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、従来公知のバーコート、アプリケーター、ドクターブレード、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
【0087】
本発明の組成物は水分散型組成物であり、又、少量の有機溶剤を含むこともあり、基材に塗工した後、加熱・乾燥させ、水又は/及び有機溶剤を蒸発させることが好ましい。
乾燥温度は、適用する基材が変形等の問題を生じない温度以下であれば特に限定されるものではない。好ましい加熱温度としては、40~100℃である。乾燥時間は適用する基材及び加熱温度によって適宜設定すれば良く、好ましくは0.5~20分である。
【0088】
基材に対する組成物硬化膜の膜厚は、目的に応じて適宜設定すればよい。硬化膜の厚さとしては、使用する基材や製造した硬化膜を有する基材の用途に応じて選択すればよいが、1~100μmであることが好ましく、2~40μmであることがより好ましい。
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させるのに用いる活性エネルギー線としては、電子線(EB)、紫外線(UV)及び可視光線等が挙げられる。
これらのうち、紫外線は、比較的簡便な装置で硬化でき、短時間、低エネルギー照射で硬化できる点で好ましい。
電子線は、必ずしも成分(F)(光重合開始剤)を添加する必要がなく、硬化物の耐熱性、耐候性が優れる点で好ましい。本発明の組成物が、顔料又は紫外線吸収剤を多量に含む場合、紫外線では硬化性が悪くなるため、電子線が適している。
紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線(UV)無電極ランプ、及び発光ダイオード(LED)等が挙げられる。
【0090】
活性エネルギー線照射における、線量、照射量、照射強度等の照射条件については、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜選定すればよい。
紫外線を使用する場合の一例として高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、UV-A領域の照射エネルギーで100~8,000mJ/cm2が好ましく、200~3,000mJ/cm2がより好ましい。
電子線を使用する場合は、加速電圧が50~300kVであり、吸収線量が10~1,000kGyとなるよう照射することが好ましい。
【0091】
本発明の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物は、種々の用途に使用することができる。
その具体例としては、コーティング剤、接着剤、インキ、及びフィルム等が挙げられ、コーティング剤として好ましく使用することができる。
コーティング剤の具体的用途としては、加飾フィルムや車両外装品のトップコート剤等が挙げられる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、重量部を意味する。
又、製造例及び実施例における分子量、Tg、酸価、固形分、(メタ)アクリル当量、及び残揮発成分量は、下記の方法に従い測定した。
【0093】
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC-8320」、東ソー(株)製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算によるMw(重量平均分子量)及び数平均分子量(Mn)を得た。
○測定条件
カラム:東ソー(株)製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
【0094】
<Tgの測定>
共重合体(a1)のTgは、示差走査熱量計(DSC)にて以下の条件で測定した。
○測定条件
DSC:TA Instrument製(Q-100)
昇温温度:10℃/分
測定雰囲気:窒素
【0095】
<酸価の測定>
JIS K0070、酸価測定に準じて実施した。すなわち、サンプルを滴定量が約10mLになるように秤量し、テトラヒドロフラン約50mLに希釈した後、滴定液として0.1NのKOH/エタノール溶液により、自動滴定装置COM-1600ST(平沼産業(株)製)を用いて滴定を実施した。
【0096】
<固形分>
150℃、1時間、通風乾燥機で乾燥することにより、重量減少から固形分を求めた。
【0097】
<(メタ)アクリル当量>
有機溶媒成分を除く原料の使用重量(g)を、使用した反応性基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物のモル数で割った値を(メタ)アクリル当量(g/eq)とした。
尚、実施例においては、比較例としてメタクリロイル基を有する化合物を使用する場合があり、(メタ)アクリル当量と表記している。
【0098】
<残揮発成分量の測定>
残イソプロピルアルコール(IPA)及び残酢酸ブチルについて、ガスクロマトグラフにより、測定した。
(ガスクロマトグラフ測定条件)
ガスクロマトグラフ装置:GC390(ジーエルサイエンス社製)
カラム:CP-WAX52CB(アジレント・テクノロジー社製)
キャリアガス:窒素ガス(1.9mL/分)
インジェクション温度:220℃
ディテクター温度:230℃
オーブン温度:40℃×5分保持、7℃/分で昇温、230℃×5分保持。。
・検量線の作成
測定成分(標品)及びイソブチルアクリレート(内部標準)を、各0.02g精秤し、アセトン(5mL)に溶解させる。この混合液をガスクロマトグラフ測定し、各成分の内部標準に対する検出感度を求める。
・測定
水分散体1g及びアクリル酸イソブチル0.02gを精秤し、アセトン(10mL)に溶解させる。この混合液をガスクロマトグラフ測定し、重合体中に含まれる残揮発成分量を算出した。
各成分の検出下限:0.05重量%
【0099】
1.製造例
(1)製造例1(側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート重合体A-1の製造)
オイルジャケットを備えた容量1000mLの加圧式攪拌槽型反応器の温度を188℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、メチルメタクリレート(以下、「MMA」という)を70部、エチルアクリレート(以下、「EA」という)を10部、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という)を20部、溶媒として、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)を12部、オルト酢酸トリメチル(日宝化学製、商品名「MOA」、以下、「MOA」という)を3部、重合開始剤としてジ-t-ヘキシルパーオキサイド(日油製、商品名「パーヘキシルD」、以下、「DTHP」という)を1部からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。
反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットの温度を制御することにより、反応温度を187~189℃に保持した。
【0100】
単量体混合物の供給開始から温度が安定した時点を、反応液の採取開始点とし、これから37分間反応を継続した結果、1.78kgの単量体混合液を供給し、1.78kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離してエポキシ基を有する(メタ)アクリレート重合体(以下、「共重合体a-1」という)を1.08kg得た。
【0101】
次いで、共重合体a-1(100部)、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」という)(0.11部)、アクリル酸(以下、「AA」という)(11.2部、重合体a-1のエポキシ基の1.05当量の酸価に相当)及び有機溶媒として酢酸ブチル(47.9部)を1Lフラスコに投入し、5%酸素窒素混合ガスをバブリングさせながら、液温を95℃に昇温し、重合体a-1を溶解させた。
均一に溶解させた後、反応触媒としてトリフェニルホスフィン(以下、「TPP」という)(0.56部)を添加し、内温95℃を保ちながら12時間攪拌した。さらにTPP(0.56部)を添加し、12時間反応させた。その後、酸価測定を行い、3.6mgKOH/gであることを確認し、反応を終了した。その結果、共重合体a-1のAA付加物(アクリレート変性体)である重合体A-1を含む酢酸ブチル溶液を得た。
【0102】
重合体A-1溶液の固形分、酸価、ポリスチレン換算によるMn(数平均分子量)及びMw(重量平均分子量)、(メタ)アクリル当量(g/eq)を表1に示す。
【0103】
(2)製造例2~10、比較製造例1
表1に示す条件に変更した以外は、製造例1と同様な操作により、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリレート重合体A-2~10及びA’-1を得た。
尚、表1にけるM-5300とは、後記で定義した通りである。
【0104】
(3)製造例11
表1に示す条件に変更した以外は、製造例1と同様な操作により、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系重合体(以下、「共重合体a-9」という)を得た。
尚、表1におけるMOIとは、後記で定義した通りである。
そして、共重合体a-9(100部)、重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(0.12部)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下、「HEA」という)(24.7部、重合体a-9のイソシアネート基の1.0当量の水酸基価に相当)、触媒としてジブチルスズジラウレート(0.03部)、酢酸ブチル(64.3部)を1Lフラスコに投入し、5%酸素窒素混合ガスをバブリングさせながら、液温を80℃に昇温し、共重合体a-9を溶解させた。
引き続き、80℃を保ちながら6時間攪拌し、ATR法赤外分光光度計(Perkin Elmer社製Spectrum100)を用いて、2200cm-1のイソシアネートによる吸収が消失していることを確認し、反応を終了した。その結果、共重合体a-9のHEA付加物(アクリレート変性体)である重合体A-11を含む酢酸ブチル溶液を得た。
【0105】
(4)製造例12
表1に示す条件に変更した以外は、製造例11と同様な操作により、共重合体a-9のFA-2D付加物(アクリレート変性体)である重合体A-12を得た。
尚、表1にけるFA-2Dとは、後記で定義した通りである。
【0106】
(5)比較製造例2
表1に示す条件に変更した以外は、製造例11と同様な操作により、共重合体a’-2のMOI付加物(アクリレート変性体)である重合体A’-2を得た。
【0107】
【0108】
表1における略号は、下記を意味する。尚、下記においては、前記で既に定義したものについても、重複して記載しているものもある。
・MMA:メチルメタクリレート
・BA:ブチルアクリレート
・EA:エチルアクリレート
・GMA:グリシジルメタクリレート
・MOI:2-イソシアネートエチルメタクリレート〔カレンズMOI(商品名)、昭和電工(株)製〕
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・AA:アクリル酸
・MEK:メチルエチルケトン
・MOA:オルト酢酸トリメチル〔MOA(商品名)、日宝化学製〕
・DTHP:ジ-t-ヘキシルパーオキサイド〔パーヘキシルD(商品名)、日油製〕
・M5300:アクリル酸のε-カプロラクトン付加物〔アロニックスM-5300(商品名)、東亞合成(株)製、カプロラクトンの平均重合度:2、数平均分子量:300、Tg:-78℃、酸価:186mgKOH/g〕
・HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
・FA-2D:2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン付加物〔プラクセルFA2D(商品名)、ダイセル(株)製、カプロラクトンの平均重合度:2、数平均分子量:344、Tg:-78℃、水酸基価:163mgKOH/g〕
・TPP:トリフェニルホスフィン
・DBTDL:ジブチルスズジラウレート
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
【0109】
2.実施例(紫外線硬化性組成物)
(1)実施例1
製造例1で得られた重合体A-1溶液(140.8部、重合体A-1を100部含有)、成分(F)の1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン〔IGM Resins B.V.社製Omnirad184〕(3部)、成分(D)のイソプロピルアルコール(以下、「IPA」という)(150部)を3Lフラスコに入れ、混合した。次いで、成分(C)の非イオン系界面活性剤〔ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、HLB値:17.5、60%水溶液、第一工業製薬(株)製ノイゲンEA-197D。以下、「197D」という〕(10部)、成分(B)のイオン交換水(250部)を加え、混合した。
この混合液を撹拌しながら、80℃に昇温し、20kPaに減圧しながら、揮発分を留去した。揮発分を240部留去した段階で、IPA(50部)及びイオン交換水(200部)を添加した。さらに、揮発分を251部減圧留去し、重合体A-1の水分散体を得た。
表2に、水分散体の固形分、残IPA、残酢酸ブチル量を示す。
得られた重合体A-1の水分散体である紫外線硬化性組成物を用い、下記の方法で評価した。それらの結果を表2に示す。
【0110】
(2)実施例2~15、比較例1~3
表2に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様の操作により、重合体A-2~A-12、A’-1、A’-2及びM1200の水分散体である紫外線硬化性組成物を得た。
表2に、水分散体の固形分、残IPA、残酢酸ブチル量を示す。
得られた重合体の水分散体である紫外線硬化性組成物を用い、下記の方法で硬化性、引張物性及び耐候性を評価した。それらの結果を表2に示す。
【0111】
<硬化性の評価>
基剤フィルムとしてコスモシャインA-4300(商品名、東洋紡製易接着PETフィルム、膜厚;50μm)を用意し、その両端にテープを貼り、当該基材フィルムの表面にバーコータ#0を用いて、乾燥後の膜厚が50~60μmになるように前記実施例及び比較例で得られた組成物を塗布した。次いで、通風乾燥機で、90℃、10分乾燥させ、組成物の乾燥塗膜を有する塗工フィルムを得た。
次いで、アイグラフィックス(株)製高圧水銀ランプを用いて、空気雰囲気下、集光式で、UVA照度が500mW/cm2、1回あたりの照射量が500mJ/cm2になるように調節し、塗工フィルムをコンベアで当該光照射下を1回通過させた。
塗工フィルム及び得られた硬化膜について、ATR法赤外分光光度計(Perkin Elmer社製Spectrum100)を用いて、照射前後のIR測定を行った。
1730cm-1の吸光度を基準として、アクリロイル化合物においては810cm-1の吸光度の相対値を求め(メタクリロイル化合物については、940cm-1)、照射前の(メタ)アクリロイル基の反応率を0%とした場合の照射後の反応率を下記数式に従って求めた。なお、反射率は、70%以上が好ましい。
【0112】
【0113】
<引張物性の評価>
基剤フィルムとしてルミラーT-60(商品名、東レ(株)製PETフィルム、膜厚;100μm)を用意し、その両端にテープを貼り、当該基材フィルムの表面にバーコータ#0を用いて、乾燥後の膜厚が60~80μmになるように前記実施例及び比較例で得られた組成物を塗布した。次いで、通風乾燥機で、90℃、10分乾燥させ、組成物の乾燥塗膜を有する塗工フィルムを得た。
次いで、硬化性評価と同様の高圧水銀ランプを用いて、空気雰囲気下、集光式で、UVA照度が500mW/cm2、1回あたりの照射量が800mJ/cm2になるように調節し、塗工フィルムをコンベアで当該光照射下を2回通過させた。
次いで、塗工フィルムを1cm幅の短冊状に切り出したのち、硬化膜を基材フィルムから剥離した。
引張試験機(オートグラフAGS-J、(株)島津製作所製)を用いて、この硬化膜の引張速度5mm/分の条件下での破断伸び率(%)及び破断強度(単位:MPa)を測定した。又、抗張積を下記式により算出した。
抗張積=破断強度×伸び率/2
【0114】
<耐候性の評価>
基材フィルムとしてゼオノアZF14-100〔商品名、日本ゼオン(株)製シクロオレフィンポリマー、膜厚:100μm〕を用意し、その両端にテープを貼り、当該基材フィルムの表面にバーコータ#0を用いて、乾燥後の膜厚が50~60μmになるように前記実施例及び比較例で得られた組成物を塗布した。次いで、通風乾燥機で、90℃、10分乾燥させ、組成物の乾燥塗膜を有する塗工フィルムを得た。
次いで、硬化性の評価と同様の高圧水銀ランプを用いて、引張物性の評価と同様の条件で、塗工フィルムをコンベアで当該光照射下を2回通過させた。
次いで、紫外線照射で得られた硬化膜を有するフィルムを、メタルウェザーメーター(ダイプラ・ウィンテス社製「DAIPLA METAL WEATHER KU-R5NCI-A」(商品名))に入れ、促進耐候試験を行った。条件は照射63℃、70%RH、照度80mW/cm2とし、2時間に1回2分間のシャワーで、300時間試験を実施した。
試験前後の色差、ヘイズにより評価した。
【0115】
<色差の測定>
日本電色工業(株)製分光色彩計SE-2000(商品名)を用いて、黄色度(YI)を測定した (YIは下式の通り)。ΔYIは3.5以下が好ましい。
YI = 100(1.28X-1.06Z)/Y (X,Y,Zは色座標系)
ΔYI = YI-YI0 (YI0は試験前のYIを示す)
(ヘイズの測定)
日本電色工業(株)製NDH2000(商品名)を用いて測定を行い、試験前後のヘイズの差(Δヘイズ)を評価した。Δヘイズは7.0以下が好ましい。
【0116】
【0117】
3.実施例(電子線硬化性組成物)
(1)実施例16~30、比較例4~6
成分(F)を配合しない以外は、実施例1~15及び比較例1~3のそれぞれと同じ方法により、水性化を行い、各重合体の水分散体である電子線硬化性組成物を得た。
表3に、水分散体である電子線硬化性組成物の固形分、残IPA、残酢酸ブチル量を示す。
得られた電子線硬化性組成物を用い、下記の方法で硬化性を評価し、引張物性及び耐候性は上記と同様の方法で評価した。それらの結果を表3に示す。尚、引張物性及び耐候性の評価における電子線照射条件も、下記硬化性の評価と同様の条件で実施した。
【0118】
<硬化性の評価>
上記紫外線硬化性組成物の場合と同じ方法により、塗工フィルムを作成した。
得られた塗工フィルムに対して、(株)NHVコーポレーション製の電子線照射装置により、加速電圧150kV、線量150kGy(ビーム電流及び搬送速度で調節)、酸素濃度300ppm以下の条件下で電子線を照射した。
硬化性の評価は、紫外線硬化性組成物と同様の方法で評価した。
【0119】
【0120】
表2及び3における略号は、下記を意味する。
・M1200:無黄変型ポリエステル骨格ウレタンアクリレート(Mw=4,500)〔アロニックスM-1200(商品名)、東亞合成(株)製〕
・M5300:アクリル酸のε-カプロラクトン付加物〔アロニックスM-5300(商品名)、東亞合成(株)製、カプロラクトンの平均重合度:2、数平均分子量:300、Tg:-78℃、酸価:186mgKOH/g〕
・Omnirad184:1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン〔Omnirad184(商品名)、IGM Resins B.V.社製〕
・IPA:イソプロピルアルコール
・197D:非イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、HLB値:17.5、60%水溶液)〔ノイゲンEA-197D(商品名)、第一工業製薬(株)製〕
【0121】
4.結果のまとめ
表2に示す紫外線硬化性組成物(実施例1~15、比較例1~3)の場合、比較例1及び2の側鎖がメタクリロイル基である重合体は、反応率が低く硬化性に劣り、かつ引張物性及び耐候性も悪い。これに対し、実施例1~15の側鎖がアクリロイル基である重合体は、反応率が高く硬化性に優れ、引張物性及び耐候性の両立ができていた。
実施例の中では、アクリル酸のような低分子量化合物で変性した重合体よりも、M5300のような分子量が大きいアクリレートオリゴマーで変性した重合体の方が、引張物性(特に伸び率)の点で優れていた。
成分(A)の分子量の比較(実施例5、8、9、10)では、引張物性の点で最適点があり、実施例5が最も優れていた。
成分(A)のアクリル当量の比較(実施例5、11、12)では、アクリル当量の大きい(アクリル濃度の低い)実施例12に比べて、実施例5、11は、耐候性の点でより優れていた。
表3に示す電子線硬化性組成物(実施例16~30、比較例4~6)も、紫外線硬化性組成物と概ね同じ傾向を示している。ただし、紫外線硬化性組成物と電子線硬化性組成物を比較すると、耐候性(特にヘイズ)の点で電子線硬化系性組成物の方が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の水分散型活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性に優れ、実質的に溶媒を含まず、環境負荷の低い点で優れており、その硬化物は、優れた機械的強度、耐熱性及び耐候性を備えた硬化物が要求される分野で好適に使用することができ、接着剤、コーティング剤の他、インキ、フィルム等の分野で利用できる。