IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

特許7631750電極シート製造装置及び電極シート製造方法
<>
  • 特許-電極シート製造装置及び電極シート製造方法 図1
  • 特許-電極シート製造装置及び電極シート製造方法 図2
  • 特許-電極シート製造装置及び電極シート製造方法 図3
  • 特許-電極シート製造装置及び電極シート製造方法 図4
  • 特許-電極シート製造装置及び電極シート製造方法 図5
  • 特許-電極シート製造装置及び電極シート製造方法 図6
  • 特許-電極シート製造装置及び電極シート製造方法 図7
  • 特許-電極シート製造装置及び電極シート製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電極シート製造装置及び電極シート製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20250212BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20250212BHJP
   B30B 3/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/139
B30B3/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020190175
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079165
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】柴田 進介
(72)【発明者】
【氏名】阪中 裕太
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152240(JP,A)
【文献】特開2017-098210(JP,A)
【文献】特開2003-100286(JP,A)
【文献】特開2015-090805(JP,A)
【文献】特開2017-191678(JP,A)
【文献】特開2019-012641(JP,A)
【文献】特開2015-217321(JP,A)
【文献】特開2012-064563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01G4/00-4/40,11/00-11/86,
13/00-13/06
B30B3/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に活物質層が形成された電極シートであって、前記活物質層が形成されていない活物質層非形成部を第一方向の端部に有する電極シートを製造する電極シート製造装置であって、
前記第一方向と直交する第二方向に前記電極シートを移動させる移動部と、
前記活物質層非形成部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の一方側に配置され、前記第三方向の他方側に向けて前記活物質層非形成部を押圧する第一ロールと、を備え、
前記第一ロールは、
少なくとも一部が、前記第一ロールで押圧される直前及び前記第一ロールで押圧された直後のうちの少なくとも一方における前記活物質層非形成部よりも、前記第三方向の他方側に配置され、
前記第一方向から傾斜した方向に延びる第一回転軸を中心に回転しながら、前記移動部によって前記第二方向に移動する前記活物質層非形成部を押圧し、
前記第二方向の同じ位置において、前記第一ロールの前記第三方向の他方側に他のロールが配置されていない
電極シート製造装置。
【請求項2】
さらに、
前記第一ロールで押圧される直前及び前記第一ロールで押圧された直後の前記活物質層非形成部の前記第三方向の他方側に配置され、前記第一ロールの前後において前記活物質層非形成部を支持する一対の第二ロールを備える
請求項1に記載の電極シート製造装置。
【請求項3】
前記第一ロールは、間欠的に、前記活物質層非形成部を押圧する
請求項1または2に記載の電極シート製造装置。
【請求項4】
前記第一ロールは、前記第三方向の一方側及び他方側に交互に移動することで、間欠的に、前記活物質層非形成部を押圧する
請求項3に記載の電極シート製造装置。
【請求項5】
基材に活物質層が形成された電極シートであって、前記活物質層が形成されていない活物質層非形成部を第一方向の端部に有する電極シートを製造する電極シート製造装置であって、
前記第一方向と直交する第二方向に前記電極シートを移動させる移動部と、
前記活物質層非形成部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の一方側に配置され、前記第三方向の他方側に向けて前記活物質層非形成部を押圧する第一ロールと、を備え、
前記第一ロールは、
少なくとも一部が、前記第一ロールで押圧される直前及び前記第一ロールで押圧された直後のうちの少なくとも一方における前記活物質層非形成部よりも、前記第三方向の他方側に配置され、
前記第一方向から傾斜した方向に延びる第一回転軸を中心に回転しながら、前記移動部によって前記第二方向に移動する前記活物質層非形成部を押圧し、
前記電極シート製造装置は、さらに、
前記第一ロールよりも前記第三方向の一方側に配置される第二回転軸と、
前記第二回転軸及び前記第一ロールを接続する接続部材と、を備え、
前記第一ロールは、前記第二回転軸を中心に回転することで、間欠的に、前記活物質層非形成部を押圧する
極シート製造装置。
【請求項6】
基材に活物質層が形成された電極シートであって、前記活物質層が形成されていない活物質層非形成部を第一方向の端部に有する電極シートを製造する電極シート製造方法であって、
前記第一方向と直交する第二方向に前記電極シートを移動させる移動工程と、
前記活物質層非形成部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の一方側に配置される第一ロールによって、前記第三方向の他方側に向けて前記活物質層非形成部を押圧する押圧工程と、を含み、
前記押圧工程では、前記第二方向の同じ位置において、前記第一ロールの前記第三方向の他方側に他のロールを配置することなく、前記第一ロールで押圧される直前及び前記第一ロールで押圧された直後のうちの少なくとも一方における前記活物質層非形成部よりも、前記第三方向の他方側に前記第一ロールの少なくとも一部を配置し、前記第一ロールが、前記第一方向から傾斜した方向に延びる第一回転軸を中心に回転しながら、前記移動工程で前記第二方向に移動する前記活物質層非形成部を押圧する
電極シート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極シートを製造する電極シート製造装置及び電極シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材に活物質層が形成された電極シートであって、活物質層が形成されていない活物質層非形成部を端部に有する電極シートを製造する電極シート製造装置が知られている。例えば、特許文献1には、基材の表面に電極層(活物質層)が塗工された塗工領域と、電極層が塗工されていない非塗工領域(活物質層非形成部)とを有する電極シートにおいて、電極シートの非塗工領域に湾曲矯正ローラーを当接させて張力を加えることによって非塗工領域の湾曲を矯正する電池用の電極製造装置(電極シート製造装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-90805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電極シート製造装置では、電極シートの湾曲(歪み)を十分に抑制できていないおそれがある。例えば、上記特許文献1に開示された電極シート製造装置では、電極シートの活物質層非形成部(非塗工領域)を湾曲矯正ローラーで押圧して張力を加えることで、電極シートの湾曲を抑制している。しかしながら、本願発明者は、上記従来の電極シート製造装置では、電極シートの幅方向には活物質層非形成部に張力が加えられていないため、電極シートの湾曲を十分に抑制できていないおそれがあることを見出した。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、電極シートの湾曲(歪み)を効果的に抑制できる電極シート製造装置及び電極シート製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電極シート製造装置は、基材に活物質層が形成された電極シートであって、前記活物質層が形成されていない活物質層非形成部を第一方向の端部に有する電極シートを製造する電極シート製造装置であって、前記第一方向と直交する第二方向に前記電極シートを移動させる移動部と、前記活物質層非形成部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の一方側に配置され、前記第三方向の他方側に向けて前記活物質層非形成部を押圧する第一ロールと、を備え、前記第一ロールは、少なくとも一部が、前記第一ロールで押圧される直前及び前記第一ロールで押圧された直後のうちの少なくとも一方における前記活物質層非形成部よりも、前記第三方向の他方側に配置され、前記第一方向から傾斜した方向に延びる第一回転軸を中心に回転しながら、前記移動部によって前記第二方向に移動する前記活物質層非形成部を押圧する。
【0007】
これによれば、電極シート製造装置において、第一ロールは、押圧の直前及び直後の少なくとも一方の活物質層非形成部よりも、少なくとも一部が第三方向の他方側に配置され、かつ、第一方向から傾斜した第一回転軸を中心に回転しながら活物質層非形成部を押圧する。このように、第一ロールの少なくとも一部が、押圧前後の少なくとも一方の活物質層非形成部よりも第三方向の他方側に配置されることで、第一ロールが活物質層非形成部を第三方向の一方側から押圧することとなる。このため、活物質層非形成部がその移動方向(第二方向)へ延伸されるように張力が働くため、活物質層非形成部に第二方向への張力が加わる。また、第一ロールが第一方向から傾斜した第一回転軸を中心に回転しながら活物質層非形成部を押圧することで、第一ロールが活物質層非形成部を第一方向から傾斜した方向に引っ張ることとなる。このため、活物質層非形成部に、第一方向から傾斜した方向への張力が加わる。これらにより、活物質層非形成部に、第二方向、及び、第一方向から傾斜した方向の2方向への張力を加えることができるため、電極シートの湾曲(歪み)を効果的に抑制できる。
【0008】
さらに、前記第一ロールで押圧される直前及び前記第一ロールで押圧された直後の前記活物質層非形成部の前記第三方向の他方側に配置され、前記第一ロールの前後において前記活物質層非形成部を支持する一対の第二ロールを備えることにしてもよい。
【0009】
これによれば、電極シート製造装置は、第一ロールの押圧前後における活物質層非形成部の第三方向の他方側に、活物質層非形成部を支持する一対の第二ロールを備えている。このように、一対の第二ロールによって第一ロールの前後の活物質層非形成部を支持することで、第一ロールで活物質層非形成部を安定的に押圧し、活物質層非形成部に安定的に張力を加えることができる。これにより、電極シートの湾曲を効果的に抑制できる。
【0010】
前記第一ロールは、間欠的に、前記活物質層非形成部を押圧することにしてもよい。
【0011】
第一ロールが連続的に活物質層非形成部を押圧する場合、活物質層非形成部が位置ずれを起こすと、当該位置ずれが修正されないまま押圧が継続されて、電極シートに皺が発生したり、電極シートが過剰な張力により破断したりするおそれがある。このため、第一ロールによって間欠的に活物質層非形成部を押圧することで、活物質層非形成部の押圧が解除された際に活物質層非形成部の位置ずれが修正される。これにより、活物質層非形成部の位置ずれが抑制された状態で、第一ロールで活物質層非形成部を押圧し、活物質層非形成部に張力を加えることができるため、電極シートの湾曲を効果的に抑制できる。
【0012】
前記第一ロールは、前記第三方向の一方側及び他方側に交互に移動することで、間欠的に、前記活物質層非形成部を押圧することにしてもよい。
【0013】
これによれば、第一ロールが、第三方向の一方側及び他方側に交互に移動することで、第一ロールで間欠的に活物質層非形成部を押圧する構成を、容易に実現することができる。
【0014】
さらに、前記第一ロールよりも前記第三方向の一方側に配置される第二回転軸と、前記第二回転軸及び前記第一ロールを接続する接続部材と、を備え、前記第一ロールは、前記第二回転軸を中心に回転することで、間欠的に、前記活物質層非形成部を押圧することにしてもよい。
【0015】
これによれば、第一ロールが、第二回転軸及び第一ロールを接続する接続部材を介して第二回転軸を中心に回転することで、第一ロールで間欠的に活物質層非形成部を押圧する構成を、容易に実現することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る電極シート製造方法は、基材に活物質層が形成された電極シートであって、前記活物質層が形成されていない活物質層非形成部を第一方向の端部に有する電極シートを製造する電極シート製造方法であって、前記第一方向と直交する第二方向に前記電極シートを移動させる移動工程と、前記活物質層非形成部の、前記第一方向及び前記第二方向と交差する第三方向の一方側に配置される第一ロールによって、前記第三方向の他方側に向けて前記活物質層非形成部を押圧する押圧工程と、を含み、前記押圧工程では、前記第一ロールで押圧される直前及び前記第一ロールで押圧された直後のうちの少なくとも一方における前記活物質層非形成部よりも、前記第三方向の他方側に前記第一ロールの少なくとも一部を配置し、前記第一ロールが、前記第一方向から傾斜した方向に延びる第一回転軸を中心に回転しながら、前記移動工程で前記第二方向に移動する前記活物質層非形成部を押圧する。
【0017】
これによれば、電極シート製造方法において、第一ロールの少なくとも一部を、押圧の直前及び直後の少なくとも一方の活物質層非形成部よりも第三方向の他方側に配置し、第一ロールが、第一方向から傾斜した第一回転軸を中心に回転しながら活物質層非形成部を押圧する。これにより、上述した電極シート製造装置が奏する効果と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明における電極シート製造装置等によれば、電極シートの湾曲(歪み)を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係る電極シートを有する電極体を備える蓄電素子の構成を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る電極シートを有する電極体の構成を示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る電極シート製造装置の構成を模式的に示す模式図である。
図4】実施の形態に係る電極シート製造装置が備える第一ロール及び第二ロールの構成を示す側面図及び上面図である。
図5】実施の形態に係る電極シート製造方法における各工程を示すフローチャートである。
図6】実施の形態に係る電極シート製造方法における押圧工程を説明する図である。
図7】実施の形態に係る電極シート製造方法における押圧工程を説明する図である。
図8】実施の形態の変形例に係る第一ロール及びその周囲の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る電極シート製造装置及び電極シート製造方法について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0021】
以下の説明及び図面中において、電極シートの活物質層と活物質層非形成部との並び方向、または、電極シートの短手方向を、X軸方向と定義する。電極シートと交差する方向、第一ロールが活物質層非形成部を押圧する方向、または、第二ロールが活物質層非形成部を支持する方向を、Y軸方向と定義する。電極シートの移動方向、電極シートの長手方向、または、活物質層非形成部の延設方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。
【0022】
以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。また、以下では、X軸方向を第一方向とも呼び、Z軸方向を第二方向とも呼び、Y軸方向を第三方向とも呼び、Y軸マイナス方向を第三方向の一方側とも呼び、Y軸プラス方向を第三方向の他方側とも呼ぶ場合がある。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0023】
(実施の形態)
[1 蓄電素子10、電極体700及び電極シート710の説明]
まず、図1及び図2を用いて、本実施の形態における電極シート製造装置1(図3参照)によって製造される電極シート710、電極シート710を有する電極体700、及び、電極体700を備える蓄電素子10について説明する。図1は、本実施の形態に係る電極シート710を有する電極体700を備える蓄電素子10の構成を示す斜視図である。具体的には、図1は、蓄電素子10を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係る電極シート710を有する電極体700の構成を示す斜視図である。具体的には、図2は、図1に示された電極体700が有する電極シート710及び720の一部を展開した状態を示している。なお、図2では、説明の便宜のため、電極体700が有するセパレータの図示は省略している。
【0024】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電素子10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0025】
なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよい。蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。蓄電素子10は、固体電解質を用いた電池であってもよい。蓄電素子10は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。本実施の形態では、扁平な直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、円柱形状、長円柱形状または直方体以外の多角柱形状等であってもよい。
【0026】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、一対(正極側及び負極側、以下同様)の電極端子300と、一対の上部ガスケット400と、一対の下部ガスケット500と、一対の集電体600と、電極体700とを備えている。なお、容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。上記の構成要素の他、電極体700の側方または下方等に配置されるスペーサ、電極体700等を包み込む絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
【0027】
容器100は、開口が形成された容器本体110と、容器本体110の当該開口を閉塞する蓋体120と、を有する直方体形状(角形または箱形)のケースである。容器本体110は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材である。蓋体120は、容器100の蓋部を構成する平板状かつ矩形状の板状部材である。このような構成により、容器100は、電極体700等を容器本体110の内部に収容後、容器本体110と蓋体120とが溶接等によって接合されることにより、内部が密封される構造となっている。容器本体110及び蓋体120の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。蓋体120には、容器100内方の圧力が上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁121が形成されている。容器100には、蓄電素子10の製造時に容器100の内方に電解液を注液するための注液部が形成されていてもよい。
【0028】
電極体700は、電極シート710と電極シート720とを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。図2に示すように、電極シート710は、基材711に活物質層712が形成された極板であり、電極シート720は、基材721に活物質層722が形成された極板である。本実施の形態では、電極シート710は、正極板であり、電極シート720は、負極板である。つまり、基材711は、正極側の基材であって、アルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる長尺帯状の集電箔である。基材721は、負極側の基材であって、銅または銅合金等からなる長尺帯状の集電箔である。
【0029】
なお、基材711、721は、シート状の金属薄膜を少なくとも表面に有するものであればよく、金属薄膜として、金属箔はもちろん、例えば、金属でコーティングされた樹脂性のフィルム等も用いることができる。さらに、基材711、721は、非多孔性であっても、多孔性であってもよい。蓄電素子10の種類によっては基材711、721にいわゆるパンチングメタルを用いても良い。基材711、721は、穿孔のない非多孔性の金属箔が好ましく、基材711として、例えば、厚さ10μm~25μm程度のアルミニウム箔を用いることができ、基材721として、例えば、厚さ7~15μm程度の銅箔を用いることができる。
【0030】
活物質層712は、基材711上に形成された正極活物質層であり、活物質層722は、基材721上に形成された負極活物質層である。正極活物質層及び負極活物質層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
【0031】
例えば、正極活物質として、LiMPO、LiMSiO、LiMBO(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、LiMnやLiMn1.5Ni0.5等のスピネル型リチウムマンガン酸化物、LiMO(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金(リチウム-ケイ素、リチウム-アルミニウム、リチウム-鉛、リチウム-錫、リチウム-アルミニウム-錫、リチウム-ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、ケイ素酸化物、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12等)、ポリリン酸化合物、あるいは、一般にコンバージョン負極と呼ばれる、CoやFeP等の、遷移金属と第14族乃至第16族元素との化合物などが挙げられる。
【0032】
本実施の形態では、電極体700は、電極シート710と電極シート720とセパレータ(図示せず)とが積層されて形成されている。セパレータとしては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければ、適宜公知の材料を使用できるが、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂微多孔膜等の樹脂からなる微多孔性のシート、有機溶剤に不溶な織布、または、不織布等を用いることができる。具体的には、電極体700は、電極シート710と電極シート720との間にセパレータが配置され巻回されて形成されている。なお、本実施の形態では、電極体700の断面形状として長円形状を図示しているが、円形状、楕円形状、または、多角形状等でもよい。
【0033】
さらに具体的には、電極体700は、電極シート710と電極シート720とが、セパレータを介して、巻回軸の方向に互いにずらして巻回されている。巻回軸とは、電極シート710及び電極シート720等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体700の中心を通る、X軸方向に平行な直線である。そして、電極シート710及び電極シート720は、それぞれのずらされた方向の端部に、活物質が形成(塗工)されず基材層が露出した部分を有している。
【0034】
つまり、電極シート710は、基材711のX軸方向(第一方向)の端部に、活物質層712が形成されていない活物質層非形成部711aを有している。電極シート720は、基材721のX軸方向(第一方向)の端部に、活物質層722が形成されていない活物質層非形成部721aを有している。活物質層非形成部711aは、基材711のX軸マイナス方向の端部に形成され、基材711のX軸マイナス方向の端縁に沿って延設(図2では、Z軸方向に延設)される長尺状の部位である。活物質層非形成部721aは、基材721のX軸プラス方向の端部に形成され、基材721のX軸プラス方向の端縁に沿って延設(図2では、Z軸方向に延設)される長尺状の部位である。
【0035】
電極端子300は、集電体600を介して、電極体700に電気的に接続される端子部材(正極端子及び負極端子)である。つまり、電極端子300は、電極体700に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体700に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子300は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の金属等の導電部材で形成されている。電極端子300は、かしめまたは溶接等によって、集電体600に接続(接合)され、かつ、蓋体120に取り付けられている。
【0036】
上部ガスケット400は、容器100の蓋体120と電極端子300との間に配置され、蓋体120と電極端子300との間を絶縁し、かつ封止する板状かつ矩形状の部材(正極上部ガスケット及び負極上部ガスケット)である。下部ガスケット500は、容器100の蓋体120と集電体600との間に配置され、蓋体120と集電体600との間を絶縁する板状かつ矩形状の部材(正極下部ガスケット及び負極下部ガスケット)である。上部ガスケット400及び下部ガスケット500は、絶縁性を有していればどのような素材で形成されてもよいが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等の絶縁部材により形成されている。
【0037】
集電体600は、電極体700のX軸方向両側に配置され、電極体700と電極端子300とに接続(接合)されて、電極体700と電極端子300とを電気的に接続する導電性と剛性とを備えた集電部材(正極集電体及び負極集電体)である。集電体600は、蓋体120に固定的に接続(接合)される。具体的には、正極側の集電体600は、電極体700の電極シート710の活物質層非形成部711aに接続され、負極側の集電体600は、電極体700の電極シート720の活物質層非形成部721aに接続される。集電体600の材質は特に限定されないが、例えば、正極側の集電体600は、電極体700の基材711と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極側の集電体600は、電極体700の基材721と同様、銅または銅合金等で形成されている。
【0038】
[2 電極シート製造装置1の説明]
次に、図3及び図4を用いて、本実施の形態における電極シート製造装置1の構成について説明する。図3は、本実施の形態に係る電極シート製造装置1の構成を模式的に示す模式図である。図4は、本実施の形態に係る電極シート製造装置1が備える第一ロール40及び第二ロール50の構成を示す側面図及び上面図である。具体的には、図4の(a)は、図3に示された第一ロール40及び第二ロール50の構成を拡大して示す側面図であり、図4の(b)は、図4の(a)を上方(Y軸マイナス方向)から見た場合の構成を示す上面図である。
【0039】
電極シート製造装置1は、電極シート710を製造する装置である。電極シート製造装置1は、電極シート710を圧延して製造する。つまり、電極シート製造装置1は、基材711に活物質層712が形成された電極シート710であって、活物質層712が形成されていない活物質層非形成部711aをX軸方向(第一方向)の端部に有する電極シート710を製造する。図3に示すように、電極シート製造装置1は、巻出部20と、活物質用ロール30と、第一ロール40と、第二ロール50と、巻取部60と、を備えている。
【0040】
巻出部20は、電極シート710の基材711であるシート状の金属箔を巻き出す装置であり、巻取部60は、基材711に活物質層712が形成された電極シート710を巻き取る装置である。具体的には、巻出部20から、ロール状に巻かれた基材711が巻き出され、テンションローラー(図示せず)等によって所定の荷重が加えられながら、基材711への活物質層712の塗布装置(図示せず)によって、基材711に活物質層712が形成(塗布)される。そして、活物質層712が形成された電極シート710は、巻取部60に向けて走行し、活物質用ロール30、第一ロール40及び第二ロール50を通過して、巻取部60に巻き取られる。
【0041】
このように、巻出部20及び巻取部60等は、電極シート710にZ軸方向への引っ張り張力をかけながら、Z軸方向へ電極シート710を移動させる。巻出部20及び巻取部60等は、Z軸方向(第一方向と直交する第二方向)に電極シート710を移動させる移動部の一例である。巻出部20及び巻取部60等(移動部)は、電極シート710を移動できればよく、その構成は特に限定されず、適宜公知の装置を使用できる。
【0042】
活物質用ロール30は、電極シート710の基材711に形成された活物質層712を圧延する円柱形状のロールである。電極シート710のY軸方向両側に、一対の活物質用ロール30が配置されており、一対の活物質用ロール30でY軸方向において電極シート710を挟み込み圧迫することにより、活物質層712を圧延する。活物質用ロール30は、活物質層712を圧延できればよく、その構成は特に限定されず、適宜公知の装置を使用できる。
【0043】
第一ロール40及び第二ロール50は、活物質層712が圧延された電極シート710の活物質層非形成部711aを押圧し、延伸する円柱形状のロールである。第一ロール40及び第二ロール50がともに回転することで、電極シート710がZ軸プラス方向に送り出される。第一ロール40及び第二ロール50は、活物質層非形成部711aを挟み込んでプレスするような構成ではなく、第一ロール40が活物質層非形成部711aを片側から押圧することで活物質層非形成部711aに張力を発生させて延伸する。第一ロール40が活物質層非形成部711aを押圧する押圧力は、活物質層非形成部711aが破断する圧力の80%以下であるのが好ましい。第一ロール40が活物質層非形成部711aを押圧する際に活物質層非形成部711aに加えられる張力(テンション)は、10N以上60N以下であるのが好ましい。
【0044】
第一ロール40及び第二ロール50は、活物質層非形成部711aを押圧し延伸できればよく、その大きさは特に限定されないが、例えば、活物質用ロール30よりも径の小さな円柱形状を有している。本実施の形態では、第一ロール40及び第二ロール50は、同等の大きさの径を有しているが、異なる大きさの径を有していてもよい。第一ロール40及び第二ロール50の材質についても、特に限定されず、活物質層非形成部711aを押圧するロールに使用可能な公知の材質を適宜選定できる。なお、第一ロール40としては、ステンレス製のロールまたはクロムメッキロール等が好適に使用できる。さらに好ましくは、第一ロール40として、(後述の第一回転軸41の傾斜した方向に向けた力がかかりやすくなる摩擦力が高い)表面をクロロプレンまたはシリコンでコートしたロール等が適している。以下、第一ロール40及び第二ロール50の構成について具体的に説明する。
【0045】
図4に示すように、第一ロール40は、活物質層非形成部711aのY軸マイナス方向(第一方向及び第二方向と交差する第三方向の一方側)に配置され、Y軸プラス方向(第三方向の他方側)に向けて活物質層非形成部711aを押圧する。第二ロール50は、活物質層非形成部711aのY軸プラス方向(第三方向の他方側)に配置され、活物質層非形成部711aを支持する。本実施の形態では、一対の第二ロール50が、活物質層非形成部711aのY軸プラス方向(第三方向の他方側)かつ第一ロール40の前後(Z軸方向両側)に配置されて、第一ロール40の前後において活物質層非形成部711aを支持する。
【0046】
具体的には、第一ロール40は、少なくとも一部が、第一ロール40で押圧される直前及び第一ロール40で押圧された直後のうちの少なくとも一方における活物質層非形成部711aよりも、Y軸プラス方向(第三方向の他方側)に配置される。ここで、第一ロール40で押圧される直前の活物質層非形成部711a、つまり、第一ロール40のZ軸マイナス方向に位置する活物質層非形成部711aを、活物質層非形成部711bとも称する。第一ロール40で押圧された直後の活物質層非形成部711a、つまり、第一ロール40のZ軸プラス方向に位置する活物質層非形成部711aを、活物質層非形成部711cとも称する。
【0047】
この定義により、第一ロール40は、少なくとも一部(Y軸プラス方向の一部)が、活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cの少なくとも一方よりも、Y軸プラス方向に配置されている、と言える。本実施の形態では、活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cは、Y軸方向において同じ位置に配置されている。このため、第一ロール40は、少なくとも一部(Y軸プラス方向の一部)が、活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cの双方よりも、Y軸プラス方向に配置されている。具体的には、第一ロール40は、第一ロール40のY軸方向における略中央位置に活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cが位置するように、配置されている。
【0048】
一対の第二ロール50は、第一ロール40で押圧される直前及び第一ロール40で押圧された直後の活物質層非形成部711aのY軸プラス方向(第三方向の他方側)に配置され、第一ロール40の前後において活物質層非形成部711aを支持する。つまり、一対の第二ロール50は、活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cのY軸プラス方向に配置されて、第一ロール40のZ軸方向両側において活物質層非形成部711aを支持する。具体的には、一対の第二ロール50は、Y軸マイナス方向の端縁が、第一ロール40のY軸プラス方向の端縁よりもY軸マイナス方向に配置される。本実施の形態では、一対の第二ロール50は、Y軸マイナス方向の端縁が、第一ロール40のY軸方向における略中央位置(第一ロール40のY軸マイナス方向の端縁よりもY軸プラス方向)に配置される。
【0049】
なお、一対の第二ロール50は、Y軸マイナス方向の端縁が、第一ロール40のY軸マイナス方向の端縁よりもY軸マイナス方向に配置されてもよい。つまり、第一ロール40は、全部が、活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cよりも、Y軸プラス方向に配置されてもよい。また、活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cがY軸方向において異なる位置に配置されている場合には、いずれか一方の第二ロール50のY軸マイナス方向の端縁が、第一ロール40のY軸マイナス方向の端縁よりもY軸マイナス方向に配置されてもよいし、第一ロール40のY軸プラス方向の端縁よりもY軸プラス方向に配置されてもよい。つまり、第一ロール40は、少なくとも一部が、活物質層非形成部711bまたは活物質層非形成部711cよりもY軸プラス方向に配置されていればよい。これによっても、第一ロール40は、Y軸プラス方向に向けて活物質層非形成部711aを押圧することができる。
【0050】
次に、第一ロール40及びその周囲の構成について、さらに詳細に説明する。図4に示すように、第一ロール40には、X軸プラス方向の端部の角部にテーパ面40aが形成されている。また、第一ロール40の中心には、第一回転軸41が配置され、かつ、第一ロール40を移動させる間欠移動部42が配置されている。
【0051】
テーパ面40aは、第一ロール40のうちの活物質層712側の端部の角部に形成されたテーパ状の傾斜面(第一ロール40の活物質層712側の端面に対して傾斜した傾斜面)であり、第一ロール40の当該角部の全周に亘って環状に形成されている。これにより、第一ロール40で活物質層非形成部711aを押圧する際に、活物質層非形成部711aに傷が付いて強度が低下するのを抑制できる。本実施の形態では、テーパ面40aは、例えばY軸方向から見て直線状の面であるが、例えばY軸方向から見て湾曲状の面であってもよい。
【0052】
第一回転軸41は、第一ロール40を回転(自転)させる棒状の回転軸であり、X軸方向に対して傾斜して配置されている。つまり、第一ロール40は、X軸方向(第一方向)から傾斜した方向に延びる第一回転軸41を中心に回転しながら、巻出部20及び巻取部60等(移動部)によってZ軸方向(第二方向)に移動する活物質層非形成部711aを押圧する。本実施の形態では、活物質層非形成部711aがZ軸プラス方向に移動するため、第一ロール40は、第一回転軸41を中心に左回り(反時計回り)に回転しながら、活物質層非形成部711aを押圧する。
【0053】
具体的には、第一回転軸41は、活物質層712から離れるほど(X軸マイナス方向に向かうほど)、活物質層非形成部711aの進行方向の上流側(Z軸マイナス方向)に向けて傾斜して配置されている。例えば、第一回転軸41は、活物質層非形成部711aの進行方向(Z軸方向)に対する鋭角側の角度Rが、80°以上89°以下であるのが好ましく、85°以上89°以下であるのがより好ましく、88°程度であるのがさらに好ましい。
【0054】
間欠移動部42は、第一回転軸41が回転可能なように第一回転軸41を支持し、かつ、第一ロール40をY軸方向に移動させる装置である。具体的には、一対の間欠移動部42が、第一回転軸41の延設方向において第一ロール40を挟む位置に配置されており、第一ロール40をY軸マイナス方向及びY軸プラス方向に交互に移動させる。この間欠移動部42によって、第一ロール40が、Y軸マイナス方向及びY軸プラス方向(第三方向の一方側及び他方側)に交互に移動することで、間欠的に、活物質層非形成部711aを押圧する。なお、間欠移動部42は、第一ロール40をY軸方向に移動できるものであればよく、その構成は特に限定されない。
【0055】
第二ロール50についても、第一ロール40と同様に、端部の角部にテーパ面が形成されていてもよいし、回転軸が傾斜していてもよい。第二ロール50の回転軸が傾斜している場合は、第二ロール50の回転軸は、第一ロール40の第一回転軸41と同じ角度に傾斜しているのが好ましいが、多少異なる角度に傾斜していてもよい。本実施の形態では、活物質層非形成部711aがZ軸プラス方向に移動するため、第二ロール50は、回転軸を中心に右回り(時計回り)に回転する。
【0056】
[3 電極シート製造方法の説明]
次に、図5図7を用いて、本実施の形態における電極シート製造方法について説明する。図5は、本実施の形態に係る電極シート製造方法における各工程を示すフローチャートである。図6及び図7は、本実施の形態に係る電極シート製造方法における押圧工程を説明する図である。具体的には、図6は、押圧工程において第一ロール40が間欠的に活物質層非形成部711aを押圧する工程を示している。さらに具体的には、図6の(a)は、第一ロール40が活物質層非形成部711aを押圧している状態を示し、図6の(b)は、第一ロール40が活物質層非形成部711aから離間した状態を示し、図6の(c)は、第一ロール40が活物質層非形成部711aを再度押圧する状態を示している。図7は、押圧工程において第一ロール40が間欠的に活物質層非形成部711aを押圧した結果、活物質層非形成部711aに間欠的に押圧痕713が形成された状態を示している。
【0057】
電極シート製造方法は、基材711に活物質層712が形成された電極シート710であって、活物質層712が形成されていない活物質層非形成部711aをX軸方向(第一方向)の端部に有する電極シート710を製造する方法である。電極シート製造方法は、電極シート710を圧延する圧延工程を含む電極シート710の製造方法である。
【0058】
図5に示すように、まず、移動工程として、Z軸方向(第二方向)に電極シート710を移動させる(S102)。具体的には、巻出部20及び巻取部60等(移動部)によって、電極シート710がZ軸方向に移動する。この際、基材711に、活物質含有ペースト状が塗布されて乾燥されることで活物質層712が形成される。これにより、電極シート710の基材711に、活物質層712が形成された部分と、活物質層712が形成されていない部分(活物質層非形成部711a)とが形成される。
【0059】
次に、圧延工程として、電極シート710の基材711に形成された活物質層712を圧延する(S104)。具体的には、一対の活物質用ロール30で活物質層712を挟み込み圧迫することにより、活物質層712を圧延する。この際に、電極シート710の活物質層712が形成された部分と活物質層非形成部711aとで伸び量が異なるために歪が発生し、電極シート710が湾曲するおそれが生じる。
【0060】
次に、押圧工程として、活物質層712が圧延された電極シート710の活物質層非形成部711aを押圧する(S106)。具体的には、活物質層非形成部711aのY軸マイナス方向(第三方向の一方側)に配置される第一ロール40によって、Y軸プラス方向(第三方向の他方側)に向けて活物質層非形成部711aを押圧する。この際、一対の第二ロール50が、活物質層非形成部711aのY軸プラス方向かつ第一ロール40の前後(Z軸方向両側)において、活物質層非形成部711aを支持する。そして、第一ロール40及び第二ロール50がともに回転することで、活物質層非形成部711aが押圧されながらZ軸プラス方向に送り出される。
【0061】
さらに具体的には、押圧工程では、第一ロール40で押圧される直前及び第一ロール40で押圧された直後のうちの少なくとも一方における活物質層非形成部711aよりも、Y軸プラス方向(第三方向の他方側)に第一ロール40の少なくとも一部を配置する。この際、一対の第二ロール50を、第一ロール40で押圧される直前及び第一ロール40で押圧された直後の活物質層非形成部711aのY軸プラス方向(第三方向の他方側)に配置し、一対の第二ロール50で第一ロール40の前後において活物質層非形成部711aを支持する。本実施の形態では、第一ロール40のY軸プラス方向の一部を、活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cの双方よりもY軸プラス方向に配置し、一対の第二ロール50を、活物質層非形成部711b及び活物質層非形成部711cのY軸プラス方向に配置する。
【0062】
そして、第一ロール40が、X軸方向(第一方向)から傾斜した方向に延びる第一回転軸41を中心に回転しながら、移動工程(S102)でZ軸方向(第二方向)に移動する活物質層非形成部711aを押圧する。この際、間欠移動部42が、Y軸マイナス方向及びY軸プラス方向に交互に移動することで、第一ロール40をY軸マイナス方向及びY軸プラス方向に交互に移動させる。
【0063】
具体的には、図6の(a)に示すように、第一ロール40が活物質層非形成部711aを押圧した後、図6の(b)に示すように、間欠移動部42がY軸マイナス方向に移動することで、第一ロール40をY軸マイナス方向に移動させる。そして、図6の(c)に示すように、間欠移動部42がY軸プラス方向に移動することで、第一ロール40をY軸プラス方向に移動させ、第一ロール40が活物質層非形成部711aを再度押圧する。
【0064】
このように、間欠移動部42によって、第一ロール40が、Y軸マイナス方向及びY軸プラス方向(第三方向の一方側及び他方側)に交互に移動することで、間欠的に、活物質層非形成部711aを押圧する。この結果、図7に示すように、活物質層非形成部711aに、複数の押圧痕713が間欠的に形成される。押圧痕713は、活物質層非形成部711aのY軸マイナス方向の面に形成された、活物質層非形成部711aが延伸した部分であり、Z軸方向に長尺状に形成される。つまり、活物質層非形成部711aには、Z軸方向に延びる押圧痕713が、Z軸方向に間隔を空けて複数配置される。本実施の形態では、押圧痕713は、活物質層非形成部711aのX軸プラス方向の端部に、活物質層712とは間隔を空けて形成される。
【0065】
なお、押圧工程(S106)は、圧延工程(S104)と連続して実施するのが好ましいが、圧延工程(S104)までで作業を中断したいような場合には、圧延工程(S104)と押圧工程(S106)との間に、電極シート710を巻き取る工程を実施してもよい。この場合、圧延工程(S104)と押圧工程(S106)とを個別の工程として作業できるため、例えば、圧延工程(S104)と押圧工程(S106)とで、電極シート710の移動速度を異ならせることができる。また、予め基材711に活物質層712が形成されて圧延された電極シート710を準備している場合には、圧延工程(S104)を省略して押圧工程(S106)を実施してもよい。押圧工程(S106)を圧延工程(S104)の前に行うことにしてもよい。
【0066】
次に、巻取工程として、活物質層非形成部711aが押圧された電極シート710が巻き取られる(S108)。具体的には、巻取部60によって、電極シート710が巻き取られる。そして、巻き取られた電極シート710は、巻回装置等によって、電極シート720及びセパレータとともに巻回されることで、電極体700が形成される。なお、電極シート710は、上記巻回される前に、電極体700を形成するのに適した寸法及び形状に裁断されてもよい。
【0067】
[4 効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る電極シート製造装置1によれば、第一ロール40は、押圧の直前及び直後の少なくとも一方の活物質層非形成部711aよりも、少なくとも一部が第三方向の他方側(Y軸プラス方向)に配置されている。また、第一ロール40は、第一方向(X軸方向)から傾斜した第一回転軸41を中心に回転しながら、活物質層非形成部711aを押圧する。このように、第一ロール40の少なくとも一部が、押圧前後の少なくとも一方の活物質層非形成部711aよりも第三方向の他方側に配置されることで、第一ロール40が活物質層非形成部711aを第三方向の一方側(Y軸マイナス方向)から押圧することとなる。このため、活物質層非形成部711aがその移動方向(第二方向(Z軸方向))へ延伸されるように張力が働くため、活物質層非形成部711aに第二方向への張力が加わる。また、第一ロール40が第一方向から傾斜した第一回転軸41を中心に回転しながら活物質層非形成部711aを押圧することで、第一ロール40が活物質層非形成部711aを第一方向から傾斜した方向に引っ張ることとなる。このため、活物質層非形成部711aに、第一方向から傾斜した方向への張力が加わる。これらにより、活物質層非形成部711aに、第二方向、及び、第一方向から傾斜した方向の2方向への張力を加えることができるため、活物質層非形成部711aを当該2方向に延伸させることができ、電極シート710の湾曲を効果的に抑制できる。
【0068】
つまり、活物質用ロール30による圧延工程で、電極シート710における活物質層712の部分が延伸するが、押圧工程において活物質層非形成部711aも延伸させることにより、両者の伸び量の差を小さくできるため、電極シート710の湾曲を効果的に抑制できる。なお、活物質層非形成部711aは、両面が延伸される必要はなく、片面のみ延伸されていれば、電極シート710の湾曲を効果的に抑制することができる。
【0069】
また、第一ロール40で活物質層非形成部711aを第一方向から傾斜した方向に引っ張ることで、活物質層非形成部711aを第一方向に引っ張るよりも、第一ロール40と活物質層非形成部711aとの間の摩擦を低くできる。これにより、当該摩擦によって、第一ロール40が摩耗して損傷する、または、活物質層非形成部711aが摩耗してコンタミネーション(金属粉等)が発生したり活物質層非形成部711aが損傷するのを抑制できる。
【0070】
電極シート製造装置1は、第一ロール40の押圧前後における活物質層非形成部711aの第三方向の他方側に、活物質層非形成部711aを支持する一対の第二ロール50を備えている。このように、一対の第二ロール50によって第一ロール40の前後の活物質層非形成部711aを支持することで、第一ロール40で活物質層非形成部711aを安定的に押圧し、活物質層非形成部711aに安定的に張力を加えることができる。これにより、電極シート710の湾曲を効果的に抑制できる。
【0071】
第一ロール40が連続的に活物質層非形成部711aを押圧する場合、活物質層非形成部711aが位置ずれを起こすと、当該位置ずれが修正されないまま押圧が継続されて、電極シート710に皺が発生したり、電極シート710が過剰な張力により破断したりするおそれがある。このため、第一ロール40によって間欠的に活物質層非形成部711aを押圧することで、活物質層非形成部711aの押圧が解除された際に活物質層非形成部711aの位置ずれが修正される。これにより、活物質層非形成部711aの位置ずれが抑制された状態で、第一ロール40で活物質層非形成部711aを押圧し、活物質層非形成部711aに張力を加えることができるため、電極シート710の湾曲を効果的に抑制できる。また、第一ロール40で連続的に活物質層非形成部711aを押圧した場合、活物質層非形成部711aにストレスがかかり、電極シート710の第一ロール40で押圧した部分と押圧していない部分との境界の強度が低下する。このため、第一ロール40によって間欠的に活物質層非形成部711aを押圧することで、電極シート710の強度が低下するのを抑制できる。
【0072】
第一ロール40が、第三方向の一方側及び他方側に交互に移動することで、第一ロール40で間欠的に活物質層非形成部711aを押圧する構成を、容易に実現することができる。
【0073】
本発明の実施の形態に係る電極シート製造方法によれば、第一ロール40の少なくとも一部を、押圧の直前及び直後の少なくとも一方の活物質層非形成部711aよりも第三方向の他方側に配置し、第一ロール40が、第一方向から傾斜した第一回転軸41を中心に回転しながら活物質層非形成部711aを押圧する。これにより、上述した電極シート製造装置1が奏する効果と同様の効果を奏することができる。
【0074】
[5 変形例の説明]
次に、上記実施の形態の変形例について、説明する。図8は、本実施の形態の変形例に係る第一ロール40及びその周囲の構成を示す側面図である。具体的には、図8は、図4の(a)に対応する図である。
【0075】
図8に示すように、本変形例においては、第一ロール40の周囲に、第二回転軸43と、接続部材44とが配置されている。本変形例のその他の構成については、上記実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0076】
第二回転軸43は、第一ロール40を回転(公転)させる棒状の回転軸であり、活物質層非形成部711aを押圧する第一ロール40(第一ロール40b)よりもY軸マイナス方向(第三方向の一方側)に配置されている。接続部材44は、第二回転軸43及び第一ロール40を接続する部材である。接続部材44は、第二回転軸43とともに回転可能なように第二回転軸43に固定され、かつ、接続部材44に対して第一回転軸41が回転可能なように第一回転軸41に接続されている。本変形例では、複数の第一ロール40(具体的には、4つの第一ロール40b~40e)が第二回転軸43の周囲(Y軸方向両側及びZ軸方向両側)に配置されて、これら複数の第一ロール40が接続部材44によって第二回転軸43と接続されている。
【0077】
このような構成により、第一ロール40は、第二回転軸43を中心に回転することで、間欠的に、活物質層非形成部711aを押圧する。本実施の形態では、活物質層非形成部711aがZ軸プラス方向に移動するため、複数の第一ロール40(第一ロール40b~40e)が、第二回転軸43を中心に左回り(反時計回り)に回転しながら、活物質層非形成部711aを間欠的に押圧していく。
【0078】
例えば、第一ロール40bが、第二回転軸43を中心に回転(公転)することで、活物質層非形成部711aを押圧可能な位置に配置される。そして、第一ロール40bが、第一回転軸41を中心に回転(自転)することで、活物質層非形成部711aを押圧する。次に、第一ロール40cが、第二回転軸43を中心に回転(公転)することで、活物質層非形成部711aを押圧可能な位置に配置される。そして、第一ロール40cが、第一回転軸41を中心に回転(自転)することで、活物質層非形成部711aを押圧する。このようにして、複数の第一ロール40が、間欠的に、活物質層非形成部711aを押圧する。
【0079】
以上のように、本変形例に係る電極シート製造装置によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、本変形例では、第一ロール40が、第二回転軸43及び第一ロール40を接続する接続部材44を介して第二回転軸43を中心に回転することで、第一ロール40で間欠的に活物質層非形成部711aを押圧する構成を、容易に実現することができる。なお、本変形例において、第一ロール40の個数は特に限定されない。例えば、1つの第一ロール40しか配置されておらず、1つの第一ロール40が第二回転軸43を中心に回転(公転)する構成でもよい。
【0080】
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態(その変形例も含む。以下同様)に係る電極シート製造装置及び電極シート製造方法について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されない。今回開示された実施の形態は全ての点で例示であり、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0081】
例えば、上記実施の形態では、電極シート製造装置は、正極側の電極シート710を製造することとしたが、負極側の電極シート720を製造してもよい。ただし、基材711(活物質層非形成部711a)がアルミニウムまたはアルミニウム合金等の電極シート710の方が、基材721(活物質層非形成部721a)が銅または銅合金等の電極シート720よりも、第一ロール40で押圧した際に塑性変形しやすく効果的に延伸できる。このため、電極シート710の方が、電極シート720よりも湾曲を効果的に抑制できるため、電極シート製造装置で製造するのに好ましい。なお、電極シート720の基材721(活物質層非形成部721a)が、第一ロール40で押圧された際に塑性変形によって効果的に延伸される素材で形成されていれば、電極シート製造装置で電極シート720を製造することにしてもよい。
【0082】
上記実施の形態では、電極シート製造装置は、第一ロール40の前後において活物質層非形成部711aを支持する一対の第二ロール50を備えていることとした。しかし、電極シート製造装置は、第一ロール40の前方または後方に第二ロール50を1つだけ備えている、または、第一ロール40の前後のいずれにも第二ロール50を備えておらず、電極シート710に加わる張力によって電極シート710を支持することにしてもよい。
【0083】
上記実施の形態では、第一ロール40は、間欠的に、活物質層非形成部711aを押圧することとした。しかし、第一ロール40は、連続的に、活物質層非形成部711aを押圧してもよい。
【0084】
上記実施の形態では、電極体700は、巻回軸が蓋体120に平行となるいわゆる縦巻きの巻回型電極体であることとした。しかし、電極体700は、巻回軸が蓋体120に垂直となるいわゆる横巻きの巻回型電極体であってもよい。また、電極体700の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層したスタック型、または、極板を蛇腹状に折り畳んだ形状等であってもよい。また、電極シート製造装置によって電極シート710を製造した後に、電極シート710にタブを形成してもよい。
【0085】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、電極シートを製造する電極シート製造装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0087】
1 電極シート製造装置
10 蓄電素子
20 巻出部
30 活物質用ロール
40、40b、40c、40d、40e 第一ロール
40a テーパ面
41 第一回転軸
42 間欠移動部
43 第二回転軸
44 接続部材
50 第二ロール
60 巻取部
100 容器
110 容器本体
120 蓋体
121 ガス排出弁
300 電極端子
400 上部ガスケット
500 下部ガスケット
600 集電体
700 電極体
710、720 電極シート
711、721 基材
711a、711b、711c、721a 活物質層非形成部
712、722 活物質層
713 押圧痕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8